JP2522830Y2 - バキュームカップ装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［考案の目的］ （産業上の利用分野） 本考案は、パネル等の被吸着材を負圧によって吸着・
保持するバキュームカップ装置に関する。

（従来の技術） 例えば機器の部品の組付けを行なう工程において、部
品を保持しかつ所望位置まで移送するために、バキュー
ムカップを備えた装置が使われることがある。従来のバ
キュームカップは、第３図に例示されるように、円柱状
の基体ａと、この基体ａに止めねじｂによって固定され
たゴム状弾性材料からなる吸引パッドｃを備えて構成さ
れている。止めねじｂの中心部に吸引孔ｄが開口してい
る。吸引孔ｄは排気通路ｅを介して接続口ｆに連通して
いる。この接続口ｆは適宜の負圧発生源に接続される。

上記構成の従来のバキュームカップは、パッドｃの先
端周縁ｇをパネル等の平坦な被吸着材の表面に接触させ
た状態で、排気通路ｅを通じてパッドｃの内側に負圧を
作用させることにより、被吸着材を吸着・保持するよう
にしている。

（考案が解決しようとする課題） 上記従来例においては、パッドｃが被吸着材に強く押
付けられると、止めねじｂの端面が被吸着材の表面に接
触して被吸着材が傷付くことがあった。また従来のバキ
ュームカップでは、被吸着材に孔が設けられている場合
に、この孔がパッドｃの内側に位置すると、この孔を通
じて空気が漏れてしまうため、被吸着材を吸い付けるこ
とができなかった。

また、被吸着材の所定位置にパッドｃを正確に吸着さ
せるためには、別途に何らかの位置決め手段を設けなけ
ればならず、この点にも改良の余地があった。

なお実開昭61-169541号公報に記載されている真空パ
ッドのように、板状のワークを吸着するパッドの中心部
に昇降可能なセンタリング軸を設け、このセンタリング
軸の上端側に設けた圧縮ばねによってセンタリング軸を
下方に付勢するとともに、センタリング軸の下端部に気
密用リングと円板状の凸部を設けたものが提案されてい
る。しかしながらこのものは、パッドの内側に作用する
負圧の大小によってパッドの変形度合いが大きく異な
り、吸着高さがばらつくという問題がある。例えば負圧
が強すぎるとパッドが過度に潰れるためワークを吸着す
る位置が高くなり、逆に、負圧が弱いと上記圧縮ばねの
反発弾性やパッドの弾性復元力によってワークの位置が
下がる傾向になる。

従って本考案の目的は、被吸着材に孔があけられてい
ても問題なく吸着させることができ、しかもこの孔を利
用してパッドと被吸着材との相互位置決めをなすことが
できるとともに、吸着時に被吸着材の表面が傷付くこと
を防止できるようなバキュームカップ装置を提供するこ
とにある。

［考案の構成］ （課題を解決するための手段） 上記目的を果たすために開発された本考案装置は、基
体と、ゴム状弾性材料からなり上記基体に取付けられて
いて先端周縁が被吸着材に接触させられる椀状の吸引パ
ッドと、上記吸引パッドの中央部に配置されて上記吸引
パッドの前面側に突出しかつ上記被吸着材の孔に挿入可
能な外径を有する先細テーパ状のピン部およびこのピン
部よりも奥側に位置して上記ピン部よりも大径な胴部を
有しかつ上記吸引パッドの前面側から上記基体に着脱可
能に固定されて上記吸引パッドの基部を挾持するセンタ
部材と、弾性材料からなり上記ピン部の根元部分におい
て上記胴部の前面側でかつ上記吸引パッドの先端周縁の
内側に設けられた弾性シール材と、上記弾性シール材よ
りも奥側の位置において上記胴部の側面に開口する吸引
孔と、上記センタ部材に形成された孔を介して上記吸引
孔に連通する排気通路とを具備している。

