JP2024051580A - ポリイミド系フィルム、樹脂組成物、金属張積層板及びフレキシブル回路基板 - Google Patents

ポリイミド系フィルム、樹脂組成物、金属張積層板及びフレキシブル回路基板 Download PDF

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Abstract

【課題】 低い熱膨張係数を有し、かつ、誘電正接が十分に低く伝送損失の低減が可能な樹脂フィルムを提供する。【解決手段】 (A)非熱可塑性ポリイミド及び(B)ポリスチレンエラストマーを含有し、相分離構造を有するとともに、熱膨張係数が50ppm/K以下であり、温度24~26℃、湿度45~55%の環境下でスプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定したときの10GHzにおける比誘電率が3.0以下であり、誘電正接が0.0030以下であるポリイミド系フィルム。ポリイミド系フィルムは、(A)成分が海相であり、(B)成分が島相である海島構造を有することが好ましく、樹脂成分の合計量に対して、(A)成分の含有割合が50~80重量%の範囲内であり、(B)成分の含有割合が10~50重量%の範囲内であることが好ましい。【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリイミド系フィルム、該ポリイミド系フィルムを利用した金属張積層板及びフレキシブル回路基板、それらに用いる樹脂組成物に関する。
近年、電子機器の小型化、軽量化、省スペース化の進展に伴い、薄く軽量で、可撓性を有し、屈曲を繰り返しても優れた耐久性を持つフレキシブルプリント配線板(FPC;Flexible Printed Circuits)の需要が増大している。FPCは、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、例えば、HDD、DVD、スマートフォン等の電子機器の配線や、ケーブル、コネクター等の部品にその用途が拡大しつつある。FPC等の回路基板の材料には、金属層と絶縁樹脂層とが積層された金属張積層板が用いられている。
高密度化に加えて、機器の高性能化が進んだことから、伝送信号の高周波化への対応も必要とされている。高周波信号を伝送する際に伝送経路における伝送損失が大きいと電気信号のロスや信号の遅延時間が長くなるなどの不都合が生じる。また、5G通信の普及により、スマートフォンに代表されるモバイル通信機器は膨大な情報量を伝送するため、伝送信号の高周波化とともに複数の周波数帯の信号を伝送する方式が採用される。このような高周波信号伝送用のFPC向けの金属張積層板には、伝送ロスの改善の観点で、樹脂層を低誘電正接化かつ厚膜化することが有効である。
伝送信号の高周波化に対応するために、一対の片面金属張積層板の絶縁樹脂層の間に厚みの大きな接着層を介在させた積層構造の金属張積層板が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、接着層の材質として、ダイマージアミン(DDA)を原料とする熱可塑性ポリイミドが使用されている。ダイマージアミンを原料とする熱可塑性ポリイミドは、溶剤可溶性であり、接着性に優れ、ハンドリング性が良好であることから接着剤として有用な樹脂材料であるが、高周波化の進展に対応するためには、いっそうの低誘電正接化が求められる。また、特許文献1では、樹脂層の厚みが大きな積層構造を前提とすることから、多層基板用途や屈曲性が必要とされる用途など、樹脂層の薄化が求められる場合には適用が難しいという側面もあった。
一方、樹脂フィルムの誘電特性を改善するため、ダイマージアミンを原料とする熱可塑性ポリイミドに酸価が10mgKOH/g以下のポリスチレンエラストマーを配合した樹脂フィルムが提案されている(例えば、特許文献2)。しかし、特許文献2の樹脂フィルムは熱膨張係数が大き過ぎて寸法安定性が要求されるベース絶縁層に適用することは困難である。ここで、ベース絶縁層とは、金属張積層板の絶縁樹脂層において機械的強度と寸法安定性を維持する役割を担う樹脂層である。
特開2018-170417号公報 特開2022-99778号公報
上記のとおり、特許文献1の接着層は誘電特性にさらなる改善の余地があり、特許文献2の樹脂フィルムは熱膨張係数が大き過ぎるため、適用対象が制約されている。そのため、ベース絶縁層として適用可能な低い熱膨張係数と、高周波信号伝送に必要な低い誘電正接と、を両立できる樹脂フィルムが求められていた。
従って、本発明の目的は、低い熱膨張係数を有し、かつ、誘電正接が十分に低く伝送損失の低減が可能な樹脂フィルムを提供することである。
本発明者らは、鋭意研究の結果、特定のポリイミドにポリスチレンエラストマーをブレンドして相分離構造を形成せしめることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のポリイミド系フィルムは、下記の(A)成分及び(B)成分;
(A)非熱可塑性ポリイミド、
及び
(B)ポリスチレンエラストマー、
を含有し、相分離構造を有するとともに、熱膨張係数が50ppm/K以下であり、温度24~26℃、湿度45~55%の環境下でスプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定したときの10GHzにおける比誘電率が3.0以下であり、誘電正接が0.0030以下である。
本発明のポリイミド系フィルムは、(A)成分が海相であり、(B)成分が島相である海島構造を有するものであってもよい。
本発明のポリイミド系フィルムは、樹脂成分の合計量に対して、(A)成分の含有割合が50~80重量%の範囲内であってもよく、(B)成分の含有割合が10~50重量%の範囲内であってもよい。
本発明のポリイミド系フィルムにおいて、(A)成分は、酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するとともに、全ジアミン残基に対して、下記の一般式(1)で表されるジアミン成分から誘導されるジアミン残基を30mol%以上含むものであってよい。
Figure 2024051580000001
一般式(1)において、Rは、独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基を示し、nは1~3の整数を示し、mは0~4の整数を示す。
本発明のポリイミド系フィルムにおいて、(A)成分は、全酸二無水物残基に対して、下記の一般式(2)で表される酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基を30mol%以上含有するものであってもよい。
Figure 2024051580000002
一般式(2)において、Arは下記のいずれかで表される2価の基を示す。
Figure 2024051580000003
ここで、Rは、独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基を示し、n1は1又は2の整数を示し、mは0~4の整数を示す。
本発明の樹脂組成物は、下記の(A1)成分及び(B)成分;
(A1)ポリアミック酸、
及び
(B)ポリスチレンエラストマー、
を含有するとともに、樹脂成分の合計量に対して、(A1)成分の含有割合が50~80重量%の範囲内であり、(B)成分の含有割合が10~50重量%の範囲内である。
そして、本発明の樹脂組成物において、(A1)成分は、酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するとともに、全ジアミン残基に対して、上記一般式(1)で表されるジアミン成分から誘導されるジアミン残基を30mol%以上含む。
本発明の樹脂組成物において、(A1)成分は、全酸二無水物残基に対して、上記一般式(2)で表される酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基を30mol%以上含有するものであってもよい。
本発明の金属張積層板の製造方法は、絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている金属層と、を備えた金属張積層板を製造する方法であって、
上記樹脂組成物を前記金属層上、又は、前記金属層上に設けられ得た下地層上に塗工し、熱処理を行う工程を含むことを特徴とする。
