JP2024049518A - 金属張積層板及び回路基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】絶縁樹脂層の間に接着層を介在させた積層構造を有する金属張積層板において、湿度による影響を極力低減し、優れた誘電特性を安定的に発現させる。【解決手段】金属張積層板100は、金属層110Aと、この金属層110Aの少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層40Aと、金属層110Bと、この金属層110Bの少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層40Bと、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bに当接するようにこれらの間に積層された接着層ADと、を備えている。接着層ADは(A)水添スチレン系エラストマー及び(B)熱硬化性化合物の硬化物を含有する。【選択図】図1

Description

本発明は、電子部品として有用な金属張積層板及び回路基板に関する。
近年、電子機器の小型化、軽量化、省スペース化の進展に伴い、薄く軽量で、可撓性を有し、屈曲を繰り返しても優れた耐久性を持つフレキシブルプリント配線板(FPC;Flexible Printed Circuits)の需要が増大している。FPCは、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、例えば、HDD、DVD、スマートフォン等の電子機器の配線や、ケーブル、コネクター等の部品にその用途が拡大しつつある。FPC等の回路基板の材料として、金属層と樹脂層とが積層された金属張積層板が用いられている。
高密度化に加えて、機器の高性能化が進んだことから、伝送信号の高周波化への対応も必要とされている。高周波信号を伝送する際に伝送経路における伝送損失が大きいと電気信号のロスや信号の遅延時間が長くなるなどの不都合が生じる。また、5G通信の普及により、スマートフォンに代表されるモバイル通信機器は膨大な情報量を伝送するため、伝送信号の高周波化とともに複数の周波数帯の信号を伝送する方式が採用される。このような高周波信号伝送用のFPC向けの金属張積層板には、伝送ロスの改善の観点で、低誘電正接且つ厚膜の樹脂層とすることが有効である。
伝送信号の高周波化に対応するために、一対の片面金属張積層板の絶縁樹脂層の間に厚みの大きな接着層を介在させた積層構造の金属張積層板が提案されている(例えば、特許文献1、2)。ここで、特許文献1では、接着層の材質として、ダイマージアミン(DDA)を原料とする熱可塑性ポリイミドが使用されている。また、特許文献2では、接着層の材質として、特定の貯蔵弾性率挙動を有する熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が使用されている。
一方、樹脂フィルムの誘電特性を改善するため、熱可塑性ポリイミドに酸価が10mgKOH/g以下のポリスチレンエラストマーを配合した樹脂フィルムが提案されている(例えば、特許文献3)。
特開2018-170417号公報 特開2020-55299号公報 特開2022-99778号公報
FPC等の回路基板は、電子機器の使用態様や季節変化に応じて異なる湿度環境で使用される。そのため、樹脂層の吸湿性が大きいと誘電正接に変動が生じ、高周波信号の伝送損失にも影響を与える。特に、絶縁樹脂層の間に厚みの大きな接着層を介在させた積層構造においては、湿度変化による誘電特性の影響が大きくなることが懸念されるが、特許文献1~3では吸湿への対策には注意が払われていない。
従って、本発明の目的は、絶縁樹脂層の間に接着層を介在させた積層構造を有する金属張積層板において、湿度による影響を極力低減し、優れた誘電特性を安定的に発現させることである。
本発明者らは、接着層の材質について鋭意研究を行った結果、水添スチレン系エラストマーと熱硬化性化合物の硬化物を含有する樹脂フィルムは、吸湿性が低く湿度による影響を受けにくいとともに、極めて低い誘電正接を示すこと、及び、このような樹脂フィルムを、絶縁樹脂層の間に接着層を介在させた積層構造を有する金属張積層板における接着層として適用することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の金属張積層板は、第1の金属層と、
前記第1の金属層の少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、
第2の金属層と、
前記第2の金属層の少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、
前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層に当接するようにこれらの間に積層された接着層と、
を備えている。
本発明の金属張積層板は、前記接着層が、下記の(A)成分及び(B)成分;
(A)水添スチレン系エラストマー、
及び
(B)熱硬化性化合物の硬化物、
を含有するものである。
そして、本発明の金属張積層板において、前記第1の絶縁樹脂層と前記接着層と前記第2の絶縁樹脂層とからなる樹脂積層体は、温度22~25℃、湿度45~55%RHの条件下で48時間静置した後に測定される周波数10GHzにおける誘電正接をDf1とし、温度22~25℃、48時間の条件で吸水処理した後に測定される周波数10GHzにおける誘電正接をDf2としたとき、Df1が0.0040未満であり、Df2とDf1との差分(Df2-Df1)が0.0030以下である。
本発明の金属張積層板において、前記接着層は、温度22~25℃、湿度45~55%RHの条件下で48時間静置した後に測定される周波数10GHzにおける誘電正接をDf1ADとし、温度22~25℃、48時間の条件で吸水処理した後に測定される周波数10GHzにおける誘電正接をDf2ADとしたとき、Df1ADが0.0040未満であり、Df2ADとDf1ADとの差分(Df2AD-Df1AD)が0.0015以下であってもよい。
本発明の金属張積層板は、前記(A)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分の合計量に対して30重量%以上であってもよい。
本発明の金属張積層板は、前記(B)成分が、熱硬化性エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂及び熱硬化性ポリフェニレンエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂の硬化物であってもよい。
本発明の金属張積層板は、前記樹脂積層体の合計厚みが70~500μmの範囲内であってもよく、前記接着層の厚みが10~450μmの範囲内であってもよい。
本発明の金属張積層板において、前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層は、共に、熱可塑性ポリイミド層、非熱可塑性ポリイミド層及び熱可塑性ポリイミド層がこの順に積層された多層構造を有していてもよく、
前記接着層は、2つの前記熱可塑性ポリイミド層に接して設けられていてもよい。
本発明の回路基板は、第1の配線層と、
前記第1の配線層の少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、
第2の配線層と、
前記第2の配線層の少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、
前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層に当接するようにこれらの間に積層された接着層と、を備えている。
本発明の回路基板は、前記接着層が、下記の(A)成分及び(B)成分;
(A)水添スチレン系エラストマー、
及び
(B)熱硬化性化合物の硬化物、
を含有するものである。
そして、本発明の回路基板において、前記第1の絶縁樹脂層と前記接着層と前記第2の絶縁樹脂層とからなる樹脂積層体は、温度22~25℃、湿度45~55%RHの条件下で48時間静置した後に測定される周波数10GHzにおける誘電正接をDf1とし、温度22~25℃、48時間の条件で吸水処理した後に測定される周波数10GHzにおける誘電正接をDf2としたとき、Df1が0.0040未満であり、Df2とDf1との差分(Df2-Df1)が0.0030以下である。
本発明の金属張積層板は、絶縁樹脂層の間に接着層を介在させた積層構造において、水添スチレン系エラストマーと熱硬化性化合物の硬化物を含有する吸湿性が小さな接着層によって、湿度変化による影響が低減され、樹脂層全体の誘電正接を安定的に低く抑えることが可能である。そのため、本発明の金属張積層板を用いて製造される回路基板は、様々な湿度環境で使用される電子機器において、高周波信号の伝送損失を確実に低減し、電子機器の信頼性を確保することが可能となる。
本発明の好ましい実施の形態の金属張積層板の厚み方向の断面構造を示す模式図である。
本発明の実施の形態について、適宜図面を参照して説明する。
[金属張積層板]
図1は、本発明の好ましい実施の形態にかかる金属張積層板100の断面構成を示している。金属張積層板100は、金属層110Aと、この金属層110Aの少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層40Aと、金属層110Bと、この金属層110Bの少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層40Bと、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bに当接するようにこれらの間に積層された接着層ADと、を備えている。金属張積層板100において、第1の絶縁樹脂層40Aと接着層ADと第2の絶縁樹脂層40Bは、この順に積層されて樹脂積層体101を形成している。したがって、金属張積層板100は、樹脂積層体101の両側に、金属層110Aと金属層110Bが積層された構造である。金属張積層板100において、金属層110Aと金属層110Bは、それぞれ最も外側に位置し、それらの内側に第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bが配置され、さらに第1の絶縁樹脂層40Aと第2の絶縁樹脂層40Bの間には、接着層ADが介在配置されている。このような層構成を有する金属張積層板100は、金属層110Aと第1の絶縁樹脂層40Aとが積層された第1の片面金属張積層板と、金属層110Bと第2の絶縁樹脂層40Bとが積層された第2の片面金属張積層板とを、互いの絶縁樹脂層側が向き合うように接着層ADで貼り合わせた構造を有していると考えることもできる。
以下、金属張積層板100の構成について、金属層、絶縁樹脂層、接着層、樹脂積層体及びこれらの層厚の順に具体的に説明する。
<金属層>
金属層110A,110Bの材質としては、特に制限はなく、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。銅箔は、圧延銅箔でも電解銅箔でもよく、市販されている銅箔を用いることができる。なお、後述する本実施の形態の回路基板における配線層の材質も金属層110A,110Bと同様である。
また、金属箔は、例えば、防錆処理や、接着力の向上を目的として、例えばサイディング、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤等による表面処理を施してもよい。
<絶縁樹脂層>
第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bを構成する樹脂としては、電気的絶縁性を有する樹脂であれば特に限定はなく、例えばポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、ETFEなどを挙げることができるが、ポリイミドが好ましい。なお、本発明でポリイミドという場合、ポリイミドの他、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリシロキサンイミド、ポリベンズイミダゾールイミドなど、分子構造中にイミド基を有するポリマーからなる樹脂を意味する。
