JP2022157367A - フレキシブル回路基板 - Google Patents

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建太郎 矢熊
Kentaro Yakuma
真 大野
Makoto Ono
直幸 庄司
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Abstract

【課題】ストリップライン構造のフレキシブル回路基板をミリ波アンテナ用RFケーブルとして適用した場合等に必要な耐90度折り曲げ性を示すフレキシブル回路基板を提供する。【解決手段】電子機器の筐体内に略90度に折り曲げて収納されるフレキシブル回路基板は、第1グラウンド層と、第1樹脂フィルムと、導電パターンと、第2樹脂フィルムと、第2グランド層とが順次積層された構造を有する。第1樹脂フィルムの厚み(L1)及び第2樹脂フィルム(L2)の厚みが、それぞれ独立的に50μm以上150μm以下の範囲内であり、比(L2/L1)が0.8以上1.2以下の範囲内である。第1樹脂フィルムの引張弾性率(M1)及び第2樹脂フィルムの引張弾性率(M2)は、それぞれ独立的に0.9GPa以上7GPa以下の範囲内であり、比(M2/M1)が0.7以上1.3以下の範囲内である。【選択図】図1

Description

本発明は、フレキシブル回路基板に関する。
高周波用フレキシブル回路基板の重要な用途の一つとして、ミリ波アンテナ用RFケーブルが知られている。このようなRFケーブル用のフレキシブル回路基板(FPC)は、一般的に、一対のグランド銅箔の間に、誘電体である第1樹脂フィルムと、その上に形成された信号用導体パターンと、第1樹脂フィルムの信号用導体パターン形成面上に、接着層を介して積層された第2樹脂フィルムとからなる積層体が挟持された構造(いわゆるストリップライン構造)を有している(特許文献1の図1参照)。
近年、モバイル電子機器の筐体の小型化、薄化が進み、ミリ波アンテナ用RFケーブルをモバイル電子機器の筐体に収容する際に、ミリ波アンテナ用RFケーブルを90度折り曲げて収容することが行われるようになっている。このため、ストリップライン構造のミリ波アンテナ用RFケーブルに対して、良好な耐90度折り曲げ性が求められている。
特許第6537172号
しかしながら、特許文献1(特に図1)では、ストリップライン構造のフレキシブル回路基板の誘電特性が検討されているだけであり、そのようなフレキシブル回路基板をミリ波アンテナ用RFケーブルとして適用した場合等に必要となる耐90度折り曲げ性については全く検討されていない。
本発明の目的は、ストリップライン構造のフレキシブル回路基板をミリ波アンテナ用RFケーブルとして適用した場合等に必要な耐90度折り曲げ性を示すフレキシブル回路基板を提供することである。
本発明者らは、鋭意研究の結果、ストリップライン構造のフレキシブル回路基板において、一対のグランド層の間で、信号用導体パターンを挟み込んでいる一対の第1樹脂フィルム及び第2樹脂フィルムのそれぞれのフィルム厚及びフィルム厚比と、並びに第1樹脂フィルム及び第2樹脂フィルムのそれぞれの引張弾性率と引張弾性率比とが、耐90度折り曲げ性と密接な関係を有していることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、電子機器の筐体内に略90度に折り曲げて収納されるフレキシブル回路基板であって、
第1樹脂フィルムと、
前記第1樹脂フィルムの片面に形成された導電パターンと、
前記第1樹脂フィルムの他面に積層された第1グランド層と、
前記第1樹脂フィルムの導体パターン形成面側に積層された第2樹脂フィルムと、
前記第2樹脂フィルムの前記第1樹脂フィルムと反対側面に積層された第2グランド層と、を備え、
前記第1樹脂フィルムの厚み(L1)が50μm以上150μm以下の範囲内、前記第2樹脂フィルムの厚み(L2)が50μm以上150μm以下の範囲内であり、前記第1樹脂フィルムの厚み(L1)に対する前記第2樹脂フィルムの厚み(L2)の比(L2/L1)が0.8以上1.2以下の範囲内であり、
前記第1樹脂フィルムの引張弾性率(M1)が0.9GPa以上7GPa以下の範囲内、前記第2樹脂フィルムの引張弾性率(M2)が0.9GPa以上7GPa以下の範囲内であり、前記第1樹脂フィルムの引張弾性率(M1)に対する前記第2樹脂フィルムの引張弾性率(M2)の比(M2/M1)が0.7以上1.3以下の範囲内であることを特徴とするフレキシブル回路基板を提供する。
本発明のフレキシブル回路基板においては、前記第2樹脂フィルムが、単層又は複数層のポリイミド層を含むポリイミド絶縁層及び接着剤層を有し、
前記接着剤層は、前記ポリイミド絶縁層と、前記第1樹脂フィルムの導体パターン形成面との間に位置しており、
前記接着剤層の引張弾性率が0.2GPa以上2GPa以下の範囲内であることが好ましい。
また、本発明のフレキシブル回路基板においては、前記第1樹脂フィルムが、中心層にポリイミド層(A)を有し、前記ポリイミド層(A)の厚みが、前記第1樹脂フィルムの全厚に対して0.5以上0.96以下の範囲内であることが好ましい。
本発明のフレキシブル回路基板においては、前記第2グランド層が外側になるように略90度に折り曲げられていることが好ましい。
ストリップライン構造の本発明のフレキシブル回路基板は、一対のグランド層の間で、信号用導体パターンを挟み込んでいる一対の第1樹脂フィルム及び第2樹脂フィルムのそれぞれのフィルム厚及びフィルム厚比と、並びに第1樹脂フィルム及び第2樹脂フィルムのそれぞれの引張弾性率と引張弾性率比とを、それぞれ特定範囲に限定している。このため、本発明のフレキシブル回路基板は、良好な耐90度折り曲げ性を示すことができる。よって、ミリ波アンテナ用RFケーブルとして有用である。
本発明の一実施の形態のフレキシブル回路基板の構成を示す模式図である。 本発明の別の実施の形態のフレキシブル回路基板の構成を示す模式図である。 本発明の別の実施の形態のフレキシブル回路基板の構成を示す模式図である。 本発明の別の実施の形態のフレキシブル回路基板の構成を示す模式図である。 FPCを模擬した材料モデルの断面層構成図である。 FPCを模擬した材料モデルのサイズ説明図である。 FPCを剛体で挟み込んだ状態の説明図である。 FPCをローラーを用いて90度に折り曲げた状態の説明図である。 FPCのシミュレーションソフト上での90度折り曲げ状態説明図である。 シミュレーションステップ説明図である。 実施例1のシミュレーションに適用したFPCモデルの概略断面図である。 実施例2のシミュレーションに適用したFPCモデルの概略断面図である。 実施例3のシミュレーションに適用したFPCモデルの概略断面図である。 実施例4のシミュレーションに適用したFPCモデルの概略断面図である。 実施例5のシミュレーションに適用したFPCモデルの概略断面図である。 絶縁樹脂タイプAの応力-歪み曲線である。 絶縁樹脂タイプBの応力-歪み曲線である。 絶縁樹脂タイプCの応力-歪み曲線である。 銅箔の応力-歪み曲線である。
本発明の実施の形態について、適宜図面を参照して説明する。
[フレキシブル回路基板の構成]
本発明のフレキシブル回路基板(FPC)は、電子機器の筐体内に略90度に折り曲げて収納されるものであり、その構成の例としては、図1~図4に示すような構成が挙げられる。図1のFPC10は、第1グランド層G1と、その上に積層された第1樹脂フィルム1と、第1樹脂フィルムの表面に形成された導体パターンSと、第1樹脂フィルム1の導体パターン形成面上に積層された第2樹脂フィルム2と、更にその上に積層された第2グランド層G2とを有する。
