JP2023075322A - ガスケット - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、ハウジングとハウジング内に挿入される軸部材との間の環状隙間を密封するガスケットに関する。
ガスケットは、互いに相対移動せずに静止した二つの部材の間の隙間を密封するシール部品として自動車などの様々な分野の機械に装着されている。例えば、特許文献1には、第2部材(以下、ハウジングと言う)とハウジング内に挿入された第1部材(以下、軸部材と言う)との間の環状隙間に挿入されたガスケットが開示されている。このようなガスケットは、ハウジングにおける軸部材が挿入される部分の内周面と軸部材の外周面とに密着することによって密封機能を発揮するものであり、内外径シールとも呼ばれている。そして、特許文献1に開示されたガスケットは、ハウジング内に挿入される円筒状のガスケット本体部(以下、本体部と言う)と、本体部の内周面から延びて軸部材の外周面に接触する環状リップ部(以下、シール部と言う)とを有している。このシール部は、本体部の内周面に接続する基端部と軸部材の外周面に接触する先端部とを有し、基端部から先端部に向かうほど縮径されたテーパー筒状に形成されている。このシール部は軸部材の外周面に対してそれぞれ概ね同一方向に傾斜した内側の傾斜面と外側の傾斜面とを有している。
しかしながら、特許文献1に開示された内外径シールタイプのガスケットは、軸部材の外周面に接触するシール部が全体としてテーパー筒状に形成されたいわゆるリップタイプで構成されており、ハウジングと軸部材との間の環状隙間への挿入の際に変形し易い構造を有している。したがって、このガスケットが環状隙間へ挿入されて組付けられる(装着される)と、例えばシール部が意図しない形状に変形し、その結果、シール部(例えばシール部の頂部)が意図するシール面に位置せずにシール面から脱落するおそれがある。その結果、例えば組付け後のガスケットが意図しない形状に変形していた場合には、作業者等は組付け作業をやり直す必要がある。このため、特許文献1に開示されたガスケットでは、環状隙間への組付け作業におけるシール部の意図するシール面からの脱落を防止するための工夫が求められ得る。
そこで、本発明は、環状隙間に容易に組付けられることが可能なガスケットを提供することを目的とする。
本発明の一側面によると、ハウジングとハウジング内に少なくとも一部が挿入された軸部材との間の環状隙間に軸部材の一端側から他端側に向かって挿入されるガスケットが提供される。このガスケットは、ハウジングに挿入されてハウジングに固定される筒状の本体部と、本体部の内周面から延びて軸部材の外周面に当接するシール部と、を含んでいる。シール部は、本体部の内周面における挿入方向の中間の部位にて周方向の全体に亘って延び且つ径方向の内側に突出した突条からなっている。
本発明の一側面によれば、環状隙間に容易に組付けられることが可能なガスケットを提供することができる。
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態におけるガスケット1の断面図であり、図2はガスケット1の部分拡大断面図である。なお、図1及び図2では、ガスケット1の装着対象の機械の一部が二点鎖線で示されており、図の簡略化のためガスケット1は装着前(つまり、弾性変形前)の状態で示されている。
図1は本実施形態におけるガスケット1の断面図であり、図2はガスケット1の部分拡大断面図である。なお、図1及び図2では、ガスケット1の装着対象の機械の一部が二点鎖線で示されており、図の簡略化のためガスケット1は装着前(つまり、弾性変形前)の状態で示されている。
[ガスケットの概要と装着対象]
ガスケット1は、自動車、自動二輪車、一般産業機械といった様々な機械において、互いに相対移動せずに静止した二つの部材(100、200)の間の環状隙間Gに装着され、上記機械内の流体の流出を防止するために用いられるものである。二つの部材とは、ハウジング100と軸部材200である。例えば、ハウジング100には、円形断面を有した軸孔101が形成されており、この軸孔101に円柱状の軸部材200が挿入されている。ガスケット1の装着対象の機械の一例としては、自動車のCVT(Continuously Variable Transmission)用のオイルポンプが挙げられる。このオイルポンプはハウジング100と軸部材200とを有し、軸孔101と軸部材200との間に、環状隙間Gが設けられている。ハウジング100及び軸部材200は、軸部材200の軸線Xの延伸方向及び軸線X回りの回転方向について互いに相対移動せずに静止している。