本発明の金属張積層板は、絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている金属層と、を備えた金属張積層板であって、
前記絶縁樹脂層が、上記いずれかのポリイミド系フィルムによる層を含むことを特徴とする。
本発明のフレキシブル回路基板は、絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている配線層と、を備えたフレキシブル回路基板であって、
前記絶縁樹脂層が、上記いずれかのポリイミド系フィルムによる層を含むことを特徴とする。
本発明のポリイミド系フィルムは、(A)成分及び(B)成分を含有し、相分離構造を有することによって、低い熱膨張係数と低い誘電正接の両立が図られている。そのため、本発明のポリイミド系フィルムは、寸法安定性が要求されるベース絶縁層としての適用が可能であるほか、薄層化によって多層基板用途や屈曲性が必要とされる用途への応用も可能である。本発明のポリイミド系フィルムを使用したフレキシブル回路基板は、優れた寸法安定性を維持しながら高周波信号の伝送損失の低減が可能となる。
次に、本発明の実施の形態について説明する。
[ポリイミド系フィルム]
本発明のポリイミド系フィルムは、下記の(A)成分及び(B)成分;
(A)非熱可塑性ポリイミド、
及び
(B)ポリスチレンエラストマー、
を含有するとともに、(A)成分及び(B)成分による相分離構造を有する。
<(A)成分>
本発明で用いる(A)成分は、非熱可塑性ポリイミドである。本発明において「非熱可塑性ポリイミド」とは、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定された30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、かつ、ガラス転移温度+30℃以内の温度域での貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上を示すものを意味する。なお、「熱可塑性ポリイミド」とは、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定された30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、かつ、ガラス転移温度+30℃以内の温度域での貯蔵弾性率が1.0×10Pa未満を示すものを意味する。なお、本発明で「ポリイミド」という場合、ポリイミドの他、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリシロキサンイミド、ポリベンズイミダゾールイミドなど、分子構造中にイミド基を有するポリマーからなる樹脂を意味する。
非熱可塑性ポリイミドは、前駆体であるポリアミック酸をイミド化して得られる。ポリアミック酸は、特定の酸二無水物成分と特定のジアミン成分とを反応させて得られるものである。したがって、非熱可塑性ポリイミド及びその前駆体のポリアミック酸は、酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含むものである。ここで、酸二無水物残基とは、酸二無水物から誘導された4価の基のことを表し、ジアミン残基とは、ジアミン化合物から誘導された2価の基のことを意味する。原料である酸二無水物成分及びジアミン成分をほぼ等モルで反応させた場合には、原料の種類とモル比に対して、ポリイミド中に含まれる酸二無水物残基及びジアミン残基の種類やモル比などをほぼ対応させることができる。
以下、(A)成分の非熱可塑性ポリイミドに含まれる酸二無水物残基及びジアミン残基について、それらの原料とともに説明する。
(A)成分の非熱可塑性ポリイミドは、全酸二無水物残基に対して、下記の一般式(2)で表される酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基を30mol%以上含有する。以下、一般式(2)で表される酸二無水物から誘導される酸二無水物残基を「酸二無水物残基(2)」と記すことがある。
Figure 2024051580000004
一般式(2)において、Arは下記のいずれかで表される2価の基を示す。
Figure 2024051580000005
ここで、Rは、独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基を示し、n1は1又は2の整数を示し、mは0~4の整数を示す。]
一般式(2)で表される酸二無水物は、分子内に基Arとしてフェニル骨格、ビフェニル骨格もしくはナフタレン骨格を有し、さらに、これらのフェニル骨格、ビフェニル骨格もしくはナフタレン骨格に結合した2つのエステル構造(-CO-O-)を有している。フェニル骨格、ビフェニル骨格及びナフタレン骨格は剛直性を有し、エステル構造はポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有しているため、酸二無水物残基(2)を含有することによって、熱膨張係数の低減(低CTE化)が可能になるとともに、分子の秩序構造の向上と運動抑制により誘電正接を効果的に低下させること(低誘電正接化)が可能になる。一般式(2)における置換基Rとしては、例えば、メチル基が好ましい。
一般式(2)で表される酸二無水物として、1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物(TAHQ)、p-ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無二水物)(BP-TME、CAS番号;10340-81-5)、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル=ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-5-カルボキシラート)(TMPBP-TME、CAS番号;1042278-26-1)、2,6-ナフタレンビス(トリメリット酸モノエステル酸二無水物)(26DHN-TME、CAS番号;115383-00-1)等を好ましく挙げることができる。
(A)成分の非熱可塑性ポリイミドにおける酸二無水物残基(2)の含有量は、全酸二無水物残基に対して30mol%以上であり、30~100mol%の範囲内が好ましく、50~90mol%の範囲内がより好ましい。酸二無水物残基(2)の含有量が30mol%未満では、低誘電正接化と低CTE化の双方の効果が十分に発揮されない。なお、酸二無水物残基(2)の含有量の上限は100mol%でもよいが、任意の機能性付与を目的として他の酸二無水物を併用する場合には、その使用量に応じて一般式(2)で表される酸二無水物の使用量を調節できる。
(A)成分の非熱可塑性ポリイミドは、上記の一般式(2)で表される酸二無水物から誘導される残基のほかに、発明の効果を損なわない範囲で、一般にポリイミドの原料として用いられる酸二無水物の残基を含有することができる。好ましい酸二無水物残基として、例えば、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)から誘導される酸二無水物残基(BPDA残基)、ピロメリット酸二無水物から誘導される酸二無水物残基(PMDA残基)を挙げることができる。BPDA残基は、剛直性を有するため、ポリマーの秩序構造を形成しやすく、分子の運動抑制により誘電正接を低下させることができるため好ましく、PMDA残基は、構造的に平面性と剛直性とに優れ、分子鎖間のスタッキング性を増大させることができるため、ポリイミドの誘電正接を低くすることができるとともに、低CTE化の観点で好ましい。
(A)成分の非熱可塑性ポリイミドは、分子内に2つのエステル構造(-CO-O-)を有する一般式(2)で表される酸二無水物に由来する酸二無水物残基(2)を主な構成単位として含むため、エステル基濃度が比較的高いという特徴を有する。ポリマー全体に秩序構造を付与し、誘電正接を低下させる観点から、(A)成分におけるエステル基濃度は、例えば3~15重量%の範囲内が好ましく、7~15重量%の範囲内であることがより好ましい。ここで、エステル基濃度は、ポリイミド構造全体の分子量中におけるエステル基(-COO-)の割合によって算出できる。
