JP2015166125A - ワイヤソー - Google Patents

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Abstract

【課題】 砥粒の固着に光硬化性樹脂を用いた、切断加工性および耐久性に優れたワイヤソーを提供する。【解決手段】 本発明が提供するワイヤソー1は、ワイヤ10と、このワイヤ10の外周面に設けられた樹脂層20と、樹脂層20に配置された砥粒30とを備え、樹脂層20は、光硬化性樹脂22とフィラー24とを含み、フィラー24はカップリング剤を介して光硬化性樹脂22と結合されている。【選択図】図1

Description

本発明は、ワイヤの外周面に砥粒が備えられたワイヤソーに関する。
半導体デバイスや太陽電池素子等に用いられる単結晶、多結晶あるいはアモルファスのシリコン、サファイア、水晶等や、ガラス、セラミック材料などの硬くて脆い材料を、薄くかつ精密に切断するために、従来より、ワイヤの外周面に砥粒が備えられたワイヤソーが用いられている。そして上記の半導体基板や太陽電池素子等の精密性または超精密性が求められる用途では、ワイヤソーには、切断物の切断面がより平滑であること、排出される切断屑の量(切断ロス)が少ないこと、耐久性が高いこと等が求められる。かかるワイヤソーについて、ワイヤに砥粒を固定する手段としては、金属による電着、樹脂材料によるレジンボンド等が広く一般に採用されている。
砥粒を金属によりワイヤに電着する手法によると、砥粒の固着力が強く切断の加工効率が高い点で好ましいものの、ワイヤの柔軟性が劣るため、加工時の捩れ等によってワイヤが断線し易く、また、加工面が荒れやすくなるといった欠点が見られる。これに対し、砥粒をレジンボンドによりワイヤに固着する手法では、ワイヤの柔軟性が保たれて加工面が比較的滑らかに仕上がることから、硬脆性材料の切断には適したものとなり得る。レジンボンドにより砥粒が固着されたワイヤソーに係る従来技術としては、例えば、特許文献1〜3が挙げられる。
特開2000−263452号公報 特表2000−288943号公報 特開2003−011063号公報
ところで、ワイヤソーの砥粒を固着するのに用いる樹脂は、主として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂に大別される。光硬化性樹脂は、硬化に加熱を要さないため作業性が良いものの、一般に熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂に比べて硬化後の強度等の特性が低く、ワイヤソーによる切断加工中に砥粒が脱落しやすいという問題がある。
また、砥粒を固着する樹脂に、アルミナ、炭化ケイ素、シリカ、酸化クロム、グラファイト等の硬質材料からなる繊維状のフィラーを添加することで、硬化後の樹脂硬度および砥粒の固着力を高めることがなされている。
そこで、光硬化性樹脂にフィラーを添加することで、砥粒をワイヤに強固に固着することが試みられてもいる。しかしながら、硬化後の光硬化性樹脂の強度を十分確保するためにフィラーを添加すると、硬化前の樹脂ペーストの粘度が容易に上昇してしまい、かかる樹脂ペーストをワイヤに付着させるのが困難となってしまっていた。逆に、樹脂ペーストの粘度を適正に保つと、フィラーを少量しか添加することができず、硬化後の樹脂の強度を十分に得ることが困難となる。また、光硬化性樹脂は、フィラーとの密着性についても十分とは言えず、フィラーと樹脂との界面からクラックが進展し、樹脂層が破損してしまうおそれがあった。
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、砥粒の固着に光硬化性樹脂を用いた、切断加工性および耐久性に優れたワイヤソーを提供することを目的とする。
上記目的を実現するべく、本発明は、ワイヤソーを提供する。かかるワイヤソーは、ワイヤと、上記ワイヤの外周面に設けられた樹脂層と、上記樹脂層に配置された砥粒と、を備えている。そして上記樹脂層は、光硬化性樹脂とフィラーとを含んでおり、上記フィラーはカップリング剤を介して上記光硬化性樹脂と結合されていることを特徴としている。
かかる構成においては、典型的には、フィラーはカップリング剤により表面処理がなされた後に未硬化の光硬化性樹脂組成物中に配合され、かかる状態で光硬化性樹脂組成物が硬化される。これにより、フィラーと光硬化性樹脂とがカップリング剤を介して親和性の良い結合を形成する。したがって、フィラーと光硬化性樹脂との密着性が向上されて、フィラーと光硬化性樹脂との界面にクラックが発生したり、樹脂層が破損したりすることが抑制される。また、カップリング剤の作用により、フィラーは表面の濡れ性が改善されて、硬化前の光硬化性樹脂中に良好に分散され得る。そのため、例えば、光硬化性樹脂組成物の粘度を過度に上昇させることなく光硬化性樹脂中に多量に配合され得る。つまり、樹脂層はより多量のフィラーを含んだ状態でワイヤの外周面に形成され得る。これにより、砥粒は、より強度が高められた光硬化性樹脂からなる樹脂層によりワイヤに強固に固定され得る。
