JP6063076B1 - レジンボンドソーワイヤおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】芯線の強度低下がなく、芯線からのレジンボンドの剥離を低減し、砥粒の固着力を高めたレジンボンドソーワイヤを提供する。【解決手段】レジンボンドソーワイヤ10は、金属から成る芯線11と、前記芯線11の表面に配置される複数の砥粒12と、前記砥粒12を前記芯線11の表面に固着させるレジンボンド13と、を備え、前記芯線11の表面に長手方向に延びる直線状の溝が形成され、前記溝に前記レジンボンド13が入り込んでいる。【選択図】図1

Description

本発明は、シリコン、石英等の硬質材料のスライス、また切断に用いられるソーワイヤにおいて、砥粒をレジンボンドで芯線に固着したレジンボンドソーワイヤに関する。
上記ソーワイヤを用いたワイヤソーの方式には、ワークと走行ワイヤ間に砥粒を吹きつけながらスライスする遊離砥粒ワイヤソー方式と、砥粒をあらかじめ芯線上に固着させたソーワイヤを用いてスライスする固定砥粒ワイヤソー方式がある。
本稿においては、切削工具として用いられるワイヤのことをソーワイヤと呼び、そのソーワイヤを用いてマルチスライスする装置のことをワイヤソーと呼ぶ。
固定砥粒ワイヤソー方式に用いられるソーワイヤ(固定砥粒ソーワイヤ)には砥粒を電着で固着した電着ソーワイヤとレジンボンドで固着したレジンボンドソーワイヤがある。
レジンボンドソーワイヤは電着ソーワイヤに比較して一般的に安く生産できるものの、砥粒の固着力が劣る。単純に砥粒とレジンボンドの結合力の差によるものもあるが、芯線とレジンボンドの密着力が弱いためにレジンボンドごと砥粒が脱落してしまうということもある。
本特許では砥粒固着力を改善したレジンボンドソーワイヤおよびその製造方法を提案する。
レジンボンドソーワイヤの砥粒固着力を高める提案は以前からあり、たとえば、特許文献1〜4のレジンボンドソーワイヤが知られている。
特許第3471328号公報 特許第3078020号公報 特許第4175728号公報 特許第5778864号公報
特許文献1のレジンボンドソーワイヤでは、芯線に軟質金属メッキ層が施されており、このメッキ層には螺旋状の多条の溝が形成され、砥粒はこの溝に一部が埋設された状態で樹脂によって固着されている。このように、大きな砥粒が並んで配置されると、隣接する大きい砥粒に介在する結合剤が少なく、大きい砥粒を支える結合剤の力は弱い。しかしながら、大きな砥粒は他に比べて径方向の外側に突出しているため、切削時には大きな力を受ける。よって、切削時に大きな砥粒が受ける力に対し、結合剤は大きな砥粒を支えきれず、砥粒は剥離し易い。
また、芯線表面に砥粒径程度の精度で溝形状を作成して砥粒を埋設できれば固着力の向上は期待できるが、ワイヤの細線化が進む中、長尺の長手方向に精度良く多条の溝を形成することは、技術的、コスト的に難しい。さらに、芯線の長手方向に対して交叉する方向の溝によって曲げや引張に対する強度が低下する。よって、切削の際に長尺のワイヤをリールやプーリーなどに繰り返し巻き付けたり曲げたりすると、ワイヤが破断し易くなる。
特許文献2、3では芯線とレジンボンドの固着力を向上させる方法として、芯線表面にプライマリーコートを施してから砥粒をレジンボンドで固着させる方法がある。これにより、レジンボンドは下地のプライマリーコートと化学結合をすることで密着力の向上が期待できる。しかし、芯線とプライマリーコートとの固着力については言及されていない。したがってレジンボンドと砥粒がプライマリーコートごと剥離してしまうことは容易に想像が出来る。
特許文献4では芯線との密着力を向上させるレジンボンド材としてフェノール樹脂とアミン系シランカップリング剤の組み合わせを提案しているが、シランカップリング剤の一般的な使用効果についてしか言及はなされておらず、用途に適した種類の選定や、芯線とレジンボンドとの密着力向上における効果の確認については未だ明確ではない。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、芯線の強度低下がなく、芯線からのレジンボンドの剥離を低減し、砥粒の固着力を高めたレジンボンドソーワイヤを提供することを目的としている。
本発明者らは、上記課題を解決するためにレジンボンドが有効に芯線表面にアンカー効果を発現するような芯線表面の溝形状と、その上に塗布されるレジンボンドペーストにも密着性を向上させるための最適な条件を見出すことで、砥粒の脱落の少ない長寿命のレジンボンドソーワイヤを提案した。
本発明のある態様に係るレジンボンドソーワイヤは、金属から成る芯線と、前記芯線の表面に配置される複数の砥粒と、前記砥粒を前記芯線の表面に固着させるレジンボンドと、を備え、前記芯線の表面に長手方向に延びる直線状の溝が形成され、前記溝に前記レジンボンドが入り込んでいる。
