JP2020051597A - 車輪用軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ラビリンスを有するシール部材において、回転トルクを増大させることなくシール性を向上することができる車輪用軸受装置を提供する。【解決手段】外方部材である外輪2と、内方部材であるハブ輪3と、およびハブ輪3に圧入された少なくとも一つの内輪4と、この外輪2とハブ輪3の軌道面間に転動自在に収容された転動体5と、シール板7と弾性体からなるシールリップとから構成されるインナー側シール部材6と、スリンガ嵌合部8aと立板部8bと円筒部8cとを有するスリンガ8と、を備える車輪用軸受装置1において、シールリップが、スリンガ嵌合部8aに接触しているラジアルリップ17dと、円筒部8cに近接する方向に延びているアキシアルリップと17cを含み、アキシアルリップ17cの基部17fのリップ支持部7bの径方向内側の端部からの距離が、シール部材6のシール高さH0の1/5に相当する距離に比して小さい。【選択図】図3
Description
本発明は車輪用軸受装置に関する。詳しくはラビリンスを形成するシール部材を備える車輪用軸受装置に関する。
従来、車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置が知られている。車輪用軸受装置は、車輪に接続されるハブ輪(内方部材)が転動体を介して外方部材に回転自在に支持されている。このような車輪用軸受装置には、内部に封入されているグリースの漏れを防止するとともに外部から雨水や粉塵等の異物が入り込むことを防止するために外方部材と内方部材との間にシール部材が設けられている。このような車輪用軸受装置においては、より長い軸受寿命を得るために、シール部材に複数のシール機構を設けてシール性を向上させているものがある。シール部材には、複数のシールリップによってラビリンスを構成しているものがある。例えば、特許文献1に記載の如くである。
特許文献1に記載の車輪用軸受装置において、シール部材は、スリンガの円筒部がシール板と僅かな径方向隙間を介して対峙されることでラビリンスが構成されている。また、シール部材は、スリンガの立板部に近接しているアキシアルリップ、スリンガの嵌合部に接触または近接しているラジアルリップに加え、スリンガの立板部に接触または近接している中間リップが設けられている。そして、シール部材は、外方部材と内方部材の間から浸入した泥水等をアキシアルリップによって受けて一時的に溜めることができる空間が確保されている。
しかし、アキシアルリップと中間リップとを備える構成では、上記空間の高さを確保することが困難であり、この空間に浸入した泥水等がアキシアルリップの先端部に届きやすくなっている。このため、特許文献1に記載の技術では、浸入した泥水等がアキシアルリップの先端部まで容易に届いてしまうため、泥水等がラビリンスを通り抜けて、中間リップ側へ浸入してしまうという問題が生じている。また、一旦ラビリンスを通り抜けた泥水等は、シール部材の内部から自然に排出されにくいため、泥水等がシール部材の内部に留まることとなる。このため、特許文献1に記載の車輪用軸受装置を構成するラビリンスを有するシール部材では、泥水等の軸受装置内部への浸入を十分に抑制できないという問題があった。
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、ラビリンスを有するシール部材によって、回転トルクを増大させることなくシール性を向上することができる車輪用軸受装置の提供することを目的とする。
即ち、第一の発明に係る車輪用軸受装置においては、内周に複列の外側軌道面を有する外方部材と、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側軌道面に対向する複列の内側軌道面を有する内方部材と、この内方部材と前記外方部材のそれぞれの軌道面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材の開口部に嵌合される円筒状のシール板嵌合部と、このシール板嵌合部の端部から径方向内方へ延びるリップ支持部とを有するシール板と、前記シール板に設けられる弾性体からなるシールリップと、から構成されるシール部材と、前記シール板に対向するようにして前記内方部材の外周部に嵌合されるスリンガ嵌合部と、径方向外側に延びる立板部と、この立板部の径方向外側の端部から前記シール板に向けて軸方向へ筒状に屈曲した円筒部とを有するスリンガと、を備える車輪用軸受装置において、前記シールリップが、前記スリンガ嵌合部に接触しているラジアルリップと、前記円筒部に近接する方向に延びているアキシアルリップとを含み、前記アキシアルリップの基部の前記リップ支持部の径方向内側の端部からの距離が、前記シール部材のシール高さの1/5に相当する距離に比して小さいものである。