ガスケット1は、自動車、自動二輪車、一般産業機械といった様々な機械において、互いに相対移動せずに静止した二つの部材(100、200)の間の環状隙間Gに装着され、上記機械内の流体の流出を防止するために用いられるものである。二つの部材とは、ハウジング100と軸部材200である。例えば、ハウジング100には、円形断面を有した軸孔101が形成されており、この軸孔101に円柱状の軸部材200が挿入されている。ガスケット1の装着対象の機械の一例としては、自動車のCVT(Continuously Variable Transmission)用のオイルポンプが挙げられる。このオイルポンプはハウジング100と軸部材200とを有し、軸孔101と軸部材200との間に、環状隙間Gが設けられている。ハウジング100及び軸部材200は、軸部材200の軸線Xの延伸方向及び軸線X回りの回転方向について互いに相対移動せずに静止している。
このように、ガスケット1は、ハウジング100とハウジング100内に少なくとも一部が挿入された軸部材200との間の環状隙間Gに挿入されるものであり、いわゆる内外径シールタイプのシール部品である。ガスケット1が環状隙間Gに挿入されて上記機械に装着されることにより、上記機械の内部空間S1が画成されている。この内部空間S1は、ガスケット1の密封対象である流体(本実施形態ではオイル)が存在する領域に連通しており、ガスケット1によって大気領域S2との連通が遮断されるように構成されている。内部空間S1内の圧力は、CVTの作動時などには大気領域S2の圧力より高い。
図1には、ハウジング100における軸孔101の一端側の開口を含む部分が示されており、軸孔101の一端はハウジング100の一端面102に開口している。本実施形態では、この軸孔101の一端側の部分(つまり、軸孔101におけるハウジング100の一端面102側の部分)に、軸部材200の一端部が位置しており、軸部材200はその軸線Xを軸孔101の孔中心に概ね合わせて軸孔101に挿入されている。特に限定されるものではないが、本実施形態では、軸部材200の一端部は小径部201と小径部201より軸部材200の他端部側に位置し且つ小径部201の外径より大きい外径を有した大径部202とを有し、段付き状に形成されている。軸部材200の小径部201の先端面(つまり、軸部材200の一端面)はハウジング100の一端面102より僅かに内部空間S1側に位置している。そして、軸部材200の大径部202の外径は、軸孔101の内径より僅かに小さく設定されている。
本実施形態では、ハウジング100と軸部材200との間の環状隙間Gは、ハウジング100の軸孔101の内周面における一端面102側の部分と軸部材200の一端部における小径部201の外周面201aとの間に形成されている。そして、ガスケット1は、この環状隙間Gに軸部材200の一端側から他端側に向かって挿入される。つまり、ガスケット1の環状隙間Gへの挿入方向V1は、軸部材200の軸線Xと平行である。そして、ガスケット1における挿入方向V1についての先端側の端面(後述する本体部10の先端面11及び補強環30の内向きフランジ部32の端面32a)は軸部材200の大径部202における小径部201側の円環状端面203に対向し、ガスケット1における挿入方向V1についての後側の端面(後述する本体部10の後端面12)は円環状端面203と反対側に向いている。具体的には、本実施形態では、ガスケット1は、ハウジング100の一端面102における軸孔101の一端側の開口からなる挿入口を介してハウジング100内に挿入されている。特に限定されるものではないが、より詳しくは、ガスケット1はハウジング100の一端面102における軸孔101の一端側の開口からなる上記挿入口から挿入され、その後、この状態で、軸部材200の小径部201がガスケット1における挿入方向V1についての先端側(後述する本体部10の先端面11側及び補強環30の内向きフランジ部32の端面32a側)からガスケット1内に挿入される。その結果、ガスケット1が環状隙間Gに挿入された状態になっている。そして、本実施形態では、ガスケット1の挿入方向V1と軸部材200の挿入方向V2が互いに逆向きである。換言すると、ガスケット1はハウジング100の軸孔101内に大気側から挿入され、軸部材200はハウジング100の軸孔101内に機内側から挿入されている。
