JP2023150791A - 金属張積層板の製造方法及び回路基板の製造方法 - Google Patents

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Masaki Takamura
慎悟 安藤
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Abstract

【課題】接着層として、極性が低く、低誘電特性を有する材料を用いる場合であっても、絶縁樹脂層と接着層との間の密着性を向上させ得る金属張積層板の製造方法を提供する。【解決手段】金属層M1と絶縁樹脂層R1と接着層Bとを備えた金属張積層板の製造方法であって、絶縁樹脂層R1に、接着層Bとなる接着シートBSを接触させた状態で加熱する熱処理工程を含み、熱処理工程のある時点における熱処理温度Tから接着層Bの接着温度を減算した差分を熱処理工程の総工程時間tAで積分した値が50[単位;℃・h]以上である。【選択図】図1C

Description

本発明は、電子部品材料として有用な金属張積層板の製造方法及び回路基板の製造方法に関する。
近年、電子機器の小型化、軽量化、省スペース化の進展に伴い、薄く軽量で、可撓性を有し、屈曲を繰り返しても優れた耐久性を持つフレキシブルプリント配線板(FPC;Flexible Printed Circuits)の需要が増大している。FPCは、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、例えば、HDD、DVD、スマートフォン等の電子機器の配線や、ケーブル、コネクター等の部品にその用途が拡大しつつある。
上述した高密度化に加えて、機器の高性能化が進んだことから、伝送信号の高周波化への対応も必要とされている。高周波信号を伝送する際に、伝送経路における伝送損失が大きい場合、電気信号のロスや信号の遅延時間が長くなるなどの不都合が生じる。そのため、今後はFPCにおいても、伝送損失の低減が重要となる。高周波信号伝送に対応するために、FPC材料として汎用されているポリイミドの代わりに、より低誘電率、低誘電正接の液晶ポリマーを誘電体層とするものが用いられている。しかしながら、液晶ポリマーは、誘電特性に優れているものの、耐熱性や金属層との接着性に改善の余地がある。また、伝送損失の低減には誘電体層を厚くすることも重要となる。
そこで、特許文献1、2では、誘電体層の低誘電率化、低誘電正接化、厚膜化のため、ポリイミド層と低誘電特性を有する接着層を積層した構成が提案されている。しかしながら、特許文献1、2に記載の構成では、接着層の極性が低いため、ポリイミド層と接着層との密着性に改善の余地があった。また、特許文献3では同様に誘電体層としてポリイミドと低誘電特性を有する接着フィルムを積層した構成を適用しているが、ポリイミドと誘電体層間の密着性に対しては言及されていない。特許文献4では、ポリイミドとエポキシ接着剤を積層した構成が検討されているが、表面処理が施されたポリイミドフィルムを使用しており、当該表面処理によって密着性が担保されている。
特開2018-170417号公報 特開2020-55299号公報 特許第6936639号公報 特開2021-72324号公報
本発明の目的は、接着層として、極性が低く、低誘電特性を有する材料を用いる場合であっても、表面処理等の密着性を向上させる追加工程を必要とせずに、絶縁樹脂層と接着層との間の密着性を向上させ得る金属張積層板の製造方法、及び、該製造方法によって得られる、層間密着性が高く、優れた誘電特性を有する金属張積層板を提供することである。
従来は絶縁樹脂層と接着層との積層において、接着層を構成する樹脂の硬化反応が完全に進行した時点で熱処理を完了させることが一般的である。しかし、本発明者らの検討では、熱処理工程における最高温度と接着層の硬化温度との関係について考慮し、さらに、熱処理温度と接着層の接着温度との差分の時間積分値について考慮することによって、高い層間の密着性を有する金属張積層板を得ることが可能となった。
すなわち、本発明の第1の観点の金属張積層板の製造方法は、第1の金属層と、前記第1の金属層の片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、前記第1の絶縁樹脂層に積層された接着層と、を備えた金属張積層板を製造する方法である。
本発明の第1の観点の金属張積層板の製造方法は、前記第1の絶縁樹脂層に、前記接着層となる接着シートを接触させた状態で加熱する熱処理工程を含み、
前記熱処理工程における最高温度が、前記接着層の硬化温度以上、硬化温度+50℃以下の範囲内である。
本発明の第2の観点の金属張積層板の製造方法は、第1の金属層と、前記第1の金属層の片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、前記第1の絶縁樹脂層に積層された接着層と、前記接着層に積層された第2の絶縁樹脂層と、前記第2の絶縁樹脂層に積層された第2の金属層と、を備えた金属張積層板を製造する方法である。
本発明の第2の観点の金属張積層板の製造方法は、前記第1の絶縁樹脂層に、又は、前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層の両方に、前記接着層となる接着シートを接触させた状態で加熱する熱処理工程を含み、
前記熱処理工程における最高温度が、前記接着層の硬化温度以上、硬化温度+50℃以下の範囲内である。
本発明の第3の観点の金属張積層板の製造方法は、第1の金属層と、前記第1の金属層の片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、前記第1の絶縁樹脂層に積層された接着層と、前記接着層に積層された第2の絶縁樹脂層と、前記第2の絶縁樹脂層に積層された第2の金属層と、を備えた金属張積層板を製造する方法である。
本発明の第3の観点の金属張積層板の製造方法は、前記第2の絶縁樹脂層に、前記接着層となる樹脂組成物の溶液を塗布して乾燥することによって塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、
前記塗布膜に前記第1の絶縁樹脂層を接触させた状態に積層した状態で加熱する熱処理工程を含み、
前記熱処理工程における最高温度が、前記接着層の硬化温度以上、硬化温度+50℃以下の範囲内である。
そして、本発明の第1~第3の観点の金属張積層板の製造方法は、前記熱処理工程のある時点における熱処理温度Tから前記接着層の接着温度を減算した差分[単位;℃]を前記熱処理工程の総工程時間t[単位;h]で積分した値が50[単位;℃・h]以上であること(ここで、接着温度とは、接着層の動的粘弾性測定によって得られる損失弾性率-温度曲線において、ガラス転移温度を超える温度であって、該曲線の接線の傾きが最初に-7kPa/℃となる温度を起点とする高温側の温度領域で該起点となる温度から22%上昇した温度を意味する)を特徴とする。
本発明の第1~第3の観点の金属張積層板の製造方法において、前記熱処理工程における熱処理温度は、一定、又は、段階的に複数回変化させて行われてもよく、熱処理温度と熱処理時間の関係が下記の数式(1)を満たすものであってもよい。
Figure 2023150791000002
数式(1)において、T1i[単位;℃]は、i番目の熱処理温度から前記接着層の接着温度を減算した差分であり、tiはi番目の熱処理時間[単位;h]であり、nは1以上の整数である。
本発明の第1~第3の観点の金属張積層板の製造方法において、少なくとも、前記熱処理工程をロール状に巻いた状態で行ってもよい。
本発明の第1~第3の観点の金属張積層板の製造方法は、前記金属張積層板における前記接着層と前記第1の絶縁樹脂層とのピール強度の値が0.7kN/m以上であってもよい。
本発明の第1~第3の観点の金属張積層板の製造方法において、前記接着層は、酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するポリイミドを含んでいてもよく、
前記ポリイミドは、全ジアミン残基に対して、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物から誘導されるジアミン残基を20モル%以上含有するものであってもよい。
本発明の第1~第3の観点の金属張積層板の製造方法において、前記第1の絶縁樹脂層は、酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するポリイミドを含んでいてもよく、
前記第1の絶縁樹脂層中に含まれる酸無水物残基及びジアミン残基の繰り返し単位あたりの極性基の個数が8個未満であってもよい。
本発明の回路基板の製造方法は、上記いずれかの方法によって製造された金属張積層板における前記第1の金属層又は前記第2の金属層の片方又は両方を配線に加工する工程を含んでいる。
本発明方法により、極性が低く、低誘電特性を有する材料を用いる場合であっても、表面処理等の密着性を向上させる追加工程を必要とせずに、比較的低い熱処理温度で絶縁樹脂層と接着層間の密着性を向上させることができ、硬化温度が低い材料に対しても分解等の物性変化を生じさせることが無い金属張積層板を提供することができる。本発明方法により得られる金属張積層板は、高周波信号の伝送損失の低減が可能であり、しかも、穴あけ加工や裁断加工等の回路加工時の層間剥離を抑制可能なことから、例えば、10GHz以上の高周波信号を伝送する回路基板への適用において、伝送損失の低減と信頼性の向上を図ることができる。
本発明の第1の実施の形態に係る金属張積層板の製造方法の主要工程の説明図である。 図1Aに続く工程の説明図である。 図1Bに続く工程の説明図である。 本発明の第2の実施の形態に係る金属張積層板の製造方法の主要工程の説明図である。 図2Aに続く工程の説明図である。 図2Bに続く工程の説明図である。 本発明の第3の実施の形態に係る金属張積層板の製造方法の主要工程の説明図である。 図3Aに続く工程の説明図である。 図3Bに続く工程の説明図である。 図3Cに続く工程の説明図である。
本発明の実施の形態について、適宜図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1A、図1B及び図1Cは、本発明の第1の実施の形態に係る金属張積層板の製造方法の主要工程を示す説明図である。図1Cに示すように、本実施の形態は、金属層M1と、絶縁樹脂層R1と、接着層Bと、がこの順に積層された層構成を有する金属張積層板Cを製造する方法である。
なお、金属層M1、絶縁樹脂層R1及び接着層Bの詳細な構成については後述する。
(中間積層体形成工程)
本工程では、図1Aに示すように、絶縁樹脂層R1に、接着層Bとなる接着シートBSを貼り合わせ、絶縁樹脂層R1と接着シートBSとを接触させた状態に積層した中間積層体Sを形成する。本工程では、例えば0.1~1MPaの範囲内の圧力で仮圧着をすることが好ましい。