このレジンボンドソーワイヤでは、前記芯線の周方向において0.5μm以上の深さの前記溝の数は、10本以上であってもよい。また、前記芯線の表面の算術平均粗さRaが0.03μm以上0.10μm以下であって、最大高さRzは0.2μm以上1.0μm以下であってもよい。
また、レジンボンドソーワイヤでは、前記レジンボンドは、サルファー系シランカップリング剤が配合されたフェノール樹脂により形成されていてもよい。このレジンボンドを、熱分解GC/MS法により分析すると測定開始1.76分近傍にピークを検出し、そのピークのクロマトグラムを同定すると、硫黄化合物であってもよい。
また、前記芯線はコア線を含み、前記コア線は、0.7重量%以上1.2重量%以下の炭素を含む鋼線であって、3500MPa以上の引張強度を有し、50μm以上120μm以下の径であってもよい。
さらに、前記砥粒は、ダイヤモンドから成り、20μm以下の平均粒径(D50)であって、5μm以下のSD値であってもよい。
本発明の別の態様に係るレジンボンドソーワイヤの製造方法は、表面がブラスめっき層により覆われた芯線材を伸線することで、コア線の表面に溝を形成させながら所定の径まで細くし、そののちに、前記ブラスめっき層の一部または全部をその厚み方向に除去して芯線を形成し、前記芯線の表面に、レジンボンドの材料および砥粒を含む塗料を塗布し、前記塗料を硬化させる。このレジンボンドソーワイヤの製造方法において、前記塗料の粘度は1.0Pa・s以上3.0Pa・s以下であってもよい。
本発明は、以上の構成を有し、芯線の強度低下がなく、芯線からのレジンボンドの剥離を低減し、砥粒の固着力を高めたレジンボンドソーワイヤを提供することができるという効果を奏する。
本発明の上記目的、他の目的、特徴および利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
図1Aは、本発明の実施の形態に係るレジンボンドソーワイヤをその径方向に切断した断面を示す図である。図1Bは、図1Aの芯線の表面を示す図である。図1Cは、図1Aのレジンボンドソーワイヤをその長手方向に切断した断面を示す図である。 図2Aは、図1Aのレジンボンドソーワイヤの製造方法を説明するための図である。図2Bは、図2Aの製造方法におけるコア線、芯線材、芯線およびレジンボンドソーワイヤを示す断面図である。 図3Aは、電解剥離処理における電流密度と算術平均粗さRaとの関係を示すグラフである。図3Bは、電解剥離処理における電流密度と最大高さRzとの関係を示すグラフである。 図4Aは、電解剥離処理における電流密度と破断力との関係を示すグラフであり、図4Bは、電解剥離処理における電流密度と捻回値との関係を示すグラフである。 図5Aは、実施例2の芯線の表面を示す3D画像であり、図5Bは、比較例1の芯線材の表面を示す3D画像である 図6Aは、比較例1のレジンボンドソーワイヤの断面の一部を示すSEM画像であり、図6Bは、図6Aの芯線の表面を示すSEM画像である。図6Cは、実施例1のレジンボンドソーワイヤの断面の一部を示すSEM画像であり、図6Dは、図6Cの芯線の表面を示すSEM画像である。図6Eは、比較例2のレジンボンドソーワイヤの断面の一部を示すSEM画像であり、図6Fは、図6Eの芯線の表面を示すSEM画像である。 図7Aは、実施例1および2ならびに比較例1の芯線の表面上の溝の数を表す表である。図7Bは、実施例1の芯線の断面における溝の位置を示すSEM画像である。 図8Aは、比較例1の接合力の測定結果を示すグラフであり、図8Bは、実施例1の接合力の測定結果を示すグラフであり、図8Cは、実施例2の接合力の測定結果を示すグラフである。図8Dは、電解剥離処理における電流密度とレジンボンドの芯線との接合力を示すグラフである。 図9Aは、実施例4、5および比較例2についてのレジンボンドソーワイヤのタワミ値を示すグラフであり、図9Bは、実施例4、5および比較例2についての砥粒の脱落率を示すグラフである。また、図9Cは、実施例4、5および比較例2についての芯線とレジンボンドの接合力を示すグラフである。 図10Aは、シランカップリング剤を含まないレジンボンドのクロマトグラムである。図10Bに示す、メルカプト系シランカップリング剤を含むレジンボンドのクロマトグラムである。図10Cは、図10Bの1.76minでクロマトグラム検出されたマススペクトルのクロマトグラムである。図10Dは、硫化プロピレンのクロマトグラムである。 図11は、塗料の粘度とレジンボンドの接合力との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
(実施の形態)
(レジンボンドソーワイヤの構成)
まず、本発明の実施の形態に係るレジンボンドソーワイヤ10について、図1A〜図1Cを参照して説明する。レジンボンドソーワイヤ10は、芯線11、砥粒12およびレジンボンド13を備えている。
