JP2022186852A - ソーワイヤー及び切断装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】砥粒との密着性が高いソーワイヤーを提供する。【解決手段】複数の砥粒130が表面に付着したソーワイヤー10は、タングステン又はタングステン合金からなる金属線100と、金属線100の表面に設けられたニッケルめっき層110と、金属線100とニッケルめっき層110との界面に設けられた、ニッケル及びタングステンの密着層120とを備え、ニッケルめっき層110は、ソーワイヤー10が捻られた場合に、密着層120によって金属線100から剥がれない。【選択図】図3

Description

本発明は、ソーワイヤー及び当該ソーワイヤーを備える切断装置に関する。
従来、ピアノ線からなるワイヤーを用いてシリコンインゴットをスライスするマルチワイヤーソーが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
特開2008-213111号公報
ワイヤーソーでは、ワイヤーの線径分の削りカスが発生する。上記従来のマルチワイヤーソーでは、ピアノ線からなるワイヤーを利用しているが、ピアノ線の細線化は難しく、現状では線径が60μmより小さいピアノ線の製造は難しく、かつ、ピアノ線の弾性率は150GPa~250GPaであるため、細径化できたとしてもスライス時にタワミが発生する。このため、細径化されたピアノ線は、ワイヤーソーのスライスに不向きである。
このため、ピアノ線とは異なる材料を用いてソーワイヤーを製造することが考えられる。しかしながら、固定砥粒方式のようにソーワイヤーと砥粒とを予め固着させておく場合には、ソーワイヤーと砥粒との固着性が低いと、砥粒が脱落して切れ味が低下するという問題がある。
そこで、本発明は、砥粒との密着性が高いソーワイヤー及び当該ソーワイヤーを備える切断装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るソーワイヤーは、複数の砥粒が表面に付着したソーワイヤーであって、タングステン又はタングステン合金からなる金属線と、前記金属線の表面に設けられたニッケルめっき層と、前記金属線と前記ニッケルめっき層との界面に設けられた、ニッケル及びタングステンの密着層とを備え、前記ニッケルめっき層は、前記ソーワイヤーが捻られた場合に、前記密着層によって前記金属線から剥がれない。
また、本発明の一態様に係る切断装置は、前記ソーワイヤーを備える。
本発明によれば、砥粒との密着性が高いソーワイヤー及び当該ソーワイヤーを備える切断装置を提供することができる。
実施の形態に係る切断装置の斜視図である。 実施の形態に係る切断装置によるインゴットのスライスの様子を示す断面図である。 実施の形態に係るソーワイヤーの断面図である。 実施の形態に係るソーワイヤーの製造方法において、細線化された金属線を作製する工程を示す状態遷移図である。 実施の形態に係るソーワイヤーの製造方法において、金属線に砥粒を固着させる工程を示す状態遷移図である。 実施の形態に係るソーワイヤーに捻りを加える捻り装置の模式図である。 実施の形態に係るソーワイヤーにおいて、熱処理の加熱温度とめっき剥がれとの関係を示す図である。 実施の形態に係る捻りが加えられたソーワイヤーを示す図である。
以下では、本発明の実施の形態に係るソーワイヤー及び切断装置について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
また、本明細書において、平行又は等しいなどの要素間の関係性を示す用語、及び、円形などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
(実施の形態)
[切断装置]
まず、本実施の形態に係るソーワイヤーを備える切断装置の概要について、図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る切断装置1の斜視図である。
