JP2023068392A - 電極活物質、電極およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】所定の有機硫黄材料からなる電極活物質、当該電極活物質を含んでなる電極組成物をプレス処理することにより体積エネルギー密度が向上した電極組成物層を含んでなる電極、すなわち、正極または負極、および、当該電極を含んでなるリチウムイオン二次電池を提供すること。【解決手段】アクリル樹脂の粒子を硫黄で変性した有機硫黄材料からなる電極活物質であり、前記有機硫黄材料の任意の5粒子のそれぞれについて、粒子径をd(μm)、微小圧縮試験で粒子の破壊が起こる瞬間の試験力をP(mN)とするとき、下記式で算出される破壊強度Cs(MPa)の平均値が47.4未満である電極活物質。Cs=2.48×P/πd2(但し、dは有機硫黄材料の粒子について直交する2方向で計測した径の平均値であり、πは円周率(3.14)である。)【選択図】なし
Description
本開示は、新規な電極活物質、当該電極活物質を含んでなる電極、および、当該電極を含んでなるリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池は充放電容量が大きいため、主として携帯電子機器用の電池として用いられている。またリチウムイオン二次電池は、電気自動車用の電池としても使用量が増加しており、性能の向上が期待されている。
特許文献1には、硫黄粉末とポリアクリロニトリル粉末を含む原料粉末を非酸化性雰囲気下で加熱して得た、リチウムイオン二次電池用の正極活物質が記載されている。
一方、負極活物質としては、ケイ素(Si)、スズ(Sn)などのより多くのリチウムイオンを吸蔵および放出可能な材料を用いることで、リチウムイオン二次電池の電池容量を増加させることが提案されている。
しかし、特許文献1の正極活物質は、原料であるポリアクリロニトリルが高価であること、特に、品質が安定したポリアクリロニトリルはより高価であるため、リチウムイオン二次電池を安価に提供し難いという問題がある。負極活物質として提案されている上記材料は、リチウムイオンの吸蔵および放出に伴う体積変化が大きいため、充放電を繰り返した際のサイクル特性が良好ではないという問題がある。また、グラファイトやハードカーボンといった炭素材料も用いられるが、既に理論容量に達しつつあり、大幅な容量向上は見込めない状況である。
また、電極活物質については、その容量が向上するとしても、電極としたときの単位体積あたりの容量、すなわち、体積エネルギー密度(mAh/cm3)が向上しなければ、電池の小型化に支障をきたすという問題もある。
本開示は、所定の有機硫黄材料からなる電極活物質、当該電極活物質を含んでなる電極組成物をプレス処理することにより体積エネルギー密度が向上した電極組成物層を含んでなる電極、すなわち、正極または負極、および、当該電極を含んでなるリチウムイオン二次電池を提供しようとするものである。
本発明者は、上記課題解決のため鋭意検討した結果、硫黄で変性したアクリル樹脂粒子である有機硫黄材料であって、破壊強度が所定の値未満のものを用いれば、体積エネルギー密度が向上した電極が得られることを見出し、さらに検討を重ねて、本開示を完成した。
すなわち、本開示は、アクリル樹脂の粒子を硫黄で変性した有機硫黄材料からなる電極活物質であり、前記有機硫黄材料の任意の5粒子のそれぞれについて、粒子径をd(μm)、微小圧縮試験で粒子の破壊が起こる瞬間の試験力をP(mN)とするとき、下記式で算出される破壊強度Cs(MPa)の平均値が47.4未満である電極活物質に関する。
Cs=2.48×P/πd2
(但し、dは有機硫黄材料の粒子について直交する2方向で計測した径の平均値であり、πは円周率(3.14)である。)
Cs=2.48×P/πd2
(但し、dは有機硫黄材料の粒子について直交する2方向で計測した径の平均値であり、πは円周率(3.14)である。)
本開示によれば、所定の有機硫黄材料からなる電極活物質、当該電極活物質を含んでなる電極組成物をプレス処理することにより体積エネルギー密度が向上した電極組成物層を含んでなる電極、すなわち、正極または負極、および、当該電極を含んでなるリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本明細書において、「体積エネルギー密度」とは、単位体積あたりの電極(電極組成物層)の放電容量(mAh/cm3)である。また、「サイクル特性」とは、充放電の繰り返しにも拘わらず、二次電池の充放電容量が維持される特性をいう。したがって、充放電の繰り返しに伴い、充放電容量の低下の度合いが大きく、容量維持率が低い二次電池はサイクル特性が劣っているのに対し、逆に、充放電容量の低下の度合いが小さく、容量維持率が高い二次電池はサイクル特性が優れている。
本開示において、数値範囲の記載に関する「以上」、「以下」、「~」にかかる上限および下限の数値は任意に組合せできる数値であり、加えて、実施例における数値を該上限および下限と組合せることもできる。また、「~」によって数値範囲を特定する場合、特に断りのない限り、その両端の数値も含む意味である。さらに、本開示において、両端の値を含むものとして示された数値範囲は、本開示の趣旨に反しない限り、その両端の値のうちいずれか一端の値を含まない数値範囲、さらには両端の値の双方を含まない数値範囲をも同時に示しているものと解される。
本開示の一実施形態は、アクリル樹脂の粒子を硫黄で変性した有機硫黄材料からなる電極活物質であり、前記有機硫黄材料の任意の5粒子のそれぞれについて、粒子径をd(μm)、微小圧縮試験で粒子の破壊が起こる瞬間の試験力をP(mN)とするとき、下記式で算出される破壊強度Cs(MPa)の平均値が47.4未満である電極活物質である。
Cs=2.48×P/πd2
(但し、dは有機硫黄材料の粒子について直交する2方向で計測した径の平均値であり、πは円周率(3.14)である。)
Cs=2.48×P/πd2
(但し、dは有機硫黄材料の粒子について直交する2方向で計測した径の平均値であり、πは円周率(3.14)である。)
理論に拘束されることは意図しないが、本開示において、体積エネルギー密度が向上した電極(電極組成物層)が得られるメカニズムは以下のように考えられる。すなわち、本開示で定義する破壊強度が所定値未満の有機硫黄材料は、破壊強度が所定値以上のものに比べて、電極を製造する際のプレス処理によって、潰れやすく、変形しやすい。このため、有機硫黄材料の粒子間の隙間が埋められやすく、より緻密な電極組成物の層(電極組成物層)が形成され、これにより、体積エネルギー密度が向上するものと考えられる。
前記有機硫黄材料のメジアン径は12.0μm未満であることが好ましい。
有機硫黄材料の粒子間の隙間を埋めやすいと考えられるからである。
前記アクリル樹脂は、下記式(1)で示されるアクリレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種を重合した重合体、下記式(1)で示されるアクリレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種と下記式(2)で示されるジアクリレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種とを重合した重合体、および、メタクリロニトリルを含むモノマーを重合した重合体からなる群から選択される少なくとも一の重合体を含むものであることが好ましい。
CH2=C(R11)COOR12 (1)
(ここで、R11は水素原子またはメチル基であり、R12はアルキル基である。)
CH2=C(R21)COO-Y-OCO(R22)C=CH2 (2)
(ここで、R21とR22は同一または異なって、水素原子またはメチル基であり、Yはヒドロカルビレン基であり、該ヒドロカルビレン基は水酸基およびアルキル基からなる群から選択される少なくとも一つの置換基を有していてもよく、かつ、ヒドロカルビレン基を構成する炭素骨格は酸素原子によるエーテル結合を有していてもよい。但し、当該エーテル結合が2以上あるとき隣接する酸素原子間には常に2以上の炭素原子が介在する。)
CH2=C(R11)COOR12 (1)
(ここで、R11は水素原子またはメチル基であり、R12はアルキル基である。)
CH2=C(R21)COO-Y-OCO(R22)C=CH2 (2)
(ここで、R21とR22は同一または異なって、水素原子またはメチル基であり、Yはヒドロカルビレン基であり、該ヒドロカルビレン基は水酸基およびアルキル基からなる群から選択される少なくとも一つの置換基を有していてもよく、かつ、ヒドロカルビレン基を構成する炭素骨格は酸素原子によるエーテル結合を有していてもよい。但し、当該エーテル結合が2以上あるとき隣接する酸素原子間には常に2以上の炭素原子が介在する。)
入手がしやすく、かつ、本開示の効果を発揮しやすいと考えられるからである。
R12は炭素数1~6のアルキル基であり、Yは炭素数2~6のヒドロカルビレン基であり、該ヒドロカルビレン基において、置換基の数は1~4であり、置換基であるアルキル基の炭素数は1~4であり、ヒドロカルビレン基を構成する炭素骨格が有するエーテル結合の数は1~2であることが好ましい。
入手がしやすく、かつ、本開示の効果を発揮しやすいと考えられるからである。
前記アクリル樹脂の粒子の粒子径は0.1~300.0μmであることが好ましい。
有機硫黄材料の粒子間の隙間を埋めやすいと考えられるからである。
前記アクリル樹脂の粒子は多孔質構造を有することが好ましい。
有機硫黄材料の粒子間の隙間を埋めやすいと考えられるからである。
有機硫黄材料中の硫黄量は50.00質量%以上であることが好ましい。
硫黄量が多い方が充放電容量を向上させやすいと考えられるからである。
本開示の他の実施形態は、前記電極活物質を含んでなる電極組成物がプレス処理された電極組成物層であって、密度が1.50g/cm3以上である電極組成物層である。
体積エネルギー密度を向上させることができるからである。
本開示の他の実施形態は、前記電極組成物層を含んでなる電極である。
本開示の他の実施形態は、前記電極を含んでなるリチウムイオン二次電池である。
<有機硫黄材料>
本開示の有機硫黄材料は、アクリル樹脂の粒子を硫黄で変性したものであって、任意の5粒子のそれぞれについて、粒子径をd(μm)、微小圧縮試験で粒子の破壊が起こる瞬間の試験力をP(mN)とするとき、下記式で算出される破壊強度Cs(MPa)の平均値が47.4未満である。
Cs=2.48×P/πd2
(但し、dは有機硫黄材料の粒子について直交する2方向で計測した径の平均値であり、πは円周率(3.14)である。)
本開示の有機硫黄材料は、アクリル樹脂の粒子を硫黄で変性したものであって、任意の5粒子のそれぞれについて、粒子径をd(μm)、微小圧縮試験で粒子の破壊が起こる瞬間の試験力をP(mN)とするとき、下記式で算出される破壊強度Cs(MPa)の平均値が47.4未満である。
Cs=2.48×P/πd2
(但し、dは有機硫黄材料の粒子について直交する2方向で計測した径の平均値であり、πは円周率(3.14)である。)
(破壊強度Cs)
有機硫黄材料の破壊強度Cs(MPa)は、後記の実施例の欄に記載の微小圧縮試験により求めることができる値である。
有機硫黄材料の破壊強度Cs(MPa)は、後記の実施例の欄に記載の微小圧縮試験により求めることができる値である。
破壊強度Cs(MPa)は、本開示の効果の観点から、40.0MPa以下が好ましく、より好ましくは30.0MPa以下、さらに好ましくは25.0MPa以下、さらに好ましくは23.2MPa未満、さらに好ましくは20.0MPa以下、さらに好ましくは15.0MPa以下、さらに好ましくは10.0MPa以下、さらに好ましくは5.0MPa以下である。
