JP2024059390A - 非空気入りタイヤの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】リング部材がトレッド部材から剥離することを抑制することが可能な非空気入りタイヤの製造方法を提供する。【解決手段】本開示に係る非空気入りタイヤ1の製造方法は、内筒体31と、内筒体31を径方向外側から囲む外筒体32と、内筒体31と外筒体32とを連結する連結部材33とを有するリング部材12と、筒状のトレッド部材13とを備える非空気入りタイヤ1の製造方法であって、キャビティ102内にトレッド部材13を挿入するステップと、可動側金型130を固定側金型110方向に移動させてキャビティ102を閉じるステップと、トレッド部材13のタイヤ径方向B内側の空間に溶融樹脂Rを供給してリング部材12を成形するステップとを含み、リング部材12の成形前におけるトレッド部材13の外周面(トレッド面13a)の外径は、外周面に対向するキャビティ102の内周面102aの内径よりも小さくなることを特徴とする。【選択図】図7
Description
本開示は、非空気入りタイヤの製造方法に関する。
近年では、パンクの発生を回避するため、内部に加圧空気を充填する必要の無いタイヤ(非空気入りタイヤ)が開発されている。特許文献1に開示されている非空気入りタイヤは、車軸に取り付けられる取り付け体と、この取り付け体に外装される内筒体及びこの内筒体をタイヤ径方向の外側から囲繞する外筒体を有するリング部材と、内筒体と外筒体との間にタイヤ周方向に沿って複数配設されるとともに、内筒体及び外筒体を相対的に弾性変位自在に連結する連結部材と、外筒体の外周面側にその全周にわたって配設されたトレッド部材とを備えている。
特許文献1に開示された非空気入りタイヤを製造するに際しては、樹脂製のリング部材の外周面を表面処理して接着剤を塗布したり、リング部材の外周面にトレッド部材を嵌め込む工程が必要となるため、各工程で治工具等が必要となり製造コストの上昇要因となっていた。
非空気入りタイヤの製造工程を簡素化して製造コストを抑制するための手段として、トレッド部材をインサート材として樹脂製のリング部材をインサート成形することが考えられる。
しかし、トレッド部材をインサート材として樹脂製のリング部材をインサート成形すると、形成されたリング部材が冷却される過程で径方向内側へと収縮し、トレッド部材から剥離する場合があり、この点において改善の余地があった。
本開示の目的は、リング部材がトレッド部材から剥離することを抑制することが可能な非空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本開示の非空気入りタイヤの製造方法は、
[1]
内筒体と、前記内筒体をタイヤ径方向外側から囲繞する外筒体と、前記内筒体と前記外筒体とを互いに連結する弾性変形可能な連結部材とを一体形成したリング部材と、前記リング部材のタイヤ径方向外側に装着される筒状のトレッド部材とを備える非空気入りタイヤの製造方法であって、成形金型のキャビティ内に前記トレッド部材を挿入するステップと、可動側金型を固定側金型方向に移動させて前記キャビティを閉じるステップと、前記キャビティにおける前記トレッド部材のタイヤ径方向内側の空間に溶融樹脂を供給して前記リング部材を成形するステップとを含み、前記リング部材の成形前における前記トレッド部材の外周面の外径は、前記外周面に対向する前記キャビティの内周面の内径よりも小さくなることを特徴とする。
このような構成の採用によって、キャビティ内に加圧された溶融樹脂を供給すると、トレッド部材のトレッド面がキャビティのトレッド面に対向する内周面に近づくようにタイヤ径方向外側に向かって拡張する。その後、充填された溶融樹脂が冷却されると収縮するが、タイヤ径方向外側に拡張していたトレッド部材は、樹脂の収縮に追従しながら元の形状へと復元する。したがって、トレッド部材の内周面と収縮した樹脂(リング部材)との間に剥離が生じにくくすることができる。
[1]
内筒体と、前記内筒体をタイヤ径方向外側から囲繞する外筒体と、前記内筒体と前記外筒体とを互いに連結する弾性変形可能な連結部材とを一体形成したリング部材と、前記リング部材のタイヤ径方向外側に装着される筒状のトレッド部材とを備える非空気入りタイヤの製造方法であって、成形金型のキャビティ内に前記トレッド部材を挿入するステップと、可動側金型を固定側金型方向に移動させて前記キャビティを閉じるステップと、前記キャビティにおける前記トレッド部材のタイヤ径方向内側の空間に溶融樹脂を供給して前記リング部材を成形するステップとを含み、前記リング部材の成形前における前記トレッド部材の外周面の外径は、前記外周面に対向する前記キャビティの内周面の内径よりも小さくなることを特徴とする。
