WO2024034576A1 - がんオルガノイドの培養方法及び被験物質のスクリーニング方法 - Google Patents

がんオルガノイドの培養方法及び被験物質のスクリーニング方法 Download PDF

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Abstract

このがんオルガノイドの培養方法は、がんオルガノイドを細胞構造体の天面又は内部にて、細胞外マトリックスを含まない培地で培養することを含み、前記細胞構造体は、間質を構成する細胞を含み、2以上の細胞層が厚み方向に積層されている。被験物質のスクリーニング方法は、前記がんオルガノイドの培養方法により得られたがんオルガノイドを含む細胞構造体を被験物質存在下で培養すること、及び、前記被験物質の前記がんオルガノイドに対する影響を評価すること、を含む。

Description

がんオルガノイドの培養方法及び被験物質のスクリーニング方法
 本発明は、がんオルガノイドの培養方法及び被験物質のスクリーニング方法に関する。
 本願は、2022年8月8日に日本に出願された特願2022-126547号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
 従来、がん研究では、培養に最適化した条件で継代培養され確立されたがん細胞株を用いた実験が主流である。しかしながら、長年にわたり生体外で維持され培養され続けているがん細胞株は、臨床腫瘍の性質や薬剤への反応を必ずしも反映していない場合がある。そこで、より精度の高い抗がん剤開発や、患者ごとに最適な治療の選択のために、患者の腫瘍組織に由来するがんオルガノイド(PDOともいう)が有望視されている(例えば、非特許文献1等参照)。
 PDOは、由来となった患者の腫瘍組織の性質の多くを培養中も保持している。一方で、生体内では、間質を構成する細胞等の多様な細胞によってがんの微小環境は構成されている。これに対して、がんオルガノイドは、培養のためにMatrigel(登録商標)(BD Biosciences社製)等の細胞外マトリックス(ECMともいう)が必要不可欠である。細胞外マトリックス内では間質を構成する細胞はとどまることができないことから、がんオルガノイドは、間質を構成する細胞や前記細胞から構成される血管と接触を伴った共培養を行うことができない。そのため、がんオルガノイドと間質を構成する細胞との相互作用等を評価することができない(例えば、非特許文献1等参照)。
 また、がんオルガノイドの培養には、専用の特殊な培地が必要であるが、前記培地に含まれる成長因子や低分子阻害剤は、がんオルガノイドの遺伝子発現やシグナル伝達経路に影響を与え、薬剤感受性に影響を及ぼす可能性がある。
Veninga V et al., "Tumor organoids: Opportunities and challenges to guide precision medicine.", Cancer Cell, Vol. 39, Issue 9, pp. 1190-1201, 2021.
 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、細胞外マトリックスを用いずに、がんオルガノイドの性質を維持しながら、間質を構成する細胞と共培養でき、且つ、がん細胞の浸潤を評価可能な、がんオルガノイドの培養方法、並びに、前記がんオルガノイドの培養方法により得られるがんオルガノイドを用いた被験物質のスクリーニング方法を提供する。
 すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) がんオルガノイドを細胞構造体の天面又は内部にて、細胞外マトリックスを含まない培地で培養することを含み、
 前記細胞構造体は、間質を構成する細胞を含み、2以上の細胞層が厚み方向に積層されている、がんオルガノイドの培養方法。
(2) 前記培養は、前記がんオルガノイドを単一細胞として分散させた後、前記細胞構造体の天面又は内部にて培養することを含む、(1)に記載のがんオルガノイドの培養方法。
(3) 前記培養は、前記がんオルガノイドを2以上の細胞層が厚み方向に積層されている第1の細胞構造体の天面に播種した後、前記間質を構成する細胞を含む細胞懸濁液をさらに播種して、前記がんオルガノイドの上部に第2の細胞構造体を構築して、前記がんオルガノイドを細胞構造体の内部にて培養することを含む、(1)又は(2)に記載のがんオルガノイドの培養方法。
(4) 前記培地が、D-MEM、ESC、EBM2、添加因子としてHidrocortisoneを含まないEGM2、RPMI-1640、Ham’s F-12及びMccoy's 5aのいずれか一つ又は二つ以上の組み合わせからなる培地である、(1)~(3)のいずれか一つに記載のがんオルガノイドの培養方法。
(5) 前記がんオルガノイドは、腺管構造を有する、(1)~(4)のいずれか一つに記載のがんオルガノイドの培養方法。
(6) 前記細胞構造体が、前記間質を構成する細胞として、線維芽細胞、周皮細胞、内皮細胞、及び免疫細胞からなる群より選ばれる1種以上の細胞を含む、(1)~(5)のいずれか一つに記載のがんオルガノイドの培養方法。
(7) 前記内皮細胞が、血管内皮細胞及びリンパ管内皮細胞からなる群より選ばれる1種以上の細胞である、(6)に記載のがんオルガノイドの培養方法。
(8) 前記細胞構造体が、脈管網構造を有する、(1)~(7)のいずれか一つに記載のがんオルガノイドの培養方法。
(9) 前記細胞構造体は、10以上の細胞層が厚み方向に積層されている、(1)~(8)のいずれか一つに記載のがんオルガノイドの培養方法。
(10) (1)~(9)のいずれか一つに記載のがんオルガノイドの培養方法により得られたがんオルガノイドを含む細胞構造体を被験物質存在下で培養すること、及び、
 前記被験物質の前記がんオルガノイドに対する影響を評価すること、
を含む、被験物質のスクリーニング方法。
 上記態様のがんオルガノイドの培養方法によれば、細胞外マトリックスを用いずに、がんオルガノイドの性質を維持しながら、間質を構成する細胞と共培養でき、且つ、がん細胞の浸潤を評価することができる。
本発明の一実施形態に係るがんオルガノイドの培養方法を示す概略構成図である。 本発明の別の実施形態に係るがんオルガノイドの培養方法を示す概略構成図である。 本発明の別の実施形態に係るがんオルガノイドの培養方法を示す概略構成図である。 本発明の別の実施形態に係るがんオルガノイドの培養方法を示す概略構成図である。 実施例1におけるシングルセル化した患者由来がんオルガノイド(PDO)を細胞構造体の天面で培養した場合での抗EpCAM抗体を用いた蛍光免疫染色像である。 実施例1におけるシングルセル化したPDOを細胞構造体の天面で培養した場合でのPDOのコンフルエンシー(%)を示すグラフである。 実施例1におけるシングルセル化したPDOを細胞構造体の内部で培養した場合での抗EpCAM抗体を用いた蛍光免疫染色像である。 実施例1におけるシングルセル化したPDOを細胞構造体の内部で培養した場合でのPDOのコンフルエンシー(%)を示すグラフである。 実施例1におけるシングルセル化したPDOを細胞構造体の内部で培養した場合での切片の抗EpCAM抗体及び抗CD31抗体を用いた免疫染色像である。 実施例1におけるシングルセル化したPDOを細胞構造体の内部で培養した場合での切片の抗EpCAM抗体及び抗CD31抗体を用いた蛍光免疫染色像である。 実施例1におけるシングルセル化したPDOを細胞構造体の内部で培養した場合での切片の抗CD31抗体を用いた蛍光免疫染色像である。 実施例1における形態を維持したままのPDOを細胞構造体の天面で培養した場合での天面から観察した明視野像である。 実施例1における形態を維持したままのPDOを細胞構造体の天面で培養した場合での切片の抗EpCAM抗体を用いた免疫染色像である。 実施例2におけるシングルセル化したPDOを細胞構造体の天面で培養する条件下でのAMG510単剤、又は、AMG510とcetuximabの併用による薬効評価試験の結果を示すグラフである。 実施例3における各培地で培養した組織の抗CD31抗体を用いた免疫染色像である。 実施例3における各培地で培養した組織の抗CD31抗体を用いた免疫染色像である。 実施例3における各培地で培養した組織の抗CD31抗体を用いた免疫染色像である。 実施例3における各培地で培養した組織の抗CD31抗体を用いた免疫染色像である。 実施例3における各培地で培養した組織の抗CD31抗体を用いた免疫染色像である。 実施例3における各培地で培養した組織の抗CD31抗体を用いた免疫染色像である。 実施例4における各培地でHCT26-1T及びHCT26-3LMを培養した組織の切片の抗EpCAM抗体を用いた免疫染色像である。 実施例4における各培地でHCT26-1T及びHCT26-3LMを培養した組織でのPDOのコンフルエンシー(%)の経時変化を示すグラフである。 実施例4におけるHCT26-1Tを細胞構造体の天面で培養した場合の組織の切片におけるPDOの抗EpCAM抗体を用いた免疫染色像である。 実施例4におけるHCT26-3LMを細胞構造体の天面で培養した場合の組織の切片におけるPDOの抗EpCAM抗体を用いた免疫染色像である。 実施例4におけるHCT26-1Tを細胞構造体の内部で培養した場合の組織の切片におけるPDOの抗EpCAM抗体を用いた免疫染色像である。 実施例4におけるHCT26-3LMを細胞構造体の内部で培養した場合の組織の切片におけるPDOの抗EpCAM抗体を用いた免疫染色像である。
≪がんオルガノイドの培養方法≫
 本発明の一実施形態に係るがんオルガノイドの培養方法(以下、単に「本実施形態の培養方法」と称する場合がある)は、がんオルガノイドを細胞構造体の天面又は内部にて、細胞外マトリックスを含まない培地で培養すること(以下、「培養工程」と称する場合がある)を含み、
 前記細胞構造体は、間質を構成する細胞(以下、「間質細胞」という)を含み、2以上の細胞層が厚み方向に積層されている。
 本実施形態の培養方法で用いられる細胞構造体は、間質細胞を含み、間質組織を模した構造体である。がんオルガノイドを、マトリゲル等の細胞外マトリックスに接着させて培養する通常の培養方法ではなく、間質を模した細胞構造体の天面又は内部で、培養培地として細胞外マトリックスを含まない培地で培養する。これにより、従来では、細胞外マトリックスの存在により、共培養ができなかった間質細胞とがんオルガノイドを共培養することができる。
 また、本実施形態の培養方法では、間質組織を模した細胞構造体の天面又は内部で、培養培地として、細胞外マトリックスを含まないことに加えて、過剰な増殖因子や人工的な阻害剤を使用することなくがんオルガノイドを培養することができる。その結果、細胞構造体の天面又は内部にがんオルガノイドを含む、がんオルガノイド含有細胞構造体が得られる。すなわち、本実施形態により得られる培養物(つまり、がんオルガノイド含有細胞構造体)は、より生体に近しい環境下で得られた培養物である。このため、後述する実施例に示すように、培養物内においてがんオルガノイドは、腺管構造を有し、且つ、患者由来のがんオルガノイドである場合には、由来となった患者の腫瘍組織の性質を維持することができる。よって、得られた培養物は、より生体内に近い条件下での抗がん剤の候補物質の薬効評価や、患者ごとに最適な抗がん剤の選択を行うための試料として非常に有用である。