破壊強度Cs(MPa)の調節は、例えば、より小さい破壊強度の有機硫黄材料を得ようとする場合、架橋度のより小さいアクリル樹脂粒子を使用すればよい。このようなアクリル樹脂粒子を変性した有機硫黄材料は、架橋度の大きいものを使用した場合よりも、より潰れやすく、変形しやすいためである。あるいは、多孔質のアクリル樹脂粒子を用いることでも、多孔質でないアクリル樹脂粒子に比べて、破壊強度を小さくすることができる。
(構成元素)
有機硫黄材料の構成元素の質量比(%)は、後記の実施例の欄に記載の元素分析によって分析されたものである。
有機硫黄材料の構成元素の質量比(%)は、後記の実施例の欄に記載の元素分析によって分析されたものである。
有機硫黄材料は、炭素と硫黄を主たる成分とするものであり、硫黄量が多い方が充放電容量が向上する傾向にある。そのため、硫黄の含有量は多い程好ましい。一般に、硫黄量の好ましい範囲としては、有機硫黄材料中、50.00質量%以上であり、より好ましくは53.00質量%以上、さらに好ましくは55.00質量%以上、さらに好ましくは56.00質量%以上、さらに好ましくは60.00質量%以上である。ただし、導電性炭素材料を配合する場合には、当該導電性炭素材料を構成する炭素の影響で、硫黄の含有量が多少下回っても、充放電容量やサイクル特性の向上効果を期待できる場合がある。そのような場合の硫黄の含有量は、上述の硫黄量を約5.00質量%下回るものであってもよい。有機硫黄材料中の炭素量と硫黄量との合計は、好ましくは90.00質量%以上、より好ましくは95.00質量%以上、さらに好ましくは96.00質量%以上である。
また、焼成(変性)によりアクリル樹脂中の水素(H)は、硫黄と反応し、硫化水素となり、硫化物中から減っていく。したがって、有機硫黄材料の水素含有量は、1.80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.40質量%以下、さらに好ましくは1.00質量%以下、さらに好ましくは0.90質量%以下、さらに好ましくは0.80質量%以下、さらに好ましくは0.70質量%以下、さらに好ましくは0.60質量%以下、さらに好ましくは0.52質量%以下、あることが好ましい。1.80質量%以下である場合には、焼成が十分であるという傾向がある。したがって、この場合、充放電容量が向上する傾向にある。
(真密度)
有機硫黄材料の真密度(g/cm3)は、後記の実施例の欄に記載の方法によって得た重量と体積から算出される値である。
有機硫黄材料の真密度(g/cm3)は、後記の実施例の欄に記載の方法によって得た重量と体積から算出される値である。
真密度(g/cm3)は、用いるアクリル樹脂粒子の種類によって変動し得るが、本開示の実施例で用いるアクリル樹脂粒子を使用する場合、焼成(変性)が十分に進行すれば、1.6~2.0g/cm3の範囲に収まるものである。
(メジアン径)
有機硫黄材料のメジアン径(μm)は、後記の実施例の欄に記載の方法によって測定される値である。
有機硫黄材料のメジアン径(μm)は、後記の実施例の欄に記載の方法によって測定される値である。
メジアン径(μm)は、12.0μm未満が好ましく、より好ましくは11.0μm以下、さらに好ましくは10.0μm以下、さらに好ましくは9.0μm以下、さらに好ましくは8.5μm以下、さらに好ましくは8.3μm以下、さらに好ましくは6.0μm以下である。メジアン径(μm)の下限について、本開示の効果の観点から特に限定はないが、通常、0.1μm以上、あるいは、1.0μm以上程度である。メジアン径の調整は、例えば、より小さいメジアン径を得るには、使用するアクリル樹脂粒子としてより小さい粒子径のものを使用したり、あるいは、生成した有機硫黄材料を十分に粉砕等すればよい。
(電極活物質)
本開示の有機硫黄材料は、電極活物質、すなわち、正極活物質または負極活物質、とりわけ、リチウムイオン二次電池の電極活物質として使用することができる。
本開示の有機硫黄材料は、電極活物質、すなわち、正極活物質または負極活物質、とりわけ、リチウムイオン二次電池の電極活物質として使用することができる。
<有機硫黄材料の製造>
本開示において、有機硫黄材料は、破壊強度が所定値未満となるように、所定のアクリル樹脂の粒子を硫黄により変性することにより製造することができる。破壊強度のより小さい有機硫黄材料は、例えば、架橋度のより小さいアクリル樹脂粒子を使用すること等により製造することができる。
本開示において、有機硫黄材料は、破壊強度が所定値未満となるように、所定のアクリル樹脂の粒子を硫黄により変性することにより製造することができる。破壊強度のより小さい有機硫黄材料は、例えば、架橋度のより小さいアクリル樹脂粒子を使用すること等により製造することができる。
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂は、下記式(1)で示されるアクリレート化合物(アクリレートモノマー)からなる群から選択される少なくとも1種を重合した重合体、下記式(1)で示されるアクリレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種と下記式(2)で示されるジアクリレート化合物(架橋成分モノマー)からなる群から選択される少なくとも1種とを重合した重合体、および、メタクリロニトリルを含むモノマーを重合した重合体からなる群から選択される少なくとも1種の重合体を含むものである。
CH2=C(R11)COOR12 (1)
(ここで、R11は水素原子またはメチル基であり、R12はアルキル基である。)
CH2=C(R21)COO-Y-OCO(R22)C=CH2 (2)
(ここで、R21とR22は同一または異なって、水素原子またはメチル基であり、Yはヒドロカルビレン基であり、該ヒドロカルビレン基は水酸基およびアルキル基からなる群から選択される少なくとも一つの置換基を有していてもよく、かつ、ヒドロカルビレン基を構成する炭素骨格は酸素原子によるエーテル結合を有していてもよい。但し、当該エーテル結合が2以上あるとき隣接する酸素原子間には常に2以上の炭素原子が介在する。)
アクリル樹脂は、下記式(1)で示されるアクリレート化合物(アクリレートモノマー)からなる群から選択される少なくとも1種を重合した重合体、下記式(1)で示されるアクリレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種と下記式(2)で示されるジアクリレート化合物(架橋成分モノマー)からなる群から選択される少なくとも1種とを重合した重合体、および、メタクリロニトリルを含むモノマーを重合した重合体からなる群から選択される少なくとも1種の重合体を含むものである。
CH2=C(R11)COOR12 (1)
(ここで、R11は水素原子またはメチル基であり、R12はアルキル基である。)
CH2=C(R21)COO-Y-OCO(R22)C=CH2 (2)
(ここで、R21とR22は同一または異なって、水素原子またはメチル基であり、Yはヒドロカルビレン基であり、該ヒドロカルビレン基は水酸基およびアルキル基からなる群から選択される少なくとも一つの置換基を有していてもよく、かつ、ヒドロカルビレン基を構成する炭素骨格は酸素原子によるエーテル結合を有していてもよい。但し、当該エーテル結合が2以上あるとき隣接する酸素原子間には常に2以上の炭素原子が介在する。)
式(1)において、R11はメチル基が好ましく、R12は炭素数1~6のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることがより好ましく、なかでも、メチル基、n-ブチル基、i-ブチル基またはt-ブチル基が好ましい。式(1)で示される化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、より好ましくは、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレートが挙げられる。ここで、メチル(メタ)アクリレートおよびブチル(メタ)アクリレートの「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」または「メタクリレート」のいずれかであることを表すものである(以下同様)。式(1)で示される化合物として、さらに好ましい例は、ブチルメタクリレートである。
式(2)において、R21とR22は、いずれも、メチル基が好ましい。Yのヒドロカルビレン基の炭素数は、2~6であることが好ましく、2または3であることがより好ましい。Yの置換基の数は、1~4であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。Yの置換基としては、水酸基および炭素数1~4のアルキル基からなる群から選択される1以上の置換基であることが好ましく、この炭素数1~4のアルキル基としてはメチル基が好ましい。Yの炭素骨格が酸素原子によるエーテル結合を有する場合としては、例えば、-Y-O-に相当する部分が、下記式(3)で表されるものであることが好ましい(但し、式(3)においては、Yの置換基は考慮していない。)。
-(CH2)l-(CH2CH2O)m-(CH2CH2CH2O)n- (3)
(ここで、lは0~6であり、mは0~3であり、nは0~2である。但し、lとmとnが同時に0となることはない。)
-(CH2)l-(CH2CH2O)m-(CH2CH2CH2O)n- (3)
(ここで、lは0~6であり、mは0~3であり、nは0~2である。但し、lとmとnが同時に0となることはない。)
式(3)において、lが1、2、3、4、5または6であって、かつ、mとnが0であること;あるいは、mが1、2または3であって、かつ、lとnが0であること;あるいは、nが1または2であって、かつ、lとmが0であることが好ましい。
式(2)で示される化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。このうち、エチレングリコールジメタクリレートが好ましい。
アクリル樹脂の好ましい例としては、メチル(メタ)アクリレートのホモポリマー、ブチル(メタ)アクリレートのホモポリマー、メチル(メタ)アクリレートとエチレングリコールジ(メタ)アクリレートとのコポリマー、ブチル(メタ)アクリレートとエチレングリコールジ(メタ)アクリレートとのコポリマーなどが挙げられる。このうち、アクリル樹脂としては、メタクリレート型のものが好ましい。アクリル樹脂のより好ましい例としては、メチル(メタ)アクリレートのホモポリマー、メチルメタクリレートとエチレングリコールジメタクリレートとのコポリマーが挙げられる。
アクリル樹脂は、1種または2種以上を使用することができる。
≪アクリル樹脂の形態≫
本開示において、アクリル樹脂は、粒子の形態のものである。ここで、粒子とは、粒子径が300.0μm以下の粒子であることが好ましい。該粒子径は270.0μm以下がより好ましく、200.0μm以下がさらに好ましく、100.0μm以下がさらに好ましく、50.0μm以下がさらに好ましく、20.0μm以下がさらに好ましく、15.0μm以下がさらに好ましく、13.0μm以下がさらに好ましく、10.0μm以下がさらに好ましく、6.0μm以下がさらに好ましい。一方、該粒子径の下限は特に限定されないが、通常、例えば、0.1μm以上であり、好ましくは1.0μm以上である。該粒子径は、ベックマン・コールター(株)製の精密粒度分布測定装置Multisizer3により測定される値である。
本開示において、アクリル樹脂は、粒子の形態のものである。ここで、粒子とは、粒子径が300.0μm以下の粒子であることが好ましい。該粒子径は270.0μm以下がより好ましく、200.0μm以下がさらに好ましく、100.0μm以下がさらに好ましく、50.0μm以下がさらに好ましく、20.0μm以下がさらに好ましく、15.0μm以下がさらに好ましく、13.0μm以下がさらに好ましく、10.0μm以下がさらに好ましく、6.0μm以下がさらに好ましい。一方、該粒子径の下限は特に限定されないが、通常、例えば、0.1μm以上であり、好ましくは1.0μm以上である。該粒子径は、ベックマン・コールター(株)製の精密粒度分布測定装置Multisizer3により測定される値である。
