JP2024052041A - フレキシブル回路基板 - Google Patents

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【課題】ストリップライン構造のフレキシブル回路基板をミリ波アンテナ用RFケーブルとして適用した場合等に必要な耐90度折り曲げ性を示すフレキシブル回路基板を提供する。【解決手段】電子機器の筐体内に収納され略90度に折り曲げ可能なフレキシブル回路基板は、第1グランド層と、第1樹脂層と、導電パターンと、第2樹脂層と、第2グランド層とが順次積層された構造を有する。第1樹脂層の厚み(L1)及び第2樹脂層(L2)の厚みが、それぞれ独立的に50μm以上150μm以下の範囲内であり、比(L2/L1)が0.8以上1.2以下の範囲内である。第1樹脂層の引張弾性率(M1)及び第2樹脂層の引張弾性率(M2)は、それぞれ独立的に0.9GPa以上7GPa以下の範囲内であり、比(M2/M1)が0.7以上1.8以下の範囲内である。【選択図】図1

Description

本発明は、フレキシブル回路基板に関する。
高周波用フレキシブル回路基板の重要な用途の一つとして、ミリ波アンテナ用RFケーブルが知られている。このようなRFケーブル用のフレキシブル回路基板(FPC)の構造としては、低伝送損失性に優れているコプレナー構造、耐ノイズ性に優れているストリップライン構造、それらの中間的な特性のマイクロストリップ構造が知られているが、中でも、高密度実装化された電子機器の誤作動を防止し、電子機器に高レベルの動作安定性を実現するため、耐ノイズ性に優れているストリップライン構造のフレキシブル回路基板が注目されている(例えば、特許文献1の図1参照)。
ストリップライン構造のFPCは、誘電体である第1樹脂層と、その上に形成された信号用導体パターンと、第1樹脂層の信号用導体パターン形成面上に必要に応じて接着層を介して積層された第2樹脂層とからなる積層体が、一対のグランド銅箔の間に挟持された構造を有しており、一般的には、両面銅張積層体(両面CCL)の片面の銅箔を信号用導体パターン加工し、両面銅張積層体の信号用導体パターン形成面に、片面銅張積層体(片面CCL)をその誘電体樹脂層側から積層することで作成されている。
近年、ミリ波アンテナ用RFケーブルに適用されるストリップライン構造のFPCをモバイル電子機器の筐体に収容することが試みられているところ、モバイル電子機器の小型化、薄型化が進み、FPCをモバイル電子機器の筐体に収納する際に、略90度に折り曲げて収納せざるを得ない状況が生じるようになっている。
特許第6537172号
しかしながら、ストリップライン構造のFPCの場合、高周波伝送特性を向上させるために、信号用導体パターンの両側の誘電体である第1樹脂層と第2樹脂層とを合わせた合計の層厚を、コプレナー構造やマイクロストリップ構造のFPCの誘電体厚に比べて厚くする必要が元々あるため、相対的に耐屈曲性が劣り、良好な耐90度折り曲げ性が得られにくいという問題がある。また、特許文献1(特に図1)では、ストリップライン構造のフレキシブル回路基板の誘電特性が検討されているだけであり、そのようなFPCをミリ波アンテナ用RFケーブルとして適用した場合等に必要となる耐90度折り曲げ性については全く検討されていない。
本発明の目的は、ストリップライン構造のFPCをミリ波アンテナ用RFケーブルとして適用した場合等に必要な耐90度折り曲げ性を示すFPCを提供することである。
本発明者らは、ストリップライン構造のFPC板の耐90度折り曲げ性の検討に際し、一対のグランド層の間で、信号用導体パターンを挟み込んでいる一対の第1樹脂層と第2樹脂層とについて、以下の(1)~(3)の点に着目した。
(1)前者が両面CCL由来であり、後者が片面CCL由来である点;
(2)両面CCL由来の第1樹脂層においては、通常、FPCの寸法精度を向上させるために、両面の銅箔側に、後述するコア層よりも比較的高い剛性を示す一対のポリイミド層が配置され、それらの間に、FPCの高周波伝送性と屈曲性とを改善するために、前記ポリイミド層よりも低剛性で低誘電正接のコア層が配置されている3層構造となっている。このため、特に、第1樹脂層を構成する一対のポリイミド層及びそれらに挟持されたコア層のいずれかの層の層厚と剛性とを、それぞれ所定範囲に調整することにより、ストリップライン構造のFPCをミリ波アンテナ用RFケーブルに最適化できる可能性がある点;及び
(3)片面CCL由来の第2樹脂層においては、通常、銅箔側に比較的高い剛性を示すポリイミド層が配置され、第1樹脂層側に前記ポリイミド層よりも低剛性で低誘電正接の接着剤層が配置されている2層構造となっており、調整対象となる層数が第1樹脂層よりも少なくなっているため、比較的容易に第1樹脂層の剛性や誘電特性にマッチするように調整できる可能性がある点。
そして、本発明者らは、鋭意研究の結果、両面CCL由来の第1樹脂層について、第1樹脂層と第2樹脂層のそれぞれの樹脂層厚とそれらの相対比と、コア層の層厚とその層厚の第1樹脂層厚に対する比と、コア層の引張弾性率と一対の第1ポリイミド層及び第2ポリイミド層のそれぞれの引張弾性率とを、それぞれ所定範囲に調整することにより、本発明の目的が達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、電子機器の筐体内に収納され略90度に折り曲げ可能なフレキシブル回路基板であって、
第1樹脂層の片面に形成された導電パターンと、
前記第1樹脂層の他面に積層された第1グランド層と、
前記第1樹脂層の導体パターン形成面側に積層された第2樹脂層と、
前記第2樹脂層の前記第1樹脂層と反対側面に積層された第2グランド層と、を備え、
前記第1樹脂層は、第1グランド層側から第1ポリイミド層と、コア層と、第2ポリイミド層とがこの順で積層された構造を有し、
前記コア層の層厚は、前記第1樹脂層の厚みに対して0.4より大きく0.8以下の範囲内であり、
前記コア層の引張弾性率は、0.5GPa以上2GPa以下の範囲内であり、
前記第1ポリイミド層及び第2ポリイミド層の引張弾性率は、それぞれ独立的に5GPa以上9GPa以下の範囲内であり、
前記第1樹脂層の厚み(L1)及び第2樹脂層の厚み(L2)は、それぞれ独立的に50μm以上150μm以下の範囲内であり、そして
前記第1樹脂層の厚み(L1)に対する前記第2樹脂層の厚み(L2)の比(L2/L1)が0.8以上1.2以下の範囲内であることを特徴とするフレキシブル回路基板を提供する。
本発明のフレキシブル回路基板においては、前記第1樹脂層の引張弾性率(M1)及び第2樹脂層の引張弾性率(M2)が、それぞれ独立的に0.9GPa以上7GPa以下の範囲内であり、前記第1樹脂層の引張弾性率(M1)に対する前記第2樹脂層の引張弾性率(M2)の比(M2/M1)が0.7以上1.8以下の範囲内であることが好ましい。
また、本発明のフレキシブル回路基板においては、前記第2樹脂層が、単層又は複数層のポリイミド層を含むポリイミド絶縁層と、接着剤層とを備え、
前記接着剤層は、前記ポリイミド絶縁層と、前記第1樹脂層の導体パターン形成面との間に位置しており、
前記接着剤層の引張弾性率が0.2GPa以上2GPa以下の範囲内であることが好ましい。
また、本発明のフレキシブル回路基板においては、前記第2グランド層が外側になるように略90度に折り曲げ可能であることが好ましい。
ストリップライン構造の本発明のFPCにおいては、一対のグランド層の間で、信号用導体パターンを挟み込んでいる一対の第1樹脂層及び第2樹脂層について、第1樹脂層及び第2樹脂層のそれぞれの層厚と相対比に加えて、特に第1樹脂層を構成する一対の第1ポリイミド層と第2ポリイミド層とに挟持されたコア層の層厚と第1樹脂層厚に対する相対比と、第1ポリイミド層と第2ポリイミド層とコア層のそれぞれの引張弾性率とが、それぞれ特定範囲に限定されている。このため、本発明のFPCは、ミリ波アンテナ用RFケーブルとして有用な耐90度折り曲げ性を示すことができる。
本発明の一実施の形態のFPCの構成を示す模式図である。 FPCを模擬した材料モデルの断面層構成図である。 計算モデルの剛体の配置、及びサイズを示した模式図である。 図3のモデルにFPCを配置した模式図である。 FPCのシミュレーションソフト上での45度折り曲げ状態説明図である。 FPCのシミュレーションソフト上での90度折り曲げ状態説明図である。 FPCのシミュレーションソフト上での90度折り曲げ、かつ押し板を押し当てた状態説明図である。 シミュレーションステップ説明図である。 第1樹脂層の1c、1a、及び第2樹脂層の2aを構成するポリイミドの応力-歪み曲線である。 第1樹脂層の1bを構成する接着剤の応力-歪み曲線である。 第2樹脂層の2bを構成する接着剤の応力-歪み曲線である。 銅箔の応力-歪み曲線である。 試験回路基板片の導体配線図である。
本発明の実施の形態について、適宜図面を参照して説明する。
[フレキシブル回路基板の構成]
本発明のフレキシブル回路基板(FPC)は、電子機器の筐体内に収納され略90度に折り曲げ可能なものであり、その構成の例としては、図1、図2に示すような構成が挙げられる。図1のFPC10は、第1グランド層G1と、その上に積層された第1樹脂層1と、その片面に形成された導体パターンSと、第1樹脂層1の導体パターン形成面上に積層された第2樹脂層2と、更にその上に積層された第2グランド層G2とを有する。ここで、第1グランド層G1/第1樹脂層1/導体パターンSの積層体は、いわゆる両面銅張積層体(両面CCL)に由来するものであり、第2樹脂層2/第2グランド層G2の積層体は、いわゆる片面銅張積層体(片面CCL)に由来するものであることが製造上の観点等から好ましい。なお、図2は、FPCを模擬した材料モデルの断面層構成図である。
(第1樹脂層1の基本構成)
