JP2023070869A - 樹脂組成物およびフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】透明性が高く、かつ十分な機械強度を有する透明フィルム、およびその作製に用いられる樹脂組成物を提供する。【解決手段】ポリイミドとエステル系樹脂を含む樹脂組成物であって、前記ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物由来の構造とジアミン由来の構造を有し、前記ジアミン由来の構造としてフルオロアルキル置換ベンジジンと脂環式ジアミンを有し、前記テトラカルボン酸二無水物由来の構造としてフッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物を有し、前記エステル系樹脂が、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、フマル酸ジエステル(共)重合体およびマレイン酸ジエステル(共)重合体の群から選ばれるいずれかの構造を有する樹脂であることを特徴とする、樹脂組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、樹脂組成物およびフィルムに関する。
液晶、有機EL、電子ペーパー等の表示装置や、太陽電池、タッチパネル等のエレクトロニクスデバイスにおいて、薄型化や軽量化、さらにはフレキシブル化が要求されている。これらのデバイスに使用されるガラス材料をフィルム材料に代えることにより、フレキシブル化、薄型化、軽量化が図られる。ガラス代替材料として、透明ポリイミドフィルムが開発され、ディスプレイ用基板やカバーフィルム等に用いられている。
通常のポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸溶液を支持体上に膜状に塗布し、高温処理することにより、溶媒除去と同時に熱イミド化を行うことにより得られる。しかしながら、熱イミド化のための加熱温度は高く(例えば300℃以上)、加熱による着色(黄色度の上昇)が生じやすく、ディスプレイ用カバーフィルム等の高い透明性が要求される用途への適用が困難である。
高い透明性を有するポリイミドフィルムの製造方法として、有機溶媒に可溶であり、フィルム化後の高温でのイミド化を必要としないポリイミド樹脂を用いる方法が提案されている。例えば、特許文献1には、テトラカルボン酸二無水物成分としてビス無水トリメリット酸エステル類を含むポリイミドが、ジクロロメタン等の低沸点溶媒に可溶であり、かつ透明性および機械強度に優れることが記載されている。
ポリイミドは、剛直な構造を導入すると、機械強度が向上するものの、有機溶媒への溶解性や透明性の低下の要因となり、従来の透明ポリイミド樹脂では、透明性を保持したまま、透明性と高機械強度を両立することは容易ではない。かかる課題に鑑み、本発明は、ポリイミドの優れた機械強度を大幅に低下させることなく、透明性が高く、着色を低減可能透明フィルム、およびその作製に用いられる樹脂組成物の提供を目的とする。
本発明者らは鋭意検討の結果、下記樹脂組成物とすることで上記課題を解決することを見出した。本発明は以下の構成をなす。
1).ポリイミドとエステル系樹脂を含む樹脂組成物であって、
前記ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物由来の構造とジアミン由来の構造を有し、
前記ジアミン由来の構造としてフルオロアルキル置換ベンジジンと脂環式ジアミンを有し、
前記テトラカルボン酸二無水物由来の構造としてフッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物を有し、
前記エステル系樹脂が、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、フマル酸ジエステル(共)重合体およびマレイン酸ジエステル(共)重合体の群から選ばれるいずれかの構造を有する樹脂であることを特徴とする、樹脂組成物。
前記ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物由来の構造とジアミン由来の構造を有し、
前記ジアミン由来の構造としてフルオロアルキル置換ベンジジンと脂環式ジアミンを有し、
前記テトラカルボン酸二無水物由来の構造としてフッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物を有し、
前記エステル系樹脂が、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、フマル酸ジエステル(共)重合体およびマレイン酸ジエステル(共)重合体の群から選ばれるいずれかの構造を有する樹脂であることを特徴とする、樹脂組成物。
2).前記脂環式ジアミンが、イソホロンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(アミノメチル)ノルボルネン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、アダマンタン-1,3-ジアミン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサンから選択される1種以上である、1)に記載の樹脂組成物。
3).前記テトラカルボン酸二無水物由来の構造としてさらに、下記一般式(1)で表されるビス(無水トリメリット酸)エステルを有することを特徴とする、1)または2)に記載の樹脂組成物。
(但し、一般式(1)におけるXは、下記(A)~(K)から選択される2価の有機基である。)
(但し、一般式(1)におけるXは、下記(A)~(K)から選択される2価の有機基である。)
4).フッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物が4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物であることを特徴とする1)~3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
5).前記フルオロアルキル置換ベンジジンが2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンである、1)~4)のいずれかに記載の樹脂組成物。
6).前記ジアミン由来の構造が2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンとジカルボン酸の縮合構造であることを特徴とする1)~5)のいずれかに記載の樹脂組成物。
7).前記ジカルボン酸が、テレフタル酸であることを特徴とする6)に記載の樹脂組成物。
8).前記ジアミン由来の構造中、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンとジカルボン酸の縮合構造が50モル%以上である、6)または7)に記載の樹脂組成物。
9).前記ジアミン由来の構造全量100モル%に対する、フルオロアルキル置換ベンジジンと脂環式ジアミンの含有量の合計が50モル%以上である、1)~8)のいずれかに記載の樹脂組成物。
10).前記エステル系樹脂のモノマー成分全量に対する、メタクリル酸メチルの量が60重量%以上である、1)~9)のいずれかに記載の樹脂組成物。
11).前記エステル系樹脂のモノマー成分全量に対する、フマル酸ジエチルの量が60重量%以上である、1)~9)のいずれかに記載の樹脂組成物。
12).前記エステル系樹脂のモノマー成分全量に対する、フマル酸ジイソプロピルの量が60重量%以上である、1)~9)のいずれかに記載の樹脂組成物。
13).前記エステル系樹脂のガラス転移温度が100℃以上である、1)~12)のいずれかに記載の樹脂組成物。
14).前記ポリイミドと前記エステル系樹脂を、98:2~2:98の範囲の重量比で含む、 1)~13)のいずれかに記載の樹脂組成物。
15).1)~14)のいずれかに記載の樹脂組成物を含むフィルム。
16).厚みが5μm以上300μm以下である15)に記載のフィルム。
17).厚みが50μmの時に、全光線透過率が85%以上、ヘイズが10%以下、黄色度が5.0以下、引張弾性率が3.5GPa以上、鉛筆硬度がF以上である、 15)または16)に記載のフィルム。
樹脂組成物に含まれるポリイミド樹脂とエステル系樹脂が相溶性を示すため、ヘイズが小さい透明フィルムが得られる。また、ポリイミド樹脂とエステル系樹脂が相溶性を示すため、ポリイミドの優れた機械強度を大幅に低下させることなく、透明性が高く、着色を低減可能であり、ディスプレイのカバーフィルム等に適した透明フィルムを作製できる。