図1に示すように、切断装置1は、ソーワイヤー10を備えるマルチワイヤーソーである。切断装置1は、例えば、インゴット20を薄板状に切断することで、ウェハを製造する。インゴット20は、例えば、単結晶シリコンから構成されるシリコンインゴットである。具体的には、切断装置1は、ソーワイヤー10によってインゴット20をスライスすることで、複数のシリコンウェハを同時に製造する。
なお、インゴット20は、シリコンインゴットに限らず、シリコンカーバイド又はサファイアなどの他のインゴットでもよい。あるいは、切断装置1による切断対象物は、コンクリート又はガラスなどでもよい。
図1に示すように、切断装置1は、さらに、2つのガイドローラー2と、支持部3と、張力緩和装置4とを備える。
2つのガイドローラー2には、1本のソーワイヤー10が複数回、巻きつけられている。ここでは、説明の都合上、ソーワイヤー10の1周分を1つのソーワイヤー10とみなして、複数のソーワイヤー10が2つのガイドローラー2に巻きつけられているものとして説明する。つまり、以下の説明において、複数のソーワイヤー10は、1本の連続するソーワイヤー10を形成している。なお、複数のソーワイヤー10は、個々に分離した複数のソーワイヤーであってもよい。
2つのガイドローラー2は、複数のソーワイヤー10を所定の張力でまっすぐに張った状態で、各々が回転することで、複数のソーワイヤー10を所定の速度で回転させる。複数のソーワイヤー10は、互いに平行で、かつ、等間隔で配置されている。具体的には、2つのガイドローラー2にはそれぞれ、ソーワイヤー10が入れられる溝が所定のピッチで複数設けられている。溝のピッチは、切り出したいウェハの厚みに応じて決定される。溝の幅は、ソーワイヤー10の線径φと略同じである。
張力緩和装置4は、ソーワイヤー10にかかる張力を緩和する装置である。例えば、張力緩和装置4は、つるまきバネ又は板バネなどの弾性体である。図1に示すように、例えばつるまきバネである張力緩和装置4は、一端がガイドローラー2に接続され、他端が所定の壁面に固定されている。張力緩和装置4がガイドローラー2の位置を調整することで、ソーワイヤー10にかかる張力を緩和することができる。
なお、切断装置1は、3つ以上のガイドローラー2を備えてもよい。3つ以上のガイドローラー2の周りに複数のソーワイヤー10が巻きつけられていてもよい。
支持部3は、切断対象物であるインゴット20を支持する。支持部3は、インゴット20を複数のソーワイヤー10に向けて押し出すことにより、インゴット20が複数のソーワイヤー10によってスライスされる。
なお、図示しないが、切断装置1は、複数のソーワイヤー10に、クーラントなどの切削液を供給する供給装置を備えていてもよい。
図2は、本実施の形態に係る切断装置1によるインゴット20のスライスの様子を示す断面図である。図2は、図1に示すII-II線における断面であって、ソーワイヤー10の延在方向に直交する断面の一部を示している。具体的には、複数のソーワイヤー10のうち3本のソーワイヤー10によってインゴット20をスライスする様子を示している。
インゴット20を複数のソーワイヤー10に向けて押し出すことにより、インゴット20は、複数のソーワイヤー10によって同時に複数の分割片21に分割される。隣り合う分割片21の間の隙間22は、ソーワイヤー10によってインゴット20が削り取られることによって形成された空間である。つまり、隙間22の大きさは、インゴット20のロスに相当する。
隙間22の幅dは、ソーワイヤー10の線径φに依存する。すなわち、ソーワイヤー10の線径φが大きいほど、幅dが大きくなってインゴット20のロスは多くなる。ソーワイヤー10の線径φが小さいほど、幅dが小さくなってインゴット20のロスは少なくなる。
具体的には、隙間22の幅dは、線径φより大きくなる。幅dと線径φとの差分は、ソーワイヤー10に固着された砥粒130の大きさと、ソーワイヤー10の回転の際の振動の揺れ幅とに依存する大きさである。このとき、ソーワイヤー10の揺れ幅は、ソーワイヤー10を強く張ることにより抑えることができる。ソーワイヤー10の引張強度が高く、弾性率が高いほど、ソーワイヤー10を強く張ることが可能になる。このため、ソーワイヤー10の揺れ幅が小さくなって、隙間22の幅dを小さくすることができ、インゴット20のロスを更に少なくすることができる。