また、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bは、単層に限らず、複数の樹脂層が積層されたものであってもよい。代表的に図1では好ましい例として、第1の絶縁樹脂層40Aが熱可塑性ポリイミド層10Aと非熱可塑性ポリイミド層20Aと熱可塑性ポリイミド層30Aとの3層積層構造を有し、第2の絶縁樹脂層40Bが、熱可塑性ポリイミド層10Bと非熱可塑性ポリイミド層20Bと熱可塑性ポリイミド層30Bとの3層積層構造を有する構成例を示している。この場合、金属張積層板100は、金属層110A/熱可塑性ポリイミド層10A/非熱可塑性ポリイミド層20A/熱可塑性ポリイミド層30A/接着層AD/熱可塑性ポリイミド層30B/非熱可塑性ポリイミド層20B/熱可塑性ポリイミド層10B/金属層110Bがこの順番に積層された層構成を有することになる。ただし、図1はあくまでも例示であることから、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bは、ポリイミド以外の材質で構成されていてもよいし、また、3層構造である必要なく、それぞれ単層でも2層でもよく、4層以上であってもよい。
図1に示す構成例において、熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bは、それぞれ、同一もしくは異なる種類の熱可塑性ポリイミドによって構成されていてもよい。また、非熱可塑性ポリイミド層20Aと非熱可塑性ポリイミド層20Bも、同一もしくは異なる種類の非熱可塑性ポリイミドによって構成されていてもよい。
なお、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bには、例えば可塑剤、エポキシ樹脂などの硬化樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、有機もしくは無機フィラー、カップリング剤、難燃剤などを適宜配合することができる。
第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bは、例えば回路基板に適用する場合において誘電損失を抑制するために、10GHzにおける誘電正接が、好ましくは0.02以下、より好ましくは0.0005以上0.01以下の範囲内、更に好ましくは0.001以上0.008以下の範囲内であることがよい。第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bの10GHzにおける誘電正接が0.02を超えると、回路基板に適用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。なお、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bの10GHzにおける誘電正接の下限値は特に制限されないが、回路基板の絶縁樹脂層としての物性制御を考慮している。
また、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bは、例えば回路基板の絶縁層として適用する場合においてインピーダンス整合性を確保するために、それぞれ、10GHzにおける誘電率が4.0以下であることが好ましい。第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bの10GHzにおける誘電率が4.0を超えると、回路基板に適用した際に、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bの誘電損失の増大に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
次に、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bを構成する非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bと、熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bについて説明する。なお、本発明において、「熱可塑性ポリイミド」とは、一般にガラス転移温度(Tg)が明確に確認できるポリイミドのことであるが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×10Pa未満であるポリイミドをいう。また、「非熱可塑性ポリイミド」とは、一般に加熱しても軟化、接着性を示さないポリイミドのことであるが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×10Pa以上であるポリイミドをいう。
非熱可塑性ポリイミド:
非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bに用いるポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸無水物成分を含む酸無水物成分と、脂肪族ジアミン及び/又は芳香族ジアミン等を含むジアミン成分と、を反応させて得られる非熱可塑性ポリイミドが好ましい。酸無水物及びジアミンとしては、非熱可塑性ポリイミドの合成に一般的に用いられるモノマーを使用できるが、非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bの貯蔵弾性率を適切な範囲に制御する上で、以下に例示するものが好ましい。酸無水物及びジアミンの種類や、2種以上の酸無水物又はジアミンを使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張性、接着性、貯蔵弾性率、ガラス転移温度等を制御することができる。
非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bを構成する非熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含むものである。なお、本発明において、テトラカルボン酸残基とは、テトラカルボン酸二無水物から誘導された4価の基のことを表し、ジアミン残基とは、ジアミン化合物から誘導された2価の基のことを表す。非熱可塑性ポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導される芳香族テトラカルボン酸残基及び芳香族ジアミンから誘導される芳香族ジアミン残基を含むことが好ましい。
(テトラカルボン酸残基)
非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bを構成する非熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基として、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及び1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物(TAHQ)の少なくとも1種から誘導されるテトラカルボン酸残基並びにピロメリット酸二無水物(PMDA)及び2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)の少なくとも1種から誘導されるテトラカルボン酸残基を含有することが好ましい。
BPDAから誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「BPDA残基」ともいう。)及びTAHQから誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「TAHQ残基」ともいう。)は、ポリマーの秩序構造を形成しやすく、分子の運動抑制により誘電正接や吸湿性を低下させることができる。BPDA残基は、ポリイミド前駆体のポリアミド酸としてのゲル膜の自己支持性を付与できるが、その一方で、イミド化後の面内方向の熱膨張係数を増大させるとともに、ガラス転移温度を低くして耐熱性を低下させる傾向になる。
このような観点から、非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bを構成する非熱可塑性ポリイミドが、全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、BPDA残基及びTAHQ残基の合計を好ましくは30モル部以上60モル部以下の範囲内、より好ましくは40モル部以上50モル部以下の範囲内で含有するように制御することがよい。BPDA残基及びTAHQ残基の合計が30モル部未満では、ポリマーの秩序構造の形成が不十分となって、耐吸湿性が低下したり、誘電正接の低減が不十分となり、60モル部を超えると、面内方向の熱膨張係数が増加したり、耐熱性が低下したりするおそれがある。
また、ピロメリット酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「PMDA残基」ともいう。)及び2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「NTCDA残基」ともいう。)は、剛直性を有するため、面内配向性を高め、面内方向の熱膨張係数を低く抑えるとともに、ガラス転移温度の制御の役割を担う残基である。一方で、PMDA残基は、分子量が小さいため、その量が多くなり過ぎると、ポリマーのイミド基濃度が高くなり、極性基が増加して吸湿性が大きくなってしまい、分子鎖内部の水分の影響により誘電正接が増加する。また、NTCDA残基は、剛直性が高いナフタレン骨格によりフィルムが脆くなりやすく、弾性率を増大させる傾向になる。
そのため、非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bを構成する非熱可塑性ポリイミドは、全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、PMDA残基及びNTCDA残基の合計を好ましくは40モル部以上70モル部以下の範囲内、より好ましくは50モル部以上60モル部以下の範囲内、さらに好ましくは50~55モル部の範囲内で含有する。PMDA残基及びNTCDA残基の合計が40モル部未満では、面内方向の熱膨張係数が増加したり、耐熱性が低下したりするおそれがあり、70モル部を超えると、ポリマーのイミド基濃度が高くなり、極性基が増加して低吸湿性が損なわれ、誘電正接が増加するおそれやフィルムが脆くなりフィルムの自己支持性が低下するおそれがある。
また、BPDA残基及びTAHQ残基の少なくとも1種並びにPMDA残基及びNTCDA残基の少なくとも1種の合計が、全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して80モル部以上、好ましくは90モル部以上であることがよい。
また、BPDA残基及びTAHQ残基の少なくとも1種と、PMDA残基及びNTCDA残基少なくとも1種のモル比{(BPDA残基+TAHQ残基)/(PMDA残基+NTCDA残基)}を0.4以上1.5以下の範囲内、好ましくは0.6以上1.3以下の範囲内、より好ましくは0.8以上1.2以下の範囲内とし、面内方向の熱膨張係数とポリマーの秩序構造の形成を制御することがよい。
