JP2024066870A - ポリイミド積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】レーザー加工後のデスミア処理時において、ビア内壁のクラック、とくにポリイミド積層体の界面で発生するクラックを抑制できるポリイミド積層体を提供することを目的とする。【解決手段】非熱可塑性ポリイミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を有するポリイミド積層体であって、前記非熱可塑性ポリイミドフィルムの引張り弾性率が5.0GPa以上12.0GPa未満であり、ガラス転移温度が270℃以上370℃未満であり、線膨張係数が7~16ppm/℃であり、前記非熱可塑性ポリイミドフィルムと前記熱可塑性ポリイミドフィルムのガラス転移温度差が30℃以下であり、デスミア処理前後の熱可塑性ポリイミドフィルムの引張破断伸び保持率が50%以上であることを特徴とするポリイミドフィルム積層体により、上記課題を解決できる。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリイミド積層体に関する。
近年、スマートフォン、タブレットパソコン、ノートパソコン等を中心としたエレクトロニクス製品の需要拡大に伴い、フレキシブルプリント配線板(以下、「FPC」と記載することがある)の需要が伸びている。電子機器の軽量化、小型化、薄膜化が進んでおり、FPC配線の微細化の要求は強い。
微細両面FPCや多層FPCを作製する際には、ポリイミドフィルムの両面に銅箔等の金属箔を貼り合わせた金属張積層板を材料として使用するのが一般的である。FPC製造では最初に層間の導通を行うための穴(以下、「ビア」と記載することがある)を開ける工程がある。ビアの内壁にめっきを施すことで配線板の両面を導通させることができる。ビア形成工程には、ドリルやレーザーで両面の金属箔及び絶縁層(ポリイミド層)に貫通孔を開けるスルーホール法と、一方の面の金属箔及び絶縁層をレーザー等で切削して、もう一方の面の金属箔を残すブラインドビア法があるが、とくに微細FPCでは面積を有効に使用するために、ブラインドビア法が高頻度に用いられる。
従来、このようなビア形成工程では、穴あけ後に穴の内部や金属箔表面を清浄化したり樹脂の残渣を除去したりするために、加熱下においてアルカリ性過マンガン酸カリウム水溶液等で積層板を処理する湿式デスミア処理が行われる。ポリイミドは、アルカリ条件下で加水分解しやすく、レーザー加工した場合には局所的な加熱を受けることにより残留応力が発生し、ビア形成工程後のデスミア処理ではビア内壁にクラック等の欠陥が生じやすい。特許文献1には、レーザー加工とデスミア処理の間に熱処理工程を追加して、レーザー加工で生じた残留応力を除去し、欠陥の発生を抑制する方法が記載されている。特許文献2には、現像工程、エッチング処理工程及びレジスト剥離工程で使用するアルカリ溶液に対する耐性を有するポリイミドが開示されている。
特開2012-186377号公報 特開2017-179148号公報
レーザー加工後のデスミア処理によりビア内壁に発生するクラックは、めっき処理後の工程において、めっき部分を変形させ、接続信頼性を低下させる原因となったり、クラック内に薬液が侵入することで絶縁信頼性を低下させる原因になったりするため、品質に悪影響を与えるものであった。
クラックの発生を抑制するための方法として、特許文献1に開示されたような、レーザー加工とデスミア処理の間に熱処理工程を追加する方法を採用すると、別途熱処理工程が増えるため、配線板の生産性の低下をもたらす。また、特許文献1に記載の方法は、ビア内壁のクラックの発生を抑制することについて改善の余地が残されている。
特許文献2に記載の方法は、アルカリ環境下でのフィルムの裂けを抑制することは可能であるが、ビア内壁のクラックの発生を抑制することについて改善の余地が残されている。本発明はこれらの課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、レーザー加工後のデスミア処理時において、ビア内壁のクラック、とくにポリイミド積層体の界面で発生するクラックを抑制できるポリイミド積層体を提供することにある。
本発明者らは、前述の課題解決のために鋭意検討を行なった結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記[1]~[4]に関する。
[1].非熱可塑性ポリイミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を有するポリイミド積層体であって、前記非熱可塑性ポリイミドフィルムの引張り弾性率が5.0GPa以上12.0GPa未満であり、ガラス転移温度が270℃以上370℃未満であり、線膨張係数が7~16ppm/℃であり、前記非熱可塑性ポリイミドフィルムと前記熱可塑性ポリイミドフィルムのガラス転移温度差が30℃以下であり、デスミア処理前後の熱可塑性ポリイミドフィルムの引張破断伸び保持率が50%以上であることを特徴とするポリイミドフィルム積層体。
[2].前記非熱可塑性ポリイミドフィルムのデスミア液処理前後の引張破断伸び保持率が50%以上である、[1]に記載のポリイミドフィルム積層体。
[3]. 前記非熱可塑性ポリイミドフィルムの線膨張係数が9~12ppm/℃である、[1]または[2]のいずれかに記載のポリイミドフィルム積層体。
[4].前記非熱可塑性ポリイミドフィルムの製造に使用される芳香族ジアミンが4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニルを含み、前記非熱可塑性ポリイミド樹脂層の製造に使用される芳香族テトラカルボン酸二無水物が、3,3‘,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物および/または3,3‘,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含むことを特徴とした[1]~[3]のいずれかに記載のポリイミドフィルム積層体。
本発明に係るポリイミド積層体によれば、配線板の製造工程において工数を増やすことなく、レーザー加工後のデスミア処理時においてビア内壁のクラック、とくにポリイミド積層体の界面で発生するクラックを抑制できる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
本発明の積層体は、非熱可塑性ポリイミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を有するポリイミド積層体であって、前記非熱可塑性ポリイミドフィルムの引張り弾性率が5.0GPa以上12.0GPa未満であり、ガラス転移温度が270℃以上370℃未満であり、線膨張係数が7~16ppm/℃であり、前記非熱可塑性ポリイミドと前記熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度差が30℃以下であり、デスミア処理前後の熱可塑性ポリイミドフィルムの引張破断伸び保持率が50%以上であることを特徴とするポリイミド積層体である。
レーザー加工後のデスミア処理によりビア内壁に発生するクラック、とくにポリイミド積層体の界面に発生するクラックを抑制するためには、レーザー加工時にポリイミド積層体に生じる歪応力を低減することが重要である。一般的に、金属板や樹脂フィルムといった基材に接着剤を塗り、加熱・冷却して基材に接着させる際に発生する歪応力は「歪応力=温度変化×線膨張係数の差×塗膜の弾性率」で見積もることができる。ポリイミド積層体のレーザー加工では、温度変化をガラス転移温度と室温の差と考えることができる。本発明は、熱可塑性ポリイミドと非熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度差に着目し、発生する歪応力を低減することで、ビア内壁のクラック、とくにポリイミド積層体の界面で発生するクラックを抑制できることを見出した。熱可塑性ポリイミドフィルムと非熱可塑性ポリイミドフィルムのガラス転移温度差が30℃以下になると、クラック発生率が40%以下となり、効果が発現していると言える。
