JP2024077360A - タイヤ - Google Patents

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JP2024077360A
JP2024077360A JP2022189417A JP2022189417A JP2024077360A JP 2024077360 A JP2024077360 A JP 2024077360A JP 2022189417 A JP2022189417 A JP 2022189417A JP 2022189417 A JP2022189417 A JP 2022189417A JP 2024077360 A JP2024077360 A JP 2024077360A
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瞳 茶谷
寛 畑
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Abstract

Figure 2024077360000001
【課題】タイヤの電気抵抗を低減させつつ、ユニフォミティの悪化を抑制すること。
【解決手段】一対のビード部10と、一対のビード部10間に架け渡される少なくとも1層のカーカス層13と、カーカス層13のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層14とを備える空気入りタイヤ1であって、カーカス層13は、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]以上であり、カーカス層13の表面には、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満の導電ゴム51と導電ゴム51に埋設される複数の補強繊維52とを有する導電部50が配置される。
【選択図】図2

Description

本発明は、タイヤに関する。
近年、環境問題などから低燃費タイヤの要求が高まっている。タイヤを低燃費化する手法として、タイヤのトレッド部やサイド部に用いられているゴムにシリカを配合することで、タイヤの転がり抵抗を抑えるという手法が用いられている。しかしながら、シリカは絶縁特性が高いため、トレッドゴムのシリカ含有量が増加すると、トレッドゴムの電気抵抗値が増加して、タイヤの帯電抑制性能が低下する。タイヤの帯電抑制性能が低下すると、車両の走行時に発生する静電気が蓄積し易くなるため、ラジオノイズ等の電波障害を引き起こし易くなる。
このため、従来の空気入りタイヤの中には、帯電抑制性能を向上させて車両走行時に車両に発生する静電気を路面に放出し易くするために、電気抵抗値が低い導電部材を備えているものがある。例えば、特許文献1では、抵抗率が低い導電層をカーカス層とタイゴムとの間でビード部からベルト層まで延在させることにより、タイヤの帯電抑制性能を向上させている。
特許第6205986号公報
ここで、導電性が高いゴムは、車両の走行中にゴムが繰り返し変形した際に発熱し易くなっている。このため、導電性が高いゴムからなる導電層をカーカス層に隣接して配置した場合、車両の走行中に導電層が発熱することによって、カーカス層における導電層が配置されている部分も、導電層からの熱により温度が高くなり易くなる。この場合、カーカス層における温度が高くなった部分は、温度の上昇に伴い局所的な伸びが発生し易くなり、タイヤ全周のうちカーカス層の伸びが発生した部分が位置する部分では、局所的に外径成長が発生することがある。このようなタイヤ周方向における局所的な外径成長は、タイヤのユニフォミティの悪化につながることになる。このため、導電性が高いゴムを用いてタイヤの電気抵抗を低減させる場合、ゴムの発熱に起因してユニフォミティが悪化してしまうという観点で改良の余地があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、タイヤの電気抵抗を低減させつつ、ユニフォミティの悪化を抑制することのできるタイヤを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤは、一対のビード部と、前記一対のビード部間に架け渡される少なくとも1層のカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層とを備えるタイヤであって、前記カーカス層は、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]以上であり、前記カーカス層の表面には、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満の導電ゴムと前記導電ゴムに埋設される複数の補強繊維とを有する導電部が配置されることを特徴とする。
また、上記タイヤにおいて、前記導電ゴムは、前記導電部に対する体積比率が0.2以上0.8以下の範囲内であることが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記補強繊維は、前記補強繊維が並ぶ方向における打ち込み本数が1[本/50mm]以上70[本/50mm]以下の範囲内であることが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記導電部は、前記ベルト層から前記ビード部まで延在して配置されることが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記補強繊維は、タイヤ周方向に対して90°±20°の範囲内で配置されることが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記補強繊維は、100℃における弾性率が6.2[GPa]以上の材料からなることが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記導電部は、前記導電ゴムと前記補強繊維とを合わせた体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満であることが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記補強繊維は、前記導電部の厚みに対する外径の比率が0.25以上0.95以下の範囲であることが好ましい。
また、上記タイヤにおいて、前記導電部は、前記補強繊維が並ぶ方向における幅が3[mm]以上50[mm]以下の範囲内であることが好ましい。
本発明に係るタイヤは、タイヤの電気抵抗を低減させつつ、ユニフォミティの悪化を抑制することができる、という効果を奏する。
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。 図2は、図1のタイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面から一方側の領域の詳細図である。 図3は、ベルト層に対する導電部のラップ幅についての説明図である。 図4は、図2のA部詳細図である。 図5は、空気入りタイヤをタイヤ回転軸の方向にみた場合における導電部の配置の形態を示す模式図である。 図6は、図5のB部詳細模式図である。 図7は、図6に示す導電部の斜視模式図である。 図8は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、空気入りタイヤをタイヤ回転軸の方向にみた場合における導電部の配置の形態を示す模式図である。 図9は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、カーカス層におけるタイヤ内腔側に配置される状態を示す説明図である。 図10は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、導電部がタイヤ幅方向における両側に亘って配置される状態を示す説明図である。 図11は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、導電部がタイヤ幅方向における両側に配置される状態を示す説明図である。 図12は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、アーストレッドが配置される状態を示す説明図である。 図13Aは、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。 図13Bは、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。
