JP2023067943A - 銀めっき材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】接続端子などの材料として使用した場合に、接続端子の挿抜や摺動に対する耐久性に優れ且つ接触抵抗が低い銀めっき材およびその製造方法を提供する。【解決手段】基材(被めっき材)10上にニッケルからなる下地層12を形成し、この下地層12の表面部分を剥離して、表面部分が剥離された下地層12’を形成し、この表面部分が剥離された下地層12’の表面に銀からなる表層14を形成し、この表層14の表面を剥離して、表面部分が剥離された表層14’を形成し、この表面部分が剥離された表層14’の表面に有機皮膜16を形成する。【選択図】図2F
Description
本発明は、銀めっき材およびその製造方法に関し、特に、車載用や民生用の電気配線に使用されるコネクタ、スイッチ、リレーなどの接点や端子部品の材料として使用される銀めっき材およびその製造方法に関する。
従来、コネクタやスイッチなどの接点や端子部品などの材料として、銅または銅合金やステンレス鋼などの比較的安価で耐食性や機械的特性などに優れた基材に、電気特性や半田付け性などの必要な特性に応じて、錫、銀、金などのめっきを施しためっき材が使用されている。これらのめっきと基材との間の密着性を向上させるために、これらのめっきと基材との間にニッケルからなる下地層を形成しためっき材も使用されている。
銅または銅合金やステンレス鋼などの基材に錫めっきを施した錫めっき材は、安価であるが、高温環境下における耐食性に劣っている。また、これらの基材に金めっきを施した金めっき材は、耐食性に優れ、信頼性が高いが、コストが高くなる。一方、これらの基材に銀めっきを施した銀めっき材は、金めっき材と比べて安価であり、錫めっき材と比べて耐食性に優れている。
また、コネクタやスイッチなどの接点や端子部品などの材料は、コネクタの挿抜やスイッチの摺動に伴う耐摩耗性も要求される。
しかし、銀めっき材は、軟質で摩耗し易いため、接続端子などの材料として使用すると、挿抜や摺動により凝着して凝着摩耗が生じ易くなり、また、接続端子の挿入時に表面が削られて摩擦係数が高くなって挿入力が高くなるという問題がある。特に、銀めっき材をワイヤーハーネスなどの挿抜可能なコネクタの材料として利用する場合に、繰り返しの挿抜によって銀めっき皮膜が削られて下地めっき皮膜や素地が露出すると、接触抵抗が増大して、発熱や発火に至るおそれがある。
このような問題を解消するため、銀めっき皮膜を厚くする方法や、銀めっき材の表面に潤滑剤を塗布する方法が知られている。
しかし、銀めっき皮膜を厚くすると、製造コストが高くなり、銀めっき材の表面に潤滑剤を塗布する場合は、潤滑剤の塗布工程が必要になり、生産性が低下して製造コストが高くなる。
また、銀めっき材の表面に潤滑剤を塗布する方法として、ベンゾトリアゾールなどの特定のインヒビターと、特定の脂肪酸からなる潤滑剤と、特定のアルキルリン酸エステルからなる乳化剤を含む表面処理液を銀めっき材に塗布する方法(例えば、特許文献1参照)や、トルエン、アセトン、トリクロロエタンまたは合成溶剤に脂肪酸を含む有機化合物を溶解した溶液中に、貴金属またはこれを主成分とする合金からなる表層を有する電気接点材料を浸漬して、脂肪酸を含む有機化合物からなる有機皮膜を表層の表面に形成する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
しかし、特許文献1の方法のように、ベンゾトリアゾールなどのインヒビターと脂肪酸を混合した表面処理液を銀めっき材の表面に塗布すると、十分な耐摩耗性の銀めっき材を得ることができない。また、特許文献2の方法では、トルエンなどの有機溶剤を使用しているため、取扱いや環境負荷などの観点から、生産性が低下して、製造コストが高くなる。
このような問題を解消するため、基材上に銀からなる表層を形成した後、この表層を10~50g/Lの脂肪酸を含む水エマルジョンに浸漬して、表層の表面に厚さ10~50nmの有機皮膜を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかし、特許文献3の方法により作製した銀めっき材を接続端子などの材料として使用すると、接続端子の挿抜や摺動に対する耐久性が十分でなく、接続端子の挿抜や摺動の回数が多くなると、摩耗により基材が露出して接触抵抗が高くなり易く、外観も悪化し易いという問題がある。
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、接続端子などの材料として使用した場合に、接続端子の挿抜や摺動に対する耐久性に優れ且つ接触抵抗が低い銀めっき材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、基材上にニッケルからなる下地層を形成し、この下地層の表面に銀からなる表層を形成し、この表層の表面部分を剥離した後、この表面部分が剥離された表層の表面に有機皮膜を形成することにより、接続端子などの材料として使用した場合に、接続端子の挿抜や摺動に対する耐久性に優れ且つ接触抵抗が低い銀めっき材を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明による銀めっき材の製造方法は、基材上にニッケルからなる下地層を形成し、この下地層の表面に銀からなる表層を形成し、この表層の表面部分を剥離した後、この表面部分が剥離された表層の表面に有機皮膜を形成することを特徴とする。
この銀めっき材の製造方法において、表層が電気めっきにより形成された銀めっき皮膜であり、この銀めっき皮膜を形成する際の電気めっきと逆方向に電流を流す逆電解処理により、表層の表面部分を剥離するのが好ましい。また、表層の表面部分を剥離することにより、表層の表面の算術平均粗さRaを0.13μm以下にし且つ粗さ曲線のスキューネスRskを0.20以下にするのが好ましい。また、有機皮膜が、チオール系表面処理剤、脂肪酸系表面処理剤およびフッ素系表面処理剤からなる群から選ばれる1種を含む溶液により形成されるのが好ましい。また、下地層の表面に表層を形成する前に、下地層の表面部分を剥離してもよい。この場合、下地層が電気めっきにより形成されたニッケルめっき皮膜であり、このニッケルめっき皮膜を形成する際の電気めっきと逆方向に電流を流す逆電解処理により、下地層の表面部分を剥離するのが好ましい。さらに、基材が銅または銅合金からなるのが好ましい。