[ガスケットの概略構成]
ガスケット1は、筒状の本体部10とシール部20とを含んで構成されている。本体部10とシール部20は、一体に成形されており、弾性材からなるものである。弾性材としては、ゴム又は熱可塑性エラストマーといった材料が用いられている。
ガスケット1は、筒状の本体部10とシール部20とを含んで構成されている。本体部10とシール部20は、一体に成形されており、弾性材からなるものである。弾性材としては、ゴム又は熱可塑性エラストマーといった材料が用いられている。
本体部10は、ハウジング100内に挿入されてハウジング100に固定される部分であり、概ね円筒状に形成されている。
本体部10における挿入方向V1についての先端側の端面である先端面11(換言すると、最先に環状隙間Gに挿入される端面)、及び、本体部10における挿入方向V1についての後側の端面である後端面12は、互いに平行で且つ軸線Xに対して直交する方向に延びている。
本体部10の先端面11は、軸部材200の大径部202の円環状端面203に対向しており、平坦な円環状の面として形成されている。本実施形態では、ガスケット1の環状隙間Gへの挿入深さ(例えば、ハウジング100の一端面102と本体部10の先端面11との間の軸線Xの延伸方向の距離)は、本体部10の先端面11と大径部202の円環状端面203との間に隙間が空くように設定されている。前述した内部空間S1は、先端面11と円環状端面203と軸孔101の内周面と軸部材200の小径部201の外周面201aとにより区画されている。
本体部10の後端面12は、円環状端面203と反対側に向いており、平坦な円環状の面として形成されている。
本体部10の外周面13は軸線Xと平行に延びる円筒面からなり、本体部10の外径は軸孔101の内径より僅かに大きく設定されている。ガスケット1が環状隙間Gに挿入された状態で、本体部10は弾性変形しその外周面13が軸孔101の内周面に密着する。その結果、本体部10がハウジング100に固定されている。
本体部10の内周面14には、後述するようにシール部20が突設されている。この本体部10の内周面14におけるシール部20の突設領域を除く部分の内径は、軸部材200の小径部201の外径よりも大きく設定されている。
シール部20は、本体部10の内周面14から延びて軸部材200(本実施形態では小径部201)の外周面201aに当接する部分である。つまり、軸部材200の外周面201aがシール面である。なお、シール部20の形成位置及び形状については、後に詳述する。
ガスケット1が環状隙間Gに挿入された状態で、シール部20は弾性変形してその先端部(後述するシール部20の頂部21)を含む部分が小径部201の外周面201aに密着すると共に、前述したように本体部10の外周面13が軸孔101の内周面に密着する。このようにして、ハウジング100の軸孔101の内周面(換言するとハウジング100の内周面)と軸部材200の小径部201の外周面201aとの間の環状隙間Gを密封するいわゆる内外径シールタイプのガスケット1が構成されている。
本実施形態では、本体部10とシール部20との一体成形品の内部には、補強環30が埋設されている。補強環30は、主に本体部10を補強して支持する部材であり、本体部10内に位置している。換言すると、本体部10は概ね補強環30に沿って延び補強環30の表面に接着されて取り付けられている。補強環30は、例えば、金属材からなり、プレス加工によって成形されている。金属材としては、ステンレス鋼やSPCCやSPHCといった板状の材料群の中から選択した所定の材料が用いられる。
補強環30は、例えば概ねL字状断面を有して軸線X回りに環状に成形されている。補強環30は円筒部31と内向きフランジ部32とを含み、これらの部位(31、32)が一体に成形されている。