第1樹脂層1は、第1グランド層G1側から、第1ポリイミド層1a、コア層1b及び第2ポリイミド層1cがこの順で積層された構造を有する。第1ポリイミド層1a、コア層1b及び第2ポリイミド層1cは、それぞれ単層又は複数のポリイミド層を有するポリイミド絶縁層から構成してもよい。ここで、第1ポリイミド層1aと第2ポリイミド層1cとは、コア層1bに比べ比較的高い剛性と難燃性とを示し、主として、フレキシブル回路基板の寸法精度を向上させ、ドリル加工やレーザー加工による層間接続加工精度を向上させ、FPCの難燃性を低下させないようにするためのものである。他方、コア層1bは、主として、第1ポリイミド層1aと第2ポリイミド層1cとに比べ比較的低い誘電正接を示し、FPCの高周波伝送特性を改善するためのものである。なお、第1グランド層G1と第1ポリイミド層1aとの間、導体パターンSと第2ポリイミド層1cとの間には、必要に応じて、第1樹脂層1の誘電特性と引張弾性率とにほとんど影響を及ぼさない範囲で、ポリイミド系接着剤等の公知の接着層を設けてもよい。
(コア層の層厚)
コア層1bの層厚は、第1樹脂層1の全体の厚みに対して0.4を超え0.8以下、好ましくは0.5以上0.75以下である。コア層1bの厚みが第1樹脂層1の厚みに対して0.4以下となると、第1樹脂層1の低誘電正接化が不十分となり、十分な誘電特性が得られなくなる傾向があり、0.8を超えると、第1樹脂層1の寸法安定性が低下するなどの不具合が生じる傾向がある。
(コア層の引張弾性率)
FPC10の耐90度折り曲げ性について、その指標として引張弾性率が適していることが知られている。一般的には、樹脂層の引張弾性率が高くなると、樹脂層が硬くなり、耐90度折り曲げ性が低下し、反対に低くなると、耐90度折り曲げ性が向上する。このような観点から、第1樹脂層1を構成するコア層1bの引張弾性率は、具体的には、0.5GPa以上2GPa以下、好ましくは0.75GPa以上1.5GPa以下の範囲内である。0.5GPa未満であると、FPCの剛性が小さくなり、電子部品を搭載する際のハンドリング性が低下し、2GPaを超えると、FPCの剛性が高くなり、耐90度折り曲げ性が低下することが懸念される。
(第1ポリイミド層と第2ポリイミド層の引張弾性率)
また、第1ポリイミド層1a及び第2ポリイミド層1cの引張弾性率は、それぞれ独立的に5GPa以上9GPa以下、好ましくは6GPa以上8GPa以下である。5GPa未満であると、第1グランド層G1や導体パターンSとに接している第1又は第2ポリイミド層の剛性が低くなることを意味し、そのためFPC10の寸法精度が低下し、9GPaを超えると、剛性が高くなり、FPC10の耐90度折り曲げ性が低下することが懸念される。
(引張弾性率の測定)
なお、第1ポリイミド層1a、コア層1b、第2ポリイミド層1c等の樹脂層の引張弾性率の測定は、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、市販の引張弾性試験機(例えば、(株)東洋精機製作所のストログラフR-1)を用いて行うことができる。また、これらの層は、単層または複数の層から構成されることができる。一般的に、樹脂層が複数のポリイミド層や接着剤層から構成されている場合の当該樹脂層全体の引張弾性率M0は、樹脂層がポリイミド層a、b・・nから構成されている場合を例として、以下の式に従って算出することができる。ここで、樹脂層の全厚をL0とし、ポリイミド層aの厚みをLa及び単独の引張弾性率をMaとし、ポリイミド層bの厚みをLb及び単独の引張弾性率をMbとし、・・ポリイミド層nの厚みをLn及び単独の引張弾性率をMnとする。
Figure 2024052041000002
(第2樹脂層の基本構成)
一方、第2樹脂層2は、図1に示すように、第1樹脂層1の特性にマッチする限り、単層構成であってもよく、複層構成であってよいが、単層又は複数のポリイミド層を含むポリイミド絶縁層2aと接着剤層2bとを積層した構造を有することが好ましい。この場合、接着剤層2bが、第1樹脂層1の導体パターン形成面側に位置することが好ましい。このような第2樹脂層2は、前述した第1樹脂層1と組み合わされてストリップライン構造のFPCを構成するものであり、FPCの誘電特性を損なうことなく、FPCに良好な耐90度折り曲げ性を実現できるように、第1樹脂層1の厚みや剛性や誘電特性に適合するようにその剛性や誘電特性が選択される。換言すれば、両面CCL由来の第1樹脂層1の厚みや剛性、誘電特性を確定すれば、必然的に第2樹脂層2の厚みや剛性、誘電特性を確定させることができ、それに応じて第2樹脂層2に用いる材料や層構造等を決めることができる。従って、ミリ波アンテナ用RFケーブル用のストリップライン構造のFPCを製造するにあたり、まずは、両面CCL由来の第1樹脂層1を特定することが重要となる。なお、第2グランド層G2とポリイミド絶縁層2aとの間には、必要に応じて、第2樹脂層2の誘電特性と引張弾性率とにほとんど影響を及ぼさない範囲で、ポリイミド系接着剤等の公知の接着層を設けてもよい。
(ポリイミド絶縁層2aの層厚)
ポリイミド絶縁層2aの層厚は、第2樹脂層2の全体の厚みに対して好ましくは0.25を超え0.5以下、好ましくは0.3以上0.5以下である。ポリイミド絶縁層2aの厚みが第2樹脂層2の厚みに対して0.25以下となると、第2樹脂層2の低誘電正接化が不十分となり、十分な誘電特性が得られなくなる傾向があり、0.5を超えると、第2樹脂層2の寸法安定性が低下するなどの不具合が生じる傾向がある。
(ポリイミド絶縁層2aの引張弾性率)
第2樹脂層2を構成するポリイミド絶縁層2aの引張弾性率は、好ましくは5GPa以上9GPa以下、より好ましくは6GPa以上8GPa以下の範囲内である。5GPa未満であると、FPC10の剛性が過度に小さくなり、電子部品を搭載する際のハンドリング性が低下し、9GPaを超えると、FPC10の剛性が過度に大きくなり、耐90度折り曲げ性が低下することが懸念される。
(接着剤層2bの層厚)
接着剤層2bの層厚は、第2樹脂層2の全体の厚みからポリイミド絶縁層2aの厚みを差し引いた厚みであり、第2樹脂層2の厚みに対して0.5を超え0.75以下、好ましくは0.5以上0.7以下である。また、ポリイミド絶縁層2aに対する接着剤層2bの厚みの比は、好ましくは0.25以上0.5以下、より好ましくは0.3以上0.5以下である。0.25未満であると、低誘電正接化が不十分となり、十分な誘電特性が得られなくある傾向となり、0.5を超えるとFPC10の剛性が大きくなり、耐90度折り曲げ性が低下することが懸念されるからである。
(接着剤層2bの引張弾性率)
また、接着剤層2bの引張弾性率は、好ましくは0.2GPa以上2GPa以下、より好ましくは0.5GPa以上1.5GPa以下、更に好ましくは0.75GPa以上1.5GPa以下である。この範囲を下回るとFPC10の製造工程における接着剤のハンドリング性が低くなる傾向があり、この範囲を上回るとFPC10自体の剛性に影響を与え、その屈曲性低下の一因になり得る。
(第1樹脂層1及び第2樹脂層2の層厚)
本発明のFPC10を構成する第1樹脂層1の厚み(L1)及び第2樹脂層2の厚み(L2)は、FPC10を高周波用途に適用可能とするために、それぞれ独立的に50μm以上150μm以下、好ましくは70μm以上125μm以下である。第1樹脂層1及び第2樹脂層のそれぞれの層厚がこの範囲を下回ると十分な伝送特性を発現しなくなり、上回るとFPC全体の厚みが厚くなることによって折り曲げ耐性が低くなる。
本発明のFPC10において、第1樹脂層1の厚み(L1)に対する第2樹脂層2の厚み(L2)の比(L2/L1)は、0.8以上1.2以下、好ましくは0.9以上1.1以下である。この比(L2/L1)が、この範囲を下回るとFPCの略90度折り曲げ時に、折り曲げの中立面(特開2021-9997号公報、段落0043-0045参照)が銅箔の厚み方向の中心から、第1樹脂層1側にずれることによって銅箔に掛かる最大応力が大きくなり、上回ると中立面が第2樹脂層2側にずれ銅箔に掛かる最大応力が大きくなる。
(第1樹脂層1及び第2樹脂層2の引張弾性率)
第1樹脂層1の引張弾性率(M1)及び第2樹脂層2の引張弾性率(M2)は、それぞれ独立的に0.9GPa以上7GPa以下、好ましくは1GPa以上7GPa以下、より好ましくは1GPa以上6GPa以下の範囲内である。この範囲を下回るとFPC自体の剛性が小さくなり、電子機器搭載時のハンドリング性が低下し、上回るとFPC自体の剛性が大きくなり、折り曲げ耐性低下の一つの要因となる。
本発明のFPC10において、第1樹脂層1の引張弾性率(M1)に対する第2樹脂層2の引張弾性率(M2)の比(M2/M1)は、0.7以上1.8以下、好ましくは0.8以上1.2以下である。この範囲を下回るとFPCの略90度折り曲げ時に、折り曲げの中立面が銅箔の厚み方向の中心から、第1樹脂層1側に移動することによって銅箔に掛かる最大応力が大きくなり、上回ると中立面が第2樹脂層2側に移動し銅箔に掛かる最大応力が大きくなる。
(第1グランド層及び第2グランド層)
本発明のFPC10において、第1グランド層G1及び第2グランド層G2は、特に限定されず、FPCのグランド層材料として一般的なものをそれぞれ独立的に使用可能であり、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン等の金属材料やこれらの合金材料が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。
第1グランド層G1及び第2グランド層G2の厚みは、特に限定されるものではなく、生産安定性、ハンドリング性、FPCのシールド性能等の観点から、好ましくは5μm以上30μm以下、より好ましくは10μm以上20μm以下である。なお、第1グランド層G1及び第2グランド層G2として銅箔を用いる場合、圧延銅箔でも電解銅箔でもよく、市販の銅箔を用いることもできる。
