JP2023021274A - 立体的細胞構造体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】十分な厚さを有し、脈管網を有する、立体的細胞構造体の製造技術を提供する。【解決手段】血管内皮細胞及び線維芽細胞を含む細胞集団と、細胞外マトリックス成分と、高分子電解質とを混合して混合物を得る工程と、前記混合物から液体部分を除去して細胞集合体を得る工程と、前記細胞集合体を培地中で培養し、厚さが150μm超であり、脈管網を有する立体的細胞構造体を得る工程と、を含み、前記細胞外マトリックス成分が、前記混合物における終濃度0.1mg/mL以上1.5mg/mL以下のコラーゲンであり、前記高分子電解質が、前記混合物における終濃度0.001mg/mL以上0.025mg/mL未満のヘパリンである、立体的細胞構造体の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、立体的細胞構造体の製造方法に関する。
本願は、2020年1月20日に日本に出願された特願2020-006587号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、再生医療はもとより、生体に近い環境が求められる薬剤のアッセイ系において、平板上で成育させた細胞よりも立体的に組織化させた立体的細胞構造体を使用することの優位性が示されており、生体外で立体的細胞構造体を構築するための様々な技術が開発されている。例えば、細胞が付着できない表面基板上で細胞塊を形成させる方法、液滴中で細胞塊を形成させる方法、及び透過性膜上に細胞を集積させる方法等が開発されている。
このような細胞の組織化を維持するためには、細胞間の結合や足場形成のために、生体自身が産生するコラーゲン等の細胞外マトリックス(以下、ECMと記載することがある)が必要である。そのため、人為的に細胞組織を構築する際にECMを外部から添加することが検討されてきた。
例えば、特許文献1には、酵素処理等により単離した細胞を、代表的なECMであり、細胞保護作用を有する水溶性高分子である、コラーゲン等と接触させた後、三次元集合体として培養する方法が開示されている。この方法によれば、培養中に細胞周辺で水溶性高分子のゲルが形成される。
また、特許文献2には、温度応答性の樹脂であるpoly(N-isopropylacrylamide)(PIPAAmともいう)を表面に固定化した培養皿を用いて細胞シートを作製し、作製した細胞シートを積層することで立体的細胞構造体を構築する方法が開示されている。
また、特許文献3には、細胞層の形成する工程と、形成した細胞層を第1物質含有液と第2物質含有液とに交互に接触させる工程とを繰り返し行い、ナノメートルサイズの厚みのECMを介して連続的に細胞層を積層することで、立体的細胞構造体を構築する方法が開示されている。この方法では、単層の細胞シートの剥離や剥離した細胞シートの重ね合わせ等が不要であるため、優れた再現性及び効率で立体的細胞構造体を製造できるとされている。
また、特許文献4には、個々の細胞の表面全体が接着膜で被覆された被覆細胞を作製し、接着膜を介して細胞を接着させることにより、立体的細胞構造体を構築する方法が開示されている。
以上の通り、立体的細胞構造体の製造技術としていくつもの手法が提案されている。しかしながら、いずれかの手法によって立体的細胞構造体を一時的に形成できたとしても、立体的細胞構造体の内部に脈管網を再現できなければ、真に生体に近い構造を模倣できたとはいえない。特に立体的細胞構造体の場合、立体的細胞構造体の内部の細胞にまで必要な栄養を供給するためにも脈管網がよく形成されていることが求められる。
一般的に、脈管網を形成させるためには、立体的細胞構造体を構成する細胞集団に血管内皮細胞を加える。しかしながら、立体的細胞構造体が単に血管内皮細胞を含有しているだけでは必ずしも脈管網(血管網)は形成されず、血管網の形成には、血管内皮細胞の存在する周辺の環境が重要である。
立体的細胞構造体の内部の血管網の形成に影響を与える因子としては、血管内皮細胞増殖因子(VEGFともいう)等の各種成長因子等様々な因子が知られているが、その一つとして、ECMの機械的性質が血管網の形成に影響を及ぼすことが報告されている(非特許文献1を参照。)。
本願発明者らは、以前に、細胞が、カチオン性緩衝液、ECM、及び高分子電解質を少なくとも含む溶液に懸濁されている混合物を得るA工程と、得られた前記混合物から前記細胞を集め、基材上に細胞集合体を形成するB工程と、前記細胞を培養し、立体的細胞構造体を得るC工程と、を含む、立体的細胞構造体の製造技術を開発している(特許文献5を参照)。
特許第2824081号明細書 国際公開第2002/008387号 特許第4919464号明細書 特許第5850419号明細書 特許第6427836号明細書
Rouwkema J. and Khademhosseini A., Vascularization and Angiogenesis in Tissue Engineering: Beyond Creating Static Networks, Trends Biotechnol, 34 (9), 733-745, 2016.