接着シートBSを構成する樹脂は、未硬化もしくは半硬化の状態であることが好ましい。ここで、半硬化とは、接着シートBSの引張弾性率が熱処理前よりも高く、熱処理を継続しても引張弾性率の上昇が確認できなくなる前までの状態を意味する。絶縁樹脂層R1は、予め金属層M1が積層されて第1の片面金属張積層板C1を形成したものを用いることができる。
接着シートBSは、例えば、任意の支持基材に、接着層Bとなる樹脂組成物の溶液を塗布・乾燥した後、支持基材から剥がして接着シートBSとすることによって製造できる。接着層Bとなる樹脂組成物の溶液を支持基材上に塗布する方法としては、特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。
第1の片面金属張積層板C1の構成は、特に限定されず、FPC材料として一般的なものを使用可能であり、市販の銅張積層板などであってもよい。例えば、市販の銅張積層板としては、パナソニック社製のR-F705T(商品名)、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエスパネックス(商品名)などを用いることができる。第1の片面金属張積層板C1の形成方法は特に限定されず、金属層M1となる金属箔と絶縁樹脂層R1となる樹脂フィルムとを熱圧着して製造してもよいし、金属層M1となる金属箔上に、絶縁樹脂層R1となる樹脂組成物の溶液(前駆体組成物の溶液を含む)を塗布して塗布膜を形成した後、乾燥、固化もしくは硬化させて製造してもよい。
(熱処理工程)
本工程では、図1Bに示すように、中間積層体Sを加熱する。この熱処理によって、接着シートBSを構成する樹脂を硬化させて接着層Bを形成し、金属張積層板Cを製造できる。ここで、接着層Bの硬化温度CTとは、接着シートBS又は塗布膜AAを構成する樹脂が硬化(架橋形成を含む)して接着層Bとなる温度であり、具体的には、後記実施例に示すように、レオメータを用いて、昇温速度5℃/min、角周波数6.28rad/sの条件で測定したときの複素粘度が極小となる温度から25%上昇した温度と定義される。なお、熱処理工程における温度制御の詳細については後述する。
また、熱処理工程は、例えば、A)中間積層体Sをロール状に巻き取り、恒温槽に入れ、所定の時間・温度にて加熱処理する方法(方法A)、B)中間積層体Sをロール・トゥ・ロール方式によって流しながら、所定の時間・温度にて加熱処理する方法(方法B)等によって実施できる。本実施の形態では、いずれの方法であってもよいが、例えばロール状に巻き取り熱処理する場合は、接着層Bと金属層M1が接着しないよう、接着層Bの表面に離型材を貼り合わせて行うことが好ましい。
(第1の実施の形態の変形例)
第1の実施の形態の変形例として、図示は省略するが、中間積層体形成工程と熱処理工程を同時に行うことができる。すなわち、絶縁樹脂層R1に、接着層Bとなる接着シートBSを貼り合わせ、絶縁樹脂層R1と接着シートBSとを接触させた状態で所定時間かけて熱圧着する(熱圧着工程)。このように、中間積層体Sを経由せずに、積層と同時進行で熱処理を実施することによって、接着シートBSを構成する樹脂を硬化させて接着層Bを形成し、金属張積層板Cを製造することができる。この場合、熱圧着工程における熱処理条件は、上記熱処理工程と同様である。熱圧着工程における圧力は、絶縁樹脂層R1及び接着層Bの材料に応じて適宜設定できるが、例えば0.1~1MPaの範囲内が好ましく、0.1~0.5MPaの範囲内がより好ましい。
本実施の形態では、中間積層体形成工程では、ロール・トゥ・ロール方式で実施することにより、生産性を向上させることができるので好ましい。
[第2の実施の形態]
図2A、図2B及び図2Cは、本発明の第2の実施の形態に係る金属張積層板の製造方法の主要工程を示す説明図である。図2Cに示すように、本実施の形態は、金属層M1と、絶縁樹脂層R1と、接着層Bと、絶縁樹脂層R2と、金属層M2と、がこの順に積層された層構成を有する金属張積層板Cを製造する方法である。
なお、金属層M1,M2、絶縁樹脂層R1,R2、接着層Bの詳細な構成については後述する。
(中間積層体形成工程)
本工程では、少なくとも絶縁樹脂層R1に、接着層Bとなる接着シートBSを貼り合わせ、絶縁樹脂層R1と接着シートBSとを接触させた状態に積層した中間積層体Sを形成する。本工程では、図2Aに示すように、絶縁樹脂層R1及び絶縁樹脂層R2の両方に、接着層Bとなる接着シートBSを貼り合わせて中間積層体Sを形成することが好ましい。本工程では、例えば0.1~1MPaの範囲内の圧力で仮圧着をすることが好ましい。
ここで、接着シートBSについては、第1の実施の形態と同様のものを用いることができる。
絶縁樹脂層R1は、予め金属層M1が積層されて第1の片面金属張積層板C1を形成したものを用いることができる。絶縁樹脂層R2も、予め金属層M2が積層されて第2の片面金属張積層板C2を形成したものを用いることができる。第1の片面金属張積層板C1及び第2の片面金属張積層板C2としては、第1の実施の形態における第1の片面金属張積層板C1と同様のものを使用できる。なお、第1の片面金属張積層板C1と第2の片面金属張積層板C2の構成は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
(熱処理工程)
本工程では、図2Bに示すように、中間積層体Sを加熱する。この熱処理によって、接着シートBSを構成する樹脂を硬化させて接着層Bを形成し、金属張積層板Cを製造する。なお、熱処理工程における温度制御の詳細については後述する。
なお、熱処理工程は、第1の実施の形態と同様の方法A、方法B等によって行うことができる。
(第2の実施の形態の変形例)
第2の実施の形態の変形例として、図示は省略するが、中間積層体形成工程と熱処理工程を同時に行うことができる。すなわち、少なくとも絶縁樹脂層R1に(好ましくは、絶縁樹脂層R1及び絶縁樹脂層R2の両方に)、接着層Bとなる接着シートBSを貼り合わせ、絶縁樹脂層R1と接着シートBSとを接触させた状態で所定時間かけて熱圧着する(熱圧着工程)。このように、中間積層体Sを経由せずに、積層と同時進行で熱処理を実施することによって、接着シートBSを構成する樹脂を硬化させて接着層Bを形成し、金属張積層板Cを製造することができる。この場合、熱圧着工程における熱処理条件は、上記熱処理工程と同様である。熱圧着工程における圧力は、絶縁樹脂層R1,R2及び接着層Bの材料に応じて適宜設定できるが、例えば0.1~1MPaの範囲内が好ましく、0.1~0.5MPaの範囲内がより好ましい。
本実施の形態では、中間積層体形成工程では、ロール・トゥ・ロール方式で実施することにより、生産性を向上させることができるので好ましい。
[第3の実施の形態]
図3A、図3B、図3C及び図3Dは、本発明の第3の実施の形態に係る金属張積層板の製造方法の主要工程を示す説明図である。図3Dに示すように、本実施の形態は、金属層M1と、絶縁樹脂層R1と、接着層Bと、絶縁樹脂層R2と、金属層M2と、がこの順に積層された層構成を有する金属張積層板Cを製造する方法である。
なお、金属層M1、金属層M2、絶縁樹脂層R1、絶縁樹脂層R2、接着層Bの詳細な構成については後述する。
(塗布膜形成工程)
本工程では、図3Aに示すように、絶縁樹脂層R2に、樹脂組成物の溶液を塗布して乾燥することによって接着層Bとなる塗布膜AAを形成する。樹脂組成物の溶液としては、例えば接着層Bを構成する樹脂の溶液やその前駆体の溶液を用いることができる。接着層Bとなる樹脂組成物の溶液を絶縁樹脂層R2上に塗布する方法としては、特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。
絶縁樹脂層R2は、予め金属層M2が積層されて第2の片面金属張積層板C2を形成したものを用いることができる。なお、片面金属張積層板C2の形成方法は第2の実施の形態と同様である。
(中間積層体形成工程)
本工程では、図3Bに示すように、絶縁樹脂層R1を塗布膜AAに貼り合わせて、絶縁樹脂層R1と塗布膜AAを接触させた状態に積層した中間積層体Sを形成する。本工程では、例えば0.1~1MPaの範囲内の圧力で仮圧着をすることが好ましい。
塗布膜AAを構成する樹脂は、未硬化もしくは半硬化の状態であることが好ましい。ここで、半硬化とは、塗布膜AAの引張弾性率が熱処理前よりも高く、熱処理を継続しても引張弾性率の上昇が確認できなくなる前までの状態を意味する。
絶縁樹脂層R1は、予め金属層M1が積層されて第1の片面金属張積層板C1を形成したものを用いることができる。
なお、第1の片面金属張積層板C1の形成方法は第1及び第2の実施の形態と同様である。
(熱処理工程)
本工程では、図3Cに示すように、中間積層体Sを加熱する。この熱処理によって、塗布膜AAを構成する樹脂を硬化させて接着層Bとし、金属張積層板Cが製造される。なお、熱処理工程における温度制御の詳細については後述する。
なお、ロール・トゥ・ロール方式で実施する場合、熱処理工程は、第1の実施の形態と同様の方法A、方法B等によって行うことができる。
(第3の実施の形態の変形例)
第3の実施の形態の変形例として、図示は省略するが、中間積層体形成工程と熱処理工程を同時に行うことができる。すなわち、絶縁樹脂層R1に接着層Bとなる塗布膜AAを貼り合わせ、絶縁樹脂層R1と塗布膜AAとを接触させた状態で所定時間かけて熱圧着する(熱圧着工程)。このように、中間積層体Sを経由せずに、積層と同時進行で熱処理を実施することによって、塗布膜AAを構成する樹脂を硬化させて接着層Bを形成し、金属張積層板Cを製造することができる。この場合、熱圧着工程における熱処理条件は、上記熱処理工程と同様である。熱圧着工程における圧力は、絶縁樹脂層R1及び塗布膜AA(接着層B)の材料に応じて適宜設定できるが、例えば0.1~1MPaの範囲内が好ましく、0.1~0.5MPaの範囲内がより好ましい。
本実施の形態では、中間積層体形成工程では、ロール・トゥ・ロール方式で実施することにより、生産性を向上させることができるので好ましい。
[熱処理工程における最高温度]
第1~第3の実施の形態において、熱処理工程の最高温度Tmaxは、接着層Bの硬化温度以上、硬化温度+50℃以下の範囲内とする。このような範囲内での熱処理であれば、第1の絶縁樹脂層(又は第2の絶縁樹脂層)への過剰な熱処理を抑制できるので、誘電正接の悪化や熱分解を防止することができる。
[熱処理工程における温度と時間]
第1~第3の実施の形態において、熱処理工程では、ある時点tにおいて、熱処理温度Tから接着層Bの接着温度Tを減算した差分T[単位;℃]を、熱処理工程の総工程時間t[単位;時間]で積分した値Xが、50以上、好ましくは100以上となるように制御する。この条件を満たす熱処理温度・時間であれば、層間の密着性が十分に発現する。値Xが50未満である場合は、熱処理温度または、熱処理時間が短いために、分子拡散による界面形成が不十分となり、層間の密着性が低くなる。一方、値Xが大きすぎると接着層Bの分解や絶縁樹脂層R1の誘電特性を低下させることがあるため、値Xの上限は20000が好ましく、10000がより好ましい。