ガラス転移温度の確認方法としては、動的粘弾性測定に基づく損失係数(以下、tanδともいう)と温度との関係に着目することが挙げられる。損失係数は、動的粘弾性測定により得られる貯蔵弾性率と損失弾性率の比(損失弾性率/貯蔵弾性率)である。具体的には、印加応力の周波数と昇温速度とを規定して樹脂サンプルの動的粘弾性測定を行い、温度に対してtanδの値をプロットする。ガラス転移が発生するとtanδは上昇し極大値を示す。とくに貯蔵弾性率が急激に低下する温度付近でのtanδ極大値ををガラス転移温度とした。
本発明における非熱可塑性ポリイミドフィルムのガラス転移温度が、270℃以上370℃未満である。この理由は、270℃よりも低い場合、ポリイミド積層体製造の焼成過程において、ポリイミドフィルムの自己支持性が低いためにフィルム垂れなどが起こり、製造工程におけるハンドリング上、好ましくない。また、非熱可塑性ポリイミドフィルムと熱可塑性ポリイミドフィルムのガラス転移温度差の観点から、370℃より高温では、熱可塑性ポリイミドフィルムのガラス転移温度は340℃以上となり、FCCL製造工程における銅箔積層過程において、熱可塑性ポリイミドフィルムが十分な接着性を発揮するために高温条件が必要となるため、FCCL製造工程におけるハンドリング上、好ましくない。したがって、非熱可塑性ポリイミドフィルムのガラス転移温度範囲は270℃以上370℃未満とする。
レーザー加工した場合には局所的な加熱を受けることにより残留応力が発生しているため、デスミア処理にてフィルム強度が著しく低下した箇所からクラックが発生する。レーザー加工後のデスミア処理によりビア内壁に発生するクラック、とくにポリイミド積層体の界面に発生するクラックを抑制するためには、アルカリ溶液を使用するデスミア処理工程において、フィルム強度が著しく低下しないことが重要となる。したがって、本発明における非熱可塑性ポリイミドフィルムと熱可塑性ポリイミドフィルムのデスミア処理前後の引張破断伸び保持率が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。
ポリイミドフィルムの両面に銅箔等の金属箔を貼り合わせた金属張積層板として使用するためには、寸法安定性の観点が重要となる。寸法安定性は金属箔とポリイミドフィルムの線膨張係数の値を近づけることにより高い安定性を得ることができる。フレキシブルプリント基板では、一般的に金属箔として銅箔が使用されることから、銅箔の線膨張係数にポリイミドフィルムの線膨張係数を近づけることが重要となる。
非熱可塑性ポリイミド層の線膨張係数は、7.0ppm/K以上16.0ppm/K以下であり、好ましくは8.0ppm/K以上15.0ppm/K以下であり、より好ましくは9.0ppm/K以上12.0ppm/K以下である。非熱可塑性ポリイミド層の線膨張係数が5.0ppm/K以上19.0ppm/K以下であれば、ポリイミド積層体の線膨張係数を、例えば、銅箔に近い14.0ppm/K以上22.0ppm/K以下に、望ましくは、より銅箔に近い16.0ppm/K以上20.0ppm/K以下に調整可能である。
また、引張り弾性率と線膨張係数には相関があり、非熱可塑性ポリイミドの線膨張係数を上記範囲内にするためには、非熱可塑性ポリイミド層の引張り弾性率5.0GPa以上12.0GPa未満であり、好ましくは、5.5GPa以上11.5GPa以下、さらに好ましくは6.0GPa以上11.0GPa以下であることが好ましい。上記線膨張係数の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はそれに準ずる方法である。
[ポリイミド積層体]
本実施形態に係るポリイミド積層体は、非熱可塑性ポリイミド層と、非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも片面(一方の主面)に配置された熱可塑性ポリイミド層とを有する。非熱可塑性ポリイミド層に含まれる非熱可塑性ポリイミドと熱可塑性ポリイミド層に含まれる熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物残基及びジアミン残基を有する。
以下、テトラカルボン酸二無水物を「酸二無水物」と記載することがある。非熱可塑性ポリイミド層に含まれる非熱可塑性ポリイミドを、単に「非熱可塑性ポリイミド」と記載することがある。熱可塑性ポリイミド層に含まれる熱可塑性ポリイミドを、単に「熱可塑性ポリイミド」と記載することがある。
<非熱可塑性ポリイミド>
本発明の非熱可塑性ポリイミド樹脂層の製造方法の一例について詳述する。本発明に用いられるポリイミドの前駆体であるポリアミック酸(以下、ポリアミド酸ともいう)は、少なくとも1種のジアミンと少なくとも1種の酸二無水物を有機溶媒中で実質的に略等モルになるように混合、反応することにより得られる。
非熱可塑性ポリイミドとは、フィルムの状態で金属製の固定枠に固定して加熱温度450℃の条件で2分間加熱した際に、シワが入ったり伸びたりせず、フィルム形状(平坦な膜形状)を保持しているポリイミドをいう。
本発明のポリアミック酸に使用されるジアミンについては特に限定されるものではないが、2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、パラフェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ヒドロキシビフェニル、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンなどが挙げられる。
その中でも、ビフェニル骨格を有するジアミン残基(ビフェニル骨格を有するジアミン由来の残基)を含むことが望ましく、ビフェニル骨格を有するジアミン残基の含有率は、非熱可塑性ポリイミドを構成する全ジアミン残基に対して、20モル%以上であることが好ましく、20モル%~60モル%の範囲で用いることが好ましい。特に、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニルを使用することが好ましい。
酸二無水物についても特に限定されるものではないが、酸二無水物(モノマー)の具体例としては、ピロメリット酸二無水物(以下、「PMDA」と記載することがある)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、「BPDA」と記載することがある)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(以下、「BTDA」と記載することがある)、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物(以下、「ODPA」と記載することがある)、3,4’-オキシジフタル酸無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
テトラカルボン酸二無水物残基は、3,3‘,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物および/または3,3‘,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含むことが望ましく、それらの含有率は、非熱可塑性ポリイミドを構成する全酸二無水物残基に対して、40モル%以上であることが好ましく、100モル%でも構わない。
<熱可塑性ポリイミド>
熱可塑性ポリイミド層に含まれる熱可塑性ポリイミドは、酸無水物残基とジアミン残基とを有する。熱可塑性ポリイミド中の酸二無水物残基を形成するための酸二無水物(モノマー)としては、上述した非熱可塑性ポリイミド中の酸二無水物残基を形成するための酸二無水物(モノマー)と同じ化合物が挙げられる。熱可塑性ポリイミドが有する酸二無水物残基と、非熱可塑性ポリイミドが有する酸二無水物残基とは、同種であっても互いに異なる種類であってもよい。
熱可塑性ポリイミドとは、フィルムの状態で金属製の固定枠に固定して加熱温度450℃の条件で2分間加熱した際に、シワが入ったり伸びたりせず、フィルム形状を保持していないポリイミドをいう。