アクリル樹脂は、球状の微粒子であってもよく、多孔質状の微粒子であってもよい。アクリル樹脂が多孔質状である場合、その吸油量は、100ml/100g以上であることが好ましく、110ml/100g以上であることがより好ましく、120ml/100g以上であることがさらに好ましく、130ml/100g以上であることがさらに好ましく、140ml/100g以上であることがさらに好ましい。該吸油量は、JIS K 5101-13-2:2004に準じて測定される値である。より詳細には、特開2017-88501号公報の段落0069の方法により測定できる。
≪アクリル樹脂の架橋度≫
本開示において、アクリル樹脂の架橋度は、アクリル樹脂に含まれる架橋成分モノマーの割合(質量%)で調整できる。例えば、メチル(メタ)アクリレートとエチレングリコールジ(メタ)アクリレートとのコポリマーの場合、架橋成分モノマーであるエチレングリコールジ(メタ)アクリレートの割合(質量%)を増加させることでアクリル樹脂の架橋度を高めることができ、逆に、架橋成分モノマーの割合(質量%)を減少させることでアクリル樹脂の架橋度を低下させることができる。
本開示において、アクリル樹脂の架橋度は、アクリル樹脂に含まれる架橋成分モノマーの割合(質量%)で調整できる。例えば、メチル(メタ)アクリレートとエチレングリコールジ(メタ)アクリレートとのコポリマーの場合、架橋成分モノマーであるエチレングリコールジ(メタ)アクリレートの割合(質量%)を増加させることでアクリル樹脂の架橋度を高めることができ、逆に、架橋成分モノマーの割合(質量%)を減少させることでアクリル樹脂の架橋度を低下させることができる。
≪アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)≫
アクリル樹脂は、上記構造を有する限り、Mwは特に限定されない。但し、アクリル樹脂のMwは、通常、2000~1500000の範囲内である。Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される値(ポリスチレンにより較正)である。
アクリル樹脂は、上記構造を有する限り、Mwは特に限定されない。但し、アクリル樹脂のMwは、通常、2000~1500000の範囲内である。Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される値(ポリスチレンにより較正)である。
≪アクリル樹脂の入手または製造≫
アクリル樹脂は、商業的に入手可能であるか、あるいは、当業者の知識の範囲内である、常法により、製造することができる。商業的に入手可能なアクリル樹脂としては、例えば、積水化成品工業(株)製のもの、(株)クラレ製のもの等が挙げられる。
アクリル樹脂は、商業的に入手可能であるか、あるいは、当業者の知識の範囲内である、常法により、製造することができる。商業的に入手可能なアクリル樹脂としては、例えば、積水化成品工業(株)製のもの、(株)クラレ製のもの等が挙げられる。
(硫黄)
硫黄としては粉末硫黄、不溶性硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄等の種々の形態のものをいずれも使用できるが、このうち、沈降硫黄、コロイド硫黄が好ましい。硫黄としては、元素硫黄の形態のものを使用することができる。硫黄の配合量は、アクリル樹脂粒子100質量部に対して、50質量部以上が好ましく、100質量部以上がより好ましく、さらに好ましくは150質量部以上であり、さらに好ましくは200質量部以上であり、さらに好ましくは250質量部以上である。100質量部以上であることで充放電容量やサイクル特性を向上できる傾向がある。一方、硫黄の配合量について、上限は特にないが、通常は、1000質量部以下、好ましくは750質量部以下であり、より好ましくは500質量部以下であり、さらに好ましくは400質量部以下であり、さらに好ましくは350質量部以下である。1000質量部以下であることで、コスト的に有利な傾向がある。硫黄としては1種または2種以上を使用することができる。
硫黄としては粉末硫黄、不溶性硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄等の種々の形態のものをいずれも使用できるが、このうち、沈降硫黄、コロイド硫黄が好ましい。硫黄としては、元素硫黄の形態のものを使用することができる。硫黄の配合量は、アクリル樹脂粒子100質量部に対して、50質量部以上が好ましく、100質量部以上がより好ましく、さらに好ましくは150質量部以上であり、さらに好ましくは200質量部以上であり、さらに好ましくは250質量部以上である。100質量部以上であることで充放電容量やサイクル特性を向上できる傾向がある。一方、硫黄の配合量について、上限は特にないが、通常は、1000質量部以下、好ましくは750質量部以下であり、より好ましくは500質量部以下であり、さらに好ましくは400質量部以下であり、さらに好ましくは350質量部以下である。1000質量部以下であることで、コスト的に有利な傾向がある。硫黄としては1種または2種以上を使用することができる。
(その他の添加剤)
アクリル樹脂を硫黄により変性する場合、アクリル樹脂に予めこの分野で通常使用される他の添加剤を、所望により、添加しておいてもよい。そのような他の添加剤として、例えば、導電性炭素材料が挙げられる。導電性炭素材料は、有機硫黄材料の導電性を向上させることができる。
アクリル樹脂を硫黄により変性する場合、アクリル樹脂に予めこの分野で通常使用される他の添加剤を、所望により、添加しておいてもよい。そのような他の添加剤として、例えば、導電性炭素材料が挙げられる。導電性炭素材料は、有機硫黄材料の導電性を向上させることができる。
≪導電性炭素材料≫
導電性炭素材料としては、グラファイト構造を有する炭素材料が好ましい。炭素材料としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンファイバー(CF)、グラフェン、フラーレンなどの縮合芳香環構造を有するものが使用できる。導電性炭素材料としては1種または2種以上を使用することができる。
導電性炭素材料としては、グラファイト構造を有する炭素材料が好ましい。炭素材料としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンファイバー(CF)、グラフェン、フラーレンなどの縮合芳香環構造を有するものが使用できる。導電性炭素材料としては1種または2種以上を使用することができる。
中でも安価で分散性に優れることから、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラックが好ましい。また、アセチレンブラックやカーボンブラックやケッチェンブラックに、CNTやグラフェンなどを少量併用してもよい。かかる併用系により、コストを大幅に上昇させることなく、リチウムイオン二次電池のサイクル特性をさらに向上させることが可能となる。なお、CNTやグラフェンの併用量は、導電性炭素材料の総量の8質量%以上、12質量%以下であるのが好ましい。
該導電性炭素材料の配合量は、アクリル樹脂100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、より好ましくは10質量部以上である。配合量が5質量部以上であることで、充放電容量やサイクル特性を一層向上させるという目的を達成し易い傾向がある。一方、該配合量は、50質量部以下が好ましく、より好ましくは40質量部以下である。50質量部以下であることで、有機硫黄材料における硫黄を含む構造の割合が相対的に低下せず、充放電容量やサイクル特性を一層向上させるという目的を達成し易い傾向がある。
(変性工程)
アクリル樹脂粒子の硫黄による変性は常法により行うことができ、例えば、アクリル樹脂粒子と硫黄を含む焼成原料を、焼成することにより実施することができる。焼成は常法により行うことができ、例えば、焼成原料(アクリル樹脂と硫黄と、所望により、他の添加剤とを含む)を、所定の温度に到達するまで所定の昇温速度で加熱し、当該所定の温度で所定の時間維持し、その後自然に冷却することにより行うことができる。
アクリル樹脂粒子の硫黄による変性は常法により行うことができ、例えば、アクリル樹脂粒子と硫黄を含む焼成原料を、焼成することにより実施することができる。焼成は常法により行うことができ、例えば、焼成原料(アクリル樹脂と硫黄と、所望により、他の添加剤とを含む)を、所定の温度に到達するまで所定の昇温速度で加熱し、当該所定の温度で所定の時間維持し、その後自然に冷却することにより行うことができる。
≪焼成原料の調製≫
変性にあたり、アクリル樹脂粒子と硫黄は、予め十分に混合しておくことが望ましい。アクリル樹脂に予め導電性炭素材料等を添加しておく場合には、これら添加剤も一緒に混合される。該混合は、常法により実施することができ、例えば、高速ブレンダー等を用いて実施することができる。一方、アクリル樹脂と硫黄と、所望により、添加剤とは、ペレット状に成形した状態とすることもできる。
変性にあたり、アクリル樹脂粒子と硫黄は、予め十分に混合しておくことが望ましい。アクリル樹脂に予め導電性炭素材料等を添加しておく場合には、これら添加剤も一緒に混合される。該混合は、常法により実施することができ、例えば、高速ブレンダー等を用いて実施することができる。一方、アクリル樹脂と硫黄と、所望により、添加剤とは、ペレット状に成形した状態とすることもできる。
≪非酸化性雰囲気≫
変性は非酸化性雰囲気下で実施することが好ましい。非酸化性雰囲気とは、酸素を実質的に含まない雰囲気をいい、構成成分の酸化劣化や過剰な熱分解を抑制するために採用されるものである。具体的には、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気、硫黄ガス雰囲気等をいう。したがって、変性は、例えば、不活性ガス雰囲気下の石英管中で実施される。
変性は非酸化性雰囲気下で実施することが好ましい。非酸化性雰囲気とは、酸素を実質的に含まない雰囲気をいい、構成成分の酸化劣化や過剰な熱分解を抑制するために採用されるものである。具体的には、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気、硫黄ガス雰囲気等をいう。したがって、変性は、例えば、不活性ガス雰囲気下の石英管中で実施される。
≪昇温速度≫
該昇温速度は、例えば、50~500℃/hの範囲内であることが好ましい。該昇温速度は、100℃/h以上であることがより好ましい。一方、該昇温速度は、400℃/h以下であることがより好ましく、300℃/h以下であることがさらに好ましく、200℃/h以下であることがさらに好ましい。昇温速度がこのような範囲内にあることで、充放電容量やサイクル特性を向上させるという目的を達成し易い傾向がある。
該昇温速度は、例えば、50~500℃/hの範囲内であることが好ましい。該昇温速度は、100℃/h以上であることがより好ましい。一方、該昇温速度は、400℃/h以下であることがより好ましく、300℃/h以下であることがさらに好ましく、200℃/h以下であることがさらに好ましい。昇温速度がこのような範囲内にあることで、充放電容量やサイクル特性を向上させるという目的を達成し易い傾向がある。
≪焼成温度・時間≫