また、第1グランド層G1及び第2グランド層G2に用いる金属・合金材料に対しては、例えば、防錆処理や、接着力の向上を目的として、例えばサイディング剤、アルミニウムアルコラート剤、アルミニウムキレート剤、シランカップリング剤等による表面処理を施してもよい。なお、第1グランド層G1及び第2グランド層G2には、必要に応じて公知の手法により導体パターニングを施してもよい。
(導体パターン(シグナル銅配線))
本発明のFPC10においては、導体パターンSは信号ラインとして機能するものであり、FPCの信号ラインとして従来から用いられている材料、構成の中から適宜選択して適用することができ、第1グランド層G1及び第2グランド層G2と同様の材料から構成することができる。パターニングは、公知に手法により行うことができる。導体パターンSの層厚は、特に限定されるものではなく、生産安定性、ハンドリング性、伝送性能等の観点から、好ましくは5μm以上20μm以下である。
(第1樹脂層1及び第2樹脂層2の材料)
本発明のFPC10において、第1樹脂層1及び第2樹脂層2の構成材料としては、電気的絶縁性を有するポリイミド以外にも、電気的絶縁性を有する他の樹脂も使用もしくはポリイミドと併用することができる。そのような樹脂として、例えばポリアミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、エチレンテトラフルオロエチレン等を挙げることができる。また、第1樹脂層1及び第2樹脂層2において、ポリイミド層が使用された場合、単層に限らず、複数のポリイミド層が積層されたものであってもよい。なお、本発明でポリイミドという場合、ポリイミドの他、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリシロキサンイミド、ポリベンズイミダゾールイミドなど、分子構造中にイミド基を有するポリマーからなる樹脂を意味する。
以下、第1樹脂層1を構成する第1ポリイミド層1a、コア層1b、第2ポリイミド層1c、第2樹脂層2を構成する単層又は複数のポリイミド層から構成されているポリイミド絶縁層2a、接着剤層2bについて説明する。ここで、これらのポリイミド層を構成するポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン化合物成分から誘導されるジアミン残基を含有するものであり、貯蔵弾性率の観点から、一般にガラス転移温度(Tg)を明確に確認できる「熱可塑性ポリイミド」と、一般に加熱しても熱可塑性ポリイミドのように軟化、接着性を示さない「非熱可塑性ポリイミド」とに分けられる。具体的には、本発明においては、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した“30℃における貯蔵弾性率”が1.0×10Pa以上且つ“300℃における貯蔵弾性率”が3.0×10Pa未満である「熱可塑性ポリイミド」と、“30℃における貯蔵弾性率”が1.0×10Pa以上且つ“300℃における貯蔵弾性率”が3.0×10Pa以上である「非熱可塑性ポリイミド」とに大きく分けられる。このような「熱可塑性ポリイミド」は、通常、非熱可塑性ポリイミドに比べて剛性が低いものの相対的に良好な密着性を示すものである。
従って、第1グランド層G1、第2グランド層G2又は導体パターンSに直接的に接する層である第1樹脂層1の第1ポリイミド層1a、第2ポリイミド層1c、及び第2樹脂層2のポリイミド絶縁層2aには熱可塑性ポリイミドを適用することが好ましい。それらが複数のポリイミド層から構成されている場合には、第1グランド層G1、第2グランド層G2又は導体パターンSに直接的に接する層には熱可塑性ポリイミドを適用する。この場合、直接的に接しない層には、熱可塑性ポリイミドに比べて相対的に良好な誘電特性を示す非熱可塑性ポリイミドを適用することができる。例えば、図2に示すように、ポリイミド絶縁層2aがポリイミド層2a1とポリイミド層2a2とから構成されている場合には、第2グランド層G2に接しているポリイミド層2a1に熱可塑性ポリイミドを適用することが好ましい。その場合、内側のポリイミド層2a2にも熱可塑性ポリイミドを適用してもよいが、非熱可塑性ポリイミドを適用してもよい。なお、第1樹脂層1のコア層1bには非熱可塑性ポリイミドを適用することができるが、コア層1bをボンディングシートとして適用する場合には、後述するように、熱可塑性ポリイミドの中でも成膜性と接着性とを高めた接着性ポリイミドから構成することができる。
(非熱可塑性ポリイミド)
本発明のFPC10において、第1樹脂層1のコア層1bや第2樹脂層のポリイミド層2a2等に適用できる非熱可塑性ポリイミドは、好ましくは芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を含む酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基と、脂肪族ジアミン及び/又は芳香族ジアミン等を含むジアミン成分から誘導されるジアミン残基とを有する。酸二無水物成分及びジアミン成分としては、非熱可塑性ポリイミドの合成に一般的に用いられるモノマー(特開2014-141083号公報の段落0025~0026、特開2016-72405号公報の段落0019~0020参照)を使用できる。酸二無水物成分及びジアミン成分の種類や、2種以上の酸二無水物又はジアミンを使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、ポリイミドの熱膨張性、接着性、ガラス転移温度等を制御することができる。
非熱可塑性ポリイミドは、イミド基濃度が33%以下であることが好ましく、32%以下であることがより好ましい。イミド基濃度が33%を超えると、ポリイミドの難燃性が低下するとともに、極性基の増加によって誘電特性も悪化する。
非熱可塑性ポリイミドは、耐熱性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が280℃以上であることが好ましく、さらに、300℃以上であることがより好ましい。
また、非熱可塑性ポリイミドの熱膨張係数は、反りを抑制する観点から、好ましくは1ppm/K以上30ppm/K以下、より好ましくは1ppm/K以上25ppm/K以下、特に好ましくは15ppm/K以上25ppm/K以下である。
また、非熱可塑性ポリイミドには、発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として、例えば可塑剤、エポキシ樹脂などの他の硬化樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、カップリング剤、充填剤、溶剤、難燃剤などを適宜配合することができる。
(熱可塑性ポリイミド)
本発明のFPC10において、第1ポリイミド層1a、第2ポリイミド層1c、ポリイミド層2a1、接着剤層2b等に好ましく適用できる熱可塑性ポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を含む酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基と、脂肪族ジアミン及び/又は芳香族ジアミンとを含むジアミン成分から誘導されるジアミン残基とを有する。酸二無水物成分及びジアミン成分としては、熱可塑性ポリイミドの合成に一般的に用いられるモノマー(特開2014-141083号公報の段落0025~0026、特開2016-72405号公報の段落0019~0020参照)を使用できる。
熱可塑性ポリイミドは、イミド基濃度が33%以下であることが好ましく、32%以下であることがより好ましい。イミド基濃度が33%を超えると、ポリイミドの難燃性が低下するとともに、極性基の増加によって誘電特性も悪化する。
熱可塑性ポリイミドの熱膨張係数は、反りを抑制する観点から、好ましくは30ppm/K以上、より好ましくは30ppm/K以上100ppm/K以下、特に好ましくは30ppm/K以上80ppm/K以下である。
また、熱可塑性ポリイミドには、発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として、例えば可塑剤、エポキシ樹脂などの他の硬化樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、無機フィラー、カップリング剤、充填剤、溶剤、難燃剤などを適宜配合することができる。
(接着剤層)
本発明のFPC10において、第2樹脂層2の接着剤層2bは、上述の熱可塑性ポリイミドから形成してもよいが、接着性と成膜性を高めたボンディングシートとしても使用できる接着性ポリイミドから形成することができる。コア層1bについても、非熱可塑性ポリイミドだけでなく、ボンディングシートとしても使用できる接着性ポリイミドから形成することができる。
(接着性ポリイミドのテトラカルボン酸残基)
接着性ポリイミドは、一般に熱可塑性ポリイミドに使用されるテトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を特に制限なく含むことができるが、テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、下記の一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「テトラカルボン酸残基(1)と記すことがある)を、合計で90モル部以上含有することが好ましい。テトラカルボン酸残基(1)を、テトラカルボン酸残基の100モル部に対して合計で90モル部以上含有させることによって、接着性ポリイミドの柔軟性と耐熱性の両立が図りやすく好ましい。テトラカルボン酸残基(1)の合計が90モル部未満では、接着性ポリイミドの溶剤溶解性が低下する傾向がある。
Figure 2024052041000003
一般式(1)中、Xは、単結合、または、下式から選ばれる2価の基を示す。
Figure 2024052041000004
上記式において、Zは-C-、-(CH)-又は-CH-CH(-O-C(=O)-CH)-CH-を示すが、nは1~20の整数を示す。
