JP2023077274A - タイヤ - Google Patents

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Abstract

Figure 2023077274000001
【課題】走行後のタイヤ電気抵抗を維持することのできるタイヤを提供すること。
【解決手段】一対のビード部10と、一対のビード部10間に架け渡される少なくとも1層のカーカス層13と、カーカス層13のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層14と、カーカス層13に対してタイヤ内腔側に配置されるカーカス内側ゴム層20とを備える空気入りタイヤ1であって、少なくともビード部10からベルト層14まで連続して延在し、カーカス内側ゴム層20に配置される線状導電部50を備え、線状導電部50は、少なくとも一部がカーカス内側ゴム層20内に位置しており、且つ、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満である。
【選択図】図2

Description

本発明は、タイヤに関する。
近年、環境問題などから低燃費タイヤの要求が高まっている。タイヤを低燃費化する手法として、タイヤのトレッド部やサイド部に用いられているゴムにシリカを配合することで、タイヤの転がり抵抗を抑えるという手法が用いられている。しかしながら、シリカは絶縁特性が高いため、トレッドゴムのシリカ含有量が増加すると、トレッドゴムの電気抵抗値が増加して、タイヤの帯電抑制性能が低下する。タイヤの帯電抑制性能が低下すると、車両の走行時に発生する静電気が蓄積し易くなるため、ラジオノイズ等の電波障害を引き起こし易くなる。
このため、従来の空気入りタイヤの中には、帯電抑制性能を向上させて車両走行時に車両に発生する静電気を路面に放出し易くするために、電気抵抗値が低い導電部材を備えているものがある。例えば、特許文献1では、小さな電気抵抗を持ち、カーカスプライに沿って一対のビードコア間をトロイド状に延びる導電性糸を配置することにより、タイヤの電気抵抗を小さくしている。
特開2014-133467号公報
しかしながら、導電性糸のような導電性繊維をカーカスプライに沿わせて配置する場合、タイヤの新品時の電気抵抗は低くなるものの、当該タイヤを装着した車両の走行時におけるタイヤの変形により、導電性繊維がカーカスプライに擦れ易くなる。この場合、導電性繊維がカーカスプライに対して擦れが繰り返されることにより断線してしまい、導電性繊維によって電気を流すことができなくなる虞がある。導電性繊維が断線することによって導電性繊維で電気を流すことができなくなった場合、タイヤ電気抵抗が上昇し易くなり、タイヤの帯電抑制性能が低下してしまうため、走行後のタイヤ電気抵抗の維持の観点で改良の余地があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、走行後のタイヤ電気抵抗を維持することのできるタイヤを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤは、一対のビード部と、前記一対のビード部間に架け渡される少なくとも1層のカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層と、前記カーカス層に対してタイヤ内腔側に配置されるカーカス内側ゴム層とを備えるタイヤであって、少なくとも前記ビード部から前記ベルト層まで連続して延在し、前記カーカス内側ゴム層に配置される線状導電部を備え、前記線状導電部は、少なくとも一部が前記カーカス内側ゴム層内に位置しており、且つ、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満であることを特徴とする。
また、上記タイヤにおいて、前記ベルト層は、タイヤ幅方向に延びる1枚以上のベルトプライを有しており、タイヤ幅方向における幅が最も広い前記ベルトプライのタイヤ幅方向における両側の端部からタイヤ内表面に向けてそれぞれ垂線を引いた際における前記垂線と前記タイヤ内表面との交点間のペリフェリ長さをLbpとし、前記線状導電部における前記ベルト層のタイヤ径方向内側に位置する部分のペリフェリ方向における長さをLaとする場合に、前記線状導電部は、0.01≦La/Lbp≦1を満たすことが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記線状導電部は、少なくとも前記ビード部よりもタイヤ径方向外側の領域では、前記カーカス内側ゴム層の厚さtと、前記線状導電部においてタイヤ内表面からの距離が最も小さくなる部分での前記タイヤ内表面からの距離t1との関係が、0.2≦t1/t≦0.8を満たすことが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記ビード部には、リムフランジに当接するビード部ゴムが配置され、前記ビード部ゴムは、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満であり、前記線状導電部は、前記ビード部ゴムと重なる部分を有することが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記線状導電部は、タイヤ内表面側から前記ビード部のビードトゥを超えて少なくともビードベースまで延在し、前記ビードトゥよりも前記ビードベース側の位置で前記ビード部ゴムに接触することが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記線状導電部は、少なくとも前記ベルト層と前記ビード部の間の領域では、ペリフェリ方向に沿って延びることが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記線状導電部における前記ベルト層のタイヤ径方向内側に位置する部分と前記ビード部に位置する部分とは、それぞれペリフェリ方向に対してタイヤ周方向に30°以下の傾斜角で傾斜する部分を有することが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記カーカス内側ゴム層は、第1層と第2層とが積層され、前記線状導電部は、少なくとも一部が前記第1層と前記第2層との間に配置されることが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記第1層はインナーライナであり、前記第2層はタイゴムであることが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記線状導電部は、前記タイゴムに縫い込まれることが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記線状導電部は、前記タイゴムの表面に1mm以上30mm以下の長さで露出しつつ前記タイゴムに縫い込まれることが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記線状導電部は、1×10^8[Ω・cm]未満の体積抵抗率を持つ導電線状体を1本以上含む複数本の線状体を撚り合わせて成ることが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記線状導電部は、前記導電線状体と1×10^8[Ω・cm]以上の体積抵抗率を持つ非導電線状体とを撚り合わせて成ることが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記導電線状体が、金属繊維であり、前記非導電線状体が、有機繊維であることが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記導電線状体が、複数本の炭素繊維を撚り合わせて成ることが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記導電線状体が、炭素繊維から成る単線のコードであることが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記線状導電部の総繊度が、20[dtex]以上1000[dtex]以下であることが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記線状導電部の伸び率が、1.0[%]以上70.0[%]以下であることが好ましい。
本発明に係るタイヤは、走行後のタイヤ電気抵抗を維持することができる、という効果を奏する。
図1は、実施形態1に係る空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。 図2は、図1のタイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面から一方側の領域の詳細図である。 図3は、ベルト層に対する線状導電部のラップ幅についての説明図である。 図4は、図2のA部詳細図である。 図5は、図4のB部詳細図である。 図6は、図5のC-C断面図である。 図7は、空気入りタイヤをタイヤ回転軸の方向にみた場合における線状導電部の配置の形態を示す模式図である。 図8は、線状導電部単体の説明図である。 図9は、実施形態2に係る空気入りタイヤにおける線状導電部の配置形態を示す要部断面図である。 図10は、図9のD-D断面図である。 図11は、実施形態1に係る空気入りタイヤの変形例であり、カーカス内側ゴム層と線状導電部がビード部ゴムのタイヤ幅方向内側に位置する状態を示す説明図である。 図12は、実施形態1に係る空気入りタイヤの変形例であり、線状導電部がビードベース側にも配置される状態を示す説明図である。 図13は、実施形態1に係る空気入りタイヤの変形例であり、ビード部ゴムに導電ゴムが配置される状態を示す説明図である。 図14は、実施形態1に係る空気入りタイヤの変形例であり、線状導電部がビード部ゴムのチェーファに接触する状態を示す説明図である。 図15は、実施形態1に係る空気入りタイヤの変形例であり、線状導電部がビード部ゴムのチェーファに接触する状態を示す説明図である。 図16は、実施形態1に係る空気入りタイヤの変形例であり、線状導電部がペリフェリ方向に対して傾斜する部分を有する状態を示す説明図である。 図17は、実施形態2に係る空気入りタイヤの変形例であり、線状導電部がタイヤ周方向に傾斜しながらタイゴムに縫い込まれる状態を示す説明図である。 図18は、実施形態2に係る空気入りタイヤの変形例であり、線状導電部がタイゴムに編み込まれる状態を示す説明図である。 図19は、実施形態2に係る空気入りタイヤの変形例であり、線状非導電部も用いて線状導電部がタイゴムに縫い込まれる状態を示す説明図である。 図20は、実施形態1に係る空気入りタイヤの変形例であり、カーカス内側ゴム層がカバーゴム層を有する場合の説明図である。 図21は、図20のE-E矢視図である。 図22は、実施形態1に係る空気入りタイヤの変形例であり、線状導電部がタイヤ幅方向における両側に亘って配置される状態を示す説明図である。 図23は、実施形態1に係る空気入りタイヤの変形例であり、線状導電部がタイヤ幅方向における両側に配置される状態を示す説明図である。 図24は、実施形態1に係る空気入りタイヤの変形例であり、アーストレッドが配置される状態を示す説明図である。 図25Aは、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。 図25Bは、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。