なお、分割片21の厚みDは、複数のソーワイヤー10の配置間隔に依存する。このため、複数のソーワイヤー10は、所望の厚みDと所定のマージンとを加えた間隔で配置される。具体的には、マージンは、幅dと線径φとの差分であり、ソーワイヤー10の揺れ幅及び砥粒130の粒径に応じて決まる値である。
以上のことから、インゴット20のロスを少なくするためには、ソーワイヤー10の線径φと引張強度と弾性率が重要なパラメータであることが分かる。具体的には、ソーワイヤー10の線径φを小さくし、又は、ソーワイヤー10の引張強度を高く、弾性率を高くすることで、インゴット20のロスを少なくすることができる。
以下では、ソーワイヤー10の構成及び製造方法について説明する。
[ソーワイヤー]
図3は、本実施の形態に係るソーワイヤー10の断面図である。具体的には、図3は、ソーワイヤー10の延在方向に直交する断面を拡大した図である。
図3に示すように、ソーワイヤー10は、金属線100と、ニッケルめっき層110と、密着層120とを備える。さらに、ソーワイヤー10は、表面に付着した複数の砥粒130を備える。なお、ソーワイヤー10の線径φは、金属線100の線径と、ニッケルめっき層110と、密着層120との合計である。なお、密着層120は、金属線100及びニッケルめっき層110の界面に所定の厚さで形成されている。
金属線100は、タングステン(W)からなる極細の金属細線である。金属線100は、純タングステンによって構成されている。具体的には、タングステンの純度は、99.9%以上である。
タングステンからなる金属線100は、線径が小さくなるほど、断面積当りの引張強度が強くなる。すなわち、タングステンからなる金属線100を利用することで、線径φが小さく、かつ、引張強度が高いソーワイヤー10を実現することができ、インゴット20のロスを抑制することができる。
また、金属線100の弾性率は、350GPa以上450GPa以下である。なお、弾性率は、縦弾性係数である。つまり、金属線100は、ピアノ線の約2倍の弾性率を有する。
金属線100の線径は、例えば80μm以下である。なお、タングステンからなる金属線100は、細線化するほど、すなわち、線径が小さくなるほど、断面積当りの強度が高くなる。例えば、金属線100の線径は、50μm以下でもよく、40μm以下でもよい。一例として、金属線100の線径は、20μmであるが、10μmでもよい。なお、本実施の形態のように、砥粒130を付着させる場合には、金属線100の線径は、例えば10μm以上である。
金属線100は、線径が均一である。金属線100の線径が80μm以下であるので、金属線100は、柔軟性を有し、十分に屈曲させやすい。このため、ソーワイヤー10をガイドローラー2間に容易に巻きつけることができる。
図3に示すように、金属線100の断面形状は、円形であるが、これに限らない。金属線100の断面形状は、正方形などの矩形又は楕円形などでもよい。
金属線100の引張強度は、例えば、3500MPa以上である。線径を小さくすることで、金属線100の引張強度は、例えば、4000MPa以上にすることもできる。
ニッケルめっき層110は、金属線100の表面に設けられためっき層である。ニッケルめっき層110は、ニッケル(Ni)から構成された薄膜層である。ニッケルめっき層110の膜厚は、例えば、1μmであるが、これに限らない。
ニッケルめっき層110は、複数の砥粒130の少なくとも一部を密着して覆い、かつ、複数の砥粒130間の金属線100の表面を全面的に覆っている。具体的には、図3に示すように、ニッケルめっき層110は、断面視において、金属線100の軸回りに全周に亘って円環状に設けられている。
複数の砥粒130は、硬質の粒子であり、例えば、ダイヤモンド又はCBN(立方晶窒化ホウ素)などの粒子である。複数の砥粒130の平均粒径は、例えば10μm以下であるが、これに限らない。複数の砥粒130は、少なくとも一部がニッケルめっき層110に密着されることにより、ソーワイヤー10の表面に付着している。
[ソーワイヤーの製造方法]
以下では、上記特徴を有するソーワイヤー10の製造方法について説明する。ソーワイヤー10の製造方法は、細線化された金属線100を作製する工程と、金属線100に複数の砥粒130を固着させる工程とを含んでいる。
