JP2024020374A - ベーパーチャンバ用金属板、ベーパーチャンバ用金属条、ベーパーチャンバおよび電子機器 - Google Patents

ベーパーチャンバ用金属板、ベーパーチャンバ用金属条、ベーパーチャンバおよび電子機器 Download PDF

Info

Publication number
JP2024020374A
JP2024020374A JP2023193284A JP2023193284A JP2024020374A JP 2024020374 A JP2024020374 A JP 2024020374A JP 2023193284 A JP2023193284 A JP 2023193284A JP 2023193284 A JP2023193284 A JP 2023193284A JP 2024020374 A JP2024020374 A JP 2024020374A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sheet
vapor chamber
metal plate
flow path
electronic device
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2023193284A
Other languages
English (en)
Inventor
貴之 太田
Takayuki Ota
伸一郎 高橋
Shinichiro Takahashi
和範 小田
Kazunori Oda
誠 山木
Makoto Yamaki
千秋 初田
Chiaki Hatsuda
詩子 大内
Utako Ouchi
育万 塩田
Ikuma SHIOTA
学 石原
Manabu Ishihara
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dai Nippon Printing Co Ltd
Original Assignee
Dai Nippon Printing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dai Nippon Printing Co Ltd filed Critical Dai Nippon Printing Co Ltd
Publication of JP2024020374A publication Critical patent/JP2024020374A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F28HEAT EXCHANGE IN GENERAL
    • F28DHEAT-EXCHANGE APPARATUS, NOT PROVIDED FOR IN ANOTHER SUBCLASS, IN WHICH THE HEAT-EXCHANGE MEDIA DO NOT COME INTO DIRECT CONTACT
    • F28D15/00Heat-exchange apparatus with the intermediate heat-transfer medium in closed tubes passing into or through the conduit walls ; Heat-exchange apparatus employing intermediate heat-transfer medium or bodies
    • F28D15/02Heat-exchange apparatus with the intermediate heat-transfer medium in closed tubes passing into or through the conduit walls ; Heat-exchange apparatus employing intermediate heat-transfer medium or bodies in which the medium condenses and evaporates, e.g. heat pipes
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F28HEAT EXCHANGE IN GENERAL
    • F28FDETAILS OF HEAT-EXCHANGE AND HEAT-TRANSFER APPARATUS, OF GENERAL APPLICATION
    • F28F21/00Constructions of heat-exchange apparatus characterised by the selection of particular materials
    • F28F21/08Constructions of heat-exchange apparatus characterised by the selection of particular materials of metal
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01LSEMICONDUCTOR DEVICES NOT COVERED BY CLASS H10
    • H01L23/00Details of semiconductor or other solid state devices
    • H01L23/34Arrangements for cooling, heating, ventilating or temperature compensation ; Temperature sensing arrangements
    • H01L23/42Fillings or auxiliary members in containers or encapsulations selected or arranged to facilitate heating or cooling
    • H01L23/427Cooling by change of state, e.g. use of heat pipes

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Thermal Sciences (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Sustainable Development (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Condensed Matter Physics & Semiconductors (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Computer Hardware Design (AREA)
  • Microelectronics & Electronic Packaging (AREA)
  • Power Engineering (AREA)
  • Cooling Or The Like Of Semiconductors Or Solid State Devices (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)
  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)

Abstract

【課題】機械的強度を確保できるとともに熱輸送性能の低下を抑制できるベーパーチャンバ用金属板、ベーパーチャンバ用金属条、ベーパーチャンバおよび電子機器を提供する。【解決手段】本開示によるベーパーチャンバ用金属板(10,20)は、作動流体が封入されるベーパーチャンバ(1)の中間シート(30)に設けられた空間部を覆うシートを製造するために用いられるベーパーチャンバ用金属板(10,20)である。ベーパーチャンバ用金属板(10,20)は、SUS316LまたはSUS316LTAで構成されている。ベーパーチャンバ用金属板(10,20)の表面に存在する鉄元素の比率は、8.5atomic%以下である。【選択図】図3

