JP2024050431A - 金属張積層板、回路基板、電子デバイス及び電子機器 - Google Patents

金属張積層板、回路基板、電子デバイス及び電子機器 Download PDF

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芳樹 須藤
翔平 川上
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【課題】絶縁樹脂層の間に接着層を介在させた積層構造を有する金属張積層板において、優れた誘電特性と回路加工後の接続信頼性とを両立させる。【解決手段】金属張積層板100は、金属層110Aと、この金属層110Aの少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層40Aと、金属層110Bと、この金属層110Bの少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層40Bと、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bに当接するようにこれらの間に積層された接着層ADと、を備えている。樹脂積層体101の合計厚みT1は70~500μmの範囲内、合計厚みT1に対する接着層ADの厚みT2の比率(T2/T1)が0.10~0.96の範囲内であり、接着層ADが(A)熱可塑性ポリイミド及び(B)重量平均分子量が100,000以下であるポリスチレンエラストマーを含有する。【選択図】図1

Description

本発明は、電子部品として有用な金属張積層板及び回路基板、それを用いる電子デバイス及び電子機器に関する。
近年、電子機器の小型化、軽量化、省スペース化の進展に伴い、薄く軽量で、可撓性を有し、屈曲を繰り返しても優れた耐久性を持つフレキシブルプリント配線板(FPC;Flexible Printed Circuits)の需要が増大している。FPCは、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、例えば、HDD、DVD、スマートフォン等の電子機器の配線や、ケーブル、コネクター等の部品にその用途が拡大しつつある。FPC等の回路基板の材料として、金属層と樹脂層とが積層された金属張積層板が用いられている。
高密度化に加えて、機器の高性能化が進んだことから、伝送信号の高周波化への対応も必要とされている。高周波信号を伝送する際に伝送経路における伝送損失が大きいと電気信号のロスや信号の遅延時間が長くなるなどの不都合が生じる。また、5G通信の普及により、スマートフォンに代表されるモバイル通信機器は膨大な情報量を伝送するため、伝送信号の高周波化とともに複数の周波数帯の信号を伝送する方式が採用される。このような高周波信号伝送用のFPC向けの金属張積層板には、伝送ロスの改善の観点で、低誘電正接且つ厚膜の樹脂層とすることが有効である。
伝送信号の高周波化に対応するために、一対の片面金属張積層板の絶縁樹脂層の間に厚みの大きな接着層を介在させた積層構造の金属張積層板が提案されている(例えば、特許文献1、2)。ここで、特許文献1では、接着層の材質として、ダイマージアミン(DDA)を原料とする熱可塑性ポリイミドが使用されている。また、特許文献2では、接着層の材質として、特定の貯蔵弾性率挙動を有する熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が使用されている。特許文献1で使用されているダイマージアミンを原料とする熱可塑性ポリイミドは、溶剤に可溶性であり、接着性に優れ、ハンドリング性が良好であることから接着剤として有用な樹脂材料であるが、高周波化の進展に対応するためには、いっそうの低誘電正接化が求められる。
一方、樹脂フィルムの誘電特性を改善するため、熱可塑性ポリイミドに酸価が10mgKOH/g以下のポリスチレンエラストマーを配合した樹脂フィルムが提案されている(例えば、特許文献3)。
特開2018-170417号公報 特開2020-55299号公報 特開2022-99778号公報
金属張積層板を材料としてFPCなどの回路基板に加工する場合、ビアホールやスルーホールを形成した後、ホール内壁にめっき加工が施される。回路基板は、電子機器の使用態様に応じて、例えば-65℃~125℃程度の温度範囲内での加熱・冷却が繰り返される環境に置かれる。そのため、ビアホールやスルーホールのめっき部位に熱膨張・収縮による応力が集中し、ひび割れ(クラック)が発生するという問題があった。このようなひび割れは、ビアホールやスルーホールにおける導通不良の原因となり、接続信頼性を大きく損なう原因となる。
上記特許文献1、2の金属張積層板では、比較的に低い誘電正接を有する接着層の厚み比率を大きくすることによって高周波信号伝送への対応を図っているため、回路加工後の接続信頼性が低下しやすくなることが懸念されるが、接着層の厚み比率を小さくすると、所望の誘電特性が得られなくなる、という側面があった。つまり、特許文献1、2のような積層構造を有する金属張積層板において、回路加工後の接続信頼性と誘電特性の改善とはトレードオフの関係にあった。特許文献3の樹脂フィルムは優れた誘電特性を有するものであるが、配合されているポリスチレンエラストマーの重量平均分子量が大きいために低誘電正接化に限界があり、特許文献1、2のような積層構造の接着層へ適用する場合には、依然として接着層の厚み比率を大きくせざるを得ず、回路加工後の接続信頼性の確保が難しくなることから、さらなる改善の余地が残されていた。
従って、本発明の目的は、絶縁樹脂層の間に接着層を介在させた積層構造を有する金属張積層板において、優れた誘電特性と回路加工後の接続信頼性とを両立させることである。
本発明者らは、接着層の材質について鋭意研究を行った結果、特定の分子量を有するポリスチレンエラストマーを配合した樹脂フィルムが極めて低い誘電正接を示すこと、及び、このような樹脂フィルムを、絶縁樹脂層の間に接着層を介在させた積層構造を有する金属張積層板における接着層として適用することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の金属張積層板は、第1の金属層と、
前記第1の金属層の少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、
第2の金属層と、
前記第2の金属層の少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、
前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層に当接するようにこれらの間に積層された接着層と、
を備えている。
本発明の金属張積層板は、前記第1の絶縁樹脂層と前記接着層と前記第2の絶縁樹脂層とからなる樹脂積層体の合計厚みT1が70~500μmの範囲内であるとともに、前記合計厚みT1に対する前記接着層の厚みT2の比率(T2/T1)が0.10~0.96の範囲内である。
そして、本発明の金属張積層板は、前記接着層が、下記の(A)成分及び(B)成分;
(A)熱可塑性ポリイミド、
及び
(B)重量平均分子量が100,000以下であるポリスチレンエラストマー、
を含有することを特徴とする。
本発明の金属張積層板は、前記(A)成分の100重量部に対する前記(B)成分の含有量が10重量部以上350重量部以下の範囲内であってもよい。
本発明の金属張積層板は、前記樹脂積層体の10GHzにおける誘電正接が0.0030以下であってもよく、前記接着層の10GHzにおける誘電正接が0.0013未満であってもよい。
本発明の金属張積層板において、前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層は、それぞれ、125℃での貯蔵弾性率が1.0×10~8.0×10Paの範囲内であってもよい。
本発明の金属張積層板は、前記樹脂積層体における25℃の基準温度から125℃までの厚み方向の平均熱膨張係数が400ppm/K未満であってもよい。
本発明の金属張積層板は、前記樹脂積層体全体として、厚み方向に直交する面内方向における250℃から100℃までの平均熱膨張係数が10ppm/K以上30ppm/K以下の範囲内であってもよい。
本発明の金属張積層板は、前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層が、共に、熱可塑性ポリイミド層、非熱可塑性ポリイミド層及び熱可塑性ポリイミド層がこの順に積層された多層構造を有していてもよく、
前記接着層は、2つの前記熱可塑性ポリイミド層に接して設けられていてもよい。
本発明の回路基板は、第1の配線層と、
前記第1の配線層の少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、
第2の配線層と、
前記第2の配線層の少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、
前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層に当接するようにこれらの間に積層された接着層と、
を備えている。
本発明の回路基板は、前記第1の絶縁樹脂層と前記接着層と前記第2の絶縁樹脂層とからなる樹脂積層体の合計厚みT1が70~500μmの範囲内であるとともに、前記合計厚みT1に対する前記接着層の厚みT2の比率(T2/T1)が0.10~0.96の範囲内である。
そして、本発明の回路基板は、
前記接着層が、下記の(A)成分及び(B)成分;
(A)熱可塑性ポリイミド、
及び
(B)重量平均分子量が100,000以下であるポリスチレンエラストマーを含有することを特徴とする。
本発明の電子デバイスは、上記回路基板を備えていることを特徴とする。
本発明の電子機器は、上記回路基板を備えていることを特徴とする。
本発明の金属張積層板は、絶縁樹脂層の間に接着層を介在させた積層構造において、特定の分子量を有するポリスチレンエラストマーを配合した接着層によって、必ずしも接着層の厚み比率を大きくしなくても樹脂層全体の誘電正接を十分に低く抑えることが可能となり、優れた誘電特性と回路加工後の接続信頼性とを両立させることができる。そのため、本発明の金属張積層板を用いて製造される回路基板は、ビアホールやスルーホールにおける導通が確保され、優れた接続信頼性を有するとともに、高周波信号伝送への対応を図ることが可能となる。
本発明の好ましい実施の形態の金属張積層板の厚み方向の断面構造を示す模式図である。
本発明の実施の形態について、適宜図面を参照して説明する。
[金属張積層板]
図1は、本発明の好ましい実施の形態にかかる金属張積層板100の断面構成を示している。金属張積層板100は、金属層110Aと、この金属層110Aの少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層40Aと、金属層110Bと、この金属層110Bの少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層40Bと、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bに当接するようにこれらの間に積層された接着層ADと、を備えている。金属張積層板100において、第1の絶縁樹脂層40Aと接着層ADと第2の絶縁樹脂層40Bは、この順に積層されて樹脂積層体101を形成している。したがって、金属張積層板100は、樹脂積層体101の両側に、金属層110Aと金属層110Bが積層された構造である。金属張積層板100の好ましい態様において、金属層110Aと金属層110Bは、それぞれ最も外側に位置し、それらの内側に第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bが配置され、さらに第1の絶縁樹脂層40Aと第2の絶縁樹脂層40Bの間には、接着層ADが介在配置されている。このような層構成を有する金属張積層板100は、金属層110Aと第1の絶縁樹脂層40Aとが積層された第1の片面金属張積層板と、金属層110Bと第2の絶縁樹脂層40Bとが積層された第2の片面金属張積層板とを、互いの絶縁樹脂層側が向き合うように接着層ADで貼り合わせた構造を有していると考えることもできる。
以下、金属張積層板100の構成について、金属層、絶縁樹脂層、接着層、樹脂積層体及びこれらの層厚の順に具体的に説明する。
<金属層>
金属層110A,110Bの材質としては、特に制限はなく、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。銅箔は、圧延銅箔でも電解銅箔でもよく、市販されている銅箔を用いることができる。なお、後述する本実施の形態の回路基板における配線層の材質も金属層110A,110Bと同様である。
また、金属箔は、例えば、防錆処理や、接着力の向上を目的として、例えばサイディング、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤等による表面処理を施してもよい。
<絶縁樹脂層>
第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bを構成する樹脂としては、電気的絶縁性を有する樹脂であれば特に限定はなく、例えばポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、ETFEなどを挙げることができるが、ポリイミドが好ましい。なお、本発明でポリイミドという場合、ポリイミドの他、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリシロキサンイミド、ポリベンズイミダゾールイミドなど、分子構造中にイミド基を有するポリマーからなる樹脂を意味する。
また、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bは、単層に限らず、複数の樹脂層が積層されたものであってもよい。代表的に図1では好ましい例として、第1の絶縁樹脂層40Aが熱可塑性ポリイミド層10Aと非熱可塑性ポリイミド層20Aと熱可塑性ポリイミド層30Aとの3層積層構造を有し、第2の絶縁樹脂層40Bが、熱可塑性ポリイミド層10Bと非熱可塑性ポリイミド層20Bと熱可塑性ポリイミド層30Bとの3層積層構造を有する構成例を示している。この場合、金属張積層板100は、金属層110A/熱可塑性ポリイミド層10A/非熱可塑性ポリイミド層20A/熱可塑性ポリイミド層30A/接着層AD/熱可塑性ポリイミド層30B/非熱可塑性ポリイミド層20B/熱可塑性ポリイミド層10B/金属層110Bがこの順番に積層された層構成を有することになる。ただし、図1はあくまでも例示であることから、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bは、ポリイミド以外の材質で構成されていてもよいし、また、3層構造である必要なく、それぞれ単層でも2層でもよく、4層以上であってもよい。
