JP2516574B2 - 生体親和性物質接合体及びその製造方法 - Google Patents

生体親和性物質接合体及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、主として生体の皮膚に装着して体内と外界
との情報や物質の授受を行う皮膚端子や皮膚センサーと
して機能しあるいは人工骨、歯、歯根等のインプラント
材として有用なチタン又はチタン基合金とリン酸カルシ
ウム化合物から成る生体親和性物質の接合体とその製造
方法に関するものである。
(従来技術とその問題点) 人工骨、人工歯根等の生体インプラント材は、事故等
により骨が欠損した場合や歯が抜けた場合等に、残って
いる骨に接合したり顎骨に植え込んだりして生来のもの
に近い形で使用でき、快適な生活を維持することを可能
にするため最近注目を集めている。該インプラント材に
は水酸アパタイトをはじめとするリン酸カルシウム化合
物が使用され、該化合物は生体親和性が極めて優れてお
り成形が容易であることから近年広く使用されてきてい
る。一方チタンやチタン基合金は生体内に入っても悪影
響を及ぼすことのない生体不活性金属であり比重が約4.
5で従来のコバルト−クロム合金やステンレススチール
の2/3〜1/2と軽く、機械的強度に優れていることから生
体インプラント材の基材として近年汎用されつつある。
現在輸液用や液交換用等体内外で物質交換を行う場
合、注射等による方法が主であり、この方法を継続して
行うと注射針を挿入する部分の皮膚が硬化して注射針の
挿入が不可能になるといった物理的問題だけでなく、患
者の精神的負担が大きくなるといった問題点もある。又
該注射法の換わりに送液用パイプを切開した皮膚を通し
て体内の適所と接続する方法もあるが、適用範囲が限ら
れ又長期間の使用は困難である。
上記材料の発達及び医歯技術の向上により、生体内外
での情報の伝達や輸液用や腎臓透析用等として、上記注
射法や切開法に換えて皮膚に上記物質で形成した端子を
装着し、該端子を通して直接生体内外での情報交換や物
質交換を行う方法が採用されつつある。該方法は水酸ア
パタイト等の生体親和性のリン酸カルシウム化合物を皮
膚に直接埋め込み、その中心部にパイプ等の端子を接続
して該端子から輸液等を行う方法であり、輸液時にのみ
前記端子にパイプを装着し輸液装置を取り付けるだけで
よく、その効果は半永久的である。
しかしながら現在使用されている前記皮膚端子は、水
酸アパタイトを主とするリン酸カルシウム化合物に、シ
リコン等の生体不活性物質のパッキングを介して、チタ
ンやステンレス等から成るパイプ類をボルト等により固
定した構造を有し、取付座やパッキングが存在しあるい
は又水酸アパタイトの部分はそれのみである程度の強度
を持たなければならないことから少なくとも2〜3mm程
度の厚みを有するため部品が大型化してしまうという欠
点がある。部品の大型化は患者に対する物理的及び精神
的圧迫を大きくするため、経済的理由からだけでなく治
療を効果的にするためにも該部品の小型化に対する要請
は根強いものがある。更にパッキングに使用される前記
シリコンゴムは皮膚内に炎症を起こすことが知られてい
る。
本発明者らは、これまでチタン等の基材上に、中間層
を形成し、次いで該中間層上に水酸アパタイト等から成
るリン酸カルシウム化合物層を形成し、前記中間層によ
り前記基材と前記リン酸カルシウム化合物層の接合性を
向上させる方法を提案した(例えば特願昭62-245576
号)。しかしながら前記皮膚端子におけるリン酸カルシ
ウム化合物は体内の血液の浸透や外部からのバクテリア
等による感染を防止するために焼結体密度約90%以上の
緻密体が要求され、前記基材と前記リン酸カルシウム化
合物を別個に成形し、成形後両部材を接合する方法によ
り製造されるため、前記した接合方法を採用することが
できない。
(発明の目的) 本発明の目的は、上記した従来の主としてチタン又は
チタン基合金から成る皮膚端子やインプラント材の基材
と前記リン酸カルシウム化合物との接合性を改良し、別
個に成形した両者を成形後良好に接合したより薄膜化し
たリン酸カルシウム化合物を用い得る接合体及びその製
