JP2024051579A - 樹脂積層体、金属張積層板及び回路基板 - Google Patents

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慎悟 安藤
智典 安藤
芳樹 須藤
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Abstract

【課題】脂肪族系熱可塑性樹脂を使用した樹脂積層体において、優れた誘電特性と難燃性との両立を図る。【解決手段】第1の絶縁樹脂層と接着層と第2の絶縁樹脂層とがこの順に積層されている樹脂積層体であって、合計厚みT1が70~500μmの範囲内であり、かつ、接着層の厚みT2が50μmより大きく、UL94薄手材料垂直燃焼試験におけるVTM燃焼時間tが10秒以下であり、下記式で表される難燃性パラメータxが0を超え2.4以下の範囲内である。x=A/[B+(2×C)+D+(2×E)]であり、A:接着層中のダイマー酸型ジアミン由来の脂肪族骨格の合計量、B:接着層との境界から第1及び第2の絶縁樹脂層側へそれぞれ2.5μmまでの厚み範囲のフェニル骨格の合計量、C:同厚み範囲のビフェニル骨格の合計量、D:接着層中のフェニル骨格の合計量、E:接着層中のビフェニル骨格の合計量を意味し、単位はそれぞれ[g]である。【選択図】図1

Description

本発明は、電子部品材料として有用な樹脂積層体、金属張積層板及び回路基板に関する。
近年、電子機器の小型化、軽量化、省スペース化の進展に伴い、薄く軽量で、可撓性を有し、屈曲を繰り返しても優れた耐久性を持つフレキシブルプリント配線板(FPC;Flexible Printed Circuits)の需要が増大している。FPCは、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、例えば、HDD、DVD、スマートフォン等の電子機器の配線や、ケーブル、コネクター等の部品にその用途が拡大しつつある。
高密度化に加えて、機器の高性能化が進んだことから、伝送信号の高周波化への対応も必要とされている。高周波信号を伝送する際に、伝送経路における伝送損失が大きい場合、電気信号のロスや信号の遅延時間が長くなるなどの不都合が生じる。高周波信号伝送に対応するために、一対の片面金属張積層板の絶縁樹脂層の間に厚み比率が大きな接着層を介在させるとともに、接着層の材質としてダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマー酸型ジアミン(DDA)を原料とする脂肪族系熱可塑性樹脂を使用することが提案されている(特許文献1)。
脂肪族系熱可塑性樹脂は、主骨格が脂肪族であるために比誘電率・誘電正接が低いが、難燃性に改善の余地がある。つまり、脂肪族系熱可塑性樹脂において、難燃性と誘電特性とはトレードオフであり、特許文献1の技術において接着層の厚み・厚み比率を大きくしていくと、誘電特性は向上するものの、難燃性が低下する傾向があり、改善の余地があった。
特開2018-170417号公報
本発明の目的は、脂肪族系熱可塑性樹脂を使用した樹脂積層体において、優れた誘電特性と難燃性との両立を図ることである。
本発明者らは、鋭意研究の結果、脂肪族系熱可塑性樹脂を使用した接着層を含む所定の厚み範囲における芳香環量に対するダイマー酸型ジアミン由来の脂肪族骨格量を制御することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、第1の絶縁樹脂層と、接着層と、第2の絶縁樹脂層と、がこの順に積層されている樹脂積層体である。
本発明の樹脂積層体は、前記第1の絶縁樹脂層と前記接着層と前記第2の絶縁樹脂層の合計厚みT1が70~500μmの範囲内であり、かつ、前記接着層の厚みT2が50μmより大きい。そして、本発明の樹脂積層体は、樹脂積層体のUL94薄手材料垂直燃焼試験におけるVTM燃焼時間tが10秒以下であり、下記の式(i)で表される難燃性を示すパラメータxが0を超え2.4以下の範囲内である。
x=A/[B+(2×C)+D+(2×E)] … (i)
ここで、xは樹脂積層体の接着層を含む所定の厚み範囲に含まれる芳香族骨格量に対する接着層中のダイマー酸型ジアミン由来の脂肪族骨格量の比率を意味し、A~Eは、
A:接着層中に含まれる単位面積あたりのダイマー酸型ジアミン由来の脂肪族骨格の合計量[g]、
B:接着層との境界から第1の絶縁樹脂層側及び第2の絶縁樹脂層側へ、それぞれ2.5μmまでの厚み範囲に含まれる単位面積あたりのフェニル骨格の合計量[g]、
C:接着層との境界から第1の絶縁樹脂層側及び第2の絶縁樹脂層側へ、それぞれ2.5μmまでの厚み範囲に含まれる単位面積あたりのビフェニル骨格の合計量[g]、
D:接着層中に含まれる単位面積あたりのフェニル骨格の合計量[g]、
E:接着層中に含まれる単位面積あたりのビフェニル骨格の合計量[g]、
を意味する。ただし、B、Dのフェニル骨格の合計量には、ビフェニル骨格を形成しているフェニル骨格は含まない。
本発明の樹脂積層体は、前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層が、それぞれ、熱可塑性ポリイミド層及び非熱可塑性ポリイミド層を有するとともに、樹脂積層体が次の(1)又は(2)の層構成;
(1)熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミド層/接着層/非熱可塑性ポリイミド層/熱可塑性ポリイミド層、
又は、
(2)熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミド層/熱可塑性ポリイミド層/接着層/熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミド層/熱可塑性ポリイミド層、
を有していてもよい。
本発明の樹脂積層体は、樹脂積層体全体として、SPDR共振器を用いて測定される10GHzにおける比誘電率が3.5以下であってもよく、誘電正接が0.01以下であってもよい。
本発明の樹脂積層体は、前記接着層が、酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有する熱可塑性樹脂層であってもよく、全ジアミン残基100モル部に対する、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマー酸型ジアミンに由来するジアミン残基の割合が20モル部以上であってもよい。
本発明の樹脂積層体は、前記接着層を構成する熱可塑性樹脂が、熱可塑性ポリイミドの分子鎖中に含まれるケトン基と、少なくとも2つの第1級のアミノ基を官能基として有するアミノ化合物のアミノ基とがC=N結合による架橋構造を形成している架橋ポリイミドであってもよい。
本発明の樹脂積層体は、前記接着層が有機ホスフィン酸の金属塩を含有していてもよい。
本発明の金属張積層板は、上記いずれかの樹脂積層体と、該樹脂積層体の片面又は両面に積層されている金属層と、を有するものである。
本発明の回路基板は、上記金属張積層板の金属層を配線に加工してなるものである。
本発明の樹脂積層体は、UL94薄手材料垂直燃焼試験におけるVTM燃焼時間との関係を考慮しながら、接着層を含む所定の厚み範囲の芳香族骨格量に対するダイマー酸型ジアミン由来の脂肪族骨格量の比率が制御されているため、優れた誘電特性と難燃性との両立が可能になった。このような本発明の効果は、接着層の厚みや厚み比率が大きな積層構造において特に有効に発揮される。したがって、本発明の樹脂積層体を用いた金属張積層板は、例えば、10GHz以上の高周波信号を伝送する回路基板への適用において、伝送損失の低減と信頼性及び安全性の向上を図ることができる。
本発明の好ましい実施の形態の樹脂積層体の層構成を示す模式的断面図である。 本発明の別の好ましい実施の形態の樹脂積層体の層構成を示す模式的断面図である。 本発明の好ましい実施の形態の金属張積層板の層構成を示す模式的断面図である。 本発明の別の好ましい実施の形態の金属張積層板の層構成を示す模式的断面図である。
本発明の実施の形態について、適宜図面を参照して説明する。
[樹脂積層体]
本発明の一実施の形態に係る樹脂積層体は、第1の絶縁樹脂層と、接着層と、第2の絶縁樹脂層と、がこの順に積層されているものである。
<絶縁樹脂層>
第1の絶縁樹脂層及び第2の絶縁樹脂層は、それぞれ、単層に限らず、複数の樹脂層が積層されたものであってもよい。第1の絶縁樹脂層及び第2の絶縁樹脂層を構成する樹脂としては、電気的絶縁性を有する樹脂であれば特に限定はなく、例えばポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、ETFEなどを挙げることができるが、ポリイミドによって構成されることが好ましい。
<接着層>
接着層を構成する樹脂は熱可塑性樹脂であり、酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有する熱可塑性樹脂であることが好ましい。このような熱可塑性樹脂としては、例えば熱可塑性ポリイミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレタンウレア、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、スチレン系エラストマー樹脂、フッ素樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂などが好ましく、良好な接着性を有する熱可塑性ポリイミド(以下、「接着性ポリイミド」と記すことがある)であることがより好ましい。また、第1の絶縁樹脂層又は/及び第2の絶縁樹脂層との接着性を向上させるために、例えばプラズマ処理、コロナ処理、UVオゾン処理などを行ってもよい。接着性ポリイミドの詳細については、後で説明する。