PMDA及びNTCDAは、剛直骨格を有するため、他の一般的な酸無水物成分に比べて、ポリイミド中の分子の面内配向性の制御が可能であり、面内方向の熱膨張係数の抑制とガラス転移温度(Tg)の向上効果がある。また、BPDA及びTAHQは、PMDAと比較し分子量が大きいため、仕込み比率の増加によりイミド基濃度が低下することで、誘電正接の低下や吸湿率の低下に効果がある。一方でBPDA及びTAHQの仕込み比率が増加すると、ポリイミド中の分子の面内配向性が低下し、面内方向の熱膨張係数の増加に繋がる。さらに分子内の秩序構造の形成が進み、ヘイズ値が増加する。このような観点から、PMDA及びNTCDAの合計の仕込み量は、原料の全酸無水物成分の100モル部に対し、40~70モル部の範囲内、好ましくは50~60モル部の範囲内、より好ましくは50~55モル部の範囲内がよい。原料の全酸無水物成分の100モル部に対し、PMDA及びNTCDAの合計の仕込み量が40モル部未満であると、分子の面内配向性が低下し、面内方向の熱膨張係数を低く抑えることが困難となり、またTgの低下による加熱時におけるフィルムの耐熱性や寸法安定性が低下する。一方、PMDA及びNTCDAの合計の仕込み量が70モル部を超えると、イミド基濃度の増加により吸湿率が増加したり、弾性率を増大させる傾向になる。
また、BPDA及びTAHQは、分子運動の抑制やイミド基濃度の低下による低誘電正接化、吸湿率低下に効果があるが、イミド化後のポリイミドフィルムとしての面内方向の熱膨張係数を増大させる。このような観点から、BPDA及びTAHQの合計の仕込み量は、原料の全酸無水物成分の100モル部に対し、30~60モル部の範囲内、好ましくは40~50モル部の範囲内、より好ましくは40~45モル部の範囲内がよい。
非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bを構成する非熱可塑性ポリイミドに含まれる、上記BPDA残基、TAHQ残基、PMDA残基、NTCDA残基以外のテトラカルボン酸残基としては、例えば、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、2,3',3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート等の芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基が挙げられる。
(ジアミン残基)
非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bを構成する非熱可塑性ポリイミドに含まれるジアミン残基としては、一般式(A1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が好ましい。
Figure 2024049518000002
式(A1)において、連結基Zは単結合又は-COO-を示し、Yは独立に、ハロゲン原子若しくはフェニル基で置換されてもよい炭素数1~3の1価の炭化水素、又は炭素数1~3のアルコキシ基、又は炭素数1~3のパーフルオロアルキル基、又はアルケニル基を示し、nは0~2の整数を示し、p及びqは独立に0~4の整数を示す。ここで、「独立に」とは、上記式(A1)において、複数の置換基Y、さらに整数p、qが、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。なお、上記式(A1)において、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば-NR(ここで、R,Rは、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
一般式(A1)で表されるジアミン化合物(以下、「ジアミン(A1)」と記すことがある)は、1ないし3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。ジアミン(A1)は、剛直構造を有しているため、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有している。そのため、ガス透過性が低く、低吸湿性のポリイミドが得られ、分子鎖内部の水分を低減できるため、誘電正接を下げることができる。ここで、連結基Zとしては、単結合が好ましい。
ジアミン(A1)としては、例えば、1,4-ジアミノベンゼン(p-PDA;パラフェニレンジアミン)、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)、2,2’-n-プロピル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-NPB)、4-アミノフェニル-4’-アミノベンゾエート(APAB)等を挙げることができる。
非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bを構成する非熱可塑性ポリイミドは、ジアミン(A1)から誘導されるジアミン残基を、全ジアミン残基の100モル部に対して、好ましくは80モル部以上、より好ましくは85モル部以上含有することがよい。ジアミン(A1)を上記範囲内の量で使用することによって、モノマー由来の剛直構造により、ポリマー全体に秩序構造が形成されやすくなり、ガス透過性が低く、低吸湿性、かつ低誘電正接である非熱可塑性ポリイミドが得られやすい。
また、非熱可塑性ポリイミドにおける全ジアミン残基の100モル部に対して、ジアミン(A1)から誘導されるジアミン残基が80モル部以上85モル部以下の範囲内である場合は、より剛直であり、面内配向性に優れる構造であるという観点から、ジアミン(A1)として、1,4-ジアミノベンゼンを用いることが好ましい。
非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bを構成する非熱可塑性ポリイミドに含まれるその他のジアミン残基としては、例えば、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシベンジジン、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン、2'-メトキシ-4,4'-ジアミノベンズアニリド、4,4'-ジアミノベンズアニリド、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、6-アミノ-2-(4-アミノフェノキシ)ベンゾオキサゾール等の芳香族ジアミン化合物から誘導されるジアミン残基、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマー酸型ジアミン等の脂肪族ジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が挙げられる。
なお、非熱可塑性ポリイミドに含まれるテトラカルボン酸残基及びジアミン残基を、いずれも芳香族基とすることで、高温環境下での寸法精度を向上させることができるため好ましい。
非熱可塑性ポリイミドは、上記のテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を溶媒中で反応させ、ポリアミド酸を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0~100℃の範囲内の温度で30分~24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5~50重量%の範囲内、好ましくは10~40重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶媒の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の濃度が5~50重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
合成されたポリアミド酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリアミド酸は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。ポリアミド酸の溶液の粘度は、500cps~100,000cpsの範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、例えば、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。
ポリアミド酸をイミド化させて非熱可塑性ポリイミドを形成させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80~400℃の範囲内の温度条件で1~24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
非熱可塑性ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000~400,000の範囲内が好ましく、50,000~350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、フィルムの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際にフィルム厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bは、耐熱性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が280℃以上であることが好ましく、さらに、300℃以上であることがより好ましい。
また、反りを抑制する観点から、非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bの厚み方向に直交する面内方向の250℃から100℃までの平均熱膨張係数は、1ppm/K以上30ppm/K以下の範囲内、好ましくは1ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内、より好ましくは15ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内にあることがよい。
また、非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bに用いる非熱可塑性ポリイミドには、任意成分として、例えば可塑剤、エポキシ樹脂などの他の硬化樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、カップリング剤、充填剤、難燃剤などを適宜配合することができる。
熱可塑性ポリイミド:
熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bに用いるポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸無水物成分を含む酸無水物成分と、脂肪族ジアミン及び/又は芳香族ジアミンと、を反応させて得られる熱可塑性ポリイミドが好ましい。酸無水物及びジアミンとしては、熱可塑性ポリイミドの合成に一般的に用いられるモノマーを使用できるが、熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bの貯蔵弾性率を適切な範囲に制御する上で、以下に例示するものが好ましい。酸無水物及びジアミンの種類や、2種以上の酸無水物又はジアミンを使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張性、接着性、貯蔵弾性率、ガラス転移温度等を制御することができる。
熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bを構成する熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含むものであり、芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導される芳香族テトラカルボン酸残基及び芳香族ジアミンから誘導される芳香族ジアミン残基を含むことが好ましい。
(テトラカルボン酸残基)
熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bを構成する熱可塑性ポリイミドに用いるテトラカルボン酸残基としては、上記非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bを構成する非熱可塑性ポリイミドにおけるテトラカルボン酸残基として例示したものと同様のものを用いることができる。