焼成温度とは、焼成原料の昇温完了後の温度であって、焼成原料の焼成のために一定時間維持される温度をいう。該温度は、250~550℃の範囲であることが好ましい。250℃以上であることで、硫化反応が不十分となることを避け、目的物の充放電容量の低下を防止できる傾向がある。一方、550℃以下とすることで、焼成原料の分解を防ぎ、収率の低下や、充放電容量の低下を防止できる傾向がある。該温度は、300℃以上がより好ましく、350℃以上がさらに好ましく、一方、500℃以下がより好ましく、450℃以下がより好ましい。焼成温度で維持する時間は、焼成原料の種類、焼成温度等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1~6時間であることが好ましい。1時間以上であることで、焼成を十分に進行させることができる傾向があり、6時間以下であることで、構成成分の過剰な熱分解を防止できる傾向がある。
焼成温度とは、焼成原料の昇温完了後の温度であって、焼成原料の焼成のために一定時間維持される温度をいう。該温度は、250~550℃の範囲であることが好ましい。250℃以上であることで、硫化反応が不十分となることを避け、目的物の充放電容量の低下を防止できる傾向がある。一方、550℃以下とすることで、焼成原料の分解を防ぎ、収率の低下や、充放電容量の低下を防止できる傾向がある。該温度は、300℃以上がより好ましく、350℃以上がさらに好ましく、一方、500℃以下がより好ましく、450℃以下がより好ましい。焼成温度で維持する時間は、焼成原料の種類、焼成温度等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1~6時間であることが好ましい。1時間以上であることで、焼成を十分に進行させることができる傾向があり、6時間以下であることで、構成成分の過剰な熱分解を防止できる傾向がある。
≪装置≫
焼成は、図1に示す装置によって実施できる他、例えば、二軸押出機等の連続式の装置を用いて実施することもできる。連続式の装置を用いる場合、該装置内で、焼成原料を混練して粉砕・混合しながら、焼成も施すなど、有機硫黄材料を一連の操作により連続して製造できるというメリットがある。
焼成は、図1に示す装置によって実施できる他、例えば、二軸押出機等の連続式の装置を用いて実施することもできる。連続式の装置を用いる場合、該装置内で、焼成原料を混練して粉砕・混合しながら、焼成も施すなど、有機硫黄材料を一連の操作により連続して製造できるというメリットがある。
(残留物除去工程)
焼成後に得られる処理物中には、焼成時に昇華した硫黄が冷えて析出した未反応硫黄などが残留している。これら残留物はサイクル特性を低下させる要因となるため、できるだけ除去することが望ましい。残留物の除去は、例えば、減圧加熱乾燥、温風乾燥、溶媒洗浄などの常法に従い、実施することができる。
焼成後に得られる処理物中には、焼成時に昇華した硫黄が冷えて析出した未反応硫黄などが残留している。これら残留物はサイクル特性を低下させる要因となるため、できるだけ除去することが望ましい。残留物の除去は、例えば、減圧加熱乾燥、温風乾燥、溶媒洗浄などの常法に従い、実施することができる。
(粉砕、分級)
得られた有機硫黄材料は、所定の粒度となるように粉砕し、分級して、電極の製造に適したサイズの粒子とすることができる。粒子の粒度分布としては、メジアン径で12.0μm未満が好ましく、より好ましくは11.0μm以下、さらに好ましくは10.0μm以下、さらに好ましくは9.0μm以下、さらに好ましくは8.5μm以下、さらに好ましくは8.3μm以下、さらに好ましくは6.0μm以下である。メジアン径(μm)の下限について、本開示の効果の観点から特に限定はないが、通常、0.1μm以上、あるいは、1.0μm以上程度である。メジアン径は、使用するアクリル樹脂粒子として小さい粒子径のもとを使用したり、あるいは、上記粉砕を十分に行うこと等により、小さくすることができる。なお、先に説明した二軸押出機を用いた焼成方法では、混練時のせん断によって、有機硫黄材料の製造と同時に、製造した有機硫黄材料の粉砕も行うことができる。
得られた有機硫黄材料は、所定の粒度となるように粉砕し、分級して、電極の製造に適したサイズの粒子とすることができる。粒子の粒度分布としては、メジアン径で12.0μm未満が好ましく、より好ましくは11.0μm以下、さらに好ましくは10.0μm以下、さらに好ましくは9.0μm以下、さらに好ましくは8.5μm以下、さらに好ましくは8.3μm以下、さらに好ましくは6.0μm以下である。メジアン径(μm)の下限について、本開示の効果の観点から特に限定はないが、通常、0.1μm以上、あるいは、1.0μm以上程度である。メジアン径は、使用するアクリル樹脂粒子として小さい粒子径のもとを使用したり、あるいは、上記粉砕を十分に行うこと等により、小さくすることができる。なお、先に説明した二軸押出機を用いた焼成方法では、混練時のせん断によって、有機硫黄材料の製造と同時に、製造した有機硫黄材料の粉砕も行うことができる。
<リチウムイオン二次電池>
本開示の有機硫黄材料は、電極活物質として、すなわち、正極活物質または負極活物質として、電極に、とりわけ、リチウムイオン二次電池の電極に使用することができる。すなわち、該有機硫黄材料を用いること以外は一般的なリチウムイオン二次電池用電極を作製する場合と同様にして、リチウム二次電池用電極を作製することができ、さらに該リチウムイオン二次電池用電極を用いること以外は一般的なリチウムイオン二次電池を作製する場合と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製することができる。チリウムイオン二次電池以外の電池用の電極や、チリウムイオン二次電池以外の電池についても同様である。こうして作製する電極は、その電極組成物が体積エネルギー密度に優れるという特徴を有する。
本開示の有機硫黄材料は、電極活物質として、すなわち、正極活物質または負極活物質として、電極に、とりわけ、リチウムイオン二次電池の電極に使用することができる。すなわち、該有機硫黄材料を用いること以外は一般的なリチウムイオン二次電池用電極を作製する場合と同様にして、リチウム二次電池用電極を作製することができ、さらに該リチウムイオン二次電池用電極を用いること以外は一般的なリチウムイオン二次電池を作製する場合と同様にして、リチウムイオン二次電池を作製することができる。チリウムイオン二次電池以外の電池用の電極や、チリウムイオン二次電池以外の電池についても同様である。こうして作製する電極は、その電極組成物が体積エネルギー密度に優れるという特徴を有する。
1.有機硫黄材料を正極活物質として用いる場合
本開示のリチウムイオン二次電池は、上記有機硫黄材料(正極活物質)を含む正極に、負極および電解質、さらには、所望により、セパレータ等の部材を使用して、常法に従い、作製することができる。
本開示のリチウムイオン二次電池は、上記有機硫黄材料(正極活物質)を含む正極に、負極および電解質、さらには、所望により、セパレータ等の部材を使用して、常法に従い、作製することができる。
(正極)
リチウムイオン二次電池用正極は、正極活物質として上記有機硫黄材料を用いること以外は、一般的なリチウムイオン二次電池用正極と同様にして、作製することができる。例えば、該正極は、粒子状にした有機硫黄材料を、導電助剤、バインダ、および溶媒と混合してペースト状の電極組成物を調製し、当該電極組成物を集電体に塗布した後、これをプレス機等を用いてプレス処理して、当該電極組成物を集電体に圧着し、乾燥させ、集電体上に電極組成物層(正極組成物層)を形成することにより、作製することができる。また、その他の方法として、該正極は、例えば、有機硫黄材料を、導電助剤、バインダ、および少量の溶媒とともに、乳鉢などを用いて混練して電極組成物とし、かつこれをフィルム状にしたのち、プレス機等を用いてプレス処理して、当該電極組成物を集電体に圧着して、集電体上に電極組成物層(正極組成物層)を形成することにより、作製することもできる。
リチウムイオン二次電池用正極は、正極活物質として上記有機硫黄材料を用いること以外は、一般的なリチウムイオン二次電池用正極と同様にして、作製することができる。例えば、該正極は、粒子状にした有機硫黄材料を、導電助剤、バインダ、および溶媒と混合してペースト状の電極組成物を調製し、当該電極組成物を集電体に塗布した後、これをプレス機等を用いてプレス処理して、当該電極組成物を集電体に圧着し、乾燥させ、集電体上に電極組成物層(正極組成物層)を形成することにより、作製することができる。また、その他の方法として、該正極は、例えば、有機硫黄材料を、導電助剤、バインダ、および少量の溶媒とともに、乳鉢などを用いて混練して電極組成物とし、かつこれをフィルム状にしたのち、プレス機等を用いてプレス処理して、当該電極組成物を集電体に圧着して、集電体上に電極組成物層(正極組成物層)を形成することにより、作製することもできる。
上記プレス機等による圧着は、通常、線圧280kg/cm以下の荷重で実施することができる。本開示の電極活物質は、この程度の荷重で十分に潰れやすく、変形しやすい。
[導電助剤]
導電助剤としては、例えば、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)、炭素粉末、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、黒鉛、あるいは、アルミニウムやチタンなどの正極電位において安定な金属の微粉末等が例示される。これらの導電助剤は、1種または2種以上を使用することができる。
導電助剤としては、例えば、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)、炭素粉末、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、黒鉛、あるいは、アルミニウムやチタンなどの正極電位において安定な金属の微粉末等が例示される。これらの導電助剤は、1種または2種以上を使用することができる。
[バインダ]
バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride:PVDF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、メタクリル樹脂(PMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、変性ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が例示される。これらのバインダは、1種または2種以上を使用することができる。
バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride:PVDF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、メタクリル樹脂(PMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、変性ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が例示される。これらのバインダは、1種または2種以上を使用することができる。
[溶媒]
溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアルデヒド、アルコール、ヘキサン、水等が例示される。これら溶媒は、1種または2種以上を使用することができる。
溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアルデヒド、アルコール、ヘキサン、水等が例示される。これら溶媒は、1種または2種以上を使用することができる。
[配合量]
これら正極を構成する材料の配合量は、特に問わないが、例えば、有機硫黄材料100質量部に対して、導電助剤2~100質量部、バインダ2~50質量部、および適量の溶媒を配合するのが好ましい。
これら正極を構成する材料の配合量は、特に問わないが、例えば、有機硫黄材料100質量部に対して、導電助剤2~100質量部、バインダ2~50質量部、および適量の溶媒を配合するのが好ましい。