図1に示す構成例において、熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bは、それぞれ、同一もしくは異なる種類の熱可塑性ポリイミドによって構成されていてもよい。また、非熱可塑性ポリイミド層20Aと非熱可塑性ポリイミド層20Bも、同一もしくは異なる種類の非熱可塑性ポリイミドによって構成されていてもよい。
なお、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bには、例えば可塑剤、エポキシ樹脂などの硬化樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、有機もしくは無機フィラー、カップリング剤、難燃剤などを適宜配合することができる。
第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bは、例えば回路基板に適用する場合において誘電損失を抑制するために、10GHzにおける誘電正接が、好ましくは0.02以下、より好ましくは0.0005以上0.01以下の範囲内、更に好ましくは0.001以上0.008以下の範囲内であることがよい。第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bの10GHzにおける誘電正接が0.02を超えると、回路基板に適用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。なお、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bの10GHzにおける誘電正接の下限値は特に制限されないが、回路基板の絶縁樹脂層としての物性制御を考慮している。
また、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bは、回路基板の絶縁層として適用する場合においてインピーダンス整合性を確保するために、それぞれ、10GHzにおける比誘電率が4.0以下であることが好ましい。第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bの10GHzにおける比誘電率が4.0を超えると、回路基板に適用した際に、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bの誘電損失の増大に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
なお、本発明における比誘電率及び誘電正接は、後記実施例に記載した方法・条件で測定することができる。
また、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bは、樹脂積層体101全体における厚み方向の平均熱膨張係数を適切に制御するために、それぞれ、125℃での貯蔵弾性率が1.0×10~8.0×10Paの範囲内であることが好ましく、2.0×10~7.0×10Paの範囲内であることがより好ましく、2.0×10~6.0×10Paの範囲内がさらに好ましい。125℃での貯蔵弾性率が1.0×10Pa未満では、回路基板材料として必要な機械的強度などの物性が得られなくなる場合があり、また、図1に示すような積層構造において後述する構成の接着層ADと組み合わせて適用したときに、厚み方向の平均熱膨張係数を所望の値に制御することが困難になる場合がある。その一方で、125℃での貯蔵弾性率が8.0×10Paを超えると、回路基板として高温環境下に晒された時に周囲の配線や絶縁層に大きな応力がかかり接続信頼性を損なう場合がある。
次に、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bを構成する非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bと、熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bについて説明する。なお、本発明において、「熱可塑性ポリイミド」とは、一般にガラス転移温度(Tg)が明確に確認できるポリイミドのことであるが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×10Pa未満であるポリイミドをいう。また、「非熱可塑性ポリイミド」とは、一般に加熱しても軟化、接着性を示さないポリイミドのことであるが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×10Pa以上であるポリイミドをいう。
非熱可塑性ポリイミド:
非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bに用いるポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸無水物成分を含む酸無水物成分と、脂肪族ジアミン及び/又は芳香族ジアミン等を含むジアミン成分と、を反応させて得られる非熱可塑性ポリイミドが好ましい。酸無水物及びジアミンとしては、非熱可塑性ポリイミドの合成に一般的に用いられるモノマーを使用できるが、非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bの貯蔵弾性率を適切な範囲に制御する上で、以下に例示するものが好ましい。酸無水物及びジアミンの種類や、2種以上の酸無水物又はジアミンを使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張性、接着性、貯蔵弾性率、ガラス転移温度等を制御することができる。
非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bを構成する非熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含むものである。なお、本発明において、テトラカルボン酸残基とは、テトラカルボン酸二無水物から誘導された4価の基のことを表し、ジアミン残基とは、ジアミン化合物から誘導された2価の基のことを表す。非熱可塑性ポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導される芳香族テトラカルボン酸残基及び芳香族ジアミンから誘導される芳香族ジアミン残基を含むことが好ましい。
(テトラカルボン酸残基)
非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bを構成する非熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基として、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及び1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物(TAHQ)の少なくとも1種から誘導されるテトラカルボン酸残基並びにピロメリット酸二無水物(PMDA)及び2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)の少なくとも1種から誘導されるテトラカルボン酸残基を含有することが好ましい。
BPDAから誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「BPDA残基」ともいう。)及びTAHQから誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「TAHQ残基」ともいう。)は、ポリマーの秩序構造を形成しやすく、分子の運動抑制により誘電正接や吸湿性を低下させることができる。BPDA残基は、ポリイミド前駆体のポリアミド酸としてのゲル膜の自己支持性を付与できるが、その一方で、イミド化後の面内方向の平均熱膨張係数を増大させるとともに、ガラス転移温度を低くして耐熱性を低下させる傾向になる。
このような観点から、非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bを構成する非熱可塑性ポリイミドが、全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、BPDA残基及びTAHQ残基の合計を好ましくは30モル部以上60モル部以下の範囲内、より好ましくは40モル部以上50モル部以下の範囲内で含有するように制御することがよい。BPDA残基及びTAHQ残基の合計が30モル部未満では、ポリマーの秩序構造の形成が不十分となって、耐吸湿性が低下したり、誘電正接の低減が不十分となり、60モル部を超えると、面内方向の平均熱膨張係数が増加したり、耐熱性が低下したりするおそれがある。
また、ピロメリット酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「PMDA残基」ともいう。)及び2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「NTCDA残基」ともいう。)は、剛直性を有するため、面内配向性を高め、面内方向の平均熱膨張係数を低く抑えるとともに、ガラス転移温度の制御の役割を担う残基である。一方で、PMDA残基は、分子量が小さいため、その量が多くなり過ぎると、ポリマーのイミド基濃度が高くなり、極性基が増加して吸湿性が大きくなってしまい、分子鎖内部の水分の影響により誘電正接が増加する。また、NTCDA残基は、剛直性が高いナフタレン骨格によりフィルムが脆くなりやすく、弾性率を増大させる傾向になる。
そのため、非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bを構成する非熱可塑性ポリイミドは、全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、PMDA残基及びNTCDA残基の合計を好ましくは40モル部以上70モル部以下の範囲内、より好ましくは50モル部以上60モル部以下の範囲内、さらに好ましくは50~55モル部の範囲内で含有する。PMDA残基及びNTCDA残基の合計が40モル部未満では、面内方向の平均熱膨張係数が増加したり、耐熱性が低下したりするおそれがあり、70モル部を超えると、ポリマーのイミド基濃度が高くなり、極性基が増加して低吸湿性が損なわれ、誘電正接が増加するおそれやフィルムが脆くなりフィルムの自己支持性が低下するおそれがある。
また、BPDA残基及びTAHQ残基の少なくとも1種並びにPMDA残基及びNTCDA残基の少なくとも1種の合計が、全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して80モル部以上、好ましくは90モル部以上であることがよい。
また、BPDA残基及びTAHQ残基の少なくとも1種と、PMDA残基及びNTCDA残基少なくとも1種のモル比{(BPDA残基+TAHQ残基)/(PMDA残基+NTCDA残基)}を0.4以上1.5以下の範囲内、好ましくは0.6以上1.3以下の範囲内、より好ましくは0.8以上1.2以下の範囲内とし、面内方向の平均熱膨張係数とポリマーの秩序構造の形成を制御することがよい。
PMDA及びNTCDAは、剛直骨格を有するため、他の一般的な酸無水物成分に比べて、ポリイミド中の分子の面内配向性の制御が可能であり、面内方向の平均熱膨張係数の抑制とガラス転移温度(Tg)の向上効果がある。また、BPDA及びTAHQは、PMDAと比較し分子量が大きいため、仕込み比率の増加によりイミド基濃度が低下することで、誘電正接の低下や吸湿率の低下に効果がある。一方でBPDA及びTAHQの仕込み比率が増加すると、ポリイミド中の分子の面内配向性が低下し、面内方向の平均熱膨張係数の増加に繋がる。さらに分子内の秩序構造の形成が進み、ヘイズ値が増加する。このような観点から、PMDA及びNTCDAの合計の仕込み量は、原料の全酸無水物成分の100モル部に対し、40~70モル部の範囲内、好ましくは50~60モル部の範囲内、より好ましくは50~55モル部の範囲内がよい。原料の全酸無水物成分の100モル部に対し、PMDA及びNTCDAの合計の仕込み量が40モル部未満であると、分子の面内配向性が低下し、面内方向の平均熱膨張係数を低く抑えることが困難となり、またTgの低下による加熱時におけるフィルムの耐熱性や寸法安定性が低下する。一方、PMDA及びNTCDAの合計の仕込み量が70モル部を超えると、イミド基濃度の増加により吸湿率が増大したり、弾性率を増大させる傾向になる。
また、BPDA及びTAHQは、分子運動の抑制やイミド基濃度の低下による低誘電正接化、吸湿率低下に効果があるが、イミド化後のポリイミドフィルムとしての面内方向の平均熱膨張係数を増大させる。このような観点から、BPDA及びTAHQの合計の仕込み量は、原料の全酸無水物成分の100モル部に対し、30~60モル部の範囲内、好ましくは40~50モル部の範囲内、より好ましくは40~45モル部の範囲内がよい。
非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bを構成する非熱可塑性ポリイミドに含まれる、上記BPDA残基、TAHQ残基、PMDA残基、NTCDA残基以外のテトラカルボン酸残基としては、例えば、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、2,3',3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート等の芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基が挙げられる。
(ジアミン残基)
非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bを構成する非熱可塑性ポリイミドに含まれるジアミン残基としては、一般式(A1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が好ましい。
Figure 2024050431000002
式(A1)において、連結基Zは単結合又は-COO-を示し、Yは独立に、ハロゲン原子若しくはフェニル基で置換されてもよい炭素数1~3の1価の炭化水素、又は炭素数1~3のアルコキシ基、又は炭素数1~3のパーフルオロアルキル基、又はアルケニル基を示し、nは0~2の整数を示し、p及びqは独立に0~4の整数を示す。ここで、「独立に」とは、上記式(A1)において、複数の置換基Y、さらに整数p、qが、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。なお、上記式(A1)において、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば-NR(ここで、R,Rは、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