また、本発明による銀めっき材は、基材上にニッケルからなる下地層が形成され、この下地層の表面に銀からなる表層が形成され、この表層の表面に有機皮膜が形成され、表層の表面の算術平均粗さRaが0.13μm以下であり且つ粗さ曲線のスキューネスRskが0.20以下であることを特徴とする。
この銀めっき材において、有機皮膜が、チオール化合物、脂肪酸およびフッ素化合物からなる群から選ばれる1種を含む有機皮膜であるのが好ましい。また、基材が銅または銅合金からなるのが好ましい。
また、本発明による接点または端子部品は、上記の銀めっき材を材料として用いたことを特徴とする。
本発明によれば、接続端子などの材料として使用した場合に、接続端子の挿抜や摺動に対する耐久性に優れ且つ接触抵抗が低い銀めっき材を製造することができる。
本発明による銀めっき材の製造方法の第1の実施の形態では、図1Aに示す基材(被めっき材)10上に、図1Bに示すようにニッケルからなる下地層12を形成し、この下地層12の表面に、図1Cに示すように銀からなる表層14を形成し、この表層14の表面部分を、図1Dに示すように剥離して、表面部分が剥離された表層14’を形成し、この表面部分が剥離された表層14’の表面に、図1Eに示すように有機皮膜16を形成する。
本発明による銀めっき材の製造方法の第2の実施の形態では、図2Aに示す基材(被めっき材)10上に、図2Bに示すようにニッケルからなる下地層12を形成し、この下地層12の表面部分を、図2Cに示すように剥離して、表面部分が剥離された下地層12’を形成し、この表面部分が剥離された下地層12’の表面に、図2Dに示すように銀からなる表層14を形成し、この表層14の表面部分を、図2Eに示すように剥離して、表面部分が剥離された表層14’を形成し、この表面部分が剥離された表層14’の表面に、図2Fに示すように有機皮膜16を形成する。
基材(被めっき材)10は、銅または銅合金からなるのが好ましく、めっきの前処理として、基材を電解脱脂し、酸洗するのが好ましい。
ニッケルからなる下地層12は、ニッケルめっき浴中において、基材10を陰極とし、ニッケル電極板を陽極として、電気めっき(ニッケルめっき)を行うことによって形成されたニッケルめっき皮膜であるのが好ましい。このニッケルからなる下地層12を基材10と銀からなる表層14との間に形成することによって、基材と表層との間の密着性を向上させることができる。この下地層12の厚さは、薄過ぎると基材10と銀からなる表層14との間の密着性を向上させるには十分でなく、厚過ぎると銀めっき材の加工性が低下するため、0.3~2.0μmであるのが好ましく、0.5~1.5μmであるのがさらに好ましい。この下地層12と銀からなる表層14との間の密着性を向上させるために、下地層12と表層14との間に銀ストライクめっきよる中間層を形成してもよい。
また、下地層12の表面に表層14を形成する前に、ニッケルからなる下地層12の表面部分を剥離してもよい。この下地層12の表面部分の剥離は、ニッケルからなる下地層12を形成する際に使用したニッケルめっき浴中において、基材10を陽極とし、ニッケル電極板を陰極として、(ニッケルからなる下地層12を形成する際と逆方向に電流を流す)逆電解処理を行って、下地層12の表面部分を溶解させることによって行うのが好ましい。
銀からなる表層14は、銀めっき液中において、基材10を陰極とし、銀電極板を陽極として、電気めっき(銀めっき)を行うことによって形成された銀めっき皮膜であるのが好ましい。銀めっき液は、シアン化銀カリウム(KAg(CN)2)と、シアン化カリウム(KCN)と、セレノシアン酸カリウム(KSeCN)とを含む水溶液からなるのが好ましく、炭酸カリウム(K2CO3)を含んでもよい。銀からなる表層14の厚さは、厚過ぎるとコストが高くなるだけでなく割れ易くなって銀めっき材の加工性が低下し、薄過ぎると銀めっき材の耐摩耗性が低下するため、1~10μmであるのが好ましく、2~7μmであるのがさらに好ましく、2~5μmであるのが最も好ましい。
銀からなる表層14の表面部分の剥離は、銀からなる表層14を形成する際に使用した銀めっき液中において、基材10を陽極とし、銀電極板を陰極として、(銀からなる表層14を形成する際と逆方向に電流を流す)逆電解処理を行って、銀からなる表層14の表面部分を溶解させることによって行うのが好ましい。また、表面部分が剥離された表層14’の表面の算術平均粗さRaは、0.13μm以下であるのが好ましく、0.11μm以下であるのがさらに好ましく、0.10μm以下であるのが最も好ましい。また、表面部分が剥離された表層14’の表面の粗さ曲線のスキューネスRskは、0.20以下であるのが好ましく、0.19以下であるのがさらに好ましい。
有機皮膜16は、チオール化合物、脂肪酸またはフッ素化合物を含む皮膜であり、チオール系表面処理剤、脂肪酸系表面処理剤またはフッ素系表面処理剤を含む水エマルジョン浴、水溶液またはアルコール溶液中に(表面部分が剥離された)表層14’を浸漬することにより形成することができる。チオール系表面処理剤としては、界面活性剤とチオール化合物と有機酸とイオン交換水からなる水溶液や、オクタデカンチオール(C18SH)とベンゾトリアゾール(BTA)の混合水溶液や、1-オクタデカンチオールを含む(エタノールなどの)アルコール溶液や水溶液などを使用することができる。また、脂肪酸系表面処理剤としては、ステアリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、セロチン酸、メリシン酸などの飽和脂肪酸や、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、ネルボン酸、リノール酸、α-リノレン酸などの不飽和脂肪酸を含む表面処理剤を使用することができるが、ステアリン酸を含む水エマルジョン浴または水溶液を使用するのが好ましい。フッ素系表面処理剤として、ハイドロフルオロエーテルの(エタノールなどの)アルコール溶液などを使用することができる。
上記の銀めっき材の製造方法の実施の形態により、(好ましくは銅または銅合金からなる)基材10上にニッケルからなる下地層12が形成され、この下地層12の表面に銀からなる(表面部分が剥離された)表層14’が形成され、この(表面部分が剥離された)表層14’の表面に(好ましくはチオール化合物、脂肪酸またはフッ素化合物を含む)有機皮膜16が形成され、(表面部分が剥離された)表層14’の表面の算術平均粗さRaが0.13μm以下であり且つ粗さ曲線のスキューネスRskが0.20以下である銀めっき材を製造することができる。
