JP2023030824A - 固体電解質を用いたリチウムイオン二次電池用支持体、およびそれを用いたリチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】リチウムイオンのパスラインを十分に形成させ、内部抵抗の低い固体電解質層を得ることを可能にするリチウムイオン二次電池用支持体を提供する。【解決手段】リチウムイオン二次電池の固体電解質層に含まれる支持体であって、支持体の縦方向および横方向の熱寸法変化率がそれぞれ-10~5%、通気度が1~50L/cm2/min.、熱処理後の縦方向および横方向の剛軟度がそれぞれ5~250mNの範囲の紙もしくは不織布であるリチウムイオン二次電池用支持体を構成する。【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の正極、負極間に介在する固体電解質層に含まれるリチウムイオン二次電池用支持体、およびこの支持体を有した固体電解質層を備えたリチウムイオン二次電池に関する。
エネルギー密度の高い二次電池として、液体の電解質(以下、電解液)を用いたリチウムイオン二次電池が用いられている。電解液を用いたリチウムイオン二次電池は、正極と負極との間にセパレータを介在させ、電解液を充填した構成を有している。
リチウムイオン二次電池には、電解液として、主に有機系電解液が使用されている。有機系電解液は、液体であるための液漏れや、可燃性であるための発火が懸念される。そのため、リチウムイオン二次電池の安全性を高めるために、電解液ではなく、固体電解質を用いたリチウムイオン二次電池(以下、全固体電池)が開発されている。全固体電池は、当然ながら、電解質が固体であるため、液漏れもなく、かつ電解液と比較して難燃性で耐熱性も高いことから、安全性に優れたリチウムイオン二次電池として注目されている。全固体電池は、高い安全性を有することから、肌身に直接触れるウエアラブル機器向け等、小型の全固体電池が量産されている。
また、全固体電池は、電解液を用いるリチウムイオン二次電池と異なり、高温での特性劣化が小さい電池であることから、冷却装置が不要となり、電池パックの体積当たりのエネルギー密度の向上に対しても有利な二次電池である。全固体電池は、体積エネルギー密度の高い二次電池として有利な点から、電気自動車向け等、さらなる大型化が期待されている。
全固体電池の正極と負極との間に介在する固体電解質層は、リチウムイオンが正極-負極間をイオン伝導する機能と、正極活物質と負極活物質との短絡を防止する機能とが求められる。加えて、体積エネルギー密度に優れ、かつ内部抵抗を低くするために、固体電解質層の厚さは薄いことが求められる。
固体電解質層を形成する方法としては、固体電解質とバインダーとを混合し、加熱下で圧延してシート状に形成する方法や、固体電解質スラリーを電極上に塗工、乾燥する方法等が採用されている。
しかしながら、電気自動車向け等、大型の電池に使用する全固体電池用固体電解質層を形成する場合、例えば、加熱下で圧延してシート状に形成する方法で得られる固体電解質層は、取り扱い時に割れやクラックが生じてしまう。また、固体電解質を含むスラリーを電極上に塗工、乾燥する方法を用いると、乾燥時に固体電解質層にひずみが生じ、クラックが生じてしまう。そのため、安定して薄く、均一な固体電解質層を形成することが困難である。安定して薄く、均一な固体電解質層を形成できなければ、イオン伝導の悪化や、更には短絡が生じてしまう。
一方、短絡を防止するために、固体電解質層の厚さを厚くすることもできるが、厚さが厚い場合、電池の大きさが大きくなり、体積エネルギー密度の低下や、極間距離が長くなり、内部抵抗が高くなってしまう。
以上の問題を解決するために、薄膜状シート(以下、支持体)に固体電解質を含ませ、固体電解質と支持体とが一体化した固体電解質層を全固体電池に用いることが知られている。そして、全固体電池用支持体、リチウムイオン二次電池用基材に関する、種々の構成が提案されている。
特開2017-103146号公報 特開2016-31789号公報 特開2020-77488号公報 特開2020-161243号公報 再公表2005/101432号公報 特開2018-67458号公報
特許文献1には、支持体となるフィルムをエッチング処理することによって形成した、複数の貫通孔を有する固体電解質シートに関する技術が開示されている。固体電解質を、エッチング処理によって形成された貫通孔に充填することで、エネルギー密度、出力特性に優れた全固体電池を提供できると開示されている。
しかしながら、特許文献1の固体電解質シートを作製する場合、固体電解質を貫通孔に充填するため、固体電解質は、形成された貫通孔の内部にのみ充填される。そのため、貫通孔以外は絶縁物であるフィルム部が残存しているため、正極もしくは負極と、フィルム部とによる、リチウムイオンを通せない界面が生じてしまう。
つまり、固体電解質シートと、正極もしくは負極との界面抵抗は高くなりやすく、この支持体を用いた全固体電池であっても、更なる全固体電池の低抵抗化が求められていた。
特許文献2には、固体電解質を不織布の表面および内部に含む固体電解質シートであって、使用する不織布の平方メートルあたりの重量が8g以下、厚さが10~25μmである不織布に関する技術が開示されている。
特許文献2に記載の不織布を支持体として形成した固体電解質層は、自立性を有しながら、正極-負極間のイオン伝導に必要な固体電解質を保持でき、インピーダンスの上昇を抑えた電池を作製することができる。
特許文献3には、空隙率が60%以上95%以下、かつ厚みが5μm以上20μm未満であって、耐熱性を有する支持体に固体電解質を充填した固体電解質シートに関する技術が開示されている。この固体電解質シートは、厚さが薄いながらも自立性を有し、耐熱性にも優れるため、高温でのプレスを実施しても短絡を防止できると開示されている。加えて、この固体電解質シートは、高温プレスを実施できるため、固体電解質間の界面抵抗の低下に寄与し、電池の高出力化ができる。
しかしながら、特許文献2や特許文献3に記載の支持体を用いた固体電解質層は、固体電解質の充填が不十分な場合、内部抵抗が高い電池となってしまう。更に、特許文献2や特許文献3に記載の支持体を用いた固体電解質層は、正極、固体電解質層、負極と加圧一体化する際に、固体電解質層内部の支持体が変形し、リチウムイオンのパスラインが切断されることによって、内部抵抗が高くなってしまう。
また、特許文献3の支持体は、熱による、繊維の変形の小さいアラミド繊維やAlといった耐熱性繊維を含んでいるが、固体電解質層の高強度化のために、熱による繊維変形の大きいバインダー繊維を多く含有しており、そのため、支持体の熱寸法変化は大きくなってしまう。支持体の熱寸法変化が大きいと、支持体に固体電解質スラリーを塗工し、溶媒を乾燥する際に、支持体が収縮してしまい、得られる固体電解質層表面に凹凸が生じてしまう。表面に凹凸のある固体電解質層と、正極もしくは負極とを重ね合わせると、界面の密着性が悪化し、全固体電池の内部抵抗が高くなってしまう。正極もしくは負極と、固体電解質層との界面の密着性の向上のために、高温プレスを行うこともできるが、高温プレス可能な特許文献3の支持体を用いた場合であっても、高温プレスによって、固体電解質層内部の支持体が変形することで、形成されたリチウムイオンパスラインが切断され、内部抵抗が高い電池となってしまう。