円筒部31は、円筒状に形成されており、本体部10の外周面13と内周面14との間で、且つ、本体部10の先端面11と後端面12の外側端面部12aとの間に位置している。詳しくは、円筒部31は、本体部10内において外周面13側に寄せた位置に設けられている。
内向きフランジ部32は、円筒部31における本体部10の先端面11側の端部から本体部10の内周面14の手前まで概ね径方向内側に向かって延びるフランジ状(円環状)の部分である。本実施形態では、内向きフランジ部32における厚み方向について本体部10の先端面11側の端面32aは、例えば、内部空間S1に露出している。そして、内向きフランジ部32の端面32aは、本体部10の先端面11と協働してガスケット1における挿入方向V1についての先端側の端面を構成している。なお、フランジ部32の先端面11側の端面32aは内部空間S1に露出していなくてもよい。
[ガスケットの詳細構造]
次に、本実施形態におけるガスケット1の詳細構造について説明する。
次に、本実施形態におけるガスケット1の詳細構造について説明する。
シール部20は、本体部10の内周面14における挿入方向V1の中間の部位にて周方向全体に亘って延び且つ径方向の内側に突出した突条からなる。「突条」とは、平坦な面から隆起して細長く伸びる中実の部分であり、いわゆるビードである。つまり、突条からなるビードタイプのシール部20は、テーパー筒状に形成されたいわゆるリップタイプの従来のシール部とは全く異なる形状を有している。
具体的には、シール部20は、頂部21と第1傾斜面22と第2傾斜面23とを含んで構成され、全体として円環状に形成されている。本実施形態では、シール部20は、径方向内側に頂部21を有した概ね山形の断面を有して本体部10の周方向(軸線X回り)の全体に亘って細長く伸びている。シール部20の内径は、ガスケット1が所定の締め代で弾性変形するように軸部材200の小径部201の外径より小さく設定されている。
頂部21は、軸部材200の小径部201の外周面201aに当接する部分であり、隆起した山の頂の部分でもある。本実施形態では、頂部21は滑らかに湾曲しており、第1傾斜面22と第2傾斜面23との間を滑らかに接続している。
第1傾斜面22は、概ね山形の断面のシール部20における本体部10の先端面11側(つまり、シール部20における挿入方向V1についての先端側)の斜面である。換言すると、第1傾斜面22は、頂部21から先端面11側に向かうほど軸部材200の小径部201の外周面201aに対して径方向に離れるように傾斜している。
第2傾斜面23は、シール部20における本体部10の後端面12側(つまり、シール部20における挿入方向V1についての後側)の斜面である。換言すると、第2傾斜面23は、頂部21から後端面12側に向かうほど小径部201の外周面201aに対して径方向に離れるように傾斜している。
このように、シール部20は、中実の概ね山形の断面を有している。詳しくは、突条のシール部20は、軸線Xの延伸方向について頂部21の両側にそれぞれ広がった斜面(第1傾斜面22及び第2傾斜面23)を有した中実の断面を有し、頂部21を中心として軸線Xの延伸方向に所定の幅を有している。したがって、突条のシール部20は、弾性変形し易く不安定な従来のリップタイプのシール部と比較すると、形状が比較的に安定し本体部10に対して比較的に安定して支持される構造を有している。
また、本実施形態では、本体部10の内周面14におけるシール部20より挿入方向V1について後方(後端面12側)の部分である後方内周面部14aは、本体部10の内周面14におけるシール部20より挿入方向V1について前方(先端面11側)の部位である前方内周面部14bに対して、径方向の内側に位置している。つまり、後方内周面部14aの内径が前方内周面部14bの内径より小さい。本実施形態では、後方内周面部14a及び前方内周面部14bは互いに平行に延び且つ軸部材200(小径部201)の外周面201aに対して平行に延びる円筒面からなっている。そして、後方内周面部14aと頂部21との間が第2傾斜面23によって接続され、頂部21と前方内周面部14bとの間が第1傾斜面22によって接続されている。後方内周面部14aと第2傾斜面23との接続部分は滑らかに湾曲し、前方内周面部14bと第1傾斜面22との接続部分も滑らかに湾曲している。