Description

本開示は、ベーパーチャンバ用金属板、ベーパーチャンバ用金属条、ベーパーチャンバおよび電子機器に関する。
モバイル端末等の電子機器には、発熱を伴う電子デバイスが用いられている。この電子デバイスの例としては、中央演算処理装置(CPU)、発光ダイオード(LED)およびパワー半導体等が挙げられる。モバイル端末の例としては、携帯端末およびタブレット端末等が挙げられる。
このような電子デバイスは、ヒートパイプ等の放熱装置によって冷却されている(例えば、特許文献1参照)。近年では、電子機器の薄型化のために、放熱装置の薄型化が求められている。放熱装置として、ヒートパイプより薄くできるベーパーチャンバの開発が進められている。ベーパーチャンバは、封入された作動流体が電子デバイスの熱を吸収して内部で拡散することにより、電子デバイスを効率良く冷却する。
より具体的には、ベーパーチャンバ内の作動液は、電子デバイスに近接した部分(蒸発部)で電子デバイスから熱を受ける。熱を受けた作動液は蒸発して、作動蒸気になる。その作動蒸気は、ベーパーチャンバ内に形成された蒸気流路部内で、蒸発部から離れる方向に拡散する。拡散した作動蒸気は冷却されて凝縮し、作動液になる。ベーパーチャンバ内には、毛細管構造(ウィック)としての液流路部が設けられている。作動液は、液流路部を流れて、蒸発部に向かって輸送される。そして、蒸発部に輸送された作動液は、再び蒸発部で熱を受けて蒸発する。このようにして、作動流体が、相変化、すなわち蒸発と凝縮とを繰り返しながらベーパーチャンバ内を還流し、電子デバイスの熱を拡散している。この結果、ベーパーチャンバの放熱性能が高められている。
ベーパーチャンバが搭載される電子機器の薄型化に伴い、ベーパーチャンバの厚さを薄くすることが要求されている。このため、ベーパーチャンバを構成する各シートの厚さを薄くしたいという要求がある。一方、各シートは、機械的強度を確保することも要求されている。これらの要求に応えるために、蒸気流路部を覆うシートに、機械的強度が比較的高いステンレスが用いられる場合がある。しかしながら、ステンレスで構成されたシートを用いる場合、ベーパーチャンバの熱輸送性能が低下するという問題がある。
国際公開第2018/221369号公報
本開示は、機械的強度を確保できるとともに熱輸送性能の低下を抑制できるベーパーチャンバ用金属板、ベーパーチャンバ用金属条、ベーパーチャンバおよび電子機器を提供することを目的とする。
[1]本開示は、
作動流体が封入されるベーパーチャンバの空間部を画定するシートを製造するために用いられるベーパーチャンバ用金属板であって、
SUS316LまたはSUS316LTAで構成され、
前記ベーパーチャンバ用金属板の表面における鉄元素の比率は、8.5atomic%以下である、
ベーパーチャンバ用金属板であってもよい。
[2]本開示は、
前記鉄元素の比率は、前記ベーパーチャンバ用金属板の表面をX線光電子分光法で測定することにより得られた比率である、
[1]に記載のベーパーチャンバ用金属板であってもよい。
[3]本開示は、
前記ベーパーチャンバ用金属板の厚さは、5μm~30μmである、
[1]または[2]に記載のベーパーチャンバ用金属板であってもよい。
[4]本開示は、
[1]~[3]のいずれかに記載のベーパーチャンバ用金属板を備え、
前記ベーパーチャンバ用金属板が、円筒状に巻かれている、
ベーパーチャンバ用金属条であってもよい。
[5]本開示は、
作動流体が封入されたベーパーチャンバであって、
前記作動流体が封入された空間部と、
前記空間部を画定する第1シートと、を備え、
前記第1シートは、金属板で構成され、
前記金属板は、SUS316LまたはSUS316LTAで構成され、
前記第1シートは、前記空間部に露出する第1露出面を含み、
前記第1露出面における鉄元素の比率は、8.5atomic%以下である、
ベーパーチャンバであってもよい。
[6]本開示は、
前記鉄元素の比率は、前記第1露出面をX線光電子分光法で測定することにより得られた比率である、
[5]に記載のベーパーチャンバであってもよい。
[7]本開示は、
前記金属板の厚さは、5μm~30μmである、
[5]または[6]に記載のベーパーチャンバであってもよい。
[8]本開示は、
前記第1シートとは反対側から前記空間部を画定する第2シートを備え、
前記第2シートは、前記金属板で構成され、
前記第2シートは、前記空間部に露出する第2露出面を含み、
前記第2露出面における鉄元素の比率は、8.5atomic%以下である、
[1]~[7]のいずれかに記載のベーパーチャンバであってもよい。
[9]本開示は、
前記第1シートと前記第2シートとの間に介在され、前記空間部を画定する中間シートを備えた、
[8]に記載のベーパーチャンバであってもよい。
[10]本開示は、
前記中間シートは、無酸素銅で構成されている、
[9]に記載のベーパーチャンバであってもよい。
[11]本開示は、
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容された電子デバイスと、
前記電子デバイスに熱的に接触した、[5]~[10]のいずれかに記載のベーパーチャンバと、を備えた、
電子機器であってもよい。
本開示によれば、機械的強度を確保できるとともに熱輸送性能の低下を抑制できる。
図1は、本開示の実施の形態による電子機器を説明する模式斜視図である。 図2は、図1に示すベーパーチャンバを示す平面図である。 図3は、図2のA-A線断面図である。 図4は、図3に示す第1シートの内面を示す平面図である。 図5は、図3に示す第2シートの内面を示す平面図である。 図6は、図3に示すウィックシートの第1中間シート面を示す平面図である。 図7は、図3に示すウィックシートの第2中間シート面を示す平面図である。 図8は、図3の部分拡大断面図である。 図9は、図6に示す液流路部の部分拡大図である。 図10は、本実施の形態によるベーパーチャンバ用金属条から第1シートおよび第2シートを作製する方法を説明するための模式図である。 図11は、図3に示すベーパーチャンバの変形例を示す断面図である。 図12Aは、図11に示すベーパーチャンバの変形例を示す断面図である。 図12Bは、図12Aに示すベーパーチャンバの内部構造を説明するための平面図である。 図13は、本実施例における動作性能確認時の温度測定点を示す平面図である。 図14は、図13の側面図である。 図15は、鉄元素の比率と、信頼性試験後の動作性能確認時に得られた温度差との関係を示すグラフである。
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
本明細書において用いる、幾何学的条件と、物理的特性と、幾何学的条件または物理的特性の程度を特定する用語と、幾何学的条件または物理的特性を示す数値等については、厳密な意味に縛られることなく解釈してもよい。そして、これらの幾何学的条件、物理的特性、用語、および数値などについては、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈してもよい。幾何学的条件を特定する用語の例としては、「長さ」、「角度」、「形状」および「配置」等が挙げられる。幾何学的条件を特定する用語の例としては、「平行」、「直交」および「同一」等が挙げられる。さらに、図面を明瞭にするために、同様の機能を期待し得る複数の部分の形状を、規則的に記載している。しかしながら、厳密な意味に縛られることなく、当該機能を期待できる範囲内で、当該部分の形状は互いに異なっていてもよい。図面においては、部材同士の接合面などを示す境界線を、便宜上、単なる直線で示しているが、厳密な直線であることに縛られることはなく、所望の接合性能を期待できる範囲内で、当該境界線の形状は任意である。
図1~図9を用いて、本開示の実施の形態によるベーパーチャンバ用金属板、ベーパーチャンバ用金属条、ベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。本実施の形態によるベーパーチャンバ1は、発熱を伴う電子デバイスDとともに電子機器EのハウジングHに収容されており、電子デバイスDを冷却するための装置である。電子機器Eの例としては、携帯端末およびタブレット端末等のモバイル端末等が挙げられる。電子デバイスDの例としては、中央演算処理装置(CPU)、発光ダイオード(LED)およびパワー半導体等が挙げられる。電子デバイスDは、被冷却装置と称する場合もある。
ここではまず、本実施の形態によるベーパーチャンバ1が搭載される電子機器Eについて、タブレット端末を例にとって説明する。図1に示すように、電子機器Eは、ハウジングHと、ハウジングH内に収容された電子デバイスDと、ベーパーチャンバ1と、を備えていてもよい。図1に示す電子機器Eでは、ハウジングHの前面にタッチパネルディスプレイTDが設けられている。ベーパーチャンバ1は、ハウジングH内に収容されて、電子デバイスDに熱的に接触するように配置される。ベーパーチャンバ1は、電子機器Eの使用時に電子デバイスDで発生する熱を受ける。ベーパーチャンバ1が受けた熱は、後述する作動流体2a、2bを介してベーパーチャンバ1の外部に放出し、電子デバイスDは効果的に冷却される。電子機器Eがタブレット端末である場合、電子デバイスDは、中央演算処理装置等に相当する。
次に、本実施の形態によるベーパーチャンバ1について説明する。
図2および図3に示すように、ベーパーチャンバ1は、作動流体2a、2b(図6参照)が封入された密封空間3を有している。密封空間3内の作動流体2a、2bが相変化を繰り返すことにより、上述した電子デバイスDが冷却される。作動流体2a、2bは、水を含んでいる。作動流体2a、2bの例としては、純水、およびその混合液が挙げられる。
本実施の形態によるベーパーチャンバ1は、第1シート10と、第2シート20と、ウィックシート30と、蒸気流路部50と、液流路部60と、を備えている。第2シート20は、ウィックシート30に対して第1シート10とは反対側に位置している。ウィックシート30は、中間シートの一例であり、第1シート10と第2シート20との間に介在されている。本実施の形態によるベーパーチャンバ1は、第1シート10、ウィックシート30および第2シート20が、この順番で重ねられている。本実施の形態においては、ウィックシート30は、1枚のシートによって構成されている例が示されているが、ウィックシート30は、2枚以上のシートで構成されていてもよく、ウィックシート30のシート枚数は任意である。