(ジアミン残基)
熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bを構成する熱可塑性ポリイミドに含まれるジアミン残基としては、一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が好ましい。
Figure 2024049518000003
式(B1)~(B7)において、Rは独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基Aは独立に-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO-、-COO-、-CH-、-C(CH-、-NH-若しくは-CONH-から選ばれる2価の基を示し、nは独立に0~4の整数を示す。ただし、式(B3)中から式(B2)と重複するものは除き、式(B5)中から式(B4)と重複するものは除くものとする。ここで、「独立に」とは、上記式(B1)~(B7)の内の一つにおいて、または二つ以上において、複数の連結基A、複数のR若しくは複数のnが、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。なお、上記式(B1)~(B7)において、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば-NR(ここで、R,Rは、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
式(B1)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B1)」と記すことがある)は、2つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B1)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B1)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-、-CH-、-C(CH-、-CO-、-SO-、-S-、-COO-が好ましい。
ジアミン(B1)としては、例えば、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、(3,3’-ビスアミノ)ジフェニルアミン等を挙げることができる。
式(B2)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B2)」と記すことがある)は、3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B2)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B2)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
ジアミン(B2)としては、例えば1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、3-[3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン等を挙げることができる。
式(B3)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B3)」と記すことがある)は、3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B3)は、1つのベンゼン環に直結した、2つの2価の連結基Aが互いにメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B3)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
ジアミン(B3)としては、例えば1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4'-[2-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[4-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[5-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン等を挙げることができる。
式(B4)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B4)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B4)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B4)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-、-CH-、-C(CH-、-SO-、-CO-、-CONH-が好ましい。
ジアミン(B4)としては、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド等を挙げることができる。
式(B5)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B5)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B5)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結した、2つの2価の連結基Aが互いにメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B5)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
ジアミン(B5)としては、4-[3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]フェノキシ]アニリン、4,4’-[オキシビス(3,1-フェニレンオキシ)]ビスアニリン等を挙げることができる。
式(B6)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B6)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B6)は、少なくとも2つのエーテル結合を有することで高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B6)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-C(CH-、-O-、-SO-、-CO-が好ましい。
ジアミン(B6)としては、例えば、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)等を挙げることができる。
式(B7)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B7)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B7)は、ジフェニル骨格の両側に、それぞれ屈曲性の高い2価の連結基Aを有するため、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B7)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
ジアミン(B7)としては、例えば、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル等を挙げることができる。
熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bを構成する熱可塑性ポリイミドは、全ジアミン残基の100モル部に対して、ジアミン(B1)~ジアミン(B7)から選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を60モル部以上、好ましくは60モル部以上99モル部以下の範囲内、より好ましくは70モル部以上95モル部以下の範囲内で含有することがよい。ジアミン(B1)~ジアミン(B7)は、屈曲性を有する分子構造を持つため、これらから選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物を上記範囲内の量で使用することによって、ポリイミド分子鎖の柔軟性を向上させ、熱可塑性を付与することができる。原料中のジアミン(B1)~ジアミン(B7)の合計量が全ジアミン成分の100モル部に対して60モル部未満であるとポリイミド樹脂の柔軟性不足で十分な熱可塑性が得られない。
また、熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bを構成する熱可塑性ポリイミドに含まれるジアミン残基としては、上記一般式(A1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基も好ましい。式(A1)で表されるジアミン化合物[ジアミン(A1)]については、非熱可塑性ポリイミドの説明で述べたとおりである。ジアミン(A1)は、剛直構造を有し、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有しているため、分子の運動抑制により誘電正接や吸湿性を低下させることができる。更に、熱可塑性ポリイミドの原料として使用することで、ガス透過性が低く、長期耐熱接着性に優れたポリイミドが得られる。
熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bを構成する熱可塑性ポリイミドは、ジアミン(A1)から誘導されるジアミン残基を、好ましくは1モル部以上40モル部以下の範囲内、より好ましくは5モル部以上30モル部以下の範囲内で含有してもよい。ジアミン(A1)を上記範囲内の量で使用することによって、モノマー由来の剛直構造により、ポリマー全体に秩序構造が形成されるので、熱可塑性でありながら、ガス透過性及び吸湿性が低く、長期耐熱接着性に優れたポリイミドが得られる。
熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bを構成する熱可塑性ポリイミドは、発明の効果を損なわない範囲で、ジアミン(A1)、(B1)~(B7)以外のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を含むことができる。
熱可塑性ポリイミドにおいて、上記テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の種類や、2種以上のテトラカルボン酸残基又はジアミン残基を適用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張係数、引張弾性率、ガラス転移温度等を制御することができる。また、熱可塑性ポリイミドにおいて、ポリイミドの構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、ランダムに存在することが好ましい。
なお、熱可塑性ポリイミドに含まれるテトラカルボン酸残基及びジアミン残基を、いずれも芳香族基とすることで、高温環境下での寸法精度を向上させることができる。
熱可塑性ポリイミド及びその前駆体の合成については、非熱可塑性ポリイミドと同様に行うことができる。