芯線11は、金属から成る。芯線11の表面には長手方向に延びる複数の溝14が形成されている。複数の溝14は、互いに平行であって、芯線11の中心軸に平行に延びる。溝14の深さおよび数は、溝14に入り込んだレジンボンド13がアンカー効果を発揮する程度のサイズである。たとえば、0.5μm以上の深さの溝14の数は、芯線11の周方向において10本以上であることが好ましい。また、芯線11の表面の算術平均粗さRaが0.03μm以上0.10μm以下であって、最大高さRzは0.2μm以上1.0μm以下である。算術平均粗さRaが0.03μmを越えて小さい場合は、芯線表面が平滑過ぎて十分なアンカー効果が得られない。また、最大高さRzが1.0umを越えて大きい場合は、伸線過程での加工に無理が生じているため使用中の断線のリスクが大きくなる。
本技術は表面のめっきを除去することで、下地のコア線に付与された溝を露出されるものであって、しかし、その溝はめっきを完全除去しなくとも有効な溝を出せれば、めっきがその厚み方向に残っていてもよい。
レジンボンド13は、フェノール樹脂を主成分としており、サルファー系のシランカップリング剤を配合していることを特徴とする。その中でもメルカプト系のシランカップリング剤であることが好ましい。サルファー系のシランカップリング剤をレジンボンド13中に配合することで、アンカー効果を発現するために溝に侵入したレジンボンド13が、更に溝中に残存する銅めっきと反応し、銅が硫化してレジンボンド13と化学結合をする。このことでアンカー効果に加え更に強固な芯線との結びつきとなる。
レジンボンド13の中には他にも補強材として金属系材料または脆性硬質材料ガラス質材料などフィラーを添加している。
レジンボンド13は、芯線11の表面に密着し、芯線11の溝14に入り込んでいる。レジンボンド13の厚みは、砥粒12を十分に保持し、切削の切れ刃を出すために1μm以上10μm以下にすることが好ましい。
コア線は、たとえば、鉄を主成分とし、0.7重量%以上1.2重量%以下の炭素を含む鋼線であって、3500MPa以上の引張強度を有する。コア線はステンレス線やタングステン線などの高強度線を使用することもできる。コア線の径は、50μm以上120μm以下である。めっき層は、伸線加工における芯線11の潤滑性などを向上させるためにコア線の表面に施される。たとえば、銅めっき層と亜鉛めっき層とが積層したブラスめっき層である。
砥粒12は、芯線11の表面に配置される。たとえば、砥粒12は、アルミナおよび炭化ケイ素などのセラミックス、ならびに、ダイヤモンドの粒子であり、好ましくは、ダイヤモンドである。砥粒12の粒径は、砥粒12がレジンボンド13により芯線11に固着され、切削時に砥粒12がレジンボンド13の表面から隆起し得る大きさである。たとえば、20μm以下の平均粒径(D50)であって、5μm以下のSD(Standard Deviation)値である。SD値が5umを越えて大きい場合は、レジンボンド13の表面から突出する砥粒12の高さにバラつきが生じ、一部の砥粒12に大きな力が作用することで、砥粒12の脱落を生じてしまう。更にウエハの表面粗さも損ねてしまう。
ここで言うSD値とは、粒度分布測定でよく用いられる標準偏差であって粒度幅の指標となる値である。この値が大きいほど粒度幅の大きい集合体であり、SD値が小さいほど粒度幅の小さい集合体であることが言える。その式は以下の通りに表される。式において、D84とは粒度分布の累積頻度84%のときの値であり、D16とは粒度分布の累積頻度16%のときの値である。
SD値=(D84−D16)/2
(レジンボンドソーワイヤの製造方法)
次に、レジンボンドソーワイヤ10の製造方法について、図2Aおよび図2Bを参照して説明する。まず、図2B(a)に示す、たとえば、5mmの径のコア線16に前処理を行う(S1)。前処理では、コア線16の表面スケールを除去すると共に、コア線16に皮膜処理を施す。
そして、コア線16に乾式伸線加工を行う(S2)。ここで、出口の径が入口の径より小さな円錐状の孔が設けられた伸線ダイスを用いる。この孔にコア線16を通して、コア線16の断面積を小さくする。複数の伸線ダイスの孔に連続的にコア線16を通して、コア線16の径を段階的に、たとえば、2mm程度まで縮小していく。この際、伸線ダイスの孔からコア線16の表面に圧縮力が作用する。この周方向の応力により、硬いコア線16の表面に複数の溝14が形成される。この溝14は、伸線ダイスに対してコア線16が移動する方向、つまり、コア線16の長手方向に延びる。なお、乾式伸線加工で用いた伸線ダイスは、コア線16に溝14を形成するための特別仕様のものではなく、専ら伸線のための公知のダイスである。
続いて、コア線16に熱処理を施す(S3)。この熱処理により、乾式伸線加工で伸ばされたコア線16の繊維状組織が元の金属組織に戻す。再び、複数の伸線ダイスに連続的にコア線16を通して、コア線16の径を段階的に、たとえば、0.7mm程度まで縮小していく(S4)。この際にも、コア線16の表面に、コア線16の長手方向に延びる複数の直線状の溝14がさらに形成される。そして、この2次乾式伸線加工後に、コア線16に熱処理を施して(S5)、コア線16の組織を戻す。