熱可塑性を確保するためには、熱可塑性ポリイミドが有するジアミン残基としては、屈曲構造を有するジアミン残基が好ましい。熱可塑性をより容易に確保するためには、屈曲構造を有するジアミン残基の含有率は、熱可塑性ポリイミドを構成する全ジアミン残基に対して、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることが更に好ましく、100モル%でも構わない。屈曲構造を有するジアミン残基を形成するためのジアミン(モノマー)としては、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下、「BAPP」と記載することがある)等が挙げられる。熱可塑性をより容易に確保するためには、熱可塑性ポリイミドが有するジアミン残基としては、BAPP残基が好ましい。
金属箔との密着性に優れる熱可塑性ポリイミド層を得るためには、熱可塑性ポリ イミドが、BPDA残基及びPMDA残基からなる群より選ばれる一種以上と、BAPP残基とを有することが好ましい。
熱可塑性ポリイミド層には、熱可塑性ポリイミド以外の成分(添加剤)が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、シリコーン、フィラー、増感剤等を用いることができる。熱可塑性ポリイミド層中の熱可塑性ポリイミドの含有率は、熱可塑性ポリイミド層全量に対して、例えば70重量%以上であり、80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、100重量%であってもよい。
[ポリイミドフィルム積層体の製造方法及び金属張積層板の製造方法]
次に、本実施形態に係る複層ポリイミドフィルムの製造方法の一例、及び本実施形態に係る複層ポリイミドフィルムを用いて金属張積層板を製造する方法の一例について説明する。
<ポリイミドフィルム積層体の製造方法>
(ポリアミド酸の製造方法)
リイミドの前駆体であるポリアミド酸の製造方法(合成方法)としては、あらゆる公知の方法及びそれらを組み合わせた方法を用いることができる。ポリアミド酸の製造における重合方法の特徴は、そのモノマーの添加順序にあり、このモノマーの添加順序を制御することにより得られるポリイミドの諸物性を制御することができる。ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを用いてポリアミド酸を合成する場合、各ジアミンの物質量と、テトラカルボン酸二無水物の物質量(テトラカルボン酸二無水物を複数種使用する場合は、各テトラカルボン酸二無水物の物質量)とを調整することで、所望のポリアミド酸(ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との重合体)を得ることができる。ポリアミド酸から形成されるポリイミド中の各残基の物質量比(モル比)は、例えば、ポリアミド酸の合成に使用する各モノマー(ジアミン及びテトラカルボン酸二無水物)の物質量比と一致する。ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との反応、即ち、ポリアミド酸の合成反応の温度条件は、特に限定されないが、例えば20℃以上150℃以下の範囲である。ポリアミド酸の合成反応の反応時間は、例えば10分以上30時間以下の範囲である。本実施形態においてポリアミド酸の製造には、いかなるモノマーの添加方法を用いてもよい。代表的なポリアミド酸の製造方法として以下のような方法が挙げられる。
ポリアミド酸の製造方法として、例えば、下記の工程(A-a)と工程(A-b)とにより重合する方法(以下、「A重合方法」と記載することがある)が挙げられる。
(A-a):芳香族ジアミンと、芳香族酸二無水物とを、芳香族ジアミンが過剰の状態で有機溶媒中において反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る工程
(A-b):工程(A-a)で用いたものとは構造の異なる芳香族ジアミンを追加添加し、更に工程(A-a)で用いたものとは構造の異なる芳香族酸二無水物を、全工程における芳香族ジアミンと芳香族酸二無水物とが実質的に等モルとなるように添加して重合する工程
また、ポリアミド酸の製造方法として、下記の工程(B-a)と工程(B-b)とにより重合する方法(以下、「B重合方法」と記載することがある)も挙げられる。
(B-a):芳香族ジアミンと、芳香族酸二無水物とを、芳香族酸二無水物が過剰の状態で有機溶媒中において反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る工程
(B-b):工程(B-a)で用いたものとは構造の異なる芳香族酸二無水物を追加添加し、更に工程(B-a)で用いたものとは構造の異なる芳香族ジアミンを、全工程における芳香族ジアミンと芳香族酸二無水物とが実質的に等モルとなるように添加して重合する工程
任意若しくは特定のジアミン、又は任意若しくは特定の酸二無水物に、特定のジアミン又は特定の酸二無水物が選択的に反応するように添加順序を設定する合成方法(例えば、上述したA重合方法、B重合方法等)を、本明細書ではシーケンス重合と記載する。シーケンス重合により得られた重合体のうち、2種類のセグメントを有する重合体をジブロック共重合体、3種類のセグメントを有する重合体をトリブロック共重合体という。これに対し、ジアミン及び酸二無水物の添加順序を設定しない重合方法(モノマー同士が任意に反応する重合方法)を、本明細書ではランダム重合と記載する。ランダム重合により得られた重合体をランダム共重合体という。
本実施形態において、フレキシブル金属張積層板の特性を維持しつつ、フィルムの裂けの抑制に有効なポリイミドを得るための重合方法としては、シーケンス重合が好ましい。
上述した重合方法により得られるポリアミド酸の重量平均分子量は、10,000以上1,000,000以下の範囲であることが好ましく、20,000以上500,000以下の範囲であることがより好ましく、30,000以上200,000以下の範囲であることが更に好ましい。重量平均分子量が10,000以上であれば、ポリアミド酸を塗布膜とすることが容易となる。一方、重量平均分子量が1,000,000以下であると、溶媒に対して十分な溶解性を示すため、後述するポリアミド酸溶液を用いて表面が平滑で厚みが均一な塗布膜が得られる。ここで用いている重量平均分子量とは、ゲルパーミレーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定したポリエチレンオキシド換算値のことをいう。
ポリイミドを得る際、ポリアミド酸と有機溶媒とを含むポリアミド酸溶液からポリイミドを得る方法を採用してもよい。ポリアミド酸溶液に使用可能な有機溶媒としては、例えば、テトラメチル尿素、N,N-ジメチルエチルウレアのようなウレア系溶媒;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド系溶媒;ジフェニルスルホン、テトラメチルスルホンのようなスルホン系溶媒;N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と記載することがある)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒;クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化アルキル系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;フェノール、クレゾール等のフェノール系溶媒;シクロペンタノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、p-クレゾールメチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられる。通常これらの溶媒を単独で用いるが、必要に応じて2種以上を適宜組合わせて用いてもよい。上述した重合方法でポリアミド酸を得た場合、反応溶液(反応後の溶液)自体を、ポリイミドを得るためのポリアミド酸溶液としてもよい。この場合、ポリアミド酸溶液中の有機溶媒は、上記重合方法において反応に使用した有機溶媒である。また、反応溶液から溶媒を除去して得られた固体のポリアミド酸を、有機溶媒に溶解してポリアミド酸溶液を調製してもよい。