熱可塑性ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000~400,000の範囲内が好ましく、50,000~350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、フィルムの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際にフィルム厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bは、金属箔や他の絶縁層材料との接着性発現の観点から、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上300℃未満の範囲内であることが好ましく、さらに、200~290℃であることがより好ましく、200℃~280℃であることが最も好ましい。
また、反りを抑制する観点から、熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bは、厚み方向に直交する面内方向の250℃から100℃までの平均熱膨張係数が、30ppm/K以上、好ましくは30ppm/K以上100ppm/K以下の範囲内、より好ましくは30ppm/K以上80ppm/K以下の範囲内にあることがよい。
また、熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bに用いる樹脂には、ポリイミドの他に、任意成分として、例えば可塑剤、エポキシ樹脂などの他の硬化樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、無機フィラー、カップリング剤、充填剤、難燃剤などを適宜配合することができる。
<接着層>
接着層ADは、下記の(A)成分及び(B)成分;
(A)水添スチレン系エラストマーで、
及び
(B)熱硬化性化合物の硬化物、
を含有する。
(A)成分:
(A)成分は、水添スチレン系エラストマーである。水添スチレン系エラストマーは、スチレン又はその誘導体と共役ジエン化合物との共重合体の水素添加物である。ここで、スチレン又はその誘導体としては、特に限定されるものではないが、スチレン、メチルスチレン、ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等が例示される。また、共役ジエン化合物としては、特に限定されるものではないが、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン等が例示される。水添スチレン系エラストマーは、水素添加されていることによって、熱に対する安定性が向上し、分解や重合などの変質が起こり難くなるとともに、脂肪族的な性質が高くなり、他の樹脂成分との相溶性が高まる。
(A)成分の水添スチレン系エラストマーの共重合構造は、ブロック構造でもランダム構造でもよい。水添スチレン系エラストマーの好ましい具体例として、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(A)成分の水添スチレン系エラストマーの重量平均分子量は、特に制限はなく、例えば、50,000~300,000の範囲内であることが好ましく、50,000~270,000の範囲内がより好ましく、50,000~100,000の範囲内であることが最も好ましい。(A)成分の重量平均分子量が300,000を超えると、(B)成分と混合した樹脂組成物の粘度が高くなり、フィルム化が困難になる場合があり、50,000を下回ると、接着層ADの吸湿性が高くなり、低い誘電正接を安定して維持することが困難になる。
また、水添スチレン系エラストマーの重量平均分子量が100,000以下である場合は、(A)成分を多量に配合することが可能となり、樹脂フィルムの誘電特性を大幅に改善することが可能になる。具体的には、(A)成分が樹脂成分の主成分となるように高濃度で配合しても、これらを含有する樹脂組成物の粘度上昇が抑えられ、水添スチレン系エラストマーの配合による低吸湿性と誘電正接の低減作用とを最大限に発現させることが可能となる。なお、本発明において、「主成分」とは、全樹脂成分の50重量%を超える成分と意味する。
(A)成分の水添スチレン系エラストマーの酸価は、例えば10mgKOH/g以下が好ましく、1mgKOH/g以下がより好ましく、0mgKOH/gであることがさらに好ましい。酸価が10mgKOH/g以下である水添スチレン系エラストマーを用いることによって、接着層ADを形成したときの誘電正接を低下させ得るとともに良好なピール強度を維持することができる。それに対して、酸価が10mgKOH/gを超えて大きくなりすぎると、極性基の増加によって誘電特性が悪化するとともに、(B)成分との相溶性が悪くなって接着層ADを形成したときの密着性が低下する。したがって、酸価は低いほどよく、酸変性していないもの(つまり、酸価が0mgKOH/gであるもの)が本発明の(A)成分として最も適している。
(A)成分の水添スチレン系エラストマーは、スチレン単位[-CHCH(C)-]の含有比率が10重量%以上65重量%以下の範囲内であることが好ましく、20重量%以上65重量%以下の範囲内であることがより好ましく、30重量%以上60重量%以下の範囲内であることが最も好ましい。水添スチレン系エラストマー中のスチレン単位の含有比率が10重量%未満では樹脂の弾性率が低下してフィルムとしてのハンドリング性が悪化し、65重量%を超えて高くなると、樹脂が剛直になり、接着剤としての使用が困難となるほか、水添スチレン系エラストマー中のゴム成分が少なくなるため、誘電特性の悪化に繋がる。
また、スチレン単位の含有比率が上記範囲内であることによって、接着層AD中の芳香環の割合が高くなるため、接着層ADを用いて回路基板を製造する過程でレーザー加工によりビアホール(貫通孔)及びブラインドビアホールを形成する場合に、紫外線領域の吸収性を高めることが可能となり、レーザー加工性をより向上させることができる。
(A)成分の水添スチレン系エラストマーとしては、市販品を適宜選定して用いることができる。そのような市販の水添スチレン系エラストマーとして、例えば、旭化成社製のタフテックM1911(商品名)、タフテックM1913(商品名)、タフテックH1221(商品名)、タフテックH1041(商品名)、タフテックS1605(商品名)、タフテックP1500(商品名)、KRATON社製のA1535HU(商品名)、G1652MU(商品名)、G1726VS(商品名)、G1645VS(商品名)、FG1901GT(商品名)、G1650MU(商品名)、G1654HU(商品名)、G1730VO(商品名)、MD1653MO(商品名)、クラレ社製のセプトン8007L(商品名)、セプトン4044(商品名)、セプトンHG252(商品名)などを好ましく使用することができる。
(B)成分:
(B)成分は、熱硬化性化合物の硬化物である。ここで、熱硬化性化合物としては、加熱によって不可逆的に硬化する性質を有する化合物であれば特に制限なく用いることが可能であり、樹脂(高分子化合物)を含む。また、熱硬化性化合物は、熱硬化性を示す混合物であってもよく、例えば、熱硬化性樹脂とその硬化剤との混合物、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との混合物や、熱可塑性樹脂とその硬化剤との混合物などあってもよい。(B)成分としては、熱硬化性樹脂が好ましく用いられ、例えば、熱硬化性エポキシ樹脂、熱硬化性ポリフェニレンエーテル、ビスマレイミド樹脂、スチレン-マレイミド共重合体、マレイミド-ビニル化合物共重合体、アクリル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド、活性エステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネートエステル樹脂等が好ましく、硬化後の低極性構造による低誘電正接化の観点からビスマレイミド樹脂、マレイミド-ビニル化合物共重合体などの不飽和結合による熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリフェニレンエーテルがより好ましい。また、低誘電正接に影響しない少量の添加で効率的に接着層を硬化できる観点からは、熱硬化性エポキシ樹脂が好ましい。
また、熱硬化性ポリフェニレンエーテルとしては、二重結合を有するものが好ましい。
接着層ADは、必要に応じて任意成分として、発明の効果を損なわない範囲で、無機フィラー、有機フィラー、可塑剤、硬化促進剤、カップリング剤、顔料、難燃剤などを適宜配合することができる。ここで、無機フィラーとしては、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、ケイフッ化カリウム、ホスフィン酸金属塩等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
接着層ADにおいて、(A)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計量に対して、30重量%以上であることが好ましく、40~98重量%の範囲内がより好ましく、50~95重量%の範囲内が最も好ましい。(A)成分の含有量が30重量%未満では、吸湿性と誘電正接を共に低下させる効果が十分に発現しない場合がある。
また、接着層ADにおいて、(B)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計量に対して70重量%未満であることが好ましく、2~60重量%の範囲内がより好ましく、5~50重量%の範囲内が最も好ましい。(B)成分の含有量が70重量%を超えると、吸湿性が増加したり、誘電正接が増大したりする場合がある。
また、所望の誘電特性と接着性との両立を図る観点から、(A)成分と(B)成分の合計量は、接着層AD全体に対して50重量%以上であることが好ましく、60~100重量%の範囲内がより好ましく、70~100重量%の範囲内が最も好ましい。
接着層ADは、温度22~25℃、湿度45~55%RHの条件(常態)下で48時間静置した後に測定される周波数10GHzにおける誘電正接をDf1ADとし、温度22~25℃、48時間の条件で吸水処理した後に測定される周波数10GHzにおける誘電正接をDf2ADとしたとき、Df1ADが0.0040未満であり、Df2ADとDf1ADとの差分(Df2AD-Df1AD)が0.0020未満であることが好ましい。このように、常態下における誘電正接Df1ADが0.0040未満であり、吸水後の誘電正接Df2ADと常態下の誘電正接Df1ADとの差分(Df2AD-Df1AD)が0.0020未満であることによって、第1の絶縁樹脂層40Aと第2の絶縁樹脂層40Bの間に介在させた状態で使用しても環境湿度の影響をほとんど受けることなく、安定した高周波伝送特性が発現する。差分(Df2AD-Df1AD)が0.0020以上であると、第1の絶縁樹脂層40Aと第2の絶縁樹脂層40Bの間に介在させた状態で使用したときに環境湿度により伝送特性が変動して、特に高湿度環境において高周波信号の伝送損失が増大し、安定的な信号の伝送ができなくなる場合がある。このような観点から、差分(Df2AD-Df1AD)は0.0015以下であることが好ましく、0.0010以下であることがより好ましい。
また、高周波信号の伝送損失を低減する観点から、接着層ADの常態下における誘電正接Df1ADは0.0040未満が好ましく、0.0030以下であることがより好ましく、吸水後の誘電正接Df2ADは0.0055未満が好ましく、0.0040以下であることがより好ましい。
また、接着層ADは、回路基板おいてインピーダンス整合性を確保するために、温度22~25℃、湿度45~55%RHの条件(常態)下で48時間静置した後に測定される周波数10GHzにおける比誘電率Dk1ADが3.0以下であることが好ましく、また、温度22~25℃、48時間の条件で吸水処理した後に測定される周波数10GHzにおける比誘電率Dk2ADが3.0以下であることが好ましい。接着層ADの常態における比誘電率Dk1ADが3.0を超えたり、吸水後の比誘電率Dk2ADが3.0を超えると、回路基板に適用した際に、接着層ADの誘電損失の増大に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
接着層ADは、厚み方向に直交する面内方向の250℃から100℃までの平均熱膨張係数が30ppm/Kを超えてもよい。接着層ADは、低弾性であるため、面内方向の熱膨張係数が30ppm/Kを超えても積層時に発生する内部応力を緩和することができる。