以下に、本発明に係るタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態]
[空気入りタイヤ]
以下の説明では、本発明に係るタイヤの一例として、空気入りタイヤ1を用いて説明する。タイヤの一例である空気入りタイヤ1は、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
また、以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸であるタイヤ回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。また、以下の説明では、タイヤ子午断面とは、タイヤ回転軸を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤ1を示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域を示している。また、同図は、空気入りタイヤの一例として、乗用車用ラジアルタイヤを示している。
実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、トレッド部2と、一対のサイドウォール部3、3と、一対のビード部10、10と、カーカス層13と、ベルト層14と、カーカス内側ゴム層20とを備える。このうち、一対のサイドウォール部3、3と、一対のビード部10、10とは、それぞれタイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に1つずつが配置されている。
一対のビード部10、10は、一対のサイドウォール部3、3のタイヤ径方向内側に位置しており、それぞれビードコア11と、ビードフィラー12と、ビード部ゴム30とを有している。即ち、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側には、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、一対のビード部ゴム30、30とが配置されている。さらに、ビード部ゴム30は、リムクッションゴム31と、チェーファ32とを有している。このため、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側には、一対のリムクッションゴム31、31と、一対のチェーファ32、32とが配置されている。
一対のビードコア11、11は、複数のビードワイヤを束ねて成る環状部材であり、一対のビード部10、10のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外側にそれぞれ配置されてビード部10を補強する。
カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部10、10間に、トロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなどの有機繊維材から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成されている。このカーカス層13のカーカスプライは、タイヤ周方向に対するカーカスコードの延在方向の傾斜角として定義されるカーカス角度が、絶対値で80[deg]以上95[deg]以下の範囲内になっている。
本実施形態では、カーカス層13が、単層構造を有し、タイヤ幅方向両側のビードコア11、11間に連続して架け渡されている。また、カーカス層13の両端部が、ビードコア11及びビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止されている。つまり、カーカス層13は、タイヤ子午線方向の断面視における両端部付近が、ビードコア11及びビードフィラー12のタイヤ幅方向内側からタイヤ径方向内側を通り、タイヤ幅方向外側に巻き返されている。
このためカーカス層13は、一対のビード部10同士の間に亘って配置されるカーカス本体部13aと、カーカス本体部13aから連続して形成されビードコア11のタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返されるターンナップ部13bと、を有している。ここでいうカーカス本体部13aは、カーカス層13における一対のビードコア11のタイヤ幅方向内側同士の間に亘って形成される部分になっており、ターンナップ部13bは、ビードコア11のタイヤ幅方向内側でカーカス本体部13aから連続して形成され、ビードコア11のタイヤ径方向内側を通ってタイヤ幅方向外側にかけて折り返される部分になっている。ビードフィラー12は、このようにビードコア11のタイヤ幅方向外側に折り返される部分であるターンナップ部13bのタイヤ幅方向内側で、且つ、ビードコア11のタイヤ径方向外側に配置されている。
このように形成されるカーカス層13のカーカスプライは、カーカスコードのコートゴムの60[℃]のtanδ値が、0.20以下であることが好ましい。また、カーカス層13は、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]以上になっており、詳しくは、カーカス層13は、カーカスコードのコートゴムの体積抵抗率が、1×10^8[Ω・cm]以上になっている。これらにより、タイヤの転がり抵抗が低下する。かかる体積抵抗率を有するコートゴムは、例えば、カーボン配合量が少ない低発熱コンパウンドを使用することにより生成される。さらに、コートゴムは、シリカを使用せずに構成されても良いし、シリカを含有させて補強されても良い。
なお、60[℃]のtanδ値は、(株)東洋精機製作所製、粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪10%、振幅±0.5%、周波数20Hzの条件で測定される。
また、体積抵抗率(体積固有抵抗)は、JIS K6271規定の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-体積抵抗率及び表面抵抗率の求め方」に基づいて測定される。一般に、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満、もしくは表面抵抗率が1×10^8[Ω/cm]未満の範囲にあれば、部材が静電気の帯電を抑制可能な導電性を有するといえる。
一対のビード部10、10が有する一対のビード部ゴム30、30は、タイヤ幅方向両側のビードコア11、11及びカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側にそれぞれ配置されている。ビード部ゴム30は、空気入りタイヤ1をリムに装着する際にリムが有するリムフランジRに当接する部分になっており、ビード部10における、リムフランジRに対する接触面を構成する。ビード部ゴム30は、体積抵抗率が、1×10^8[Ω・cm]未満になっており、ビード部ゴム30の体積抵抗率は、1×10^7[Ω・cm]以下であることが好ましい。
ベルト層14は、ベルト層14は、タイヤ幅方向に延びる1枚以上のベルトプライを有しており、本実施形態では、複数のベルトプライ141~143が積層されている。即ち、本実施形態では、ベルト層14は、一対の交差ベルト141、142と、ベルトカバー143とをタイヤ径方向に積層することにより構成され、カーカス層13のタイヤ径方向外側に配置されてカーカス層13の外周に掛け廻されている。一対の交差ベルト141、142は、スチール或いは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、タイヤ周方向に対するベルトコードの延在方向の傾斜角であるベルト角度が、絶対値で20[deg]以上65[deg]以下の範囲内になっている。また、一対の交差ベルト141、142は、ベルト角度が相互に異符号となり、ベルトコードの延在方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造になっている。即ち、一対の交差ベルト141、142は、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向へのベルトコードの傾斜方向が、互いに反対方向になっている。ベルトカバー143は、コートゴムで被覆されたスチール或いは有機繊維材から成る複数のコードを圧延加工して構成され、ベルト角度が絶対値で0[deg]以上10[deg]以下の範囲内になっている。また、ベルトカバー143は、交差ベルト141、142のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
