以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るハブシールの製造方法によって製造されるハブシールの一例を示す図であり、本発明に係るハブシールの製造方法によって製造されるハブシール1の軸線xに沿う断面における断面図である。本発明に係るハブシールの製造方法によって製造されるハブシールは、サイドリップを有し、互いに相対回転可能な、外周側部材とこの外周側部材に少なくとも部分的に包囲された内周側部材との間の空間の密封を図るための密封装置である。本発明に係るハブシールの製造方法によって製造されるハブシール1は、具体的には、後述するように、自動車のハブベアリング50に用いられ、軸線について相対回転可能な外周側部材としての外輪51と内周側部材としてのハブ52との間の空間を密封するために用いられる(図3参照)。なお、本発明に係るハブシールの製造方法によって製造されるハブシールの取付対象は、自動車等の車両のハブベアリングに限られず、本発明に係るハブシールの製造方法によって製造されるハブシールは、例えば、産業機械や汎用機械等に使用されるベアリング等、車両のハブベアリングではない他のベアリングにも適用可能である。
以下、説明の便宜上、軸線x方向において矢印a(図1参照)方向の側(軸線方向において一方の側)を外側とし、軸線x方向において矢印b(図1参照)方向の側(軸線方向において他方の側)を内側とする。より具体的には、外側とは、軸線x方向において、密封対象空間である外輪51とハブ52との間の空間から離れる方向の側であり、内側とは、軸線x方向において、この密封対象空間に近づく方向の側である。また、軸線xに垂直な方向(以下、「径方向」ともいう。)において、軸線xから離れる方向(図1の矢印c方向)の側を外周側とし、軸線xに近づく方向(図1の矢印d方向)の側を内周側とする。
ハブシール1は、図1に示すように、ハブベアリング50の回転側であるハブ52に取り付けられる第1のシール部材としてのシール本体2と、ハブベアリング50の固定側である外輪51に取り付けられる第2のシール部材としてのスリーブ3とを備えている。シール本体2及びスリーブ3は、軸線x周りに環状の部材である。シール本体2は、軸線x周りに環状のサイドリップ4を有している。ハブシール1は、ハブシール1の内部に進入した雨水や泥水、ダスト等の異物が、予め設定された回転数である設定回転数での軸線周りの回転によって、径方向における所望の位置に位置するようになっている。設定回転数は、例えば、後述するハブシール1の取付対象であるハブベアリング50の実用回転数である。また、サイドリップ4は、設定回転数におけるハブシール1のトルクが、所望の値を有するような形状に設計されている。なお、ハブシール1のトルクは、サイドリップ4のリップ反力に基づくサイドリップ4の摺動抵抗(トルク抵抗)に抗して、ハブシール1を回転させるために必要なトルクであり、つまりシール本体2とスリーブ3とを相対回転させるために必要なトルクである。以下、ハブシール1の構成について具体的に説明する。
シール本体2は、例えば図1に示すように、軸線x周りに環状の部材である補強環10と、補強環10に取り付けられ、軸線x周りに環状の弾性体から形成された弾性体部20とを備えている。弾性体部20は、サイドリップ4を有している。サイドリップ4は、後述するハブシール1がハブベアリング50に取り付けられた使用状態において、スリーブ3に外側(矢印a方向側)から接触するように形成された内側(矢印b方向側)に向かって延びるシールリップである。なお、図1において、シール本体2とスリーブ3とは、使用状態における相対位置で示されている。
補強環10は、例えば図1に示すように、軸線xを中心又は略中心とする円環状又は略円環状の金属製の部材であり、取付対象としての後述するハブベアリング50のハブ52が補強環10に圧入されて、補強環10がハブ52に嵌合されて嵌着されるように形成されている。補強環10は、例えば、内周側に位置する筒状の部分である筒部11と、筒部11の外側の端部から外周側に延びる環状の部分である円環部12とを有している。筒部11は、上述のように補強環10がハブ52に嵌着されるように、ハブ52が締まり嵌め方式で嵌め入れられるような形状となっている。また、円環部12は、径方向に平行に又は略平行に広がる円環状又は略円環状の部分を有している。補強環10には、概ね外周側及び内側から弾性体部20が取り付けられており、弾性体部20を補強している。なお、補強環10の材料は金属に限られない。
弾性体部20は、例えば図1に示すように、補強環10の円環部12の外周側の部分に取り付けられている部分である基体部21と、補強環10の円環部12の内周側の部分及び筒部11に取り付けられている部分である筒状部22とを有している。弾性体部20において、サイドリップ4は、基体部21から延びている。弾性体部20は、同一の弾性材料から一体に形成された部材であり、サイドリップ4、基体部21、及び筒状部22は、一体に形成された弾性体部20の一部である。
図2は、サイドリップ4を拡大して示す拡大断面図である。図2において、サイドリップ4は、スリーブ3に接触していない、外力が加わっていない、自然状態で示されている。サイドリップ4は、図1,2に示すように、軸線xを中心軸又は略中心軸として環状に基体部21から内側に向かって延びており、サイドリップ4の内周側に面する面(内周面41c)が、外輪51とハブ52との間の空間の密封のための接触面4aを形成するようになっている。また、サイドリップ4は、後述するハブシール1の使用状態において、先端部41の接触面4aが所定の締め代を持ってスリーブ3の後述する接触面33に接触するように形成されている。
サイドリップ4は、図1,2に示すように、先端部41と、根元部42とを有している。根元部42は、サイドリップ4の基体部21につながる部分であり、先端部41は、サイドリップ4の根元部42よりも先端側(内側)に位置する部分である。根元部42は、軸xに平行又は略平行に延びており、例えば図2に示すように、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円筒状又は略円筒状の形状を有している。先端部41は、軸線xを中心軸又は略中心軸とする、軸線xに沿って内側に向かうに連れて拡径する形状を有している。
図2に示すように、先端部41の断面において、先端側の端(先端41a)の厚さは厚さT1となっており、また、根元側の端(根元端41b)の厚さは厚さT2となっている。なお、根元端41bは、先端部41の仮想の端である。先端部41は、図2に示すように、断面において、仮想線である延び方向線c1に沿って延びており、延び方向線c1に関して対称又は略対称な形状となっている。つまり、先端部41の内周側に面する面である内周面41cと、先端部41の外周側に面する面である外周面41dとは、延び方向線c1に関して対称又は略対称になっている。延び方向線c1は、例えば図2に示すように、内側に向かって外周側に傾斜するように軸線xに対して傾斜した直線である。なお、延び方向線c1は、直線でなくてもよく、曲線、直線と曲線とが組み合わされた線等であってもよい。また、内周面41cと外周面41dとは、延び方向線c1に関して部分的に対称になっていなくてもよく、また、延び方向線c1に関して対称でなくてもよい。
厚さT1,T2は、延び方向線c1に直交する方向における、内周面41cと外周面41dとの間の幅である。具体的には例えば図2に示すように、厚さT1は、内周面41cにおける先端41aである内周先端41eと、外周面41dにおける先端41aである外周先端41fとの間の、延び方向線c1に直交する方向における幅である。また、厚さT2は、外周面41dにおける根元端41bである外周根元端41hにおける延び方向線c1に直交する方向の幅である。
