JP2510183B2 - 分子ふるい炭素の製造法 - Google Patents

分子ふるい炭素の製造法

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JP2510183B2 JP62031067A JP3106787A JP2510183B2 JP 2510183 B2 JP2510183 B2 JP 2510183B2 JP 62031067 A JP62031067 A JP 62031067A JP 3106787 A JP3106787 A JP 3106787A JP 2510183 B2 JP2510183 B2 JP 2510183B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、微細な細孔の分子ふるい効果により、混
合ガスの分離精製等の分野に応用される分子ふるい炭素
の製造法に関するものである。
〔従来の技術〕
従来より、分子ふるい効果を有する吸着剤としては、
シリカ・アルミナ系のゼオライトが広く用いられ、ガス
の分離および精製に重要な役割を果たしている。しかし
ながら、上記ゼオライト系分子ふるいは、耐熱性,耐薬
品性に劣り、かつ水のような極性物質に対する選択的吸
着性が強く、極性物質の存在下では分子ふるい効果を示
さないという欠点を有している。
〔発明が解決しようとする問題点〕
ところで、最近、非極性であつて疎水性を示す炭素を
素材とした分子ふるいの製造が可能となり、この種の分
子ふるい炭素は、耐熱性,耐薬品性に優れ、極性物質の
存在下においても使用可能な分子ふるいとして注目を集
めている。しかしながら、この分子ふるい炭素の工業的
製造に関しては、炭素表面のミクロ孔の制御に煩雑な工
程を必要とし、複雑で非効率的な製法しか実施されてい
ないのが現状である。すなわち、分子ふるい炭素の工業
的製法の代表的例としては、第1に、予め製造しておい
た細孔の大きい活性炭に合成樹脂原料物質を触媒ととも
に吸着させた後、再び炭化処理する方法(特公昭49−37
036号公報)がある。第2の方法としては、サラン廃棄
物を高温で加熱した後粉砕し、焼結剤,造粒剤を加えて
造粒後再び加熱乾溜する方法(特公昭52−47758号公
報)があり、第3の方法として、揮発性成分が5%以下
のコークスを600〜900℃に加熱した状態のところにガス
状の炭化水素を通じて熱分解させ、析出した炭素をコー
クスの細孔壁に添着させる方法(特公昭52−18675号公
報)がある。しかし、上記製法は、先に述べたようにい
ずれも工程が煩雑であるばかりでなく、特に分子径の小
さい炭化水素異性体や窒素と酸素の分離に適用するため
の分子ふるい炭素としては性能が不充分であり、より一
層の分離性能の向上が望まれている。
この発明は、このような事情に鑑みなされたもので、
分離性能に優れた分子ふるい炭素を煩雑な工程を経ずに
製造できる方法の提供をその目的とする。
〔問題点を解決するための手段〕 上記の目的を達成するため、この発明の分子ふるい炭
素の製造法は、下記の(A)〜(E)による条件を備え
た粒子形状が球形のフエノール樹脂粉末を準備し、この
フエノール樹脂粉末をその40重量%以下の固形分含有量
の液状フエノール樹脂とともに造粒して粒状成形体をつ
くり、この粒状成形体または上記フエノール樹脂粉末を
非酸化性雰囲気下において500〜1000℃の温度領域で焼
成するという構成をとる。
(A)粒径1〜150ミクロンのフエノール樹脂の球状一
次粒子またはそれとその二次凝集物からなること。
(B)少なくとも全体の50重量%は100タイラーメツシ
ユ篩を通過し得る大きさであること。
(C)液状クロマトグラフイーを用いた測定による遊離
フエノール含有量が50ppm以下であること。
