JP2023094194A - 非シアン黒色銅-錫合金めっき浴およびめっき方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】均一性および黒味に優れためっき皮膜が得られるめっき浴を提供する。【解決手段】2価の銅塩と、2価の錫塩と、錯化剤と、還元剤と、ポリアミン混合物と、を含むことを特徴とする非シアン黒色銅-錫合金めっき浴および前記ポリアミン混合物は、ポリアルキルイミンと、ポリエーテルアミンとの混合物であることを特徴とする非シアン銅-錫合金めっき浴。【選択図】 なし

Description

本発明は、装飾用の黒色めっきを行うためのめっき浴であって、シアン化合物を含有しない非シアン黒色銅-錫合金めっき浴に関する。
シアン化合物は生物に有害であり、水質汚染、大気汚染、作業者の健康などに厳重な管理が必要である。その為、シアン化合物を含有しない弱酸性領域から弱アルカリ性領域の銅-錫合金めっきが求められているが、そのほとんどは、白色系の光沢外観を付与するための銅-錫合金めっきである。
服飾などの外観性を向上させることを目的として、たとえば装身具、ボタン、ファスナ-、クリップなどに黒色系めっきを施すことが多い。
非シアン黒色銅-錫合金めっきとしては、錯化剤としてピロリン酸塩を含有する溶液に、アミノカルボン酸、アンモニウム塩およびアルデヒド類を必須成分として含有する非シアン系黒色銅-錫合金めっき浴(特許文献1)や、めっき中の酸素の含有率を1.5at%~50at%とすることによって、めっき密着性、耐食性を改善した黒色Cu-Sn-O系合金めっきがある(特許文献2)。
特開2004-91882号公報 特許第4299239号公報
しかしながら、特許文献1の発明は、施されためっき皮膜の色調が淡黒色となり、装飾用の黒色めっきとしてはなお不十分であり、安定した黒色の色調のめっきを施すことが難しい。特に特許文献1の発明では、初期には光沢のよい製品が得られるが、アミノ化合物がめっき中に電解酸化されて生じるアンモニアイオンにより、次第に光沢性が落ちるという問題がある。また、特許文献2の発明は、光沢性が劣り、適用できる仕上げが限られているという問題がある。
出願人らは、優れた非シアン黒色銅-錫合金めっき浴を得るために、鋭意研究を重ねた結果、ポリアミン混合物を、銅-錫合金めっき浴に配合することにより、従来よりも高い光沢性と、向上した黒味が得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明の目的は、安定した濃黒色のめっき皮膜が得られる非シアン銅-錫合金めっき浴を提供することである。
本発明によれば、ポリアミン混合物により、めっき皮膜が緻密で平滑になり、良好な光沢性かつ黒味が上がるので、優れた黒色系めっきが得られる。
また本発明によれば、ポリアミン混合物により、低電流密度域でも色ムラの少ない皮膜となるため、バレル試験において均一な黒色外観を得ることができる。
本発明は、2価の銅塩と、2価の錫塩と、錯化剤と、還元剤と、ポリアミン混合物と、を含むことを特徴とする非シアン黒色銅-錫合金めっき浴である。
また、本発明は、前記ポリアミン混合物は、ポリアルキルイミンと、ポリエーテルアミンとの混合物であることを特徴とする。
また、本発明は、前記ポリアルキルイミンがポリエチレンイミンであり、ポリエーテルアミンがメトキシポリ(オキシエチレン)-2-プロピルアミンであることを特徴とする。
本発明において、めっき浴を構成する2価の銅塩としては、2価の銅と無機酸もしくは有機酸との化合物、または2価の銅の酸化物または塩化物があげられる。具体的には、硫酸銅、ピロリン酸銅、酸化銅、塩化銅などがあげられる。
2価の銅塩は、めっき浴中に金属銅として、1~30g/Lとなる量が含まれることが好ましい。
本発明において、めっき浴を構成する2価の錫塩としては、2価の錫と無機酸もしくは有機酸との化合物、または2価の錫の酸化物または塩化物があげられる。具体的には、硫酸第一錫、ピロリン酸第一錫、シュウ酸第一錫、酸化第一錫、塩化第一錫などがあげられる。
2価の錫塩は、めっき浴中に金属錫として、1~30g/Lとなる量が含まれることが好ましい。
また、前記2価の銅塩と2価の錫塩とは、そのめっき浴中における金属銅と金属錫との重量比率が、金属銅1に対して、金属錫が5~50となるよう配合されていればよい。好ましくは、金属銅1に対して金属錫が6~40であり、より好ましくは、金属銅1に対して金属錫が8~30であり、特に好ましくは金属銅1に対して金属錫が10~25配合される。