[樹脂組成物]
本発明の一実施形態は、ポリイミド樹脂とエステル系樹脂とを含む相溶系の樹脂組成物であって、前記ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物由来の構造とジアミン由来の構造を有し、前記ジアミン由来の構造にフルオロアルキル置換ベンジジンと脂環式ジアミンを有し、前記テトラカルボン酸二無水物由来の構造にフッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物を有する、樹脂組成物である。
本発明の一実施形態は、ポリイミド樹脂とエステル系樹脂とを含む相溶系の樹脂組成物であって、前記ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物由来の構造とジアミン由来の構造を有し、前記ジアミン由来の構造にフルオロアルキル置換ベンジジンと脂環式ジアミンを有し、前記テトラカルボン酸二無水物由来の構造にフッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物を有する、樹脂組成物である。
<ポリイミド>
ポリイミドとは、一般式(2)のような構造を有するものをいい、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物(以下、「酸二無水物」と記載する場合がある)との付加重合により得られるポリアミド酸を脱水環化したり、ジイソシアネートと酸二無水物との脱炭酸による縮合などによって合成することができる。(但し、一般式(2)中のXは4価の有機基、Yは2価の有機基を表す。)
(ジアミン)
本実施形態で用いるポリイミドは、ジアミン由来の構造として、フルオロアルキル置換ベンジジンと脂環式ジアミンを含む。ジアミン由来の構造がフルオロアルキル置換ベンジジンを有することにより、ポリイミド樹脂の溶解性と透明性とを両立する傾向がある。ジアミン由来の構造が脂環構造を有することにより、ポリイミド樹脂とエステル系樹脂との相溶性が向上する傾向がある。脂環式ジアミンは、少なくとも1つの脂環構造を有していればよく、1分子中に脂環と芳香環の両方を有していてもよい。脂環は多環でもよく、スピロ構造を有していてもよい。
本実施形態で用いるポリイミドは、ジアミン由来の構造として、フルオロアルキル置換ベンジジンと脂環式ジアミンを含む。ジアミン由来の構造がフルオロアルキル置換ベンジジンを有することにより、ポリイミド樹脂の溶解性と透明性とを両立する傾向がある。ジアミン由来の構造が脂環構造を有することにより、ポリイミド樹脂とエステル系樹脂との相溶性が向上する傾向がある。脂環式ジアミンは、少なくとも1つの脂環構造を有していればよく、1分子中に脂環と芳香環の両方を有していてもよい。脂環は多環でもよく、スピロ構造を有していてもよい。
フルオロアルキル置換ベンジジンの例としては、2-フルオロベンジジン、3-フルオロベンジジン、2,3-ジフルオロベンジジン、2,5-ジフルオロベンジジン、2、6-ジフルオロベンジジン、2,3,5-トリフルオロベンジジン、2,3,6-トリフルオロベンジジン、2,3,5,6-テトラフルオロベンジジン、2,2’-ジフルオロベンジジン、3,3’-ジフルオロベンジジン、2,3’-ジフルオロベンジジン、2,2’,3-トリフルオロベンジジン、2,3,3’-トリフルオロベンジジン、2,2’,5-トリフルオロベンジジン、2,2’,6-トリフルオロベンジジン、2,3’,5-トリフルオロベンジジン、2,3’,6-トリフルオロベンジジン、2,2’,3,3’-テトラフルオロベンジジン、2,2’,5,5’-テトラフルオロベンジジン、2,2’,6,6’-テトラフルオロベンジジン、2,2’,3,3’,6,6’-ヘキサフルオロベンジジン、2,2’,3,3’,5,5’、6,6’-オクタフルオロベンジジン、2-(トリフルオロメチル)ベンジジン、3-(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2、6-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,5-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,6-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,5,6-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,3-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,3’-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,5-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,6-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’,5-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’,6,-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,3,3’-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン等が挙げられる。
中でも、ビフェニルの2位にフルオロアルキル基を有するフルオロアルキル置換ベンジジンが好ましく、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下「TFMB」と記載)が特に好ましい。ビフェニルの2位および2’位にフルオロアルキル基を有することにより、フルオロアルキル基の電子求引性によるπ電子密度の低下に加えて、フルオロアルキル基の立体障害によって、ビフェニルの2つのベンゼン環の間の結合がねじれてπ共役の平面性が低下するため、吸収端波長が短波長シフトして、ポリイミドの着色を低減できる。
上記フルオロアルキル置換ベンジジンの例以外の好ましい例として、一般式(4)を例示することができる。(但し、一般式(4)中のR1及びR2は独立に、ハロゲン、メチル基、トリフルオロメチル基であり、mは0~3の整数であるが、R1とR2のどちらかのmは0ではない。R3は、無置換のベンゼン環またはビフェニル、ハロゲン、メチル基、トリフルオロメチル基で置換されたベンゼン環またはビフェニルである。)
一般式(4)では、フルオロアルキル置換ベンジジンが2つとジカルボン酸が1つ縮合したジアミンの構造を例示したが、フルオロアルキル置換ベンジジンが3つとジカルボン酸が2つ縮合したジアミンや、フルオロアルキル置換ベンジジンが4つとジカルボン酸が3つ縮合したジアミン、フルオロアルキル置換ベンジジンが5つとジカルボン酸が4つ縮合したジアミン等、であっても、得られるポリイミドが、高弾性を示したり、高透明性を示す傾向があるため好ましい。
フルオロアルキル置換ベンジジン末端のポリアミド酸オリゴマー或いはフルオロアルキル置換ベンジジン末端のポリイミドオリゴマーとジカルボン酸またはジカルボン酸のジクロライドと縮合させても、一般式(4)に相当する構造をポリイミドに導入することができる。
透明性と高弾性を示すという観点で、一般式(4)は、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンとジカルボン酸の縮合構造であることが好ましく、前記ジカルボン酸が、テレフタル酸であることがより高い弾性率を示すためより好ましい。
ジアミン成分全量100モル%に対するフルオロアルキル置換ベンジジンの含有量は、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましく、80モル%以上、85モル%以上または90モル%以上であってもよい。フルオロアルキル置換ベンジジンの含有量が大きいことにより、フィルムの着色が抑制されるとともに、鉛筆硬度や弾性率等の機械強度が高くなる傾向がある。尚、一般式(4)は、フルオロアルキル置換ベンジジンを2つ有するが、ジアミン成分全量100モル%に対するフルオロアルキル置換ベンジジンの含有量を計算する際には、1つのジアミンとして計算することとする。
脂環式ジアミンとしては、イソホロンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(アミノメチル)ノルボルネン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、アダマンタン-1,3-ジアミン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。中でも、ポリイミドの透明性および機械強度の観点から、イソホロンジアミンが好ましい。