ここで、接着温度とは、接着層Bの動的粘弾性測定によって得られる損失弾性率-温度曲線において、ガラス転移温度を超える温度であって、該曲線の接線の傾きが最初に-7kPa/℃となる温度を起点とする高温側の温度領域で該起点となる温度から22%上昇した温度を意味する。本願発明者らは、接着層Bのガラス転移温度を超える温度で、損失弾性率の減少率が最も低くなる温度、すなわち損失弾性率-温度曲線の接線の傾きが最初に-7kPa/℃となる温度に着目し、接着強度と値Xとの相関関係の知見をもとに、最初に-7kPa/℃となる温度を起点とする高温側の温度領域で該起点となる温度から22%上昇した温度を接着温度と定義した。
なお、「熱処理温度」とは、熱処理時の雰囲気温度を意味する。
また、熱処理工程における熱処理温度の制御が簡易な例として、イ)熱処理温度を一定で行う場合、又は、ロ)熱処理温度を段階的に複数回変化させて行う場合には、熱処理温度と熱処理時間の関係が下記数式(1)を満たすことが好ましい。
Figure 2023150791000003
数式(1)において、T1i[単位;℃]は、i番目の熱処理温度から接着層Bの接着温度Tを減算した差分であり、tiはi番目の熱処理時間[単位;h]であり、nは1以上の整数である。
熱処理工程において、イ)熱処理温度を一定で行う場合、又は、ロ)熱処理温度を段階的に複数回変化させて行う場合、数式(1)を満たす熱処理温度・時間であれば、層間の密着性が十分に発現する。数式(1)における左辺、すなわち、
a)i番目の熱処理温度と接着層Bの接着温度Tとの差分T1iと、
b)i番目の熱処理時間tと、
の積を、回数分合算した合計値X1は50以上であり、100以上であることが好ましい。合計値X1が50未満である場合は、熱処理温度または熱処理時間が短いために、分子拡散による界面形成が不十分となり、層間の密着性が低くなる。
なお、合計値X1の上限は、値Xと同様である。
上記関係を満たす熱処理工程では、接着層Bを構成する樹脂が、熱によって架橋を形成する熱可塑性樹脂である場合、又は熱硬化性樹脂である場合のいずれかであっても、架橋形成又は熱硬化を促進させることができる。
熱処理温度を接着層Bの接着温度T以上とし、熱処理時間が接着層Bの硬化に要する時間よりも長時間とすることで、絶縁樹脂層R1(好ましくは絶縁樹脂層R1,R2の両方)への接着層Bからの分子拡散が促進され、層境界を超えて分子鎖の絡み合いが生じるため、絶縁樹脂層R1(好ましくは絶縁樹脂層R1,R2の両方)と接着層Bとの層間の密着性向上に寄与する。すなわち、接着層Bの動的粘弾性測定によって得られる損失弾性率-温度曲線において、ガラス転移温度を超える温度であって、該曲線の接線の傾きが最初に-7kPa/℃となる温度を起点とする高温側の温度領域で該起点となる温度から22%上昇した温度を超えると、接着層Bを構成する樹脂の分子鎖運動がより活発になり、絶縁樹脂層R1を構成する樹脂の分子鎖との絡み合いが生じやすくなると考えられる。
熱処理工程における最高処理温度は、熱処理のみを行う場合、又は、熱圧着する場合のいずれにおいても、絶縁樹脂層R1と接着層Bの材質に応じて適宜決定できるが、例えば、接着層Bの耐熱性を鑑み、接着層Bの接着温度より高い温度で、好ましくは+50℃以下、より好ましくは+30℃以下で熱処理をすることが好ましい。
[金属張積層板の構成]
以上のようにして製造される金属張積層板C,Cの構成について説明する。
(金属層)
金属層M1及び金属層M2の材質としては、特に制限はないが、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。なお、後述する本実施の形態の回路基板における配線層の材質も金属層M1及び金属層M2と同様である。
金属層M1及び金属層M2の厚みは特に限定されるものではないが、例えば銅箔等の金属箔を用いる場合、好ましくは35μm以下であり、より好ましくは5~25μmの範囲内がよい。生産安定性及びハンドリング性の観点から金属箔の厚みの下限値は5μmとすることが好ましい。なお、銅箔を用いる場合は、圧延銅箔でも電解銅箔でもよい。また、銅箔としては、市販されている銅箔を用いることができる。
また、金属箔は、例えば、防錆処理や、接着力の向上を目的として、例えばサイディング、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤等による表面処理を施してもよい。
(絶縁樹脂層)
絶縁樹脂層R1及び絶縁樹脂層R2としては、電気的絶縁性を有する樹脂により構成されるものであれば特に限定はなく、例えばポリイミド、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、ETFEなどを挙げることができるが、ポリイミドによって構成されることが好ましい。なお、本発明でポリイミドという場合、ポリイミドの他、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリシロキサンイミド、ポリベンズイミダゾールイミドなど、分子構造中にイミド基を有するポリマーからなる樹脂を意味する。
また、絶縁樹脂層R1及び絶縁樹脂層R2は、単層に限らず、複数の樹脂層が積層されたものであってもよく、また、非熱可塑性ポリイミドによる非熱可塑性ポリイミド層を含むことが好ましい。なお、「非熱可塑性ポリイミド」とは、一般に加熱しても軟化、接着性を示さないポリイミドのことであるが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×10Pa以上であるポリイミドをいう。
絶縁樹脂層R1及び絶縁樹脂層R2は、例えば、市販のポリイミドフィルム、市販の液晶ポリマーフィルム又は市販の金属張積層板に絶縁性基材として用いられる樹脂の中から選択して用いることができる。ポリイミドフィルムとしては、宇部興産社製のユーピレックス(商品名)、東レ・デュポン社製のカプトン(商品名)、カネカ社製のアピカル(商品名)、同ピクシオ(商品名)、液晶ポリマーフィルムとしてはクラレ社製のベクスター(商品名)、プライマテック社製のBIAC Film(商品名)などを用いることができる。
絶縁樹脂層R1及び絶縁樹脂層R2の熱膨張係数(CTE)は、特に限定されるものではないが、10ppm/K以上がよく、好ましくは10ppm/K以上30ppm/K以下の範囲内、より好ましくは15ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内である。CTEが10ppm/K未満であるか、又は30ppm/Kを超えると、反りが発生したり、寸法安定性が低下したりする。使用する原料の組合せ、厚み、乾燥・硬化条件を適宜変更することで所望のCTEに制御できる。
絶縁樹脂層R1及び絶縁樹脂層R2は、例えば回路基板に適用する場合において、誘電損失の悪化を抑制するために、10GHzにおける誘電正接(Tanδ)は、好ましくは0.02以下、より好ましくは0.0005以上0.01以下の範囲内、更に好ましくは0.001以上0.008以下の範囲内がよい。10GHzにおける誘電正接が0.02を超えると、回路基板に適用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。一方、10GHzにおける誘電正接の下限値は特に制限されないが、回路基板の絶縁樹脂層としての物性制御を考慮している。
絶縁樹脂層R1及び絶縁樹脂層R2は、例えば回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合において、インピーダンス整合性を確保するために、10GHzにおける比誘電率(ε)が4.0以下であることが好ましい。10GHzにおける比誘電率が4.0を超えると、回路基板に適用した際に、絶縁樹脂層の誘電損失の悪化に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
<好ましい絶縁樹脂層の構成>
絶縁樹脂層R1及び絶縁樹脂層R2としては、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性の観点からポリイミドが好適である。また、金属層との接着性の観点から金属層と非熱可塑ポリイミドフィルムの間に熱可塑性ポリイミド備えた構成が好ましい。「熱可塑性ポリイミド」とは、一般にガラス転移温度(Tg)が明確に確認できるポリイミドのことであるが、本発明では、DMAを用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×10Pa未満であるポリイミドをいう。また、非熱可塑性ポリイミドと接着層Bの間には熱可塑性ポリイミドは有っても無くても良い。
非熱可塑性ポリイミド層:
非熱可塑性ポリイミド層を構成する非熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含むものである。なお、本発明において、テトラカルボン酸残基とは、テトラカルボン酸二無水物から誘導された4価の基のことを表し、ジアミン残基とは、ジアミン化合物から誘導された2価の基のことを表す。ポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導される芳香族テトラカルボン酸残基及び芳香族ジアミンから誘導される芳香族ジアミン残基を含むことが好ましい。
(テトラカルボン酸残基)
非熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基として、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及びピロメリット酸二無水物(PMDA)から誘導されるテトラカルボン酸残基を含有することが好ましい。BPDAから誘導されるテトラカルボン酸残基はポリマーの秩序構造を形成しやすく、分子の運動抑制により誘電正接や吸湿性を低下させることができる。また、PMDAから誘導されるテトラカルボン酸残基は平面性が高く、剛直であるため、ポリイミドのCTEを低下させ、ガラス転移点(Tg)を向上させることができる。
(ジアミン残基)
非熱可塑性ポリイミドに含まれるジアミン残基としては、一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が好ましい。
Figure 2023150791000004
