JP2024011958A - 構造物の制振装置 - Google Patents

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Hidenori Kida
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Abstract

【課題】支持部材が短い場合においても、大きな回転慣性質量効果を発揮させ、支持部材の座屈止めを大幅に削減しながら、十分な振動抑制効果が得られる構造物の制振装置を提供する。【解決手段】本発明の構造物の制振装置は、構造物Sの一端部に配置された外柱(第1外柱PE1)と隣接する内柱EIとの間に設置され、構造物Sに作用する水平力をより大きな負担割合で支持する水平力支持要素(ブレース5)と、構造物Sの上下方向の中間部から下側に配置され、上端部が外柱に接続された支持部材2と、基礎Fと支持部材2の下端部との間に接続され、支持部材2とともに付加振動系Aを構成するとともに、回転マス16を有し、構造物Sの振動時に、支持部材2を介して伝達される構造物Sの鉛直変位を回転マス16の回転運動に変換することによって、回転慣性質量効果及び粘性減衰効果を発揮するマスダンパ3と、を備える。【選択図】図1

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 1.掲載日 令和3年7月20日発行 2.掲載場所 日本建築学会2021年度大会(東海)学術講演梗概集・建築デザイン発表梗概集 DVD_ROM(発行:一般社団法人 日本建築学会) 3.掲載内容のタイトル 「油圧モータを利用した大質量型回転慣性質量ダンパーの鉛直方向設置による高層建物の制振効果 その1.各検討ケースの応答倍率曲線による比較」 〔刊行物等〕 1.掲載日 令和3年7月20日発行 2.掲載場所 日本建築学会2021年度大会(東海)学術講演梗概集・建築デザイン発表梗概集 DVD_ROM(発行:一般社団法人 日本建築学会) 3.掲載内容のタイトル 「油圧モータを利用した大質量型回転慣性質量ダンパーの鉛直方向設置による高層建物の制振効果 その2.各検討ケースの地震応答解析結果による比較」
本発明は、特に高層の構造物の振動を抑制するための構造物の制振装置に関する。
従来、この種の制振装置として、例えば本出願人によって特許文献1に開示されたものが知られている。図10に示すように、この制振装置は、特に高層建物である構造物Sを対象とするものであり、構造物Sの両外側に配置され、その頂部と下端部の間に上下方向に延びる複数の支持部材2と、各支持部材2の下端部と基礎Fの間に配置されたマスダンパ53と、支持部材2の座屈を防止するための多数の座屈止め4を備える。
マスダンパ53及び支持部材2は、制振対象である構造物S(主系)に対して付加振動系A’を構成する。支持部材2は、複数の中空の柱材で構成され、ボルト・ナットで連結されている。マスダンパ53は、例えば、内筒、ボールねじ及び回転マスなどを有するボールねじ式のものであり、内筒が支持部材の下端部に連結され、ボールねじのねじ軸が基礎Fに連結されている。回転マスの回転慣性質量及び支持部材2の剛性は、付加振動系A’の固有振動数が構造物Sの固有振動数に同調するように設定されている。
座屈止め4は、支持部材2の長さ方向に沿い、所定の間隔ごとに多数、配置されている。各座屈止め4は、構造物Sと一体で、複数の矩形の拘束孔が形成されたスラブと、スラブの拘束孔の壁面に取り付けられた滑り板などで構成され、各拘束孔に支持部材2が挿入されている。
以上の構成では、地震時などに構造物Sが振動すると、構造物Sが高層であるために曲げ変形がせん断変形に優ることで、構造物Sの上部側が横方向に大きく往復動(揺動)する。この揺動による大きな変位が、座屈止め4の拘束孔を鉛直方向に摺動する支持部材2を介してマスダンパ53に良好に伝達されることによって、回転マスが回転し、支持部材2及びマスダンパ53から成る付加振動系A’が振動する。これにより、付加振動系A’の固有振動数が構造物Sの固有振動数に同調することによって、構造物Sの振動エネルギが付加振動系A’で吸収され、構造物Sの振動が抑制される。一方、支持部材2が座屈止め4の拘束孔に挿入されていて、その水平方向の移動が拘束されることによって、圧縮荷重の作用時における支持部材2の座屈が防止される。