本発明のめっき浴においては、黒色外観のめっき皮膜を得るために、めっき浴中における金属銅と金属錫との重量比率が重要であり、金属銅1に対する金属錫の範囲が、5未満または50を越えて配合された場合には、析出する合金の組成が変動し、色調を制御することができなくなる。
本発明において、錯化剤としては、リン酸塩があげられる。リン酸塩としては具体的には、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウムなどがあげられ、このうちピロリン酸カリウムが好ましい。これらは、単独または2種以上を組合せて使用することができる。
本発明において、還元剤としてはアルデヒド化合物があげられる。アルデヒド化合物としては、飽和または不飽和の脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒドであればよく、芳香族アルデヒドは複素環式化合物であってもよい。
かかるアルデヒド化合物としては、たとえば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒドなどがあげられ、芳香族アルデヒドとしては、たとえば、ベンズアルデヒド、バニリン、ベラトルアルデヒド、シンナムアルデヒド、サリチルアルデヒド、フルフラールなどがあげられる。このうち、ホルムアルデヒドがとりわけ好ましい。
アルデヒド化合物のめっき浴への添加量は、0.01~0.4モル/Lであり、より好適には、0.02~0.2モル/Lである。
本発明において、ポリアミン混合物としては、ポリアルキルイミンと、ポリエーテルアミンとの混合物があげられる。
ポリアルキレンイミンとしては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミンがあげられる。ポリアルキレンイミンは、直鎖状、分枝状のいずれであってもよく、1級アミン、2級アミン、3級アミンを含む重合体であってもよい。
ポリアルキレンイミンには、その重合度により種々の分子量のものがあり、たとえば、
ポリエチレンイミンには分子量が300、600、1200、1800、10000、70000のものがあるが、本発明においては、これらを好適に用いることができる。本発明においては、とりわけポリエチレンイミンが好ましい。
ポリエーテルアミンとしては、分子内にエーテル結合とアミノ基とを有するものであればよく、たとえばメトキシポリ(オキシエチレン)-2-プロピルアミン、メトキシポリ(/オキシプロピレン)-2-プロピルアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、トリメチロールプロパンポリ(オキシプロピレン)トリアミンおよびグリセリルポリ(オキシプロピレン)トリアミンなどがあげられる。これらは、単独または2種以上を組合せて使用することもできる。
このうち、メトキシポリ(オキシエチレン)-2-プロピルアミンなどのモノポリアミン、ポリオキシプロピレンジアミンなどのジポリアミンが好ましく、とりわけメトキシポリ(オキシエチレン)-2-プロピルアミンが好ましい。
これらのポリエーテルアミンには、重合度により種々の分子量のものがあるが、いずれも好適に使用することができる。
たとえばメトキシポリ(オキシエチレン)-2-プロピルアミンの場合には分子量600、1000、3085ものがあるが、いずれも好適に使用することができる。これらは市販のものであっても好適に使用することができる。
本発明において、ポリアルキルイミンと、ポリエーテルアミンとの混合比は、めっき浴中において、ポリアルキルイミン1モルに対して、ポリエーテルアミンが0.05~2モルであればよく、好ましくは0.1~1モル、とりわけ好ましくは0.2~0.5モルとなるよう用いる。
本発明のめっき浴には、さらに黒味補助剤を配合することができ、黒味補助剤としては、たとえばアンモニア水、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムから選ばれる1種以上のアンモニアおよびアンモニウム塩が挙げられる。このような黒味補助剤は、とりわけ低電流密度域の黒味補助剤として有効である。
黒味補助剤は、めっき浴中の濃度が0.1~30g/Lとなるように配合されるのが好ましく、その濃度が0.1g/L未満であれば、黒味が薄くなる。また濃度が30g/Lを超えると析出する合金の組成が変動し、色調を制御することができなくなる。