（作用） 本考案のバキュームカップ装置において、被吸着材の
孔にピン部を挿入するとともに、吸引パッドの先端周縁
を被吸着材の表面に接触させる。ピン部の根元部分に設
けられている弾性シール材は、被吸着材の孔の周りをシ
ールする機能と、被吸着材を吸い付ける時のクッション
材としての機能を兼ねる。排気通路と吸引孔を通じて吸
引パッドの内側を排気することにより、被吸着材が負圧
によってパッドに吸い付けられる。

（実施例） 以下に本考案の一実施例について、第１図および第２
図を参照して説明する。

第１図に示されたバキュームカップ装置１は、例えば
円柱形状をなしている基体２と、この基体２の先端面側
に取着される吸引パッド３と、この吸引パッド３を基体
２に固定するための止めねじを兼ねるセンタ部材４など
を備えて構成されている。

基体２の一端面側に第１のねじ孔７が設けられてい
る。このねじ孔７を、図示しない組付装置等のマニプレ
ータなどに設けられたボルトにねじ込むことにより、基
体２が所望箇所に固定されるようになっている。基体２
の軸線方向中間部に、レンチ等の締付用工具を嵌合させ
ることの可能なつかみ部８が設けられている。基体２の
他端面側に第２のねじ孔９が設けられている。

基体２の内部に排気通路10が形成されている。この排
気通路10は、前述した第２のねじ孔９に連通していると
ともに、基体２に設けられた接続口11の内部通孔にも連
通している。接続口11は、配管12を介して排気ポンプ等
の負圧発生源13に接続される。

吸引パッド３はゴム状弾性材料からなり、弾性変形可
能な椀状部分15と、段付き取付孔16を有する基部17とが
一体に成形されている。椀状部分15の内側には、凹状の
窪み18がある。椀状部分15の先端周縁19は、周方向全周
にわたって円環状に連続している。段付き取付孔16は、
小径部16aと大径部16bとからなり、吸引パッド３の中心
部を軸線方向に貫通している。

センタ部材４は、先細テーパ状のピン部21と、このピ
ン部21よりも奥側に位置していてピン部21よりも大径な
胴部22と、この胴部22の後端側に連なる軸部23とを備え
て一体に成形されている。軸部23の周面に雄ねじ25が設
けられている。この軸部23を段付き取付孔16の小径部16
aに挿通し、更に雄ねじ25を基体２のねじ孔９にねじ込
むことにより、吸引パッド３の基部17が胴部22と基体２
の端面との間に挟まれ、吸引パッド３とセンタ部材４と
が基体２に一体に組付けられる。センタ部材４の胴部22
は、段付き取付孔16の大径部16bに対し密接した状態で
嵌合させられる。

センタ部材４のピン部21の根元部分において、胴部22
の前端面側に弾性シール材30が装着されている。この弾
性シール材30は、例えば周知のＯリング等のようなゴム
状弾性材料からなり、適宜の固定手段によって、ピン部
21あるいは胴部22から抜け落ちないように保持されてい
る。この弾性シール材30は、ピン部21の外周面と胴部22
の前端面に密接し、第１図に示されるように吸引パッド
３の先端周縁19の内側に弾性シール材30が位置してい
る。弾性シール材30の一例は、周方向各部の断面が円形
のシール本体31と、このシール本体31の内部に埋設され
た補助ばね32とからなるが、エラストマのみからなる一
般的なＯリングが使われてもよいし、あるいは周方向各
部の断面が非円形のパッキン（平パッキン等）が使われ
てもよい。

弾性シール材30よりも奥の方に位置する前記胴部22の
側面壁に、吸引孔35が開口している。吸引孔35はセンタ
部材４の中心部を通る軸線方向の孔36に連通している。
軸線方向の孔36は排気通路10に連通している。上記吸引
孔35は軸線方向の孔36から放射状に延びており、１つだ
けでもよいが、好ましくは複数の吸引孔35を胴部22の周
方向に等間隔で開口させてある。

被吸着材の一例としてのパネル40は、所定位置に孔41
が設けられている。孔41の内径は、ピン部21の外径より
もやや大きい程度である。

上記構成のバキュームカップ装置１を用いてパネル40
を吸着・保持する場合、第２図に示されるように、ピン
部21をパネル40の孔41に挿入してパネル40の表面を弾性
シール材30に接触させるとともに、吸引パッド３の先端
周縁19をパネル40に接触させる。また、負圧発生源13に
よって発生させた負圧を排気通路10および吸引孔35を通
じて吸引パッド３の窪み18に作用させる。