特許文献5に記載の方法は、細胞種に大きく限定されず適用可能であり、細胞が内皮細胞を含む場合の脈管網の形成能に優れ、且つ層構成を形成することも可能な有効な手法である。
しかしながら、ECMがコラーゲンを含む場合に、厚い立体的細胞構造体をより得やすくするためには,更なる改善の余地がある。
そこで、本発明は、十分な厚さを有し、脈管網を有する、立体的細胞構造体の製造技術を提供することを目的とする。
本発明は以下の態様を含む。
[1]少なくとも内皮細胞を含む細胞集団と、細胞外マトリックス成分と、高分子電解質とを混合して混合物を得る工程と、前記混合物から液体部分を除去して細胞集合体を得る工程と、前記細胞集合体を培地中で培養し、厚さが150μm超であり、脈管網を有する立体的細胞構造体を得る工程と、を含み、前記細胞外マトリックス成分が、コラーゲン又はコラーゲン類縁体であり、前記高分子電解質が、前記混合物における終濃度が0.001mg/mL以上のヘパリン又はヘパリン類縁体である、立体的細胞構造体の製造方法。
[2]前記細胞集合体を培地中で培養する工程において、前記細胞集合体を、培養容器の面積に対して1,000個/mm~1,000,000個/mmの細胞密度で播種して培養する、[1]に記載の製造方法。
[3]前記脈管網を構成する脈管の合計の長さが、5,000μm/mm以上である、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]前記内皮細胞が血管内皮細胞である、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記細胞集団が線維芽細胞を更に含む、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]前記混合物のpHが、7.2~7.6である、[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]前記混合物が流動性を有する、[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、十分な厚さを有し、脈管網を有する、立体的細胞構造体の製造技術を提供することができる。
実験例1において撮影した蛍光顕微鏡写真である。 実験例1において測定した、立体的細胞構造体の内部の脈管の合計の長さを示すグラフである。 実験例2において撮影した蛍光顕微鏡写真である。 実験例3において撮影した蛍光顕微鏡写真である。
1実施形態において、本発明は、少なくとも内皮細胞を含む細胞集団と、細胞外マトリックス成分と、高分子電解質とを混合して混合物を得る工程と、前記混合物から液体部分を除去して細胞集合体を得る工程と、前記細胞集合体を培地中で培養し、厚さが150μm超であり、脈管網を有する立体的細胞構造体を得る工程と、を含み、前記細胞外マトリックス成分が、コラーゲン又はコラーゲン類縁体であり、前記高分子電解質が、前記混合物における終濃度が0.001mg/mL以上のヘパリン又はヘパリン類縁体である、立体的細胞構造体の製造方法を提供する。
本実施形態の製造方法によれば、十分な厚さを有し、脈管網を有する、立体的細胞構造体の製造技術を提供することができる。
ここで、十分な厚さとは、例えば150μm超、例えば160μm以上、例えば170μm以上、例えば180μm以上、例えば190μm以上、例えば200μm超、例えば210μm以上、例えば220μm以上、例えば230μm以上、例えば240μm以上、例えば250μm以上、例えば260μm以上、例えば270μm以上、例えば280μm以上、例えば290μm以上、例えば300μm以上であってもよい。厚さの上限に特に制限はないが、例えば、3000μm、1000μm、及び500μm等が挙げられる。立体細胞構造体の厚さの上限値と下限値は、任意に組み合わせることができ、150μm超3000μm以下であることが好ましく、150μm以上500μm以下であることがより好ましい。
また、本実施形態の製造方法により製造される立体的細胞構造体の脈管網は、脈管網を構成する脈管の合計の長さが、5,000μm/mm以上、例えば5,200μm/mm以上、例えば5,400μm/mm以上であってよい。脈管の合計の長さに特に制限はないが、例えば、5,500μm/mm、8,000μm/mm、及び14,000μm/mm等が挙げられる。脈管の合計の長さの上限値と下限値は、任意に組み合わせることができ、5,000μm/mm以上20,000μm/mm以下であることが好ましく、5,000μm/mm以上10,000μm/mm以下であることがより好ましい。
脈管の合計の長さは、立体的細胞構造体を上面から観察した際の立体的細胞構造体の単位面積あたりの脈管の合計長さとして測定する。脈管網を構成する脈管の合計の長さは、立体的細胞構造体を上面から観察した蛍光顕微鏡写真の画像解析から、脈管網であることを示す蛍光を発している画素を数えることにより、測定することができる。
立体的細胞構造体の形態に特に制限は無く、例えば、コラーゲン等の天然生体高分子や合成高分子によって構成されたスキャフォールド内で細胞を培養して形成した立体的細胞構造体であってもよいし、細胞凝集体(スフェロイドともいう)であってもよいし、シート状の細胞構造体であってもよい。