以下に、本発明に係るタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態1]
[空気入りタイヤ]
以下の説明では、本発明に係るタイヤの一例として、空気入りタイヤ1を用いて説明する。タイヤの一例である空気入りタイヤ1は、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
また、以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸であるタイヤ回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。また、以下の説明では、タイヤ子午断面とは、タイヤ回転軸を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。
図1は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1を示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域を示している。また、同図は、空気入りタイヤの一例として、乗用車用ラジアルタイヤを示している。
実施形態1に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、トレッド部2と、一対のサイドウォール部3、3と、一対のビード部10、10と、カーカス層13と、ベルト層14と、カーカス内側ゴム層20とを備える(図1参照)。このうち、一対のサイドウォール部3、3と、一対のビード部10、10とは、それぞれタイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に1つずつが配置されている。
一対のビード部10、10は、一対のサイドウォール部3、3のタイヤ径方向内側に位置しており、それぞれビードコア11と、ビードフィラー12と、ビード部ゴム30とを有している。即ち、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側には、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、一対のビード部ゴム30、30とが配置されている。さらに、ビード部ゴム30は、リムクッションゴム31と、チェーファ32とを有している。このため、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側には、一対のリムクッションゴム31、31と、一対のチェーファ32、32とが配置されている。
一対のビードコア11、11は、複数のビードワイヤを束ねて成る環状部材であり、一対のビード部10、10のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外側にそれぞれ配置されてビード部10を補強する。
カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向における両側に位置するビード部10、10間に、トロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなどの有機繊維材から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成されている。このカーカス層13のカーカスプライは、タイヤ周方向に対するカーカスコードの延在方向の傾斜角として定義されるカーカス角度が、絶対値で80[deg]以上95[deg]以下の範囲内になっている。
本実施形態1では、カーカス層13が、単層構造を有し、タイヤ幅方向両側のビードコア11、11間に連続して架け渡されている。また、カーカス層13の両端部が、ビードコア11及びビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止されている。つまり、カーカス層13は、タイヤ子午線方向の断面視における両端部付近が、ビードコア11及びビードフィラー12のタイヤ幅方向内側からタイヤ径方向内側を通り、タイヤ幅方向外側に巻き返されている。
また、カーカス層13のカーカスプライは、カーカスコードのコートゴムの60[℃]のtanδ値が、0.20以下であることが好ましく、また、カーカスコードのコートゴムの体積抵抗率が、1×10^8[Ω・cm]以上であることが好ましい。これらにより、タイヤの転がり抵抗が低下する。かかる体積抵抗率を有するコートゴムは、例えば、カーボン配合量が少ない低発熱コンパウンドを使用することにより生成される。さらに、コートゴムは、シリカを使用せずに構成されても良いし、シリカを含有させて補強されても良い。
なお、60[℃]のtanδ値は、(株)東洋精機製作所製、粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪10%、振幅±0.5%、周波数20Hzの条件で測定される。
また、体積抵抗率(体積固有抵抗)は、JIS K6271規定の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-体積抵抗率及び表面抵抗率の求め方」に基づいて測定される。一般に、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満、もしくは表面抵抗率が1×10^8[Ω/cm]未満の範囲にあれば、部材が静電気の帯電を抑制可能な導電性を有するといえる。
一対のビード部10、10が有する一対のビード部ゴム30、30は、タイヤ幅方向両側のビードコア11、11及びカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側にそれぞれ配置されている。ビード部ゴム30は、空気入りタイヤ1をリムに装着する際にリムが有するリムフランジRに当接する部分になっており、ビード部10における、リムフランジRに対する接触面を構成する。ビード部ゴム30は、体積抵抗率が、1×10^8[Ω・cm]未満になっており、ビード部ゴム30の体積抵抗率は、1×10^7[Ω・cm]以下であることが好ましい。
ベルト層14は、タイヤ幅方向に延びる1枚以上のベルトプライを有しており、本実施形態1では、複数のベルトプライ141~143が積層されている。即ち、本実施形態1では、ベルト層14は、一対の交差ベルト141、142と、ベルトカバー143とをタイヤ径方向に積層することにより構成され、カーカス層13のタイヤ径方向外側に配置されてカーカス層13の外周に掛け廻されている。一対の交差ベルト141、142は、スチール或いは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、タイヤ周方向に対するベルトコードの延在方向の傾斜角であるベルト角度が、絶対値で20[deg]以上65[deg]以下の範囲内になっている。また、一対の交差ベルト141、142は、ベルト角度が相互に異符号となり、ベルトコードの延在方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造になっている。即ち、一対の交差ベルト141、142は、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向へのベルトコードの傾斜方向が、互いに反対方向になっている。ベルトカバー143は、コートゴムで被覆されたスチール或いは有機繊維材から成る複数のコードを圧延加工して構成され、ベルト角度が絶対値で0[deg]以上10[deg]以下の範囲内になっている。また、ベルトカバー143は、交差ベルト141、142のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
トレッド部2は、ゴム組成物であるトレッドゴム15を有して構成され、カーカス層13及びベルト層14のタイヤ径方向外側に配置されていると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出している。このため、トレッド部2は、外周表面が空気入りタイヤ1の輪郭の一部を構成しており、トレッド部2には、タイヤ周方向に延びる周方向主溝6やラグ溝(図示省略)等の溝が複数形成されている。また、トレッド部2を構成するトレッドゴム15は、キャップトレッド151と、アンダートレッド152とを有している。
キャップトレッド151は、トレッド部2のタイヤ径方向における最も外側に位置してタイヤ接地面を構成するゴム部材であり、単層構造を有しても良いし(図1参照)、多層構造を有しても良い(図示省略)。キャップトレッド151の60[℃]のtanδ値は、0.25以下であることが好ましい。また、キャップトレッド151の体積抵抗率は、1×10^8[Ω・cm]以上の範囲にあることが好ましく、1×10^10[Ω・cm]以上の範囲にあることがより好ましく、1×10^12[Ω・cm]以上の範囲にあることがより好ましい。これらにより、空気入りタイヤ1の転がり抵抗が低下する。かかる体積抵抗率をもつキャップトレッド151は、カーボン配合量が少ない低発熱コンパウンドを使用し、また、シリカ含有量を増加させて補強することにより生成される。
また、アンダートレッド152は、キャップトレッド151のタイヤ径方向内側に積層される部材である。アンダートレッド152の体積抵抗率は、キャップトレッド151の体積抵抗率よりも低いことが好ましい。
一対のサイドウォール部3、3は、それぞれサイドウォールゴム16を有して構成され、一対のサイドウォール部3、3が有する一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されている。サイドウォールゴム16の60[℃]のtanδ値は、0.20以下であることが好ましい。また、サイドウォールゴム16の体積抵抗率は、1×10^8[Ω・cm]以上の範囲にあることが好ましく、1×10^10[Ω・cm]以上の範囲にあることがより好ましく、1×10^12[Ω・cm]以上の範囲にあることがより好ましい。これらにより、空気入りタイヤ1の転がり抵抗が低下する。かかる体積抵抗率をもつサイドウォールゴム16は、カーボン配合量が少ない低発熱コンパウンドを使用し、また、シリカ含有量を増加させて補強することにより生成される。
なお、キャップトレッド151の体積抵抗率の上限値、アンダートレッド152の体積抵抗率の下限値、サイドウォールゴム16の体積抵抗率の上限値及びリムクッションゴム17の体積抵抗率の下限値は、特に限定がないが、これらがゴム部材であることから物理的な制約を受ける。