特開2014-132135号公報
上述した従来の制振装置では、支持部材2の水平方向の移動を座屈止めで拘束することで、支持部材2の座屈を防止する一方、座屈止め4を通る支持部材2の鉛直方向の移動を許容し、構造物Sの大きな変位が支持部材2を介してマスダンパ53に良好に伝達されることによって、マスダンパ53の回転慣性質量効果による大きな制振効果を得ることが可能になる。しかし、座屈止め4は、その機能上、支持部材2の長さ方向に沿い、所定の間隔ごとに設置することが必要である。このため、図10に示すように、構造物Sの高層化に伴って支持部材2の長さが大きくなるほど、座屈止め4の設置数が非常に多くなり、大きなコストアップの要因になる。
また、この制振装置で用いられているボールねじ式のマスダンパ53は、ボールねじのねじ軸と内筒が機械的に噛み合いながら相対的に回転するという機構上、回転慣性質量効果による等価質量について2万トン級が限度であり、等価質量をこれ以上大きくすることは困難である。さらに、ボールねじ式の場合には、ダンパ力と同時にトルク力が発生し、支持部材に作用するため、支持部材のねじれを防止するためのねじれ止めも必要になる。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、支持部材が短い場合においても、大きな回転慣性質量効果を発揮させ、それにより、支持部材の座屈を防止するための座屈止めを大幅に削減しながら、十分な振動抑制効果を得ることができる構造物の制振装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、基礎上に立設された構造物の振動を抑制するための構造物の制振装置であって、構造物の所定方向の一端部に配置された外柱と外柱に隣接する内柱との間に設置され、構造物に作用する水平力をより大きな負担割合で支持する水平力支持要素と、構造物の上下方向の中間部から下側に配置され、上端部が外柱に接続された支持部材と、基礎と支持部材の下端部との間に接続され、支持部材とともに付加振動系を構成するとともに、回転マスを有し、構造物の振動時に、支持部材を介して伝達される構造物の鉛直変位を回転マスの回転運動に変換することによって、回転慣性質量効果及び粘性減衰効果を発揮するマスダンパと、を備えることを特徴とする。
地震時などに構造物が振動すると、水平力(せん断力)が構造物に作用するとともに、構造物が高層の場合には、曲げ変形がせん断変形に優るため、構造物は、その上部側が横方向に大きく往復動するような態様で振動(揺動)する。これに対し、本発明では、構造物の所定方向の一端部に配置された外柱(以下「第1外柱」という)とこれに隣接する内柱との間に、水平力支持要素が設置されている。この水平力支持要素により、上記の水平力は、第1外柱側では、他端部に配置された外柱(以下「第2外柱」という)側よりも大きな負担割合で支持される。このような水平力支持要素による水平力の負担割合増大効果により、構造物の揺動時、第1外柱に作用する軸力は第2外柱に作用する軸力よりも大きくなり、それにより、第1外柱の鉛直変位は第2外柱のそれよりも大きくなる。
また、本発明では、構造物の上下方向の中間部から下側に支持部材が配置され、支持部材の上端部が外柱に接続されるとともに、基礎と支持部材の下端部との間に、回転マスを有するマスダンパが接続され、支持部材とマスダンパによって付加振動系が構成されている。この構成から、地震時に揺動する構造物の鉛直変位が、支持部材を介してマスダンパに伝達され、回転マスの回転運動に変換されることによって、回転慣性質量効果及び粘性減衰効果が発揮され、構造物の振動が抑制される。