ポリアミド酸溶液には、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、シリコーン、増感剤等の添加剤が添加されていてもよい。また、摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性、ループスティフネス等のフィルムの諸特性を改善する目的で、ポリアミド酸溶液にフィラーを添加することもできる。フィラーとしては、いかなるものを用いてもよいが、好ましい例としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母等からなるフィラーが挙げられる。
ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸の濃度は、特に限定されず、ポリアミド酸溶液全量に対して、例えば5重量%以上35重量%以下であり、好ましくは8重量%以上30重量%以下である。ポリアミド酸の濃度が5重量%以上35重量%以下である場合、適当な分子量と溶液粘度が得られる。
(非熱可塑性ポリイミド層の形成方法)
非熱可塑性ポリイミド層の形成方法としては、特に制限されず、種々の公知の方法を適用でき、例えば、以下の工程i)~iv)を経て非熱可塑性ポリイミド層(ポリイミドフィルム)を形成する方法が挙げられる。
工程i):有機溶媒中で芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応させて、非熱可塑性ポリイミドの前駆体を含むポリアミド酸溶液(以下、「非熱可塑性ポリアミド酸溶液」と記載することがある)を得る工程
工程ii):上記非熱可塑性ポリアミド酸溶液を含むドープ液を支持体上に塗布して、塗布膜を形成する工程
工程iii):上記塗布膜を支持体上で加熱して自己支持性を持つポリアミド酸フィルム(以下、「ゲルフィルム」と記載することがある)とした後、支持体からゲルフィルムを引き剥がす工程
工程iv)上記ゲルフィルムを加熱して、ゲルフィルム中のポリアミド酸をイミド化し、かつ乾燥させて、非熱可塑性ポリイミドを含むポリイミドフィルム(複層ポリイミドフィルム中の非熱可塑性ポリイミド層となるポリイミドフィルム)を得る工程
工程ii)において、支持体上にドープ液を塗布する方法については、特に限定されず、ダイコーター、コンマコーター(登録商標)、リバースコーター、ナイフコーター等の従来公知の塗布装置を用いる方法を採用できる。
工程ii)以降の工程においては、熱イミド化法と化学イミド化法に大別される。熱イミド化法は、脱水閉環剤等を使用せず、ポリアミド酸溶液をドープ液として支持体上に塗布し、加熱してイミド化を進める方法である。一方の化学イミド化法は、ポリアミド酸溶液に、イミド化促進剤として脱水閉環剤及び触媒の少なくとも一方を添加したものをドープ液として使用し、イミド化を促進する方法である。どちらの方法を用いても構わないが、化学イミド化法の方が生産性に優れる。
脱水閉環剤としては、無水酢酸に代表される酸無水物が好適に用いられる。触媒としては、脂肪族第三級アミン、芳香族第三級アミン、複素環式第三級アミン等の三級アミンが好適に用いられる。
工程ii)においてドープ液を塗布する支持体としては、ガラス板、アルミ箔、エンドレスステンレスベルト、ステンレスドラム等が好適に用いられる。工程iii)では、最終的に得られるフィルムの厚み、生産速度に応じて加熱条件を設定し、部分的にイミド化又は乾燥の少なくとも一方を行った後、支持体から剥離してポリアミド酸フィルム(ゲルフィルム)を得る。
次いで、工程iv)において、上記ゲルフィルムの端部を固定して硬化時の収縮を回避しつつ加熱処理することにより、ゲルフィルムから、水、残留溶媒、イミド化促進剤等を除去し、残ったポリアミド酸を完全にイミド化して、非熱可塑性ポリイミドを含むポリイミドフィルムが得られる。加熱条件については、最終的に得られるフィルムの厚み、生産速度に応じて適宜設定すればよい。
(熱可塑性ポリイミド層の形成方法)
熱可塑性ポリイミド層は、例えば、上述した非熱可塑性ポリアミド酸溶液を用いて得られたポリイミドフィルム(非熱可塑性ポリイミド層)の少なくとも片面に、熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を含むポリアミド酸溶液(以下、「熱可塑性ポリアミド酸溶液」と記載することがある)を塗布した後、上述した非熱可塑性ポリイミド層(ポリイミドフィルム)の形成方法と同じ手順で得られる。この方法により、非熱可塑性ポリイミド層と、非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも片面に配置された熱可塑性ポリイミド層とを有する複層ポリイミドフィルムが得られる。また、熱可塑性ポリアミド酸溶液の代わりに、熱可塑性ポリイミドを含む溶液(熱可塑性ポリイミド溶液)を用いて、非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも片面に熱可塑性ポリイミド溶液からなる塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥して、熱可塑性ポリイミド層を形成してもよい。
また、例えば、共押出しダイを使用して、非熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を含む層と、熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を含む層とを備える積層体を形成した後、得られた積層体を加熱して、非熱可塑性ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層とを同時に形成してもよい。この方法では、支持体として金属箔を使用することにより、イミド化が完了すると同時に金属張積層板(複層ポリイミドフィルムと金属箔との積層体)が得られる。3層以上のポリイミド層を含む複層ポリイミドフィルムを製造する場合、上述した塗布工程及び加熱工程を複数回繰り返すか、共押出しや連続塗布(連続キャスト)により複数の塗布膜を形成して一度に加熱する方法が好適に用いられる。複層ポリイミドフィルムの最表面に、コロナ処理やプラズマ処理のような種々の表面処理を行うことも可能である。
<金属張積層板の製造方法>
上述の方法で得られた複層ポリイミドフィルムを用いて金属張積層板を製造する際は、上述したように、複層ポリイミドフィルムの少なくとも片面に金属箔を貼り合わせる。金属箔は、特に限定されるものではなく、あらゆる金属箔を用いることができる。例えば、銅、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、及びこれら金属の合金等を材料とする金属箔が好適に用いられる。また、一般的な金属張積層板では、圧延銅箔、電解銅箔等の銅箔が多用されるが、本実施形態においても、銅箔が好ましく用いられる。
また、金属箔は、目的に応じて表面処理等を施して、表面粗さ等を調整したものを使用できる。更に、金属箔の表面には、防錆層、耐熱層、接着層等が形成されていてもよい。金属箔の厚みについては特に限定されるものではなく、その用途に応じて、十分な機能が発揮できる厚みであればよい。
<金属張積層板の加工>
金属張積層板を材料としてレーザー加工によりビアを形成する場合、加工したい部位にレーザーを照射することで、金属張積層板を切削し、穴を開けることができる。金属張積層板を貫通させてスルーホールを形成したり、上面の金属箔の一部を除去した後で露出したポリイミド層のみを除去することにより、ブラインドビアを形成したりすることができる。ブラインドビアの形成の際には、上面の金属箔をレーザーで除去し、続けてレーザーの出力を落としてポリイミド層を除去することで安定してブラインドビアを形成することができる。