トレッド部2は、ゴム組成物であるトレッドゴム15を有して構成され、カーカス層13及びベルト層14のタイヤ径方向外側に配置されていると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出している。このため、トレッド部2は、外周表面が空気入りタイヤ1の輪郭の一部を構成しており、トレッド部2には、タイヤ周方向に延びる周方向主溝6やラグ溝(図示省略)等の溝が複数形成されている。また、トレッド部2を構成するトレッドゴム15は、キャップトレッド151と、アンダートレッド152とを有している。
キャップトレッド151は、トレッド部2のタイヤ径方向における最も外側に位置してタイヤ接地面を構成するゴム部材であり、単層構造を有しても良いし(図1参照)、多層構造を有しても良い(図示省略)。キャップトレッド151の60[℃]のtanδ値は、0.25以下であることが好ましい。また、キャップトレッド151の体積抵抗率は、1×10^8[Ω・cm]以上の範囲にあることが好ましく、1×10^10[Ω・cm]以上の範囲にあることがより好ましく、1×10^12[Ω・cm]以上の範囲にあることがより好ましい。これらにより、空気入りタイヤ1の転がり抵抗が低下する。かかる体積抵抗率をもつキャップトレッド151は、カーボン配合量が少ない低発熱コンパウンドを使用し、また、シリカ含有量を増加させて補強することにより生成される。
また、アンダートレッド152は、キャップトレッド151のタイヤ径方向内側に積層される部材である。アンダートレッド152の体積抵抗率は、キャップトレッド151の体積抵抗率よりも低いことが好ましい。
一対のサイドウォール部3、3は、それぞれサイドウォールゴム16を有して構成され、一対のサイドウォール部3、3が有する一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されている。サイドウォールゴム16の60[℃]のtanδ値は、0.20以下であることが好ましい。また、サイドウォールゴム16の体積抵抗率は、1×10^8[Ω・cm]以上の範囲にあることが好ましく、1×10^10[Ω・cm]以上の範囲にあることがより好ましく、1×10^12[Ω・cm]以上の範囲にあることがより好ましい。これらにより、空気入りタイヤ1の転がり抵抗が低下する。かかる体積抵抗率をもつサイドウォールゴム16は、カーボン配合量が少ない低発熱コンパウンドを使用し、また、シリカ含有量を増加させて補強することにより生成される。
なお、キャップトレッド151の体積抵抗率の上限値、アンダートレッド152の体積抵抗率の下限値、サイドウォールゴム16の体積抵抗率の上限値及びリムクッションゴム17の体積抵抗率の下限値は、特に限定がないが、これらがゴム部材であることから物理的な制約を受ける。
カーカス内側ゴム層20は、空気入りタイヤ1の内側の表面であるタイヤ内表面25を構成しており、空気入りタイヤ1の内側の空間であるタイヤ内腔に面している。このように、タイヤ内表面25を構成するカーカス内側ゴム層20は、カーカス層13に対してタイヤ内腔側に配置されるゴム層になっており、カーカス層13をタイヤ内腔側から覆っている。
[帯電抑制構造]
図2は、図1のタイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLから一方側の領域の詳細図である。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、車両走行時にて車両に発生する静電気を路面に放出するために、帯電抑制構造が採用されており、帯電抑制構造として、導電部50が用いられる。導電部50は、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満の導電ゴム51(図7参照)と、導電ゴム51に埋設される複数の補強繊維52(図7参照)とを有している。導電部50は、カーカス層13の表面に接触して配置されており、少なくともビード部10からベルト層14まで連続して延在して配置されている。本実施形態では、導電部50は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に配置されるビード部10のうち、一方のビード部10から、ベルト層14のタイヤ径方向内側の位置まで連続して配置されている。即ち、本実施形態では、導電部50は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの片側に配置されている。
なお、本実施形態では、ビード部10とは、リム径の測定点からタイヤ断面高さSHの1/3までの領域をいう。また、タイヤ断面高さSHとは、タイヤ外径とリム径との差の1/2をいい、空気入りタイヤ1を規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。
ここで、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、或いはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
導電部50は、カーカス層13が有するカーカス本体部13aに対しては、カーカス本体部13aにおけるタイヤ内腔側の反対側の面に接触してカーカス層13に沿って配置されている。つまり、導電部50は、ベルト層14のタイヤ径方向内側の位置では、ベルト層14とカーカス層13との間の位置でカーカス層13の表面に配置されており、導電部50におけるタイヤ方向外側の端部は、ベルト層14のタイヤ径方向内側の部分に位置している。これにより、導電部50は、ベルト層14のタイヤ径方向内側の位置では、ベルト層14に対してタイヤ径方向に重なって配置されており、導電部50からベルト層14に至る導電経路が確保されている。
また、導電部50は、サイドウォール部3やビード部10の位置では、カーカス層13が有するカーカス本体部13aのタイヤ幅方向外側の面に接触して配置されている。このように配置される導電部50におけるタイヤ方向内側の端部は、ビード部10に位置している。また、導電部50におけるビード部10に位置する部分は、カーカス層13の表面に接触しながらカーカス層13に沿ってビードコア11のタイヤ幅方向内側からタイヤ径方向内側を通り、タイヤ幅方向外側に巻き返されている。このため、導電部50におけるビード部10に位置する部分は、ビード部ゴム30とタイヤ径方向に重なって配置されている。これにより、リム嵌合面からビード部ゴム30を介して導電部50に至る導電経路が確保され、ビード部10の位置からベルト層14の位置までの導電経路が確保される。
これらのようにカーカス層13に沿って配置される導電部50は、ベルト層14に対してタイヤ径方向に重なる位置では、タイヤ幅方向に近い方向に延在し、サイドウォール部3やビード部10の位置ではタイヤ径方向に近い方向に延在している。
図3は、ベルト層14に対する導電部50のラップ幅Laについての説明図である。導電部50は、ベルト層14のペリフェリ方向における幅Lbpと、導電部50におけるベルト層14とタイヤ径方向に重なる部分のペリフェリ方向の幅、即ち、ベルト層14に対する導電部50ラップ幅Laとの関係が、0.01≦La/Lbp≦1を満たしている。また、ベルト層14に対する導電部50ラップ幅Laは、La≧3[mm]であるのが好ましい。この場合における導電部50ラップ幅Laは、導電部50におけるベルト層14のタイヤ径方向内側に位置する部分のペリフェリ方向における距離Laになっている。
なお、本実施形態においてペリフェリ方向とは、タイヤ周方向における位置が同じ位置における、空気入りタイヤ1の表面に沿った方向をいう。つまり、ペリフェリ方向は、トレッド部2の位置ではタイヤ幅方向に近い方向になり、サイドウォール部3の位置ではタイヤ径方向に近い方向になる。