特許文献4には、延伸ポリエステル繊維と、バインダー繊維として、未延伸ポリエステル繊維と湿熱接着性繊維とを含有することを特徴とする、リチウム二次電池セパレータ用不織布基材に関する技術が開示されている。
延伸ポリエステル繊維を含有することで、耐熱性に優れ、延伸ポリエステル繊維が骨格を形成し、熱寸法安定性に優れた不織布基材を提供できると開示されている。
また、未延伸ポリエステル繊維は、カレンダー等の熱圧処理により、軟化又は溶融し、その他繊維と強固に接着する。湿熱接着性繊維は、湿潤状態において、流動又は容易に変形して、接着機能を発現する、と開示されている。不織布基材に、これらバインダーを含有することで、引張強度が高く、生産性の高いリチウム二次電池セパレータ用不織布基材を提供できると開示されている。
しかしながら、特許文献4の熱寸法安定性に優れる不織布基材であっても、生産性の高いリチウムイオン二次電池セパレータ用不織布基材とするためには、構成する繊維にバインダー繊維を多く含ませる必要があり、特許文献3の支持体と同様に熱寸法変化が大きくなってしまい、内部抵抗の高い電池になってしまう。
加えて、不織布基材に含まれる湿熱接着性繊維は、上述の通り、接着機能発現に際し、流動又は変形を経るため、この不織布基材の中の湿熱接着性繊維は繊維状態を保持できておらず、繊維間隙を封鎖してしまう場合があった。更に、繊維形状を保持できないバインダー繊維を多く含むと、密度が高くなってしまう。その結果、固体電解質の不織布基材内部への浸透が不十分となり、固体電解質を不織布基材内部に均一に充填することが困難なため、内部抵抗が高い電池となってしまっていた。
その他、関連する技術として、耐熱性に優れる電気化学素子用セパレータに関する技術が開示されている。
特許文献5には、軟化点、融点、熱分解温度の何れもが250℃以上、700℃以下のフィブリル化耐熱性繊維を含有する湿式不織布で、250℃で50時間熱処理したときの寸法変化率が-3~+1%であることを特徴とする電気化学素子用セパレータに関する技術が開示されている。特許文献5に記載の電気化学素子用セパレータを用いることで、巻回によって得られる素子を、高温で熱処理しても信頼性に優れ、つまり、耐熱性の高い、低抵抗な電気化学素子を得ることができると開示されている。
特許文献6には、150℃における熱収縮率が2.0%以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用セパレータ用基材に関する技術が開示されている。特許文献6に記載のセパレータ用基材は、セパレータ用基材に無機粒子を含む塗工層を設けることで、リチウムイオン電池用セパレータとして使用される。
特許文献6に記載のセパレータ用基材は、熱収縮率が2.0%以下であることによって、電池組立時にセパレータが加熱乾燥された場合でも、セパレータに凹凸が発生しにくいと開示されている。更に、セパレータ用基材の両面に塗工層を有したセパレータの場合には、電池組立時の加熱乾燥時に、セパレータに凹凸が発生する問題に加え、塗工層の厚みが薄い方にカールする課題も解決できると開示されている。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、固体電解質層表面の凹凸を軽減し、正極もしくは負極と、固体電解質層との界面密着性を向上させることで、正極もしくは負極と、固体電解質層との界面抵抗の低減に寄与することを目的とする。更に、固体電解質層の内部に、リチウムイオンのパスラインを十分に形成させ、内部抵抗の低い固体電解質層を得ることを目的とする。加えて、正極、固体電解質層、負極を加圧一体化する際に生じる、固体電解質層内部の支持体の変形を抑制することで、リチウムイオンのパスラインを維持し、固体電解質層の低抵抗化に寄与することを目的とする。また、この支持体を用いることで、内部抵抗の低いリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
本発明に係る支持体は、上記課題を解決することを目的としてなされたものであり、例えば、以下の構成を備える。
即ち、リチウムイオン二次電池の固体電解質層に含まれる支持体であって、支持体の縦方向および横方向の熱寸法変化率がそれぞれ-10~5%、通気度が1~50L/cm/min.、熱処理後の縦方向および横方向の剛軟度がそれぞれ5~250mNの範囲の紙もしくは不織布であることを特徴とする。
また、本発明のリチウムイオン二次電池は、上記発明の支持体を有した固体電解質層を備えていることを特徴とする。
本発明によれば、支持体の熱寸法安定性を向上させることで、正極もしくは負極と、固体電解質層との界面抵抗を低くすることができる。また、支持体内部への固体電解質の浸透性を向上させることで、固体電解質層の内部抵抗を低減する支持体を得ることができる。更に、熱処理後の支持体の剛軟度を最適化することにより、固体電解質層内部の支持体の変形を抑制し、固体電解質層内部に形成されたリチウムイオンパスラインを維持することによって、固体電解質層の内部抵抗低減に寄与できる支持体を得ることができる。
また、本発明の支持体をリチウムイオン二次電池に用いることで、電池の内部抵抗低減に寄与できる。
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
本発明では、全固体電池として構成された、リチウムイオン二次電池において、正極-負極間に存在する固体電解質層を形成するために用いられる、支持体を構成する。
本発明の支持体は、リチウムイオン二次電池の固体電解質層に含まれる支持体であって、支持体の縦方向および横方向の熱寸法変化率がそれぞれ-10~5%、通気度が1~50L/cm/min.、熱処理後の縦方向および横方向の剛軟度がそれぞれ5~250mNの範囲の紙もしくは不織布である。
正極-負極間に存在する固体電解質層は、充放電時にリチウムイオンが正極-負極間を伝導することが要求される。この為には、リチウムイオンが正極-固体電解質層間、固体電解質層内部、固体電解質層-負極間にリチウムイオンのパスラインが形成されている必要がある。つまり、正極-固体電解質層間、固体電解質層-負極間の界面抵抗の低減および、固体電解質層内部の抵抗を低減できれば、全固体電池の内部抵抗を低くできる。
従来の支持体では、固体電解質層と、正極もしくは負極との界面抵抗の更なる低減を阻害している一要因として、固体電解質層表面に生じる凹凸によって、固体電解質層と、正極もしくは負極との界面密着性が悪化してしまっていることを見出した。この固体電解質層表面の凹凸は、固体電解質スラリーを支持体に塗工、乾燥する際に、乾燥時の熱で、支持体が寸法変化することにより、生じてしまっていた。界面密着性向上のために、正極、固体電解質層、負極を重ね合わせ、加圧、一体化させる際の圧力を高くすることもできるが、圧力を高くしてしまうと、固体電解質層内部の支持体が変形し、固体電解質層内部に形成されたリチウムイオンのパスラインが切断されてしまい、固体電解質層の内部抵抗が高くなってしまう場合があった。
一方、支持体の熱寸法安定性を高めるために、耐熱性の高い繊維を使用することもできるが、取り扱い性に優れるシートを形成させるためには、熱寸法変化の大きいバインダー繊維を多く含有する必要があり、その結果、固体電解質の浸透性が悪化してしまった。