一般式(A1)で表されるジアミン化合物(以下、「ジアミン(A1)」と記すことがある)は、1ないし3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。ジアミン(A1)は、剛直構造を有しているため、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有している。そのため、ガス透過性が低く、低吸湿性のポリイミドが得られ、分子鎖内部の水分を低減できるため、誘電正接を下げることができる。ここで、連結基Zとしては、単結合が好ましい。
ジアミン(A1)としては、例えば、1,4-ジアミノベンゼン(p-PDA;パラフェニレンジアミン)、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)、2,2’-n-プロピル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-NPB)、4-アミノフェニル-4’-アミノベンゾエート(APAB)等を挙げることができる。
非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bを構成する非熱可塑性ポリイミドは、ジアミン(A1)から誘導されるジアミン残基を、全ジアミン残基の100モル部に対して、好ましくは80モル部以上、より好ましくは85モル部以上含有することがよい。ジアミン(A1)を上記範囲内の量で使用することによって、モノマー由来の剛直構造により、ポリマー全体に秩序構造が形成されやすくなり、ガス透過性が低く、低吸湿性、かつ低誘電正接である非熱可塑性ポリイミドが得られやすい。
また、非熱可塑性ポリイミドにおける全ジアミン残基の100モル部に対して、ジアミン(A1)から誘導されるジアミン残基が80モル部以上85モル部以下の範囲内である場合は、より剛直であり、面内配向性に優れる構造であるという観点から、ジアミン(A1)として、1,4-ジアミノベンゼンを用いることが好ましい。
非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bを構成する非熱可塑性ポリイミドに含まれるその他のジアミン残基としては、例えば、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシベンジジン、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン、2'-メトキシ-4,4'-ジアミノベンズアニリド、4,4'-ジアミノベンズアニリド、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、6-アミノ-2-(4-アミノフェノキシ)ベンゾオキサゾール等の芳香族ジアミン化合物から誘導されるジアミン残基、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマー酸型ジアミン等の脂肪族ジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。
なお、非熱可塑性ポリイミドに含まれるテトラカルボン酸残基及びジアミン残基を、いずれも芳香族基とすることで、高温環境下での寸法精度を向上させることができるため好ましい。
非熱可塑性ポリイミドは、上記のテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を溶媒中で反応させ、ポリアミド酸を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0~100℃の範囲内の温度で30分~24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5~50重量%の範囲内、好ましくは10~40重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶媒の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の濃度が5~50重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
合成されたポリアミド酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリアミド酸は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。ポリアミド酸の溶液の粘度は、500mPa・s~100,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、例えば、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。
ポリアミド酸をイミド化させて非熱可塑性ポリイミドを形成させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80~400℃の範囲内の温度条件で1~24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
非熱可塑性ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000~400,000の範囲内が好ましく、50,000~350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、フィルムの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際にフィルム厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bは、耐熱性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が280℃以上であることが好ましく、さらに、300℃以上であることがより好ましい。
また、反りを抑制する観点から、非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bの厚み方向に直交する面内方向の250℃から100℃までの平均熱膨張係数は、1ppm/K以上30ppm/K以下の範囲内、好ましくは1ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内、より好ましくは15ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内にあることがよい。
また、非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bに用いる非熱可塑性ポリイミドには、任意成分として、例えば可塑剤、エポキシ樹脂などの他の硬化樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、カップリング剤、充填剤、難燃剤などを適宜配合することができる。
熱可塑性ポリイミド:
熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bに用いるポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸無水物成分を含む酸無水物成分と、脂肪族ジアミン及び/又は芳香族ジアミンと、を反応させて得られる熱可塑性ポリイミドが好ましい。酸無水物及びジアミンとしては、熱可塑性ポリイミドの合成に一般的に用いられるモノマーを使用できるが、熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bの貯蔵弾性率を適切な範囲に制御する上で、以下に例示するものが好ましい。酸無水物及びジアミンの種類や、2種以上の酸無水物又はジアミンを使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張性、接着性、貯蔵弾性率、ガラス転移温度等を制御することができる。また、誘電特性を改善する観点から、熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bに用いるポリイミドとして、接着層ADを形成するための(A)成分の熱可塑性ポリイミドを使用することも好ましい。
熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bを構成する熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含むものであり、芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導される芳香族テトラカルボン酸残基及び芳香族ジアミンから誘導される芳香族ジアミン残基を含むことが好ましい。
(テトラカルボン酸残基)
熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bを構成する熱可塑性ポリイミドに用いるテトラカルボン酸残基としては、上記非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bを構成する非熱可塑性ポリイミドにおけるテトラカルボン酸残基として例示したものと同様のものを用いることができる。
(ジアミン残基)
熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bを構成する熱可塑性ポリイミドに含まれるジアミン残基としては、一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が好ましい。
Figure 2024050431000003
式(B1)~(B7)において、Rは独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基Aは独立に-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO-、-COO-、-CH-、-C(CH-、-NH-若しくは-CONH-から選ばれる2価の基を示し、nは独立に0~4の整数を示す。ただし、式(B3)中から式(B2)と重複するものは除き、式(B5)中から式(B4)と重複するものは除くものとする。ここで、「独立に」とは、上記式(B1)~(B7)の内の一つにおいて、または二つ以上において、複数の連結基A、複数のR若しくは複数のnが、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。なお、上記式(B1)~(B7)において、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば-NR(ここで、R,Rは、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
式(B1)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B1)」と記すことがある)は、2つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B1)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B1)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-、-CH-、-C(CH-、-CO-、-SO-、-S-、-COO-が好ましい。
ジアミン(B1)としては、例えば、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、(3,3’-ビスアミノ)ジフェニルアミン等を挙げることができる。
式(B2)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B2)」と記すことがある)は、3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B2)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B2)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
ジアミン(B2)としては、例えば1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、3-[3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン等を挙げることができる。
式(B3)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B3)」と記すことがある)は、3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B3)は、1つのベンゼン環に直結した、2つの2価の連結基Aが互いにメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B3)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
ジアミン(B3)としては、例えば1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4'-[2-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[4-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[5-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン等を挙げることができる。
式(B4)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B4)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B4)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B4)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-、-CH-、-C(CH-、-SO-、-CO-、-CONH-が好ましい。
ジアミン(B4)としては、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド等を挙げることができる。
