JP2024031304A - 樹脂組成物およびフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】透明性が高く、かつ十分な機械強度を同時に満足るポリイミドを含む透明フィルム、およびその作製に用いられる樹脂組成物を提供する。【解決手段】ポリイミドとモノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸メチルの量が、60モル%以上であるアクリル系樹脂を含む樹脂組成物であって、前記ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物由来の構造とジアミン由来の構造を有し、前記ポリイミドはテトラカルボン酸二無水物由来の構造に2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物を含み、前記ジアミン由来の構造にフッ素原子を含まない芳香環を有する芳香族ジアミンを含み、フッ素含有率が18%以上であることを特徴とする、樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物およびフィルムに関する。
液晶、有機EL、電子ペーパー等の表示装置や、太陽電池、タッチパネル等のエレクトロニクスデバイスにおいて、薄型化や軽量化、さらにはフレキシブル化が要求されている。これらのデバイスに使用されるガラス材料をフィルム材料に代えることにより、フレキシブル化、薄型化、軽量化が図られる。ガラス代替材料として、透明ポリイミドフィルムが開発され、ディスプレイ用基板やカバーフィルム等に用いられている。
通常のポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸溶液を支持体上に膜状に塗布し、高温処理して、溶媒除去と同時に熱イミド化を行うことにより得られる。しかしながら、熱イミド化のための加熱温度は高く(例えば300℃以上)、加熱による着色(黄色度の上昇)が生じやすく、ディスプレイ用カバーフィルム等の高い透明性が要求される用途への適用が困難である。
高い透明性を有するポリイミドフィルムの製造方法として、有機溶媒に可溶であり、フィルム化後の高温でのイミド化を必要としないポリイミド樹脂を用いる方法が提案されている。例えば、特許文献1には、テトラカルボン酸二無水物成分としてビス無水トリメリット酸エステル類を含むポリイミドの製造方法が提案されており、当該方法により得られるポリイミドは、ジクロロメタン等の低沸点溶媒に可溶であり、かつ透明性および機械強度に優れることが記載されている。
国際公開第2020/004236号
ポリイミドは、剛直な構造を導入すると、機械強度が向上するものの、有機溶媒への溶解性や透明性の低下の要因となり、従来の透明ポリイミド樹脂では、透明性を保持したまま、高機械強度を持たせることは容易ではない。他方、アクリル樹脂等の透明性に優れた樹脂を用いた光学フィルムでは、機械強度が十分でなくフレキシブルディスプレイには使用が困難であるという課題があった。
かかる課題に鑑み、本発明は、透明性が高く、着色を低減可能であり、かつ十分な機械強度を有する透明フィルム、およびその作製に用いられる樹脂組成物の提供を目的とする。
本発明者らは鋭意検討の結果、下記樹脂組成物とすることで上記課題を解決することを見出した。本発明は以下の構成をなす。
1).ポリイミドとモノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸メチルの量が、60モル%以上であるアクリル系樹脂を含む樹脂組成物であって、
前記ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物由来の構造とジアミン由来の構造を有し、
前記ポリイミドはテトラカルボン酸二無水物由来の構造に2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物を含み、前記ジアミン由来の構造にフッ素原子を含まない芳香環を有する芳香族ジアミンを含み、フッ素含有率が18%以上であることを特徴とする、樹脂組成物。
2).前記ポリイミドがアミド系溶媒に可溶である、1)に記載の樹脂組成物。
3).フッ素原子を含まない芳香環を有する芳香族ジアミンが、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,2’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテルから選択される1種以上を含有する、1)または2)に記載の樹脂組成物。
4).前記アクリル系樹脂のガラス転移温度が80℃以上である、1)~3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
5). 前記ポリイミドと前記アクリル系樹脂を、2:98~98:2の範囲の重量比で含む、 1)~4)のいずれかに記載の樹脂組成物。
6).1)~5)のいずれかに記載の樹脂組成物を含むフィルム。
7).厚みが5μm以上300μm以下である6)に記載のフィルム。
8).厚みが50μmの時に、全光線透過率が89%以上、ヘイズが3%以下、黄色度が10以下、引張弾性率が2.8GPa以上、波長400nmでの透過率が40%以上である6)または7)に記載のフィルム。