なお、本明細書における光硬化性樹脂とは、光エネルギーの作用で液状から固体に変化された樹脂(硬化物)を意味し、特に未硬化の状態のものについては光硬化性樹脂組成物という。より具体的には、一般的には、当該光硬化性樹脂の元となるモノマーおよび/またはオリゴマーと光重合開始剤とを含む光硬化性樹脂組成物が、光照射を受けることで光重合開始剤が励起され、オリゴマーやモノマー分子に作用して3次元的な重合や架橋反応を誘起する。光硬化性樹脂は、かかる重合または架橋等によりモノマーおよび/またはオリゴマーの分子量が増大し、硬化する(固体となる)ことで、形成されるものである。
ここに開示されるワイヤソーの好ましい一形態において、上記フィラーは、平均粒径が100nm以下の第1の粒子群と、平均粒径が100nmを超えて10μm以下の第2の粒子群とを含んでいることを特徴としている。
従来のワイヤソーにおいては、フィラーを含む光硬化性樹脂で樹脂層を構成する場合、硬化前の光硬化性樹脂の粘度の上昇を抑制するために、例えば、平均粒径が数μm程度(例えば、1μm以上、典型的には1μm超過)のフィラーを用いるようにしていた。そして、平均粒径が100nm以下の粒子からなるフィラーは未硬化の光硬化性樹脂の急激な粘度の上昇を引き起こすために、添加することは困難であった。
これに対し、ここに開示される発明においては、従来と同様に、平均粒径が1μm以上であって、10μm以下のフィラーを使用することができる。そしてまた、平均粒径が1μm以下(例えば、1μm未満)のフィラーをも使用することができる。例えば、平均粒径が100nm以下の粒子をも使用することができる。典型的には、平均粒径が100nm以下の第1の粒子群と、平均粒径が100nmを超えて10μm以下の第2の粒子群とを同時に含むことができる。
これにより、未硬化の光硬化性樹脂の粘度の上昇を抑えつつ、平均粒径が100nm以下の粒子を含むより多くのフィラーを光硬化性樹脂に配合することができ、当該光硬化性樹脂の強度を十分かつ効果的に高めることが可能となる。
なお、本明細書において「平均粒径」とは、特記しない限り、電子顕微鏡等の観察手段により適切な倍率にて観察される100個以上の粒子の円相当径の算術平均値を意味するものとする。
ここに開示されるワイヤソーの好ましい一形態において、上記フィラーは、アルミナ、シリカ、酸化クロム、セリア、グラファイト、チタニア、ジルコニア、マグネシア、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒炭化ホウ素およびダイヤモンドからなる群から選択される少なくとも1種の材料から構成されていることを特徴としている。
ここに開示されるフィラーは、カップリング剤を介して光硬化性樹脂に結合されている。したがって、例えば、上記の通りの酸化物、炭化物、窒化物等からなる硬質材料ともより強固に結合され得る。これにより、光硬化性樹脂からなる樹脂層の強度をより高めることができる。
ここに開示されるワイヤソーの好ましい一形態において、上記カップリング剤は、シランカップリング剤であることを特徴としている。
シランカップリング剤は、表面特性を改質剤としてより多様な材料に適用することができ、かつ比較的安価に提供され得る。これにより、より多様な機能性を有するワイヤソーを低コストで簡便に提供することができる。
ここに開示されるワイヤソーの好ましい一形態において、上記フィラーは、上記光硬化性樹脂と上記フィラーとの総体積に占める割合が50体積%以下であることを特徴としている。
かかる構成の樹脂層は、従来よりもフィラーが比較的多く配合可能なため、強度を高めることができる。また、フィラーが多く含まれても未硬化の状態の樹脂ペーストの粘性が上がりすぎないために施工性および密着性良く形成され得る。これにより、高強度で、砥粒の脱落等が低減されて耐久性に優れた樹脂層を備えるワイヤソーが提供される。
他の側面において本発明は、ワイヤの外周面に砥粒が固着されたワイヤソーの製造方法を提供する。かかる製造方法は、フィラーの表面をカップリング剤によりカップリング処理することにより、該表面に有機官能基を導入すること、上記カップリング処理されたフィラーと、上記砥粒と、光硬化性樹脂組成物とを含む樹脂ペースト(スラリー状組成物を包含する。)を用意すること、上記樹脂ペーストを上記ワイヤの外周面に供給して未硬化樹脂層を形成すること、上記未硬化樹脂層を形成している上記光硬化性樹脂組成物を硬化させること、を包含することを特徴としている。
かかる構成によると、フィラーを光硬化性樹脂に親和性良く結合させることができる。このため、樹脂層の強度を高めることができると同時に、フィラーと光硬化性樹脂との密着性が向上されて、これらの界面にクラックが発生したり、樹脂層が破損したりすることが抑制される。また、カップリング剤の作用により、フィラーは硬化前の光硬化性樹脂中に良好に分散され得る。そのため、例えば、硬化前の光硬化性樹脂の粘度を過度に上昇させることなく光硬化性樹脂中に多量に配合することが可能となる。つまり、より多量のフィラーを含んだ樹脂層をワイヤの外周面に好適に形成することができる。これにより、より高強度な樹脂層を備えることから砥粒の脱落や樹脂層の割れおよび剥離等の問題が低減されて、耐久性が高められたワイヤソーを、簡便に製造することができる。