次に、ガスケット1が環状隙間Gに挿入されて組付けられる際の状態について、図3を参照して説明する。図3は、ガスケット1の弾性変形について説明するための概念図であり、図3(a)はガスケット1の組付け前(装着前)の状態を示し、図3(b)はガスケット1の組付け後(装着後)の状態を示している。なお、図3(b)に示す状態では、内部空間S1の圧力は大気領域S2の圧力と同程度であるものとする。また、図の簡略化のため、補強環30は図示省略されている。
作業者等は、ガスケット1をハウジング100の軸孔101内に挿入して組付けるため、ガスケット1の本体部10の先端面11を軸部材200の円環状端面203に対向させる。この時、ガスケット1の本体部10の先端面11は、ハウジング100の一端面102における軸孔101の一端側の開口からなる挿入口の近傍に位置している。この状態で、ガスケット1は、図示を省略された治具によって軸部材200の一端側(図では上側)から他端側(図では下側)に向かって押圧される。これにより、図3(a)に実線で示されたガスケット1のように、ガスケット1は、ハウジング100の軸孔101内に白抜き矢印で示すように軸部材200の一端側から他端側に向かう挿入方向V1で挿入される。
軸孔101内への挿入の際に、ガスケット1の本体部10の先端面11側の部分が先に挿入される(押し込まれる)。この時、本体部10は軸孔101の内周面に合わせた形状に弾性変形し始めると共に、本体部10の外周面13が軸孔101の内周面に沿って摺動する。そして、ガスケット1は最終的に治具によって定まる所定の挿入深さまで挿入される。一方、本体部10の内周面14(詳しくは前方内周面部14b)は軸部材200の外周面201aに接触していない。
本実施形態では、ガスケット1が図3(a)に示すように所定の挿入深さまで挿入された後に、軸部材200が図示を省略された治具によって二点鎖線で示すようにガスケット1の挿入方向V1と反対の挿入方向V2で押圧されて挿入され始める。軸部材200が更に挿入されると、図3(a)に破線で示すように小径部201の先端面側のR形状で面取りされた角部がシール部20の第1傾斜面22に当接する。そして、図3(a)に破線で示す状態から、軸部材200が更に深く挿入されると、ガスケット1のシール部20が弾性変形し始める。詳しくは、この挿入の過程において、シール部20の第1傾斜面22における小径部201との接触箇所Cの位置が徐々に頂部21側に近づく。その結果、軸部材200が挿入されるほど、シール部20の径方向外側への締め代(圧縮量)が増加し、シール部20が徐々に径方向外側に押し潰されると共に後端面12側(挿入方向V1について後側)に歪むように押圧されて、シール部20を含む部分が扁平に弾性変形する。シール部20の径方向外側への締め代は、シール部20の頂部21が小径部201の外周面201aの位置に到達するまで増加する。シール部20の頂部21が小径部201の外周面201aの位置(シール面の位置)に到達した後、軸部材200は更に深く挿入される。そして、図3(b)に示すように、軸部材200は最終的に治具によって定まる位置まで挿入される。これにより、ガスケット1の環状隙間Gへの組付けが完了する。このシール部20の弾性変形の過程において、ガスケット1のシール部20はいわゆるOリングと同様に概ね径方向外側に圧縮されて扁平に弾性変形し、シール部20が概ね意図した位置・範囲(シール面)及び形状で軸部材200の外周面201aに密着している。
また、ガスケット1の組付け過程(詳しくは軸部材200の挿入の過程)において、軸部材200の挿入に必要な挿入荷重の大きさは、挿入初期段階から徐々に高くなって所定の最大挿入荷重に達した後、所定の中間値まで徐々に低下する。挿入に必要な挿入荷重の大きさが所定の中間値まで低下した後は、挿入深さが深くなっても、挿入に必要な挿入荷重の大きさは変化せずに概ね中間値で固定される。