第2樹脂フィルム2は、図2のように、接着剤層2aと、単層又は複数のポリイミド層を含むポリイミド絶縁層2bとから構成してもよい。この場合、接着剤層2aは、第1樹脂フィルム1の導体パターン形成面側に配置することが好ましい。また、ポリイミド絶縁層2bが複数のポリイミド層から形成されている場合、図3に示すように、ポリイミド層2b1とポリイミド層2b2とから構成することができるが、この構造に限定されるわけではない。ここで、ポリイミド層2b1とポリイミド層2b2とは、通常、導体パターンSとの遮断性と第2グランド層との接着性の点等で異なる特性を有するものであることが好ましいが、同じ特性を有するものであってもよい。
一方、第1樹脂フィルム1も単層又は複数のポリイミド層を有するポリイミド絶縁層から構成してもよい。例えば、図4に示すように、第1樹脂フィルム1は、中心層にポリイミド層(A)1aとその両側にポリイミド層1bとポリイミド層1cとから構成することができる。この場合、ポリイミド層(A)1aの層厚は、第1樹脂フィルム1の全体の厚みに対して好ましくは0.5以上0.96以下、より好ましくは0.5以上0.8以下である。ポリイミド層(A)1aの厚みの第1樹脂フィルム1の厚みに対する割合がこの範囲を下回ると、第1樹脂フィルム1の低誘電正接化が不十分となり、十分な誘電特性が得られなくなる傾向があり、上回ると第1樹脂フィルム1の寸法安定性が低下するなどの不具合が生じる傾向がある。ここで、中心層とは、第1樹脂フィルムが3以上の奇数のポリイミド層から構成されている場合には、丁度真ん中に位置するポリイミド層のことであり、2以上の偶数のポリイミド層から構成されている場合には、中央の隣接する2層のポリイミド層のいずれかであるが、第1グランド層G1により近い層とすることが好ましい。
(第1樹脂フィルム1及び第2樹脂フィルム2の層厚)
本発明のFPC10を構成する第1樹脂フィルム1の厚み(L1)及び第2樹脂フィルム2の厚み(L2)は、FPC10を高周波用途に適用可能とするために、それぞれ独立的に50μm以上150μm以下、好ましくは70μm以上125μm以下である。第1樹脂フィルム1の層厚がこの範囲を下回ると十分な伝送特性を発現しなくなり、上回るとFPC全体の厚みが厚くなることによって折り曲げ耐性が低くなる。また、第2樹脂フィルム2の層厚がこの範囲を下回ると十分な伝送特性を発現しなくなり、上回るとFPC全体の厚みが厚くなることによって折り曲げ耐性が低くなる。
本発明のFPC10において、第1樹脂フィルム1の厚み(L1)に対する第2樹脂フィルム2の厚み(L2)の比(L2/L1)は、0.8以上1.2以下、好ましくは0.9以上1.1以下である。この比(L2/L1)が、この範囲を下回るとFPCの90度折り曲げ時に、折り曲げの中立面が銅箔の厚み方向の中心から、第1樹脂フィルム側にずれることによって銅箔に掛かる最大応力が大きくなり、上回ると中立面が第2樹脂フィルム側にずれ銅箔に掛かる最大応力が大きくなる。
(第1樹脂フィルム及び第2樹脂フィルムの引張弾性率)
また、本発明のFPC10においては、第1樹脂フィルム1の引張弾性率(M1)及び第2樹脂フィルム2の引張弾性率(M2)は、それぞれ独立的に0.9GPa以上7GPa以下、好ましくは1GPa以上7GPa以下、より好ましくは1GPa以上6GPa以下である。この範囲を下回るとFPC自体の剛性が小さくなり、電子機器搭載時のハンドリング性が低下し、上回るとFPC自体の剛性が大きくなり、折り曲げ耐性低下の一つの要因となる。
本発明のFPC10において、第1樹脂フィルム1の引張弾性率(M1)に対する第2樹脂フィルム2の引張弾性率(M2)の比(M2/M1)は、0.7以上1.3以下、好ましくは0.8以上1.2以下である。この範囲を下回るとFPCの90度折り曲げ時に、折り曲げの中立面が銅箔の厚み方向の中心から、第1樹脂フィルム側に移動することによって銅箔に掛かる最大応力が大きくなり、上回ると中立面が第2樹脂フィルム側に移動し銅箔に掛かる最大応力が大きくなる。
なお、第2樹脂フィルム2が、図2に示されるように、接着剤層2aを有する場合、接着剤層の引張弾性率は、好ましくは0.2GPa以上2GPa以下、より好ましくは0.5GPa以上1.5GPa以下である。この範囲を下回るとFPCの製造工程における接着剤のハンドリング性が低くなる傾向があり、この範囲を上回るとFPC自体の剛性に影響を与え、FPCの屈曲性低下の一因になり得る。
第1樹脂フィルム1及び第2樹脂フィルム2の引張弾性率の測定は、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、市販の引張弾性試験機(例えば、(株)東洋精機製作所のストログラフR-1)を用いて行うことができる。なお、第1樹脂フィルム1及び第2樹脂フィルム2が複数のポリイミド層や接着剤層から構成されている場合の引張弾性率(M1又M2)は、第1樹脂フィルム1がポリイミド層1a、1b・・1nから構成されている場合を例として、以下の式に従って算出することができる。ここで、第1樹脂フィルム1の全厚をL1μmとし、ポリイミド層1aの厚みをL1a及び単独の引張弾性率をM1aとし、ポリイミド層1bの厚みをL1b及び単独の引張弾性率をM1bとし、・・ポリイミド層1nの厚みをL1n及び単独の引張弾性率をM1nとする。
Figure 2022157367000002
(第1グランド層及び第2グランド層)
本発明のFPC10において、第1グランド層G1及び第2グランド層G2は、特に限定されず、FPCのグランド層材料として一般的なものをそれぞれ独立的に使用可能であり、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン等の金属材料やこれらの合金材料が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。
第1グランド層G1及び第2グランド層G2の厚みは、特に限定されるものではなく、生産安定性、ハンドリング性、FPCのシールド性能等の観点から、好ましくは5μm以上30μm以下、より好ましくは10μm以上20μm以下である。なお、第1グランド層G1及び第2グランド層G2として銅箔を用いる場合、圧延銅箔でも電解銅箔でもよく、市販の銅箔を用いることもできる。
また、第1グランド層G1及び第2グランド層G2に用いる金属・合金材料に対しては、例えば、防錆処理や、接着力の向上を目的として、例えばサイディング剤、アルミニウムアルコラート剤、アルミニウムキレート剤、シランカップリング剤等による表面処理を施してもよい。なお、第1グランド層G1及び第2グランド層G2には、必要に応じて公知の手法により導体パターニングを施してもよい。
(導体パターン)
本発明のFPC10においては、導体パターンSは信号ラインとして機能するものであり、FPCの信号ラインとして従来から用いられている材料、構成の中から適宜選択して適用することができ、第1グランド層G1及び第2グランド層G2と同様の材料から構成することができる。パターニングは、公知に手法により行うことができる。導体パターンSの層厚は、特に限定されるものではなく、生産安定性、ハンドリング性、伝送性能等の観点から、好ましくは5μm以上20μm以下である。
(第1樹脂フィルム及び第2樹脂フィルムの材料)
本発明のFPC10において、第1樹脂フィルム1及び第2樹脂フィルム2としては、電気的絶縁性を有する樹脂により構成されるものであれば特に限定はなく、例えばポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、エチレンテトラフルオロエチレン等を挙げることができるが、ポリイミドによって構成されることが好ましい。また、第1樹脂フィルム1及び第2樹脂フィルム2は、単層に限らず、複数の樹脂層、好ましくは複数のポリイミド層が積層されたものであってもよい。なお、本発明でポリイミドという場合、ポリイミドの他、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリシロキサンイミド、ポリベンズイミダゾールイミドなど、分子構造中にイミド基を有するポリマーからなる樹脂を意味する。