式(B5)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B5)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B5)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結した、2つの2価の連結基Aが互いにメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B5)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
ジアミン(B5)としては、4-[3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]フェノキシ]アニリン、4,4’-[オキシビス(3,1-フェニレンオキシ)]ビスアニリン等を挙げることができる。
式(B6)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B6)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B6)は、少なくとも2つのエーテル結合を有することで高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B6)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-C(CH-、-O-、-SO-、-CO-が好ましい。
ジアミン(B6)としては、例えば、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)等を挙げることができる。
式(B7)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B7)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B7)は、ジフェニル骨格の両側に、それぞれ屈曲性の高い2価の連結基Aを有するため、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B7)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
ジアミン(B7)としては、例えば、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル等を挙げることができる。
熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bを構成する熱可塑性ポリイミドは、全ジアミン残基の100モル部に対して、ジアミン(B1)~ジアミン(B7)から選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を60モル部以上、好ましくは60モル部以上99モル部以下の範囲内、より好ましくは70モル部以上95モル部以下の範囲内で含有することがよい。ジアミン(B1)~ジアミン(B7)は、屈曲性を有する分子構造を持つため、これらから選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物を上記範囲内の量で使用することによって、ポリイミド分子鎖の柔軟性を向上させ、熱可塑性を付与することができる。原料中のジアミン(B1)~ジアミン(B7)の合計量が全ジアミン成分の100モル部に対して60モル部未満であるとポリイミド樹脂の柔軟性不足で十分な熱可塑性が得られない。
また、熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bを構成する熱可塑性ポリイミドに含まれるジアミン残基としては、上記一般式(A1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基も好ましい。式(A1)で表されるジアミン化合物[ジアミン(A1)]については、非熱可塑性ポリイミドの説明で述べたとおりである。ジアミン(A1)は、剛直構造を有し、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有しているため、分子の運動抑制により誘電正接や吸湿性を低下させることができる。更に、熱可塑性ポリイミドの原料として使用することで、ガス透過性が低く、長期耐熱接着性に優れたポリイミドが得られる。
熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bを構成する熱可塑性ポリイミドは、ジアミン(A1)から誘導されるジアミン残基を、好ましくは1モル部以上40モル部以下の範囲内、より好ましくは5モル部以上30モル部以下の範囲内で含有してもよい。ジアミン(A1)を上記範囲内の量で使用することによって、モノマー由来の剛直構造により、ポリマー全体に秩序構造が形成されるので、熱可塑性でありながら、ガス透過性及び吸湿性が低く、長期耐熱接着性に優れたポリイミドが得られる。
熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bを構成する熱可塑性ポリイミドは、発明の効果を損なわない範囲で、ジアミン(A1)、(B1)~(B7)以外のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を含むことができる。
熱可塑性ポリイミドにおいて、上記テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の種類や、2種以上のテトラカルボン酸残基又はジアミン残基を適用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張係数、引張弾性率、ガラス転移温度等を制御することができる。また、熱可塑性ポリイミドにおいて、ポリイミドの構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、ランダムに存在することが好ましい。
なお、熱可塑性ポリイミドに含まれるテトラカルボン酸残基及びジアミン残基を、いずれも芳香族基とすることで、高温環境下での寸法精度を向上させることができる。
熱可塑性ポリイミド及びその前駆体の合成については、非熱可塑性ポリイミドと同様に行うことができる。
熱可塑性ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000~400,000の範囲内が好ましく、50,000~350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、フィルムの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際にフィルム厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bは、金属箔や他の絶縁層材料との接着性発現の観点から、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上300℃未満の範囲内であることが好ましく、さらに、200~290℃であることがより好ましく、200℃~280℃であることが最も好ましい。
また、反りを抑制する観点から、熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bは、厚み方向に直交する面内方向の250℃から100℃までの平均熱膨張係数が、30ppm/K以上、好ましくは30ppm/K以上100ppm/K以下の範囲内、より好ましくは30ppm/K以上80ppm/K以下の範囲内にあることがよい。
また、熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bに用いる樹脂には、ポリイミドの他に、任意成分として、例えば可塑剤、エポキシ樹脂などの他の硬化樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、無機フィラー、カップリング剤、充填剤、難燃剤などを適宜配合することができる。
<接着層>
接着層ADは、下記の(A)成分及び(B)成分;
(A)熱可塑性ポリイミド、
及び
(B)重量平均分子量が100,000以下であるポリスチレンエラストマー、
を含有する。
(A)成分:
(A)成分は、接着性を有する熱可塑性ポリイミドである。(A)成分の熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸無水物成分と、ジアミン成分と、を反応させて得られる前駆体のポリアミド酸をイミド化したものであり、溶剤可溶性を有する。(A)成分の熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を含有する。
(テトラカルボン酸残基)
(A)成分の熱可塑性ポリイミドは、一般に熱可塑性ポリイミドに使用されるテトラカルボン酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を特に制限なく含むことができるが、全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、下記の一般式(1)で表されるテトラカルボン酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「テトラカルボン酸残基(1)と記すことがある)を、合計で90モル部以上含有することが好ましい。テトラカルボン酸残基(1)を、全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して合計で90モル部以上含有させることによって、(A)成分の熱可塑性ポリイミドの柔軟性と耐熱性の両立が図りやすく好ましい。テトラカルボン酸残基(1)の合計が90モル部未満では、(A)成分の熱可塑性ポリイミドの溶剤溶解性が低下する傾向になる。
Figure 2024050431000004
一般式(1)中、Xは、単結合、または、下式から選ばれる2価の基を示す。
Figure 2024050431000005
上記式において、Zは-C-、-(CH)n-又は-CH-CH(-O-C(=O)-CH)-CH-を示すが、nは1~20の整数を示す。
テトラカルボン酸残基(1)を誘導するためのテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物(BPADA)、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TAHQ)、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート(TMEG)などを挙げることができる。
(A)成分の熱可塑性ポリイミドは、発明の効果を損なわない範囲で、上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸無水物以外の酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を含有することができる。そのようなテトラカルボン酸残基としては、特に制限はないが、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物、2,3',3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-又は2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基が挙げられる。
(ジアミン残基)
(A)成分の熱可塑性ポリイミドは、全ジアミン残基の100モル部に対して、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物に由来するジアミン残基(以下、「ダイマー酸型ジアミン残基」と記すことがある)を20モル部以上、好ましくは40モル部以上、より好ましくは60モル部以上含有することがよい。ダイマー酸型ジアミン残基を上記の量で含有することによって、接着層ADの誘電特性を改善させるとともに、接着層ADのガラス転移温度の低温化(低Tg化)による熱圧着特性の改善及び低弾性率化による内部応力を緩和することができる。全ジアミン残基の100モル部に対して、ダイマー酸型ジアミン残基が20モル部未満であると、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bとの間に介在する接着層ADとして十分な接着性が得られないことがあり、また、高熱膨張性である接着層ADの弾性率が高くなることで、寸法安定性が損なわれるおそれがある。
ここで、ダイマージアミン組成物は、下記の(a)成分を主成分として含有し、(b)成分及び(c)成分を含有していてもよい混合物であり、(b)成分及び(c)成分の量が制御されている精製物である。
(a)ダイマージアミン
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く)
(a)成分のダイマージアミンとは、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基(-COOH)が、1級のアミノメチル基(-CH-NH)又はアミノ基(-NH)に置換されてなるジアミンを意味する。ダイマー酸は、不飽和脂肪酸の分子間重合反応によって得られる既知の二塩基酸であり、その工業的製造プロセスは業界でほぼ標準化されており、炭素数が11~22の不飽和脂肪酸を粘土触媒等にて二量化して得られる。工業的に得られるダイマー酸は、オレイン酸やリノール酸、リノレン酸などの炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られる炭素数36の二塩基酸が主成分であるが、精製の度合いに応じ、任意量のモノマー酸(炭素数18)、トリマー酸(炭素数54)、炭素数20~54の他の重合脂肪酸を含有する。また、ダイマー化反応後には二重結合が残存するが、本発明では、更に水素添加反応して不飽和度を低下させたものもダイマー酸に含めるものとする。(a)成分のダイマージアミンは、炭素数18~54の範囲内、好ましくは22~44の範囲内にある二塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるジアミン化合物、と定義することができる。
ダイマージアミンの特徴として、ダイマー酸の骨格に由来する特性を付与することができる。すなわち、ダイマージアミンは、分子量約560~620の巨大分子の脂肪族であるので、分子のモル体積を大きくし、ポリイミドの極性基を相対的に減らすことができる。このようなダイマージアミンの特徴は、ポリイミドの耐熱性の低下を抑制しつつ、比誘電率と誘電正接を小さくして誘電特性を向上させることに寄与すると考えられる。また、2つの自由に動く炭素数7~9の疎水鎖と、炭素数18に近い長さを持つ2つの鎖状の脂肪族アミノ基とを有するので、ポリイミドに柔軟性を与えるのみならず、ポリイミドを非対称的な化学構造や非平面的な化学構造とすることができるので、ポリイミドの低誘電率化を図ることができると考えられる。