レーザーとしては公知の種類を採用することができる。UV-YAGレーザーやエキシマレーザー等の短波長レーザーは、樹脂に対しても金属に対しても非常に高い吸収率を示すため好ましい。なお、スルーホールの形成に関しては、直接ドリルを用いて貫通孔を開ける方法も広く用いられている。レーザー加工後のデスミア処理方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、アルカリ水溶液や有機溶媒を含む溶液を用いた膨潤工程、過マンガン酸ナトリウムや過マンガン酸カリウム等を含むアルカリ水溶液を用いた粗化工程、及び中和工程を備える湿式デスミア処理方法が挙げられる。
両面金属張積層板の場合、デスミア処理後の穴の内壁をめっきして、金属張積層板の両面を導通させる。めっき方法の一例としては、穴の内壁にパラジウムを付着させた後、そのパラジウムを核として無電解銅めっき層を内壁面に形成する方法が挙げられる。この場合、無電解銅めっきのみで所望の厚みのめっき層を形成してもよいし、無電解銅めっき層を薄付けした後、電解銅めっきにより所望の厚みのめっき層を形成してもよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
<物性の測定方法及び評価方法>
ポリイミドの線膨張係数、ガラス転移温度、引張り弾性率、デスミア処理前後引張破断伸び保持率、実施例及び比較例の評価方法(ホールクラックテスト)について説明する。
[線膨張係数]
熱分析装置(日立ハイテクサイエンス社製「TMA/SS6100」)を用いて、窒素雰囲気下においてポリイミドフィルムを、-10℃から300℃まで昇温させた後、-10℃まで冷却し、更に再度300℃まで昇温させて、2回目の昇温時の50℃から250℃における歪み量から線膨張係数を求めた。測定条件を以下に示す。
サンプル(ポリイミドフィルム)のサイズ:幅3mm、長さ10mm
荷重:1g
昇温速度:10℃/分
[ガラス転移温度]
SIIナノテクノロジー社製 DMS6100により空気雰囲気下にて動的粘弾性を測定し、測定温度に対して損失弾性係数(tanδ)をプロットしたグラフを作成した。貯蔵弾性率が急激に低下する温度付近でのtanδ極大値ををガラス転移温度とした。
・サンプル測定範囲;幅9mm、つかみ具間距離20mm
・測定温度範囲;0℃~450℃
・昇温速度;3℃/分
・歪み振幅;10μm
・測定周波数;5Hz
・最小張力/圧縮力;100mN
・張力/圧縮ゲイン;1.5
・力振幅初期値;100mN
[引張り弾性率]
島津製作所製 AGS-Jにより引張破断伸び率を測定。
・サンプル測定範囲;幅15mm、つかみ具間距離100mm
・試験速度;200mm/分
・試験片形状;短冊状
[デスミア処理前後引張破断伸び保持率]
島津製作所製 AGS-Jにより引張破断伸び率を測定。下記ホールクラックテストと同様のデスミア処理条件でデスミア処理する前後の引張破断伸び保持率を算出した。
・サンプル測定範囲;幅15mm、つかみ具間距離25mm
・試験速度;25mm/分
・試験片形状;ダンベル状
[ホールクラックテスト]
後述する実施例及び比較例で得られた複層ポリイミドフィルムの両面に厚み12μmの電解銅箔(三井金属鉱業社製「3EC-M3S-HTE」)を配し、更にそれぞれの電解銅箔の外表面に保護フィルム(カネカ社製「アピカル(登録商標)125NPI」、厚み:125μm)を配した状態で、ラミネート温度360℃、ラミネート圧力265N/cm(27kgf/cm)、ラミネート速度1.0m/分の条件でラミネートを行い、フレキシブル銅張積層板を得た。次いで、得られたフレキシブル銅張積層板を、5.0cm×20.0cmの長方形状に切り取り、加工用サンプルを得た。次いで、UV-YAGレーザーを用いて、表1に記載のレーザー加工条件で、加工用サンプルに直径75μmの大きさのブラインドビア(縦10×横10=100個、間隔:1mm)を形成した。
次いで、レーザー加工後のサンプルを表2に示す条件でデスミア処理した後、銅箔をエッチングで除去し、評価用サンプルを得た。なお、デスミア処理に用いた薬液の製造元は、Macudizerはマクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン株式会社で、サーキュポジットMLBニュートライザーはロームアンドハーズ・ジャパン株式会社であった。また、膨潤工程と粗化工程の間、粗化工程と中和工程の間、及び中和工程後には、水洗工程を実施した。

そして、得られた評価用サンプルについて、クロスニコル下にて倍率200倍で偏光顕微鏡観察し、クラックの有無を判別した。具体的には、穴部の周囲に光漏れが発生している状態を「クラックが発生している」と判断し、100個の穴部について観察した後、クラックが発生した穴部の比率(クラック発生率)を百分率で求めた。
<ポリアミド酸溶液の調製>
以下、非熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液P1~P12、及び熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液T1~T18の調整方法について説明する。なお、溶液P1~P12、T1~T18の調整は、いずれも温度20℃の窒素雰囲気下で行った。P1~P12の合成の際に使用した各モノマーの物質量比を表3に、T1~T18の合成の際に使用した各モノマーの物質量比を表4にまとめる。
[溶液P1の調製:非熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFともいう)326.01gに、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル(以下、m-TBともいう)を23.83g、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(以下、BTDAともいう)35.09gを添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。1.085gのBTDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が3000ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液P2の調製:非熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF328.94gに、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(以下、ODAともいう)を9.19g、m-TBを13.92g、BTDAを19.02g、ピロメリット酸二無水物(以下、PMDAともいう)を9.01g添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。次いで、p-フェニレンジアミン(以下、PDAともいう)を2.13g、PMDAを5.87g添加し、30分間撹拌した。次いで、0.858gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が3000ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液P3の調製:非熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF328.53gに、ODAを17.70g、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAともいう)を18.01g、PMDAを4.00g添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。次いで、m-TBを5.77g、PDAを2.21g、PMDAを11.42g添加し、30分間撹拌した。次いで、0.890gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が3000ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液P4の調製:非熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF328.61gに、PDAを12.85g、BPDAを22.64g、PMDAを0.88g、BTDAを10.88g、BAPPを6.65g、BTDAを5.22g添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。