ポリイミド樹脂とエステル系樹脂との相溶性を高める観点から、ジアミン成分全量100モル%に対する脂環式ジアミンの含有量は、1モル%以上が好ましく、3モル%以上がより好ましく、5モル%以上がさらに好ましく、6モル%以上、7モル%以上、8モル%以上、9モル%以上、10モル%以上、12モル%以上または15モル%以上であってもよい。
ポリイミド樹脂の有機溶媒への溶解性を確保する観点から、ジアミン成分全量100モル%に対する脂環式ジアミンの含有量は、95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましく、85モル%以下がさらに好ましく、80モル%以下、75モル%以下、70モル%以下、65モル%以下、60モル%以下、55モル%以下または50モル%以下であってもよい。ポリイミド樹脂を塩化メチレン等の低沸点ハロゲン系溶媒に可溶とするためには、脂環式ジアミンの含有量は、45モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましく、35モル%以下であってもよい。
ポリイミドは、ジアミン由来の構造として、フルオロアルキル置換ベンジジンと脂環式ジアミン以外のジアミンを含んでいてもよい。これらのジアミンの例としては、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ジ(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)プロパン、1,1-ジ(3-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ジ(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1-(3-アミノフェニル)-1-(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’-ビス(3-アミノフェノキシ)-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、6,6’-ビス(4-アミノフェノキシ)-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2-アミノエチル)エーテル、ビス(3-アミノプロピル)エーテル、ビス(2-アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2-(2-アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2-(3-アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2-ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、1,2-ビス[2-(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2-ビス[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、trans-1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジ(2-アミノエチル)シクロヘキサン、1,3-ジ(2-アミノエチル)シクロヘキサン、1,4-ジ(2-アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロへキシル)メタン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4-ジアミノ-2-フルオロベンゼン、1,4-ジアミノ-2,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジアミノ-2,5-ジフルオロベンゼン、1、4-ジアミノ-2,6-ジフルオロベンゼン、1,4-ジアミノ-2,3,5-トリフルオロベンゼン、1、4-ジアミノ、2,3,5,6-テトラフルオロベンゼン、1,4-ジアミノ-2-(トリフルオロメチル)ヘンゼン、1,4-ジアミノ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ジアミノ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1、4-ジアミノ-2,6-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ジアミノ-2,3,5-トリス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1、4-ジアミノ、2,3,5,6-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼンが挙げられる。
例えば、ジアミンとして、フルオロアルキル置換ベンジジンに加えて、ジアミノジフェニルスルホンを用いることにより、ポリイミド樹脂の溶媒への溶解性や透明性が向上する場合がある。ジアミノジフェニルスルホンの中でも、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)および4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)が好ましい。3,3’-DDSと4,4’-DDSを併用してもよい。
ジアミン全量100モル%に対するジアミノジフェニルスルホンの含有量は、1~40モル%、3~30モル%または5~25モル%であってもよい。
(酸二無水物)
本実施形態で用いるポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物由来の構造として、フッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物を含む。テトラカルボン酸二無水物由来由来の構造がフッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物を有することにより、ポリイミド樹脂の溶解性と透明性とを両立する傾向がある。
本実施形態で用いるポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物由来の構造として、フッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物を含む。テトラカルボン酸二無水物由来由来の構造がフッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物を有することにより、ポリイミド樹脂の溶解性と透明性とを両立する傾向がある。
フッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,4―ジフルオロピロメリット酸二無水物、1,4―ビス(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、4-トリフルオロメチルピロメリト酸二無水物、3,6-ジ[3’,5’ービス(トリフルオロメチル)フェニル]ピロメリト酸二無水物、1-(3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ピロメリト酸二無水物等が挙げられる。
ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物由来の構造として、フッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物を含んでいてもよい。これらの酸二無水物の例として、脂環式テトラカルボン酸二無水物およびビス(無水トリメリット酸)エステルが挙げられる。
脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,1’-ビシクロヘキサン-3,3’,4,4’テトラカルボン酸-3,4,3’,4’-二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2”-ノルボルナン-5,5”,6,6”-テトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビノルボルナン-5,5’,6,6’テトラカルボン酸二無水物、等が挙げられる。中でも、ポリイミドの透明性および機械強度の観点から、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、または1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が好ましく、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