本明細書において、「立体的細胞構造体」とは、少なくとも1種類の細胞を含む立体的な細胞の集合体を意味する。立体的細胞構造体の形態としては、皮膚、毛髪、骨、軟骨、歯、角膜、血管、リンパ管、心臓、肝臓、膵臓、神経、食道等の生体組織モデル、及び、胃癌、食道癌、大腸癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腎細胞癌、及び肝癌等の固形癌モデルが挙げられるが、これらに限定されない。
本実施形態の製造方法は、少なくとも内皮細胞を含む細胞集団と、細胞外マトリックス成分と、高分子電解質とを混合して混合物を得る工程(A)と、前記混合物から液体部分を除去して細胞集合体を得る工程(B)と、前記細胞集合体を培地中で培養し、立体的細胞構造体を得る工程(C)と、を含む。
工程(A)において、細胞集団は少なくとも内皮細胞を含む。内皮細胞としては血管内皮細胞が好ましい。細胞の由来は特に限定されず、例えば、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウシ、マウス、及びラット等が挙げられる。
内皮細胞以外の細胞は特に限定されず、例えば、骨、筋肉、内臓、神経、脳、骨、皮膚、又は血液等に由来する体細胞であってもよく、生殖細胞であってもよい。また、細胞は、誘導多能性幹細胞細胞(iPS細胞)又は胚性幹細胞(ES細胞)であってもよい。あるいは、初代培養細胞、継代培養細胞及び細胞株細胞等の培養細胞であってもよい。細胞集団は1種類の細胞を含んでいてもよいし、複数種類の細胞を含んでいてもよい。
細胞としては、例えば、神経細胞、樹状細胞、免疫細胞、血管内皮細胞、リンパ管内皮細胞、線維芽細胞、肝癌細胞等の癌細胞、上皮細胞、心筋細胞、肝細胞、膵島細胞、組織幹細胞及び平滑筋細胞等が挙げられるが、これらに限定されない。
工程(A)において、少なくとも内皮細胞を含む細胞集団と、細胞外マトリックス成分と、高分子電解質とを混合して混合物を得る。混合物が細胞外マトリックス成分を含むことにより、厚い細胞構造体が得られやすい傾向にある。混合物は、更にカチオン性物質を含んでいてもよい。
細胞外マトリックス成分としては、コラーゲン又はコラーゲン類縁体が挙げられる。コラーゲンとしては、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、VI型コラーゲン、VII型コラーゲン、及びVIII型コラーゲン等が挙げられるがこれらに限定されない。なかでもI型コラーゲンが好ましい。
コラーゲン類縁体としては、コラーゲンタンパク質の特徴を部分的に備えた「コラーゲン様領域」を有するタンパク質又はその部分ペプチド等が挙げられる。より具体的には、C1q、コレクチン、フィコリン、アディポネクチン、マクロファージスカベンジャー受容体又はその部分ペプチド等が挙げられる。コラーゲン類縁体は、コラーゲンタンパク質の特徴を部分的に備えていれば、人工的な合成ペプチドであってもよい。
ヘパリン又はヘパリン類縁体としては、ヘパリン、ヘパラン硫酸、及びヘパリン類似物質であるヒルドイド(登録商標)等が挙げられる。混合物がヘパリン又はヘパリン類縁体を含むことにより、細胞外マトリックスによる脈管網の形成の阻害が改善される傾向にある。
工程(A)において、少なくとも内皮細胞を含む細胞集団と、コラーゲン又はコラーゲン類縁体と、ヘパリン又はヘパリン類縁体とを混合して混合物を得る。混合物におけるコラーゲン又はコラーゲン類縁体の終濃度は、例えば0.01mg/mL以上、例えば0.025mg/mL以上、例えば0.05mg/mL以上、例えば0.1mg/mL以上、例えば0.15mg/mL以上、例えば0.3mg/mL以上である。コラーゲン又はコラーゲン類縁体の終濃度の上限値は特に限定されないが、例えば、1.5mg/mL、2.0mg/mL、3.0mg/mL、5.0mg/mL、10.0mg/mL及び20.0mg/mLである。混合物におけるコラーゲン又はコラーゲン類縁体の終濃度の上限値と下限値は、任意に組み合わせることができる。例えば、混合物におけるコラーゲン又はコラーゲン類縁体の終濃度は、0.01mg/mL以上20.0mg/mL以下、0.01mg/mL以上10.0mg/mL以下、0.01mg/mL以上5.0mg/mL以下、0.01mg/mL以上3.0mg/mL以下、0.01mg/mL以上2.0mg以下、0.025mg/mL以上1.5mg/mL以下、0.05mg/mL以上1.5mg/mL以下、0.05mg/mL以上3.0mg/mL以下であってもよい。
混合物におけるヘパリン又はヘパリン類縁体の終濃度は、0.001mg/mL以上、例えば0.001mg/mL超、例えば0.01mg/mL以上、例えば0.025mg/mL以上、例えば0.05mg/mL以上、例えば0.1mg/mL以上、例えば0.15mg/mL以上、例えば0.3mg/mL以上、例えば1.0mg/mL以上、例えば5.0mg/mL以上である。ヘパリン又はヘパリン類縁体の終濃度は、0.001mg/mL以上であると、コラーゲンのゲル化を防止することができる。混合物におけるヘパリン又はヘパリン類縁体の終濃度の上限値は特に限定されないが、例えば、10.0mg/mL及び50.0mg/mLである。混合物におけるヘパリン又はヘパリン類縁体の終濃度の上限値と下限値は、任意に組み合わせることができる。例えば、混合物におけるヘパリン又はヘパリン類縁体の終濃度は、0.001mg/mL以上50mg/mL以下、0.001mg/mL以上10mg/mL以下、0.01mg/mL以上10mg/mL以下、0.025mg/mL以上10.0mg/mL以下、0.05mg/mL以上10.0mg/mL以下、0.001mg/mL以上0.1mg/mL以下、0.001mg/mL以上0.025mg/mL未満であってもよい。混合物におけるヘパリン又はヘパリン類縁体の終濃度が0.025mg/mL未満であると、コラーゲンのゲル化を防止すると共に、コラーゲンが柔らかくなりすぎることを防ぐことができる。