カーカス内側ゴム層20は、空気入りタイヤ1の内側の表面であるタイヤ内表面25を構成しており、空気入りタイヤ1の内側の空間であるタイヤ内腔に面している。このように、タイヤ内表面25を構成するカーカス内側ゴム層20は、カーカス層13に対してタイヤ内腔側に配置されるゴム層になっており、カーカス層13をタイヤ内腔側から覆っている。
[帯電抑制構造]
図2は、図1のタイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLから一方側の領域の詳細図である。本実施形態1に係る空気入りタイヤ1は、車両走行時にて車両に発生する静電気を路面に放出するために、帯電抑制構造が採用されており、帯電抑制構造として、線状導電部50が用いられる。線状導電部50は、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満の線状の部材になっており、少なくともビード部10からベルト層14まで連続して延在し、カーカス内側ゴム層20に配置されている。カーカス内側ゴム層20に配置される線状導電部50は、少なくとも一部がカーカス内側ゴム層20内に位置している。本実施形態1では、線状導電部50は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に配置されるビード部10のうち、一方のビード部10から、ベルト層14のタイヤ径方向内側の位置まで連続して配置されている。
なお、本実施形態1では、ビード部10とは、リム径の測定点からタイヤ断面高さSHの1/3までの領域をいう。また、タイヤ断面高さSHとは、タイヤ外径とリム径との差の1/2をいい、空気入りタイヤ1を規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。
ここで、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、或いはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
線状導電部50は、ベルト層14のタイヤ径方向内側の位置では、カーカス層13のタイヤ径方向内側に位置するカーカス内側ゴム層20内でカーカス内側ゴム層20に沿って配置されており、線状導電部50におけるタイヤ方向外側の端部は、ベルト層14のタイヤ径方向内側の部分に位置している。これにより、線状導電部50は、ベルト層14のタイヤ径方向内側の位置では、ベルト層14に対してタイヤ径方向に重なって配置されている。
また、線状導電部50は、サイドウォール部3やビード部10の位置では、カーカス層13のタイヤ幅方向内側に位置するカーカス内側ゴム層20内でカーカス内側ゴム層20に沿って配置されている。このように配置される線状導電部50におけるタイヤ方向内側の端部は、ビード部10におけるタイヤ幅方向内側に位置している。また、線状導電部50におけるビード部10に位置する部分は、ビード部ゴム30とタイヤ幅方向に重なって配置されている。これにより、リム嵌合面からビード部ゴム30を介して線状導電部50に至る導電経路が確保され、ビード部10の位置からベルト層14の位置までの導電経路が確保される。
これらのように配置される線状導電部50は、ベルト層14に対してタイヤ径方向に重なる位置では、タイヤ幅方向に近い方向に延在し、サイドウォール部3やビード部10の位置ではタイヤ径方向に近い方向に延在している。
図3は、ベルト層14に対する線状導電部50のラップ幅Laについての説明図である。線状導電部50は、ベルト層14のペリフェリ方向における幅Lbpと、線状導電部50におけるベルト層14とタイヤ径方向に重なる部分のペリフェリ方向の幅、即ち、ベルト層14に対する線状導電部50ラップ幅Laとの関係が、0.01≦La/Lbp≦1を満たしている。この場合における線状導電部50ラップ幅Laは、線状導電部50におけるベルト層14のタイヤ径方向内側に位置する部分のペリフェリ方向における距離Laになっている。なお、本実施形態1においてペリフェリ方向とは、タイヤ周方向における位置が同じ位置における、空気入りタイヤ1の表面に沿った方向をいう。
また、この場合におけるベルト層14のペリフェリ方向における幅Lbpは、タイヤ幅方向における幅が最も広いベルトプライのタイヤ幅方向における両側の端部144からタイヤ内表面25に向けてそれぞれ垂線Qを引いた際における垂線Qとタイヤ内表面25との交点P間のペリフェリ長さになっている。また、ベルト層14に対する線状導電部50のラップ幅Laは、線状導電部50におけるベルト層14のタイヤ径方向内側に位置する部分のペリフェリ方向における長さになっており、具体的には、線状導電部50における、交点P間に位置する部分のペリフェリ方向における長さになっている。
図4は、図2のA部詳細図である。カーカス内側ゴム層20は、第1層と第2層とが積層されており、線状導電部50は、少なくとも一部が第1層と第2層との間に配置されている。本実施形態1では、カーカス内側ゴム層20の第1層は、タイヤ内表面25を構成するインナーライナ21になっており、第2層は、インナーライナ21に対してカーカス層13が位置する側に配置されるタイゴム22になっている。このうち、インナーライナ21は、空気透過防止層になっており、カーカス層13を覆って配置されることにより、カーカス層13の露出による酸化を抑制し、また、タイヤに充填された空気の洩れを防止する。また、インナーライナ21は、例えば、ブチルゴムを主成分とするゴム組成物、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂中にエラストマー成分をブレンドした熱可塑性エラストマー組成物などから構成される。特に、インナーライナ21が熱可塑性樹脂あるいは熱可塑性エラストマー組成物から成る構成では、インナーライナ21がブチルゴムから成る構成と比較して、インナーライナ21を薄型化できるので、タイヤ重量を大幅に軽減できる。
なお、インナーライナ21の空気透過係数は、一般に、温度30[℃]でJIS K7126-1に準拠して測定した場合に、100×10^-12[cc・cm/cm^2・sec・cmHg]以下であることが好ましく、50×10^-12[cc・cm/cm^2・sec・cmHg]以下であることがより好ましい。また、インナーライナ21の体積抵抗率は、1×10^8[Ω・cm]以上の範囲にあることが好ましく、一般に1×10^9[Ω・cm]以上であることが好ましい。
ブチルゴムを主成分とするゴム組成物としては、例えば、ブチルゴム(IIR)、ブチル系ゴムなどが採用され得る。ブチル系ゴムは、例えば、塩素化ブチルゴム(Cl-IIR)、臭素化ブチルゴム(Br-IIR)などのハロゲン化ブチルゴムであることが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂〔例えばナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体〕、ポリエステル系樹脂〔例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリブチレンテレフタレート/テトラメチレングリコール共重合体、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル〕、ポリニトリル系樹脂〔例えばポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体〕、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂〔例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレンアクリル酸共重合体(EAA)、エチレンメチルアクリレート樹脂(EMA)〕、ポリビニル系樹脂〔例えば酢酸ビニル(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体〕、セルロース系樹脂〔例えば酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース〕、フッ素系樹脂〔例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)〕、イミド系樹脂〔例えば芳香族ポリイミド(PI)〕などが採用され得る。
エラストマーとしては、例えば、ジエン系ゴムおよびその水素添加物〔例えばNR、IR、エポキシ化天然ゴム、SBR、BR(高シスBRおよび低シスBR)、NBR、水素化NBR、水素化SBR〕、オレフィン系ゴム〔例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M-EPM)〕、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニルまたはジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー、含ハロゲンゴム〔例えばBr-IIR、Cl-IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br-IPMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHC、CHR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M-CM)〕、シリコーンゴム〔例えばメチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム〕、含イオウゴム〔例えばポリスルフィドゴム〕、フッ素ゴム〔例えばビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン-プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム〕、熱可塑性エラストマー〔例えばスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー〕などが採用され得る。
また、インナーライナ21とカーカス層13との間に配置されるタイゴム22は、タイヤ製造時に未加硫の空気入りタイヤ1をインフレートする際に、カーカス層13のカーカスコードがインナーライナ21に喰い込むことを抑制するための層である。また、タイゴム22は、製造後の空気入りタイヤ1においては、空気透過防止性や乾燥路面における操縦安定性に寄与する。
ビード部10に配置されるビード部ゴム30は、ビード部10におけるビードコア11のタイヤ幅方向内側からビードコア11のタイヤ径方向内側を通り、ビードコア11のタイヤ幅方向外側に亘って配置されている。カーカス内側ゴム層20は、ビード部10の位置では、ビード部ゴム30が有するチェーファ32におけるビードコア11のタイヤ幅方向内側に位置する部分のタイヤ幅方向外側の位置から、ビードコア11のタイヤ径方向内側の位置にかけて配置されている。即ち、カーカス内側ゴム層20は、チェーファ32に対するビードコア11側の位置において、ビード部10の内周面であるビードベース36のタイヤ幅方向における内側の端部であるビードトゥ35の位置を超えて、ビードベース36側まで延在している。