(D)KBr錠剤法による赤外線吸収スペクトルにおいて1
600cm-1(ベンゼンに帰属する吸収ピーク)の吸収強度
をD1600,900〜1015cm-1(メチロール基に帰属する吸収
ピーク)の範囲の最も大きな吸収強度をD900〜1015,89
0cm-1(ベンゼン核の孤立の水素原子の吸収ピーク)の
吸収強度をD890で表わした場合に下記の式を満足させる
こと。
900〜1015/D1600=0.2〜9.0 D890/D1600=0.09〜1.0 (E)メタノール溶解度が50重量%以下であること。
すなわち、本発明者らは、上記の目的を達成するため
一連の研究を重ねた結果、分子ふるい炭素の原料とする
フエノール樹脂として架橋密度が余り高くなく、したが
つて、反応性を有するメチロール基を適量(上記《D》
および《E》で規制される量)含有し、かつ純度が高く
(上記《C》で規制される)、しかも粒子形状が球状で
適度な粒度(上記《A》および《B》で規制される)を
有するものを使用すると、それを特定条件で焼成するだ
けで、微細孔が多数分布形成された状態の優れた分子ふ
るい炭素にしうることを見いだしこの発明に到達した。
つぎに、この発明について詳しく説明する。
従来より、フエノール・ホルムアルデヒド樹脂の代表
的なものとしてノボラツク樹脂とレゾール樹脂とが知ら
れている。ノボラツク樹脂は、通常、フエノール(A)
とホルムアルデヒド(B)のモル比(A)/(B)が例
えば1/0.7〜1/0.9となるようなフエノール過剰の状態に
おいて、例えばシユウ酸のような酸触媒の存在下(通常
0.2〜2%)でフエノールとホルマリンとを反応させる
ことによつて製造されている。このような方法で得られ
るノボラツク樹脂では、フエノール核がメチレン基によ
つて結合された3〜5量体が主成分をなしており、活性
に富んだメチロール基を殆ど含有しない。したがつて、
ノボラツク樹脂自体は自己架橋性を有せず、熱可塑性で
ある。このようなノボラツク樹脂は、例えばヘキサメチ
レンテトラミン(ヘキサミン)のようなそれ自体ホルム
アルデヒド発生剤であるとともに有機塩基(触媒)発生
剤でもある架橋剤と加熱下において反応させるか、また
は例えば固体酸触媒とパラホルムアルデヒド等と混合
し、加熱反応させることによつて硬化樹脂となる。レゾ
ール樹脂は、例えば、水酸化ナトリウム,アンモニウ
ム,有機アミンのような塩基性触媒(約0.2〜2%)の
存在下において、フエノール(A)対ホルムアルデヒド
(B)のモル比(A)/(B)を1〜1/2のようなホル
ムアルデヒド過剰の条件に設定し、反応させることによ
つて製造されている。こようにして得られるレゾール樹
脂は、比較的多量の活性メチロール基を有するフエノー
ルの1〜3量体が生成分をなしており、反応性が極めて
大であるために通常、固形分60%以下の、水またはメタ
ノール溶液として使用に供される。このレゾール樹脂
は、極めて反応性が高いために粒状または粉末状として
長期にわたつて安定な固形物にはできず、またその硬化
物は三次元構造が高度に進行しているために硬度が大き
く、これを微少な粉末状にすることは非常に困難であ
る。
これに対し、この発明に用いるフエノール樹脂粉末
は、特開昭57−177011号公報および特開昭58−111822号
公報で開示されているように、塩酸(HCl)濃度が5〜2
8%,ホルムアルデヒド(HCHO)濃度が3〜25%で、か
つ塩酸・ホルムアルデヒド浴に下記の式(I) で表される浴比が8以上となるように維持し、この塩酸
・ホルムアルデヒド浴にフエノール類を接触させる。そ
して、この接触をフエノール類がこの浴と接触した後白
濁を生成し、しかる後少なくともピンク色の球状の固形
分が形成されるように行うことによつて製造することが
できる。
この発明に用いるフエノール樹脂の原料となるフエノ