図2に示すベーパーチャンバ1は、概略的に薄い平板状に形成されている。ベーパーチャンバ1の平面形状は任意であるが、図2に示すような矩形形状であってもよい。ベーパーチャンバ1の平面形状は、例えば、1辺が1cmで他の辺が3cmの長方形であってもよく、1辺が15cmの正方形であってもよい。ベーパーチャンバ1の平面寸法は任意である。本実施の形態では、ベーパーチャンバ1の平面形状が、後述するX方向を長手方向とする矩形形状である例について説明する。この場合、図4~図7に示すように、第1シート10、第2シート20およびウィックシート30は、ベーパーチャンバ1と同様の平面形状を有していてもよい。ベーパーチャンバ1の平面形状は、矩形形状に限られることはなく、円形形状、楕円形形状、L字形状またはT字形状等、任意の形状であってもよい。
図2に示すように、ベーパーチャンバ1は、作動液2bが蒸発する蒸発領域SRと、作動蒸気2aが凝縮する凝縮領域CRと、を有している。作動蒸気2aは、気体状態の作動流体であり、作動液2bは、液体状態の作動流体である。
蒸発領域SRは、平面視において電子デバイスDと重なる領域であり、電子デバイスDと接触する領域である。蒸発領域SRの位置は任意である。本実施の形態においては、ベーパーチャンバ1のX方向における一方の端部(図2における左端部)に比較的近い位置に、蒸発領域SRが形成されている。蒸発領域SRに電子デバイスDからの熱が伝わり、この熱によって作動液2bが蒸発して、作動蒸気2aが生成される。電子デバイスDからの熱は、平面視において電子デバイスDに重なる領域だけではなく、電子デバイスDが重なる領域の周辺にも伝わり得る。このため、蒸発領域SRは、平面視において、電子デバイスDに重なっている領域とその周辺の領域とを含んでいてもよい。
凝縮領域CRは、平面視において電子デバイスDと重ならない領域であって、主として作動蒸気2aが熱を放出して凝縮する領域である。凝縮領域CRは、蒸発領域SRの周囲の領域であってもよい。凝縮領域CRにおいて作動蒸気2aからの熱が放出される。作動蒸気2aは冷却されて凝縮し、作動液2bが生成される。
ここで平面視とは、ベーパーチャンバ1が電子デバイスDから熱を受ける面および受けた熱を放出する面に直交する方向から見た状態である。熱を受ける面とは、第1シート10の後述する第1シート外面10aに相当する。熱を放出する面とは、第2シート20の後述する第2シート外面20bに相当する。図2に示すように、ベーパーチャンバ1を上方から見た状態、または下方から見た状態が、平面視に相当している。
図3に示すように、第1シート10は、ウィックシート30とは反対側に位置する第1シート外面10aと、ウィックシート30に対向する第1シート内面10bと、を含んでいる。第1シート外面10aに、上述した電子デバイスDが接してもよい。第1シート内面10bに、ウィックシート30の後述する第1中間シート面30aが接している。
第1シート10は、後述する蒸気流路部50を画定している。第1シート内面10bは、蒸気流路部50に露出する第1露出面10cを含んでいる。より具体的には、第1露出面10cは、後述する第1蒸気通路51または第2蒸気通路52に露出されて、蒸気通路51、52を覆っている。第1露出面10cに、ウィックシート30の第1中間シート面30aは接しておらず、第1露出面10cは、作動流体2a、2bに接する部分である。
図3および図4に示すように、第1シート10は、ベーパーチャンバ用金属板(以下、単に金属板40と記す)で構成されている。第1シート10は、金属板40によって構成された単一層で形成されていてもよく、金属板40の表面に、他の材料の層は形成されていなくてもよい。この場合、金属板40の一方の表面は、第1シート外面10aを構成し、他方の表面は第1シート内面10bを構成している。金属板40についての詳細は後述する。第1シート10は、実質的に平坦状に形成されていてもよい。第1シート10は、実質的に一定の厚さを有していてもよい。
図3に示すように、第2シート20は、ウィックシート30に対向する第2シート内面20aと、ウィックシート30とは反対側に位置する第2シート外面20bと、を含んでいる。第2シート外面20bに、ハウジング部材Haが接してもよい。ハウジング部材Haは、ハウジングHを構成する部材である。第2シート内面20aに、ウィックシート30の後述する第2中間シート面30bが接している。
第2シート20は、第1シート10とは反対側から、後述する蒸気流路部50を画定している。第2シート内面20aは、蒸気流路部50に露出する露出面20cを含んでいる。より具体的には、第2露出面20cは、第1蒸気通路51または第2蒸気通路52に露出されて、蒸気通路51、52を覆っている。第2露出面20cに、ウィックシート30の第2中間シート面30bは接しておらず、第2露出面20cは、作動流体2a、2bに接する部分である。
図3および図5に示すように、第2シート20は、第1シート10を構成する金属板40と同様の金属板40で構成されている。第2シート20は、金属板40によって構成された単一の層で形成されていてもよく、金属板40の表面に、他の材料の層は形成されていなくてもよい。この場合、金属板40の一方の面は、第2シート内面20aを構成し、他方の面は第2シート外面20bを構成している。第2シート20は、実質的に平坦状に形成されていてもよい。第2シート20は、実質的に一定の厚さを有していてもよい。
図3に示すように、ウィックシート30は、第1中間シート面30aと、第1中間シート面30aとは反対側に位置する第2中間シート面30bと、を有している。第1中間シート面30aに、第1シート10の第1シート内面10bが接している。第2中間シート面30bに、第2シート20の第2シート内面20aが接している。第1シート10の第1シート内面10bとウィックシート30の第1中間シート面30aとは、拡散接合されていてもよい。第1シート内面10bと第1中間シート面30aとは、互いに恒久的に接合されていてもよい。同様に、第2シート20の第2シート内面20aとウィックシート30の第2中間シート面30bとは、拡散接合されていてもよい。第2シート内面20aと第2中間シート面30bとは、互いに恒久的に接合されていてもよい。「恒久的に接合」という用語は、厳密な意味に縛られることはなく、ベーパーチャンバ1の動作時に、密封空間3の密封性を維持可能な程度に接合されていることを意味する用語として用いている。
ウィックシート30は、後述する蒸気流路部50を画定している。より具体的には、図3、図6および図7に示すように、ウィックシート30は、枠体部32と、複数のランド部33と、を含んでいる。枠体部32は、蒸気流路部50を画定しており、平面視においてX方向およびY方向に沿って矩形枠形状に形成されている。ランド部33は、蒸気流路部50内に位置しており、平面視において枠体部32の内側に位置している。枠体部32およびランド部33は、後述するエッチング工程においてエッチングされることなく、ウィックシート30の材料が残る部分である。枠体部32と隣り合うランド部33との間に、作動蒸気2aが流れる後述の第1蒸気通路51が形成されている。互いに隣り合うランド部33の間に、作動蒸気2aが流れる後述の第2蒸気通路52が形成されている。
ランド部33は、平面視において、X方向を長手方向として細長状に延びていてもよい。ランド部33の平面形状は、細長の矩形形状になっていてもよい。各ランド部33は、互いに平行に位置していてもよい。X方向は、第1方向の一例であり、図6および図7における左右方向に相当する。Y方向は、第2方向の一例であり、平面視でX方向に直交する方向である。Y方向は、図6および図7における上下方向に相当する。X方向およびY方向のそれぞれに直交する方向をZ方向とする。Z方向は、図3における上下方向に相当しており、厚さ方向に相当している。
図8に示すように、ランド部33の幅w1は、例えば、100μm~1500μmであってもよい。ここで、ランド部33の幅w1は、Y方向におけるランド部33の寸法である。幅w1は、Y方向の寸法であって、第1中間シート面30aおよび第2中間シート面30bにおけるランド部33の寸法である。図8には、第1中間シート面30aにおけるランド部33の幅と、第2中間シート面30bにおけるランド部33の幅が等しい例を示している。しかしながら、第1中間シート面30aにおけるランド部33の幅と、第2中間シート面30bにおけるランド部33の幅は、異なっていてもよい。
枠体部32および各ランド部33は、第1シート10に拡散接合されるとともに、第2シート20に拡散接合されている。このことにより、ベーパーチャンバ1の機械的強度を向上させている。ウィックシート30の第1中間シート面30aおよび第2中間シート面30bは、枠体部32および各ランド部33にわたって、平坦状に形成されていてもよい。
図3に示すように、蒸気流路部50は、ウィックシート30の第1中間シート面30aに設けられていてもよい。蒸気流路部50は、作動流体2a、2bが封入された空間部の一例である。蒸気流路部50は、主として、作動蒸気2aが通る流路であってもよい。蒸気流路部50に、作動液2bも通ってもよい。本実施の形態においては、蒸気流路部50は、第1中間シート面30aから第2中間シート面30bに延びていてもよく、ウィックシート30を貫通していてもよい。蒸気流路部50は、第1中間シート面30aにおいて第1シート10で覆われていてもよく、第2中間シート面30bにおいて第2シート20で覆われていてもよい。第2シート20は、第1シート10とは反対側から蒸気流路部50を覆う。
図6および図7に示すように、本実施の形態による蒸気流路部50は、第1蒸気通路51と複数の第2蒸気通路52とを含んでいてもよい。第1蒸気通路51は、枠体部32とランド部33との間に形成されている。第1蒸気通路51は、空間周縁部の一例である。第1蒸気通路51は、枠体部32の内側であってランド部33の外側に連続状に形成されている。第1蒸気通路51の平面形状は、X方向およびY方向に沿って矩形枠形状になっていてもよい。第2蒸気通路52は、互いに隣り合うランド部33の間に形成されている。第2蒸気通路52の平面形状は、細長の矩形形状になっていてもよい。複数のランド部33によって、蒸気流路部50は、第1蒸気通路51と複数の第2蒸気通路52とに区画されている。
図3に示すように、第1蒸気通路51および第2蒸気通路52は、第1中間シート面30aに設けられた第1蒸気流路凹部53と、第2中間シート面30bに設けられた第2蒸気流路凹部54と、を含んでいる。第1蒸気流路凹部53と第2蒸気流路凹部54とは連通している。
第1蒸気流路凹部53は、後述するエッチング工程において、ウィックシート30の第1中間シート面30aをエッチングすることによって形成されていてもよい。第1蒸気流路凹部53は、第1中間シート面30aに凹状に形成されている。図8に示すように、第1蒸気流路凹部53の幅w2は、例えば、100μm~5000μmであってもよい。幅w2は、Y方向の寸法であって、第1中間シート面30aにおける第1蒸気流路凹部53の寸法である。