以下、第1樹脂フィルム及び第2樹脂フィルムが単層又は複数のポリイミド層から構成されている場合を説明する。ここで、ポリイミド層を構成するポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物成分から誘導されるテトラカルボン酸残基及びジアミン化合物成分から誘導されるジアミン残基を含有するものであり、貯蔵弾性率の観点から、一般にガラス転移温度(Tg)を明確に確認できる「熱可塑性ポリイミド」と、一般に加熱しても軟化、接着性を示さない「非熱可塑性ポリイミド」とに分けられる。具体的には、本発明においては、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した“30℃における貯蔵弾性率”が1.0×10Pa以上且つ“300℃における貯蔵弾性率”が3.0×10Pa未満である「熱可塑性ポリイミド」と、“30℃における貯蔵弾性率”が1.0×10Pa以上且つ“300℃における貯蔵弾性率”が3.0×10Pa以上である「非熱可塑性ポリイミド」とに大きく分けられる。
第1樹脂フィルム1及び第2樹脂フィルム2がそれぞれ単層のポリイミド層である場合には、非熱可塑性ポリイミドから構成してもよいが、第1グランド層G1、第2グランド層G2及び導体パターンSに対して非熱可塑性ポリイミドより相対的に良好な密着性を示す熱可塑性ポリイミドから構成することが好ましい。
また、第1樹脂フィルム1及び第2樹脂フィルム2がそれぞれ複数のポリイミド層から構成される場合には、第1グランド層G1、第2グランド層G2又は導体パターンSに直接的に接する層には熱可塑性ポリイミドを適用することが好ましく、直接的に接しない層には、熱可塑性ポリイミドに比べて相対的に良好な誘電特性を示す非熱可塑性ポリイミドを適用することができる。例えば、図2の場合、接着剤層2aと単層のポリイミド絶縁層2bには、それぞれ熱可塑性ポリイミドを好ましく適用でき、図3に示すようにポリイミド絶縁層2bが複数のポリイミド層2b1とポリイミド層2b2とから構成されている場合には、第2グランド層G2に接しているポリイミド層2b2に熱可塑性ポリイミドを適用することが好ましい。その場合、内側のポリイミド層2b1にも熱可塑性ポリイミドを適用してもよいが、良好な非熱可塑性ポリイミを適用してもよい。また、図4の場合、ポリイミド層1bと1cには熱可塑性ポリイミドを適用することが好ましく、ポリイミド層(A)1aには非熱可塑性ポリイミドを適用することができるが、ポリイミド層(A)1aをボンディングシートとして適用する場合には、後述するように、熱可塑性ポリイミドの中でも成膜性と接着性とを高めた接着性ポリイミドから構成することができる。
(非熱可塑性ポリイミド)
本発明のFPC10において、ポリイミド層(A)1aやポリイミド絶縁層2b1等に適用できる非熱可塑性ポリイミドは、好ましくは芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を含む酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基と、脂肪族ジアミン及び/又は芳香族ジアミン等を含むジアミン成分から誘導されるジアミン残基とを有する。酸二無水物成分及びジアミン成分としては、非熱可塑性ポリイミドの合成に一般的に用いられるモノマー(特開2014-141083号公報段落[0025]乃至段落[0026]、特開2016-72405号公報段落[0019]乃至段落[0020]参照)を使用できる。酸二無水物成分及びジアミン成分の種類や、2種以上の酸二無水物又はジアミンを使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、ポリイミドの熱膨張性、接着性、ガラス転移温度等を制御することができる。
非熱可塑性ポリイミドは、イミド基濃度が33%以下であることが好ましく、32%以下であることがより好ましい。イミド基濃度が33%を超えると、ポリイミドの難燃性が低下するとともに、極性基の増加によって誘電特性も悪化する。
非熱可塑性ポリイミド層の厚みは、ベース層としての機能を確保し、且つ製造時および熱可塑性ポリイミド塗工時の搬送性の観点から、6μm以上100μm以下の範囲内であることが好ましく、9μm以上50μm以下の範囲内がより好ましい。非熱可塑性ポリイミド層の厚みが上記の下限値未満である場合、電気絶縁性やハンドリング性が不十分となり、上限値を超えると、生産性が低下する。
非熱可塑性ポリイミドは、耐熱性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が280℃以上であることが好ましく、さらに、300℃以上であることがより好ましい。
また、非熱可塑性ポリイミドの熱膨張係数は、反りを抑制する観点から、好ましくは1ppm/K以上30ppm/K以下、より好ましくは1ppm/K以上25ppm/K以下、特に好ましくは15ppm/K以上25ppm/K以下である。
また、非熱可塑性ポリイミドには、発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として、例えば可塑剤、エポキシ樹脂などの他の硬化樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、カップリング剤、充填剤、溶剤、難燃剤などを適宜配合することができる。
(熱可塑性ポリイミド)
本発明のFPC10において、ポリイミド層1b、1c、ポリイミド絶縁層2b、接着剤層2a等に好ましく適用できる熱可塑性ポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分を含む酸無水物成分から誘導される酸二無水物残基と、脂肪族ジアミン及び/又は芳香族ジアミンとを含むジアミン成分から誘導されるジアミン残基とを有する。酸二無水物成分及びジアミン成分としては、熱可塑性ポリイミドの合成に一般的に用いられるモノマー(特開2014-141083号公報段落[0025]乃至段落[0026]、特開2016-72405号公報段落[0019]乃至段落[0020]参照)を使用できる。
熱可塑性ポリイミドは、イミド基濃度が33%以下であることが好ましく、32%以下であることがより好ましい。イミド基濃度が33%を超えると、ポリイミドの難燃性が低下するとともに、極性基の増加によって誘電特性も悪化する。
熱可塑性ポリイミド層の厚みは、接着機能を確保する観点から、1μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましく、1μm以上5μm以下の範囲内がより好ましい。熱可塑性ポリイミド層の厚みが上記の下限値未満である場合、接着性が不十分となり、上限値を超えると、寸法安定性が悪化する傾向となる。
熱可塑性ポリイミドの熱膨張係数は、反りを抑制する観点から、好ましくは30ppm/K以上、より好ましくは30ppm/K以上100ppm/K以下、特に好ましくは30ppm/K以上80ppm/K以下である。
また、熱可塑性ポリイミドには、発明の効果を損なわない範囲で、任意成分として、例えば可塑剤、エポキシ樹脂などの他の硬化樹脂成分、硬化剤、硬化促進剤、無機フィラー、カップリング剤、充填剤、溶剤、難燃剤などを適宜配合することができる。
(接着剤層)