ール類としては、フエノールが最も好適であるが、少な
くとも80重量%(以下「%」と略す)、特に少なくとも
85%のフエノールを含有するものであればo−クレゾー
ル、m−クレゾール、p−クレゾール、ビス−フエノー
ルA、o−,m−またはp−C2〜C4アルキルフエノール、
p−フエニルフエノール、キシレノール、ハイドロキノ
ンまたはレゾルシン等の公知のフエノール誘導体の1種
またはそれ以上との混合物でよい。
この発明に用いるフエノール樹脂粉末の製法の特徴
は、塩酸濃度をかなり高濃度に設定し、しかもフエノー
ルに対してホルムアルデヒドが過剰になるように含有す
る塩酸・ホルムアルデヒド水溶液を、浴比が8以上、好
ましくは10以上という大きな比率でフエノールと接触さ
せることにある。このようなフエノール−ホルムアルデ
ヒドの反応条件は、前記公知のノボラツク樹脂およびレ
ゾール樹脂の反応条件とは根本的に異なつている。すな
わち、従来のノボラツク樹脂の製造と対比すると、酸触
媒を使用することは同じであるが、この発明の場合は、
酸触媒の濃度がノボラツク樹脂製造に比べてかなり高
く、かつホルムアルデヒド濃度もかなり高い。また従来
のレゾール樹脂の製造と対比すると、過剰のホルムアル
デヒドを使用する点では同じであるが、レゾール樹脂の
製造とは異なり酸触媒を使用している。このように、こ
の発明で用いるフエノール樹脂粉末は、従来のノボラツ
ク樹脂およびレゾール樹脂の製造とは根本的に異なつた
方法でつくられるものである。この発明は上記特殊な製
法で得られたフエノール樹脂粉末を用いるものであり、
これが最大の特徴である。
上記製法により製造されるフエノール樹脂粉末は、KB
r錠剤法による赤外線吸収スペクトルにおいてD
900〜1015/D1600=0.2〜0.9を示すと同時に、D890/D
1600=0.09〜1.0を示す。ここで、D900〜1015は900〜1
015cm-1の範囲内の最も大きな吸収強度を表しており、
これはメチロール基に帰属する吸収を示す。またD1600
は1600cm-1の吸収強度であつてベンゼン核に帰属する吸
収を示している。前記D900〜1015/D1600=0.2〜0.9と
いう値からメチロール基の含有量はかなり大きな範囲内
で調節し得ることがわかる。特に上記D900〜1015/D
1600=0.3〜7.0に設定することが好適であり、なかでも
0.4〜5.0という範囲内に設定することが最も好ましい。
また、D890は890cm-1の吸収強度であり、ベンゼン核の
孤立の水素原子に帰属する吸収を示している。そして、
D890/D1600=0.09〜1.0より、上記フエノール樹脂粉末
には孤立水素がかなり少ないことがわかる。
さらに、この発明のフエノール樹脂粉末は、一般に、
アセチル重量増加率が23〜80%という特性を有してい
る。ここでアセチル重量増加率とは、乾燥試料約10gを
精秤し(その精秤重量をAとする)、この精秤した試料
を無水酢酸78%,酢酸20%およびO−リン酸2%からな
るアセチル化浴約300g中に添加する。ついで室温から11
5℃まで45分間かけて昇温加熱し、さらに115℃で15分間
保持する。その後放冷し、ガラスフイルターで吸引濾過
しフイルター上で純水により充分に洗浄した後、少量の
冷メタノールで洗浄する。フイルター残留物を2時間70
℃で乾燥し、さらにデシケーター中において一昼夜放置
する。フイルター残留物の乾燥重量をBとしたとき、下
記の式で求められる。
上記アセチル重量増加率が23〜80%という特性は、フ
エノール樹脂粉末が上記アセチル重量増加率に対応する
メチロール基およびアセチル化可能なフェノール性水酸
基を含有している事実を示している。従来のフエノール
樹脂の硬化物が、三次元架橋密度が極めて大きいのに対
し、この発明に用いるフエノール樹脂粉末は架橋密度が