また、先端部41の延び方向線c1の方向における長さは、長さL1となっている。先端部41の長さL1は、具体的には例えば図2に示すように、延び方向線c1の方向における、内周先端41eと内周根元端41gとの間の長さである。なお、内周根元端41gは、内周面41cにおける根元端41bである。先端部41の長さL1は、延び方向線c1の方向における、外周先端41fと外周根元端41hとの間の長さであってもよい。
図2に示すように、根元部42の断面において、根元部42の厚さは一様な厚さ(厚さT3)となっている。根元部42の厚さは、厚さT3に略一様となっていてもよい。根元部42は、図2に示すように、断面において、仮想線である延び方向線c2に沿って延びており、延び方向線c2に関して対称又は略対称な形状となっている。つまり、根元部42の内周側に面する面である内周面42cと、根元部42の外周側に面する面である外周面42dとは、延び方向線c2に関して対称又は略対称になっている。延び方向線c2は、例えば図2に示すように、軸線xに平行又は略平行な直線である。なお、延び方向線c2は、直線でなくてもよく、曲線、直線と曲線とが組み合わされた線等であってもよい。また、内周面42cと外周面42dとは、延び方向線c2に関して部分的に対称になっていなくてもよく、また、延び方向線c2に関して対称でなくてもよい。また、延び方向線c2は、軸線xに対して傾斜していてもよい。
厚さT3は、延び方向線c2に直交する方向における、内周面42cと外周面42dとの間の幅である。具体的には例えば図2に示すように、厚さT3は、内周面42c又は外周面42d上の任意の点と、この点に延び方向線c2に直交する方向において対向する外周面42d又は内周面42c上の点との間の幅である。厚さT3は、内周面42cにおける基体部21側の端(根元端42b)である内周根元端42gと、外周面42dにおける根元端42bである外周根元端42hとの間の、延び方向線c2に直交する方向における幅であってもよく、厚さT3は、内周面42cにおける先端部41側の端(先端42a)である内周先端42eと、外周面42dにおける先端42aである外周先端42fとの間の、延び方向線c2に直交する方向における幅であってもよい。なお、先端42a及び根元端42bは、根元部42の仮想の端である。
また、根元部42の延び方向線c2の方向における長さが長さL2となっている。根元部42の長さL2は、具体的には例えば図2に示すように、延び方向線c2の方向における、内周先端42eと内周根元端42gとの間の長さである。根元部42の長さL2は、延び方向線c2の方向における、外周先端42fと外周根元端42hとの間の長さであってもよい。
先端部41と根元部42との間には、図3に示すように、先端部41と根元部42とが滑らかにつながるように移行部43が形成されていてもよく、また、根元部42と基体部21との間には、図3に示すように、根元部42と基体部21とが滑らかにつながるように移行部44が形成されていてもよい。移行部43は、具体的には図3に示すように、先端部41の内周面41cと根元部42の内周面42cとをつなぐ面である内周移行面43a、及び先端部41の外周面41dと根元部42の外周面42dとをつなぐ面である外周移行面43bである。内周移行面43aは、例えば図3に示すように、断面において、内周側に突出する曲線を描くような形状となっている。外周移行面43bは、例えば図3に示すように、断面において、内周側に凹む曲線を描くような形状となっている。
移行部44は、具体的には図3に示すように、根元部42の内周面42cと基体部21の内側面21aをつなぐ面である内周移行面44a、及び根元部42の外周面42dと基体部21の内側面21aをつなぐ面である外周移行面44bである。内周移行面44aは、例えば図3に示すように、断面において、外周側に凹む曲線を描くような形状となっている。外周移行面44bは、例えば図3に示すように、断面において、内周側に凹む曲線を描くような形状となっている。
この場合、先端部41の根本端41b及び根本部42の先端42aは、断面において、例えば図3に示すように、先端部41の内周面41cの仮想延長線と根元部42の内周面42cの仮想延長線との仮想交点vp1と、先端部41の外周面41dの仮想延長線と根元部42の外周面42dの仮想延長線との仮想交点vp2とを通る。
図2に示すように、先端部41において、例えば、厚さT1は厚さT2よりも大きくなっており、先端部41は、延び方向線c1に沿って根元端41bから先端41aに向かうに連れて、先端部41の厚さが厚くなるような形状になっている。なお、先端部41の厚さは、断面において、延び方向線c1に直交する方向における内周面41cと外周面41dとの間の幅である。また、延び方向線c1と延び方向線c2との間の角度(曲がり角θ)は、図2に示すように、90°よりも大きく180°よりも小さい角度(90°<θ<180°)となっている。
また、図2に示すように、根元部42において、例えば、厚さT3は、長さL2に亘って一様になっている。また、根元部42の厚さT3は、例えば、先端部41の根元端41bの厚さT2よりも小さくなっている。なお、根元部42の厚さT3は、先端部41の根元端41bの厚さT2よりも大きくなっていてもよい。
サイドリップ4は上述の形状を有しており、後述する使用状態において、先端部41の内周面41cの先端41a側の部分がスリーブ3の接触面33に所定の大きさの締め代(接触面4a)で接触して所定の大きさの反力(リップ反力)を生じる。シールリップの締め代は、外力によって変形していない自由状態のシールリップが、使用状態においてシールリップが接触する接触面よりも突き出る長さである。具体的には、サイドリップ4の締め代は、図2に仮想線Vで示す接触面であるスリーブ3の接触面33よりも突出するサイドリップ4の先端部41の内周面41cの部分の軸線x方向の長さである。
また、サイドリップ4は上述の形状を有しており、後述するように、使用状態において所望の振り切り作用を奏する。振り切り作用とは、軸線x周りの回転によって発生する遠心力によって、ハブシール1内に進入した異物、特に液状の異物をサイドリップ4から外周側に移動させる作用である。
弾性体部20は、補強環10に一体的に取り付けられており、上述のサイドリップ4及び基体部21は、同一材料から一体に形成された弾性体部20の各部分であり、一体的に連続している。
スリーブ3は、例えば図1に示すように、軸線xを中心又は略中心とする円環状又は略円環状の金属製の部材であり、取付対象としての後述するハブベアリング50の外輪51に圧入されて、外輪51に嵌合されて嵌着されるように形成されている。スリーブ3は、例えば、外周側に位置する筒状の部分である筒部31と、筒部31の内側の端部から内周側に延びる円環状又は略円環状の部分である円環部32とを有している。筒部31は、上述のようにスリーブ3が外輪51に嵌着されるように、外輪51に締まり嵌め方式で嵌め入れられるような形状となっている。また、円環部32は、径方向に平行に又は略平行に広がる円環状又は略円環状の部分を有している。円環部32には、後述する使用状態において、サイドリップ4が接触する面である接触面33が形成されている。接触面33は、円環部32において外側に面する面であり、軸線xに直交又は略直交する平面に平行又は略平行に広がる軸線x周りに環状の平面又は略平面である。なお、スリーブ3の材料は金属に限られない。
次いで、上述のハブシール1の使用状態について説明する。図4は、ハブベアリング50に取り付けられたハブシール1の使用状態を示すための軸線xに沿う断面におけるハブベアリング50の断面図であり、図5は、図4におけるハブシール1の近傍の部分拡大断面図である。なお、図示の例においては、ハブシール1の軸線xにハブベアリング50の軸線が一致しており、ハブベアリング50は、ハブシール1と共通の軸線xを有している。