以上のような接着層ADは、低吸湿性と優れた誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)を有するものである。
<樹脂積層体>
金属張積層板100において、第1の絶縁樹脂層40Aと接着層ADと第2の絶縁樹脂層40Bとからなる樹脂積層体101は、温度22~25℃、湿度45~55%RHの条件(常態)下で48時間静置した後に測定される周波数10GHzにおける誘電正接をDf1とし、温度22~25℃、48時間の条件で吸水処理した後に測定される周波数10GHzにおける誘電正接をDf2としたとき、Df1が0.0040未満であり、Df2とDf1との差分(Df2-Df1)が0.0030以下である。このように、常態下における誘電正接Df1が0.0040未満であり、吸水後の誘電正接Df2と常態下の誘電正接Df1との差分(Df2-Df1)が0.0030以下であることによって、環境湿度の影響をほとんど受けることなく、安定した高周波伝送特性が発現する。差分(Df2-Df1)が0.0030を超えると、環境湿度により伝送特性が変動して、特に高湿度環境において高周波信号の伝送損失が増大し、安定的な信号の伝送ができなくなる場合がある。このような観点から、差分(Df2-Df1)は0.0025以下であることが好ましく、0.0020以下であることがより好ましい。
また、高周波信号の伝送損失を低減する観点から、樹脂積層体101の常態下における誘電正接Df1は0.0040未満が好ましく、0.0030以下であることがより好ましく、吸水後の誘電正接Df2は0.0070以下が好ましく、0.0050以下であることがより好ましい。
また、樹脂積層体101は、回路基板おいてインピーダンス整合性を確保するために、温度22~25℃、湿度45~55%RHの条件(常態)下で48時間静置した後に測定される周波数10GHzにおける比誘電率Dk1が3.5以下であることが好ましく、また、温度22~25℃、48時間の条件で吸水処理した後に測定される周波数10GHzにおける比誘電率Dk2が4.0以下であることが好ましい。接着層ADの常態における比誘電率Dk1が3.5を超えたり、吸水後の比誘電率Dk2が4.0を超えると、回路基板に適用した際に、接着層ADの誘電損失の増大に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
また、金属張積層板100において、回路加工後の寸法安定性を確保するため、樹脂積層体101の厚み方向(積層方向)に直交する面内方向の250℃から100℃までの平均熱膨張係数は、例えば、10ppm/K以上がよく、好ましくは10ppm/K以上30ppm/K以下の範囲内、より好ましくは15ppm/K以上25ppm/Kの範囲内にあることがよい。面内方向の平均熱膨張係数が10ppm/K未満であるか、又は30ppm/Kを超えると、反りが発生したり、寸法安定性が低下したりする。
なお、本発明における面内方向の熱膨張係数は、後記実施例に記載した方法で測定することができる。
<層厚>
金属張積層板100において、金属層110A,110Bの厚みは特に限定されるものではないが、例えば銅箔等の金属箔を用いる場合、好ましくは35μm以下であり、より好ましくは5~25μmの範囲内がよい。生産安定性及びハンドリング性の観点から金属箔の厚みの下限値は5μmとすることが好ましい。
金属張積層板100は、樹脂積層体101の厚み(つまり、第1の絶縁樹脂層40Aと接着層ADと第2の絶縁樹脂層40Bの合計厚み)をT1としたとき、該厚みT1が70~500μmの範囲内であることが好ましく、100~300μmの範囲内であることがより好ましい。厚みT1が70μm未満では、回路基板とした際の伝送損失を低下させる効果が不十分となり、500μmを超えると、生産性低下の恐れがある。
また、接着層ADの厚みT2は、例えば1~450μmの範囲内にあることが好ましく、10~250μmの範囲内がより好ましい。接着層ADの厚みT2が上記下限値に満たないと、低誘電正接化が不十分となり、十分な誘電特性が得られず、また、絶縁樹脂層との十分な接着性が得られにくいなどの問題が生じることがある。一方、接着層ADの厚みが上記上限値を超えると、寸法安定性が低下するなどの不具合が生じることがある。
また、厚みT1に対する接着層ADの厚みT2の比率(T2/T1)は、0.1~0.96の範囲内であることが好ましく、0.33~0.76の範囲内であることがより好ましい。比率(T2/T1)が0.1未満では、低誘電正接化が不十分となり、十分な誘電特性が得られない場合があり、0.96を超えると寸法安定性が低下するなどの不具合が生じる場合がある。本発明では、接着層ADの材質として、(A)成分の熱可塑性ポリイミドとともに(A)成分の水添スチレン系エラストマーを配合していることによって、比率(T2/T1)を小さくしても樹脂積層体101を十分に低誘電正接化させることが可能である。この場合、比率(T2/T1)は、例えば0.1~0.6の範囲内であることが好ましく、0.1~0.5の範囲内であることがより好ましく、特に樹脂積層体101全体の低誘電正接化を図るために、0.33~0.5の範囲内であることが最も好ましい。
第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bの厚みT3は、それぞれ、例えば、8~50μmの範囲内にあることが好ましく、12~50μmの範囲内がより好ましく、20~50μmの範囲内がさらに好ましく、38~45μmが最も好ましい。第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bの厚みT3が上記の下限値に満たないと、金属張積層板100の反りなどの問題が生じることがある。第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bの厚みT3が上記の上限値を超えると、回路基板とした際の伝送特性が低下するなどの不具合が生じる。なお、第1の絶縁樹脂層40Aと第2の絶縁樹脂層40Bは、必ずしも同じ厚みでなくてもよい。
非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bの厚みは、ベース層としての機能を確保し、且つ製造時および熱可塑性ポリイミド塗工時の搬送性の観点から、それぞれ、6μm以上45μm以下の範囲内であることが好ましく、9μm以上30μm以下の範囲内がより好ましい。非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bの厚みが上記の下限値未満である場合、電気絶縁性やハンドリング性が不十分となり、上限値を超えると、生産性が低下する。
熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bの厚みは、接着機能を確保する観点から、それぞれ、1μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましく、1μm以上5μm以下の範囲内がより好ましい。熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bの厚みが上記の下限値未満である場合、接着性が不十分となり、上限値を超えると、寸法安定性が悪化する傾向となる。
[金属張積層板の製造]
金属張積層板100は、図示は省略するが、例えば、以下の方法1、又は、方法2に従って製造できる。この場合、接着層ADを構成する(A)成分と(B)成分を形成するための熱硬化性化合物を含む樹脂組成物の形態で用いることができる。樹脂組成物は、例えば、(A)成分と熱硬化性化合物を混合することによって調製することができる。このとき、(A)成分と熱硬化性化合物とを均一に混合するため、(A)成分及び/又は熱硬化性化合物を溶剤に溶解した状態で混合してもよい。
樹脂組成物における(A)成分の含有量は、(A)成分と熱硬化性化合物との合計量に対して、30重量%以上が好ましく、40~98重量%の範囲内が好ましく、50~95重量%の範囲内がより好ましい。(A)成分の含有量が30重量%未満では、吸湿性と誘電正接を共に低下させる効果が十分に発現しない場合がある。一方、(A)成分の比率が95重量%を超えると、樹脂組成物中の固形分濃度が高くなり過ぎて粘度が上昇し、ハンドリング性が低下する場合や硬化不足で過度に接着剤層が軟化して耐熱性が低下する場合がある。
なお、所望の誘電特性と接着性との両立を図る観点から、(A)成分と熱硬化性化合物の合計量は、樹脂組成物中の全固形分量に対して50重量%以上であることが好ましく、60~100重量%の範囲内がより好ましく、70~100重量%の範囲内が最も好ましい。ここで、樹脂組成物中の固形分とは、溶媒を除いた成分の合計を意味する。
樹脂組成物は、任意成分を含有することができる。樹脂組成物は、有機溶媒などの溶剤を含有することが可能であり、溶剤を含有するポリイミド溶液(ワニス)として調製することができる。(A)成分の水添スチレン系エラストマーは、例えばキシレン、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒に良好な溶解性を示す。一方、(B)成分を形成するための熱硬化性化合物には、溶解可能な有機溶媒を適宜選択可能であり、そのような有機溶媒として、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、ブチルセロソルブ、2-エトキシエタノール、イソプロピルアルコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。したがって、熱硬化性化合物を溶解可能な有機溶媒に上記芳香族炭化水素系溶媒を任意の比率で混合した混合溶媒を用いることが好ましい。溶剤の含有量としては特に制限されるものではないが、組成物全体に対して(A)成分と熱硬化性化合物の合計の含有量が5~30重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。樹脂組成物の粘度は、樹脂組成物を塗工する際のハンドリング性を高め、均一な厚みの塗膜を形成しやすい粘度範囲として、例えば3000cps~100000cpsの範囲内とすることが好ましく、5000cps~50000cpsの範囲内とすることがより好ましい。上記の粘度範囲を外れると、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。
<方法1>
接着層ADとなる樹脂組成物をシート状に成形して接着シートとなし、該接着シートを、第1の片面金属張積層板(C1)の第1の絶縁樹脂層40Aと、第2の片面金属張積層板(C2)の第2の絶縁樹脂層40Bとの間に配置して貼り合わせ、熱圧着することによって(B)成分を熱硬化させて接着層ADを形成し、金属張積層板100とする方法。
<方法2>
接着層ADとなる樹脂組成物を、第1の片面金属張積層板(C1)の第1の絶縁樹脂層40A、又は第2の片面金属張積層板(C2)の第2の絶縁樹脂層40Bのいずれか片方、または両方に、所定の厚みで塗布・乾燥した後、塗布膜の側を貼り合わせて熱圧着することによって(B)成分を熱硬化させて接着層ADを形成し、金属張積層板100とする方法。
方法1、2で用いる第1の片面金属張積層板(C1)及び第2の片面金属張積層板(C2)は、例えば、金属箔上にポリアミド酸溶液を塗布・乾燥することを所定回数繰り返し後、イミド化することによって作製できる。
また、方法1で用いる接着シートは、例えば、任意の支持基材に、上記樹脂組成物を塗布・乾燥した後、支持基材から剥がして接着シートとする方法、などによって製造できる。
また、上記において、樹脂組成物やポリアミド酸溶液を金属箔、支持基材や第1の絶縁樹脂層40A、第2の絶縁樹脂層40B上に塗布する方法としては、特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。
以上のようにして得られる本実施の形態の金属張積層板100は、金属層110A及び/又は金属層110Bをエッチングするなどして配線回路加工することによって、片面FPC又は両面FPCなどの回路基板を製造することができる。