(A)成分の非熱可塑性ポリイミドは、全ジアミン残基に対して、下記の一般式(1)で表されるジアミン成分から誘導されるジアミン残基を30mol%以上含有する。以下、一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を「ジアミン残基(1)」と記すことがある。なお、一般式(1)において、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば-NR(ここで、R,Rは、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
Figure 2024051580000006
一般式(1)において、Rは、独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基を示し、nは1~3の整数を示し、mは0~4の整数を示す。
ジアミン残基(1)は、剛直構造を有しているため、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有している。すなわち、ジアミン残基(1)は、ポリイミドの分子骨格の平面性と剛直性とを向上させることで、分子鎖間のスタッキング性を向上させることができる。その結果、ジアミン残基の運動性を低下させることが可能であり、ポリイミド系フィルムの誘電正接を低くすることができるとともに、熱膨張係数を低くすることができる。また、ジアミン残基(1)の中でも、ビフェニル骨格やテルフェニル骨格を含む場合は、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用が大きくなり、しかも、モノマー由来単位の分子量を大きくできるので、イミド基濃度を低減することが可能であり、この点でも誘電正接を低下させることができる。一般式(1)における置換基Rとしては、例えば、メチル基、ハロゲン原子で置換されたメチル基が好ましく、ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。
一般式(1)で表されるジアミン化合物の好ましい例としては、1,4-ジアミノベンゼン(p-PDA)、4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-EB)、2,2’-ジ-n-プロピル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-NPB)、2,2’-ジビニル-4,4’-ジアミノビフェニル(VAB)、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)、4,4”-ジアミノ-p-テルフェニル(DATP)などを挙げることができる。これらの中でも、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用が大きく、イミド基濃度低減による低誘電正接化の効果が大きなものとして、1,4-ジアミノベンゼン(p-PDA)、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)、4,4”-ジアミノ-p-テルフェニル(DATP)が特に好ましい。
(A)成分の非熱可塑性ポリイミドにおけるジアミン残基(1)の含有量は、全ジアミン残基に対して30mol%以上であり、60~100mol%の範囲内が好ましく、70~100mol%の範囲内がより好ましい。ジアミン残基(1)の含有量が30mol%未満では、誘電正接を低下させる効果が十分に発揮されない。
なお、誘電正接を低下させるという観点では、全ジアミン残基中に占めるジアミン残基(1)の割合を出来るだけ大きくすることが好ましく、ジアミン残基(1)の含有量が100mol%であってもよい。
(A)成分の非熱可塑性ポリイミドは、上記ジアミン残基(1)のほかに、嵩高い分子構造を有するジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を含有することが好ましい。嵩高い分子構造を有するジアミン化合物としては、例えば、2,6-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエン、2,4-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエン、2,4-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン、ビス(4-アミノ-3-エチル-5-メチルフェニル)メタン、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4ビス(4-アミノフェノキシ)-2,5-ジ-tert-ブチルベンゼン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)などを挙げることができる。これらのジアミン化合物は、嵩高い分子構造を有するため、一般式(1)で表されるジアミン化合物と併用することによって、キャスト法によってポリイミド系フィルムを形成する場合に、ポリイミド系フィルム中からの有機溶媒の拡散効率が高まり、発泡を抑制し、熱イミド化のための熱処理時間の短縮を図ることができる。かかる観点及び低CTE化の観点から、(A)成分は、全ジアミン残基に対して、上記嵩高い分子構造を有するジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を合計で、好ましくは1~50mol%の範囲内、より好ましくは5~50mol%の範囲内、最も好ましくは5~40mol%の範囲内で含有することがよい。
(A)成分の非熱可塑性ポリイミドは、上記ジアミン化合物から誘導されるジアミン残基のほかに、発明の効果を損なわない範囲で、一般にポリイミドの原料として用いられるジアミン化合物の残基を含有することができる。
(A)成分の非熱可塑性ポリイミドにおいて、上記酸二無水物残基及びジアミン残基の種類や、2種以上の酸二無水物残基又はジアミン残基を含有する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、吸湿性、誘電特性、熱膨張係数、貯蔵弾性率、引張弾性率等を制御することができる。なお、(A)成分の非熱可塑性ポリイミドにおいて、構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、ランダムに存在することが好ましい。
また、(A)成分の非熱可塑性ポリイミドは、酸二無水物残基及びジアミン残基が、芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導される芳香族酸二無水物残基及び芳香族ジアミンから誘導される芳香族ジアミン残基からなることが好ましい。ポリアミック酸及びポリイミドに含まれる酸二無水物残基及びジアミン残基を、いずれも芳香族基を有する残基のみとすることで、ポリイミド系フィルムの高温環境下での寸法精度を向上させることができる。
(A)成分の非熱可塑性ポリイミドは、酸二無水物とジアミン化合物を溶媒中で反応させ、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を生成したのち加熱閉環(イミド化)させることにより製造できる。例えば、酸二無水物とジアミン化合物をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0~100℃の範囲内の温度で30分~24時間撹拌し重合反応させることでポリアミック酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5~30重量%の範囲内、好ましくは10~20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶媒の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミック酸溶液の濃度が5~30重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。合成されたポリアミック酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。