図4に示すように、ハブベアリング50は従来公知のハブベアリングであり、内輪回転型のハブベアリングであり、自動車等の車両等に設けられ、アクスル又は懸架装置において車輪を回転自在に支持する。ハブベアリング50は、具体的には、図4に示すように、外周側部材としての軸線xを中心軸又は略中心軸とする環状の外輪51と、外輪51に対して相対回転可能であり外輪51に部分的に包囲された軸線xを中心軸又は略中心軸とする内周側部材としてのハブ52と、外輪51とハブ52との間に2列に配設された複数のベアリングボール53とを備えている。車両等に取り付けられたハブベアリング50の使用状態において、外輪51は例えば車両の懸架装置に固定され、ハブ52が外輪51に対して相対回動可能になる。ハブ52は、具体的には、内輪54とハブ輪55とを有しており、ハブ輪55は、軸線xに沿って延びる略円筒状の軸部55aと、車輪取付フランジ55bとを有している。車輪取付フランジ55bは、軸部55aの外側の一端から外周側に向かって円環状に広がる部分であり、図示しない車輪が複数本のハブボルト59によって取り付けられる部分である。内輪54は、外輪51とハブ52との間の空間内にベアリングボール53を保持するために、ハブ輪55の軸部55aの内側の端部に嵌合されている。外輪51とハブ52との間の空間である密封空間S1内において、ベアリングボール53は保持器56によって保持されている。
外輪51は、軸線x方向に延びる貫通孔57を有しており、この貫通孔57には、ハブ52のハブ輪55の軸部55aが挿入されており、軸部55aと貫通孔57との間に軸線xに沿って延びる環状の密封空間S1が形成されている。また、密封空間S1内には、潤滑剤が塗布又は注入されている。軸部55aと貫通孔57との間の空間が内側において開放された開口を形成するハブベアリング50の内側開口部50aには、ハブシール1が取り付けられ、軸部55aと貫通孔57との間の空間が外側において開放された開口を形成するハブベアリング50の外側開口部50bには、他の密封装置58が取り付けられている。ハブシール1及び密封装置58によって、軸部55a及び内輪54と貫通孔57との間の空間の密封が図られており、この密封空間S1内の潤滑剤が外部に漏れ出ることの防止が図られており、外部から雨水や泥水、ダスト等の異物が内部に進入することの防止が図られている。密封装置58は、従来公知の密封装置であり、詳細な説明は省略する。なお、密封装置58として、ハブシール1を適用することもできる。ハブシール1が適用されるハブベアリングの構成は、上述のハブベアリング50の構成に限られない。
図4,5に示すように、具体的には、外輪51の内側の円筒状の端部51aに、ハブシール1のスリーブ3が取り付けられ、また、ハブ52の内輪54の内側の円筒状の端部54aに、ハブシール1のシール本体2の補強環10が取り付けられ、ハブシール1はハブベアリング50に取り付けられる。具体的には、スリーブ3は、筒部31が外輪51の内側開口部50a内に圧入されて嵌着されることにより、外輪51に固定されている。また、シール本体2は、補強環10の筒部11内に内輪54の端部54aが圧入されて、補強環10が内輪54に嵌着されることにより、内輪54に固定されている。
使用状態において、シール本体2とスリーブ3とは軸線x方向における間隔が所定の間隔となるように位置決めされ、サイドリップ4の先端部41の内周面41cの先端側の部分が、上述の所定の締め代に対応する部分(接触面4a)においてスリーブ3の接触面33に摺動可能に接触している。このサイドリップ4によって、密封空間S1内への異物の進入の防止が図られており、また、密封空間S1内からの潤滑剤の流出の防止が図られている。なお、ハブシール1において、サイドリップ4の内周面41cにグリースが塗布されていてもよく、これにより、使用状態において、サイドリップ4の接触面4aとスリーブ3の円環部32の接触面33との間にグリース(不図示)が介在していてもよい。
上述のように、使用状態において、サイドリップ4は接触面4aにおいて、所定の締め代でスリーブ3の接触面33に接触しており、サイドリップ4には、この接触に基づく反力(リップ反力F)が発生している。サイドリップ4のリップ反力Fは、図5に示すように、ハブシール1の使用状態において、サイドリップ4がスリーブ3の円環部32の接触面33に加える軸線x方向の力である。サイドリップ4のリップ反力Fは、ハブシール1の回転のトルク抵抗となる。つまり、ハブシール1のトルクは、サイドリップ4のリップ反力Fに対応する値である。サイドリップ4のリップ反力Fを決めるサイドリップ4の要素には、一例として、図2に示す、サイドリップ4の先端部41の長さL1、サイドリップ4の先端部41の厚さT1,T2、サイドリップ4の根元部42の厚さT3、サイドリップ4の曲がり角度θ、及びサイドリップ4の先端部41の内周面41cの表面粗さがある。
サイドリップ4のリップ反力Fは、ハブ52の回転数に応じて変化する。これは、ハブ52の回転時に、ハブ52と共に軸線x周りに回転するシール本体2のサイドリップ4に加わる遠心力によって、サイドリップ4をスリーブ3の接触面33から離す方向の力が生じるからである。サイドリップ4に加わる遠心力は、ハブ52(シール本体2)の回転数が高くなるに連れて大きくなり、これに伴いサイドリップ4をスリーブ3の接触面33から離す方向の力も大きくなり、これによりサイドリップ4のリップ反力Fはハブ52の回転数が高くなるに連れて小さくなる。ハブ52の回転数が所定の回転数より高くなると、サイドリップ4をスリーブ3の接触面33から離す方向の力は、サイドリップ4をスリーブ3の接触面33から完全に離す大きさになり、サイドリップ4は、スリーブ3の接触面33から離れる。
一方、ハブ52の回転によって発生する遠心力によって、ハブシール1内には振り切り作用が発生する。振り切り作用とは、図6に示すように、ハブシール1内に進入した異物、特に液状の異物をサイドリップ4側から外周側に移動させる作用である。振り切り作用によって、外周側に押し遣られた異物が位置する位置である異物面位置は、ハブ52(シール本体2)の回転数に応じて変化する。異物に対する振り切り作用は、所定の回転数より高い回転数でハブ52が回転する際に生じ、また、この所定の回転数よりも高い回転数の領域において、ハブ52の回転数が高くなるに連れて、振り切り作用の程度は強くなり、異物面位置はより外周側になり、つまり、軸線xから径方向にサイドリップ4からより離れた位置となる。図6に示すように、異物面位置は、ハブ52の回転数が所定の回転数までは径方向においてシール面Aの位置に位置し、所定の回転数より高い回転数でハブ52(シール本体2)が回転すると、異物面位置は径方向において外周側に移動する。なお、シール面Aは、サイドリップ4の接触面4aとスリーブ3の接触面33とである(図5参照)。
振り切り作用の程度は、ハブシール1におけるサイドリップ4よりも密封空間S1から離れる側の空間(上流空間S)の形態によって異なる。上流空間Sは、図5において網掛けで示す部分であり、サイドリップ4よりも上流側において、シール本体2とスリーブ3との間に形成される空間である。
ハブシール1においては、ハブベアリング50の実用回転数において、遠心力の作用によってハブ52の回転数に応じて変化するサイドリップ4のリップ反力Fと、遠心力の作用によってハブ52の回転数に応じて変化する異物面位置との関係から、ハブベアリング50の静止時におけるリップ反力Fを設定し、実用回転数の範囲におけるハブシール1の回転のトルク抵抗の低減を図っている。また、実用回転数の範囲においてリップ反力Fが低くなり、サイドリップ4のシール性能が低下しても、異物がサイドリップ4を超えて密封空間S1側に進入することを防止するような異物の振り切り作用が生じるように、遠心力の作用によってハブシール1の回転数に応じて変化するサイドリップ4のリップ反力Fと、遠心力の作用によってハブシール1の回転数に応じて変化する異物面位置との関係から、ハブシール1の上流空間Sの形状が決められている。