また、ここに開示される製造方法によると、樹脂層を瞬時の光(例えば、紫外線)照射によって硬化させることができ、例えば、未硬化樹脂層を硬化させるために熱を加える必要がない。したがって、例えば、乾燥工程が不要であり、また乾燥器や乾燥時間も不要となることから、大幅な省エネルギーと生産性の向上(例えば、製造ラインスピードのアップ)とが可能となる。これに加え、生産設備を簡素化することも可能となる。また、より幅の細い(径の小さい)ワイヤを用いる場合であっても、当該ワイヤが熱により変形(典型的には延伸)するのが防止され、樹脂層に応力が発生したり、ワイヤの物性が変化したりすることが抑制される。これにより、ワイヤおよび樹脂層に加熱による影響を与えることなくワイヤソーを製造することができる。
本発明に係るワイヤソーの構成を示す断面模式図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、ワイヤソーを構成する構成要素の特徴等)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、ワイヤソーを用いた切断具およびその使用方法等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
図1は、本発明に係るワイヤソーの構成を説明する断面模式図である。かかる図1に示された一実施形態は、本発明を明瞭に説明するために必要に応じて模式化されたものであり、実際のワイヤソーの形態(寸法関係、配置等)を必ずしも正確に反映したものではない。
ここに開示されるワイヤソー1は、図1に示すように、主として、ワイヤ10と、このワイヤ10の外周面に設けられた樹脂層20と、この樹脂層20に配置された砥粒30とを備えている。すなわち、かかるワイヤソー1が切断の対象とする被切断物を切削して切断する機能を有する砥粒30は、樹脂層20によってワイヤ10に固着されている。ここで、樹脂層20は、本質的に、光硬化性樹脂22とフィラー24とを含んでいる。そして、フィラー24は、カップリング剤(図示せず)を介して光硬化性樹脂22と結合されている。すなわち、フィラー24の表面はカップリング剤による表面処理が施されており、かかるカップリング剤の作用によりフィラー24の表面と光硬化性樹脂22との親和性が高められている。これにより、フィラー24と光硬化性樹脂22との界面の強固な密着および結合が実現されている。換言すると、フィラー24と光硬化性樹脂22との結合は、機械的なものに限定されず、化学的に結合されてもいる。また、樹脂層20は、例えば、熱硬化性樹脂等と比較すると一般的に強度が低いとされる光硬化性樹脂22を含んでいるが、かかる樹脂層20中にはフィラー24が配合されているため強度が増強されており、砥粒30をワイヤ10に強固に固着することが可能とされている。
以下、本発明によって提供されるワイヤソー1について、その製造方法と併せてより詳細に説明する。なお、このようなワイヤソー1は、特に限定されるわけではないが、ここに開示されるワイヤソーの製造方法により好適に製造することができる。すなわち、かかるワイヤソーの製造方法は、以下の工程を包含している。
(1)フィラー24の表面をカップリング剤によりカップリング処理することにより、該表面に有機官能基を導入すること。
(2)カップリング処理されたフィラー24と、砥粒30と、光硬化性樹脂組成物22’とを含む樹脂ペーストを用意すること。
(3)樹脂ペーストをワイヤ10の外周面に供給して未硬化樹脂層20’を形成すること。
(4)未硬化樹脂層20’を形成している光硬化性樹脂組成物22’を硬化させること。
[1.フィラー表面のカップリング処理]
ここではフィラー24を用意し、その表面をカップリング剤によりカップリング処理することによって、フィラーの表面に有機官能基を導入する。
<フィラー>
フィラー24としては、金属材料、無機材料、ガラス材料またはこれらの混合物あるいは複合体等の各種の材料からなる粒子を用いることができる。より具体的には、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、鉄鋼等の金属やその合金;シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、マグネシア(MgO)、酸化クロム(Cr、CrO、CrO等)、セリア(CeO)、酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物;カーボンブラック、グラファイト、黒鉛等の炭素系材料、炭化ケイ素(SiC)、炭化ホウ素(BC、BC、BC等)、窒化ケイ素(Si)、窒化ホウ素(BN)、窒炭化ホウ素(BCN)等の窒化物および/または炭化物;水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、炭酸カルシウム(CaCO)、硫酸バリウム(BaSO)等の金属塩;ダイヤモンド(C);タルク、マイカ、カオリン、ゼオライト等の鉱物;およびガラスビーズ等のガラスが挙げられる。より好ましくは、強度が高く、比較的安価で品質が安定しており、入手が容易な金属酸化物、窒炭化物等の無機材料からなるフィラーである。なかでも、アルミナ、シリカ、酸化クロム、セリア、グラファイト、チタニア、ジルコニア、マグネシア、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒炭化ホウ素、ダイヤモンドなどであることが好ましい。特に、シリカ、アルミナ、チタニア等からなるものが好適である。例えば、フィラーとしてシリカからなる粒子を用いる場合、かかるシリカ粒子の製法等は特に制限されず、例えば、溶融シリカ、ヒュームドシリカなどの各種の製法によるシリカ粒子を用いることができる。シリカ粒子等のフィラーは、例えば、代表的には、電気化学工業株式会社、株式会社アドマテックス、東亞合成株式会社、旭硝子株式会社等から入手することができる。これらの材料は、いずれか1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