<樹脂積層体の層構成>
次に、本実施の形態の樹脂積層体の好ましい層構成を図1及び図2に例示し、これらを参照しながら本発明を詳しく説明する。ただし、樹脂積層体の層構成は、図1及び図2に示す態様に限定されるものではない。
図1は、本発明の好ましい実施の形態に係る樹脂積層体100の断面構造を示している。樹脂積層体100は、熱可塑性ポリイミド層10A/非熱可塑性ポリイミド層20A/熱可塑性ポリイミド層30A/接着層BS/熱可塑性ポリイミド層30B/非熱可塑性ポリイミド層20B/熱可塑性ポリイミド層10Bがこの順番に積層された層構成を有している。
ここで、熱可塑性ポリイミド層10Aと非熱可塑性ポリイミド層20Aと熱可塑性ポリイミド層30Aは第1の絶縁樹脂層40Aを構成しており、熱可塑性ポリイミド層10Bと非熱可塑性ポリイミド層20Bと熱可塑性ポリイミド層30Bは第2の絶縁樹脂層40Bを構成している。したがって、樹脂積層体100は、第1の絶縁樹脂層40Aと、接着層BSと、第2の絶縁樹脂層40Bと、がこの順に積層された構造を有している。
図2は、本発明の別の好ましい実施の形態に係る樹脂積層体101の断面構造を示している。樹脂積層体101は、熱可塑性ポリイミド層10A/非熱可塑性ポリイミド層20A/接着層BS/非熱可塑性ポリイミド層20B/熱可塑性ポリイミド層10Bがこの順番に積層された層構成を有している。ここで、熱可塑性ポリイミド層10Aと非熱可塑性ポリイミド層20Aは第1の絶縁樹脂層40Aを構成しており、熱可塑性ポリイミド層10Bと非熱可塑性ポリイミド層20Bは第2の絶縁樹脂層40Bを構成している。したがって、樹脂積層体101は、第1の絶縁樹脂層40Aと、接着層BSと、第2の絶縁樹脂層40Bと、がこの順に積層された構造を有している。
図1及び図2に示す構成例において、複数の熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bは、それぞれ、同一もしくは異なる種類の熱可塑性ポリイミドによって構成されていてもよい。また、非熱可塑性ポリイミド層20Aと非熱可塑性ポリイミド層20Bも、同一もしくは異なる種類の非熱可塑性ポリイミドによって構成されていてもよい。第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bに用いる好ましいポリイミドの詳細については、後で説明する。
なお、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bには、例えば可塑剤、エポキシ樹脂などの硬化樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、有機もしくは無機フィラー、カップリング剤、難燃剤などを適宜配合することができる。
<難燃性パラメータとVTM燃焼時間>
樹脂積層体100,101は、UL94薄手材料垂直燃焼試験におけるVTM燃焼時間tが10秒以下であり、下記の式(i)で表される難燃性を示すパラメータxが0を超え2.4以下の範囲内である。
x=A/[B+(2×C)+D+(2×E)] … (i)
ここで、xは樹脂積層体100,101の接着層BSを含む所定の厚み範囲に含まれる芳香族骨格量に対する接着層BS中のダイマー酸型ジアミン由来の脂肪族骨格量の比率を意味し、A~Eは、
A:接着層BS中に含まれる単位面積あたりのダイマー酸型ジアミン由来の脂肪族骨格の合計量[g]、
B:接着層BSとの境界Fから第1の絶縁樹脂層40A側及び第2の絶縁樹脂層40B側へ、それぞれ2.5μmまでの厚み範囲に含まれる単位面積あたりのフェニル骨格の合計量[g]、
C:接着層BSとの境界Fから第1の絶縁樹脂層40A側及び第2の絶縁樹脂層40B側へ、それぞれ2.5μmまでの厚み範囲に含まれる単位面積あたりのビフェニル骨格の合計量[g]、
D:接着層BS中に含まれる単位面積あたりのフェニル骨格の合計量[g]、
E:接着層BS中に含まれる単位面積あたりのビフェニル骨格の合計量[g]、
を意味する。ただし、B、Dのフェニル骨格の合計量には、ビフェニル骨格を形成しているフェニル骨格は含まない。}
本発明において「脂肪族骨格」とは、ポリマー鎖中に含まれる、非環状又は環状の脂肪族炭化水素により構成される部分を意味し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。接着層BS中に含まれるダイマー酸型ジアミン由来の「脂肪族骨格」の単位面積あたりの合計量[g](上記A)は、次式(ii)により算出する事ができる。
A[g]=AL値×接着層BSの厚み[μm]×接着層BS中の接着性ポリイミドの重量割合×接着層BSの比重[g/cm] … (ii)
ここで、AL値は、ポリマー鎖中のダイマー酸型ジアミン由来の脂肪族骨格の重量割合を意味し、ダイマー酸型ジアミン1モル当たりの全原子を合計した重量[g]から、末端アミノ基の合計重量[g]及び6員芳香環由来の炭素原子の合計重量[g]を除いたものを、接着層BS中のポリマー鎖の単位構造(架橋剤を除く)1モル当たりの重量[g]で除した値を意味する。
また、接着層BS中のダイマー酸型ジアミン由来の脂肪族骨格の占める割合が多いほど低誘電正接化、低誘電率化が可能になる一方、難燃性は低下することから、接着層BS中に含まれるダイマー酸型ジアミン由来の脂肪族骨格の重量比率は30[重量%]以上であることが好ましく、30~80[重量%]の範囲内であることがより好ましい。
本発明において「フェニル骨格」とは、単一の芳香環からなるフェニル基(-C)又はフェニレン基(-C-)を意味するが、ビフェニル骨格を形成しているフェニル基又はフェニレン基は含まない。
また、「ビフェニル骨格」とは、二つのフェニル基が直接単結合した構造(-C-C又は-C-C-)を意味する。式(i)において、C、Eのビフェニル骨格の合計量に2を乗算している理由は、ビフェニル骨格は2つのベンゼン環が単結合しているので硬質なチャーを速やかに形成しやすく、フェニル骨格に比べてバリア機能が格段に高いことによる。つまり、ビフェニル骨格はフェニル骨格に比べて単に芳香環の量が2倍になるというだけでなく、難燃性に対する寄与度という観点で、さらにフェニル骨格の2倍程度の能力を有すると考えられるためである。また、同様の理由から、2つ以上のベンゼン環が連結基を介して結合した構造を有するものが好ましく、4つ以上のベンゼン環を有するものがより好ましい。
式(i)において、難燃性パラメータxが0を超え2.4以下であるということは、接着層BS中のダイマー酸型ジアミン由来の脂肪族骨格の合計量が、接着層BSとの境界Fから2.5μmまでの厚み範囲の絶縁樹脂層(第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40B)中及び接着層BS中の芳香環の合計量(ただし、ダイマー酸型ジアミン由来の残基中に含まれる芳香環は除く)に対して一定比率以下に抑制されていることを意味する。つまり、樹脂積層体100,101では、脂肪族骨格を豊富に含み、誘電特性に優れるが難燃性に課題がある接着層BS中のダイマー酸型ジアミン由来の脂肪族骨格の合計量と、接着層BSとの境界Fから2.5μmまでの厚み範囲の絶縁樹脂層中及び接着層BS中の芳香環の合計量(ただし、ダイマー酸型ジアミン由来の残基中に含まれる芳香環は除く)と、の比率がVTM燃焼時間tを考慮して制御されている。式(i)を満たす限り、誘電特性を向上させるために接着層BSの厚みを大きくしていっても、実用上十分な難燃性を確保できる。なお、接着層BSとの境界Fから2.5μmまでの厚み範囲の絶縁樹脂層中の芳香環量が多いほど難燃性が向上するが、芳香環量が多すぎると接着層BSとの接着性は低下していくのでバランスが必要となる。かかる観点から、難燃性パラメータxが0を超え2.4未満の範囲内であることが好ましく、0を超え2.3未満の範囲内であることがより好ましい。
また、樹脂積層体100,101は、実用上十分な難燃性を確保するため、VTM燃焼時間tが10秒以下である。VTM燃焼時間tが10秒以下である場合は、VTM-0に分類される最も難燃性に優れたグレードに相当するため、樹脂積層体100,101を使用した回路基板に十分優れた信頼性を付与できる。
式(i)のB、Cにおいて、フェニル骨格又はビフェニル骨格の合計量を、接着層BSとの境界Fから第1の絶縁樹脂層40A側及び第2の絶縁樹脂層40B側へそれぞれ2.5μmまでの厚み範囲に限定しているのは、接着層BSとの界面近傍の絶縁樹脂層中の芳香環量が難燃性を大きく左右するためである。具体的には、相対的に燃えやすい接着層BSから着火した場合、絶縁樹脂層中の芳香環濃度が高いほどチャーの形成が速やかに進み、そのバリア機能によって燃焼時間が短くなり難燃性が発現するが、絶縁樹脂層が一定以上の厚みを有する場合、難燃性への寄与度が大きいのは、燃焼反応に必要な熱が良く伝わる接着層BSとの境界F近傍の芳香環量である。そのため、本発明では、接着層BSとの境界Fから第1の絶縁樹脂層40A側及び第2の絶縁樹脂層40B側へそれぞれ2.5μmまでの厚み範囲に含まれるフェニル骨格又はビフェニル骨格の合計量に着目し、これを制御対象としている。換言するなら、接着層BSとの境界Fから2.5μmを超える領域での芳香環量は、相対的に難燃性への寄与度が小さく、制御対象とする重要性が低いことになる。
かかる観点から、接着層BSとの境界Fから第1の絶縁樹脂層40A側及び第2の絶縁樹脂層40B側へ、それぞれ2.5μmまでの厚み範囲に含まれるフェニル骨格及びビフェニル骨格の合計の重量比率は、全樹脂量に対して30重量%以上であることが好ましく、50~80重量%の範囲内であることがより好ましい。