また、この場合におけるベルト層14のペリフェリ方向における幅Lbpは、タイヤ幅方向における幅が最も広いベルトプライのタイヤ幅方向における両側の端部144からタイヤ内表面25に向けてそれぞれ垂線Qを引いた際における垂線Qとタイヤ内表面25との交点P間のペリフェリ長さになっている。また、ベルト層14に対する導電部50のラップ幅Laは、導電部50におけるベルト層14のタイヤ径方向内側に位置する部分のペリフェリ方向における長さになっており、具体的には、導電部50における、交点P間に位置する部分のペリフェリ方向における長さになっている。
図4は、図2のA部詳細図である。カーカス内側ゴム層20は、タイヤ内表面25を構成するインナーライナ21と、インナーライナ21に対してカーカス層13が位置する側に配置されるタイゴム22とが積層されている。このうち、インナーライナ21は、空気透過防止層になっており、カーカス層13を覆って配置されることにより、カーカス層13の露出による酸化を抑制し、また、タイヤに充填された空気の洩れを防止する。また、インナーライナ21は、例えば、ブチルゴムを主成分とするゴム組成物、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂中にエラストマー成分をブレンドした熱可塑性エラストマー組成物などから構成される。特に、インナーライナ21が熱可塑性樹脂あるいは熱可塑性エラストマー組成物から成る構成では、インナーライナ21がブチルゴムから成る構成と比較して、インナーライナ21を薄型化できるので、タイヤ重量を大幅に軽減できる。
なお、インナーライナ21の空気透過係数は、一般に、温度30[℃]でJIS K7126-1に準拠して測定した場合に、100×10^-12[cc・cm/cm^2・sec・cmHg]以下であることが好ましく、50×10^-12[cc・cm/cm^2・sec・cmHg]以下であることがより好ましい。また、インナーライナ21の体積抵抗率は、1×10^8[Ω・cm]以上の範囲にあることが好ましく、一般に1×10^9[Ω・cm]以上であることが好ましい。
ブチルゴムを主成分とするゴム組成物としては、例えば、ブチルゴム(IIR)、ブチル系ゴムなどが採用され得る。ブチル系ゴムは、例えば、塩素化ブチルゴム(Cl-IIR)、臭素化ブチルゴム(Br-IIR)などのハロゲン化ブチルゴムであることが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂〔例えばナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体〕、ポリエステル系樹脂〔例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリブチレンテレフタレート/テトラメチレングリコール共重合体、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル〕、ポリニトリル系樹脂〔例えばポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体〕、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂〔例えばポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレンアクリル酸共重合体(EAA)、エチレンメチルアクリレート樹脂(EMA)〕、ポリビニル系樹脂〔例えば酢酸ビニル(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体〕、セルロース系樹脂〔例えば酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース〕、フッ素系樹脂〔例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)〕、イミド系樹脂〔例えば芳香族ポリイミド(PI)〕などが採用され得る。
エラストマーとしては、例えば、ジエン系ゴムおよびその水素添加物〔例えばNR、IR、エポキシ化天然ゴム、SBR、BR(高シスBRおよび低シスBR)、NBR、水素化NBR、水素化SBR〕、オレフィン系ゴム〔例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M-EPM)〕、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニルまたはジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー、含ハロゲンゴム〔例えばBr-IIR、Cl-IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br-IPMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHC、CHR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレン(M-CM)〕、シリコーンゴム〔例えばメチルビニルシリコーンゴム、ジメチルシリコーンゴム、メチルフェニルビニルシリコーンゴム〕、含イオウゴム〔例えばポリスルフィドゴム〕、フッ素ゴム〔例えばビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン-プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム〕、熱可塑性エラストマー〔例えばスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー〕などが採用され得る。
また、インナーライナ21とカーカス層13との間に配置されるタイゴム22は、タイヤ製造時に未加硫の空気入りタイヤ1をインフレートする際に、カーカス層13のカーカスコードがインナーライナ21に喰い込むことを抑制するための層である。また、タイゴム22は、製造後の空気入りタイヤ1においては、空気透過防止性や乾燥路面における操縦安定性に寄与する。
ビード部10に配置されるビード部ゴム30は、ビード部10におけるビードコア11のタイヤ幅方向内側からビードコア11のタイヤ径方向内側を通り、ビードコア11のタイヤ幅方向外側に亘って配置されている。カーカス内側ゴム層20は、ビード部10の位置では、ビード部ゴム30が有するチェーファ32におけるビードコア11のタイヤ幅方向内側に位置する部分のタイヤ幅方向外側に位置し、ビード部10の内周面であるビードベース36のタイヤ幅方向における内側の端部であるビードトゥ35の近傍に位置している。
また、カーカス内側ゴム層20内に配置される導電部50は、ビード部10の位置では、カーカス層13に沿って、ビードコア11のタイヤ幅方向内側からタイヤ径方向内側を通り、タイヤ幅方向外側に巻き返されている。つまり、導電部50は、ビードコア11のタイヤ幅方向内側の位置では、カーカス本体部13aのタイヤ幅方向外側に位置し、ビードコア11のタイヤ径方向内側の位置では、ターンナップ部13bのタイヤ径方向外側に位置し、ビードコア11のタイヤ幅方向外側の位置では、ターンナップ部13bのタイヤ幅方向内側に位置して配置されている。このように、ビードコア11周りに巻き返される導電部50における、ビード部10に位置する端部は、ビードコア11のタイヤ幅方向外側でビードコア11とカーカス層13のターンナップ部13bとの間に位置し、タイヤ径方向においてビードコア11が位置する範囲内に位置している。また、導電部50は、カーカス層13に沿って配置されることにより、ビード部10の位置では、カーカス層13を介してビード部ゴム30に対して重なっている。
図5は、空気入りタイヤ1をタイヤ回転軸の方向にみた場合における導電部50の配置の形態を示す模式図である。図6は、図5のB部詳細模式図である。導電部50は、所定の幅を有する略帯状の形状で形成されており、タイヤ周方向における1箇所に配置されている。略帯状の形状で形成される導電部50は、ペリフェリ方向に延在し、帯の幅方向が略タイヤ周方向となる向きでカーカス層13の表面に配置されている。このため、帯状の導電部50は、空気入りタイヤ1をタイヤ回転軸の方向にみた場合には、タイヤ径方向に沿って延在している。