第二の発明に係る車輪用軸受装置においては、前記アキシアルリップの先端部と、前記スリンガの円筒部のアウター側の端部との距離が、前記アキシアルリップの先端部と、前記スリンガの円筒部の径方向内側の側面との距離に比して大きいものである。
第三の発明に係る車輪用軸受装置においては、前記アキシアルリップは、径方向外側に面する第一面と、径方向内側に面する第二面と、を有し、前記ハブ輪の軸心に対して前記第一面がなす第一の角度が、前記ハブ輪の軸心に対して前記第二面がなす第二の角度に比して大きいものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、第一の発明および第二の発明によれば、ラビリンスを有するシール部材において、シール部材の内部に入り込んだ泥水等をアキシアルリップの先端部へ届きにくくすることができる。これにより、回転トルクを増大させることなくシール性を向上することができる。
第三の発明によれば、ラビリンスを有するシール部材において、アキシアルリップの泥水等を受ける空間の一部を構成する面の基部から先端部へと向かう上り面の傾斜角度を大きくすることができる。これにより、シール部材の内部に入り込んだ泥水等をアキシアルリップの先端部へより届きにくくすることができ、回転トルクを増大させることなくシール性を向上することができる。
以下に、図1乃至図3を用いて、本発明に係る車輪用軸受装置の第一実施形態である車輪用軸受装置1について説明する。
図1と図2とに示すように、車輪用軸受装置1は、車輪を回転自在に支持するものである。車輪用軸受装置1は、外方部材である外輪2、内方部材であるハブ輪3、内輪4、転動列である二列のインナー側ボール列5a、アウター側ボール列5b、インナー側シール部材6、アウター側シール部材9を備えている。本明細書において、「インナー側」とは、車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車体側を表し、「アウター側」とは、車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車輪側を表す。また、車輪用軸受装置1の回転軸と平行な方向を「軸方向」、車輪用軸受装置1の回転軸に直交する方向を「径方向」、車輪用軸受装置1の回転軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」と表す。
図1に示すように、外方部材である外輪2は、ハブ輪3(ハブ輪3と内輪4)を支持するものである。外輪2は、略円筒状に形成されている。外輪2において、車載時に車体側に配置される外輪2のインナー側端部には、インナー側シール部材6が嵌合可能なインナー側開口部2aが形成されている。外輪2において、車載時に車輪側に配置されるアウター側端部には、アウター側シール部材9が嵌合可能なアウター側開口部2bが形成されている。
外輪2の内周面には、環状に形成されているインナー側の外側軌道面2cとアウター側の外側軌道面2dとが周方向に互いに平行になるように形成されている。アウター側の外側軌道面2dは、インナー側の外側軌道面2cよりピッチ円直径が大きく形成されているが、同等でも構わない。外輪2の外周面には、図示しない懸架装置のナックルに取り付けるための車体取り付けフランジ2eが一体に形成されている。
内方部材を構成するハブ輪3は、図示しない車両の車輪を回転自在に支持するものである。ハブ輪3は、有底円筒状に形成されている。ハブ輪3において、車載時に車体側に配置されるインナー側端部には、外周面に縮径された小径段部3aが形成されている。ハブ輪3のアウター側端部には、車輪を取り付けるための車輪取り付けフランジ3bが一体的に形成されている。車輪取り付けフランジ3bには、円周等配位置にハブボルト3dが挿入される。また、ハブ輪3は、アウター側に形成されている内側軌道面3cが外輪2のアウター側の外側軌道面2dに対向するように配置されている。