混合物におけるコラーゲン又はコラーゲン類縁体と、ヘパリン又はヘパリン類縁体のそれぞれの終濃度は、任意に組み合わせることができる。例えば、混合物におけるコラーゲン又はコラーゲン類縁体の終濃度が0.01mg/mL以上10.0mg/mL以下であり且つヘパリン又はヘパリン類縁体の終濃度が0.001mg/mL以上50.0mg/mL以下であってもよく、コラーゲン又はコラーゲン類縁体の終濃度が0.05mg/mL以上1.5mg/mL以下であり且つヘパリン又はヘパリン類縁体の終濃度が0.001mg/mL以上10.0mg/mL以下であってもよく、コラーゲン又はコラーゲン類縁体の終濃度が0.01mg/mL以上3.0mg/mL以下であり且つヘパリン又はヘパリン類縁体の終濃度が0.001mg/mL以上10.0mg/mL以下であってもよい。
カチオン性物質としては、細胞の生育及び細胞集合体の形成に悪影響を及ぼさない限り、任意の正電荷を有する物質を用いることができる。カチオン性物質には、トリス-塩酸緩衝液、トリス-マレイン酸緩衝液、ビス-トリス-緩衝液、HEPES等のカチオン性緩衝液、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリリシン、ポリヒスチジン、及びポリアルギニン等が挙げられるが、これらに限定されない。なかでもカチオン性緩衝液が好ましく、トリス-塩酸緩衝液がより好ましい。
工程(A)における混合物におけるカチオン性物質の終濃度は、細胞の生育及び細胞集合体の形成に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。本実施形態で用いられるカチオン性物質の終濃度は10~100mMであることが好ましく、例えば20~90mMであってもよく、例えば30~80mMであってもよく、例えば40~70mMであってもよく、例えば45~60mMであってもよい。
カチオン性物質としてカチオン性緩衝液を用いる場合、カチオン性緩衝液のpHは、細胞の生育及び細胞集合体の形成に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。本実施形態で用いられるカチオン性緩衝液のpHは6.0~8.0であることが好ましい。例えば、本実施形態で用いられるカチオン性緩衝液のpHは、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0であってよい。細胞へのダメージが小さいという観点から、本実施形態で用いられるカチオン性緩衝液のpHは7.2~7.6であることがより好ましく、7.35~7.45であることがより好ましく、7.4であることが更に好ましい。カチオン性緩衝液を用いることにより、工程(A)における混合物のpHを上記範囲に調整することができる。なお、本明細書において、pHは室温(20~25℃)で測定したときの値である。
一般的にコラーゲンは、酸性条件下では水に可溶であるが、中性からアルカリ性条件下では水に不溶でありゲル化する。従って、工程(A)における混合物のpHが7.0~8.0ではコラーゲンはゲル化するが、混合物にヘパリンが少なくとも0.001mg/mLの割合で含まれると、コラーゲンのゲル化を防止することができる。つまり、工程(A)における混合物は、流動性を有している。その結果、後に説明する細胞の培養において内皮細胞の移動を容易にし、内皮細胞同士が集合しやすくなる。そのため、立体的細胞構造体に脈管網が形成されやすくなる。
本明細書において混合物の流動性の有無は、以下の方法で判断する。まず、少なくとも内皮細胞を含む細胞集団と、細胞外マトリックス成分と、高分子電解質とを1.5mLチューブ内で混合して混合物を調製する。4℃で一晩静置し、前記チューブを37℃で30分間インキュベーションする。前記チューブ内の混合物を目視で確認する。チューブを上下反転させ、1秒間後にチューブ内の混合物が流動したものを「流動性あり」、流動しなかったものを「流動性なし」と判断する。また、流動性の有無は、動的粘弾性測定によって判断してもよい。具体的には、室温以上の温度下での混合物の貯蔵弾性率Xと損失弾性率Yとを測定し、XがYよりも大きければ混合物はゲル化しており「流動性なし」、XがYよりも小さければ混合物はゲル化しておらず「流動性あり」と判断してもよい。なお、混合物に含まれる細胞集団の割合は極めて小さいため、混合物に細胞集団が含まれていない場合であっても、流動性の判断に影響はないものとする。
また、工程(A)における混合物にヘパリンが少なくとも0.001mg/mLの割合で含まれると、混合物中においてコラーゲンが均一に分布する。その結果、混合物における細胞の分布の均一性も高めることができる。
工程(A)において、コラーゲン又はコラーゲン類縁体、及びヘパリン又はヘパリン類縁体は、適切な溶媒に溶解して用いることができる。溶媒の例としては、水、酸性水溶液及び緩衝液等が挙げられるが、これらに限定されない。コラーゲン又はコラーゲン類縁体は、酸性水溶液、例えば酢酸水溶液に溶解してもよい。上述のカチオン性物質としてカチオン性緩衝液が用いられる場合、コラーゲン又はコラーゲン類縁体、及びヘパリン又はヘパリン類縁体を、カチオン性緩衝液に溶解して用いてもよい。