適度にコントロールされており、上記赤外線吸収スペク
トル計算式からも明らかなように、反応性を有するメチ
ロール基を適当量含有している。この反応性を有するメ
チロール基の含有量を正確に示す指標としては、メタノ
ール溶解度が用いられる。ここでメタノール溶解度は、
試料約100gを精秤し(その精秤重量をCとする)、100
%のメタノール約500ml中において30分間還流下に加熱
処理した後、ガラスフイルターで濾過し、さらにフイル
ター残試料をフイルター上で約100mlのメタノールで洗
浄する。ついでフイルター残試料を10℃の温度で2時間
乾燥し、その精秤重量をDとすると、下記の式で求めら
れるものである。
すなわち、架橋密度が低くメチロール基の含有量が大
きい場合にはメタノール溶解度が高い。逆に架橋密度が
高くなり、反応性メチロール基が減少していくとメタノ
ール溶解度は低下していく。この発明に用いるフエノー
ル樹脂粉末のメタノール溶解度は50%以下である。特に
1〜40%のものが好適であり、最も好ましいのは2〜35
%のものである。
この発明は、上記のようなフエノール樹脂粉末のう
ち、特に分子ふるい炭素自体の大きさを適正に揃えて分
子ふるい効果を充分発揮させる目的で、粒径1〜50ミク
ロンの球状一次粒子、またはそれと、その二次凝集物か
らなるものであつて、少なくとも全体の50%は100タイ
ラーメツシユ篩を通過しうる粒度のものを用いる。その
うえ、使用するフエノール樹脂粉末については、不純分
を含有すると、それが分子ふるい炭素の製造過程で悪影
響を及ぼす等のことから、液体クロマトグラフイーを用
いた測定による遊離フエノール含量が50ppm以下と規制
している。
この発明は、上記のような特殊なフエノール樹脂粉末
を、そのまま非酸化性雰囲気下において焼成するか、も
しくは特定の液状フエノール樹脂とともに造粒して粒状
成形体をつくり、これを非酸化性雰囲気下において焼成
するものである。
従来から、フエノール樹脂の非酸化性雰囲気下におけ
る熱分解については、数多くの報告書が提出されてい
る。この発明に用いるフエノール樹脂粉末の熱分解の挙
動に関する詳細は明らかではないが、本発明者らは、熱
分解発生ガスの分析および各温度における炭化物のIR分
析(赤外線吸収スペクトル分析)の結果下記のように推
定した。本発明者らの研究によれば、下記フエノール樹
脂粉末は、非酸化性雰囲気下における熱分解において、
メチロール基(−CH2OH,IR吸収ピーク:995cm-1),ジメ
チルエーテル結合(−CH2OCH2−,IR吸収ピーク:1050〜1
080cm-1),メチレン結合(−CH2−,IR吸収ピーク:890c
m-1),フエノール性水酸基 等の分解により熱分解ガスを発生する。これらのうち、
200〜500℃程度の比較的低温では、メチロール基,ジメ
チルエーテル結合およびフエノール性水酸基の分解によ
り、ホルマリン,水,一酸化炭素等の熱分解ガスが発生
する。それより高温の約400〜600℃の温度領域では、主
としてメチレン結合の分解による縮合が起こると考えら
れる。そして、炭化物の微細孔は、上記熱分解ガスの発
生により生成するものと考えられ、したがつて、炭化物
のミクロ孔構造の特性は、フエノール樹脂前駆体の架橋
密度とメチロール基の含有量により大きな影響をうける
ものと考えられる。
この発明は、架橋密度がコントロールされていてメタ
ノール溶解度が50%以下のフエノール樹脂粉末を使用す
るものである。メタノール溶解度が50%を超えていて架
橋密度が低く、したがつて、メチロール基の含有量が極
めて多いフエノール樹脂粉末を用いた場合には、微細孔
ではなく、径の大きい細孔が生成しやすく、その結果、
選択吸着性が低く、充分な分子ふるい硬化を発揮し得な
