JP6953894B2 - 立体的肝臓組織構造体及びその製造方法 - Google Patents

立体的肝臓組織構造体及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、アルブミンの産生能、すなわち肝機能が長期間維持可能な人工的に構築された肝臓組織構造体及びその製造方法、並びに得られた肝臓組織構造体を用いて被検化合物の肝毒性を評価する方法に関する。
化合物の肝毒性評価は、新薬開発に重要であり、in vitroのアッセイ系で信頼性の高い評価が得られる評価系が求められている。一般的にIn vitroの肝毒性評価は、ヒト肝細胞癌由来細胞株HepG2やヒト初代肝細胞を用いて行われている。特に、初代培養肝細胞は、生体の肝臓組織に近いと考えられるため、肝毒性評価に有用な系である。しかし、毒性評価の産業化を考えた場合には、供給源の確保と代謝活性に関係するSNP(一塩基遺伝子多型)などの違いによる肝機能の個人差の課題がある。一方で、HepG2は培養株であり、供給に関する問題はないものの、不活化された肝がん細胞であり、生物学的特性も生体内の肝臓とは異なると推測される。
より供給しやすく、かつヒトの肝細胞に近い細胞として、フェニックスバイオ社が提供するPXB cellがある。PXB cellは、ヒト胎児の肝臓組織を免疫不全マウスに移植し、70〜80%の割合でマウスの肝臓をヒトの肝臓組織に置換したマウスから単離された初代ヒト肝細胞である。このマウスを継代することにより、理屈的には無限に初代ヒト肝細胞を供給できる。このPXB cellは、単層培養で肝毒性評価などに利用可能であるが、胎児由来のため、肝機能などが成人の肝機能と異なることが課題として推測される。
また、従来の単層培養法で培養した初代培養肝細胞は、代謝機能をはじめとする肝臓が有する各機能の長期維持が困難であった。さらに、単層培養した初代培養肝細胞は、毒性検出のためには高濃度の化合物曝露が必要であったり、反対に代謝活性化による毒性検出が不十分な場合もあり、必ずしも生体の反応を反映できていないという問題点もあった。
非特許文献1には、初代ヒト肝細胞を単層培養する際に、間葉系幹細胞と混合して培養することによって、初代ヒト肝細胞のアルブミン産生量が増大することが報告されている。アルブミン産生量は肝臓機能の指標であり、初代ヒト肝細胞を間葉系幹細胞と共培養することによって肝臓機能が向上することが期待される。
単層培養された肝細胞よりも生体内の肝臓により近い機能を備える3次元肝臓組織の開発が試みられている。例えば特許文献1には、肝細胞、内皮細胞、及び間葉系幹細胞を、生分解性の足場材料に播種しその足場材料内で擬微小重力環境下にて共培養することによる3次元肝臓組織の作製方法が開示されている。しかし、足場材料を用いることによる三次元組織の作成方法では、一般的に培養系内における空間的領域を足場材料自体が占有してしまうことから、十分な密度を持ち形態強度の高い組織を形成することが困難であった。
足場を必要としない3次元組織の構築方法としてスフェロイド培養方法がある。初代培養肝細胞やHepG2等から形成されたスフェロイドは、単層培養物よりも肝機能が維持されており、このようなスフェロイドを使用した肝毒性評価が広く行われている。しかし、スフェロイドの大きさを揃えることが困難であり、肝機能の再現性の確保が難しいことや、肝細胞のみを培養するために、間質との相互作用が欠如していることなど、幾つか問題点もある。
iPS細胞由来の肝芽細胞などを用いたスフェロイド培養も近年盛んに研究されている。iPS由来の肝芽細胞、血管内皮細胞、間葉系肝細胞などを共培養行うことで肝機能を維持した肝臓組織構造体の作成が可能である。しかしながら、iPS細胞から肝臓組織への分化誘導効率が低いこと、遺伝子変異導入に起因するがん化してしまう課題もある。
非特許文献2には、いわゆるLbL(Layer by Layer)法によってHepG2の表面をフィブロネクチンとゼラチンで交互にコーティングし、得られた細胞を積層して形成させた細胞構造体では、肝臓で発現している特徴的なタンパク質のうちアルブミンやCYP(シトクロムP450)の発現量が、従来の単層培養したHepG2よりも増大することが報告されている。さらに当該文献では、LbL法により得られたHepG2構造体は、一ヶ月近くもアルブミンの産生能が維持されたことも報告されている。
特開2017−085945号公報
Fitzpartrick et al.,Cell Transplantation,2015,Vol.24,p.73−83. Matsuzawa et al.,JOURNAL OF BIOMEDICAL MATERIALS RESEARCH A,2015,Vol.103A(4),p.1554−1564. Nishiguchi et al., Macromol Bioscience,2015,vol.15(3),p.312-317.
本発明は、充分な厚みを備えており、アルブミン産生能の高い立体的肝臓組織構造体及びその製造方法、並びに当該立体的肝臓組織構造体を用いて被検化合物の肝毒性を評価する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決せんと鋭意研究を重ねたところ、予め、カチオン性緩衝液中で、少なくとも肝細胞を含む細胞と強電解質高分子と細胞外マトリックス成分とを混合して混合物を調製し、この混合物中の細胞をその自重方向に層状に積層して3次元構造を形成することで、迅速かつ簡便に、より厚い立体的肝臓組織構造体を製造できることを見出した。さらに、構築された立体的肝臓組織構造体は、アルブミン産生能力が単層培養と比較して高いことを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明に係る立体的肝臓組織構造体の製造方法、立体的肝臓組織構造体、及び化合物の肝毒性評価方法は、下記[1]〜[20]である。
[1] 少なくとも肝細胞を含み、2以上の細胞層が厚み方向に積層されている立体的肝臓組織構造体の製造方法であって、
構造体を構成する全細胞の40%以上が肝細胞であり、かつ厚みが150μm以上である立体的肝臓組織構造体を製造することを特徴とする、立体的肝臓組織構造体の製造方法。
[2] (a)カチオン性緩衝液中で、少なくとも肝細胞を含む細胞と強電解質高分子と細胞外マトリックス成分とを混合して混合物を得る工程と、
(b)前記工程(a)により得られた混合物を、細胞培養容器中に播種する工程と、
(c)前記工程(b)の後、前記細胞培養容器中の細胞混合物から液体成分を除去し、当該細胞培養容器中に、少なくとも肝細胞を含む細胞が多層に積層された細胞構造体を立体的肝臓組織構造体として得る工程と、
を含むことを特徴とする、前記[1]の立体的肝臓組織構造体の製造方法。
[3] 前記強電解質高分子が、ヘパリン、グリコサミノグリカン、デキストラン硫酸、ラムナン硫酸、フコイダン、カラギナン、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及びポリアクリル酸からなる群から選択される1種以上である、前記[2]の立体的肝臓組織構造体の製造方法。