次いで、0.883gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が3000ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液P5の調製:非熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF328.76gに、ODAを14.67g、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(以下、TPE-Rともいう)を3.89g、BPDAを17.64g、PMDAを3.92g添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。次いで、m-TBを5.66g、PDAを2.16g、PMDAを11.19g添加し、30分間撹拌した。次いで、0.872gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が3000ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液P6の調製:非熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF327.90gに、ODAを28.72g、PMDAを30.34gを添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。
0.938gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が3000ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液P7の調製:非熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF331.95gに、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下、BAPPともいう)を39.18g、PMDAを20.19gを添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。0.625gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が3000ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液P8の調製:非熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF325.69gに、ODAを23.00g、BTDAを35.89gを添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。1.110gのBTDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が3000ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液P9の調製:非熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF329.80gに、BAPPを33.61g、BTDAを25.59gを添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。0.792gのBTDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が3000ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液P10の調製:非熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF328.85gに、ODAを17.21g、m-TBを5.61g、BTDAを19.17g、PMDAを9.08g添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。次いで、PDAを2.14g、PMDAを5.91g添加し、30分間撹拌した。0.865gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が3000ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液P11の調製:非熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF328.84gに、TPE-Rを3.86g、m-TBを25.27g、BPDAを7.78g、PMDAを22.22g添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。0.866gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が3000ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液P12の調製:非熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF328.24gに、m-TBを29.59g、PMDAを29.49gを添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。0.912gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が3000ポイズに達した時点で重合を終了した。
(参考例1)
非熱可塑性ポリイミドフィルム作製方法に関して説明する。
60gの溶液P1にイミド化促進剤を添加してドープ液を調製した。イミド化促進剤は無水酢酸/イソキノリン/DMFからなり、無水酢酸/イソキノリンはP1樹脂量に対して物質量比が3.00/0.74からなり、イミド化促進剤が24gになるようにDMFを加えた。次いで、温度0℃以下の雰囲気下、ドープ液を撹拌しながら脱泡した後、コンマコーターを用いてドープ液をアルミ箔上に塗布し、塗布膜を形成した。次いで、塗布膜を加熱温度110℃の条件で150秒間加熱することにより、自己支持性のゲルフィルムを得た。得られたゲルフィルムを、アルミ箔から剥がして、金属製の固定枠に固定し、加熱温度250℃で17秒間加熱し、引き続き加熱温度350℃で70秒間加熱し、厚み17μmのポリイミドフィルムを作成した。P2~P12のポリイミドフィルム作製方法に関しても同様の方法で作製した。得られたポリイミドフィルム(非熱可塑性ポリイミドフィルム)の物性を表5に示す。銅箔積層体とした際に、寸法安定性の優れたものとするためには、本発明の非熱可塑性ポリイミドフィルムの線膨張係数は、7~16ppm/℃であることが必要であり、線膨張係数が7~16ppm/℃に該当するものを〇、外れるものを×と表記した。