本発明によれば、透明性が高く、着色を低減可能であり、かつ十分な機械強度を有する透明フィルム、およびその作製に用いられる樹脂組成物を提供することができる。
[樹脂組成物]
本発明の一実施形態は、ポリイミド樹脂とモノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸メチルの量が、60モル%以上であるアクリル系樹脂とを含む相溶系の樹脂組成物であって、前記ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物由来の構造とジアミン由来の構造を有し、
前記テトラカルボン酸二無水物由来の構造に2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物を含み、前記ジアミン由来の構造にフッ素原子を含まない芳香環を有する芳香族ジアミンを含み、フッ素含有率が18%以上であることを特徴とする、樹脂組成物である。
アミド系溶媒に可溶とは、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)から選択されるアミド系溶媒に、25℃において前記ポリイミドが5重量%以上溶解することを意味する。
<ポリイミド>
Figure 2024031304000001

ポリイミドとは、一般式(1)のような構造を有するものをいい、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物(以下、「酸二無水物」と記載する場合がある)との付加重合により得られるポリアミド酸の脱水環化や、ジイソシアネートと酸二無水物との脱炭酸による縮合などによって合成することができる。一般式(1)中のXは4価の有機基、Yは2価の有機基を表す。イミド環を形成する4つのカルボニル基と前記Xで形成される構造をテトラカルボン酸二無水物由来の構造とする。また、出発原料がジイソシアネートの場合であっても、一般式(1)中のN-Y-Nの構造をジアミン由来の構造とする。つまり、ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物由来の構造とジアミン由来の構造を有する。
本発明のポリイミド樹脂のフッ素含有率は、フッ素含有率が18%以上であり、フッ素原子によりポリイミド分子間相互作用を低下させる観点で好ましくはフッ素含有率が19%以上、より好ましくは、20%以上、更に好ましくは、21%以上である。フッ素含有量の上限は、特にないが、耐熱性などとのバランスを考慮すると32%程度が好ましい。ここで、フッ素含有率とは、ポリイミド構成単位における、フッ素原子含有量を平均分子量で除した値である。フッ素原子含有量はフッ素原子数と原子量の積で表され、構成されるモノマーが2種類以上の場合は各成分に含まれるフッ素原子の数とモル比から計算される平均フッ素原子数を用いて算出した。
(ジアミン)
本実施形態で用いるポリイミドは、ジアミン由来の構造として、前記ジアミン由来の構造にフッ素原子を含まない芳香環を有する芳香族ジアミンを含む。
前記フッ素原子を含む芳香環とは、フッ素原子、トリフルオロメチル基、-C(CF-、-C(CF、等が芳香環に結合している場合や、エステル基やエーテル基を介して-CH(CFCF(但し、nは1以上の整数)が結合している場合を意味する。
例えば、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンにおいては、芳香環を4つ有するが、フッ素原子を含む芳香環が2つ、フッ素原子を含まない芳香環を2つ有し、フッ素原子を含まない芳香環を有する芳香族ジアミンに該当する。
フッ素原子を含まない芳香環を有する芳香族ジアミンの中でも、ビフェニル構造、フェニレン骨格、ジフェニルエーテル骨格、ジフェニルスルホン骨格を有するジアミンが好ましい。ジアミン中の芳香環は無置換でもよく、メチル基等のアルキル基で置換されていてもよい。前記ジアミンを用いることにより、フッ素濃度を高めることが出来るため、アクリルとの相溶性に優れる傾向がある。
中でも、ビフェニル骨格の2位にアルキル基を有するアルキル置換ベンジジンやメタ置換のフェニレンジアミンが好ましい。ビフェニル骨格の2位および2’位にアルキル基を有することにより、立体障害によって、ビフェニル骨格の2つのベンゼン環の間の結合がねじれてπ共役の平面性が低下することにより、吸収端波長が短波長シフトして、ポリイミドの着色を低減できる。また、メタ位置換により分子直線性を低下させ、分子間相互作用がすることにより溶剤可溶とできる。
本発明で用いることのできるフッ素原子を含まない芳香環を有する芳香族ジアミンの例としては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、2,2-ジ(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)プロパン、1,1-ジ(3-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ジ(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1-(3-アミノフェニル)-1-(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’-ビス