ハブ輪3の小径段部3aには、内輪4が設けられる。ハブ輪3は、インナー側端部の内輪4に形成されている内側軌道面4aが外輪2のインナー側の外側軌道面2cに対向するように配置されている。
内輪4は、転動体5であるインナー側ボール列5aとアウター側ボール列5bとに予圧を与えるものである。内輪4は、円筒状に形成されている。内輪4の外周面には、周方向に環状の内側軌道面4aが形成されている。内輪4は、ハブ輪3のインナー側端部にかしめ加工をすることにより一体的に固定されている。つまり、ハブ輪3のインナー側には、内輪4によって内側軌道面4aが構成されている。
転動体5であるインナー側ボール列5aとアウター側ボール列5bとは、ハブ輪3を回転自在に支持するものである。インナー側ボール列5aとアウター側ボール列5bとは、複数のボールが保持器によって環状に保持されている。インナー側ボール列5aは、内輪4に形成されている内側軌道面4aと、それに対向している外輪2のインナー側の外側軌道面2cとの間に転動自在に挟まれている。アウター側ボール列5bは、ハブ輪3に形成されている内側軌道面3cと、それに対向している外輪2のアウター側の外側軌道面2dとの間に転動自在に挟まれている。つまり、インナー側ボール列5aとアウター側ボール列5bとは、外輪2に対してハブ輪3と内輪4とを回転自在に支持している。
車輪用軸受装置1は、外輪2とハブ輪3と内輪4とインナー側ボール列5aとアウター側ボール列5bとから複列アンギュラ玉軸受が構成されている。なお、本実施形態において、車輪用軸受装置1には、複列アンギュラ玉軸受が構成されているがこれに限定されるものではなく、複列円錐ころ軸受等で構成されていてもよい。
図1と図2とに示すように、インナー側シール部材6は、外輪2のインナー側開口部2aと内輪4との隙間を塞ぐものである。インナー側シール部材6は、例えば、略円筒状のシール板7と略円筒状のスリンガ8とを備えている。
図2と図3とに示すように、シール板7は、例えば、芯金とシールリップとから構成されている。芯金は、金属製であり、例えば、円環状の鋼板の外縁部がプレス加工によって屈曲され、軸方向断面視で略L字状に形成されている。これにより、芯金は、円筒状のシール板嵌合部7aと、その端部から軸心に向かって延びる円環状のリップ支持部7bとが構成されている。シール板嵌合部7aの嵌合面には、シール材が加硫接着されている。リップ支持部7bの径方向内側の端部近傍には、アキシアルリップ7c、ラジアルリップ7d、グリースリップ7eが一体に加硫接着されている。アキシアルリップ7c、ラジアルリップ7dおよびグリースリップ7eは、例えば、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)等の合成ゴムから構成されている。シール板7は、シール板嵌合部7aが外輪2のインナー側開口部2aに嵌合されて外輪2と一体的に構成されている。
スリンガ8は、例えば、金属製であり、円環状の鋼板の外縁部と内縁部とがプレス加工によって屈曲され、軸方向断面視で略L字状に形成されている。これにより、スリンガ8は、円筒状のスリンガ嵌合部8aと、スリンガ嵌合部8aの端部から径方向外側に向かって延びる円環状の立板部8bと、立板部8bの端部から軸方向へ筒状に屈曲した円筒部8cとが構成されている。また、スリンガ8の立板部8bおよび円筒部8cの外側面には、磁気エンコーダ8dが設けられている。スリンガ8は、スリンガ嵌合部8aが内輪4に嵌合されて固定されている。この際、スリンガ8は、立板部8bの内側面がシール板7のリップ支持部7bに対向するように配置されている。
このように、インナー側シール部材6は、外輪2のインナー側開口部2aに嵌合されたシール板7と内輪4に嵌合されたスリンガ8とが対向するように配置され、パックシールを構成している。シール板7のアキシアルリップ7cは、スリンガ8の立板部8bと円筒部8cに対して近接してラビリンスを構成しており、主に車輪用軸受装置1の外部から泥水等の内部への入り込みを防止している。シール板7のラジアルリップ7dは、スリンガ嵌合部8aのうちグリースリップ7eの接触位置よりも外側(インナー側)に油膜を介して接触または近接し、主に車輪用軸受装置1の外部から粉塵等の内部への入り込みを防止している。また、シール板7のグリースリップ7eは、油膜を介してスリンガ8のスリンガ嵌合部8aに接触または近接し、主に車輪用軸受装置1の内部のグリースの外部への漏れを防止している。なお、アキシアルリップ7cと立板部8bの間には油膜が介在していてもよい。