本発明のFPC10において、接着剤層2aは、上述の熱可塑性ポリイミドから形成してもよいが、接着性と成膜性を高めたボンディングシートとしても使用できる接着性ポリイミドから形成することができる。ポリイミド層(A)1aについても、非熱可塑性ポリイミドだけでなく、ボンディングシートとしても使用できる接着性ポリイミドから形成することができる。
(接着性ポリイミドのテトラカルボン酸残基)
接着性ポリイミドは、一般に熱可塑性ポリイミドに使用されるテトラカルボン酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を特に制限なく含むことができるが、テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、下記の一般式(1)で表されるテトラカルボン酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「テトラカルボン酸残基(1)と記すことがある)を、合計で90モル部以上含有することが好ましい。テトラカルボン酸残基(1)を、テトラカルボン酸残基の100モル部に対して合計で90モル部以上含有させることによって、接着性ポリイミドの柔軟性と耐熱性の両立が図りやすく好ましい。テトラカルボン酸残基(1)の合計が90モル部未満では、接着性ポリイミドの溶剤溶解性が低下する傾向がある。
Figure 2022157367000003
一般式(1)中、Xは、単結合、または、下式から選ばれる2価の基を示す。
Figure 2022157367000004
上記式において、Zは-C-、-(CH)-又は-CH-CH(-O-C(=O)-CH)-CH-を示すが、nは1~20の整数を示す。
テトラカルボン酸残基(1)を誘導するためのテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物(BPADA)、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TAHQ)、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート(TMEG)などを挙げることができる。
接着性ポリイミドは、発明の効果を損なわない範囲で、上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸無水物以外の酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を含有することができる。そのようなテトラカルボン酸残基としては、特に制限はないが、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物、2,3',3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-又は2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3',4,4'-、2,3,3',4'-又は2,2',3,3'-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート等の芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基が挙げられる。
(接着性ポリイミドのジアミン残基)
接着性ポリイミドは、ジアミン残基の100モル部に対して、ダイマー酸型ジアミンから誘導されるダイマー酸型ジアミン残基を好ましくは20モル部以上、より好ましくは40モル部以上、特に好ましくは60モル部以上含有する。ダイマー酸型ジアミン残基を上記の量で含有することによって、接着剤層2a等の誘電特性を改善させるとともに、接着剤層のガラス転移温度の低温化(低Tg化)により熱圧着特性を改善することができ、低弾性率化により内部応力の緩和を実現することができる。なお、ジアミン残基の100モル部に対して、ダイマー酸型ジアミン残基が20モル部未満であると、接着剤層として十分な接着性が得られないことがあり、また、高熱膨張性である接着剤層の弾性率が高くなることで、導体パターンSの形成後の寸法変化率が悪化する恐れがある。
ここで、ダイマー酸型ジアミンとは、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基(-COOH)が、1級のアミノメチル基(-CH-NH)又はアミノ基(-NH)に置換されてなるジアミンを意味する。ダイマー酸は、不飽和脂肪酸の分子間重合反応によって得られる既知の二塩基酸であり、その工業的製造プロセスは業界でほぼ標準化されており、炭素数が11~22の不飽和脂肪酸を粘土触媒等にて二量化して得られる。工業的に得られるダイマー酸は、オレイン酸やリノール酸などの炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られる炭素数36の二塩基酸が主成分であるが、精製の度合いに応じ、任意量のモノマー酸(炭素数18)、トリマー酸(炭素数54)、炭素数20~54の他の重合脂肪酸を含有する。本発明では、ダイマー酸は分子蒸留によってダイマー酸含有量を90重量%以上にまで高めたものを使用することが好ましい。また、ダイマー化反応後には二重結合が残存するが、本発明では、更に水素添加反応して不飽和度を低下させたものもダイマー酸に含めるものとする。
ダイマー酸型ジアミンの特徴として、ダイマー酸の骨格に由来する特性をポリイミドに付与することができる。すなわち、ダイマー酸型ジアミンは、分子量約560~620の巨大分子の脂肪族であるので、分子のモル体積を大きくし、ポリイミドの極性基を相対的に減らすことができる。このようなダイマー酸型ジアミンの特徴は、ポリイミドの耐熱性の低下を抑制しつつ、誘電率と誘電正接を小さくして誘電特性を向上させることに寄与すると考えられる。また、2つの自由に動く炭素数7~9の疎水鎖と、炭素数18に近い長さを持つ2つの鎖状の脂肪族アミノ基とを有するので、ポリイミドに柔軟性を与えるのみならず、ポリイミドを非対象的な化学構造や非平面的な化学構造とすることができるので、ポリイミドの低誘電率化及び低誘電正接化を図ることができると考えられる。
ダイマー酸型ジアミンは、市販品が入手可能であり、例えばクローダジャパン社製のPRIAMINE1073(商品名)、同PRIAMINE1074(商品名)、同PRIAMINE1075(商品名)、BASFジャパン社製のバーサミン551(商品名)、同バーサミン552(商品名)等が挙げられる。
また、接着性ポリイミドは、下記の一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも1種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を、全ジアミン成分100モル部に対して、合計で20モル部以上80モル部以下の範囲内で含有することが好ましく、20モル部以上60モル部以下の範囲内で含有することがより好ましい。一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物は、屈曲性を有する分子構造を持つため、これらから選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物を上記範囲内の量で使用することによって、ポリイミド分子鎖の柔軟性を向上させ、熱可塑性を付与することができる。一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物の合計量が全ジアミン成分の100モル部に対して80モル部を超えると、ポリイミドの柔軟性が不足し、またTgが上昇するため、熱圧着による残留応力が増加しエッチング後寸法変化率が悪化する傾向になる。
Figure 2022157367000005