ハブシール1において、サイドリップ4の形状は、ハブシール1のトルクとハブシール1(シール本体2)の回転数との関係が、例えば図7のグラフが示すような関係となるような形状になっている。また、ハブシール1において、上流空間Sの形状は、異物面位置とハブシール1の回転数との関係が、例えば図7のグラフが示すような関係となるような形状になっている。なお、図7において、異物面位置は、径方向におけるシール面A(図5参照)からの距離によって示されている。また、ハブベアリング50の実用回転数は、例えば1000rpm以上である。
図7に示すように、ハブシール1は、ハブベアリング50の実用回転数において、振り切り作用によって異物面位置を外周側に十分に押し遣ることができる。これにより、ハブベアリング50の実用回転数において、異物面位置は高く、シール面Aの近傍に異物が存在しなくなる、又はシール面Aの近傍に存在する異物が僅かとなる。このため、図7に示すように、ハブベアリング50の実用回転数において、遠心力の作用によってリップ反力Fが低くなるようなサイドリップ4とすることができ、ハブシール1のトルクを低減することができる。シール面Aの近傍に異物が存在しなくなる、又はシール面Aの近傍に存在する異物が僅かとなるため、サイドリップ4のリップ反力Fが異物面位置がシール面Aの近傍に存在している場合に異物の進入を許す程に低くなっても、異物がサイドリップ4を超えて密封空間S1側に進入することはなく、ハブシール1のシール性能が所望のシール性能よりも低くなることはない。
一方、実用回転数より低い回転数でハブベアリング50が回転している際は、振り切り作用の程度が低下し、異物面位置はシール面Aの位置に近づき又はシール面Aに位置し、異物面位置は低く、シール面Aの近傍に異物が存在する状況となる。一方、図7に示すように、実用回転数より低い回転数でハブベアリング50が回転している際は、十分なシール性能を保持できるように、実用回転数におけるリップ反力Fよりもリップ反力Fが高くなっている。このため、振り切り作用の程度が低く、異物面位置が低くなるハブベアリング50の回転領域でも、異物がサイドリップ4を超えて密封空間S1側に進入することはなく、ハブシール1のシール性能が所望のシール性能よりも低くなることはない。
上述したように、ハブシール1は、ハブベアリング50の実用回転数において、振り切り作用によって異物面位置がシール面Aよりも十分に外周側に位置し、異物面位置が高い位置に位置するようになっているが、ハブシール1の形態によっては、図8に示すように、ハブベアリング50の実用回転数において、図7の場合よりも低い位置に異物面位置を押し遣る程度の振り切り作用しか得られない場合もある。この場合、図8に示すように、リップ反力Fが所望のシール性能を得るために十分な値となるように、リップ反力Fが図7の場合よりも高くなるようにサイドリップ4の形状が決められていればよい。
上述したように、ハブシール1は、サイドリップ4のリップ反力Fの低減の、必要とされるシール性能を維持するための限界を下げることができる。このため、ハブシール1は、ハブシール1のトルクの低減の、必要とされるシール性能を維持するための限界を下げることができる。これにより、ハブシール1は、サイドリップ4が与えるトルク抵抗を低減するこができ、ハブシール1のトルクを低減することができる。
次いで、本発明に係るハブシールの製造方法について説明する。本発明に係るハブシールの製造方法は、上述のハブシール1のように、サイドリップのリップ反力の低減の、必要とされるシール性能を維持するための限界を下げることができるハブシールの製造方法である。上述のハブシール1を製造する本発明の実施の形態に係るハブシールの製造方法においては、ハブシール1の上流空間Sに侵入した異物が、軸線x周りのハブシール1の回転によって、径方向における所望の異物面位置に位置するとする回転数である設定回転数を設定し、この設定回転数におけるハブシール1のトルクが、所望の値を有するようにサイドリップ4の形状を設計し、設計したサイドリップ4の形状を有するハブシール1となるようにハブシールを製造する。なお、上述のように、設定回転数は、例えば、ハブシール1の取付対象であるハブベアリング50の実用回転数である。以下、本発明の実施の形態に係るハブシールの製造方法について具体的に説明する。
本発明の実施の形態に係るハブシールの製造方法においては、先ず、基本形態を有する基本ハブシール5を設計する。基本形態は、製造するハブシールに求められる形状や大きさ、要求される性能値等に基づいて決められる。求められる形状や大きさは、例えば、製造するハブシールを取り付けるハブベアリング等の取付対象におけるスペースから要求される形状や大きさである。また、要求される性能値の1つは、製造するハブシールの要求トルク値である。ハブシールの要求トルク値は、ハブシールを回転するのに必要なトルクの要求値であり、サイドリップのリップ反力Fに基づくトルク抵抗に抗して、シール本体2とスリーブ3とを互いに相対回転するのに必要なトルクの要求値である。ハブシールの要求トルク値は、具体的には、取付対象の実用回転数の範囲において、ハブシールを回転するのに必要となるトルクの最大値(最大トルク)である。最大トルクは、例えば、1000rpm以上の実用回転数において10N・cmである。
図9は、基本ハブシール5の一例を示す、基本ハブシール5の軸線xに沿う断面における断面図であり、図10は、基本ハブシール5のサイドリップ6を拡大して示す部分断面図である。図9には、軸線xに対する一方の断面のみが示されている。また、図9には、シール本体2とスリーブ3が、使用状態の相対位置で示されている。基本ハブシール5は、上述のハブシール1に対して、サイドリップの形状のみが異なり、図9,10に示すように、先端部41の厚さが長さL1に亘って一様なサイドリップ6を有している。基本ハブシール5の補強環10及びスリーブ3の大きさや形状は、取付対象のハブベアリング50のハブシールが取り付けられるスペースに対応した大きさや形状になっている。
基本ハブシール5が設計されると、設計された基本ハブシール5の異物の振り切り作用の程度(異物振り切り性能)を確認する。異物振り切り性能の確認においては、図7に示したような、基本ハブシール5における、異物面位置とハブシール1の回転数(シール本体2とスリーブ3との相対回転の回転数)との関係を確認する。異物振り切り性能の確認は、ハブベアリング50に基本ハブシール5を取り付け、このハブベアリング50を回転(外輪51とハブ52との相対回転)させて、各回転数での異物面位置を確認することによって行う。異物振り切り性能の確認は、ハブベアリング50に模した治具に基本ハブシール5を取り付けて行ってもよい。また、異物面位置とハブシールの回転数又はハブの回転数との関係を数式化し、この数式から基本ハブシール5の異物振り切り性能を算出することによって異物振り切り性能の確認を行ってもよい。また、異物振り切り性能の確認は、コンピュータ解析で行ってもよく、上述の方法とは異なる方法で行ってもよい。
確認された基本ハブシール5の異物振り切り性能が、所定の良好なものであれば、基本ハブシール5のトルク性能の調整・確認に移る。1000rpm以上の実用回転数の範囲において、例えば、異物面位置が十分な高さとなっている場合、良好な異物振り切り性能と判断される。例えば、図7のグラフに示すように、1000rpm以上の実用回転数の範囲において、異物面位置が所定の径方向位置である基準位置Z(Zは例えば12cm)以上の高さになっていれば、基本ハブシール5の異物振り切り性能は良好と判断される。