従来は、支持体に、固体電解質スラリーを塗工した後、乾燥する際に、支持体の縦方向および横方向の寸法がそれぞれ変化してしまう場合があった。この熱寸法変化は支持体のみ乾燥した場合でも生じる現象であり、支持体を構成する繊維は、融点や軟化点を超えるような加熱によって、変形する。支持体を構成する繊維が変形すると、支持体の厚さが厚い箇所や薄い箇所が生じ、支持体表面に凹凸が発生する場合があった。固体電解質スラリーを塗工した支持体は、固体電解質スラリーに含まれる溶媒が完全に乾燥する前に、加熱により寸法が変化するため、得られる固体電解質層の表面に凹凸の発生や、強度低下が生じる。
表面に凹凸のある固体電解質層と、正極、負極とを重ね合わせ、加圧、一体化させると、正極もしくは負極と、固体電解質層との界面の密着性が低下してしまっていた。つまり、支持体の熱寸法変化を低減し、変形を抑制することで、固体電解質層と正極もしくは負極との界面抵抗をより低減できることを見出した。固体電解質層と正極もしくは負極との界面抵抗を低減できれば、全固体電池の内部抵抗を更に低減することができる。
本発明の支持体は、支持体の縦方向および横方向の熱寸法変化率がそれぞれ-10~5%の範囲であることが好ましい。更に、固体電解質層表面の凹凸抑制の観点から、支持体の縦方向および横方向の熱寸法変化率は、それぞれ-8~3%の範囲であることがより好ましい。
本発明における熱寸法変化率は200℃、1時間加熱前後の熱寸法変化率を指す。200℃、1時間の加熱は、固体電解質スラリーに用いられる溶媒を十分に乾燥できる熱条件である。つまり、200℃、1時間加熱前後の、支持体の縦方向および横方向の熱寸法変化率がそれぞれ-10~5%の範囲であれば、得られる固体電解質層表面の凹凸の発生を抑制することができる。
そして、正極もしくは負極と、固体電解質層とを一体化させる際の界面の密着性を良好にでき、正極もしくは負極と、固体電解質層との界面抵抗を低くすることができる。
なお、熱寸法変化率において-(マイナス)表示がある場合は収縮を示し、表示がない場合は膨張を示す。
支持体の縦方向および横方向の熱寸法変化率のいずれかが-10%未満(10%超の収縮)の場合、固体電解質スラリーの乾燥時に支持体の熱収縮が大きく、得られる固体電解質層の表面に大きな凹凸が生じてしまう。つまり、正極もしくは負極と、固体電解質層との界面密着性が悪く、界面抵抗が高くなる。界面密着性の向上のために、正極、固体電解質層、負極を一体化させる際の圧力を高くすることもできるが、固体電解質層内部の支持体が変形しリチウムイオンのパスラインが切断する場合があり、全固体電池の内部抵抗上昇につながる可能性がある。
なお、支持体の縦方向および横方向の熱寸法変化率のいずれかが5%超(5%超の膨張)の場合は、支持体が熱によって融解した等、形状を維持できていないことを示す。また、支持体を構成する繊維同士の接点での接着性が低下し、支持体の強度低下を招くこともある。つまり、現実的には、支持体の縦方向および横方向の熱寸法変化率はそれぞれ5%以下であることが好ましい。
更に、従来の支持体を用いた場合に、内部抵抗の更なる低下が阻害されていた一要因として、下記の理由が考えられる。
従来の支持体は、支持体内部に空隙は存在するものの、支持体表面の開口部が小さい等の場合があり、固体電解質を支持体表面から支持体の内部に十分に浸透できなかったと考えられる。その結果、支持体の内部に固体電解質によるリチウムイオンのパスラインを形成できず、固体電解質層の内部抵抗が高くなってしまっていた。
本発明の発明者らは、正極-負極間のリチウムイオンのパスラインを形成するためには、固体電解質による、支持体表面から内部に連続したつながりを有する固体電解質層を形成することが重要であること、つまり、固体電解質を、支持体の表面に均一に形成させることはもちろん、支持体の内部に十分に満たすことが重要であることを見出した。そして、固体電解質の支持体への浸透性を高めることで、固体電解質層内部にリチウムイオンのパスラインを形成させ、内部抵抗の低い固体電解質層を形成できる。
本発明の実施の形態では、支持体内部への固体電解質の浸透性を測る指標として、通気度を採用した。通気度は、一定差圧の下、単位面積、単位時間当たりに流れる空気量を示しており、通気度が高いほど、多くの空気が流れていることを表す。つまり、支持体の通気度が高ければ高いほど、支持体の気体通過性が高いことを表す。支持体の通気度が高ければ、固体電解質の支持体内部への浸透性も高いと考えられる。つまり、通気度が高い支持体は、十分な固体電解質を支持体内部に充填できる。
本発明の支持体は、通気度が1~50L/cm/min.の範囲である。更に、固体電解質の浸透性、均一な固体電解質層形成の観点から、通気度は2~40L/cm/min.の範囲であればより好ましい。
上記範囲の通気度を有する支持体は、固体電解質の浸透性に優れ、厚さ方向に繊維の重なりが適度にあって、固体電解質を支持体に浸透させた場合、内部への浸透が阻害されない。そのため、固体電解質を支持体表面に形成させることはもちろん、固体電解質を支持体の内部に浸透させることができる。その結果、この支持体を用いた全固体電池は、内部抵抗を低くすることができる。
通気度が1L/cm/min.未満であると、固体電解質を支持体内部に均一に浸透できない場合がある。それは以下の理由によると考えられる。
固体電解質を支持体に浸透する場合、通気度が1L/cm/min.未満というのは、支持体を構成する繊維本数が多く、緻密であり、支持体内部へ固体電解質を浸透する際抵抗となってしまう。その結果、支持体表面に固体電解質が留まり、固体電解質の支持体内部への均一な浸透が困難になる。
一方、通気度が50L/cm/min.を超える場合、支持体を用いる効果が得られなくなってしまう。通気度が50L/cm/min.を超える支持体は、支持体が粗となりすぎて固体電解質を保持、補強することができず、固体電解質を浸透させても、固体電解質が支持体に留まれない。そのため、固体電解質層の形成ができなかったり、乾燥時に生じる固体電解質層のひずみを抑制できなかったりして、クラックの発生につながる場合がある。つまり、支持体が固体電解質を保持、補強できず、薄く均一な固体電解質層が得られなくなるため、好ましくない。
加えて、従来の支持体を用いた固体電解質層の内部抵抗が高くなる一要因として、加熱後の支持体の剛軟度が影響していることを見出した。
従来の支持体を用いた固体電解質層は、正極、固体電解質層、負極を加圧一体化する際に、支持体が変形することにより、予め形成された固体電解質層内部のリチウムイオンのパスラインが切断されてしまい、内部抵抗が高くなっていた。
支持体に、固体電解質スラリーを浸透させ、乾燥することで形成された固体電解質層は、正極、負極と一体化するために、加圧が成される。つまり、固体電解質層の面方向に対して、応力が加えられる。この応力は、固体電解質層、正極、負極が完全な平面ではないため、固体電解質層の面に対して完全に均一なものではない。つまり、加圧一体化する際には、固体電解質層の面に対して、力の強い箇所と、弱い箇所とが生じてしまう。その結果、固体電解質層内部の支持体が力に応じて変形してしまい、固体電解質層にクラックが生じ、固体電解質層内部に形成されたリチウムイオンパスラインが切断されてしまうことを見出した。