[4] 前記細胞外マトリックス成分が、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、エラスチン、テネイシン、エンタクチン、フィブリリン、及びプロテオグリカンからなる群から選択される1種以上である、前記[2]又は[3]の立体的肝臓組織構造体の製造方法。
[5] 前記カチオン性緩衝液がトリス−塩酸緩衝液、トリス−マレイン酸緩衝液、ビス−トリス−緩衝液、又はHEPESである、前記[2]〜[4]のいずれかの立体的肝臓組織構造体の製造方法。
[6] 前記肝細胞が、非がん性細胞である、前記[1]〜[5]のいずれかの立体的肝臓組織構造体の製造方法。
[7] 得られた立体的肝臓組織構造体の厚みが500μm以下である、前記[1]〜[6]のいずれかの立体的肝臓組織構造体の製造方法。
[8] 前記工程(a)における前記細胞が、更に、間葉系幹細胞を含む、前記[1]〜[7]のいずれかの立体的肝臓組織構造体の製造方法。
[9] 前記工程(a)における前記細胞が、更に、間質を構成する細胞を含む、前記[1]〜[8]のいずれかの立体的肝臓組織構造体の製造方法。
[10] 前記工程(a)における前記細胞が、前記間質を構成する細胞として、更に、血管内皮細胞及びリンパ管内皮細胞からなる群より選択される1種以上を含む、前記[9]の立体的肝臓組織構造体の製造方法。
[11] 少なくとも肝細胞を含み、2以上の細胞層が厚み方向に積層されており、厚みが150〜500μmである細胞構造体であることを特徴とする、立体的肝臓組織構造体。
[12] 前記立体的肝臓組織構造体を構成する全細胞の40%以上が肝細胞である、前記[11]の立体的肝臓組織構造体。
[13] 前記立体的肝臓組織構造体を構成する細胞として、更に、間葉系幹細胞を含む、前記[11]又は[12]の立体的肝臓組織構造体。
[14] 前記細胞構造体を構成する細胞として、更に、間質を構成する細胞を含む、前記[11]〜[13]のいずれかの立体的肝臓組織構造体。
[15] 前記立体的肝臓組織構造体が、前記間質を構成する細胞として、更に、血管内皮細胞及びリンパ管内皮細胞からなる群より選択される1種以上を含む、前記[14]の立体的肝臓組織構造体。
[16] 前記立体的肝臓組織構造体を構成する全細胞数が、1.2×10個以上である、前記[11]〜[15]のいずれかの立体的肝臓組織構造体。
[17] 前記立体的肝臓組織構造体のアルブミン産生量が、培養9日目の時点で500ng/mL以上である、前記[11]〜[16]のいずれかの立体的肝臓組織構造体。
[18] 前記立体的肝臓組織構造体のアルブミン産生量が、構造体構築後から培養11日目の時点で500ng/mL以上ある、前記[11]〜[17]のいずれかの立体的肝臓組織構造体。
[19] 前記[11]〜[18]のいずれかの立体的肝臓組織構造体を、被検化合物を接触させた状態で培養する培養工程と、
前記培養工程後の前記立体的肝臓組織構造体中の肝細胞の生存率又はアルブミン産生能を指標として、前記被検化合物の肝毒性の有無を評価することを特徴とする、化合物の肝毒性評価方法。
[20] 前記立体的肝臓組織構造体に含まれている全肝細胞が、少なくとも1種類以上の薬物代謝酵素の遺伝子型が共通している、前記[19]の化合物の肝毒性評価方法。
本発明によれば、充分な厚みを備えており、アルブミン産生能の高い立体的肝臓組織構造体を提供することができる。また、得られた立体的肝臓組織構造体は、化合物の肝毒性の評価に用いることができる。
図1は、実施例1において構築した細胞構造体の、培養15日目のパラフィン包埋切片のHE染色像である。 図2は、実施例1において構築した細胞構造体の、培養11日目の透過光像である。 図3は、実施例1において構築した細胞構造体の、培養開始から1、3、5、7、9、11、13、及び15日目に回収した各培養上清中のアルブミン量(ng/mL)を経時的に測定した結果を示した図である。
<立体的肝臓組織構造体>
本発明に係る立体的肝臓組織構造体は、少なくとも肝細胞を含み、2以上の細胞層が厚み方向に積層されていることを特徴とする。なお、本発明及び本明細書において、「立体的肝臓組織構造体」とは、少なくとも肝細胞を含む立体的な細胞集合体を意味し、「立体的肝臓組織構造体の厚み」とは、当該構造体の自重方向の長さを意味する。自重方向とは、重力のかかる方向であり、厚み方向ともいう。
本発明に係る立体的肝臓組織構造体を構成する肝細胞としては、動物の肝臓から採取された初代肝細胞であってもよく、初代肝細胞を培養した細胞であってもよく、初代肝細胞を株化した培養細胞株であってもよく、幹細胞から人工的に分化させた肝芽細胞であってもよい。初代肝細胞としては、PXB Cellの様な初代ヒト肝細胞が挙げられる。培養細胞株としては、HepG2の様な不活化された肝がん細胞由来の細胞株が挙げられる。肝芽細胞へ分化させる幹細胞としては、胚性幹細胞(ES細胞)、誘導多能性幹細胞細胞(iPS細胞)、間葉系幹細胞等が挙げられる。本発明に係る立体的肝臓組織構造体に含まれる肝細胞としては、初代肝細胞や肝芽細胞のように、非がん性細胞であることが好ましく、扱いの簡便性からPXB Cellがより好ましい。本発明に係る立体的肝臓組織構造体は、充分な厚みを有しており、このため、構造体当たりに含まる肝細胞の量が多く、そのため、充分なアルブミン産生能を備えることが期待できる。なお、非がん性細胞とは、がん化していない細胞、すなわち、無限の増殖能を獲得していない細胞を意味する。
本発明に係る立体的肝臓組織構造体に含まれる肝細胞は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。例えば、本発明に係る立体的肝臓組織構造体は、肝機能に関与するタンパク質の遺伝子型が異なる複数の肝細胞を含有していてもよい。また、逆に、本発明に係る立体的肝臓組織構造体に含まれている全ての肝細胞が、肝機能に関与するタンパク質の遺伝子型が同一であってもよい。肝機能に関与するタンパク質としては、例えば、薬物代謝酵素が挙げられる。
本発明に係る立体的肝臓組織構造体を構成する肝細胞は、いずれの動物の肝臓に由来する細胞であってもよい。例えば、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウシ、マウス、ラット等の動物に由来する肝細胞を用いることができる。
本発明に係る立体的肝臓組織構造体は、肝細胞のみから構築されていてもよく、肝細胞以外の細胞を含んでいてもよい。肝細胞以外の細胞を含む場合、立体的肝臓組織構造体を構成する全細胞に対する肝細胞の存在比(細胞数比、割合(%))は特に限定されるものではないが、安定的に組織を形成し、かつ形成された立体的肝臓組織構造体が肝機能を発揮する観点から、立体的肝臓組織構造体を構成する全細胞の少なくとも40%が肝細胞であることが好ましく、50%以上が肝細胞であることがより好ましく、75%以上が肝細胞であることがさらに好ましく、80%以上が肝細胞であることがよりさらに好ましい。