ビス(無水トリメリット酸)エステルは、下記一般式(1)で表される。
一般式(1)におけるXは、下記(A)~(K)から選択される2価の有機基である。
式(A)におけるR1は、水素原子、フッ素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、または炭素原子数1~20のフルオロアルキル基であり、mは1~4の整数である。式(A)で表される基は、ベンゼン環上に置換基を有するヒドロキノン誘導体から2つの水酸基を除いた基である。ベンゼン環上に置換基を有するヒドロキノンとしては、tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン等が挙げられる。
式(B)におけるR2は、水素原子、フッ素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、または炭素原子数1~20のフルオロアルキル基であり、nは0~4の整数である。式(B)で表される基は、ベンゼン環上に置換基を有していてもよいビフェノールから2つの水酸基を除いた基である。ベンゼン環上に置換基を有するビフェノール誘導体としては、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジオール、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジオール、3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル-4,4’-ジオール、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチルビフェニル-4,4’-ジオール等が挙げられる。
式(C)で表される基は、4,4’-イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)から2つの水酸基を除いた基である。式(D)で表される基は、レゾルシノールから2つの水酸基を除いた基である。
式(E)におけるpは1~10の整数である。式(E)で表される基は、炭素数1~10の直鎖のジオールから2つの水酸基を除いた基である。炭素数1~10の直鎖のジオールとしては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール等が挙げられる。
式(F)で表される基は、1,4-シクロヘキサンジメタノールから2つの水酸基を除いた基である。
式(G)におけるR3は、水素原子、フッ素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、または炭素原子数1~20のフルオロアルキル基であり、qは0~4の整数である。式(G)で表される基は、フェノール性水酸基を有するベンゼン環上に置換基を有していてもよいビスフェノールフルオレンから2つの水酸基を除いた基である。フェノール性水酸基を有するベンゼン環上に置換基を有していてもよいビスフェノールフルオレン誘導体としては、ビスクレゾールフルオレン等が挙げられる。
Xが一般式(B)で表される基である場合、ポリイミド樹脂の溶解性の観点から、Xは、下記の式(B1)で表される2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチルビフェニル-4,4’-ジイルであること好ましい。
一般式(1)においてXが式(B1)で表される基である酸二無水物は、下記の式(5)で表されるビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)-2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチルビフェニル-4,4’ジイル(略称:TAHMBP)である。
ポリイミド樹脂を有機溶媒に可溶とする観点から、酸二無水物成分全量100モル%に対するフッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物の含有量は、10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましく、25モル%以上、30モル%以上、35モル%以上、40モル%以上または50モル%以上であってもよい。
ポリイミドは、酸二無水物成分として、フッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物およびビス(無水トリメリット酸)エステル以外の酸二無水物を含んでいてもよい。上記以外の酸二無水物の例としては、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、9,9―ビス(3,4―ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物)、1,3-ビス[(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル]ベンゼン二無水物、1,4-ビス[(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル]ベンゼン二無水物、2,2-ビス{4-[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}プロパン二無水物、2,2-ビス{4-[4-(3,4-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}プロパン二無水物、2,2-ビス{4-[3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}プロパン二無水物、ビス{4-[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-[3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、4,4’-ビス[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]ビフェニル二無水物、4,4’-ビス[3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]ビフェニル二無水物、ビス{4-[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-[3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-[3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4-[3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルフィド二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(1,3-ジヒドロ-1,3-ジオキソ-5-イソベンゾフランカルボン酸)-1,4-フェニレンエステルが挙げられる。
(ポリイミドの調製)
酸二無水物とジアミンとの反応によりポリイミド前駆体としてのポリアミド酸が得られ、ポリアミド酸の脱水環化(イミド化)によりポリイミドが得られる。上記の様に、ポリイミドの組成、すなわち酸二無水物およびジアミンの種類および比率を調整することにより、ポリイミドは、透明性および有機溶媒への溶解性を有するとともに、エステル系樹脂との相溶性を示す。
酸二無水物とジアミンとの反応によりポリイミド前駆体としてのポリアミド酸が得られ、ポリアミド酸の脱水環化(イミド化)によりポリイミドが得られる。上記の様に、ポリイミドの組成、すなわち酸二無水物およびジアミンの種類および比率を調整することにより、ポリイミドは、透明性および有機溶媒への溶解性を有するとともに、エステル系樹脂との相溶性を示す。
ポリアミド酸の調製方法は特に限定されず、公知のあらゆる方法を適用できる。例えば、酸二無水物とジアミンとを、略等モル量(95:100~105:100のモル比)で有機溶媒中に溶解させ、攪拌することにより、ポリアミド酸溶液が得られる。ポリアミド酸溶液の濃度は、通常5~35重量%であり、好ましくは10~30重量%である。この範囲の濃度である場合に、重合により得られるポリアミド酸が適切な分子量を有するとともに、ポリアミド酸溶液が適切な粘度を有する。