また、カーカス内側ゴム層20内に配置される線状導電部50は、ビード部10の位置では、ビードトゥ35のタイヤ径方向外側でビードトゥ35の近傍に位置している。このため、カーカス内側ゴム層20と線状導電部50とは、ビード部10の位置ではいずれもビード部ゴム30に対して重なっている。
図5は、図4のB部詳細図である。図6は、図5のC-C断面図である。カーカス層13は、複数のカーカスコード131と、カーカスコード131を被覆するコートゴム132とを有しており、カーカスコード131は、タイヤ周方向に対して80[deg]以上95[deg]以下の範囲内で傾斜している。カーカス内側ゴム層20内に配置される線状導電部50は、カーカス内側ゴム層20が有するインナーライナ21とタイゴム22との間に配置され、カーカス内側ゴム層20に沿って配置されている。また、線状導電部50は、少なくともベルト層14とビード部10の間の領域では、ペリフェリ方向に沿って延びている。即ち、線状導電部50は、ペリフェリ方向に沿って延びている部分では、カーカスコード131に対して略平行になる向きで配置されている。
図7は、空気入りタイヤ1をタイヤ回転軸の方向にみた場合における線状導電部50の配置の形態を示す模式図である。空気入りタイヤ1には、線状導電部50が複数配置されており、複数の線状導電部50は、互いに重なることなく配置されている。線状導電部50は、例えば、図7に示すように、複数の線状導電部50が、タイヤ周方向に所定の間隔をあけつつ、放射状に配置されている。
図8は、線状導電部50単体の説明図である。図8は、線状導電部50の撚り線構造を示している。線状導電部50は、導電線状体51を含む線状構造を有している。かかる線状導電部50は、1×10^8[Ω・cm]未満の体積抵抗率を持つ導電線状体51を1本以上含む複数本の線状体を撚り合わせて成る撚り線構造を有している。なお、線状導電部50は、導電物質から成る単線のコードであっても良い(図示省略)。
導電線状体51は、導電物質を線状に成形して成る線状体である。従って、導電線状体51は、導電性物質から成る単繊維自体、糸自体、或いは、コード自体を意味する。従って、例えば、金属や炭素繊維などから成る単線のコード、ステンレスなどの金属を繊維化して成る金属繊維などが、導電線状体51に該当する。または、導電線状体51は、糸やコードの表面を導電物質でコーティング加工されたものであってもよい。
線状導電部50の撚り線構造(図8参照)としては、例えば、(1)複数本の炭素繊維を撚り合わせて成る構造、(2)1×10^8[Ω・cm]未満の体積抵抗率を持つ導電線状体51と、1×10^8[Ω・cm]以上の体積抵抗率を持つ非導電線状体52とを撚り合わせて成る構造などが挙げられる。線状体の撚り線構造は、特に限定がなく、任意のものを採用できる。
上記(2)における非導電線状体52としては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維などを採用できる。特に、線状導電部50が、金属繊維から成る導電線状体51と、ポリエステル繊維等の有機繊維から成る非導電線状体52とを撚り合わせて成る混紡糸であることが好ましい。
また、線状導電部50の総繊度が、20[dtex]以上1000[dtex]以下の範囲にあることが好ましく、150[dtex]以上350[dtex]以下の範囲にあることがより好ましい。総繊度の下限を上記の範囲とすることにより、タイヤ製造時における線状導電部50の断線が抑制される。また、総繊度の上限を上記の範囲とすることにより、タイヤ転動時における線状導電部50の断線が抑制される。
総繊度は、JIS L1017(化学繊維タイヤコード試験方法 8.3 正量繊度)に準拠して測定される。
また、線状導電部50の伸び率、即ち、線状導電部50の伸度が、1.0[%]以上70.0[%]以下の範囲にあることが好ましい。伸度を1.0[%]以上とすることにより、タイヤ製造時における線状導電部50の断線が抑制される。また、伸度を70.0[%]以下とすることにより、タイヤ転動時における線状導電部50の断線が抑制される。
線状体の伸度は、JIS L1017(化学繊維タイヤコード試験方法 8.5 引張強さ及び伸び率)に準拠して測定される。
また、本実施形態1では、線状導電部50は、ヤーンであり、カーカス層13と隣接部材との間に挟み込まれて配置される。また、線状導電部50は、図8に示すように、1×10^8[Ω・cm]未満の体積抵抗率を持つ導電線状体51と、1×10^8[Ω・cm]以上の体積抵抗率を持つ非導電線状体52とを撚り合わせて成る撚り線構造を有している。
本実施形態1に係る空気入りタイヤ1では、これらのように帯電抑制構造が構成されることにより、リムRからビード部ゴム30、線状導電部50を通りベルト層14に至る経路を、車両から路面へ静電気を放出するための導電経路として用いることができる。
なお、ビード部ゴム30、カーカス層13のコートゴム及びベルト層14のコートゴムは、リムRからベルト層14に至る導電経路となる。このため、これらのゴムの体積抵抗率が低く設定されることが好ましい。これにより、リムRからベルト層14に至る導電効率が向上する。
[作用・効果]
実施形態1に係る空気入りタイヤ1を車両に装着して走行すると、空気入りタイヤ1におけるトレッド部2の表面のうち、下方に位置して路面に対向する部分が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1は、このようにトレッド部2の表面が順次路面に接触することにより、路面との間で摩擦力を発生させることができる。これにより、車両は、空気入りタイヤ1と路面との間の摩擦力によって、駆動力や制動力、旋回力を路面に伝えることができ、これらの駆動力、制動力、旋回力によって走行することができる。
また、車両の走行中には静電気が発生することがあり、このような静電気は、リムRからビード部ゴム30、線状導電部50を通ってベルト層14に流れ、ベルト層14からトレッドゴム15に流れてトレッドゴム15から路面に放出される。これにより、車両に発生した静電気は路面に放出され、静電気による車両の帯電が抑制される。
つまり、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満である線状導電部50は、比較的電気が流れ易くなっているため、空気入りタイヤ1の電気抵抗であるタイヤ電気抵抗を低減させることができる。これにより、線状導電部50が配置された空気入りタイヤ1は、車両の走行中に発生した静電気を、ビード部ゴム30側から線状導電部50を介してベルト層14側に流すことができ、静電気による車両の帯電を抑制することができる。
ここで、車両の走行時には、車両の走行状態に応じて発生する荷重によってトレッド部2やサイドウォール部3等が変形しながら回転する。また、線状導電部50は、カーカス層13に対してタイヤ内腔側に配置されている。このため、トレッド部2やサイドウォール部3が変形をした場合、これらの変形に伴ってカーカス層13が変形をすることにより、カーカス層13が線状導電部50に対して擦れ、線状導電部50が断線をする虞がある。例えば、カーカス層13が変形した際に、カーカス層13が有するカーカスコード131が線状導電部50に対して擦れることによって、線状導電部50が断線をする虞がある。
線状導電部50が断線をすると、リムRからベルト層14に至る導電経路が分断されるため、車両に発生した静電気が路面に放出され難くなるが、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1では、線状導電部50は、少なくとも一部がカーカス内側ゴム層20内に位置している。このため、線状導電部50は、トレッド部2やサイドウォール部3が変形をした場合でも、カーカス層13は線状導電部50に対して擦れ難くなるため、ビード部ゴム30とベルト層14との間の電気経路を、空気入りタイヤ1で長距離を走行した後においても線状導電部50によって確保することができる。これにより、空気入りタイヤ1で長距離を走行した際に、線状導電部50が断線することに起因してタイヤ電気抵抗が高くなることを抑制することができる。この結果、走行後のタイヤ電気抵抗を維持することができる。
なお、少なくとも一部がカーカス内側ゴム層20内に位置する線状導電部50は、タイヤ内腔側に露出することなく配置されるのが好ましい。即ち、線状導電部50がカーカス内側ゴム層20内からタイヤ内腔側に露出している場合、インフレートされている空気が線状導電部50を伝わってタイヤ内腔側からカーカス層13側に抜け易くなり、空気の漏れが発生し易くなる虞がある。この場合、空気圧が低下するため、走行時のタイヤ変形量が大きくなり、カーカス内側ゴム層20と線状導電部50とが擦れることにより線状導電部50が破断し易くなる。線状導電部50が破断すると、線状導電部50によって電気経路が確保できなくなり、タイヤ電気抵抗が増加してしまうため、線状導電部50は、タイヤ内腔側に露出することなく配置されるのが好ましい。
また、線状導電部50は、ベルト層14のペリフェリ方向における幅Lbpと、ベルト層14に対する線状導電部50ラップ幅Laとの関係が、0.01≦La/Lbp≦1を満たしているため、ビード部ゴム30とベルト層14との間の電気経路を線状導電部50によってより確実に確保することができる。つまり、ベルト層14の幅Lbpと、ベルト層14に対する線状導電部50ラップ幅Laとの関係が、La/Lbp<0.01である場合は、ベルト層14に対する線状導電部50ラップ幅Laが小さ過ぎるため、線状導電部50とベルト層14との間での十分な導電性を確保するのが困難になる虞がある。この場合、線状導電部50を設けても、ビード部ゴム30とベルト層14との間の電気経路を確保し難くなり、タイヤ電気抵抗を効果的に低減し難くなる虞がある。
これに対し、ベルト層14の幅Lbpと、ベルト層14に対する線状導電部50ラップ幅Laとの関係が、0.01≦La/Lbp≦1を満たしている場合は、線状導電部50とベルト層14との間で十分な導電性を確保することができ、ビード部ゴム30とベルト層14との間の電気経路を線状導電部50によって確保することができる。この結果、線状導電部50によってより確実にタイヤ電気抵抗を低減することができる。
また、ビード部ゴム30は、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満であり、線状導電部50は、ビード部ゴム30と重なる部分を有して配置されている。これにより、線状導電部50とビード部ゴム30との間で十分な導電性を確保することができ、リムRからビード部ゴム30を経由して線状導電部50に導電経路をつなげることができるため、より効果的に電気を流し易くすることができる。この結果、空気入りタイヤ1の新品時のタイヤ電気抵抗を低減することができる。