また、接着層BSとの境界Fから2.5μmまでの厚み範囲であるから、仮に、接着層BSに隣接する層の厚みTが2.5μm未満である場合には、さらにその隣の層の一部分又は全部の厚み範囲(2.5-T)を含んでもよい。つまり、T+(2.5-T)=2.5μmであればよい。例えば、図1に示す樹脂積層体100において、接着層BSに隣接する熱可塑性ポリイミド層30A又は熱可塑性ポリイミド層30Bの厚みが2.5μm未満である場合は、接着層BSとの境界Fから、熱可塑性ポリイミド層30A又は熱可塑性ポリイミド層30Bの厚み全体を含んで、さらに非熱可塑性ポリイミド層20A又は非熱可塑性ポリイミド層20Bの一部分までを含む厚み範囲のフェニル骨格又はビフェニル骨格の合計量を算出する。
また、接着層BSを構成する接着性ポリイミド中にも芳香環が含まれている可能性があることから、接着層BS中に含まれる芳香環量も難燃性に寄与するものとして式(i)の分母に合算している。
[ポリイミド]
次に、第1の絶縁樹脂層40A、第2の絶縁樹脂層40B及び接着層BSを構成する好ましい樹脂であるポリイミドについて説明する。
なお、本発明でポリイミドという場合、ポリイミドの他、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリシロキサンイミド、ポリベンズイミダゾールイミドなど、分子構造中にイミド基を有するポリマーからなる樹脂を意味する。また、ポリイミドが複数の構造単位を有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、ランダムに存在することが好ましい。
また、「熱可塑性ポリイミド」とは、一般にガラス転移温度(Tg)が明確に確認できるポリイミドのことであるが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×10Pa未満であるポリイミドをいう。また、「非熱可塑性ポリイミド」とは、一般に加熱しても軟化、接着性を示さないポリイミドのことであるが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×10Pa以上であるポリイミドをいう。
<熱可塑性ポリイミド>
第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bにおける熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bを形成するための熱可塑性ポリイミドは、酸二無水物成分と、脂肪族ジアミン及び/又は芳香族ジアミン等を含むジアミン成分と、を反応させて得られるものであり、酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有する。酸二無水物成分及びジアミン成分の種類や、2種以上の酸無水物又はジアミンを使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱可塑性ポリイミドの熱膨張性、接着性、ガラス転移温度等を制御することができる。なお、本発明において、「酸二無水物残基」とは、酸二無水物から誘導された4価の基のことを意味し、「ジアミン残基」とは、ジアミン化合物から誘導された2価の基のことを意味する。
原料の酸二無水物成分及びジアミン成分としては、熱可塑性ポリイミドの合成に一般的に用いられるモノマーを使用できる。
ただし、上記式(i)に示されるように、図1の層構成例で樹脂積層体100の難燃性を向上させるためには、接着層BSとの境界Fから第1の絶縁樹脂層40A側及び第2の絶縁樹脂層40B側へ、それぞれ2.5μmまでの厚み範囲に含まれるフェニル骨格及びビフェニル骨格の量が重要である。そのため、図1の層構成例で接着層BSに隣接する熱可塑性ポリイミド層30A,30Bには、芳香環を含むモノマーとして、芳香族酸二無水物や芳香族ジアミンを用いることが好ましい。芳香族酸二無水物や芳香族ジアミンに含まれる芳香環は、熱可塑性ポリイミド層30A,30B中のフェニル骨格及びビフェニル骨格となる。
芳香族酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物(BPADA)、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TAHQ)、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート(TMEG)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)等のほか、特にビフェニル骨格を有するものとして、例えば3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,3',3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等を好ましく使用できる。
熱可塑性ポリイミド層30A,30Bは、樹脂積層体100,101に十分な難燃性を付与するため、全酸二無水物残基100モル部に対して、上記芳香族酸二無水物の一種以上から誘導される酸二無水物残基を合計で50~100モル部の範囲内で含有することが好ましく、60~100モル部の範囲内で含有することがより好ましい。
芳香族ジアミンとしては、例えば1,4-ジアミノベンゼン(p-PDA)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビスアニリンフルオレン(BAFL)、9,9-ビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン、4,4’’-ジアミノ-パラ-テルフェニル等のほか、特にビフェニル骨格を有するものとして、例えば、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-EB)、2,2’-ジエトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル(m-EOB)、2,2’-ジプロポキシ-4,4’-ジアミノビフェニル(m-POB)、2,2’-ジ-n-プロピル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-NPB)、2,2’-ジビニル-4,4’-ジアミノビフェニル(VAB)、4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)、4,4’-ジアミノ-2,2’,5,5’-テトラクロロビフェニル、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル等を好ましく使用できる。
熱可塑性ポリイミド層30A,30Bは、樹脂積層体100に十分な難燃性を付与するため、全ジアミン残基100モル部に対して、上記芳香族ジアミンの一種以上から誘導されるジアミン残基を合計で50~100モル部の範囲内で含有することが好ましく、60~100モル部の範囲内で含有することがより好ましい。
<非熱可塑性ポリイミド>
第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bにおける非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bを形成するための非熱可塑性ポリイミドは、酸二無水物成分と、脂肪族ジアミン及び/又は芳香族ジアミン等を含むジアミン成分と、を反応させて得られるものであり、酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有する。酸二無水物成分及びジアミン成分の種類や、2種以上の酸無水物又はジアミンを使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、非熱可塑性ポリイミドの熱膨張性、誘電特性等を制御することができる。
原料の酸二無水物成分及びジアミン成分としては、非熱可塑性ポリイミドの合成に一般的に用いられるモノマーを使用できる。
ただし、上記式(i)に示されるように、樹脂積層体100,101の難燃性を向上させるためには、接着層BSとの境界Fから第1の絶縁樹脂層40A側及び第2の絶縁樹脂層40B側へ、それぞれ2.5μmまでの厚み範囲に含まれるフェニル骨格及びビフェニル骨格の量が重要である。そのため、図1の層構成例で熱可塑性ポリイミド層30A,30Bの層厚みが2.5μm未満である場合や、図2の層構成例のように接着層BSに非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bが隣接する場合には、非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bの原料モノマーとして、上記熱可塑性ポリイミドの説明で例示した芳香族酸二無水物や芳香族ジアミンを用いることが好ましい。芳香族酸二無水物や芳香族ジアミンに含まれる芳香環は、非熱可塑性ポリイミド層20A,20B中のフェニル骨格及びビフェニル骨格となる。
また、非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bは、樹脂積層体100,101に十分な難燃性を付与するため、全酸二無水物残基100モル部に対して、上記熱可塑性ポリイミドの説明で例示した芳香族酸二無水物の一種以上から誘導される酸二無水物残基を合計で50~100モル部の範囲内で含有することが好ましく、60~100モル部の範囲内で含有することがより好ましい。