第2蒸気流路凹部54は、後述するエッチング工程において、ウィックシート30の第2中間シート面30bをエッチングすることによって形成されていてもよい。第2蒸気流路凹部54は、第2中間シート面30bに凹状に形成されている。図8に示すように、第2蒸気流路凹部54の幅w3は、上述した第1蒸気流路凹部53の幅w2と同様に、例えば、100μm~5000μmであってもよい。幅w3は、Y方向の寸法であって、第2中間シート面30bにおける第2蒸気流路凹部54の寸法である。
図8に示すように、本実施の形態では、第1蒸気通路51の断面形状および第2蒸気通路52の断面形状が、貫通部34を含むように形成されている。貫通部34は、蒸気流路凹部53、54の壁面が内側に張り出すように形成された稜線によって画定されている。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、第1蒸気通路51の断面形状および第2蒸気通路52の断面形状は、台形形状や平行四辺形形状であってもよく、あるいは樽形形状になっていてもよい。
このように構成された第1蒸気通路51および第2蒸気通路52を含む蒸気流路部50は、上述した密封空間3の一部を構成している。各蒸気通路51、52は、作動蒸気2aが通るように比較的大きな流路断面積を有している。
ここで、図8は、図面を明瞭にするために、第1蒸気通路51および第2蒸気通路52を拡大して示している。蒸気通路51、52などの個数や位置は、図3、図6および図7とは異なっている。
図示しないが、各蒸気通路51、52内に、ランド部33を枠体部32に支持する支持部が複数設けられていてもよい。また、互いに隣り合うランド部33同士を支持する支持部が設けられていてもよい。これらの支持部は、蒸気流路部50を拡散する作動蒸気2aの流れを妨げないように形成されていてもよい。
図2に示すように、ベーパーチャンバ1は、密封空間3に作動液2bを注入する注入部4を備えていてもよい。注入部4は、第1蒸気通路51に連通した注入流路36を含んでいる。注入部4の位置は、任意である。図6および図7に示すように、注入流路36は、第2中間シート面30bに凹状に形成されていてもよい。あるいは、注入流路36は、第1中間シート面30aに凹状に形成されていてもよい。なお、後述する液流路部60の構成によっては、注入流路36は液流路部60に連通していてもよい。
図3および図8に示すように、液流路部60は、第1シート10とウィックシート30との間に形成されていてもよい。本実施の形態においては、液流路部60は、ランド部33の第1中間シート面30aに形成されている。液流路部60は、主として作動液2bが通る流路であってもよい。液流路部60には、上述した作動蒸気2aが通ってもよい。液流路部60は、上述した密封空間3の一部を構成しており、蒸気流路部50に連通している。液流路部60は、作動液2bを蒸発領域SRに輸送するための毛細管構造として構成されている。液流路部60は、ウィックと称する場合もある。液流路部60は、各ランド部33の第1中間シート面30aの全体にわたって形成されていてもよい。図6等では図示していないが、枠体部32の第1中間シート面30aのうち内側部分に、液流路部60が形成されていてもよい。図示しないが、ランド部33の第2中間シート面30bに液流路部が形成されていてもよく、枠体部32の第2中間シート面30bに液流路部60が形成されていてもよい。
図9に示すように、液流路部60は、複数の溝を含む溝集合体の一例である。より具体的には、液流路部60は、複数の主流溝61と、複数の連絡溝65と、を含んでいる。主流溝61および連絡溝65は、作動液2bが通る溝である。連絡溝65は、主流溝61と連通している。
各主流溝61は、図9に示すように、X方向に延びている。主流溝61は、主として、作動液2bが毛細管作用によって流れるように小さな流路断面積を有している。主流溝61の流路断面積は、蒸気通路51、52の流路断面積よりも小さい。主流溝61は、作動蒸気2aから凝縮した作動液2bを蒸発領域SRに輸送するように構成されている。
主流溝61は、後述するエッチング工程において、ウィックシート30の第1中間シート面30aをエッチングすることによって形成される。図8に示すように、主流溝61の幅w4は、第1蒸気流路凹部53の幅w2よりも小さくてもよい。主流溝61の幅w4は、例えば、5μm~400μmであってもよい。幅w4は、第1中間シート面30aにおける主流溝61の寸法を意味している。幅w4は、主流溝61のY方向寸法に相当している。主流溝61の深さh1は、例えば、3μm~300μmであってもよい。深さh1は、主流溝61のZ方向寸法に相当している。
図9に示すように、各連絡溝65は、X方向とは異なる方向に延びている。本実施の形態においては、各連絡溝65はY方向に延びており、主流溝61に垂直に形成されている。いくつかの連絡溝65は、互いに隣り合う主流溝61同士を連通している。他の連絡溝65は、第1蒸気通路51または第2蒸気通路52と、主流溝61とを連通している。
連絡溝65は、主として、作動液2bが毛細管作用によって流れるように、小さな流路断面積を有している。連絡溝65の流路断面積は、蒸気通路51、52の流路断面積よりも小さい。
連絡溝65は、主流溝61と同様に、後述するエッチング工程において、ウィックシート30の第1中間シート面30aをエッチングすることによって形成される。連絡溝65の幅w5は、第1蒸気流路凹部53の幅w2よりも小さくてもよい。図9に示すように、連絡溝65の幅w5は、主流溝61の幅w4と等しくてもよく、または異なっていてもよい。幅w5は、第1中間シート面30aにおける連絡溝65の寸法を意味している。幅w5は、連絡溝65のX方向寸法に相当している。連絡溝65の深さは、主流溝61の深さh1と等しくてもよく、または異なっていてもよい。
液流路部60は、ウィックシート30の第1中間シート面30aに設けられた複数の凸部64を含んでいる。凸部64は、互いに隣り合う主流溝61と、互いに隣り合う連絡溝65によって画定されている。凸部64は、平面視において、X方向が長手方向となるように矩形形状に形成されている。凸部64は、後述するエッチング工程においてエッチングされることなく、ウィックシート30の材料が残る部分である。凸部64は、千鳥状に位置していてもよい。より具体的には、Y方向において互いに隣り合う凸部64が、X方向において互いにずれていてもよい。このずれ量は、X方向における凸部64の配列ピッチの半分であってもよい。
第1シート10、第2シート20およびウィックシート30を構成する材料は、ベーパーチャンバ1としての放熱性能を確保できる程度に熱伝導率が良好な材料であれば、特に限られることはない。例えば、各シート10、20、30は、金属材料で構成されていてもよい。
第1シート10および第2シート20は、金属板40で構成されている。金属板40は、作動流体2a、2bが封入されるベーパーチャンバ1の蒸気流路部50を画定する第1シート10および第2シート20を製造するために用いられる。
金属板40は、ステンレス鋼の一種であるSUS316LまたはSUS316LTAで構成されていてもよい。金属板40は、SUS316LまたはSUS316LTAによって構成された単一層として形成されていてもよい。SUS316LおよびSUS316LTAはそれぞれ、炭素(C)と、ケイ素(Si)と、マンガン(Mn)と、リン(P)と、硫黄(S)と、ニッケル(Ni)と、クロム(Cr)と、モリブデン(Mo)と、を含んでいる。各元素の成分の含有量は、表1に示されている。表1は、JIS G 4304-2012およびJIS G 4305-2012に従っている。
Figure 2024020374000002
SUS316LTAは、SUS316Lで構成された板材を、引張力を掛けながらアニール処理することにより得られる。TAは、テンションアニールを意味している。上述したSUS316Lという表記の材料は、SUS316LTAとは異なり、テンションアニールされていない材料である。
金属板40の表面における鉄元素の比率は、8.5atomic%以下であってもよい。SUS316Lで構成された金属板40の表面およびSUS316LTAで構成された金属板40の表面にはそれぞれ、酸化皮膜が形成されている。酸化皮膜は、不動態被膜とも称される。酸化皮膜は、SUS316LおよびSUS316LTAの構成元素であるクロムが酸化することにより形成される膜である。酸化皮膜が緻密に形成されていない場合には、酸化皮膜の微小な穴から酸化鉄が露出していると考えられる。このように露出した酸化鉄に含まれる鉄元素の比率が、金属板40の表面における鉄元素の比率に相当する。鉄元素の比率を8.5atomic%以下とすることにより、金属板40の表面の耐食性を高めることができる。鉄元素の比率は、8.0atomic%以下であってもよく、7.5aomic%以下であってもよい。
一方、金属板40の表面における鉄元素の比率は、1.0atomic%以上であってもよい。このことにより、イオン化傾向によるクロムの不動態被膜が効率良く形成されるため、表面の耐食性を高めることができる。鉄元素の比率は、1.5atomic%以上であってもよく、2.0atomic%以上であってもよい。
同様に、金属板40で構成される第1シート10の表面における鉄元素の比率は、8.5atomic%以下であってもよく、8.0atomic%以下であってもよく、7.5atomic%以下であってもよい。この鉄元素の比率は、1.0atomic%以上であってもよく、1.5atomic%以上であってもよく、2.0atomic%以上であってもよい。第1シート10が単体の状態では、第1シート10の第1シート外面10aおよび第1シート内面10bのいずれにおいても、鉄元素の比率が、8.5atomic%以下であってもよく、8.0atomic%以下であってもよく、7.5atomic%以下であってもよい。この鉄元素の比率は、1.0atomic%以上であってもよく、1.5atomic%以上であってもよく、2.0atomic%以上であってもよい。ベーパーチャンバ1の完成状態では、上述した第1シート10の第1露出面10cにおける鉄元素の比率が、8.5atomic%以下であってもよく、8.0atomic%以下であってもよく、7.5atomic%以下であってもよい。この鉄元素の比率は、1.0atomic%以上であってもよく、1.5atomic%以上であってもよく、2.0atomic%以上であってもよい。
同様に、第2シート20の表面における鉄元素の比率は、8.5atomic%以下であってもよく、8.0atomic%以下であってもよく、7.5atomic%以下であってもよい。この鉄元素の比率は、1.0atomic%以上であってもよく、1.5atomic%以上であってもよく、2.0atomic%以上であってもよい。第2シート20が単体の状態では、第2シート20の第2シート内面20aおよび第2シート外面20bのいずれにおいても、鉄元素の比率が、8.5atomic%以下であってもよく、8.0atomic%以下であってもよく、7.5atomic%以下であってもよい。この鉄元素の比率は、1.0atomic%以上であってもよく、1.5atomic%以上であってもよく、2.0atomic%以上であってもよい。ベーパーチャンバ1の完成状態では、上述した第2シート20の第2露出面20cにおける鉄元素の比率が、8.5atomic%以下であってもよく、8.0atomic%以下であってもよく、7.5atomic%以下であってもよい。この鉄元素の比率は、1.0atomic%以上であってもよく、1.5atomic%以上であってもよく、2.0atomic%以上であってもよい。