一方、確認された基本ハブシール5の異物振り切り性能が、所定の良好なものでない場合、基本ハブシール5のトルク性能の調整・確認に移らず、基本ハブシール5の異物振り切り性能が向上するように基本ハブシール5の再設計を行う。1000rpm以上の実用回転数の範囲において、例えば、異物面位置が十分な高さとなっていない場合、良好な異物振り切り性能といえない。例えば、図11のグラフに示すように、1000rpm以上の実用回転数の範囲において、異物面位置が所定の径方向位置である基準位置Z(Zは例えば12cm)よりも低くなっていれば、基本ハブシール5の異物振り切り性能は良好でないと判断される。
基本ハブシール5の異物振り切り性能が向上するようにする基本ハブシール5の再設計は、基本ハブシール5の異物振り切り性能に影響する構造を変更し、基本ハブシール5の異物振り切り性能に影響する構造が変更された変更基本ハブシールを設計することにより行う。基本ハブシール5の異物振り切り性能に影響する構造は、例えば、基本ハブシール5の上流空間Sの形状である。そして、この変更基本ハブシールに対して、上述の基本ハブシール5の異物振り切り性能の確認と同様に、異物振り切り性能の確認を行う。確認された変更基本ハブシールの異物振り切り性能が、所定の良好なものである場合、変更基本ハブシールのトルク性能の調整・確認に移る。一方、確認された変更基本ハブシールの異物振り切り性能が、所定の良好なものでない場合、基本ハブシール5の再設計と同様に、変更基本ハブシールの異物振り切り性能が向上するように変更基本ハブシールの再設計を行い、新たな変更基本ハブシールを設計する。このように、再設計された新たな変更基本ハブシールの異物振り切り性能が所定の良好なものになるまで、変更基本ハブシールの再設計を繰り返す。
異物振り切り性能が所定の良好なものであると判断された基本ハブシール5又は変更基本ハブシールに対しては、トルク性能の調整・確認が行われる。トルク性能の調整・確認工程は、基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能に影響するサイドリップ6の形態要素を調整し、この調整されたサイドリップ6を有する基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能が上述の要求トルク値を満たすか否かを確認する工程である。なお、ハブシールのトルク性能は、ハブシールの回転数と、各回転数のハブシールの回転に必要なトルクとの関係である。サイドリップのリップ反力Fはハブシールの回転のトルク抵抗となり、ハブシールのトルク性能に影響する。このため、サイドリップのリップ反力Fに影響するサイドリップの形態要素は、ハブシールのトルク性能に影響するサイドリップ6の形態要素となる。サイドリップ6のリップ反力Fを決めるサイドリップ6の要素には、上述したように、一例として、サイドリップ6の先端部41の長さL1、サイドリップ6の先端部41の厚さT1,T2、サイドリップ6の根元部42の厚さT3、サイドリップ6の曲がり角度θ、及びサイドリップ4の先端部41の内周面41cの表面粗さがあり(図10参照)、これらがハブシールのトルク性能に影響するサイドリップの形態要素の一例となる。
トルク性能の調整・確認工程においては、上述のようなサイドリップ6のリップ反力Fを決める形態要素を調整してサイドリップ6の形状を基本形状から調整し、形状が調整されたサイドリップ6を有する基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能が上述の要求トルク値を満たすか否かを確認する。基本ハブシール5又は変更基本ハブシールの回転数毎のサイドリップ6のリップ反力Fは、コンピュータ解析によって算出することができ、このコンピュータ解析によって算出された回転数毎のリップ反力Fから、基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルクを算出又は推定する。回転数毎のサイドリップ6のリップ反力Fは、ハブベアリング50に基本ハブシール5又は変更基本ハブシールを取り付け、このハブベアリング50を回転させて、各回転数でのリップ反力Fを測定することによって取得してもよい。また、回転数毎のサイドリップ6のリップ反力Fの測定は、ハブベアリング50に模した治具に基本ハブシール5又は変更基本ハブシールを取り付けて行ってもよい。また、サイドリップ6のリップ反力Fを算出又は測定することなく、基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルクを測定してもよい。
トルク性能の調整・確認工程における、サイドリップの形態要素の調整によるハブシールのトルク性能の調整の一例を説明する。図12は、サイドリップ6の先端部41の厚さT1とトルク性能との関係を示すグラフを示す図である。図12に示すように、サイドリップ6の先端部41の厚さT1が大きい値になるほど、高回転数領域の基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルクは低下する。つまり、サイドリップ6の先端部41の厚さT1の値が大きいほど、サイドリップ6の先端部41に作用する遠心力が大きくなり、サイドリップ6の先端部41の先端41aをスリーブ3の接触面33から離そうとするようになる。
図13は、サイドリップ6の根本部42の厚さT3とトルク性能との関係を示すグラフを示す図である。図13に示すように、サイドリップ6の根本部42の厚さT3が大きい値になるほど、高回転数領域のトルクは上昇する。つまり、サイドリップ6の根本部42の厚さT3の値が大きいほど、サイドリップ6は湾曲し難くなり、サイドリップ6の先端部41に遠心力が作用しても、サイドリップ6の先端部41の先端41aがスリーブ3の接触面33から離れにくくなる。
また、サイドリップ6の根本部42の長さL2が大きい値になるほど、高回転数領域のトルクは低下する。但し、先端部41の厚さT1が根本部42の厚さT3よりも十分に大きい場合である。つまり、厚さの小さいサイドリップ6の根本部42の長さL2の値が大きいほど、サイドリップ6の先端部41に遠心力が作用した際にサイドリップ6は撓みやすく、サイドリップ6の先端部41の先端41aがスリーブ3の接触面33から離れ易くなる。
上述のようなサイドリップ6の形態要素とトルク性能との関係から、サイドリップ6の形態要素を調整して、ハブシールのトルク性能が要求トルク値を満たすサイドリップ6の形状を推定する。そして、この推定された形状を有するサイドリップ6の回転数毎のリップ反力Fを算出又は測定し、このリップ反力Fからハブシールのトルクを算出又は推定する。そして、この算出又は測定されたハブシールのトルクが、要求トルク値を満たすか確認する。要求トルク値は、例えば、1000rpm以上の実用回転数範囲において最大トルクが10N・cm以下である。算出又は測定された基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルクが、要求トルク値を満たす場合は、シール性能の確認に移る。一方、算出又は測定された基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルクが、要求トルク値を満たさない場合は、サイドリップ6の形態要素を再度調整して、トルク性能が要求トルク値を満たすサイドリップ6の形状を推定しなおす。そして、この再度推定された形状を有するサイドリップ6の回転数毎のリップ反力Fを算出又は測定し、このリップ反力Fからハブシールのトルクを算出又は推定し、この算出又は測定されたトルクが、要求トルク値を満たすか確認する。算出又は測定されたハブシールのトルクが、要求トルク値を満たす場合は、シール性能の確認に移る。一方、算出又は測定されたハブシールのトルクが、要求トルク値を満たさない場合は、サイドリップ6の形態要素を再度調整して、再度調整された形状のサイドリップ6の回転数毎のリップ反力Fを算出又は測定し、この算出又は測定されたリップ反力Fからハブシールのトルクを算出又は推定し、この算出又は測定されたトルクが、要求トルク値を満たすか確認する。以降、同様に、基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能が要求トルク値を満たす形状になるまで、サイドリップ6の形態要素を調整する。