さらに、非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bは、樹脂積層体100,101に十分な難燃性を付与するため、全ジアミン残基100モル部に対して、上記熱可塑性ポリイミドの説明で例示した芳香族ジアミンの一種以上から誘導されるジアミン残基を合計で50~100モル部の範囲内で含有することが好ましく、60~100モル部の範囲内で含有することがより好ましい。
<接着性ポリイミド>
接着層BSを構成する好ましい樹脂である接着性ポリイミドは、酸二無水物成分と、脂肪族ジアミンを含むジアミン成分と、を反応させて得られるものである。
接着性ポリイミドの原料となる酸二無水物成分としては、熱可塑性ポリイミドの合成に一般的に用いられるモノマーを使用できるが、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物(BPADA)、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TAHQ)、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート(TMEG)、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物(NTCDA)などの芳香族酸二無水物が好ましい。芳香族酸二無水物に含まれる芳香環は、接着層BS中のフェニル骨格及びビフェニル骨格となる。
また、接着性ポリイミドは、樹脂積層体100,101に優れた誘電特性を付与するため、全酸二無水物残基100モル部に対して、上記芳香族酸二無水物の一種以上から誘導される酸二無水物残基を合計で50~100モル部の範囲内で含有することが好ましく、60~100モル部の範囲内で含有することがより好ましい。
接着性ポリイミドの原料となるジアミン成分としては、熱可塑性ポリイミドの合成に一般的に用いられるモノマーを使用できるが、樹脂積層体100,101の誘電特性を改善する観点からダイマー酸型ジアミンを用いることが好ましい。
すなわち、接着性ポリイミドは、全ジアミン残基の100モル部に対して、ダイマー酸型ジアミンから誘導されるジアミン残基を好ましくは20モル部以上、より好ましくは40モル部以上、最も好ましくは60~100モル部の範囲内で含有することがよい。ダイマー酸型ジアミンから誘導されるジアミン残基を上記の量で含有することによって、接着層BSの誘電特性を改善させるとともに、接着層BSのガラス転移温度の低温化(低Tg化)による熱圧着特性の改善、さらに低弾性率化による内部応力の緩和を図ることができる。全ジアミン残基の100モル部に対して、ダイマー酸型ジアミンから誘導されるジアミン残基の含有量が20モル部未満であると、高周波伝送時の伝送損失が大きくなったり、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bとの間に介在する接着層BSとして十分な接着性が得られないことがある。なお、ダイマー酸型ジアミンから誘導されるダイマー酸型ジアミンに由来する残基は、接着層BS中の脂肪族骨格となる(ただし、脂肪族骨格の重量比率の計算に際しては、ダイマー酸型ジアミンに由来する残基に含まれる6員芳香環由来の炭素原子の合計重量を除外する)。
ダイマー酸型ジアミンは、下記の成分(a)を主成分として含有するとともに、成分(b)及び(c)の量が制御されている精製物である。
(a)ダイマージアミン
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く)
(a)成分のダイマージアミンとは、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基(-COOH)が、1級のアミノメチル基(-CH-NH)又はアミノ基(-NH)に置換されてなるジアミンを意味する。ダイマー酸は、不飽和脂肪酸の分子間重合反応によって得られる既知の二塩基酸であり、その工業的製造プロセスは業界でほぼ標準化されており、炭素数が11~22の不飽和脂肪酸を粘土触媒等にて二量化して得られる。工業的に得られるダイマー酸は、オレイン酸やリノール酸、リノレン酸などの炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られる炭素数36の二塩基酸が主成分であるが、精製の度合いに応じ、任意量のモノマー酸(炭素数18)、トリマー酸(炭素数54)、炭素数20~54の他の重合脂肪酸を含有する。また、ダイマー化反応後には二重結合が残存するが、本発明では、更に水素添加反応して不飽和度を低下させたものもダイマー酸に含めるものとする。(a)成分のダイマージアミンは、炭素数18~54の範囲内、好ましくは22~44の範囲内にある二塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるジアミン化合物、と定義することができる。
ダイマージアミンの特徴として、ダイマー酸の骨格に由来する特性を付与することができる。すなわち、ダイマージアミンは、分子量約560~620の巨大分子の脂肪族であるので、分子のモル体積を大きくし、ポリイミドの極性基を相対的に減らすことができる。このようなダイマー酸型ジアミンの特徴は、ポリイミドの耐熱性の低下を抑制しつつ、比誘電率と誘電正接を小さくして誘電特性を向上させることに寄与すると考えられる。また、2つの自由に動く炭素数7~9の疎水鎖と、炭素数18に近い長さを持つ2つの鎖状の脂肪族アミノ基とを有するので、ポリイミドに柔軟性を与えるのみならず、ポリイミドを非対称的な化学構造や非平面的な化学構造とすることができるので、ポリイミドの低誘電率化を図ることができると考えられる。
ダイマー酸型ジアミンは、分子蒸留等の精製方法によって(a)成分のダイマージアミン含有量を96重量%以上、好ましくは97重量%以上、より好ましくは98重量%以上にまで高めたものを使用することがよい。(a)成分のダイマージアミン含有量を96重量%以上とすることで、ポリイミドの分子量分布の拡がりを抑制することができる。なお、技術的に可能であれば、ダイマー酸型ジアミンのすべて(100重量%)が、(a)成分のダイマージアミンによって構成されていることが最もよい。
ダイマー酸型ジアミンは、市販品を利用可能であり、例えばクローダジャパン社製のPRIAMINE1073(商品名)、同PRIAMINE1074(商品名)、同PRIAMINE1075(商品名)等が挙げられる。これらの市販品を用いる場合は、ダイマージアミン以外の成分を低減する目的で精製することが好ましく、例えばダイマージアミンを96重量%以上とすることが好ましい。精製方法としては、特に制限されないが、蒸留法や沈殿精製等の公知の方法が好適である。
接着性ポリイミドは、発明の効果を損なわない範囲で、上記ダイマー酸型ジアミン以外のジアミン化合物を原料として用いることができる。接着性ポリイミドに使用できる好ましいジアミン化合物としては、例えば1,4-ジアミノベンゼン(p-PDA)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビスアニリンフルオレン(BAFL)、9,9-ビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-EB)、2,2’-ジエトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル(m-EOB)、2,2’-ジプロポキシ-4,4’-ジアミノビフェニル(m-POB)、2,2’-ジ-n-プロピル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-NPB)、2,2’-ジビニル-4,4’-ジアミノビフェニル(VAB)、4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)、4,4’-ジアミノ-2,2’,5,5’-テトラクロロビフェニル、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル、4,4’’-ジアミノ-パラ-テルフェニル等を挙げることができる。
接着性ポリイミドは、樹脂積層体100,101の低誘電率化、低誘電正接化を図るため、全ジアミン残基100モル部に対して、上記ジアミン化合物の一種以上から誘導されるジアミン残基を合計で1~40モル部の範囲内で含有することが好ましく、5~35モル部の範囲内で含有することがより好ましい。
ダイマー酸型ジアミンやそれ以外のジアミン化合物に含まれる芳香環は、接着層BS中のフェニル骨格及びビフェニル骨格となる。
接着性ポリイミドにおいて、酸二無水物成分及びジアミン成分の種類や、2種以上の酸二無水物又はジアミンを使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張係数、ガラス転移温度、誘電特性等を制御することができる。
接着性ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000~400,000の範囲内が好ましく、20,000~350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、接着層BSの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際に接着層BSの厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
接着性ポリイミドは、完全にイミド化された構造が最も好ましい。但し、ポリイミドの一部がアミド酸となっていてもよい。そのイミド化率は、フーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光製FT/IR620)を用い、1回反射ATR法にてポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1015cm-1付近のベンゼン環吸収体を基準とし、1780cm-1のイミド基に由来するC=O伸縮の吸光度から算出することができる。