ポリアミック酸をイミド化させる方法は、特に制限されず、例えば80~400℃の範囲内の温度条件で1~24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
(A)成分の非熱可塑性ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000~400,000の範囲内が好ましく、50,000~350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、フィルムの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際にフィルム厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
<(B)成分>
(B)成分は、ポリスチレンエラストマーである。ポリスチレンエラストマーは、スチレン又はその誘導体と共役ジエン化合物との共重合体であり、その水素添加物を含む。ここで、スチレン又はその誘導体としては、特に限定されるものではないが、スチレン、メチルスチレン、ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等が例示される。また、共役ジエン化合物としては、特に限定されるものではないが、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン等が例示される。ポリスチレンエラストマーは、水素添加されていることが好ましい。水素添加されていることによって、熱に対する安定性が向上し、分解や重合などの変質が起こり難くなるとともに、脂肪族的な性質が高くなり、他の樹脂成分との相溶性が高まる。
(B)成分のポリスチレンエラストマーの共重合構造は、ブロック構造でもランダム構造でもよい。ポリスチレンエラストマーの好ましい具体例として、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(B)成分のポリスチレンエラストマーの重量平均分子量は、特に制限はなく、例えば、50,000~300,000の範囲内であることが好ましく、50,000~270,000の範囲内がより好ましく、50,000~150,000の範囲内であることが最も好ましい。(B)成分の重量平均分子量が300,000を超えると、(A)成分と混合した樹脂組成物の粘度が高くなり、フィルム化が困難になる場合があり、50,000を下回ると、ポリイミド系フィルムの吸湿性が高くなり、低い誘電正接を安定して維持することが困難になる。
(B)成分のポリスチレンエラストマーの酸価は、例えば10mgKOH/g以下が好ましく、1mgKOH/g以下がより好ましく、0mgKOH/gであることがさらに好ましい。酸価が10mgKOH/g以下であるポリスチレンエラストマーを用いることによって、ポリイミド系フィルムを形成したときの誘電正接を低下させることができる。それに対して、酸価が10mgKOH/gを超えて大きくなりすぎると、極性基の増加によって誘電特性が悪化する。したがって、酸価は低いほどよく、酸変性していないもの(つまり、酸価が0mgKOH/gであるもの)が本発明の(B)成分として最も適している。
(B)成分のポリスチレンエラストマーは、スチレン単位[-CHCH(C)-]の含有比率が10重量%以上65重量%以下の範囲内であることが好ましく、20重量%以上65重量%以下の範囲内であることがより好ましく、30重量%以上60重量%以下の範囲内であることが最も好ましい。ポリスチレンエラストマー中のスチレン単位の含有比率が10重量%未満では樹脂の弾性率が低下してフィルムとしてのハンドリング性が悪化し、65重量%を超えて高くなると、ポリスチレンエラストマー中のゴム成分が少なくなるため、誘電特性の悪化に繋がる。
また、スチレン単位の含有比率が上記範囲内であることによって、ポリイミド系フィルム中の芳香環の割合が高くなるため、ポリイミド系フィルムを用いてフレキシブル回路基板を製造する過程でレーザー加工によりビアホール(貫通孔)及びブラインドビアホールを形成する場合に、紫外線領域の吸収性を高めることが可能となり、レーザー加工性をより向上させることができる。
(B)成分のポリスチレンエラストマーとしては、市販品を適宜選定して用いることができる。そのような市販のポリスチレンエラストマーとして、例えば、KRATON社製のA1535HU(商品名)、G1652MU(商品名)、G1726VS(商品名)、G1645VS(商品名)、FG1901GT(商品名)、G1650MU(商品名)、G1654HU(商品名)、G1730VO(商品名)、MD1653MO(商品名)、などを好ましく使用することができる。
本実施の形態のポリイミド系フィルムは、(A)成分及び(B)成分以外に、必要に応じて任意成分として発明の効果を損なわない範囲で、無機フィラー、有機フィラー、可塑剤、硬化促進剤、カップリング剤、顔料、難燃剤などを適宜配合することができる。ここで、無機フィラーとしては、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、ケイフッ化カリウム、ホスフィン酸金属塩等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。また、発明の効果を損なわない範囲で(A)成分及び(B)成分以外の樹脂成分を含有してもよい。
本実施の形態のポリイミド系フィルムにおいて、樹脂成分の合計量に対する(A)成分の含有割合は、50~80重量%の範囲内が好ましく、50~70重量%の範囲内がより好ましい。樹脂成分の合計量に対する(A)成分の含有量が50重量%未満では、ポリイミド系フィルムの熱膨張係数が大きくなって寸法安定性が損なわれる場合がある。一方、(A)成分の含有量が80重量%を超えると、誘電正接を下げる効果が十分に発現しなくなる。
本実施の形態のポリイミド系フィルムにおいて、樹脂成分の合計量に対する(B)成分の含有割合は、10~50重量%の範囲内が好ましく、30~50重量%の範囲内がより好ましい。樹脂成分の合計量に対する(B)成分の含有量が10重量%未満では、ポリイミド系フィルムの誘電正接を下げる効果が十分に発現しない場合がある。一方、(B)成分の含有量が50重量%を超えると、ポリイミド系フィルムの熱膨張係数が大きくなって寸法安定性が損なわれる場合がある。
なお、ポリイミド系フィルム全体に対する(A)成分及び(B)成分の合計の含有割合は、例えば50重量%以上とすることが好ましく、60~100重量%とすることがより好ましく、70~100重量%とすることが最も好ましい。
<相分離構造>
本実施の形態のポリイミド系フィルムは、低い熱膨張係数と低い誘電正接とを両立させる観点から、相分離構造を有することが重要である。具体的には、(A)成分が海相であり、(B)成分が島相である海島構造を有することが好ましい。このように、海相を(A)成分とすることによってポリイミド系フィルム全体を低CTE化しながら、島相である(B)成分によって誘電正接を低減させることができる。また、海相と島相との体積比率(海相:島相)は特に限定されないが、一例として80:20~50:50の範囲内とすることが好ましい。
なお、海相と島相との体積比率は、均一な相分離構造を形成していると仮定し、ポリイミド系フィルム厚み方向の断面を電子顕微鏡(SEM)により観察したときの海相と島相の面積比を体積比として見なすことで、求めることができる。上記のような相分離構造を形成させることで、2成分の単純な平均の物性にはならず、(A)成分由来の低CTE特性を維持しつつ、(B)成分による低誘正接化を達成することができる。
<熱膨張係数(CTE)>
本実施の形態のポリイミド系フィルムは、例えばフレキシブル回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合において、反りの発生や寸法安定性の低下を防止するために、熱膨張係数(CTE)が50ppm/K以下であり、好ましくは1ppm/K以上30ppm/K以下の範囲内であり、より好ましくは10ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内である。ポリイミド系フィルムの熱膨張係数(CTE)が50ppm/Kを超えると、反りが発生したり、寸法安定性が低下したりする。
<誘電正接>