本発明の実施の形態では、固体電解質層形成後の面方向の不均一な力に対する抵抗性の指標として、熱処理後の支持体の剛軟度を採用した。ここでいう熱処理とは、200℃×1時間加熱後のことを言い、固体電解質スラリーに用いられる溶媒を十分に乾燥できる熱条件である。本願発明における剛軟度は、スリット幅6.5mmの隙間がある試料台に試験片を置き、ブレードを試料台表面から8mm下げる際の最大押圧から得られる。つまり、最大押圧が高いほど、支持体が変形しにくいことを示す。
本発明の支持体は、熱処理後の縦方向および横方向の剛軟度をそれぞれ5~250mNの範囲に制御したものである。更に、正極、固体電解質層、負極を加圧一体化することによる内部抵抗の上昇を抑制する観点から、熱処理後の縦方向および横方向の剛軟度をそれぞれ10~230mNの範囲であればより好ましい。
上記範囲の熱処理後の剛軟度を有する支持体は、固体電解質層に加えられる不均一な応力に耐え、支持体の変形を抑制することができる。そして、予め形成された固体電解質層内部のリチウムイオンのパスラインを維持しつつ、正極、固体電解質層、負極を加圧一体化でき、内部抵抗の上昇を抑制できる。その結果、この支持体を用いることで、全固体電池の内部抵抗を低くすることができる。
支持体の熱処理後の縦方向および横方向の剛軟度のいずれかが5mN未満であると、支持体が変形しやすいため、強い力が加えられた支持体部は、力に追随し、変形してしまい、固体電解質層も変形し凹凸が生じる。それにより、正極もしくは負極と、固体電解質層との界面で隙間が出来てしまい、リチウムイオンのパスラインが切断されてしまう。
一方、支持体の熱処理後の縦方向および横方向の剛軟度が250mN超の場合、固体電解質層に含まれる支持体が変形されにくく、つまり硬すぎるため、正極、固体電解質層、負極を加圧一体化する際に、支持体が折れるといった支持体構造の変化が生じる場合がある。支持体の構造が変化すれば、固体電解質層も変形することで、クラックが生じ、リチウムイオンのパスラインの切断につながり、内部抵抗の上昇につながってしまう。
本発明の支持体は、紙もしくは不織布で構成する。それは、以下の理由による。
紙は、植物繊維、その他の繊維を膠着させて製造したものを指す。また、不織布は、織機を使わずに、天然、再生、合成繊維など各種の繊維ウェブを機械的、化学的、熱的、またはそれらの組合せによって処理し、接着剤又は繊維自体の融着力によって構成繊維を互いに接合して作ったシート状材料を指す。
つまり、紙もしくは不織布は、繊維がランダムに配置された構成であるので、紙もしくは不織布で構成された支持体は、その内部に、様々な大きさの空隙や、様々な大きさの貫通孔を無数有している。そのため、固体電解質は、支持体表面に留まるもの、支持体内部に浸透し留まるもの、浸透する表面側から貫通孔を通り抜け、裏面側まで浸透するものが存在し、それぞれが連続している。つまり、紙もしくは不織布で構成された支持体は、支持体の表面に固体電解質層を形成させることができ、かつ支持体内部に固体電解質を充填することができる。
そのため、紙もしくは不織布を支持体として作製した固体電解質層は、固体電解質が支持体の表面はもちろん、支持体内部にも充填されており、良好なリチウムイオンパスラインを形成できる。その結果、固体電解質層の内部抵抗の低減とともに、固体電解質層と、正極もしくは負極との界面抵抗を低くできる。結果として、全固体電池の内部抵抗の低減につなげることができる。
また、本発明の支持体の厚さは、5~40μmの範囲が好ましい。より好ましくは、8~30μmの範囲である。
厚さが5μm未満の場合、固体電解質層の厚さが薄い固体電解質層となってしまうため、正極-負極間の短絡を防止することが困難となる。また、短絡防止を目的に極間距離を広げるため、支持体表面に厚く固体電解質層を形成することもできるが、固体電解質のみの層が生じる。つまり、支持体のない部分は、乾燥時に生じる固体電解質層のひずみを抑制できなかったりして、クラックの発生につながる場合がある。一方、厚さが40μm超の場合、固体電解質層の厚さが厚くなってしまい、全固体電池の小型化に寄与しない。
支持体の密度は、0.15~0.50g/cmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、0.17~0.48g/cmの範囲である。
密度が0.15g/cm未満の場合、支持体を構成する繊維本数が少なくなり、支持体中の空隙が多くなる。そのため、固体電解質が支持体に留まらず、固体電解質を均一に保持、補強することが困難となる。一方、密度が0.50g/cm超の場合、固体電解質の支持体内部への浸透性が悪化し、固体電解質を支持体内部に十分充填できない場合がある。そのため、全固体電池の内部抵抗が高くなってしまう。
本発明に係る支持体は、均一な固体電解質層形成の観点から、支持体の最大貫通面積は、0.001~0.3mmの範囲であることが好ましい。
本発明に係る支持体は、紙もしくは不織布から構成されるため、支持体は繊維が積層した構造を有している。その結果、支持体の厚さ方向には、繊維が存在しない部分、つまり貫通部が存在する。固体電解質は、支持体の表面から裏面に浸透する際には、支持体の貫通部を通り抜ける。
本発明における最大貫通面積は、支持体が有する最も大きな貫通部の面積を示す。つまり、支持体が有する無数の貫通部の面積は、最大貫通面積以下である。最大貫通面積が、0.001~0.3mmの範囲の支持体は、支持体の厚さ方向への固体電解質の浸透性に優れ、かつ固体電解質の保持、補強が成されるため、均一に固体電解質層を形成できる。
最大貫通面積が0.001mm未満の場合、支持体への固体電解質の厚さ方向への浸透性が悪化し、均一に固体電解質層が形成できなくなる。また、最大貫通面積が0.3mm超の場合、貫通部が大きいため、支持体上に固体電解質を保持できない箇所が生じてしまう。その結果、クラックの発生や均一な固体電解質層が形成できなくなり、内部抵抗の高い固体電解質層になってしまう。
本発明に係る支持体において、支持体の引張強さは、1.0N/15mm以上であることが好ましい。引張強さが1.0N/15mm未満の場合、固体電解質の充填時の破断が発生しやすくなる。
支持体の形態維持、および引張強さの観点から、支持体には接着力を有する繊維を含有することが望ましい。接着力を有する繊維として、叩解したセルロース繊維や、叩解したポリアミド繊維、合成樹脂バインダー等が挙げられる。
叩解したセルロース繊維の接着力は、セルロース繊維同士の交絡による物理結合と、セルロースが有する水酸基の水素結合による化学結合とがある。また、叩解したポリアミド繊維の接着力は、ポリアミド繊維同士の交絡による物理結合がある。いずれの繊維による結合も支持体の形態維持や、引張強さの発現に寄与するので好ましい。
合成樹脂バインダー繊維には、支持体を構成する状態で、繊維状態を保持しているものと、繊維状態を保持できず、例えば膜状になったものが挙げられる。
支持体を構成する状態で、繊維形状を保持している合成樹脂バインダー繊維は、繊維交絡点を熱接着することによって、接着力を発現する。そのため、支持体の構成材料として繊維状態を保持した合成樹脂バインダー繊維は、固体電解質層を形成する際の破断を低減でき、かつ繊維接点のみを接着するため、固体電解質の支持体内部への浸透を阻害しにくい。
一方、支持体を構成する状態で繊維状態を保持できない合成樹脂バインダー繊維は、支持体製造工程で、繊維が熱で膜状に変化し、繊維を構成する樹脂の融点、または軟化点近傍の熱がかかることで樹脂が溶融し、繊維の交絡点で融着する。つまり、支持体を構成する状態において、繊維状態ではないバインダーを用いた場合、バインダー機能発現にあたり、バインダー成分が支持体の繊維間隙にフィルム層を多数形成する等、空隙を封鎖してしまう。その結果、固体電解質の支持体内部への浸透を阻害してしまう場合があり、好ましくない。