インナー側シール部材6は、シール板7のアキシアルリップ7cがスリンガ8に対して非接触であってラビリンスを構成しており、かつ、ラジアルリップ7dおよびグリースリップ7eが油膜を介してスリンガ8に接触または近接することでスリンガ8に対して摺動可能に構成されている。これにより、インナー側シール部材6は、外輪2のインナー側開口部2aからのグリースの漏れおよび外部からの雨水や粉塵等の入り込みを防止する。
図1に示すように、アウター側シール部材9は、外輪2のアウター側開口部2bとハブ輪3との隙間を塞ぐものである。アウター側シール部材9は、例えば、略円筒状の芯金にシールリップが加硫接着された一体型のシールとして構成されている。
アウター側シール部材9は、芯金が外輪2のアウター側開口部2bに嵌合されている。この際、アウター側シール部材9は、シールリップがハブ輪3のシール摺動面に接触するように配置されている。アウター側シール部材9は、シールリップが油膜を介してハブ輪3のシール摺動面と接触することでシール摺動面に対して摺動可能に構成されている。これにより、アウター側シール部材9のシールリップは、外輪2のアウター側開口部2bからのグリースの漏れおよび外部からの雨水や粉塵等の入り込みを防止する。
次に、図3と図4とを用いて、インナー側シール部材6について、さらに詳細に説明する。シール板7のアキシアルリップ7cは、芯金のリップ支持部7bの端部の近傍からシール板7の内側面側に向けて突出するように形成されており、アキシアルリップ7cの根元の部位には軸方向に沿って延びる部位である基部7fを有している。アキシアルリップ7cの基部7fは、リップ支持部7bの径方向内側の端部から、シール板7の径方向寸法(シール高さH0)の1/5未満の寸法だけ径方向外側へ寄せた部位に設けられている。そして、インナー側シール部材6の内部には、泥水等を一旦受けるための空間Sが形成されている。空間Sは、アキシアルリップ7cの径方向外側に形成される空間である。
インナー側シール部材6は、基部7fをシール板7の径方向内側端部の近傍に設けることによって、空間Sの径方向高さH1を、中間リップを設けた場合における同空間の径方向高さに比して大きくすることができる。さらに、インナー側シール部材6は、基部7fをシール板7の径方向内側端部の近傍に設けることによって、基部7fから先端部7gまでの径方向の距離H2を、中間リップを設けた場合における同距離に比して大きくすることができる。そして、インナー側シール部材6は、このような構成によって、空間Sに入り込んだ泥水等がアキシアルリップ7cの先端部7gに届きにくくしている。
図4に示すように、シール板7のアキシアルリップ7cは、先端部7gが円筒部8cに対して隙間をあけて近接するように形成されている。これにより、インナー側シール部材6は、円筒部8cとシール板7のアキシアルリップ7c(先端部7g)との間において、第一ラビリンスシールLS1が構成されている。また、アキシアルリップ7cは、立板部8bに対しても隙間をあけて近接するように形成されている。これにより、インナー側シール部材6には、立板部8bとシール板7のアキシアルリップ7c(先端部7g)との間において、第二ラビリンスシールLS2が構成されている。このようにインナー側シール部材6では、第一ラビリンスシールLS1と第二ラビリンスシールLS2という複数のラビリンス機構からなるラビリンスシールLSが形成されている。
また、図3と図4とに示すように、アキシアルリップ7cは、基部7fが一旦軸方向に延びたあと、スリンガ8の円筒部8cに向かって延びるように形成されている。アキシアルリップ7cの先端部7gは、基部7fの反対側の端部であり、スリンガ8の円筒部8cと立板部8bに近接した位置に配置されている。アキシアルリップ7cは、径方向外側に面する第一面7hを有している。第一面7hは、ハブ輪3の軸心Xを中心とする円錐面の一部であり、径方向および軸方向に対して傾斜している。また、アキシアルリップ7cは、径方向内側に面する第二面7kを有している。第二面7kは、ハブ輪3の軸心Xを中心とする円錐面の一部であり、径方向および軸方向に対して傾斜している。