本実施の形態のポリイミド系フィルムは、例えば、フレキシブル回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合において、高周波信号の伝送時における誘電損失を低減するために、温度24~26℃、湿度45~55%の環境下でスプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定したときの10GHzにおける誘電正接(Tanδ)が0.0030以下であり、好ましくは0.0025以下、より好ましくは0.0020以下である。フレキシブル回路基板の伝送損失を改善するためには、絶縁樹脂層の誘電正接を制御することが重要であり、ポリイミド系フィルムの10GHzにおける誘電正接(Tanδ)が、0.0030以下であることで、伝送損失を下げる効果が増大する。従って、ポリイミド系フィルムを高周波用フレキシブル回路基板の絶縁樹脂層(好ましくはベース絶縁層)として適用する場合、伝送損失を効率よく低減できる。10GHzにおける誘電正接が0.0030を超えると、ポリイミド系フィルムをフレキシブル回路基板の絶縁樹脂層として適用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスが大きくなるなどの不都合が生じやすくなる。
<比誘電率>
本実施の形態のポリイミド系フィルムは、例えばフレキシブル回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合において、インピーダンス整合性を確保するために、温度24~26℃、湿度45~55%の環境下でスプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定したときの10GHzにおける比誘電率が3.0以下であり、好ましくは2.8以下である。10GHzにおける比誘電率が3.0を超えると、ポリイミド系フィルムをフレキシブル回路基板の絶縁樹脂層として適用した際に、誘電損失の悪化に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスが大きくなるなどの不都合が生じやすくなる。
<厚み>
本実施の形態のポリイミド系フィルムの厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定できるが、フレキシブル回路基板用途の場合、例えば5~60μmの範囲内が好ましく、15~50μmの範囲内がより好ましい。
<ポリイミド系フィルムの積層形態>
本実施の形態に係るポリイミド系フィルムは、単層又は複数層の樹脂層を含む樹脂フィルムの一部分又は全部として使用できる。好ましくは、樹脂フィルムの主たる層が、本実施の形態に係るポリイミド系フィルムであることがよい。ここで、「主たる層」とは、樹脂フィルム全体の厚みの50%超、好ましくは60~100%の厚みを占める層を意味する。主たる層であるポリイミド系フィルムは、樹脂フィルムの機械的強度と寸法安定性を維持する役割を担うベース絶縁層として機能する。主たる層が本実施の形態に係るポリイミド系フィルムであることによって、樹脂フィルム全体の低誘電正接化と低CTE化を図ることができる。このような樹脂フィルムは、絶縁樹脂のみからなるフィルム(シート)であってもよく、例えば、銅箔などの金属箔、ガラス板等の基材に積層された状態であってもよい。
[樹脂組成物]
本発明の一実施の形態の樹脂組成物は、下記の(A1)成分及び(B)成分;
(A1)ポリアミック酸、
及び
(B)ポリスチレンエラストマー、
を含有する。ここで、(A1)成分のポリアミック酸は、(A)成分の非熱可塑性ポリイミドの前駆体である。(A1)成分のポリアミック酸中に含まれる酸二無水物残基及びジアミン残基の種類や比率、ポリアミック酸の合成条件などは、(A)成分について説明したとおりである。
樹脂組成物における樹脂成分の合計量に対する(A1)成分の含有割合は、50~80重量%の範囲内であり、50~70重量%の範囲内が好ましい。樹脂成分の合計量に対する(A1)成分の含有量が50重量%未満では、ポリイミド系フィルムを形成したときに熱膨張係数が大きくなって寸法安定性が損なわれる場合がある。一方、(A1)成分の含有量が80重量%を超えると、ポリイミド系フィルムを形成したとき誘電正接を下げる効果が十分に得られなくなる場合がある。
樹脂組成物における樹脂成分の合計量に対する(B)成分の含有割合は、10~50重量%の範囲内であり、30~50重量%の範囲内が好ましい。樹脂成分の合計量に対する(B)成分の含有量が10重量%未満では、ポリイミド系フィルムを形成したときに誘電正接を下げる効果が十分に発現しない場合がある。一方、(B)成分の含有量が50重量%を超えると、ポリイミド系フィルムを形成したときに熱膨張係数が大きくなって寸法安定性が損なわれる場合があるとともに、樹脂組成物中の固形分濃度が高くなり過ぎて粘度が上昇し、ハンドリング性が低下する場合がある。
なお、樹脂組成物において、樹脂成分を含む固形分全体に対する(A1)成分及び(B)成分の合計の含有割合は、例えば50重量%以上とすることが好ましく、60~100重量%とすることがより好ましく、70~100重量%とすることが最も好ましい。なお、樹脂組成物中の固形分とは、溶媒を除いた成分の合計を意味する。
樹脂組成物は、有機溶媒などの溶剤を含有することができる。(A1)成分のポリアミック酸は極性有機溶媒に可溶性を有しており、また、(B)成分のポリスチレンエラストマーは非極性溶媒に良好な溶解性を示すことから、樹脂組成物を、溶剤を含有する樹脂溶液(ワニス)として調製することが好ましい。
(A1)成分のポリアミック酸に好適な極性有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等から選ばれる1種又は2種以上を好ましく用いることができる。
(B)成分のポリスチレンエラストマーに好適な非極性溶媒としては、例えばキシレン、トルエン、ベンゼン等から選ばれる1種又は2種以上を好ましく用いることができる。したがって、樹脂組成物には、上記極性有機溶媒と上記非極性溶媒とを所定比率で含有する混合溶媒を用いることが好ましい。極性有機溶媒と非極性溶媒との混合比率は、(A1)成分と(B)成分との配合比率によって幅があるが、(A1)成分と(B)成分との重量比率が上記範囲内である場合、溶剤の混合比率(極性有機溶媒:非極性溶媒)を90:10~40:60の範囲内とすることが好ましく、80:20~50:50の範囲内がより好ましい。
樹脂組成物における溶剤の含有量としては特に制限されるものではないが、組成物全体に対して(A1)成分のポリアミック酸と(B)成分の合計の含有量が5~30重量%程度になるような量に調整して用いることが好ましい。樹脂組成物の粘度は、樹脂組成物を塗工する際のハンドリング性を高め、均一な厚みの塗膜を形成しやすい粘度範囲として、例えば3000cps~100000cpsの範囲内とすることが好ましく、5000cps~50000cpsの範囲内とすることがより好ましい。上記の粘度範囲を外れると、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。
樹脂組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、さらに任意成分として、例えば、有機フィラー、無機フィラー、閉環化剤、イミド化触媒、硬化剤、可塑剤、カップリング剤、顔料、難燃剤、放熱剤等を含有することができる。また、発明の効果を損なわない範囲で(A)成分及び(B)成分以外の樹脂成分を含有してもよい。
樹脂組成物は、例えば、任意の溶剤を用いて作製した(A1)成分のポリアミック酸溶液に(B)成分のポリスチレンエラストマーを配合し、混合することによって調製することができる。このとき、例えばMS撹拌機などを使用してポリアミック酸とポリスチレンエラストマーとを均一に混合することが好ましい。また、ポリスチレンエラストマーを溶剤に溶解した状態で混合してもよく、あるいは、ポリスチレンエラストマーに対して高い溶解性を示す溶剤を添加してもよい。(A1)成分と(B)成分の混合状態では、上記極性有機溶媒と上記芳香族炭化水素系溶媒とが所定の含有比率となるように調節することが好ましい。
[ポリイミド系フィルムの製造方法]
本実施の形態のポリイミド系フィルムは、例えば、次の工程1a~1c;
(1a)支持基材に上記樹脂組成物を塗布し、乾燥させる工程と、