また、線状導電部50は、少なくともベルト層14とビード部10の間の領域では、ペリフェリ方向に沿って延びるため、走行時におけるサイドウォール部3の変形が、線状導電部50に対してせん断力となって作用することを抑制することができる。これにより、走行時に線状導電部50に対してせん断力が作用することによって線状導電部50が破断することを抑制することができ、ビード部ゴム30とベルト層14との間の電気経路を、走行後においても線状導電部50によってより確実に確保することができる。この結果、走行後のタイヤ電気抵抗をより確実に維持することができる。
また、カーカス内側ゴム層20は、第1層であるインナーライナ21と、第2層であるタイゴム22とが積層され、線状導電部50は、少なくとも一部がインナーライナ21とタイゴム22との間に配置されるため、トレッド部2やサイドウォール部3が変形をした際に、線状導電部50がカーカスコード131により擦られることをより確実に抑制することができる。これにより、ビード部ゴム30とベルト層14との間の電気経路を、走行後においても線状導電部50によってより確実に確保することができる。この結果、走行後のタイヤ電気抵抗をより確実に維持することができる。
また、線状導電部50は、1×10^8[Ω・cm]未満の体積抵抗率を持つ導電線状体51を1本以上含む複数本の線状体を撚り合わせて成るため、所望の電気抵抗率を確保しつつ、線状導電部50の強度を確保することができる。即ち、線状導電部50を複数本の線状体の撚り線構造とすることにより、線状導電部50が単線である構成と比較して、繰り返し疲労や伸びに対する強度を向上させることができる。この結果、タイヤ電気抵抗を低減すると共に、より確実に線状導電部50の耐久性を向上させることができる。
また、線状導電部50は、導電線状体51と1×10^8[Ω・cm]以上の体積抵抗率を持つ非導電線状体52とを撚り合わせて成るため、所望の電気抵抗率を確保しつつ、線状導電部50の弱点を非導電線状体52によって補うことができる。この結果、線状導電部50の強度や耐熱性、寸法安定性を適正に確保することができ、より確実に線状導電部50の耐久性を向上させることができる。
また、線状導電部50は、導電線状体51を金属繊維にし、非導電線状体52を有機繊維にすることにより、線状導電部50の強度や耐熱性、寸法安定性を、より確実に適正に確保することができる。この結果、より確実に線状導電部50の耐久性を向上させることができる。
また、線状導電部50は、導電線状体51を、複数本の炭素繊維を撚り合わせて形成することにより、所望の電気抵抗率を確保しつつ、線状導電部50の強度を確保することができる。この結果、タイヤ電気抵抗を低減すると共に、より確実に線状導電部50の耐久性を向上させることができる。
また、線状導電部50は、導電線状体51を、炭素繊維から成る単線のコードで形成することにより、容易に所望の電気抵抗率を確保することができる。この結果、より容易にタイヤ電気抵抗の低減を図ることができる。
また、線状導電部50は、総繊度が20[dtex]以上1000[dtex]以下であるため、線状導電部50の総繊度を適正化することができる。つまり、線状導電部50の総繊度が20[dtex]以上であることにより、タイヤ製造時における線状導電部50の断線を抑制することができる。また、線状導電部50の総繊度が1000[dtex]以下であることにより、タイヤ転動時における線状導電部50の断線を抑制することができる。
また、線状導電部50は、伸び率が1.0[%]以上70.0[%]以下であるため、線状導電部50の伸び率を適正化することができる。つまり、線状導電部50の伸び率が1.0[%]以上であることにより、タイヤ製造時における線状導電部50の断線を抑制することができる。また、伸び率が70.0[%]以下であることにより、タイヤ転動時における線状導電部50の断線を抑制することができる。
[実施形態2]
実施形態2に係る空気入りタイヤ1は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1と略同様の構成であるが、線状導電部50がタイゴム22に縫い込まれる点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
図9は、実施形態2に係る空気入りタイヤ1における線状導電部50の配置形態を示す要部断面図である。なお、図9は、線状導電部50が配置している位置をタイヤ周方向に見た場合における詳細断面図になっており、例えば、実施形態1における図4のB部に相当する位置の断面詳細図である。実施形態2に係る空気入りタイヤ1は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1と同様に、少なくともビード部10からベルト層14まで連続して延在する線状導電部50がカーカス内側ゴム層20内に配置されている。また、実施形態2では、実施形態1とは異なり、線状導電部50は、カーカス内側ゴム層20が有するタイゴム22に縫い込まれている。
具体的には、線状導電部50は、ペリフェリ方向に延びつつ、タイゴム22の厚み方向におけるカーカス層13側の面とインナーライナ21側の面との間で繰り返し往復することにより、タイゴム22に縫い込まれている。即ち、線状導電部50は、タイゴム22の厚み方向におけるカーカス層13側とインナーライナ21側とのそれぞれのタイゴム22の表面では、タイゴム22から露出している。
また、線状導電部50は、少なくともビード部10よりもタイヤ径方向外側の領域では、カーカス内側ゴム層20の厚さtと、線状導電部50においてタイヤ内表面25からの距離が最も小さくなる部分でのタイヤ内表面25からの距離t1との関係が、0.2≦t1/t≦0.8を満たしている。本実施形態2では、線状導電部50は、タイゴム22におけるインナーライナ21側の表面で露出しているため、線状導電部50におけるタイヤ内表面25からの距離t1は、実質的にインナーライナ21の厚さと同程度の大きさになっている。
図10は、図9のD-D断面図である。なお、図10では、線状導電部50におけるタイゴム22の表面22aに露出する部分は実線で示し、線状導電部50におけるタイゴム22の表面22aに露出していない部分は、破線によって示している。タイゴム22の表面22aに露出する線状導電部50は、タイゴム22の表面22aでの露出長さLeが1mm以上30mm以下の範囲内になっている。このように、カーカス内側ゴム層20に配置される線状導電部50は、タイゴム22の表面22aに1mm以上30mm以下の長さLeで露出しつつ、タイゴム22に縫い込まれている。
実施形態2では、線状導電部50は、タイゴム22に縫い込まれるため、空気入りタイヤ1を装着した車両が走行することによる空気入りタイヤ1の変形時におけるタイゴム22の動きを、線状導電部50によって抑制することができる。これにより、線状導電部50が配置されるカーカス内側ゴム層20が、空気入りタイヤ1の変形に伴って変形をする場合でも、線状導電部50とタイゴム22とが擦れることを極力抑制することができる。従って、線状導電部50とタイゴム22とが擦れることに起因する線状導電部50の破断を抑制することができ、ビード部ゴム30とベルト層14との間の電気経路を、走行後においても線状導電部50により確保することができる。この結果、走行後のタイヤ電気抵抗をより確実に維持することができる。
また、線状導電部50は、カーカス内側ゴム層20の厚さtと、線状導電部50におけるタイヤ内表面25からの距離t1との関係が、0.2≦t1/t≦0.8を満たすため、ビード部ゴム30とベルト層14との間の電気経路を、走行後においてもより確実に確保することができる。つまり、カーカス内側ゴム層20の厚さtと、線状導電部50におけるタイヤ内表面25からの距離t1との関係が、t1/t<0.2である場合、線状導電部50がタイヤ内表面25に近過ぎるため、線状導電部50とタイヤ内表面25との間のゴムが薄い場所から、タイヤ内腔側の空気がカーカス層13側に抜け易くなる虞がある。この場合、空気入りタイヤ1の空気圧が低下することによって走行時のタイヤ変形量が大きくなり、カーカス内側ゴム層20と線状導電部50とが擦れることにより線状導電部50が破断し易くなるため、線状導電部50による電気経路を確保し難くなる虞がある。また、カーカス内側ゴム層20の厚さtと、線状導電部50におけるタイヤ内表面25からの距離t1との関係が、t1/t>0.8である場合、線状導電部50とカーカスコード131との距離が近過ぎるため、走行時のタイヤ変形に伴うカーカスコード131の変形により、線状導電部50がカーカスコード131に擦られ易くなる虞がある。この場合、線状導電部50が破断し易くなるため、線状導電部50による電気経路を確保し難くなる虞がある。
これに対し、カーカス内側ゴム層20の厚さtと、線状導電部50におけるタイヤ内表面25からの距離t1との関係が、0.2≦t1/t≦0.8を満たす場合は、線状導電部50がカーカスコード131に擦られ易くなることを抑制すると共に、タイヤ内腔側の空気が抜けることによるタイヤ変形量の増加に起因してカーカス内側ゴム層20と線状導電部50とが擦れ易くなることを抑制できる。これにより、線状導電部50の破断を抑制することができ、ビード部ゴム30とベルト層14との間の電気経路を、走行後においても線状導電部50によってより確実に確保することができる。この結果、走行後のタイヤ電気抵抗をより確実に維持することができる。
また、線状導電部50は、タイゴム22の表面22aに1mm以上30mm以下の長さで露出しつつタイゴム22に縫い込まれるため、線状導電部50による電気経路を、走行後においてもより確実に確保することができる。つまり、線状導電部50におけるタイゴム22の表面22aに露出する長さLeが1mmより短い場合は、線状導電部50の縫い付けの間隔が短過ぎるため、線状導電部50をタイゴム22に縫い付けるのが困難になる虞がある。また、線状導電部50におけるタイゴム22の表面22aに露出する長さLeが30mmより長い場合は、線状導電部50の縫い付けの間隔が長過ぎるため、線状導電部50をタイゴム22に縫い付けても、タイゴム22の動きを効果的に抑制し難くなる虞がある。この場合、タイヤ変形時に線状導電部50とタイゴム22とが擦れることを抑制し難くなり、線状導電部50とタイゴム22とが擦れることに起因する線状導電部50の破断を抑制し難くなる虞がある。また、線状導電部50におけるタイゴム22の表面22aに露出する長さLeが30mmより長い場合は、線状導電部50の縫い付けの間隔が長過ぎるため、線状導電部50におけるタイゴム22の表面22aに露出している部分と、カーカスコード131とが擦れて、線状導電部50が破断し易くなる虞がある。