このような構成の採用によって、キャビティ内に加圧された溶融樹脂を供給すると、トレッド部材のトレッド面がキャビティのトレッド面に対向する内周面に近づくようにタイヤ径方向外側に向かって拡張する。その後、充填された溶融樹脂が冷却されると収縮するが、タイヤ径方向外側に拡張していたトレッド部材は、樹脂の収縮に追従しながら元の形状へと復元する。したがって、トレッド部材の内周面と収縮した樹脂(リング部材)との間に剥離が生じにくくすることができる。
また、本開示の非空気入りタイヤの製造方法は、
[2]
上記[1]に記載の構成において、溶融樹脂の冷却に伴うトレッド部材の収縮率は、前記リング部材の収縮率よりも大きくなることが好ましい。
このような構成の採用によって、溶融樹脂の冷却時において、トレッド部材のタイヤ径方向内側の内周面は、リング部材のタイヤ径方向外側の外周面よりもより大きくタイヤ径方向内側に収縮しようとする。従って、リング部材の外周面がトレッド部材の内周面に密着する方向に力が作用するため、リング部材の外周面がトレッド部材の内周面から剥離することを効果的に抑制することができる。
[2]
上記[1]に記載の構成において、溶融樹脂の冷却に伴うトレッド部材の収縮率は、前記リング部材の収縮率よりも大きくなることが好ましい。
このような構成の採用によって、溶融樹脂の冷却時において、トレッド部材のタイヤ径方向内側の内周面は、リング部材のタイヤ径方向外側の外周面よりもより大きくタイヤ径方向内側に収縮しようとする。従って、リング部材の外周面がトレッド部材の内周面に密着する方向に力が作用するため、リング部材の外周面がトレッド部材の内周面から剥離することを効果的に抑制することができる。
また、本開示の非空気入りタイヤの製造方法は、
[3]
上記[1]又は[2]に記載の構成において、前記リング部材の成形前における前記トレッド部材のタイヤ幅方向端部位置における内周面の径方向位置は、前記連結部材を形成する前記成形金型のコマ部材の前記タイヤ幅方向端部位置におけるタイヤ径方向の最外端と同一の径方向位置であることが好ましい。
このような構成の採用によって、トレッド部材の内周面が成形金型のコマ部材によって周方向にわたって支持されるため、溶融樹脂の供給によってトレッド部材の位置ずれ等が起こりづらく、リング部材を安定的にインサート成形することができる。
[3]
上記[1]又は[2]に記載の構成において、前記リング部材の成形前における前記トレッド部材のタイヤ幅方向端部位置における内周面の径方向位置は、前記連結部材を形成する前記成形金型のコマ部材の前記タイヤ幅方向端部位置におけるタイヤ径方向の最外端と同一の径方向位置であることが好ましい。
このような構成の採用によって、トレッド部材の内周面が成形金型のコマ部材によって周方向にわたって支持されるため、溶融樹脂の供給によってトレッド部材の位置ずれ等が起こりづらく、リング部材を安定的にインサート成形することができる。
また、本開示の非空気入りタイヤの製造方法は、
[4]
上記[1]から[3]のいずれかに記載の構成において、前記リング部材の成形前における前記トレッド部材のタイヤ幅方向の幅は、前記成形金型の前記キャビティのタイヤ幅方向の長さよりも大きいことが好ましい。
このような構成の採用によって、トレッド部材のタイヤ幅方向両端部とキャビティとの間が効果的にシールされる。従って、溶融樹脂がトレッド部材のタイヤ幅方向両端部を通じてタイヤ径方向外側に漏出してしまうことを効果的に抑制することができる。
[4]
上記[1]から[3]のいずれかに記載の構成において、前記リング部材の成形前における前記トレッド部材のタイヤ幅方向の幅は、前記成形金型の前記キャビティのタイヤ幅方向の長さよりも大きいことが好ましい。
このような構成の採用によって、トレッド部材のタイヤ幅方向両端部とキャビティとの間が効果的にシールされる。従って、溶融樹脂がトレッド部材のタイヤ幅方向両端部を通じてタイヤ径方向外側に漏出してしまうことを効果的に抑制することができる。
また、本開示の非空気入りタイヤの製造方法は、
[5]
上記[1]から[4]のいずれかに構成において、前記成形金型のコマ部材は、前記成形金型の一方の割型から他方の割型へと延び、前記コマ部材の基端部よりも先端部の方が細く構成された抜き勾配が設けられていることが好ましい。
このような構成の採用によって、成形金型を型締めする際にコマ部材がトレッド部材の内周面に衝突してしまうことを抑制することができる。
[5]