 さらに、後述する実施例に示すように、本実施形態の培養方法において、がんオルガノイドは、細胞構造体への浸潤がみられることから、得られた培養物は、がん細胞の浸潤を評価するために用いることができる。
<がんオルガノイド>
 本実施形態の培養方法で用いられるがんオルガノイドは、培養細胞株を用いて作製されたものであってもよいが、臨床腫瘍の性質や薬剤への反応性を反映していることから、がん患者又は患畜の腫瘍組織又はがん細胞を用いて作製されたものであることが好ましく、がん患者由来のオルガノイドであることがより好ましい。
 なお、本実施形態及び本明細書において、がん細胞とは、体細胞から派生して無限の増殖能を獲得した細胞であり、周囲の組織に浸潤し、又は転移を起こす悪性新生物である。
 がんオルガノイドは、複数種類の細胞からなってもよく、特定の種類の細胞のみからなってもよい。また、がんオルガノイドは、がん細胞のみからなってもよく、がん細胞とがん細胞以外の細胞からなってもよい。
 がんオルガノイドが由来する腫瘍組織又はがん細胞は、いずれの生物種の動物から採取された組織又は細胞であってもよい。例えば、ヒト、サル、マーモセット、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、マウス及びラット等の動物から採取された腫瘍組織又はがん細胞を用いることができる。
 がんオルガノイドが由来する腫瘍組織は、固形の組織であってもよく、液体の組織であってもよいが、固形組織が好ましい。固形組織としては、例えば、上皮組織、結合組織、筋組織、神経組織、間質組織又は粘膜組織を外科的に切除採取したものが挙げられる。液体組織としては、例えば、血液、リンパ液、胸水、腹水、髄液、涙、唾液及び尿等の体液が挙げられる。これらの組織は、例えば、手術や内視鏡検査等において、メスやレーザー等で摘出したり、注射器又はスワブ等で採取することができる。ヒトの腫瘍組織としては、例えば、臨床検査のために採取された組織を用いることができる。
 主要組織又はがん細胞の由来となるがんとしては、固形がんであることが好ましい。固形がんとしては、例えば、乳がん(例えば、浸潤性乳管がん、非浸潤性乳管がん及び炎症性乳がん等)、前立腺がん(例えば、ホルモン依存性前立腺がん及びホルモン非依存性前立腺がん等)、膵がん(例えば、膵管がん等)、胃がん(例えば、乳頭腺がん、粘液性腺がん及び腺扁平上皮がん等)、肺がん(例えば、非小細胞肺がん、小細胞肺がん及び悪性中皮腫等)、結腸がん(例えば、消化管間質腫瘍等)、直腸がん(例えば、消化管間質腫瘍等)、大腸がん(例えば、家族性大腸がん、遺伝性非ポリポーシス大腸がん及び消化管間質腫瘍等)、小腸がん(例えば、非ホジキンリンパ腫及び消化管間質腫瘍等)、食道がん、十二指腸がん、舌がん、咽頭がん(例えば、上咽頭がん、中咽頭がん及び下咽頭がん等)、頭頚部がん、唾液腺がん、脳腫瘍(例えば、松果体星細胞腫瘍、毛様細胞性星細胞腫、びまん性星細胞腫及び退形成性星細胞腫等)、神経鞘腫、肝臓がん(例えば、原発性肝がん及び肝外胆管がん等)、腎臓がん(例えば、腎細胞がん及び腎盂と尿管の移行上皮がん等)、胆嚢がん、胆管がん、膵臓がん、肝がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、卵巣がん(例、上皮性卵巣がん、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣性胚細胞腫瘍及び卵巣低悪性度腫瘍等)、膀胱がん、尿道がん、皮膚がん(例えば、眼内(眼)黒色腫及びメルケル細胞がん等)、メラノーマ(悪性黒色腫)、甲状腺がん(例えば、甲状腺髄様がん等)、副甲状腺がん、鼻腔がん、副鼻腔がん、網膜肉腫、陰茎がん、精巣腫瘍、小児固形がん(例えば、ウィルムス腫瘍及び小児腎腫瘍等)、カポジ肉腫、AIDSに起因するカポジ肉腫、上顎洞腫瘍、平滑筋肉腫及び横紋筋肉腫等が挙げられ、これらに限定されない。
 がん患者由来のオルガノイドは、例えば、次に示す方法により作製することができる。すなわち、まず、がん患者の腫瘍組織を外科的切除後、直ちに小片に切断し、PBSで洗浄する。次いで、小片化した腫瘍組織を消化バッファーコラゲナーゼ及びディスパーゼ等の酵素を添加して、37℃程度の温度下で解離する。次いで、腫瘍組織をPBS中でピペッティングにより激しく攪拌し、腫瘍組織片を回収して遠心分離する。遠心分離後のペレットをマトリゲル等の細胞外マトリックスに懸濁し、培養容器に移して培養することで、PDOが得られる。
 或いは、がんオルガノイドは、がん患者の腫瘍組織から単離したがん細胞を用いて作製してもよい。腫瘍組織からがん細胞を単離する方法として、例えば、上皮組織からがん細胞を単離する方法としては、当技術分野において公知の方法が挙げられる。例えば、キレート剤と腫瘍組織とを恒温放置することによって、陰窩を単離することができる。この組織を洗浄した後、ガラススライドで上皮細胞層を粘膜下層から剥離し、細切する。この後、トリプシン又は、好ましくはEDTA及びEGTAのうち少なくともいずれか一方を含む液中で恒温放置する。その後、例えば、ろ過及び遠心機の少なくともいずれか一方を用いて、未消化の組織断片と陰窩由来の単一細胞とを分離する。トリプシンの代わりに、その他のタンパク質分解酵素、例えばコラゲナーゼ及びディスパーゼIのうち少なくともいずれか一方を使用してもよい。膵臓及び胃の断片を単離するために同様の方法が使用される。
 がん患者由来の腫瘍組織からがん細胞のみを選別して、がんオルガノイドを作製する場合、がん細胞の選別に先立ち、腫瘍組織中に含まれているがん細胞量を確認してもよい。がん細胞特異的なタンパク質の発現や酵素活性の上昇をがんマーカーとして、がん細胞を選別することができる。がんマーカーは、特に限定されず、例えば、EpCAM、CEA、Cytokeratin及びHER2等のがん細胞において特異的に発現しているタンパク質であってよい。これらのタンパク質をがんマーカーとした場合、これらに対する抗体を利用した免疫組織化学(IHCともいう)染色又は免疫蛍光(IFともいう)染色によって、がん細胞を可視化することができる。また、がん細胞で上昇しているγ-グルタミルトランスペプチダーゼ又はβ-ガラクトシターゼの酵素活性をがんマーカーとした場合、これらの酵素活性を、ProteoGREEN(登録商標、五稜化薬)及びGlycoGREEN(登録商標、五稜化薬)等の蛍光プローブを利用して測定することができる。
 がん細胞の選別は、フローサイトメトリー、磁気分離、誘電泳動、サイズ分画又は密度勾配分画などの手法によって行うことができる。当該選別手法は、元の患者腫瘍の由来臓器や臨床的背景又は先行する各種検査結果等から適宜決定できる。フローサイトメトリーを用いる場合、IFや蛍光プローブを用いて染色した後に、染色処理陽性の細胞を分取することで、がん細胞の選別が可能である。また、フローサイトメトリーでは、前方散乱光及び側方散乱光の値から生細胞と死細胞を判定することもできるため、より効率的に生きたがん細胞を選別して回収可能である。また、磁気分離を用いる場合、抗体を用いて細胞を磁気標識するが、標識したがん細胞を磁気によって回収するポジティブセレクション方式と、標識した間質細胞を磁気によって除去するネガティブセレクション方式から、任意の方式を選択することができる。また、誘電泳動及び/又は密度勾配分画を用いる場合は、予め間質細胞の構築に用いた細胞種の誘電特性及び/又は密度勾配特性を把握しておくことが好ましい。
 がんオルガノイドの作製方法としては、例えば、「Sakahara M et al., “IFN/STAT Signaling Controls Tumorigenesis and the Drug Response in Colorectal Cancer.”, Cancer Sci., , Vol. 110, Issue 4, pp. 293-1305, 2019.(参考文献1)」等に記載の方法等が挙げられる。
 前記方法は、細胞外マトリックスにがん細胞又は前記がん細胞を含む腫瘍組織を接着又は包埋させて培養する方法である。
[細胞外マトリックス(ECM)]
 一般的に、「細胞外マトリックス」とは、生物において細胞の外に存在する超分子構造を意味する。このECMは、がん細胞又は前記がん細胞を含む腫瘍組織が増殖するための足場となる。ECMは、様々な多糖、水、エラスチン、及び糖タンパク質を含む。糖タンパク質としては、例えば、コラーゲン、エンタクチン(ナイドジェン)、フィブロネクチン及びラミニン等が挙げられる。
 ECMは、結合組織細胞を用いて調製してもよく、市販のECMを用いてもよい。
 ECMの調製方法としては、例えば、ECM産生細胞(例えば、線維芽細胞等)を培養した後に、これらの細胞を取り出し、がん細胞又はがん細胞を含む腫瘍組織を添加することによって、ECMを足場として用いることができる。
 ECM産生細胞としては、例えば、主にコラーゲン及びプロテオグリカンを産生する軟骨細胞、主にIV型コラーゲン、ラミニン、間質プロコラーゲン、及びフィブロネクチンを産生する線維芽細胞、及び主にコラーゲン(I型、III型、及びV型)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、ヒアルロン酸、フィブロネクチン、及びテネイシン-Cを産生する結腸筋線維芽細胞等が挙げられる。
 がんオルガノイドの培養に一般的に用いられる市販のECMとしては、例えば、細胞外マトリクスタンパク質(Invitrogen社製)、Engelbreth-Holm-Swarm(EHSともいう)マウス肉腫細胞に由来する基底膜調製物(例えば、Matrigel(登録商標)(BD Biosciences社製));ProNectin(SigmaZ378666)等の合成ECM等挙げられる。また、天然ECM及び合成ECMの混合物を用いてもよい。
 ECMをゲル化(又は凝固)させた後、その上にがん細胞又は前記がん細胞を含む腫瘍組織を載せてもよい。或いは、ECMとがん細胞又は前記がん細胞を含む腫瘍組織を混合した後、培養容器に混合物を播種してゲル化(又は凝固)させてもよい。或いは、ECMが37℃でゲル化(又は凝固)するときに、培地を加えて、ECMの中にがん細胞又は前記がん細胞を含む腫瘍組織を拡散させて用いてもよい。培地中のがん細胞又は前記がん細胞を含む腫瘍組織は、ECMの表面構造(例えばインテグリン等)と相互作用することによって、ECMに接着することができる。
 ECMは培養容器等にコーティングして用いてもよい。
 がんオルガノイドは、ECMに接着させた状態でがん細胞又は前記がん細胞を含む腫瘍組織を、培養することで形成することができる。培養温度は30℃以上40℃以下が好ましく、37℃程度がより好ましい。培養時間は、用いる細胞によって適宜調整することができる。また、培養雰囲気におけるCO濃度は、好ましくは培養雰囲気100容量%に対し約0.03容量%以上10容量%以下、最も好ましくは約5容量%である。その他、O濃度を大気よりも低い濃度となるように制御した環境下で培養することもできる。また、がんオルガノイドの培養に用いられる培地としては、オルガノイドの培養に一般的に用いられる培地(例えば、STEMCELL Technologies社製のIntestiCult Organoid Growth Medium (Human))等が挙げられる。