本実施形態によるガスケット1によれば、シール部20は突条からなる、いわゆるビードタイプであるため、弾性変形し易く不安定な従来のリップタイプのシール部と比較すると、形状が比較的に安定し本体部10に対して比較的に安定して支持される構造を有している。そのため、シール部20の弾性変形の過程において、シール部20が概ね意図した位置・範囲(シール面)及び形状で軸部材200の外周面201aに密着する。したがって、シール部20の頂部21が意図するシール面(つまり軸部材200の外周面201a)に確実に当接し、その結果、シール部20の頂部21のシール面からの脱落が確実に防止される。そして、従来のリップタイプのシール部を有するガスケットで起こり得る組付け作業のやり直しが低減又はなくなり、組付け作業の工数が低減され得る。このようにして、環状隙間Gに容易に組付けられることが可能なガスケット1が提供される。
本実施形態では、本体部10内に、補強環30が埋設されている。これにより、本体部10が安定して支持され、その結果、シール部20の支持が安定化されて、シール部20の弾性変形も安定する。したがって、シール部20の頂部21のシール面からの脱落がより確実に防止され、組付け作業の工数が効果的に低減し得る。
ここで、図4は、本実施形態のガスケット1と比較するための参考のガスケットZの部分断面図である。参考のガスケットZでは、そのシール部20’の形状のみがガスケット1のシール部20と異なっている。参考のガスケットZでは、シール部20’は従来と同様にテーパー筒状のリップタイプである。そして、本実施形態のようにガスケットZの挿入方向V1と軸部材200の挿入方向V2が互いに逆向きの場合には、この参考のガスケットZの組付けの際の軸部材200の挿入を考慮すると、テーパー筒状のシール部20’の先端部が軸部材200の挿入方向V2の先端側、つまり、図4では上側に向くように、ガスケットZを配置する必要がある。その結果、CVTの作動時などにおいて、内部空間S1の圧力が大気領域S2の圧力より高くなると、この参考のガスケットZでは、内部空間S1の圧力によって、シール部20の全体が軸部材200の外周面201aから離れる方向(図中点線矢印で示す方向)に変形し得る。そして、この変形が過度に進んで、シール部20の先端部が外周面201aから完全に離れると、内部空間S1内の密封対象の流体が大気領域S2に吹き抜けて漏れ出るおそれがある。つまり、リップタイプのシール部20’が採用された場合には、ガスケットの組付けの際に、上下の方向性があり、組付け方向(挿入方向)について制約を受けることになり、その結果、上述した吹き抜けの問題が生じ得る。この点、本実施形態におけるガスケット1では、ビードタイプのシール部20が採用されているため、組付けの際の上下の方向性は基本的にはない上、軸線Xの延伸方向の力(つまり内部空間S1の圧力)が作用することに起因した弾性変形は極僅かである。その結果、本実施形態のガスケット1によれば、内部空間S1の圧力に起因する上述した吹き抜けの現象が発生することを効果的に防止することができる。
[変形例]
なお、本実施形態では、シール部20の頂部21は湾曲した面であるものとしたが、これに限らない。例えば、図示を省略するが、シール部20の頂部21は、軸部材200の外周面201aに対して平行に伸び且つ平坦な面からなるものとしてもよい。これにより、シール部20における軸部材200の外周面201aに接触する領域の軸線X方向の幅(つまり、シール幅)が十分に大きく確保され、シール性能を向上させることができる。また、このシール幅を調整することによって、シール性能や最大挿入荷重が容易に微調整され得る。
なお、本実施形態では、シール部20の頂部21は湾曲した面であるものとしたが、これに限らない。例えば、図示を省略するが、シール部20の頂部21は、軸部材200の外周面201aに対して平行に伸び且つ平坦な面からなるものとしてもよい。これにより、シール部20における軸部材200の外周面201aに接触する領域の軸線X方向の幅(つまり、シール幅)が十分に大きく確保され、シール性能を向上させることができる。また、このシール幅を調整することによって、シール性能や最大挿入荷重が容易に微調整され得る。
ここで、ガスケット1のシール部20はそれ自体の形状が比較的に安定している突条(つまりビードタイプ)であるため、従来のリップタイプのシール部20と比較すると、ガスケット1を環状隙間Gへ挿入するための最大挿入荷重がリップタイプの場合の最大挿入荷重より高くなる場合がある。この点については、以下の図5~図9に示す変形例に係るガスケット1では、以下で詳述する工夫が施されている、つまり、本体部10における挿入方向V1の後側の部分に、剛性の低い弱点部が設けられている。