この場合、本発明によれば、揺動に伴う鉛直変位がより大きい第1外柱側にのみ支持部材が配置されていることで、マスダンパの上下の接続節点間の鉛直変位差がより大きくなるので、大きな回転慣性質量効果が得られる。以上により、支持部材が短い場合においても、大きな回転慣性質量効果を発揮させ、それにより、支持部材の座屈を防止するための座屈止めを大幅に削減しながら、十分な振動抑制効果を得ることができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構造物の制振装置において、マスダンパは、構造物の鉛直変位が支持部材を介して伝達されることによって発生する作動流体の流動を回転マスの回転運動に変換する圧力モータ式のマスダンパで構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、マスダンパは、圧力モータ式であり、構造物の変位が支持部材を介して伝達されることにより発生する作動流体の流動を回転マスの回転運動に変換することによって、回転慣性質量効果が発揮される。このような作動原理を有することから、圧力モータ式のマスダンパは、ねじ軸と内筒が機械的に噛み合いながら相対的に回転するボールねじ式のマスダンパと比較して、通常、回転慣性質量効果による等価質量の上限値がより大きい。したがって、支持部材が短い場合において、より大きな回転慣性質量効果を発揮させることができ、本発明による前述した効果をより有効に得ることができる。また、圧力モータ式のマスダンパでは、ボールねじ式のものと異なり、ダンパ力と同時にトルク力が発生し、支持部材に作用することがないため、支持部材のねじれ止めを省略することができる。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の構造物の制振装置において、水平力支持要素は、外柱と内柱の間に斜めに配置され、接合・固定されたブレースであることを特徴とする。
この構成によれば、水平力支持要素として、外柱と内柱の間に斜めに配置され、接合・固定されたブレースを用いるので、水平力支持要素ひいては本発明の制振装置を、単純な構成で安価に実現することができる。
本発明による制振装置を、これを適用した構造物とともに概略的に示す(a)側面図、及び(b)平面図である。 支持部材及びマスダンパの設置状態を示す図である。 マスダンパの断面図である。 (a)応答解析のための構造物及び制振装置の2つの従来モデル、及び(b)他の1つの従来モデル及び本発明モデルを示す平面図である。 (a)~(c)3つの従来モデルの側面図、及び(d)従来モデルにおける構造物自体の1次モードの刺激関数図である。 (a)本発明モデルの側面図、及び(b)本発明モデルにおける、ブレースを含む構造物自体の1次モードの刺激関数図である。 3つの従来モデル及び本発明モデルにおけるマスダンパ及び支持部材の諸元を示す表である。 3つの従来モデル及び本発明モデルを対象とする応答解析によって得られた、構造物の頂部/地動間の絶対加速度応答倍率及び相対変位応答倍率を示す図である ブレース及び付加振動系の他の配置例を示す平面図である。 従来の制振装置を構造物とともに概略的に示す(a)側面図、及び(b)平面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1に示すように、制振装置1が設けられた構造物Sは、例えば38階建ての高層の建物であり、地盤上の基礎Fに立設されている。制振装置1は、支持部材2及びマスダンパ3で構成された複数の付加振動系Aと、支持部材2の座屈を防止するための座屈止め4と、構造物Sのコア部に設置された多数のブレース5(水平力支持要素)を備える。制振装置1は、付加振動系Aの固有振動数を、地震時などに振動する構造物Sの固有振動数に同調させることによって、構造物Sの振動エネルギを付加振動系Aで吸収し、構造物Sの振動を抑制するものである。
構造物Sは、矩形の平面形状を有し、短辺方向の両端部に配置された複数の第1及び第2外柱PE1、PE2と第1外柱PE1寄りに配置された複数の内柱PIを、各階ごとの複数の梁BMによって結合した短辺方向2スパンのフレーム構造の鉄骨造(S造)であり、第1外柱PE1と内柱PIの間がコア部になっている。構造物Sのサイズは、例えば、長辺長さL=@7.2m×7=50.4m、短辺長さD=12.8+9.6=22.4m、高さH=@4m×38=152mである。