このように配置される導電部50は、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満の導電ゴム51に、複数の補強繊維52が埋設されている。導電部50が有する導電ゴム51は、体積抵抗率が1×10^6[Ω・cm]未満であるのが好ましい。補強繊維52は、コード状の形状で形成され、導電部50の延在方向に沿って配置されている。即ち、補強繊維52は、導電部50と同様に、ペリフェリ方向に延在している。詳しくは、導電部50が有する複数の補強繊維52は、タイヤ周方向に対する角度θが、それぞれ90°±20°の範囲内になっている。なお、導電部50が有する複数の補強繊維52は、タイヤ周方向に対する角度θが、それぞれ90°±5°の範囲内であるのが好ましい。また、導電部50が有する複数の補強繊維52は、導電部50が配置されるカーカス層13が有するカーカスコードの延在方向に沿った方向に延在するのが好ましい。
導電部50は、これらのように延在する補強繊維52を複数有しており、複数の補強繊維52は、間隔をあけながら、略帯状の形状で形成される導電部50の帯の幅方向に並んで配置されている。このように、複数の補強繊維52を有する導電部50は、複数の補強繊維52が並ぶ方向がタイヤ周方向となる向きで、カーカス層13の表面に配置されている。換言すると、導電部50の導電ゴム51に埋設される複数の補強繊維52は、間隔をあけながらタイヤ周方向に並んで配置されている。
図7は、図6に示す導電部50の斜視模式図である。図7は、導電部50における補強繊維52の配置形態を理解し易くするために、導電ゴム51を透過させて補強繊維52が見えるようにした導電部50の一部分の模式図である。帯状に形成される導電部50は、複数の補強繊維52が並ぶ方向における幅Waが、3[mm]以上50[mm]以下の範囲内になっている。なお、導電部50の幅Waは、空気入りタイヤ1のタイヤ最大幅位置WP(図2参照)におけるサイドウォール部3の周長Lp(図示省略)との関係が、0.001≦Wa/Lp≦0.009の範囲内であるのが好ましい。タイヤ最大幅位置WPは、JATMA規定のタイヤ断面幅の最大幅位置をいう。タイヤ断面幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。また、複数の補強繊維52が並ぶ方向における導電部50の幅Waは、5[mm]以上30[mm]以下の範囲内であるのが好ましい。
導電部50は、厚みGaが0.5[mm]以上2.0[mm]以下の範囲内であるのが好ましい。また、導電部50において、複数の補強繊維52を埋設する導電ゴム51は、導電部50に対する体積比率が、0.2以上0.8以下の範囲になっている。なお、導電部50に対する導電ゴム51の体積比率は、0.4以上0.6以下の範囲内であるのが好ましい。
一方、導電部50において導電ゴム51に複数が埋設されるコード状の補強繊維52は、補強繊維52が並ぶ方向における50[mm]あたりの打ち込み本数が、1[本/50mm]以上70[本/50mm]以下の範囲内になっている。また、1つの導電部50が有する複数の補強繊維52は、外径Daが互いに同程度の大きさになっており、各補強繊維52は、導電部50の厚みGaに対する補強繊維52の外径Daの比率が、0.25以上0.95以下の範囲内になっている。なお、補強繊維52が並ぶ方向における50[mm]あたりの打ち込み本数は、20[本/50mm]以上50[本/50mm]以下の範囲内であるのが好ましい。また、導電部50の厚みGaに対する補強繊維52の外径Daの比率は、0.3以上0.5以下の範囲内であるのが好ましい。
このように形成される補強繊維52は、100℃における弾性率が6.2[GPa]以上の材料からなる。この場合における弾性率は、いわゆる縦弾性係数になっている。補強繊維52には、100℃における弾性率が8.5[GPa]以上の材料が用いられるのが好ましい。補強繊維52の具体的な材料としては、例えば、ポリエステル、レーヨン、アラミド、ファイバーグラスが用いられるのが好ましい。
これらのように、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満の導電ゴム51に、複数の補強繊維52が埋設されることにより形成される導電部50は、導電ゴム51のみでなく、導電ゴム51と補強繊維52とを合わせた体積抵抗率が、1×10^8[Ω・cm]未満であるのが好ましい。
[作用・効果]
実施形態に係る空気入りタイヤ1を車両に装着して走行すると、空気入りタイヤ1におけるトレッド部2の表面のうち、下方に位置して路面に対向する部分が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1は、このようにトレッド部2の表面が順次路面に接触することにより、路面との間で摩擦力を発生させることができる。これにより、車両は、空気入りタイヤ1と路面との間の摩擦力によって、駆動力や制動力、旋回力を路面に伝えることができ、これらの駆動力、制動力、旋回力によって走行することができる。
また、車両の走行中には静電気が発生することがあり、このような静電気は、リムRからビード部ゴム30、導電部50を通ってベルト層14に流れ、ベルト層14からトレッドゴム15に流れてトレッドゴム15から路面に放出される。これにより、車両に発生した静電気は路面に放出され、静電気による車両の帯電が抑制される。
つまり、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満の導電ゴム51を有する導電部50は、比較的電気が流れ易くなっているため、導電ゴム51を有する導電部50をカーカス層13に沿ってカーカス層13の表面に配置することにより、空気入りタイヤ1全体の電気抵抗を低減させることができる。これにより、導電部50が配置された空気入りタイヤ1は、車両の走行中に発生した静電気を、ビード部ゴム30側から導電部50を介してベルト層14側に流すことができ、静電気による車両の帯電を抑制することができる。
ここで、電気抵抗が低く導電性が高い導電ゴム51は、変形時に発熱し易くなっており、導電ゴム51は、空気入りタイヤ1を装着した車両の走行中に導電ゴム51が繰り返し変形した際に、発熱し易くなっている。導電ゴム51を有する導電部50は、空気入りタイヤ1の電気抵抗を低減させることを目的として、カーカス層13に沿ってカーカス層13の表面に配置されているため、導電ゴム51が発熱した場合、カーカス層13における導電ゴム51が配置されている部分の温度も高くなる。この場合、カーカス層13における温度が高くなった部分は、温度の上昇に伴い局所的な伸びが発生し易くなる。このため、タイヤ全周のうちカーカス層13の伸びが発生した部分が位置する部分では、空気入りタイヤ1は局所的に外径成長が発生し易くなり、空気入りタイヤ1は、ユニフォミティが悪化し易くなる。
これに対し、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、導電部50は、導電ゴム51に複数の補強繊維52が埋設されることにより形成されている。これにより、導電ゴム51が繰り返し変形することにより発熱し、導電ゴム51で発生した熱がカーカス層13に伝わってカーカス層13の温度が高くなることによりカーカス層13に局所的な伸びが発生し易くなる状況になっても、カーカス層13の伸びは、導電部50が有する補強繊維52により抑制される。つまり、導電部50は、導電ゴム51に複数の補強繊維52が埋設されることにより伸び難くなっており、導電部50は、カーカス層13の表面に配置されている。
このため、導電ゴム51で発生した熱がカーカス層13に伝わることによりカーカス層13に局所的な伸びが発生し易くなる状況になった場合でも、カーカス層13の伸びは、補強繊維52を有することにより伸び難く構成され、且つ、カーカス層13の表面に配置される導電部50により抑えられる。換言すると、カーカス層13は、カーカス層13の表面に配置される導電部50が有する補強繊維52によって補強されることにより、カーカス層13の温度が局所的に高くなった場合でも、局所的な伸びが抑えられる。これにより、空気入りタイヤ1は、導電ゴム51が発熱することによりカーカス層13の温度が局所的に高くなっても、局所的に外径成長が発生することを抑制でき、ユニフォミティの悪化を抑制することができる。この結果、空気入りタイヤ1の電気抵抗を低減させつつ、ユニフォミティの悪化を抑制することができる。