ポリアミド酸の重合に際しては、酸二無水物の開環を抑制するため、ジアミンに酸二無水物を加える方法が好ましい。複数種のジアミンや複数種の酸二無水物を添加する場合は、一度に添加してもよく、複数回に分けて添加してもよい。モノマーの添加順序を調整することにより、ポリイミドの諸物性を制御することもできる。
ポリアミド酸の重合に使用する有機溶媒は、ジアミンおよび酸二無水物と反応せず、ポリアミド酸を溶解させ得る溶媒であれば、特に限定されない。有機溶媒としては、メチル尿素、N,N-ジメチルエチルウレア等のウレア系溶媒、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、テトラメチルスルフォン等のスルホキシドあるいはスルホン系溶媒、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化アルキル系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、p-クレゾールメチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられる。通常これらの溶媒を単独でまたは必要に応じて2種以上を適宜組み合わせて用いる。ポリアミド酸の溶解性および重合反応性の観点から、DMAc、DMF、NMP等が好ましく用いられる。
ポリアミド酸の脱水環化によりポリイミドが得られる。ポリアミド酸溶液からポリイミドを調製する方法として、ポリアミド酸溶液に脱水剤、イミド化触媒等を添加し、溶液中でイミド化を進行させる方法が挙げられる。イミド化の進行を促進するため、ポリアミド酸溶液を加熱してもよい。ポリアミド酸のイミド化により生成したポリイミドが含まれる溶液と貧溶媒とを混合することにより、ポリイミド樹脂が固形物として析出する。ポリイミド樹脂を固形物として単離することにより、ポリアミド酸の合成時に発生した不純物や、残存脱水剤およびイミド化触媒等を、貧溶媒により洗浄・除去可能であり、ポリイミドの着色や黄色度の上昇等を防止できる。また、ポリイミド樹脂を固形物として単離することにより、フィルムを作製するための溶液を調製する際に、低沸点溶媒等のフィルム化に適した溶媒を適用できる。
ポリイミドの分子量(ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリエチレンオキシド換算の重量平均分子量)は、10,000~300,000が好ましく、20,000~250,000がより好ましく、40,000~200,000がさらに好ましい。分子量が過度に小さい場合、フィルムの強度が不足する場合がある。分子量が過度に大きい場合、エステル系樹脂との相溶性に劣る場合がある。
ポリイミドは、ケトン系溶媒やハロゲン化アルキル系溶媒等の低沸点溶媒に可溶であるものが好ましい。ポリイミドが溶媒に溶解性を示すとは、5重量%以上の濃度で溶解することを意味する。一実施形態において、ポリイミドは塩化メチレンに対する溶解性を示す。塩化メチレンは、低沸点でありフィルム作製時の残存溶媒の除去が容易であることから、塩化メチレンに可溶のポリイミド樹脂を用いることにより、フィルムの生産性向上が期待できる。
樹脂組成物およびフィルムの熱安定性および光安定性の観点から、ポリイミドは反応性が低いことが好ましい。ポリイミドの酸価は、0.4mmol/g以下が好ましく、0.3mmol/g以下がより好ましく、0.2mmol/g以下がさらに好ましい。ポリイミドの酸価は、0.1mmol/g以下、0.05mmol/g以下または0.03mmol/g以下であってもよい。酸価を小さくする観点から、ポリイミドはイミド化率が高いことが好ましい。ポリイミドのイミド化率は、93%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がさらに好ましく、98%以上、99%以上であってもよい。酸価が小さいことにより、ポリイミドの安定性が高められるとともに、エステル系樹脂との相溶性が向上する傾向がある。
<エステル系樹脂>
エステル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、フマル酸ジエステル(共)重合体またはマレイン酸ジエステル(共)重合体の群から選ばれるいずれかの構造を有する。以下では、アクリル系樹脂、フマル酸系樹脂、マレイン酸系樹脂をまとめて「エステル系樹脂」と記載する。ここで、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体とは、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体と(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体の両方を含む重合体である。フマル酸ジエステル(共)重合体、マレイン酸ジエステル(共)重合体も同様である。
エステル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、フマル酸ジエステル(共)重合体またはマレイン酸ジエステル(共)重合体の群から選ばれるいずれかの構造を有する。以下では、アクリル系樹脂、フマル酸系樹脂、マレイン酸系樹脂をまとめて「エステル系樹脂」と記載する。ここで、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体とは、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体と(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体の両方を含む重合体である。フマル酸ジエステル(共)重合体、マレイン酸ジエステル(共)重合体も同様である。
<アクリル系樹脂>
アクリル系樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル等のポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸共重合、メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-フマル酸共重合体、メタクリル酸メチル-マレイン酸共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体が挙げられる。アクリル系樹脂は、変性により、グルタルイミド構造単位やラクトン環構造単位を導入したものでもよい。
アクリル系樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル等のポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸共重合、メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-フマル酸共重合体、メタクリル酸メチル-マレイン酸共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体が挙げられる。アクリル系樹脂は、変性により、グルタルイミド構造単位やラクトン環構造単位を導入したものでもよい。
透明性およびポリイミドとの相溶性の観点から、アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルを主たる構造単位とするものが好ましい。アクリル系樹脂におけるモノマー成分全量に対するメタクリル酸メチルの量は、60重量%以上が好ましく、70重量%以上、80重量%以上または90重量%以上であってもよい。アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルのホモポリマーであってもよい。
<フマル酸系樹脂>
フマル酸系樹脂としては、ポリフマル酸ジメチル、ポリフマル酸ジエチル、ポリフマル酸ジn-プロピル、ポリフマル酸ジイソプロピル、ポリフマル酸ジn-ブチル、ポリフマル酸ジイソブチル、ポリフマル酸ジs-ブチル、ポリフマル酸ジt-ブチル、ポリフマル酸ジペンチル、ポリフマル酸ジn-ヘキシル、ポリフマル酸ジ-2-エチルヘキシル、ポリフマル酸ジヘプチル、ポリフマル酸ジオクチル、ポリフマル酸ジノニル、ポリフマル酸ジデシル、ポリフマル酸ジラウリル、ポリフマル酸ジミリスチル、ポリフマル酸ジセチル、ポリフマル酸ジステアリル、ポリフマル酸ジイソステアリル、ポリフマル酸ジセトステアリル、ポリフマル酸ジベヘニル、ポリフマル酸ジオレイル、ポリフマル酸ジシクロヘキシル、ポリフマル酸ジ3,3,5-トリメチルシクロヘキシル、ポリフマル酸ジイソボルニル、ポリフマル酸ジt-ブチルシクロヘキシル、ポリフマル酸ジアダマンチル、ポリフマル酸ジテトラヒドロフルフリル、ポリフマル酸ジ環状トリメチロールプロパンフォルマル、ポリフマル酸ジアリール等のフマル酸ジエステルの重合体が挙げられる。また、フマル酸系樹脂は、フマル酸ジエチル-スチレン共重合体、フマル酸ジエチル-メタクリル酸メチル共重合体等、二種以上のモノマーの共重合体であってもよい。また、2種以上の樹脂を併用してもよい。