また、上記の銀めっき材を2枚用意し、一方をインデント加工(内側R=1.5mm)して圧子として使用し、他方を平板状の評価試料として使用し、精密摺動試験装置により、評価試料に圧子を一定の加重(3N)で押し当てながら、素材が露出するまで往復摺動動作(摺動距離5mm、摺動速度1.67mm/s)を継続して、銀めっき材の磨耗状態を確認する磨耗試験を行うことにより、耐摩耗性の評価を行ったときに、250回の往復摺動動作後に、素材が露出しないのが好ましい。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗が1mΩ以下であるのが好ましく、0.5mΩ以下であるのがさらに好ましい。
以下、本発明による銀めっき材およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
[実施例1]
まず、基材(被めっき材)として67mm×50mm ×0.3mmの無酸素銅(C1020 1/2H)からなる圧延板を用意し、この被めっき材の前処理として、被めっき材とSUS板をアルカリ脱脂液に入れ、被めっき材を陰極とし、SUS板を陽極として、電圧5Vで30秒間電解脱脂を行い、水洗した後、3%硫酸中で15秒間酸洗を行った。
まず、基材(被めっき材)として67mm×50mm ×0.3mmの無酸素銅(C1020 1/2H)からなる圧延板を用意し、この被めっき材の前処理として、被めっき材とSUS板をアルカリ脱脂液に入れ、被めっき材を陰極とし、SUS板を陽極として、電圧5Vで30秒間電解脱脂を行い、水洗した後、3%硫酸中で15秒間酸洗を行った。
次に、540g/Lのスルファミン酸ニッケル四水和物と25g/Lの塩化ニッケルと35g/Lのホウ酸を含む水溶液からなる無光沢ニッケルめっき液中において、前処理を行った被めっき材を陰極とし、ニッケル電極板を陽極として、スターラにより500rpmで撹拌しながら液温55℃において電流密度5A/dm2で98秒間電気めっき(無光沢ニッケルめっき)を行って、下地めっき皮膜として無光沢ニッケルめっき皮膜を形成した。この無光沢ニッケルめっき皮膜の略中央部の厚さを蛍光X線膜厚計(株式会社日立ハイテクサイエンス製のSFT-110A)により測定したところ、1.3μmであった。
次に、上記の無光沢ニッケルめっき液中において、無光沢ニッケルめっき皮膜を形成した被めっき材を陰極から陽極に変え、ニッケル電極板を陽極から陰極に変えて、スターラにより500rpmで撹拌しながら液温55℃において電流密度10A/dm2で30秒間逆電解処理を行って、無光沢ニッケルめっき皮膜の表面部分を溶解させて剥離した後、水洗してニッケルめっき液を十分に洗い流した。この表面部分が剥離された無光沢ニッケルめっき皮膜の略中央部の厚さを上記の蛍光X線膜厚計により測定したところ、1μmであった。
次に、3g/Lのシアン化銀カリウムと90g/Lのシアン化カリウムを含む水溶液からなる銀ストライクめっき液中において、下地めっき皮膜の表面部分を剥離した被めっき材を陰極とし、白金で被覆したチタン電極板を陽極として、スターラにより500rpmで撹拌しながら室温(25℃)において電流密度2A/dm2で10秒間電気めっきを行って、銀ストライクめっき皮膜を形成した後、水洗して銀ストライクめっき液を十分に洗い流した。
次に、175g/Lのシアン化銀カリウム(KAg(CN)2)と95g/Lのシアン化カリウム(KCN)と102mg/Lのセレノシアン酸カリウム(KSeCN)を含む水溶液からなる銀めっき液中において、銀ストライクめっき皮膜を形成した被めっき材を陰極とし、銀電極板を陽極として、スターラにより500rpmで撹拌しながら液温18℃において電流密度5A/dm2で銀めっき皮膜の140秒間電気めっき(銀めっき)を行って、銀めっき皮膜を形成した。この銀めっき皮膜の略中央部の厚さを上記の蛍光X線膜厚計により測定したところ、5.8μmであった。なお、この銀めっき皮膜のビッカース硬さを、微小硬さ試験機(株式会社ミツトヨ製のHM-221)を使用して、測定荷重10gfを10秒間加えて、JIS Z2244に準じて測定したところ、110HV以上であった。
次に、上記の銀めっき液中において、被めっき材を陰極から陽極に変え、銀電極板を陽極から陰極に変えて、スターラにより500rpmで撹拌しながら液温18℃において電流密度5A/dm2で20秒間逆電解処理を行って、銀めっき皮膜の表面部分を剥離して、銀めっき皮膜の表面部分を剥離した後、水洗して銀めっき液を十分に洗い流して、銀めっき材を得た。この銀めっき材の表面部分が剥離された銀めっき皮膜の略中央部の厚さを上記の蛍光X線膜厚計により測定したところ、5μmであった。また、この銀めっき材の表面部分が剥離された銀めっき皮膜の表面の表面粗さについて、形状測定レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製のVK-X150)による表面粗さ測定の結果から、JIS B0601(2001年)に基づいて表面粗さを表すパラメータである算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.045μmであり、粗さ曲線のスキューネスRskが0.0631であった。
このようにして得られた銀めっき材を、(チオール化合物を含む)チオール系表面処理剤(JX日鉱日石金属株式会社製の(界面活性剤とチオール化合物と有機酸とイオン交換水からなる)金属変色防止剤CT-X)(チオール系A)を33mL/L含む溶液にスターラにより500rpmで撹拌しながら30秒間浸漬した後、水洗してチオール系表面処理剤を十分に洗い流し、常温で乾燥させた。
このようにして得られた表面処理後の銀めっき材について、熱分解型ガスクロマトグラフ質量分析計により銀めっき材の表面の定性分析を行ったところ、銀めっき皮膜の表面にチオール化合物を含む有機皮膜が確認された。また、表面処理後の銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラはなく、外観は非常に良好であった。
また、上記の表面処理後の銀めっき材を2枚用意し、一方をインデント加工(内側R=1.5mm)して圧子として使用し、他方を平板状の評価試料として使用し、精密摺動試験装置(株式会社山崎精機研究所製のCRS-G2050)により、評価試料に圧子を一定の加重(3N)で押し当てながら、素材が露出するまで往復摺動動作(摺動距離5mm、摺動速度1.67mm/s)を継続し、50回の往復摺動動作毎にマイクロスコープ(株式会社キーエンス製のVHX-1000)により複合めっき材の摺動痕の中心部を倍率200倍で観察して、銀めっき材の磨耗状態を確認する磨耗試験を行うことにより、耐摩耗性の評価を行った。その結果、400回の往復摺動動作後に(茶色の)素材が露出したことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗を測定したところ、接触抵抗は0.24mΩであった。