本発明に係る立体的肝臓組織構造体に含まれる肝細胞以外の細胞は、特に限定されるものではない。肝細胞以外の細胞としては、成熟した体細胞であってもよく、幹細胞のような未分化な細胞であってもよい。体細胞としては、例えば、神経細胞、樹状細胞、免疫細胞、血管内皮細胞、リンパ管内皮細胞、線維芽細胞、上皮細胞、心筋細胞、膵島細胞、平滑筋細胞、骨細胞、肺胞上皮細胞、脾臓細胞等が挙げられる。幹細胞としては、ES細胞、iPS細胞、間葉系幹細胞等が挙げられる。また、立体的肝臓組織構造体に含まれる肝細胞以外の細胞は、正常細胞であってもよく、がん細胞のようにいずれかの細胞機能が亢進又は抑制されている細胞であってもよい。なお、がん細胞とは、体細胞から派生して無限の増殖能を獲得した細胞である。
本発明に係る立体的肝臓組織構造体に含まれる細胞(肝細胞を含む。)は、動物から採取された細胞であってもよく、動物から採取された細胞を培養した細胞であってもよく、動物から採取された細胞に各種処理を施した細胞であってもよく、培養細胞株であってもよい。動物から採取された細胞の場合、採取部位は特に限定されず、骨、筋肉、内臓、神経、脳、骨、皮膚、血液などに由来する体細胞であってもよく、生殖細胞であってもよく、胚性幹細胞(ES細胞)であってもよい。また、本発明に係る立体的肝臓組織構造体を構成する細胞が由来する生物種は特に限定されるものではなく、例えば、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウシ、マウス、ラット等の動物に由来する細胞を用いることができる。動物から採取された細胞を培養した細胞としては、初代培養細胞であってもよく、継代培養細胞であってもよい。また、各種処理を施した細胞としては、iPS細胞や、分化誘導後の細胞が挙げられる。また、本発明に係る立体的肝臓組織構造体は、同種の生物種由来の細胞のみから構成されていてもよく、複数種類の生物種由来の細胞により構成されていてもよい。
本発明に係る立体的肝臓組織構造体に含まれる肝細胞以外の細胞は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。形成された立体的肝臓組織構造体のアルブミン産生能がより長期間安定して得られる点から、本発明に係る立体的肝臓組織構造体は、肝細胞と間葉系幹細胞を含むことが好ましい。立体的肝臓組織構造体が間葉系幹細胞を含む場合、間葉系幹細胞の共存により充分な効果が得られるため、立体的肝臓組織構造体を構成する全細胞に占める間葉系幹細胞の存在比は、10〜60%が好ましく、10〜40%がより好ましく、15〜30%がさらに好ましい。
本発明に係る立体的肝臓組織構造体は、間質を構成する細胞(間質細胞)を含んでいてもよい。間質細胞の存在下で肝細胞から組織構造体を構築することにより、より均質的な構造体を得ることができる。また、間質細胞を共存させて構築した立体的肝臓組織構造体は、アルブミン産生能力をより長期間維持することができる。アルブミン産生能力がより長期間維持できる理由は明らかではないが、間質細胞と共存することにより、立体的肝臓組織構造体中の肝細胞が、動物の体内の肝臓組織の環境に近い状態で存在できるためと推察される。
間質細胞としては、例えば、内皮細胞、繊維芽細胞、神経細胞、樹状細胞、マクロファージ、肥満細胞、上皮細胞、心筋細胞、肝細胞、膵島細胞、組織幹細胞、平滑筋細胞等が挙げられる。本発明に係る立体的肝臓組織構造体に含まれる間質細胞は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
血管網構造やリンパ管網構造は、立体的肝臓組織構造体の増殖及び生体に類似した機能の発現に重要であると考えられる。このため、本発明に係る立体的肝臓組織構造体は、脈管網構造を備えるものが好ましい。すなわち、本発明に係る立体的肝臓組織構造体としては、脈管を形成していない細胞の積層体の内部に、リンパ管及び/又は血管等の脈管網構造が三次元的に構築され、より生体内に近い組織を構築しているものが好ましい。脈管網構造は、立体的肝臓組織構造体の内部にのみ形成されていてもよく、少なくともその一部が立体的肝臓組織構造体の表面又は底面に露出されるように形成されていてもよい。なお、本発明及び本願明細書において、「脈管網構造」とは、生体組織における血管網やリンパ管網のような、網状の構造を指す。
脈管網構造は、間質細胞として脈管を構成する内皮細胞を含むことにより形成させることができる。本発明に係る立体的肝臓組織構造体に含まれる内皮細胞としては、血管内皮細胞であってもよく、リンパ管内皮細胞であってもよい。また、血管内皮細胞とリンパ管内皮細胞との両方を含んでいてもよい。
本発明に係る立体的肝臓組織構造体中の内皮細胞の数は、脈管網構造が形成されるのに充分な数であれば特に限定されるものではなく、立体的肝臓組織構造体の大きさや、内皮細胞や内皮細胞以外の細胞の細胞種等を考慮して適宜決定することができる。例えば、本発明に係る立体的肝臓組織構造体を構成する全細胞に対する内皮細胞の存在比(細胞数比)を0.1%以上に設定することによって、脈管網構造が形成された立体的肝臓組織構造体を調製できる。立体的肝臓組織構造体を構成する全細胞に占める内皮細胞の存在比は、10.0%以上であることが好ましく、10〜60%であることがより好ましく、30〜60%であることがさらに好ましい。
本発明に係る立体的肝臓組織構造体が脈管網構造を備える場合、肝細胞と脈管を構成する内皮細胞以外の他の細胞を含有していてもよい。当該他の細胞としては、肝細胞の機能や内皮細胞による脈管網形成を阻害しないものであれば特に限定されるものではない。例えば、当該他の細胞としては、内皮細胞が本来の機能及び形状を保持する脈管網を形成しやすいことから、生体内において脈管の周辺組織を構成する細胞であることが好ましい。さらに、生体内の肝臓組織とより近似させられることから、内皮細胞以外の細胞として少なくとも繊維芽細胞を含む立体的肝臓組織構造体がより好ましく、血管内皮細胞と繊維芽細胞とを含む立体的肝臓組織構造体、リンパ管内皮細胞と繊維芽細胞とを含む立体的肝臓組織構造体、又は血管内皮細胞とリンパ管内皮細胞と繊維芽細胞とを含む立体的肝臓組織構造体がさらに好ましい。なお、立体的肝臓組織構造体に含まれる内皮細胞以外の細胞としては、内皮細胞と同種の生物種由来の細胞であってもよく、異種の生物種由来の細胞であってもよい。また、立体的肝臓組織構造体に含まれる内皮細胞以外の細胞は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
本発明に係る立体的肝臓組織構造体は、肝細胞が構造体内部全体に散在している構造体であってもよく、肝細胞が特定の細胞層にのみ存在している構造体であってもよい。当該立体的肝臓組織構造体において、肝細胞を含む細胞層(肝細胞層)は、1層のみであってもよく、2層以上であってもよい。