い分子ふるい炭素が生成するようになる。充分な分子ふ
るい効果を有する分子ふるい炭素を得るには、フエノー
ル樹脂粉末のメタノール溶解度は先に述べたように50%
以下でなければならない。さらに好ましくはメタノール
溶解度は1〜40%、最も好ましくは2〜35%である。
この発明においてはフエノール樹脂粉末をそのまま炭
化してもよいし、フエノール樹脂粉末の40%以下の液状
フエノール樹脂、例えばメタノール溶媒のレゾール樹
脂,ノボラツク樹脂あるいは水溶性レゾール樹脂等を加
えて混合した後、円柱状,球状等のペレツトに成形して
から炭化してもよい。成形体の大きさは特に制限するも
ではないが、例えば円柱では、直径0.5〜5mm,長さ1〜1
0mm程度、球状の場合には直径0.5〜10mm程度が好まし
い。
また、上記の成形にあたつては、成形性を向上させる
ため所定量の液状フエノール樹脂の他に有機高分子系バ
インダー,例えばポリビニルアルコール,メチルセルロ
ース,カルボキシメチルセルロース,澱粉等のフエノー
ル樹脂の特性を損なわない範囲で少量加えても差し支え
ない。なお、上記の成形の際の成形方法としては、湿式
での押出造粒法,半乾式でのデイスク・ペレツターによ
る造粒法,スプレードライ法等があげられるが、特に押
出造粒法は高強度で粒度の整つた粒子を製造することが
でき最も好ましい。
この発明におけるフエノール樹脂粉末またはその成形
体は、N2,Ar,He等の非酸化性雰囲気下において500〜100
0℃の温度領域で焼成するか、または焼成後、さらにH
2O,CO等の酸化性雰囲気下において500〜1000℃の温度領
域で炭化物の15%以内の重量減少となる範囲で賦活する
ことにより優れた分離性能を有する分子ふるい炭素が得
られる。焼成温度が500℃以下の場合には、炭化物の比
表面積が小さくて充分な吸着容量がなく、また1000℃以
上では細孔が収縮して比表面積,細孔面積が減少し、同
じく吸着容量が低下する。
非酸化性雰囲気下において焼成する場合の昇温速度と
しては、5〜300℃/hrが好適であり、さらに好ましくは
10〜180℃/hr、最も好ましくは15〜120℃/hrである。昇
温速度が小さ過ぎる場合には、気体分子の吸着に必要な
細孔が充分に発達せず、得られた炭化物のガス吸着容量
は極めて小さくなり、分子ふるい炭素としての実用性に
乏しい。また、昇温速度が大き過ぎる場合には、孔径の
大きな細孔が発達してガスの選択的吸着特性、すなわち
分子ふるい機能が著しく低下して好ましくない。
ところで、分子ふるい炭素における分子ふるい効果
は、ミクロ孔の細孔直径が吸着分子の分子径に極めて近
い数Åの領域となり、分子径の異なる種々の物質に対し
て選択的吸着特性を示すことによるものである。したが
つて、分子ふるい炭素の性能は、ミクロ孔の細孔径分布
により規定され、細孔直径が通常10Å以下、好ましくは
3〜5Å程度の範囲にシヤープな細孔径分布を有する炭
素が分子ふるい炭素として最も好ましい。また、細孔直
径15〜200Å程度の細孔は分子ふるい効果を有せず、共
存するガスや溶液中の異なる溶質を同時に吸着する。こ
のように、細孔直径15〜200Åの範囲の細孔量が少ない
ほど、分子ふるいの性能は優れたものとなる。
上記のような分子ふるいとしての優れた細孔構造を有
する分子ふるい炭素は、この発明における制御された炭
化もしくは賦活条件によりはじめて達成されるものであ
る。すなわち、この発明の炭化の際の炭化温度は500〜1
000℃、好ましくは600〜980℃、最も好ましくは650〜90
0℃であり、昇温速度は5〜300℃/hr、好ましくは10〜1
80℃/hr、最も好ましくは15〜120℃/hrである。この条
件で炭化するか、または炭化後、さらに炭化物の15%以
内の重量減少となる範囲で賦割することにより得られる