ダイマージアミン組成物は、分子蒸留等の精製方法によって(a)成分のダイマージアミン含有量を96重量%以上、好ましくは97重量%以上、より好ましくは98重量%以上にまで高めたものを使用することがよい。(a)成分のダイマージアミン含有量を96重量%以上とすることで、ポリイミドの分子量分布の拡がりを抑制することができる。なお、技術的に可能であれば、ダイマージアミン組成物のすべて(100重量%)が、(a)成分のダイマージアミンによって構成されていることが最もよい。
また、ダイマージアミン組成物は、GPC測定によって得られるクロマトグラムの面積パーセントで、(b)成分及び(c)成分の合計が4%以下、好ましくは4%未満がよい。また、(b)成分のクロマトグラムの面積パーセントは、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下がよく、(c)成分のクロマトグラムの面積パーセントは、好ましくは2%以下、より好ましくは1.8%以下、更に好ましくは1.5%以下がよい。このような範囲にすることで、ポリイミドの分子量の急激な増加を抑制することができ、更に樹脂フィルムの広域の周波数での誘電正接の上昇を抑えることができる。なお、(b)成分及び(c)成分は、ダイマージアミン組成物中に含まれていなくてもよい。
ダイマージアミン組成物は、市販品を利用可能であり、例えばクローダジャパン社製のPRIAMINE1073(商品名)、同PRIAMINE1074(商品名)、同PRIAMINE1075(商品名)等が挙げられる。これらの市販品を用いる場合は、ダイマージアミン以外の成分を低減する目的で精製することが好ましく、例えばダイマージアミンを96重量%以上とすることが好ましい。精製方法としては、特に制限されないが、蒸留法や沈殿精製等の公知の方法が好適である。
また、(A)成分の熱可塑性ポリイミドは、上記の一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも1種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を、全ジアミン残基100モル部に対して、合計で20モル部以上80モル部以下の範囲内で含有することが好ましく、20モル部以上60モル部以下の範囲内で含有することがより好ましい。一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物は、屈曲性を有する分子構造を持つため、これらから選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物を上記範囲内の量で使用することによって、ポリイミド分子鎖の柔軟性を向上させ、熱可塑性を付与することができる。一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物から誘導される残基の合計量が全ジアミン残基の100モル部に対して80モル部を超えると、ポリイミドの柔軟性が不足し、またTgが上昇するため、熱圧着による残留応力が増加し、寸法安定性が損なわれるおそれがある。
(A)成分の熱可塑性ポリイミドは、発明の効果を損なわない範囲で、上記ダイマー酸型ジアミン残基及びジアミン(B1)~(B7)から誘導されるジアミン残基以外のジアミン残基を含むことができる。そのようなジアミン残基としては、熱可塑性ポリイミドに使用されるジアミン化合物として一般に使用されるものを制限なく用いることができる。
(A)成分の熱可塑性ポリイミドにおいて、上記テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の種類や、2種以上のテトラカルボン酸残基又はジアミン残基を適用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、接着層ADの平均熱膨張係数、貯蔵弾性率、ガラス転移温度等を制御することができる。また、(A)成分の熱可塑性ポリイミドにおいて、ポリイミドの構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、ランダムに存在することが好ましい。
(A)成分の熱可塑性ポリイミド及びその前駆体の合成については、非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bを構成する非熱可塑性ポリイミドや、熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bを構成する熱可塑性ポリイミドと同様に行うことができる。
(A)成分の熱可塑性ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000~400,000の範囲内が好ましく、20,000~350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、接着層ADの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際に接着層ADの厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
(A)成分の熱可塑性ポリイミドは、完全にイミド化された構造が最も好ましい。但し、ポリイミドの一部がアミド酸となっていてもよい。そのイミド化率は、フーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光製FT/IR620)を用い、1回反射ATR法にてポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1015cm-1付近のベンゼン環吸収体を基準とし、1780cm-1のイミド基に由来するC=O伸縮の吸光度から算出することができる。
(B)成分:
(B)成分のポリスチレンエラストマーは、スチレン又はその誘導体と共役ジエン化合物との共重合体であり、その水素添加物を含む。ここで、スチレン又はその誘導体としては、特に限定されるものではないが、スチレン、メチルスチレン、ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等が例示される。また、共役ジエン化合物としては、特に限定されるものではないが、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン等が例示される。
また、ポリスチレンエラストマーは水素添加されていることが好ましい。水素添加されていることによって、熱に対する安定性が一層向上し、分解や重合などの変質が起こり難くなるとともに、脂肪族的な性質が高くなり、(A)成分の熱可塑性ポリイミドとの相溶性が高まる。
(B)成分のポリスチレンエラストマーの共重合構造は、ブロック構造でもランダム構造でもよい。ポリスチレンエラストマーの好ましい具体例として、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(B)成分のポリスチレンエラストマーの重量平均分子量は100,000以下であり、50,000~100,000の範囲内であることが好ましく、70,000~100,000の範囲内がより好ましい。ポリスチレンエラストマーの重量平均分子量が100,000以下であることによって、(A)成分に対して相対的に(B)成分を多量に配合することが可能となり、接着層ADの誘電特性を大幅に改善することが可能になる。具体的には、例えば(A)成分100重量部に対して(B)成分を76~250重量部の範囲内の高濃度で配合しても、これらを含有する樹脂組成物の粘度上昇が抑えられ、ポリスチレンエラストマーの配合による誘電正接の低減作用を最大限に発現させることが可能となる。
一方、ポリスチレンエラストマーの重量平均分子量が100,000を超えて大きくなりすぎると、(A)成分と混合したときに樹脂組成物の粘度が高くなるために樹脂フィルムの作製が困難となることがあり、その結果、(B)成分の配合量が制約されるため、接着層ADの10GHzにおける誘電正接を0.0020未満まで低下させることが困難になる。
(B)成分のポリスチレンエラストマーの酸価は、例えば10mgKOH/g以下が好ましく、1mgKOH/g以下がより好ましく、0mgKOH/gであることがさらに好ましい。(A)成分の熱可塑性ポリイミドに酸価が10mgKOH/g以下であるポリスチレンエラストマーを配合することによって、接着層ADを形成したときの誘電正接を低下させ得るとともに良好なピール強度を維持することができる。それに対して、酸価が10mgKOH/gを超えて大きくなりすぎると、極性基の増加によって誘電特性が悪化するとともに、(A)成分との相溶性が悪くなって接着層ADを形成したときの密着性が低下する。したがって、酸価は低いほどよく、酸変性していないもの(つまり、酸価が0mgKOH/gであるもの)が本発明の(B)成分として最も適している。本発明では、(A)成分の熱可塑性ポリイミドが脂肪族ジアミン由来の残基を含有する場合に優れた接着性を発現させることが可能となるため、酸変性されていない(つまり、脂肪族的な性質が強い)ポリスチレンエラストマーを用いても、接着強度の低下を回避することができる。
(B)成分のポリスチレンエラストマーは、スチレン単位[-CHCH(C)-]の含有比率が10重量%以上65重量%以下の範囲内であることが好ましく、20重量%以上65重量%以下の範囲内であることがより好ましく、30重量%以上60重量%以下の範囲内であることが最も好ましい。ポリスチレンエラストマー中のスチレン単位の含有比率が10重量%未満では樹脂の弾性率が低下してフィルムとしてのハンドリング性が悪化し、65重量%を超えて高くなると、樹脂が剛直になり、接着剤としての使用が困難となるほか、ポリスチレンエラストマー中のゴム成分が少なくなるため、誘電特性の悪化に繋がる。
また、スチレン単位の含有比率が上記範囲内であることによって、接着層AD中の芳香環の割合が高くなるため、接着層ADを用いて回路基板を製造する過程でレーザー加工によりビアホール(貫通孔)及びブラインドビアホールを形成する場合に、紫外線領域の吸収性を高めることが可能となり、レーザー加工性をより向上させることができる。
(B)成分のポリスチレンエラストマーとしては、市販品を適宜選定して用いることができる。そのような市販のポリスチレンエラストマーとして、例えば、KRATON社製のMD1653MO(商品名)、G1653VO(商品名)、G1726VS(商品名)などを好ましく使用することができる。
接着層ADは、(A)成分の熱可塑性ポリイミドがケトン基を有する場合に、該ケトン基と、少なくとも2つの第1級のアミノ基を官能基として有するアミノ化合物のアミノ基を反応させてC=N結合を形成させることによって、架橋構造を形成することができる。架橋構造の形成によって、(A)成分の熱可塑性ポリイミドの耐熱性を向上させることができる。ケトン基を有する(A)成分の熱可塑性ポリイミドを形成するために好ましいテトラカルボン酸無水物としては、例えば3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)を、ジアミン化合物としては、例えば、4,4’―ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゾフェノン(BABP)、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン(BABB)等の芳香族ジアミンを挙げることができる。
(A)成分の熱可塑性ポリイミドの架橋形成に使用可能なアミノ化合物としては、ジヒドラジド化合物、芳香族ジアミン、脂肪族アミン等を例示することができる。これらの中でも、ジヒドラジド化合物が好ましい。ジヒドラジド化合物以外の脂肪族アミンは、室温でも架橋構造を形成しやすく、ワニスの保存安定性の懸念があり、一方、芳香族ジアミンは、架橋構造の形成のために高温にする必要がある。ジヒドラジド化合物を使用した場合は、ワニスの保存安定性と硬化時間の短縮化を両立させることができる。ジヒドラジド化合物としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6-ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4-ビスベンゼンジヒドラジド、1,4-ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6-ピリジン二酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物が好ましい。以上のジヒドラジド化合物は、単独でもよいし、2種類以上混合して用いることもできる。
(A)成分の熱可塑性ポリイミドを架橋形成させる場合は、ケトン基を有する(A)成分の熱可塑性ポリイミドを含む樹脂溶液に、上記アミノ化合物を加えて、(A)成分の熱可塑性ポリイミド中のケトン基とアミノ化合物の第1級アミノ基とを縮合反応させる。この縮合反応により、樹脂溶液は硬化して硬化物となる。この場合、アミノ化合物の添加量は、ケトン基1モルに対し、第1級アミノ基が合計で0.004モル~1.5モル、好ましくは0.005モル~1.2モル、より好ましくは0.03モル~0.9モル、最も好ましくは0.04モル~0.5モルとなるようにアミノ化合物を添加することができる。ケトン基1モルに対して第1級アミノ基が合計で0.004モル未満となるようなアミノ化合物の添加量では、アミノ化合物による(A)成分の熱可塑性ポリイミドの架橋が十分ではないため、硬化させた後の接着層ADにおいて耐熱性が発現しにくい傾向となり、アミノ化合物の添加量が1.5モルを超えると未反応のアミノ化合物が熱可塑剤として作用し、接着層ADの耐熱性を低下させる傾向がある。
架橋形成のための縮合反応の条件は、(A)成分の熱可塑性ポリイミドにおけるケトン基とアミノ化合物の第1級アミノ基が反応してイミン結合(C=N結合)を形成する条件であれば、特に制限されない。加熱縮合の温度は、縮合によって生成する水を系外へ放出させるため、又は(A)成分の熱可塑性ポリイミドの合成後に引き続いて加熱縮合反応を行なう場合に当該縮合工程を簡略化するため等の理由で、例えば120~220℃の範囲内が好ましく、140~200℃の範囲内がより好ましい。反応時間は、30分~24時間程度が好ましく、反応の終点は、例えばフーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光製FT/IR620)を用い、赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1670cm-1付近のポリイミド樹脂におけるケトン基に由来する吸収ピークの減少又は消失、及び1635cm-1付近のイミン基に由来する吸収ピークの出現により確認することができる。
