JP5569718B2 - シアンフリー光沢銅−スズ合金めっき浴 - Google Patents
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Description
表面処理産業に於いては近年の環境問題の観点から安全で安定供給が可能であり、危険で有害なシアン化合物を含まない所謂ノーシアン浴に於いて、良好な光沢外観を有し、現在広く使用されている光沢ニッケルめっきに代わる10μm以上の厚付けめっきが短時間で形成可能な光沢銅−スズ合金めっきが求められている。
(1)2価のスズイオンおよび
(2)2価の銅イオンを含有し、錯化剤として
(3)ピロリン酸塩を含有する水溶液に、次の添加剤;すなわち
(4)アルデヒドアミン系化合物とグリシジルエーテル類との反応物を必須成分として、含有することを特徴とするシアンフリー光沢銅−スズ合金めっき浴である。
更に(5)脂肪族ジカルボン酸またはその塩を含有する。
第一に、高効率で広い電流密度範囲に渡って安定した色調、光沢の厚付け銅−スズ合金めっき皮膜が得られる。既存のめっき液では達成不可能な光沢ニッケルめっきに代替可能な厚付けめっきが可能である。また、めっき手段を選ばず、大型品のめっきに使用されるラックめっきや小型および微小部品に使用されるバレルめっきの何れにも使用可能である。
第二に、ニッケルアレルギー対策を初めとする健康被害や環境負荷への軽減が可能であり、シアン化合物を含まない安全なめっき浴を提供可能とした。
第三に、同一添加剤を使用して、銅とスズの金属濃度と濃度比を変更するだけで光沢黒色めっきが可能であり、さらに従来浴よりも厚付けが可能な光沢黒色銅−スズ合金めっき皮膜を形成された。
(1)2価のスズイオン源には、塩化スズ(II)、硫酸スズ(II)、ピロリン酸スズ(II)、有機酸スズ(II)(例えば、メタンスルホン酸スズ(II))などの2価のスズ塩を用いることができる。
(2)2価の銅イオン源には、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅、ピロリン酸銅、酸化銅などの2価の銅塩を用いることができる。
(3)以上の2種の金属塩を溶解するために用いる錯化剤にはピロリン酸カリウムまたはピロリン酸ナトリウムなどが使用できる。
また、アルデヒド類と反応させるアミン類としては、脂肪族第一アミンおよび第二アミン、不飽和脂肪族一アミンおよび第二アミン、分枝脂肪族第一アミンおよび第二アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、ポリアミンを使用することができる。具体的には、脂肪族第一アミンは、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンなどが使用できる。脂肪族第二アミンには、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミンなどが使用できる。不飽和脂肪族第一アミンにはアリルアミンがあり、
第二アミンにはジアリルアミンなどがある。分枝脂肪族第一アミンには、イソアミルアミンなどが使用できる。脂環式アミンにはシクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミンなどがある。芳香族アミンでは、アニリン、2メチルアニリン、ベンジルアミン、ジフェニルアミンなどが使用できる。ポリアミンにはジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレントリアミン、ピペラジンなどが使用できる。 さらに高分子のポリアミンとしてジアリル系アミンを用いた3級アミンおよび4級アミンのカチオンポリマーなどの高分子化合物も使用することができる。何れも単独もしくは2種以上複合して用いることができる。このアルデヒド類とアミン類を反応させて生成したアルデヒドアミン系化合物は、自己縮合して、オリゴマーになっている可能性がある。
アルデヒドとアミンは比較的容易に反応し、それは以下のような構成反応式を与える。
前述のアルデヒドアミン系化合物0.5〜2モル量に、グリシジルエーテル類1モル量を撹拌しながら混合し、15℃〜70℃の温浴上で0.1時間以上、240時間以内の反応をさせる。なお、沈殿が生成するものについては沈殿を濾別してもかまわない。
めっき浴に用いる濃度は0.01g〜50g/Lの範囲で適用できる。より好適には0.1g〜10g/Lの範囲で使用する。
これらの脂肪族ジカルボン酸およびその塩は0.005M〜飽和濃度までの濃度範囲で用いることができ、より好ましくは0.01M〜0.05Mである。0.01M以下では効果が低く、0.05M以上は性能が同じで不経済である。