(3-アミノフェノキシ)-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、6,6’-ビス(4-アミノフェノキシ)-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2-アミノエチル)エーテル、ビス(3-アミノプロピル)エーテル、ビス(2-アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2-(2-アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2-(3-アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2-ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、1,2-ビス[2-(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2-ビス[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、trans-1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジ(2-アミノエチル)シクロヘキサン、1,3-ジ(2-アミノエチル)シクロヘキサン、1,4-ジ(2-アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロへキシル)メタン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,3’-ジメチルベンジジン、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチルベンジジン、2,2’-ジクロロ-3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、3,3’-ジクロロベンジジン、ベンジジンが挙げられる。
これらフッ素原子を含まない芳香環を有する芳香族ジアミンの中でも、ビフェニル構造中の近接位置に嵩高いアルキル基を有する点、また2つのアミノ基がメタ位の置換位置となる点で、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,2’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテルから選択される1種以上を含有することが好ましい。
上記ジアミンはポリイミド分子中のフッ素含有率が18%以上となる範囲で使用することができる。
前述のフッ素原子を含まない芳香環を有する芳香族ジアミン以外に、例えば2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4-フルオロ-1,3―ジアミノベンゼン、2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(4-アミノ-フェニル)ヘキサフルオロプロパン等のフッ素原子を含む芳香環のみからなる芳香族ジアミンが存在する。本発明のポリイミド樹脂のジアミン由来の構造にフッ素原子を含む芳香環のみからなる芳香族ジアミンを含まなくてもよいが、透明性が高く、着色を低減可能であり、かつ十分な機械強度を有する樹脂組成物という本発明の目的が達成できる範囲であれば、含むことも可能である。
(酸二無水物)
本実施形態で用いるポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物として、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物以外に、例えば、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,1’-ビシクロヘキサン-3,3’,4,4’テトラカルボン酸-3,4,3’,4’-二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2”-ノルボルナン-5,5”,6,6”-テトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビノルボルナン-5,5’,6,6’テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、または2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物または3,4’-オキシジフタル酸無水物、ピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物、5,5’-ジメチルメチレンビス(フタル酸無水物)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、p-ビフェニレンビス(トリメリテート無水物)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、をポリイミド分子中のフッ素含有率が18%以上となる範囲で使用することができる。
(ポリイミドの調製)