テトラカルボン酸残基(1)を誘導するためのテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物(BPADA)、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TAHQ)、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート(TMEG)などを挙げることができる。
接着性ポリイミドは、発明の効果を損なわない範囲で、上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物以外の酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を含有することができる。そのようなテトラカルボン酸残基としては、特に制限はないが、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物、2,3',3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-又は2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3',4,4'-、2,3,3',4'-又は2,2',3,3'-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート等の芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基が挙げられる。
(接着性ポリイミドのジアミン残基)
接着性ポリイミドは、ジアミン残基の100モル部に対して、ダイマー酸型ジアミンから誘導されるダイマー酸型ジアミン残基を好ましくは20モル部以上、より好ましくは40モル部以上、特に好ましくは60モル部以上含有する。ダイマー酸型ジアミン残基を上記の量で含有することによって、接着剤層2b等の誘電特性を改善させるとともに、接着剤層のガラス転移温度の低温化(低Tg化)により熱圧着特性を改善することができ、低弾性率化により内部応力の緩和を実現することができる。なお、ジアミン残基の100モル部に対して、ダイマー酸型ジアミン残基が20モル部未満であると、接着剤層として十分な接着性が得られないことがあり、また、高熱膨張性である接着剤層の弾性率が高くなることで、導体パターンSの形成後の寸法変化率が悪化する虞れがある。
ここで、ダイマー酸型ジアミンとは、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基(-COOH)が、1級のアミノメチル基(-CH-NH)又はアミノ基(-NH)に置換されてなるジアミンを意味する。ダイマー酸は、不飽和脂肪酸の分子間重合反応によって得られる既知の二塩基酸であり、その工業的製造プロセスは業界でほぼ標準化されており、炭素数が11~22の不飽和脂肪酸を粘土触媒等にて二量化して得られる。工業的に得られるダイマー酸は、オレイン酸やリノール酸などの炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られる炭素数36の二塩基酸が主成分であるが、精製の度合いに応じ、任意量のモノマー酸(炭素数18)、トリマー酸(炭素数54)、炭素数20~54の他の重合脂肪酸を含有する。本発明では、ダイマー酸は分子蒸留によってダイマー酸含有量を90重量%以上にまで高めたものを使用することが好ましい。また、ダイマー化反応後には二重結合が残存するが、本発明では、更に水素添加反応して不飽和度を低下させたものもダイマー酸に含めるものとする。
ダイマー酸型ジアミンの特徴として、ダイマー酸の骨格に由来する特性をポリイミドに付与することができる。すなわち、ダイマー酸型ジアミンは、分子量約560~620の巨大分子の脂肪族であるので、分子のモル体積を大きくし、ポリイミドの極性基を相対的に減らすことができる。このようなダイマー酸型ジアミンの特徴は、ポリイミドの耐熱性の低下を抑制しつつ、誘電率と誘電正接を小さくして誘電特性を向上させることに寄与すると考えられる。また、2つの自由に動く炭素数7~9の疎水鎖と、炭素数18に近い長さを持つ2つの鎖状の脂肪族アミノ基とを有するので、ポリイミドに柔軟性を与えるのみならず、ポリイミドを非対象的な化学構造や非平面的な化学構造とすることができるので、ポリイミドの低誘電率化及び低誘電正接化を図ることができると考えられる。
ダイマー酸型ジアミンは、市販品が入手可能であり、例えばクローダジャパン社製のPRIAMINE1073(商品名)、同PRIAMINE1074(商品名)、同PRIAMINE1075(商品名)、BASFジャパン社製のバーサミン551(商品名)、同バーサミン552(商品名)等が挙げられる。
また、接着性ポリイミドは、下記の一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも1種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を、全ジアミン成分100モル部に対して、合計で20モル部以上80モル部以下の範囲内で含有することが好ましく、20モル部以上60モル部以下の範囲内で含有することがより好ましい。一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物は、屈曲性を有する分子構造を持つため、これらから選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物を上記範囲内の量で使用することによって、ポリイミド分子鎖の柔軟性を向上させ、熱可塑性を付与することができる。一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物の合計量が全ジアミン成分の100モル部に対して80モル部を超えると、ポリイミドの柔軟性が不足し、またガラス転移温度(Tg)が上昇するため、熱圧着による残留応力が増加しエッチング後寸法変化率が悪化する傾向になる。
Figure 2024052041000005
上記式(B1)~(B7)において、Rは独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基Aは独立に-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO-、-COO-、-CH-、-C(CH-、-NH-若しくは-CONH-から選ばれる2価の基を示し、n1は独立に0~4の整数を示す。ただし、式(B3)中から式(B2)と重複するものは除き、式(B5)中から式(B4)と重複するものは除くものとする。
なお、「独立に」とは、上記式(B1)~(B7)の内の一つにおいて、または二つ以上において、複数の連結基A、複数のR若しくは複数のn1が、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。また、式(B1)~(B7)において、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば-NR(ここで、R,Rは、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
上記式(B1)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B1)」と記すことがある)は、2つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B1)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B1)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-、-CH-、-C(CH-、-CO-、-SO-、-S-、-COO-が好ましい。
ジアミン(B1)としては、例えば、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、(3,3’-ビスアミノ)ジフェニルアミン等を挙げることができる。
上記式(B2)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B2)」と記すことがある)は、3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B2)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B2)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
ジアミン(B2)としては、例えば1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、3-[3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン等を挙げることができる。
上記式(B3)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B3)」と記すことがある)は、3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B3)は、1つのベンゼン環に直結した、2つの2価の連結基Aが互いにメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B3)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