上述したように、本実施の形態による第1シート10は、金属板40によって構成された単一の層で形成されていてもよく、金属板40の表面に他の材料の層は形成されていなくてもよい。一方、金属板40の表面に他の金属材料による層が形成されている場合には、金属板40の表面における鉄元素の検出比率を低くすることができるが、後述する接合工程等においては、他の金属材料が金属板40の内部に拡散し得る。このことにより、第1シート10の第1露出面10cにおける鉄元素の検出比率が大きくなり、ベーパーチャンバ1の性能が低下し得る。これに対して、本実施の形態では、第1シート10は、金属板40によって構成されており、金属板40の表面に、他の材料の層は形成されていないため、第1露出面10cにおける鉄元素の検出比率を小さくでき、ベーパーチャンバ1の性能を向上できる。また、金属板40の表面に、金属板40とは熱膨張係数が異なる他の金属材料による層が形成されている場合には、いくつかの問題が考えられる。例えば、第1シート10に反りが形成され得るという問題、または第1シート10にひび割れが発生し得るという問題が考えられる。例えば、金属板40から第1シート10への製造効率が低下し得るという問題、または第1シート10の製造コストが増大し得るという問題が考えられる。しかしながら、本実施の形態のように第1シート10が金属板40によって構成された単一の層で形成される場合、これらの問題を回避できる。第2シート20についても同様であるため、詳細な説明は省略する。
鉄元素の比率は、第1露出面10cおよび第2露出面20cなどの表面をX線光電子分光法で測定することにより得られた比率である。X線光電子分光法は、XPS法とも称される。XPS法とは、X線を試料に照射することによって試料から放出される光電子のエネルギー分布を測定して、試料の表面から数nmの範囲内の領域における構成元素の種類や存在量を得る方法である。各構成元素の存在量は、XPS法によって測定されたスペクトルにおいて、各構成元素に対応するピークの面積を積分することによって算出されるピーク面積値に比例する。より具体的には、まず、各構成元素に対応するピーク面積値を算出する。次に、各構成元素のピーク面積値の合計値を算出する。その後、対象とする構成元素のピーク面積値を合計値で割ることによって、対象とする構成元素のatomic%を算出できる。構成元素の存在量とピーク面積値との関係は、X線に対する感度等に応じて構成元素ごとに異なる場合がある。この場合、感度の差を補正するための相対感度係数を各構成元素のピーク面積値に乗じて補正ピーク面積値を算出し、その後、上述の合計値やatomic%を算出する。
ベーパーチャンバ1の上述した第1露出面10cおよび第2露出面20cにおける鉄元素の比率を測定する場合、ベーパーチャンバ1を切断して、第1露出面10cを含む第1シート10の一部をシート片として取り出す。同様にして、第2露出面20cを含む第2シート20の一部をシート片として取り出す。取り出されたシート片の露出面10c、20cのうち任意の位置で、上述したXPS法で、鉄元素の比率を測定する。第1シート10および第2シート20を構成する金属板40の表面における鉄元素の比率を測定する場合には、金属板40の表面の任意の位置で、XPS法で鉄元素の比率を測定する。
ウィックシート30は、銅または銅合金を含んでいてもよい。銅および銅合金は、良好な熱伝導率と、作動流体として純水を使用する場合の耐腐食性と、を有している。例えば、ウィックシート30は、無酸素銅(C1020)で構成されていてもよい。無酸素銅は、銅元素を99.96重量%以上含む。他の例としては、純銅、錫を含む銅合金、チタンを含む銅合金(C1990等)等が挙げられる。錫を含む銅合金の例としては、りん青銅(C5210等)が挙げられる。ウィックシート30の材料の他の例としては、コルソン系銅合金(C7025等)等が挙げられる。コルソン系銅合金は、ニッケル、シリコンおよびマグネシウムを含む銅合金である。
図3に示すベーパーチャンバ1の厚さt1は、例えば、100μm~500μmであってもよい。厚さt1を100μm以上にすることにより、蒸気流路部50を適切に確保できる。このため、ベーパーチャンバ1は、適切に機能できる。一方、厚さt1を500μm以下にすることにより、厚さt1が厚くなることを抑制できる。このため、ベーパーチャンバ1を薄くできる。
第1シート10の厚さおよび第2シート20の厚さは、ウィックシート30の厚さよりも薄くてもよい。本実施の形態においては、第1シート10の厚さと第2シート20の厚さが等しい例を示している。しかしながら、このことに限られることはなく、第1シート10の厚さと第2シート20の厚さは、異なっていてもよい。
第1シート10の厚さt2は、例えば、5μm~100μmであってもよい。厚さt2を5μm以上にすることにより、第1シート10の機械的強度およびベーパーチャンバ1の長期信頼性を確保できる。一方、厚さt2を100μm以下にすることにより、ベーパーチャンバ1の厚さt1が厚くなることを抑制できる。厚さt2は、5μm~30μmであってもよい。厚さt2を30μm以下にすることにより、ベーパーチャンバ1の厚さt1をより一層薄くできる。また、設置スペースが狭い等の理由でベーパーチャンバ1を屈曲させる場合に、ベーパーチャンバ1の全体の機械的強度および性能を維持しつつ、容易に屈曲加工させることができる。第2シート20の厚さt3は、第1シート10の厚さt2と同様に設定されていてもよい。
ウィックシート30の厚さt4は、例えば、50μm~400μmであってもよい。厚さt4を50μm以上にすることにより、蒸気流路部50を適切に確保できる。このため、ベーパーチャンバ1は、適切に機能できる。一方、厚さt4を400μm以下にすることにより、ベーパーチャンバ1の厚さt1が厚くなることを抑制できる。このため、ベーパーチャンバ1を薄くできる。ウィックシート30の厚さt4は、第1中間シート面30aと第2中間シート面30bとの距離であってもよい。
次に、このような構成からなる本実施の形態のベーパーチャンバ1の製造方法について説明する。
まず、準備工程として、第1シート10、第2シート20およびウィックシート30を準備する。
第1シート10には、上述した金属板40を用いる。例えば、図10に示すように、長尺の金属板40が円筒状に巻かれたベーパーチャンバ用金属条(以下、単に金属条41と記す)を準備する。金属条41は、金属コイルとも称される。金属条41から金属板40を引き出して、切断部70で、所望の大きさで切断する。このようにして金属板40から第1シート10が得られる。あるいは、予め枚葉状に形成された金属板40を、所望の大きさで切断して、第1シート10に用いてもよい。予め枚葉状に形成された金属板40を、エッチングにより所望の大きさに形成して、第1シート10に用いてもよい。第2シート20は、第1シート10と同様にして準備できる。
金属板40は、表面における鉄元素の比率が、8.5atomic%以下であってもよい。例えば、金属板40の表面における鉄元素の比率を測定し、測定された比率が、8.5atomic%以下である金属板40を選択して、第1シート10および第2シート20に採用してもよい。
準備工程は、ウィックシート30のエッチング工程を含んでいてもよい。より具体的には、ウィックシート30には、無酸素銅等の銅板を用いてもよい。銅板をエッチングにより所望の形状および大きさに形成してもよい。このことにより、本実施の形態によるウィックシート30を得ることができる。エッチング工程において、銅板は、フォトリソグラフィー技術によるパターン状のレジスト膜(図示せず)を用いてエッチングされてもよい。
続いて、接合工程として、第1シート10と、ウィックシート30と、第2シート20とが、恒久的に接合される。各シート10、20、30は、拡散接合によって接合されてもよい。
次に、注入工程として、密封空間3が真空引きされるとともに、注入部4(図2参照)から密封空間3に作動液2bが注入される。
注入工程の後、封止工程として、上述した注入流路36が封止される。このことにより、密封空間3と外部との連通が遮断され、密封空間3が密封される。作動液2bが封入された密封空間3が得られる。
以上のようにして、本実施の形態によるベーパーチャンバ1が得られる。
次に、ベーパーチャンバ1の動作方法、すなわち、電子デバイスDの冷却方法について説明する。
上述のようにして得られたベーパーチャンバ1は、モバイル端末等のハウジングH内に設置される。電子デバイスDが発熱すると、蒸発領域SRに存在する作動液2bが、電子デバイスDから熱を受ける。受けた熱は潜熱として吸収されて作動液2bが蒸発し、作動蒸気2aが生成される。生成された作動蒸気2aは、密封空間3を構成する第1蒸気通路51および第2蒸気通路52内で拡散する(図6の実線矢印参照)。
そして、各蒸気通路51、52内の作動蒸気2aは、蒸発領域SRから離れ、比較的温度の低い凝縮領域CRに拡散する。凝縮領域CRにおいて、作動蒸気2aは、主として第2シート20に放熱して冷却される。第2シート20が作動蒸気2aから受けた熱は、ハウジング部材Ha(図3参照)を介して外気に伝達される。
作動蒸気2aは、凝縮領域CRにおいて第2シート20に放熱することにより、蒸発領域SRにおいて吸収した潜熱を失う。このことにより、作動蒸気2aは凝縮し、作動液2bが生成される。蒸発領域SRでは作動液2bが蒸発し続けている。このため、液流路部60のうち凝縮領域CRにおける作動液2bは、各主流溝61の毛細管作用により、蒸発領域SRに向かって輸送される(図6の破線矢印参照)。このことにより、作動液2bは、液流路部60の連絡溝65を通って主流溝61に入り込む。このようにして、各主流溝61および各連絡溝65に、作動液2bが充填される。充填された作動液2bは、各主流溝61の毛細管作用により、蒸発領域SRに向かう推進力を得て、蒸発領域SRに向かってスムースに輸送される。
液流路部60においては、各主流溝61が、対応する連絡溝65を介して、隣り合う他の主流溝61と連通している。このことにより、互いに隣り合う主流溝61同士で、作動液2bが往来し、主流溝61でドライアウトが発生することが抑制されている。このため、各主流溝61内の作動液2bに毛細管作用が付与されて、作動液2bは、蒸発領域SRに向かってスムースに輸送される。