酸二無水物とジアミンとの反応によりポリイミド前駆体としてのポリアミド酸が得られ、ポリアミド酸の脱水環化(イミド化)によりポリイミドが得られる。上記の様に、ポリイミドの組成、すなわち酸二無水物およびジアミンの種類および比率を調整することにより、ポリイミドは、透明性および有機溶媒への溶解性を有するとともに、アクリル系樹脂との相溶性を示す。特に前記ポリイミドがアミド系溶媒に可溶であることが好ましい。
ポリアミド酸の調製方法は特に限定されず、公知のあらゆる方法を適用できる。例えば、酸二無水物とジアミンとを、略等モル量(95:100~105:100のモル比)で有機溶媒中に溶解させ、攪拌することにより、ポリアミド酸溶液が得られる。ポリアミド酸溶液の濃度は、通常5~35重量%であり、好ましくは10~30重量%である。この範囲の濃度である場合に、重合により得られるポリアミド酸が適切な分子量を有するとともに、ポリアミド酸溶液が適切な粘度を有する。
ポリアミド酸の重合に際しては、酸二無水物の開環を抑制するため、ジアミンに酸二無水物を加えるのが好ましい。複数種のジアミンや複数種の酸二無水物を添加する場合は、一度に添加してもよく、複数回に分けて添加してもよい。モノマーの添加順序を調整することにより、ポリイミドの諸物性を制御することもできる。
ポリアミド酸の重合に使用する有機溶媒は、ジアミンおよび酸二無水物と反応せず、ポリアミド酸を溶解させ得る溶媒であれば、特に限定されない。有機溶媒としては、メチル尿素、N,N-ジメチルエチルウレア等のウレア系溶媒、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、テトラメチルスルフォン等のスルホキシドあるいはスルホン系溶媒、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化アルキル系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、p-クレゾールメチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられる。通常これらの溶媒を単独でまたは必要に応じて2種以上を適宜組み合わせて用いる。ポリアミド酸の溶解性および重合反応性の観点から、DMAc、DMF、NMP等が好ましく用いられる。
ポリイミドは、ポリアミド酸の脱水環化により得られる。ポリアミド酸溶液からポリイミドを調製する方法として、ポリアミド酸溶液に脱水剤、イミド化触媒等を添加し、溶液中でイミド化を進行させる方法が挙げられる。イミド化の進行を促進するため、ポリアミド酸溶液を加熱してもよい。ポリアミド酸のイミド化により生成したポリイミドが含まれる溶液と貧溶媒とを混合することにより、ポリイミド樹脂が固形物として析出する。ポリイミド樹脂を固形物として単離することにより、ポリアミド酸の合成時に発生した不純物や、残存脱水剤およびイミド化触媒等を、貧溶媒により洗浄・除去可能であり、ポリイミドの着色や黄色度の上昇等を防止できる。また、ポリイミド樹脂を固形物として単離することにより、フィルムを作製するための溶液を調製する際に、低沸点溶媒等のフィルム化に適した溶媒を適用できる。
ポリイミドの分子量(ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリエチレンオキシド換算の重量平均分子量)は、10,000~400,000が好ましく、20,000~300,000がより好ましく、40,000~250,000がさらに好ましい。分子量が過度に小さい場合、フィルムの強度が不足する場合がある。一方で分子量が過度に大きい場合、アクリル系樹脂との相溶性に劣る場合がある。
樹脂組成物およびフィルムの熱安定性および光安定性の観点から、ポリイミドは酸価が低く、イミド化率が高いことが好ましい。ポリイミドの酸価は、0.4mmol/g以下が好ましく、0.3mmol/g以下がより好ましく、0.2mmol/g以下がさらに好ましい。ポリイミドの酸価は、0.1mmol/g以下、0.05mmol/g以下または0.03mmol/g以下であってもよい。ポリイミドのイミド化率は、95%以上が好ましく、96%以上がより好ましく、97%以上がさらに好ましく、98%以上、99%以上であってもよい。酸価が小さく、イミド化率が高いことにより、ポリイミドの安定性が高められるとともに、アクリル系樹脂との相溶性が向上する傾向がある。
<アクリル系樹脂>
アクリル系樹脂としては、モノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸メチルの量が、60モル%以上であるアクリル樹脂である。ここで、(メタ)アクリル酸メチルとは、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの両方を含む。また(メタ)アクリル酸エステル共重合体とは、アクリル酸エステル共重合体とメタクリル酸エステル共重合体の両方を含み、(メタ)アクリル酸共重合体とは、アクリル酸共重合体とメタクリル酸共重合体の両方を含む。