その後、コア線16の表面にめっき処理を施す(S6)。ここで、コア線16の表面に銅をめっき処理した上で、亜鉛をめっき処理する。これに熱拡散処理を施して、銅めっきと亜鉛めっきとを合金化する。これにより、図2B(c)に示すように、コア線16の表面がブラスめっき層18で覆われて、芯線材17が形成される。
この芯線材17に湿式伸線加工を行う(S7)。湿式伸線加工では、液体潤滑剤に浸漬した伸線ダイスの孔に芯線材17を通して、回転駆動するキャプスタンに芯線材17を巻き付けて引抜ながら伸線していく。これを繰り返して、図2B(d)に示すように、所望の径まで芯線材17を細くしていく。
芯線材17が伸線ダイスの孔を通過する際、伸線ダイスの孔から芯線材17の表面に圧縮力が作用する。この周方向の応力により、ブラスめっき層18で覆われた硬いコア線16の表面に複数の溝14が形成される。この溝14は、芯線材17の長手方向に直線状に延びる。なお、芯線材17の表面であるブラスめっき層18は軟らかいため、その表面には溝14ができない。なお、湿式伸線加工で用いた伸線ダイスは、コア線16に溝14を形成するための特別仕様のものではなく、専ら伸線のための公知のダイスである。また、表面がブラスめっき層18により覆われた芯線材17を伸線することで、コア線16の表面に溝14を形成させながら所定の径まで細くすることができれば、伸線の方法は伸線ダイスに限定されない。
そして、芯線材17に電解剥離処理を施す(S8)。まず、電解液を溜めた電解槽に芯線材17を浸漬する。そして、電解液に陰極を設け、芯線材17に陽極を接続して、直流電流を流す。これにより、芯線材17のブラスめっき層18の銅および亜鉛が還元されて除去される。これにより、図2B(e)に示すように、芯線11が形成される。なお、ここで使用する電解液は、コア線16の主成分である鉄には作用せず、ブラスめっき層18の主成分である銅および亜鉛に作用するものが好ましい。たとえば、電解液としては、30〜80%の硝酸アンモニウム、6〜10%のエチレンジアミン、酢酸塩およびイオン交換水を含むものが用いられる。
このように、コア線16の表面上からブラスめっき層18を除去することにより、溝14が形成されたコア線16の表面が現れる。この際、表層のブラスめっき層18の全てをその厚み方向にコア線16から除去することにより、芯線11の表面における溝14が深く数が多くなるため、後述するアンカー効果の観点から好ましい。しかし、ブラスめっき層18の全てがその厚み方向にコア線16から除去されなくても、芯線11の表面に直線状の溝14が形成されていれば、アンカー効果が発揮される。このため、コア線16上のブラスめっき層18の一部をその厚み方向に除去し、薄いブラスめっき層18がコア線16の表面の全体に残った芯線11であってもよい。
続いて、芯線11に洗浄処理を施す(S9)。この洗浄処理では、たとえば、アルカリ洗浄液による芯線11の洗浄と、水による芯線11の洗浄とを繰り返す。これにより、芯線11の表面上から電解液およびその他の汚れを除去する。その後、芯線11に乾燥処理を施し(S10)、芯線11の表面を乾燥させる。
そして、レジンボンド13の材料および砥粒12を含む塗料を芯線11に塗布する(S11)。前記塗料には、たとえば、フェノール樹脂、フィラー、サルファー系シランカップリング剤および溶剤が配合されている。この塗料が満たされたポットに芯線11を通過させて、芯線11の表面に塗料を塗布する。この塗料の粘度を、1.0Pa・s以上3.0Pa・s以下に調整する。これにより、塗料が芯線11の表面の溝14に入り込むことができる。
また、溝14が形成された芯線11の表面上に砥粒12が配されるが、溝14の深さが砥粒12の粒径に対して非常に小さいため、砥粒12の分布は溝14の位置に影響されず、砥粒12は芯線11の表面上に分散する。これにより、砥粒12が溝14に沿って並ばす、砥粒12と砥粒12との間には樹脂が介在する。そして、塗料が塗布された芯線11を出口の径が所望の径であるダイスの孔に通して余分な塗料を絞ることで、その外径を所望の外径に調整する。
所望の外径分の塗料が塗布された芯線11に硬化処理を施す(S12)。たとえば、600〜700℃の高温に熱せられた管状炉内に、塗料が塗布された芯線11を0.5〜5秒間で通過させる。これにより、塗料内の溶媒を気化させて、塗料を硬化させる。この際、芯線11の表面の溝14に入り込んだ樹脂が硬化して、レジンボンド13と芯線11との接着力が向上する。このように芯線11上に樹脂が成型・硬化した状態でリールに巻き取られる。最後は、レジンボンドソーワイヤ10をリールごと180〜200℃に温められた電気炉で5〜10時間加熱する。これにより、熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂の硬化反応が促進して完全硬化する。また、サルファー系シランカップリング剤が砥粒12および芯線11とフェノール樹脂との間に化学結合を形成し、レジンボンド13の砥粒12に対する保持力および芯線11に対する接着力を向上する。これにより、図2(f)に示すレジンボンドソーワイヤ10が形成される。