一般式(1)において、連結基Zは単結合又は-COO-を示し、Yは独立に、ハロゲン原子若しくはフェニル基で置換されてもよい炭素数1~3の1価の炭化水素、又は炭素数1~3のアルコキシ基、又は炭素数1~3のパーフルオロアルキル基、又はアルケニル基を示し、nは0~2の整数を示し、p及びqは独立に0~4の整数を示す。ここで、「独立に」とは、上記一般式(1)において、複数の置換基Y、さらに整数p、qが、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。なお、上記一般式(1)において、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば-NR(ここで、R,Rは、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
一般式(1)で表されるジアミン化合物(以下、「ジアミン(1)」と記すことがある)は、1ないし3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。ジアミン(1)は、剛直構造を有しているため、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有している。そのため、ガス透過性が低く、低吸湿性のポリイミドが得られ、分子鎖内部の水分を低減できるため、誘電正接を下げることができる。ここで、連結基Zとしては、単結合が好ましい。
ジアミン(1)としては、例えば、1,4-ジアミノベンゼン(p-PDA;パラフェニレンジアミン)、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)、2,2’-n-プロピル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-NPB)、4-アミノフェニル-4’-アミノベンゾエート(APAB)等を挙げることができる。
熱可塑性ポリイミド層:
熱可塑性ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含むものであり、芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導される芳香族テトラカルボン酸残基及び芳香族ジアミンから誘導される芳香族ジアミン残基を含むことが好ましい。
(テトラカルボン酸残基)
熱可塑性ポリイミドに用いるテトラカルボン酸残基としては、上記非熱可塑性ポリイミドにおけるテトラカルボン酸残基として例示したものと同様のものを用いることができる。
(ジアミン残基)
熱可塑性ポリイミドに含まれるジアミン残基としては、一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基が好ましい。
Figure 2023150791000005
式(B1)~(B7)において、Rは独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基Aは独立に-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO-、-COO-、-CH-、-C(CH-、-NH-若しくは-CONH-から選ばれる2価の基を示し、nは独立に0~4の整数を示す。ただし、式(B3)中から式(B2)と重複するものは除き、式(B5)中から式(B4)と重複するものは除くものとする。ここで、「独立に」とは、上記式(B1)~(B7)の内の一つにおいて、または二つ以上において、複数の連結基A、複数のR若しくは複数のnが、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。なお、上記式(B1)~(B7)において、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば-NR(ここで、R,Rは、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
式(B1)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B1)」と記すことがある)は、2つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B1)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B1)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-、-CH-、-C(CH-、-CO-、-SO-、-S-が好ましい。
ジアミン(B1)としては、例えば、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、(3,3’-ビスアミノ)ジフェニルアミン等を挙げることができる。
式(B2)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B2)」と記すことがある)は、3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B2)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B2)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
ジアミン(B2)としては、例えば1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、3-[3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン等を挙げることができる。
式(B3)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B3)」と記すことがある)は、3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B3)は、1つのベンゼン環に直結した、2つの2価の連結基Aが互いにメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B3)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
ジアミン(B3)としては、例えば1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4'-[2-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[4-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[5-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン等を挙げることができる。
式(B4)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B4)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B4)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B4)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-、-CH-、-C(CH-、-SO-、-CO-、-CONH-が好ましい。
ジアミン(B4)としては、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド等を挙げることができる。
式(B5)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B5)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B5)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結した、2つの2価の連結基Aが互いにメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B5)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
ジアミン(B5)としては、4-[3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]フェノキシ]アニリン、4,4’-[オキシビス(3,1-フェニレンオキシ)]ビスアニリン等を挙げることができる。
式(B6)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B6)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B6)は、少なくとも2つのエーテル結合を有することで高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B6)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-C(CH-、-O-、-SO-、-CO-が好ましい。
ジアミン(B6)としては、例えば、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)等を挙げることができる。
式(B7)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B7)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B7)は、ジフェニル骨格の両側に、それぞれ屈曲性の高い2価の連結基Aを有するため、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B7)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
ジアミン(B7)としては、例えば、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル等を挙げることができる。
熱可塑性ポリイミドは、全ジアミン残基に対して、ジアミン(B1)~ジアミン(B7)から選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を60モル%以上、好ましくは60モル%以上99モル%以下の範囲内、より好ましくは70モル%以上95モル%以下の範囲内で含有することがよい。ジアミン(B1)~ジアミン(B7)は、屈曲性を有する分子構造を持つため、これらから選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物を上記範囲内の量で使用することによって、ポリイミド分子鎖の柔軟性を向上させ、熱可塑性を付与することができる。原料中のジアミン(B1)~ジアミン(B7)の合計量が全ジアミン成分に対して60モル%未満であるとポリイミドの柔軟性不足で十分な熱可塑性が得られない。