上記[1]から[4]のいずれかに構成において、前記成形金型のコマ部材は、前記成形金型の一方の割型から他方の割型へと延び、前記コマ部材の基端部よりも先端部の方が細く構成された抜き勾配が設けられていることが好ましい。
このような構成の採用によって、成形金型を型締めする際にコマ部材がトレッド部材の内周面に衝突してしまうことを抑制することができる。
また、本開示の非空気入りタイヤの製造方法は、
[6]
上記[1]から[5]のいずれかに構成において、前記成形金型は、前記トレッド部材のタイヤ幅方向端部の突起を受け入れる嵌合溝を有することが好ましい。
このような構成の採用によって、トレッド部材のタイヤ幅方向端部とキャビティとの間のシール性を更に高めて、溶融樹脂がタイヤ径方向外側に漏出することを効果的に抑制することができる。また、突起を溶融樹脂により形成されるリング部材よりもタイヤ幅方向に僅かに突出させることによって、樹脂製のリング部材が直接他の物体に衝突して破損したり傷が発生することを抑制することができる。
[6]
上記[1]から[5]のいずれかに構成において、前記成形金型は、前記トレッド部材のタイヤ幅方向端部の突起を受け入れる嵌合溝を有することが好ましい。
このような構成の採用によって、トレッド部材のタイヤ幅方向端部とキャビティとの間のシール性を更に高めて、溶融樹脂がタイヤ径方向外側に漏出することを効果的に抑制することができる。また、突起を溶融樹脂により形成されるリング部材よりもタイヤ幅方向に僅かに突出させることによって、樹脂製のリング部材が直接他の物体に衝突して破損したり傷が発生することを抑制することができる。
本開示によれば、リング部材がトレッド部材から剥離することを抑制することが可能な非空気入りタイヤの製造方法を提供することができる。
以下、本開示に係る非空気入りタイヤの製造方法について、図面を参照して説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
図1Aは、本開示の一実施形態に係る非空気入りタイヤの製造方法によって製造される、非空気入りタイヤ1の構成を示している。
図1Aに示すように、非空気入りタイヤ1は、車軸210aに取り付けられる取り付け体11のタイヤ径方向Bの外側に装着されるリング部材12と、このリング部材12のタイヤ径方向Bの外側に装着される円筒状のトレッド部材13とを備えている。本実施形態の非空気入りタイヤ1は、主に車軸210aより下側のリング部材12により荷重を支持する、いわゆるボトムロード側の非空気入りタイヤ1である。
取り付け体11は、車軸210aの先端部が装着される円筒状の装着筒部21と、この装着筒部21をタイヤ径方向Bの外側から囲繞する円筒状の外周筒部22と、装着筒部21と外周筒部22とを連結する複数のリブ23と、を備えている。外周筒部22は、タイヤ径方向Bの外側の外周面に、タイヤ周方向Cの全周に亘って延在する周溝を区画している。取り付け体11を備えることで、内筒体31、外筒体32及び連結部材33を含むリング部材12を、容易に車軸210aに取り付けることができる。
リング部材12は、内筒体31と、この内筒体31をタイヤ径方向Bの外側から囲繞する外筒体32と、内筒体31と外筒体32とを互いに連結する弾性変形可能な連結部材33と、を備えている。
ここで、装着筒部21、外周筒部22、内筒体31、外筒体32及びトレッド部材13は、それぞれの中心軸が同軸(共通の中心軸線O)となるように配設されている。なお、装着筒部21、外周筒部22、内筒体31、外筒体32及びトレッド部材13は、タイヤ幅方向Aの中央部が互いに一致させられて配設されている。
取り付け体11の装着筒部21、外周筒部22及びリブ23は、例えばアルミニウム合金等の金属材料やポリプロピレン等の樹脂材料で一体に形成されている。複数のリブ23は、図2に示す側面視で、中心軸線Oを基準として点対称となるように配置されている。
リング部材12のうち、外筒体32は、内筒体31よりもタイヤ幅方向Aの大きさ、つまり幅が大きくなっている。
連結部材33は、タイヤ周方向Cに沿って配置されている複数の連結板部33aにより構成されている。複数の連結板部33aは、リング部材12における内筒体31と外筒体32との間において、中心軸線Oを基準に互いに点対称となるように配置されている。また、本実施形態の各連結板部33aは、同一の大きさで同一の形状を有している。さらに、本実施形態の各連結板部33aのタイヤ幅方向Aの幅は、外筒体32のタイヤ幅方向Aの幅より小さい。
タイヤ周方向Cで隣り合う連結板部33a同士は、互いに非接触で離隔して配置されている。