本発明に係る立体的肝臓組織構造体の大きさや形状は、特に限定されるものではない。より生体内の組織に形成された脈管と近い状態の脈管網構造が形成可能であり、より精度の高い評価が可能であることから、当該立体的肝臓組織構造体の厚さは、5μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましく、150μm以上がよりさらに好ましい。当該立体的肝臓組織構造体の厚さとしては、500μm以下が好ましく、400μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましい。本発明に係る立体的肝臓組織構造体の細胞層の数としては、2〜60層程度が好ましく、5〜60層程度がより好ましく、10〜60層程度がさらに好ましい。
なお、立体的肝臓組織構造体を構成する細胞層数は、三次元構造を構成する細胞の総数を、1層当たりの細胞数(1層を構成するために必要な細胞数)で除することにより測定される。1層当たりの細胞数は、立体的肝臓組織構造体を構成させる際に使用する細胞培養容器に、予め細胞をコンフルエントになるように平面的に培養して調べることができる。具体的には、ある細胞培養容器に形成された立体的肝臓組織構造体の細胞層数は、当該立体的肝臓組織構造体を構成する全細胞数を計測し、当該細胞培養容器の1層当たりの細胞数で除することにより算出できる。
本発明に係る立体的肝臓組織構造体を構成する細胞数は、特に限定されるものではなく、構築する立体的肝臓組織構造体の厚み、形状、構築に使用する細胞培養容器の大きさ等を考慮して適宜決定される。例えば、本発明に係る立体的肝臓組織構造体を構成する全細胞数は、1.0×10個以上とすることができ、1.2×10個以上が好ましく、1.0×10個以上がより好ましく、1.0×10個以上がさらに好ましい。本発明に係る立体的肝臓組織構造体を構成する全細胞数の上限値としては、特に限定されるものではなく、例えば、1.0×1012個とすることができる。
一般的に、本発明に係る立体的肝臓組織構造体は、細胞培養容器中に構築される。当該細胞培養容器としては、立体的肝臓組織構造体の構築が可能であり、かつ構築された立体的肝臓組織構造体の培養が可能な容器であれば特に限定されるものではない。当該細胞培養容器としては、具体的には、ディッシュ、セルカルチャーインサート(例えば、Transwell(登録商標)インサート、Netwell(登録商標)インサート、Falcon(登録商標)セルカルチャーインサート、Millicell(登録商標)セルカルチャーインサート等)、チューブ、フラスコ、ボトル、プレート等が挙げられる。本発明に係る立体的肝臓組織構造体の構築においては、当該立体的肝臓組織構造体を用いた評価をより適正に行うことができるため、ディッシュ又は各種セルカルチャーインサートが好ましい。
本発明に係る立体的肝臓組織構造体は、肝細胞を含む多層の細胞層からなる構造体であればよく、その構築方法は特に限定されるものではない。例えば、一層ずつ構築して順次積層させて構築する方法であってもよく、2層以上の細胞層を一度に構築する方法であってもよく、両構築方法を適宜組み合わせて多層の細胞層を構築する方法であってもよい。また、本発明に係る立体的肝臓組織構造体は、各細胞層を構成する細胞種が層ごとに異なる多層構造体であってもよく、各細胞層を構成する細胞種が、構造体の全層で共通するものであってもよい。例えば、細胞種毎に層を形成し、この細胞層を順次積層させることによって構築する方法であってもよく、複数種類の細胞を混合した細胞混合液を予め調製し、この細胞混合液から多層構造の立体的肝臓組織構造体を一度に構築する方法であってもよい。
一層ずつ構築して順次積層させて構築する方法としては、例えば、特許第4919464号公報に記載されている方法、すなわち、細胞層を形成する工程と、形成された細胞層をECM(細胞外マトリックス)の成分を含有する溶液に接触させる工程と、を交互に繰り返すことにより、連続的に細胞層を積層する方法が挙げられる。例えば、当該方法を行うに際し、予め、立体的肝臓組織構造体を構成する全ての細胞を混合した細胞混合物を調製しておき、この細胞混合物によって各細胞層を形成することによって、構造体全体に脈管網構造が形成されており、かつ肝細胞が構造体全体に散在している立体的肝臓組織構造体が構築できる。また、各細胞層を、細胞種ごとに形成することによって、内皮細胞からなる層にのみ脈管網構造が形成されており、肝細胞が特定の細胞層にのみ存在している立体的肝臓組織構造体が構築できる。
また、例えば、上記方法を行うに際し、予め、間質細胞と間葉系幹細胞を含む層を構成する全ての細胞を混合した細胞混合物と、肝細胞を含む層を構成する全ての細胞を混合した細胞混合物とを、それぞれ別個に調製しておき、まず、間質細胞等を含む細胞混合物を順次積層することによって単層又は多層から構成される細胞層を構成した後、当該細胞層の上に半透膜を載せ、この半透膜の上に肝細胞を含む細胞混合物を積層して細胞層を構成することもできる。これにより、間質細胞を含む細胞層全体に脈管網構造が形成されており、かつ肝細胞が半透膜で間質細胞とは仕切られた層にのみ存在している細胞構造体が構築できる。
2層以上の細胞層を一度に構築する方法としては、例えば、特許第5850419号公報に記載されている方法が挙げられる。当該方法は、予め細胞の表面全体をインテグリンが結合するアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)配列を含む高分子と前記RGD配列を含む高分子と相互作用をする高分子によって被覆しておき、この接着膜で被覆された被覆細胞を細胞培養容器に収容した後、遠心処理等によって被覆細胞同士を集積させることにより、多層の細胞層からなる立体的肝臓組織構造体を構築する方法である。例えば、当該方法を行うに際し、予め、立体的肝臓組織構造体を構成する全ての細胞を混合した細胞混合物を調製しておき、この細胞混合物に接着性成分を添加することによって調製された被覆細胞を用いる。これにより、1度の遠心処理によって、構造体全体に肝細胞が散在する立体的肝臓組織構造体が構築できる。また、例えば、間葉系幹細胞を被覆した被覆細胞と、内皮細胞を被覆した被覆細胞と、繊維芽細胞を被覆した被覆細胞と、動物から採取された肝臓組織に含まれている細胞群を被覆した被覆細胞とを、それぞれ別個に調製し、繊維芽細胞の被覆細胞からなる多層を形成させた後、その上に内皮細胞の被覆細胞からなる1層を積層させ、さらにその上に繊維芽細胞の被覆細胞からなる多層を積層させ、さらにその上にと間葉系幹細胞を被覆した被覆細胞からなる1層を積層させ、さらにその上に肝細胞を含む細胞の被覆細胞からなる1層を積層させる。これにより、厚みのある繊維芽細胞層に挟まれた脈管網構造を備え、かつ天面に肝細胞を含む層を間葉系幹細胞と接触した状態で備える立体的肝臓組織構造体が構築できる。
また、例えば、内皮細胞を被覆した被覆細胞と、繊維芽細胞を被覆した被覆細胞と、間葉系幹細胞を被覆した被覆細胞と、肝細胞を被覆した被覆細胞とを、それぞれ別個に調製し、繊維芽細胞の被覆細胞から多層を形成させた後、その上に内皮細胞の被覆細胞から形成される1層を積層させ、さらにその上に繊維芽細胞の被覆細胞から形成される多層を積層させ、さらにその上に間葉系幹細胞の被覆細胞から形成される1層を積層させ、さらにその上に半透膜を置き、この半透膜の上に肝細胞を含む細胞の被覆細胞から形成される1層を積層させることもできる。これにより、厚みのある繊維芽細胞層に挟まれた脈管網構造を備え、かつ繊維芽細胞層や間葉系幹細胞層と半透膜で仕切られた状態で肝細胞を含む層を備える立体的肝臓組織構造体が構築できる。