式(B1)~(B7)において、Rは独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基Aは独立に-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO-、-COO-、-CH-、-C(CH-、-NH-若しくは-CONH-から選ばれる2価の基を示し、n1は独立に0~4の整数を示す。ただし、式(B3)中から式(B2)と重複するものは除き、式(B5)中から式(B4)と重複するものは除くものとする。
なお、「独立に」とは、上記式(B1)~(B7)の内の一つにおいて、または二つ以上において、複数の連結基A、複数のR1若しくは複数のn1が、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。また、式(B1)~(B7)において、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば-NR(ここで、R,Rは、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
式(B1)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B1)」と記すことがある)は、2つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B1)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B1)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-、-CH-、-C(CH-、-CO-、-SO-、-S-、-COO-が好ましい。
ジアミン(B1)としては、例えば、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、(3,3’-ビスアミノ)ジフェニルアミン等を挙げることができる。
式(B2)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B2)」と記すことがある)は、3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B2)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B2)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
ジアミン(B2)としては、例えば1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、3-[3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン等を挙げることができる。
式(B3)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B3)」と記すことがある)は、3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B3)は、1つのベンゼン環に直結した、2つの2価の連結基Aが互いにメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B3)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
ジアミン(B3)としては、例えば1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4'-[2-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[4-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[5-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン等を挙げることができる。
式(B4)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B4)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B4)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B4)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-、-CH-、-C(CH-、-SO-、-CO-、-CONH-が好ましい。
ジアミン(B4)としては、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド等を挙げることができる。
式(B5)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B5)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B5)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結した、2つの2価の連結基Aが互いにメタ位にあることで、ポリ
イミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B5)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
ジアミン(B5)としては、4-[3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]フェノキシ]アニリン、4,4’-[オキシビス(3,1-フェニレンオキシ)]ビスアニリン等を挙げることができる。
式(B6)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B6)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B6)は、少なくとも2つのエーテル結合を有することで高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B6)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-C(CH-、-O-、-SO-、-CO-が好ましい。
ジアミン(B6)としては、例えば、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)等を挙げることができる。
式(B7)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B7)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B7)は、ジフェニル骨格の両側に、それぞれ屈曲性の高い2価の連結基Aを有するため、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B7)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
ジアミン(B7)としては、例えば、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル等を挙げることができる。
接着性ポリイミドは、発明の効果を損なわない範囲で、上記ダイマー酸型ジアミン及びジアミン(B1)~(B7)以外のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を含むことができる。上記ダイマー酸型ジアミン及びジアミン(B1)~(B7)以外のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基としては、熱可塑性ポリイミドに使用されるジアミン化合物として一般に使用されるものを制限なく用いることができる。