接着力を有する繊維として用いることができる材料は、固体電解質スラリーをはじかないものであって、物理的、化学的に固体電解質に悪影響を与えず、絶縁性を備えた繊維であれば、特に限定はなく、例えば、叩解したセルロース繊維、叩解したポリアミド繊維、ポリアミドバインダー繊維、ポリエステルバインダー繊維等が挙げられる。また、これら繊維から選択される、一種以上の繊維を使用することができる。
その他構成材料として用いることのできる材料は、200℃、1時間の加熱後であっても繊維状態を保持できる繊維であって、固体電解質スラリーをはじかず、物理的、化学的に固体電解質に悪影響を与えず、絶縁性を備えた繊維であれば、特に限定はなく、例えば、セルロース繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維といった有機繊維や、ガラス繊維、アルミナ繊維といった無機繊維等が挙げられる。また、これら繊維から選択される、一種以上の繊維を使用することができる。これらの繊維を用いることで、支持体の熱寸法変化を抑制し、かつ固体電解質の充填性および耐熱性に優れ、熱処理後の剛軟度に適した支持体を得ることができる。
支持体の縦方向および横方向の熱寸法変化率をそれぞれ-10~5%の範囲にするための手段として、例えば、熱繊維長変化率が-8~1%の繊維を20~100質量%含有する、シートを200℃超で熱処理をする、などの方法が挙げられるが、この限りではない。
また、支持体の縦方向および横方向の熱処理後の剛軟度をそれぞれ5~250mNの範囲にするための手段として、繊維長が0.5~5mmの繊維を使用する、坪量を1~12g/mの範囲にする、シートを200℃超で熱処理をする、などの方法が挙げられるが、この限りではない。
本発明の支持体を構成する繊維は、平均繊維径が1~20μmのものを使用することが好ましい。平均繊維径が1~20μmの繊維を使用することで、得られる紙もしくは不織布に、様々な大きさの孔を、紙もしくは不織布の随所に均一に分布させることができる。その結果、固体電解質の浸透性、熱処理後の剛軟度に優れ、かつ均一な厚さの支持体を形成することができる。
支持体の製造方法には特に限定はなく、乾式法、湿式法で製造可能であるが、好ましくは、水中に分散させた繊維をワイヤー上に堆積させ、脱水、乾燥して抄き上げる湿式法が、支持体の地合等の均質性の観点から好ましい。
本発明を実施するための形態では、支持体の製造方法として、抄紙法を用いて形成した紙もしくは湿式不織布を採用した。支持体の抄紙形式は、熱寸法変化率や通気度、熱処理後の剛軟度、厚さ、密度を満足することができれば、特に限定はなく、長網抄紙や短網抄紙、円網抄紙といった抄紙形式が採用でき、またこれらの抄紙法によって形成された層を複数合わせたものであってもよい。また、抄紙に際しては、分散剤や消泡剤、紙力増強剤等の添加剤を加えてもよく、紙層形成後に紙力増強加工、親液加工、カレンダー加工、熱カレンダー加工、エンボス加工等の後加工を施してもよい。
(支持体および全固体電池の作製方法および特性の測定方法)
本実施の形態の支持体および全固体電池の作製方法および特性の測定方法は、以下の条件および方法で行った。
〔CSF値〕
「JIS P8121-2『パルプ-ろ水度試験法-第2部:カナダ標準ろ水度法』(ISO5267-2『Pulps-Determination of drainability-Part2:“Canadian Standard”freeness method』)」に従って、CSF値を測定した。
〔平均繊維長〕
〔繊維の繊維長〕
「JIS P 8226-2『パルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法-第2部:非偏光法』」(ISO16065-2『Pulps-Determination of Fibre length by automated optical analysis-Part2:Unpolarized light method』)に記載された装置、ここではFiber Tester PLUS(Lorentzen&Wettre製)を用いて測定し、長さ荷重平均繊維長を繊維の繊維長とした。
〔ポリエステル繊維、ポリエステルバインダー繊維の繊維長〕
ポリエステル繊維、ポリエステルバインダー繊維は、光学的に透明なため、繊維を正確に画像で認識できないため、上記の光学的自動分析法による繊維長測定を正確に行うことができなかった。そのため、ポリエステル繊維およびポリエステルバインダー繊維について、下記方法にて繊維長を測定した。
無作為に繊維を分散させたプレパラートを作製した。プレパラート上の繊維の繊維長を、直接スケールを用いて測定した。
〔熱繊維長変化率〕
200℃×1時間の加熱前後の平均繊維長を測定した。そして。下記の式により、熱繊維長変化率を算出した。
熱繊維長変化率(%)=[(L2-L1)/L1]×100
L1:200℃×1時間加熱前の平均繊維長
L2:200℃×1時間加熱後の平均繊維長
〔厚さ〕
支持体1枚の厚さを、ダイヤルシックネスゲージGタイプ(測定反力2N、測定子:φ10mm)を用いて均等な間隔で測定し、さらに測定箇所の平均値を、支持体の厚さ(μm)とした。
〔坪量〕
「JIS C 2300-2 『電気用セルロース紙-第2部:試験方法』 6 坪量」に規定された方法で、絶乾状態の支持体の坪量を測定した。
〔密度〕
以下の式を用いて、支持体の密度を計算した。
密度(g/cm)=W/T
W:坪量(g/m)、T:厚さ(μm)
〔空隙率〕
以下の式を用いて、支持体の空隙率を計算した。なお、支持体を構成する材料を複数混用している場合には、混用率に比例した計算を行って構成繊維の平均比重を求めてから、算出した。
空隙率(%)=(1-(D/S))×100
D:支持体密度(g/cm)、S:構成繊維の比重(g/cm
〔通気度〕
「JIS L 1096 『織物及び編物の生地試験方法』通気性 A法(フラジール形式)」に規定された方法で、支持体の通気度を測定した。
〔最大貫通面積〕
5mm×5mmの範囲から、任意の貫通部を100個抽出した。抽出した貫通部の面積を多角形として近似し、面積を算出した。測定した100個の貫通面積のうち最も大きい面積を最大貫通面積とした。
〔熱寸法変化率〕
支持体を100mm×100mmに切り出した試験片の、縦方向および横方向の長さを測定した。次に、支持体の試験片を200℃で1時間加熱して、加熱後の試験片の各長さを測定した。下記の式により、縦方向および横方向のそれぞれの熱寸法変化率を算出した。
熱寸法変化率(%)=[(L2-L1)/L1]×100
L1:200℃×1時間加熱前の長さ、L2:200℃×1時間加熱後の長さ
〔熱処理後の剛軟度〕
200℃で1時間加熱したサンプルを200×200mmに切り出した。得られた試験片を「JIS L 1096『織物及び編物の生地試験方法』 8.21.5 剛軟度 E法(ハンドルオメーター法)」に規定された方法で、熱処理後の縦方向および横方向それぞれの剛軟度を測定した。
〔引張強さ〕