これに対し、線状導電部50におけるタイゴム22の表面22aに露出する長さLeを1mm以上30mm以下にして線状導電部50をタイゴム22に縫い付ける場合は、タイゴム22への線状導電部50の縫い付けを容易にすると共に、線状導電部50によってタイゴム22の動きを効果的に抑制することができ、線状導電部50とカーカスコード131とが擦れることも抑制できる。従って、走行時にタイゴム22が動いて線状導電部50とタイゴム22とが擦れることにより線状導電部50が破断することや、線状導電部50とカーカスコード131とが擦れて線状導電部50が破断することを抑制でき、ビード部ゴム30とベルト層14との間の電気経路を、走行後においても線状導電部50によってより確実に確保することができる。この結果、走行後のタイヤ電気抵抗をより確実に維持することができる。
[変形例]
なお、上述した実施形態1では、カーカス内側ゴム層20と線状導電部50は、ビード部10の位置では、ビード部ゴム30とビードコア11との間に配置されているが、カーカス内側ゴム層20と線状導電部50は、ビード部10の位置では、これ以外の位置に配置されていてもよい。
図11は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、カーカス内側ゴム層20と線状導電部50がビード部ゴム30のタイヤ幅方向内側に位置する状態を示す説明図である。カーカス内側ゴム層20は、例えば、図11に示すように、ビード部10の位置ではビード部ゴム30のタイヤ幅方向内側に位置していてもよい。図11に示す変形例では、カーカス内側ゴム層20は、タイヤ径方向内側の端部がビードトゥ35の近傍に位置している。このため、カーカス内側ゴム層20に配置される線状導電部50も、ビード部10の位置では、ビードトゥ35のタイヤ径方向外側でビードトゥ35の近傍に位置している。これにより、線状導電部50とカーカス内側ゴム層20とは、ビード部10の位置ではいずれもビード部ゴム30に対して重なっている。
図12は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、線状導電部50がビードベース36側にも配置される状態を示す説明図である。また、カーカス内側ゴム層20に配置される線状導電部50は、図12示すように、ビード部10に配置されるチェーファ32に対するビードコア11側の位置において、タイヤ内表面25側からビード部10のビードトゥ35を超えて、ビードベース36まで延在していてもよい。即ち、図12に示す変形例では、上述した実施形態1と同様に、ビード部10の位置では、カーカス内側ゴム層20は、ビード部ゴム30が有するチェーファ32におけるビードコア11のタイヤ幅方向内側に位置する部分のタイヤ幅方向外側の位置から、ビードコア11のタイヤ径方向内側の位置にかけて配置されている。
また、図12に示す変形例では、線状導電部50もカーカス内側ゴム層20と同様に、ビード部ゴム30が有するチェーファ32におけるビードコア11のタイヤ幅方向内側に位置する部分のタイヤ幅方向外側の位置から、ビードコア11のタイヤ径方向内側の位置にかけて配置されている。これにより、図12に示す変形例では、カーカス内側ゴム層20線状導電部50とはいずれも、チェーファ32に対するビードコア11側の位置において、ビードトゥ35の位置を超えてビードベース36側まで延在し、ビード部ゴム30に対して重なっている。
なお、上述した実施形態1では、ビード部ゴム30は、リムクッションゴム31とチェーファ32とを有しているが、ビード部ゴム30は、これらの他に、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満の部材を有していてもよい。図13は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、ビード部ゴム30に導電ゴム33が配置される状態を示す説明図である。ビード部ゴム30は、例えば、図13に示すように、チェーファ32に、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満のゴム部材である導電ゴム33が配置されていてもよい。図13に示す導電ゴム33は、チェーファ32のビードベース36を形成する部分における、タイヤ径方向における内側から外側にかけて連通して配置されている。これにより、空気入りタイヤ1をリム組みした際には、導電ゴム33はリムRに接触することが可能になっている。このように、ビード部ゴム30に、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満の導電ゴム33が配置される場合、リムクッションゴム31とチェーファ32とは、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満でなくてもよい。
このように、チェーファ32に導電ゴム33が配置される場合、カーカス内側ゴム層20線状導電部50とは、図12に示す変形例と同様に、チェーファ32に対するビードコア11側の位置において、ビードトゥ35の位置を超えてビードベース36側まで延在して配置される。これにより、線状導電部50は、ビード部ゴム30において体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満となる導電ゴム33に対して重なって配置されており、リムRと線状導電部50との間の導電性を、導電ゴム33によって確保することができる。従って、リムRから導電ゴム33を経由して、線状導電部50に導電経路をつなげることができるため、より効果的に電気を流し易くすることができ、空気入りタイヤ1の新品時のタイヤ電気抵抗を低減することができる。
また、上述した実施形態1では、線状導電部50は、ビード部ゴム30と重なって配置されているのみであるが、線状導電部50は、ビード部ゴム30と接触していてもよい。図14は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、線状導電部50がビード部ゴム30のチェーファ32に接触する状態を示す説明図である。線状導電部50は、例えば、図12に示す変形例と同様に、チェーファ32に対するビードコア11側の位置において、タイヤ内表面25側からビード部10のビードトゥ35を超えて少なくともビードベース36まで延在し、さらに、図14に示すように、ビードトゥ35よりもビードベース36側の位置でビード部ゴム30に接触してもよい。即ち、線状導電部50は、ビード部ゴム30に接触する接触部50aを有していてもよい。具体的には、図14に示す変形例では、カーカス内側ゴム層20内に配置される線状導電部50は、チェーファ32におけるビードベース36を形成する部分に対して重なる位置で、カーカス内側ゴム層20内から出て、ビード部ゴム30が有するチェーファ32に接触することにより、接触部50aを有している。
図15は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、線状導電部50がビード部ゴム30のチェーファ32に接触する状態を示す説明図である。線状導電部50は、または、図15に示すように、カーカス内側ゴム層20における、チェーファ32におけるビードベース36を形成する部分に対して重なる位置で、カーカス内側ゴム層20内における位置が部分的にチェーファ32側に寄って配置されることにより、ビード部ゴム30に接触する接触部50aが形成されていてもよい。
線状導電部50は、これらのように、ビード部ゴム30に接触する接触部50aを有することにより、線状導電部50とビード部ゴム30との間で導電経路を確保することができるため、リムRからビード部ゴム30を経由し、線状導電部50にかけた導電経路を確保することができる。これにより、より効果的に電気を通すことができ、新品時のタイヤ電気抵抗をより下げることができる。また、線状導電部50は、ビードトゥ35を越えて、ビードベース36に延びる領域で、ビード部ゴム30に接触する接触部50aを設けるため、エア漏れを起こす可能性を抑えつつ、線状導電部50をビード部ゴム30に接触させることができる。この結果、走行後のタイヤ電気抵抗をより確実に維持することができる。
また、上述した実施形態1では、線状導電部50は、ペリフェリ方向に沿った方向に延在しているが、線状導電部50は、ペリフェリ方向以外の方向に延びていてもよい。図16は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、線状導電部50がペリフェリ方向に対して傾斜する部分を有する状態を示す説明図である。線状導電部50におけるベルト層14のタイヤ径方向内側に位置する部分と、ビード部10に位置する部分とは、それぞれペリフェリ方向に対してタイヤ周方向に30°以下の傾斜角θで傾斜する部分を有していてもよい。つまり、線状導電部50は、ベルト層14におけるタイヤ径方向内側とビード部10との間に位置する部分では、略ペリフェリ方向に沿って延在し、ベルト層14のタイヤ径方向内側に位置する部分とビード部10に位置する部分とは、それぞれペリフェリ方向に対してタイヤ周方向に傾斜する部分を有していてもよい。
例えば、線状導電部50は、図16に示すように、ベルト層14のタイヤ径方向内側の位置と、ビード部10の位置とで、それぞれペリフェリ方向に延びつつ、タイヤ周方向に湾曲する波状に形成されていてもよい。その際に、波状に形成される線状導電部50は、ペリフェリ方向に対するタイヤ周方向への傾斜角θが、30°以下であるのが好ましい。これにより、空気入りタイヤ1の新品時のタイヤ電気抵抗を低減することができる。
つまり、空気入りタイヤ1におけるベルト層14が配置される部分と、ビード部10とは、いずれも走行時におけるタイヤ変形が小さくなっており、走行時においても、線状導電部50は他の部材と擦れ難くなっている。このため、ベルト層14のタイヤ径方向内側の位置と、ビード部10の位置とでは、線状導電部50をペリフェリ方向に延在させつつ、タイヤ周方向に傾斜させることにより、線状導電部50と他の部材とが擦れることによる線状導電部50の破断を抑制しつつ、線状導電部50と、ベルト層14やビード部ゴム30とが重なる長さを長くすることができる。この結果、耐久性を確保しつつ、空気入りタイヤ1の新品時のタイヤ電気抵抗を低減することができる。
また、上述した実施形態2では、線状導電部50は、ペリフェリ方向に延びつつ、タイゴム22に縫い込まれているが、線状導電部50は、ペリフェリ方向に対して傾斜しながら、タイゴム22に縫い込まれていてもよい。図17は、実施形態2に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、線状導電部50がタイヤ周方向に傾斜しながらタイゴム22に縫い込まれる状態を示す説明図である。なお、図17は、カーカス内側ゴム層20を、タイゴム22側の表面22aから見た状態、即ち、図9のD-D断面と同じ方向に見た状態を示す説明図になっている。線状導電部50は、ペリフェリ方向に対して繰り替えしタイヤ周方向に傾斜しながら、カーカス内側ゴム層20のタイゴム22に縫い込まれることにより、図17に示すように、線状導電部50におけるタイゴム22の表面22aに露出する部分が、タイヤ周方向に対して傾斜していてもよい。