(A)成分の熱可塑性ポリイミドのケトン基とアミノ化合物の第1級のアミノ基との加熱縮合は、例えば、(A)成分の熱可塑性ポリイミドと(B)成分のポリスチレンエラストマーとアミノ化合物を含有する樹脂組成物を所定の形状に加工した後(例えば任意の基材に塗布した後やフィルム状に形成した後)に加熱する方法等によって行うことができる。
(A)成分の熱可塑性ポリイミドの耐熱性付与のため、イミン結合による架橋形成の例を説明したが、これに限定されるものではなく、(A)成分の熱可塑性ポリイミドの硬化方法として、例えばエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤等を配合し硬化することも可能である。
接着層ADは、さらに必要に応じて任意成分として、発明の効果を損なわない範囲で、無機フィラー、有機フィラー、可塑剤、硬化促進剤、カップリング剤、顔料、難燃剤などを適宜配合することができる。ここで、無機フィラーとしては、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、ケイフッ化カリウム、ホスフィン酸金属塩等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
接着層ADにおいて、(A)成分100重量部に対する(B)成分の含有量は、10重量部以上350重量部以下の範囲内が好ましく、50重量部以上350重量部以下の範囲内がより好ましく、76重量部以上250重量部以下の範囲内が最も好ましい。(A)成分100重量部に対する(B)成分の含有量が10重量部未満では、誘電正接を低下させる効果が十分に発現しない場合がある。一方、(B)成分の重量比率が350重量部を超えると、接着層ADの接着性が低下する場合がある。
また、回路加工後の接続信頼性を確実にする目的で樹脂積層体101の厚みに対する接着層ADの厚み比率を例えば0.5未満に抑制するためには、接着層ADの誘電正接を極めて低くすることが重要である。このような観点においては、(A)成分100重量部に対する(B)成分の含有量が、50重量部以上350重量部以下の範囲内であることが好ましく、76重量部以上350重量部以下の範囲内がより好ましく、76重量部以上250重量部以下の範囲内が最も好ましい。
また、所望の誘電特性と接着性との両立を図る観点から、(A)成分と(B)成分の合計量は、接着層AD全体に対して50重量%以上であることが好ましく、60~95重量%の範囲内がより好ましく、70~95重量%の範囲内が最も好ましい。
接着層ADは、回路基板に適用する場合において、誘電損失を抑制するために、10GHzにおける誘電正接が、好ましくは0.0020未満、より好ましくは0.0013未満であることがよい。これにより、10GHz以上の高周波信号を伝送する回路基板等へ適用した際に、伝送損失を低減することが可能となる。接着層ADの10GHzにおける誘電正接が0.0020以上になると、回路基板に適用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。なお、接着層ADの10GHzにおける誘電正接の下限値は特に制限されない。
また、接着層ADは、例えば回路基板に適用する場合において、インピーダンス整合性を確保するために、10GHzにおける比誘電率が4.0以下であることが好ましい。接着層ADの10GHzにおける比誘電率が4.0を超えると、回路基板に適用した際に、接着層ADの誘電損失の増大に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
接着層ADは、厚み方向に直交する面内方向の250℃から100℃までの平均熱膨張係数が30ppm/Kを超えてもよい。接着層ADは、低弾性であるため、面内方向の平均熱膨張係数が30ppm/Kを超えても積層時に発生する内部応力を緩和することができる。
以上のような接着層ADは、優れた柔軟性と誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)を有するものである。
<樹脂積層体>
金属張積層板100は、回路加工後にビアホールやスルーホールのめっき部位でのひび割れの発生を抑制するため、第1の絶縁樹脂層40Aと接着層ADと第2の絶縁樹脂層40Bとからなる樹脂積層体101における25℃の基準温度から125℃までの厚み方向(積層方向)の平均熱膨張係数が400ppm/K未満であることが好ましい。樹脂積層体101の厚み方向の平均熱膨張係数が400ppm/K以上になると、回路加工後にビアホールやスルーホールのめっき部位に熱膨張・収縮による応力が集中し、ひび割れが発生する傾向が強くなる。ビアホールやスルーホールのめっき部位でのひび割れを防止する観点では、樹脂積層体101の厚み方向の平均熱膨張係数は小さいほどよいが、高周波信号伝送時の伝送損失を低減するために樹脂積層体101全体の低誘電正接化を考慮すると、厚み方向の平均熱膨張係数は、100~350ppm/Kの範囲内であることがより好ましく、200~300ppm/Kの範囲内であることが最も好ましい。
なお、厚み方向の平均熱膨張係数は、樹脂積層体101を構成する第1の絶縁樹脂層40Aと接着層ADと第2の絶縁樹脂層40Bの各層の貯蔵弾性率、各層の厚み、厚み比率などによって上記範囲に制御することができる。
また、金属張積層板100において、回路加工後の寸法安定性を確保するため、樹脂積層体101の厚み方向(積層方向)に直交する面内方向の250℃から100℃までの平均熱膨張係数は、例えば、10ppm/K以上がよく、好ましくは10ppm/K以上30ppm/K以下の範囲内、より好ましくは15ppm/K以上25ppm/Kの範囲内にあることがよい。面内方向の平均熱膨張係数が10ppm/K未満であるか、又は30ppm/Kを超えると、反りが発生したり、寸法安定性が低下したりする。
なお、本発明における厚み方向の平均熱膨張係数及び面内方向の平均熱膨張係数は、後記実施例に記載した方法で測定することができる。
樹脂積層体101は、例えば回路基板に適用する場合において、誘電損失を抑制するために、10GHzにおける誘電正接が、好ましくは0.0030以下、より好ましくは0.0028以下、更に好ましくは0.0025以下であることがよい。樹脂積層体101の10GHzにおける誘電正接が0.0030を超えると、回路基板に適用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
また、樹脂積層体101は、回路基板の絶縁層として適用する場合においてインピーダンス整合性を確保するために、10GHzにおける比誘電率が4.0以下であることが好ましい。樹脂積層体101の10GHzにおける比誘電率が4.0を超えると、回路基板に適用した際に誘電損失の増大に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
<層厚>
金属張積層板100において、金属層110A,110Bの厚みは特に限定されるものではないが、例えば銅箔等の金属箔を用いる場合、好ましくは35μm以下であり、より好ましくは5~25μmの範囲内がよい。生産安定性及びハンドリング性の観点から金属箔の厚みの下限値は5μmとすることが好ましい。
金属張積層板100は、樹脂積層体101の厚み(つまり、第1の絶縁樹脂層40Aと接着層ADと第2の絶縁樹脂層40Bの合計厚み)をT1としたとき、該厚みT1が70~500μmの範囲内であることが好ましく、100~300μmの範囲内であることがより好ましい。厚みT1が70μm未満では、回路基板とした際の伝送損失を低下させる効果が不十分となり、500μmを超えると、生産性低下の恐れがある。
また、接着層ADの厚みT2は、例えば1~450μmの範囲内にあることが好ましく、10~250μmの範囲内がより好ましい。接着層ADの厚みT2が上記下限値に満たないと、低誘電正接化が不十分となり、十分な誘電特性が得られず、また、絶縁樹脂層との十分な接着性が得られにくいなどの問題が生じることがある。一方、接着層ADの厚みが上記上限値を超えると、寸法安定性が低下するなどの不具合が生じることがある。
また、厚みT1に対する接着層ADの厚みT2の比率(T2/T1)は、0.1~0.96の範囲内であることが好ましく、0.1~0.75の範囲内であることがより好ましい。比率(T2/T1)が0.1未満では、低誘電正接化が不十分となり、十分な誘電特性が得られない場合があり、0.96を超えると寸法安定性が低下するなどの不具合が生じる場合がある。ここで、回路加工後の接続信頼性を確実にするという観点では、樹脂積層体101の厚み方向の平均熱膨張係数の制御を容易にするために、比率(T2/T1)を小さく設定することが好ましい。樹脂積層体101の厚み方向の平均熱膨張係数が400ppm/K未満である場合には、回路加工後のビアホールやスルーホールのめっき部位でのひび割れの発生が抑制され、接続信頼性が確保できる。本発明では、接着層ADの材質として、(A)成分の熱可塑性ポリイミドとともに(B)成分のポリスチレンエラストマーを配合していることによって、比率(T2/T1)を小さくしても樹脂積層体101を十分に低誘電正接化させることが可能である。この場合、比率(T2/T1)は、例えば0.1~0.5未満の範囲内であることが好ましく、0.1~0.45の範囲内であることがより好ましく、特に樹脂積層体101全体の低誘電正接化と、回路加工後の接続信頼性との両立を図るために、0.3~0.4の範囲内であることが最も好ましい。
第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bの厚みT3は、それぞれ、例えば、8~50μmの範囲内にあることが好ましく、12~50μmの範囲内がより好ましく、20~50μmの範囲内がさらに好ましく、38~45μmが最も好ましい。第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bの厚みT3が上記の下限値に満たないと、金属張積層板100の反りなどの問題が生じることがある。第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bの厚みT3が上記の上限値を超えると、回路基板とした際の伝送特性が低下するなどの不具合が生じる。なお、第1の絶縁樹脂層40Aと第2の絶縁樹脂層40Bは、必ずしも同じ厚みでなくてもよい。
非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bの厚みは、ベース層としての機能を確保し、且つ製造時および熱可塑性ポリイミド塗工時の搬送性の観点から、それぞれ、6μm以上45μm以下の範囲内であることが好ましく、9μm以上30μm以下の範囲内がより好ましい。非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bの厚みが上記の下限値未満である場合、電気絶縁性やハンドリング性が不十分となり、上限値を超えると、生産性が低下する。
熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bの厚みは、接着機能を確保する観点から、それぞれ、1μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましく、1μm以上5μm以下の範囲内がより好ましい。熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bの厚みが上記の下限値未満である場合、接着性が不十分となり、上限値を超えると、寸法安定性が悪化する傾向となる。
[金属張積層板の製造]
金属張積層板100は、図示は省略するが、例えば、以下の方法1、又は、方法2に従って製造できる。この場合、接着層ADを構成する(A)成分及び(B)成分は、樹脂組成物の形態で用いることが好ましい。なお、接着層ADに用いる(A)成分の熱可塑性ポリイミドについては、上記のとおり架橋形成させてもよい。
樹脂組成物は、例えば、任意の溶剤を用いて作製した(A)成分の熱可塑性ポリイミドの樹脂溶液に(B)成分のポリスチレンエラストマーを配合し、混合することによって調製することができる。このとき、熱可塑性ポリイミドとポリスチレンエラストマーとを均一に混合するため、ポリスチレンエラストマーを溶剤に溶解した状態で混合してもよく、あるいは、ポリスチレンエラストマーに対して高い溶解性を示す溶剤を添加してもよい。また、樹脂組成物は、(A)成分の熱可塑性ポリイミドを架橋形成させるためのアミノ化合物や任意成分を含むことができる。
樹脂組成物における(A)成分100重量部に対する(B)成分の含有量は、10重量部以上350重量部以下の範囲内であり、50重量部以上350重量部以下の範囲内が好ましく、76重量部以上250重量部以下の範囲内がより好ましい。(A)成分100重量部に対する(B)成分の含有量が10重量部未満では、誘電正接を低下させる効果が十分に発現しない場合がある。一方、(B)成分の重量比率が350重量部を超えると、樹脂フィルムを形成したときの接着性が低下するとともに、樹脂組成物中の固形分濃度が高くなり過ぎて粘度が上昇し、ハンドリング性が低下する場合がある。
なお、所望の誘電特性と接着性との両立を図る観点から、(A)成分と(B)成分の合計量は、樹脂組成物中の全固形分量に対して50重量%以上であることが好ましく、60~95重量%の範囲内がより好ましく、70~95重量%の範囲内が最も好ましい。ここで、樹脂組成物中の固形分とは、溶媒を除いた成分の合計を意味する。
樹脂組成物は、有機溶媒などの溶剤を含有することができる。(A)成分の熱可塑性ポリイミドは溶剤可溶性を有しており、また、(B)成分のポリスチレンエラストマーも、例えばキシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒に良好な溶解性を示すことから、樹脂組成物は、溶剤を含有するポリイミド溶液(ワニス)として調製することができる。有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等から選ばれる1種又は2種以上と、上記芳香族炭化水素系溶媒とを任意の比率で混合した混合溶媒を用いることが好ましい。溶剤の含有量としては特に制限されるものではないが、組成物全体に対して(A)成分と(B)成分の合計の含有量が5~30重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。樹脂組成物の粘度は、樹脂組成物を塗工する際のハンドリング性を高め、均一な厚みの塗膜を形成しやすい粘度範囲として、例えば3000mPa・s~100000mPa・sの範囲内とすることが好ましく、5000mPa・s~50000mPa・sの範囲内とすることがより好ましい。上記の粘度範囲を外れると、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。