接着性ポリイミドは、ガラス転移温度(Tg)が250℃以下であることが好ましく、40℃以上200℃以下の範囲内であることがより好ましい。接着性ポリイミドのTgが250℃以下であることによって、低温での熱圧着が可能になるため、積層時に発生する内部応力を緩和し、回路加工後の寸法変化を抑制できる。接着性ポリイミドのTgが250℃を超えると、第1の絶縁樹脂層40Aと第2の絶縁樹脂層40Bとの間に介在させて接着する際の温度が高くなり、回路加工後の寸法安定性を損なう恐れがある。
接着性ポリイミドを用いる接着層BSの難燃性を補うために、難燃剤を配合することが好ましい。難燃剤としては、特に制限なく公知のものを使用できるが、接着性ポリイミドの誘電特性を低下させない難燃剤として有機ホスフィン酸の金属塩が好ましい。有機ホスフィン酸の金属塩としては、例えば下記の一般式(1)で表される有機ホスフィン酸のアルミニウム塩が好ましい。
Figure 2024051579000002
一般式(1)中、二つのRは互いに独立してアルキル基を示す。Rは、炭素数1~4の低級アルキル基であることが好ましい。このような有機ホスフィン酸の金属塩としては、市販品を利用可能であり、例えばExolit OP935(商品名、クラリアント社製)などを挙げることができる。
難燃剤の配合量は、有機ホスフィン酸の金属塩を用いる場合、接着性ポリイミド100重量部に対して有機ホスフィン酸の金属塩を10~70重量部の範囲内とすることが好ましい。有機ホスフィン酸の金属塩が10重量部未満では、難燃効果が十分に発揮されず、70重量部を超えると接着層BSが脆くなる。
以上の接着性ポリイミドを用いることによって、接着層BSは、優れた柔軟性と誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)を有するものとなる。なお、接着層BSには、難燃剤のほかに、例えば可塑剤、エポキシ樹脂などの硬化樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、有機もしくは無機フィラー、カップリング剤などを適宜配合することができる。
<ポリイミドの合成>
第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bを構成する熱可塑性ポリイミド、非熱可塑性ポリイミド及び接着層BSを構成する接着性ポリイミドは、上記の酸二無水物とジアミン化合物を溶媒中で反応させ、ポリアミド酸を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、酸二無水物とジアミン化合物をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0~100℃の範囲内の温度で30分~24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5~50重量%の範囲内、好ましくは10~40重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ブタノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶媒の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の濃度が5~50重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
合成されたポリアミド酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリアミド酸は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。ポリアミド酸の溶液の粘度は、500cps~100,000cpsの範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、例えば、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。
ポリアミド酸をイミド化させて接着性ポリイミドを形成させる方法は、特に制限されず、例えば80~400℃の範囲内の温度条件で1~24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
<接着性ポリイミドの架橋形成>
接着性ポリイミドがケトン基を有する場合に、該ケトン基と、少なくとも2つの第1級のアミノ基を官能基として有するアミノ化合物のアミノ基を反応させてC=N結合を形成させることによって、架橋構造を形成することができる。架橋構造の形成によって、接着性ポリイミドの耐熱性を向上させることができる。ケトン基を有する接着性ポリイミドを形成するために好ましいテトラカルボン酸無水物としては、例えば3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)を、ジアミン化合物としては、例えば、4,4’―ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゾフェノン(BABP)、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン(BABB)等の芳香族ジアミンを挙げることができる。
接着性ポリイミドの架橋形成に使用可能なアミノ化合物としては、ジヒドラジド化合物、芳香族ジアミン、脂肪族アミン等を例示することができる。これらの中でも、ジヒドラジド化合物が好ましい。ジヒドラジド化合物以外の脂肪族アミンは、室温でも架橋構造を形成しやすく、ワニスの保存安定性の懸念があり、一方、芳香族ジアミンは、架橋構造の形成のために高温にする必要がある。ジヒドラジド化合物を使用した場合は、ワニスの保存安定性と硬化時間の短縮化を両立させることができる。ジヒドラジド化合物としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6-ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4-ビスベンゼンジヒドラジド、1,4-ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6-ピリジン二酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物が好ましい。以上のジヒドラジド化合物は、単独でもよいし、2種類以上混合して用いることもできる。なお、架橋形成に用いるジヒドラジド化合物、芳香族ジアミン中に含まれる芳香族基は、接着層BS中のフェニル骨格又はビフェニル骨格となる。
接着性ポリイミドを架橋形成させる場合は、ケトン基を有する接着性ポリイミドを含む樹脂溶液に、上記アミノ化合物を加えて、接着性ポリイミド中のケトン基とアミノ化合物の第1級アミノ基とを縮合反応させる。この縮合反応により、樹脂溶液は硬化して硬化物となる。この場合、アミノ化合物の添加量は、ケトン基1モルに対し、第1級アミノ基が合計で0.004モル~1.5モル、好ましくは0.005モル~1.2モル、より好ましくは0.03モル~0.9モル、最も好ましくは0.04モル~0.5モルとなるようにアミノ化合物を添加することができる。ケトン基1モルに対して第1級アミノ基が合計で0.004モル未満となるようなアミノ化合物の添加量では、アミノ化合物による接着性ポリイミドの架橋が十分ではないため、硬化させた後の接着層BSにおいて耐熱性が発現しにくい傾向となり、1.5モルを超えるようなアミノ化合物の添加量では、未反応のアミノ化合物が熱可塑剤として作用し、接着層BSの耐熱性を低下させる傾向がある。
架橋形成のための縮合反応の条件は、接着性ポリイミドにおけるケトン基とアミノ化合物の第1級アミノ基が反応してイミン結合(C=N結合)を形成する条件であれば、特に制限されない。加熱縮合の温度は、縮合によって生成する水を系外へ放出させるため、又は接着性ポリイミドの合成後に引き続いて加熱縮合反応を行なう場合に当該縮合工程を簡略化するため等の理由で、例えば120~220℃の範囲内が好ましく、140~200℃の範囲内がより好ましい。反応時間は、30分~24時間程度が好ましく、反応の終点は、例えばフーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光製FT/IR620)を用い、赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1670cm-1付近のポリイミド樹脂におけるケトン基に由来する吸収ピークの減少又は消失、及び1635cm-1付近のイミン基に由来する吸収ピークの出現により確認することができる。
接着性ポリイミドのケトン基とアミノ化合物の第1級のアミノ基との加熱縮合は、例えば、(a)接着性ポリイミドの合成(イミド化)に引き続き、アミノ化合物を添加して加熱する方法、(b)ジアミン成分として予め過剰量のアミノ化合物を仕込んでおき、接着性ポリイミドの合成(イミド化)に引き続き、イミド化若しくはアミド化に関与しない残りのアミノ化合物とともに接着性ポリイミドを加熱する方法、又は、(c)アミノ化合物を添加した接着性ポリイミドの組成物を所定の形状に加工した後(例えば任意の基材に塗布した後やフィルム状に形成した後)に加熱する方法、等によって行うことができる。
接着性ポリイミドの耐熱性付与のため、架橋構造の形成でイミン結合の形成を説明したが、これに限定されるものではなく、接着性ポリイミドの硬化方法として、例えばエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤等を配合し硬化することも可能である。