分子ふるい炭素は、細孔直径10Å以下、好ましくは3〜
5Åの領域にミクロ孔の細孔径分布の極大値を有し、細
孔直径15〜200Åの細孔容積は0.1cm3/g以下、好ましく
は0.07cm3/g、最も好ましくは0.05cm3/g以下であり、優
れた分子ふるい効果を有している。
上記細孔構造を有する分子ふるい炭素の比表面積は、
N2吸着によるB.E.T.法により測定した結果、通常100〜6
00m2/g、好ましくは100〜400m2/g、最も好ましくは100
〜350m2/g程度であり、通常の樹脂微粉末を炭化して得
られる炭化物が比表面積50m2/g以下で、ミクロ孔が殆ど
発達せず、分子ふるい機能はもちろん、吸着機能を殆ど
有していないのと全く異なるものである。また、通常用
いられている比表面積1000〜1500m2/gの活性炭は、ミク
ロ孔の細孔径分布の極大値は、細孔直径15Å程度以上の
領域にあり、細孔直径15〜200Åの範囲の細孔容積は0.1
5〜0.25g/cm3程度であり、この発明の分子ふるい炭素の
ような分子ふるい特性を有していない。
〔発明の効果〕
以上のように、この発明は、特殊な製法によつて得ら
れる特殊なフエノール樹脂粉末を原料とし、それを特定
条件下で単に焼成するだけで分子ふるい炭素を製造する
ため、分子ふるい炭素の製造が簡単である。しかも得ら
れる分子ふるい炭素は、優れた吸着容量と選択的吸着特
性を有し、下記に示す混合ガスの分離に良好な成績を示
す。パラフイン異性体,キシレン異性体,ブタン異性
体,ブテン異性体等の炭化水素異性体の分離、エチレン
とプロピレンの分離、あるいは空気中の窒素と酸素の分
離等である。また、水素と一酸化炭素の分離精製、アル
ゴンガスの回収等の用途にも適用できる。
特に、粒径1〜10mm程度の分子ふるい炭素成形体は、
圧力スイング吸着法による空気中の窒素と酸素の分離、
スチームリフオーマー,エチレン・オフガス、メタノー
ル分解ガス,アンモニア分解ガス,コークス炉排ガス等
よりの水素の回収、転炉排ガスよりの一酸化炭素の回収
等に好結果をもたらす。
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
〔実施例1〕 40の反応容器に、塩酸18%およびホルムアルデヒド
9%からなる混合水溶液30kgを入れ、温度を20℃とし
た。つぎに、この反応容器に、濃度98%(2%は水)の
フエノールと水とを用いて調製した濃度90%のフエノー
ル水溶液(20℃)を1.2kgを添加した。添加後30〜40秒
間攪拌し、反応容器内の内容物が急激に白濁すると同時
に攪拌を中止し静置した。静置後、内温が徐々に上昇
し、内容物は次第に淡いピンクに変色し、白濁してから
30分後にはいずれもスラリー状あるいは樹脂状生成物が
みられた。上記反応を6バツチについて繰り返し行い、
このうち第1バツチ(参考例)を除く残り5バツチにつ
いては、上記工程の後、引き続いて内容物を75〜76℃で
30分間昇温させ、この温度で攪拌しながら第1表に示す
所定時間保持した。つぎに、この内容物を水洗した後、
濃度0.1%のアンモニア水溶液中で、50℃においては6
時間中和処理し、ついで水洗濾過し80℃において6時間
乾燥した。その結果、目的とする粒子形状が球状のフエ
ノール樹脂粉末を得た。このフエノール樹脂粉末のメタ
ノール溶解度を前記試験法に従つて測定した。
つぎに、上記方法により作製した各バツチのフエノー
ル樹脂粉末500gを取り、内径60φ×1000mmLの電気炉内
に入れ、窒素雰囲気下において30℃/hrで昇温し、850℃
で1時間保持した後炉冷し、粒子形状が球状の炭素微粉
末を得た。
この炭素微粉末の分子ふるい特性を評価するため、第
1図に示す吸着特性測定装置により窒素ガスおよび酸素
ガスの吸着量を測定した。図において、試料室4(226.