蒸発領域SRに達した作動液2bは、電子デバイスDから再び熱を受けて蒸発する。作動液2bから蒸発した作動蒸気2aは、蒸発領域SR内の連絡溝65を通って、流路断面積が大きい第1蒸気流路凹部53および第2蒸気流路凹部54に移動する。そして、作動蒸気2aは、各蒸気流路凹部53、54内で拡散する。このようにして、作動流体2a、2bが、相変化、すなわち蒸発と凝縮とを繰り返しながら密封空間3内を還流する。このことにより、電子デバイスDの熱が拡散されて放出される。この結果、電子デバイスDが冷却される。
このように本実施の形態によれば、ベーパーチャンバ1の蒸気流路部50を画定する第1シート10および第2シート20を製造するために用いられる金属板40が、SUS316LまたはSUS316LTAで構成されている。このことにより、第1シート10および第2シート20の機械的強度を向上できる。このため、ベーパーチャンバ1の機械的強度を確保できる。第1シート10の厚さおよび第2シート20の厚さを薄くすることもでき、ベーパーチャンバ1の薄型化を図ることもできる。
また、本実施の形態によれば、金属板40の表面における鉄元素の比率は、8.5atomic%以下になっている。このことにより、金属板40の表面に形成された酸化皮膜からの鉄元素の露出量を抑制でき、金属板40の表面の耐食性を高めることができる。このため、この金属板40を用いて作製された第1シート10および第2シート20が、ベーパーチャンバ1に封入された作動流体2a、2bとしての水と接した場合であっても、シート10、20が腐食することを抑制できる。この場合、腐食によって生じるガスが蒸気流路部50内に滞留することを抑制でき、作動蒸気2aの拡散範囲が制限されることを抑制できる。この結果、ベーパーチャンバ1の機械的強度を確保できるとともに熱輸送性能の低下を抑制できる。
また、本実施の形態によれば、ウィックシート30は、無酸素銅で構成されている。このことにより、ウィックシート30の熱伝導率を高めることができ、ベーパーチャンバ1の放熱性能を向上できる。ウィックシート30のエッチング工程において、液流路部60などの微細加工の加工性を向上できる。ウィックシート30に柔軟性を付与でき、ベーパーチャンバ1を屈曲させる場合には、屈曲性を向上できる。
また、本実施の形態によれば、第1シート10が、SUS316LまたはSUS316LTAで構成された金属板40で構成されている。このことにより、第1シート10の機械的強度を向上できる。このため、ベーパーチャンバ1の機械的強度を確保できる。第1シート10の厚さを薄くでき、ベーパーチャンバ1の薄型化を図ることもできる。第1シート10の機械的強度が向上できるため、第1シート10が、液流路部60の主流溝61および連絡溝65に入り込むことを抑制できる。このため、主流溝61の流路抵抗および連絡溝65の流路抵抗を低減できる。また、第1シート10は、蒸気流路部50に露出する第1露出面10cを含み、第1シート10の第1露出面10cにおける鉄元素の比率は、8.5atomic%以下になっている。このことにより、第1露出面10cに形成された酸化皮膜からの鉄元素の露出量を抑制でき、第1露出面10cの耐食性を高めることができる。このため、第1露出面10cが、ベーパーチャンバ1に封入された作動流体2a、2bとしての水と接した場合であっても、第1露出面10cが腐食することを抑制できる。この場合、腐食によって生じるガスが蒸気流路部50内に滞留することを抑制でき、作動蒸気2aの拡散範囲が制限されることを抑制できる。この結果、ベーパーチャンバ1の機械的強度を確保できるとともに熱輸送性能の低下を抑制できる。
また、本実施の形態によれば、第1シート10が、SUS316LまたはSUS316LTAで構成された金属板40で構成されていることにより、第1シート外面10aの耐食性を高めることができる。このことにより、第1シート10が脆くなることによる機械的強度の低下を抑制でき、長期信頼性を向上できる。第1シート10が、電磁波シールド効果を有することもできる。電磁波シールド効果によって、IC等の電子デバイスDの熱源を効率的に冷却できるだけでなく、IC等の電子デバイスへの電磁波による影響を軽減でき、IC等の電子デバイスDの性能低下を抑制できる。SUS316Lの密度およびSUS316LTAの密度はそれぞれ、銅または銅合金の密度よりも小さいため、第1シート10の軽量化を図ることができる。このことにより、第1シート10の厚さを厚くした場合またはベーパーチャンバ1の平面サイズを大きくした場合であっても、質量の増大を抑制でき、ベーパーチャンバ1の軽量化を図ることができる。
また、本実施の形態によれば、第2シート20が、上述した金属板40で構成されている。このことにより、ベーパーチャンバ1の機械的強度を確保できる。ベーパーチャンバ1の薄型化を図ることもできる。また、第2シート20の第2露出面20cに形成された酸化皮膜からの鉄元素の露出量を抑制でき、第2露出面20cの耐食性を高めることができる。このため、第2露出面20cが、ベーパーチャンバ1に封入された作動流体2a、2bとしての水と接した場合であっても、第2露出面20cが腐食することを抑制できる。この結果、ベーパーチャンバ1の機械的強度を確保できるとともに熱輸送性能の低下を抑制できる。
また、本実施の形態によれば、第2シート20が、上述した金属板40で構成されていることにより、第2シート外面20bの耐食性を高めることができる。このことにより、第2シート20が脆くなることによる機械的強度の低下を抑制でき、長期信頼性を向上できる。第2シート20が、電磁波シールド効果を有することもできる。第2シート20の軽量化を図ることもできる。このことにより、第2シート20の厚さを厚くした場合またはベーパーチャンバ1の平面サイズを大きくした場合であっても、質量の増大を抑制でき、ベーパーチャンバ1の軽量化を図ることができる。
なお、上述した本実施の形態においては、第1シート10が金属板40で構成されるとともに第2シート20が金属板40で構成されている例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、第1シート10および第2シート20の一方が、金属板40で構成されて、他方が他の金属材料で構成されていてもよい。ウィックシート30が、金属板40で構成されていてもよい。例えば、電子デバイスDと接しているシートが銅または銅合金で構成され、電子デバイスDと接していないシートが金属板40で構成されてもよい。図3に示す例では、電子デバイスDと接している第1シート10が銅または銅合金で構成され、電子デバイスDと接していない第2シート20が、金属板40で構成されていてもよい。この場合、第1シート10の熱伝導率を高めることができ、作動液2bの蒸発効率を向上できる。このため、ベーパーチャンバ1の放熱性能を向上できるとともに、第2シート20の金属板40によってベーパーチャンバ1の機械的強度を向上できる。
また、上述した本実施の形態においては、第1シート10の第1シート外面10aに、電子デバイスDが接し、第2シート20の第2シート外面20bに、ハウジング部材Haが接している例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、第1シート外面10aにハウジング部材Haが接し、第2シート外面20bに電子デバイスDが接していてもよい。この場合、第1シート10および第2シート20の両方が金属板40で構成されていてもよく、第1シート10が金属板40で構成されるとともに第2シート20が銅または銅合金で構成されていてもよい。
また、上述した本実施の形態においては、ベーパーチャンバ1は、第1シート10と、第2シート20と、ウィックシート30と、を備えている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、図11に示すように、ベーパーチャンバ1は、第1シート10と、第2シート20と、を備えて、ウィックシート30は備えていなくてもよい。第1シート10および第2シート20によって、蒸気流路部50が画定されている。第1シート10と第2シート20との間に、密封空間3を構成する蒸気流路部50および液流路部60が形成されている。第1シート10と第2シート20との間に、ウィックシート30は介在されておらず、第1シート10と第2シート20とが直接的に拡散接合されている。
図11に示す例では、第1シート10は、第1枠体部12と、複数の第1ランド部13と、を含んでいる。第1枠体部12と隣り合う第1ランド部13との間に、第1蒸気通路51が形成され、互いに隣り合う第1ランド部13の間に、第2蒸気通路52が形成されている。第2シート20は、第2枠体部22と、複数の第2ランド部23と、を含んでいる。第2枠体部22と隣り合う第2ランド部23との間に、第1蒸気通路51が形成され、互いに隣り合う第2ランド部23の間に、第2蒸気通路52が形成されている。
第1枠体部12および第2枠体部22は、図3などに示すウィックシート30の枠体部32に相当しており、互いに拡散接合されている。第1ランド部13および第2ランド部23は、図3などに示すウィックシート30のランド部33に相当しており、互いに拡散接合されている。第1ランド部13および第2ランド部23は、ランド部33と同様に、X方向を長手方向として細長状に延びていてもよい。
図11に示す例では、第1蒸気流路凹部53は、第1シート10の第1シート内面10bに形成され、第2蒸気流路凹部54は、第2シート20の第2シート内面20aに形成されている。液流路部60は、第1シート内面10bに形成されている。第1蒸気流路凹部53および液流路部60は、第1シート10の第1シート内面10bをエッチングすることによって形成されてもよい。第2蒸気流路凹部54は、第2シート20の第2シート内面20aをエッチングすることによって形成されてもよい。液流路部60は、第1シート内面10bの代わりに第2シート内面20aに形成されていてもよい。
第1シート10および第2シート20のうちの少なくとも一方は、上述した金属板40で構成されていてもよい。図11に示す例では、第1シート10および第2シート20の両方が金属板40で構成されている。しかしながら、第1シート10のみが金属板40で構成されていてもよく、あるいは、第2シート20のみが金属板40で構成されていてもよい。例えば、電子デバイスDと接しているシートが銅または銅合金で構成され、電子デバイスDと接していないシートが金属板40で構成されてもよい。より具体的には、電子デバイスDと接している第1シート10が銅または銅合金で構成され、電子デバイスDと接していない第2シート20が金属板40で構成されていてもよい。この場合、第1シート10の熱伝導率を高めることができ、作動液2bの蒸発効率を向上できる。このため、ベーパーチャンバ1の放熱性能を向上できるとともに、第2シート20の金属板40によってベーパーチャンバ1の機械的強度を向上できる。