[回路基板]
本発明の一実施の形態である回路基板は、図1を参照して説明すると、金属張積層板100の2つの金属層110A,110Bの片方又は両方を、常法によってパターン状に加工して配線層を形成することによって製造できる。本実施の形態の回路基板は、金属層110Aを回路加工してなる第1の配線層と、この第1の配線層の少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層40Aと、金属層110Bを回路加工してなる第2の配線層と、この第2の配線層の少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層40Bと、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bに当接するようにこれらの間に積層された接着層ADと、を備えている。そして、本実施の形態の回路基板は、接着層ADが、下記の(A)成分及び(B)成分;
(A)水添スチレン系エラストマー、
及び
(B)熱硬化性化合物の硬化物、
を含有するものであり、
第1の絶縁樹脂層40Aと接着層ADと第2の絶縁樹脂層40Bとからなる樹脂積層体101が、温度22~25℃、湿度45~55%RHの条件下で48時間静置した後に測定される周波数10GHzにおける誘電正接をDf1とし、温度22~25℃、48時間の条件で吸水処理した後に測定される周波数10GHzにおける誘電正接をDf2としたとき、Df1が0.0040未満であり、Df2とDf1との差分(Df2-Df1)が0.0030以下である。
本実施の形態の回路基板には、常法に従って、ビアホールやスルーホールを形成した後、ホール内壁にめっき加工を施すことができる。この場合、本実施の形態の回路基板は、接着層ADの厚み比率を大きくしなくても、樹脂積層体101全体の誘電正接を十分に低く抑えることが可能であるため、優れた誘電特性を実現できる。すなわち、本発明の回路基板は、高周波信号伝送への対応が図られており、例えばFPC、リジッド・フレックス回路基板などとして好ましく適用できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
[貯蔵弾性率及びガラス転移温度(Tg)の測定]
貯蔵弾性率は、5mm×20mmにポリイミドフィルム又は硬化後の樹脂シートを切り出し、動的粘弾性装置(DMA:ティー・エイ・インスツルメント社製、商品名:RSA-G2)を用いて、昇温速度4℃/分で30℃から400℃まで段階的に加熱し、周波数11Hzで測定を行った。また、測定中のTanδの値が最大となる最大温度をTgとして定義した。また、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×10Pa未満であるポリイミドを「熱可塑性」と判定し、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×10Pa以上であるポリイミドを「非熱可塑性」と判定した。
[粘度の測定]
E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV-II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%~90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
[酸価]
酸価は、試料1gを中和するのに要する水酸化カリウム(KOH)のmg数である。これは、例えば、次のような方法により測定される。まず試料を精密に量り、250mLのフラスコに入れ、エタノールまたはエタノールおよびエーテルの等容量混液50mLを加え、加温して溶かし、必要に応じて振り混ぜながら0.1N水酸化カリウム液で滴定する(指示薬:フェノールフタレイン)。滴定の終点は、液の淡紅色が30秒持続する点とする。次いで、同様の方法で空試験を行なって補正し、次の式から酸価の値を求める。
酸価[mgKOH/g]=〔0.1N水酸化カリウム液の消費量(mL)×5.611〕/〔試料量(g)〕
[比誘電率および誘電正接の測定]
ベクトルネットワークアナライザ(Agilent社製、商品名E8363C)ならびにSPDR共振器を用いて、10GHzにおける樹脂シートの比誘電率(Dk)および誘電正接(Df)を測定した。なお、温度22~25℃、湿度45~55%RHの条件下で、48時間静置したときの比誘電率はDk1、誘電正接はDf1、温度22~25℃、48時間の条件で吸水処理した後の比誘電率はDk2、誘電正接はDf2とし、ΔDfはDf2とDf1との差分(Df2―Df1)で算出した。
[面内方向の熱膨張係数(XY‐CTE)の測定]
3mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、サーモメカニカルアナライザー(Bruker社製、商品名;4000SA)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から265℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、250℃から100℃までの平均熱膨張係数(熱膨張係数)を求めた。
本実施例で用いた略号は以下の化合物を示す。
スチレンエラストマー1:旭化成社製、商品名;タフテックM1913(水添ポリスチレンエレストマー、スチレン単位含有割合;30重量%、酸価;10mgKOH/g)
スチレンエラストマー2:KRATON社製、商品名;MD1653MO(水添ポリスチレンエラストマー、スチレン単位含有割合;30重量%、Mw;80,499、酸価無し)
熱硬化性化合物1:DIC社製、商品名;EPICLON HP-4700(ナフタレン型エポキシ樹脂)
熱硬化性化合物2:三菱瓦斯化学社製、商品名;OPE2St-1200(ビニル変性オリゴフェニレンエーテル、Mn;1200)
熱硬化性化合物3:ケイ・アイ化成社製、商品名;BMI-70[ビス(3‐エチル‐5‐メチル‐4‐マレイミドフェニル)メタン]
熱硬化性化合物4:ジャパンエポキシレジン株式会社、アセチル変性フェノール
硬化触媒:四国化成工業社製、商品名;2E4MZ(2‐エチル‐4‐メチルイミダゾール)
BPDA:3,3',4,4'‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
m‐TB:2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニル
BAPP:2,2‐ビス[4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
TPE-R:1,3-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
BTDA:3,3’,4,4’‐ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
DDA:炭素数36の脂肪族ジアミン(クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1074を蒸留精製したもの、アミン価;210mgKOH/g、環状構造及び鎖状構造のダイマージアミンの混合物、成分(a);97.9%、成分(b);0.3%、成分(c);1.8%)
なお、成分(a)、成分(b)、成分(c)の「%」は、GPC測定におけるクロマトグラムの面積パーセントを意味する。
MEK:メチルエチルケトン
NMP:N‐メチル‐2‐ピロリドン
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
N-12:ドデカン二酸ジヒドラジド
OP935:有機ホスフィン酸アルミニウム塩(クラリアントジャパン社製、商品名;Exolit OP935)
表1に示す組成で、スチレンエラストマー、熱硬化性組成物および硬化触媒を混合し、接着剤組成物1~3を調製した。なお、具体的な各成分は以下の通りであり、表1中の数値は重量部を示す。尚、撹拌装置付き1000mlフラスコ内で、塗布を行いやすい適度な濃度になるように、MEKとトルエンを1:9に調整した溶剤で希釈し、6時間撹拌して調製した。
Figure 2024049518000004
(合成例1)
<接着層用の樹脂溶液の調製>
窒素気流下、1000mlのセパラブルフラスコに、34.04gのBTDA(0.1057モル)、55.89gのDDA(0.1046モル)、126gのNMP及び84gのキシレンを装入し、40℃で1時間良く混合して、ポリアミド酸溶液を調製した。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、5時間加熱、攪拌し、重合後の固形分濃度が30%となる量のキシレンを加えてイミド化を完結したポリイミド溶液1(固形分;30重量%、重量平均分子量;52,800、熱可塑性ポリイミド)を調製した。
(合成例2)
<絶縁樹脂層用のポリアミド酸溶液の調製>
窒素気流下で、反応槽に、31.88gのm-TB(0.1502モル)及び3.24gのBAPP(0.0079モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、16.98gのPMDA(0.0778モル)及び22.90gのBPDA(0.0778モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液1(粘度;26,500cps)を調製した。ポリアミド酸溶液1を基材上に塗布・乾燥してイミド化することによって得られたポリイミドフィルムについて、貯蔵弾性率を測定した結果、「非熱可塑性」であった。
(合成例3)
<絶縁樹脂層用のポリアミド酸溶液の調製>
3.48gのm-TB(0.0164モル)、27.14gのTPE-R(0.0928モル)、重合後の固形分濃度が12重量%となる量のDMAcを投入し、9.72gのPMDA(0.0446モル)及び19.67.31gのBPDA(0.0668モル)を原料組成とした以外は、合成例2と同様にしてポリアミド酸溶液2(粘度;2,650cps)を調製した。ポリアミド酸溶液2を基材上に塗布・乾燥してイミド化することによって得られたポリイミドフィルムについて、貯蔵弾性率を測定した結果、「熱可塑性」であった。
(作製例4)
<接着層用の樹脂シートの調製>
100gのポリイミド溶液1(固形分として30g)に1.1gのN-12(0.004モル)を配合し、7.5gのOP935、14.0gのキシレンを加えて希釈し、更に1時間攪拌することで接着剤組成物4を調製した。
(作製例5)
<接着層用の樹脂シート1>
接着剤組成物1を乾燥後厚みが50μmとなるように離型基材(縦×横×厚さ=320mm×240mm×25μm)のシリコーン処理面に塗工した後、80℃で15分間加熱乾燥し、離型基材上から剥離することで樹脂シート1を調製した。樹脂シート1を180℃、2時間の熱処理をして得た硬化後の樹脂シート1の誘電特性は、Dk1;2.4、Df1;0.0023、Dk2;2.4、Df2;0.0024、ΔDf;0.0000であった。
(作製例6、7)
<接着層用の樹脂シート2、3の調製>
接着剤組成物1を乾燥後厚みがそれぞれ60μm、38μmとなるように塗工した以外は、作製例5と同様にして樹脂シート2(厚み60μm)、樹脂シート3(厚み38μm)を得た。
(作製例8)
<接着層用の樹脂シート4の調製>
接着剤組成物2を乾燥後厚みが50μmとなるように離型基材(縦×横×厚さ=320mm×240mm×25μm)のシリコーン処理面に塗工した後、80℃で15分間加熱乾燥し、離型基材上から剥離することで樹脂シート4を調製した。樹脂シート4を180℃、2時間の熱処理をして得た硬化後の樹脂シート4の誘電特性は、Dk1;2.5、Df1;0.0011、Dk2;2.4、Df2;0.0013、ΔDf;0.0002であった。
(作製例9)
<接着層用の樹脂シート5の調製>
接着剤組成物2を乾燥後厚みがそれぞれ38μmとなるように塗工した以外は、作成例5と同様にして樹脂シート5を得た。
(作製例10)
<接着層用の樹脂シート6の調製>