(作用、効果)
上記によれば、芯線11の表面に長手方向に延びる直線状の溝14が形成されている。この溝14は、芯線11の長手方向に対して平行に形成されているため、溝14による長手方向における引張強度の低下は防がれる。しかも、溝14は、砥粒12をはめ込むための大きなサイズではなく、レジンボンド13を入り込む小さなサイズである。よって、大きな溝による芯線11の強度低下が防がれる。
さらに、溝14は、コア線16を伸線ダイスに通過させた際に形成されたものである。必要な深さの溝を必要な分だけ全周に形成させるため、芯線材17においては付着量を4g/kg以上に設計し、最終伸線においてはスリップ率を50%以下に設計して製造することが望ましい。更に、ダイス形状、潤滑剤を管理してダイスと鋼線のメタルコンタクトを防ぐことが重要である。通常の正常な湿式伸線加工により、ブラスめっき層18に隠れたコア線16の表面には溝14が形成される。したがって、溝14は、コア線16の強度低下の要因にはならない。
また、溝14にレジンボンド13が入り込んでいるため、砥粒12の分布が溝14に影響されず、砥粒12が芯線11上に均一に分散される。よって、砥粒12と砥粒12との間にレジンボンド13が介在することにより、レジンボンド13により砥粒12が保持および支持され、砥粒12の剥離を抑制し得る。また、複数の砥粒12が並んで径方向の外側に突出することがなく、砥粒12の剥離をさらに抑制し得る。さらに、溝14に入り込んだレジンボンド13がアンカー効果を発揮することにより、レジンボンド13と芯線11との結合力が増し、レジンボンド13の剥離が抑制される。
また、塗料の粘度が1.0Pa・s以上3.0Pa・s以下の低粘度であるため、塗料中のレジンボンド13の材料が溝14に入り込み易い。よって、溝14に入り込んだレジンボンドの材料が硬化すると、アンカー効果が発揮され、レジンボンド13と芯線11との結合力が増し、レジンボンド13の剥離が抑制される。この時、塗料の粘度が1.0Pa・sを越えて小さい場合には、塗料内に混練されている砥粒12がポット内で沈降してしまい、長手で安定した砥粒個数を塗布することが出来ない。また、塗料の粘度が3.0Pa・sを越えて大きい場合には、径を絞るための浮きダイスに掛かる力が大きくなりすぎて、浮きダイスが不安定となり長手で安定して均一な塗布を行う事が困難となる。
さらに、0.5μm以上の深さの溝14の数が、芯線11の周方向において10本以上である。または、芯線11の表面の算術平均粗さRaが0.03μm以上0.10μm以下であって、最大高さRzは0.2μm以上1.0μm以下である。これにより、溝14に入り込んだレジンボンド13がアンカー効果を発揮し、レジンボンド13の剥離が抑制される。
また、レジンボンド13は、サルファー系シランカップリング剤が配合されたフェノール樹脂により形成されている。このサルファー系シランカップリング剤がフェノール樹脂と砥粒12および芯線11との間の結合力を高める。よって、レジンボンド13の砥粒12に対する保持力が向上すると共に、レジンボンド13の芯線11からの剥離が抑制される。
さらに、砥粒12は、ダイヤモンドから成り、20μm以下の平均粒径(D50)であって、5μm以下のSD値である。これにより、レジンボンド13の表面から突出する砥粒12の高さをより均一にし、一部の砥粒12に大きな力が作用することを低減して、砥粒12の脱離を抑制することができる。しかも、レジンボンド13に埋まり切削に寄与しない砥粒12を減らせるため、砥粒12がレジンボンド13に介在することによるレジンボンド13と芯線11との結合力の低下を抑制しながら、砥粒12をより効率的に切削に寄与させることができる。
本発明のレジンボンドソーワイヤの寿命評価については以下の実験例によって確認される。
(実施例)
比較例1、実施例1〜3に関しては、電解剥離処理(図2AのS8)における電流密度のみを変更させ、下地の表面状態を変えただけのものであり、その他の製造条件は以下の通りである。
・砥粒12:D50値が10umでSD値が2.5um
・レジンボンド:メルカプト系シランカップリング剤を配合したフェノール樹脂を用いた。
・塗料粘度:1.0Pa・s
・フィラー材には♯8000のSiCの微粉を配合した。
・コア線:線径100umの0.9重量%の炭素鋼を用いた。
・電解剥離処理通電時間:15秒
・電流密度の変化による芯線の表面粗さの変化は図の通りである。
表面粗さの測定は以下の条件で行った。
測定器:16bit形状解析レーザー顕微鏡
使用機器:キーエンス株式会社製 VK−X150