「JIS P 8113 『紙及び板紙-引張特性の試験方法-第2部:定速伸張法』」(ISO1924-2『Paper and board-Determination of tensile properties-Part2:Constant rate of elongati on method』)に規定された方法で、試験幅15mmで、支持体の縦方向(製造方向)の最大引張荷重を測定し、支持体の引張強さとした。
〔全固体電池の作製工程〕
以下に示す各実施例、比較例、従来例、参考例の支持体を用いて、全固体電池を作製した。
具体的な作製方法は、以下の通りである。
(正極構造体)
正極活物質としてLiNiCoAlO三元系粉末を、硫化物系固体電解質としてLiS-P非晶質粉末を、導電助剤として炭素繊維を、それぞれ用いて混合した。この混合粉末に、結着剤としてSBR(スチレンブタジエンゴム)が溶解した脱水キシレン溶液を混合し、正極塗工液を作製した。正極集電体であるアルミ箔集電体に、正極塗工液を塗工、乾燥し、更に圧延することで、正極構造体を得た。
(負極構造体)
負極活物質として黒鉛を、硫化物系固体電解質としてLiS-P非晶質粉末を、結着剤としてPVdF(ポリフッ化ビニリデン)を、溶媒としてNMP(N-メチル-2-ピロリドン)を、それぞれ用いて混合し、負極塗工液を作製した。負極集電体である銅箔集電体に、負極塗工液を塗工、乾燥し、更に圧延することで、負極構造体を得た。
(固体電解質層)
硫化物系固体電解質としてLiS-P非晶質粉末を、結着剤としてSBRを、溶媒としてキシレンを、それぞれ用いて混合し、固体電解質塗工液を作製した。
以下に示す、実施例、比較例、各従来例、参考例の支持体に、固体電解質塗工液を塗工して、乾燥し、固体電解質層を得た。
〔固体電解質層の自立性の評価〕
作製したそれぞれの固体電解質層について、自立性の評価を行った。
作製した大きさ92mm×62mmの固体電解質層を、水平に持ち上げことができるか評価した。固体電解質層を、形状を保持したまま水平に持ち上げることができた場合を〇として、水平に持ち上げた際に状態が保持されていなかった場合を×とした。
〔全固体電池の製造〕
大きさ88mm×58mmの負極構造体、大きさ92mm×62mmの固体電解質層、大きさ87mm×57mmの正極構造体を積層し、ドライラミネート加工を行い、貼り合わせることにより、全固体電池の単セルを得た。
得られた単セルを、端子を取り付けたアルミニウムラミネートフィルムに入れ、脱気、ヒートシールを行いパックした。
〔全固体電池の評価方法〕
作製した全固体電池の具体的な性能評価は、以下の条件および方法で行った。
〔抵抗〕
全固体電池に対して、25℃の環境下で0.1Cの電流密度で4.0Vまで充電を行い、LCZメーターを用いて、周波数0.1Hz~1MHzの範囲のインピーダンスを測定した。得られたコールコールプロットの円弧部分を、x軸を底辺とした半円の形にフィッティングし、半円の右端とx軸とが交わる部分の数値を抵抗値とした。
〔放電容量〕
全固体電池に対して、25℃の環境下で0.1Cの電流密度で4.0Vまで充電を行い、その後0.1Cの電流密度で2.5Vまで放電し、その時の放電容量を測定した。
以下、本発明の実施の形態に係る支持体の具体的な実施例等について説明する。
〔実施例1〕
濾水度650ml、熱繊維長変化率0%、繊維長1.5mmのセルロース繊維を用いて、円網抄紙し、厚さ15μm、坪量2.4g/m、密度0.16g/cmの支持体を得た。実施例1の支持体の特性を表2にまとめた。
〔実施例2〕
濾水度200ml、熱繊維長変化率0%、繊維長1.2mmのポリアミド繊維を用いて、短網抄紙し、厚さ15μm、坪量2.9g/m、密度0.19g/cmの支持体を得た。実施例2の支持体の特性を表2にまとめた。
〔実施例3〕
熱繊維長変化率-1%、繊維長3mmのポリエステル繊維50質量%と、熱繊維長変化率-18%、繊維長3mmのポリエステルバインダー繊維50質量%とを混合した原料を用いて、短網抄紙し、厚さ20μm、坪量9.8g/m、密度0.49g/cmの支持体を得た。実施例3の支持体の特性を表2にまとめた。
〔実施例4〕
熱繊維長変化率-1%、繊維長3mmのポリエステル繊維50質量%と、熱繊維長変化率-18%、繊維長3mmのポリエステルバインダー繊維50質量%とを混合した原料を用いて、円網抄紙した。得られた不織布に熱処理を行い、厚さ20μm、坪量9.4g/m、密度0.47g/cmの支持体を得た。実施例4の支持体の特性を表2にまとめた。
〔実施例5〕
熱繊維長変化率-1%、繊維長3mmのポリエステル繊維20質量%と、熱繊維長変化率-18%、繊維長3mmのポリエステルバインダー繊維80質量%とを混合した原料を用いて、短網抄紙し、厚さ15μm、坪量5.0g/m、密度0.33g/cmの支持体を得た。実施例5の支持体の特性を表2にまとめた。
〔実施例6〕
熱繊維長変化率-5%、繊維長3mmのポリアミド繊維20質量%と、熱繊維長変化率-11%、繊維長3mmのポリアミドバインダー繊維80質量%とを混合した原料を用いて、短網抄紙し、厚さ38μm、坪量9.1g/m、密度0.24g/cmの支持体を得た。実施例6の支持体の特性を表2にまとめた。
〔実施例7〕
濾水度400ml、熱繊維長変化率0%、繊維長1.1mmのセルロース繊維50質量%と、熱繊維長変化率-18%、繊維長3mmのポリエステルバインダー繊維50質量%とを混合した原料を用いて、円網抄紙した。得られた不織布に熱処理を行い、厚さ20μm、坪量7.0g/m、密度0.35g/cmの支持体を得た。実施例7の支持体の特性を表2にまとめた。
〔実施例8〕
熱繊維長変化率-1%、繊維長3mmのポリエステル繊維50質量%と、熱繊維長変化率-18%、繊維長3mmのポリエステルバインダー繊維50質量%とを混合した原料を用いて、円網抄紙した。得られた不織布に熱処理を行い、厚さ9μm、坪量2.7g/m、密度0.30g/cmの支持体を得た。実施例8の支持体の特性を表2にまとめた。
〔実施例9〕
濾水度200ml、熱繊維長変化率0%、繊維長0.6mmのセルロース繊維を用いて、短網抄紙し、厚さ9μm、坪量1.7g/m、密度0.19g/cmの支持体を得た。実施例9の支持体の特性を表2にまとめた。
〔実施例10〕
濾水度0ml、熱繊維長変化率0%、繊維長0.8mmのポリアミド繊維を用いて、長網抄紙し、厚さ6μm、坪量2.5g/m、密度0.42g/cmの支持体を得た。実施例10の支持体の特性を表2にまとめた。
〔実施例11〕
熱繊維長変化率-1%、繊維長5mmのポリエステル繊維50質量%と、熱繊維長変化率-18%、繊維長5mmのポリエステルバインダー繊維50質量%とを混合した原料を用いて、短網抄紙し、厚さ28μm、坪量11.9g/m、密度0.43g/cmの支持体を得た。実施例11の支持体の特性を表2にまとめた。
〔実施例12〕
濾水度100ml、熱繊維長変化率0%、繊維長1.1mmのセルロース繊維50質量%と、熱繊維長変化率-18%、繊維長3mmのポリエステルバインダー繊維50質量%を混合した原料を用いて、短網抄紙し、厚さ25μm、坪量11.0g/m、密度0.44g/cmの支持体を得た。実施例12の支持体の特性を表2にまとめた。
〔比較例1〕
濾水度750ml、熱繊維長変化率0%、繊維長1.5mmのセルロース繊維を用いて、円網抄紙し、厚さ23μm、坪量3.0g/m、密度0.13g/cmの支持体を得た。比較例1の支持体の特性を表2にまとめた。
〔比較例2〕
濾水度0ml、熱繊維長変化率0%、繊維長0.8mmのポリアミド繊維を用いて、短網抄紙し、厚さ4μm、坪量1.8g/m、密度0.46g/cmの支持体を得た。比較例2の支持体の特性を表2にまとめた。