以下では、まず、図4を用いて、金属線100を作製する工程について説明する。図4は、本実施の形態に係るソーワイヤー10の製造方法において、細線化された金属線100を作製する工程を示す遷移図である。
まず、図4の(a)に示すように、タングステン粉末101を準備する。タングステン粉末101の平均粒径は、例えば5μmであるが、これに限らない。
次に、タングステン粉末101に対してプレス及び焼結(シンター)を行うことで、タングステンからなるインゴットを作製する。周囲から鍛造圧縮して伸展するスエージング加工を、インゴットに対して行うことで、図4の(b)に示すように、ワイヤー状のタングステン線102を作製する。例えば、焼結体であるタングステンのインゴットは、線径が15mm程度であるのに対して、ワイヤー状のタングステン線102は、線径が3mm程度である。
次に、図4の(c)に示すように、伸線ダイスを用いた線引き加工を行う。
具体的には、まず、図4の(c1)に示すように、タングステン線102をアニールする。具体的には、バーナーで直接的にタングステン線102を加熱するだけでなく、タングステン線102に電流を流しながら加熱する。アニール工程は、スエージング加工又は線引き加工によって生じる加工歪を除去するために行われる。
次に、図4の(c2)に示すように、伸線ダイス30を用いてタングステン線102の線引き、すなわち、伸線を行う。なお、前段のアニール工程によって、タングステン線102が加熱されて柔らかくなっているので、伸線を容易に行うことができる。タングステン線102が細線化されることで、その断面積当りの強度が高くなる。つまり、線引き工程によって細線化されたタングステン線103は、タングステン線102よりも断面積当りの強度が高い。なお、タングステン線103の線径は、例えば0.6mmであるが、これに限らない。
次に、図4の(c3)に示すように、線引き後のタングステン線103に対して電解研磨を行うことにより、タングステン線103の表面を滑らかにする。電解研磨工程は、例えば水酸化ナトリウム水溶液などの電解液40に、タングステン線103と、炭素棒などの対向電極41とを浸した状態で、タングステン線103と対向電極41との間に通電することで行われる。
次に、図4の(c4)に示すように、ダイス交換を行う。具体的には、次の線引き加工に利用するダイスとして、伸線ダイス30よりも口径が小さい伸線ダイス31を選択する。なお、伸線ダイス30及び31は、例えば、焼結ダイヤモンド又は単結晶ダイヤモンドなどから構成されるダイヤモンドダイスである。
タングステン線103の線径が所望の線径(具体的には、60μm以下)になるまで、図4の(c1)~(c4)を繰り返し行う。このとき、図4の(c2)で示す線引き工程は、対象となるタングステン線の線径に応じて、伸線ダイス30又は31の形状及び硬さ、使用する潤滑剤、並びに、タングステン線の温度などを調整することで行われる。
図4の(c1)で示すアニール工程も同様に、対象となるタングステン線の線径に応じて、アニール条件を調整する。アニール工程によって、タングステン線の表面には、酸化物が付着する。アニール条件を調整することで、付着する酸化物量を調整することができる。
具体的には、タングステン線の線径が大きい程、高い温度でアニールし、タングステン線の線径が小さい程、低い温度でアニールする。例えば、タングステン線の線径が大きい場合、具体的には、1回目の線引き加工のときのアニール工程では、1400℃~1800℃の温度でアニールする。所望の線径になる最終線引き加工のときの最終アニール工程では、1200℃~1500℃の温度で加熱する。なお、最終アニール工程では、タングステン線への通電を行わなくてもよい。
また、線引き加工の繰り返しの際に、アニール工程は省略されてもよい。例えば、最終アニール工程は省略されてもよい。具体的には、最終アニール工程を省略し、潤滑剤並びに伸線ダイスの形状及び硬さを調節してもよい。