このような構成のアキシアルリップ7cは、軸方向断面視において、基部7f側から先端部7g側に向かうにつれて厚みが大きくなる部位を有している。このような構成では、第一面7hの延長線が軸心Xとなす第一の角度αが、第二面7kの延長線が軸心Xとなす第二の角度βよりも大きくなっている。さらに換言すれば、アキシアルリップ7cは、第一面7hがその一部を構成する円錐面の頂角2αが、第二面7kがその一部を構成する円錐面の頂角2βに比して大きくなる形状を有している。なお、仮にアキシアルリップ7cの厚みが基部7fから先端部7gに向かって均一であった場合、前述した第一面7hに係る第一の角度αと第二面7kに係る第二の角度βとが同一となる。
シール板7のアキシアルリップ7cにおいて、第一面7hが基部7fから先端部7gに向かって上り坂となっている部位では第一面7hの角度αが第二面7kの角度βよりも大きい場合には、その上り坂の傾斜角度は角度βよりも大きい角度αとなる。泥水等の流体は、上り坂の勾配が急であるほど遡上しにくくなる。なお、仮にアキシアルリップ7cの厚みが基部7fから先端部7gに向かって均一であった場合、前述した第一面7hの角度αと第二面7kの角度βとは同一である。つまり、インナー側シール部材6において、アキシアルリップ7cの第一面7hが基部7fから先端部7gに向かって上り坂となっている部位は、空間Sに溜まった泥水等が、第一面7hを遡って先端部7gに届きにくい構造を有している。
また、仮にアキシアルリップ7cの厚みが基部7fから先端部7gに向かって均一な場合であっても、第一面7hの角度αをより急にし上り坂の傾斜角度を大きくすることで、アキシアルリップ7cが形成する空間Sに溜まった泥水等を先端部7gに届きにくくすることは可能である。しかしながらこの場合に角度αを急にするためには、アキシアルリップ7cとスリンガ8の立板部8bとの距離がより大きくする必要があり、第二ラビリンスシールLS2を構成することが困難となる。つまり、第一面7hの角度αを第二面7kの角度βよりも大きくする構成では、アキシアルリップ7cが形成する空間Sに溜まった泥水等を、第一面7hを遡って先端部7gに届きにくくするとともに、第二ラビリンスシールLS2を構成可能とすることができる。
図4に示すように、アキシアルリップ7cは、その先端部7gが、スリンガ8の円筒部8cのアウター側端部を被装する磁気エンコーダ8dの端部から寸法Aだけインナー側に位置するように構成されている。車輪用軸受装置1では、この寸法Aを、0<A≦5mmとすることが好適であり、これにより、インナー側シール部材6内に浸入した泥水等を容易に排出することが可能になる。
また、アキシアルリップ7cは、その先端部7gが、スリンガ8の円筒部8cの径方向内側面から寸法Bだけ径方向内側に位置するように構成されている。車輪用軸受装置1では、この寸法Bを、0<B≦3mmとすることが好適である。そして、アキシアルリップ7cでは、寸法Aと寸法Bの関係を、A>Bとすることによって、アキシアルリップ7cの長さ(即ち、基部7fから先端部7gまでの距離)を確保する構成としている。
さらに、アキシアルリップ7cは、その先端部7gが、スリンガ8の立板部8bのアウター側の側面から寸法Cだけアウター側に位置するように構成されている。車輪用軸受装置1では、この寸法Cを、0<C≦3mmとすることが好適である。インナー側シール部材6では、寸法Bおよび寸法Cをこのように設定することにより、ラビリンスシールLS(第一ラビリンスシールLS1および第二ラビリンスリールLS2)のシール性を確保することができる。
次に、図5を用いて、本発明に係る車輪用軸受装置1の第二実施形態を構成するインナー側シール部材16について説明する。なお、以下の実施形態に係るインナー側シール部材16は、図1から図4に示す車輪用軸受装置1において、インナー側シール部材6に替えて適用可能なものであり、その説明で用いたものと同じ名称、図番、符号で表した部位は同じ部位を指しており、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
図5に示すように、インナー側シール部材16は、外輪2のインナー側開口部2aと内輪4との隙間を塞ぐものである。インナー側シール部材16は、例えば、略円筒状のシール板17と略円筒状のスリンガ8とを備えている。
シール板17は、例えば、芯金とシールリップとから構成されている。芯金は、円環状の鋼板の外縁部がプレス加工によって屈曲され、軸方向断面視で略L字状に形成されている。これにより、芯金は、円筒状のシール板嵌合部17aと、その端部から軸心に向かって延びる円環状のリップ支持部17bとが構成されている。シール板嵌合部17aの嵌合面には、シール材が加硫接着されている。リップ支持部17bの径方向内側の端部近傍には、アキシアルリップ17c、ラジアルリップ17d、グリースリップ17eが一体に加硫接着されている。シール板17は、シール板嵌合部17aが外輪2のインナー側開口部2aに嵌合されて外輪2と一体的に構成されている。そして、アキシアルリップ17cは、軸方向断面視において、基部17f側から先端部17g側に向かうにつれて厚みが大きくなる部位を有している。