好ましいアクリル系樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル等のポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸共重合、メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル-スチレン共重合体等が挙げられる。アクリル系樹脂は、変性により、グルタルイミド構造単位やラクトン環構造単位を導入したものでもよい。側鎖のエステル基の立体配置には特に制限がなく、不規則な配置のアタクチック系のアクリル樹脂でもよく、規則性を有するアイソタクチック系アクリル樹脂またはシンジオタクチック系アクリル樹脂でもよい。
透明性およびポリイミドとの相溶性の観点から、アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルを主たる構造単位とするものが好ましい。アクリル系樹脂におけるモノマー成分全量に対するメタクリル酸メチルの量は、60重量%以上であり、好ましくは、65重量%以上、より好ましくは70重量%以上または80重量%以上であってもよい。アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルのホモポリマーであってもよい。
フィルムの耐熱性の観点から、アクリル系樹脂のガラス転移温度は80℃以上が好ましく、90℃以上が好ましく、100℃以上が好ましく、105℃以上、110℃以上、115℃以上または120℃以上であってもよい。
有機溶媒への溶解性、上記のポリイミドとの相溶性およびフィルム強度の観点から、アクリル系樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、5,000~2,000,000が好ましく、10,000~500,000がより好ましく、15,000~300,000がさらに好ましく、20,000~200,000であってもよい。
樹脂組成物およびフィルムの熱安定性および光安定性の観点から、アクリル系樹脂は、エチレン性不飽和基やカルボキシ基等の反応性官能基の含有量が少ないことが好ましい。アクリル系樹脂のヨウ素価は、10.16g/100g(0.4mmol/g)以下が好ましく、7.62g/100g(0.3mmol/g)以下がより好ましく、5.08g/100g(0.2mmol/g)以下がさらに好ましい。アクリル系樹脂のヨウ素価は、2.54g/100g(0.1mmol/g)以下または1.27g/100g(0.05mmol/g)以下であってもよい。アクリル系樹脂の酸価は、0.4mmol/g以下が好ましく、0.3mmol/g以下がより好ましく、0.2mmol/g以下がさらに好ましい。アクリル系樹脂の酸価は、0.1mmol/g以下、0.05mmol/g以下または0.03mmol/g以下であってもよい。酸価が小さいことにより、アクリル系樹脂の安定性が高められるとともに、ポリイミドとの相溶性が向上する傾向がある。
<樹脂組成物の調製>
上記のポリイミド樹脂とアクリル系樹脂とを混合して、樹脂組成物を調製する。上記のポリイミド樹脂とアクリル系樹脂は、任意の比率で相溶性を示し得るため、樹脂組成物におけるポリイミド樹脂とアクリル系樹脂との比率は特に限定されない。ポリイミド樹脂とアクリル系樹脂の混合比(重量比)は、98:2~2:98であってもよい。ポリイミド樹脂の比率が高いほど、フィルムの弾性率が高くなり、機械強度に優れる傾向がある。アクリル系樹脂の比率が高いほど、フィルムの着色が少なく透明性が高くなる傾向がある。ポリイミドとアクリル系樹脂との混合による透明性向上の効果を十分に発揮するためには、ポリイミドとアクリル系樹脂の合計に対するアクリル系樹脂の比率は、10重量%以上が好ましく、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上であってもよい。
ポリイミドとアクリル系樹脂を含む樹脂組成物は、示唆走査熱量測定(DSC)および/または動的粘弾性測定(DMA)において単一のガラス転移温度を有することが好ましい。樹脂組成物が単一のガラス転移温度を有するとき、ポリイミドとアクリル系樹脂が完全に相溶しているとみなすことができる。ポリイミドとアクリル系樹脂を含むフィルムも単一のガラス転移温度を有することが好ましい。
樹脂組成物は、ポリイミド樹脂とアクリル系樹脂とを含む混合溶液であってもよい。樹脂の混合方法は特に限定されず、固体の状態で混合してもよく、液体中で混合して混合溶液としてもよい。ポリイミド樹脂溶液およびアクリル系樹脂溶液を個別に調製し、両者を混合してポリイミド樹脂とアクリル系樹脂との混合溶液を調製してもよい。
ポリイミド樹脂およびアクリル系樹脂を含む溶液の溶媒としては、ポリイミド樹脂およびアクリル系樹脂の両方に対する溶解性を示すものであれば特に限定されない。溶媒の例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、塩化メチレン等のハロゲン化アルキル系溶媒が挙げられる。中でも、ポリイミド樹脂およびアクリル系樹脂の両方に対する溶解性に優れるアミド系溶媒、ケトン系溶媒、ハロゲン化アルキル系溶媒が好ましい。
ポリイミドとアクリル系樹脂を含む樹脂組成物は、同じ固形分濃度で比較した場合にポリイミド単体の時よりも溶液粘度が低くなる。ポリイミド樹脂とアクリル系樹脂と溶剤を含む混合溶液の粘度が下がることにより、フィルムの厚みムラが小さくなることや、製膜が容易になるという利点がある。また、樹脂組成物の溶融粘度がポリイミド単体の時よりも低下することにより、トランスファー成形、コンプレッション成形、射出成形に活用できるという利点がある。