また、導電部50の導電ゴム51は、導電部50に対する体積比率が0.2以上0.8以下の範囲内であるため、導電ゴム51によって空気入りタイヤ1の電気抵抗を効果的に低減させると共に、カーカス層13の局所的な伸びを補強繊維52によって抑えることができる。つまり、導電部50に対する導電ゴム51の体積比率が0.2未満である場合は、導電ゴム51の体積比率が小さ過ぎるため、導電ゴム51を有する導電部50を配置しても、空気入りタイヤ1の電気抵抗を効果的に低減させ難くなる虞がある。また、導電部50に対する導電ゴム51の体積比率が0.8より大きい場合は、導電ゴム51の体積比率が大き過ぎるため、導電部50における補強繊維52の体積比率が相対的に小さ過ぎる虞がある。この場合、導電ゴム51に補強繊維52を埋設しても、補強繊維52による補強が不十分になり、導電ゴム51が発熱することによってカーカス層13の温度が局所的に高くなった際に、カーカス層13の局所的な伸びを補強繊維52によって抑え難くなる虞がある。
これに対し、導電部50に対する導電ゴム51の体積比率が、0.2以上0.8以下の範囲内である場合は、導電ゴム51によって空気入りタイヤ1の電気抵抗を効果的に低減させると共に、カーカス層13を補強繊維52によって効果的に補強し、カーカス層13の局所的な伸びを補強繊維52によって抑えることができる。この結果、より確実に空気入りタイヤ1の電気抵抗を低減させつつ、ユニフォミティの悪化を抑制することができる。
また、導電部50の補強繊維52は、補強繊維52が並ぶ方向における50[mm]あたりの打ち込み本数が、1[本/50mm]以上70[本/50mm]以下の範囲内であるため、導電ゴム51によって空気入りタイヤ1の電気抵抗を効果的に低減させることができる。つまり、補強繊維52が並ぶ方向における補強繊維52の打ち込み本数が70[本/50mm]より大きい場合は、補強繊維52の打ち込み本数が多過ぎるため、導電部50における導電ゴム51の比率が、補強繊維52に対して相対的に小さくなり過ぎる虞がある。この場合、導電ゴム51を有する導電部50を配置しても、空気入りタイヤ1の電気抵抗を効果的に低減させ難くなる虞がある。
これに対し、補強繊維52が並ぶ方向における50[mm]あたりの補強繊維52の打ち込み本数が、1[本/50mm]以上70[本/50mm]以下の範囲内である場合は、導電部50における導電ゴム51の比率を確保することができ、導電ゴム51によって空気入りタイヤ1の電気抵抗を効果的に低減させることができる。この結果、ユニフォミティの悪化を抑制しつつ、より確実に空気入りタイヤ1の電気抵抗を低減させることができる。
また、導電部50は、ベルト層14からビード部10まで延在して配置されるため、導電ゴム51を有する導電部50によって、ベルト層14からビード部10にかけての導電経路を確保することができ、リムRから路面に至る導電経路を確保することができる。この結果、より確実に空気入りタイヤ1の電気抵抗を低減させつつ、ユニフォミティの悪化を抑制することができる。
また、導電部50の補強繊維52は、タイヤ周方向に対して90°±20°の範囲内で配置されるため、導電ゴム51が発熱した際における空気入りタイヤ1の局所的な外径成長を、補強繊維52によってより確実に抑えることができる。つまり、補強繊維52が、タイヤ周方向に対して90°±20°より大きい角度で傾斜して配置される場合は、カーカス層13の局所的な伸びに起因する空気入りタイヤ1の局所的な外径成長の方向と、補強繊維52が延在する方向との乖離が大きくなる。この場合、導電部50によって補強繊維52を設けても、導電ゴム51が発熱した際における、カーカス層13に局所的な伸びに起因する空気入りタイヤ1の局所的な外径成長を抑え難くなる虞がある。
これに対し、導電部50の補強繊維52が、タイヤ周方向に対して90°±20°の範囲内で配置される場合は、カーカス層13の局所的な伸びに起因する空気入りタイヤ1の局所的な外径成長の方向に、補強繊維52の延在方向を近付けることができる。これにより、導電ゴム51が発熱した際における空気入りタイヤ1の局所的な外径成長を、補強繊維52によってより確実に抑えることができる。この結果、空気入りタイヤ1の電気抵抗を低減させつつ、より確実にユニフォミティの悪化を抑制することができる。
また、導電部50の補強繊維52は、100℃における弾性率が6.2[GPa]以上の材料からなるため、高速走行時において導電部50の導電ゴム51が発熱した場合でも、導電部50が配置されるカーカス層13の伸びを補強繊維52によって効果的に抑えることができる。これにより、導電ゴム51が発熱した際における空気入りタイヤ1の局所的な外径成長を、補強繊維52によってより確実に抑えることができる。この結果、空気入りタイヤ1の電気抵抗を低減させつつ、より確実にユニフォミティの悪化を抑制することができる。
また、導電部50は、導電ゴム51と補強繊維52とを合わせた体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満であるため、導電ゴム51が発熱した際のカーカス層13の伸びを補強繊維52によって抑制しつつ、空気入りタイヤ1の電気抵抗を、導電部50によってより確実に低減させることができる。この結果、より確実に空気入りタイヤ1の電気抵抗を低減させつつ、ユニフォミティの悪化を抑制することができる。
また、導電部50の補強繊維52は、導電部50の厚みGaに対する外径Daの比率が、0.25以上0.95以下の範囲内であるため、カーカス層13の局所的な伸びを補強繊維52によってより確実に抑えると共に、導電ゴム51によって空気入りタイヤ1の電気抵抗を効果的に低減させることができる。つまり、導電部50の厚みGaに対する補強繊維52の外径Daの比率が0.25未満である場合は、導電部50の厚みGaに対して補強繊維52の外径Daが小さ過ぎるため、導電ゴム51に補強繊維52を埋設しても、補強繊維52による補強が不十分になる虞がある。この場合、導電ゴム51が発熱することによってカーカス層13の温度が局所的に高くなった際に、カーカス層13の局所的な伸びを補強繊維52によって抑え難くなる虞がある。また、導電部50の厚みGaに対する補強繊維52の外径Daの比率が0.95より大きい場合は、導電部50の厚みGaに対して補強繊維52の外径Daが大き過ぎるため、導電部50における導電ゴム51の比率が、補強繊維52に対して相対的に小さくなり過ぎる虞がある。この場合、導電ゴム51を有する導電部50を配置しても、空気入りタイヤ1の電気抵抗を効果的に低減させ難くなる虞がある。
これに対し、導電部50の厚みGaに対する補強繊維52の外径Daの比率が、0.25以上0.95以下の範囲内である場合は、カーカス層13を補強繊維52によって効果的に補強してカーカス層13の局所的な伸びを補強繊維52によってより確実に抑えると共に、導電ゴム51によって空気入りタイヤ1の電気抵抗を効果的に低減させることができる。この結果、空気入りタイヤ1の電気抵抗を低減させつつ、より確実にユニフォミティの悪化を抑制することができる。
また、導電部50は、補強繊維52が並ぶ方向における幅Waが、3[mm]以上50[mm]以下の範囲内であるため、導電部50によって空気入りタイヤ1の電気抵抗を効果的に低減させると共に、タイヤ周方向における導電部50が配置されている位置付近の剛性が高くなり過ぎることを抑制することができる。つまり、補強繊維52が並ぶ方向における導電部50の幅Waが3[mm]未満である場合は、導電部50の幅Waが狭過ぎるため、カーカス層13の表面に導電部50を配置しても、空気入りタイヤ1の電気抵抗を効果的に低減させ難くなる虞がある。また、補強繊維52が並ぶ方向における導電部50の幅Waが50[mm]より大きい場合は、導電部50の幅Waが広過ぎるため、タイヤ周方向における導電部50が配置されている位置付近の剛性が、タイヤ周方向におけるそれ以外の位置の剛性と比較して、高くなり過ぎる虞がある。このため、空気入りタイヤ1のユニフォミティが、幅Waの広く剛性が高い導電部50によって悪化し易くなる虞がある。
これに対し、補強繊維52が並ぶ方向における導電部50の幅Waが、3[mm]以上50[mm]以下の範囲内である場合は、導電ゴム51を有する導電部50によって空気入りタイヤ1の電気抵抗を効果的に低減させると共に、タイヤ周方向における導電部50が配置されている位置付近の剛性が高くなり過ぎることを抑制することができる。この結果、より確実に空気入りタイヤ1の電気抵抗を低減させつつ、ユニフォミティの悪化を抑制することができる。