測定深度:30um
補正値:2次曲面補正ON、λc=0.008mm
レジンボンドソーワイヤの長手方向に垂直な方向に、芯線または芯線材の径の半分の長さだけ(片面のみ)、芯線または芯線材の表面の粗さRa、Rzを測定した。測定は芯線の長手方向に垂直な方向に、線径の半分の長さの線粗さを20点計測した。その平均値を図3Aおよび図3Bに記載している。
比較例1には電解剥離処理を行わなかった。つまり、電界剥離処理における電流密度は0A/dm2である。このため、芯線材の表面はブラスめっき層の表面であって、平滑でRa、Rzの値はともに小さかった。
実施例1は電界剥離処理において電流密度:3.0A/dm2の電流を流してブラスめっき層を剥離した。このため、約90%のブラスめっき層が除去されているが、厚みの薄いブラスめっき層がコア線の表面に残っている。芯線の表面は薄いブラスめっき層で覆われたコア線の表面である。ブラスめっきは残るものの表面は荒れており比較例1に比べ明らかなRa,Rzの数値上昇が見られている。
実施例2は電界剥離処理において電流密度:9.1A/dm2の電流を流してブラスめっき層を剥離した。このため、コア線の表面からブラスめっき層が除去されており、芯線の表面はコア線の表面である。よって、表面は実施例1よりも更に荒れておりRa,Rzの数値が大きい。
実施例3は電界剥離処理において電流密度:21.2A/dm2の電流を流してブラスめっき層を剥離した。実施例2の更に2倍以上の電流を掛けているにも関わらず、実施例2に比べてRa,Rzの粗さ値の上昇はほとんどない。
なお、粗さRa、Rzを測定した際の実施例2および比較例1の3D画像を図5Aおよび図5Bに示す。図5Aに示すように、実施例2の芯線の表面であるコア線の表面には、多数の直線状の溝が形成されている。図5Bに示すように、比較例1の芯線材の表面であるブラスめっき層の表面には、直線状の溝は見られない。
電流密度の芯線の表面粗さの関係より、実施例2の電流密度:9.1A/dm2の電流を流した時点でほぼ表面のブラスは除去されており、実施例3においては電解剥離処理において過剰な電流を掛けていることがわかる。
ここで、図4Aおよび4Bの電流密度と芯線の物性変化の関係について調査してみると、電流密度が過剰とされる実施例3においても破断力と捻回値の低下が見られなかった。
この破断力の測定試験は、引張試験機(株式会社オリエンテック、RTF−1310)で500mmスパンでの試験を行った。捻回試験は200mmスパンに芯線破断力の半分の荷重を掛けながら100rpmの回転速度で捻り、断線までの回数を測定している。
物性の低下が見られなかった理由としては、電解剥離液に鉄をアタックしない成分を採用しているためであって、これ以上溶かす対象である銅や亜鉛がなくなった状態で過電流を流しても決して鉄素地までは侵さないということを表している。
更に、もともとある芯線材のめっき下の溝をアンカー効果に利用しているだけであるため、新たに芯線を傷つけることなく溝を形成させているためである。
実施例2と実施例3においては表面粗さ値がほとんど変わらないため、以降の実験においては、比較例1、実施例1,2を比較した。
図6の表面観察では、実施例1および2ならびに比較例1のレジンボンドソーワイヤを用いた。図6Aに示す比較例1は、図6Bに示す芯線の表面上に砥粒をレジンボンドで固着したレジンボンドソーワイヤである。図6Cに示す実施例1は、図6Dに示す芯線の表面上に砥粒をレジンボンドで固着したレジンボンドソーワイヤである。図6Eに示す実施例2は、図6Fに示す芯線材の表面上に砥粒をレジンボンドで固着したレジンボンドソーワイヤである。
比較例1の図6Aおよび図6Bの芯線の表面には長手方向に延びる直線状の溝が観察されなかった。
実施例1の図6Cおよび図6Dの芯線は、図6Dに示すように、この表面には多数の直線状の溝が観察されるが、その数は図6Fの数よりも少ない。また、図6Cに示すように、その深さはブラスめっき層の分だけ、図6Eの溝の深さより浅くなっている。
実施例2の図6Eおよび図6Fの芯線は、図6Fに示すように、この表面には多数の直線状の溝が観察される。また、図6Eに示すように、その深さは図6Cの溝の深さより大きい。
また、実施例1および2ならびに比較例1について、図7Aの表に示すように、芯線または芯線材の周方向における深さが0.5μm以上の溝の数を調べた。この溝の数は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、レジンボンドソーワイヤの断面を観察し、深さ0.5μm以上の溝を検出した。たとえば、図7Bに示す実施例1の芯線では、丸で囲んだように、19個の溝が検出された。図7Aに示すように、電解剥離処理を行い、その電流密度が大きいほど、深さ0.5μm以上の溝の数が多かった。