<層厚>
樹脂積層体100,101は、第1の絶縁樹脂層40Aと接着層BSと第2の絶縁樹脂層40Bの合計厚みをT1としたとき、該合計厚みT1が70~500μmの範囲内であり、100~300μmの範囲内であることが好ましい。合計厚みT1が70μm未満では、回路基板とした際の伝送損失を低下させる効果が不十分となり、500μmを超えると、生産性低下の恐れがある。
また、接着層BSの厚みT2は50μmより大きい。優れた誘電特性と難燃性との両立という本発明の効果は、接着層BSの厚みT2が大きな積層構造において特に有効に発揮される。かかる観点から、接着層BSの厚みT2は、例えば50μm超~450μmの範囲内にあることが好ましく、50μm超~250μmの範囲内がより好ましい。接着層BSの厚みT2が上記下限値に満たないと、低誘電正接化が不十分となり、十分な誘電特性が得られないなどの問題が生じることがある。一方、接着層BSの厚みT2が上記上限値を超えると、難燃性の確保が難しくなる、寸法安定性が低下するなどの不具合が生じることがある。
また、優れた誘電特性と難燃性との両立という本発明の効果は、接着層BSの厚みT2比率が大きな積層構造において特に有効に発揮されるので、合計厚みT1に対する接着層BSの厚みT2の比率(T2/T1)は、0.5~0.96の範囲内が好ましく、0.5~0.75の範囲内であることがより好ましい。比率(T2/T1)が0.5未満では、低誘電正接化が不十分となり、十分な誘電特性が得られない。0.96を超えると難燃性の確保が難しくなる、寸法安定性が低下するなどの不具合が生じる。
第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bの厚みT3は、それぞれ、例えば10~50μmの範囲内にあることが好ましく、12~25μmの範囲内がより好ましい。第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bのそれぞれの厚みT3が上記の下限値に満たないと、樹脂積層体100,101の反りなどの問題が生じることがある。第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bの厚みT3が上記の上限値を超えると、回路基板とした際の伝送特性が低下するなどの不具合が生じる場合がある。なお、第1の絶縁樹脂層40Aと第2の絶縁樹脂層40Bは、同じ厚みでも異なる厚みでもよい。また、熱可塑性ポリイミド層10A,10B,30A,30Bも、それぞれ、同じ厚みでも異なる厚みでよく、非熱可塑性ポリイミド層20A,20Bも同じ厚みでも異なる厚みでよい。
<誘電正接>
樹脂積層体100,101は、例えば回路基板に適用する場合において、誘電損失の悪化を抑制するために、SPDR共振器を用いて測定される10GHzにおける誘電正接が、好ましくは0.01以下、より好ましくは0.008以下、更に好ましくは0.005以下であることがよい。樹脂積層体100,101の10GHzにおける誘電正接が0.01超えると、回路基板に適用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
<比誘電率>
樹脂積層体100,101は、例えば回路基板の絶縁層として適用する場合において、インピーダンス整合性を確保するために、絶縁層全体として、SPDR共振器を用いて測定される10GHzにおける比誘電率が3.5以下であることが好ましい。樹脂積層体100,101の10GHzにおける比誘電率が3.5を超えると、回路基板に適用した際に、第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bの誘電損失の悪化に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
[金属張積層板]
図3は、本発明の好ましい実施の形態にかかる金属張積層板200の断面構成を示している。金属張積層板200は、樹脂積層体100の両側に、金属層110Aと金属層110Bが積層された構造である。したがって、金属張積層板200は、金属層110A/第1の絶縁樹脂層40A/接着層BS/第2の絶縁樹脂層40B/金属層110Bがこの順に積層された構造を有する。金属層110Aと金属層110Bは、それぞれ最も外側に位置し、それらの内側に第1の絶縁樹脂層40A及び第2の絶縁樹脂層40Bが配置され、さらに第1の絶縁樹脂層40Aと第2の絶縁樹脂層40Bの間には、接着層BSが介在配置されている。このような層構成を有する金属張積層板200は、金属層110Aと熱可塑性ポリイミド層10Aと非熱可塑性ポリイミド層20Aと熱可塑性ポリイミド層30Aとがこの順番に積層された第1の片面金属張積層板(C1)と、金属層110Bと熱可塑性ポリイミド層10Bと非熱可塑性ポリイミド層20Bと熱可塑性ポリイミド層30Bとがこの順番に積層された第2の片面金属張積層板(C2)と、を絶縁層側が向き合うように接着層BSで貼り合わせた構造を有していると考えることもできる。
また、図4に示すように、樹脂積層体100に替えて樹脂積層体101を用いることによって、樹脂積層体101の両側に、金属層110Aと金属層110Bが積層された構造の金属張積層板201としてもよい。この金属張積層板201は、金属層110A/第1の絶縁樹脂層40A/接着層BS/第2の絶縁樹脂層40B/金属層110Bがこの順に積層された構造を有する。この場合、金属張積層板201は、金属層110Aと熱可塑性ポリイミド層10Aと非熱可塑性ポリイミド層20Aとがこの順番に積層された第1の片面金属張積層板(C1)と、金属層110Bと熱可塑性ポリイミド層10Bと非熱可塑性ポリイミド層20Bとがこの順番に積層された第2の片面金属張積層板(C2)と、を絶縁層側が向き合うように接着層BSで貼り合わせた構造を有していると考えることもできる。
(金属層)
金属層110A及び金属層110Bの材質としては、特に制限はないが、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。なお、後述する本実施の形態の回路基板における配線層の材質も金属層110A及び金属層110Bと同様である。
金属層110A及び金属層110Bの厚みは特に限定されるものではないが、例えば銅箔等の金属箔を用いる場合、好ましくは35μm以下であり、より好ましくは5~25μmの範囲内がよい。生産安定性及びハンドリング性の観点から金属箔の厚みの下限値は5μmとすることが好ましい。なお、銅箔を用いる場合は、圧延銅箔でも電解銅箔でもよい。また、銅箔としては、市販されている銅箔を用いることができる。
また、金属箔は、例えば、防錆処理や、接着力の向上を目的として、例えばサイディング、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤等による表面処理を施してもよい。
[金属張積層板の製造]
金属張積層板200,201は、例えば以下の方法1又は方法2で製造できる。なお、接着層BSとなる接着性ポリイミドについては、上記のとおり架橋形成させてもよい。
[方法1]
まず、上記の層構成を有する第1の片面金属張積層板(C1)及び第2の片面金属張積層板(C2)を準備する。次に、接着層BSとなる上記接着性ポリイミド又はその前駆体をシート状に成形して接着シートとする。この接着シートを、第1の片面金属張積層板(C1)の第1の絶縁樹脂層40Aと、第2の片面金属張積層板(C2)の第2の絶縁樹脂層40Bとの間に配置して貼り合わせ、熱圧着させる。
[方法2]
まず、第1の片面金属張積層板(C1)及び第2の片面金属張積層板(C2)を準備する。次に、接着層BSとなる上記接着性ポリイミドの溶液又はその前駆体の溶液を、第1の片面金属張積層板(C1)の第1の絶縁樹脂層40A、又は第2の片面金属張積層板(C2)の第2の絶縁樹脂層40Bのいずれか片方、または両方に所定の厚みで塗布し、乾燥させて塗布膜を形成する。その後、塗布膜の側で第1の片面金属張積層板(C1)と第2の片面金属張積層板(C2)を貼り合わせて熱圧着させる。
方法1,2で用いる第1の片面金属張積層板(C1)及び第2の片面金属張積層板(C2)は、例えば、金属層110A,110Bとなる金属箔上に、熱可塑性ポリイミド又は非熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の溶液を順次塗布・乾燥することを繰り返し、熱処理してイミド化することによって製造できる。
また、方法1で用いる接着シートは、例えば、(1)任意の支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥し、熱処理してイミド化した後、支持基材から剥がして接着シートとする方法、(2)任意の支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、ポリアミド酸のゲルフィルムを支持基材から剥がし、熱処理してイミド化して接着シートとする方法、(3)支持基材に、上記接着性ポリイミドの溶液を塗布・乾燥した後、支持基材から剥がして接着シートとする方法、などによって製造できる。
上記において、ポリイミド溶液(又はポリアミド酸溶液)を金属箔、支持基材や絶縁樹脂層上に塗布する方法としては、特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。
以上のようにして得られる本実施の形態の樹脂積層体100,101は、金属層110A及び/又は金属層110Bをエッチングするなどして配線回路加工することによって、片面FPC又は両面FPCなどの回路基板を製造することができる。
[回路基板]