[変形例]
なお、上述した実施形態では、導電部50は、タイヤ周方向における1箇所に配置されているが、導電部50は、タイヤ周方向における複数の位置に配置されていてもよい。図8は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、空気入りタイヤ1をタイヤ回転軸の方向にみた場合における導電部50の配置の形態を示す模式図である。導電部50は、例えば、図8に示すように、タイヤ周方向に一定の間隔をあけて複数の導電部50が配置されていてもよい。つまり、複数の導電部50は、タイヤ周方向に所定の間隔をあけつつ、放射状に配置されていてもよい。
導電部50は、複数をカーカス層13の表面に配置することにより、空気入りタイヤ1の電気抵抗を、複数の導電部50によって効果的に低減させることができる。また、複数の導電部50を、一定の間隔をあけて放射状に配置することにより、タイヤ周方向における一部の位置の剛性が高くなることに起因するユニフォミティの悪化を抑制することができる。これにより、空気入りタイヤ1の電気抵抗を低減させつつ、ユニフォミティの悪化を抑制することができる。
また、上述した実施形態では、導電部50は、カーカス本体部13aにおけるタイヤ内腔側の反対側の面に接触してカーカス層13に沿って配置されているが、導電部50は、これ以外の位置に配置されていてもよい。図9は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、カーカス層13におけるタイヤ内腔側に配置される状態を示す説明図である。導電部50は、例えば、図9に示すように、カーカス本体部13aにおけるタイヤ内腔側の面に接触してカーカス層13に沿って配置されていてもよい。つまり、導電部50は、カーカス層13とカーカス内側ゴム層20との間に配置されていてもよい。導電部50は、カーカス層13の表面に配置されていれば、配置される面は、カーカス層13におけるタイヤ内腔側の面でも、その反対側の面でもどちらの面でもよい。
また、上述した実施形態では、導電部50は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの片側に配置されているが、導電部50は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に配置されていてもよい。図10は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、導電部50がタイヤ幅方向における両側に亘って配置される状態を示す説明図である。導電部50は、例えば、図10に示すように、タイヤ幅方向における両側に亘って配置されていてもよい。即ち、導電部50は、タイヤ幅方向における両側に位置するビード部10のうち、一方のビード部10側から他方のビード部10側にかけて、連続して配置されていてもよい。
図11は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、導電部50がタイヤ幅方向における両側に配置される状態を示す説明図である。また、導電部50は、図11に示すように、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側の領域でそれぞれ、互いに独立した導電部50がビード部10の位置からベルト層14の位置にかけて延在して配置されていてもよい。この場合、ベルト層14に対する導電部50ラップ幅La(図3参照)は、タイヤ幅方向における両側に配置される導電部50同士で同じ大きさであってもよく、互いに異なる大きさであってもよい。
また、上述した実施形態では、車両走行時に車両に発生する静電気を路面に放出するための帯電抑制構造として、導電部50が用いられているが、帯電抑制構造には、導電部50の他の部材も用いられていていてもよい。図12は、実施形態に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、アーストレッド60が配置される状態を示す説明図である。車両に発生する静電気を路面に放出するための帯電抑制構造には、例えば、図12に示すように、アーストレッド60が用いられていてもよい。この場合におけるアーストレッド60は、トレッドゴム15に埋設されてタイヤ接地面に露出する導電ゴムである。導電部50とアーストレッド60とを有する帯電抑制構造では、導電部50によってベルト層14に流された車両からの静電気が、ベルト層14からアーストレッド60を介して路面に放出されて、車両の帯電が抑制される。
詳しくは、アーストレッド60は、トレッドゴム15の踏面に露出し、キャップトレッド151及びアンダートレッド152を貫通してベルト層14に導電可能に接触する。即ち、アーストレッド60は、少なくともキャップトレッド151を貫通してタイヤ接地面に露出する。図12に示す変形例では、アーストレッド60は、キャップトレッド151及びアンダートレッド152を貫通し、タイヤ径方向における内側の端部がベルトカバー143に導電可能に接触している。これにより、ベルト層14から路面への導電経路が確保される。
また、アーストレッド60は、タイヤ全周に渡って延在する環状構造を有し、その一部をトレッド踏面に露出させつつタイヤ周方向に連続的に延在している。従って、空気入りタイヤ1の転動時にて、アーストレッド60が常に路面に接触することにより、ベルト層14から路面への導電経路が常に確保される。図12に示す変形例では、アーストレッド60のタイヤ幅方向における幅は、トレッド部2にタイヤ周方向に延びて形成される周方向主溝6の溝幅よりも狭くなっており、タイヤ幅方向に隣り合う周方向主溝6同士の間に形成されている。
また、アーストレッド60は、トレッドゴム15よりも低い体積抵抗率を有する導電性ゴム材料から成る。具体的には、アーストレッド60の体積抵抗率が、1×10^8[Ω・cm]未満であることが好ましく、1×10^6[Ω・cm]以下であることがより好ましい。
これらのように、導電部50の他にアーストレッド60も用いて帯電抑制構造を構成することにより、リムRからビード部ゴム30、導電部50及びベルト層14を通りアーストレッド60に至る経路を、車両から路面へ静電気を放出するための導電経路として用いることができる。つまり、アーストレッド60は、1×10^8[Ω・cm]未満の体積抵抗率を有すると共に、少なくともキャップトレッド151を貫通してタイヤ接地面に露出するため、ベルト層14側から路面への導電経路を、アーストレッド60によって確保することができる。これにより、導電部50から路面への導電経路を確保することができ、リムRからアーストレッド60に至る導電経路を、より確実に確保することができる。従って、リムRと路面との間の電気抵抗を、より確実に下げることができ、車両に発生した静電気をより確実に路面に放出することができる。この結果、より確実に空気入りタイヤ1の電気抵抗を低減させることができる。
また、アーストレッド60を設けることにより、空気入りタイヤ1の転がり抵抗を低減して低燃費性能を向上させることを目的としてキャップトレッド151、アンダートレッド152、サイドウォールゴム16などを構成するゴムコンパウンドのシリカ含有量を増加させた場合における電気抵抗の増加を抑制することができる。つまり、シリカは絶縁特性が高いため、キャップトレッド151のシリカ含有量が増加すると、キャップトレッド151の体積抵抗値が増加して電気抵抗が増加し易くなるが、アーストレッド60を設けることにより、ベルト層14と路面との導電経路が確保することができる。この結果、転がり抵抗を低減しつつ、空気入りタイヤ1の電気抵抗を低減することができる。
また、上述した実施形態や変形例は、適宜組み合わせてもよい。また、上述した実施形態では、本発明に係るタイヤの一例として空気入りタイヤ1を用いて説明したが、本発明に係るタイヤは、空気入りタイヤ1以外であってもよい。本発明に係るタイヤは、例えば、気体を充填することなく使用することができる、いわゆるエアレスタイヤであってもよい。
[実施例]