また、熱可塑性ポリイミドに含まれるジアミン残基としては、一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基も好ましい。一般式(1)で表されるジアミン化合物[ジアミン(1)]については、非熱可塑性ポリイミドの説明で述べたとおりである。ジアミン(1)は、剛直構造を有し、ポリマー全体に秩序構造を付与する作用を有しているため、分子の運動抑制により誘電正接や吸湿性を低下させることができる。更に、熱可塑性ポリイミドの原料として使用することで、ガス透過性が低く、長期耐熱接着性に優れたポリイミドが得られる。
熱可塑性ポリイミドは、ジアミン(1)から誘導されるジアミン残基を、全ジアミン残基に対して、好ましくは1モル%以上40モル%以下の範囲内、より好ましくは5モル%以上30モル%以下の範囲内で含有してもよい。ジアミン(1)を上記範囲内の量で使用することによって、モノマー由来の剛直構造により、ポリマー全体に秩序構造が形成されるので、熱可塑性でありながら、ガス透過性及び吸湿性が低く、長期耐熱接着性に優れたポリイミドが得られる。
熱可塑性ポリイミド層を構成する熱可塑性ポリイミドは、発明の効果を損なわない範囲で、ジアミン(1)、(B1)~(B7)以外のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を含むことができる。
熱可塑性ポリイミドにおいて、上記テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の種類や、2種以上のテトラカルボン酸残基又はジアミン残基を適用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張係数、引張弾性率、ガラス転移温度等を制御することができる。また、熱可塑性ポリイミドにおいて、ポリイミドの構成単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、ランダムに存在することが好ましい。
<接着層Bに接する絶縁樹脂層の極性基の個数>
絶縁樹脂層R1及び絶縁樹脂層R2としてはポリイミドが好適であるが、誘電損失を低減するためには、ポリイミド分子鎖中の極性基がなるべく少ない方が好ましい。本発明は、このような極性基が少ない誘電特性に優れたポリイミドとの密着性を向上させるのに有効である。具体的には、接着層Bに接する絶縁樹脂層R1及び絶縁樹脂層R2としては、ポリイミドの酸無水物残基及びジアミン残基の繰り返し単位あたりの極性基の個数が8個未満であるポリイミドに対して好適に作用する。ここで、「酸無水物残基及びジアミン残基の繰り返し単位当たり」とは、ポリイミド鎖中でイミド結合によって連結されている酸無水物残基及びジアミン残基を1単位とする意味であり、酸無水物残基の種類とジアミン残基の種類の組み合わせは問わない。また、極性基個数の計算方法としては、下記数式(2)によって算出される。
極性基個数=(ジアミン残基中の極性基個数)×(ジアミン残基のモル比率)+(酸無水物残基中の極性基個数)×(酸無水物残基のモル比率)+(イミド基個数)×3 ・・・(2)
[ここで、ジアミン残基のモル比率の合計+酸無水物残基のモル比率の合計は2とし、極性基個数は-X(ここで、Xはハロゲン原子)、-OH、-SH、-O-、-S-、-SO-、-NH-、-CO-、-CN、-P=O、-PO-はそれぞれを1個、-SO-、-CONH-はそれぞれを2個、-SOH、-(CO)N-(イミド基)はそれぞれを3個、として計算する。]
<接着層>
接着層Bは、熱によって硬化する性質を有する熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂によって構成される。ここで、熱可塑性樹脂である場合は、例えば熱によって架橋を形成する場合も硬化に含むものとする。好ましい熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、例えばポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、スチレン-マレイミド共重合体、マレイミド-ビニル化合物共重合体、又は(メタ)アクリル共重合体、ベンゾオキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂及びシアネートエステル樹脂等の樹脂が挙げられる。
接着層Bが熱硬化性樹脂である場合、有機過酸化物、硬化剤、硬化促進剤等を含有してもよく、必要に応じて、硬化剤と硬化促進剤、又は触媒と助触媒を併用してもよい。
接着層Bを構成する樹脂の一例として、脂肪族ジアミンを原料として使用する脂肪族系ポリイミドを挙げることができる。脂肪族系ポリイミドは、酸二無水物成分と、脂肪族ジアミンを含むジアミン成分と、を反応させて得られる熱可塑性ポリイミドである。
脂肪族系ポリイミドの原料となる酸二無水物成分としては、熱可塑性ポリイミドの合成に一般的に用いられるモノマーを使用できるが、例えば、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物(BPADA)、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TAHQ)、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート(TMEG)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,3',3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などの芳香族酸二無水物が好ましく、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)がより好ましい。脂肪族系ポリイミドは、全酸二無水物残基に対して、上記芳香族酸二無水物の一種以上から誘導される酸二無水物残基を合計で40~100モル%の範囲内で含有することが好ましく、60~100モル%の範囲内で含有することがより好ましい。
脂肪族系ポリイミドの原料となるジアミン成分としては、熱可塑性ポリイミドの合成に一般的に用いられるモノマーを使用できるが、誘電正接を下げ、誘電特性を改善する観点からダイマージアミン組成物を用いることが好ましい。
すなわち、脂肪族系ポリイミドは、全ジアミン残基に対して、ダイマージアミン組成物から誘導されるジアミン残基を好ましくは20モル%以上、より好ましくは50モル%以上、最も好ましくは70~100モル%の範囲内で含有することがよい。ダイマージアミン組成物から誘導されるジアミン残基を上記の量で含有することによって、接着層Bのガラス転移温度Tgの低温化(低Tg化)による熱圧着特性の改善、さらに低弾性率化による内部応力の緩和を図るとともに接着層Bの誘電特性を改善することができる。全ジアミン残基に対して、ダイマージアミン組成物から誘導されるジアミン残基の含有量が20モル%未満であると、高周波伝送時の伝送損失が大きくなったり、絶縁樹脂層R1との間で十分な接着性が得られなくなったりすることがある。
ダイマージアミン組成物は、下記の(a)成分を主成分として含有し、(b)成分及び(c)成分を含有していてもよい混合物であり、(b)成分及び(c)成分の量が制御されている精製物である。
(a)ダイマージアミン
(b)炭素数10~40の範囲内にある一塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるモノアミン化合物
(c)炭素数41~80の範囲内にある炭化水素基を有する多塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるアミン化合物(但し、前記ダイマージアミンを除く)
(a)成分のダイマージアミンとは、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基(-COOH)が、1級のアミノメチル基(-CH-NH)又はアミノ基(-NH)に置換されてなるジアミンを意味する。ダイマー酸は、不飽和脂肪酸の分子間重合反応によって得られる既知の二塩基酸であり、その工業的製造プロセスは業界でほぼ標準化されており、炭素数が11~22の不飽和脂肪酸を粘土触媒等にて二量化して得られる。工業的に得られるダイマー酸は、オレイン酸やリノール酸、リノレン酸などの炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られる炭素数36の二塩基酸が主成分であるが、精製の度合いに応じ、任意量のモノマー酸(炭素数18)、トリマー酸(炭素数54)、炭素数20~54の他の重合脂肪酸を含有する。また、ダイマー化反応後には二重結合が残存するが、本発明では、更に水素添加反応して不飽和度を低下させたものもダイマー酸に含めるものとする。(a)成分のダイマージアミンは、炭素数18~54の範囲内、好ましくは22~44の範囲内にある二塩基酸化合物の末端カルボン酸基を1級アミノメチル基又はアミノ基に置換して得られるジアミン化合物、と定義することができる。
ダイマージアミンの特徴として、ダイマー酸の骨格に由来する特性を付与することができる。すなわち、ダイマージアミンは、分子量約560~620の巨大分子の脂肪族であるので、分子のモル体積を大きくし、ポリイミドの極性基を相対的に減らすことができる。このようなダイマージアミンの特徴は、ポリイミドの耐熱性の低下を抑制しつつ、比誘電率と誘電正接を小さくして誘電特性を向上させることに寄与すると考えられる。また、2つの自由に動く炭素数7~9の疎水鎖と、炭素数18に近い長さを持つ2つの鎖状の脂肪族アミノ基とを有するので、ポリイミドに柔軟性を与えるのみならず、ポリイミドを非対称的な化学構造や非平面的な化学構造とすることができるので、ポリイミドの低誘電率化を図ることができると考えられる。
ダイマージアミン組成物は、分子蒸留等の精製方法によって(a)成分のダイマージアミン含有量を96重量%以上、好ましくは97重量%以上、より好ましくは98重量%以上にまで高めたものを使用することがよい。(a)成分のダイマージアミン含有量を96重量%以上とすることで、ポリイミドの分子量分布の拡がりを抑制することができる。なお、技術的に可能であれば、ダイマージアミン組成物のすべて(100重量%)が、(a)成分のダイマージアミンによって構成されていることが最もよい。
また、ダイマージアミン組成物は、GPC測定によって得られるクロマトグラムの面積パーセントで、(b)成分及び(c)成分の合計が4%以下、好ましくは4%未満がよい。また、(b)成分のクロマトグラムの面積パーセントは、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下がよく、(c)成分のクロマトグラムの面積パーセントは、好ましくは2%以下、より好ましくは1.8%以下、更に好ましくは1.5%以下がよい。このような範囲にすることで、ポリイミドの分子量の急激な増加を抑制することができ、更に樹脂フィルムの広域の周波数での誘電正接の上昇を抑えることができる。なお、(b)成分及び(c)成分は、ダイマージアミン組成物中に含まれていなくてもよい。