シール性能を確認する工程においては、基本ハブシール5又は変形基本ハブシールの異物振り切り性能と、基本ハブシール5又は変形基本ハブシールのトルク性能との関係を確認し、異物振り切り性能とトルク性能との関係が良好なものであるか確認する。異物振り切り性能とトルク性能との関係の確認は、例えば、図7に示すような異物面位置とハブシールの回転数との関係を示すグラフと、トルクとハブシールの回転数との関係を示すグラフとを参照しながら行う。例えば、図7に示すように、異物面位置と回転数との関係を示すグラフと、トルクと回転数との関係を示すグラフとを重ね合わせて、異物振り切り性能とトルク性能との関係を確認する。実用回転数の各回転数において、ハブシールのトルクに対して十分と考えられる異物面位置となっている場合、異物振り切り性能とトルク性能との関係は良好なものであると判断し、この形状のハブシールを製造するハブシールとし、ハブシール1の設計が完了する。そして、ハブシール1を製造する。
一方、実用回転数の各回転数において、トルクに対して十分と考えられる異物面位置となっていない場合、異物振り切り性能とトルク性能との関係は良好なものではないと判断する。異物振り切り性能とトルク性能との関係は良好なものではないと判断した場合は、異物振り切り性能とトルク性能との関係が良好なものとなるように、異物振り切り性能(回転数毎の異物面位置)を調整するために、基本ハブシール5又は変更基本ハブシールの再設計、異物振り切り性能の確認を行う。または、異物振り切り性能とトルク性能との関係は良好なものではないと判断した場合は、異物振り切り性能とトルク性能との関係が良好なものとなるように、基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能の調整・確認を行う。または、異物振り切り性能とトルク性能との関係は良好なものではないと判断した場合は、異物振り切り性能とトルク性能との関係が良好なものとなるように、基本ハブシール5又は変更基本ハブシールの再設計、異物振り切り性能の確認に加えて、基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能の調整・確認を行う。このようにして、異物振り切り性能とトルク性能との関係は良好なものであると判断できるまで、基本ハブシール5又は変更基本ハブシールの再設計、異物振り切り性能の確認、及び基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能の調整・確認の少なくとも一方を繰り返し行う。実用回転数の各回転数において、トルクに対して十分と考えられる異物面位置となっている場合、異物振り切り性能とトルク性能との関係は良好なものであると判断し、この形状のハブシールを製造するハブシールとし、ハブシール1の設計が完了する。そして、ハブシール1を製造する。
以下、ハブシール1の製造方法を具体的に説明する。図14~16は、ハブシール1を製造するハブシール製造処理のフローチャートを示す図である。
図14~16に示すように、ハブシール製造処理においては、先ず、ハブシール1に対する要求値が設定される(ステップS1)。ハブシール1に対する要求値は、上述したように、ハブシールに求められる形状や大きさ、要求される性能値等である。本実施の形態においては、ハブベアリング50の形態に基づいて、ハブシール1に求められる形状や大きさが設定される。また、1000rpm以上の実用回転数における最大トルクが10N・cmと、要求トルク値が設定される。次いで、ステップS2において、ステップS1において設定した形状や大きさに適合する基本ハブシール5を設計する。基本ハブシール5は、上述したように、ハブシール1に対して、サイドリップの形状のみが異なり、先端部41の厚さが長さL1に亘って一様なサイドリップ6を有している(図9,10参照)。
次いで、ステップS2において設計した基本ハブシール5の異物振り切り性能の確認を行う(ステップS3)。ステップS3の異物振り切り性能の確認においては、上述のように、基本ハブシール5の回転数と、基本ハブシール5における異物面位置との関係(図7参照)を確認し、基本ハブシール5の異物振り切り性能が良好なものであるか否かを判断する。具体的には、1000rpm以上の実用回転数の範囲において、異物面位置が所定の径方向位置である基準位置Z(Zは例えば12cm)以上の高さになっているか否かを確認し、この実用回転数の範囲において、異物面位置が基準位置Z以上の高さになっていれば、基本ハブシール5の異物振り切り性能は良好と判断する(ステップS3においてYes)。基本ハブシール5の異物振り切り性能は良好と判断されると、基本ハブシール5のトルク性能の調整・確認工程に移る(ステップS6)。一方、この実用回転数の範囲において、異物面位置が基準位置Zよりも低くなっていれば、基本ハブシール5の異物振り切り性能は良好ではないと判断する(ステップS3においてNo)。
ステップS3において、基本ハブシール5の異物振り切り性能は良好ではないと判断された場合(ステップS3においてNo)、基本ハブシール5の異物振り切り性能が向上するように基本ハブシール5の再設計を行う(ステップS4)。ステップS4においては、基本ハブシール5の異物振り切り性能に影響する構造を変更して、変更基本ハブシールを設計する。基本ハブシール5の異物振り切り性能に影響する構造は、例えば、基本ハブシール5の上流空間Sの形状である。ついで、この変更基本ハブシールに対して、ステップS3と同様に、異物振り切り性能の確認を行う(ステップS5)。ステップS5において、変更基本ハブシールの異物振り切り性能は良好ではないと判断された場合(ステップS5においてNo)、ステップS4に戻り、基本ハブシール5の異物振り切り性能が向上するように基本ハブシール5の再設計を再度行う。この時、ステップS5において、異物振り切り性能は良好ではないと判断された変更基本ハブシールの異物振り切り性能が向上するようにこの変更基本ハブシールの再設計を行って、新たな変更基本ハブシールを設計してもよい。ステップS5において、変更基本ハブシールの異物振り切り性能は良好であると判断されるまで、変更基本ハブシールの設計(ステップS4)、及び変更基本ハブシールの異物振り切り性能の確認(ステップS5)が繰り返される。そして、ステップS5において、変更基本ハブシールの異物振り切り性能は良好と判断されると(ステップS5においてYes)、変更基本ハブシールのトルク性能の調整・確認工程に移る(ステップS6)。
基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能の調整・確認工程においては、先ず、基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能がステップS1において設定された要求トルク値を満たすリップ反力Fとなるサイドリップの形状を推定し、この推定に基づいて、リップ反力Fを決める形態要素を調整してサイドリップ6の形状を基本形状から調整する(ステップS6)。ついで、この調整されたサイドリップ6を有する基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能がステップS1において設定された要求トルク値を満たすか否かを確認する(ステップS7)。この調整されたサイドリップ6を有する基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能がステップS1において設定された要求トルク値を満たす場合(ステップS7においてYes)、シール性能確認工程(ステップS10)に移る。