次に、電解剥離処理における電流密度とレジンボンドの接合力との関係について、図8A〜図8Dを参照して説明する。この接合力の測定では、レジンボンドソーワイヤをダイスの孔から引き抜く際の力を引張試験機(株式会社オリエンテック、RTF−1310)で測定し、この測定値に基づいて接合力を求めた。この時、レジンボンドソーワイヤの径が119μmであり、そのコア線の径が100μmであった。また、ダイスの孔の径は105μmであった。これにより、レジンボンドソーワイヤをダイスの孔から引き抜くことにより、レジンボンドのみをコア線から剥離することができ、芯線とレジンボンドとの接合力を測定することが出来る。
この結果、図8Cに示す実施例2の接合力の試験結果から、レジンボンドの接合力は7.83Nであった。図8Bに示す実施例1の引張力の試験結果から、レジンボンドの接合力は6.69であった。これに対し、図8Aに示す比較例1の引張力の試験結果からレジンボンドの接合力は3.65Nであった。
この実施例1および2ならびに比較例1の電解剥離処理における電流密度とレジンボンドの接合力との関係を図8Dのグラフに示す。これから、電力密度が大きくなるほど、接合力が上昇している。これは、電流密度が大きいほど、芯線の表面上における溝の数が多くなりかつ深さが大きくなっていることにより、アンカー効果が増し、レジンボンドと芯線との接合力が上昇していると考えられる。
以上の実験結果から芯線の表面状態とアンカー効果について確認することができた。ある一定以上の表面粗さを付与することにより接合力の上昇が見られる。更に、この電解剥離処理による方法で表面粗さの値を大きくすることで、芯線自体にはダメージを与えないことも確認できた。
次に、シランカップリング剤の種類によるレジンボンドソーワイヤの特性評価について、図9Aおよび図9Bを参照して説明する。ここでは、シランカップリング剤をフェノール樹脂に配合したレジンボンドにおけるシランカップリング剤の種類のみを変えた。この時、電解剥離の電流密度は9.1A/dm2で統一して製造し、シランカップリング剤以外の製造条件は前述の実験と同じである。
実施例4
メルカプト系シランカップリング剤を配合
実施例5
スルフィド系シランカップリング剤を配合
比較例2
アミン系シランカップリング剤を配合
実施例4、5、比較例2の評価としてまずは、前述のダイスによる芯線とレジンボンドの接合力の試験を行った。その結果を図に示す。
実施例4の値が8.16Nであり、実施例5の値が8.94Nであり、比較例2の値が6.69Nであった。
芯線との接合力は硫黄系のシランカップリング剤を用いる方が高い結果となった。前述の考察の通り、サルファー系のシランカップリング剤を用いることは芯線との結合力を高めていることが確認された。
続いて、この実施例4、5および比較例2のレジンボンドソーワイヤをマルチスライスワイヤソー(コマツNTC株式会社製、PV500D)に装着して評価を行った。条件は以下の通りである。
装置:コマツNTC株式会社製マルチスライスワイヤソー PV500D
ワイヤソー線速:1000m/min
切込速度:0.6mm/min
ワーク:156mm角の単結晶シリコン
評価後、レジンボンドソーワイヤのタワミ値およびダイヤモンド砥粒の脱落率を測定した。このタワミ値は、切断後のタワミ残りの長さである。また、脱落率は、切断前のレジンボンドソーワイヤの砥粒の個数に対する、切断前後のレジンボンドソーワイヤの砥粒の個数の差から求めた。
図9Aに示すように、レジンボンドソーワイヤのタワミ値は実施例4が最も少なかった。このタワミ値が少ないほど、切削中にレジンボンドソーワイヤが蛇行せずに安定して切削できていることを表しておりの切削加工精度が良い。これにより、実施例4のメルカプト系シランカップリング剤を用いたレジンボンドソーワイヤは切削加工精度に優れていることがわかった。
図9Bに示すように、ダイヤモンド砥粒の脱落率は実施例4が最も少なかった。これは、メルカプト系シランカップリング剤によるダイヤモンド砥粒とレジンボンドとの結合力が、アミン系シランカップリング剤によるものより高いためであると考えられる。
また、実施例5に関して、芯線とレジンボンドの接合力は最も高く、切削能力は実施例4に次ぐものの、砥粒の脱落率が最も高い結果となった。芯線との接合力が高いだけではなく砥粒との接合力の相性が良いこともワイヤ寿命には重要なファクターとなる。
いずれにしてもここまで総合的に見てメルカプト系が最もスライスに適した素材であることがわかった。スルフィド系については砥粒脱落は多かったものの芯線との接合力は最も良く切削能力も良かった。ワイヤの寿命向上を考えた時、サルファー系のシランカップリング剤を配合することは重要なポイントとなる。
次に、レジンボンドに含まれるメルカプト系シランカップリング剤の検出分析を行った。この分析では、メルカプト系シランカップリング剤を含むレジンボンド、およびシランカップリング剤を含まないレジンボンドを用いた。
分析条件は以下の通りである。
測定器:ガスクロマトグラフ質量分析装置(PerkinElmer製、Clarus 600 C GC/MS)