フィルムの加工性向上や各種機能の付与等を目的として、樹脂組成物(溶液)に、有機または無機の低分子または高分子化合物を配合してもよい。高分子化合物の例として、エポキシ樹脂が挙げられる。樹脂組成物は、難燃剤、紫外線吸収剤、架橋剤、染料、顔料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子、繊維強化材、増感剤等を含んでいてもよい。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、多孔質や中空構造であってもよい。繊維強化材には、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などが含まれる。
[フィルム]
上記のポリイミド樹脂およびアクリル系樹脂を含む溶液を、支持体上に塗布し、溶媒を乾燥除去することにより、フィルムが得られる。
樹脂溶液を支持体上に塗布する方法としては、バーコーターやコンマコーター等を用いた公知の方法を適用できる。支持体としては、ガラス基板、SUS等の金属基板、金属ドラム、金属ベルト、プラスチックフィルム等を使用できる。生産性向上の観点から、支持体として、金属ドラム、金属ベルト等の無端支持体、または長尺プラスチックフィルム等を用い、ロールトゥーロールによりフィルムを製造することが好ましい。プラスチックフィルムを支持体として使用する場合、製膜ドープの溶媒に溶解しない材料を適宜選択すればよい。
溶媒の乾燥時には加熱を行うことが好ましい。加熱温度は溶媒が除去でき、かつ得られるフィルムの着色を抑制できる温度であれば特に制限されず、室温~250℃程度で適宜に設定され、樹脂組成物の劣化を抑制するため50℃~230℃が好ましい。加熱温度は段階的に上昇させてもよい。溶媒の除去効率を高めるために、ある程度乾燥が進んだ後に、支持体から樹脂膜を剥離して乾燥を行ってもよく、溶媒の除去を促進するために、減圧下で加熱を行ってもよい。
アクリル系樹脂単独からなるフィルムは、靭性が低い場合があるが、ポリイミドとアクリル系樹脂との相溶系を採用することによりフィルムの強度が向上する場合がある。フィルムの機械強度向上等を目的として、一方向または複数の方向に延伸を行ってもよい。フィルムを延伸するとポリマー鎖が延伸方向に配向するため、延伸方向および/または延伸と直交方向の強度が向上し、フィルムの割れやクラックの発生が抑制される傾向がある。面内の任意の方向における強度を高める観点からは、フィルムを二軸延伸することが好ましい。
フィルムの厚みは特に限定されず、用途に応じて適宜設定すればよい。フィルムの厚みは、例えば5~300μmとすることができる。自己支持性と可撓性とを両立し、かつ透明性の高いフィルムとする観点から、フィルムの厚みは20μm~100μmが好ましく、30μm~90μm、40μm~85μm、または50μm~80μmであってもよい。ディスプレイのカバーフィルム用途としてのフィルムの厚みは、30μm以上が好ましい。
厚みが50μmの時のフィルムのヘイズは5%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、3.5%以下がさら好ましく、3%以下、2%以下または1%以下であってもよい。光学フィルムとして使用する場合、視認性のためヘイズは低い方が好ましい。上記の様に、本発明では、ポリイミドとアクリル系樹脂が相溶性を示すため、ヘイズが低く、透明性の高いフィルムが得られる。
厚みが50μmの時のフィルムの全光線透過率(TT)は、85%以上が好ましく、87%以上がより好ましく、89%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましく、91%以上であってもよい。フィルムのTTは高いほど好ましい。上記の様に、ポリイミドとアクリル系樹脂が相溶性を示すため、TTが高く、透明性の高いフィルムが得られる。
ポリイミドとアクリル系樹脂を混合した樹脂組成物は、厚み50μmのフィルムを作製した際の黄色度(YI)が10.0以下であることが好ましく、9.0以下がより好ましく、8.0以下がさらに好ましく、5.0以下が特に好ましく、3.0以下または2.0以下であってもよい。上記のように、ポリイミド樹脂とアクリル系樹脂とを混合することにより、ポリイミド樹脂を単独で用いる場合に比べて、YIの小さいすなわち着色が少ないフィルムが得られる。
強度の観点から、厚みが50μmの時のフィルムの引張弾性率は2.7GPa以上が好ましく、2.8GPa以上がより好ましく、2.9GPa以上がさらに好ましく、3.0GPa以上であってもよい。また、鉛筆硬度は、HB以上が好ましく、F以上またはH以上であってもよい。ポリイミドとアクリル系樹脂との相溶系においては、アクリル系樹脂の比率を高めても鉛筆硬度が低下し難い。さらにポリイミド単体の鉛筆硬度よりも高くなる傾向にある。そのため、ポリイミド特有の優れた機械強度を大きく低下させることなく、着色が少なく透明性に優れるフィルムを提供できる。
厚みが50μmの時のフィルムの波長400nmでの透過率は40%以上が好ましく、45%以上がより好ましく、50%以上がさら好ましく、55%以上、60%以上であってもよい。光学フィルムとして使用する場合、光の透過率は高い方が視認性向上の観点から好ましい。
以下、実施例を示して本発明の実施形態についてさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[ポリイミド樹脂の製造例]