[集電体]
集電体としては、リチウムイオン二次電池用正極に一般に用いられるものを使用すればよい。例えば、集電体としては、アルミニウム箔、アルミニウムメッシュ、パンチングアルミニウムシート、アルミニウムエキスパンドシート、ステンレススチール箔、ステンレススチールメッシュ、パンチングステンレススチールシート、ステンレススチールエキスパンドシート、発泡ニッケル、ニッケル不織布、銅箔、銅メッシュ、パンチング銅シート、銅エキスパンドシート、チタン箔、チタンメッシュ、カーボン不織布、カーボン織布等からなるものが例示される。このうち、黒鉛化度の高いカーボンで構成されたカーボン不織布やカーボン織布からなる集電体は、水素を含まず、硫黄との反応性が低いために、本開示の有機硫黄材料を正極活物質とする場合の集電体として好適である。黒鉛化度の高い炭素繊維の原料としては、カーボン繊維の材料となる各種のピッチ(すなわち、石油、石炭、コールタールなどの副生成物)やポリアクリロニトリル繊維(PAN)等を用いることができる。
集電体としては、リチウムイオン二次電池用正極に一般に用いられるものを使用すればよい。例えば、集電体としては、アルミニウム箔、アルミニウムメッシュ、パンチングアルミニウムシート、アルミニウムエキスパンドシート、ステンレススチール箔、ステンレススチールメッシュ、パンチングステンレススチールシート、ステンレススチールエキスパンドシート、発泡ニッケル、ニッケル不織布、銅箔、銅メッシュ、パンチング銅シート、銅エキスパンドシート、チタン箔、チタンメッシュ、カーボン不織布、カーボン織布等からなるものが例示される。このうち、黒鉛化度の高いカーボンで構成されたカーボン不織布やカーボン織布からなる集電体は、水素を含まず、硫黄との反応性が低いために、本開示の有機硫黄材料を正極活物質とする場合の集電体として好適である。黒鉛化度の高い炭素繊維の原料としては、カーボン繊維の材料となる各種のピッチ(すなわち、石油、石炭、コールタールなどの副生成物)やポリアクリロニトリル繊維(PAN)等を用いることができる。
(負極)
負極材料としては、公知の金属リチウム、黒鉛などの炭素系材料、シリコン薄膜などのシリコン系材料、銅-錫やコバルト-錫などの合金系材料を使用できる。負極材料として、リチウムを含まない材料、例えば、上記した負極材料の内で、炭素系材料、シリコン系材料、合金系材料等を用いる場合には、デンドライトの発生による正負極間の短絡を生じ難い点で有利である。ただし、これらのリチウムを含まない負極材料を本開示の正極と組み合わせて用いる場合には、正極および負極が何れもリチウムを含まない。このため、負極および正極の何れか一方、または両方にあらかじめリチウムを挿入するリチウムプリドープ処理が必要となる。リチウムのプリドープ法としては公知の方法に従えばよい。例えば、負極にリチウムをドープする場合には、対極に金属リチウムを用いて半電池を組み、電気化学的にリチウムをドープする電解ドープ法によってリチウムを挿入する方法や、金属リチウム箔を電極に貼り付けたあと電解液の中に放置し電極へのリチウムの拡散を利用してドープする貼り付けプリドープ法によりリチウムを挿入する方法が挙げられる。また、正極にリチウムをプリドープする場合にも、上記した電解ドープ法を利用することができる。リチウムを含まない負極材料としては、特に、高容量の負極材料であるシリコン系材料が好ましく、その中でも電極厚さが薄くて体積当りの容量で有利となる薄膜シリコンがより好ましい。
負極材料としては、公知の金属リチウム、黒鉛などの炭素系材料、シリコン薄膜などのシリコン系材料、銅-錫やコバルト-錫などの合金系材料を使用できる。負極材料として、リチウムを含まない材料、例えば、上記した負極材料の内で、炭素系材料、シリコン系材料、合金系材料等を用いる場合には、デンドライトの発生による正負極間の短絡を生じ難い点で有利である。ただし、これらのリチウムを含まない負極材料を本開示の正極と組み合わせて用いる場合には、正極および負極が何れもリチウムを含まない。このため、負極および正極の何れか一方、または両方にあらかじめリチウムを挿入するリチウムプリドープ処理が必要となる。リチウムのプリドープ法としては公知の方法に従えばよい。例えば、負極にリチウムをドープする場合には、対極に金属リチウムを用いて半電池を組み、電気化学的にリチウムをドープする電解ドープ法によってリチウムを挿入する方法や、金属リチウム箔を電極に貼り付けたあと電解液の中に放置し電極へのリチウムの拡散を利用してドープする貼り付けプリドープ法によりリチウムを挿入する方法が挙げられる。また、正極にリチウムをプリドープする場合にも、上記した電解ドープ法を利用することができる。リチウムを含まない負極材料としては、特に、高容量の負極材料であるシリコン系材料が好ましく、その中でも電極厚さが薄くて体積当りの容量で有利となる薄膜シリコンがより好ましい。
(電解質)
リチウムイオン二次電池に用いる電解質としては、有機溶媒に電解質であるアルカリ金属塩を溶解させたものを用いることができる。有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルエーテル、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル等の非水系溶媒から選ばれる少なくとも一種を用いるのが好ましい。電解質としては、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiI、LiClO4等を用いることができる。電解質の濃度は、0.5mol/L~1.7mol/L程度であればよい。なお、電解質は液状に限定されない。例えば、リチウムイオン二次電池がリチウムポリマー二次電池である場合、電解質は固体状(例えば、高分子ゲル状)をなす。
リチウムイオン二次電池に用いる電解質としては、有機溶媒に電解質であるアルカリ金属塩を溶解させたものを用いることができる。有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルエーテル、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル等の非水系溶媒から選ばれる少なくとも一種を用いるのが好ましい。電解質としては、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiI、LiClO4等を用いることができる。電解質の濃度は、0.5mol/L~1.7mol/L程度であればよい。なお、電解質は液状に限定されない。例えば、リチウムイオン二次電池がリチウムポリマー二次電池である場合、電解質は固体状(例えば、高分子ゲル状)をなす。
(セパレータ)
リチウムイオン二次電池は、上述した負極、正極、電解質以外にも、セパレータ等の部材を備えてもよい。セパレータは、正極と負極との間に介在し、正極と負極との間のイオンの移動を許容するとともに、正極と負極との内部短絡を防止する。リチウムイオン二次電池が密閉型であれば、セパレータには電解液を保持する機能も求められる。セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、アラミド、ポリイミド、セルロース、ガラス等を材料とする薄肉かつ微多孔性または不織布状の膜を用いるのが好ましい。
リチウムイオン二次電池は、上述した負極、正極、電解質以外にも、セパレータ等の部材を備えてもよい。セパレータは、正極と負極との間に介在し、正極と負極との間のイオンの移動を許容するとともに、正極と負極との内部短絡を防止する。リチウムイオン二次電池が密閉型であれば、セパレータには電解液を保持する機能も求められる。セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、アラミド、ポリイミド、セルロース、ガラス等を材料とする薄肉かつ微多孔性または不織布状の膜を用いるのが好ましい。
(形状)
リチウムイオン二次電池の形状は特に限定されず、円筒型、積層型、コイン型、ボタン型等の種々の形状にできる。
リチウムイオン二次電池の形状は特に限定されず、円筒型、積層型、コイン型、ボタン型等の種々の形状にできる。
(正極組成物層の密度)
正極組成物層の密度(g/cm3)は、後記の実施例の欄に記載の方法によって測定される値である。
正極組成物層の密度(g/cm3)は、後記の実施例の欄に記載の方法によって測定される値である。
正極組成物層の密度(g/cm3)は、1.50以上であることが好ましく、より好ましくは1.53以上、さらに好ましくは1.56以上、さらに好ましくは1.59以上、
さらに好ましくは1.60以上である。一方、該密度(g/cm3)は大きければ大きい程好ましく、特に上限はないが、通常は、例えば、2.00以下程度であると考えらえる。
さらに好ましくは1.60以上である。一方、該密度(g/cm3)は大きければ大きい程好ましく、特に上限はないが、通常は、例えば、2.00以下程度であると考えらえる。
2.有機硫黄材料を負極活物質として用いる場合
本開示のリチウムイオン二次電池は、上記有機硫黄材料(負極活物質)を含む負極に、正極および電解質、さらには、所望により、セパレータ等の部材を使用して、常法に従い、作製することができる。
本開示のリチウムイオン二次電池は、上記有機硫黄材料(負極活物質)を含む負極に、正極および電解質、さらには、所望により、セパレータ等の部材を使用して、常法に従い、作製することができる。
(負極)
リチウムイオン二次電池用負極は、負極活物質として上記有機硫黄材料を用いること以外は、一般的なリチウムイオン二次電池用負極と同様にして、作製することができる。例えば、該負極は、粒子状にした有機硫黄材料を、導電助剤、バインダ、および溶媒と混合してペースト状の電極組成物を調製し、当該電極組成物を集電体に塗布した後、これをプレス機等を用いてプレス処理して、当該電極組成物を集電体に圧着し、乾燥させ、集電体上に電極組成物層(負極組成物層)を形成することにより、作製することができる。また、その他の方法として、該負極は、例えば、有機硫黄材料を、導電助剤、バインダ、および少量の溶媒とともに、乳鉢などを用いて混練して電極組成物とし、かつこれをフィルム状にしたのち、プレス機等を用いてプレス処理して、当該電極組成物を集電体に圧着して、集電体上に電極組成物層(負極組成物層)を形成することにより、作製することもできる。
リチウムイオン二次電池用負極は、負極活物質として上記有機硫黄材料を用いること以外は、一般的なリチウムイオン二次電池用負極と同様にして、作製することができる。例えば、該負極は、粒子状にした有機硫黄材料を、導電助剤、バインダ、および溶媒と混合してペースト状の電極組成物を調製し、当該電極組成物を集電体に塗布した後、これをプレス機等を用いてプレス処理して、当該電極組成物を集電体に圧着し、乾燥させ、集電体上に電極組成物層(負極組成物層)を形成することにより、作製することができる。また、その他の方法として、該負極は、例えば、有機硫黄材料を、導電助剤、バインダ、および少量の溶媒とともに、乳鉢などを用いて混練して電極組成物とし、かつこれをフィルム状にしたのち、プレス機等を用いてプレス処理して、当該電極組成物を集電体に圧着して、集電体上に電極組成物層(負極組成物層)を形成することにより、作製することもできる。
上記プレス機等による圧着は、通常、線圧280kg/cm以下の荷重で実施することができる。本開示の電極活物質は、この程度の荷重で十分に潰れやすく、変形しやすい。
導電助剤、バインダおよび溶媒は、有機硫黄材料を正極活物質として使用する上記の場合と同様のものを同様に使用することができ、集電体も、同じく、同様のものを同様に使用することができる。
(正極)