(1)2価のスズイオンには、2価スズイオンの塩を使用する。例えば、塩化スズ(II)、硫酸スズ(II)、ピロリン酸スズ(II)、有機酸スズ(II)(例えば、メタンスルホン酸スズ(II))、酸化錫(II)などのスズ塩を用いることができる。これらのスズ塩は単独または
適宜混合して使用できる。2価の水溶性スズ塩の濃度は、0.005〜0.25Mの範囲が好ましく、特に0.03〜0.15Mが好ましい。
(2)2価の銅イオンにおいても市販の銅塩を使用する。例えば、塩化銅(II)、硫酸銅(II)、ピロリン酸銅(II)、酸化銅(II)などの2価の銅塩を用いる。これらの銅塩は単独または適宜混合して使用できる。2価の水溶性銅塩の濃度は、0.01〜0.2Mの範囲が好ましく、特に0.02〜0.09Mが好ましい。スズおよび銅濃度が上記範囲から外れると光沢の得られる範囲が狭くなり、均一な光沢めっき皮膜を得ることが困難になる。
(3)2価のスズイオンおよび2価の銅イオンの錯化剤としては、ピロリン酸塩(ピロリン酸カリウムおよびピロリン酸ナトリウム)を使用する。使用するピロリン酸塩濃度はスズイオンと銅イオンの合計モル数の1.5倍モル濃度以上のピロリン酸塩が必要である。1.5倍以下であると金属塩を溶解することができず、沈殿が生じる。具体的には合計金属モル数の2〜35倍モルが適当であり、より好適には3〜20倍モルである。35倍モル以上は特に性能の向上が無く、不経済である。
初めにアルデヒドアミン系化合物の具体的な調製方法を示すが以下の説明により限定されるものではない。
アルデヒド類としてアセトアルデヒド、アミン類としてジエチルアミンを使用して以下の反応物を得た。アセトアルデヒド50gと水100gを混合し、これにジエチルアミン110gを撹拌しながら徐々に加え、全て加え終わったら60℃の温浴上で60〜120分反応させる。
以上のようにして調製したアルデヒドアミン系化合物にグリシジルエーテル類としてグリシドールを反応させる。上記の反応物にグリシドール70gを撹拌しながら徐々に加える。全て加え終わったら60℃の温浴上で120分間反応させる。
めっき浴への添加濃度は0.01g〜50g/Lの範囲で使用することが可能であり、より好適には0.1g〜20g/Lである。沈殿がある場合は濾過して用いる。
これらの脂肪族ジカルボン酸およびその塩は0.005M〜飽和濃度までの濃度範囲で用いることができ、より好ましくは0.01M〜0.05Mであり、0.01M以下では効果が低く、0.05M以上は性能が同じで不経済である。
浴のpH調整のためには既存の無機酸や有機スルホン酸(メタンスルホン酸など)が使用し、アルカリとしては無機の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)が使用する。
(2)硫酸銅 0.05M
(3)ピロリン酸カリウム 0.9M
(4)添加剤A 1g/L
(5)シュウ酸 3g/L
(6)pH 8.0
よりなるめっき浴で、研磨した銅板に浴温30℃、2A/dm2の電流密度でラックにて30分間のめっきを行った。めっき外観は鏡面光沢の均一な銀白色の良好なめっき皮膜が得られた。めっき膜厚は約20μmであった。
(2)ピロリン酸銅 0.08M
(3)ピロリン酸カリウム 0.8M
(4)添加剤B 1g/L
(5)マロン酸 5g/L
(6)pH 9.0
よりなるめっき浴で、研磨した銅板に浴温30℃、0.2A/dm2の電流密度でラックにて60分間のめっきを行った。めっき外観は鏡面光沢の均一な銀白色の良好なめっき皮膜が得られた。めっき膜厚は約4μmであった。
(2)塩化銅 0.15M
(3)ピロリン酸カリウム 0.9M
(4)添加剤C 5g/L
(5)コハク酸二ナトリウム 10g/L
(6)pH 7.0
よりなるめっき浴で、研磨した銅板に浴温35℃、4A/dm2の電流密度でラックにて15分間のめっきを行った。めっき外観は鏡面光沢の均一な銀白色の良好なめっき皮膜が得られた。めっき膜厚は約15μmであった。
(2)ピロリン酸銅 0.03M
(3)ピロリン酸カリウム 0.8M
(4)添加剤A 1g/L
(5)グルタル酸 6g/L
(6)pH 8.0
よりなるめっき浴で、真鍮製スナップ部品にバレルめっき装置を用いて投入量を40%容量として、浴温30℃、電流密度0.3A/dm2で30分間のめっきを行った。めっき外観は鏡面光沢の均一な銀白色の良好なめっき皮膜が得られた。部品の色調バラツキやめっきムラも見られなかった。めっき膜厚は約3μmであった。
(2)ピロリン酸銅 0.02M
(3)ピロリン酸カリウム 0.8M
(4)添加剤A 2g/L
(5)マレイン酸 5g/L
(6)pH 7.5
よりなるめっき浴で、研磨した銅板に浴温30℃、0.5A/dm2の電流密度でラックにて30分間のめっきを行った。めっき外観は鏡面光沢の均一な青黒色の良好なめっき皮膜が得られた。めっき膜厚は約4μmであった。
(2)ピロリン酸銅 0.01M
(3)ピロリン酸カリウム 0.9M
(4)B添加剤B 2g/L
(5)マロン酸 5g/L
(6)pH 7.5