フマル酸系樹脂としては、ポリフマル酸ジメチル、ポリフマル酸ジエチル、ポリフマル酸ジn-プロピル、ポリフマル酸ジイソプロピル、ポリフマル酸ジn-ブチル、ポリフマル酸ジイソブチル、ポリフマル酸ジs-ブチル、ポリフマル酸ジt-ブチル、ポリフマル酸ジペンチル、ポリフマル酸ジn-ヘキシル、ポリフマル酸ジ-2-エチルヘキシル、ポリフマル酸ジヘプチル、ポリフマル酸ジオクチル、ポリフマル酸ジノニル、ポリフマル酸ジデシル、ポリフマル酸ジラウリル、ポリフマル酸ジミリスチル、ポリフマル酸ジセチル、ポリフマル酸ジステアリル、ポリフマル酸ジイソステアリル、ポリフマル酸ジセトステアリル、ポリフマル酸ジベヘニル、ポリフマル酸ジオレイル、ポリフマル酸ジシクロヘキシル、ポリフマル酸ジ3,3,5-トリメチルシクロヘキシル、ポリフマル酸ジイソボルニル、ポリフマル酸ジt-ブチルシクロヘキシル、ポリフマル酸ジアダマンチル、ポリフマル酸ジテトラヒドロフルフリル、ポリフマル酸ジ環状トリメチロールプロパンフォルマル、ポリフマル酸ジアリール等のフマル酸ジエステルの重合体が挙げられる。また、フマル酸系樹脂は、フマル酸ジエチル-スチレン共重合体、フマル酸ジエチル-メタクリル酸メチル共重合体等、二種以上のモノマーの共重合体であってもよい。また、2種以上の樹脂を併用してもよい。
透明性およびポリイミドとの相溶性の観点から、フマル酸系樹脂は、フマル酸ジイソプロピルまたはフマル酸ジエチルを主たる構造単位とするものが好ましい。フマル酸系樹脂におけるモノマー成分全量に対するフマル酸ジイソプロピルまたはフマル酸ジエチルの量は、60重量%以上が好ましく、70重量%以上、80重量%以上または90重量%以上であってもよい。フマル酸系樹脂は、フマル酸ジイソプロピルまたはフマル酸ジエチルのホモポリマーであってもよい。
<マレイン酸系樹脂>
マレイン酸系樹脂としては、ポリマレイン酸ジメチル、ポリマレイン酸ジエチル、ポリマレイン酸ジn-プロピル、ポリマレイン酸ジイソプロピル、ポリマレイン酸ジn-ブチル、ポリマレイン酸ジイソブチル、ポリマレイン酸ジs-ブチル、ポリマレイン酸ジt-ブチル、ポリマレイン酸ジペンチル、ポリマレイン酸ジn-ヘキシル、ポリマレイン酸ジ-2-エチルヘキシル、ポリマレイン酸ジヘプチル、ポリマレイン酸ジオクチル、ポリマレイン酸ジノニル、ポリマレイン酸ジデシル、ポリマレイン酸ジラウリル、ポリマレイン酸ジミリスチル、ポリマレイン酸ジセチル、ポリマレイン酸ジステアリル、ポリマレイン酸ジイソステアリル、ポリマレイン酸ジセトステアリル、ポリマレイン酸ジベヘニル、ポリマレイン酸ジオレイル、ポリマレイン酸ジシクロヘキシル、ポリマレイン酸ジ3,3,5-トリメチルシクロヘキシル、ポリマレイン酸ジイソボルニル、ポリマレイン酸ジt-ブチルシクロヘキシル、ポリマレイン酸ジアダマンチル、ポリマレイン酸ジテトラヒドロフルフリル、ポリマレイン酸ジ環状トリメチロールプロパンフォルマル、ポリマレイン酸ジアリール等のマレイン酸ジエステルの重合体が挙げられる。また、マレイン酸系樹脂は、マレイン酸ジエチル-スチレン共重合体、マレイン酸ジエチル-メタクリル酸メチル共重合体等、二種以上のモノマーの共重合体であってもよい。また、2種以上の樹脂を併用してもよい。
マレイン酸系樹脂としては、ポリマレイン酸ジメチル、ポリマレイン酸ジエチル、ポリマレイン酸ジn-プロピル、ポリマレイン酸ジイソプロピル、ポリマレイン酸ジn-ブチル、ポリマレイン酸ジイソブチル、ポリマレイン酸ジs-ブチル、ポリマレイン酸ジt-ブチル、ポリマレイン酸ジペンチル、ポリマレイン酸ジn-ヘキシル、ポリマレイン酸ジ-2-エチルヘキシル、ポリマレイン酸ジヘプチル、ポリマレイン酸ジオクチル、ポリマレイン酸ジノニル、ポリマレイン酸ジデシル、ポリマレイン酸ジラウリル、ポリマレイン酸ジミリスチル、ポリマレイン酸ジセチル、ポリマレイン酸ジステアリル、ポリマレイン酸ジイソステアリル、ポリマレイン酸ジセトステアリル、ポリマレイン酸ジベヘニル、ポリマレイン酸ジオレイル、ポリマレイン酸ジシクロヘキシル、ポリマレイン酸ジ3,3,5-トリメチルシクロヘキシル、ポリマレイン酸ジイソボルニル、ポリマレイン酸ジt-ブチルシクロヘキシル、ポリマレイン酸ジアダマンチル、ポリマレイン酸ジテトラヒドロフルフリル、ポリマレイン酸ジ環状トリメチロールプロパンフォルマル、ポリマレイン酸ジアリール等のマレイン酸ジエステルの重合体が挙げられる。また、マレイン酸系樹脂は、マレイン酸ジエチル-スチレン共重合体、マレイン酸ジエチル-メタクリル酸メチル共重合体等、二種以上のモノマーの共重合体であってもよい。また、2種以上の樹脂を併用してもよい。
フィルムの耐熱性の観点から、エステル系樹脂のガラス転移温度は100℃以上が好ましく、105℃以上、110℃以上、115℃以上または120℃以上であってもよい。
有機溶媒への溶解性、上記のポリイミドとの相溶性およびフィルム強度の観点から、エステル系樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、5,000~500,000が好ましく、10,000~300,000がより好ましく、15,000~200,000がさらに好ましい。
樹脂組成物およびフィルムの熱安定性および光安定性の観点から、エステル系樹脂は、カルボキシ基等の反応性官能基の含有量が少ないことが好ましい。エステル系樹脂の酸価は、0.4mmol/g以下が好ましく、0.3mmol/g以下がより好ましく、0.2mmol/g以下がさらに好ましい。エステル系樹脂の酸価は、0.1mmol/g以下、0.05mmol/g以下または0.03mmol/g以下であってもよい。酸価が小さいことにより、エステル系樹脂の安定性が高められるとともに、ポリイミドとの相溶性が向上する傾向がある。
<樹脂組成物の調製>
上記のポリイミド樹脂とエステル系樹脂とを混合して、樹脂組成物を調製する。上記のポリイミド樹脂とエステル系樹脂は、任意の比率で相溶性を示し得るため、樹脂組成物におけるポリイミド樹脂とエステル系樹脂との比率は特に限定されない。ポリイミド樹脂とエステル系樹脂の混合比(重量比)は、98:2~2:98、95:5~10:90、または90:10~15:85であってもよい。ポリイミド樹脂の比率が高いほど、フィルムの弾性率および鉛筆硬度が高くなり、機械強度に優れる傾向がある。エステル系樹脂の比率が高いほど、フィルムの着色が少なく透明性が高くなる傾向がある。ポリイミドとエステル系樹脂との混合による透明性向上の効果を十分に発揮するためには、ポリイミドとエステル系樹脂の合計に対するエステル系樹脂の比率は、10重量%以上が好ましく、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上または50重量%以上であってもよい。
上記のポリイミド樹脂とエステル系樹脂とを混合して、樹脂組成物を調製する。上記のポリイミド樹脂とエステル系樹脂は、任意の比率で相溶性を示し得るため、樹脂組成物におけるポリイミド樹脂とエステル系樹脂との比率は特に限定されない。ポリイミド樹脂とエステル系樹脂の混合比(重量比)は、98:2~2:98、95:5~10:90、または90:10~15:85であってもよい。ポリイミド樹脂の比率が高いほど、フィルムの弾性率および鉛筆硬度が高くなり、機械強度に優れる傾向がある。エステル系樹脂の比率が高いほど、フィルムの着色が少なく透明性が高くなる傾向がある。ポリイミドとエステル系樹脂との混合による透明性向上の効果を十分に発揮するためには、ポリイミドとエステル系樹脂の合計に対するエステル系樹脂の比率は、10重量%以上が好ましく、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上または50重量%以上であってもよい。
ポリイミドは特殊な分子構造を有するポリマーであり、一般には、有機溶媒に対する溶解性が低く、他のポリマーとは相溶性を示さない。本実施形態では、ポリイミドがジアミン由来の構造にフルオロアルキル置換ベンジジンと脂環式ジアミンを有し、テトラカルボン酸二無水物由来の構造にフッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物を有することにより、有機溶媒に対して高い溶解性を示すとともに、エステル系樹脂との相溶性を示す。