図11に示す例では、第1露出面10cは、第1蒸気流路凹部53の壁面として構成されている。第1露出面10cは、蒸気流路部50に露出し、第2シート20には接しておらず、作動流体2a、2bに接している。同様に、第2露出面20cは、第2蒸気流路凹部54の壁面として構成されている。第2露出面20cは、蒸気流路部50に露出し、第1シート10には接しておらず、作動流体2a、2bに接している。
なお、図11に示す例においては、第1シート10と第2シート20との間に液流路部60が形成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、図12Aに示すように、第1シート10と第2シート20との間に液流路部60は形成されていなくてもよい。この場合、蒸気流路部50内に、ウィック部材80が設けられていてもよい。図12Aに示す例では、密封空間3に、ウィック部材80が位置している。ウィック部材80は、金属メッシュまたは多孔質焼結体により形成され、毛細管作用を発揮する部材である。ウィック部材80が金属メッシュで形成される場合、銅線またはステンレス線を、平織、綾織、平畳織または綾畳織等の形状で金属メッシュを形成してもよい。ウィック部材80は、毛細管作用を発揮することにより、作動液2bに、蒸発領域SRに向かう推進力を与えることができるように構成されている。
図12Aに示すように、第1ランド部13は形成されていなくてもよい。ウィック部材80は、密封空間3のうち第1シート10で画定される部分に配置されていてもよい。ウィック部材80は、第1シート10に直接的に固定されていてもよいが、図示しないケース部材に収容されて第1シート10に固定されていてもよい。蒸気流路部50は、密封空間3のうち第2シート20で画定される部分で構成されていてもよい。第2ランド部23は、柱状に形成されていてもよく、ウィック部材80に当接していてもよい。第2ランド部23は、図12Bに示すように、平面視で、円形状に形成されていてもよいが、第2ランド部23の平面形状は任意である。
第1シート10および第2シート20のうちの少なくとも一方は、上述した金属板40で構成されていてもよい。図12Aに示す例では、第1シート10および第2シート20の両方が金属板40で構成されている。しかしながら、第1シート10のみが金属板40で構成されていてもよく、あるいは、第2シート20のみが金属板40で構成されていてもよい。例えば、電子デバイスDと接しているシートが銅または銅合金で構成され、電子デバイスDと接していないシートが金属板40で構成されてもよい。より具体的には、電子デバイスDと接している第1シート10が銅または銅合金で構成され、電子デバイスDと接していない第2シート20が金属板40で構成されていてもよい。この場合、第1シート10の熱伝導率を高めることができ、作動液2bの蒸発効率を向上できる。このため、ベーパーチャンバ1の放熱性能を向上できるとともに、第2シート20の金属板40によってベーパーチャンバ1の機械的強度を向上できる。
図11、図12Aおよび図12Bを用いて、第1シート10および第2シート20で構成されるベーパーチャンバ1の例を説明した。しかしながら、このような構成を有するベーパーチャンバ1の形態は、図11、図12Aおよび図12Bに示す形態に限られることはなく、任意である。
本開示は上記実施の形態および各変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態および各変形例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。実施の形態および各変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
次に、図13~図15を用いて、図1~図10を用いて説明した実施の形態を実施例により更に具体的に説明する。上述の実施の形態はその要旨を越えない限り、以下の実施例の記載に限定されない。
表2に示すように、7つのサンプルとしての金属板40を準備した。各サンプルの材質および厚さは、表2に示す通りである。
Figure 2024020374000003
各サンプルについて、表面における鉄元素の比率を、上述したXPS法を用いて測定した。測定には、アルバック・ファイ社製の Quantum2000を用いた。測定装置の設定は以下の通りとした。
入射X線:monochromated Al kα
(単色化X線、hv=1486.6eV)
X線出力:15kV・30W
測定領域:200μmφ
X線入射角(照射部からの光電子の照射方向と表面とがなす角度):45度
光電子取り込み角:90度
測定は、1枚の金属板40の同一表面の任意の2箇所で行い、表面からの測定深さは数nmであった。測定深さは、X線出力に応じる。各サンプルの異なる位置で測定を行い、各サンプルで2つの測定値の平均値を求めて、表2の比率を得た。
続いて、各サンプルの金属板40で第1シート10および第2シート20を作製し、ウィックシート30に拡散接合した。ウィックシート30には、無酸素銅(C1020)で構成された銅板をエッチングし、上述した形状を形成した。拡散接合後、作動液としての純水を密封空間3に注入し、注入流路36を封止した。このようにして、同一形状の7つのサンプルのベーパーチャンバ1を得た。
次に、各サンプルについて、初期状態の動作性能確認試験を行った。
動作性能は、図13および図14に示すように、各サンプルを4つの測定点P1~P4の温度に基づいて確認した。測定点P1は、ベーパーチャンバ1のX方向における一方の端部に近い位置に配置した。測定点P1は、ベーパーチャンバ1の第2シート外面20bに配置した。測定点P1とは反対側の第1シート外面10aに、熱源71を取り付けた。熱源71が取り付けられた領域は、上述した蒸発領域SRに対応している。測定点P4は、ベーパーチャンバ1のX方向における他方の端部に近い位置に配置した。P1とP4の間に、2つの測定点P2、P3を配置した。ベーパーチャンバ1の外形寸法は、図13に示すように、105mm×17mmとし、測定点P1~P4の間隔を均等に設定した。各測定点P1~P4に、熱電対を取り付けた。
熱源71に電源を供給して発熱させた。熱源71から各サンプルに供給する熱量は3Wとした。熱源71を発熱させたことにより、上述したように、ベーパーチャンバ1に封入された作動流体2a、2bが蒸発と凝縮とを繰り返しながら密封空間3内を環流する。このことにより、熱源71から受けた熱が拡散されて、測定点P1だけでなく、測定点P2~P4の温度も上昇する。
熱源71を発熱させて定常状態とみなせる状態で、各測定点P1~P4の温度を測定した。測定点P1の温度と、測定点P4の温度との温度差ΔT1を求めた。その結果を表2に示す。
次に、各サンプルについて、信頼性試験を行った。信頼性試験は、サンプルを加速劣化させて、動作性能確認を行う試験である。加速劣化させるために、各サンプルをオーブンに投入して、120℃の温度環境下に100時間放置した。その後、オーブンからサンプルを取り出し、常温になるまで放置した。
上述した初期状態の動作性能確認試験と同様にして、測定点P1~P4の温度を測定した。測定点P1の温度と、測定点P4の温度との温度差ΔT2を求めた。その結果を表2に示す。表2には、測定点P1の温度と測定点P3の温度との温度差ΔT3と、測定点P3の温度と測定点P4の温度との温度差ΔT4も示している。
ベーパーチャンバ1として熱を輸送できているか否かに基づいて、動作性能の判定を行った。判定結果を表2に示す。
表2に示すように、サンプル1では、初期状態での動作確認試験で得られたΔT1および信頼性試験で得られたΔT2の両方が比較的小さい。この場合、熱を良好に輸送できると言えるため、サンプル1の動作性能を「OK」と判定してもよい。一方、サンプル2では、ΔT1は比較的小さいが、ΔT2は比較的大きい。この場合、初期状態では熱の輸送が良好であったが、加速劣化後の熱の輸送が不十分であると言えるため、サンプル2の動作性能を「NG」と判定してもよい。サンプル3についても同様である。
サンプル2および3の判定結果をNGとする理由としては、金属板40の表面における鉄元素の比率が比較的大きいことが挙げられる。ベーパーチャンバ1に封入された作動流体2a、2bとしての水と接する金属板40の面で腐食が発生したことが考えられる。腐食が発生し得る面は、第1シート10の第1露出面10cおよび第2シート20の第2露出面20cである。一般的には、表面に酸化被膜が形成されているが、この酸化皮膜から鉄元素が露出し、表面が水によって腐食して非凝縮性ガスが発生していると考えられる。非凝縮性ガスは、ベーパーチャンバ1の動作時に、凝縮することなく、気体として存在し続ける。一方、作動流体2a、2bは、蒸発と凝縮を繰り返しながら密封空間3内で移動する。このため、非凝縮性ガスは、密封空間3のうち熱源71から遠い端部に追い込まれて滞留する。非凝縮性ガスの滞留により、作動蒸気2aの拡散範囲が制限され、熱源71から遠い測定点P4の温度が低くなる。この結果、表2に示すように、サンプル2およびサンプル3のΔT3は、他のサンプルと同様に比較的小さいが、サンプル2およびサンプル3のΔT4は、他のサンプルよりも大きくなっている。このようにして、サンプル2およびサンプル3では、熱輸送性能が低下し得る。
サンプルの動作性能の判定は、ΔT3とΔT4に基づいて行ってもよい。例えば、表2に示すように、ΔT4がΔT3の2倍未満である場合に、作動蒸気2aの拡散範囲が制限されることを抑制できる。この場合、熱輸送を良好に行うことができると言え、サンプルの動作性能を「OK」と判定してもよい。一方、ΔT4がΔT3の2倍以上である場合に、熱輸送が不十分になり得るため、サンプルの動作性能を「NG」と判定してもよい。サンプル1については、ΔT4がΔT3の2倍未満であるため、この点においてもサンプル1の動作性能を「OK」と判定してもよい。
サンプル4~7では、ΔT1およびΔT2の両方とも比較的小さくなった。ΔT4は、ΔT3の2倍未満であった。このため、表2では、サンプル4~7の動作性能を「OK」と判定してもよい。
図15に、各サンプルの鉄元素の比率と、温度差ΔT2との関係をプロットしたグラフを示す。横軸が鉄元素の比率を示し、縦軸が信頼性試験後の温度差ΔT2を示している。
図15に示すように、鉄元素の比率が比較的小さいサンプルのグループでΔT2が小さく、鉄元素の比率が比較的大きいサンプルのグループでΔT2が大きくなっている。このことにより、両者のグループの間に、熱輸送性能が良好か否かの閾値を設定できることがわかる。そのような閾値として、図15には、鉄元素の比率が8.5atomic%の基準線が示されている。この基準線は、サンプル1の鉄元素の比率とサンプル2の鉄元素の比率のほぼ中間値となっている。
このように、鉄元素の比率が8.5atomic%以下である金属板40を用いることにより、ΔT2を小さくできる。このため、熱源71から受けた熱を良好に拡散でき、ベーパーチャンバ1の熱輸送性能の低下を抑制できることがわかる。