[実施例2]
無光沢ニッケルめっき皮膜を形成するための電気めっき時間を75秒間として厚さ1μmの無光沢ニッケルめっき皮膜を形成し、無光沢ニッケルめっき液による逆電解処理を行わず、チオール系表面処理剤として、オクタデカンチオール(C18SH)とベンゾトリアゾール(BTA)の混合水溶液を主成分とする表面処理剤(有限会社ケミカル電子製のCE-9500W)を200mL/L含む溶液(チオール系B)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、表面処理を行った銀めっき材を作製した。
無光沢ニッケルめっき皮膜を形成するための電気めっき時間を75秒間として厚さ1μmの無光沢ニッケルめっき皮膜を形成し、無光沢ニッケルめっき液による逆電解処理を行わず、チオール系表面処理剤として、オクタデカンチオール(C18SH)とベンゾトリアゾール(BTA)の混合水溶液を主成分とする表面処理剤(有限会社ケミカル電子製のCE-9500W)を200mL/L含む溶液(チオール系B)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、表面処理を行った銀めっき材を作製した。
この銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面処理前の算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.090μmであり、粗さ曲線のスキューネスRskが0.1853であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の定性分析を行ったところ、銀めっき皮膜の表面にチオール化合物を含む有機皮膜が確認された。また、表面処理後の銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラはなく、外観は非常に良好であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価と接触抵抗の測定を行った。その結果、300回の往復摺動動作後に、素材が露出したことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗は0.22mΩであった。
[実施例3]
チオール系表面処理剤として、オクタデカンチオール(C18SH)とベンゾトリアゾール(BTA)の混合水溶液を主成分とする表面処理剤(有限会社ケミカル電子製のCE-9500W)を200mL/L含む溶液(チオール系B)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、表面処理を行った銀めっき材を作製した。
チオール系表面処理剤として、オクタデカンチオール(C18SH)とベンゾトリアゾール(BTA)の混合水溶液を主成分とする表面処理剤(有限会社ケミカル電子製のCE-9500W)を200mL/L含む溶液(チオール系B)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、表面処理を行った銀めっき材を作製した。
この銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面処理前の算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.045μmであり、粗さ曲線のスキューネスRskが0.0631であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の定性分析を行ったところ、銀めっき皮膜の表面にチオール化合物を含む有機皮膜が確認された。また、表面処理後の銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラはなく、外観は非常に良好であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価と接触抵抗の測定を行った。その結果、300回の往復摺動動作後に、素材が露出したことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗は0.22mΩであった。
[実施例4]
チオール系表面処理剤に代えて、脂肪酸系表面処理剤(31g/Lのステアリン酸を含む400g/Lのセロゾール920(中京油脂株式会社製)を含む水エマルジョン浴)を使用し、この表面処理剤に浸漬した後に水洗しないで常温で乾燥させた以外は、実施例1と同様の方法により、表面処理を行った銀めっき材を作製した。
チオール系表面処理剤に代えて、脂肪酸系表面処理剤(31g/Lのステアリン酸を含む400g/Lのセロゾール920(中京油脂株式会社製)を含む水エマルジョン浴)を使用し、この表面処理剤に浸漬した後に水洗しないで常温で乾燥させた以外は、実施例1と同様の方法により、表面処理を行った銀めっき材を作製した。
この銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面処理前の算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.045μmであり、粗さ曲線のスキューネスRskが0.0631であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の定性分析を行ったところ、銀めっき皮膜の表面にステアリン酸を含む有機皮膜が確認された。また、表面処理後の銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラは殆どなく、外観は良好であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価と接触抵抗の測定を行った。その結果、300回の往復摺動動作後に、素材が露出したことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗は0.25mΩであった。
[実施例5]