<細胞構造体>
 本実施形態及び本明細書において、「細胞構造体」とは、少なくとも間質細胞を含む立体的な細胞集合体を意味する。「細胞構造体の厚み」とは、前記構造体の自重方向の長さを意味する。自重方向とは、重力のかかる方向であり、厚み方向ともいう。より具体的には、細胞構造体の厚みとは、細胞構造体の上面から見たときの重心を通る線に沿って取得した切片の厚さであり、細胞構造体のほぼ中央部における切片の厚さである。細胞構造体の形状は、細胞構造体の製造に使用した容器によって異なるが、例えば、円柱形状のセルカルチャーインサートを用いて細胞構造体を製造した場合には、円柱形状となる。この場合、細胞構造体を上面から見たときの形状は円であり、上面から見たときの重心は、円の中心となる。細胞構造体の形状は、円柱形状に限定されず、目的に応じて任意の形状であることができる。具体的には、例えば、三角柱形状及び四角柱形状等の多角柱形状等が例示できる。「細胞層」とは、厚み方向と直交する方向に存在し、厚み方向に対して細胞核が重ならないで存在する一群の細胞及び間質によって構成される層のことを意味する。
 細胞構造体は、後述するように第1の細胞構造体及び第2の細胞構造体を含んでいてもよい。このような細胞構造体において、がんオルガノイドは、第1と第2の細胞構造体に挟まれる。細胞構造体が第1の細胞構造体及び第2の細胞構造体を含む場合において、細胞構造体の厚みは、第1及び第2の細胞構造体のそれぞれの厚みの総和である。
 細胞構造体を構成する間質細胞等の細胞は、特に限定されず、動物から採取された細胞であってもよく、動物から採取された細胞を培養した細胞であってもよく、動物から採取された細胞に各種処理を施した細胞であってもよく、培養細胞株であってもよい。また、細胞構造体を構成する間質細胞等の細胞として市販の細胞を用いてもよく、患者由来の細胞を用いてもよい。動物から採取された細胞の場合、採取部位は、特に限定されず、骨、筋肉、内臓、神経、脳、骨、皮膚又は血液等に由来する体細胞であってもよく、生殖細胞であってもよく、胚性幹細胞(ES細胞ともいう)であってもよい。
 また、細胞構造体を構成する細胞が由来する生物種は、特に限定されなく、例えば、ヒト、サル、マーモセット、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、マウス及びラット等の動物に由来する細胞を用いることができる。動物から採取された細胞を培養した細胞としては、初代培養細胞であってもよく、継代培養細胞であってもよい。また、各種処理を施した細胞としては、誘導多能性幹細胞細胞(iPS細胞ともいう)や、分化誘導後の細胞が挙げられる。
 細胞構造体は、同種の生物種由来の細胞のみから構成されていてもよく、複数種類の生物種由来の細胞により構成されていてもよい。
 細胞構造体を構築する間質細胞としては、例えば、内皮細胞、線維芽細胞、周皮細胞、免疫細胞、神経細胞、肥満細胞、上皮細胞、心筋細胞、肝細胞、膵島細胞、組織幹細胞及び平滑筋細胞等が挙げられる。免疫細胞とは、免疫に関与する細胞である。具体的には、リンパ球、マクロファージ及び樹状細胞等が挙げられる。リンパ球には、T細胞、B細胞、NK細胞及び形質細胞等がある。細胞構造体に含まれる間質細胞は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。細胞構造体に含まれる間質細胞としては、線維芽細胞、周皮細胞、内皮細胞、及び免疫細胞からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
 細胞構造体中の間質細胞の数は、特に限定されないが、より間質組織を模した細胞構造体が形成されることから、細胞構造体を構成する全細胞に対する間質細胞の存在比(細胞数比)が、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることがよりさらに好ましい。
 血管網構造やリンパ管網構造は、細胞構造体が生体内の間質組織に類似した機能を発現するために重要であると考えられる。このため、細胞構造体は、脈管網構造を備える細胞構造体が好ましい。すなわち、細胞構造体としては、脈管を形成していない細胞の積層体の内部に、リンパ管及び/又は血管等の脈管網構造が三次元的に構築され、より生体内に近い組織を構築している細胞構造体が好ましい。脈管網構造は、細胞構造体の内部にのみ形成されていてもよく、少なくとも脈管網構造の一部が細胞構造体の表面又は底面に露出されるように形成されていてもよい。また、脈管網構造は、細胞構造体全体に構築されていてもよく、特定の細胞層にのみ形成されていてもよい。なお、本実施形態及び本明細書において、「脈管網構造」とは、生体組織における血管網やリンパ管網のような、網状の構造を指す。
 脈管網構造は、間質細胞として脈管を構成する内皮細胞を含むことにより形成させることができる。細胞構造体に含まれる内皮細胞としては、血管内皮細胞であってもよく、リンパ管内皮細胞であってもよい。また、細胞構造体に含まれる内皮細胞は、血管内皮細胞とリンパ管内皮細胞との両方を含んでいてもよい。
 細胞構造体が脈管網構造を備える場合、当該細胞構造体中の内皮細胞以外の細胞としては、内皮細胞が本来の機能及び形状を保持する脈管網を形成しやすいことから、生体内において脈管の周辺組織を構成する細胞であることが好ましい。生体内の間質組織及び生体内の間質組織の近傍の環境とより近似させられることから、内皮細胞以外の細胞は、少なくとも線維芽細胞を含む細胞がより好ましく、血管内皮細胞と線維芽細胞を含む細胞、リンパ管内皮細胞と線維芽細胞を含む細胞、又は血管内皮細胞とリンパ管内皮細胞と線維芽細胞を含む細胞がさらに好ましい。なお、細胞構造体に含まれる内皮細胞以外の細胞としては、内皮細胞と同種の生物種由来の細胞であってもよく、異種の生物種由来の細胞であってもよい。
 細胞構造体中の内皮細胞の数は、脈管網構造が形成されるのに充分な数であれば特に限定されず、細胞構造体の大きさ又は内皮細胞や内皮細胞以外の細胞の細胞種等を考慮して適宜決定することができる。例えば、細胞構造体を構成する全細胞に対する内皮細胞の存在比(細胞数比)を0.1%以上にすることによって、脈管網構造が形成された細胞構造体を調製できる。内皮細胞以外の細胞として線維芽細胞を用いる場合、細胞構造体における内皮細胞数は、線維芽細胞数の0.1%以上であることが好ましく、0.1%以上5.0%以下であることがより好ましい。内皮細胞として血管内皮細胞とリンパ管内皮細胞の両方を含む場合、血管内皮細胞及びリンパ管内皮細胞の総細胞数が、線維芽細胞数の0.1%以上であることが好ましく、0.1%以上5.0%以下であることがより好ましい。
 本実施形態の培養方法で得られた培養物を、薬剤感受性試験等のセルベースアッセイに用いる場合には、用いる細胞構造体は、より生体内の間質に近しい構造体であることが好ましい。このため、前記細胞構造体としては、脈管網構造が形成された細胞構造体が好ましく、脈管網構造が形成され、且つ、線維芽細胞を含む細胞構造体がより好ましく、脈管網構造が形成され、線維芽細胞を含み、且つ、10以上の細胞層が厚み方向に積層されている細胞構造体がさらに好ましい。
 また、がん細胞の血管への浸潤を観察したいという需要に応えるためには、脈管網構造を有することが好ましい。
 細胞構造体の大きさや形状は、特に限定されない。より生体内の間質組織に近い状態の細胞構造体が形成可能であり、より生体内に近しい環境下でのがんオルガノイドの培養が期待できることから、前記細胞構造体の厚さは、5μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましく、150μm以上がよりさらに好ましい。前記細胞構造体の厚さとしては、また、500μm以下が好ましく、400μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましい。
 細胞構造体の細胞層の数としては、2層以上60層以下程度が好ましく、3層以上60層以下程度がより好ましく、5層以上60層以下程度がさらに好ましく、5層以上20層以下程度がよりさらに好ましく、10層以上20層以下程度が特に好ましい。
 細胞構造体を構成する細胞層数は、三次元構造を構成する細胞の総数を、1層当たりの細胞数(1層を構成するために必要な細胞数)で除することにより測定される。1層当たりの細胞数は、細胞構造体を構成させる際に使用する細胞培養容器に、予め細胞をコンフルエントになるように平面的に培養して調べることができる。具体的には、ある細胞培養容器に形成された細胞構造体の細胞層数は、前記細胞構造体を構成する全細胞数を計測し、当該細胞培養容器の1層当たりの細胞数で除することにより算出できる。
 一般的に、細胞構造体は、細胞培養容器中に構築される。前記細胞培養容器としては、細胞構造体の構築が可能であり、且つ、構築された細胞構造体の培養が可能な容器であれば特に限定されない。前記細胞培養容器としては、具体的には、ディッシュ、セルカルチャーインサート(例えば、Transwell(登録商標)インサート、Netwell(登録商標)インサート、Falcon(登録商標)セルカルチャーインサート、Millicell(登録商標)セルカルチャーインサート等)、チューブ、フラスコ、ボトル及びプレート等が挙げられる。細胞構造体の構築においては、構築された細胞構造体をそのままがんオルガノイドの培養に用いることができるため、ディッシュ又は各種セルカルチャーインサートが好ましい。
 細胞構造体は、間質細胞を含む2層以上の多層の細胞層から形成された構造体であればよく、細胞構造体の構築方法は特に限定されない。例えば、1層ずつ構築して順次積層させて構築する方法であってもよく、2層以上の細胞層を一度に構築する方法であってもよく、両構築方法を適宜組み合わせて多層の細胞層を構築する方法であってもよい。
 また、細胞構造体は、各細胞層を構成する細胞種が層ごとに異なる多層構造体であってもよく、各細胞層を構成する細胞種が、構造体の全層で共通する細胞種であってもよい。例えば、細胞種毎に層を形成し、この細胞層を順次積層させることによって構築する方法であってもよく、複数種類の細胞を混合した細胞混合液を予め調製し、この細胞混合液から多層構造の細胞構造体を一度に構築する方法であってもよい。
 1層ずつ構築して順次積層させて構築する方法としては、例えば、日本国特許第4919464号公報(参考文献2)に記載されている方法、すなわち、細胞層を形成する工程と、形成された細胞層をECMの成分を含有する溶液に接触させる工程と、を交互に繰り返すことにより、連続的に細胞層を積層する方法が挙げられる。例えば、前記方法を行うに際し、予め、細胞構造体を構成する全ての細胞を混合した細胞混合物を調製しておき、この細胞混合物によって各細胞層を形成することによって、構造体全体に脈管網構造が形成されている細胞構造体が構築できる。また、各細胞層を、細胞種ごとに形成することによって、内皮細胞から形成された層にのみ脈管網構造が形成されている細胞構造体が構築できる。