測定モード:シングルショット分析モード(Py−GC/MS)
カラム品番:UA−5(内径:0.25mm、膜厚:0.25μm、長さ:30m)
試料加熱温度:600℃
キャリアガス/流量:ヘリウム/1ml/min
カラム条件:50℃から300℃まで10℃/minで昇温
スプリット比:50
これにより各成分のマススペクトルデータを得た。
図10Aに示す、シランカップリング剤を含まないレジンボンドのクロマトグラムと、図10Bに示す、メルカプト系シランカップリング剤を含むレジンボンドのクロマトグラムとを比較した。この結果、図10Bに示すクロマトグラムには、図10Aに示すクロマトグラムでは検出されなかったマススペクトルが1.76minに検出された。図10Cに示すこのマススペクトルは、図10Dに示す硫化プロピレンのマススペクトルにより同定された。これにより、メルカプト系シランカップリング剤を含むレジンボンドについては、硫黄化合物が含まれていることを検出することができる。
次に、塗料の粘度によるレジンボンドソーワイヤの特性評価について、図11を参照して説明する。ここでは、塗料およびレジンボンドの材料を混合した塗料の粘度のみを変えた、実施例6〜8のレジンボンドソーワイヤを用いた。このレジンボンドソーワイヤの製造条件については、塗料の粘度以外の条件は同じである。実施例6の塗料の粘度は1Pa・sであり、実施例7の塗料の粘度は2Pa・sであり、実施例8の塗料の粘度は3Pa・sである。この粘度は、回転式粘度計(東機産業株式会社、TVC−7)を用い、45℃の温度雰囲気下において、ロータの回転速度20rpmで測定した。
この実施例6〜8について芯線とレジンボンドの接合力を測定した。接合力の測定は、上記引張試験機を用いたダイスの試験と同様の測定方法で行った。この結果、実施例6の接合力は8.44Nであり、実施例7の接合力は7.83Nであり、実施例8の接合力は6.00Nであった。これは、いずれの接合力も高い値を示し、1.0Pa・s以上3.0Pa・s以下の粘度の塗料であれば芯線の表面上の溝に入り込みアンカー効果を発揮しているためであると考えられる。
本発明のレジンボンドソーワイヤは、芯線の強度低下がなく、芯線からのレジンボンドの剥離を低減し、砥粒の固着力を高めたレジンボンドソーワイヤ等として有用である。
10 :レジンボンドソーワイヤ
11 :芯線
12 :砥粒
13 :レジンボンド
14 :溝
16 :コア線
17 :芯線材

Claims (8)

  1. 金属から成る芯線と、
    前記芯線の表面に配置される複数の砥粒と、
    前記砥粒を前記芯線の表面に固着させるレジンボンドと、を備え、
    前記芯線の表面に長手方向に延びる直線状の溝が形成され、前記溝に前記レジンボンドが入り込んでおり、
    前記レジンボンドは、サルファー系シランカップリング剤が配合されたフェノール樹脂により形成されており、
    前記芯線は、表面に長手方向に延びる直線状の溝が形成されたコア線を含み、
    前記コア線の溝の一部が銅めっきで覆われている、レジンボンドソーワイヤ。
  2. 0.5μm以上の深さの前記溝の数は、前記芯線の周方向において10本以上である、請求項1に記載のレジンボンドソーワイヤ。
  3. 前記芯線の表面の算術平均粗さRaが0.03μm以上0.10μm以下であって、最大高さRzは0.2μm以上1.0μm以下である、請求項1または2に記載のレジンボンドソーワイヤ。
  4. 前記レジンボンドを、熱分解GC/MS法により分析すると測定開始1.76分近傍にピークを検出し、そのピークが硫黄化合物である、請求項1乃至のいずれか一項に記載のレジンボンドソーワイヤ。
  5. 前記芯線はコア線を含み、
    前記コア線は、0.7重量%以上1.2重量%以下の炭素を含む鋼線であって、3500MPa以上の引張強度を有し、50μm以上120μm以下の径である、請求項1乃至のいずれか一項に記載のレジンボンドソーワイヤ。
  6. 前記砥粒は、ダイヤモンドから成り、20μm以下の平均粒径(D50)であって、5μm以下のSD値である、請求項1乃至のいずれか一項に記載のレジンボンドソーワイヤ。
  7. 表面がブラスめっき層により覆われた芯線材をダイスにより伸線することで、コア線の表面に長手方向に延びる直線状の溝を形成させながら所定の径まで細くし、
    そののちに、前記ブラスめっき層の一部または全部をその厚み方向に除去して表面に長手方向に延びる直線状の溝が形成された芯線を形成し、
    前記芯線の表面に、レジンボンドの材料および砥粒を含む塗料を塗布し、
    前記塗料を硬化させる、レジンボンドソーワイヤの製造方法。
  8. 前記塗料の粘度は1.0Pa・s以上3.0Pa・s以下である、請求項に記載のレジンボンドソーワイヤの製造方法。
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