また、最終アニール後の線引き工程(すなわち、最終線引き工程)では、単結晶ダイヤモンドから構成される単結晶ダイヤモンドダイスを伸線ダイス31として利用する。単結晶ダイヤモンドダイスでは、ダイヤモンド粒子の脱離が起きにくいため、線引き後のタングステン線に線筋が形成されにくい。このため、所望の線径になったタングステン線の表面粗さRaを小さくすることができる。
また、線引き加工の繰り返しの際に、例えば、50MG時点での酸化物量の重量比を0.2%以上0.5%以下として、線引きを孔径200μmの単結晶ダイヤモンドダイスから始める。これにより、図4の(d)に示すように、表面粗さRaが0.15μm以下になった金属線100が製造される。
続いて、金属線100に複数の砥粒130を固着させる工程について図5を用いて説明する。図5は、本実施の形態に係るソーワイヤー10の製造方法において、金属線100に砥粒130を固着させる工程を示す状態遷移図である。なお、図5の(e)では、めっき液50の一部を、図5の(f)及び(g)では、金属線100の表層部分を模式的に拡大して示している。
まず、金属線100の表面にニッケルめっき層110を形成し、かつ、砥粒130を電着する。具体的には、図5の(e)に示すように、めっき液50にニッケル板51と金属線100とを浸した状態で、ニッケル板51と金属線100との間に通電する。なお、めっき液50は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル及びホウ酸を含む液体である。本実施の形態では、めっき液50には複数の砥粒130が分散されて混合されている。これにより、図5の(f)に示すように、複数の砥粒130が金属線100の表面に電着されて、さらに、砥粒130間の隙間を埋めるようにニッケルめっき層110が形成される。
次に、図5の(f)に示すように、ニッケルめっき層110が形成された金属線100に対して熱処理を行う。熱処理によって密着層120を形成する。なお、熱処理前、すなわち、ニッケルめっき層110が形成された直後では、図5の(f)の拡大図に示すように、密着層120は形成されていない。
熱処理は、例えば、650℃の温度で行う。温度が低すぎる場合には、密着層120が形成されない。温度が高すぎる場合には、金属線100の強度が低下する。このため、熱処理は、例えば、450℃より大きく、850℃以下の範囲の温度で行う。
熱処理時間は、例えば、1秒~5秒である。なお、砥粒130がダイヤモンド粒子である場合、ダイヤモンドの酸化を抑制するため、例えばアルゴン雰囲気などの無酸素雰囲気下で熱処理を行う。
以上の工程を経て、図5の(g)に示すように、ソーワイヤー10が製造される。
ニッケルめっき処理及び電着後に、熱処理を行うことで、金属線100とニッケルめっき層110との密着強度が増す。
なお、図4及び図5はそれぞれ、ソーワイヤー10の製造方法の各工程を模式的に示したものである。各工程を個別に行ってもよく、各工程をインラインで行ってもよい。例えば、複数の伸線ダイスは、生産ライン上で、順次口径が小さくなる順で並べられており、各伸線ダイス間にアニール工程を行う加熱装置などが配置されていてもよい。また、最も小さい口径の伸線ダイスの後に、電解研磨装置、めっき装置及び加熱装置が順に配置されていてもよい。
[熱処理とめっき剥がれとの関係]
ここで、ニッケルめっき層110を形成した後の熱処理の温度と、ニッケルめっき層110の脱離(めっき剥がれ)との関係について説明する。
ここでは、図6に示す捻り装置200を用いてソーワイヤー10を複数回捻ることで、めっき剥がれが発生するか否かを観察した。なお、図6は、本実施の形態に係るソーワイヤー10に捻りを加える捻り装置200の模式図である。
図6に示す捻り装置200では、鉤部210は、ソーワイヤー10が引っ掛けられる部分であり、円柱状の回転体220を介してハンドル230に連結されている。回転体220は、支持台240に回転可能に支持されており、ハンドル230の回転に応じて回転する。回転体220の回転に応じて鉤部210も回転する。例えば、ハンドル230の回転数と鉤部210の回転数とは同じである。
まず、捻りの対象として、熱処理の温度を異ならせた複数のソーワイヤー10を準備した。具体的には、熱処理の温度が250℃~850℃の間で、100℃刻みで7種類のソーワイヤー10を準備した。