 2層以上の細胞層を一度に構築する方法としては、例えば、日本国特許第5850419号公報(参考文献3)に記載されている方法が挙げられる。前記方法は、予め細胞の表面全体をインテグリンが結合するアルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)配列を含む高分子と前記RGD配列を含む高分子と相互作用をする高分子によって被覆しておき、この接着膜で被覆された被覆細胞を細胞培養容器に収容した後、遠心処理等によって被覆細胞同士を集積させることにより、多層の細胞層から形成された細胞構造体を構築する方法である。例えば、前記方法を行うに際し、予め、細胞構造体を構成する全ての細胞を混合した細胞混合物を調製しておき、この細胞混合物に接着性成分を添加することによって調製された被覆細胞を用いる。これにより、1度の遠心処理によって、細胞組成が構造体全体で均質な細胞構造体が構築できる。
 細胞構造体は、例えば、日本国特許第6639634号公報(参考文献4)及び国際公開第2019/039457号(参考文献5)に記載されている方法、すなわち、下記工程(a)~工程(c)の工程を有する方法により構築することもできる。
 カチオン性緩衝液中で、細胞と細胞外マトリックス成分とを混合して混合物を得る工程(a)と、
 前記工程(a)により得られた混合物を、細胞培養容器中に播種する工程(b)と、
 前記工程(b)の後、前記細胞培養容器中に細胞が多層に積層された細胞構造体を得る工程(c)。
 工程(a)においては、細胞を、カチオン性物質を含む緩衝液(カチオン性緩衝液ともいう)及び細胞外マトリックス成分と混合し、この細胞混合物から細胞集合体を形成することにより、内部に大きな空隙が少ない立体的細胞組織を得ることができる。また、得られた立体的細胞組織は、比較的安定であるため、少なくとも数日間の培養が可能であり、かつ培地交換時にも組織が崩壊し難い。また、工程(b)において、細胞培養容器内に播種した細胞混合物を当該細胞培養容器内に沈降させることを含み得る。細胞混合物の沈降は、遠心分離等によって積極的に細胞を沈降させてもよく、自然沈降させてもよい。
 工程(a)において、細胞をさらに強電解質高分子と混合することが好ましい。細胞をカチオン性物質、強電解質高分子及び細胞外マトリックス成分と混合することにより、工程(b)において遠心分離等の細胞を積極的に集合させる処理を要することなく、自然沈降させた場合であっても、空隙が少なく厚みのある立体的細胞組織が得られる。
 前記カチオン性緩衝液としては、例えば、トリス-塩酸緩衝液、トリス-マレイン酸緩衝液、ビス-トリス-緩衝液、又はHEPES等が挙げられる。前記カチオン性緩衝液中のカチオン性物質(例えば、トリス-塩酸緩衝液におけるトリス)の濃度及びpHは、細胞の生育及び細胞構造体の構築に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。例えば、カチオン性緩衝液中のカチオン性物質の濃度は、10mM以上100mM以下とすることができ、40mM以上70mM以下であることが好ましく、50mMであることがより好ましい。また、前記カチオン性緩衝液のpHは、6.0以上8.0以下とすることができ、6.8以上7.8以下であることが好ましく、7.2以上7.6以下であることがより好ましい。
 前記強電解質高分子としては、例えば、ヘパリン、コンドロイチン硫酸(例えば、コンドロイチン4-硫酸、コンドロイチン6-硫酸)、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸及びヒアルロン酸等のグリコサミノグリカン;デキストラン硫酸、ラムナン硫酸、フコイダン、カラギナン、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、及びポリアクリル酸、又はこれらの誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。工程(a)において調製される混合物には、強電解質高分子を1種類のみ混合させてもよく、2種類以上を組み合わせて混合させてもよい。細胞構造体の構築においては、強電解質高分子はグリコサミノグリカンであることが好ましい。また、ヘパリン、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、及びデルマタン硫酸のうち少なくとも1つを用いることがより好ましい。また、強電解質高分子は、ヘパリンであることがさらに好ましい。
 前記カチオン性緩衝液に混合する強電解質高分子の量は、細胞の生育及び細胞構造体の構築に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。例えば、カチオン性緩衝液中の強電解質高分子の濃度は、0mg/mL超(0mg/mLより高く)1.0mg/mL未満とすることができ、0.025mg/mL以上0.1mg/mL以下であることが好ましく、0.05mg/mL以上0.1mg/mL以下であることがより好ましい。また、前記強電解質高分子を混合せずに前記混合物を調整し、細胞構造体の構築を行うこともできる。
 前記細胞外マトリックス成分としては、例えば、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、エラスチン、テネイシン、エンタクチン、フィブリリン、プロテオグリカン、又はこれらの改変体若しくはバリアント等が挙げられる。プロテオグリカンには、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、ケラタン硫酸プロテオグリカン及びデルマタン硫酸プロテオグリカン等が挙げられる。工程(a)において調製される混合物には、細胞外マトリックス成分を1種類のみ混合させてもよく、2種類以上を組み合わせて混合させてもよい。細胞構造体の構築においては、コラーゲン、ラミニン、又はフィブロネクチンを用いることが好ましく、コラーゲンを用いることがより好ましい。細胞の生育及び細胞構造体の形成に悪影響を及ぼさない限り、上述の細胞外マトリックス成分の改変体及びバリアントを用いてもよい。
 前記カチオン性緩衝液に混合する細胞外マトリックス成分の量は、細胞の生育及び細胞構造体の構築に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。例えば、細胞外マトリックス成分の濃度は、カチオン性緩衝液の体積に対し、0mg/mL超(0mg/mLより高く)1.0mg/mL未満とすることができ、0.025mg/mL以上0.1mg/mL以下であることが好ましく、0.05mg/mL以上0.1mg/mL以下であることがより好ましい。
 前記カチオン性緩衝液に混合する強電解質高分子と細胞外マトリックス成分の配合比は、1:2~2:1である。細胞構造体の構築においては、強電解質高分子と細胞外マトリックス成分の配合比が、1:1.5~1.5:1であることが好ましく、1:1であることがより好ましい。
 工程(a)~工程(c)を繰り返す、具体的には、工程(c)で得られた細胞構造体の上に、工程(b)として、工程(a)で調製した混合物を播種した後、工程(c)を行うことを繰り返すことにより、充分な厚みの細胞構造体を構築することができる。工程(c)で得られた細胞構造体の上に新たに播種する混合物の細胞組成は、既に構築されている細胞構造体を構成する細胞組成と同じであってもよく、異なっていてもよい。
 工程(a)~工程(c)を繰り返す場合に、工程(c)の後、工程(b)を行う前に、得られた細胞構造体を培養してもよい。培養に用いる培養培地の組成、培養温度、培養時間及び培養時の大気組成等の培養条件は、前記細胞構造体を構成する細胞の培養に適した条件で行う。培養培地としては、例えば、ダルベッコ改変イーグル最小必須培地(D-MEM)、イーグル最小必須培地(E-MEM)、最小必須培地α(MEMα)、RPMI-1640及びHam’s F-12等が挙げられる。
 工程(a)の後に、得られた混合物から液体部分を除去し、細胞集合体を得る工程(a’-1)、及び、細胞集合体を溶液に懸濁する工程(a’-2)を行い、工程(b)へ進んでもよい。上述の工程(a)~工程(c)を実施することで所望の組織体を得ることができるが、工程(a)の後に工程(a’-1)及び工程(a’-2)を実施し、工程(b)を実施することで、より均質な組織体を得ることができる。
 また、工程(a)の後に、前記工程(b)に代えて、下記工程(b’-1)及び工程(b’-2)を行ってもよい。工程(b’-1)及び工程(b’-2)を行うことによっても、より均質な組織体を得ることができる。工程(b’-2)においても、工程(b)と同様に、細胞培養容器内に播種した細胞混合物を当該細胞培養容器内に沈降させることを含み得る。細胞混合物の沈降は、遠心分離等によって積極的に細胞を沈降させてもよく、自然沈降させてもよい。本実施形態及び本明細書において、「細胞粘稠体」とは、「Nishiguchi et al., Macromol Bioscience,2015,vol.15(3),p.312-317.(参考文献6)」に記載されるようなゲル様の細胞集合体を指す。
 工程(b’-1)は、工程(a)で得られた混合物を細胞培養容器内に播種した後、混合物から液体成分を除去し、細胞粘稠体を得る工程である。
 工程(b’-2)は、細胞培養容器内に細胞粘稠体を溶媒に懸濁する工程である。
 細胞懸濁液を調製するための溶媒としては、細胞に対する毒性がなく、増殖性や機能を損なわない溶媒であれば特に限定されず、水、緩衝液及び細胞の培養培地等を用いることができる。前記緩衝液としては、例えば、リン酸生理食塩水(PBS)、HEPES及びHanks緩衝液等が挙げられる。培養培地としては、D-MEM、E-MEM、MEMα、RPMI-1640及びHam’s F-12等が挙げられる。細胞懸濁液を調製するための溶媒として、細胞の培養培地を用いる場合には、後述する工程(c)において液体成分を除去することなく細胞を培養することができる。
 前記工程(c)に代えて、基材上に細胞の層を形成する工程である工程(c’)を行ってもよい。
 工程(c)及び工程(c’)において、播種した混合物から液体成分を除去してもよい。
 工程(c)及び工程(c’)における液体成分の除去処理の方法は、細胞の生育及び細胞構造体の構築に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されず、液体成分と固体成分の懸濁物から液体成分を除去する方法として当業者に公知の手法により適宜行うことができる。当該手法としては、例えば、吸引、遠心分離処理、磁性分離処理、又はろ過処理等が挙げられる。例えば、細胞培養容器としてセルカルチャーインサートを用いた場合には、混合物を播種したセルカルチャーインサートを、10℃、400×gで1分間の遠心分離処理に供することによって、細胞混合物が沈降するので、吸引によって液体成分を除去することができる。
 次いで、本実施形態の培養方法における工程について以下に詳細を説明する。
<培養工程>
 培養工程では、がんオルガノイドを細胞構造体の天面又は内部にて、細胞外マトリックスを含まない培地で培養する。
 図1Aは、本発明の一実施形態に係るがんオルガノイドの培養方法(がんオルガノイドを細胞構造体の天面で培養する場合)を示す概略構成図である。