接着剤組成物3を乾燥後厚みが50μmとなるように離型基材(縦×横×厚さ=320mm×240mm×25μm)のシリコーン処理面に塗工した後、80℃で15分間加熱乾燥し、離型基材上から剥離することで樹脂シート6を調製した。樹脂シート6を180℃、2時間の熱処理をして得た硬化後の樹脂シート6の誘電特性は、Dk1;2.6、Df1;0.0044、Dk2;2.6、Df2;0.0067、ΔDf;0.0023であった。
(作製例11)
<接着層用の樹脂シート7の調製>
接着剤組成物4を乾燥後厚みが50μmとなるように離型基材(縦×横×厚さ=320mm×240mm×25μm)のシリコーン処理面に塗工した後、80℃で15分間加熱乾燥し、離型基材上から剥離することで樹脂シート7を調製した。樹脂シート7を180℃、2時間の熱処理をして得た硬化後の樹脂シート7の誘電特性は、Dk1;2.7、Df1;0.0023、Dk2;2.7、Df2;0.0043、ΔDf;0.0020であった。
(作製例12)
<片面金属張積層板1の調製>
銅箔1(電解銅箔、厚さ;12μm、樹脂層側の表面粗度Rz;0.6μm)の上に、ポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約3~5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次にその上にポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが、約40~44μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約3~5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結して、ポリイミド層の厚みが50μmの片面金属張積層板1を調製した。
<ポリイミドフィルム1の調製>
塩化第二鉄水溶液を用いて片面金属張積層板1の銅箔層をエッチング除去して、厚み50μmのポリイミドフィルム1を調製した。XY-CTEは20ppm/K、DkとDfはそれぞれ3.40、0.0034であった。
(作製例13)
<片面金属張積層板2の調製>
銅箔1(電解銅箔、厚さ;12μm、樹脂層側の表面粗度Rz;0.6μm)の上に、ポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次にその上にポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが、約19~21μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結して、ポリイミド層の厚みが25μmの片面金属張積層板2を調製した。
(作製例14)
<片面金属張積層板3の調製>
銅箔1(電解銅箔、厚さ;12μm、樹脂層側の表面粗度Rz;0.6μm)の上に、ポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次にその上にポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが、約14~16μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結して、ポリイミド層の厚みが20μmの片面金属張積層板3を調製した。
(作製例15)
<片面金属張積層板4の調製>
銅箔1(電解銅箔、厚さ;12μm、樹脂層側の表面粗度Rz;0.6μm)の上に、ポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約1~2μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次にその上にポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが、約8~10μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約1~2μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結して、ポリイミド層の厚みが12μmの片面金属張積層板4を調製した。
<ポリイミドフィルム2~4の調製>
塩化第二鉄水溶液を用いて片面金属張積層板2~4の銅箔層をエッチング除去して、ポリイミドフィルム2~4を調製した。各特性値はポリイミドフィルム1と同等値であった。
[実施例1]
2枚の片面金属張積層板2を準備し、それぞれの絶縁樹脂層側の面を樹脂シート1の両面に重ね合わせ、180℃で2時間、3.5MPaの圧力をかけて圧着して、両面金属張積層板1を調製した。両面金属張積層板1における銅箔層をエッチング除去して調製した樹脂積層体1(厚み;100μm)のXY-CTEは24ppm/K、誘電特性は、Dk1;2.9、Df1;0.0031、Dk2;2.9、Df2;0.0054、ΔDf;0.0023であった。
これらの評価結果を表2に示す。
[実施例2]
片面金属張積層板3、樹脂シート2を使用した以外は、実施例1と同様にして両面金属張積層板2及び樹脂積層体2(厚み;100μm)を得た。これらの評価結果を表2に示す。
[実施例3]
片面金属張積層板4を2枚準備し、1枚目の片面金属張積層板4の絶縁樹脂層側の面に樹脂シート3を2枚、そして2枚目の片面金属張積層板4の絶縁樹脂層側が樹脂シート3に接するように重ね合わせ、180℃で2時間、3.5MPaの圧力をかけて圧着して、両面金属張積層板3及び樹脂積層体3(厚み;100μm)を得た。
[実施例4]
片面金属張積層板1を使用した以外は、実施例1と同様にして両面金属張積層板4及び樹脂積層体4(厚み;150μm)を得た。これらの評価結果を表2に示す。
[実施例5]
樹脂シート4を使用した以外は、実施例1と同様にして両面金属張積層板5及び樹脂積層体5(厚み;100μm)を得た。これらの評価結果を表2に示す。
[実施例6]
樹脂シート5を使用した以外は、実施例3と同様にして両面金属張積層板6及び樹脂積層体6(厚み;100μm)を得た。これらの評価結果を表2に示す。
[実施例7]
接着剤組成物2を乾燥後の厚みが25μmとなるように片面金属張積層板2の絶縁樹脂層上に塗工した後、85℃で15分間加熱乾燥し、接着層付き片面金属張積層板1を得た。接着層付き片面金属張積層板1の接着層側に片面金属張積層板2の絶縁樹脂層が接するように重ね合わせ、180℃で2時間、3.5MPaの圧力をかけて圧着して、両面金属張積層板7を調製した。また、両面金属張積層板7における銅箔層をエッチング除去して樹脂積層体7(厚み;75μm)を得た。これらの評価結果を表2に示す。
(比較例1)
樹脂シート6を使用した以外は、実施例1と同様にして両面金属張積層板8及び樹脂積層体8(厚み;100μm)を得た。これらの評価結果を表2に示す。
(比較例2)
樹脂シート7を使用した以外は、実施例1と同様にして両面金属張積層板9及び樹脂積層体9(厚み;100μm)を得た。これらの評価結果を表2に示す。
以上の結果をまとめて、表2に示す。
Figure 2024049518000005
実施例1~7は、比較例1、2に対してDf1が0.0040未満、Df2とDf1の差分(Df2-Df1)が0.0030以下の特性を両立した金属張積層板の設計、提供が可能であることが検証され、湿度環境の変化による高周波信号の伝送損失を確実に低減し、電子機器の信頼性を確保することが可能となると考えられる。
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。
10A,10B…熱可塑性ポリイミド層、20A,20B…非熱可塑性ポリイミド層、30A,30B…熱可塑性ポリイミド層、40A…第1の絶縁樹脂層、40B…第2の絶縁樹脂層、100…金属張積層板、101…樹脂積層体、110A,110B…金属層、AD…接着層

Claims (7)

  1. 第1の金属層と、
    前記第1の金属層の少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、
    第2の金属層と、
    前記第2の金属層の少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、
    前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層に当接するようにこれらの間に積層された接着層と、
    を備えた金属張積層板であって、
    前記接着層が、下記の(A)成分及び(B)成分;
    (A)水添スチレン系エラストマー、
    及び
    (B)熱硬化性化合物の硬化物、
    を含有するものであり、
    前記第1の絶縁樹脂層と前記接着層と前記第2の絶縁樹脂層とからなる樹脂積層体は、温度22~25℃、湿度45~55%RHの条件下で48時間静置した後に測定される周波数10GHzにおける誘電正接をDf1とし、温度22~25℃、48時間の条件で吸水処理した後に測定される周波数10GHzにおける誘電正接をDf2としたとき、Df1が0.0040未満であり、Df2とDf1との差分(Df2-Df1)が0.0030以下であることを特徴とする金属張積層板。
  2. 前記接着層は、温度22~25℃、湿度45~55%RHの条件下で48時間静置した後に測定される周波数10GHzにおける誘電正接をDf1ADとし、温度22~25℃、48時間の条件で吸水処理した後に測定される周波数10GHzにおける誘電正接をDf2ADとしたとき、Df1ADが0.0040未満であり、Df2ADとDf1ADとの差分(Df2AD-Df1AD)が0.0015以下である請求項1に記載の金属張積層板。
  3. 前記(A)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分の合計量に対して30重量%以上である請求項1に記載の金属張積層板。
  4. 前記(B)成分が、熱硬化性エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂及び熱硬化性ポリフェニレンエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂の硬化物である請求項3に記載の金属張積層板。
  5. 前記樹脂積層体の合計厚みが70~500μmの範囲内であるとともに、前記接着層の厚みが10~450μmの範囲内である請求項1に記載の金属張積層板。
  6. 前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層は、共に、熱可塑性ポリイミド層、非熱可塑性ポリイミド層及び熱可塑性ポリイミド層がこの順に積層された多層構造を有し、
    前記接着層は、2つの前記熱可塑性ポリイミド層に接して設けられている請求項1に記載の金属張積層板。
  7. 第1の配線層と、
    前記第1の配線層の少なくとも片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、
    第2の配線層と、
    前記第2の配線層の少なくとも片側の面に積層された第2の絶縁樹脂層と、
    前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層に当接するようにこれらの間に積層された接着層と、
    を備えた回路基板であって、
    前記接着層が、下記の(A)成分及び(B)成分;
    (A)水添スチレン系エラストマー、
    及び
    (B)熱硬化性化合物の硬化物、
    を含有するものであり、
    前記第1の絶縁樹脂層と前記接着層と前記第2の絶縁樹脂層とからなる樹脂積層体は、温度22~25℃、湿度45~55%RHの条件下で48時間静置した後に測定される周波数10GHzにおける誘電正接をDf1とし、温度22~25℃、48時間の条件で吸水処理した後に測定される周波数10GHzにおける誘電正接をDf2としたとき、Df1が0.0040未満であり、Df2とDf1との差分(Df2-Df1)が0.0030以下であることを特徴とする回路基板。

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