[溶液T1の調製:熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF335.60gに、TPE-Rを11.63g、BAPPを20.44g、PDAを1。08g、BPDAを4.39g、PMDAを17.81g添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。0.652gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が200ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液T2の調製:熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF335.46gに、ODAを6.08g、TPE-Rを5.91g、BAPPを20.78g、BPDAを4.47g、PMDAを18.10g添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。0.662gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が200ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液T3の調製:熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF335.36gに、BAPPを25.23g、ODAを6.15g、PDAを1.11g、BPDAを4.52g、PMDAを18.32g添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。0.670gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が200ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液T4の調製:熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF335.32gに、ODAを8.24g、TPE-Rを3.01g、BAPPを21.13g、BPDAを4.54g、PMDAを18.41g添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。0.673gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が200ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液T5の調製:熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF335.28gに、BAPPを21.21g、ODAを8.28g、PDAを1.12g、4,4’-オキシジフタル酸無水物(以下、ODPAともいう)を9.62g、PMDAを15.10g添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。0.676gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が200ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液T6の調製:熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF336.19gに、TPE-Rを8.12g、BTDAを8.36g添加し、窒素雰囲気下で60分撹拌した。次いで、BAPPを22.82g、m-TBを1.97g、BTDAを0.60g、PMDAを13.54g添加し、30分撹拌した。0.606gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が200ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液T7の調製:熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF336.26gに、BAPPを33.93g、PDAを0.99g、BPDAを4.05g、PMDAを16.42g添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。0.601gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が200ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液T8の調製:熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF323.04gに、BAPPを43.61g、BPDAを4.69g、PMDAを19.00g添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。0.695gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が200ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液T9の調製:熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF335.87gに、BAPPを27.72g、m-TBを6.14g、BPDAを4.26g、PMDAを17.25g添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。0.631gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が200ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液T10の調製:熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF336.19gに、TPE-Rを8.12g、m-TBを1.97g、PMDAを7.68g添加し、窒素雰囲気下で60分撹拌した。次いで、BAPPを22.82g、BTDAを8.96g、PMDAを5.86g添加し、30分撹拌した。0.631gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が200ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液T11の調製:熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF336.38gに、BAPPを29.67g、TPE-Rを2.64g、m-TBを1.92g、BPDAを7.98g、PMDAを13.20g添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。0.591gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が200ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液T12の調製:熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF336.13gに、BAPPを26.80g、m-TBを5.94g、BTDAを9.02g、PMDAを13.63g添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。0.610gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が200ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液T13の調製:熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF336.22gに、BAPPを26.50g、m-TBを5.87g、BPDAを13.57g、PMDAを9.45g添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。0.610gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が200ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液T14の調製:熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF336.76gに、BAPPを24.66g、m-TBを5.47g、BTDAを22.13g、PMDAを3.18g添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。