図13A、図13Bは、空気入りタイヤの性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する比較例の空気入りタイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、空気入りタイヤの電気抵抗とユニフォミティとについての試験を行った。
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが195/65R15 91Hサイズの空気入りタイヤを、試験タイヤとして用いて行った。空気入りタイヤの電気抵抗についての評価試験は、JATMA規定の測定条件に基づき、株式会社アドバンテスト製のR8340A ウルトラ・ハイ・レジスタンスメータを使用して、試験タイヤの電気抵抗[Ω]を測定した。
また、ユニフォミティについての評価試験は、試験タイヤをJATMA標準のリムホイールにリム組みし、空気圧を230kPaに調整し、15分の予備走行後に、50km/h、86km/h、100km/hの3種類の速度条件で試験走行を行った後のそれぞれのユニフォミティを測定した。ユニフォミティの測定は、タイヤユニフォミティJASO C607「自動車タイヤのユニフォミティ試験法」に規定の方法に準じてラジアルフォースバリエーション(RFV)を測定した。ユニフォミティの評価は、3種類の速度条件で測定したユニフォミティの測定結果を、後述する従来例を100とした総合的な指数評価によって行った。ユニフォミティは、指数評価の数値が大きいほど均一性がよく、ユニフォミティが優れていることを示している。なお、ユニフォミティは、指数が90以上であれば従来例に対して同程度のレベルが維持され、指数が85以上であれば従来例に対して遜色のないレベルの性能が確保されることにより、従来例に対してユニフォミティの悪化が抑制されているものとする。
性能評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1~18と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例との20種類の空気入りタイヤについて行った。このうち、従来例の空気入りタイヤは、カーカス層の表面に導電部が配置されていない。また、比較例の空気入りタイヤは、カーカス層の表面に導電部が配置されているものの、導電部は、補強繊維を有していない。
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1~18は全て、カーカス層13の表面に、導電ゴム51に複数の補強繊維52が埋設される導電部50が配置されている。さらに、実施例1~18に係る空気入りタイヤ1は、導電部50に対する導電ゴム51の体積比率や、補強繊維52の打ち込み本数[本/50mm]、タイヤ周方向に対する補強繊維52の角度[°]、100℃における補強繊維52の弾性率[GPa]、導電ゴム51と補強繊維52とを合わせた体積抵抗率[Ω・cm]、導電部50の厚みGaに対する補強繊維52の外径Daの比率、導電部50の幅[mm]が、それぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤ1を用いて評価試験を行った結果、図13A、図13Bに示すように、実施例1~18に係る空気入りタイヤ1は、従来例に対して電気抵抗を低下させることができ、また、比較例よりもユニフォミティの悪化を抑えることができることが分かった。つまり、実施例1~18に係る空気入りタイヤ1は、空気入りタイヤ1の電気抵抗を低減させつつ、ユニフォミティの悪化を抑制することができる。
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1]
一対のビード部と、前記一対のビード部間に架け渡される少なくとも1層のカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層とを備えるタイヤであって、
前記カーカス層は、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]以上であり、
前記カーカス層の表面には、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満の導電ゴムと前記導電ゴムに埋設される複数の補強繊維とを有する導電部が配置されることを特徴とするタイヤ。
発明[2]
前記導電ゴムは、前記導電部に対する体積比率が0.2以上0.8以下の範囲内である発明[1]に記載のタイヤ。
発明[3]
前記補強繊維は、前記補強繊維が並ぶ方向における打ち込み本数が1[本/50mm]以上70[本/50mm]以下の範囲内である発明[2]に記載のタイヤ。
発明[4]
前記導電部は、前記ベルト層から前記ビード部まで延在して配置される発明[1]から発明[3]のいずれか1つに記載のタイヤ。
発明[5]
前記補強繊維は、タイヤ周方向に対して90°±20°の範囲内で配置される発明[1]から発明[4]のいずれか1つに記載のタイヤ。
発明[6]
前記補強繊維は、100℃における弾性率が6.2[GPa]以上の材料からなる発明[1]から発明[5]のいずれか1つに記載のタイヤ。
発明[7]
前記導電部は、前記導電ゴムと前記補強繊維とを合わせた体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満である発明[1]から発明[6]のいずれか1つに記載のタイヤ。
発明[8]
前記補強繊維は、前記導電部の厚みに対する外径の比率が0.25以上0.95以下の範囲である発明[1]から発明[7]のいずれか1つに記載のタイヤ。
発明[9]
前記導電部は、前記補強繊維が並ぶ方向における幅が3[mm]以上50[mm]以下の範囲内である発明[1]から発明[8]のいずれか1つに記載のタイヤ。
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
6 周方向主溝
10 ビード部
11 ビードコア
12 ビードフィラー
13 カーカス層
13a カーカス本体部
13b ターンナップ部
14 ベルト層
15 トレッドゴム
16 サイドウォールゴム
20 カーカス内側ゴム層
21 インナーライナ
22 タイゴム
25 タイヤ内表面
30 ビード部ゴム
31 リムクッションゴム
32 チェーファ
35 ビードトゥ
36 ビードベース
50 導電部
51 導電ゴム
52 補強繊維
60 アーストレッド

Claims (9)

  1. 一対のビード部と、前記一対のビード部間に架け渡される少なくとも1層のカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されるベルト層とを備えるタイヤであって、
    前記カーカス層は、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]以上であり、
    前記カーカス層の表面には、体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満の導電ゴムと前記導電ゴムに埋設される複数の補強繊維とを有する導電部が配置されることを特徴とするタイヤ。
  2. 前記導電ゴムは、前記導電部に対する体積比率が0.2以上0.8以下の範囲内である請求項1に記載のタイヤ。
  3. 前記補強繊維は、前記補強繊維が並ぶ方向における打ち込み本数が1[本/50mm]以上70[本/50mm]以下の範囲内である請求項2に記載のタイヤ。
  4. 前記導電部は、前記ベルト層から前記ビード部まで延在して配置される請求項1に記載のタイヤ。
  5. 前記補強繊維は、タイヤ周方向に対して90°±20°の範囲内で配置される請求項1に記載のタイヤ。
  6. 前記補強繊維は、100℃における弾性率が6.2[GPa]以上の材料からなる請求項1に記載のタイヤ。
  7. 前記導電部は、前記導電ゴムと前記補強繊維とを合わせた体積抵抗率が1×10^8[Ω・cm]未満である請求項1に記載のタイヤ。
  8. 前記補強繊維は、前記導電部の厚みに対する外径の比率が0.25以上0.95以下の範囲である請求項1に記載のタイヤ。
  9. 前記導電部は、前記補強繊維が並ぶ方向における幅が3[mm]以上50[mm]以下の範囲内である請求項1に記載のタイヤ。
JP2022189417A 2022-11-28 タイヤ Pending JP2024077360A (ja)

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