セパラブルフラスコにN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を投入し、窒素雰囲気下で撹拌した。そこに、表1に示す比率(モル%)で、ジアミンおよび酸二無水物を投入し、窒素雰囲気下にて5~10時間撹拌して反応させ、固形分濃度18重量%のポリアミド酸溶液を得た。
ポリアミド酸溶液100gに、イミド化触媒としてピリジン6.0gを添加し、完全に分散させた後、無水酢酸8gを添加し、90℃で3時間攪拌した。室温まで冷却した後、溶液を攪拌しながら、2-プロピルアルコール(以下、IPAと記載)100gを、2~3滴/秒の速度で投入し、ポリイミドを析出させた。さらにIPA150gを添加し、約30分撹拌後、桐山ロートを使用して吸引ろ過を行った。得られた固体をIPAで洗浄した後、120℃に設定した真空オーブンで12時間乾燥させて、ポリイミド樹脂を得た。
比較例2ではイミド化触媒添加、加熱時時にポリイミドが固化したため、アクリルとの樹脂組成物を作製できなかった。
[フィルム作製例]
<実施例1~5、比較例1および3~5、参考例1~2>
DMFに、上記の製造例で得られたポリイミド(PI)とポリメタクリル酸メチル樹脂を表1に示す比率で混合し、樹脂分20重量%のDMF溶液を調製した。この溶液を無アルカリガラス板上に塗布し、60℃で15分、90℃で15分、120℃で15分、150℃で15分、180℃で15分、大気雰囲気下で加熱乾燥し、厚さ約50μmのフィルムを作製した。
<参考例3および4>
DMFに、上記の製造例で得られたポリイミド(PI)を用いて10重量%のDMF溶液を調製した。この溶液を無アルカリガラス板上に塗布し、60℃で15分、90℃で15分、120℃で15分、150℃で15分、200℃で15分、大気雰囲気下で加熱乾燥し、厚さ約50μmのフィルムを作製した。
<参考例5>
参考例5ではアクリル樹脂1の塩化メチレン溶液を調製し、60℃で30分、80℃で30分、100℃で30分、110℃で30分、大気雰囲気下で加熱乾燥し、厚さ51μmのフィルムを作製した。
[評価]
<ヘイズおよび全光線透過率>
フィルムを3cm角に切り出し、スガ試験機製のヘイズメーター「HZ-V3」により、JIS K7136およびJIS K7361-1に従って、ヘイズおよび全光線透過率(TT)を測定した。ヘイズが20%を超えたものについては、全光線透過率、400nmにおける透過率、ならびに以下の引張弾性率および鉛筆硬度の測定は実施しなかった(表1において、「-」と記載)。
<透過率>
フィルムを3cm角に切り出し、日本分光社製紫外可視分光光度計(V-770)を用いて光透過率を測定した。
<黄色度>
フィルムを3cm角に切り出し、スガ試験機製の分光測色計「SC-P」によって、JIS K7373に従って黄色度(YI)を測定した。
<引張弾性率>
フィルムを幅10mmの短冊状に切り出し、23℃/55%RHで1日静置して調湿した後、島津製作所製の「AUTOGRAPH AGS-X」を用いて、次の条件で引張弾性率を測定した。
つかみ具間距離100mm
引張速度;20.0mm/min
測定温度;23℃
<折り曲げ耐性>
フィルムを20mm×100mmの短冊状に切り出し、長さ方向の中央で180°折り曲げ、フィルムが割れなかったものを「〇」、フィルムが割れたものを「×」とした。
<ポリアミド系溶剤溶解性>
ポリイミド樹脂にDMFを固形分濃度10wt%になるように加え、室温で72時間攪拌して目視で溶液を確認した。固形分が確認できる場合は不溶とした。
<フッ素含有率>
下記式のとおり、ポリイミド構成単位における、フッ素原子含有量を平均分子量で除した値をフッ素含有率とした。フッ素原子含有量はフッ素原子数と原子量の積で表され、構成されるモノマーが2種類以上の場合は各成分に含まれるフッ素原子の数とモル比から計算される平均フッ素原子数を用いて算出した。
フッ素含有率(%)=ポリイミド構成単位中のフッ素原子量/ポリイミド構成単位の平均分子量×100
[評価結果]
樹脂の組成(ポリイミドの組成、アクリル系樹脂の種類、および混合比)、ならびにフィルムの評価結果を表1に示す。
表1において、化合物は以下の略称により記載している。
<酸二無水物>
6FDA:2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物
CBDA:1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
<ジアミン>
m-PDA:m-フェニレンジアミン
2,4-DAT:2,4-ジアミノトルエン
m-Tol:2,2’-ジメチルベンジジン
3,3’-DDS:3,3’-ジアミノジフェニルスルホン
3,4’-ODA:3,4’-ジアミノジフェニルエーテル
BAPP:2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
HFBAPP:2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン
<アクリル樹脂>
アクリル樹脂1:クラレ製「パラペットHM1000」、ガラス転移温度:120℃、酸価:0.0mmol/g、以下「アクリル樹脂1」