一方、調整されたサイドリップ6を有する基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能がステップS1において設定された要求トルク値を満たさない場合(ステップS7においてNo)、基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能がステップS1において設定された要求トルク値を満たすリップ反力Fとなるサイドリップの形状を再度推定し、この再度の推定に基づいて、リップ反力Fを決める形態要素を再度調整してサイドリップ6の形状を調整する(ステップS8)。次いで、ステップS7と同様に、ステップS8において再度調整されたサイドリップ6を有する基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能がステップS1において設定された要求トルク値を満たすか否かを確認する(ステップS9)。この再度調整されたサイドリップ6を有する基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能がステップS1において設定された要求トルク値を満たす場合(ステップS9においてYes)、シール性能確認工程(ステップS10)に移る。
一方、ステップS9において、再度調整されたサイドリップ6を有する基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能がステップS1において設定された要求トルク値を満たさない場合(ステップS9においてNo)、ステップS8に戻り、基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能がステップS1において設定された要求トルク値を満たすリップ反力Fとなるサイドリップの形状を再度推定し、この再度の推定に基づいて、リップ反力Fを決める形態要素を再度調整してサイドリップ6の形状を調整する。ステップS9において、再度調整されたサイドリップ6を有する基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能がステップS1において設定された要求トルク値を満たすようになるまで、サイドリップ6の形状を調整(ステップS8)、及び調整されたサイドリップ6を有する基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能の確認(ステップS9)が繰り返される。そして、ステップS9において、再度調整されたサイドリップ6を有する基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能がステップS1において設定された要求トルク値を満たすと判断されると(ステップS9においてYes)、シール性能確認工程(ステップS10)に移る。
シール性能確認工程(ステップS10)においては、上述のように、基本ハブシール5又は変形基本ハブシールの異物振り切り性能と、基本ハブシール5又は変形基本ハブシールのトルク性能との関係を確認し、異物振り切り性能とトルク性能との関係が良好なものであるか確認する。図7に示すように、実用回転数の各回転数において、基本ハブシール5又は変形基本ハブシールのトルクに対して十分と考えられる異物面位置となっている場合、異物振り切り性能とトルク性能との関係は良好なものであると判断する(ステップS10においてYes)。
一方、シール性能確認工程(ステップS10)において、基本ハブシール5又は変形基本ハブシールのトルクに対して十分と考えられる異物面位置となっていない場合、異物振り切り性能とトルク性能との関係は良好なものでないと判断する(ステップS10においてNo)。ステップS10において、異物振り切り性能とトルク性能との関係は良好なものでないと判断されると、異物振り切り性能とトルク性能との関係が良好なものとなるように、ステップS4,5と同様に、基本ハブシール5又は変更基本ハブシールの再設計をして(ステップS11)、異物振り切り性能の確認を行い(ステップS12)、異物振り切り性能(回転数毎の異物面位置)の調整を行う。そして、ステップS12において異物振り切り性能が良好と判断されると、再度シール性能の確認が行われる(ステップS10)。
また、ステップS10において、異物振り切り性能とトルク性能との関係は良好なものでないと判断されると、異物振り切り性能とトルク性能との関係が良好なものとなるように、ステップS6,7と同様に、サイドリップ6の形状を調整し(ステップS13)、基本ハブシール5又は変更基本ハブシールのトルク性能の確認を行い(ステップS14)、基本ハブシール5又は変更基本ハブシールの回転数毎のトルクの調整を行う。そして、ステップS14においてトルク性能が良好と判断されると、再度シール性能の確認が行われる(ステップS10)。なお、ステップS10において、異物振り切り性能とトルク性能との関係は良好なものでないと判断されると、異物振り切り性能とトルク性能との関係が良好なものとなるように、上述のステップS11,12の異物振り切り性能(回転数毎の異物面位置)の調整と、上述のステップS13,14の回転数毎のトルクの調整との2つを行うようにしてもよい。
このようにステップS10~S14の処理を行い、異物振り切り性能とトルク性能との関係は良好なものと判断される基本ハブシール5又は変更基本ハブシールの形態を導き出す。次いで、異物振り切り性能とトルク性能との関係は良好なものであると判断されると(ステップS10においてYes)、導き出された形態のハブシールを製造するハブシール1とし、ハブシール1の設計が完了する(ステップS15)。そして、ハブシール1を製造する(ステップS16)し、ハブシール製造処理を終了する。
このように、本発明の実施の形態に係るハブシールの製造方法によれば、サイドリップ4のリップ反力Fの低減の、必要とされるシール性能を維持するための限界を下げることができるハブシール1を製造することができる。このため、本発明の実施の形態に係るハブシールの製造方法によれば、ハブシール1のトルクの低減の、必要とされるシール性能を維持するための限界を下げることができるハブシール1を製造することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施の形態に係るハブシール1及びハブシール1の製造方法に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
例えば、本発明に係るハブシールの製造方法によって製造されるハブシールは、上述のハブシール1のような内輪回転型のハブベアリングに適用されるものに限られず、外輪回転型のハブベアリングに適用されるものも含む。図17は、本発明に係るハブシールの製造方法によって製造されるハブシールの他の一例としてのハブシール7を示す図であり、ハブシール7の軸線xに沿う断面における断面図である。以下、ハブシール7について、上述のハブシール1と同じ又は同様の機能を有する構成については、ハブシール1における符号と同じ符号を付してその説明を省略し、ハブシール1とは異なる構成について説明する。
ハブシール7は、具体的には例えば、図17に示すように、ハブベアリング(不図示)の回転側の外輪(不図示)に取り付けられる第1のシール部材としてのシール本体8と、ハブベアリングの固定側の内輪(不図示)に取り付けられる第2のシール部材としてのスリーブ9とを備えている。シール本体8及びスリーブ9は、軸線x周りに環状の部材であり、シール本体8は、軸線x周りに環状のサイドリップ4を有している。シール本体8は、上述のシール本体2とは異なり、外周側に固定され、スリーブ9は、上述のスリーブ3とは異なり内周側に固定される。