接着性ポリイミドにおいて、上記テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の種類や、2種以上のテトラカルボン酸残基又はジアミン残基を適用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張係数、引張弾性率、ガラス転移温度等を制御することができる。また、接着性ポリイミドにおいて、ポリイミドの構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、ランダムに存在することが好ましい。
接着性ポリイミドのイミド基濃度は、20重量%以下であることが好ましい。ここで、「イミド基濃度」は、ポリイミド中のイミド基部(-(CO)-N-)の分子量を、ポリイミドの構造全体の分子量で除した値を意味する。イミド基濃度が20重量%を超えると、樹脂自体の分子量が小さくなるとともに、極性基の増加によって低吸湿性も悪化し、Tg及び弾性率が上昇する。
接着性ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000~400,000の範囲内が好ましく、20,000~350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、接着剤層2aの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際に接着剤層2aの厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
接着性ポリイミドは、完全にイミド化された構造が最も好ましい。但し、ポリイミドの一部がアミド酸となっていてもよい。そのイミド化率は、フーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光(株)製FT/IR620)を用い、1回反射ATR法にてポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1015cm-1付近のベンゼン環吸収体を基準とし、1780cm-1のイミド基に由来するC=O伸縮の吸光度から算出することができる。
(接着性ポリイミドにおける架橋形成)
接着性ポリイミドがケトン基を有する場合に、該ケトン基と、少なくとも2つの第1級のアミノ基を官能基として有するアミノ化合物のアミノ基を反応させてC=N結合を形成させることによって、架橋構造を形成することができる。架橋構造の形成によって、接着性ポリイミドの耐熱性を向上させることができる。ケトン基を有する接着性ポリイミドを形成するために好ましいテトラカルボン酸無水物としては、例えば3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)を、ジアミン化合物としては、例えば、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゾフェノン(BABP)、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン(BABB)等の芳香族ジアミンを挙げることができる。
接着性ポリイミドの架橋形成に使用可能なアミノ化合物としては、ジヒドラジド化合物、芳香族ジアミン、脂肪族アミン等を例示することができる。これらの中でも、ジヒドラジド化合物が好ましい。ジヒドラジド化合物以外の脂肪族アミンは、室温でも架橋構造を形成しやすく、ワニスの保存安定性の懸念があり、一方、芳香族ジアミンは、架橋構造の形成のために高温にする必要がある。このように、ジヒドラジド化合物を使用した場合は、ワニスの保存安定性と硬化時間の短縮化を両立させることができる。ジヒドラジド化合物としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6-ナフトエ二酸ジヒドラジド、4,4-ビスベンゼンジヒドラジド、1,4-ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6-ピリジン二酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物が好ましい。以上のジヒドラジド化合物は、単独でもよいし、2種類以上混合して用いることもできる。
接着性ポリイミドは、上記のテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を溶媒中で反応させ、ポリアミド酸を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0~100℃の範囲内の温度で30分~24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5~50重量%の範囲内、好ましくは10~40重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ブタノン、ジメチルスホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶媒の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の濃度が5~50重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
合成されたポリアミド酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリアミド酸は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。ポリアミド酸の溶液の粘度は、500cps~100,000cpsの範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、例えば、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。
ポリアミド酸をイミド化させて接着性ポリイミドを形成させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80~400℃の範囲内の温度条件で1~24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
以上のようにして得られた接着性ポリイミドを架橋形成させる場合は、ケトン基を有する接着性ポリイミドを含む樹脂溶液に、上記アミノ化合物を加えて、接着性ポリイミド中のケトン基とアミノ化合物の第1級アミノ基とを縮合反応させる。この縮合反応により、樹脂溶液は硬化して硬化物となる。この場合、アミノ化合物の添加量は、ケトン基1モルに対し、第1級アミノ基が合計で0.004モル~1.5モル、好ましくは0.005モル~1.2モル、より好ましくは0.03モル~0.9モル、最も好ましくは0.04モル~0.5モルとなるようにアミノ化合物を添加することができる。ケトン基1モルに対して第1級アミノ基が合計で0.004モル未満となるようなアミノ化合物の添加量では、アミノ化合物による接着性ポリイミドの架橋が十分ではないため、硬化させた後の接着剤層において耐熱性が発現しにくい傾向となり、アミノ化合物の添加量が1.5モルを超えると未反応のアミノ化合物が熱可塑剤として作用し、接着剤層2aやポリイミド層1aの耐熱性を低下させる傾向がある。