詳しくは、図5に示す変形例のガスケット1では、本体部10の内周面14における後方内周面部14aは、本体部10の内周面14における前方内周面部14bに対して、径方向の外側に位置していると共に、後方内周面部14aが大径の円錐面として形成されて前方内周面部14bに対して平行ではない。このように、図5に示すガスケット1においては、本体部10における挿入方向V1の後側の部分が径方向外側に大きく凹んでおり、この部分が弱点部として機能している。つまり、この大きく凹んだ部分は、ガスケット1を環状隙間Gに挿入するための最大挿入荷重を低減させる機能を有している。また、図5では、第2傾斜面23は途中で屈曲しているが、これに限らず、全体として直線的に延びていてもよい。そして、図6に示すように、シール部20の頂部21が、軸部材200の外周面201aに対して平行に伸び且つ平坦な面からなるものとしてもよい。これにより、シール性能を向上させることができる。
図7に示す変形例のガスケット1では、図5及び図6と同様に本体部10の内周面14における後方内周面部14aは、本体部10の内周面14における前方内周面部14bに対して、径方向の外側に位置している。そして、このガスケット1では、後方内周面部14a及び前方内周面部14bは、互いに平行に伸び且つ軸部材200の外周面201aに対して平行である。つまり、図7に示すガスケット1では、本体部10における挿入方向V1についての後側の部分を径方向外側に大きく凹ませて、後方内周面部14aを大径の円筒面として形成することによって、本体部10における挿入方向V1の後側の部分に、剛性の低い弱点部が設けられている。
また、図8に示す変形例のガスケット1では、図6の変形例の特徴と図7の変形例の特徴の双方が備えられている。すなわち、図8のガスケット1では、図6と同様に、シール部20の頂部21が、軸部材200の外周面201aに対して平行に伸び且つ平坦な面からなっている。さらに図8のガスケット1では、図7と同様に、後方内周面部14a及び前方内周面部14bは互いに平行に伸び且つ軸部材200の外周面201aに対して平行な円筒面であり、後方内周面部14aは前方内周面部14bよりも相対的に大径である。このような形態では、平坦面からなるシール部20の頂部21によりシール性能の向上を図るとともに、前方内周面部14bよりも相対的に大径の後方内周面部14aにより環状隙間Gへガスケット1を挿入する際の最大挿入荷重の低減を図ることができる。
図9に示す変形例のガスケット1では、本体部10の後端面12に溝部15を形成することによって、本体部10における挿入方向V1の後側の部分に、剛性の低い弱点部が設けられている。詳しくは、図9に示すガスケット1では、後端面12は、径方向の外側端面部12aと径方向の内側端面部12bとからなっている。外側端面部12a及び内側端面部12bはそれぞれ平坦な円環状の面として形成されている。外側端面部12aと内側端面部12bとの間には、段差が形成されており、内側端面部12bが先端面11側に寄せられている。本体部10の後端面12としての外側端面部12a及び内側端面部12bの全体を、後端面部と呼ぶこともできる。そして、溝部15は、本体部10の外周面13と本体部10の内周面14(詳しくは後方内周面部14a)との間に位置し、且つ、後端面12で周方向全体に亘って凹んだ部分である。具体的には、溝部15は、後端面(後端面部)12における外側端面部12aと内側端面部12bとの間の境界部分(段差部分)に形成されている。
このように、図5~図9に示したガスケット1では、本体部10における挿入方向V1の後側の部分の剛性が意図的に低く設定されている。このため、軸部材200の挿入過程において、本体部10における大きく凹んだ部分(図5~図8参照)や溝部15(図9参照)を含む部分が弱点部として機能して扁平に弾性変形し、シール部20自体の弾性変形に基づくシール部20から軸部材200の外周面201aに作用する反力の大きさが低下する。したがって、シール部20の頂部21が概ね小径部201の外周面201aの位置に到達した後において、本体部10の挿入方向V1の後側の部分におけるシール部20に対する支持力が弱くなっている。詳しくは、シール部20における第2傾斜面23を含む部分を支持する本体部10における挿入方向V1の後側の部分の支持力(剛性)が弱くなっている。そのため、軸部材200の挿入過程において、シール部20から軸部材200の外周面201aに作用する反力の大きさが低下し、軸部材200の挿入過程の際の最大挿入荷重が、図1~図3に示す弱点部を有さない場合の最大挿入荷重より低くなっている。その結果、リップタイプのシール部の場合と同程度の最大挿入荷重が設定され得る。