ポリイミドとエステル系樹脂を含む樹脂組成物は、示唆走査熱量測定(DSC)および/または動的粘弾性測定(DMA)において単一のガラス転移温度を有することが好ましい。樹脂組成物が単一のガラス転移温度を有するとき、ポリイミドとエステル系樹脂が完全に相溶しているとみなすことができる。ポリイミドとエステル系樹脂を含むフィルムも単一のガラス転移温度を有することが好ましい。
樹脂組成物は、ポリイミド樹脂とエステル系樹脂とを含む混合溶液であってもよい。樹脂の混合方法は特に限定されず、固体の状態で混合してもよく、液体中で混合して混合溶液としてもよい。ポリイミド樹脂溶液およびエステル系樹脂溶液を個別に調製し、両者を混合してポリイミド樹脂とエステル系樹脂との混合溶液を調製してもよい。
ポリイミド樹脂およびエステル系樹脂を含む溶液の溶媒としては、ポリイミド樹脂およびエステル系樹脂の両方に対する溶解性を示すものであれば特に限定されない。溶媒の例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、塩化メチレン等のハロゲン化アルキル系溶媒が挙げられる。中でも、ポリイミド樹脂およびエステル系樹脂の両方に対する溶解性に優れ、かつ低沸点でありフィルム作製時の残存溶媒の除去が容易であることから、ケトン系溶媒およびハロゲン化アルキル系溶媒が好ましい。
ポリイミドとエステル系樹脂を含む樹脂組成物は、同じ固形分濃度で比較した場合にポリイミド単体の時よりも溶液粘度が低くなる。ポリイミド樹脂とエステル系樹脂と溶剤を含む混合溶液の粘度が下がることにより、フィルムの厚みムラが小さくなることや、製膜が容易になるという利点がある。また、樹脂組成物の溶融粘度がポリイミド単体の時よりも低下することにより、トランスファー成形、コンプレッション成形、射出成形に活用できるという利点がある。
フィルムの加工性向上や各種機能の付与等を目的として、樹脂組成物(溶液)に、有機または無機の低分子または高分子化合物を配合してもよい。高分子化合物の例として、エポキシ樹脂が挙げられる。樹脂組成物は、難燃剤、紫外線吸収剤、架橋剤、染料、顔料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子、繊維強化材、増感剤等を含んでいてもよい。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、多孔質や中空構造であってもよい。繊維強化材には、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などが含まれる。
[フィルム]
上記のポリイミド樹脂およびエステル系樹脂を含む溶液を、支持体上に塗布し、溶媒を乾燥除去することにより、フィルムが得られる。
上記のポリイミド樹脂およびエステル系樹脂を含む溶液を、支持体上に塗布し、溶媒を乾燥除去することにより、フィルムが得られる。
樹脂溶液を支持体上に塗布する方法としては、バーコーターやコンマコーター等を用いた公知の方法を適用できる。支持体としては、ガラス基板、SUS等の金属基板、金属ドラム、金属ベルト、プラスチックフィルム等を使用できる。生産性向上の観点から、支持体として、金属ドラム、金属ベルト等の無端支持体、または長尺プラスチックフィルム等を用い、ロールトゥーロールによりフィルムを製造することが好ましい。プラスチックフィルムを支持体として使用する場合、製膜ドープの溶媒に溶解しない材料を適宜選択すればよい。
溶媒の乾燥時には加熱を行うことが好ましい。加熱温度は溶媒が除去でき、かつ得られるフィルムの着色を抑制できる温度であれば特に制限されず、室温~250℃程度で適宜に設定され、50℃~220℃が好ましい。加熱温度は段階的に上昇させてもよい。溶媒の除去効率を高めるために、ある程度乾燥が進んだ後に、支持体から樹脂膜を剥離して乾燥を行ってもよい。溶媒の除去を促進するために、減圧下で加熱を行ってもよい。
エステル系フィルムは、靭性が低い場合があるが、ポリイミドとエステル系樹脂との相溶系を採用することによりフィルムの強度が向上する場合がある。フィルムの機械強度向上等を目的として、一方向または複数の方向に延伸を行ってもよい。フィルムを延伸するとポリマー鎖が延伸方向に配向するため、延伸方向と直交する方向の強度が向上し、フィルムの割れやクラックの発生が抑制される傾向がある。面内の任意の方向における強度を高める観点からは、フィルムを二軸延伸することが好ましい。
フィルムの厚みは特に限定されず、用途に応じて適宜設定すればよい。フィルムの厚みは、例えば5~300μmである。自己支持性と可撓性とを両立し、かつ透明性の高いフィルムとする観点から、フィルムの厚みは20μm~100μmが好ましく、30μm~90μm、40μm~85μm、または50μm~80μmであってもよい。ディスプレイのカバーフィルム用途としてのフィルムの厚みは、50μm以上が好ましい。
フィルムのヘイズは10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、4%以下がさら好ましく、3.5%以下、3%以下、2%以下または1%以下であってもよい。フィルムのヘイズは低いほど好ましい。上記の様に、ポリイミドとエステル系樹脂が相溶性を示すため、ヘイズが低く、透明性の高いフィルムが得られる。ポリイミドとエステル系樹脂を混合した樹脂組成物は、厚み50μmのフィルムを作製した際のヘイズが10%以下であることが好ましい。
フィルムの黄色度(YI)は、5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましく、3.0以下がさらに好ましく、2.0以下が特に好ましく、1.5以下または1.0以下であってもよい。上記のように、ポリイミド樹脂とエステル系樹脂とを混合することにより、ポリイミド樹脂を単独で用いる場合に比べて、着色が少なく、YIの小さいフィルムが得られる。
強度の観点から、フィルムの引張弾性率は3.5GPa以上が好ましく、4.0GPa以上であってもよい。フィルムの鉛筆硬度は、F以上が好ましく、H以上または2H以上であってもよい。ポリイミドとエステル系樹脂との相溶系においては、エステル系樹脂の比率を高めても鉛筆硬度が低下し難い。そのため、ポリイミド特有の優れた機械強度を大きく低下させることなく、着色が少なく透明性に優れるフィルムを提供できる。
以下、実施例を示して本発明の実施形態についてさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[ポリイミド樹脂の製造例]
セパラブルフラスコにジメチルホルムアミドを投入し、窒素雰囲気下で撹拌した。そこに、表1に示す比率(モル%)で、ジアミンおよび酸二無水物を投入し、窒素雰囲気下にて5~10時間撹拌して反応させ、固形分濃度18重量%のポリアミド酸溶液を得た。
セパラブルフラスコにジメチルホルムアミドを投入し、窒素雰囲気下で撹拌した。そこに、表1に示す比率(モル%)で、ジアミンおよび酸二無水物を投入し、窒素雰囲気下にて5~10時間撹拌して反応させ、固形分濃度18重量%のポリアミド酸溶液を得た。
ポリアミド酸溶液100gに、イミド化触媒としてピリジン6.0gを添加し、完全に分散させた後、無水酢酸8gを添加し、90℃で3時間攪拌した。室温まで冷却した後、溶液を攪拌しながら、2-プロピルアルコール(以下、IPAと記載)100gを、2~3滴/秒の速度で投入し、ポリイミドを析出させた。さらにIPA150gを添加し、約30分撹拌後、桐山ロートを使用して吸引ろ過を行った。得られた固体をIPAで洗浄した後、120℃に設定した真空オーブンで12時間乾燥させて、ポリイミド樹脂を得た。
[フィルム作製例]
<実施例1、比較例1>
塩化メチレンに、上記の製造例で得られたポリイミド(PI)と市販のポリメタクリル酸メチル樹脂(株式会社クラレ製「パラペットHM1000」、ガラス転移温度:120℃、酸価:0.0mmol/g、以下「アクリル樹脂1」)を、表1に示す比率で混合し、樹脂分11重量%の塩化メチレン溶液を調製した。この溶液を無アルカリガラス板上に塗布し、60℃で15分、90℃で15分、120℃で15分、150℃で15分、180℃で15分、200℃で15分、大気雰囲気下で加熱乾燥し、厚さ約50μmのフィルムを作製した。
<実施例1、比較例1>
塩化メチレンに、上記の製造例で得られたポリイミド(PI)と市販のポリメタクリル酸メチル樹脂(株式会社クラレ製「パラペットHM1000」、ガラス転移温度:120℃、酸価:0.0mmol/g、以下「アクリル樹脂1」)を、表1に示す比率で混合し、樹脂分11重量%の塩化メチレン溶液を調製した。この溶液を無アルカリガラス板上に塗布し、60℃で15分、90℃で15分、120℃で15分、150℃で15分、180℃で15分、200℃で15分、大気雰囲気下で加熱乾燥し、厚さ約50μmのフィルムを作製した。