インナー側シール部材16は、外輪2のインナー側開口部2aに嵌合されたシール板17と内輪4に嵌合されたスリンガ8とが対向するように配置され、パックシールを構成している。シール板17のアキシアルリップ17cは、スリンガ8の立板部8bと円筒部8cに対して近接してラビリンスを構成しており、主に車輪用軸受装置1の外部から泥水等の内部への入り込みを防止している。シール板17のラジアルリップ17dは、スリンガ嵌合部8aのうちグリースリップ17eの接触位置よりも外側(インナー側)に油膜を介して接触または近接し、主に車輪用軸受装置1の外部から粉塵等の内部への入り込みを防止している。また、シール板17のグリースリップ17eは、油膜を介してスリンガ8のスリンガ嵌合部8aに接触または近接し、主に車輪用軸受装置1の内部のグリースの外部への漏れを防止している。なお、アキシアルリップ17cと立板部8bの間には油膜が介在していてもよい。
インナー側シール部材16は、シール板17のアキシアルリップ17cがスリンガ8に対して非接触であってラビリンスを構成しており、かつ、ラジアルリップ17dおよびグリースリップ17eが油膜を介してスリンガ8に接触または近接することでスリンガ8に対して摺動可能に構成されている。これにより、インナー側シール部材16は、外輪2のインナー側開口部2aからのグリースの漏れおよび外部からの雨水や粉塵等の入り込みを防止する。
そして、ラジアルリップ17dの外周には、ラジアルリップ17dをスリンガ嵌合部8aに対して所定の締付力で締め付けて圧接させる円環状のスプリング18が巻回されている。これにより、インナー側シール部材16は、外輪2のインナー側開口部2aからのグリースの漏れおよび外部からの雨水や粉塵等の入り込みを防止する。
つまり、シール板17は、ラジアルリップ17dの形状が、上述したシール板7のラジアルリップ7dと相違している。また、インナー側シール部材16では、軸受装置内部への泥水等の浸入をより確実に防止するために、スプリング18を備えている。つまり、インナー側シール部材16は、シール板17とスプリング18を有している点で、上述したインナー側シール部材6と相違している。なお、インナー側シール部材16は、ここで説明しない部位については、上述したインナー側シール部材6と共通した構成を有している。
このように構成したインナー側シール部材16では、アキシアルリップ17cにおける泥水等の浸入抑制機能を高めるとともに、さらにラジアルリップ17dにおける泥水等の浸入抑制機能を高めることによって、外輪2のインナー側開口部2aから浸入した泥水等が車輪用軸受装置1内に浸入することをより確実に抑制することができるように構成されている。これにより、車輪用軸受装置1は、シール性をさらに向上することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。また、本実施形態において、車輪用軸受装置1は、ハブ輪3の外周に内側軌道面3cが直接形成されている第3世代構造の車輪用軸受装置として構成されているが、これに限定するものではなく、ハブ輪3に一対の内輪4が圧入固定された第2世代構造、または、ナックルとハブ輪との間に複列のアンギュラ玉軸受を嵌合させた第1世代構造であってもよい。さらに、内方部材としてハブ輪3と自在継手とが連結されており、取り付けフランジを有している外方部材である外輪2と内方部材であるハブ輪3と自在継手の嵌合体とで構成された第4世代構造であってもよい。
1 車輪用軸受装置
2 外輪
2a インナー側開口部
2c 外側軌道面
2d 外側軌道面
3 ハブ輪
3c 内側軌道面
4 内輪
4a 内側軌道面
5 転動体
6 インナー側シール部材
7 シール板
7a シール板嵌合部
7b リップ支持部
7c アキシアルリップ
7d ラジアルリップ
7f (アキシアルリップの)基部
7g (アキシアルリップの)先端部
7h 第一面
7k 第二面
8 スリンガ
8a スリンガ嵌合部
8b 立板部
8c 円筒部
α 第一の角度
β 第二の角度
H0 シール高さ
2 外輪
2a インナー側開口部