<方法1>
接着層ADとなる樹脂組成物をシート状に成形して接着シートとなし、該接着シートを、第1の片面金属張積層板(C1)の第1の絶縁樹脂層40Aと、第2の片面金属張積層板(C2)の第2の絶縁樹脂層40Bとの間に配置して貼り合わせ、熱圧着させることによって接着層ADを形成し、金属張積層板100とする方法。
<方法2>
接着層ADとなる樹脂組成物を、第1の片面金属張積層板(C1)の第1の絶縁樹脂層40A、又は第2の片面金属張積層板(C2)の第2の絶縁樹脂層40Bのいずれか片方、または両方に、所定の厚みで塗布・乾燥した後、第1の片面金属張積層板(C1)と第2の片面金属張積層板(C2)の樹脂層(又は塗布膜)の側を貼り合わせて熱圧着させることによって接着層ADを形成し、金属張積層板100とする方法。
方法1、2で用いる第1の片面金属張積層板(C1)及び第2の片面金属張積層板(C2)は、例えば、金属箔上にポリアミド酸溶液を塗布・乾燥することを所定回数繰り返し後、イミド化することによって作製できる。
また、方法1で用いる接着シートは、例えば、任意の支持基材に、上記樹脂組成物を塗布・乾燥した後、支持基材から剥がして接着シートとする方法、などによって製造できる。
また、上記において、樹脂組成物やポリアミド酸溶液を金属箔、支持基材や第1の絶縁樹脂層40A、第2の絶縁樹脂層40B上に塗布する方法としては、特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。
以上のようにして得られる本実施の形態の金属張積層板100は、金属層110A及び/又は金属層110Bをエッチングするなどして配線回路加工することによって、片面FPC又は両面FPCなどの回路基板を製造することができる。
[回路基板]
本発明の一実施の形態である回路基板は、図1を参照して説明すると、金属張積層板100の2つの金属層110A,110Bの片方又は両方を、常法によってパターン状に加工して配線層を形成することによって製造できる。本実施の形態の回路基板は、金属層110Aを回路加工してなる第1の配線層と、この第1の配線層の少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層40Aと、金属層110Bを回路加工してなる第2の配線層と、この第2の配線層の少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層40Bと、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bに当接するようにこれらの間に積層された接着層ADと、を備えている。そして、本実施の形態の回路基板において、第1の絶縁樹脂層40Aと接着層ADと第2の絶縁樹脂層40Bとからなる樹脂積層体101の合計厚みT1が70~500μmの範囲内であるとともに、合計厚みT1に対する接着層ADの厚みT2の比率(T2/T1)が0.10~0.96の範囲内であり、接着層ADが、下記の(A)成分及び(B)成分;
(A)熱可塑性ポリイミド、
及び
(B)重量平均分子量が100,000以下であるポリスチレンエラストマー、
を含有する。
本実施の形態の回路基板には、常法に従って、ビアホールやスルーホールを形成した後、ホール内壁にめっき加工を施すことができる。この場合、本実施の形態の回路基板は、接着層ADの厚み比率を大きくしなくても、樹脂積層体101全体の誘電正接を十分に低く抑えることが可能であるため、優れた誘電特性と接続信頼性とを両立させることができる。すなわち、本発明の回路基板は、ビアホールやスルーホールにおける導通が確保され、優れた信頼性を有するとともに、高周波信号伝送への対応が図られている。特に、本実施の形態の回路基板において、樹脂積層体101における25℃の基準温度から125℃までの厚み方向の平均熱膨張係数が400ppm/K未満である場合には、ビアホールやスルーホールのめっき部位でのひび割れの発生が抑制され、十分な導通が確保されており、優れた信頼性を有するものである。本実施の形態の回路基板は、例えばFPC、リジッド・フレックス回路基板などとして好ましく適用できる。
[電子デバイス・電子機器]
本実施の形態の電子デバイス及び電子機器は、上記回路基板を備えるものである。本実施の形態の電子デバイスとしては、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等の表示装置、有機EL照明、太陽電池、タッチパネル、カメラモジュール、インバーター、コンバーター及びその構成部材等を挙げることができる。また、電子機器としては、例えば、HDD、DVD、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、自動車の電子制御ユニット(ECU)、パワーコントロールユニット(PCU)等を挙げることができる。回路基板はこれらの電子デバイスや電子機器において、例えば可動部分の配線や、ケーブル、コネクター等の部品として好ましく使用される。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
[粘度の測定]
E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV-II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%~90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
[ポリイミドの重量平均分子量(Mw)の測定]
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー株式会社製、商品名;HLC-8220GPCを使用)により測定した。標準物質としてポリスチレンを用い、展開溶媒にテトラヒドロフラン(THF)を用いた。
[比誘電率(Dk)および誘電正接(Df)の測定]
ベクトルネットワークアナライザ(Agilent社製、商品名E8363C)ならびにSPDR共振器を用いて、10GHzにおける樹脂シートの比誘電率および誘電正接を測定した。なお、測定に使用した材料は、温度;24~26℃、湿度45~55%RHの条件下で、24時間放置したものである。
[面内方向の平均熱膨張係数(XY‐CTE)の測定]
3mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、サーモメカニカルアナライザー(Bruker社製、商品名;4000SA)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から265℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、250℃から100℃までの平均熱膨張係数(熱膨張係数)を求めた。
[厚み方向の平均熱膨張係数(Z‐CTE)の測定]
7mm×7mmのサイズのポリイミドフィルムを、レーザー熱膨張計(アルバック理工社製、商品名;LIX-1型)を用い、ヘリウム雰囲気下で、17.0gの荷重を加えながら、同装置内で3℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、その後3℃/分の降温速度で25℃まで冷却する前処理を実施した。その後、3℃/分の降温速度で25℃から-65℃まで降温し、3℃/分の昇温速度で-65℃から200℃まで昇温させ、この昇温時の-65℃から25℃までの間及び25℃から125℃までの間の厚み方向の平均熱膨張係数(長さ変化率)を求めた。
[貯蔵弾性率及びガラス転移温度(Tg)の測定]
貯蔵弾性率は、5mm×20mmにポリイミドフィルム又は硬化後の樹脂シートを切り出し、動的粘弾性装置(DMA:ティー・エイ・インスツルメント社製、商品名:RSA-G2)を用いて、昇温速度4℃/分で30℃から400℃まで段階的に加熱し、周波数11Hzで測定を行った。また、測定中のTanδの値が最大となる最大温度をTgとして定義した。また、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×10Pa未満であるポリイミドを「熱可塑性」と判定し、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×10Pa以上であるポリイミドを「非熱可塑性」と判定した。
[接続信頼性試験]
NCドリル加工機(碌々産業社製、商品名;A-120 D型)を用いて、12μm厚みの銅箔を備える両面銅張積層板に対し150μmφの穴あけ加工し、デスミア処理後、約10~15μm厚みの銅めっき層を形成した試験サンプルを用意した。気相冷熱衝撃装置(エスペック社製、商品名;TSA-71H-W)を用いて、-65℃で30分処理後に125℃で30分処理する工程を1サイクルとし、1,000サイクルの処理を実施した。試験後サンプルの層間接続加工部の断面を電子顕微鏡で観察し、銅めっき層にクラック発生が無いものを合格、クラックが発生したものを不合格とした。
本実施例で用いた略号は以下の化合物を示す。
BPDA:3,3',4,4'‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
m‐TB:2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニル
BAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
TPE-R:1,3-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
BTDA:3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
DDA:炭素数36の脂肪族ジアミン(クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1074を蒸留精製したもの、アミン価;210mgKOH/g、環状構造及び鎖状構造のダイマージアミンの混合物、成分(a);97.9%、成分(b);0.3%、成分(c);1.8%)
なお、成分(a)、成分(b)、成分(c)の「%」は、GPC測定におけるクロマトグラムの面積パーセントを意味する。また、DDAの分子量は次式により算出した。
分子量=56.1×2×1000/アミン価
エラストマー樹脂1:KRATON社製、商品名;MD1653MO(水添ポリスチレンエラストマー、スチレン単位含有割合;30重量%、Mw;80,499、酸価無し)
エラストマー樹脂2:KRATON社製、商品名;A1535HU(水添ポリスチレンエラストマー樹脂、スチレン単位含有割合;58重量%、Mw;230,305、酸価無し)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
N-12:ドデカン二酸ジヒドラジド
OP935:有機ホスフィン酸アルミニウム塩(クラリアントジャパン社製、商品名;Exolit OP935)
SR‐3000:リン酸エステル(大八化学工業株式会社製、商品名;SR‐3000、非ハロゲン芳香族縮合リン酸エステル、リン含有量;7.0%)
(合成例1)
<接着層用の樹脂溶液の調製>
500mlのセパラブルフラスコに、21.34gのBTDA(0.06622モル)、12.99gのBPDA(0.04414モル)、46.7042gのDDA(0.08741モル)、8.97104gのBAPP(0.02185モル)、126gのNMP及び84gのキシレンを装入し、40℃で1時間良く混合して、ポリアミド酸溶液を調製した。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、5時間加熱、攪拌し、重合後の固形分濃度が31%となる量のキシレンを加えてイミド化を完結したポリイミド溶液1(固形分;31重量%、重量平均分子量;35,886、粘度;2.580mPa・s、熱可塑性ポリイミド)を調製した。
(合成例2)
<接着層用の樹脂溶液の調製>
窒素気流下、1000mlのセパラブルフラスコに、34.04gのBTDA(0.1057モル)、55.89gのDDA(0.1046モル)、126gのNMP及び84gのキシレンを装入し、40℃で1時間良く混合して、ポリアミド酸溶液を調製した。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、5時間加熱、攪拌し、重合後の固形分濃度が31%となる量のキシレンを加えてイミド化を完結したポリイミド溶液2(固形分;31重量%、重量平均分子量;52,800、粘度;4.750mPa・s、熱可塑性ポリイミド)を調製した。
(合成例3)
<絶縁樹脂層用のポリアミド酸溶液の調製>
窒素気流下で、反応槽に、31.88gのm-TB(0.1502モル)及び3.24gのBAPP(0.0079モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、16.98gのPMDA(0.0778モル)及び22.90gのBPDA(0.0778モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液1(粘度;26,500mPa・s)を調製した。ポリアミド酸溶液1を基材上に塗布・乾燥してイミド化することによって得られたポリイミドフィルムについて、貯蔵弾性率を測定した結果、「非熱可塑性」であった。
(合成例4)
<絶縁樹脂層用のポリアミド酸溶液の調製>
3.48gのm-TB(0.0164モル)、27.14gのTPE-R(0.0928モル)、重合後の固形分濃度が12重量%となる量のDMAcを投入し、9.72gのPMDA(0.0446モル)及び19.67.31gのBPDA(0.0668モル)を原料組成とした以外は、合成例3と同様にしてポリアミド酸溶液2(粘度;2,650mPa・s)を調製した。ポリアミド酸溶液2を基材上に塗布・乾燥してイミド化することによって得られたポリイミドフィルムについて、貯蔵弾性率を測定した結果、「熱可塑性」であった。
(作製例1)
<接着層用の樹脂シート1の調製>
100gのポリイミド溶液1(固形分として31g)に、1.1gのN-12(0.004モル)、26.4gのエラストマー樹脂1、2.2gのOP935及び2.2gのSR-3000を配合し、固形分が26.5重量%になるようにキシレンを加えて希釈し、攪拌することで接着剤組成物1を調製した。
接着剤組成物1を乾燥後の厚みが60μmとなるように離型基材(縦×横×厚さ=320mm×240mm×25μm)のシリコーン処理面に塗工した後、120℃で30分間加熱乾燥し、離型基材上から剥離することで樹脂シート1を調製した。樹脂シート1を180℃、2時間の熱処理をして得た硬化後の樹脂シート1の比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)はそれぞれ、2.46、0.0011であった。