本発明に係る立体的肝臓組織構造体は、下記(a)〜(c)の工程を有する方法により構築することもできる。当該方法により、簡便かつ安定的に立体的肝臓組織構造体を構築することができる。
(a)カチオン性緩衝液中で、細胞と細胞外マトリックス成分とを混合して混合物を得る工程と、
(b)前記工程(a)により得られた混合物を、細胞培養容器中に播種する工程と、
(c)前記工程(b)の後、前記細胞培養容器中の細胞混合物から液体成分を除去し、当該細胞培養容器中に細胞が多層に積層された細胞構造体を得る工程。
工程(a)においては、細胞を、カチオン性物質を含む緩衝液(カチオン性緩衝液)及び細胞外マトリックス成分と混合し、この細胞混合物から細胞集合体を形成することにより、内部に大きな空隙が少ない立体的細胞組織を得ることができる。また、得られた立体的細胞組織は、比較的安定であるため、少なくとも数日間の培養が可能であり、かつ培地交換時にも組織が崩壊し難い。また、本発明においては、工程(b)において、細胞培養容器内に播種した細胞混合物を当該細胞培養容器内に沈降させることを含み得る。細胞混合物の沈降は、遠心分離等によって積極的に細胞を沈降させてもよく、自然沈降させてもよい。
工程(a)において、細胞をさらに強電解質高分子と混合することが好ましい。細胞をカチオン性物質、強電解質高分子及び細胞外マトリックス成分と混合することにより、工程(b)において遠心分離等の細胞を積極的に集合させる処理を要することなく、自然沈降させた場合であっても、空隙が少なく厚みのある立体的細胞組織が得られる。
前記カチオン性緩衝液としては、例えば、トリス−塩酸緩衝液、トリス−マレイン酸緩衝液、ビス−トリス−緩衝液、又はHEPES等が挙げられる。当該カチオン性緩衝液中のカチオン性物質(例えば、トリス−塩酸緩衝液におけるトリス)の濃度及びpHは、細胞の生育及び細胞構造体の構築に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。例えば、カチオン性緩衝液中のカチオン性物質の濃度は、10〜100mMとすることができ、40〜70mMであることが好ましく、50mMであることがより好ましい。また、当該カチオン性緩衝液のpHは、6.0〜8.0とすることができ、6.8〜7.8であることが好ましく、7.2〜7.6であることがより好ましい。
前記強電解質高分子としては、例えば、ヘパリンや、コンドロイチン硫酸(例えば、コンドロイチン4−硫酸、コンドロイチン6−硫酸)、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸等のグリコサミノグリカン;デキストラン硫酸や、ラムナン硫酸、フコイダン、カラギナン、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及びポリアクリル酸、又はこれらの誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。工程(a)において調製される混合物には、強電解質高分子を1種類のみ混合させてもよく、2種類以上を組み合わせて混合させてもよい。本発明に係る立体的肝臓組織構造体の構築においては、高分子電解質はグリコサミノグリカンであることが好ましい。また、ヘパリン、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、及びデルマタン硫酸のうち少なくとも1つを用いることがより好ましい。本発明で用いられる強電解質高分子はヘパリンであることがさらに好ましい。前記カチオン性緩衝液に混合する強電解質高分子の量は、細胞の生育及び細胞構造体の構築に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。例えば、カチオン性緩衝液中の強電解質高分子の濃度は、0mg/mL超(0mg/mLより高く)1.0mg/mL未満とすることができ、0.025〜0.1mg/mLであることが好ましく、0.05〜0.1mg/mLであることがより好ましい。また、本発明においては、前記強電解質を混合せずに前記混合物を調整し、細胞構造体の構築を行うこともできる。
前記細胞外マトリックス成分としては、例えば、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、エラスチン、テネイシン、エンタクチン、フィブリリン、プロテオグリカン、又はこれらの改変体若しくはバリアント等が挙げられる。プロテオグリカンには、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、ケラタン硫酸プロテオグリカン、デルマタン硫酸プロテオグリカン等が挙げられる。工程(a)において調製される混合物には、細胞外マトリックス成分を1種類のみ混合させてもよく、2種類以上を組み合わせて混合させてもよい。本発明に係る立体的肝臓組織構造体の構築においては、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチンを用いることが好ましく、コラーゲンを用いることがより好ましい。細胞の生育及び細胞構造体の形成に悪影響を及ぼさない限り、上述の細胞外マトリックス成分の改変体及びバリアントを用いてもよい。前記カチオン性緩衝液に混合する細胞外マトリックス成分の量は、細胞の生育及び細胞構造体の構築に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。例えば、カチオン性緩衝液中の細胞外マトリックス成分の濃度は、0mg/mL超(0mg/mLより高く)1.0mg/mL未満とすることができ、0.025〜0.1mg/mLであることが好ましく、0.05〜0.1mg/mLであることがより好ましい。
前記カチオン性緩衝液に混合する強電解質高分子と細胞外マトリックス成分の配合比は、1:2〜2:1である。本発明に係る立体的肝臓組織構造体の構築においては、強電解質高分子と細胞外マトリックス成分の配合比が、1:1.5〜1.5:1であることが好ましく、1:1であることがより好ましい。
工程(a)〜(c)を繰り返す、具体的には、工程(c)で得られた細胞構造体の上に、工程(b)として、工程(a)で調製した混合物を播種した後、工程(c)を行うことを繰り返すことにより、充分な厚みの細胞構造体を構築することができる。工程(c)で得られた細胞構造体の上に新たに播種する混合物の細胞組成は、既に構築されている細胞構造体を構成する細胞組成と同じであってもよく、異なっていてもよい。
工程(b)において播種される細胞数を調節することにより、工程(c)において積層される細胞層の厚みを調整できる。工程(b)において播種される細胞数が多いほど、工程(c)において積層される細胞層の数が多くなる。