準備したソーワイヤー10を60mmの長さに切断した後、半分の長さに折り曲げることで、U字状に成形した。図6に示すように、ソーワイヤー10の折り曲げ部分を捻り装置200の鉤(フック)部210に引っ掛けた後、ソーワイヤー10の端部から10mmの位置を把持し、5Nの力で鉤部210とは反対側に引っ張った。さらに、ソーワイヤー10を引っ張りながら、ハンドル230を回すことで、所定回数、鉤部210を回転させた。その後、捻られたソーワイヤー10を顕微鏡で観察することで、めっき剥がれの有無を評価した。
図7は、ソーワイヤー10において、熱処理の加熱温度とめっき剥がれとの関係を示す図である。図7では、捻り回数を40回とし、捻りの回転速度を1回転/秒としたときのめっき剥がれの有無を示している。
図7に示すように、加熱温度が250℃、350℃及び450℃の場合は、図8に示すようなめっき剥がれが発生した。ここで、図8は、捻りが加えられたソーワイヤー10を示す図である。図8において、太破線で囲んだ部分で、ニッケルめっき層110が剥がれている様子が視認できる。なお、加熱温度が低い程、ニッケルめっき層110の脱離量は大きくなることが確認された。
一方で、図7に示すように、加熱温度が550℃、650℃、750℃及び850℃の場合は、めっき剥がれが確認されなかった。以上のことから、加熱温度が450℃以下の場合、ニッケルめっき層110が剥がれてしまうのに対して、加熱温度が550℃以上の場合は、ニッケルめっき層110は脱離しないことが分かる。
なお、加熱温度が高すぎる場合は、ソーワイヤー10の引張強度が低下する。具体的には、750℃で加熱したソーワイヤー10の引張強度は、650℃で加熱したソーワイヤー10の引張強度より低くなった。このため、加熱温度が高すぎることは好ましくなく、例えば、加熱温度は、850℃以下の温度である。
[効果など]
以上のように、本実施の形態に係るソーワイヤー10は、複数の砥粒130が表面に付着したソーワイヤーであって、タングステンからなる金属線100と、金属線100の表面に設けられたニッケルめっき層110と、金属線100とニッケルめっき層110との界面に設けられた、ニッケル及びタングステンの密着層120とを備え、ニッケルめっき層110は、ソーワイヤー10が捻られた場合に、密着層120によって金属線100から剥がれない。また、例えば、金属線100の線径は、80μm以下である。
これにより、金属線100は、タングステンを主成分として含有しているので、細線化する程、断面積当りの引張強度が増加して切れにくくなる。このため、ソーワイヤー10を強い張力でガイドローラー2間に張ることができるので、インゴット20の切断時のソーワイヤー10の振動を抑制することができる。したがって、インゴット20をスライスした時に生じる削りカス、すなわち、インゴット20のロスを少なくすることができる。
本実施の形態では、金属線100とニッケルめっき層110との間に密着層120が設けられているので、金属線100とニッケルめっき層110との密着性が高まる。このため、ニッケルめっき層110によって覆われた砥粒130と金属線100との固着性を高めることができる。これにより、砥粒130の脱離が抑制される。また、金属線100とニッケルめっき層110との密着性が高いので、砥粒130ごとニッケルめっき層110が剥離することも抑制される。したがって、ソーワイヤー10の切れ味の低下を抑制することができる。
また、本実施の形態に係る切断装置1は、ソーワイヤー10を備える。
これにより、ソーワイヤー10の線径が小さくなるので、1つのインゴット20から切り出されるウェハの枚数を増やすことができる。また、インゴット20をスライスした時に生じる削りカスを少なくすることができる。インゴット20の材料などの限られた資源を有効に利用することができる。また、ソーワイヤー10の切れ味の低下が抑制されるので、インゴット20のスライスを精度良く行うことができる。
(その他)
以上、本発明に係るソーワイヤー及び切断装置について、上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上記の実施の形態では、金属線100が純タングステンからなる例について示したが、これに限らない。金属線100は、レニウム(Re)とタングステンとの合金(ReW)から構成されていてもよい。