〔比較例3〕
熱繊維長変化率-1%、繊維長3mmのポリエステル繊維80質量%と、熱繊維長変化率測定不能、繊維長3mmのポリエチレンバインダー繊維20質量%とを混合した原料を用いて、短網抄紙し、厚さ15μm、坪量5.0g/m、密度0.33g/cmの支持体を得た。比較例3の支持体の特性を表2にまとめた。
〔比較例4〕
濾水度100ml、熱繊維長変化率0%、繊維長0.4mmのセルロース繊維を用いて、短網抄紙し、厚さ5μm、坪量0.9g/m、密度0.18g/cmの支持体を得た。比較例4の支持体の特性を表2にまとめた。
〔従来例1〕
熱繊維長変化率-1%、繊維長3mmのポリエステル繊維15質量%と熱繊維長変化率-18%、繊維長3mmのポリエステルバインダー繊維85質量%とを混合した原料を用いて、特許文献3の実施例1に記載の支持体を参考に、円網抄紙し、厚さ19μm、坪量3.7g/m、密度0.19g/cmの支持体を得た。従来例1の支持体の特性を表2にまとめた。
〔従来例2〕
特許文献1の実施例2に記載の方法と同様の方法で製造した支持体を作製し、従来例2の支持体を得た。従来例2では、ポリイミドフィルムをエッチング処理して、200μm角の穴を形成して、厚さ30μm、坪量8.8g/m、密度0.29g/cmの支持体を得た。従来例2の支持体の特性を表2にまとめた。
〔従来例3〕
熱繊維長変化率-1%、繊維長3mmのポリエステル繊維85質量%と、熱繊維長変化率-18%、繊維長3mmのポリエステルバインダー繊維15質量%とを混合した原料を用いて、特許文献2の実施例1に記載の支持体の製造方法を参考に、円網抄紙し、厚さ10μm、坪量3.0g/m、密度0.30g/cmの支持体を得た。従来例3の支持体の特性を表2にまとめた。
〔参考例1〕
熱繊維長変化率-1%、繊維長3mmのポリエステル繊維70質量%と、熱繊維長変化率-18%、繊維長3mmのポリエステルバインダー繊維30質量%とを混合した原料を用いて、特許文献6の不織布基材1の製造方法を参考に、円網抄紙し、熱カレンダー処理、熱処理を行い、厚さ13μm、坪量8.2g/m、密度0.63g/cmの不織布基材を得た。参考例1の不織布基材の特性を表2にまとめた。
〔参考例2〕
濾水度0ml、熱繊維長変化率0%、繊維長0.7mmのポリアミド繊維20質量%と、熱繊維長変化率-10%、繊維長3mmのアクリル繊維20質量%と、熱繊維長変化率0%、繊維長5mmのポリアミド繊維50質量%と、濾水度0ml、熱繊維長変化率0%、繊維長0.2mmのセルロース繊維10質量%とを混合した原料を用いて、特許文献5の電気化学素子用セパレータ1の製造方法を参考に、円網抄紙し、厚さ25μm、坪量12.2g/m、密度0.48g/cmの電気化学素子用セパレータを得た。参考例2の電気化学素子用セパレータの特性を表2にまとめた。
〔参考例3〕
熱繊維長変化率-1%、繊維長3mmのポリエステル繊維40質量%と、熱繊維長変化率-18%、繊維長3mmのポリエステルバインダー繊維40質量%と、熱繊維長変化率測定不能、繊維長3mmのポリビニルアルコール繊維20質量%を混合した原料を用いて、短網抄紙し、厚さ15μm、坪量5.0g/m、密度0.33g/cmの支持体を得た。参考例3の支持体の特性を表2にまとめた。
以上に記載した実施例1~実施例12、比較例1~比較例4、従来例1~従来例3、参考例1~3の各支持体、不織布基材、電気化学素子用セパレータの配合繊維名と配合率について、表1に示す。
Figure 2023030824000001
表2は、以上に説明した各実施例、各比較例、各従来例、各参考例の各支持体、不織布基材、電気化学素子用セパレータの特性、固体電解質層の自立性、電池特性の評価結果を示す。
Figure 2023030824000002
以下、各実施例、各比較例、各従来例、各参考例の支持体、不織布基材、電気化学素子用セパレータを用いた、全固体電池の評価結果を詳細に説明する。
各実施例の支持体を用いた固体電解質層は、比較例1、比較例3、従来例3の支持体を用いた固体電解質層、および参考例1のセパレータ用基材を用いた固体電解質層、加えて参考例2の電気化学素子用セパレータを用いた固体電解質層、と異なり、自立性を有した固体電解質層を形成できた。
各実施例の支持体を用いた全固体電池は、比較例2、比較例4、従来例1、従来例2、参考例3の支持体を用いた全固体電池、および参考例1のセパレータ用基材を用いた全固体電池、加えて参考例2の電気化学素子用セパレータを支持体として用いた全固体電池と比較して、抵抗は低く、放電容量は高かった。
各実施例の支持体は、比較例1の支持体と比較して低通気度で、高密度、かつ最大貫通面積が小さい。
比較例1の支持体の通気度は51.0L/cm/min.と高く、密度が0.13g/cmと低く、かつ最大貫通面積が0.316mmと大きい。そのため、比較例1の支持体に固体電解質塗工液を塗工、乾燥した際に、比較例1の支持体が固体電解質を保持、補強できず、固体電解質が支持体に均一に留まることができなかったと考えられる。そのため、均一な固体電解質層を形成することができなかった。その結果、比較例1の支持体を用いて全固体電池を作製することができなかった。
各実施例と比較例1との比較から、通気度50L/cm/min.超、密度0.15g/cm未満、最大貫通面積0.3mm超が好ましくないと分かる。
比較例2の支持体は、各実施例の支持体と比較して厚さが薄い。そのため、比較例2の支持体を用いた全固体電池は短絡が生じた。比較例2の支持体は厚さが4μmと薄く、正極、負極間の短絡を防止できなかったためと考えられる。なお、短絡が生じたため、比較例2の支持体を用いた全固体電池の各種電池評価は行うことができなかった。各実施例と比較例2との比較から、支持体の厚さは5μm未満が好ましくないと分かる。
比較例3の支持体は各実施例の支持体と比較して、縦方向の熱寸法変化率が5.6%、横方向の熱寸法変化率が5.1%と、支持体が膨脹した。比較例3の支持体は、支持体に固体電解質塗工液を塗工し、乾燥する際に支持体に含まれるポリエチレンバインダーが熱変化してしまい、支持体の形状を維持できず、膨張したと考えられる。そのため、均一な固体電解質層を得ることができなかった。つまり、各実施例と比較例3との比較から、支持体の縦方向および横方向の熱寸法変化率はそれぞれ5%超が好ましくないと分かる。
比較例4の支持体を用いた全固体電池は、各実施例の支持体を用いた全固体電池と比較して、抵抗が高く、放電容量が低い。また、比較例4の支持体は、各実施例の支持体と比較して、横方向の剛軟度が4mNと弱い。
比較例4の支持体は横方向の剛軟度が弱いため、固体電解質層を形成した後、正極、固体電解質層、負極を加圧一体化した際に、形成されたリチウムイオンのパスラインが切断されたと考えられる。固体電解質層、正極、負極は、完全な平面ではないため、これらを重ね合わせ、加圧すると、それぞれに対して、力の強弱のある応力が加えられる。その結果、強い応力が支持体に局所的に加えられると、支持体の一部が変形してしまい、それに追随して、形成されたリチウムイオンパスラインが切断されたと考えられる。
つまり、各実施例と比較例4との比較から、縦方向および横方向の剛軟度はそれぞれ5mN未満が好ましくないと分かる。
従来例1の支持体を用いた全固体電池は、各実施例の支持体を用いた全固体電池と比較して、抵抗は高く、放電容量は低い。