ダイマージアミン組成物は、市販品を利用可能であり、例えばクローダジャパン社製のPRIAMINE1073(商品名)、同PRIAMINE1074(商品名)、同PRIAMINE1075(商品名)等が挙げられる。これらの市販品を用いる場合は、ダイマージアミン以外の成分を低減する目的で精製することが好ましく、例えばダイマージアミンを96重量%以上とすることが好ましい。精製方法としては、特に制限されないが、蒸留法や沈殿精製等の公知の方法が好適である。
脂肪族系ポリイミドは、発明の効果を損なわない範囲で、上記ダイマージアミン組成物以外のジアミン化合物を原料として用いることができる。脂肪族系ポリイミドに使用できる好ましいジアミン化合物としては、上記一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物を例示できる。一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物の中でも、例えば1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,4-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Q)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)等を用いることが好ましい。
脂肪族系ポリイミドは、接着層Bの柔軟性を高め、低弾性率化による熱圧着後の残留応力を緩和するため、全ジアミン残基に対して、一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基の含有割合が5~50モル%の範囲内であることが好ましく、10~30モル%の範囲内であることがより好ましい。
脂肪族系ポリイミドにおいて、酸二無水物成分及びジアミン成分の種類や、2種以上の酸二無水物又はジアミンを使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張係数、ガラス転移温度、誘電特性等を制御することができる。
脂肪族系ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000~400,000の範囲内が好ましく、20,000~350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、接着層Bの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際に接着層Bの厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
脂肪族系ポリイミドは、完全にイミド化された構造が最も好ましい。但し、ポリイミドの一部がアミド酸となっていてもよい。そのイミド化率は、フーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光製FT/IR620)を用い、1回反射ATR法にてポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1015cm-1付近のベンゼン環吸収体を基準とし、1780cm-1のイミド基に由来するC=O伸縮の吸光度から算出することができる。
脂肪族系ポリイミドは、ガラス転移温度(Tg)が250℃以下であることが好ましく、40℃以上200℃以下の範囲内であることがより好ましい。脂肪族系ポリイミドのTgが250℃以下であることによって、低温での熱圧着が可能になるため、積層時に発生する内部応力を緩和し、回路加工後の寸法変化を抑制できる。
脂肪族系ポリイミドがケトン基を有する場合に、該ケトン基と、少なくとも2つの第1級のアミノ基を官能基として有するアミノ化合物のアミノ基を反応させて加熱縮合によりC=N結合による架橋構造を形成させることによって硬化させることができる。架橋構造の形成によって、脂肪族系ポリイミドの耐熱性を向上させることができる。ケトン基を有する脂肪族系ポリイミドを形成するために好ましいテトラカルボン酸無水物としては、例えば3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)を、ジアミン化合物としては、例えば、4,4’―ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゾフェノン(BABP)、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン(BABB)等の芳香族ジアミンを挙げることができる。
脂肪族系ポリイミドの架橋形成に使用可能なアミノ化合物としては、ジヒドラジド化合物、芳香族ジアミン、脂肪族アミン等を例示することができる。これらの中でも、ジヒドラジド化合物が好ましい。ジヒドラジド化合物以外の脂肪族アミンは、室温でも架橋構造を形成しやすく、ワニスの保存安定性の懸念があり、一方、芳香族ジアミンは、架橋構造の形成のために高温にする必要がある。ジヒドラジド化合物を使用した場合は、ワニスの保存安定性と硬化時間の短縮化を両立させることができる。ジヒドラジド化合物としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6-ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4-ビスベンゼンジヒドラジド、1,4-ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6-ピリジン二酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物が好ましい。以上のジヒドラジド化合物は、単独でもよいし、2種類以上混合して用いることもできる。
脂肪族系ポリイミドを架橋形成させる場合は、ケトン基を有する脂肪族系ポリイミドを含む樹脂溶液に、上記アミノ化合物を加えて、脂肪族系ポリイミド中のケトン基とアミノ化合物の第1級アミノ基とを縮合反応させる。この縮合反応により、樹脂溶液は硬化して硬化物となる。この場合、アミノ化合物の添加量は、ケトン基1モルに対し、第1級アミノ基が合計で0.004モル~1.5モル、好ましくは0.005モル~1.2モル、より好ましくは0.03モル~0.9モル、最も好ましくは0.04モル~0.5モルとなるようにアミノ化合物を添加することができる。ケトン基1モルに対して第1級アミノ基が合計で0.004モル未満となるようなアミノ化合物の添加量では、アミノ化合物による脂肪族系ポリイミドの架橋が十分ではないため、硬化させた後の接着層Bにおいて耐熱性が発現しにくい傾向となり、ケトン基1モルに対して第1級アミノ基が合計で1.5モルを超えるようなアミノ化合物の添加量では、未反応のアミノ化合物が熱可塑剤として作用し、接着層Bの耐熱性を低下させる傾向がある。
架橋形成のための縮合反応の条件は、脂肪族系ポリイミドにおけるケトン基とアミノ化合物の第1級アミノ基が反応してイミン結合(C=N結合)を形成する条件であれば、特に制限されない。加熱縮合の温度は、縮合によって生成する水を系外へ放出させるため、又は脂肪族系ポリイミドの合成後に引き続いて加熱縮合反応を行なう場合に当該縮合工程を簡略化するため等の理由で、例えば120~220℃の範囲内が好ましく、140~200℃の範囲内がより好ましい。反応温度と反応時間は、熱処理工程で上記の値X又は合計値X1が8000以上となるように設定すればよい。反応の終点は、例えばフーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光製FT/IR620)を用い、赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1670cm-1付近のポリイミド樹脂におけるケトン基に由来する吸収ピークの減少又は消失、及び1635cm-1付近のイミン基に由来する吸収ピークの出現により確認することができる。
脂肪族系ポリイミドのケトン基とアミノ化合物の第1級のアミノ基との加熱縮合は、例えば、アミノ化合物を添加した脂肪族系ポリイミドの組成物を所定の形状に加工した後(例えば任意の基材に塗布した後やフィルム状に形成した後)に加熱する方法、等によって行うことができる。
脂肪族系ポリイミドの耐熱性付与のため、架橋構造の形成でイミン結合の形成を説明したが、これに限定されるものではなく、脂肪族系ポリイミドの硬化方法として、例えばエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤等を配合し硬化することも可能である。
以上の脂肪族系ポリイミドを用いることによって、接着層Bは、優れた柔軟性と誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)を有するものとなる。
(接着層のCTE)
接着層Bを構成する熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂は、高熱膨張性であるが低弾性であり、ガラス転移温度が低いため、CTEが30ppm/Kを超えても、積層時に発生する内部応力を緩和することができる。従って、接着層BのCTEは、好ましくは35ppm/K以上、より好ましくは35ppm/K以上200ppm/K以下の範囲内、更に好ましくは35ppm/K以上150ppm/K以下の範囲内である。使用する原料の組合せ、厚み、乾燥・硬化条件を適宜変更することで所望のCTEを有する接着層Bとすることができる。
(接着層の誘電正接)
接着層Bは、例えば回路基板に適用する場合において、誘電損失の悪化を抑制するために、10GHzにおける誘電正接(Tanδ)が、好ましくは0.004以下、より好ましくは0.003以下、更に好ましくは0.002以下がよい。接着層Bの10GHzにおける誘電正接が0.004を超えると、回路基板に適用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。一方、接着層Bの10GHzにおける誘電正接の下限値は特に制限されない。
(接着層の比誘電率)
接着層Bは、例えば回路基板に適用する場合において、インピーダンス整合性を確保するために、10GHzにおける比誘電率(ε)が4.0以下であることが好ましい。接着層Bの10GHzにおける比誘電率が4.0を超えると、回路基板に適用した際に、接着層Bの誘電損失の悪化に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
(フィラー)
接着層Bは、必要に応じて、フィラーを含有してもよい。フィラーとしては、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、有機ホスフィン酸の金属塩等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