(1b)支持基材上で塗膜を熱処理して(A1)成分のポリアミック酸をイミド化することによりポリイミド系フィルムを形成する工程と、
(1c)支持基材とポリイミド系フィルムとを分離することによりポリイミド系フィルムを得る工程と、
を実施することによって製造できる。このように、樹脂組成物の塗膜が支持基材に固定された状態でイミド化することによって、イミド化過程におけるポリイミド系フィルムの伸縮変化を抑制して、ポリイミド系フィルムの厚みや寸法精度を維持することができる。なお、樹脂組成物を支持基材上に塗布する方法としては特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。
[金属張積層板]
本発明の一実施の形態に係る金属張積層板は、絶縁樹脂層と、その片面又は両面に積層された金属層と、を備えた金属張積層板であり、絶縁樹脂層の少なくとも1層が、上記ポリイミド系フィルムである。絶縁樹脂層は、ポリイミド系フィルムによる層のみからなる単層でもよいし、ポリイミド系フィルムによる層に他の樹脂層が積層された複数層を有していてもよい。複数層の場合は、ポリイミド系フィルムによる層が絶縁樹脂層の主たる層であることが好ましい。ここで、「主たる層」とは、絶縁樹脂層全体の厚みの50%超、好ましくは60~100%の厚みを占める層を意味する。
金属張積層板の好ましい態様として、絶縁樹脂層が、金属層に接するポリイミド層(X)と、該ポリイミド層(X)に積層されたポリイミド系樹脂層(Y)を含む複数のポリイミド層を有し、主たる層であるポリイミド系樹脂層(Y)が、上記ポリイミド系フィルムによる層であるものを挙げることができる。主たる層であるポリイミド系樹脂層(Y)は、絶縁樹脂層の機械的強度と寸法安定性を維持する役割を担うベース絶縁層として機能する。このような金属張積層板は、熱膨張係数(CTE)が低く、誘電正接が低いポリイミド系樹脂層(Y)を有することによって、絶縁樹脂層全体の寸法安定性を高め、低誘電正接化を図ることができる。この場合、金属張積層板は、ポリイミド系樹脂層(Y)の上にさらに積層された任意の樹脂層を有していてもよい。
下地層であるポリイミド層(X)を構成するポリイミドは、金属層との接着性を担保するために熱可塑性ポリイミドであることが好ましい。ここで、熱可塑性ポリイミドとしては、回路基板において用いられている一般的なものを適用できる。ポリイミド層(X)の厚みは、接着機能を確保する観点から、1μm以上15μm以下の範囲内であることが好ましく、2μm以上10μm以下の範囲内がより好ましい。ポリイミド層(X)の厚みが上記の下限値未満である場合、接着性が不十分となり、上限値を超えると、寸法安定性が悪化する傾向となる。
ポリイミド系樹脂層(Y)の厚みは、ベース絶縁層としての機能を確保し、且つ製造時の搬送性の観点から、6μm以上50μm以下の範囲内であることが好ましく、9μm以上40μm以下の範囲内がより好ましい。ポリイミド系樹脂層(Y)の厚みが上記の下限値未満である場合、電気絶縁性やハンドリング性が不十分となり、上限値を超えると、生産性が低下する。ポリイミド系樹脂層(Y)は、絶縁樹脂層の全厚みに対して50%超、好ましくは60%以上の厚みを有することがよい。
本実施の形態の金属張積層板を構成する金属層としては、特に制限はないが、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。なお、後述するフレキシブル回路基板における配線層の材質も金属層と同様である。
金属層の厚みは特に限定されるものではないが、例えば銅箔に代表される金属箔を用いる場合、好ましくは35μm以下であり、より好ましくは5μm以上25μm以下の範囲内がよい。生産安定性及びハンドリング性の観点から金属箔の厚みの下限値は5μmとすることが好ましい。なお、銅箔を用いる場合は、圧延銅箔でも電解銅箔でもよい。また、銅箔としては、市販されている銅箔を用いることができる。
また、金属層のポリイミド層(X)に接する面における十点平均粗さ(Rzjis)は、1.2μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましい。金属層が金属箔を原料とする場合、表面粗さRzjisを1.2μm以下にすることで、高密度実装に対応する微細配線加工が可能となり、また、高周波信号伝送時の伝送損失を低減できるため、高周波信号伝送用のフレキシブル回路基板への適用が可能となる。また、金属層は、例えば、防錆処理や、接着力の向上を目的として、例えばサイディング、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤等による表面処理を施しておいてもよい。
本実施の形態の金属張積層板は、常法に従って製造することができる。絶縁樹脂層が単層である場合は、例えば、上記ポリイミド系フィルムの製造方法で説明した工程1a、1bにおいて、支持基材として金属箔を用いることによって製造できる。
また、絶縁樹脂層が、金属層に接するポリイミド層(X)と、該ポリイミド層(X)に積層されたポリイミド系樹脂層(Y)を含む複数のポリイミド層を有する場合は、以下の[1]、[2]の方法を例示することができる。
[1]金属層となる金属箔に、樹脂溶液を塗布・乾燥した後、熱処理してポリアミック酸をイミド化してポリイミド系樹脂層(Y)を含む絶縁樹脂層を形成し、金属張積層板を製造する方法。
[2]金属層となる金属箔に、多層押出により同時に複数種類の樹脂溶液を多層に積層した状態で塗布・乾燥した後、全体を熱処理してポリアミック酸をイミド化してポリイミド系樹脂層(Y)を含む絶縁樹脂層を形成し、金属張積層を製造する方法(以下、多層押出法)。
上記[1]の方法は、例えば、次の工程(i)、(ii):
(i)金属箔上もしくは金属箔に積層されている下地層上に樹脂溶液を塗布し、乾燥させる工程と、
(ii)金属箔上で塗膜を熱処理してポリアミック酸をイミド化する工程と、
を含むことができる。
[1]の方法においては、樹脂溶液として、ポリイミド層(X)を構成するポリイミド溶液もしくはその前駆体溶液、ポリイミド系樹脂層(Y)を形成するための樹脂組成物、さらに任意の樹脂層を形成するための樹脂溶液などを用いることができる。そして、樹脂溶液の種類を変えて工程(i)、(ii)を繰り返し行うか、工程(i)を繰り返し行った後に一括して工程(ii)を行うことによって、金属箔上に絶縁樹脂層を形成することができる。この場合、ポリイミド層(X)やその前駆体の塗膜は下地層となる。なお、樹脂溶液を金属箔上や下地層上に塗布する方法としては特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。
上記[2]の方法は、多層押出により、ポリイミド層(X)を構成するポリイミドの前駆体の樹脂溶液と、ポリイミド系樹脂層(Y)を形成するための樹脂組成物と、さらに必要な場合は任意の樹脂層を形成するための樹脂溶液を同時に塗布し、乾燥させた後、上記[1]の方法の工程(ii)と同様に熱処理してイミド化を行う。
以上の方法で製造される金属張積層板は、金属箔上でポリアミック酸のイミド化を完結させることによって、樹脂組成物の塗膜が金属箔もしくは下地層に固定された状態でイミド化されるので、イミド化過程におけるポリイミド系樹脂層(Y)の伸縮変化を抑制して、絶縁樹脂層の厚みや寸法精度を維持することができる。
[フレキシブル回路基板]
本発明の金属張積層板は、主にFPCなどの回路基板材料として有用である。金属張積層板の金属層を常法によってパターン状に加工して配線層を形成することによって、本発明の実施の一形態であるフレキシブル回路基板を製造できる。本発明の金属張積層板の金属層が配線に加工されているフレキシブル回路基板も本発明の一態様となる。
すなわち、本実施の形態のフレキシブル回路基板は、単層又は複数層を含む絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている配線層と、を備えており、絶縁樹脂層が、上記ポリイミド系樹脂層(Y)を含んでいればよい。また、絶縁樹脂層と配線層との接着性を高めるために、絶縁樹脂層における配線層に接する層は、ポリイミド層(X)であることがよい。
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
[熱膨張係数(CTE)の測定]
3mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、TMA(日立ハイテク社製、商品名;TMA/SS6000)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から170℃まで20℃/分の速度で昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、150℃から50℃までの平均熱膨張係数(熱膨張係数)を求めた。
[貯蔵弾性率の測定]
貯蔵弾性率は、5mm×20mmのサイズの試料フィルムを、動的粘弾性測定装置(DMA:ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、商品名;RSA-G2)を用いて、25℃から350℃まで昇温速度10℃/分、周波数1Hzで測定した。このときの弾性率変化(tanδ)が最大となる温度をガラス転移温度とした、なお、DMAを用いて測定された30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、かつ、ガラス転移温度+30℃以内の温度域での貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上を示すものを「非熱可塑性」とし、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定された30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、かつ、ガラス転移温度+30℃以内の温度域での貯蔵弾性率が1.0×10Pa未満を示すものを「熱可塑性」とした。
[比誘電率及び誘電正接の測定]
ベクトルネットワークアナライザ(Agilent社製、商品名E8363C)ならびにSPDR共振器を用いて、10GHzにおける樹脂シートの比誘電率Dkおよび誘電正接Dfを測定した。なお、測定に使用した材料は、温度;24~26℃、湿度45~55%RHの条件下で、24時間放置したものである。
[粘度の測定]
E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV-II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%~90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
[重量平均分子量(Mw)の測定]
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー株式会社製、HLC-8220GPCを使用)により測定した。標準物質としてポリスチレンを用い、展開溶媒にテトラヒドロフラン(THF)を用いた。
[相分離構造の確認]
樹脂フィルムを片刃でカットし、エポキシ樹脂に包埋後、機械研磨でフィルムの断面出しを実施した。続いてオスミウム蒸着を行い、およそ幅7mmの断面観察用サンプルを作製した。この断面観察用サンプルについてエネルギー分散型X線分析装置(EDX検出器;Oxford社製、商品名;Extreme)を装備した走査型電子顕微鏡(SEM;日本電子社製、商品名;JSM-7900F)により厚み方向の断面観察を行った。測定条件は以下の通り。
SEMの測定条件;加速電圧:5kV、照射電流:12μA
EDXの測定条件:加速電圧:5kV、照射電流:10μA
片方の成分を主成分とする海部分の中に、もう片方の成分を主成分とする島部分が点在した構造を海島構造と特定した。海部と島部の帰属についてはEDXによる元素マッピングを行い、窒素成分が検出される海部分を非熱可塑性ポリイミド部分、窒素成分が検出されない島部をポリスチレンエラストマー部分と帰属した。
本実施例で用いた略号は以下の化合物を示す。
BP-TME:p‐ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、CAS
番号;10340-81-5)
BPDA:3,3',4,4'‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
m-TB:2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニル
TPE-R:1,3‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
BAPP:2,2‐ビス[4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
ビスアニリンM:1,3‐ビス[2‐(4‐アミノフェニル)‐2‐プロピル]ベンゼン
NMP:N‐メチル‐2‐ピロリドン
ポリスチレンエラストマー:KRATON社製、商品名;G1652MU(水添ポリスチレンエラストマー、スチレン単位含有割合30重量%、比重;0.91、Mw;139,034、酸価無し)
<非熱可塑性ポリイミド前駆体であるポリアミック酸溶液の調製>
(合成例1)
窒素気流下で、500mlのセパラブルフラスコに、9.0527gのm-TB(0.04259モル)及び0.9214gのBAPP(0.00224モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のNMPを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、17.6621gのBP-TME(0.03251モル)及び2.3641gのPMDA(0.01084モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミック酸溶液1を得た。ポリアミック酸溶液1の溶液粘度は78,582cpsであった。
ポリアミック酸溶液1を用いて作製したポリイミドフィルムのガラス転移温度は246℃、貯蔵弾性率は、5.5×10Pa(30℃)、6.4×10Pa(276℃)であり、非熱可塑性であった。
(合成例2)
窒素気流下で、500mlのセパラブルフラスコに、3.2387gのm-TB(0.01523モル)、1.5920gのTPE-R(0.00544モル)及び0.4470gのBAPP(0.00109モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のNMPを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、8.5745gのBP-TME(0.01578モル)及び1.1479gのPMDA(0.00526モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミック酸溶液2を得た。ポリアミック酸溶液2の溶液粘度は40,164cpsであった。
ポリアミック酸溶液2を用いて作製したポリイミドフィルムのガラス転移温度は237℃、貯蔵弾性率は、4.3×10Pa(30℃)、3.8×10Pa(267℃)であり、非熱可塑性であった。
(合成例3)
窒素気流下で、500mlのセパラブルフラスコに、64.20gのm-TB(0.302モル)及び5.48gのビスアニリンM(0.016モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のNMPを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、34.20gのPMDA(0.157モル)及び46.13gのBPDA(0.157モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミック酸溶液3を得た。ポリアミック酸溶液3の溶液粘度は28,000cpsであった。
ポリアミック酸溶液3を用いて作製したポリイミドフィルムのガラス転移温度は301℃、貯蔵弾性率は、9.2×10Pa(30℃)、1.2×10Pa(331℃)であり、非熱可塑性であった。
(配合例1)
ポリスチレンエラストマー樹脂(KRATON社製、商品名;G1652MU)2.25gを12.75gのキシレンに投入し、完全に溶解させた。この溶液に固形分濃度が12重量%となるように希釈したポリアミック酸溶液1を44.0g投入し、MS撹拌機を用いて均一な溶液となるまで攪拌し、ブレンド溶液1を調製した。ブレンド溶液1の組成を表1に示す。
(配合例2、3)