フィラー24の形状については特に制限はないが、例えば、針状、板状、粒状(球状を含む)等の各種のものを用いることができる。例えばフレーク形状や不規則形状のものを用いることもできる。なかでも、樹脂ペーストに配合された際の粘度の上昇を抑制する観点からは粒状のものを用いるのが好ましく、特に球状のものを用いるのがより好ましい。なお、ここでいう「球状」とは、幾何学的に厳密な球(すなわち真球)のみを意味するものではなく、真球状ないしは略球状をも包含する用語である。
フィラー24の大きさについても厳密な制限はないが、例えば、粒状のものについては、平均粒径が10μm以下程度のもの、例えば8μm以下、好ましくは5μm以下程度のものを好適に用いることができる。なお、ここに開示されるワイヤソーにおいては、従来この種のフィラーとして用いられていたものよりも、平均粒径の小さいフィラー24を配合できることも特徴的である。例えば、フィラーの平均粒径は1μm以下であってよく、好ましくは800nm以下、より好ましくは600nm以下、例えば、500nm以下のものを配合することができる。このように微細なフィラー24を用いることで、樹脂層20の強度を効果的に高めることができ、切削性能および耐久性に優れたワイヤソー1を実現することができる。しかしながら、フィラー24の粒径が小さすぎる場合は、表面積の増大に伴って後述する樹脂ペーストの粘性が著しく増大し、樹脂層20の形成が困難となるために好ましくない。そのため、フィラー24の平均粒径は、例えば、数nm以上とすることができ、5nm以上であることが好ましく、例えば、7nm以上、典型的には10nm以上とすることができる。かかる平均粒径を有するフィラーを用いることで、樹脂層20の成形性を損ねることなく、ワイヤソー1の切削性および耐久性をバランスよく向上できるために好ましい。
また、例えば、平均粒径が互いに異なる複数(典型的には2種類)のフィラーを混合し、混合粉末の平均粒径が上記範囲内にあるようなフィラーを用いることもできる。例えば、フィラー24は、平均粒径が100nm以下(例えば、5nm以上50nm以下)の第1の粒子群と、平均粒径が100nmを超えて10μm以下(例えば、200nm以上7μm以下)の第2の粒子群とを含むよう構成することができる。ここで、第1の粒子群(A)と第2の粒子群(B)との割合は、例えば、実際の平均粒径や後述の樹脂ペーストの粘度等を考慮しながら、体積比でA:Bとして、1:99〜99:1程度、好ましくは1:99〜25:75程度の範囲で混合することができる。このような平均粒径の異なるフィラーをブレンドして用いることにより、樹脂層20の成形性と、ワイヤソー1の切削性および耐久性とをより一層バランスよく、さらに高いレベルで両立することができる。
<カップリング剤>
カップリング剤としては、対象とするフィラー24の表面を化学的に修飾して有機官能基を導入し、フィラー24の表面性状を調整できるものであれば、特に制限なく使用することができる。好ましくは、後述の光硬化性樹脂22との親和性および相溶性の高い有機官能基を有するカップリング剤を用いることができる。かかるカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、カルボン酸カップリング剤、リン酸カップリング剤等が挙げられる。なかでも、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤を用いるのが好ましい。特に制限されるものではないが、以下に、シランカップリング剤とチタネートカップリング剤の好適例を挙げる。
シランカップリング剤は、典型的には、一般式:Y−Si(CH−(OR)3−nで表される化学構造を有している。ここで、式中Yは反応性官能基であり、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基等であり得る。また、Rは加水分解性を示す有機官能基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、アセチル基等であり得る。また、nは1または2である。シランカップリング剤としては、具体的には、反応性官能基の種類に応じて、例えば、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、スチリル系シランカップリング剤、メタクリル系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤、スルフィド系シランカップリング剤およびイソシアネート系シランカップリング剤等が挙げられる。より具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