例えば、まず、工程(a)において細胞としては血管内皮細胞のみを含む混合物を調製し、工程(b)及び(c)を行って細胞培養容器に5層の血管内皮細胞層からなる細胞構造体を得る。次いで、工程(a)として細胞として肝細胞のみを含む混合物を調製し、工程(b)及び(c)を行って細胞培養容器内の血管内皮細胞層の上に5層の肝細胞層を積層させる。さらに、工程(a)として細胞として間葉系幹細胞のみを含む混合物を調製し、工程(b)及び(c)を行って細胞培養容器内の肝細胞層の上に、2層の間葉系幹細胞を積層させる。これにより、血管内皮細胞層5層−肝細胞層5層−間葉系幹細胞層2層と細胞種毎に順番に層状に積層された細胞構造体が構築できる。
また、工程(a)において、血管内皮細胞層5層分の血管内皮細胞と間葉系幹細胞層2層分の間葉系幹細胞を全て混合した混合物を調製し、工程(b)及び(c)を行い、形成された多層の構造体の上に、同様にして調製した肝細胞層5層分の肝細胞を積層することによって、12層分の厚みを有し、血管網構造が構造体内部に散在している構造体の上に肝細胞層が積層された細胞構造体が構築できる。さらに、工程(a)において、血管内皮細胞層5層分の血管内皮細胞と間葉系幹細胞層2層分の間葉系幹細胞と肝細胞層5層分の肝細胞とを全て混合した混合物を調製し、工程(b)及び(c)を行うことにより、12層分の厚みを有し、肝細胞と間葉系幹細胞と血管網構造の両方が構造体内部にそれぞれ独立して散在している細胞構造体が構築できる。
工程(a)〜(c)を繰り返す場合に、工程(c)の後、工程(b)を行う前に、得られた細胞構造体を培養してもよい。培養に用いる培養培地の組成、培養温度、培養時間、培養時の大気組成等の培養条件は、当該細胞構造体を構成する細胞の培養に適した条件で行う。培養培地としては、例えば、D−MEM、E−MEM、MEMα、RPMI−1640、Ham’s F−12等が挙げられる。
工程(a)の後に、(a’−1)得られた混合物から液体部分を除去し、細胞集合体を得る工程、及び(a’−2)細胞集合体を溶液に懸濁する工程を行い、工程(b)へ進んでもよい。上述の工程(a)〜(c)を実施することで所望の組織体を得ることができるが、工程(a)の後に(a’−1)及び(a’−2)を実施し、工程(b)を実施することで、より均質な組織体を得ることができる。
また、工程(a)の後に、前記工程(b)に代えて、下記工程(b’−1)及び(b’−2)を行ってもよい。本実施形態及び本願明細書において、「細胞粘稠体」とは、非特許文献3に記載されるようなゲル様の細胞集合体を指す。
(b’−1)工程(a)で得られた混合物を細胞培養容器内に播種した後、混合物から液体成分を除去し、細胞粘稠体を得る工程と、
(b’−2)細胞培養容器内に細胞粘稠体を溶媒に懸濁する工程。
細胞懸濁液を調製するための溶媒としては、細胞に対する毒性がなく、増殖性や機能を損なわない溶媒であれば特に限定されず、水、緩衝液、細胞の培養培地等を用いることができる。当該緩衝液としては、例えば、リン酸生理食塩水(PBS)、HEPES、Hanks緩衝液等が挙げられる。培養培地としては、D−MEM、E−MEM、MEMα、RPMI−1640、Ham’s F−12等が挙げられる。
前記工程(c)に代えて、下記工程(c’)を行ってもよい。
(c’)播種した混合物から液体成分を除去し、基材上に細胞の層を形成する工程。
工程(c)及び(c’)における液体成分の除去処理の方法は、細胞の生育及び細胞構造体の構築に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されず、液体成分と固体成分の懸濁物から液体成分を除去する方法として当業者に公知の手法により適宜行うことができる。当該手法としては、例えば、遠心分離処理、磁性分離処理、又はろ過処理等が挙げられる。例えば、細胞培養容器としてセルカルチャーインサートを用いた場合には、混合物を播種したセルカルチャーインサートを、10℃、400×gで1分間の遠心分離処理に供することによって、液体成分を除去することができる。
本発明に係る立体的肝臓組織構造体は、肝細胞が生体内の肝臓組織と同様に積層されているため、単層培養された肝細胞層よりも肝機能に優れている。特に、前記工程(a)〜(c)を含む製造方法により製造された立体的肝臓組織構造体は、厚みのある構造体とした場合でも、細胞層間に空隙が少なく、長期間安定して培養可能な構造体である。このため、本発明に係る立体的肝臓組織構造体は、スフェロイド等の他の三次元組織の作成方法により構築された組織構造体よりも、肝機能に優れている。特に、間葉系幹細胞を含む立体的肝臓組織構造体は、アルブミン産生をはじめとする肝機能がより長期間維持可能である。本発明に係る立体的肝臓組織構造体のアルブミン産生量は、細胞構造体構築後から培養を開始して培養9日目の時点で、100ng/mL以上であることが好ましく、250ng/mL以上であることがより好ましく、500ng/mL以上であることがさらに好ましい。また、本発明に係る立体的肝臓組織構造体のアルブミン産生量は、細胞構造体構築後から培養を開始して培養11日目の時点で、100ng/mL以上であることが好ましく、250ng/mL以上であることがより好ましく、500ng/mL以上であることがさらに好ましい。なお、本発明に係る立体的肝臓組織構造体のアルブミン産生量は、例えば、当該立体的肝臓組織構造体の培養培地の上清中のアルブミン量を、ELISA法等の公知の手法により測定することにより求められる。
<化合物の肝毒性評価方法>
本発明に係る立体的肝臓組織構造体は、良好な肝機能が比較的長期間維持可能であるため、化合物の肝毒性の有無や強度を評価するツールとして好適である。本発明に係る立体的肝臓組織構造体を用いることにより、化合物の肝毒性についてより信頼性の高い評価をすることができる。また、この立体的肝臓組織構造体を用いた化合物の肝毒性評価方法を利用して、肝毒性を有する化合物のスクリーニングを行うこともできる。
本発明に係る化合物の肝毒性評価方法(以下、「本発明に係る評価方法」ということがある。)は、具体的には、前記立体的肝臓組織構造体を、被検化合物を接触させた状態で培養する培養工程と、前記培養工程後の前記立体的肝臓組織構造体中の肝細胞の生存率又はアルブミン産生能を指標として、前記被検化合物の肝毒性の有無を評価する。立体的肝臓組織構造体と被検化合物の接触は、立体的肝臓組織構造体の培養培地に被検化合物を添加することにより行うことができる。
本発明に係る評価方法において評価される対象の被検化合物は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。また、2種類以上を評価する際には、被検化合物ごとに立体的肝臓組織構造体と接触させて評価してもよく、複数の被検化合物を同時に立体的肝臓組織構造体と接触させて評価してもよい。また、2種以上の化合物を併用投与した場合の肝毒性を評価する際には、併用投与する化合物を同時に立体的肝臓組織構造体と接触させ、当該立体的肝臓組織構造体中の肝細胞の生存率に基づいて肝毒性を評価する。
前記立体的肝臓組織構造体を、被検化合物を含有する培地中で培養する際の培養時間は、特に限定されるものではなく、例えば、24〜96時間とすることができ、48〜96時間であることが好ましく、48〜72時間であることがより好ましい。また、培養環境を著しく変化させない限度において、必要に応じて還流等の流体力学的な付加を与えることもできる。