造方法を提供することである。
(問題点を解決するための手段) 本発明は、第1に、チタン又はチタン基合金から成る
基材と、リン酸カルシウム化合物から成る生体親和性物
質とを、チタン酸化物、タンタル酸化物又はそれらの少
なくとも一方を含む複合酸化物から成る酸化物層とその
上に形成したチタン又はチタン基合金から成る金属層と
から成る中間層により、接合した生体親和性物質接合体
であり、第2に、チタン又はチタン基合金から成る基材
と、リン酸カルシウム化合物から成る生体親和性物質と
を接合して接合体を製造する方法において、前記生体親
和性物質上に、チタン酸化物、タンタル酸化物又はそれ
らの少なくとも一方を含む複合酸化物から成る酸化物層
を形成し、該酸化物層上にチタン又はチタン基合金から
成る金属層を形成して中間層とし、次いで該中間層を介
して前記基材を前記生体親和性物質と焼結することを特
徴とする生体親和性物質接合体の製造方法である。
以下本発明をより詳細に説明する。
本発明は、従来使用されている前記皮膚端子の生体親
和性物質とパイプ等の基材との接合が両者間に介在させ
たパッキング等を使用して機械的手段で行われ、該接合
法が部品の大型化と患者への精神的及び肉体的負担にな
っていることに鑑み、前記皮膚端子の生体親和性物質と
基材との接合を化学的方法により行って部品の小型化を
図るようにしたことを特徴とする。
本発明における基材を形成する金属は、生体内で安定
な金属チタン又はチタン基合金とする。ここでチタン合
金とは、金属チタンを主成分とし該金属チタンに、Ta、
Nb、白金族金属、Al、V等を添加した合金をいう。この
ような金属又は合金から成る基材はその形状が板状、棒
状、パイプ状等の平滑なものであっても、スポンジ状の
多孔表面を有するものであってもよい。基材としてこれ
らの基材等を使用するのは、焼結体やガラスと比較して
機械的強度が十分に大きくかつ工作が容易だからであ
る。
該基材は、必要に応じて予めその表面を水洗、酸洗、
超音波洗浄、蒸気洗浄等により洗浄化処理しあるいは後
述する中間層との附着力を向上させるために該表面をブ
ラスト及び/又はエッチング処理により粗面化してもよ
い。
次いでこの表面にチタン又はチタン基合金の微粒子を
含む層を形成する。この操作は前記基材と前記生体親和
性物質との熱膨脹率の差異を緩和し温度変化による歪や
応力の増大を防止するためのものであり、前記基材表面
が十分に多孔化されていれば必ずしも必要な操作ではな
い。使用する微粒子の粒径は特に限定されないが1〜40
μmが好適であり、40μmを超えると多孔度が大きくな
り過ぎる。前記微粒子層の形成は、この微粒子をメチル
セルロースのような焼結により揮発するバインダ材を含
む水溶液に分散させてスラリを形成し、該スラリを前記
基材表面に薄く塗布し、真空中又は不活性又は還元性雰
囲気で焼結し表面に多孔性チタンの薄層を形成すること
により行う。該焼結温度は600〜1200℃が適当であり、
該温度未満では焼結が不十分となり、又該温度を超える
と基材の粒子成長や熱変形が起こるため望ましくない。
前記多孔性薄層と前記基材との組成は同一でも同一でな
くてもよく、チタン基材上にチタン合金粒子の薄層を形
成し、あるいはチタン合金基材上に金属チタン粒子の薄
層を形成してもよい。このように作製した多孔性チタン
の表面を必要に応じて平滑化してチタン又はチタン基合
金基材とする。又この多孔性のチタン又はチタン基合金
薄層はこのように予めチタン又はチタン基合金基材上に
形成するのではなく、この操作を後述する酸化物層と金
属層を形成したリン酸カルシウム化合物と前記チタン又
はチタン基合金基材を接合する時点で行うこともでき
る。
本発明の生体親和性物質であるリン酸カルシウム化合
物は、主として水酸アパタイトを指称しその他にリン酸
三カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カ
ルシウムや若干の不純物成分又は後述する焼結により中
間層との反応で副成するリン酸カルシウム系の化合物を
含んでいてもよい。該生体親和性物質はその表面が前記
基材の接合面と一致するよう整形し、必要に応じて研磨