また、チタネート系カップリング剤は、典型的には、一般式:Y’−Ti(CH−(OR)3−nで表される化学構造を有している。ここで、式中Y’は反応性官能基であり、末端にアミノ基を含むアミン構造を有するアミン系官能基、アルキル基と水酸基とを含む亜リン酸構造を有する亜リン酸型官能基、アルキル基を含むピロリン酸構造を有するピロリン酸型官能基、アルキル基とビニル基とを有するカルボン酸構造を有するカルボン酸型官能基等であり得る。また、Rは加水分解性を示す有機官能基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、アセチル基等であり得る。また、nは1または2である。チタネート系カップリング剤としては、例えば、少なくとも炭素数1〜60のアルキレート基を有するチタネート系カップリング剤、アルキルホスファイト基を有するチタネート系カップリング剤、アルキルホスフェート基を有するチタネート系カップリング剤、及びアルキルパイロホスフェート基を有するチタネート系カップリング剤が挙げられる。具体的にはイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
これらのシランカップリング剤は、特に制限されるものではないが、例えば、代表的には、味の素ファインテクノ株式会社、信越化学工業株式会社、東レダウコーニング株式会社等から入手することができる。また、これらのカップリング剤は、1種を単独で、または、2種以上を組み合わせて使用することができる。
カップリング剤は、フィラーの質量に対して所定の量を用いることができ、例えば、一例として、フィラーの総質量(100質量%)に対して、0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜2質量%とすることが例示される。
カップリング剤によるフィラーの表面処理は、公知の手法に基づき、乾式法や湿式法等のいずれの手法によっても実施することができる。例えば、乾式法によると、フィラーを撹拌容器内で撹拌機等により撹拌しながらカップリング剤の原液あるいは溶液をフィラーに均一に滴下させることで、フィラーの表面にカップリング剤を分散させてカップリング処理することができる。また、例えば、湿式法によると、予めカップリング剤を十分に加水分解させた水溶液を調製しておき、かかる水溶液にフィラーを浸漬することで、フィラーの表面を均一にカップリング処理できる。
なお、未処理のフィラー24の表面には、一般的に、吸着水や水和水および水素結合水等の形態で水(HO)が付着している。そして、かかる水分子におけるプロトン移動等により、フィラー24の表面には水酸基が形成され得る。この水酸基、とりわけ水和水に由来する水酸基は親水性が高く、フィラー24同士の凝集を招くものとなり得る。また、光硬化性樹脂22を主として構成する有機分子鎖の末端は、一般的に疎水性である。したがって、通常の状態では、フィラーと光硬化性樹脂(未硬化の状態の光硬化性組成物であり得る。)とは親和性が低く、単にフィラーと光硬化性組成物とを混合して光硬化性組成物を硬化させるだけでは、フィラーと硬化後の光硬化性樹脂との間の密着性は低い。
これに対し、上記の樹脂層20においては、フィラー24がカップリング剤により処理されている。カップリング剤は、一般に、分子構造の一端にフィラー24の表面の水酸基等と反応性や相溶性を持つ有機官能基である親水性端(親水基)を有し、また分子鎖の他端に光硬化性樹脂24等と反応可能な有機官能基を有することができる。したがって、フィラー24の表面にカップリング剤が化学的に結合することにより、フィラー24の表面の性状を光硬化性樹脂22との親和性の高い状態に転換させることができる。
[2.樹脂ペーストの用意]
次いで、上記でカップリング処理されたフィラー24と、砥粒30と、光硬化性樹脂組成物22’とを含む樹脂ペーストを用意する。
<砥粒>
ここに開示されるワイヤソー1は、被切断物を直接的に切削および切断する要素として、砥粒30を含有している。砥粒30の材質や性状等は特に制限されず、ワイヤソー1の使用目的や使用態様等に応じて、一般砥粒および超砥粒の中から適宜選択することができる。例えば、切断対象の硬度等の物理的特性を考慮して決定することができる。砥粒30の例としては、無機材料、有機材料および有機無機複合材料からなる粒子が挙げられる。かかる砥粒30を構成する無機材料の具体例としては、シリカ、アルミナ、セリア、クロミア、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、二酸化マンガン、酸化亜鉛、ベンガラ等の酸化物;窒化ケイ素、窒化ホウ素等の窒化物;炭化ケイ素、炭化ホウ素等の炭化物;炭窒化ホウ素;ダイヤモンド;炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩等が挙げられる。有機材料の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子やポリ(メタ)アクリル酸粒子、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。このような砥粒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
かかる砥粒30としては、無機材料からなる粒子を用いるのが好ましく、なかでも金属または半金属の酸化物からなる粒子を用いるのがより好ましい。例えば、ダイヤモンド(ヌープ硬度:7000〜8000程度)、炭窒化ホウ素(ヌープ硬度:4700程度)、シリカ(ヌープ硬度:800〜900程度)、炭化ケイ素(ヌープ硬度:2500〜3200程度)の粒子が挙げられる。例えば、ここに開示されるワイヤソーを太陽電池等に用いるシリコンウエハの切り出しに使用し得る切断工具等に用いる場合、砥粒30としては、ダイヤモンドを用いることが特に好ましい。その理由は、ダイヤモンドが極めて高硬度であるためである。また、ダイヤモンドは高純度のものが得られやすく、砥粒としても各種のものが市販されている点でも好ましい。