架橋形成のための縮合反応の条件は、接着性ポリイミドにおけるケトン基とアミノ化合物の第1級アミノ基が反応してイミン結合(C=N結合)を形成する条件であれば、特に制限されない。加熱縮合の温度は、縮合によって生成する水を系外へ放出させるため、又は接着性ポリイミドの合成後に引き続いて加熱縮合反応を行なう場合に当該縮合工程を簡略化するため等の理由で、例えば120~220℃の範囲内が好ましく、140~200℃の範囲内がより好ましい。反応時間は、30分~24時間程度が好ましく、反応の終点は、例えばフーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光(株)製FT/IR620)を用い、赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1670cm-1付近のポリイミド樹脂におけるケトン基に由来する吸収ピークの減少又は消失、及び1635cm-1付近のイミン基に由来する吸収ピークの出現により確認することができる。
接着性ポリイミドのケトン基とアミノ化合物の第1級のアミノ基との加熱縮合は、例えば、(a)接着性ポリイミドの合成(イミド化)に引き続き、アミノ化合物を添加して加熱する方法、(b)ジアミン成分として予め過剰量のアミノ化合物を仕込んでおき、接着性ポリイミドの合成(イミド化)に引き続き、イミド化若しくはアミド化に関与しない残りのアミノ化合物とともに接着性ポリイミドを加熱する方法、又は、(c)アミノ化合物を添加した接着性ポリイミドの組成物を所定の形状に加工した後(例えば任意の基材に塗布した後やフィルム状に形成した後)に加熱する方法、等によって行うことができる。
接着性ポリイミドの耐熱性付与のため、架橋構造の形成でイミン結合の形成を説明したが、これに限定されるものではなく、接着性ポリイミドの硬化方法として、例えばエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤等を配合し硬化することも可能である。
以上のようにして得られる接着性ポリイミドを用いることによって、接着剤層2aやポリイミド層1aは、優れた柔軟性と誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)を有するものとなる。また、後述するように、接着性ポリイミドは、100℃前後の温度域での貯蔵弾性率が十分に低いため、フッ素系樹脂などの他の接着用樹脂に比べて、接着温度を顕著に低くすることができる。
<接着性ポリイミドのガラス転移温度(Tg)>
接着性ポリイミドは、ガラス転移温度(Tg)が250℃以下であることが好ましく、40℃以上200℃以下の範囲内であることがより好ましい。接着性ポリイミドのTgが250℃以下であることによって、低温での熱圧着が可能になるため、積層時に発生する内部応力を緩和し、回路加工後の寸法変化を抑制できる。接着性ポリイミドのTgが250℃を超えると、他のポリイミド層に積層する際の温度が高くなり、回路加工後の寸法安定性を損なう恐れがある。
<接着性ポリイミドの貯蔵弾性率>
接着性ポリイミドは、本明細書で定義する熱可塑性ポリイミドの貯蔵弾性率を満足し、更に40~250℃の範囲で、温度上昇に伴って貯蔵弾性率が急勾配で減少する温度域を有している。このような接着性ポリイミドの特性が、熱圧着時の内部応力を緩和し、回路加工後の寸法安定性を保持する要因であると考えられる。接着性ポリイミドは、前記温度域の上限温度での貯蔵弾性率が、好ましくは5×10Pa以下、より好ましくは1×10~5×10Paの範囲内である。このような貯蔵弾性率とすることによって、仮に上記温度範囲の上限としても、250℃以下での熱圧着が可能となり、密着性を担保し、回路加工後の寸法変化を抑制することができる。
<第1樹脂フィルム及び第2樹脂フィルムの誘電正接>
第1樹脂フィルム1及び第2樹脂フィルム2においては、誘電損失の悪化を抑制するために、10GHzにおける誘電正接(Tanδ)は、好ましくは0.02以下、より好ましくは0.01以下、更に好ましくは0.008以下である。誘電正接が0.02を超えると、回路基板に適用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。なお、10GHzにおける誘電正接の下限値は特に制限されないが、回路基板の絶縁樹脂層としての物性制御を考慮して決定することができる。
<第1樹脂フィルム及び第2樹脂フィルムの比誘電率>
第1樹脂フィルム1及び第2樹脂フィルム2においては、全体として、10GHzにおける比誘電率が好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、更に好ましくは3.2以下である。10GHzにおける誘電率が4.0を超えると、回路基板に適用した際に、誘電損失の悪化に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
<FPCの耐90度折り曲げ性>
本発明において、FPCの耐90度折り曲げ性は、FPCの90度折り曲げを繰り返し、FPCが破断するまでの折り曲げ回数を計測することで評価することが原理的には可能であるが、本発明では、FPCモデルの内層に設定した導体パターンについて、FPCの90度折り曲げシミュレーションを実施し、そのFPCモデルの導体パターンに生ずる最大ひずみを公知の有限要素解析ツール(例えば、汎用非線形解析ソルバーMarc)を利用して計算することで評価することができる。最大ひずみが低い程、耐90度折り曲げ性が良好であると言える。なお、後述の実施例において、FPCの耐90度折り曲げ性の具体的なシミュレーションの例を説明する。
[フレキシブル回路基板の製造]
本発明のフレキシブル回路基板は、常法に従って製造することができる。例えば、接着剤層を樹脂シートとして剥離フィルム上に作成する。それとは別に、金属層上に単独または複数のポリアミド溶液を塗布・乾燥することで金属層/ポリイミド層からなる片面金属張積層板を作成する。続いて、片面金属張積層板のポリイミド層上に樹脂シートを貼り付けた後、剥離シートを除去し、露出した樹脂シートに金属層を貼り付け、パターニングして導体パターンを形成する。その導体パターン上に新たに樹脂シートを貼り付け、更に別の片面金属張積層板のポリイミド層を貼り付けることにより図1に示すようなフレキシブル回路基板を製造することができる。なお、本発明のフレキシブル回路基板は、以上説明した以外の方法でも製造可能である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例では、FPCのシミュレーションモデルを作製し、シミュレーションは有限要素法(FEM)で行い、シェル要素を用いて解析した。以下により具体的に説明する。
[弾塑性領域における力学シミュレーション]
有限要素解析ツール(汎用非線形解析ソルバーMarc)において、シェル要素を用いて、一軸伸長の引張試験から得られる各材料の応力‐ひずみ関係から得られる材料のヤング率及び塑性ひずみ-応力関係から、FPCの90度折り曲げ試験を模擬した有限要素解析モデルを構築し、非線形構造解析を行い、有限要素解析モデルに存在する剛体を強制変位させた際にFPC(内層のシグナル銅配線に着目)に生じるひずみ場の解を求める。
[シミュレーションモデル]
有限要素解析モデルには、シェル要素を用いて作成したFPCを模擬した材料モデル(図5)と、FPCを固定するための直方体の剛体(図7)と、FPCを屈曲するためのロール状の剛体(図8)が存在する。即ち、図7に示すように、FPCを固定するための直方体の剛体で固定し、図8に示すように、FPCを屈曲させるためのロール状の剛体を移動し、FPCに接触させることでFPCを90度に屈曲させ、その際にFPCに生じるひずみ場の解を求める。図9に、実際のシミュレーションソフト上での90度折り曲げ状態を示す。