し、接合が全面で起こり間隙が生じないようにすること
が望ましい。
次いで、接合性向上のために、前記基材と前記生体親
和性物質を、前記したチタン酸化物、タンタル酸化物又
はこれらを含む複合酸化物とチタン又はチタン基合金と
を含む中間層を介して接合する。該中間層の形成により
接合性が向上する理由は明確ではないが、熱分解法等に
より形成される酸化物層とリン酸カルシウム化合物とが
分子レベルで均一な化学結合界面が形成され、又前記酸
化物層と前記金属層中の金属又は合金間の該金属又は合
金上に酸化皮膜を有する化学結合界面が形成されるため
と推測される。又熱分解法による酸化物層は、熱分解ガ
スが透過したことにより形成されるガス分子レベルの極
めて微細な孔が多数形成されていると思われ、該孔が前
記金属又は合金及びセラミックである前記リン酸カルシ
ウム化合物の熱膨脹率の差を緩和し接合性向上に寄与し
ているものと推測される。
前記中間層は、前記基材又は生体親和性物質のいずれ
かの表面に特に生体親和性物質の表面に形成する。以下
の説明は該中間層を前記生体親和性物質上に形成する方
法を中心として行う。
前記酸化物層の主成分は酸化チタンあるいは酸化タン
タル単独でも、それらを含む複合酸化物例えば酸化チタ
ン−酸化タンタル、酸化チタン−酸化ジルコニウム、酸
化チタン−酸化ニオブ等であってもよいが、酸化チタン
単独、及び酸化チタン−酸化タンタルの複合酸化物が好
適である。これらの成分はいずれも生体不活性物質であ
り、所謂バインダとして好適である。
該酸化物層は熱分解法により好適に形成される。例え
ば前記酸化物を構成する金属イオンを含む溶液例えば塩
化チタンの希塩酸溶液や塩化チタン−塩化タンタルの希
塩酸溶液又はブチルチタネートやアルコシキタンタル等
のアルコール溶液を前記生体親和性物質表面に塗布し、
乾燥後400〜900℃で空気中等の酸素含有雰囲気で5〜60
分間加熱することにより前記酸化物層を得ることができ
る。1回の加熱焼成で厚さが十分でない場合は前記操作
を複数回繰り返せば良い。
次いでこのように形成した酸化物層上に金属層を形成
する。該金属層を形成する金属や合金はチタン又はチタ
ン基合金例えば金属チタンやチタン−タンタル合金、チ
タン−ジルコニウム合金とする。これらの成分はいずれ
も生体不活性物質であり、所謂バインダとして好適であ
る。該金属層の形成方法は特に限定されないが、通常の
蒸着法や他のスパタリング等を使用すれば良い。
次いでこのように作製した酸化物層と金属層を形成し
た生体親和性物質と、前記した基材の表面を密着させ、
必要に応じて両者を固定具で固定して加熱焼結を行う。
該加熱焼結法としてはホットプレスによることが望まし
いが、そのまま加熱しても良い。加熱雰囲気は特に限定
されないが、酸化を防止するために真空中やヘリウムや
アルゴン等の不活性ガス中あるいは還元雰囲気中とする
ことが望ましく、又焼結温度は600〜1200℃好ましくは8
00〜1000℃であり、焼結時間は5〜180分とする。焼結
後は可能であれば徐冷し、100℃以下にしてから前記雰
囲気中から取り出すようにする。
このように形成されたリン酸カルシウム化合物−チタ
ン基材接合体は中間層により良好に接合され、皮膚端子
の他に通常のインプラント材としても使用することが可
能である。
(実施例) 以下本発明の実施例を記載するが、これらの実施例は
本発明を限定するものではない。
実施例1〜12 湿式法により合成した水酸アパタイトの粉末を円盤状
に成形し、1200℃で焼結することにより直径約24mm、厚
さ約5mmの計25枚の水酸アパタイトの緻密体(相対密度
約95%)を得た。
該緻密体中の20枚のそれぞれの片面に金属換算で0.4M
/lのチタンアルコキシド(実施例1〜3、参考例1及び
2)、チタンアルコキシド及びタンタルアルコキシド
(実施例4〜6、参考例3及び4)、チタンアルコキシ
ド及びジルコニウムアルコキシド(実施例7〜9、参考
例5及び6)及びタンタルアルコキシド(実施例10〜1
2、参考例7及び8)のn−ブタノール溶液を塗布し、
昇温速度10℃/分で600℃まで上昇させ10分間保持し
た。この操作を2回繰り返して第1表中に示す中間層中