チオール系表面処理剤に代えて、フッ素系表面処理剤(東洋ドライルーブ株式会社製の(90~100質量%のハイドロフルオロエーテルを含む)LUBICK LBF-201)5mLとエタノール100mLを含む溶液を使用し、この表面処理剤に浸漬した後に水洗しないで常温で乾燥させた以外は、実施例1と同様の方法により、表面処理を行った銀めっき材を作製した。
チオール系表面処理剤に代えて、フッ素系表面処理剤(東洋ドライルーブ株式会社製の(90~100質量%のハイドロフルオロエーテルを含む)LUBICK LBF-201)5mLとエタノール100mLを含む溶液を使用し、この表面処理剤に浸漬した後に水洗しないで常温で乾燥させた以外は、実施例1と同様の方法により、表面処理を行った銀めっき材を作製した。
この銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面処理前の算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.045μmであり、粗さ曲線のスキューネスRskが0.0631であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の定性分析を行ったところ、銀めっき皮膜の表面にフッ素化合物を含む有機皮膜が確認された。また、表面処理後の銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラは殆どなく、外観は良好であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価と接触抵抗の測定を行った。その結果、350回の往復摺動動作後に、素材が露出したことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗は0.26mΩであった。
[比較例1]
銀めっき皮膜を形成するための電気めっき時間を120秒間として厚さ5μmの銀めっき皮膜を形成し、銀めっき液による逆電解処理と表面処理を行わなかった以外は、実施例2と同様の方法により、銀めっき材を作製した。
銀めっき皮膜を形成するための電気めっき時間を120秒間として厚さ5μmの銀めっき皮膜を形成し、銀めっき液による逆電解処理と表面処理を行わなかった以外は、実施例2と同様の方法により、銀めっき材を作製した。
この銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.069μmであり、粗さ曲線のスキューネスRskが0.5121であった。また、この銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラはなく、外観は非常に良好であった。
また、銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価と接触抵抗の測定を行った。その結果、200回の往復摺動動作後に、素材が露出したことが確認され、耐摩耗性は良好でないことがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗は0.27mΩであった。
[比較例2]
銀めっき皮膜を形成するための電気めっき時間を120秒間として厚さ5μmの銀めっき皮膜を形成し、銀めっき液による逆電解処理と表面処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。
銀めっき皮膜を形成するための電気めっき時間を120秒間として厚さ5μmの銀めっき皮膜を形成し、銀めっき液による逆電解処理と表面処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。
この銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.052μmであり、粗さ曲線のスキューネスRskが0.2054であった。また、この銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラはなく、外観は非常に良好であった。
また、銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価と接触抵抗の測定を行った。その結果、250回の往復摺動動作後に、素材が露出したことが確認され、耐摩耗性は良好でないことがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗は0.27mΩであった。
[比較例3]
表面処理を行わなかった以外は、実施例2と同様の方法により、銀めっき材を作製した。
表面処理を行わなかった以外は、実施例2と同様の方法により、銀めっき材を作製した。
この銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.090μmであり、粗さ曲線のスキューネスRskが0.1853であった。また、この銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラはなく、外観は非常に良好であった。
また、銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価と接触抵抗の測定を行った。その結果、200回の往復摺動動作後に、素材が露出したことが確認され、耐摩耗性は良好でないことがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗は0.21mΩであった。
[比較例4]
表面処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。
表面処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。
この銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.045μmであり、粗さ曲線のスキューネスRskが0.0631であった。また、この銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラはなく、外観は非常に良好であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価と接触抵抗の測定を行った。その結果、200回の往復摺動動作後に、素材が露出したことが確認され、耐摩耗性は良好でないことがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗は0.23mΩであった。
[比較例5]