 すなわち、がんオルガノイド1を細胞構造体2の天面で培養する場合には、培養容器内3に構築された細胞構造体の培養溶液(培養培地は図略)中に、がんオルガノイド1を添加する。これにより、がんオルガノイド1が細胞構造体2の天面に接着し、がんオルガノイド1が細胞構造体2の天面に接着された状態で培養される。
 或いは、図1Bは、本発明の別の実施形態に係るがんオルガノイドの培養方法(がんオルガノイドを細胞構造体の内部で培養する場合)を示す概略構成図である。
 すなわち、がんオルガノイド1を細胞構造体の内部で培養する場合には、がんオルガノイド1を2以上の細胞層が厚み方向に積層されている第1の細胞構造体2Aの天面に播種した後、間質細胞を含む細胞懸濁液をさらに播種して、がんオルガノイド1の上部に第2の細胞構造体2Bを構築して、がんオルガノイド1を細胞構造体の内部にて培養する。なお、第1の細胞構造体2A及び第2の細胞構造体2Bの作製方法については、上記「細胞構造体」において説明した方法を適用することができる。
 図1A及び図1Bに記載の方法では、がんオルガノイドの形態を維持したまま、培養を行うことができる。
 一方、がんオルガノイドは、単一細胞として分散させた後、細胞構造体の天面又は内部にて、培養することもできる。がんオルガノイドを単一細胞として分散させることで、細胞構造体に播種する細胞数を把握することができる。そのため、得られる培養物を用いた抗がん剤の候補物質の薬効評価等のアッセイにおいて、細胞生存率等を算出することができ、定量的な評価を行うことができる。
 以降、がんオルガノイドを単一細胞として分散させることを「シングルセル化」と称し、また、単一細胞として分散されたがんオルガノイドを「シングルセル化されたがんオルガノイド」と称する場合がある。
 図1Cは、本発明の別の実施形態に係るがんオルガノイドの培養方法(シングルセル化されたがんオルガノイドを細胞構造体の天面で培養する場合)を示す概略構成図である。
 図1Cにおいて、シングルセル化されたがんオルガノイド1Aを用いた以外は、図1Aに記載の培養方法と同じである。
 すなわち、シングルセル化されたがんオルガノイド1Aを細胞構造体2の天面で培養する場合には、培養容器内3に構築された細胞構造体の培養溶液(培養培地は図略)中に、シングルセル化されたがんオルガノイド1Aを添加する。これにより、シングルセル化されたがんオルガノイド1Aが細胞構造体2の天面に接着し、シングルセル化されたがんオルガノイド1Aが細胞構造体2の天面に接着された状態で培養される。
 或いは、図1Dは、本発明の別の実施形態に係るがんオルガノイドの培養方法(シングルセル化されたがんオルガノイドを細胞構造体の内部で培養する場合)を示す概略構成図である。
 すなわち、シングルセル化されたがんオルガノイド1Aを細胞構造体の内部で培養する場合には、シングルセル化されたがんオルガノイド1Aを2以上の細胞層が厚み方向に積層されている第1の細胞構造体2Aの天面に播種した後、間質細胞を含む細胞懸濁液をさらに播種して、シングルセル化されたがんオルガノイド1Aの上部に第2の細胞構造体2Bを構築して、シングルセル化されたがんオルガノイド1Aを細胞構造体の内部にて培養する。なお、第1の細胞構造体2A及び第2の細胞構造体2Bの作製方法については、上記「細胞構造体」において説明した方法を適用することができる。
 図1C及び図1Dに記載の方法において、がんオルガノイドをシングルセル化する方法としては、酵素処理する方法等が挙げられる。酵素処理に用いる酵素は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
 使用する酵素は目的の酵素活性を有する酵素であれば特に限定されず、いずれの生物種由来の酵素であってもよく、天然に存在する酵素を改変した人工酵素であってもよい。また、各種細胞から抽出及び精製した酵素であってもよく、化学的に合成された酵素であってもよい。
 シングルセル化に用いる酵素として具体的には、トリプシン、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、エラスターゼ、パパイン、ヒアルロニダーゼ、及びそれらの代替酵素からなる群から選択される1種以上の酵素が好ましく、トリプシン又はその代替酵素がより好ましく、トリプシンの代替酵素がさらに好ましい。トリプシンの代替酵素としては、例えば、TrypLETM Express Enzyme (1×), no phenol red(登録商標、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)等が挙げられる。
 酵素処理の処理温度は、使用する酵素が酵素活性を発揮し得る条件であればよい。生体組織の細片物中の細胞に対する影響が抑えられることから、酵素処理の処理温度は、30℃以上40℃以下であることが好ましく、37℃であることがより好ましい。また、酵素処理の処理時間は、特に限定されず、例えば、5分間以上90分間以下とすることができ、10分間以上60分間以下が好ましい。
 シングルセル化されたがんオルガノイドは、細胞構造体の天面又は内部に播種する前に、細胞数を計測しておくことが好ましく、特に、生細胞の細胞数を計測しておくことが好ましい。細胞数の計測及び生細胞数の計測は、常法により行うことができる。例えば、生細胞数の計測は、トリパンブルーを用いた染色法等が挙げられる。
 がんオルガノイドは、酵素処理に先立って、緩衝液又は培養培地を用いて洗浄してもよい。洗浄に用いる緩衝液としては、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、トリス緩衝液及びPBS等を用いることができる。また、洗浄に用いる緩衝液又は培養培地中に抗生物質を添加することもできる。洗浄の回数は、適宜決定できるが、1回以上8回以下が好適である。また、緩衝液又は培養培地を用いた洗浄は、酵素処理の前にのみ、又は酵素処理の前後に行ってもよい。
 がんオルガノイド中の特定の細胞のみを細胞構造体の天面又は内部で培養する場合、がんオルガノイドの酵素処理物から、目的の細胞種のがん細胞のみを選別した後、この選別されたがん細胞を細胞構造体の培養培地に添加する。或いは、上記図1Dに記載の方法を用いて、細胞構造体の内部に播種する。がんオルガノイドの酵素処理物からの特定の細胞の選別方法は、特に限定されなく、一般的に細胞の選別に使用される各種の方法の中から適宜選択して用いることができる。例えば、フローサイトメトリー、磁気分離、誘電泳動、サイズ分画、及び密度勾配分画からなる群から選択される1種以上の手法によって特定の細胞を選別することができる。
 また、がんオルガノイドを細胞構造体の天面又は内部で培養する前に、がんオルガノイドを構成する細胞は、予め蛍光物質等により標識しておいてもよい。がんオルガノイド中の細胞全てを標識してもよく、がんオルガノイド中の目的の特定の細胞のみを標識してもよい。細胞の標識方法は特に限定されず、当該分野で公知の様々な標識方法の中から適宜選択して用いることができる。例えば、がんオルガノイド中のがん細胞の標識には、セルトラッカー(登録商標、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)やPKHセルリンカーキット(シグマ-アルドリッチ社)による蛍光標識等が好適に利用できる。また、がんオルガノイドをシングルセル化して特定のがん細胞を選別する場合、選抜処理後のがん細胞を標識してもよい。
[培養培地]
 培養培地としては、細胞外マトリックスを含まないものであれば、増殖因子や人工的な阻害剤等を含有する培地であってもよいが、培養細胞株の培養に汎用されている一般的な培養培地であることが好ましい。なお、細胞外マトリックスとしては、上記「がんオルガノイド」において例示されたとおりである。
 培養細胞株の培養に汎用されている一般的な培養培地としては、例えば、D-MEM、E-MEM、ESC、EBM2、EGM2、MEMα、RPMI-1640、Ham’s F-12及びMccoy's 5A等、並びこれらにCS(ウシ血清)、FBS(ウシ胎児血清)又はHBS(ウマ胎児血清)等の血清を1容量%以上20容量%以下程度(好ましくは10容量%程度)、ペニシリン-ストレプトマイシン等の抗生物質の溶液を0.1容量%以上5容量%以下程度(好ましくは1容量%程度)になるように添加した培地が挙げられる。
 中でも、培養培地としては、得られた培養物においてがんオルガノイドが腺管構造を有し、且つ、細胞構造体において脈管網構造を形成できることから、D-MEM、ESC、EBM2、添加因子としてHidrocortisoneを含まないEGM2、RPMI-1640、Ham’s F-12及びMccoy's 5a、並びにこれらに上述の血清を1容量%以上20容量%以下程度(好ましくは10容量%程度)、ペニシリン-ストレプトマイシン等の抗生物質の溶液を0.1容量%以上5容量%以下程度(好ましくは1容量%程度)になるように添加した培地が好ましい。なお、Hidrocortisoneは、細胞構造体において脈管網構造の形成を阻害することから、培養培地に含まないことが好ましい。
[培養条件]
 培養条件は、一般的な動物細胞の培養条件と同様に適宜設定できる。例えば、培養温度は、好ましくは約30℃以上40℃以下であり、最も好ましくは37℃である。また、CO濃度は、好ましくは約1容量%以上10容量%以下、最も好ましくは約5容量%である。その他、O濃度を大気よりも低い濃度となるように制御した環境下で培養することもできる。
 細胞構造体の天面又は内部に播種されるがんオルガノイドは、腺管構造を有することが好ましい。形態を維持したがんオルガノイドを用いて培養を実施する場合には、より生体内に近い状態のがんオルガノイドを、間質細胞を含む細胞構造体と共培養することができる。
 また、本実施形態の培養方法で得られる培養物中のがんオルガノイドは、後述する実施例に示すように、シングルセル化されたがんオルガノイドを用いて培養を実施した場合には腺管構造が形成される、或いは、腺管構造を有し、且つ、形態を維持したがんオルガノイドを用いて培養を実施した場合には、腺管構造を維持した状態である。
 本実施形態の培養方法で得られる、このような腺管構造を有するがんオルガノイドを含む培養物は、より生体内に近い条件下での抗がん剤の候補物質の薬効評価や、患者ごとに最適な抗がん剤の選択を行うための試料として非常に有用である。
≪被験物質のスクリーニング方法≫
 本発明の一実施形態に係る被験物質のスクリーニング方法(以下、単に「本実施形態のスクリーニング方法」と称する場合がある)は、上述したがんオルガノイドの培養方法により得られたがんオルガノイドを含む細胞構造体を被験物質存在下で培養すること(以下、「被験物質存在下での培養工程」と称する場合がある)、及び、
 前記被験物質の前記がんオルガノイドに対する影響を評価すること(以下、「評価工程」と称する場合がある)、
を含む。
 本実施形態のスクリーニング方法は、上述したがんオルガノイドの培養方法により得られたがんオルガノイドを含む細胞構造体を用いることで、より生体内に近い条件下での抗がん剤の候補物質の薬効評価を行うことができる。また、がん患者由来のがんオルガノイドを用いた場合には、本実施形態のスクリーニング方法は、前記がん患者に最適な抗がん剤を選択するために役立てることができる。
 次いで、本実施形態のスクリーニング方法における工程について以下に詳細を説明する。