また、砥粒30の大きさや形状等についても、ワイヤソー1の使用目的や使用態様等に応じて適宜決定することができる。例えば、砥粒は、平均粒径が2μm〜40μm、アスペクト比が1.2〜1.6のものを好適に用いることができる。なお、かかる砥粒30は、靱性および切断性能を向上する目的などから、金属メッキ等による表面処理がなされていても良い。例えば、Ni被覆等の表面処理がなされていても良い。
<光硬化性樹脂>
光硬化性樹脂は、未硬化の状態の光硬化性樹脂(すなわち、光硬化性樹脂組成物)が光エネルギーの作用で重合または架橋して、液体から固体へと硬化することで構成された樹脂であり得る。ここで、光硬化性樹脂組成物は、一般に、当該光硬化性樹脂の構成源であるモノマーおよび/またはオリゴマーと、光重合開始剤とを含み、光照射により光重合開始剤が励起されてモノマーやオリゴマーに作用し、モノマーやオリゴマーの3次元的な重合反応や架橋反応を進行させる。光硬化性樹脂は、かかる重合または架橋等により分子量が増大し、硬化する(固体となる)ことで、形成されたものであり得る。
光重合開始剤は、紫外線エネルギーによりラジカル(活性種)を発生し、かかるラジカルがモノマーやオリゴマーの反応基に反応して重合を開始させる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系等の各種の化合物が知られており、光の吸収波長や吸収係数等により所望の性質を有するものを適宜選択して用いることができる。
なお、光硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を損ねない範囲において、公知の他の添加剤、助剤等を含むことができる。かかる添加剤および助剤は、例えば、光重合開始剤の開始反応を促進させる増感剤、モノマーおよびオリゴマーの意図しない重合を抑制する重合禁止剤、重合時の気泡の発生を防止する消泡剤等であり得る。
樹脂ペーストの調製に際しては、まず、カップリング処理されたフィラー24と光硬化性樹脂組成物22’とを混合して組成物の粘度を調整した後、砥粒30を添加するのが好ましい。ここで、フィラー24はカップリング剤の作用により光硬化性樹脂組成物との親和性が高められており、混練によりフィラー24を光硬化性樹脂組成物中に均一に分散させることができる。光硬化性樹脂(組成物)に加えるフィラー24の割合は、フィラーの形状等にも因るため一概には言えないものの、両者の総体積に占めるフィラーの割合がおおよそ50体積%以下となる範囲で添加することが適切である。フィラーの割合が50体積%を超えると、樹脂ペーストの粘度が高くなりすぎて作業性が低下するために好ましくない。フィラーの割合は、好ましくは10〜45体積%、例えば、25〜35体積%であり得る。
樹脂ペーストに配合する砥粒30の割合は、砥粒の形状等にも因るため一概には言えないものの、樹脂ペースト全体の体積に占める砥粒の割合がおおよそ40体積%以下となる範囲で添加することが適切である。砥粒の割合が40体積%を超えると、砥粒を固着する樹脂層の割合が少なくなりすぎ、砥粒の脱落や、樹脂層の割れ等の耐久性の低下を引き起こす可能性が高くなるために好ましくない。砥粒の割合は、好ましくは10〜35体積%、例えば、15〜30体積%であり得る。
[3.未硬化樹脂層の形成]
上記で用意した樹脂ペーストをワイヤ10の外周面に供給して未硬化樹脂層20’を形成する。
<ワイヤ>
ワイヤ10の材質や性状は特に制限されず、ワイヤソー1の使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。例えば、ワイヤ10としては、ピアノ線(炭素鋼線材)や、高張力鋼や高抗張力の非金属繊維(ファイバ)等からなる線材を用いることができる。線材の直径は、例えば、10μm〜300μm程度のものを好適に用いることができる。
かかるワイヤ10への樹脂ペーストの供給は、例えば、ディップ法を採用することで好適に実施することができる。具体的には、上記で用意した樹脂ペーストをディップ槽に収容しておき、かかるディップ槽内にリールを配設しておく。そして、ワイヤ10を、供給リールから巻取りリールの間をこのディップ槽内のリールを経由するように、連続的に供給する。すなわち、連続的に供給されるワイヤ10は、樹脂ペースト中を通過することによって、その外周面に樹脂ペーストが付着される。すなわち、図1に示されるように、ワイヤ10の外周面に、砥粒30を備えた未硬化樹脂層20’が形成される。
[4.未硬化樹脂層の硬化]
上記で形成した未硬化樹脂層中の光硬化性樹脂組成物を硬化させて、ワイヤソー1を得る。すなわち、ディップ槽を通過したワイヤ10は、ディップ槽よりも製造工程下流側で、例えば巻取りリールまでの任意の位置において、硬化処理が施される。かかる硬化処理は、用いた光硬化性樹脂組成物の特性に応じた波長の光の照射により実現される。例えば、所定の波長の光(マイクロ波、電子線、遠赤外線、紫外線等)を所定の強度で照射することができる。なお、必須ではないものの、光照射と加熱とを併用して硬化処理を行うことも可能である。これにより、光硬化性樹脂組成物を硬化させて樹脂層20を形成することができる。