工程(A)において、細胞集団と、コラーゲン又はコラーゲン類縁体、ヘパリン又はヘパリン類縁体、及び、場合によりカチオン性物質の混合は、ディッシュ、チューブ、フラスコ、ボトル、又はプレート等の適当な容器中で行うことができる。
続いて、工程(B)において、上記混合物から液体部分を除去して細胞集合体を得る。本明細書において、「細胞集合体」とは、細胞の集団を意味する。細胞集合体には、遠心分離やろ過等によって得られる細胞の沈殿体も含まれる。ある実施形態では、細胞集合体はスラリー状の粘稠体である。「スラリー状の粘稠体」とは、Akihiro Nishiguchi et al., Cell--cell crosslinking by bio-molecular recognition of heparin-based layer-by-layer nanofilms, Macromol Biosci., 15 (3), 312-317, 2015. に記載されるようなゲル様の細胞集合体を指す。
液体部分を除去する手段としては、当業者に公知の手法を用いることができる。例えば、遠心分離やろ過によって、液体部分を除去してもよい。遠心分離の条件は、細胞の生育及び細胞集合体の形成に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。例えば、混合物の入ったマイクロチューブを、室温、400~1,000×gで1分間の遠心分離に供して液体部分と細胞集合体とを分離することによって、液体部分を除去してもよい。あるいは、自然沈降によって細胞を集めた後、液体部分を除去してもよい。この結果、細胞集合体を得ることができる。
続いて、工程(C)において、上記の細胞集合体を培地中で培養し、立体的細胞構造体を得る。培養の前に細胞集合体を溶液に懸濁してもよい。溶液は、細胞の生育及び立体的細胞構造体の形成に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。例えば、細胞集合体を構成する細胞に適した細胞培養培地、緩衝液等を用いることができる。細胞集合体の懸濁は、ディッシュ、チューブ、フラスコ、ボトル、又はプレート等の適当な容器中で行うことができる。
細胞集合体を溶液に懸濁した場合、培養の前に細胞を沈殿させて基材上に細胞の沈殿体を形成してもよい。基材としては、細胞の培養に用いるための培養容器が挙げられる。培養容器は、細胞や微生物の培養に通常用いられている素材及び形状を有する容器であってよい。培養容器の素材としては、ガラス、ステンレス、及びプラスチック等が挙げられるが、これらに限定されない。培養容器としては、ディッシュ、チューブ、フラスコ、ボトル、及びプレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。基材は、例えば、液体中の細胞を通過させず、液体を通すことが可能な材料である。基材は透過膜であることが好ましい。かかる透過膜を有する容器としては、Transwell(登録商標)インサート、Netwellインサート、Falcon(登録商標)セルカルチャーインサート、及びMillicell(登録商標)セルカルチャーインサートなどのセルカルチャーインサートが挙げられるが、これらに限定されない。
細胞の沈殿は、当業者に公知の手法を用いることができる。例えば、遠心分離、磁性分離、又はろ過等によって、細胞を集めてもよい。遠心分離の条件は、細胞の生育に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。例えば、混合物又は懸濁液をセルカルチャーインサートに播種し、10℃又は室温、400~1,000×gで1分間の遠心分離に供することで、細胞を集めてもよい。あるいは、自然沈降によって細胞を集めてもよい。また、集めた細胞は層構造を形成していてもよい。
細胞集合体、又は、細胞集合体を懸濁した場合には懸濁された細胞は、培養容器の面積に対して1,000個/mm以上、例えば10,000個/mm以上、例えば20,000個/mm以上、例えば25,000個/mm以上の細胞密度で播種することが好ましい。細胞が培養容器の面積に対して1,000個/mm以上であると、適度に細胞が分散した状態となり、立体的細胞構造体の厚さが150μm超となりやすく、また内皮細胞が移動しやすいため内皮細胞同士が集合しやすい。また、細胞は、例えば培養容器の面積に対して1,000,000個/mm以下、例えば500,000個/mm以下、例えば200,000個/mm以下、例えば100,000個/mm以下の細胞密度で播種することができる。細胞が培養容器の面積に対して1,000,000個/mm以下であると、立体的細胞構造体が薄くなることを防ぐことができる。細胞密度の上限値と下限値は、任意に組み合わせることができる。例えば、細胞密度は、培養容器の面積に対して1,000個/mm以上100,000個/mm以下、例えば10,000個/mm以上200,000個/mm以下であってもよい。細胞集合体を溶液に懸濁する工程、及び、細胞を沈殿させる工程を実施することにより、より均質な立体的細胞構造体を得ることができる。