各連結板部33aのうち、外筒体32に連結されたタイヤ径方向Bの外側の外端部33a1は、内筒体31に連結されたタイヤ径方向Bの内側の内端部33a2よりもタイヤ周方向Cの一方側に位置している。換言すれば、外端部33a1及び内端部33a2は、タイヤ周方向Cにおいて異なる位置に配置される。このようにすることで、連結板部33aをタイヤ径方向Bに弾性変形し易い板ばねとして利用することができる。
本実施形態では、内筒体31、外筒体32及び連結部材33は、樹脂により構成されている。これにより、内筒体31、外筒体32及び連結部材33を軽量化することができる。本実施形態では、内筒体31、外筒体32及び連結部材33が、トレッド部材13をインサート材とするインサート成形により樹脂材料によって一体に形成されている。また、樹脂材料としては、例えば1種だけの樹脂材料、2種類以上の樹脂材料を含む混合物、又は1種以上の樹脂材料と1種以上のエラストマーとを含む混合物であってもよい。さらに、例えば老化防止剤、可塑剤、充填剤、若しくは顔料等の添加物を含んでもよい。樹脂材料は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
樹脂材料として、具体的には、ポリエステル及びナイロン等の熱可塑性樹脂、ビニルエステル樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、並びにその他の合成樹脂を用いることができる。樹脂材料には、更に、補強繊維として、ガラス、カーボン、グラファイト、アラミド、ポリエチレン、及びセラミック等の繊維を含ませることができる。
なお、本実施形態のリング部材12は、上述した内筒体31、外筒体32及び連結部材33により構成されているが、更に他の部位を備えるリング部材であってもよい。
リング部材12は、リング部材12の内筒体31が取り付け体11の外周筒部22のタイヤ径方向Bの外側の外周面に区画されている周溝内に収容されることで、取り付け体11に対するタイヤ幅方向Aへの相対移動が規制される。また、リング部材12は、リング部材12の内筒体31と取り付け体11の外周筒部22とがボルト70によりボルト接合されることで、取り付け体11に対するタイヤ周方向Cへの相対移動が規制される。このようにして、本実施形態のリング部材12は取り付け体11に対して固定されているが、取り付け体11及びリング部材12の固定は、上述した固定手段に限られない。取り付け体11及びリング部材12のタイヤ周方向Cの相対移動は、例えば、取り付け体11の外周筒部22の外周面、及び、リング部材12の内筒体31の内周面、の一方に設けられた凸部と他方に設けられた凹部と、を嵌合することにより規制してもよい。
トレッド部材13は円筒状に形成され、リング部材12の外筒体32の外周面側を全域にわたって覆っている。トレッド部材13の外周面により、非空気入りタイヤ1のトレッド面13aが構成されている。本実施形態では、トレッド部材13は、例えば、天然ゴム等を含むゴム組成物が加硫された加硫ゴム、あるいは熱可塑性材料等で形成されている。熱可塑性材料として、例えば、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂などが挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K 6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、その他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
なお、耐摩耗性の観点ではトレッド部材13を加硫ゴムで形成するのが好ましい。
次に、本実施形態に係る非空気入りタイヤ1の製造方法に用いる成形金型100について説明する。
成形金型100は、図2に示すように、パーティングラインPLにより2分割されており、図の右側の固定側金型110と、固定側金型110に対して図の左右方向に移動可能な可動側金型130とを備えている。図2は、固定側金型110と可動側金型130がパーティングラインPLで当接し型締めされた状態を示している。
固定側金型110と可動側金型130により形成されるキャビティ102内には、トレッド部材13が配置されている。トレッド部材13は、成形金型100を型閉じする前に、本製造方法の実行者がキャビティ102内に配置している。インサート成形前におけるトレッド部材13のタイヤ幅方向Aの幅は、後述するように、型締めした後の成形金型100のキャビティ102のタイヤ幅方向Aの幅よりも大きくなるように構成されている。つまり、図1Aに示すようにトレッド部材13がキャビティ102内に配置され型締めされた状態では、トレッド部材13が成形金型100からタイヤ幅方向Aに圧縮されている状態である。これによって、ゲート104を通じてキャビティ102内に供給された溶融樹脂Rが、トレッド部材13のタイヤ幅方向A両端部とキャビティ102との隙間から上方に漏れ出てしまうことを抑制することができる。