さらに、本発明のめっき浴においては、めっき浴安定剤を配合することができ、かかるめっき浴安定化剤としては、エチレンジアミン、ジメチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、トリエタノールアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアミン誘導体があげられる。これらの安定化剤は、めっき浴中のピロリン酸錯塩の状態を安定させるうえで有用であり、その濃度としてはめっき浴に0.1~30g/Lとなるよう配合されるのが好ましい。
本発明のめっき浴においては、上記の成分以外にも、めっきの仕上がりに悪影響を与えない限り、この技術分野において常用ないし汎用される添加剤を配合することができる。
本発明のめっき浴は、pHが中性~アルカリ性の7~8、好ましくは7.5~8.5
とりわけ好ましくは、8.0~8.3である。
さらに、本発明のめっき浴を用いてめっきを施す場合には、めっき浴は20~40℃、好ましくは25~30℃に維持され、めっきはバレルめっきなど従来公知のめっき法により行なうことができる。
以下、本発明を実施例などによりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
実施例1
硫酸銅(II)5水和物1.00g/L、ピロリン酸第一錫(II)10.00g/L、ピロリン酸カリウム200.0g/L、37%ホルムアルデヒド5.00ml/L、硫酸アンモニウム10.00g/Lおよび表1の記載の成分を用いて、めっき浴を10L建浴した。
銅めっき済みの亜鉛ダイカスト250個(3.2g/個)をアルカリ電解脱脂し水洗、酸洗浄、水洗の前処理を行った後、ミニバレル(コンドウ製ミニバレル)中で、以下の条件によりめっきを行った。めっき後、速やかにバレルから被めっき物を取り出し、水洗し、遠心乾燥機にて乾燥した。ついで得られた被めっき物の均一性および黒味を評価した。
<評価方法>
均一性:色差計(CM-3500d、コニカミノルタ株式会社製)にて被めっき物平面部分のL値、a値、b値をSCI(正反射光込み)にて測定(n=100)し、被めっき物全部のサンプルのL値、a値、b値の平均から個々のL値、a値、b値を用いて平均値からのΔEを算出した。算出したn=100のΔEを用いて標準偏差を計算して、均一性を評価した。数値が低いほど均一性の良い仕上がりであることを示す。
黒味:前記色差計にて測定した全サンプルのL値の平均を数値とした。数値が低いほど黒味のある仕上がりであることを示す。
表1において、各記号は次のものを表し、数字は使用量を表す。
PEI-100:ポリエチレンイミン(分子量1000)
PEI-18:ポリエチレンイミン(分子量1800)
MPA-10:メトキシポリ(オキシエチレン)-2-プロピルアミン(分子量1000)
MPA-30:メトキシポリ(オキシエチレン)-2-プロピルアミン(分子量3085)
MPA-6:メトキシポリ(オキシエチレン)-2-プロピルアミン(分子量600)
実施例2~6
硫酸銅(II)5水和物2.00g/L用いるほかは、実施例1と同様にして、実施した。
アルカリ脱脂条件
薬品名(商品名:アクチベータCu、株式会社シミズ製)
めっき条件
陽極=SUS板(100cm×150cm×0.3cm)2枚
電流値=5A/Kg、通電時間=10分、浴温=30℃
バレル回転数=毎分6回
めっき厚=約0.4μm
結果は以下に示すとおりである。
Figure 2023094194000001
比較例1~3
表2に示すめっき浴を用いるほかは、実施例1~6と同様にしてめっきを行った。
Figure 2023094194000002
表1および2から明らかなように、ポリアルキレンイミンおよびポリエーテルアミンの混合物を使用した本発明のめっき浴を用いた場合には、均一性および黒味に優れためっき皮膜が得られているが、ポリアルキレンイミンおよびポリエーテルアミンのいずれか一方のみを用いためっき浴、またはポリアルキレンイミンおよびポリエーテルアミンのいずれも含まないめっき浴の比較例では、均一性および黒味が劣る。

Claims (3)

  1. 2価の銅塩と、2価の錫塩と、錯化剤と、還元剤と、ポリアミン混合物と、を含むことを特徴とする非シアン黒色銅-錫合金めっき浴。
  2. ポリアミン混合物が、ポリアルキルイミンと、ポリエーテルアミンとの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の非シアン銅-錫合金めっき浴。
  3. ポリアルキルイミンがポリエチレンイミンであり、ポリエーテルアミンがメトキシポリ(オキシエチレン)-2-プロピルアミンであることを特徴とする請求項2に記載のめっき浴。
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