Claims (1)

  1. 作動流体が封入されるベーパーチャンバの空間部を画定するシートを製造するために用いられるベーパーチャンバ用金属板であって、
    SUS316LまたはSUS316LTAで構成され、
    前記ベーパーチャンバ用金属板の表面における鉄元素の比率は、8.5atomic%以下である、
    ベーパーチャンバ用金属板。
JP2023193284A 2021-12-10 2023-11-13 ベーパーチャンバ用金属板、ベーパーチャンバ用金属条、ベーパーチャンバおよび電子機器 Pending JP2024020374A (ja)

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021201118 2021-12-10
JP2021201118 2021-12-10
JP2023533400A JPWO2023106384A1 (ja) 2021-12-10 2022-12-08
PCT/JP2022/045376 WO2023106384A1 (ja) 2021-12-10 2022-12-08 ベーパーチャンバ用金属板、ベーパーチャンバ用金属条、ベーパーチャンバおよび電子機器

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2023533400A Division JPWO2023106384A1 (ja) 2021-12-10 2022-12-08

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2024020374A true JP2024020374A (ja) 2024-02-14

Family

ID=86730534

Family Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2023533400A Pending JPWO2023106384A1 (ja) 2021-12-10 2022-12-08
JP2023193284A Pending JP2024020374A (ja) 2021-12-10 2023-11-13 ベーパーチャンバ用金属板、ベーパーチャンバ用金属条、ベーパーチャンバおよび電子機器

Family Applications Before (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2023533400A Pending JPWO2023106384A1 (ja) 2021-12-10 2022-12-08

Country Status (3)

Country Link
JP (2) JPWO2023106384A1 (ja)
TW (1) TW202332877A (ja)
WO (1) WO2023106384A1 (ja)

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07252631A (ja) * 1994-03-16 1995-10-03 Tadahiro Omi 不動態膜形成用オーステナイト系ステンレス鋼および不動態膜形成方法
US6228445B1 (en) * 1999-04-06 2001-05-08 Crucible Materials Corp. Austenitic stainless steel article having a passivated surface layer
KR101826341B1 (ko) * 2017-05-29 2018-02-06 주식회사 씨지아이 박판형 히트파이프 제조방법
JP7259564B2 (ja) * 2019-06-06 2023-04-18 大日本印刷株式会社 ベーパーチャンバ、電子機器、及び、ベーパーチャンバ用金属シート
CN112087920A (zh) * 2020-08-12 2020-12-15 东莞领杰金属精密制造科技有限公司 不锈钢均热板及其制造方法
CN112760630A (zh) * 2020-12-25 2021-05-07 瑞声科技(南京)有限公司 散热装置的制作方法及散热装置

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2023106384A1 (ja) 2023-06-15
WO2023106384A1 (ja) 2023-06-15
TW202332877A (zh) 2023-08-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6560425B1 (ja) ヒートパイプ
US9551538B2 (en) Sheet-type heat pipe and mobile terminal using the same
US9568965B2 (en) Mobile terminal
US10794635B2 (en) Heat pipe
JP2010045088A (ja) ヒートスプレッダ、電子機器及びヒートスプレッダの製造方法
US20110303392A1 (en) Flat heat pipe
JP6696631B2 (ja) ベーパーチャンバー
US10782076B2 (en) Heat pipe
US11903167B2 (en) Vapor chamber with condensate flow paths disposed on wall parts
JP2020516845A (ja) 最適化された気化インタフェースを備えるエバポレータ
JP5333161B2 (ja) ヒートシンク
JP2024020374A (ja) ベーパーチャンバ用金属板、ベーパーチャンバ用金属条、ベーパーチャンバおよび電子機器
JP7444704B2 (ja) 伝熱部材および伝熱部材を有する冷却デバイス
JP2021188800A (ja) ベーパーチャンバ、電子機器およびベーパーチャンバの製造方法
JP5622449B2 (ja) ヒートパイプ
US20130168053A1 (en) Thin heat pipe structure and method of forming same
US20200329584A1 (en) Heat exchanger with integrated two-phase heat spreader
CN112781418A (zh) 热传导部件
JP6928860B1 (ja) ベーパーチャンバ
WO2024034632A1 (ja) ベイパーチャンバー、冷却装置および電子機器
JP2019039604A (ja) ヒートパイプ
JP2021188799A (ja) ベーパーチャンバ、電子機器およびベーパーチャンバの製造方法
WO2022230922A1 (ja) 蒸発部構造及び蒸発部構造を備えた熱輸送部材
JP7340709B1 (ja) ヒートシンク
TWI832194B (zh) 蒸氣室