正極材料としては、例えば、リチウムを含む遷移金属酸化物もしくは固溶体酸化物、または電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出することができる物質であれば特に制限されない。リチウムを含む遷移金属酸化物としては、例えば、LiCoO2等のLi・Co系複合酸化物、LiNixCoyMnzO2等のLi・Ni・Co・Mn系複合酸化物、LiNiO2等のLi・Ni系複合酸化物、またはLiMn2O4等のLi・Mn系複合酸化物等を例示することができる。固溶体酸化物としては、例えば、LiaMnxCoyNizO2(1.150≦a≦1.430、0.450≦x≦0.600、0.100≦y≦0.150、0.200≦z≦0.280)、LiMnxCoyNizO2(0.300≦x≦0.850、0.100≦y≦0.300、0.100≦z≦0.300)、LiMn1.5Ni0.5O4等を例示することができる。これらの化合物を単独または複数種、混合して用いてもよい。
正極材料としては、例えば、リチウムを含む遷移金属酸化物もしくは固溶体酸化物、または電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出することができる物質であれば特に制限されない。リチウムを含む遷移金属酸化物としては、例えば、LiCoO2等のLi・Co系複合酸化物、LiNixCoyMnzO2等のLi・Ni・Co・Mn系複合酸化物、LiNiO2等のLi・Ni系複合酸化物、またはLiMn2O4等のLi・Mn系複合酸化物等を例示することができる。固溶体酸化物としては、例えば、LiaMnxCoyNizO2(1.150≦a≦1.430、0.450≦x≦0.600、0.100≦y≦0.150、0.200≦z≦0.280)、LiMnxCoyNizO2(0.300≦x≦0.850、0.100≦y≦0.300、0.100≦z≦0.300)、LiMn1.5Ni0.5O4等を例示することができる。これらの化合物を単独または複数種、混合して用いてもよい。
電解質、セパレータおよびリチウムイオン二次電池の形状についても、有機硫黄材料を正極活物質として使用する上記の場合と同様のものを同様に使用することができる。
(負極組成物層の密度)
負極組成物層の密度(g/cm3)は、上記正極組成物層の密度(g/cm3)の場合と同じく、1.50以上であることが好ましく、より好ましくは1.53以上、さらに好ましくは1.56以上、さらに好ましくは1.59以上、さらに好ましくは1.60以上である。一方、密度(g/cm3)は大きければ大きい程好ましく、特に上限はないが、通常は、例えば、2.00以下程度であると考えらえる。
負極組成物層の密度(g/cm3)は、上記正極組成物層の密度(g/cm3)の場合と同じく、1.50以上であることが好ましく、より好ましくは1.53以上、さらに好ましくは1.56以上、さらに好ましくは1.59以上、さらに好ましくは1.60以上である。一方、密度(g/cm3)は大きければ大きい程好ましく、特に上限はないが、通常は、例えば、2.00以下程度であると考えらえる。
本開示を実施例に基づいて説明するが、本開示は、実施例にのみ限定されるものではない。
以下に、実施例および比較例において使用した各種薬品をまとめて示す。各種薬品は必要に応じて常法に従い精製を行った。
<試験に使用した材料>
アクリル樹脂粒子1:メチルメタクリレートとエチレングリコールジメタクリレートコポリマーから成る球状アクリル樹脂(積水化成品工業(株)製のテクポリマーMBX-20、粒子径:20μm、架橋度:標準)
アクリル樹脂粒子2:メチルメタクリレートとエチレングリコールジメタクリレートコポリマーから成る球状アクリル樹脂(積水化成品工業(株)製のテクポリマーMBX-5、粒子径:5μm、架橋度:標準)
アクリル樹脂粒子3:メチルメタクリレートとエチレングリコールジメタクリレートコポリマーから成る球状アクリル樹脂(積水化成品工業(株)製のテクポリマーMB30X-20、粒子径:20μm、架橋度:高)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の沈降硫黄
アクリル樹脂粒子1:メチルメタクリレートとエチレングリコールジメタクリレートコポリマーから成る球状アクリル樹脂(積水化成品工業(株)製のテクポリマーMBX-20、粒子径:20μm、架橋度:標準)
アクリル樹脂粒子2:メチルメタクリレートとエチレングリコールジメタクリレートコポリマーから成る球状アクリル樹脂(積水化成品工業(株)製のテクポリマーMBX-5、粒子径:5μm、架橋度:標準)
アクリル樹脂粒子3:メチルメタクリレートとエチレングリコールジメタクリレートコポリマーから成る球状アクリル樹脂(積水化成品工業(株)製のテクポリマーMB30X-20、粒子径:20μm、架橋度:高)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の沈降硫黄
実施例1
<有機硫黄材料の製造>
(原料の調製)
表1の配合に従い、材料をブレンダーで混合し、焼成のための原料(焼成原料)を得た。
<有機硫黄材料の製造>
(原料の調製)
表1の配合に従い、材料をブレンダーで混合し、焼成のための原料(焼成原料)を得た。
(反応装置)
焼成原料の焼成には、図1に示す反応装置1を用いた。反応装置1は、原料2を収容して焼成するための、有底筒状をなす石英ガラス製の、外径60mm、内径50mm、高さ300mmの反応容器3、当該反応容器3の上部開口を閉じるシリコーン製の蓋4、当該蓋4を貫通する1本のアルミナ保護管5((株)ニッカトー製の「アルミナSSA-S」、外径4mm、内径2mm、長さ250mm)と、2本のガス導入管6とガス排出管7(いずれも、(株)ニッカトー製の「アルミナSSA-S」、外径6mm、内径4mm、長さ150mm)、および反応容器3を底部側から加熱する電気炉8(ルツボ炉、開口幅φ80mm、加熱高さ100mm)を備えている。
焼成原料の焼成には、図1に示す反応装置1を用いた。反応装置1は、原料2を収容して焼成するための、有底筒状をなす石英ガラス製の、外径60mm、内径50mm、高さ300mmの反応容器3、当該反応容器3の上部開口を閉じるシリコーン製の蓋4、当該蓋4を貫通する1本のアルミナ保護管5((株)ニッカトー製の「アルミナSSA-S」、外径4mm、内径2mm、長さ250mm)と、2本のガス導入管6とガス排出管7(いずれも、(株)ニッカトー製の「アルミナSSA-S」、外径6mm、内径4mm、長さ150mm)、および反応容器3を底部側から加熱する電気炉8(ルツボ炉、開口幅φ80mm、加熱高さ100mm)を備えている。
アルミナ保護管5は、蓋4から下方が、反応容器3の底に収容した原料2に達する長さに形成され、内部に熱電対9が挿通されている。アルミナ保護管5は、熱電対9の保護管として用いられる。熱電対9の先端は、アルミナ保護管5の閉じられた先端で保護された状態で、原料2に挿入されて、当該原料2の温度を測定するために機能する。熱電対9の出力は、図中に実線の矢印で示すように、電気炉8の温度コントローラ10に入力され、温度コントローラ10は、この熱電対9からの入力に基づいて、電気炉8の加熱温度をコントロールするために機能する。
ガス導入管6とガス排出管7は、その下端が、蓋4から下方へ3mm突出するように形成されている。ガス導入管6には、図示しないガスの供給系から、Ar(アルゴン)ガスが継続的に供給される。またガス排出管7は、水酸化ナトリウム水溶液11を収容したトラップ槽12に接続されている。反応容器3からガス排出管7を通って外部へ出ようとする排気は、一旦、トラップ槽12内の水酸化ナトリウム水溶液11を通ったのちに外部へ放出される。そのため排気中に、加硫反応によって発生する硫化水素ガスが含まれていても、水酸化ナトリウム水溶液と中和されて排気からは除去される。
(焼成工程)
まず原料2を反応容器3の底に収容した状態で、ガスの供給系から、80ml/分の流量でArガスを継続的に供給しながら、供給開始30分後に、電気炉8による加熱を開始した。昇温速度は150℃/hで実施した。そして原料の温度が表1の焼成温度(400℃)に達した時点で、該焼成温度を維持しながら2時間焼成をした。次いでArガスの流量を調整しながら、Arガス雰囲気下、反応生成物の温度を25℃まで自然冷却させたのち、生成物を反応容器3から取り出した。
まず原料2を反応容器3の底に収容した状態で、ガスの供給系から、80ml/分の流量でArガスを継続的に供給しながら、供給開始30分後に、電気炉8による加熱を開始した。昇温速度は150℃/hで実施した。そして原料の温度が表1の焼成温度(400℃)に達した時点で、該焼成温度を維持しながら2時間焼成をした。次いでArガスの流量を調整しながら、Arガス雰囲気下、反応生成物の温度を25℃まで自然冷却させたのち、生成物を反応容器3から取り出した。
(未反応硫黄の除去)
焼成工程後の生成物に残存する未反応硫黄(遊離した状態の単体硫黄)を除去するために、以下の工程をおこなった。すなわち、該生成物を乳鉢で粉砕し、粉砕物2gをガラスチューブオーブンに収容して、真空吸引しながら250℃で3時間加熱して、未反応硫黄が除去された(または、微量の未反応硫黄しか含まない)有機硫黄材料を得た。昇温速度は10℃/分とした。
焼成工程後の生成物に残存する未反応硫黄(遊離した状態の単体硫黄)を除去するために、以下の工程をおこなった。すなわち、該生成物を乳鉢で粉砕し、粉砕物2gをガラスチューブオーブンに収容して、真空吸引しながら250℃で3時間加熱して、未反応硫黄が除去された(または、微量の未反応硫黄しか含まない)有機硫黄材料を得た。昇温速度は10℃/分とした。
(分級作業)
焼成物の粗大粒子を除去するために、32μmメッシュのステンレスふるいを用いて分級して有機硫黄材料1を得た。
焼成物の粗大粒子を除去するために、32μmメッシュのステンレスふるいを用いて分級して有機硫黄材料1を得た。
<リチウムイオン二次電池の作製>
以下のとおり、リチウムイオン二次電池を作製した。
以下のとおり、リチウムイオン二次電池を作製した。
(正極)
活物質として有機硫黄材料1、導電助剤としてアセチレンブラック、バインダとしてアクリル樹脂を用いた。これらを、割合が、活物質:導電助剤:バインダ=90:5:5(質量%)になるよう秤量し、容器にいれ、分散剤にmilliQ水を使用して自転公転ミキサー((株)シンキー製のARE-250)を用いて攪拌、混合を行い、均一な電極組成物スラリーを作製した。作製した電極組成物スラリーを、集電体である厚さ20μmのアルミ箔上に、スリット幅400μmのアプリケーターを使用して塗工して電極組成物層を形成し、これをロールプレス機(宝泉(株)製の小型ロールプレス機)を用いて、線圧280kg/cmでプレス処理した後、120℃で3時間乾燥機で加熱・乾燥し、集電体上に電極組成物層(正極組成物層)を形成した後、φ11に打ち抜くことで電極(正極)を得た。その後、電極の重量を測定し、上述の比率から電極中の活物質量を算出した。
活物質として有機硫黄材料1、導電助剤としてアセチレンブラック、バインダとしてアクリル樹脂を用いた。これらを、割合が、活物質:導電助剤:バインダ=90:5:5(質量%)になるよう秤量し、容器にいれ、分散剤にmilliQ水を使用して自転公転ミキサー((株)シンキー製のARE-250)を用いて攪拌、混合を行い、均一な電極組成物スラリーを作製した。作製した電極組成物スラリーを、集電体である厚さ20μmのアルミ箔上に、スリット幅400μmのアプリケーターを使用して塗工して電極組成物層を形成し、これをロールプレス機(宝泉(株)製の小型ロールプレス機)を用いて、線圧280kg/cmでプレス処理した後、120℃で3時間乾燥機で加熱・乾燥し、集電体上に電極組成物層(正極組成物層)を形成した後、φ11に打ち抜くことで電極(正極)を得た。その後、電極の重量を測定し、上述の比率から電極中の活物質量を算出した。
(負極)
負極としては、金属リチウム箔(直径14mm、厚さ500μmの円盤状、本城金属(株)製)を用いた。
負極としては、金属リチウム箔(直径14mm、厚さ500μmの円盤状、本城金属(株)製)を用いた。
(電解液)