図2において、固定側金型110から可動側金型130側(図1Aの左側)に向かって連結部材33を形成するための固定側コマ部材112が突出して設けられている。同様に、可動側金型130から固定側金型110側(図1Aの右側)に向かって連結部材33を形成するための可動側コマ部材132が突出して設けられている。図示する例では、2本の固定側コマ部材112の間の径方向位置に可動側コマ部材132が配置されている。固定側コマ部材112及び可動側コマ部材132は、図1Aに示す非空気入りタイヤ1の周方向に隣接する連結部材33の間の孔部33cを形成している。
図2の成形金型100の断面図における固定側コマ部材112及び可動側コマ部材132の配置は、図1A及び図1Bにおける非空気入りタイヤ1の断面I-Iに対応している。すなわち、図2におけるタイヤ径方向B外側(図2における上側)の固定側コマ部材112のタイヤ径方向Bの高さは、図1Bにおける断面I-I上の径方向長さr1に対応している。同様に、図2における可動側コマ部材132のタイヤ径方向Bの高さは、図1Bにおける断面I-I上の径方向長さr2に対応している。また、図2におけるタイヤ径方向B内側(図2における下側)の固定側コマ部材112のタイヤ径方向Bの高さは、図1Bにおける断面I-I上の径方向長さr3に対応している。
図2及び図3に示すように、固定側コマ部材112は、基端部112bから先端部112aに向かってタイヤ径方向B高さ及びタイヤ周方向Cの幅が小さくなる抜き勾配が設けられている。この構成によって、型開きの際に成形金型100から非空気入りタイヤ1のリリースが容易になる。また、成形金型100を型締めする際にコマ部材がトレッド部材13の内周面に衝突してしまうことを抑制することができる。
上述の抜き勾配によって、リング部材12をインサート成形する前の状態において、トレッド部材13のタイヤ幅方向A端部位置における内周面のタイヤ径方向B位置は、連結部材33を形成する固定側コマ部材112のタイヤ幅方向A端部位置における径方向の最外端(最もタイヤ径方向位置Bが中心から離れている基端部112b)と同一の径方向位置である。
すなわち、リング部材12をインサート成形する前の状態において、トレッド部材13の固定側金型110側端部の内周面は、固定側コマ部材112の最も太い基端部112bに当接している。この構成によって、リング部材12をインサート成形する前の状態において、トレッド部材13が固定側コマ部材112によって保持されているため、後工程である溶融樹脂Rの供給によってトレッド部材13の位置ずれ等が起こりづらく、リング部材12を安定的にインサート成形することができる。
なお、図3に示すように、固定側コマ部材112と可動側コマ部材132とが周方向に交互に並んでいるため、リング部材12をインサート成形する前の状態において、トレッド部材13は、固定側コマ部材112の基端部112bと可動側コマ部材132の基端部132bにより周方向で交互に支持されることになる。
図2に示すように、リング部材12をインサート成形する前の状態において、トレッド部材13の外周面(トレッド面13a)の外径は、上記外周面に対向するキャビティ102の内周面102aの内径よりも小さくなるように構成されている。この構成によって、後述するようにゲート104経由で加圧された溶融樹脂Rをキャビティ102内に供給すると、トレッド部材13のトレッド面13aがキャビティ102のトレッド面13aに対向する内周面102aに近づくようにタイヤ径方向B外側に向かって膨張する。その後、充填された溶融樹脂Rが冷却されると収縮するが、タイヤ径方向B外側に膨張していたトレッド部材13は、樹脂の収縮に追従しながら元の形状へと復元する。したがって、トレッド部材13の内周面と収縮した樹脂(リング部材12)との間に剥離が生じにくくすることができる。
図2及び図3の構成を備える成形金型100を用いて、本実施形態に係る非空気入りタイヤ1の製造方法を実施するに際しては、まず成形金型100のキャビティ102内にトレッド部材13を挿入する(図4のステップS101)。成形金型100内にトレッド部材13を挿入するには、可動側金型130を図2の左側に移動させてキャビティ102を開放し、固定側金型110又は可動側金型130のいずれか一方のキャビティ102内にトレッド部材13を挿入する。上述のように、トレッド部材13の内周面のタイヤ幅方向A端部が、固定側コマ部材112の基端部112b又は可動側コマ部材132の基端部132bにより支持されるため、成形金型100を開放した状態において、固定側金型110又は可動側金型130内に安定的に保持される。