工程(C)において、細胞の培養は、培養される細胞に適した培養条件下で行うことができる。当業者は、細胞の種類や所望の機能に応じて適切な培地を選択することができる。細胞培養培地としては特に限定されないが、DMEM、E-MEM、MEMα、RPMI-1640、Mccoy’5a、又はHam’s F-12等の基本培地や、これらの基本培地にCS(ウシ血清ともいう)、FBS(ウシ胎児血清ともいう)、又はHBS(ウマ胎児血清ともいう)等の血清を1~20容量%程度になるように添加した培地が挙げられる。培養環境の温度や大気組成等の諸条件もまた、当業者であれば容易に決定することができる。
細胞の培養時に、構築された立体的細胞構造体の変形(例えば、組織の収縮、組織末端の剥離等)を抑制するための物質を培地に添加してもよい。このような物質としては、選択的ROCK(Rho-associated coiled-coil forming kinase/Rho結合キナーゼともいう)阻害剤であるY-27632が挙げられるが、これに限定されない。
上記の工程を繰り返すことにより、細胞集合体又は細胞の沈殿体を積層することもできる。言い換えれば、工程(A)と工程(B)を複数回繰り返し、その後工程(C)を行うことができる。これにより、複数の層を有する立体的細胞構造体を構築することができる。しかしながら、本実施形態の製造方法によれば、上記の工程を繰り返さなくても、150μm超、好ましくは200μm超の厚さを有する立体的細胞構造体を得ることができる。
上記の工程を繰り返して、細胞集合体又は細胞の沈殿体を積層する場合、複数種類の細胞を用いて、異なる種類の細胞によって構成される立体的細胞構造体を構築してもよい。具体的には、細胞集団として第1の細胞と第1の細胞とは異なる第2の細胞を含む細胞集団を用いて工程(A)を行い(工程(A1)とする)、工程(B)行う。この工程(A1)と工程(B)を繰り返し、その後工程(C)を行って、立体的細胞構造体を構築してもよい。また別の側面として、細胞集団として第1の細胞を含む細胞集団を用いて工程(A)を行い(工程(A2)とする)、工程(B)行う。その後、細胞集団として第1の細胞とは異なる第2の細胞を含む細胞集団を用いて工程(A)を行い(工程(A3)とする)、次いで工程(B)を行う。工程(A2)及び工程(B)との組み合わせと、工程(A3)及び工程(B)との組み合わせを複数回繰り返し、その後工程(C)を行って、立体的細胞構造体を構築してもよい。なお、上述の製造方法において工程(A2)及び工程(B)との組み合わせを複数回連続して行ってから工程(A3)及び工程(B)との組み合わせを行ってもよく、工程(A3)及び工程(B)との組み合わせを複数回連続して行ってから工程(A2)及び工程(B)との組み合わせを行ってもよい。
本実施形態の製造方法により製造される立体的細胞構造体は、脈管網を有しているため、生体に近い構造を模倣したモデルとして有用である。本明細書において、「脈管網」とは、生体組織における血管網やリンパ管網のような、多数の分岐点を有するネットワーク状の管構造を指す。
本実施形態の製造方法は、厚い立体細胞構造体に脈管網を付与する方法であるということができる。また、本実施形態の製造方法において、ヘパリン又はヘパリン類縁体は、脈管網を細胞構造体に形成させるための脈管網形成剤であるということができる。また、ヘパリン又はヘパリン類縁体は、立体細胞構造体に形成される脈管網の密度を向上させるための改善剤であるということもできる。
本発明は、もう一つの側面として以下の態様を包含する。
[8]少なくとも内皮細胞を含む細胞集団と、細胞外マトリックス成分と、高分子電解質とを混合して混合物を得る工程と、前記混合物から液体部分を除去して細胞集合体を得る工程と、前記細胞集合体を培地中で培養し、厚さが150μm超であり、脈管網を有する立体的細胞構造体を得る工程と、を含み、前記細胞外マトリックス成分が、コラーゲン又はコラーゲン類縁体であり、前記高分子電解質が、前記混合物における終濃度が0.001mg/mL以上0.05mg/mL以下あるいは0.001mg/mL以上0.025mg/mL未満のヘパリン又はヘパリン類縁体である、立体的細胞構造体の製造方法。
[9]前記細胞集合体を培地中で培養する工程において、前記細胞集合体は、培養容器の面積に対して20,000個/mm~100,000個/mmの細胞密度で播種して培養する、[8]に記載の製造方法。
[10]前記脈管網を構成する脈管の合計の長さが、5,000μm/mm以上10,000μm/mm以下である、[8]又は[9]に記載の製造方法。
[11]前記内皮細胞が血管内皮細胞である、[8]~[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12]前記細胞集団が線維芽細胞を更に含む、[8]~[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13]前記混合物のpHが、7.35~7.45である、[8]~[12]のいずれかに記載の製造方法。
[14]前記混合物が流動性を有する、[8]~[13]のいずれかに記載の製造方法。
[15]前記細胞外マトリックス成分の前記混合物における終濃度が0.01mg/mL以上3.0mg/mL以下(好ましくは、0.01mg/mL以上1.5mg/mL以下)である、[8]~[14]のいずれかに記載の製造方法。
以下に実施例を示して本発明をより詳細かつ具体的に説明するが、実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
以下の各実験例において、特に説明がない限り、コラーゲンとしてコラーゲンIを用いた。