スリーブ9は、スリーブ3と同様の断面形状を有しており、スリーブ3の筒部31に対応する筒部34と、スリーブ3の円環部32に対応する円環部35とを有している。筒部34は、スリーブ9が内輪に嵌着されるように、内輪に締まり嵌め方式で嵌め入れられるような形状となっている。円環部35は、ハブシール7の使用状態において、サイドリップ4が接触する面である接触面36が形成されている。接触面36は、円環部35において内側に面する面であり、軸線xに直交又は略直交する平面に平行又は略平行に広がる軸線x周りに環状の平面又は略平面である。
シール本体8は、シール本体2の補強環10に対応する補強環13と、シール本体2の弾性体部20に対応する弾性体部23とを有してる。補強環13は、補強環10と同様の断面形状を有しており、補強環10の筒部11に対応する筒部14と、補強環10の円環部12に対応する円環部15とを有している。筒部14は、補強環13が外輪に嵌着されるように、外輪が締まり嵌め方式で嵌め入れられるような形状となっている。
弾性体部23は、シール本体2の弾性体部20の基体部21及び筒状部22に夫々対応する部分である、基体部24及び筒状部25を有している。基体部24は、補強環13の円環部15の内周側の部分に取り付けられている部分であり、筒状部25は、補強環13の円環部15の外周側の部分及び筒部14に取り付けられている部分である。また、弾性体部23は、シールリップ26と、グリースリップ27とを有している。シールリップ26は、密封空間S1内への異物の進入の防止を図るものであり、また、密封空間S1内からの潤滑剤の流出の防止を図るものである。また、グリースリップ27は、密封空間S1内からの潤滑剤の流出の防止を図るものである。なお、ハブシール7は、シールリップ26を有していなくてもよい。同様に、ハブシール7は、グリースリップ27を有していなくてもよい。
シールリップ26は、補強環13の円環部15の内周側の端部近傍に位置する基体部24の内周側の端部(内周端部24a)から外側に延びており、グリースリップ27は、基体部24の内周端部24aから内側及び内周側に延びている。シールリップ26は、公知のシールリップと同様の形態を有しており、図17に示すように、先端側に、リップ先端部26aを有している。リップ先端部26aは、例えば断面楔型の部分であり、使用状態においてスリーブ8の筒部34の外周面34aに接触するようになっている。グリースリップ27は、公知のグリースリップと同様の形態を有しており、図17に示すように、リップ先端部27aが使用状態においてスリーブ8の筒部34の外周面34aに接触するようになっている。また、シールリップ26には、リップ先端部26aに背向する位置にガータスプリング28が取り付けられており、ガータスプリング28は、リップ先端部26aを内周側に押す緊迫力をシールリップ26に与えており、リップ先端部26aをスリーブ9の筒部34に押し付ける緊迫力を高めている。
また、上述のように、弾性体部23はサイドリップ4を有している。ハブシール7において、サイドリップ4は、図17に示すように、弾性体部23の基体部24から外側及び外周側に向かって延びており、サイドリップ4の内周面41cが、外輪と内輪との間の空間の密封のための接触面4aを形成するようになっている。また、サイドリップ4は、ハブシール7の使用状態において、先端部41の接触面4aが所定の締め代を持ってスリーブ8の接触面36に接触するように形成されている。
ハブシール7は、ハブシール1と同様に、サイドリップ4のリップ反力Fの低減の、必要とされるシール性能を維持するための限界を下げることができる。
また、ハブシール7には、シールリップ26及びグリースリップ27が設けられており、サイドリップ4に加えて、シールリップ26及びグリースリップ27によっても、異物の進入を防止でき、また、潤滑剤の流出を防止できる。また、シールリップ26にはガータスプリング28が取り付けられているため、シールリップ26は、ガータスプリング28によってスリーブ9の筒部34への緊迫力が高められている。このため、ハブベアリングの回転時に、特に高速回転時に、シールリップ26がスリーブ9の筒部34から離れることが抑制されており、潤滑剤の流出を抑制することができる。このように、ハブシール7は、潤滑剤がより流出し難くなっている。
また、例えば、本発明に係るハブシールは、インホイールモータユニットにも適用することができる。インホイールモータユニットは、ハブベアリングとモータとが一体になって構成する駆動装置であり、車両の車輪に取り付けられ、モータ出力をハブベアリングを介して車輪に供給して車輪に動力を与え、また、車輪の動力をモータジェネレータを介して電力に変換して電気を発生する。
図18は、ハブシール7が使用されるインホイールモータユニットの一例の断面図である。例えば図18に示すように、インホイールモータユニット100は、内輪回転型のハブベアリング60と、ハブベアリング60に取り付けられた外側部材としての外側ケーシング101、内側部材としての内側ケーシング102、及びモータジェネレータ103とを備えている。具体的には、外側ケーシング101は、筒状の部材であり、ハブベアリング60を収容する内側の空間を形成している。外側ケーシング101は、ハブベアリング60の内輪61が備えるハブフランジ62とハブフランジ62に取り付けられるブレーキディスク110との間に挟まれ、ハブボルト63によって内輪61に車輪を固定することにより、ハブフランジ62とブレーキディスク110との間に固定される。
内側ケーシング102は、ハブベアリング60の外輪64を収容する内周側の空間を形成している筒状の部材である筒部102aと、筒部102aの内側の端部から外周側に広がる円板状の部分である円板部102bとを有している。筒部102aは、外輪64が内周側の空間に嵌合されて固定されるような形状となっている。外側ケーシング101及び内側ケーシング102は、図18に示すように、外側ケーシング101の内周側の面と、内側ケーシング102の筒部102aの外周側の面とが互いに対向して、外側ケーシング101と筒部102aとの間に環状の空間が形成される形状となっている。また、外側ケーシング101及び内側ケーシング102は、図18に示すように、外側ケーシング101の内側の端部(端部101a)が、軸線Ax方向において内側ケーシング102の円板部102bに対向する形状となっている。外側ケーシング101の端部101aと円板部102bとの間には環状の隙間が形成されている。
モータジェネレータ103は、軸線Axに沿って延びる筒状の部材であり、外側ケーシング101と内側ケーシング102の筒部102aとの間の環状の空間に設けられている。モータジェネレータ103は、具体的には、ロータ104と、ステータ105とを備えており、ロータ104は外側ケーシング101に固定されており、ステータ105は、内側ケーシング102の筒部102aに固定されている。
インホイールモータユニット100において、ハブシール7は、外側ケーシング101の端部101aと内側ケーシング102の円板部102bとの間の環状の隙間から、インホイールモータユニット100の内部に、異物が侵入することを防ぐために設けられている。例えば図18に示すように、ハブシール7は、外側ケーシング101の端部101aと内側ケーシング102の円板部102bとの間に取り付けられている。具体的には、スリーブ9が、内側ケーシング102の円板部102bの取付面102cに締まり嵌め方式で嵌着されて、スリーブ9は内側ケーシング102の円板部102bに固定されている。また、具体的には、シール本体8が、外側ケーシング101の端部101aの取付面101bに締まり嵌め方式で嵌着されて、シール本体8は外側ケーシング101に固定されている。なお、内側ケーシング102の円板部102bの取付面102cは、軸線Axに沿って延びる円筒面状の面であり、外側ケーシング101の端部101aの取付面101bは、軸線Axに沿って延びる円筒面状の面である。また、取付面101bと取付面102cとは、径方向において互いに対向している。