電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒に、LiPF6を溶解した非水電解質を用いた。エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとは体積比1:1で混合した。電解液中のLiPF6の濃度は、1.0mol/Lであった。
電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒に、LiPF6を溶解した非水電解質を用いた。エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとは体積比1:1で混合した。電解液中のLiPF6の濃度は、1.0mol/Lであった。
(リチウムイオン二次電池)
上記正極および負極を用いて、コイン電池を製作した。詳しくは、ドライルーム内で、セパレータ(Celgard社製のCelgard2400、厚さ25μmのポリプロピレン微孔質膜)と、ガラス不織布フィルタ(厚さ440μm、ADVANTEC社製のGA100)と、を正極と負極との間に挟装して、電極体電池とした。この電極体電池を、ステンレス容器からなる電池ケース(CR2032型コイン電池用部材、宝泉(株)製)に収容した。電池ケースには上記電解液を注入した。電池ケースをカシメ機で密閉して、実施例1のリチウムイオン二次電池を得た。
上記正極および負極を用いて、コイン電池を製作した。詳しくは、ドライルーム内で、セパレータ(Celgard社製のCelgard2400、厚さ25μmのポリプロピレン微孔質膜)と、ガラス不織布フィルタ(厚さ440μm、ADVANTEC社製のGA100)と、を正極と負極との間に挟装して、電極体電池とした。この電極体電池を、ステンレス容器からなる電池ケース(CR2032型コイン電池用部材、宝泉(株)製)に収容した。電池ケースには上記電解液を注入した。電池ケースをカシメ機で密閉して、実施例1のリチウムイオン二次電池を得た。
実施例2~7並びに比較例1
表1の配合・条件に従って適宜変更を加えた以外は、実施例1と同様に処理して、それぞれの焼成原料、有機硫黄材料、正極、および、リチウムイオン二次電池を作製した。
表1の配合・条件に従って適宜変更を加えた以外は、実施例1と同様に処理して、それぞれの焼成原料、有機硫黄材料、正極、および、リチウムイオン二次電池を作製した。
<評価>
(有機硫黄材料の元素分析)
実施例、比較例で製造した有機硫黄材料の元素分析をした。
(有機硫黄材料の元素分析)
実施例、比較例で製造した有機硫黄材料の元素分析をした。
炭素、水素、硫黄および窒素について、エレメンタール社(Elementar)製の全自動元素分析装置 vario MICRO cubeを用いて測定した質量から、有機硫黄材料の総量中に占める質量比(%)を算出した。結果を表1に示す。
(有機硫黄材料の真密度)
真密度は、有機硫黄材料について、ピクノメータ(M-Ultrapyc 1200e、アントンパール社製)により、測定ガスとしてヘリウムを用いて求めた体積(cm3)と、別途測定した重量(g)とから算出した値である。
真密度は、有機硫黄材料について、ピクノメータ(M-Ultrapyc 1200e、アントンパール社製)により、測定ガスとしてヘリウムを用いて求めた体積(cm3)と、別途測定した重量(g)とから算出した値である。
(有機硫黄材料のメジアン径)
上記で得た各有機硫黄材料について、メジアン径(D50:頻度の累積が50%になる粒子径)を求めた。具体的には、有機硫黄材料を水中に超音波処理によって充分に分散させ、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製 粒度分布測定装置 LA-960)にて、頻度分布および累積体積分布曲線を求め、累積体積分布曲線において50%となる点の粒子径をメジアン径とした。
上記で得た各有機硫黄材料について、メジアン径(D50:頻度の累積が50%になる粒子径)を求めた。具体的には、有機硫黄材料を水中に超音波処理によって充分に分散させ、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製 粒度分布測定装置 LA-960)にて、頻度分布および累積体積分布曲線を求め、累積体積分布曲線において50%となる点の粒子径をメジアン径とした。
(有機硫黄材料の破壊強度Cs(MPa))
上記で得た各有機硫黄材料について、微小圧縮試験機(MCT-510、(株)島津製作所製)を用いて、有機硫黄材料の粒子が破壊するときの試験力P(mN)を、圧子により計測した。すなわち、試料台に、有機硫黄材料の極微量を散布後、任意の5粒について、圧子で、一粒ずつ圧縮し、有機硫黄材料の粒子が破壊するときの試験力P(mN)を求めた。また、各粒の粒子径d(μm)は、直交する2方向で径を測定し、その平均値とした。
上記で得た各有機硫黄材料について、微小圧縮試験機(MCT-510、(株)島津製作所製)を用いて、有機硫黄材料の粒子が破壊するときの試験力P(mN)を、圧子により計測した。すなわち、試料台に、有機硫黄材料の極微量を散布後、任意の5粒について、圧子で、一粒ずつ圧縮し、有機硫黄材料の粒子が破壊するときの試験力P(mN)を求めた。また、各粒の粒子径d(μm)は、直交する2方向で径を測定し、その平均値とした。
破壊強度Cs(MPa)は、試験力P(mN)および粒子径d(μm)から、下記式により求めた(但し、πは円周率(3.14)である。)。
Cs=2.48×P/πd2
Cs=2.48×P/πd2
5粒についての破壊強度Cs(MPa)の平均値を求め、その有機硫黄材料の破壊強度Cs(MPa)とした。
(放電容量、および容量維持率の測定)
各実施例、比較例で作製したコイン型のリチウムイオン二次電池について、試験温度30℃の条件下で、正極活物質1gあたり、1回から9回目までは50mAに相当する電流値で充放電し、10回から30回目までは250mAに相当する電流値で充放電させた。放電終止電圧は1.0V、充電終止電圧は3.0Vとした。また充放電を繰り返し、1回目および2回目の電池放電容量(mAh)とともに、10回目および30回目の電池放電容量(mAh)を観察した。
各実施例、比較例で作製したコイン型のリチウムイオン二次電池について、試験温度30℃の条件下で、正極活物質1gあたり、1回から9回目までは50mAに相当する電流値で充放電し、10回から30回目までは250mAに相当する電流値で充放電させた。放電終止電圧は1.0V、充電終止電圧は3.0Vとした。また充放電を繰り返し、1回目および2回目の電池放電容量(mAh)とともに、10回目および30回目の電池放電容量(mAh)を観察した。
2回目の放電容量(mAh/g)を初期容量とした。初期容量が大きいほど、リチウムイオン二次電池は充放電容量が大きく好ましいと評価できる。また、10回目の放電容量DC10(mAh/g)と30回目の放電容量DC30(mAh/g)から、下記式により、容量維持率(%)を求めた。
容量維持率(%)=(DC30/DC10)×100
容量維持率(%)=(DC30/DC10)×100
(電極組成物層の密度)
上記で得られる電極について、電極組成物層(正極)の密度を、電極組成物層の重量(g)と電極組成物層の体積(cm3)から計算した。電極組成物層の重量(g)と電極組成物層の体積(cm3)は、以下のようにして求めた。
電極組成物層の重量:電極の重量の実測値-集電体の重量の実測値
電極組成物層の体積:電極組成物層の面積の実測値×(電極の厚みの実測値-集電体の厚みの実測値)
上記で得られる電極について、電極組成物層(正極)の密度を、電極組成物層の重量(g)と電極組成物層の体積(cm3)から計算した。電極組成物層の重量(g)と電極組成物層の体積(cm3)は、以下のようにして求めた。
電極組成物層の重量:電極の重量の実測値-集電体の重量の実測値
電極組成物層の体積:電極組成物層の面積の実測値×(電極の厚みの実測値-集電体の厚みの実測値)
(電極組成物層の単位体積あたりのDC30)
電極組成物層(正極)の単位体積あたりのDC30は、上記で求めた30回目の放電容量DC30(mAh/g)に、上記で求めた電極組成物層の密度(g/cm3)および活物質比率0.9(電極組成物における活物質の質量比)を乗じて求めた。
電極組成物層(正極)の単位体積あたりのDC30は、上記で求めた30回目の放電容量DC30(mAh/g)に、上記で求めた電極組成物層の密度(g/cm3)および活物質比率0.9(電極組成物における活物質の質量比)を乗じて求めた。
(プレス処理前後の電極表面の画像)
上記正極の作製過程において、ロールプレス機によるプレス前に切り離しておいた正極の部分をプレス処理前の電極とし、またプレス後にφ11で打ちぬいた部分以外の正極の部分をプレス処理後の電極として、走査型電子顕微鏡(SEM)で表面を観察した。
上記正極の作製過程において、ロールプレス機によるプレス前に切り離しておいた正極の部分をプレス処理前の電極とし、またプレス後にφ11で打ちぬいた部分以外の正極の部分をプレス処理後の電極として、走査型電子顕微鏡(SEM)で表面を観察した。
図2において、実施例1の場合、プレス後の電極表面は粒子の凹凸がなくなり平坦化し、ほぼ全ての粒子が潰れていることが確認できる。一方、比較例1の場合、プレス後でも粒子の凹凸は確認でき、潰れずに残っている正極活物質が多く観察された。
表より、本開示の実施例のリチウムイオン二次電池は、30回目の単位体積あたりの放電容量(mAh/cm3)、すなわち、単位体積あたりのエネルギー密度が比較例に比べて優れている。また、容量維持率(%)も優れた値を示している。
<実施形態>
本開示の実施形態の例を以下に示す。
本開示の実施形態の例を以下に示す。
[1]アクリル樹脂の粒子を硫黄で変性した有機硫黄材料からなる電極活物質であり、
前記有機硫黄材料の任意の5粒子のそれぞれについて、粒子径をd(μm)、微小圧縮試験で粒子の破壊が起こる瞬間の試験力をP(mN)とするとき、下記式で算出される破壊強度Cs(MPa)の平均値が47.4未満、好ましくは40.0以下、より好ましくは30.0以下、さらに好ましくは25.0以下、さらに好ましくは23.2以下、さらに好ましくは20.0以下、さらに好ましくは15.0以下、さらに好ましくは10.0以下、さらに好ましくは5.0以下である電極活物質、
Cs=2.48×P/πd2
(但し、dは有機硫黄材料の粒子について直交する2方向で計測した径の平均値であり、πは円周率(3.14)である。)
[2]前記有機硫黄材料のメジアン径が12.0μm未満、好ましくは0.1μm~11.0μm、より好ましくは0.1μm~11.0μm、さらに好ましくは0.1μm~10.0μm、さらに好ましくは0.1μm~9.0μm、さらに好ましくは0.1μm~8.5μm、さらに好ましくは0.1μm~8.3μm、さらに好ましくは0.1μm~6.0μm、さらに好ましくは1.0μm~6.0μmである、上記[1]記載の電極活物質、
[3]前記アクリル樹脂が、
下記式(1)で示されるアクリレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種を重合した重合体、
下記式(1)で示されるアクリレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種と下記式(2)で示されるジアクリレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種とを重合した重合体、および、
メタクリロニトリルを含むモノマーを重合した重合体
からなる群から選択される少なくとも一の重合体を含むものである、上記[1]または[2]記載の電極活物質、
CH2=C(R11)COOR12 (1)
(ここで、R11は水素原子またはメチル基であり、R12はアルキル基である。)
CH2=C(R21)COO-Y-OCO(R22)C=CH2 (2)