本実施の形態の金属張積層板200,201は、主にFPC、リジッド・フレックス回路基板などの回路基板材料として有用である。すなわち、本実施の形態の金属張積層板200,201の2つの金属層110A,110Bの片方又は両方を、常法によってパターン状に加工して配線層を形成することによって、本発明の一実施の形態であるFPCなどの回路基板を製造できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
[比誘電率及び誘電正接の測定]
ベクトルネットワークアナライザ(Agilent社製、商品名;ベクトルネットワークアナライザE8363C)およびSPDR共振器を用いて樹脂シートを温度;23℃、湿度;50%の条件下で、24時間放置した後、周波数10GHzにおける比誘電率(Dk)および誘電正接(Df)を測定した。
[燃焼性試験]
難燃性は、以下の手順で測定した。銅張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去してフィルムを得、難燃性評価サンプル(幅50mm×長さ180mm)とした。この難燃性評価サンプルをUL94VTM試験の薄手材料垂直試験方法に準拠し、1回目離炎後の燃焼時間(t1)を測定した。また、サンプル数5つの燃焼時間(t1)の平均値をそのサンプルにおける燃焼時間t[秒]とした。
[ピール強度の測定]
両面銅張積層板(片面銅張積層板/接着層/片面銅張積層板)を幅5.0mm×長さ70.0mmに切断して測定サンプルを調製した。ピール強度はテンシロンテスター(東洋精機製作所社製、商品名;ストログラフVE-1D)を用いて、測定サンプルの銅箔面(片面銅張積層板/接着層の銅箔面)を両面テープによりアルミ板に固定し、反対側(張り合わせ面側)の片面銅張積層板を180°方向に50mm/分の速度で剥離していき、ポリイミド層から20mm剥離した時の中央値強度を求めた。測定は3回繰り返し行い、中央値強度の平均値をピール強度とした。
実施例及び参考例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3',4,4'‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BTDA:3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
m‐TB:2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニル
TPE-R:1,3-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
DAPE:4,4’-ジアミノ-ジフェニルエーテル
BAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(分子量;410.51)
N-12:ドデカン二酸ジヒドラジド(分子量;258.36)
DDA:炭素数36の脂肪族ジアミン(クローダジャパン社製、商品名;PRIAMINE1074、アミン価;210mgKOH/g、環状構造及び鎖状構造のダイマージアミンの混合物、ダイマー成分の含有量;96重量%以上、分子量;534.3)
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
OP935:ホスフィン酸のアルミニウム塩(クラリアント社製、商品名;Exolit OP935、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、リン含有量;23質量%、平均粒子径D50;2μm)
(合成例1)
窒素気流下で、重合容器に0.8447gのm-TB(0.00398モル)、4,6529gのTPE-R(0.01592モル)並びに重合後の固形分濃度が12重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、1.1889gのPMDA(0.00591モル)及び4.0566gのBPDA(0.01379モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸の樹脂溶液aを得た。この樹脂溶液aを基材上に塗布し、乾燥後、熱処理してイミド化したポリイミドフィルムの比重は1.04[g/cm]であった。
(合成例2)
窒素気流下で、重合容器に3.8208gのDAPE(0.01908モル)、並びに重合後の固形分濃度が10重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、6.1792gのBTDA(0.01918モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸の樹脂溶液bを得た。この樹脂溶液bを基材上に塗布し、乾燥後、熱処理してイミド化したポリイミドフィルムの比重は1.04[g/cm]であった。
(合成例3)
窒素気流下で、重合容器に2.4297gのm-TB(0.01145モル)、3.3458gのTPE-R(0.01145モル)並びに重合後の固形分濃度が12重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、3.4950のPMDA(0.01602モル)及び2.2128gのBTDA(0.00687モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸の樹脂溶液cを得た。
(合成例4)
窒素気流下で、重合容器に6.5641gのm-TB(0.03092モル)、並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、3.3216gのPMDA(0.01523モル)及び4.4805gのBPDA(0.01523モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸の樹脂溶液dを得た。この樹脂溶液dを基材上に塗布し、乾燥後、熱処理してイミド化したポリイミドフィルムの比重は1.04[g/cm]であった。
(合成例5)
窒素導入管、攪拌機、熱電対、ディーンスタークトラップ、冷却管を付した500mLの4ッ口フラスコに、44.92gのBTDA(0.139モル)、75.08gのDDA(0.141モル)、168gのNMP及び112gのキシレンを装入し、40℃で30分間混合して、ポリアミド酸溶液を調製した。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、4時間加熱、攪拌し、留出する水及びキシレンを系外に除去した。その後、100℃まで冷却し、112gのキシレンを加え撹拌し、更に30℃まで冷却することでイミド化を完結し、接着層用の樹脂溶液e(固形分;30.0重量%、重量平均分子量;75,700)を得た。
(調製例1)
100gの樹脂溶液e(固形分;30.0重量%)に、1.1gのN-12(0.004モル)を配合し、7.5gのOP935、2.0gのNMP及び12.0gのキシレンを加えて希釈し、更に1時間攪拌することで接着剤組成物fを調整した。この樹脂溶液fを基材上に塗布し、乾燥後、熱処理してイミド化したポリイミドフィルムの比重は0.99[g/cm]であった。
[作製例1]
銅箔(電解銅箔、厚み;12μm、樹脂側の表面粗さRzjis;0.6μm)の上に、樹脂溶液aを硬化後の厚みが2.5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で1分間加熱乾燥して溶媒を除去した。その上に樹脂溶液dを硬化後の厚みが7.5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で3分間加熱乾燥して溶媒を除去した。更に、その上に樹脂溶液bを硬化後の厚みが2.5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で1分間加熱乾燥して溶媒を除去した。その後、140℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結して、片面銅張積層板1を調製した。
[実施例1]
調製例1の接着剤組成物fを乾燥後の厚さが60μmとなるように片面銅張積層板1のポリイミド側に塗布し、80~160℃で連続的に加熱乾燥して溶媒を除去した。この塗布面側に、更に100℃に加熱したロールを用いて別の片面銅張積層板1を貼り合わせたのち、180℃×48時間加熱し、両面銅張積層板1を作製した。
[実施例2~実施例7及び比較例1、2]
表1に記載したポリアミド酸溶液を用いるとともに表1の厚み構成で片面銅張積層板2~9を作製した。片面銅張積層板2~9を用い、接着層を表1に示す厚み構成に変更した以外は、実施例1と同様にして、両面銅張積層板2~9を作製した。
両面銅張積層板1~9の各測定結果を表1に示した。また、式(i)の計算に用いるA~E、式(i)により算出されるパラメータxを表2に示した。
なお、実施例1を例に挙げると、式(i)は、以下の通り計算することができる。
x=A/[B+(2×C)+D+(2×E)] … (i)
A(接着層中に含まれる単位面積あたりのダイマー酸型ジアミン由来の脂肪族骨格の合計重量[g]):
樹脂溶液fから形成された接着層の厚みは60[μm]、接着層中の接着性ポリイミドの重量割合は0.77、比重は0.99[g/cm]である。
また、AL値は、DDA分子量が534.3、末端アミノ基の分子量が16、DDA中の芳香環量が10.8093[g/mol]、接着性ポリイミドの構成単位の式量(Fw)が820.5であることから、
AL値={[534.3-(16×2)-10.8093]/820.5}
=0.599