ブレース5は、構造物Sに作用する水平方向のせん断力の負担割合を大きくすることによって、第1外柱PE1に作用する軸力を大きくし、マスダンパ3の接続節点間の鉛直変位差を増大させるためのものである。図1に示すように、ブレース5は、構造物Sの第1外柱PE1と内柱PIの間(コア側)に配置され、最上部から最下部までの全層において、長辺方向の全スパンに設けられている。ブレース5は、鋼製の柱材で構成されており、内柱PIと下側の梁BMとの接合部と、第1外梁PE1と上側の梁BMとの接合部との間に、斜めに延び、接合・固定されている。
付加振動系Aは、構造物Sの8階と基礎Fの間に設けられ、構造物Sの短辺方向における第1外柱PE1のすぐ外側に配置されている。
支持部材2は、構造物Sの外側において上下方向に延びており、上端部が構造物Sの8階部分に接続され、下端部にはマスダンパ3が接続されている。支持部材2は、上下方向に接合・固定された複数の鋼製の柱材で構成され、図2に示すように、下端部に鋼製の第1連結部材6が一体に設けられており、第1連結部材6を介して、マスダンパ3の一端部に直列に接続されている。マスダンパ3は、上下方向に配置されており、その下端部は、鋼製の第2連結部材7を介して、基礎Fに接続されている。
座屈止め4は、支持部材2ごとに、その上下方向の中央付近に1つのみ配置されている。図示しないが、座屈止め4は、従来と同様、構造物Sと一体で、複数の矩形の拘束孔が形成されたスラブと、スラブの拘束孔の壁面に取り付けられた滑り板などで構成され、各拘束孔に支持部材2が挿入されている。
マスダンパ3は、作動流体HFを用いる歯車モータ式の粘性マスダンパであり、図3に示すように、周壁12aと第1及び第2端壁12b、12cを有し、作動流体HFが充填されたシリンダ12と、シリンダ12内に摺動自在に設けられ、シリンダ12内を第1及び第2流体室12d、12eに区画するピストン13と、ピストン13をバイパスし、第1及び第2流体室12d、12eに連通する連通路14と、連通路14に配置された歯車モータ15と、歯車モータ15に連結された回転マス16と、ピストン13に一体に設けられ、その両側に延び、第1及び第2端壁12b、12cからそれぞれ突出する第1及び第2ピストンロッド17a、17bを備える。
シリンダ12の第1端壁12bには、中空の凸部12fが一体に設けられており、この凸部12f内に第1ピストンロッド17aが収容されている。凸部12fの先端部には、自在継手BJを介して第1取付具FL1が設けられ、第2ピストンロッド17bの先端部には、自在継手BJを介して第2取付具FL2が設けられている。作動流体HFは、適度な粘性を有する流体、例えばシリコンオイルや作動油などで構成されている。
歯車モータ15は、例えば外接式のものであり、連通路14に連通するケーシング15a内に収容され、互いに噛み合う入力ギヤ15b及び出力ギヤ15cと、出力ギヤ15cに一体に連結された出力軸15dを有する。この出力軸15dに、円板状の回転マス16が一体に連結されている。なお、歯車モータ15として内接式のものを用いてもよいことは、もちろんである。
ピストン13には、軸線方向に貫通する複数の孔が形成されており(2つのみ図示)、これらの孔にそれぞれ、第1及び第2リリーフ弁18、19が設けられている。第1リリーフ弁18は、弁体と、弁体を閉弁側に付勢するばねで構成されており、ピストン13が図3の左方に移動することで、第1流体室12d内の作動流体HFの圧力が上昇し、所定のリリーフ荷重に達したときに、開弁する。第2リリーフ弁19は、同様に構成され、ピストン13が図3の右方に移動することで、第2流体室12e内の作動流体HFの圧力がリリーフ荷重に達したときに、開弁する。
以上の構成のマスダンパ3は、図2に示すように、第1取付具FL1を介して第2連結部材7の上面に取り付けられ、第2取付具FL2を介して第1連結部材6の下面に取り付けられている。