2c 外側軌道面
2d 外側軌道面
3 ハブ輪
3c 内側軌道面
4 内輪
4a 内側軌道面
5 転動体
6 インナー側シール部材
7 シール板
7a シール板嵌合部
7b リップ支持部
7c アキシアルリップ
7d ラジアルリップ
7f (アキシアルリップの)基部
7g (アキシアルリップの)先端部
7h 第一面
7k 第二面
8 スリンガ
8a スリンガ嵌合部
8b 立板部
8c 円筒部
α 第一の角度
β 第二の角度
H0 シール高さ
Claims (3)
- 内周に複列の外側軌道面を有する外方部材と、
外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側軌道面に対向する複列の内側軌道面を有する内方部材と、
この内方部材と前記外方部材のそれぞれの軌道面間に転動自在に収容された複列の転動体と、
前記外方部材の開口部に嵌合される円筒状のシール板嵌合部と、このシール板嵌合部の端部から径方向内方へ延びるリップ支持部とを有するシール板と、前記シール板に設けられる弾性体からなるシールリップと、から構成されるシール部材と、
前記シール板に対向するようにして前記内方部材の外周部に嵌合されるスリンガ嵌合部と、径方向外側に延びる立板部と、この立板部の径方向外側の端部から前記シール板に向けて軸方向へ筒状に屈曲した円筒部とを有するスリンガと、
を備える車輪用軸受装置において、
前記シールリップが、前記スリンガ嵌合部に接触しているラジアルリップと、前記円筒部に近接する方向に延びているアキシアルリップとを含み、
前記アキシアルリップの基部の前記リップ支持部の径方向内側の端部からの距離が、前記シール部材のシール高さの1/5に相当する距離に比して小さい車輪用軸受装置。 - 前記アキシアルリップの先端部と、前記スリンガの円筒部のアウター側の端部との距離が、
前記アキシアルリップの先端部と、前記スリンガの円筒部の径方向内側の側面との距離に比して大きい請求項1に記載の車輪用軸受装置。 - 前記アキシアルリップは、径方向外側に面する第一面と、径方向内側に面する第二面と、を有し、
前記ハブ輪の軸心に対して前記第一面がなす第一の角度が、前記ハブ輪の軸心に対して前記第二面がなす第二の角度に比して大きい請求項1または請求項2に記載の車輪用軸受装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018184514A JP2020051597A (ja) | 2018-09-28 | 2018-09-28 | 車輪用軸受装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018184514A JP2020051597A (ja) | 2018-09-28 | 2018-09-28 | 車輪用軸受装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2020051597A true JP2020051597A (ja) | 2020-04-02 |
Family
ID=69996518
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2018184514A Pending JP2020051597A (ja) | 2018-09-28 | 2018-09-28 | 車輪用軸受装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2020051597A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022065194A1 (ja) * | 2020-09-28 | 2022-03-31 | Ntn株式会社 | 玉軸受及びプーリ |
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2018
- 2018-09-28 JP JP2018184514A patent/JP2020051597A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2022065194A1 (ja) * | 2020-09-28 | 2022-03-31 | Ntn株式会社 | 玉軸受及びプーリ |
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