従来例1の支持体は、各実施例の支持体と比較して、縦方向の熱寸法変化率が-11.0%、横方向の熱寸法変化率が-10.7%と、支持体が収縮した。そのため、従来例1の支持体は、支持体に固体電解質塗工液を塗工し、乾燥した際に、支持体が大きく収縮したと考えられる。その結果、得られた固体電解質層表面には大きな凹凸が生じ、正極、固体電解質層、負極を加圧一体化する際に、正極もしくは負極と、固体電解質層との界面の密着性が悪化し、界面抵抗が高くなった影響であると考えられる。
つまり、各実施例と従来例1との比較から、縦方向および横方向の熱寸法変化率はそれぞれ-10.0%未満が好ましくないと分かる。
従来例2の支持体は、各実施例の紙もしくは不織布である支持体と異なり、フィルムに貫通孔を形成した支持体である。従来例2の支持体の貫通孔には固体電解質を充填できるが、形成された貫通孔の内部にしか固体電解質は充填できない。また、従来例2の支持体からなる固体電解質層は、正極もしくは負極と固体電解質層との界面において、絶縁物であるフィルムと、正極もしくは負極との界面が存在していると考えられる。その影響で、従来例2の支持体は、各実施例の支持体と比較して全固体電池の抵抗が高くなったと考えられる。
各実施例と従来例2との比較から、全固体電池の抵抗を低減するためには、支持体として、紙もしくは不織布が適していることが分かる。
各実施例の支持体は、従来例3の支持体と比較して引張強さが強い。
従来例3の支持体は、固体電解質塗工液を塗工し、余分な塗工液を除去する際に、破れが生じた。これは、従来例3の支持体の引張強さが0.7N/15mmと弱いことが原因と考えられる。従来例3の支持体は、固体電解質層の形成ができなかったため、全固体電池の作製、評価は行っていない。
各実施例と、従来例3との比較から、固体電解質層製造時の支持体の破断を抑制するためには、引張強さは1.0N/15mm未満が好ましくないと分かる。
参考例1は、特許文献6に記載の熱収縮率の低いリチウムイオン二次電池用セパレータ用基材を全固体電池用支持体として用いた場合を示した。
参考例1のセパレータ用基材は、各実施例と比較して、通気度が0.7L/cm/min.と低く、密度が0.63g/cmと高く、更に最大貫通面積が0.0008mmと小さい。そのため、固体電解質塗工液を参考例1のセパレータ用基材に塗工した際に、固体電解質塗工液が支持体内部に浸透せず、支持体表面に留まっていた。そのため、固体電解質塗工液が支持体表面上に留まった状態で乾燥され、支持体表面上に固体電解質層が形成されていた。そして、支持体表面に形成された固体電解質層は支持体がない状態で乾燥されたことから、固体電解質が補強されなかったため、クラックが生じ、固体電解質層を持ち上げた際に、割れが生じてしまい、自立性が無かった。
参考例1のセパレータ用基材を用いた固体電解質層は、クラックが生じたものの、正極、負極と重ね合わせることで全固体電池を作製することができた。
参考例1のセパレータ用基材を使用した全固体電池は、各実施例の支持体を用いた全固体電池と比較して、抵抗が非常に高く、電池の放電ができなかった。これは、密度が0.63g/cmと高く、最大貫通面積が0.0008mmと小さく、かつ通気度が0.7L/cm/min.と低かったことが原因と考えられる。
各実施例と参考例1との比較から、支持体の通気度は1L/cm/min.未満、密度は0.50g/cm超、最大貫通面積が0.001mm未満が好ましくないと分かる。
参考例2は、特許文献5に記載の耐熱性の高い電気化学素子用セパレータを全固体電池用支持体として用いた場合を示した。
参考例2の電気化学素子用セパレータは、各実施例と比較して、通気度が0.6L/cm/min.と低く、最大貫通面積が0.0003mmと小さい。その結果、参考例1と同様の理由によって、クラックが生じ、均一な固体電解質層を形成できず、自立性のある固体電解質層を形成できなかった。
参考例2の電気化学素子用セパレータを用いた固体電解質層は、参考例1と同様に、クラックが生じたものの、正極、負極と重ね合わせることで全固体電池を作製することができた。
参考例2のセパレータ用基材を使用した全固体電池は、各実施例の支持体を用いた全固体電池および参考例1のセパレータ用基材を用いた全固体電池と比較して、抵抗が高く、電池の放電ができなかった。これは、熱処理後の縦方向の剛軟度が252mNと強く、つまり硬すぎるため、正極、固体電解質層、負極と加圧一体化する際に、支持体が折れ、固体電解質層内部にクラックが生じたと考えられる。クラック発生によって、リチウムイオンパスラインが切断され、抵抗の上昇が生じたと考えられる。
つまり、各実施例と参考例1、参考例2との比較から、縦方向および横方向の剛軟度はそれぞれ250mN超が好ましくないと分かる。
参考例3の支持体は、実施例5と比較して、通気度が低かった。その結果、参考例の支持体を用いた全固体電池は、各実施例の支持体を用いた全固体電池と比較して、抵抗は高く、放電容量は低い。
参考例3の支持体は、ポリエステル繊維、ポリエステルバインダー繊維に加えて、ポリビニルアルコール繊維を20質量%配合した支持体である。ポリビニルアルコール繊維は、引張強さを向上させるには効果的な繊維である。ポリビニルアルコール繊維は、湿熱による形状変化によって、繊維接点を補強し、支持体の引張強さを向上させることができる。しかしながら、ポリビニルアルコール繊維は、支持体を構成する状態において、繊維状態ではなく、支持体内部にフィルム層を多数形成してしまい、繊維間隙を封鎖してしまっていると考えられる。その結果、通気度が低くなり、固体電解質塗工液の支持体内部への浸透を阻害してしまっていると考えられる。
つまり、実施例5と参考例3との比較から、繊維状態を保持できないバインダーの配合は好ましくないと分かる。
上述した実施の形態例は、あくまで一例であって、例えば、固体電解質、正極、負極の組成等は、当業者が適宜変更することができる。
以上説明したように、支持体の縦方向および横方向の熱寸法変化率をそれぞれ-10~5%、通気度を1~50L/cm/min.、熱処理後の縦方向および横方向の剛軟度をそれぞれ5~250mNとした紙もしくは不織布とすることで、正極もしくは負極と固体電解質層との界面抵抗を低減し、また、支持体内部への固体電解質の浸透性を良好にし、かつ、固体電解質層内部に形成されたリチウムイオンパスラインの切断を抑制できる、支持体を得ることができる。この支持体を使用することで、抵抗の低い全固体電池を得ることができる。

Claims (3)

  1. リチウムイオン二次電池の固体電解質層に含まれる支持体であって、
    支持体の縦方向および横方向の熱寸法変化率がそれぞれ-10~5%、通気度が1~50L/cm/min.、熱処理後の縦方向および横方向の剛軟度がそれぞれ5~250mNの範囲の紙もしくは不織布である
    ことを特徴とするリチウムイオン二次電池用支持体。
  2. 前記支持体は、厚さが5~40μm、密度が0.15~0.50g/cmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用支持体。
  3. 請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用支持体を有した固体電解質層を備えたリチウムイオン二次電池。
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