実施例1と同様の表面処理を行った以外は、比較例1と同様の方法により、表面処理後の銀めっき材を作製した。
実施例1と同様の表面処理を行った以外は、比較例1と同様の方法により、表面処理後の銀めっき材を作製した。
この銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面処理前の算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.069μmであり、粗さ曲線のスキューネスRskが0.5121であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の定性分析を行ったところ、銀めっき皮膜の表面にチオール化合物を含む有機皮膜が確認された。また、表面処理後の銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラはなく、外観は非常に良好であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価と接触抵抗の測定を行った。その結果、200回の往復摺動動作後に、素材が露出したことが確認され、耐摩耗性は良好でないことがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗は0.29mΩであった。
[比較例6]
実施例1と同様の表面処理を行った以外は、比較例2と同様の方法により、表面処理後の銀めっき材を作製した。
実施例1と同様の表面処理を行った以外は、比較例2と同様の方法により、表面処理後の銀めっき材を作製した。
この銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面処理前の算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.052μmであり、粗さ曲線のスキューネスRskが0.2054であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の定性分析を行ったところ、銀めっき皮膜の表面にチオール化合物を含む有機皮膜が確認された。また、表面処理後の銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラはなく、外観は非常に良好であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価と接触抵抗の測定を行った。その結果、250回の往復摺動動作後に、素材が露出したことが確認され、耐摩耗性は良好でないことがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗は0.28mΩであった。
[比較例7]
実施例2と同様の表面処理を行った以外は、比較例1と同様の方法により、表面処理後の銀めっき材を作製した。
実施例2と同様の表面処理を行った以外は、比較例1と同様の方法により、表面処理後の銀めっき材を作製した。
この銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面処理前の算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.069μmであり、粗さ曲線のスキューネスRskが0.5121であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の定性分析を行ったところ、銀めっき皮膜の表面にチオール化合物を含む有機皮膜が確認された。また、表面処理後の銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラはなく、外観は非常に良好であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価と接触抵抗の測定を行った。その結果、200回の往復摺動動作後に、素材が露出したことが確認され、耐摩耗性は良好でないことがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗は0.23mΩであった。
[比較例8]
実施例2と同様の表面処理を行った以外は、比較例2と同様の方法により、表面処理後の銀めっき材を作製した。
実施例2と同様の表面処理を行った以外は、比較例2と同様の方法により、表面処理後の銀めっき材を作製した。
この銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面処理前の算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.052μmであり粗さ曲線のスキューネスRskが0.2054であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の定性分析を行ったところ、銀めっき皮膜の表面にチオール化合物を含む有機皮膜が確認された。また、表面処理後の銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラはなく、外観は非常に良好であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価と接触抵抗の測定を行った。その結果、200回の往復摺動動作後に、素材が露出したことが確認され、耐摩耗性は良好でないことがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗は0.21mΩであった。
[比較例9]
チオール系表面処理剤として、1-オクタデカンチオールを含む溶液(和光純薬工業株式会社製の1-オクタンデカンチオール2gと純水400mLとエタノール400mLからなる溶液)(チオール系C)を使用し、この表面処理剤に浸漬した後に水洗しないで常温で乾燥させた以外は、比較例1と同様の方法により、表面処理後の銀めっき材を作製した。
チオール系表面処理剤として、1-オクタデカンチオールを含む溶液(和光純薬工業株式会社製の1-オクタンデカンチオール2gと純水400mLとエタノール400mLからなる溶液)(チオール系C)を使用し、この表面処理剤に浸漬した後に水洗しないで常温で乾燥させた以外は、比較例1と同様の方法により、表面処理後の銀めっき材を作製した。
この銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面処理前の算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.069μmであり、粗さ曲線のスキューネスRskが0.5121であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の定性分析を行ったところ、銀めっき皮膜の表面にチオール化合物を含む有機皮膜が確認された。また、表面処理後の銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラはなく、外観は非常に良好であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価と接触抵抗の測定を行った。その結果、200回の往復摺動動作後に、素材が露出したことが確認され、耐摩耗性は良好でないことがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗は1.13mΩであった。
[比較例10]
比較例9と同様の表面処理を行った以外は、比較例2と同様の方法により、表面処理後の銀めっき材を作製した。
比較例9と同様の表面処理を行った以外は、比較例2と同様の方法により、表面処理後の銀めっき材を作製した。
この銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面処理前の算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.052μmであり、粗さ曲線のスキューネスRskが0.2054であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の定性分析を行ったところ、銀めっき皮膜の表面にチオール化合物を含む有機皮膜が確認された。また、表面処理後の銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラはなく、外観は非常に良好であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価と接触抵抗の測定を行った。その結果、250回の往復摺動動作後に、素材が露出したことが確認され、耐摩耗性は良好でないことがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗は0.30mΩであった。
[比較例11]
実施例4と同様の表面処理を行った以外は、比較例1と同様の方法により、表面処理後の銀めっき材を作製した。
実施例4と同様の表面処理を行った以外は、比較例1と同様の方法により、表面処理後の銀めっき材を作製した。
この銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面処理前の算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.069μmであり、粗さ曲線のスキューネスRskが0.5121であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の定性分析を行ったところ、銀めっき皮膜の表面にステアリン酸を含む有機皮膜が確認された。また、表面処理後の銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラは殆どなく、外観は良好であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価と接触抵抗の測定を行った。その結果、250回の往復摺動動作後に、素材が露出したことが確認され、耐摩耗性は良好でないことがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗は0.23mΩであった。
[比較例12]
ニッケルめっき皮膜を形成せず、実施例1と同様の表面処理を行った以外は、比較例1と同様の方法により、表面処理後の銀めっき材を作製した。
ニッケルめっき皮膜を形成せず、実施例1と同様の表面処理を行った以外は、比較例1と同様の方法により、表面処理後の銀めっき材を作製した。
この銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面処理前の算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.075μmであり、粗さ曲線のスキューネスRskが-0.1206であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の定性分析を行ったところ、銀めっき皮膜の表面にチオール化合物を含む有機皮膜が確認された。また、表面処理後の銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラはなく、外観は非常に良好であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価と接触抵抗の測定を行った。その結果、40回の往復摺動動作後に、素材が露出したことが確認され、耐摩耗性は良好でないことがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗は10.8mΩであった。
[比較例13]
ニッケルめっき皮膜を形成せず、実施例1と同様の表面処理を行った以外は、比較例3と同様の方法により、表面処理後の銀めっき材を作製した。
ニッケルめっき皮膜を形成せず、実施例1と同様の表面処理を行った以外は、比較例3と同様の方法により、表面処理後の銀めっき材を作製した。
この銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面処理前の算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.088μmであり、粗さ曲線のスキューネスRskが0.0307であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の定性分析を行ったところ、銀めっき皮膜の表面にチオール化合物を含む有機皮膜が確認された。また、表面処理後の銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラはなく、外観は非常に良好であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価と接触抵抗の測定を行った。その結果、70回の往復摺動動作後に、素材が露出したことが確認され、耐摩耗性は良好でないことがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗は0.62mΩであった。