の酸化物を形成した。又前記緻密体の残りの5枚には前
記中間層を形成しなかった(参考例9〜13)。
次いで該酸化物層上に第1表の中間層を形成する金属
又は合金を金属ターゲットとして用い、アルゴン雰囲気
中で1×10-1mmHg、印加電圧2.9kV、膜成長速度0.1μm/
分の条件でスパッタリングを行い、10μmの金属(又は
合金)薄膜を形成した。
一方縦60mm、横60mm、厚さ5mmのJISI種チタン板を30
重量%の硝酸と0.5重量%の弗酸を含 有する常温の硝弗酸水溶液中に20分間浸漬して表面を洗
浄し、中心部の直径約24mmの円形部分に、粒径10μm以
下のチタン粉末と3重量%のエチルセルロース酢酸エチ
ル溶液を混合したスラリを均一に塗布し、上記した水酸
アパタイト緻密体を載せて60℃で2時間乾燥させた。
これを、1×10-5〜1×10-6mmHgの真空中で5℃/分
の速度で950℃まで昇温させ1時間保持した後、炉中で
冷却して接合体を得、該接合体を数日間実験室内でイン
プラント材として使用し、その接合性を調べた。この結
果を第1表に示す。表中○は過酷なハンドリングに対す
る耐性を有し、△は簡単なハンドリングに対する耐性を
有し、×は全く接合しないことを示している。
第1表から、中間層として、チタン酸化物、タンタル
酸化物又はそれらを主とする複合酸化物層とチタン又は
チタン基合金を形成することにより、水酸アパタイト緻
密体とチタン基材間の接合が非常に良好になることが判
明した。
(発明の効果) 本発明では、チタン等から成る基材と、リン酸カルシ
ウム化合物から成る生体親和性物質とを、チタン酸化物
等を含む酸化物層とチタン等を含む基材層から成る中間
層により接合している。
従来の例えば皮膚端子では、別個に成形した基材と生
体親和性物質とを、機械的方法により接合しているた
め、必然的に前記皮膚端子自体が大型化し該皮膚端子を
使用する患者に対する精神的及び肉体的負担となってい
る。
一方本発明に係わる接合体は、前記基材と前記生体親
和性物質を、チタン酸化物、タンタル酸化物又はそれら
を主とする複合酸化物を含む酸化物層とチタン又はチタ
ン基合金とを含む金属層から成る中間層により接合して
いる。従って該接合体は化学的手段で一体化され機械的
手段を必要としないため、全体を小型化することができ
体積及び重量が減少して患者に対する前記負担が大きく
低減される。
更に該接合体は何の手段も必要とせずに常に一体化さ
れているため単一の備品として容易かつ安全に取り扱う
ことができる。
又前記基材上に、チタン又はチタン基合金の微粒子を
含む層を形成しておくと、該基材と前記生体親和性物質
との熱膨脹率の差異が緩和され温度変化による歪や応力
の増大を防止できるため、該歪や残留応力による接合部
の剥離等が効果的に防止される。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】チタン又はチタン基合金から成る基材と、
    リン酸カルシウム化合物から成る生体親和性物質とを、
    チタン酸化物、タンタル酸化物又はそれらの少なくとも
    一方を含む複合酸化物から成る酸化物層とその上に形成
    したチタン又はチタン基合金から成る金属層とから成る
    中間層により、接合した生体親和性物質接合体。
  2. 【請求項2】チタン又はチタン基合金から成る基材の表
    面に、チタン又はチタン基合金から成る多孔性の薄層を
    有する請求項1に記載の接合体。
  3. 【請求項3】チタン又はチタン基合金から成る基材と、
    リン酸カルシウム化合物から成る生体親和性物質とを接
    合して接合体を製造する方法において、前記生体親和性
    物質上に、チタン酸化物、タンタル酸化物又はそれらの
    少なくとも一方を含む複合酸化物から成る酸化物層を形
    成し、該酸化物層上にチタン又はチタン基合金から成る
    金属層を形成して中間層とし、次いで該中間層を介して
    前記基材を前記生体親和性物質と焼結することを特徴と
    する生体親和性物質の製造方法。
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