(作製例2)
<接着層用の樹脂シート2の調製>
接着剤組成物1を乾燥後の厚みがそれぞれ50μmとなるように塗工した以外は、作製例1と同様にして樹脂シート2を得た。
(作製例3)
<接着層用の樹脂シート3の調製>
100gのポリイミド溶液1(固形分として31g)に、1.1gのN-12(0.004モル)、55.8gのエラストマー樹脂1を配合し、固形分が29.0重量%になるようにキシレンを加えて希釈し、攪拌することで接着剤組成物3を調製した。
接着剤組成物3を乾燥後の厚みが60μmとなるように離型基材(縦×横×厚さ=320mm×240mm×25μm)のシリコーン処理面に塗工した後、120℃で30分間加熱乾燥し、離型基材上から剥離することで樹脂シート3を調製した。樹脂シート3を180℃、2時間の熱処理をして得た硬化後の樹脂シート3の比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)はそれぞれ、2.45、0.0009であった。
(参考例1)
100gのポリイミド溶液1(固形分として31g)に、1.1gのN-12(0.004モル)、26.4gのエラストマー樹脂2、2.2gのOP935及び2.2gのSR-3000を配合し、固形分が26.5重量%になるようにキシレンを加えて希釈し、攪拌したところ、得られた接着剤組成物は流動性が低くゲル状になり、シート化ができなかった。
(作製例4)
<接着層用の樹脂シート4の調製>
100gのポリイミド溶液2に1.1gのN-12(0.004モル)を配合し、7.8gのOP935及び14.0gのキシレンを加えて希釈し、更に1時間攪拌することで接着剤組成物4を調製した。
接着剤組成物4を乾燥後厚みが50μmとなるように離型基材(縦×横×厚さ=320mm×240mm×25μm)のシリコーン処理面に塗工した後、120℃で30分間加熱乾燥し、離型基材上から剥離することで樹脂シート4を調製した。樹脂シート4を180℃、2時間の熱処理をして得た硬化後の樹脂シート4の比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)はそれぞれ、2.68、0.0024であった。
(作製例5)
<接着層用の樹脂シート5の調製>
接着剤組成物4を乾燥後の厚みが30μmとなるように塗工した以外は、作製例4と同様にして樹脂シート5を得た。
(作製例6)
<片面金属張積層板1の調製>
銅箔1(電解銅箔、厚さ;12μm、樹脂層側の表面粗度Rz;0.6μm)の上に、ポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約3~5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次にその上にポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが、約40~44μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約3~5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結して、ポリイミド層の厚みが50μmの片面金属張積層板1を調製した。
<ポリイミドフィルム1の調製>
塩化第二鉄水溶液を用いて片面金属張積層板1の銅箔層をエッチング除去して、厚み50μmのポリイミドフィルム1を調製した。XY‐CTEは20ppm/K、比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)はそれぞれ3.40、0.0034であった。また、ポリイミドフィルム1の125℃での貯蔵弾性率は5.9×10Paであった。
(作製例7)
<片面金属張積層板2の調製>
銅箔1の上に、ポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約3~5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次にその上にポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが、約35~39μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約3~5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結して、ポリイミド層の厚みが45μmの片面金属張積層板2を調製した。
(作製例8)
<片面金属張積層板3の調製>
銅箔1の上に、ポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次にその上にポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが、約21μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結して、ポリイミド層の厚みが25μmの片面金属張積層板3を調製した。
(作製例9)
<片面金属張積層板4の調製>
銅箔1の上に、ポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次にその上にポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが、約14~16μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結して、ポリイミド層の厚みが20μmの片面金属張積層板4を調製した。
(作製例10)
<片面金属張積層板5の調製>
銅箔1の上に、ポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約1~2μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次にその上にポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが、約6~8μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約1~2μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結して、ポリイミド層の厚みが10μmの片面金属張積層板5を調製した。
<ポリイミドフィルム2~5の調製>
塩化第二鉄水溶液を用いて片面金属張積層板2~5の銅箔層をエッチング除去して、ポリイミドフィルム2~5を調製した。ポリイミドフィルム2~5の比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)並びに125℃での貯蔵弾性率は、いずれもポリイミドフィルム1と同等の値であった。
[実施例1]
2枚の片面金属張積層板2を準備し、それぞれの絶縁樹脂層側の面を樹脂シート1の両面に重ね合わせ、180℃で2時間、3.5MPaの圧力をかけて圧着して、両面金属張積層板1を調製した。両面金属積層板1は、接続信頼性試験後に銅めっき層のクラックは発生しなかった。また、両面金属張積層板1における銅箔層をエッチング除去して調製した樹脂積層体1(厚み;150μm)における25℃の基準温度から-65℃及び125℃までのZ-CTEは、それぞれ154ppm/K、310ppm/Kであり、XY-CTEは24ppm/Kであり、比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)はそれぞれ、3.03、0.0027であった。これらの評価結果を表1に示す。
[実施例2]
片面金属張積層板1及び樹脂シート2を使用したこと以外は、実施例1と同様にして両面金属張積層板2及び樹脂積層体2(厚み;150μm)を得た。これらの評価結果を表1に示す。
[実施例3]
接着剤組成物1を乾燥後の厚みが50μmとなるように片面金属張積層板3の絶縁樹脂層上に塗工した後、120℃で10分間加熱乾燥し、接着層付き片面金属張積層板1を得た。接着層付き片面金属張積層板1の接着層側に片面金属張積層板3の絶縁樹脂層が接するように重ね合わせ、180℃で2時間、3.5MPaの圧力をかけて圧着して、両面金属張積層板3を調製した。また、両面金属張積層板3における銅箔層をエッチング除去して樹脂積層体3(厚み;100μm)を得た。これらの評価結果を表1に示す。
[実施例4]
接着剤組成物1を乾燥後の厚みが60μmとなるように片面金属張積層板4の絶縁樹脂層上に塗工した以外は、実施例3と同様にして両面金属張積層板4及び樹脂積層体4(厚み;100μm)を得た。これらの評価結果を表1に示す。
[実施例5]
片面金属張積層板2及び樹脂シート3を使用したこと以外は、実施例1と同様にして両面金属張積層板5及び樹脂積層体5(厚み;150μm)を得た。これらの評価結果を表1に示す。
[比較例1]
片面金属張積層板5を2枚準備し、1枚目の片面金属張積層板5の絶縁樹脂層側の面に樹脂シート4を2枚、樹脂シート5を1枚、それぞれ重ねた後、さらに2枚目の片面金属張積層板5の絶縁樹脂層側が樹脂シート5に接するように重ね合わせ、180℃で2時間、3.5MPaの圧力をかけて圧着して、両面金属張積層板6及び樹脂積層体6(厚み;150μm)を得た。これらの評価結果を表1に示す。
以上の結果をまとめて、表1に示す。
Figure 2024050431000006
[参考例2]
片面金属張積層板1及び樹脂シート4を使用したこと以外は、実施例1と同様にして両面金属張積層板7及び樹脂積層体7(厚み;150μm)を得た。両面金属積層板7は、接続信頼性試験後に銅めっき層のクラックは発生しなかった。また、樹脂積層体7(厚み;150μm)における25℃の基準温度から-65℃及び125℃までのZ-CTEは、それぞれ60ppm/K、272ppm/Kであり、XY‐CTEは24ppm/Kであり、比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)はそれぞれ、3.13、0.0031であった。
作製例1~3は、参考例1に対して溶解性に優れる低分子量スチレンエラストマーを適用することで配合比率を高めることでき、誘電正接(Df)が0.0012以下の樹脂シートを得ることが可能であった。
また、実施例1~5は、比較例1に対してZ-CTEの抑制による良好な接続信頼性及び誘電正接(Df)が0.003以下の低誘電正接化を両立した金属張積層板の設計、提供が可能であることが検証された。
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。
10A,10B…熱可塑性ポリイミド層、20A,20B…非熱可塑性ポリイミド層、30A,30B…熱可塑性ポリイミド層、40A…第1の絶縁樹脂層、40B…第2の絶縁樹脂層、100…金属張積層板、101…樹脂積層体、110A,110B…金属層、AD…接着層

Claims (10)

  1. 第1の金属層と、
    前記第1の金属層の少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、
    第2の金属層と、
    前記第2の金属層の少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、
    前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層に当接するようにこれらの間に積層された接着層と、
    を備えた金属張積層板であって、
    前記第1の絶縁樹脂層と前記接着層と前記第2の絶縁樹脂層とからなる樹脂積層体の合計厚みT1が70~500μmの範囲内であるとともに、前記合計厚みT1に対する前記接着層の厚みT2の比率(T2/T1)が0.10~0.96の範囲内であり、
    前記接着層が、下記の(A)成分及び(B)成分;
    (A)熱可塑性ポリイミド、
    及び
    (B)重量平均分子量が100,000以下であるポリスチレンエラストマー、
    を含有することを特徴とする金属張積層板。
  2. 前記(A)成分の100重量部に対する前記(B)成分の含有量が10重量部以上350重量部以下の範囲内である請求項1に記載の金属張積層板。
  3. 前記樹脂積層体の10GHzにおける誘電正接が0.0030以下であり、かつ、前記接着層の10GHzにおける誘電正接が0.0013未満である請求項1に記載の金属張積層板。
  4. 前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層は、それぞれ、125℃での貯蔵弾性率が1.0×10~8.0×10Paの範囲内である請求項1に記載の金属張積層板。
  5. 前記樹脂積層体における25℃の基準温度から125℃までの厚み方向の平均熱膨張係数が400ppm/K未満である請求項1に記載の金属張積層板。
  6. 前記樹脂積層体全体として、厚み方向に直交する面内方向における250℃から100℃までの平均熱膨張係数が10ppm/K以上30ppm/K以下の範囲内である請求項1に記載の金属張積層板。
  7. 前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層は、共に、熱可塑性ポリイミド層、非熱可塑性ポリイミド層及び熱可塑性ポリイミド層がこの順に積層された多層構造を有し、
    前記接着層は、2つの前記熱可塑性ポリイミド層に接して設けられている請求項1に記載の金属張積層板。
  8. 第1の配線層と、
    前記第1の配線層の少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、
    第2の配線層と、
    前記第2の配線層の少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、
    前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層に当接するようにこれらの間に積層された接着層と、
    を備えた回路基板であって、
    前記第1の絶縁樹脂層と前記接着層と前記第2の絶縁樹脂層とからなる樹脂積層体の合計厚みT1が70~500μmの範囲内であるとともに、前記合計厚みT1に対する前記接着層の厚みT2の比率(T2/T1)が0.10~0.96の範囲内であり、
    前記接着層が、下記の(A)成分及び(B)成分;
    (A)熱可塑性ポリイミド、
    及び
    (B)重量平均分子量が100,000以下であるポリスチレンエラストマーを含有することを特徴とする回路基板。
  9. 請求項8に記載の回路基板を備えていることを特徴とする電子デバイス。
  10. 請求項8に記載の回路基板を備えていることを特徴とする電子機器。

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