なお、樹脂溶液fより構成されるポリイミドの式量は、モノマーの分子量の合計から2分子の水を減算して求めた(856.53-36.03=820.5)。また、DDA中の芳香環量は、DDA 1molの中に、1個の芳香環を保有しているDDAが15%の比率で含まれていると仮定した。
従って、式(ii)に基づき、実施例1では、
A[g]=0.599×60×0.77×0.99
=27.4gとなる。
B(接着層との境界から第1の絶縁樹脂層側及び第2の絶縁樹脂層側へ、それぞれ2.5μmまでの厚み範囲に含まれる単位面積あたりのフェニル骨格の合計量[g]):
フェニル基の式量を72.062とすると、樹脂溶液bより構成されるポリイミドに含まれる繰り返し単位構造中のフェニル基の数は4個であり、樹脂溶液bより構成されるポリイミドの式量が486.44であることから、実施例1では、
B=(72.062×4個/486.44)[wt%]×比重1.04[g/cm]×厚み2.5[μm]×2[両面側] =3.08g
となる。
なお、フェニル基の式量は、ベンゼンの分子量78.11より、結合手と置換基の存在を考慮して水素原子の原子量1.00784を6個分差し引いて算出した(以下、同様である)。また、樹脂溶液bより構成されるポリイミドの式量は、モノマーの分子量の合計から2分子の水を減算して求めた(522.47-36.03=486.44)。
C(接着層との境界から第1の絶縁樹脂層側及び第2の絶縁樹脂層側へ、それぞれ2.5μmまでの厚み範囲に含まれる単位面積あたりのビフェニル骨格の合計量[g]):
ビフェニル基の式量を144.132とすると、樹脂溶液bより構成されるポリイミドに含まれる繰り返し単位構造中のビフェニル基の数は0個であり、樹脂溶液bより構成されるポリイミドの式量が486.44であることから、実施例1では、
C=(144.132×0個/486.44)[wt%]×比重1.04[g/cm]×厚み2.5[μm]×2[両面側]
=0g
となる。
なお、ビフェニル基の式量は、ビフェニルの分子量154.21より、結合手と置換基の存在を考慮して水素原子の原子量1.00784を10個分差し引いて算出した(以下、同様である)。
D(接着層中に含まれる単位面積あたりのフェニル骨格の合計量[g]):
樹脂溶液fから形成された接着層の厚みは60[μm]、接着層中の接着性ポリイミドの重量割合は0.77、比重は0.99[g/cm]である。
また、フェニル基の式量を72.062とすると、樹脂溶液fより構成されるポリイミドに含まれる繰り返し単位構造中のフェニル基の数は2.15個であり、樹脂溶液fより構成されるポリイミドの式量が820.5であることから、実施例1では、
D=(72.062×2.15個/820.5)[wt%]
×比重0.99[g/cm]×0.77×厚み60[μm]
=8.64g
となる。
なお、樹脂溶液fより構成されるポリイミドの式量は、モノマーの分子量の合計から2分子の水を減算して求めた(856.53-36.03=820.5)。また、DDA中の芳香環量は、DDA 1molの中に、1個の芳香環を保有しているDDAが15%の比率で含まれていると仮定した。
E(接着層中に含まれる単位面積あたりのビフェニル骨格の合計量[g]):
樹脂溶液fから形成された接着層の厚みは60[μm]、接着層中の接着性ポリイミドの重量割合は0.77、比重は0.99[g/cm]である。
また、ビフェニル基の式量を144.132とすると、樹脂溶液fより構成されるポリイミドに含まれる繰り返し単位構造中のビフェニル基の数は0個であり、樹脂溶液fより構成されるポリイミドの式量が820.5であることから、実施例1では、
D=(144.132×0個/820.5)[wt%]
×比重0.99[g/cm]×0.77×厚み60[μm]
=0g
となる。
以上のように求めたA~Eに基づき、実施例1ではx=2.34と計算される。
なお、樹脂溶液aを第3層に使用している実施例2~6において、B、Cの数値は以下のとおり計算される。
B(接着層との境界から第1の絶縁樹脂層側及び第2の絶縁樹脂層側へ、それぞれ2.5μmまでの厚み範囲に含まれる単位面積あたりのフェニル骨格の合計量[g]):
樹脂溶液aは、m-TB:TPE-Rのモル比が20:80、PMDA:BPDAのモル比が30:70であるから、樹脂溶液aより構成されるポリイミドの式量は、モノマーの分子量の合計から2分子の水を減算して511.69となる(547.72-36.03)。
フェニル基の式量を72.062とすると、樹脂溶液aより構成されるポリイミドに含まれる繰り返し単位構造中のフェニル基の数は2.7個(TPE-R中3個×0.8+PMDA中1個×0.3)であり、樹脂溶液aより構成される第3層では、
B=(72.062×2.7個/511.69)[wt%]×比重1.04[g/cm]×厚み2.5[μm]×2[両面側] =1.98g
となる。
C(接着層との境界から第1の絶縁樹脂層側及び第2の絶縁樹脂層側へ、それぞれ2.5μmまでの厚み範囲に含まれる単位面積あたりのビフェニル骨格の合計量[g]):
上記と同様に、ビフェニル基の式量を144.132とすると、樹脂溶液aより構成されるポリイミドに含まれる繰り返し単位構造中のビフェニル基の数は0.9個(m-TB中1個×0.2+BPDA中1個×0.7)であり、樹脂溶液aより構成される第3層では、
B=(144.132×0.9個/511.69)[wt%]×比重1.04[g/cm]×厚み2.5[μm]×2[両面側] =1.32g
となる。
Figure 2024051579000003
Figure 2024051579000004
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。
10A,10B,30A,30B…熱可塑性ポリイミド層、20A,20B…非熱可塑性ポリイミド層、100,101…樹脂積層体、110A,110B…金属層、200,201…金属張積層板、BS…接着層、F…境界

Claims (8)

  1. 第1の絶縁樹脂層と、接着層と、第2の絶縁樹脂層と、がこの順に積層されている樹脂積層体であって、
    前記第1の絶縁樹脂層と前記接着層と前記第2の絶縁樹脂層の合計厚みT1が70~500μmの範囲内であり、かつ、前記接着層の厚みT2が50μmより大きく、
    樹脂積層体のUL94薄手材料垂直燃焼試験におけるVTM燃焼時間tが10秒以下であり、下記の式(i)で表される難燃性を示すパラメータxが0を超え2.4以下の範囲内であることを特徴とする樹脂積層体。
    x=A/[B+(2×C)+D+(2×E)] … (i)
    ここで、xは樹脂積層体の接着層を含む所定の厚み範囲に含まれる芳香族骨格量に対する接着層中のダイマー酸型ジアミン由来の脂肪族骨格量の比率を意味し、A~Eは、
    A:接着層中に含まれる単位面積あたりのダイマー酸型ジアミン由来の脂肪族骨格の合計量[g]、
    B:接着層との境界から第1の絶縁樹脂層側及び第2の絶縁樹脂層側へ、それぞれ2.5μmまでの厚み範囲に含まれる単位面積あたりのフェニル骨格の合計量[g]、
    C:接着層との境界から第1の絶縁樹脂層側及び第2の絶縁樹脂層側へ、それぞれ2.5μmまでの厚み範囲に含まれる単位面積あたりのビフェニル骨格の合計量[g]、
    D:接着層中に含まれる単位面積あたりのフェニル骨格の合計量[g]、
    E:接着層中に含まれる単位面積あたりのビフェニル骨格の合計量[g]、
    を意味する。ただし、B、Dのフェニル骨格の合計量には、ビフェニル骨格を形成しているフェニル骨格は含まない。
  2. 前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層が、それぞれ、熱可塑性ポリイミド層及び非熱可塑性ポリイミド層を有するとともに、樹脂積層体が次の(1)又は(2)の層構成;
    (1)熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミド層/接着層/非熱可塑性ポリイミド層/熱可塑性ポリイミド層、
    又は、
    (2)熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミド層/熱可塑性ポリイミド層/接着層/熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミド層/熱可塑性ポリイミド層、
    を有する請求項1に記載の樹脂積層体。
  3. 樹脂積層体全体として、SPDR共振器を用いて測定される10GHzにおける比誘電率が3.5以下であり、誘電正接が0.01以下である請求項1に記載の樹脂積層体。
  4. 前記接着層が、酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有する熱可塑性樹脂層であるとともに、全ジアミン残基100モル部に対する、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマー酸型ジアミンに由来するジアミン残基の割合が20モル部以上である請求項1に記載の樹脂積層体。
  5. 前記接着層を構成する熱可塑性樹脂が、熱可塑性ポリイミドの分子鎖中に含まれるケトン基と、少なくとも2つの第1級のアミノ基を官能基として有するアミノ化合物のアミノ基とがC=N結合による架橋構造を形成している架橋ポリイミドである請求項4に記載の樹脂積層体。
  6. 前記接着層が有機ホスフィン酸の金属塩を含有する請求項4に記載の樹脂積層体。
  7. 請求項1に記載の樹脂積層体と、該樹脂積層体の片面又は両面に積層されている金属層と、を有する金属張積層板。
  8. 請求項7に記載の金属張積層板の金属層を配線に加工してなる回路基板。
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