このマスダンパ3では、地震時などに、構造物Sが図6(b)に示すように揺動すると、構造物Sの鉛直方向の変位が、支持部材2及び第1連結部材6を介してマスダンパ3に伝達されることによって、ピストン13がシリンダ12に対して往復動する。それに伴い、第1及び第2流体室12d、12eの一方の作動流体HFが、ピストン13で押し出され、連通路14に流入する。この作動流体HFの流動が歯車モータ15で回転運動に変換されることにより、回転マス16の回転による慣性質量効果が発揮されるとともに、作動流体HFの流動による慣性質量効果が発揮される。また、作動流体HFが連通路14内を流動することによる粘性減衰効果が得られる。
また、第1外柱PE1と内柱PIの間のコア部にブレース5が設置されていることにより、コア部における水平力の負担割合が増大する結果、第1外柱PE1の軸力及び鉛直変位は第2外柱PE2よりも大きくなる。そして、鉛直変位がより大きい第1外柱PE1側にのみ支持部材2が配置されていることで、マスダンパ3の上下の接続節点間の鉛直変位差がより大きくなるので、より大きな回転慣性質量効果を得ることができる。以上により、本実施形態のように支持部材2が短い場合においても、大きな回転慣性質量効果を発揮させ、それにより、支持部材2の座屈を防止するための座屈止め4を大幅に削減しながら、十分な振動抑制効果を得ることができる。
次に、図4~図8を参照しながら、本実施形態の制振装置による制振効果を確認するために実施したシミュレーション解析とその結果について、説明する。このシミュレーション解析は、構造物Sの基礎Fに所定の地震動を入力した場合の構造物Sの応答について時刻歴応答解析を行ったものである。
シミュレーション解析の条件は、以下のとおりである。まず、解析の対象は、図4~図7に示すように、本発明を適用した1つの「本発明モデル」と、本発明との比較用の3つの従来モデル(「従来1モデル」~「従来3モデル」)である。
具体的には、本発明モデルでは、支持部材2及びマスダンパ3から成る付加振動系Aは、第1外柱PE1の付近のみの片側配置で、第1外柱PE1ごとに各2基(計16基)設けられ、支持部材2の上端側の接続位置は低層部(高さ32m)、マスダンパ3は歯車モータ式(等価質量md=60000ton)であり、ブレース5は、第1外柱PE1と内柱PIの間のコア側に配置され、頂部から最下部までの各層において、長辺方向のスパンごとに設けられている。
これに対し、従来モデル1では、支持部材2及びマスダンパ53から成る付加振動系A’は、第1及び第2外柱PE1、PE2の付近の両側配置で、各1基(計16基)設けられ、支持部材2の上端側の接続位置は頂部(高さ152m)、マスダンパ53はボールねじ式(等価質量md=20000ton)であり、ブレース5は設けられていない。
従来モデル2では、付加振動系Aは、両側配置で、両外柱PE1、PE2の付近に各1基(計16基)設けられ、支持部材2の接続位置は低層部(高さ32m)、マスダンパ3は歯車モータ式で、等価質量mdは本発明モデルの2倍の120000tonであり、ブレース5は設けられていない。従来モデル3は、歯車モータ式のマスダンパ3の等価質量md=120000tonであることと、ブレース5が設けられていないこと以外は、本発明モデルと同様に構成されている。
上記4つの解析モデルにおけるマスダンパ及び支持部材の諸元は、すでに説明したものを含めて、図7に示すとおりである。これらの諸元はすべて、パラメトリックスタディにより、1次モードの地動に対する頂部(最上層)の水平方向の応答倍率が概ね最小になるように設定した。
また、入力地震動として、想定関東地震「東京気象庁NS」や告示波「L2告示八戸位相」を用いた。そして、それぞれの解析モデルにおいて、これらの地震動を構造物Sの基礎Fに入力したときの構造物Sの各階における応答加速度、速度及び変位などを算出した。図8は、これらの算出結果の中から、地動に対する頂部の水平方向の応答倍率(絶対加速度応答倍率、相対変位応答倍率)の結果を、解析モデルごとに示したものである。