<被験物質存在下での培養工程>
 被験物質存在下での培養工程では、上述したがんオルガノイドの培養方法により得られたがんオルガノイドを含む細胞構造体を被験物質存在下で培養する。被験物質は、例えば、培地に混合し添加する方法等を用いて、がんオルガノイドに接触させる。
 被験物質としては、例えば、天然化合物ライブラリ、合成化合物ライブラリ、既存薬ライブラリ及び代謝物ライブラリ等が挙げられる。既存薬には、AMG510及びcetuximab等の公知の抗がん剤が含まれる。また、被験物質として新薬を用いてもよい。被験物質は1種類でもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。投与する被験物質の量としては、がんオルガノイドを構成するがん細胞の種類及び量等から適宜選択することができる。
<評価工程>
 評価工程では、被験物質のがんオルガノイドに対する影響を評価する。
 評価工程において、被験物質ががんオルガノイドに及ぼす影響は、ウエスタンブロッティング、ELISA又は免疫染色等により検定又は評価することができる。
 また、評価工程において、シングルセル化したがんオルガノイドを用いた場合には、播種時にがん細胞の生細胞数を測定し、且つ、被験物質との接触後のがん細胞の生細胞数を測定することで、がん細胞の生存率を算出することこができる。つまり、評価工程は、播種時の癌細胞の生細胞数に対する被験物質との接触後のがん細胞の生細胞数の割合を算出する工程であってもよい。
 がん細胞の生細胞数の測定方法について詳述すると、がん細胞の生細胞数は、がん細胞の生細胞又はその存在量に相関のあるシグナルを用いて評価することができる。評価時点のがん細胞の生細胞数を測定できればよく、必ずしも生きている状態で測定する必要はない。例えば、がん細胞をその他の細胞と区別するように標識し、当該標識からのシグナルを指標として調べることができる。例えば、がん細胞を蛍光標識した後、細胞の生死判定を行うことにより、細胞構造体中の生きているがん細胞を直接計数することができる。この際、画像解析技術を利用することもできる。細胞の生死判定は、トリパンブルー染色やPI(Propidium Iodide)染色等の公知の細胞の生死判定方法により行うことができる。なお、がん細胞の蛍光標識は、例えば、がん細胞の細胞表面に特異的に発現している物質に対する抗体を一次抗体とし、該一次抗体と特異的に結合する蛍光標識二次抗体を用いる免疫染色法等の公知の手法で行うことができる。細胞の生死判定及び生細胞数の測定は、細胞構造体の状態で行ってもよく、細胞構造体を単細胞レベルに破壊した状態で行ってもよい。例えば、がん細胞と死細胞を標識した後の細胞構造体の立体構造を破壊した後、標識を指標としたFACS(fluorescence activated cell sorting)等により、評価時点において生きていたがん細胞のみを直接計数することもできる。
 がん細胞を標識する標識物質としては、例えば、蛍光色素、蛍光ビーズ、量子ドット、ビオチン、抗体、抗原、エネルギー吸収性物質、ラジオアイソトープ、化学発光体及び酵素等が挙げられ、これらに限定されない。中でも、標識物質として蛍光色素を用いることが好ましい。蛍光色素としては、より具体的には、例えば、FAM(カルボキシフルオレセイン)、JOE(6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ2’,7’-ジメトキシフルオレセイン)、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、TET(テトラクロロフルオレセイン)、HEX(5'-ヘキサクロロ-フルオレセイン-CEホスホロアミダイト)、Cy3、Cy5、Alexa568、Alexa647、PKH26及びPKH67GL等が挙げられる。
 また、評価工程において、対照群として、がんオルガノイドを含む細胞構造体を被験物質非存在下で培養したものにおけるがん細胞の生存率を算出してもよい。つまり、評価工程は、がんオルガノイドを含む細胞構造体を被験物質非存在下で培養したものにおけるがん細胞の生存率と、がんオルガノイドを含む細胞構造体を被験物質存在下で培養したものにおけるがん細胞の生存率とを比較する工程であってもよい。
 この場合、被験物質存在群でのがん細胞の生存率が、被験物質非存在群でのがん細胞の生存率と比較して、低くなっている場合は、がんオルガノイドにおいて、被験物質に対する薬剤感受性を有しており、被験物質が前記がんオルガノイドに有効であると判断することができる。
 一方、被験物質存在群でのがん細胞の生存率が、被験物質非存在群でのがん細胞の生存率と比較して、生存率が変わらない、又は高くなっている場合は、がん細胞において、被験物質に対する薬剤耐性が獲得されており、被験物質が前記がんオルガノイドに効果がないと判断することができる。
 以下、実施例により本発明の上記実施形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で多くの変形が当該分野において通常の知識を有する者により可能である。
<材料>
1.培養細胞及びがんオルガノイド
 使用した細胞株及びがんオルガノイド、並びに、それらの培養に用いた培地を以下の表1に示す。患者由来がんオルガノイドHT191は、大腸がん(KRAS G12C変異陽性)の患者由来のがんオルガノイドであり、参考文献2(特許第6639634号公報)に記載の方法に基づいて構築されたものを用いた。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
2.試薬等
 使用した試薬、培養容器等の消耗品、及び抗体について以下の各表2~4に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
3.測定装置
 細胞懸濁液中の細胞数カウントは、自動セルカウンターCountess(登録商標) II FL (Thermo Fisher Scientific)を用いて行った。蛍光免疫染色の画像撮影および画像解析は、Operetta CLSTM ハイコンテンツイメージングシステム(PerkinElmer)を使用した。
[実施例1]
 がんオルガノイドをそのまま、或いは、シングルセル化して、細胞構造体の天面又は内部に播種して培養し、がんオルガノイドの増殖を確認した。
 なお、後述するPDOと細胞構造体の共培養にはD-MEM又はIntestiCult Organoid Growth Mediumを用いた。D-MEMは、FBSを10(v/v)%、ペニシリン-ストレプトマイシン溶液を1(v/v)%となるように加えて使用した。細胞は、全て安全キャビネット内で無菌的に扱い、37℃、5(v/v)% CO2雰囲気下のインキュベーター内で培養した。
1.患者由来がんオルガノイド(PDO)の前培養
 PDOの形態を維持したまま継代する場合、培地を添加してピペッティングを行い物理的にマトリゲルとPDOを分散させた。
 PDOをシングルセル化する場合は、PBSで洗浄後、TrypLETM Express Enzyme(1×), no phenol redを用いて15分間、37℃で処理して分散させた。その後、培地で反応を止め、シングルセル化したPDOを回収した。
 その後、PDOを再播種する場合は、細胞ペレットのチューブを氷上で冷却しながら、マトリゲルにて懸濁した。この時、懸濁する際は気泡が発生しないよう慎重に手早く行った。氷上で冷却した24wellプレートの中央に細胞懸濁ゲル20μLをアプライするチップの先端でゲルをウェル直径の半分程まで塗り広げた。この時ウェルの縁までゲルが触れないように注意した。プレートを上下逆さにしてインキュベートし、ゲルを固化させた後、500μL/wellの培地(IntestiCult Organoid Growth Medium)を添加した。48wellの場合は、250μL/wellの培地(IntestiCult Organoid Growth Medium)を添加した。
2.細胞構造体の作製
 ヘパリン法を用いた細胞構造体の作製は、既報の手順に従い行った。
 具体的には、まず、細胞コート溶液は、0.2mg/mLコラーゲンを含有する5mMの酢酸溶液及び0.2mg/mLのヘパリンを含有する100mMのTris-HClバッファー(pH7.4)を等量混合し、終濃度が0.1mg/mLとなるように希釈して調製した。
 PDOを細胞構造体の天面で培養する場合には、NHDFが2×106cells/well(20層分)、且つ、HUVECが3×104cells/well(NHDFの1.5%)となるように、細胞懸濁液を混合し、遠心した後、上清を除去した。一方、PDOを細胞構造体の内部で培養する場合には、NHDFが1×106cells/well(10層分)、且つ、HUVECが1.5×104cells/well(NHDFの1.5%)となるように細胞懸濁液を混合し、遠心した後、上清を除去した。
 続いて、細胞コート液にて懸濁し、遠心した後、上清を除去した。その後、培地にて懸濁し、24wellプレート用カルチャーインサート内に播種した。インサートは、予め30分間以上0.1mg/mLフィブロネクチン溶液でコーティングし、溶液を除去したものを使用した。24wellプレートのwell内にD-MEM培地1mL、インサート内に細胞懸濁液300μLを分注した後、プレート遠心して細胞を沈降させ、インキュベーター内に2時間静置した。その後、培地1mLを添加し、1日間37℃でインキュベートした。
3.PDOと細胞構造体の共培養
 次いで、形態を維持したままのPDO又はシングルセル化したPDOを、上記「1.」に記載の方法で分散させ、細胞数を測定後、任意の播種数(シングルセル化したPDOは1×104cells/well、形態を維持したままのPDOは200±20個/well)になるように、細胞構造体に播種した。
 具体的には、細胞構造体の天面でPDOを培養する場合には、PDOの播種後、2時間以上インキュベーターで静置後、培地を添加した。一方で、細胞構造体の内部でPDOを培養する場合には、PDOの播種後、2時間以上インキュベーターで静置後、NHDFを1×106cells/well(10層分)、且つ、HUVECを1.5×104cells/well(NHDFの1.5%)含む細胞懸濁液をインサート内に添加し、400×g、1分間遠心した。2時間以上インキュベーターで静置後、培地1mLを添加し、37℃でインキュベートした。
 細胞構造体の作製開始時はDay0として、Day2(つまり、PDOと細胞構造体の共培養の開始日)以降に、PBSで2回洗浄後、10v/v%中性緩衝ホルマリンで組織を固定した。シングルセル化したPDOを細胞構造体の天面に播種して培養したサンプルは、Day2、6、9及び14に固定した。なお、Day2については、PDOを播種してから8時間後に固定を行った。シングルセル化したPDOを細胞構造体の内部に播種して培養したサンプルは、Day4、7及び9に固定した。固定開始から1時間後、ホルマリンを除去し、PBSで2回洗浄後、PBSに浸漬した。
 培養を続けるサンプルに関しては2日に1回又は3日に1回のタイミングで任意の培地を用いて培地交換を行った。
4.蛍光免疫染色(IF)