次に、可動側金型130を固定側金型110方向に移動させて型締めし、トレッド部材13をタイヤ幅方向Aに圧縮する(図4のステップS102)。上述のように、リング部材12の成形前におけるトレッド部材13のタイヤ幅方向Aの幅は、成形金型100のキャビティ102のタイヤ幅方向Aの長さよりも大きく形成されている。そのため、図5に示すように、固定側金型110と可動側金型130とがギャップGだけ離隔した状態においてトレッド部材13のタイヤ幅方向A両端部が成形金型100のキャビティ102のタイヤ幅方向A両端部に当接する。この図5に示す状態から更に可動側金型130を固定側金型110に近づけることによって、トレッド部材13は、キャビティ102のタイヤ幅方向A両端部によって圧縮され、トレッド部材13のタイヤ幅方向A両端部とキャビティ102との間がシールされる(図2の状態)。なお、本実施形態では、図5に示すように、キャビティ102内に溶融樹脂Rを供給するゲート104の軸線上をパーティングラインPLが通過するようにゲート104が配置されている。
次に、キャビティ102におけるトレッド部材13の径方向内側の空間に溶融樹脂Rを供給する(図4のステップS103)。溶融樹脂Rの供給は、図6に示すように、キャビティ102のタイヤ径方向B内側に設けられたゲート140を通じてキャビティ102内に圧送される。供給された溶融樹脂Rは、まず図6におけるタイヤ径方向B内側(図の下側)の固定側コマ部材112よりもタイヤ径方向B内側の内筒体31(図1A参照)に対応する空間内に溶融樹脂Rを供給する。続いて図6の矢印の方向(タイヤ径方向B外側方向、図6の上方向)に溶融樹脂Rを順次供給し、図1Aの連結部材33に対応する空間内に溶融樹脂Rを供給する。最後に、図1Aの外筒体32に対応する、トレッド部材13の内周面に対向する空間内に溶融樹脂Rを供給する。
溶融樹脂Rがキャビティ102におけるトレッド部材13の内周面に対向する空間内に充填されると、図7に示すように、トレッド部材13が溶融樹脂Rによって加圧され、タイヤ径方向B外側に拡張される(図4のステップS104)。トレッド部材13は、トレッド面13aがキャビティ102内における内周面102aに接するまで拡張され、更なる溶融樹脂Rの圧力によりタイヤ径方向Bに圧縮歪みが生じる。これに伴い、タイヤ幅方向Aにも伸長する歪みが発生しようとするため、トレッド部材13のタイヤ幅方向A両端部とキャビティ102のタイヤ幅方向A両端部とが更に強固に密着し、両者間のシール性が高められる。従って、溶融樹脂Rがトレッド部材13のタイヤ幅方向A両端部を通じてタイヤ径方向B外側に漏出してしまうことを効果的に抑制することができる。
ステップS104によりキャビティ102への加圧された溶融樹脂Rの充填が完了すると、ゲート104からの溶融樹脂Rの供給が停止され、キャビティ102内の溶融樹脂Rが冷却される。溶融樹脂Rが冷却される過程でキャビティ102内の圧力は低下し、溶融樹脂Rは、材料固有の成形収縮率に基づいて収縮する。キャビティ102内の冷却された樹脂は、タイヤ径方向B内側に向かって収縮するが、キャビティ102内の樹脂圧力が低下しているため、ステップS104でタイヤ径方向B外側に拡張していたトレッド部材13は、溶融樹脂R供給前の元の形状へと復元する。トレッド部材13は、冷却された樹脂と同様にタイヤ径方向B内側に向かって収縮する。
特に本実施形態では、溶融樹脂Rの冷却に伴うトレッド部材13の収縮率は、トレッド部材13の径方向内側の溶融樹脂R(リング部材12)の収縮率よりも大きくなるように構成されている。ここで、トレッド部材13の収縮率は、加圧された溶融樹脂Rを供給しトレッド部材13がタイヤ径方向B外側に拡張した状態(図7の状態)におけるトレッド部材13のタイヤ径方向B内側の内周面の直径に対する、成形金型100内に挿入した状態における同内周面の直径の減少分である。また、トレッド部材13の径方向内側の溶融樹脂R(リング部材12)の収縮率とは、加圧された溶融樹脂Rを供給した状態(図7の状態)における溶融樹脂R(リング部材12)のタイヤ径方向B外側の外周面の直径に対する、溶融樹脂Rが冷却された状態における同外周面の直径の減少分である。