即ち、線状導電部50は、ペリフェリ方向に対してタイヤ周方向に振幅しながらタイゴム22に縫い込まれることにより、タイゴム22の表面22aに露出する部分が、図17の例1に示すように、ペリフェリ方向とタイヤ周方向との双方に対して傾斜していてもよい。または、線状導電部50は、ペリフェリ方向に対してタイヤ周方向に振幅しながらタイゴム22に縫い込まれることにより、タイゴム22の表面22aに露出する部分が、図17の例2に示すように、ペリフェリ方向に対して約90°傾斜し、タイヤ周方向に延びていてもよい。線状導電部50をカーカス内側ゴム層20のタイゴム22に縫い込む際には、タイゴム22の表面22aに露出する部分の角度に関わらず、タイゴム22の表面22aに1mm以上30mm以下の長さLeで露出して縫い込むのが好ましい。
また、上述した実施形態2では、線状導電部50は、ペリフェリ方向に延びつつ、タイゴム22の厚み方向における両面間で繰り返し往復することにより、タイゴム22に縫い込まれているが、線状導電部50は、これ以外の形態でタイゴム22に縫い込んでもよい。図18は、実施形態2に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、線状導電部50がタイゴム22に編み込まれる状態を示す説明図である。線状導電部50は、例えば、図18に示すように、ペリフェリ方向に延びつつ、タイゴム22の厚み方向における両面間で繰り返し往復し、且つ、ペリフェリ方向にも繰り返し往復することにより、線状導電部50同士が掛かり合い、タイゴム22に編み込まれてもよい。線状導電部50は、タイゴム22に編み込まれることにより、空気入りタイヤ1を装着した車両が走行することによる空気入りタイヤ1の変形時におけるタイゴム22の動きを、線状導電部50によってより確実に抑制することができる。
また、線状導電部50は、他の部材も用いてタイゴム22に縫い込んでもよい。図19は、実施形態2に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、線状非導電部55も用いて線状導電部50がタイゴム22に縫い込まれる状態を示す説明図である。なお、図19では、線状導電部50と線状非導電部55とを区別するために、線状非導電部55は破線によって示している。線状導電部50は、例えば、図19に示すように、線状非導電部55も用いて、タイゴム22に縫い込んでもよい。この場合における線状非導電部55は、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]以上となる線状の部材になっている。図19に示す変形例では、線状導電部50は、タイゴム22におけるインナーライナ21側の面側から縫い込まれ、線状非導電部55は、タイゴム22におけるカーカス層13側の面側から縫い込まれ、タイゴム22内で線状導電部50と線状非導電部55とが掛かり合うことにより、線状導電部50は、タイゴム22に縫い込まれている。
線状導電部50を、タイゴム22におけるカーカス層13側の面側から縫い込む線状非導電部55と掛かり合わせることによってタイゴム22に縫い込むことにより、線状導電部50とカーカスコード131との距離を大きくしつつ、線状導電部50をタイゴム22に縫い込むことができる。これにより、空気入りタイヤ1の変形時におけるタイゴム22の動きを線状導電部50によって抑制することにより、線状導電部50とタイゴム22とが擦れることを抑制しつつ、線状導電部50がカーカスコード131に擦れることを抑制することができる。従って、空気入りタイヤ1の変形時に、線状導電部50がタイゴム22と擦れたり、カーカスコード131と擦れたりすることに起因する線状導電部50の破断を抑制することができ、ビード部ゴム30とベルト層14との間の電気経路を、走行後においても線状導電部50により確保することができる。この結果、走行後のタイヤ電気抵抗をより確実に維持することができる。
また、上述した実施形態1では、線状導電部50は、タイヤ内表面25に露出することなく、カーカス内側ゴム層20の内部に配置されているが、線状導電部50は、一部がタイヤ内表面25に露出していてもよい。線状導電部50は、線状導電部50の延在方向における長さの60%以上が、タイヤ内表面25に露出することなくカーカス内側ゴム層20内に配置されるのが好ましい。
また、上述した実施形態1では、線状導電部50が配置されるカーカス内側ゴム層20は、インナーライナ21とタイゴム22とが積層されることにより形成されているが、カーカス内側ゴム層20は、インナーライナ21とタイゴム22以外が用いられていてもよい。図20は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、カーカス内側ゴム層20がカバーゴム層23を有する場合の説明図である。図21は、図20のE-E矢視図である。カーカス内側ゴム層20は、例えば、図20、図21に示すように、インナーライナ21とタイゴム22の他に、カバーゴム層23を有していてもよい。この場合、線状導電部50は、インナーライナ21におけるタイヤ内腔側の面、即ち、インナーライナ21におけるタイゴム22側の面の反対側の面に配置され、カバーゴム層23は、タイヤ内腔側から線状導電部50を覆って配置される。カーカス内側ゴム層20を構成する部材であり、線状導電部50を覆って配置されるカバーゴム層23は、ゴム材料からなる帯状の部材になっている。
帯状のカバーゴム層23は、線状導電部50に沿って略ペリフェリ方向に延在し、インナーライナ21に配置される線状導電部50の長さ方向における全域に亘って、線状導電部50を覆っている。換言すると、図20、図21に示す変形例では、カーカス内側ゴム層20は、カバーゴム層23が第1層になり、インナーライナ21が第2層になり、線状導電部50は、第1層であるカバーゴム層23と、第2層であるインナーライナ21との間に配置される。これにより、線状導電部50は、カーカス内側ゴム層20内に位置して配置されている。
線状導電部50は、これらのように、カーカス内側ゴム層20内に配置されることにより、空気入りタイヤ1の変形時に、カーカス層13に対して擦れ難くなるため、線状導電部50の破断を抑制することができる。従って、ビード部ゴム30とベルト層14との間の電気経路を、空気入りタイヤ1で長距離を走行した後においても線状導電部50によって確保することができ、走行後のタイヤ電気抵抗を維持することができる。
また、上述した実施形態1では、線状導電部50は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの片側に配置されているが、線状導電部50は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に配置されていてもよい。図22は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、線状導電部50がタイヤ幅方向における両側に亘って配置される状態を示す説明図である。線状導電部50は、例えば、図22に示すように、タイヤ幅方向における両側に亘って配置されていてもよい。即ち、線状導電部50は、タイヤ幅方向における両側に位置するビード部10のうち、一方のビード部10側から他方のビード部10側にかけて、連続して配置されていてもよい。
図23は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、線状導電部50がタイヤ幅方向における両側に配置される状態を示す説明図である。また、線状導電部50は、図23に示すように、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側の領域でそれぞれ、互いに独立した線状導電部50がビード部10の位置からベルト層14の位置にかけて延在して配置されていてもよい。この場合、ベルト層14に対する線状導電部50ラップ幅La(図3参照)は、タイヤ幅方向における両側に配置される線状導電部50同士で同じ大きさであってもよく、互いに異なる大きさであってもよい。
また、上述した実施形態1では、車両走行時に車両に発生する静電気を路面に放出するための帯電抑制構造として、線状導電部50が用いられているが、帯電抑制構造には、線状導電部50の他の部材も用いられていていてもよい。図24は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、アーストレッド60が配置される状態を示す説明図である。車両に発生する静電気を路面に放出するための帯電抑制構造には、例えば、図24に示すように、アーストレッド60が用いられていてもよい。この場合におけるアーストレッド60は、トレッドゴム15に埋設されてタイヤ接地面に露出する導電ゴムである。線状導電部50とアーストレッド60とを有する帯電抑制構造では、線状導電部50によってベルト層14に流された車両からの静電気が、ベルト層14からアーストレッド60を介して路面に放出されて、車両の帯電が抑制される。
詳しくは、アーストレッド60は、トレッドゴム15の踏面に露出し、キャップトレッド151及びアンダートレッド152を貫通してベルト層14に導電可能に接触する。即ち、アーストレッド60は、少なくともキャップトレッド151を貫通してタイヤ接地面に露出する。図24に示す変形例では、アーストレッド60は、キャップトレッド151及びアンダートレッド152を貫通し、タイヤ径方向における内側の端部がベルトカバー143に導電可能に接触している。これにより、ベルト層14から路面への導電経路が確保される。
また、アーストレッド60は、タイヤ全周に渡って延在する環状構造を有し、その一部をトレッド踏面に露出させつつタイヤ周方向に連続的に延在している。従って、空気入りタイヤ1の転動時にて、アーストレッド60が常に路面に接触することにより、ベルト層14から路面への導電経路が常に確保される。図24に示す変形例では、アーストレッド60のタイヤ幅方向における幅は、トレッド部2にタイヤ周方向に延びて形成される周方向主溝6の溝幅よりも狭くなっており、タイヤ幅方向に隣り合う周方向主溝6同士の間に形成されている。
また、アーストレッド60は、トレッドゴム15よりも低い体積抵抗率を有する導電性ゴム材料から成る。具体的には、アーストレッド60の体積抵抗率が、1×10^8[Ω・cm]未満であることが好ましく、1×10^6[Ω・cm]以下であることがより好ましい。
これらのように、線状導電部50の他にアーストレッド60も用いて帯電抑制構造を構成することにより、リムRからビード部ゴム30、線状導電部50及びベルト層14を通りアーストレッド60に至る経路を、車両から路面へ静電気を放出するための導電経路として用いることができる。つまり、アーストレッド60は、1×10^8[Ω・cm]未満の体積抵抗率を有すると共に、少なくともキャップトレッド151を貫通してタイヤ接地面に露出するため、ベルト層14側から路面への導電経路を、アーストレッド60によって確保することができる。これにより、線状導電部50から路面への導電経路を確保することができ、リムRからアーストレッド60に至る導電経路を、より確実に確保することができる。従って、リムRと路面との間の電気抵抗を、より確実に下げることができ、車両に発生した静電気をより確実に路面に放出することができる。この結果、より確実に帯電抑制性能を確保することができる。