ジアミン(B3)としては、例えば1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4'-[2-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[4-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[5-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン等を挙げることができる。
上記式(B4)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B4)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B4)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B4)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-、-CH-、-C(CH-、-SO-、-CO-、-CONH-が好ましい。
ジアミン(B4)としては、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド等を挙げることができる。
上記式(B5)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B5)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B5)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結した、2つの2価の連結基Aが互いにメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B5)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
ジアミン(B5)としては、4-[3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]フェノキシ]アニリン、4,4’-[オキシビス(3,1-フェニレンオキシ)]ビスアニリン等を挙げることができる。
上記式(B6)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B6)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B6)は、少なくとも2つのエーテル結合を有することで高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B6)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-C(CH-、-O-、-SO-、-CO-が好ましい。
ジアミン(B6)としては、例えば、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)等を挙げることができる。
式(B7)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B7)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B7)は、ジフェニル骨格の両側に、それぞれ屈曲性の高い2価の連結基Aを有するため、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B7)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
ジアミン(B7)としては、例えば、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル等を挙げることができる。
接着性ポリイミドは、発明の効果を損なわない範囲で、上記ダイマー酸型ジアミン及びジアミン(B1)~(B7)以外のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を含むことができる。上記ダイマー酸型ジアミン及びジアミン(B1)~(B7)以外のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基としては、熱可塑性ポリイミドに使用されるジアミン化合物として一般に使用されるものを制限なく用いることができる。
接着性ポリイミドにおいて、上記テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の種類や、2種以上のテトラカルボン酸残基又はジアミン残基を適用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張係数、引張弾性率、ガラス転移温度等を制御することができる。また、接着性ポリイミドにおいて、ポリイミドの構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、ランダムに存在することが好ましい。
(接着性ポリイミドのイミド基濃度)
接着性ポリイミドのイミド基濃度は、20%以下であることが好ましい。ここで、「イミド基濃度」は、ポリイミド中のイミド基部(-(CO)-N-)の分子量を、ポリイミドの構造全体の分子量で除した値を意味する。イミド基濃度が20%を超えると、樹脂自体の分子量が小さくなるとともに、極性基の増加によって低吸湿性も悪化し、Tg及び弾性率が上昇する。
(接着性ポリイミドの重量平均分子量)
接着性ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000~400,000の範囲内が好ましく、20,000~350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、接着剤層2aの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際に接着剤層2bの厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
(接着性ポリイミドのイミド化率)
接着性ポリイミドは、完全にイミド化された構造が最も好ましい。但し、ポリイミドの一部がアミド酸となっていてもよい。そのイミド化率は、フーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光(株)製FT/IR620)を用い、1回反射ATR法にてポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1015cm-1付近のベンゼン環吸収体を基準とし、1780cm-1のイミド基に由来するC=O伸縮の吸光度から算出することができる。
(接着性ポリイミドにおける架橋形成)
接着性ポリイミドがケトン基を有する場合に、該ケトン基と、少なくとも2つの第1級のアミノ基を官能基として有するアミノ化合物のアミノ基を反応させてC=N結合を形成させることによって、架橋構造を形成することができる。架橋構造の形成によって、接着性ポリイミドの耐熱性を向上させることができる。ケトン基を有する接着性ポリイミドを形成するために好ましいテトラカルボン酸無水物としては、例えば3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)を、ジアミン化合物としては、例えば、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゾフェノン(BABP)、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン(BABB)等の芳香族ジアミンを挙げることができる。
接着性ポリイミドの架橋形成に使用可能なアミノ化合物としては、ジヒドラジド化合物、芳香族ジアミン、脂肪族アミン等を例示することができる。これらの中でも、ジヒドラジド化合物が好ましい。ジヒドラジド化合物以外の脂肪族アミンは、室温でも架橋構造を形成しやすく、ワニスの保存安定性の懸念があり、一方、芳香族ジアミンは、架橋構造の形成のために高温にする必要がある。このように、ジヒドラジド化合物を使用した場合は、ワニスの保存安定性と硬化時間の短縮化を両立させることができる。ジヒドラジド化合物としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6-ナフトエ二酸ジヒドラジド、4,4-ビスベンゼンジヒドラジド、1,4-ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6-ピリジン二酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物が好ましい。以上のジヒドラジド化合物は、単独でもよいし、2種類以上混合して用いることもできる。
接着性ポリイミドは、上記のテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を溶媒中で反応させ、ポリアミド酸を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0~100℃の範囲内の温度で30分~24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5~50重量%の範囲内、好ましくは10~40重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ブタノン、ジメチルスホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶媒の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の濃度が5~50重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