以上のここで開示されるワイヤソー10は、樹脂層20によってワイヤ10の外周面に砥粒30が固着されているため、被切断物の加工面の面粗さをより平滑にすることができ、また、切削および切断加工中のワイヤソー1の捩れによる断線の可能性が低減されている。さらに、樹脂層20は、光硬化性樹脂22により構成されているため、製造時間が短縮できる。かかる樹脂層20は、光硬化性樹脂22とともにさらにフィラー24を含み、かかるフィラー24はカップリング処理により光硬化性樹脂22と良好に結合している。そのため、光硬化性樹脂22に基づく強度の低下が十分に補われ、耐久性の良いワイヤソー1が提供される。
<用途>
ここに開示されるワイヤソー1は、種々の材質および形状を有する被切断物の切削および切断に適用することができる。被切断物の材質は、例えば、シリコン、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銅、タンタル、チタン、ステンレス鋼等の金属もしくは半金属、またはこれらの合金;サファイア、水晶等の酸化物単結晶;石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ガラス状カーボン等のガラス状物質;アルミナ、シリカ、サファイア、窒化ケイ素、窒化タンタル、炭化チタン等のセラミック材料;炭化ケイ素、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム等の化合物半導体基板材料;ポリイミド樹脂等の樹脂材料;等であり得る。被切断物は、これらの複数の材質が複合化されたものであってもよい。なかでも、シリコンの単結晶、多結晶、アモルファスからなるインゴットを被切断物とする切断に特に好適に用いることができる。また、被切断物の形状も特に制限されない。例えば、板状や、円筒状、鋳塊状、多面体状等の平面を有する被切断物、曲面を有する被切断物を対象とすることができ、例えば、表面が円滑であるか凹凸があるか等については制限されない。ここに開示される技術は、例えば、砥粒を光硬化性樹脂からなる樹脂層によりワイヤに固定したワイヤソーであって、切断対象物を単結晶、多結晶、アモルファスのインゴットとする切断に対して特に好ましく適用することができる。
以下、ここで開示されるワイヤソーとその製造方法について、具体的な実施形態を示して説明を行う。しかしながら、本発明を以下の例に限定することを意図するものではない。
(例1〜5)
先ず、光硬化性樹脂組成物およびフィラーを、下記の表1に示す配合で混合して樹脂組成物1〜5を調製した。光硬化性樹脂組成物としては市販のアクリレート系光硬化性樹脂を用いた。フィラーとしては、平均粒径が(1)500nmと(2)10nmの2種類のシリカ粒子を用いた。本実施形態で使用したシリカ粒子は、電気化学工業株式会社、株式会社アドマテックス、東亞合成株式会社、旭硝子株式会社等から入手できるものである。例1〜5では、これらのシリカ粒子の表面処理を行わずにそれぞれ非処理フィラー1,2として用いた。
[粘度]
得られた樹脂組成物1〜5のせん断速度依存性の粘性を測定し、最大の粘度を樹脂組成物の粘度とした。測定には、モジュール型粘度・粘弾性測定装置(HAAKE社製、MARSIII)を用い、25℃で、回転(せん断)速度を0.01sec−1〜1000sec−1としたときの粘度を測定した。その結果を、表1の粘度の欄に、樹脂組成物1の粘度を100としたときの相対値として示した。
また、上記で用意した樹脂組成物1〜5に砥粒を混合し、ワイヤソー形成用の樹脂ペースト1〜5を調製した。砥粒としては、平均粒径が15μmの市販のダイヤモンド砥粒を用いた。得られた樹脂ペースト1〜5はディップ槽に収容した。
ワイヤソーのワイヤ(芯線)としては、φ100μmのピアノ線を用意した。そして、ワイヤを遠方のリールに巻き取る途中にディップ槽内のペースト表面を通過させることで、かかるワイヤの外周側に樹脂ペーストを付着させ、未硬化樹脂層を形成した。そして引き続き、ワイヤをリールに巻き取る前のタイミングで、かかる未硬化樹脂層に紫外線を照射して光硬化性樹脂組成物を硬化させ、ワイヤソー1〜5を作製した。かかるワイヤソー1〜5をワイソー本体に取り付けることで、切断工具を用意した。
[切断性能]
まず、ワイヤソー1〜5を用いた切断工具により、評価用のシリコン多結晶インゴットから円盤を切断し、切断に要した時間を測定した。そして、各ワイヤソーを用いた場合について、単位時間あたりに切断できる切断可能量を算出した。その結果を、表1に、ワイヤソー1を用いた時の切断可能量を100とする相対値として示した。
(例6〜12)
次いで、上記で用意したフィラーと、新たに用意した平均粒径が(3)5μmのシリカ粒子の表面を、シランカップリング剤で処理し、処理フィラー1〜3として用いた。シランカップリング剤は、味の素ファインテクノ株式会社、信越化学工業株式会社、東レダウコーニング株式会社等から入手できるものである。このシランカップリング剤を水で希釈した溶液に上記のフィラーを浸漬させたのち、乾燥させることで、フィラーの表面の処理を行った。
このようにして用意した処理フィラー1〜3と、上記の光硬化性樹脂組成物とを、表1に示す配合で混合し、その他は例1〜5と同様にして、樹脂組成物6〜12およびワイヤソー6〜12を得た。