<参考例1>
参考例1ではアクリル樹脂1の塩化メチレン溶液を調製し、上記と同様の条件で厚さ約50μmのフィルムを作製した。
参考例1ではアクリル樹脂1の塩化メチレン溶液を調製し、上記と同様の条件で厚さ約50μmのフィルムを作製した。
[評価]
<ヘイズおよび全光線透過率>
フィルムを3cm角に切り出し、スガ試験機製のヘイズメーター「HZ-V3」により、JIS K7136およびJIS K7361-1に従って、ヘイズおよび全光線透過率(TT)を測定した。ヘイズが20%を超えたものについては、全光線透過率、ならびに黄色度の測定は実施しなかった(表1において、NDと記載)。
<ヘイズおよび全光線透過率>
フィルムを3cm角に切り出し、スガ試験機製のヘイズメーター「HZ-V3」により、JIS K7136およびJIS K7361-1に従って、ヘイズおよび全光線透過率(TT)を測定した。ヘイズが20%を超えたものについては、全光線透過率、ならびに黄色度の測定は実施しなかった(表1において、NDと記載)。
<黄色度>
フィルムを3cm角に切り出し、スガ試験機製の分光測色計「SC-P」によりて、JIS K7373に従って黄色度(YI)を測定した。
フィルムを3cm角に切り出し、スガ試験機製の分光測色計「SC-P」によりて、JIS K7373に従って黄色度(YI)を測定した。
<折り曲げ耐性>
フィルムを20mm×100mmの短冊状に切り出し、長さ方向の中央で180°折り曲げ、フィルムが割れなかったものを「〇」、フィルムが割れたものを「×」とした。
フィルムを20mm×100mmの短冊状に切り出し、長さ方向の中央で180°折り曲げ、フィルムが割れなかったものを「〇」、フィルムが割れたものを「×」とした。
[評価結果]
樹脂の組成(ポリイミドの組成、アクリル系樹脂の種類、および混合比)、ならびにフィルムの評価結果を表1に示す。
樹脂の組成(ポリイミドの組成、アクリル系樹脂の種類、および混合比)、ならびにフィルムの評価結果を表1に示す。
表1において、化合物は以下の略称により記載している。
<酸二無水物>
6FDA:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
<ジアミン>
TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
<酸二無水物>
6FDA:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
<ジアミン>
TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
ジアミン由来の構造にフルオロアルキル置換ベンジジンと脂環式ジアミンを有し、テトラカルボン酸二無水物由来の構造にフッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物を有するポリイミド樹脂とアクリル樹脂1とを混合した樹脂組成物を用いた実施例1では、比較例1に比べてヘイズの上昇が抑制されていた。実施例1では、参考例1に比べると折り曲げ耐性が向上していた。
アクリル樹脂1のみを用いて作製した参考例1のアクリルフィルムは、折り曲げ耐性が不十分であった。
脂環式ジアミンを含まないポリイミド樹脂とアクリル樹脂1とを混合した樹脂組成物を用いた比較例1では、フィルムのヘイズが大幅に上昇しており、また、折り曲げ耐性が不十分であった。これは、ポリイミド樹脂とアクリル系樹脂が相溶性を示さなかったためであると考えられる。
以上の結果から、ジアミン由来の構造にフルオロアルキル置換ベンジジンと脂環式ジアミンを有し、テトラカルボン酸二無水物由来の構造にフッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物を有するポリイミドは、エステル系樹脂との相溶性を示し、これらを混合した樹脂組成物を用いることにより、透明性が高く、かつ機械強度に優れるフィルムが得られることが分かる。
Claims (17)
- ポリイミドとエステル系樹脂を含む樹脂組成物であって、
前記ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物由来の構造とジアミン由来の構造を有し、
前記ジアミン由来の構造としてフルオロアルキル置換ベンジジンと脂環式ジアミンを有し、
前記テトラカルボン酸二無水物由来の構造としてフッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物を有し、
前記エステル系樹脂が、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、フマル酸ジエステル(共)重合体およびマレイン酸ジエステル(共)重合体の群から選ばれるいずれかの構造を有する樹脂であることを特徴とする、樹脂組成物。 - 前記脂環式ジアミンが、イソホロンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(アミノメチル)ノルボルネン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、アダマンタン-1,3-ジアミン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサンから選択される1種以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
- フッ素含有芳香族テトラカルボン酸二無水物が4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 前記フルオロアルキル置換ベンジジンが2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンである、請求項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 前記ジアミン由来の構造が2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンとジカルボン酸の縮合構造であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 前記ジカルボン酸が、テレフタル酸であることを特徴とする請求項6に記載の樹脂組成物。
- 前記ジアミン由来の構造中、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンとジカルボン酸の縮合構造が50モル%以上である、請求項6または7に記載の樹脂組成物。
- 前記ジアミン由来の構造全量100モル%に対する、フルオロアルキル置換ベンジジンと脂環式ジアミンの含有量の合計が50モル%以上である、請求項1~8のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 前記エステル系樹脂のモノマー成分全量に対する、メタクリル酸メチルの量が60重量%以上である、請求項1~9のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 前記エステル系樹脂のモノマー成分全量に対する、フマル酸ジエチルの量が60重量%以上である、請求項1~9のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 前記エステル系樹脂のモノマー成分全量に対する、フマル酸ジイソプロピルの量が60重量%以上である、請求項1~9のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 前記エステル系樹脂のガラス転移温度が100℃以上である、請求項1~12のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 前記ポリイミドと前記エステル系樹脂を、98:2~2:98の範囲の重量比で含む、 請求項1~13のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 請求項1~14のいずれかに記載の樹脂組成物を含むフィルム。
- 厚みが5μm以上300μm以下である請求項15に記載のフィルム。
- 厚みが50μmの時に、全光線透過率が85%以上、ヘイズが10% 以下、黄色度が5.0以下、引張弾性率が3.5GPa以上、鉛筆硬度がF以上である、 請求項15または16に記載のフィルム。
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