また、アーストレッド60を設けることにより、空気入りタイヤ1の転がり抵抗を低減して低燃費性能を向上させることを目的としてキャップトレッド151、アンダートレッド152、サイドウォールゴム16などを構成するゴムコンパウンドのシリカ含有量を増加させた場合における帯電抑制性能の低下を抑制することができる。つまり、シリカは絶縁特性が高いため、キャップトレッド151のシリカ含有量が増加すると、キャップトレッド151の体積抵抗値が増加して帯電抑制性能が低下するが、アーストレッド60を設けることにより、ベルト層14と路面との導電経路が確保することができる。この結果、転がり抵抗を低減する場合における帯電抑制性能を確保することができる。
また、上述した実施形態1では、カーカス内側ゴム層20は、インナーライナ21とタイゴム22とがペリフェリ方向における同じ範囲に亘って配置されているが、カーカス内側ゴム層20は、インナーライナ21とタイゴム22とで、配置される範囲が異なっていてもよい。例えば、タイゴム22は、インナーライナ21が配置される範囲の一部の範囲に配置されていてもよい。この場合、タイゴム22は、カーカス内側ゴム層20における、空気入りタイヤ1の変形時の変形が大きい部分に配置され、線状導電部50は、カーカス内側ゴム層20におけるタイゴム22が配置される部分で、インナーライナ21とタイゴム22との間に配置されたり、タイゴム22に縫い込まれたりするのが好ましい。このように、カーカス内側ゴム層20における変形が大きい部分にタイゴム22が配置され、線状導電部50がカーカス内側ゴム層20内に配置されることにより、カーカスコード131と線状導電部50とが擦れることを抑制でき、線状導電部50の破断を抑制することができる。
また、上述したような、線状導電部50がカーカス内側ゴム層20内に配置される空気入りタイヤ1の製造方法は、実施形態1のように、カーカス内側ゴム層20を構成する複数のゴム層同士の間に線状導電部50が配置された部材を用いて製造を行ってもよく、実施形態2のように、カーカス内側ゴム層20を構成する複数のゴム層のいずれかのゴム層に線状導電部50が縫い付けられた部材を用いて製造を行ってもよい。または、図20、図21に示す変形例のように、タイヤ成形後にカーカス内側ゴム層20におけるタイヤ内表面25に接着剤等を用いて線状導電部50を貼り付け、カバーゴム層23を、線状導電部50を覆ってタイヤ内表面25に貼り付けることにより製造を行ってもよい。少なくとも線状導電部50の一部がカーカス内側ゴム層20内に配置されれば、空気入りタイヤ1の製造方法は問わない。
[実施例]
図25A、図25Bは、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、空気入りタイヤ1の新品時と走行後のそれぞれの電気抵抗についての試験を行った。
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが195/65R15 91Hサイズの空気入りタイヤを、試験タイヤとして用いて行った。新品時の電気抵抗についての評価試験は、JATMA規定の測定条件に基づき、株式会社アドバンテスト製のR8340A ウルトラ・ハイ・レジスタンスメータを使用して、試験タイヤの電気抵抗[Ω]を測定した。
また、走行後の電気抵抗についての評価試験は、ドラム径1707[mm]の室内ドラム式タイヤ転動抵抗試験機が用いられ、試験タイヤをJATMA規定の適用リムに組み付け、試験タイヤに空気圧200[kPa]およびJATMA規定の最大荷重の80%を付与し、速度81[km/h]にて60分間の走行後に、JATMA規定の測定条件に基づき、(株)アドバンテスト製のR8340A ウルトラ・ハイ・レジスタンスメータを使用して、試験タイヤの電気抵抗[Ω]を測定した。新品時と走行後のタイヤ電気抵抗は、測定した数値が小さい程、電気抵抗が低く、タイヤ電気抵抗についての性能が優れていることを示している。
性能評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1~13との14種類の空気入りタイヤについて行った。このうち、従来例の空気入りタイヤは、線状導電部が、カーカスの表面に配置されている。
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1~13は、線状導電部は全てカーカス内側ゴム層内に配置されている。さらに、実施例1~13に係る空気入りタイヤ1は、ベルト層14のペリフェリ方向における幅Lbpとベルト層14に対する線状導電部50のラップ幅Laとの関係(La/Lbp)や、カーカス内側ゴム層20の厚さtとタイヤ内表面25からの線状導電部50の距離t1との関係(t1/t)、線状導電部50の接触部50aの有無、線状導電部50の角度、タイゴム22への線状導電部50の縫い込みの有無、タイゴム22の表面22aへの線状導電部50の露出長さ、線状導電部50の総繊度、線状導電部50の伸び率が、それぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤ1を用いて評価試験を行った結果、図25A、図25Bに示すように、実施例1~13に係る空気入りタイヤ1は、従来例と比較して、走行後のタイヤ電気抵抗を低下させることができること分かった。このため、実施例1~13に係る空気入りタイヤ1は、従来例と比較して、走行後のタイヤ電気抵抗を新品時のタイヤ電気抵抗に対して大幅に増加しないようにすることができ、新品時と走行後との間で、タイヤ電気抵抗が大幅に変化しないようにすることができることが分かった。つまり、実施例1~13に係る空気入りタイヤ1は、走行後のタイヤ電気抵抗を維持することができる。
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
6 周方向主溝
10 ビード部
11 ビードコア
12 ビードフィラー
13 カーカス層
131 カーカスコード
132 コートゴム
14 ベルト層
15 トレッドゴム
151 キャップトレッド
152 アンダートレッド
16 サイドウォールゴム
20 カーカス内側ゴム層
21 インナーライナ
22 タイゴム
22a 表面
23 カバーゴム層
25 タイヤ内表面
30 ビード部ゴム
31 リムクッションゴム
32 チェーファ
33 導電ゴム
35 ビードトゥ
36 ビードベース
50 線状導電部
50a 接触部
51 導電線状体
52 非導電線状体
55 線状非導電部
60 アーストレッド

Claims (18)

  1. 一対のビード部と、前記一対のビード部間に架け渡される少なくとも1層のカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層と、前記カーカス層に対してタイヤ内腔側に配置されるカーカス内側ゴム層とを備えるタイヤであって、
    少なくとも前記ビード部から前記ベルト層まで連続して延在し、前記カーカス内側ゴム層に配置される線状導電部を備え、
    前記線状導電部は、少なくとも一部が前記カーカス内側ゴム層内に位置しており、且つ、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満であることを特徴とするタイヤ。
  2. 前記ベルト層は、タイヤ幅方向に延びる1枚以上のベルトプライを有しており、
    タイヤ幅方向における幅が最も広い前記ベルトプライのタイヤ幅方向における両側の端部からタイヤ内表面に向けてそれぞれ垂線を引いた際における前記垂線と前記タイヤ内表面との交点間のペリフェリ長さをLbpとし、前記線状導電部における前記ベルト層のタイヤ径方向内側に位置する部分のペリフェリ方向における長さをLaとする場合に、
    前記線状導電部は、0.01≦La/Lbp≦1を満たす請求項1に記載のタイヤ。
  3. 前記線状導電部は、少なくとも前記ビード部よりもタイヤ径方向外側の領域では、前記カーカス内側ゴム層の厚さtと、前記線状導電部においてタイヤ内表面からの距離が最も小さくなる部分での前記タイヤ内表面からの距離t1との関係が、0.2≦t1/t≦0.8を満たす請求項1または2に記載のタイヤ。
  4. 前記ビード部には、リムフランジに当接するビード部ゴムが配置され、
    前記ビード部ゴムは、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満であり、
    前記線状導電部は、前記ビード部ゴムと重なる部分を有する請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ。
  5. 前記線状導電部は、タイヤ内表面側から前記ビード部のビードトゥを超えて少なくともビードベースまで延在し、前記ビードトゥよりも前記ビードベース側の位置で前記ビード部ゴムに接触する請求項4に記載のタイヤ。
  6. 前記線状導電部は、少なくとも前記ベルト層と前記ビード部の間の領域では、ペリフェリ方向に沿って延びる請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤ。
  7. 前記線状導電部における前記ベルト層のタイヤ径方向内側に位置する部分と前記ビード部に位置する部分とは、それぞれペリフェリ方向に対してタイヤ周方向に30°以下の傾斜角で傾斜する部分を有する請求項1~6のいずれか1項に記載のタイヤ。
  8. 前記カーカス内側ゴム層は、第1層と第2層とが積層され、
    前記線状導電部は、少なくとも一部が前記第1層と前記第2層との間に配置される請求項1~7のいずれか1項に記載のタイヤ。
  9. 前記第1層はインナーライナであり、前記第2層はタイゴムである請求項8に記載のタイヤ。
  10. 前記線状導電部は、前記タイゴムに縫い込まれる請求項9に記載のタイヤ。
  11. 前記線状導電部は、前記タイゴムの表面に1mm以上30mm以下の長さで露出しつつ前記タイゴムに縫い込まれる請求項10に記載のタイヤ。
  12. 前記線状導電部は、1×10^8[Ω・cm]未満の体積抵抗率を持つ導電線状体を1本以上含む複数本の線状体を撚り合わせて成る請求項1~11のいずれか1項に記載のタイヤ。
  13. 前記線状導電部は、前記導電線状体と1×10^8[Ω・cm]以上の体積抵抗率を持つ非導電線状体とを撚り合わせて成る請求項12に記載のタイヤ。
  14. 前記導電線状体が、金属繊維であり、前記非導電線状体が、有機繊維である請求項13に記載のタイヤ。
  15. 前記導電線状体が、複数本の炭素繊維を撚り合わせて成る請求項12または13に記載のタイヤ。
  16. 前記導電線状体が、炭素繊維から成る単線のコードである請求項12または13に記載のタイヤ。
  17. 前記線状導電部の総繊度が、20[dtex]以上1000[dtex]以下である請求項1~16のいずれか1項に記載のタイヤ。
  18. 前記線状導電部の伸び率が、1.0[%]以上70.0[%]以下である請求項17に記載のタイヤ。
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