合成されたポリアミド酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリアミド酸は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。ポリアミド酸の溶液の粘度は、500cps~100,000cpsの範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、例えば、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。
ポリアミド酸をイミド化させて接着性ポリイミドを形成させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80~400℃の範囲内の温度条件で1~24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
以上のようにして得られた接着性ポリイミドを架橋形成させる場合は、ケトン基を有する接着性ポリイミドを含む樹脂溶液に、上記アミノ化合物を加えて、接着性ポリイミド中のケトン基とアミノ化合物の第1級アミノ基とを縮合反応させる。この縮合反応により、樹脂溶液は硬化して硬化物となる。この場合、アミノ化合物の添加量は、ケトン基1モルに対し、第1級アミノ基が合計で0.004モル~1.5モル、好ましくは0.005モル~1.2モル、より好ましくは0.03モル~0.9モル、最も好ましくは0.04モル~0.5モルとなるようにアミノ化合物を添加することができる。ケトン基1モルに対して第1級アミノ基が合計で0.004モル未満となるようなアミノ化合物の添加量では、アミノ化合物による接着性ポリイミドの架橋が十分ではないため、硬化させた後の接着剤層において耐熱性が発現しにくい傾向となり、アミノ化合物の添加量が1.5モルを超えると未反応のアミノ化合物が熱可塑剤として作用し、接着剤層2aやポリイミド層1aの耐熱性を低下させる傾向がある。
架橋形成のための縮合反応の条件は、接着性ポリイミドにおけるケトン基とアミノ化合物の第1級アミノ基が反応してイミン結合(C=N結合)を形成する条件であれば、特に制限されない。加熱縮合の温度は、縮合によって生成する水を系外へ放出させるため、又は接着性ポリイミドの合成後に引き続いて加熱縮合反応を行なう場合に当該縮合工程を簡略化するため等の理由で、例えば120~220℃の範囲内が好ましく、140~200℃の範囲内がより好ましい。反応時間は、30分~24時間程度が好ましく、反応の終点は、例えばフーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光(株)製FT/IR620)を用い、赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1670cm-1付近のポリイミド樹脂におけるケトン基に由来する吸収ピークの減少又は消失、及び1635cm-1付近のイミン基に由来する吸収ピークの出現により確認することができる。
接着性ポリイミドのケトン基とアミノ化合物の第1級のアミノ基との加熱縮合は、例えば、(a)接着性ポリイミドの合成(イミド化)に引き続き、アミノ化合物を添加して加熱する方法、(b)ジアミン成分として予め過剰量のアミノ化合物を仕込んでおき、接着性ポリイミドの合成(イミド化)に引き続き、イミド化若しくはアミド化に関与しない残りのアミノ化合物とともに接着性ポリイミドを加熱する方法、又は、(c)アミノ化合物を添加した接着性ポリイミドの組成物を所定の形状に加工した後(例えば任意の基材に塗布した後やフィルム状に形成した後)に加熱する方法、等によって行うことができる。
接着性ポリイミドの耐熱性付与のため、架橋構造の形成でイミン結合の形成を説明したが、これに限定されるものではなく、接着性ポリイミドの硬化方法として、例えばエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤等を配合し硬化することも可能である。
以上のようにして得られる接着性ポリイミドを用いることによって、接着剤層2bやコア層1bは、優れた柔軟性と誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)を有するものとなる。また、後述するように、接着性ポリイミドは、100℃前後の温度域での貯蔵弾性率が十分に低いため、フッ素系樹脂などの他の接着用樹脂に比べて、接着温度を顕著に低くすることができる。
(接着性ポリイミドのガラス転移温度(Tg))
接着性ポリイミドは、ガラス転移温度(Tg)が250℃以下であることが好ましく、40℃以上200℃以下の範囲内であることがより好ましい。接着性ポリイミドのTgが250℃以下であることによって、低温での熱圧着が可能になるため、積層時に発生する内部応力を緩和し、回路加工後の寸法変化を抑制できる。接着性ポリイミドのTgが250℃を超えると、他のポリイミド層に積層する際の温度が高くなり、回路加工後の寸法安定性を損なう虞れがある。
(接着性ポリイミドの貯蔵弾性率)
接着性ポリイミドは、本明細書で定義する熱可塑性ポリイミドの貯蔵弾性率を満足し、更に40~250℃の範囲で、温度上昇に伴って貯蔵弾性率が急勾配で減少する温度域を有している。このような接着性ポリイミドの特性が、熱圧着時の内部応力を緩和し、回路加工後の寸法安定性を保持する要因であると考えられる。接着性ポリイミドは、前記温度域の上限温度での貯蔵弾性率が、好ましくは5×10Pa以下、より好ましくは1×10~5×10Paの範囲内である。このような貯蔵弾性率とすることによって、仮に上記温度範囲の上限としても、250℃以下での熱圧着が可能となり、密着性を担保し、回路加工後の寸法変化を抑制することができる。
<第1樹脂層及び第2樹脂層の誘電正接>
第1樹脂層1及び第2樹脂層2においては、誘電損失の悪化を抑制するために、10GHzにおける誘電正接(Tanδ)は、好ましくは0.02以下、より好ましくは0.01以下、更に好ましくは0.008以下である。誘電正接が0.02を超えると、回路基板に適用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。なお、10GHzにおける誘電正接の下限値は特に制限されないが、回路基板の絶縁樹脂層としての物性制御を考慮して決定することができる。
<第1樹脂層及び第2樹脂層の比誘電率>
第1樹脂層1及び第2樹脂層2においては、全体として、10GHzにおける比誘電率が好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、更に好ましくは3.2以下である。10GHzにおける誘電率が4.0を超えると、回路基板に適用した際に、誘電損失の悪化に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じ易くなる。
<FPCの耐90度折り曲げ性>
本発明において、FPCの耐90度折り曲げ性は、FPCの90度折り曲げを繰り返し、FPCが破断するまでの折り曲げ回数を計測することで評価することが原理的には可能であるが、本発明では、FPCモデルの内層に設定した導体パターンについて、FPCの90度折り曲げシミュレーションを実施し、そのFPCモデルの導体パターンに生ずる最大ひずみを公知の有限要素解析ツール(例えば、汎用非線形解析ソルバーMarc)を利用して計算することで評価することができる。最大ひずみが低い程、耐90度折り曲げ性が良好であると言える。なお、後述の実施例において、FPCの耐90度折り曲げ性の具体的なシミュレーションの例を説明する。
[フレキシブル回路基板の製造]
本発明のFPCは、常法に従って製造することができる。例えば、銅箔等の金属層上に、ポリイミド樹脂組成物を塗布し乾燥することで金属層/ポリイミド層の同種又は異種の積層体を2つ用意し、それらをポリイミド層が対向するように、接着性ポリイミドからなるボンディングシート(BS)で貼り合わせることにより両面CCLを形成する。この両面CCLの片面の金属層を常法によりパターニングして導体パターンを形成する。それとは別に、銅箔等の金属層上に単独または複数のポリアミド溶液を塗布・乾燥することで金属層/ポリイミド絶縁層からなる積層体を用意し、そのポリイミド絶縁層上に、接着性ポリイミドからなるボンディングシート(BS)で貼り合わせることにより片面CCLを形成する。続いて、片面CCLをそのBS側から、両面CCLの導電パターン形成面に貼り合わせることにより、図1に示すようなFPCを製造することができる。なお、本発明のFPCは、以上説明した以外の方法でも製造可能である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例では、FPCのシミュレーションモデルを作製し、シミュレーションは有限要素法(FEM)で行い、シェル要素を用いて解析した。以下により具体的に説明する。
本実施例で用いた略号は以下の化合物を示す。
BPDA:3,3',4,4'‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
m‐TB:2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニル
TPE-R:1,3-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
ビスアニリン-M:1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
BTDA:3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
DDA:炭素数36の脂肪族ジアミン(クローダジャパン株式会社製、商品名:PRIAMINE1074、アミン価:205mgKOH/g、環状構造及び鎖状構造のダイマージアミンの混合物、ダイマー成分の含有量:95重量%以上)
N-12:ドデカン二酸ジヒドラジド