本実施例装置１においては、パネル40の孔41にピン部
21が挿入され、孔41の周りがシール材30によってシール
されるため、孔41のあいたパネル40であっても空気漏れ
を生じることなく、吸引パッド３によってパネル40を吸
い付けることができる。しかもピン部21を利用して、パ
ネル40に対するパッド３の位置決めをなすことができ、
吸着時の位置ずれ発生が防止される。また、弾性シール
材30がクッションとしても機能するため、吸着時にパネ
ル40の表面が傷付くといった不具合も生じない。

なお本考案のバキュームカップ装置１は、パネル以外
の各種形状の部材を吸着するのに使用することができ
る。要するに被吸着材は、ピン部を挿入できる孔と、こ
の孔の周りに吸引パッドの先端周縁が全周にわたって接
触できる広さの平坦面をもっていればよい。

［考案の効果］ 本考案によれば、孔のあけられている被吸着材を吸引
パッドによって吸着・保持することができるとともに、
吸着時に被吸着材の表面が傷付くことがなく、しかも吸
引パッドと被吸着材との相互位置決めもなすことができ
る。本考案におけるセンタ部材は、先細テーパ状のピン
部を被吸着材（ワーク）の孔に挿入する際にピン部の中
心と孔の中心が径方向にずれていてもピン部の挿入に伴
って双方の中心が合うようになり、ワークの位置決めが
正確になされる。そしてパッド内を排気してワークを吸
着した際に、胴部前端の弾性シール材がワークを支える
ストッパとして機能する。このためワークがそれ以上基
体側に吸い寄せられることが回避され、吸引パッドが過
度に変形することも回避できるため、ワークを一定の吸
着高さに保持できる。このようにワークの位置を正確に
規制できることから、吸引パッドによってワークを他の
工程の所望位置に供給する場合などにも、ワークを所定
の供給位置へ正確かつ高精度に供給でき、自動化ライン
などにおけるワーク搬送手段としてきわめて有用とな
る。しかもこのセンタ部材は、吸引パッドを基体に組付
ける際にパッドを挾持する機能を有しかつ排気用の孔を
有する部品としての機能も兼ねる。また、孔の無いワー
クを吸着させる場合には、センタ部材を基体から取外し
て通常の孔無しワーク用のセンタ部材に付け替えること
が容易であるなどの効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例を示すバキュームカップ装置
を一部断面で示す側面図、第２図は第１図に示されたバ
キュームカップ装置に被吸着材を吸い付けた状態を一部
断面で示す側面図、第３図は従来のバキュームカップを
一部断面で示す側面図である。 １……バキュームカップ装置、２……基体、３……吸引
パッド、４……センタ部材、10……排気通路、11……接
続口、19……吸引パッドの先端周縁、21……ピン部、22
……胴部、30……弾性シール材、35……吸引孔、40……
被吸着材（パネル）、41……被吸着材の孔。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】基体と、ゴム状弾性材料からなり上記基体
   に取付けられていて先端周縁が被吸着材に接触させられ
   る椀状の吸引パッドと、上記吸引パッドの中央部に配置
   されて上記吸引パッドの前面側に突出しかつ上記被吸着
   材の孔に挿入可能な外径を有する先細テーパ状のピン部
   およびこのピン部よりも奥側に位置して上記ピン部より
   も大径な胴部を有しかつ上記吸引パッドの前面側から上
   記基体に着脱可能に固定されて上記吸引パッドの基部を
   挾持するセンタ部材と、弾性材料からなり上記ピン部の
   根元部分において上記胴部の前面側でかつ上記吸引パッ
   ドの先端周縁の内側に設けられた弾性シール材と、上記
   弾性シール材よりも奥側の位置において上記胴部の側面
   に開口する吸引孔と、上記センタ部材に形成された孔を
   介して上記吸引孔に連通する排気通路とを具備したこと
   を特徴とするバキュームカップ装置。