 固定済みの組織を1(v/v)%のBSA及び0.2(v/v)%のTriton含有PBS溶液で1~2時間ブロッキングを行った。その後、上記表に記載の希釈倍率で1次抗体を添加し、一晩(O/N)処理した。翌日、1次抗体溶液を除去、PBSで洗浄した後、2次抗体を上記表に記載の希釈倍率で添加し、2時間処理した。2次抗体溶液を除去、PBSで洗浄した。1次抗体及び2次抗体ともに、希釈は1(v/v)%のBSA及び0.2(v/v)%のTriton含有PBS溶液を用いた。また、その後必要に応じてPBSにて洗浄し、99.5(v/v)%エタノールにて脱水した後に、Visikol試薬にて透明化処理を行った。
5.画像撮影及び画像解析
 染色後のサンプルの画像撮影及び画像解析には、Operetta CLSTMを使用した。撮影は、1.25倍の対物レンズを用いたPreScanにて位置合わせを行った後に、5倍の対物レンズにて1wellにつき9視野で実施した。
 取得した画像は、画像解析ソフトHarmonyで解析をおこなった。解析は、96wellの場合は4視野の画像を、24wellの場合は9視野の画像をタイリングしてGlobal imageとし、Z位置の異なる各planeの画像はMaximum projectionにて1枚に合成した後に実施した。カルチャーインサート培養表面の大部分をカバーできるようROI(Region of interest)を設定し、ROI内の蛍光強度の高い領域(EpCAM陽性)をがん細胞として認識させた後、がん細胞の面積を算出した。また、EpCAM陽性領域に含まれるKi-67の細胞数をカウントした。
6.切片の作製及び免疫組織化学染色(IHC)
(1)パラフィン切片の作製
 包埋は、キシレン代替品として低毒性溶剤G-Nox(Genostaff)を使ったプロトコールのもと、パラフィン包埋装置CT-Pro20(Genostaff)を用いてパラフィン包埋してブロックを作製した。約6μmの厚さでブロックを薄切し、連続切片を作製した。
(2)IHC
 組織切片は、キシレンで脱パラフィンし、エタノール系列とTBS(トリス緩衝生理食塩水)で再水和した。酵素処理(Proteinase K、5μg/mL、37℃、10分間)で抗原の賦活化を行った。PBSで室温(25℃程度)5分間3回洗浄後、内因性ペルオキシダーゼを0.3v/v%過酸化水素含有メタノールで30分間ブロックした後、TBSで室温(25℃程度)5分間3回洗浄後、G-Block(Genostaff)でブロッキングし、avidin/biotin blocking kit(Vector)でインキュベーションした。切片を抗EpCAMマウスモノクローナル抗体(CST)と共に4℃で一晩インキュベートした。
 TBS-Tで室温(25℃程度)5分間2回洗浄、次いでTBSで室温(25℃程度)5分間1回洗浄後、ビオチン結合ヤギ抗マウスIgG(Vector)を添加し、室温(25℃程度)で30分間インキュベートした。その後ペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジン(Nichirei)を5分間添加した。TBS-Tで室温(25℃程度)5分間2回洗浄、次いでTBSで室温(25℃程度)5分間1回洗浄後、ペルオキシダーゼ活性はジアミノベンジジンにより可視化した。切片はMayer's Hematoxylin(MUTO)で対比染色し、脱水後、Malinol(MUTO)でマウントした。
7.結果及び考察
(1)シングルセル化したPDOの細胞構造体の天面での共培養
 シングルセルに分散したPDOを細胞構造体の天面に播種した時の増殖を確認した結果を図2A(PDOの蛍光免疫染色像)及び図2B(PDOのコンフルエンシー(%)のグラフ)に示す。図2A中のスケールバーは、1mmである。
 図2A及び図2Bに示すように、細胞構造体の天面にシングルセルに分散したPDOを播種した場合において、D-MEM及びorganoid mediumのいずれの培地を用いても経時的に増殖することがわかった。培地の違いに着目すると、D-MEMで培養した場合にはPDO同士が集積し細胞が増殖していくのに対し、organoid Mediumで培養した場合には、播種時点の位置でとどまりPDOが増殖していた。
(2)シングルセル化したPDOの細胞構造体の内部での共培養
 シングルセルに分散したPDOを細胞構造体の内部に播種した時の増殖を確認した結果を図3A(PDOの蛍光免疫染色像)、図3B(PDOのコンフルエンシー(%)のグラフ)、図3C(切片におけるPDO及び脈管網構造の免疫染色像)、図3D(切片におけるPDO及び脈管網構造の蛍光免疫染色像)、及び図3E(切片における脈管網構造の蛍光免疫染色像)に示す。図3A中のスケールバーは、1mmである。図3C中の矢印は、血管様の脈管網構造内に浸潤したPDOを示している。図3D中のスケールバーは、200μmである。図3D中の矢印は、血管様の脈管網構造内に浸潤したPDOを示している。
 図3A及び図3Bに示すように、細胞構造体の内部にシングルセルに分散したPDOを播種した場合においても、PDOは経時的に増殖することがわかった。
 また、図3Cの抗EpCAM抗体を用いた切片の免疫染色像から、シングルセルに分散したPDOを細胞構造体の内部に播種した条件下において、Day7以降に腺菅構造を形成することが確認された。
 さらに、図3Cの抗CD31抗体を用いた切片の免疫染色像及び図3Dから、一部血管様の脈管網構造内にPDOが浸潤している様子が確認された。その他、血管様の脈管網構造が通常と比べて形態が肥大化する様子や、PDOへの血管様の管腔構造の誘引も観察された。
 図3Eに示すように、organoid mediumでは血管内皮細胞同士が凝集することで、血管様の脈管網構造が形成できないことが明らかとなった。このことから、血管様の脈管網構造とPDOの相互作用を評価するためには、培地としてorganoid mediumではなく、D-MEMが適していると推察された。
(3)形態を維持したままのPDOの細胞構造体の天面での共培養
 形態を維持したままのPDOを細胞構造体の天面に播種した時の増殖を確認した結果を図4A(明視野像)及び図4B(切片におけるPDOの免疫染色像)に示す。図4A中の上段のスケールバーは1mmであり、下段のスケールバーは500μmである。
 図4Aに示すように、細胞構造体の天面にPDOが接着し、培養時間が経過するにつれPDOの立体構造が少し平面化している様子が確認された。明視野のため定量評価は困難だが、D-MEM、及びorganoid mediumのいずれの培地を用いても、経時的に細胞自体も増殖していることがわかった。
 図4Bに示すように、D-MEMで培養するとPDOは腺管構造の形態を維持しているのに対し、organoid mediumでは腺管構造が消失し、扁平な形態で細胞構造体の天面に存在していることが明らかとなった。
 以上のことから、次のことが明らかとなった。
 シングルセル化したPDOを細胞構造体の天面又は内部で培養した場合において、D-MEM及びorganoid mediumのいずれの培地を用いても、PDOは増殖した。また、培地としてD-MEMを用いた場合に、細胞構造体の天面又は内部のいずれにおいても、PDOは腺管構造を形成することが確認された。また、血管様の脈管網構造への浸潤も認められた。
 形態を維持したままのPDOを細胞構造体の天面で培養した場合において、D-MEM及びorganoid mediumのいずれの培地を用いても、PDOは増殖した。また、培地としてD-MEMを用いた場合には、腺管構造を維持できたのに対して、培地としてorganoid mediumを用いた場合にはPDOの腺管構造を維持することができないことが明らかとなった。
 さらに、培地としてD-MEMを用いた場合には、細胞構造体は脈管網構造を形成できるのに対して、培地としてorganoid mediumを用いた場合には脈管網構造を形成できないことが明らかとなった。
[実施例2]
 実施例1の結果から、形態を維持したままのPDOを播種する条件では、細胞数を測定して任意細胞数を細胞構造体に播種することが困難であるが、PDOをシングルセル化して播種する条件では、細胞数を測定して播種することができ、薬効評価に好適であることが明らかとなった。よって、シングルセル化したPDOを細胞構造体の天面に播種する条件で、薬効評価試験を行った。
 用いたPDOはKRAS遺伝子にG12C変異を有するため、薬剤としてG12C阻害剤であるAMG510単剤(培地中濃度0、0.1、1、及び10μM)と、併用効果があるといわれているEGFR阻害剤のcetuximab(培地中濃度50μg/mL)との併用を行った。培地としては、D-MEMを用いた。
 まず、実施例1と同様の方法を用いて、細胞構造体の構築開始日はDay0として、Day1に培地交換を行い、Day2にシングルセル化したPDO(5×103cells/well;96wellプレート)を細胞構造体の天面に播種した。次いで、Day5に、上記薬剤を添加し、Day8に固定化して、生存しているがん細胞の細胞数を測定した。次いで、AMG510が0μM、cetuximabが0μg/mLの条件下の細胞数に対する、各条件において生存している細胞数の割合をがん細胞の生存率(%)として算出した。結果を図5に示す。図5において、横軸は、AMG510の培地中濃度を、縦軸は、がん細胞の生存率(%)を表す。
 図5に示すように、AMG510単剤及びAMG510とcetuximabの併用のいずれにおいても、AMG510の薬剤濃度依存的にがん細胞の減少が確認された。
 以上の結果から、PDOの遺伝子変異から推測される効果が期待された薬剤での薬効を実際に確認することができた。
[実施例3]
 実施例1とは異なるオルガノイドを用いて細胞構造体の天面又は内部に播種して培養し、がんオルガノイドの増殖を確認した。また、血管網形成に影響のある培地の検討を行った。
<材料>
1.培養細胞及びがんオルガノイド
 使用した細胞株及びがんオルガノイドを表5に示す。患者由来PDO HCT26 1Tは、大腸がんの患者由来の原発巣のPDOである。患者由来PDO HCT26 3LMは、大腸がんの患者由来の転移巣である大腸のPDOである。患者由来PDO HCT26 1T及び患者由来PDO HCT26 3LMは、参考文献1に記載の方法に基づいて樹立されたものを用いた。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
 細胞構造体の構築に用いたHUVEC及びNHDFは、実施例1と同じである。
2.試薬等及び測定装置
 使用した試薬を表6に示す。培養容器等の消耗品、抗体及び測定装置は、実施例1と同じである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
 用いた培地と培地の添加因子組成を表7に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
 <培養及び画像解析>
 患者由来PDOの前培養及び細胞構造体の作製は、実施例1と同じ方法で行った。PDOと細胞構造体の共培養については、シングルセル化したPDOを用い、細胞構造体の天面出培養する方法とした。また、培養を続けるサンプルに関して、3日又は4日に1回のタイミングで各培地を用いて培地交換を行った以外は、実施例1と同じ方法でPDOと細胞構造体の共培養を行った。
 蛍光免疫染色、画像撮影及び画像解析は、実施例1と同じ方法で行った。