OP935:有機ホスフィン酸アルミニウム塩(クラリアントジャパン社製、商品名:Exolit OP935)
(合成例1)
<接着層用の樹脂溶液の調製>
窒素導入管、攪拌機、熱電対、ディーンスタークトラップ、冷却管を付した500mLの4ッ口フラスコに、44.92gのBTDA(0.139モル)、75.08gのDDA(0.141モル)、168gのNMP及び112gのキシレンを装入し、40℃で30分間混合して、ポリアミド酸溶液を調製した。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、4時間加熱、攪拌し、留出する水及びキシレンを系外に除去した。その後、100℃まで冷却し、112gのキシレンを加え撹拌し、更に30℃まで冷却することでイミド化を完結したポリイミド溶液1(固形分:29.5重量%、重量平均分子量:75,700)を調製した。
(合成例2)
<絶縁樹脂層用のポリアミド酸溶液の調製>
窒素気流下で、反応槽に、64.20gのm-TB(0.302モル)及び5.48gのビスアニリン-M(0.016モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、34.20gのPMDA(0.157モル)及び46.13gのBPDA(0.157モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液1(粘度:26,500cps)を調製した。
(合成例3)
<絶縁樹脂層用のポリアミド酸溶液の調製>
69.56gのm-TB(0.328モル)、542.75gのTPE-R(1.857モル)、重合後の固形分濃度が12重量%となる量のDMAc、194.39gのPMDA(0.891モル)及び393.31gのBPDA(1.337モル)を原料組成とした以外は、合成例2と同様にしてポリアミド酸溶液2(粘度:2,650cps)を調製した。
(作製例1)
<接着層用の樹脂シートの調製>
ポリイミド溶液1の169.49g(固形分として50g)に1.8gのN-12(0.0036モル)及び12.5gのOP935を配合し、6.485gのNMPと19.345gのキシレンを加えて希釈して、ポリイミドワニス1を調製した。
[実施例1]
<樹脂シートの調製>
ポリイミドワニス1を乾燥後厚みが60μmとなるように離型基材(縦×横×厚さ=320mm×240mm×25μm)のシリコーン処理面に塗工した後、80℃で15分間加熱乾燥し、離型基材上から剥離することで樹脂シート1を調製した。同様の方法で、乾燥後厚みが50μmとなる樹脂シート2を調製した。
<片面金属張積層板の調製>
銅箔1(電解銅箔、厚さ:12μm、樹脂層側の表面粗度Rz:0.6μm)の上に、ポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次にその上にポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが、約16μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結して、トータルのポリイミド厚みが20μmとなる片面金属張積層板1を調製した。同様の方法で、トータルのポリイミド厚みが50μmとなる片面金属張積層板2を調製した。
<両面金属張積層板の調製>
2枚の片面金属張積層板1を準備し、それぞれの絶縁樹脂層側の面を樹脂シート1の両面に重ね合わせ、180℃で2時間、3.5MPaの圧力をかけて圧着して、両面金属張積層板1を調製した。
<配線パターンの形成>
両面金属張積層板1を用いて、片側の金属箔をエッチング加工し、その長手方向に沿ってライン幅100μm、スペース幅100μmにて長さが40mmの10列の銅配線を形成した試験片(試験回路基板片1)を作製した。試験片における導体配線のみを表した図13に示されているように、その試験片40における10列の銅配線51は、U字部52を介して全て連続して繋がっており、その両端には抵抗値測定用の電極部分(図示外)を設けている。
<ストリップラインを模擬した基板形成>
試験回路基板片1を用いて、回路パターンを形成した面に対して、樹脂シート2(厚み:50μm)、片面金属張積層板2(ポリイミド厚み:50μm)を重ね合わせ、180℃で2時間、3.5MPaの圧力をかけて圧着して、試験用金属張積層板1を調製した。
<耐90度折り曲げ試験>
耐折り曲げ性試験装置及び耐折り曲げ性試験方法(特願2021-142359号)に記載の方法にて、試験用金属張積層板1を用いて耐90度折り曲げ試験を行った。常時、試験用金属張積層板1の配線の抵抗値をモニタリングしながら、折り曲げ試験を繰り返し、所定の抵抗(500Ω)になった時点を配線の破断と判断し、その時までに繰り返した折り曲げ回数をはぜ折り測定値とした。その他、当試験時の設定パラメータとして、試験用金属張積層板1の両端を2対のクランプで挟み込み、そのクランプ同士には常に1,000gfの引張り応力を付与しており、また押し板を押し当てる応力も1,000gfにて行った。試験用金属張積層板1の試験回数は85回であった。
[実施例2]
<樹脂シートの調製>
ポリイミドワニス1を乾燥後厚みが60μmとなるように離型基材(縦×横×厚さ=320mm×240mm×25μm)のシリコーン処理面に塗工した後、80℃で15分間加熱乾燥し、離型基材上から剥離することで樹脂シート3を調製した。同様の方法で、乾燥後厚みが75μmとなる樹脂シート4を調製した。
<片面金属張積層板の調製>
銅箔1(電解銅箔、厚さ;12μm、樹脂層側の表面粗度Rz:0.6μm)の上に、ポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次にその上にポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが、約16μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結して、トータルのポリイミド厚みが20μmとなる片面金属張積層板3を調製した。同様の方法で、トータルのポリイミド厚みが25μmとなる片面金属張積層板4を調製した。
<両面金属張積層板の調製>
2枚の片面金属張積層板3を準備し、それぞれの絶縁樹脂層側の面を樹脂シート3の両面に重ね合わせ、180℃で2時間、3.5MPaの圧力をかけて圧着して、両面金属張積層板2を調製した。
<配線パターンの形成>
両面金属張積層板2を用いて、片側の金属箔をエッチング加工し、その長手方向に沿ってライン幅100μm、スペース幅100μmにて長さが40mmの10列の銅配線を形成した試験片(試験回路基板片2)を作製した。この試験片における導体配線図のみを表した図13に示されているように、試験片40における10列の銅配線51は、U字部52を介して全て連続して繋がっており、その両端には抵抗値測定用の電極部分(図示外)を設けている。
<ストリップラインを模擬した基板形成>
試験回路基板片2を用いて、回路パターンを形成した面に対して、樹脂シート4(厚み:75μm)、片面金属張積層板4(ポリイミド厚み:25μm)を重ね合わせ、180℃で2時間、3.5MPaの圧力をかけて圧着して、試験用金属張積層板2を調製した。
<耐90度折り曲げ試験>
耐折り曲げ性試験装置及び耐折り曲げ性試験方法(特願2021-142359)に記載の方法にて、試験回路基板片2を用いて耐90度折り曲げ試験を行った。常時、試験用金属張積層板1の配線の抵抗値をモニタリングしながら、折り曲げ試験を繰り返し、所定の抵抗(500Ω)になった時点を配線の破断と判断し、その時までに繰り返した折り曲げ回数をはぜ折り測定値とした。その他、当試験時の設定パラメータとして、試験用金属張積層板1の両端を2対のクランプで挟み込み、そのクランプ同士には常に1,000gfの引張り応力を付与しており、また押し板を押し当てる応力も1,000gfにて行った。試験用金属張積層板1の試験回数は110回であった。
実施例1、2共に、厚み構成を適正化することで、当該試験片としては十分な屈曲性能を有することを確認した。そこで、本結果に関して有限要素解析ツールを用いたシミュレーションによる解析を行った。試験モデルにおいては、実施例1、2のみならず、第1樹脂層中のコア層と第1、2ポリイミド層の比率を変更した実施例3、4、比較例1の計算を行った。
<FPCの耐90度折り曲げ性>
本発明において、FPCの耐90度折り曲げ性は、耐折り曲げ性試験装置及び耐折り曲げ性試験方法(特願2021-142359)に記載の内容にて、FPCの90度折り曲げを繰り返し、FPCが破断するまでの折り曲げ回数を計測することで評価することが原理的には可能であるが、本発明では、FPCモデルの内層に設定した導体パターンについて、FPCの90度折り曲げシミュレーションを実施し、そのFPCモデルの導体パターンに生ずる最大ひずみを公知の有限要素解析ツール(例えば、汎用非線形解析ソルバーMarc)を利用して計算することで評価することができる。最大ひずみが低い程、耐90度折り曲げ性が良好であると言える。なお、後述の実施例において、FPCの耐90度折り曲げ性の具体的なシミュレーションの例を説明する。
[弾塑性領域における力学シミュレーション]
有限要素解析ツールにおいて、FPCの90度折り曲げ試験を模擬した有限要素解析モデルを構築し、一軸伸長の引張試験から得られる各材料の応力‐ひずみ関係から得られる材料のヤング率及び塑性ひずみ-応力関係を用いて非線形解析を行い、そのFPCモデルの導体パターンに生じる最大塑性ひずみを計算することで評価した。
有限要素解析モデルは、FPCを模擬した材料モデルとFPCを挟んで固定するための剛体、FPCが屈曲するための円状の剛体(φ1mm)、FPCを屈曲後に押し当てる板状の剛体で構成される(図3)。それら剛体に対して、FPCは図4のように配置される。計算においては、FPCを挟んで固定した剛体を90度回転させることで、一定の曲率を有する円状の剛体に接触して90度屈曲された後(図5:45度回転させた状態、図6:90度回転させた状態)、押し板が移動して押し当てられた場合(図7)のFPCに生じるひずみ場の解を求めた。本計算においては、FPCの両端には常に1,000gfの引っ張り応力を付与しており、また押し板を押し当てる応力も1,000gfにて行った。