アクリル樹脂2:グルタルイミド環を有するアクリル系樹脂(特開2018-70710号公報の「アクリル系樹脂製造例2」に従って作製した「アクリル系樹脂(A2)」)、グルタルイミド含有量4重量%、ガラス転移温度125℃、酸価0.4mmol/g
アクリル樹脂3:クラレ製「クラリティ1892」、MMA(メタクリル酸メチル):BA(アクリル酸ブチル)=58:42mol%
Figure 2024031304000002


参考例3に記載のアクリルフィルムは、優れた光学特性を有するが弾性率および耐久性が不十分であった。他方、参考例1および2に記載のポリイミドフィルムは、優れた機械特性を有するが波長400nmにおける透過率が低く、光学フィルムとして不十分であった。このようにアクリル樹脂単独およびポリイミド樹脂単独では、透明性と機械特性両方を満足する光学フィルムは取得できなかった。
他方、実施例3および5は、ポリイミドとアクリル樹脂から構成されるフィルムである。異種の樹脂を複合化することにより優れた光学特性と機械特性を両立したフィルムを取得できることが分かる。
実施例3,4、比較例2,4では、酸二無水物に6FDA、ジアミンにm-Tol、および/または3,3’-DDSを含むポリイミドとアクリル系樹脂からなる樹脂組成物を用いて製膜した。フッ素含有率が18.1%以上の実施例はアクリル系樹脂と相溶し、機械特性および光学特性に優れたフィルムを与えた。他方、フッ素含有量が17.4%以下の比較例4は高ヘイズで白濁したフィルムしか得られないことを示した。また、比較例2のフッ素含有率14.6%のポリイミドはDMF不溶であり、アクリル系樹脂と混合することができなかった。
比較例3では、酸二無水物に6FDA、かつフッ素含有率が18.4%のポリイミドを用いたが、メタクリル酸メチル成分が58モル%であるアクリル樹脂3とは相溶しなかった。
酸二無水物に6FDA、およびジアミンにBAPPを用いた比較例5のフッ素含有率が13.9%のポリイミドは、アクリル樹脂と非相溶であった。他方、BAPPのメチル基をトリフルオロメチル基に変更した構造(フッ素含有率が24.6%)であるHFBAPPから合成した実施例6のポリイミドはアクリル樹脂と相溶、透明フィルムを取得できることが分かる。
実施例1,2と、比較例1では、酸二無水物に6FDAを含み、メタ位にアミノ基が位置するジアミンであるm-PDAとDATを含んだポリイミドと、アクリル系樹脂からなる樹脂組成物を用いて製膜した結果を示した。フッ素含有率21.5%以上のポリイミドを用いた実施例1および2では低ヘイズの透明フィルムが得られた。他方、フッ素含有率17.5%のポリイミドを用いた比較例1からは高ヘイズ、かつ折り曲げ耐久性の低い白濁フィルムしか得られないことが分かる。
以上の結果から、酸二無水物に6FDAを含み、かつポリイミド中のフッ素含有率が18%以上、極性溶媒に可溶のポリイミドは、メタクリル酸メチル成分が60モル%以上のアクリル系樹脂と相溶することを示した。当該樹脂組成物を用いることにより、高透明性および低着色と視認性に優れ、さらに高い弾性率と折り曲げ耐久性に優れた光学用のフィルムが得られることが分かる。



Claims (8)

  1. ポリイミドと、モノマー成分全量に対する(メタ)アクリル酸メチルの量が、60モル%以上であるアクリル系樹脂を含む樹脂組成物であって、
    前記ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物由来の構造とジアミン由来の構造を有し、
    前記ポリイミドはテトラカルボン酸二無水物由来の構造に2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物を含み、前記ジアミン由来の構造にフッ素原子を含まない芳香環を有する芳香族ジアミンを含み、フッ素含有率が18%以上であることを特徴とする、樹脂組成物。
  2. 前記ポリイミドがアミド系溶媒に可溶である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. フッ素原子を含まない芳香環を有する芳香族ジアミンが、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,2’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテルから選択される1種以上を含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
  4. 前記アクリル系樹脂のガラス転移温度が80℃以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  5. 前記ポリイミドと前記アクリル系樹脂を、2:98~98:2の範囲の重量比で含む、 請求項1に記載の樹脂組成物。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物を含むフィルム。
  7. 厚みが5μm以上300μm以下である請求項6に記載のフィルム。
  8. 厚みが50μmの時に、全光線透過率が89%以上、ヘイズが3%以下、黄色度が10以下、引張弾性率が2.8GPa以上、波長400nmでの透過率が40%以上である請求項6に記載のフィルム。
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