[比較例14]
無光沢ニッケルめっき液による逆電解処理を行って無光沢ニッケルめっき皮膜の表面部分を剥離する代わりに、無光沢ニッケル皮膜が形成された被めっき材をニッケルエッチング用化学研磨液(林純薬工業株式会社製の(30~40質量%の塩化第二鉄と3~5質量%の塩化水素を含む)Pure Etch 204B(426g)とPure Etch 204T(74g)の混合液)に常温で3秒間浸漬することにより、無光沢ニッケルめっき皮膜の表面を化学研磨した以外は、比較例2と同様の方法により、表面処理後の銀めっき材を作製した。
無光沢ニッケルめっき液による逆電解処理を行って無光沢ニッケルめっき皮膜の表面部分を剥離する代わりに、無光沢ニッケル皮膜が形成された被めっき材をニッケルエッチング用化学研磨液(林純薬工業株式会社製の(30~40質量%の塩化第二鉄と3~5質量%の塩化水素を含む)Pure Etch 204B(426g)とPure Etch 204T(74g)の混合液)に常温で3秒間浸漬することにより、無光沢ニッケルめっき皮膜の表面を化学研磨した以外は、比較例2と同様の方法により、表面処理後の銀めっき材を作製した。
この銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.157μmであり、粗さ曲線のスキューネスRskが0.060であった。また、この銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラはなく、外観は非常に良好であった。
また、この銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価と接触抵抗の測定を行った。その結果、130回の往復摺動動作後に、素材が露出したことが確認され、耐摩耗性は良好でないことがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗は0.34mΩであった。
[比較例15]
比較例9と同様の表面処理を行った以外は、比較例14と同様の方法により、銀めっき材を作製した。
比較例9と同様の表面処理を行った以外は、比較例14と同様の方法により、銀めっき材を作製した。
この銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面処理前の算術平均粗さRaと粗さ曲線のスキューネスRskを算出したところ、算術平均粗さRaが0.157μmであり、粗さ曲線のスキューネスRskが0.060であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、表面の定性分析を行ったところ、銀めっき皮膜の表面にチオール化合物を含む有機皮膜が確認された。また、表面処理後の銀めっき材を目視により観察したところ、外観ムラはなく、外観は非常に良好であった。
また、表面処理後の銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、耐摩耗性の評価と接触抵抗の測定を行った。その結果、130回の往復摺動動作後に、素材が露出したことが確認され、耐摩耗性は良好でないことがわかった。また、この摺動摩耗試験中に接触抵抗は0.34mΩであった。
これらの実施例および比較例で得られた銀めっき材の製造条件および特性を表1~表2に示す。なお、表2において、外観ムラはなく、外観が非常に良好である場合を◎、外観ムラは殆どなく、外観が良好な場合を○で示している。
10 基材(被めっき材)
12 下地層(ニッケルめっき皮膜)
12’ 表面部分が剥離された下地層
14 表層(銀めっき皮膜)
14’ 表面部分が剥離された表層
16 有機皮膜
12 下地層(ニッケルめっき皮膜)
12’ 表面部分が剥離された下地層
14 表層(銀めっき皮膜)
14’ 表面部分が剥離された表層
16 有機皮膜
Claims (11)
- 基材上にニッケルからなる下地層を形成し、この下地層の表面に銀からなる表層を形成し、この表層の表面部分を剥離した後、この表面部分が剥離された表層の表面に有機皮膜を形成することを特徴とする、銀めっき材の製造方法。
- 前記表層が、電気めっきにより形成された銀めっき皮膜であり、この銀めっき皮膜を形成する際の電気めっきと逆方向に電流を流す逆電解処理により、前記表層の表面部分を剥離することを特徴とする、請求項1に記載の銀めっき材の製造方法。
- 前記表層の表面部分を剥離することにより、前記表層の表面の算術平均粗さRaを0.13μm以下にし且つ粗さ曲線のスキューネスRskを0.20以下にすることを特徴とする、請求項1または2に記載の銀めっき材の製造方法。
- 前記有機皮膜が、チオール系表面処理剤、脂肪酸系表面処理剤およびフッ素系表面処理剤からなる群から選ばれる1種を含む溶液により形成されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の銀めっき材の製造方法。
- 前記下地層の表面に前記表層を形成する前に、前記下地層の表面部分を剥離することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の銀めっき材の製造方法。
- 前記下地層が、電気めっきにより形成されたニッケルめっき皮膜であり、このニッケルめっき皮膜を形成する際の電気めっきと逆方向に電流を流す逆電解処理により、前記下地層の表面部分を剥離することを特徴とする、請求項5に記載の銀めっき材の製造方法。
- 前記基材が銅または銅合金からなることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の銀めっき材の製造方法。
- 基材上にニッケルからなる下地層が形成され、この下地層の表面に銀からなる表層が形成され、この表層の表面に有機皮膜が形成され、表層の表面の算術平均粗さRaが0.13μm以下であり且つ粗さ曲線のスキューネスRskが0.20以下であることを特徴とする、銀めっき材。
- 前記有機皮膜が、チオール化合物、脂肪酸およびフッ素化合物からなる群から選ばれる1種を含む有機皮膜であることを特徴とする、請求項8に記載の銀めっき材。
- 前記基材が銅または銅合金からなることを特徴とする、請求項8または9に記載の銀めっき材。
- 請求項8乃至10のいずれかに記載の銀めっき材を材料として用いたことを特徴とする、接点または端子部品。
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