よりなるめっき浴で、真鍮製スナップ部品にバレルめっき装置を用いて投入量を40%容量として、浴温30℃、電流密度0.3A/dm2で30分間のめっきを行った。めっき外観は鏡面光沢の均一な青黒色の良好なめっき皮膜が得られた。部品の色調バラツキやめっきムラも見られなかった。めっき膜厚は約3μmであった。
(2)ピロリン酸銅 0.05M
(3)ピロリン酸カリウム 0.9M
(4)コハク酸二ナトリウム 5g/L
(5)pH 8.0
よりなるめっき浴で、浴温30℃、電流密度2A/dm2でラックにて30分間のめっきを行った。めっき外観は無光沢の赤茶色の不均一な粉状のめっき皮膜が得られた。
(2)硫酸銅 0.1M
(3)ピロリン酸カリウム 0.9M
(4)ジエチルアミン110g/Lとグリシドール70g/Lの反応物
1.0g/L
(5)マロン酸ナトリウム 5g/L
(6)pH 8.0
よりなるめっき浴で、研磨した銅板に2A/dm2の電流密度でラックにて30分間のめっきを行った。めっき外観は無光沢〜半光沢の均一な白色めっき皮膜であった。めっき膜厚は約12μmであった。
(2)硫酸銅 0.1M
(3)ピロリン酸カリウム 0.9M
(4)ジエチルアミン110g/Lとグリシドール70g/Lの反応物
1.0g/L
(5)アセトアルデヒド 0.1g/L
(6)マロン酸 5g/L
(7)pH 8.0
よりなるめっき浴で、研磨した銅板に浴温30℃、2A/dm2の電流密度でラックにて30分間のめっきを行った。めっき外観は比較例1と同様、無光沢〜半光沢の均一な白色めっき皮膜であった。めっき膜厚は約12μmであった。
(2)硫酸銅 0.1M
(3)ピロリン酸カリウム 0.9M
(4)アセトアルデヒド50g/Lとジエチルアミン110g/Lの反応物
1.0g/L
(5)マロン酸 5g/L
(6)pH 8.0
よりなるめっき浴で、研磨した銅板に浴温30℃、2A/dm2の電流密度でラックにて30分間のめっきを行った。めっき外観は局部的に光沢のある不均一な銀白色めっき皮膜が得られた。めっき膜厚は約9μmであった。
(2)硫酸銅 0.1M
(3)ピロリン酸カリウム 0.9M
(4)アセトアルデヒド50g/Lとジエチルアミン110g/Lの反応物
1.0g/L
(5)グリシドール 0.5g/L
(6)マロン酸 5g/L
(7)pH 8.0
よりなるめっき浴で、研磨した銅板に2A/dm2の電流密度でラックにて30分間のめっきを行った。めっき外観は局部的に光沢のある不均一な銀白色めっき皮膜が得られた。めっき膜厚は約9μmであった。
(2)硫酸銅 0.1M
(3)ピロリン酸カリウム 0.9M
(4)ホルムアルデヒド 0.1g/L
(5)メチルアミン 0.1g/L
(6)グリシドール 1.0g/L
(5)マロン酸 5g/L
(6)pH 8.0
よりなるめっき浴で、研磨した銅板に2A/dm2の電流密度でラックにて30分間のめっきを行った。めっき外観は不均一な褐色めっき皮膜が得られた。めっき膜厚は粉末状であり、膜厚測定は不可能であった。
(2)硫酸銅 0.1M
(3)ピロリン酸カリウム 0.9M
(4)ジエチルアミン110g/Lとグリシドール70g/Lの反応物
1.0g/L
(5)マロン酸 5g/L
(6)pH 8.0
よりなるめっき浴で、真鍮製スナップ部品にバレルめっき装置を用いて投入量を40%容量として、浴温30℃、電流密度0.15A/dm2で30分間のめっきを行った。めっき外観は光沢感のある白色めっき皮膜が得られたが、個々の部品に色調バラツキやめっきムラが発生した。断面観察による膜厚測定ではめっき厚が薄く、ほとんど計測不可能であった。
Claims (4)
- 2価スズイオンと2価銅イオンを含有し、錯化剤としてピロリン酸塩を含有する溶液に、アルデヒドアミン系化合物とグリシジルエーテル類と反応させたアルデヒドアミンーグリシジルエーテル反応生成物と脂肪族ジカルボン酸またはその塩を必須成分とする添加剤を含有することを特徴とするシアンフリー光沢銅−スズ合金めっき浴。
- アルデヒドアミン系化合物は、アルデヒドアミンあるいはアルデヒド類とアミン類を反応させて合成したアルデヒドアミン類である請求項1記載のシアンフリー光沢銅−スズ合金めっき浴。
- アルデヒドアミン系化合物に対するグリシジルエーテル類の混合比(モル比)が、0.5〜2までの反応物である請求項1あるいは請求項2記載のシアンフリー光沢銅−スズ合金めっき浴。
- 2価銅塩濃度が0.004M〜0.08Mの範囲、2価スズ濃度が0.005M〜0.06Mの範囲で、金属比を銅:スズ=1:1〜2.5:1の範囲にすることにより、優雅な黒色光沢めっきを形成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のシアンフリー光沢銅−スズ合金めっき浴。
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