このように、本実施形態では、溶融樹脂Rの冷却に伴うトレッド部材13の収縮率は、トレッド部材13の径方向内側の溶融樹脂R(リング部材12)の収縮率よりも大きくなるように構成した。この構成によって、溶融樹脂Rの冷却時において、トレッド部材13のタイヤ径方向B内側の内周面は、リング部材12のタイヤ径方向B外側の外周面よりもより大きくタイヤ径方向B内側に収縮しようとする。従って、リング部材12の外周面がトレッド部材13の内周面から剥離することを効果的に抑制することができる。
図8は、本実施形態の変形例であり、図7に対応する溶融樹脂Rがキャビティ102内に充填された状態を示す拡大図である。この変形例では、トレッド部材13のタイヤ幅方向Aの端部から更に外側に突出する突起13bを受け入れる嵌合溝102bが設けられている。この構成によって、トレッド部材13のタイヤ幅方向A端部とキャビティ102との間のシール性を更に高めて、溶融樹脂Rがタイヤ径方向B外側に漏出することを効果的に抑制することができる。また、突起13bを溶融樹脂Rにより形成されるリング部材12よりもタイヤ幅方向Aに僅かに突出させることによって、樹脂製のリング部材12が直接他の物体に衝突して破損したり傷が発生することを抑制することができる。
以上述べたように、本実施形態は、内筒体31と、内筒体31をタイヤ径方向B外側から囲繞する外筒体32と、内筒体31と外筒体32とを互いに連結する弾性変形可能な連結部材33とを一体形成したリング部材12と、リング部材12のタイヤ径方向B外側に装着される筒状のトレッド部材13とを備える非空気入りタイヤ1の製造方法であって、成形金型100のキャビティ102内にトレッド部材13を挿入するステップと、可動側金型130を固定側金型110方向に移動させてキャビティ102を閉じるステップと、キャビティ102におけるトレッド部材13のタイヤ径方向B内側の空間に溶融樹脂Rを供給してリング部材12を成形するステップとを含み、リング部材12の成形前におけるトレッド部材13の外周面(トレッド面13a)の外径は、外周面に対向するキャビティ102の内周面102aの内径よりも小さくなるように構成した。このような構成の採用によって、キャビティ102内に加圧された溶融樹脂Rを供給すると、トレッド部材13のトレッド面13aがキャビティ102のトレッド面13aに対向する内周面102aに近づくようにタイヤ径方向B外側に向かって拡張する。その後、充填された溶融樹脂Rが冷却されると収縮するが、タイヤ径方向B外側に拡張していたトレッド部材13は、樹脂の収縮に追従しながら元の形状へと復元する。したがって、トレッド部材13の内周面と収縮した樹脂(リング部材12)との間に剥離が生じにくくすることができる。
また、本実施形態では、溶融樹脂Rの冷却に伴うトレッド部材13の収縮率は、リング部材12の収縮率よりも大きくなるように構成した。このような構成の採用によって、溶融樹脂Rの冷却時において、トレッド部材13のタイヤ径方向B内側の内周面は、リング部材12のタイヤ径方向B外側の外周面よりもより大きくタイヤ径方向B内側に収縮しようとする。従って、リング部材12の外周面がトレッド部材13の内周面に密着する方向に力が作用するため、リング部材12の外周面がトレッド部材13の内周面から剥離することを効果的に抑制することができる。また本実施形態では、トレッド部材13とリング部材12の収縮率を変えて、リング部材12の外周面がトレッド部材13の内周面から剥離することを防ぐ構成としたが、この態様には限定されない。接着剤等を用いたり、表面処理を施した樹脂と表面処理を施した加硫ゴムとを接着剤を介さずに接着する方法等を適宜用いて、積極的にトレッド部材13とリング部材12との剥離防止を図ってもよい。
また、本実施形態では、リング部材12の成形前におけるトレッド部材13のタイヤ幅方向A端部位置における内周面の径方向位置は、連結部材33を形成する成形金型100のコマ部材(固定側コマ部材112及び可動側コマ部材132)のタイヤ幅方向A端部位置におけるタイヤ径方向Bの最外端と同一の径方向位置であるように構成した。このような構成の採用によって、トレッド部材13の内周面が成形金型100のコマ部材によって周方向にわたって支持されるため、溶融樹脂Rの供給によってトレッド部材13の位置ずれ等が起こりづらく、リング部材12を安定的にインサート成形することができる。