<層厚>
金属張積層板C,Cにおいて、接着層Bの厚みTT1は、例えば50~450μmの範囲内にあることが好ましく、50~250μmの範囲内がより好ましい。接着層Bの厚みTT1が上記下限値に満たないと、高周波基板として伝送損失が大きくなることがある。一方、接着層Bの厚みが上記上限値を超えると、寸法安定性が低下するなどの不具合が生じることがある。
金属張積層板C,Cにおいて、絶縁樹脂層R1及び絶縁樹脂層R2の厚みTT2は、それぞれ、例えば、12~100μmの範囲内にあることが好ましく、12~50μmの範囲内がより好ましい。絶縁樹脂層R1及び絶縁樹脂層R2の厚みTT2が上記の下限値に満たないと、金属張積層板C,Cの反りなどの問題が生じることがある。絶縁樹脂層R1及び絶縁樹脂層R2の厚みTT2が上記の上限値を超えると、生産性が低下するなどの不具合が生じる。なお、絶縁樹脂層R1と絶縁樹脂層R2は、必ずしも同じ厚みでなくてもよい。
金属張積層板Cにおいて、絶縁樹脂層R1と接着層Bと絶縁樹脂層R2の合計厚みTT3は、例えば70~500μmの範囲内であることが好ましく、100~300μmの範囲内であることがより好ましい。合計厚みTT3が70μm未満では、回路基板とした際の伝送損失を低下させる効果が不十分となり、500μmを超えると、生産性低下の恐れがある。
また、合計厚みTT3に対する接着層Bの厚みTT1の比率(TT1/TT3)は、例えば0.5~0.8の範囲内であることが好ましく、0.5~0.7の範囲内であることがより好ましい。比率(TT1/TT3)が0.5未満では、TT3を70μm以上とすることが困難となり、0.8を超えると寸法安定性が低下するなどの不具合が生じる。
<絶縁樹脂層と接着層間の密着性>
金属張積層板C,Cにおいて、少なくとも、絶縁樹脂層R1と接着層Bとの層間の密着性、すなわち、ピール強度は0.7kN/m以上であることが好ましく、1.0kN/m以上であることがより好ましい。ピール強度は、後記実施例に示す方法、条件で測定できる。この場合のピール強度が0.7kN/m未満であると、穴あけ加工や裁断加工等の回路加工時の層間剥離を生じやすくなり、回路基板の加工歩留まりと信頼性の悪化に繋がる。ここで、絶縁樹脂層R1と接着層Bとの層間の密着性を重視するのは、これらの境界が貼り合わせによる界面であるため、樹脂組成物の溶液塗布によって形成されたキャスト側の界面(例えば、第3の実施の形態における絶縁樹脂層R1と接着層Bとの界面)に比べて、ピール強度が発現し難いためである。なお、第3の実施の形態において、絶縁樹脂層R1と接着層Bとの層間だけでなく、絶縁樹脂層R2と接着層Bの層間のピール強度も0.7kN/m以上であることが好ましく、1.0kN/m以上であることがより好ましい。また、第2の実施の形態のように、絶縁樹脂層R1と接着層Bとの層間、及び、絶縁樹脂層R2と接着層Bとの層間の両方が貼り合わせによる界面である場合にも、それぞれの層間のピール強度が0.7kN/m以上であることが好ましく、1.0kN/m以上であることがより好ましい。
[回路基板]
以上のようにして得られる本実施の形態の金属張積層板C,Cは、金属層M1及び/又は金属層M2をエッチングするなどして配線回路加工することによって、片面FPC又は両面FPCなどの回路基板を製造することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
[粘度測定]
樹脂の粘度はE型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV-II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%~90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
[ガラス転移温度(Tg)及び接着温度の測定]
ガラス転移温度は、硬化が完了した5mm×20mmのサイズのフィルムを、動的粘弾性測定装置(DMA:ユー・ビー・エム社製、商品名;E4000F)を用いて、昇温速度4℃/分で30℃から400℃まで段階的に加熱し、周波数11Hzで測定を行い、測定中のTanδの値が最大となる温度をTgとして定義した。また、接着温度は、損失弾性率-温度曲線において、ガラス転移温度を超える温度であって、該曲線の接線の傾きが最初に-7kPa/℃となる温度を起点とする高温側の温度領域で該起点となる温度から22%上昇した温度とした。
[ピール強度の測定]
接着層を積層した金属張積層板を0.5mm幅に切り、両面テープによりアルミ板に固定して、テンシロンテスター(東洋精機製作所製、商品名;ストログラフVE-1D)を用いて、接着層と絶縁樹脂層間を剥離し、ピール強度を測定した。片面金属張積層板を180°方向に50mm/分の速度で引っ張り、10mm剥離した時の中央値強度を求めた。
[接着層の硬化温度の測定]
接着層の硬化温度はレオメータ(アントンパール社製、商品名;MCR302)を用いて、昇温速度5℃/min、角周波数6.28rad/sの条件で測定した。複素粘度が極小となる温度から25%上昇した温度を接着層の硬化温度と定義した。
[引張弾性率の測定]
接着層の引張弾性率は東洋精機製作所製のストログラフR-1を用いて、温度23℃、相対湿度50%の環境下で下記の条件の下測定した。
試験片サイズ:長さ;160mm×幅;12.7mm
つかみ具間距離:101.6mm
引張速度:50mm/min
[重量平均分子量(Mw)の測定]
重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー株式会社製、商品名;HLC-8220GPC)により測定した。標準物質としてポリスチレンを用い、展開溶媒にはTHFを用いた。
実施例及び比較例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
BPDA:3,3',4,4'‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
m‐TB:2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニル
TPE-R:1,3-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
ビスアニリン-M:1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
BTDA:3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
DDA:炭素数36の脂肪族ジアミン(クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1074、アミン価;205mgKOH/g、環状構造及び鎖状構造のダイマージアミンの混合物、ダイマー成分の含有量;95重量%以上)
N-12:ドデカン二酸ジヒドラジド
OP935:有機ホスフィン酸アルミニウム塩(クラリアントジャパン社製、商品名;Exolit OP935)
(合成例1)
<接着層用の樹脂溶液の調製>
窒素導入管、攪拌機、熱電対、ディーンスタークトラップ、冷却管を付した500mLの4ッ口フラスコに、44.92gのBTDA(0.139モル)、75.08gのDDA(0.141モル)、168gのNMP及び112gのキシレンを装入し、40℃で30分間混合して、ポリアミド酸溶液を調製した。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、4時間加熱、攪拌し、留出する水及びキシレンを系外に除去した。その後、100℃まで冷却し、112gのキシレンを加え撹拌し、更に30℃まで冷却することでイミド化を完結したポリイミド溶液1(固形分;29.5重量%、重量平均分子量;75,700)を調製した。
ポリイミド溶液1の169.49g(固形分として50g)に1.8gのN-12(0.0036モル)及び12.5gのOP935を配合し、6.485gのNMPと19.345gのキシレンを加えて希釈して、ポリイミドワニス1を調製した。
(合成例2)
<絶縁樹脂層用のポリアミド酸溶液の調製>
69.56gのm-TB(0.328モル)、542.75gのTPE-R(1.857モル)、重合後の固形分濃度が12重量%となる量のDMAc、194.39gのPMDA(0.891モル)及び393.31gのBPDA(1.337モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液1(粘度;2,650cps)を調製した。ポリアミド酸溶液1を用いて作製した絶縁樹脂層中の酸無水物残基及びジアミン残基の繰り返し単位あたり極性基の個数は7.7であった。
(合成例3)
<絶縁樹脂層用のポリアミド酸溶液の調製>
窒素気流下で、反応槽に、64.20gのm-TB(0.302モル)及び5.48gのビスアニリン-M(0.016モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、34.20gのPMDA(0.157モル)及び46.13gのBPDA(0.157モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液2(粘度;26,500cps)を調製した。ポリアミド酸溶液2を用いて作製した絶縁樹脂層中の酸無水物残基及びジアミン残基の繰り返し単位あたり極性基の個数は6.0であった。
(作製例1)
<接着層用の接着シートの調製>
ポリイミドワニス1を乾燥後厚みが60μmとなるように離型基材(縦×横×厚さ=320mm×240mm×25μm)のシリコーン処理面に塗工した後、80℃で15分間加熱乾燥し、離型基材上から剥離することで接着シート1を調製した。接着シート1のレオメータによる硬化温度の測定では、硬化温度は160℃であり、引張弾性率は0.4GPaであった。硬化後の接着シート1の接着温度を評価したところ、158℃であり、引張弾性率は0.8GPaであった。
(作製例2)
<片面金属張積層板1の調製>
電解銅箔(厚さ;12μm、樹脂層側の表面粗度Rz;0.6μm)の上に、ポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次にその上にポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが、約16μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結して、絶縁樹脂層としてのポリイミド層を形成し、片面金属張積層板1を調製した。
<ポリイミドフィルムの調製>