培養後の立体的肝臓組織構造体中の肝細胞の生存率を指標とした被検化合物の肝毒性の評価は、例えば以下の通りに行うことができる。被検化合物非存在下で培養した場合と比較して、前記立体的肝臓組織構造体中の肝細胞の生細胞数が少ない(生存率が低い)場合に、当該被検化合物は、当該立体的肝臓組織構造体に含まれる肝細胞に対して毒性を有する、すなわち肝毒性があると評価する。被検化合物非存在下の場合と比較して、肝細胞の生存率の低下幅が大きいほど、肝毒性が強いと評価できる。一方で、被検化合物非存在下で培養した場合と比較して、肝細胞の生細胞数が同程度又は有意に多い(生存率が同程度又は高い)場合には、当該被検化合物は、肝毒性がないと評価する。
また、被検化合物非存在下で培養した場合と比較して、前記立体的肝臓組織構造中のアルブミン産生量が少ない(アルブミン産生能が低い)場合に、当該被検化合物は、当該立体的肝臓組織構造体に含まれる肝細胞に対して毒性を有する、すなわち肝毒性があると評価する。被検化合物非存在下の場合と比較して、アルブミン産生量の減少幅が大きいほど、肝毒性が強いと評価できる。一方で、被検化合物非存在下で培養した場合と比較して、アルブミン産生量が同程度又は有意に多い(アルブミン産生能が同程度又は高い)場合には、当該被検化合物は、肝毒性がないと評価する。
肝細胞の生細胞数は、肝細胞の生細胞又はその存在量に相関のあるシグナルを用いて評価することができる。評価時点のがん細胞の生細胞数を測定できればよく、必ずしも生きている状態で測定する必要はない。例えば、肝細胞をその他の細胞と区別するように標識し、当該標識からのシグナルを指標として調べることができる。例えば、肝細胞を蛍光標識した後、細胞の生死判定を行うことにより、細胞構造体中の生きている肝細胞を直接計数することができる。この際、画像解析技術を利用することもできる。細胞の生死判定はトリパンブルー染色やPI(Propidium Iodide)染色等の公知の細胞の生死判定方法により行うことができる。なお、肝細胞の蛍光標識は、例えば、肝細胞の細胞表面に特異的に発現している物質に対する抗体を一次抗体とし、当該一次抗体と特異的に結合する蛍光標識二次抗体を用いる免疫染色法等の公知の手法で行うことができる。細胞の生死判定及び生細胞数の測定は、細胞構造体の状態で行ってもよく、細胞構造体を単細胞レベルに破壊した状態で行ってもよい。例えば、肝細胞と死細胞を標識した後の細胞構造体の立体構造を破壊した後、標識を指標としたFACS(fluorescence activated cell sorting)等により、評価時点において生きていた肝細胞のみを直接計数することもできる。
細胞構造体中の肝細胞を生きている状態で標識し、当該標識からのシグナルを経時的に検出することによって、当該細胞構造体中の肝細胞の生細胞数を経時的に測定することもできる。細胞構造体を構築した後に当該細胞構造体中の肝細胞を標識してもよく、細胞構造体を構築する前に予め肝細胞を標識しておいてもよい。その他、蛍光色素を恒常的に発現させている肝細胞を用いた場合には、細胞構造体を溶解させて得られたライセートの蛍光強度をマイクロプレートリーダー等で測定することによっても、肝細胞の生細胞数を評価することができる。
一般的に物質の肝毒性は、当該物質が肝臓組織中の薬物代謝酵素に対する影響に依存する。このため、本発明に係る評価方法に用いられる立体的肝臓組織構造体に含まれている全肝細胞は、少なくとも1種類以上の薬物代謝酵素の遺伝子型が共通していることが好ましく、全ての薬物代謝酵素の遺伝子型が共通していることがより好ましい。薬物代謝酵素の遺伝子型がホモである立体的肝臓組織構造体を使用することにより、被検化合物の当該薬物代謝酵素に対する影響をより正確に評価することができる。
以下に実施例を示して本発明をより詳細かつ具体的に説明するが、実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
以下の実施例において、特に説明がない限り、コラーゲンとしてコラーゲ ンIを用いた。
[実施例1]
肝細胞をヘパリンとコラーゲンで被覆した後に積層して構築された立体的肝臓組織構造体のアルブミン産生能を調べた。
具体的には、細胞とヘパリン/50mM トリス−塩酸緩衝液(pH7.4)溶液と等量のコラーゲン/50mM トリス−塩酸緩衝液(pH7.4)溶液との混合液に懸濁した。実験を行った細胞の構成を表1に示す。ヒト肝細胞は、フェニックスバイオ社のPXB cellを用い、血管内皮細胞は、ヒト臍帯静脈内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cell:HUVEC)(Lonza社製、製品番号:CC−2517A)を用いた。また、ヒト間葉系幹細胞は、Lonza社から入手したものを(製品型番:PT-2501)、MSCGM(Mesenchymal Stem Cell Growth Medium) BulletKit(登録商標)(製品型番:PT-3001)を用いて培養して用いた。
Figure 0006953894
得られた懸濁液を96well セルカルチャーイ ンサート(Roche Inc、E−Plate Insert 16)内に播種し 、10℃、400×gで1分間、遠心した。これにより、セルカルチャーインサート上に細胞層を形成し、細胞構造体を構築した。次いで、この細胞構造体を、250μLの10%ウシ胎児血清(FBS)含有ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)をセルカルチャーインサートに添加し、COインキュベーター(37℃、5%CO)にて所定期間、合計15日間培養した。細胞構造体構築後の培養期間中、2日おきに培養上清を全量回収し、当該培養上清中のアルブミン量(ng/mL)を、ELISAキットを用いて測定した。
培養後、構築された細胞構造体を採取し、パラフィン包埋切片を作製した。 パラフィン包埋切片の作製は公知の方法に従った。作製した切片について、 ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)を行った。HE染色は公知の方法に従った。
培養15日目のHE染色の結果を図1に示す。条件A、B、Dの細胞構造体では、厚みが均一で150μm以上の組織が観察された。条件C、Eの細胞構造体では、厚みが不均一な組織体が得られた。
培養11日目の各細胞構造体の透過光像において、組織に違いが認められた。MSCが共存している組織(条件A、B、Dの細胞構造体)と間葉系幹細胞を含まない組織(条件C、Eの細胞構造体)を比較したところ、間葉系幹細胞が共存している細胞構造体では組織が均一になっているように見えたのに対して、PXB cell単独(条件Eの細胞構造体)やPXB/HUVEC(条件Cの細胞構造体)では、均一性が低下していた(図2)。