[実験例1]
(立体的細胞構造体の形成1)
4.25×10細胞の正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)及び7.0×10細胞のGFP導入ヒト臍帯静脈内皮細胞(GFP-HUVEC)を、0mg/mL、0.2mg/mL、又は2.0mg/mLのヘパリン/50mMトリス-塩酸緩衝液(pH7.4)と、0mg/mL、0.2mg/mL、又は0.6mg/mLコラーゲン/5mM酢酸溶液(pH3.7)溶液との等量混合液に懸濁した。この結果、混合物におけるコラーゲンの終濃度は、それぞれ、0mg/mL、0.1mg/mL、又は0.3mg/mLとなり、ヘパリンの終濃度は、それぞれ、0mg/mL、0.1mg/mL、又は1.0mg/mLとなった。
続いて、得られた混合物を、室温、1,000×g(重力加速度)で1分間遠心し、粘稠体を得た。続いて、得られた粘稠体を10%ウシ胎児血清(FBS)含有DMEMに懸濁した。続いて、得られた懸濁液の全量を96ウェルセルカルチャーインサート(1ウェルあたりの底面積は0.143cmであった。)内に播種し、室温、400×gで1分間遠心した。これにより、セルカルチャーインサート上に細胞層が形成された。セルカルチャーインサートに播種された細胞の密度は29,720個/mmであった。
続いて、10%FBS含有DMEMをセルカルチャーインサートの内側及び外側の合計液量が2mL超となるように添加し、COインキュベーター(37℃、5%O)中で培養した(この培養を開始した時点を培養開始時とする)。培養開始時から24時間培養後、10%FBS含有DMEMに培地交換した。以降、培養開始時から、48時間後、及び96時間後に培地交換を行った。
《立体的細胞構造体の観察》
培養開始時から120時間後に、立体的細胞構造体を上面から生きた状態で蛍光顕微鏡観察し、GFPの蛍光を検出した。図1は、蛍光顕微鏡観察の結果を示す写真である。その結果、コラーゲンの終濃度が0.1mg/mL以上であり、ヘパリンの終濃度が0mg/mLであったサンプルでは、その他のサンプルと比較して血管網の形成が阻害された。これに対し、コラーゲンの終濃度が0.1mg/mL以上である場合であっても、ヘパリンの終濃度が0.1mg/mL以上であったサンプルでは、血管網の形成の阻害が有意に緩和された。
《立体的細胞構造体の厚さの測定》
続いて、各立体的細胞構造体の厚さを測定した。高さの測定は、共焦点顕微鏡の焦点が合った高さから、96ウェルセルカルチャーインサートの底面の高さを差し引いて算出した。
下記表1に、立体的細胞構造体の厚さの測定結果を示す。表1中、「N.D.」は立体的細胞構造体が収縮し、立体的細胞構造体の厚さを測定できなかったことを示す。厚さの解像度が50μmなのは、使用した共焦点顕微鏡のレンズの焦点距離が約25μmであったため、高さ方向の2つの点が50μm離れていれば、両方で焦点が合うことがなくなるためである。
Figure 2023021274000002
その結果、コラーゲンの終濃度が0.1mg/mL以上であり、ヘパリンの終濃度が0.1mg/mL超であったサンプルでは、立体的細胞構造体の厚さを150μm超とすることができることが明らかとなった。
《脈管の合計の長さの測定》
続いて、図1に示す蛍光顕微鏡写真の画像解析により、各立体的細胞構造体の内部の脈管網を構成する脈管の合計の長さを測定した。図2は、測定した脈管の合計の長さを示すグラフである。図2中「col」はコラーゲンを示し、「hep」はヘパリンを示す。また、「col 0/hep 0」はコラーゲンの終濃度が0mg/mLであり、ヘパリンの終濃度が0mg/mLであったサンプルの結果であることを示し、「col 0/hep 0.1」はコラーゲンの終濃度が0mg/mLであり、ヘパリンの終濃度が0.1mg/mLであったサンプルの結果であることを示し、以下同様である。
その結果、コラーゲンの終濃度が0.1mg/mL以上であり、ヘパリンの終濃度が0.1mg/mL超であったサンプルでは、脈管の合計の長さを5,000μm/mm以上とすることができることが明らかとなった。
[実験例2]
(立体的細胞構造体の形成2)
本実験例は、実験例1と比較して、コラーゲンの終濃度、ヘパリンの終濃度、細胞の培養時間が主に異なっていた。まず、4.25×10細胞の正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)及び4.5×10細胞のGFP導入ヒト臍帯静脈内皮細胞(GFP-HUVEC)を、0mg/mL、0.002mg/mL、0.2mg/mL、又は10.0mg/mLのヘパリン/50mMトリス-塩酸緩衝液(pH7.4)と、0mg/mL、又は0.3mg/mLコラーゲン/5mM酢酸溶液(pH3.7)溶液との等量混合液に懸濁した。この結果、混合物におけるコラーゲンの終濃度は、それぞれ、0mg/mL、又は0.15mg/mLとなり、ヘパリンの終濃度は、それぞれ、0mg/mL、0.001mg/mL、0.1mg/mL、又は5.0mg/mLとなった。なお、コラーゲンの終濃度が0mg/mLである実験例は、ヘパリンの終濃度が0mg/mLの場合のみ行った。
続いて、得られた混合物を、室温、1,000×gで1分間遠心し、粘稠体を得た。続いて、得られた粘稠体を10%FBS含有DMEMに懸濁した。続いて、得られた懸濁液の全量を96ウェルセルカルチャーインサート内に播種し、室温、400×gで1分間遠心した。これにより、セルカルチャーインサート上に細胞層が形成された。セルカルチャーインサートに播種された細胞の密度は29,550個/mmであった。