この結果について、まず、支持部材2(付加振動系)の接続位置とマスダンパの形式が異なる従来1モデル(頂部接続型、ボールねじ式)と従来2モデル(低層接続型、歯車モデル式)を比較する。図8(a)(b)から、従来1モデル及び従来2モデルのいずれの場合にも、付加振動系は、制御対象である1次モードに対して効果的に共振しており、制振効果が高められている。また、従来2モデルは、従来1モデルと比較し、支持部材2の接続高さが約1/5である低層接続型で、構造物Sから入力される付加振動系全体の節点変位量が小さいにもかかわらず、歯車モータ式のマスダンパ3が大きな等価質量mdを有することで、従来1モデルと同等の制振効果が得られることがわかる。
また、付加振動系Aの平面的な配置が異なる従来2モデル(両側配置)と従来3モデル(片側配置)を比較する。図8(b)(c)から、付加振動系Aを、従来2モデルのような両側配置ではなく、従来3モデルのような片側配置にしても、制御対象である1次モードに対して効果的に共振させることができ、従来2モデルと同等の大きな制振効果が得られることがわかる。
次に、マスダンパ3の等価質量mdとブレース5の有無が異なる従来3モデル(md=120000ton、ブレース無し)と本発明モデル(60000ton、ブレース有り)を比較する。まず、図5(d)及び図6(b)は、それぞれブレース無しの場合(従来1~3モデル)とブレース有りの場合(本発明モデル)の、構造物S自体の1次モードの刺激関数図である。コア部外周側のダンパ接続節点の鉛直変位差は、ブレース無しの場合には-0.0220であるのに対し、ブレース有りの場合には-0.0343であり、コア側の各層に設置したブレース5による水平方向せん断力の負担割合の増大効果により、0.0343/0.0220=約1.56倍に増大している。
そのため、同じ等価質量が付与された場合の広義の節点間慣性質量は、上記の鉛直変位差(=約1.56倍)の2乗=約2.4倍になる。その結果、本発明モデルでは、等価質量md(=60000ton)が従来3モデルの等価質量md(=120000ton)の0.5倍でありながら、1次モードの制振効果が、従来3モデルの場合と同等以上に得られることが確認された(図8(c)(d)参照)。
以上のように、本実施形態の制振装置によれば、構造物の揺動時、第1外柱PE1と内柱PIの間に設置されたブレース5による水平力の負担割合増大効果により、マスダンパ3の上下の接続節点間の鉛直変位差がより大きくなるので、より大きな回転慣性質量効果を得ることができる。このため、従来3モデルと比較して、等価質量mdが1/2でありながら、また、従来1モデルと比較して、支持部材2の接続高さが約1/5でありながら、同等以上の制振効果を得ることができる。
以上のように、支持部材2が短い場合においても、大きな回転慣性質量効果を発揮させることができ、支持部材2の座屈止め4を大幅に削減しながら、十分な振動抑制効果を得ることができる。
また、本実施形態では、付加振動系A(支持部材2及びマスダンパ3)が、構造物Sの低層部で片側に配置されていて、マスダンパ3の最大変位及び最大速度は、頂部設置型の従来の装置(従来1モデル)よりも小さくなるため、既存の圧力モータ式マスダンパの許容ストロ-ク及び許容回転数以下に収めることができる。したがって、市販の圧力モータ式マスダンパをそのまま利用することができる。
さらに、付加振動系Aを構造物Sの片側に配置すればよいので、例えば構造物Sの正面(道路側面)ではなく、背面側に配置することによって、建物などの意匠(外観)を良好に保つことができる。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、図1に示すように、構造物Sが短辺方向2スパンで構成され、ブレース5は、第1外柱PE1と内柱PIとの間のコア部に設けられ、最下層から最上層までの全層で、長辺方向の全スパンに配置されるとともに、付加振動系Aは、各第1外柱PE1の外側に配置されているが、本発明はこれらに限定されない。