電解銅箔(厚さ;12μm、樹脂層側の表面粗度Rz;0.6μm)の上に、ポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが約10μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去し、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結した。次に、塩化第二鉄水溶液を用いての銅箔層をエッチング除去してポリイミドフィルムのTgを評価したところ、220℃であった。また、前記と同様にポリアミド酸溶液2から調製したポリイミドフィルムのTgを評価したところ、310℃であった。
(作製例3)
<片面金属張積層板2の調製>
電解銅箔(厚さ;12μm、樹脂層側の表面粗度Rz;0.6μm)の上に、ポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次にその上にポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが、約18μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結して、絶縁樹脂層を形成し、片面金属張積層板2を調製した。
(実施例1)
<両面金属張積層板の調製>
ロールトゥロールプロセスにより、下記のように両面金属張積層板銅箔を調製した。片面金属張積層板1のポリイミド層の上にポリイミドワニス1を乾燥後の厚みが60μmとなるように均一に塗布し、150℃で加熱乾燥することで溶媒を除去し、接着層1を形成した。その後、接着層1の面に、別の片面金属張積層板1のポリイミド層側の面が接するよう80℃で仮圧着し、両面金属張積層板中間体1を調製した。ロール状に巻き取った両面金属張積層板中間体1を恒温槽にて160℃、48時間加熱処理をすることで両面金属張積層板1を得た。仮圧着した側の片面金属張積層板1と接着層1間のピール強度を評価したところ、0.87kN/mであった。
(実施例2~6)
恒温槽の温度と加熱処理時間を表1のように変更したこと以外、実施例1と同様にして、仮圧着した側の片面金属張積層板1と接着層1間のピール強度を評価した。
(実施例7~8)
恒温槽の温度と加熱処理時間を表1のように段階的に変更したこと以外、実施例1と同様にして、仮圧着した側の片面金属張積層板1と接着層1間のピール強度を評価した。
(実施例9~11)
片面金属張積層板1の代わりに、片面金属張積層板2を使用し、恒温槽の温度と加熱処理時間を表1のように変更したこと以外、実施例1と同様にして、仮圧着した側の片面金属張積層板2と接着層1間のピール強度を評価した。
(比較例1~2)
恒温槽の温度と加熱処理時間を表1のように変更したこと以外、実施例1と同様にして、仮圧着した側の片面金属張積層板1と接着層1間のピール強度を評価した。
Figure 2023150791000006
(実施例12)
<両面金属張積層板の調製>
2枚の片面金属張積層板1を準備し、それぞれのポリイミド層側の面を接着シート1の両面に重ね合わせ、180℃で4時間、3.5MPaの圧力をかけて圧着して、両面金属張積層板を調製した。片面金属張積層板1の絶縁樹脂層と接着シート1間のピール強度を評価したところ、0.82kN/mであった。
(比較例3)
<両面金属張積層板の調製>
2枚の片面金属張積層板1を準備し、それぞれの絶縁樹脂層側の面を接着シート1の両面に重ね合わせ、180℃で2時間、3.5MPaの圧力をかけて圧着して、両面金属張積層板を調製した。片面金属張積層板1の絶縁樹脂層と接着シート1間のピール強度を評価したところ、0.65kN/mであった。
(実施例13)
<接着層付片面金属張積層板の調製>
片面金属張積層板1を1枚準備し、絶縁樹脂層側の面に接着シート1を重ね、180℃で4時間、3.5MPaの圧力をかけて圧着して、接着層付片面金属張積層板を調製した。片面金属張積層板1の絶縁樹脂層と接着シート1間のピール強度を評価したところ、0.84kN/mであった。
実施例1~11と比較例1~2を比較すると、比較例は加熱時間が短い、または加熱温度が低いため、数式(1)にて算出される合計値X1が50未満であり、ピール強度が低いことが分かる。また、実施例7、8は段階的に加熱処理を行っているが、数式(1)を適用可能であり、数式(1)にて算出される合計値X1が50以上であれば、十分なピール強度が発現することが分かる。実施例12は接着シートを使い、圧力をかけて片面金属張積層板と積層しているが、比較例3から分かるように、絶縁樹脂層と接着層のピール強度は、圧力に依らず、実施例1~11と同様に熱処理の温度が所定以上なら時間に依存することが分かる。更に、実施例13のように接着層付の片面金属張積層板を作製する際にも、本発明の熱処理条件が適用可能である。
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。
B…接着層、BS…接着シート、C,C…金属張積層板、C1…第1の片面金属張積層板、C2…第2の片面金属張積層板、M1,M2…金属層、R1,R2…絶縁樹脂層、S…中間積層体

Claims (9)

  1. 第1の金属層と、前記第1の金属層の片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、前記第1の絶縁樹脂層に積層された接着層と、を備えた金属張積層板の製造方法であって、
    前記第1の絶縁樹脂層に、前記接着層となる接着シートを接触させた状態で加熱する熱処理工程を含み、
    前記熱処理工程における最高温度が、前記接着層の硬化温度以上、硬化温度+50℃以下の範囲内であり、
    前記熱処理工程のある時点における熱処理温度Tから前記接着層の接着温度を減算した差分[単位;℃]を前記熱処理工程の総工程時間t[単位;h]で積分した値が50[単位;℃・h]以上であること(ここで、接着温度とは、接着層の動的粘弾性測定によって得られる損失弾性率-温度曲線において、ガラス転移温度を超える温度であって、該曲線の接線の傾きが最初に-7kPa/℃となる温度を起点とする高温側の温度領域で該起点となる温度から22%上昇した温度を意味する)を特徴とする金属張積層板の製造方法。
  2. 第1の金属層と、前記第1の金属層の片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、前記第1の絶縁樹脂層に積層された接着層と、前記接着層に積層された第2の絶縁樹脂層と、前記第2の絶縁樹脂層に積層された第2の金属層と、を備えた金属張積層板の製造方法であって、
    前記第1の絶縁樹脂層に、又は、前記第1の絶縁樹脂層及び前記第2の絶縁樹脂層の両方に、前記接着層となる接着シートを接触させた状態で加熱する熱処理工程を含み、
    前記熱処理工程における最高温度が、前記接着層の硬化温度以上、硬化温度+50℃以下の範囲内であり、
    前記熱処理工程のある時点における熱処理温度Tから前記接着層の接着温度を減算した差分[単位;℃]を前記熱処理工程の総工程時間t[単位;h]で積分した値が50[単位;℃・h]以上であること(ここで、接着温度とは、接着層の動的粘弾性測定によって得られる損失弾性率-温度曲線において、ガラス転移温度を超える温度であって、該曲線の接線の傾きが最初に-7kPa/℃となる温度を起点とする高温側の温度領域で該起点となる温度から22%上昇した温度を意味する)を特徴とする金属張積層板の製造方法。
  3. 第1の金属層と、前記第1の金属層の片側の面に積層された第1の絶縁樹脂層と、前記第1の絶縁樹脂層に積層された接着層と、前記接着層に積層された第2の絶縁樹脂層と、前記第2の絶縁樹脂層に積層された第2の金属層と、を備えた金属張積層板の製造方法であって、
    前記第2の絶縁樹脂層に、前記接着層となる樹脂組成物の溶液を塗布して乾燥することによって塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、
    前記塗布膜に前記第1の絶縁樹脂層を接触させた状態に積層した状態で加熱する熱処理工程を含み、
    前記熱処理工程における最高温度が、前記接着層の硬化温度以上、硬化温度+50℃以下の範囲内であり、
    前記熱処理工程のある時点における熱処理温度Tから前記接着層の接着温度を減算した差分[単位;℃]を前記熱処理工程の総工程時間t[単位;h]で積分した値が50[単位;℃・h]以上であること(ここで、接着温度とは、接着層の動的粘弾性測定によって得られる損失弾性率-温度曲線において、ガラス転移温度を超える温度であって、該曲線の接線の傾きが最初に-7kPa/℃となる温度を起点とする高温側の温度領域で該起点となる温度から22%上昇した温度を意味する)を特徴とする金属張積層板の製造方法。
  4. 前記熱処理工程における熱処理温度は、一定、又は、段階的に複数回変化させて行われ、熱処理温度と熱処理時間の関係が下記の数式(1)を満たすものである請求項1から3のいずれか1項に記載の金属張積層板の製造方法。
    Figure 2023150791000007
    [数式(1)において、T1i[単位;℃]は、i番目の熱処理温度から前記接着層の接着温度を減算した差分であり、tiはi番目の熱処理時間[単位;h]であり、nは1以上の整数である。]
  5. 少なくとも、前記熱処理工程をロール状に巻いた状態で行う請求項1から4のいずれか1項に記載の金属張積層板の製造方法。
  6. 前記金属張積層板における前記接着層と前記第1の絶縁樹脂層とのピール強度の値が0.7kN/m以上である請求項1から5のいずれか1項に記載の金属張積層板の製造方法。
  7. 前記接着層は、酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するポリイミドを含んでおり、
    前記ポリイミドは、全ジアミン残基に対して、
    ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級アミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマージアミンを主成分とするダイマージアミン組成物から誘導されるジアミン残基を20モル%以上含有する請求項1から6のいずれか1項に記載の金属張積層板の製造方法。
  8. 前記第1の絶縁樹脂層は、酸二無水物成分から誘導される酸二無水物残基及びジアミン成分から誘導されるジアミン残基を含有するポリイミドを含んでおり、
    前記第1の絶縁樹脂層中に含まれる酸無水物残基及びジアミン残基の繰り返し単位あたりの極性基の個数が8個未満である請求項1から7のいずれか1項に記載の金属張積層板の製造方法。
  9. 請求項1から8のいずれか1項に記載の方法によって製造された金属張積層板における前記第1の金属層又は前記第2の金属層の片方又は両方を配線に加工する工程を含む回路基板の製造方法。

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