ポリアミック酸溶液1の代わりにポリアミック酸溶液2または3を用いて、ポリアミック酸/ポリスチレンエラストマーの比率および溶媒比率を表1のように変更した以外は配合例1と同様にしてブレンド溶液2または3を調製した。ブレンド溶液2、3の組成を表1に示す。
(実施例1)
銅箔1(電解銅箔、厚み;12μm、樹脂側の表面粗さRzjis;0.6μm)の上に、ブレンド溶液1を硬化後の厚みが約32μmとなるように均一に塗布した後、140℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、140℃から320℃まで段階的な熱処理を5時間行い、イミド化を完結し、銅張積層板1を得た。
次に得られた銅張積層板1について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミド系フィルム1を調製した。得られたポリイミド系フィルム1について各種物性データ等を測定した。ポリイミド系フィルム1の構成と各種物性の測定結果を表2に示す。
(実施例2、比較例1)
塗布するブレンド溶液と厚みについて表1・表2のように変更した以外は実施例1と同様にして銅張積層板2、3およびポリイミド系フィルム2、3を得た。ポリイミド系フィルム2、3の構成と各種物性の測定結果を表2に示す。
(比較例2)
ブレンド溶液1の代わりにポリアミック酸溶液3を用いた以外は実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを作製した。このポリイミドフィルムの構成と各種物性の測定結果を表2に示す。
(比較例3)
ポリスチレンエラストマー樹脂(KRATON社製、商品名;G1652MU)2.25gを12.75gのキシレンに投入し、完全に溶解させた。溶解させた溶液を離形PETフィルムに塗工し、140℃で加熱乾燥し、溶媒を除去した。溶媒除去後にポリスチレンエラストマーフィルムをPETフィルムから剥離した。使用した樹脂溶液の組成を表1に、得られたポリスチレンエラストマーフィルムの構成と各種物性の測定結果を表2に示す。
Figure 2024051580000007
Figure 2024051580000008
比較例1~3を参照すると、比較例1のようにポリアミック酸とポリスチレンエラストマーを所定の配合比率とすることで、フィルムのCTEは非熱可塑性ポリイミドに近い物性とし、Dfは配合割合に応じたものとすることができる。ただし、比較例1,2のように、フィルムを低CTE化できるもののDfが高くなるモノマー組成を用いると、低Dfかつ低CTEは両立できない。高いレベルで低CTE・低Dfを達成するためにはポリアミック酸のモノマー組成についても、フィルムを低CTE化かつ低Df化できるような組成に工夫する必要がある。実施例1、2のように一般式(2)で表される酸二無水物残基を含有するポリアミック酸を用い、(B)成分とブレンドすることで、フィルムの低Df化・低CTE化を高い水準で両立することができる。また、実施例2のように、CTEの要求範囲に応じて(A)成分と(B)成分の配合比率やモノマー成分を調整することで、Dfを重視した設計も可能である。
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。

Claims (10)

  1. 下記の(A)成分及び(B)成分;
    (A)非熱可塑性ポリイミド、
    及び
    (B)ポリスチレンエラストマー、
    を含有し、相分離構造を有するとともに、熱膨張係数が50ppm/K以下であり、温度24~26℃、湿度45~55%の環境下でスプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定したときの10GHzにおける比誘電率が3.0以下であり、誘電正接が0.0030以下であるポリイミド系フィルム。
  2. (A)成分が海相であり、(B)成分が島相である海島構造を有する請求項1に記載のポリイミド系フィルム。
  3. 樹脂成分の合計量に対して、(A)成分の含有割合が50~80重量%の範囲内であり、(B)成分の含有割合が10~50重量%の範囲内である請求項1に記載のポリイミド系フィルム。
  4. (A)成分は、酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するとともに、全ジアミン残基に対して、下記の一般式(1)で表されるジアミン成分から誘導されるジアミン残基を30mol%以上含む請求項1に記載のポリイミド系フィルム。
    Figure 2024051580000009
    [一般式(1)において、Rは、独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基を示し、nは1~3の整数を示し、mは0~4の整数を示す。]
  5. 前記(A)成分は、全酸二無水物残基に対して、下記の一般式(2)で表される酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基を30mol%以上含有する請求項1に記載のポリイミド系フィルム。
    Figure 2024051580000010
    [一般式(2)において、Arは下記のいずれかで表される2価の基を示す]
    Figure 2024051580000011
    [ここで、Rは、独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基を示し、n1は1又は2の整数を示し、mは0~4の整数を示す。]
  6. 下記の(A1)成分及び(B)成分;
    (A1)ポリアミック酸、
    及び
    (B)ポリスチレンエラストマー、
    を含有するとともに、樹脂成分の合計量に対して、(A1)成分の含有割合が50~80重量%の範囲内であり、(B)成分の含有割合が10~50重量%の範囲内であり、
    (A1)成分は、酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するとともに、全ジアミン残基に対して、下記の一般式(1)で表されるジアミン成分から誘導されるジアミン残基を30mol%以上含む樹脂組成物。
    Figure 2024051580000012
    [一般式(1)において、Rは、独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基を示し、nは1~3の整数を示し、mは0~4の整数を示す。]
  7. 前記(A1)成分は、全酸二無水物残基に対して、下記の一般式(2)で表される酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基を30mol%以上含有する請求項6に記載の樹脂組成物。
    Figure 2024051580000013
    [一般式(2)において、Arは下記のいずれかで表される2価の基を示す]
    Figure 2024051580000014
    [ここで、Rは、独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基を示し、n1は1又は2の整数を示し、mは0~4の整数を示す。]
  8. 絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている金属層と、を備えた金属張積層板を製造する方法であって、
    請求項6又は7に記載の樹脂組成物を前記金属層上、又は、前記金属層上に設けられ得た下地層上に塗工し、熱処理を行う工程を含むことを特徴とする金属張積層板の製造方法。
  9. 絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている金属層と、を備えた金属張積層板であって、
    前記絶縁樹脂層が、請求項1から5のいずれか1項に記載のポリイミド系フィルムによる層を含むことを特徴とする金属張積層板。
  10. 絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に設けられている配線層と、を備えたフレキシブル回路基板であって、
    前記絶縁樹脂層が、請求項1から5のいずれか1項に記載のポリイミド系フィルムによる層を含むことを特徴とするフレキシブル回路基板。

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