続いて、10%FBS含有DMEMをセルカルチャーインサートの内側及び外側の合計液量が2mL超となる様に添加し、COインキュベーター(37℃、5%O)中で培養した(この培養を開始した時点を培養開始時とする)。培養開始時から24時間培養後、10%FBS含有DMEMに培地交換した。以降、培養開始時から、48時間後、96時間後、及び144時間後に培地交換を行った。
《立体的細胞構造体の観察》
培養開始時から168時間後に、立体的細胞構造体を上面から生きた状態で蛍光顕微鏡観察し、GFPの蛍光を検出した。図3は、蛍光顕微鏡観察の結果を示す写真である。図3中「No data」は顕微鏡写真を撮影しなかったことを示す。
その結果、コラーゲンの終濃度が0.15mg/mLであり、ヘパリンの終濃度が0mg/mLであったサンプルでは、その他のサンプルと比較して血管網の形成が阻害された。これに対し、コラーゲンの終濃度が0.15mg/mL以上である場合であっても、ヘパリンの終濃度が0.001mg/mL以上であったサンプルでは、血管網の形成の阻害が有意に緩和された。
[実験例3]
(立体的細胞構造体の形成3)
細胞外マトリックス成分として終濃度0.1mg/mLのコラーゲンを使用し、高分子電解質として終濃度0.1mg/mLのヒアルロン酸を使用した点以外は実験例1と同様にして立体的細胞構造体を作製した。
《立体的細胞構造体の観察》
培養開始時から120時間後に、立体的細胞構造体を上面から生きた状態で蛍光顕微鏡観察し、GFPの蛍光を検出した。図4は、蛍光顕微鏡観察の結果を示す写真である。その結果、高分子電解質としてヒアルロン酸を使用した場合には、コラーゲンによる血管網の形成の阻害が緩和されないことが明らかとなった。
[実験例4]
(混合物の流動性の確認)
0mg/mL、0.002mg/mL、0.05mg/mL、0.2mg/mL又は2.0mg/mLのヘパリン/50mM又は200mMのトリス-塩酸緩衝液と、0.2mg/mL、又は0.3mg/mLのコラーゲン/5mMの酢酸溶液との等量混合物を1.5mLチューブ内で調製した。この結果、表2に記載される条件1~8に記載の通り、混合物におけるコラーゲンの終濃度は、それぞれ、0.1mg/mL又は0.15mg/mLとなり、ヘパリンの終濃度は、それぞれ、0mg/mL、0.001mg/mL、0.025mg/mL、0.1mg/mL、又は1.0mg/mLとなった。
条件1~8の1mLの混合物のpHを測定した。混合物を含むチューブを4℃で一晩静置した。チューブを37℃で30分間インキュベーションした後、チューブを上下反転させ、1秒間後にチューブ内の混合物が流動するか目視で確認した。混合物が流動したものを「流動性あり」、流動しなかったものを「流動性なし」と判断した。各条件における混合物のpHと流動性を表2に示す。
Figure 2023021274000003
条件1ではpH6.96であり、混合物がヘパリンを含んでいなくても流動性を有していた。条件3、5~8の結果より、混合物がヘパリンを含有すると混合物のpHが7.38以上である場合でも流動性を有し、脈管網を有する立体細胞構造体の作製に適していることが見出された。また、条件5の結果から、ヘパリン濃度が0.001mg/mLであっても混合物の流動性を向上させることが確認された。さらに条件3、5~8の結果より、混合物中のコラーゲン濃度に対するヘパリン濃度が変動しても混合物の流動性を向上させることが分かった。
一方で、ヘパリンを含まずpHが7.38である条件2と条件4では、混合物がゲル化し、流動性がなかった。
本発明によれば、十分な厚さを有し、脈管網を有する、立体的細胞構造体の製造技術を提供することができる。

Claims (5)

  1. 血管内皮細胞及び線維芽細胞を含む細胞集団と、細胞外マトリックス成分と、高分子電解質とを混合して混合物を得る工程と、
    前記混合物から液体部分を除去して細胞集合体を得る工程と、
    前記細胞集合体を培地中で培養し、厚さが150μm超であり、脈管網を有する立体的細胞構造体を得る工程と、を含み、
    前記細胞外マトリックス成分が、前記混合物における終濃度0.1mg/mL以上1.5mg/mL以下のコラーゲンであり、
    前記高分子電解質が、前記混合物における終濃度0.001mg/mL以上0.025mg/mL未満のヘパリンである、立体的細胞構造体の製造方法。
  2. 前記細胞集合体を培地中で培養する工程において、前記細胞集合体を、培養容器の面積に対して1,000個/mm~1,000,000個/mmの細胞密度で播種して培養する、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記脈管網を構成する脈管の合計の長さが、5,000μm/mm以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記混合物のpHが、7.2~7.6である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 前記混合物が流動性を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
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