9ml)に約13gの試料を入れ、バルブ11,8を閉じ、バルブ
2,3を開けて30分間脱気した後バルブ2,3を閉じバルブ11
を開け、調整室5(231.7ml)内に酸素ガスまたは窒素
ガスを送り込み、設定圧(6.88kg/cm2)になつたところ
でバルブ11を閉じ、バルブ3を開け所定時間における内
部圧力の変化を測定して、酸素および窒素の各々の吸着
速度を求めた。なお、1は真空ポンプ、6,7は圧力セン
サー、9は記録計、10は圧力計、14,15はガスレギユレ
ーター,16は窒素ボンベ、17は酸素ボンベである。窒素
と酸素の分離性能を示す指標として吸着開始1分後の吸
着容量を窒素分はQ1,酸素分はQ2とし、吸着量差ΔQを
下記の式(II) ΔQ=Q2−Q1 ……(II) により、また窒素吸着圧力をP1,酸素吸着圧力をP2とし
て選択係数αを下記の式(III) より求めた。
以上の実施例1の結果を第1表に示す。
第1表に示すように、メタノール溶解度50%以下の試
料を原料とした場合において、良好な分離性能を有する
モレキユラーシービングカーボン(以下「MSC」と略
す)の球状微粉末が得られた。なお、参考例は原料とな
るフエノール樹脂の架橋度合が低く、したがつて、メタ
ノール溶解度がこの発明外となつているため、性能が大
幅に劣つている。
〔実施例2〕 実施例1の試料4と同様にして製造したメタノール溶
解度2.4%,平均粒子径28μmのフエノール樹脂粉末7.5
kgと水溶性レゾール樹脂(昭和高分子社製,シヨウノー
ル,BRL−2854,固形分濃度60%)2.5kgをニーダーで15分
間混合した後、湿式の二軸押出造粒機により3φ×4〜
6mmφのペレツトを成形した。
このペレツトを80℃で24時間硬化および乾燥した後、
内径10φ×1000mmLのロータリーキルンに入れ、10/mi
nの窒素気流下において昇温速度60℃/hrで昇温させ、各
炭化温度において1時間保持し炭化物を得た。得られた
炭化物の窒素と酸素の分離性能を実施例1と同様にして
調べた。
〔比較例(実施例2との対比)〕 平均粒径約10μmのレゾールタイプのフエノール樹脂
粉末(昭和高分子社製,BRP−408A)各500gを内径10φ×
1000mmLのロータリーキルンに入れ、10/minの窒素気
流中で昇温速度60℃/hrで昇温し、それぞれ750℃および
850℃で1時間保持し炭化物を得た。
取り出し後の上記炭化物はいずれも塊状となり、炭化
時に融着して初期の粉体形状を保持し得ないことが判明
した。上記塊状物を粉砕するには、非常に労力を要する
が、吸着特性評価のためにハンマーおよびボールミルで
粉末し、篩分けることにより200メツシユパスの粉末を
少量得た。
つぎに、上記粉末13gを用い、実施例1と同様に第1
図に示す酸素/窒素吸着特性測定装置により窒素および
酸素ガスの吸着量を測定した。以上の結果を第2表に示
す。
第2表から明らかなように、比較例品は酸素および窒
素の吸着容量が小さく、かつ吸着量差,選択係数とも低
く、分子ふるい炭素として実用に供し得ないものである
に対し実施例品はいずれも優れていることがわかる。
なお、実施例2の試料3を用い、圧力スイング吸着
(PSA)法により空気中から高濃度窒素を得る実験を行
つた。この実験は、内径40φ×1000mmLの吸着塔2本を
結合した2塔式PSA装置に上記試料を充填し(充填密度
0.63g/cm3),吸着圧力7.0kgG/cm2で,常圧再生法によ
り1サイクルを3分で操作した。この結果、吸着時の塔
内ガス流速を5cm/secとした場合、99.9%の窒素(窒素
+アルゴンの濃度)が得られた。
〔実施例3〕 実施例1と同様にして製造した、メタノール溶解度4
%,平均粒子径27μmのフエノール樹脂粉末7.0kgとメ
タノールを溶媒とするレゾール樹脂(昭和高分子社製,B
RS−330,固形分量60%)3.0kgをニーダーで混合した
後、押出造粒機により2φ×3〜6mmLのペレツトを成形
した。
このペレツトを内径300×300×650mmの電気炉に入
れ、窒素気流下(10/min)において20℃/hrで800℃ま
で昇温し1時間保持して炭化した後、さらに20分間70℃
温水中を通した窒素ガスを10/minの流量で送付するこ