0.562gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が200ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液T15の調製:熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF336.60gに、m-TBを3.73g、TPE-Rを5.12g、BTDAを10.46g添加し、窒素雰囲気下で60分撹拌した。次いで、BAPPを21.61g、BTDAを9.33g添加し、30分撹拌した。次いで、PMDAを5.17g添加し、30分撹拌した。0.574gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が200ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液T16の調製:熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF337.06gに、BAPPを33.77g、BTDAを13.25g、PMDAを8.43g添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。0.538gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が200ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液T17の調製:熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF337.07gに、BAPPを33.71g、BPDAを16.91g、PMDAを4.84g添加し、窒素雰囲気下で30分撹拌した。0.537gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が200ポイズに達した時点で重合を終了した。
[溶液T18の調製:熱可塑性ポリイミド用ポリアミド酸溶液]
反応系内を20℃に保った状態で、DMF336.82gに、m-TBを1.81g、TPE-Rを4.97g、BTDAを7.40g添加し、窒素雰囲気下で60分撹拌した。次いで、BAPPを24.46g、BTDAを11.79g添加し、30分撹拌した。0.557gのPMDAを固形分濃度7.2%となるようにDMFに溶解した溶液を調製し、この溶液を粘度上昇に気を付けながら上記反応溶液に徐々に添加し、粘度が200ポイズに達した時点で重合を終了した。
(参考例2)
熱可塑性ポリイミドフィルム作製方法に関して説明する。
60gの溶液P1にイミド化促進剤を添加してドープ液を調製した。イミド化促進剤は無水酢酸/イソキノリン/DMFからなり、無水酢酸/イソキノリンはP1樹脂量に対して物質量比が3.00/0.74からなり、イミド化促進剤が24gになるようにDMFを加えた。次いで、温度0℃以下の雰囲気下、ドープ液を撹拌しながら脱泡した後、コンマコーターを用いてドープ液をアルミ箔上に塗布し、塗布膜を形成した。次いで、塗布膜を加熱温度110℃の条件で150秒間加熱することにより、自己支持性のゲルフィルムを得た。得られたゲルフィルムを、アルミ箔から剥がして、金属製の固定枠に固定し、加熱温度250℃で60秒間加熱し、引き続き加熱温度300℃で200秒間加熱し、厚み17μmのポリイミドフィルムを作成した。T2~T18のポリイミドフィルム作製方法に関しても同様の方法で作製した。得られたポリイミドフィルム(非熱可塑性ポリイミドフィルム)の物性を表4に示す。
(実施例1)
非熱可塑性ポリイミドフィルムの両面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を有するポリイミド積層体作製方法に関して説明する。
60gの溶液P2にイミド化促進剤を添加してドープ液を調製した。イミド化促進剤は無水酢酸/イソキノリン/DMFからなり、無水酢酸/イソキノリンはP2樹脂量に対して物質量比が2.00/0.74からなり、イミド化促進剤が24gになるようにDMFを加えた。次いで、温度0℃以下の雰囲気下、ドープ液を撹拌しながら脱泡した後、コンマコーターを用いてT1、P2ドープ液、T1の順にアルミ箔上に塗布し、三層膜を形成した。三層膜を加熱温度120℃の条件で200秒間加熱することにより、自己支持性のゲルフィルムを得た。得られたゲルフィルムを、アルミ箔から剥がして、金属製の固定枠に固定し、加熱温度250℃で17秒間加熱し、引き続き加熱温度350℃で70秒間加熱し、実施例1の厚み25μmのポリイミドフィルムを得た。得られた三層ポリイミドフィルムのホールクラックテスト結果を表6に示す。実施例2~9、比較例1~13も実施例1と同様の方法でフィルムを作成し、その結果を表6に示した。
<評価結果>
請求項に示す引張り弾性率が5.0GPa以上12.0GPa未満であり、線膨張係数が7~16ppm/℃である非熱可塑性ポリイミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を積層したポリイミド積層体を用いて銅張積層板にした際に、ポリイミド積層体の線膨張係数を銅箔の線膨張係数に近いものに設計しうるため、寸法安定性に優れた銅張積層板となりうる。ホールクラックテストは寸法安定性が〇(引張り弾性率が5.0GPa以上12.0GPa未満、線膨張係数が7~16ppm/℃である非熱可塑性ポリイミドフィルム)のものを用いて行った。
表6に実施例1~9及び比較例1~13のそれぞれについて、使用した非熱可塑性ポリアミド酸溶液の種類、使用した熱可塑性ポリアミド酸の種類、非熱可塑性ポリイミドと熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度差、及びホールクラックテストの結果(クラック発生率)を示した。実施例1~9では、非熱可塑性ポリイミドと熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度差は30℃以下であり、クラック発生率は40%以下であった。比較例1~13では非熱可塑性ポリイミドと熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度差は30℃より大きく、クラック発生率は40%よりも高い結果であった。以上の結果から、本発明に係るポリイミド積層体は、レーザー加工後のデスミア処理時において、ビア内壁のクラック、とくにポリイミド積層体の界面で発生するクラックを抑制できる。

Claims (4)

  1. 非熱可塑性ポリイミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を有するポリイミド積層体であって、
    前記非熱可塑性ポリイミドフィルムの引張り弾性率が5.0GPa以上12.0GPa未満であり、ガラス転移温度が270℃以上370℃未満であり、線膨張係数が7~16ppm/℃であり、
    前記非熱可塑性ポリイミドフィルムと前記熱可塑性ポリイミドフィルムのガラス転移温度差が30℃以下であり、デスミア処理前後の熱可塑性ポリイミドフィルムの引張破断伸び保持率が50%以上であることを特徴とするポリイミドフィルム積層体。
  2. 前記非熱可塑性ポリイミドフィルムのデスミア液処理前後の引張破断伸び保持率が50%以上である、請求項1に記載のポリイミドフィルム積層体。
  3. 前記非熱可塑性ポリイミドフィルムの線膨張係数が9~12ppm/℃である、請求項1に記載のポリイミドフィルム積層体。
  4. 前記非熱可塑性ポリイミドフィルムの製造に使用される芳香族ジアミンが4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニルを含み、前記非熱可塑性ポリイミド樹脂層の製造に使用される芳香族テトラカルボン酸二無水物が、3,3‘,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物および/または3,3‘,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含むことを特徴とした請求項1~3のいずれかに記載のポリイミドフィルム積層体。
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