<結果及び考察>
 表6に示す培地D-MEM、InterstiCult Organoid Growth Medium、RPMI-1640、McCoy 5A及びHam’s F12並びに表7に示す培地AIM(+)、EGM2及びESCを用いてPDOと細胞構造体の共培養し、血管網形成の評価を行った。図6は、各培地で培養した組織の抗CD31抗体を用いた免疫染色像である。図6中のスケールバーは、500μmを示す。図6中、DMEMはD-MEM、OMはInterstiCult Organoid Growth Medium、RPMIはRPMI-1640、McCoyはMcCoy 5A、F12はHam’s F12、ESC-Y-bFGFはESCをそれぞれ示す。
 その結果、D-MEM、RPMI-1640及びMcCoy 5Aを用いると、血管網形成された。Ham’s F12及びESCを用いると、D-MEMと比較すると抑制されるものの血管網形成していることがわかった。またEGM2、InterstiCult Organoid Growth Medium及びAIM(+)を用いると、血管内皮細胞が凝集し、血管網形成自体が抑制されることがわかった。
 EGM2及びAIM(+)は、それぞれ基礎培地と表7に記載の添加因子を加えている。そこで血管網形成の阻害要因が基礎培地か、添加因子かを切り分けを行った。なおInterstiCult Organoid Growth Mediumは、既に添加因子が含まれており、切り分けが不可能であるため割愛した。
 培地としてそれぞれD-MEM、AIM(+)、AIM(+)の添加因子を加えたD-MEM及びAIMを用いて、PDOと細胞構造体の共培養を行った。結果を図7に示す。図7中のスケールバーは、500μmを示す。図7中DMEM+AIM supplementは、AIM(+)の添加因子を加えたD-MEMを用いたことを示す。
 AIM(+)の添加因子を加えたD-MEMを用いると、血管網を形成したのに対し、添加因子を加えなかったAIM培地では血管網形成が抑制された。従って、AIMの基礎培地が血管網抑制の要因であることが示唆された。
 培地としてそれぞれD-MEM、EBM2及びEGM2の添加因子を加えたD-MEMを用いて、PDOと細胞構造体の共培養を行った。結果を図8に示す。図8中のスケールバーは、500μmを示す。図8中DMEM+EGM2 supplementは、EGM2の添加因子を加えたD-MEMを用いたことを示す。EGM2培地の基礎培地であるEBM2では、血管網形成したのに対し、EGM2の添加因子を加えたD-MEMでは血管網の形成が抑制された。
 次に添加因子の中の阻害要因を同定するために、D-MEM及びEBM2に表7に記載のEGM2の各添加因子をそれぞれ加えた培地並びにEGM2から表7に記載の各添加因子を排除した培地を作製し、血管網評価を行った。図9及び10に示す。図9及び10中のスケールバーは、500μmを示す。図9中DMEM+EGM2 supplementは、EGM2の添加因子全てを加えたD-MEMを用いたことを示す。図10中、+は添加因子を含むことを意味し、-は添加因子を除いたことを意味する。その結果、DMEMとEBM2のそれぞれにHydrocortisoneを添加した場合のみ血管網の形成が抑制され、EGM2培地からHidrocortisoneのみを除いた場合では血管網を形成することから、Hidrocortisoneが血管網形成阻害に関与していることがわかった。
 InterstiCult Organoid Growth Mediumは、表7に記載のbasal mediumにいくつか添加因子を加えている。よって、basal mediumを培地として実施例3と同じ手順でPDOと細胞構造体の共培養を行った。結果を図11の「basal」に示す。図11にはInterstiCult Organoid Growth Mediumを用いた共培養の結果もあわせて示す。図11中のスケールバーは、500μmを示す。図11に示す通り、basal mediumを用いると血管網形成していることがわかった。basal mediumに各種添加因子(B27-vitaminA、N-acetylcysteine、Gastrin、EGF、R-spondin 1、Noggin、nicotineamide、A-83-01及びSB202190)を加えた培地がInterstiCult Organoid Growth Mediumであるため、これら添加因子に血管網形成抑制要因があることが考えられる。
 また、FBSの血管網形成への影響を調べるため、FBSを含まないD-MEM(以下DMEM(-)と記載する)、FBSを含むD-MEM(以下DMEM(+)と記載する)を用いて実施例3と同じ手順でPDOと細胞構造体の共培養を行った。結果を図11の「DMEM(+)」及び「DMEM(-)」に示す。D-MEMを用いた場合、FBSの有無によって血管網形成の密度や量に違いはあるものの、どちらも血管網形成が認められた。
 以上の結果から、AIM培地では基礎培地が血管網抑制の要因である可能性が示唆された。EGM2培地では添加因子のHydrocortisoneが血管網抑制の要因である可能性が示唆された。
[実施例4]
 実施例1とは異なるPDO2種類であるHCT26-1T及びHCT26-3LMを用いてがんの増殖や形態評価を行った。培地としてDMEM(-)、DMEM(+)、basal Medium及びInterstiCult Organoid Growth Mediumを用い、実施例3と同じ手順で培養を行った。また、シングルセル化したPDOを用い、細胞構造体の内部でPDOを培養する方法では、培養を続けるサンプルに関して、3日又は4日に1回のタイミングで各培地を用いて培地交換を行った以外は、実施例1と同じ方法でPDOと細胞構造体の共培養を行った。
 結果を図12に示す。図12中のスケールバーは、500μmを示す。図12中、「on 3D」は、細胞構造体の天面でPDOを培養したことを示し、「in 3D」は、細胞構造体の内部でPDOを培養したことを示す。また、図12に示す画像から培養4日目、8日目及び11日目のPDOのコンフルエンシー(%)を算出した。図13は、各培地でHCT26-1T及びHCT26-3LMを培養した組織でのPDOのコンフルエンシー(%)の経時変化を示すグラフである。HCT26-1T及びHCT26-3LMは、細胞構造体の天面でPDOを培養する場合でも、細胞構造体の内部でPDOを培養する場合でも、InterstiCult Organoid Growth Medium以外の培地では顕著に増殖することがわかった。
 次にPDOの形態を確認するため、これら組織の切片を作製し評価を行った。図14は、HCT26-1Tを細胞構造体の天面で培養した場合の組織の切片におけるPDOの免疫染色像を示す。図15は、HCT26-3LMを細胞構造体の天面で培養した場合の組織の切片におけるPDOの免疫染色像を示す。図16は、HCT26-1Tを細胞構造体の内部で培養した場合の組織の切片におけるPDOの免疫染色像を示す。図17は、HCT26-3LMを細胞構造体の内部で培養した場合の組織の切片におけるPDO免疫染色像を示す。
 InterstiCult Organoid Growth Mediumを用いた条件では増殖が悪かった。一方で、HCT26-1T及びHCT26-3LMを細胞構造体の天面及び内部のいずれで培養した場合においても、InterstiCult Organoid Growth Medium以外の培地条件においても腺管構造を有したPDOが確認された。また興味深いことに、細胞構造体の天面にシングルセル化したHCT26-1T及びHCT26-3LMを播種しても、多くは細胞構造体の内部で増殖し腺管構造を形成することがわかった。細胞構造体上に局在するPDOのpopulationもあるが、PDOが高密度になった場合が多かった。PDOが高密度になった場合、腺管構造を形成せず円柱上皮様の構造を形成した。
 以上の結果より、臨床検体から樹立したPDOであるHCT26 1T及びHCT26 3LMにおいて、D-MEM及びbasal mediumでは血管網形成やPDO増殖が生じるが、添加剤が含まれるInterstiCult Organoid Growth Mediumでは、血管網形成及びPDOの増殖が抑制されることが確認された。また、細胞構造体の天面にPDOを播種しても細胞構造体内で増殖し、腺管構造を形成することが確認された。
 本実施形態のがんオルガノイドの培養方法によれば、細胞外マトリックスを用いずに、がんオルガノイドの性質を維持しながら、間質を構成する細胞と共培養でき、且つ、がん細胞の浸潤を評価することができる。
 1…がんオルガノイド、1A…シングルセル化したがんオルガノイド(がんオルガノイドを分散してなる単一細胞)、2…細胞構造体、2A…第1の細胞構造体、2B…第2の細胞構造体、3…培養容器

Claims (10)

  1.  がんオルガノイドを細胞構造体の天面又は内部にて、細胞外マトリックスを含まない培地で培養することを含み、
     前記細胞構造体は、間質を構成する細胞を含み、2以上の細胞層が厚み方向に積層されている、がんオルガノイドの培養方法。
  2.  前記培養は、前記がんオルガノイドを単一細胞として分散させた後、前記細胞構造体の天面又は内部にて培養することを含む、請求項1に記載のがんオルガノイドの培養方法。
  3.  前記培養は、前記がんオルガノイドを2以上の細胞層が厚み方向に積層されている第1の細胞構造体の天面に播種した後、前記間質を構成する細胞を含む細胞懸濁液をさらに播種して、前記がんオルガノイドの上部に第2の細胞構造体を構築して、前記がんオルガノイドを細胞構造体の内部にて培養することを含む、請求項1又は2に記載のがんオルガノイドの培養方法。
  4.  前記培地が、D-MEM、ESC、EBM2、添加因子としてHidrocortisoneを含まないEGM2、RPMI-1640、Ham’s F-12及びMccoy's 5aのいずれか一つ又は二つ以上の組み合わせからなる培地である、請求項1又は2に記載のがんオルガノイドの培養方法。
  5.  前記がんオルガノイドは、腺管構造を有する、請求項1又は2に記載のがんオルガノイドの培養方法。
  6.  前記細胞構造体が、前記間質を構成する細胞として、線維芽細胞、周皮細胞、内皮細胞、及び免疫細胞からなる群より選ばれる1種以上の細胞を含む、請求項1又は2に記載のがんオルガノイドの培養方法。
  7.  前記内皮細胞が、血管内皮細胞及びリンパ管内皮細胞からなる群より選ばれる1種以上の細胞である、請求項6に記載のがんオルガノイドの培養方法。
  8.  前記細胞構造体が、脈管網構造を有する、請求項1又は2に記載のがんオルガノイドの培養方法。
  9.  前記細胞構造体は、10以上の細胞層が厚み方向に積層されている、請求項1又は2に記載のがんオルガノイドの培養方法。
  10.  請求項1又は2に記載のがんオルガノイドの培養方法により得られたがんオルガノイドを含む細胞構造体を被験物質存在下で培養すること、及び、
     前記被験物質の前記がんオルガノイドに対する影響を評価すること、
    を含む、被験物質のスクリーニング方法。
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