(ここで、R21とR22は同一または異なって、水素原子またはメチル基であり、Yはヒドロカルビレン基であり、該ヒドロカルビレン基は水酸基およびアルキル基からなる群から選択される少なくとも一つの置換基を有していてもよく、かつ、ヒドロカルビレン基を構成する炭素骨格は酸素原子によるエーテル結合を有していてもよい。但し、当該エーテル結合が2以上あるとき隣接する酸素原子間には常に2以上の炭素原子が介在する。)
[4]R12が炭素数1~6、好ましくは1~4のアルキル基であり、Yが炭素数2~6、好ましくは2または3のヒドロカルビレン基であり、該ヒドロカルビレン基において、置換基の数が1~4、好ましくは1または2であり、置換基であるアルキル基の炭素数が1~4、好ましくは1であり、ヒドロカルビレン基を構成する炭素骨格が有するエーテル結合の数が1~2である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の電極活物質、
[5]前記アクリル樹脂の粒子の粒子径が0.1~300.0μm、好ましくは0.1~270.0μm、より好ましくは0.1~200.0μm、さらに好ましくは0.1~100.0μm、さらに好ましくは0.1~50.0μm、さらに好ましくは0.1~20.0μm、さらに好ましくは0.1~15.0μm、さらに好ましくは0.1~10.0μm、さらに好ましくは0.1~6.0μm、さらに好ましくは1.0~6.0μmである、上記[1]~[4]のいずれかに記載の電極活物質、
[6]前記アクリル樹脂の粒子が多孔質構造を有する、上記[1]~[5]のいずれかに記載の電極活物質、
[7]有機硫黄材料中の硫黄量が50.00質量%以上、好ましくは53.00質量%以上、より好ましくは55.00質量%以上、さらに好ましくは56.00質量%以上、さらに好ましくは60.00質量%以上である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の電極活物質、
[8]上記[1]~[7]のいずれかに記載の電極活物質を含んでなる電極組成物がプレス処理された電極組成物層であって、密度が1.50g/cm3以上、好ましくは1.53g/cm3以上、より好ましくは1.56g/cm3以上、さらに好ましくは1.59g/cm3以上、さらに好ましくは1.60g/cm3以上である、電極組成物層、
[9]上記[8]の電極組成物層を含んでなる電極、
[10]上記[9]記載の電極を含んでなるリチウムイオン二次電池。
前記有機硫黄材料の任意の5粒子のそれぞれについて、粒子径をd(μm)、微小圧縮試験で粒子の破壊が起こる瞬間の試験力をP(mN)とするとき、下記式で算出される破壊強度Cs(MPa)の平均値が47.4未満、好ましくは40.0以下、より好ましくは30.0以下、さらに好ましくは25.0以下、さらに好ましくは23.2以下、さらに好ましくは20.0以下、さらに好ましくは15.0以下、さらに好ましくは10.0以下、さらに好ましくは5.0以下である電極活物質、
Cs=2.48×P/πd2
(但し、dは有機硫黄材料の粒子について直交する2方向で計測した径の平均値であり、πは円周率(3.14)である。)
[2]前記有機硫黄材料のメジアン径が12.0μm未満、好ましくは0.1μm~11.0μm、より好ましくは0.1μm~11.0μm、さらに好ましくは0.1μm~10.0μm、さらに好ましくは0.1μm~9.0μm、さらに好ましくは0.1μm~8.5μm、さらに好ましくは0.1μm~8.3μm、さらに好ましくは0.1μm~6.0μm、さらに好ましくは1.0μm~6.0μmである、上記[1]記載の電極活物質、
[3]前記アクリル樹脂が、
下記式(1)で示されるアクリレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種を重合した重合体、
下記式(1)で示されるアクリレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種と下記式(2)で示されるジアクリレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種とを重合した重合体、および、
メタクリロニトリルを含むモノマーを重合した重合体
からなる群から選択される少なくとも一の重合体を含むものである、上記[1]または[2]記載の電極活物質、
CH2=C(R11)COOR12 (1)
(ここで、R11は水素原子またはメチル基であり、R12はアルキル基である。)
CH2=C(R21)COO-Y-OCO(R22)C=CH2 (2)
(ここで、R21とR22は同一または異なって、水素原子またはメチル基であり、Yはヒドロカルビレン基であり、該ヒドロカルビレン基は水酸基およびアルキル基からなる群から選択される少なくとも一つの置換基を有していてもよく、かつ、ヒドロカルビレン基を構成する炭素骨格は酸素原子によるエーテル結合を有していてもよい。但し、当該エーテル結合が2以上あるとき隣接する酸素原子間には常に2以上の炭素原子が介在する。)
[4]R12が炭素数1~6、好ましくは1~4のアルキル基であり、Yが炭素数2~6、好ましくは2または3のヒドロカルビレン基であり、該ヒドロカルビレン基において、置換基の数が1~4、好ましくは1または2であり、置換基であるアルキル基の炭素数が1~4、好ましくは1であり、ヒドロカルビレン基を構成する炭素骨格が有するエーテル結合の数が1~2である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の電極活物質、
[5]前記アクリル樹脂の粒子の粒子径が0.1~300.0μm、好ましくは0.1~270.0μm、より好ましくは0.1~200.0μm、さらに好ましくは0.1~100.0μm、さらに好ましくは0.1~50.0μm、さらに好ましくは0.1~20.0μm、さらに好ましくは0.1~15.0μm、さらに好ましくは0.1~10.0μm、さらに好ましくは0.1~6.0μm、さらに好ましくは1.0~6.0μmである、上記[1]~[4]のいずれかに記載の電極活物質、
[6]前記アクリル樹脂の粒子が多孔質構造を有する、上記[1]~[5]のいずれかに記載の電極活物質、
[7]有機硫黄材料中の硫黄量が50.00質量%以上、好ましくは53.00質量%以上、より好ましくは55.00質量%以上、さらに好ましくは56.00質量%以上、さらに好ましくは60.00質量%以上である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の電極活物質、
[8]上記[1]~[7]のいずれかに記載の電極活物質を含んでなる電極組成物がプレス処理された電極組成物層であって、密度が1.50g/cm3以上、好ましくは1.53g/cm3以上、より好ましくは1.56g/cm3以上、さらに好ましくは1.59g/cm3以上、さらに好ましくは1.60g/cm3以上である、電極組成物層、
[9]上記[8]の電極組成物層を含んでなる電極、
[10]上記[9]記載の電極を含んでなるリチウムイオン二次電池。
1 反応装置
2 原料
3 反応容器
4 シリコーン製の蓋
5 アルミナ保護管
6 ガス導入管
7 ガス排出管
8 電気炉
9 熱電対
10 温度コントローラ
11 水酸化ナトリウム水溶液
12 トラップ槽
2 原料
3 反応容器
4 シリコーン製の蓋
5 アルミナ保護管
6 ガス導入管
7 ガス排出管
8 電気炉
9 熱電対
10 温度コントローラ
11 水酸化ナトリウム水溶液
12 トラップ槽
Claims (10)
- アクリル樹脂の粒子を硫黄で変性した有機硫黄材料からなる電極活物質であり、
前記有機硫黄材料の任意の5粒子のそれぞれについて、粒子径をd(μm)、微小圧縮試験で粒子の破壊が起こる瞬間の試験力をP(mN)とするとき、下記式で算出される破壊強度Cs(MPa)の平均値が47.4未満である電極活物質。
Cs=2.48×P/πd2
(但し、dは有機硫黄材料の粒子について直交する2方向で計測した径の平均値であり、πは円周率(3.14)である。) - 前記有機硫黄材料のメジアン径が12.0μm未満である、請求項1記載の電極活物質。
- 前記アクリル樹脂が、
下記式(1)で示されるアクリレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種を重合した重合体、
下記式(1)で示されるアクリレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種と下記式(2)で示されるジアクリレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種とを重合した重合体、および、
メタクリロニトリルを含むモノマーを重合した重合体
からなる群から選択される少なくとも一の重合体を含むものである、請求項1または2記載の電極活物質。
CH2=C(R11)COOR12 (1)
(ここで、R11は水素原子またはメチル基であり、R12はアルキル基である。)
CH2=C(R21)COO-Y-OCO(R22)C=CH2 (2)
(ここで、R21とR22は同一または異なって、水素原子またはメチル基であり、Yはヒドロカルビレン基であり、該ヒドロカルビレン基は水酸基およびアルキル基からなる群から選択される少なくとも一つの置換基を有していてもよく、かつ、ヒドロカルビレン基を構成する炭素骨格は酸素原子によるエーテル結合を有していてもよい。但し、当該エーテル結合が2以上あるとき隣接する酸素原子間には常に2以上の炭素原子が介在する。) - R12が炭素数1~6のアルキル基であり、Yが炭素数2~6のヒドロカルビレン基であり、該ヒドロカルビレン基において、置換基の数が1~4であり、置換基であるアルキル基の炭素数が1~4であり、ヒドロカルビレン基を構成する炭素骨格が有するエーテル結合の数が1~2である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電極活物質。
- 前記アクリル樹脂の粒子の粒子径が0.1~300.0μmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の電極活物質。
- 前記アクリル樹脂の粒子が多孔質構造を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の電極活物質。
- 有機硫黄材料中の硫黄量が50.00質量%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の電極活物質。
- 請求項1~7のいずれか1項に記載の電極活物質を含んでなる電極組成物がプレス処理された電極組成物層であって、密度が1.50g/cm3以上である、電極組成物層。
- 請求項8の電極組成物層を含んでなる電極。
- 請求項9記載の電極を含んでなるリチウムイオン二次電池。
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JP2021179467A JP2023068392A (ja) | 2021-11-02 | 2021-11-02 | 電極活物質、電極およびリチウムイオン二次電池 |
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JP2021179467A JP2023068392A (ja) | 2021-11-02 | 2021-11-02 | 電極活物質、電極およびリチウムイオン二次電池 |
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JP2021179467A Pending JP2023068392A (ja) | 2021-11-02 | 2021-11-02 | 電極活物質、電極およびリチウムイオン二次電池 |
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