例えば、本発明は、構造物Sが3スパン以上の場合にももちろん適用することが可能であり、その場合、ブレース5は、図9に示すように、一方の外柱(この例では第1外柱PE1)とそれに隣接する内柱(第1内柱PI1)の間に配置される。また、ブレース5は、最下層から最上層までの全層に配置するのに代えて、図示しないが、一部の層に配置してもよく、例えば1層おきや複数層おきに配置することが可能である。
また、図9に示すように、構造物Sの長辺方向において、ブレース5などの水平力支持要素を全スパンではなく、一部のスパンに配置してもよい。その場合には、付加振動系Aは、ブレース5を配置した第1外柱PE1の外周側にのみ集中的に配置することが好ましい。
さらに、実施形態では、本発明の水平力支持要素として、構成が単純で安価なブレースを採用しているが、構造物Sに作用する水平力の負担割合をより大きな負担割合で支持するものである限り、他の適当な構成を採用することができる。例えば、ブレースに代えて、斜め方向に配置された履歴ダンパや粘性ダンパ、粘弾性ダンパを用いてもよく、あるいは構造物が鉄筋コンクリート造(RC造)の場合には、左右の柱と上下の梁で構成される構面を覆う耐震壁としてもよい。
また、実施形態では、マスダンパ3は、作動流体HFを用いる歯車モータ式のものであるが、歯車モータ以外の圧力モータ、例えばピストンモータや、ベーンモータ、ねじモータを用いてもよい。
また、圧力モータ式のマスダンパに代えて、ボールねじを用いて回転マスを駆動するボールねじ式のものを採用することも、本発明の範囲内である。ボールねじ式の場合には、圧力モータ式と比較して、等価質量の上限値が小さいため、得られる回転慣性質量は小さいものの、ブレース5による水平力負担割合の増大効果と、それに伴うマスダンパの接続節点間の鉛直変位差の増大効果によって、支持部材が短い場合においても、大きな回転慣性質量効果を発揮させるという本発明の利点を得ることができる。
また、構造物Sの構造についても特に限定されず、鉄骨造(S造)や、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、コンクリート充填鋼管造(CFT造)などのいずれをも制振対象とすることが可能である。本発明は、鉄塔やアスペクト比の大きい構造物に特に有効に適用できる。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
1 制振装置
2 支持部材
3 マスダンパ
5 ブレース(水平力支持要素)
15 歯車モータ(圧力モータ)
16 回転マス
S 構造物
F 基礎
PE1 第1外柱(外柱)
PI 内柱

Claims (3)

  1. 基礎上に立設された構造物の振動を抑制するための構造物の制振装置であって、
    前記構造物の所定方向の一端部に配置された外柱と当該外柱に隣接する内柱との間に設置され、前記構造物に作用する水平力をより大きな負担割合で支持する水平力支持要素と、
    前記構造物の上下方向の中間部から下側に配置され、上端部が前記外柱に接続された支持部材と、
    前記基礎と前記支持部材の下端部との間に接続され、前記支持部材とともに付加振動系を構成するとともに、回転マスを有し、前記構造物の振動時に、前記支持部材を介して伝達される前記構造物の鉛直変位を前記回転マスの回転運動に変換することによって、回転慣性質量効果及び粘性減衰効果を発揮するマスダンパと、
    を備えることを特徴とする構造物の制振装置。
  2. 前記マスダンパは、前記構造物の変位が前記支持部材を介して伝達されることにより発生する作動流体の流動を前記回転マスの回転運動に変換する圧力モータ式のマスダンパで構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の構造物の制振装置。
  3. 前記水平力支持要素は、前記外柱と前記内柱の間に斜めに配置され、接合・固定されたブレースであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の構造物の制振装置。

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