培養開始から1、3、5、7、9、11、13、及び15日目に回収した各培養上清中のアルブミン量(ng/mL)をELISAにより測定した結果を図3に示す。ヘパリン/コラーゲン処理を行った細胞構造体では、PXB cellのアルブミン産生能は高くなる傾向にあった。間葉系幹細胞や血管内皮細胞を配合した細胞構造体では、アルブミン産生能は、PXB cell単独と比較して低くなるが、間葉系幹細胞を配合したときのみ、培養9日目以降のアルブミン産生能の低下が緩やかになり、長期間産生能が維持されることが分かった。また、これらの細胞構造体のアルブミン産生量は、ヒト肝細胞癌由来細胞株HepG2を用いている非特許文献2の構造体と同程度であった。この結果から、充分な厚みの細胞構造体とすることにより、非がん性の肝細胞を用いた場合でも、肝がん細胞を用いた場合と同様に高いアルブミン産生能を備えられることが示唆された。
本発明によれば、迅速かつ安定的に、より厚い立体的肝臓組織構造体を製造することができる。また、得られた肝臓組織構造体は、長期間肝機能を維持できる。したがって、本発明は、再生医療分野において有用である。本発明はまた、医薬品開発などにおける肝毒性評価においても有用である。

Claims (20)

  1. 少なくとも肝細胞を含み、2以上の細胞層が厚み方向に積層されている立体的肝臓組織構造体の製造方法であって、
    (a)カチオン性緩衝液中で、少なくとも肝細胞を含む細胞と強電解質高分子と細胞外マトリックス成分とを混合して混合物を得る工程と、
    (b)前記工程(a)により得られた混合物を、細胞培養容器中に播種する工程と、
    (c)前記工程(b)の後、前記細胞培養容器中の細胞混合物から液体成分を除去し、当該細胞培養容器中に、少なくとも肝細胞を含む細胞が多層に積層された細胞構造体を立体的肝臓組織構造体として得る工程と、
    を含み
    構造体を構成する全細胞の40%以上が肝細胞であり、かつ厚みが150μm以上である立体的肝臓組織構造体を製造することを特徴とする、立体的肝臓組織構造体の製造方法。
  2. 前記工程(b)に代えて、
    (b’−1)前記(a)で得られた混合物を細胞培養容器内に播種した後、混合物から液体成分を除去し、細胞粘稠体を得る工程と、
    (b’−2)前記(b’−1)の後、細胞培養容器内に前記細胞粘稠体を溶媒に懸濁する工程と
    を含む、請求項1に記載の立体的肝臓組織構造体の製造方法。
  3. 前記強電解質高分子が、ヘパリン、グリコサミノグリカン、デキストラン硫酸、ラムナン硫酸、フコイダン、カラギナン、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及びポリアクリル酸からなる群から選択される1種以上である、請求項2に記載の立体的肝臓組織構造体の製造方法。
  4. 前記細胞外マトリックス成分が、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、エラスチン、テネイシン、エンタクチン、フィブリリン、及びプロテオグリカンからなる群から選択される1種以上である、請求項2又は3に記載の立体的肝臓組織構造体の製造方法。
  5. 前記カチオン性緩衝液がトリス−塩酸緩衝液、トリス−マレイン酸緩衝液、ビス−トリス緩衝液、又はHEPESである、請求項2〜4のいずれか一項に記載の立体的肝臓組織構造体の製造方法。
  6. 前記肝細胞が、非がん性細胞である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の立体的肝臓組織構造体の製造方法。
  7. 得られた立体的肝臓組織構造体の厚みが500μm以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の立体的肝臓組織構造体の製造方法。
  8. 前記工程(a)における前記細胞が、更に、間葉系幹細胞を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の立体的肝臓組織構造体の製造方法。
  9. 前記工程(a)における前記細胞が、更に、間質を構成する細胞を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の立体的肝臓組織構造体の製造方法。
  10. 前記工程(a)における前記細胞が、前記間質を構成する細胞として、更に、血管内皮細胞及びリンパ管内皮細胞からなる群より選択される1種以上を含む、請求項9に記載の立体的肝臓組織構造体の製造方法。
  11. 前記工程(a)の後、前記工程(b)の前に、
    (a’−1)得られた混合物から液体部分を除去し、細胞集合体を得る工程、及び
    (a’−2)前記細胞集合体を溶液に懸濁する工程
    を行う、請求項1〜10のいずれか一項に記載の立体的肝臓組織構造体の製造方法。
  12. 製造された立体的肝臓組織構造体のアルブミン産生量が、細胞構造体構築後から培養を開始して培養9日目の時点において、100ng/mL以上である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の立体的肝臓組織構造体の製造方法。
  13. 少なくとも肝細胞を含み、2以上の細胞層が厚み方向に積層されており、厚みが150〜500μmである細胞構造体であり、
    前記立体的肝臓組織構造体を構成する細胞として、更に、間葉系幹細胞と間質を構成する細胞を含み、
    アルブミン産生量が、培養9日目の時点で100ng/mL以上であることを特徴とする、立体的肝臓組織構造体。
  14. 前記立体的肝臓組織構造体を構成する全細胞の40%以上が肝細胞である、請求項13に記載の立体的肝臓組織構造体。
  15. 前記立体的肝臓組織構造体が、前記間質を構成する細胞として、更に、血管内皮細胞及びリンパ管内皮細胞からなる群より選択される1種以上を含む、請求項13又は14に記載の立体的肝臓組織構造体。
  16. 前記立体的肝臓組織構造体を構成する全細胞数が、1.2×10個以上である、請求項13〜15のいずれか一項に記載の立体的肝臓組織構造体。
  17. 前記立体的肝臓組織構造体のアルブミン産生量が、培養9日目の時点で500ng/mL以上である、請求項13〜16のいずれか一項に記載の立体的肝臓組織構造体。
  18. 前記立体的肝臓組織構造体のアルブミン産生量が、構造体構築後から培養11日目の時点で500ng/mL以上ある、請求項13〜17のいずれか一項に記載の立体的肝臓組織構造体。
  19. 請求項13〜18のいずれか一項に記載の立体的肝臓組織構造体を、被検化合物を接触させた状態で培養する培養工程と、
    前記培養工程後の前記立体的肝臓組織構造体中の肝細胞の生存率又はアルブミン産生能を指標として、前記被検化合物の肝毒性の有無を評価することを特徴とする、化合物の肝毒性評価方法。
  20. 前記立体的肝臓組織構造体に含まれている全肝細胞が、少なくとも1種類以上の薬物代謝酵素の遺伝子型が共通している、請求項19に記載の化合物の肝毒性評価方法。
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