とにより賦割した。この賦活による重量減少は炭化のみ
で得られる炭化物重量の3.2%であつた。
つぎに、上記試料を用い、20℃におけるブタン異性体
(n−ブタン,最小分子直径4.3Å,純度99.8%、i−
ブタン,最小分子直径5.0Å,純度99.0%)の吸着分離
実験を行つた。この吸着分離実験は、流通式吸着装置の
吸着塔(内径20φ×500mmL)に200mmLの長さで試料を充
填し(充填密度0.65g/cm3)、Heガスをキヤリヤーガス
として、n−ブタン5vol%,iso−ブタン5vol%よりなる
混合ガスを100cc/minの流速で流し、吸着塔出口ガスの
濃度の経時変化を測定することにより行つた。そして、
入口ガス濃度Coに対する出口ガス濃度Cの比C/Coを求め
破過曲線を作成した。ブタン異性体の濃度測定には、ガ
スクロマトグラフ(FDI検出器,カラム:シマライト−
スクアラン25%)を使用した。
第2図に2成分分離実験の結果を示す。第2図の曲線
Aはi−ブタン,曲線Bはn−ブタンのそれを表す。
第2図からわかるように、MSC球状微粉末によりi−
ブタンとn−ブタンを完全に吸着分離することができ
た。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施例1に用いる吸着特性測定装置図、第2図
は実施例4における2成分分離実験の結果を示す図であ
る。 1……真空ポンプ、2,3,8,11,12,13……バルブ、4……
試料室、5……調整室、6,7……圧力センサー、9……
記録計、10……圧力計、14,15……ガスレギユレータ
ー、16……窒素ボンベ、17……酸素ボンベ

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の(A)〜(E)による条件を備えた
    粒子形状が球形のフエノール樹脂粉末を準備し、このフ
    エノール樹脂粉末をその40重量%以下の固形分含有量の
    液状フエノール樹脂とともに造粒して粒状成形体をつく
    り、この粒状成形体または上記フエノール樹脂粉末を非
    酸化性雰囲気下において500〜1000℃の温度領域で焼成
    することを特徴とする分子ふるい炭素の製造法。 (A)粒径1〜150ミクロンのフエノール樹脂の球状一
    次粒子またはそれとその二次凝集物からなること。 (B)少なくとも全体の50重量%は100タイラーメツシ
    ユ篩を通過し得る大きさであること。 (C)液状クロマトグラフイーを用いた測定による遊離
    フエノール含有量が50ppm以下であること。 (D)KBr錠剤法による赤外線吸収スペクトルにおいて1
    600cm-1(ベンゼンに帰属する吸収ピーク)の吸収強度
    をD1600,900〜1015cm-1(メチロール基に帰属する吸収
    ピーク)の範囲の最も大きな吸収強度をD900〜1015,89
    0cm-1(ベンゼン核の孤立の水素原子の吸収ピーク)の
    吸収強度をD890で表わした場合に下記の式を満足させる
    こと。 D900〜1015/D1600=0.2〜9.0 D890/D1600=0.09〜1.0 (E)メタノール溶解度が50重量%以下であること。
  2. 【請求項2】焼成に引き続き、酸化性雰囲気下において
    500〜1000℃の温度領域で炭化物の15重量%以内の重量
    減少となる範囲で賦活を行う特許請求の範囲第1項記載
    の分子ふるい炭素の製造法。
  3. 【請求項3】フエノール樹脂粉末のメタノール溶解度が
    1〜40重量%である特許請求の範囲第1項または第2項
    記載の分子ふるい炭素の製造法。
  4. 【請求項4】フエノール樹脂粉末を液状フエノール樹脂
    により造粒する方法が、押出し造粒法である特許請求の
    範囲第1項または第2項記載の分子ふるい炭素の製造
    法。
  5. 【請求項5】フエノール樹脂粉末または粒状成形体を昇
    温速度5〜300℃/hrで所定温度まで昇温し炭化する特許
    請求の範囲第1項または第2項記載の分子ふるい炭素の
    製造法。
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