なお、ストリップライン構造のFPCを模擬した材料モデルの寸法要素は、図2に示すように、シグナル銅配線の高さは12μm、上下両側のグランド銅配線の高さは、それぞれ12μm、シグナル配線はFPCの幅方向中央に位置した。本モデルでは、配線の幅方向については、サイズを決めず無限遠の構造体として計算を行った。
本実施例に適用したシミュレーションのフローを図8に示す。このフローは、シミュレーションモデルの作成ステップ、物性データ入力ステップ、90度折り曲げシミュレーション実施ステップ、シグナル銅配線に生ずる最大歪算出ステップをこの順で少なくとも有する。
「シミュレーションモデルの作成ステップ」では、シミュレーションに適用するFPCモデルと、FPCの90度折り曲げに供する装置モデル(FPC挟持治具、FPC折り曲げ板等)とを作成する。「物性データ入力ステップ」では、シミュレーションの計算に必要な各モデルの物性値、例えば、弾性率、降伏応力、歪み-応力曲線等をシミュレーションソフトへ入力する。「90度折り曲げシミュレーション実施ステップ」では、図3~図7に示すように、実際のシミュレーションソフトでFPCの90度折り曲げを実施する。この実施により、つづく「シグナル銅配線に生ずる最大歪算出ステップ」において、FPCのシグナル銅配線における応力と歪みの関係が算出され、最大歪みが算出される。
シミュレーションにおける計算モデルにおいては、実施例1、2にて調製した樹脂シート、及び片面金属張積層板におけるポリイミドフィルムの機械的な物性値を用いて、計算モデルを構築した。実施例1、2にて得られた樹脂シート1~4をタイプA、片面金属張積層板1~4の銅箔1をエッチオフして得られたポリイミドフィルムをタイプBとした。機械的な物性値としては、引張試験の実測値をもとに算出した。タイプAは、接着剤タイプの比較的低弾性率な樹脂フィルムであり、タイプBは高弾性率な剛性の高い樹脂フィルムである。シミュレーションソフトへの弾性率、降伏応力、歪み-応力曲線等の入力に用いたデータは、タイプAに関しては図10、11、タイプBは図9、銅箔1は図12より抽出した。
[実施例1の模擬FPCの構成]
実施例1の模擬FPCは図1の構造を有しており、構成する各層の厚み及びタイプを以下の通りとした。
層名 符号 厚さ[μm] タイプ
第2グランド層 G2 12 銅箔1
ポリイミド絶縁層 2a 50 タイプB 片面金属張積層体由来
接着剤層 2b 50 タイプA 樹脂シート由来
導体パターン S 12 銅箔1
第2ポリイミド層 1c 20 タイプB 片面金属張積層体由来
コア層 1b 60 タイプA 樹脂シート由来
第1ポリイミド層 1a 20 タイプB 片面金属張積層体由来
第1グランド層 G1 12 銅箔1
[実施例2の模擬FPCの構成]
実施例2の模擬FPCは図1の構造を有しており、構成する各層の厚み及びタイプを以下の通りとした。
層名 符号 厚さ[μm] タイプ 第2グランド層 G2 12 銅箔1
ポリイミド絶縁層 2a 25 タイプB 片面金属張積層体由来
接着剤層 2b 75 タイプA 樹脂シート由来
導体パターン S 12 銅箔1
第2ポリイミド層 1c 20 タイプB 片面金属張積層体由来
コア層 1b 60 タイプA 樹脂シート由来
第1ポリイミド層 1a 20 タイプB 片面金属張積層体由来
第1グランド層 G1 12 銅箔1
[実施例3の模擬FPCの構成]
実施例3の模擬FPCは図1の構造を有しており、構成する各層の厚み及びタイプを以下の通りとした。
層名 符号 厚さ[μm] タイプ 第2グランド層 G2 12 銅箔1
ポリイミド絶縁層 2a 50 タイプB 片面金属張積層体由来
接着剤層 2b 50 タイプA 樹脂シート由来
導体パターン S 12 銅箔1
第2ポリイミド層 1c 12 タイプB 片面金属張積層体由来
コア層 1b 75 タイプA 樹脂シート由来
第1ポリイミド層 1a 12 タイプB 片面金属張積層体由来
第1グランド層 G1 12 銅箔1
[実施例4の模擬FPCの構成]
実施例4の模擬FPCは図1の構造を有しており、構成する各層の厚み及びタイプを以下の通りとした。
層名 符号 厚さ[μm] タイプ 第2グランド層 G2 12 銅箔1
ポリイミド絶縁層 2a 50 タイプB 片面金属張積層体由来
接着剤層 2b 50 タイプA 樹脂シート由来
導体パターン S 12 銅箔1
第2ポリイミド層 1c 25 タイプB 片面金属張積層体由来
コア層 1b 50 タイプA 樹脂シート由来
第1ポリイミド層 1a 25 タイプB 片面金属張積層体由来
第1グランド層 G1 12 銅箔1
[比較例1の模擬FPCの構成]
比較例1の模擬FPCは図1の構造を有しており、構成する各層の厚み及びタイプを以下の通りとした。
層名 符号 厚さ[μm] タイプ 第2グランド層 G2 12 銅箔1
ポリイミド絶縁層 2a 50 タイプB 片面金属張積層体由来
接着剤層 2b 50 タイプA 樹脂シート由来
導体パターン S 12 銅箔1
第2ポリイミド層 1c 38 タイプB 片面金属張積層体由来
コア層 1b 25 タイプA 樹脂シート由来
第1ポリイミド層 1a 38 タイプB 片面金属張積層体由来
第1グランド層 G1 12 銅箔1
[応力-歪カーブの測定]
シミュレーションの算出に必要な引張弾性率については、(株)東洋精機製作所製ストログラフR-1を用いて、温度23℃、相対湿度50%の環境下で引張弾性率を測定した。測定用のサンプルは、MD:250mm×TD:12.7mmを使用し、ロードセル:500N、引張速度:50mm/分、チャック間距離:50mmの条件で測定した。
[平均引張弾性率の算出]
各絶縁体単層での引張弾性率を測定し、異種絶縁体で構成された樹脂積層体の厚み比率を用いて、平均引張弾性率を算出するものである。5μmの範囲において、n種の異種絶縁体が存在していた場合、弾性率M[GPa]、厚みT[μm]と弾性率M[GPa]、厚みT[μm]、更に弾性率M[GPa]、厚みT[μm]の数値を用いて、平均弾性率は、下記式にて算出される。
Figure 2024052041000006
実施例1~4、比較例1
図1に示すFPCを構成する各層について、先に示した層厚と共に、引張弾性率と、降伏応力とを表1に示す。なお、シミュレーションソフトに入力したパラメータの引張弾性率[GPa]と降伏応力[MPa]との数値は、図8~11の応力-歪み曲線から得た数値である。
Figure 2024052041000007
<実施例、比較例の結果一覧>
実施例1~4及び比較例1で得られた結果を表2にまとめて記載する。
Figure 2024052041000008
<まとめ>
実施例1~4のFPCと比較例1のFPCとを対比すると、コア層の層厚の第1ポリイミド層の層厚に対する比(L1b/L1)が0.4を下回っていたので、その比が0.4~0.8以下の範囲内となっている実施例1~4のFPCに比べ、最大ひずみ(圧縮モード)の絶対値が大きくなっており、耐90度折り曲げ性が低下していると判断できる。
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。
1 第1樹脂層
1a 第1ポリイミド層
1b コア層
1c 第2ポリイミド層
2 第2樹脂層
2a ポリイミド絶縁層
2a1、2a2 ポリイミド層
2b 接着剤層
10 フレキシブル回路基板
G1 第1グランド層
G2 第2グランド層
S 導体パターン

Claims (4)

  1. 電子機器の筐体内に収納され略90度に折り曲げ可能なフレキシブル回路基板であって、
    第1樹脂層の片面に形成された導電パターンと、
    前記第1樹脂層の他面に積層された第1グランド層と、
    前記第1樹脂層の導体パターン形成面側に積層された第2樹脂層と、
    前記第2樹脂層の前記第1樹脂層と反対側面に積層された第2グランド層と、を備え、
    前記第1樹脂層は、第1グランド層側から第1ポリイミド層と、コア層と、第2ポリイミド層とがこの順で積層された構造を有し、
    前記コア層の層厚は、前記第1樹脂層の厚みに対して0.4より大きく0.8以下の範囲内であり、
    前記コア層の引張弾性率は、0.5GPa以上2GPa以下の範囲内であり、
    前記第1ポリイミド層及び第2ポリイミド層の引張弾性率は、それぞれ独立的に5GPa以上9GPa以下の範囲内であり、
    前記第1樹脂層の厚み(L1)及び第2樹脂層の厚み(L2)は、それぞれ独立的に50μm以上150μm以下の範囲内であり、そして
    前記第1樹脂層の厚み(L1)に対する前記第2樹脂層の厚み(L2)の比(L2/L1)が0.8以上1.2以下の範囲内であることを特徴とするフレキシブル回路基板。
  2. 前記第1樹脂層の引張弾性率(M1)及び第2樹脂層の引張弾性率(M2)が、それぞれ独立的に0.9GPa以上7GPa以下の範囲内であり、前記第1樹脂層の引張弾性率(M1)に対する前記第2樹脂層の引張弾性率(M2)の比(M2/M1)が0.7以上1.8以下の範囲内である請求項1記載のフレキシブル回路基板。
  3. 前記第2樹脂層が、単層又は複数層のポリイミド層を含むポリイミド絶縁層と、接着剤層と、を備え、
    前記接着剤層は、前記ポリイミド絶縁層と、前記第1樹脂層の導体パターン形成面との間に位置しており、
    前記接着剤層の引張弾性率が0.2GPa以上2GPa以下の範囲内である請求項1又は2記載のフレキシブル回路基板。
  4. 前記第2グランド層が外側になるように略90度に折り曲げ可能な請求項1又は2記載のフレキシブル回路基板。
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