なお、ストリップライン構造のFPCを模擬した材料モデルの寸法要素は、図6に示すように、シグナル銅配線の線幅2mm、シグナル銅配線の高さは20μm、上下両側のグランド銅配線は、それぞれ12μm、シグナル配線はFPCの幅方向中央に位置し、FPC全体の幅は10mmとした。
[シミュレーションのフロー]
本実施例に適用したシミュレーションのフローを図10に示す。このフローは、シミュレーションモデルの作成ステップ、物性データ入力ステップ、90度折り曲げシミュレーション実施ステップ、シグナル銅配線に生ずる最大歪算出ステップをこの順で少なくとも有する。
「シミュレーションモデルの作成ステップ」では、シミュレーションに適用するFPCモデルと、FPCの90度折り曲げに供する装置モデル(FPC挟持治具、FPC折り曲げローラー装置等)とを作成する。「物性データ入力ステップ」では、シミュレーションの計算に必要な各モデルの物性値、例えば、弾性率、降伏応力、歪み-応力曲線等をシミュレーションソフトへ入力する。「90度折り曲げシミュレーション実施ステップ」では、図9に示すように、実際のシミュレーションソフトでFPCの90度折り曲げを実施する。この実施により、つづく「シグナル銅配線に生ずる最大歪算出ステップ」において、FPCのシグナル銅配線における応力と歪みの関係が算出され、最大歪みが算出される。
[応力-歪カーブの測定]
シミュレーションの算出に必要な引張弾性率については、(株)東洋精機製作所製ストログラフR-1を用いて、温度23℃、相対湿度50%の環境下で引張弾性率を測定した。測定用のサンプルは、MD;250mm×TD;12.7mmを使用し、ロードセル;500N、引張速度;50mm/分、チャック間距離;50mmの条件で測定した。
[平均引張弾性率の算出]
各絶縁体単層での引張弾性率を測定し、異種絶縁体で構成された樹脂積層体の厚み比率を用いて、平均引張弾性率を算出するものである。5μmの範囲において、n種の異種絶縁体が存在していた場合、弾性率M[GPa]、厚みT[μm]と弾性率M[GPa]、厚みT[μm]、更に弾性率M[GPa]、厚みT[μm]の数値を用いて、平均弾性率は、下記式にて算出される。
Figure 2022157367000006
[比較例1]
図11に示す積層体にて、絶縁樹脂のそれぞれの厚みは(イ)25μm、(ロ)25μm、(ハ)50μmであり、樹脂タイプは(イ):タイプA、(ロ):タイプB、(ハ):タイプAとした。グランド、シグナル銅配線の厚みは、それぞれ12μm、20μmにて、銅箔タイプは全て銅箔1とした。
[実施例1]
図12に示す積層体にて、絶縁樹脂のそれぞれの厚みは(イ)50μm、(ロ)25μm、(ハ)25μm、(ニ)25μm、(ホ)25μmであり、樹脂タイプは(イ):タイプA、(ロ):タイプB、(ハ):タイプA、(ニ):タイプB、(ホ):タイプAとした。グランド、シグナル銅配線の厚みは、それぞれ12μm、20μmにて、銅箔タイプは全て銅箔1とした。
[実施例2]
図13に示す積層体にて、絶縁樹脂のそれぞれの厚みは(イ)50μm、(ロ)25μm、(ハ)25μm、(ニ)37.5μm、(ホ)25μm、(ヘ)37.5μmであり、樹脂タイプは(イ):タイプB、(ロ):タイプC、(ハ):タイプB、(ニ):タイプB、(ホ):タイプC、(ヘ):タイプBとした。グランド、シグナル銅配線の厚みは、それぞれ12μm、20μmにて、銅箔タイプは全て銅箔1とした。
[実施例3]
図14に示す積層体にて、絶縁樹脂のそれぞれの厚みは(イ)50μm、(ロ)50μm、(ハ)25μm、(ニ)25μm、(ホ)50μmであり、樹脂タイプは(イ):タイプA、(ロ):タイプB、(ハ):タイプA、(ニ):タイプB、(ホ):タイプAとした。グランド、シグナル銅配線の厚みは、それぞれ12μm、20μmにて、銅箔タイプは全て銅箔1とした。
[実施例4]
図15に示す積層体にて、絶縁樹脂のそれぞれの厚みは(イ)50μm、(ロ)25μm、(ハ)50μm、(ニ)50μm、(ホ)25μm、(ヘ)50μmであり、樹脂タイプは(イ):タイプB、(ロ):タイプC、(ハ):タイプB、(ニ):タイプB、(ホ):タイプC、(へ):タイプBとした。グランド、シグナル銅配線の厚みは、それぞれ12μm、20μmにて、銅箔タイプは全て銅箔1とした。
<シミュレーションソフトへ入力したパラメータ>
絶縁樹脂及び銅箔1について、シミュレーションソフトに入力したパラメータの引張弾性率[GPa]と降伏応力[MPa]とを以下の表1に示す。なお、降伏応力の数値は、図16~19の応力-歪み曲線から得た数値である。
Figure 2022157367000007
<実施例、比較例の結果一覧>
実施例1~4及び比較例1で得られた結果を表2にまとめて記載する。
Figure 2022157367000008
<まとめ>
実施例1~4のFPCと比較例1のFPCとを対比すると、第1樹脂フィルムの引張弾性率が比較例1のFPCの場合には7GPaを超えてしまっているので、第1樹脂フィルムの引張弾性率が0.9~7GPaの範囲内である実施例1~4のFPCに比べ、最大ひずみ(圧縮モード)の絶対値が大きくなっており、耐90度折り曲げ性が低下していると判断できる。
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。
1 第1樹脂フィルム
1a ポリイミド層(A)
1b ポリイミド層
1c ポリイミド層
2 第2樹脂フィルム
2a 接着剤層
2b ポリイミド絶縁層
2b1 ポリイミド層
2b2 ポリイミド層
10 FPC
G1 第1グランド層
G2 第2グランド層
S 導体パターン

Claims (4)

  1. 電子機器の筐体内に略90度に折り曲げて収納されるフレキシブル回路基板であって、
    第1樹脂フィルムと、
    前記第1樹脂フィルムの片面に形成された導電パターンと、
    前記第1樹脂フィルムの他面に積層された第1グラウンド層と、
    前記第1樹脂フィルムの導体パターン形成面側に積層された第2樹脂フィルムと、
    前記第2樹脂フィルムの前記第1樹脂フィルムと反対側面に積層された第2グランド層と、を備え、
    前記第1樹脂フィルムの厚み(L1)が50μm以上150μm以下の範囲内、前記第2樹脂フィルムの厚み(L2)が50μm以上150μm以下の範囲内であり、前記第1樹脂フィルムの厚み(L1)に対する前記第2樹脂フィルムの厚み(L2)の比(L2/L1)が0.8以上1.2以下の範囲内であり、
    前記第1樹脂フィルムの引張弾性率(M1)が0.9GPa以上7GPa以下の範囲内、前記第2樹脂フィルムの引張弾性率(M2)が0.9GPa以上7GPa以下の範囲内であり、前記第1樹脂フィルムの引張弾性率(M1)に対する前記第2樹脂フィルムの引張弾性率(M2)の比(M2/M1)が0.7以上1.3以下の範囲内であることを特徴とするフレキシブル回路基板。
  2. 前記第2樹脂フィルムが、単層又は複数層のポリイミド層を含むポリイミド絶縁層及び接着剤層を有し、
    前記接着剤層は、前記ポリイミド絶縁層と、前記第1樹脂フィルムの導体パターン形成面との間に位置しており、
    前記接着剤層の引張弾性率が0.2GPa以上2GPa以下の範囲内である請求項1に記載のフレキシブル回路基板。
  3. 前記第1樹脂フィルムが、中心層にポリイミド層(A)を有し、前記ポリイミド層(A)の厚みが、前記第1樹脂フィルムの全厚に対して0.5以上0.96以下の範囲内である請求項1又は2記載のフレキシブル回路基板。
  4. 前記第2グラウンド層が外側になるように略90度に折り曲げられている請求項1~3のいずれか1項に記載のフレキシブル回路基板。
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