具体的には、金属線100は、タングステンを主成分として含有し、所定の割合でレニウムを含有していてもよい。金属線100のレニウムの含有率は、例えば0.1wt%以上10wt%以下である。具体的には、レニウムの含有率は、3wt%であるが、1wt%でもよい。
金属線100がレニウムを含有していることで、純タングステン線よりも強度を高めることができる。例えば、ReW線の引張強度は、3500MPa以上6000MPa以下である。これにより、金属線100は、細線化しても切れにくくなるので、ピアノ線と同等以上の引張強度を実現することができる。
したがって、ソーワイヤー10を2つのガイドローラー2間に更に強く張ることができるので、ソーワイヤー10の振動を更に抑えることができる。よって、インゴット20のロスを更に少なくすることができる。
また、例えば、ソーワイヤー10は、純タングステン又はReW合金からなる金属線100の代わりに、カリウム(K)がドープされたタングステンからなる金属線(以下、カリウムドープタングステン線と記載する)を備えてもよい。
カリウムドープタングステン線は、タングステンを主成分として含有し、所定の割合でカリウムを含有している。カリウムドープタングステン線のカリウムの含有率は、0.005wt%以上0.010wt%以下である。
カリウムドープタングステン線は、線径φが小さくなるほど、断面積当りの引張強度が強くなる。すなわち、カリウムドープタングステン線を利用することで、線径φが小さく、かつ、引張強度が高いソーワイヤーを実現することができ、インゴット20のロスを抑制することができる。
カリウムドープタングステン線の引張強度、弾性率及び線径φなどはそれぞれ、ReW合金からなる金属線100と同じである。
これにより、タングステンが微量のカリウムを含有することで、カリウムドープタングステン線の半径方向の結晶粒成長が抑制される。このため、カリウムドープタングステン線を備えるソーワイヤーは、純タングステンに比べて、高温での強度が高くなる。
また、例えば、上記の実施の形態では、砥粒130の電着とニッケルめっき層110の形成とを同時に行う例について示したが、これに限らない。電着とめっき処理とはいずれか一方が先に行われてもよい。
また、例えば、切断装置1は、マルチワイヤーソーでなくてもよく、インゴット20を1つのソーワイヤー10でスライスすることで、1枚ずつウェハを切り出すワイヤーソー装置でもよい。
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
1 切断装置
10 ソーワイヤー
100 金属線
110 ニッケルめっき層
120 密着層
130 ダイヤモンド粒子(砥粒)

Claims (6)

  1. 複数の砥粒が表面に付着したソーワイヤーであって、
    タングステン又はタングステン合金からなる金属線と、
    前記金属線の表面に設けられたニッケルめっき層と、
    前記金属線と前記ニッケルめっき層との界面に設けられた、ニッケル及びタングステンの密着層とを備え、
    前記ニッケルめっき層は、前記ソーワイヤーが捻られた場合に、前記密着層によって前記金属線から剥がれない
    ソーワイヤー。
  2. 前記密着層は、前記金属線の表面全面に形成されている
    請求項1に記載のソーワイヤー。
  3. 前記金属線の線径は、80μm以下である
    請求項1又は2に記載のソーワイヤー。
  4. 前記金属線の引張強度は、3500MPa以上である
    請求項1~3のいずれか1項に記載のソーワイヤー。
  5. 前記タングステン合金は、レニウムとタングステンとの合金であり、
    前記タングステン合金におけるレニウムの含有率は、0.1wt%以上10wt%以下である
    請求項1~4のいずれか1項に記載のソーワイヤー。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載のソーワイヤーを備える切断装置。
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