また、図示を省略するが、図9に示す変形例のガスケット1において、後方内周面部14aが前方内周面部14bに対して径方向の外側に位置し、この後方内周面部14aと補強環30の円筒部31の内周面との間に溝部15が設けられてもよい。これにより、最大挿入荷重がより効果的に低下し得る。また、図9に示すガスケット1において、後端面12に段差部分が形成されているが、この段差部分は形成されなくてもよい。
また、上記の説明では、ガスケット1がハウジング100の軸孔101に挿入された状態で、軸部材200がガスケット1内に挿入されることで、ガスケット1がハウジング100と軸部材200との間の環状隙間Gに挿入されているものとしたが、これに限らず、ハウジング100の軸孔101に軸部材200が挿入された状態で、ガスケット1が環状隙間Gに挿入されてもよい。この場合におけるガスケット1を環状隙間Gに挿入する際の最大挿入荷重は、軸部材200についての上記最大挿入荷重と実質的に同じである。また、ガスケット1の挿入方向V1と軸部材200の挿入方向V2は同じであってもよい。
上記の説明では、ガスケット1は補強環30を有するものとしたが、これに限らず、補強環30を有さなくてもよい。この場合、補強環30に相当する部分は、例えば、本体部10と同材料の部材で本体部10と一体に形成され得る。また、ガスケット1の装着対象である機械は、CVTに限らず、ハウジングとハウジング内に少なくとも一部が挿入された軸部材との間に環状隙間が形成され、この環状隙間を密封する必要がある機械であればよい。
以上、本発明の好ましい実施形態及びその変形例について幾つか説明したが、本発明は上記実施形態及び上記変形例に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形及び変更が可能である。
本発明は、環状隙間へのガスケットの組付けを容易にするのに有用である。
1…ガスケット、10…本体部、12…本体部の後端面、14…本体部の内周面、14a…後方内周面部、14b…前方内周面部、15…溝部、20…シール部、21…シール部の頂部、100…ハウジング、200…軸部材、201a…軸部材の外周面、G…環状隙間、V…挿入方向。
Claims (5)
- ハウジングと前記ハウジング内に少なくとも一部が挿入された軸部材との間の環状隙間に前記軸部材の一端側から他端側に向かって挿入されるガスケットであって、
前記ハウジング内に挿入されて前記ハウジングに固定される筒状の本体部と、
前記本体部の内周面から延びて前記軸部材の外周面に当接するシール部と、
を含み、
前記シール部は、前記本体部の前記内周面における挿入方向の中間の部位にて周方向の全体に亘って延び且つ径方向の内側に突出した突条からなる、
ガスケット。 - 前記本体部における前記挿入方向についての後端面には、環状の溝部が形成されている、請求項1に記載のガスケット。
- 前記本体部の前記内周面における前記シール部より前記挿入方向について後方の部分である後方内周面部は、前記本体部の前記内周面における前記シール部より前記挿入方向について前方の部位である前方内周面部に対して、径方向の外側に位置している、請求項1に記載のガスケット。
- 前記シール部の頂部は、前記軸部材の前記外周面に対して平行に伸び且つ平坦な面からなる、請求項1~3のいずれか一つに記載のガスケット。
- 前記シール部の頂部は、前記軸部材の前記外周面に対して平行に伸び且つ平坦な面からなり、
前記本体部の前記内周面における前記シール部より前記挿入方向について、後方の部分である後方内周面部及び前方の部分である前方内周面部は、互いに平行に伸び且つ前記軸部材の前記外周面に対して平行な円筒面であって、前記後方内周面部は前記前方内周面部よりも相対的に大径である、請求項1に記載のガスケット。
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