また、本実施形態では、リング部材12の成形前におけるトレッド部材13のタイヤ幅方向Aの幅は、成形金型100のキャビティ102のタイヤ幅方向Aの長さよりも大きくなるように構成した。このような構成の採用によって、トレッド部材13のタイヤ幅方向A両端部とキャビティ102との間が効果的にシールされる。従って、溶融樹脂Rがトレッド部材13のタイヤ幅方向A両端部を通じてタイヤ径方向B外側に漏出してしまうことを効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、成形金型100のコマ部材(固定側コマ部材112及び可動側コマ部材132)は、成形金型100の一方の割型から他方の割型へと延び、コマ部材の基端部よりも先端部の方が細く構成された抜き勾配が設けられるように構成した。このような構成の採用によって、成形金型100を型締めする際にコマ部材がトレッド部材13の内周面に衝突してしまうことを抑制することができる。
また、本実施形態では、成形金型100は、前記トレッド部材13のタイヤ幅方向端部の突起13bを受け入れる嵌合溝102bを有するように構成した。このような構成の採用によって、トレッド部材13のタイヤ幅方向A端部とキャビティ102との間のシール性を更に高めて、溶融樹脂Rがタイヤ径方向B外側に漏出することを効果的に抑制することができる。また、突起13bを溶融樹脂Rにより形成されるリング部材12よりもタイヤ幅方向Aに僅かに突出させることによって、樹脂製のリング部材12が直接他の物体に衝突して破損したり傷が発生することを抑制することができる。
本開示を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
例えば、本実施形態は、ボトムロード型の非空気入りタイヤ1の製造に用いることを想定しているが、この態様には限定されず、トップロード型の非空気入りタイヤ1の製造に用いることもできる。
本開示は、リング部材12がトレッド部材13から剥離することを抑制することが可能な非空気入りタイヤ1の製造方法に関する。
1:非空気入りタイヤ、 11:取り付け体、 12:リング部材、 13:トレッド部材、 13a:トレッド面、 13b:突起、 21:装着筒部、 22:外周筒部、 23:リブ、 31:内筒体、 32:外筒体、 33:連結部材、 33a:連結板部、 33a1:外端部、 33a2:内端部、 33c:孔部、 70:ボルト、 100:成形金型、 102:キャビティ、 102a:内周面、 102b:嵌合溝、 104:ゲート、 110:固定側金型、 112:固定側コマ部材、 112a:先端部、112b:基端部、 130:可動側金型、 132:可動側コマ部材、 132a:先端部、132b:基端部、 140:ゲート、 210a:車軸、 A:タイヤ幅方向、 B:タイヤ径方向、 C:タイヤ周方向、 G:ギャップ、 O:中心軸線、 PL:パーティングライン、 R:溶融樹脂、 r1,r2,r3:径方向長さ
Claims (6)
- 内筒体と、前記内筒体をタイヤ径方向外側から囲繞する外筒体と、前記内筒体と前記外筒体とを互いに連結する弾性変形可能な連結部材とを一体形成したリング部材と、
前記リング部材のタイヤ径方向外側に装着される筒状のトレッド部材と
を備える非空気入りタイヤの製造方法であって、
成形金型のキャビティ内に前記トレッド部材を挿入するステップと、
可動側金型を固定側金型方向に移動させて前記キャビティを閉じるステップと、
前記キャビティにおける前記トレッド部材のタイヤ径方向内側の空間に溶融樹脂を供給して前記リング部材を成形するステップと
を含み、
前記リング部材の成形前における前記トレッド部材の外周面の外径は、前記外周面に対向する前記キャビティの内周面の内径よりも小さい、非空気入りタイヤの製造方法。 - 溶融樹脂の冷却に伴うトレッド部材の収縮率は、前記リング部材の収縮率よりも大きい、請求項1に記載の非空気入りタイヤの製造方法。
- 前記リング部材の成形前における前記トレッド部材のタイヤ幅方向端部位置における内周面の径方向位置は、前記連結部材を形成する前記成形金型のコマ部材の前記タイヤ幅方向端部位置におけるタイヤ径方向の最外端と同一の径方向位置である、請求項1又は2に記載の非空気入りタイヤの製造方法。
- 前記リング部材の成形前における前記トレッド部材のタイヤ幅方向の幅は、前記成形金型の前記キャビティのタイヤ幅方向の長さよりも大きい、請求項1又は2に記載の非空気入りタイヤの製造方法。
- 前記成形金型のコマ部材は、前記成形金型の一方の割型から他方の割型へと延び、前記コマ部材の基端部よりも先端部の方が細く構成された抜き勾配が設けられている、請求項1又は2に記載の非空気入りタイヤの製造方法。
- 前記成形金型は、前記トレッド部材のタイヤ幅方向端部の突起を受け入れる嵌合溝を有する、請求項1又は2に記載の非空気入りタイヤの製造方法。
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