樹脂組成物6〜12については、上記の樹脂組成物1〜5と同様に粘度を測定し、その結果を表1に示した。
ワイヤソー6〜12については、上記のワイヤソー1〜5と同様に切断性能を測定し、その結果を表1に示した。
(例13〜14)
上記で用意したフィラーの表面を処理することなく用い、フィラー1および2と、上記の光硬化性樹脂組成物とを、表1に示す配合で混合し、その他は例1〜5と同様にして、樹脂組成物13〜14およびワイヤソー13〜14を得た。なお、樹脂組成物13には、例6〜12で用いたのと同じカップリング剤を、樹脂組成物14には、分散剤(和光純薬工業株式会社製、ステアリン酸ナトリウム)を、フィラーと光硬化性樹脂組成物との混合時に表1に示す割合で添加した。
樹脂組成物13〜14については、上記の樹脂組成物1〜5と同様に粘度を測定し、その結果を表1に示した。
ワイヤソー13〜14については、上記のワイヤソー1〜5と同様に切断性能を測定し、その結果を表1に示した。
Figure 2015166125
[評価]
表1に示されるように、光硬化性樹脂に表面をカップリング処理していないフィラーを配合する場合には、得られる樹脂組成物の粘度と、ワイヤへの供給性および付着性の観点から、光硬化性樹脂70体積%に対して平均粒径が500nmのフィラー1を30体積%配合するNo.1の配合が適切であると判断できた。
一方、表1のNo.2に示されるように、フィラー1の一部(5体積%分)を平均粒径が20nmとより粒径の小さいフィラー2に置き換えると、フィラーが微細になるために樹脂層の強度および砥粒の固定能が高められ、切断性能が若干上昇した。しかしながら、樹脂組成物2の粘度が著しく上昇してしまい、上記のディップ方式でワイヤに良好に樹脂ペーストを付着させることが困難であり、ワイヤソーの生産性が劣ってしまう結果となった。
なお、表1のNo.3〜5に示されるように、比較的大粒径のフィラー1を用いず、比較的小粒径のフィラー2を用いた場合、光硬化性樹脂95体積%に対してフィラー2を僅か5体積%配合するNo.3の配合において、樹脂組成物の粘度がNo.1と同等まで上昇してしまった。そしてフィラー2の割合を7〜8体積%と微量に増加させたNo.4〜5の配合では、樹脂組成物の粘度が急激に上昇し、もはや上記のディップ方式によっては適切に樹脂ペーストをワイヤに付着させることが困難であった。これらNo.3〜5に従って得られたワイヤソーは、フィラー添加による樹脂層の高強度化が図れず、砥粒をワイヤに適切に固着しておくのが困難であり、切断性能が著しく低下する結果となった。
次いで、フィラーの表面をカップリング処理して用いるようにしたNo.6の樹脂組成物は、No.1と同量のフィラー1が配合されているにもかかわらず、樹脂組成物の粘性が半分にまで低下されると同時に、樹脂組成物1のワイヤへの供給性が向上したのが確認できた。また、No.1とフィラー1の量は同じであるのに、ワイヤソーの切断性能は1.5倍にも向上された。これは、硬化後の樹脂層においてフィラーが均一に分散し、なおかつ光硬化性樹脂と親和性良く結合して密着性が高められており、樹脂層の強度と砥粒を固定する力とが十分に増大された結果であると考えられる。
なお、このような傾向は、より大粒径のフィラー1とより小粒径のフィラー2とをブレンドして用いた場合により一層顕著となることも確認できた。すなわち、No.7の樹脂組成物は、小粒径のフィラー2を含む分だけNo.6の樹脂組成物よりも粘度が若干上昇しているものの、フィラーの総量が同じNo.1の樹脂組成物と比較すると粘度は6割ほどに低減されることが確認できた。また、より大粒径のフィラー1とより小粒径のフィラー2とをブレンドして用いることにより、これらフィラーの相互作用によって樹脂層を強化する効果と砥粒を固定する力とが相乗的に強化され、切削性能についてはNo.6のワイヤソーの約1.3倍、No.1のワイヤソーの2倍と、大幅に向上されることが確認できた。
また、No.8〜9に示されるように、フィラーの表面をカップリング処理することにより、例えばNo.3の樹脂組成物と同量(No.8)のフィラー2を配合しても、樹脂組成物の粘度が急激に上昇することはなく、例えば、少量のフィラー2の配合で切削性能についてはNo.1のワイヤソーよりも向上させ得ることが確認できた。さらには、フィラー2を15体積%(No.9)程度配合しても、良好な粘性および切削性が実現されることが確認できた。
そして、No.10に示されるように、フィラーの表面をカップリング処理することにより、フィラー1については光硬化性樹脂に対して同量(50体積%)という大量のフィラーを配合することが可能となり、これにより切削性能についてもNo.1のワイヤソーよりも6割ほど向上することが確認できた。
また、No.11〜12に示されるように、平均粒径が5μmと極めて大粒径のフィラー3も、その表面をカップリング処理することにより好適に樹脂層に導入することができた。No.11〜12においては、樹脂組成物にNo.1と同量のフィラーを添加したにもかかわらずその粘度はNo.1に比べて大幅に低下し、また得られたワイヤソーについては切断性能の向上が確認できた。
以上のことから、フィラーの表面をカップリング処理することで、フィラーが光硬化性樹脂と親和性良く結合してフィラーと光硬化性樹脂との密着性が高められ、また、樹脂組成物中でのフィラーの分散性が高められるものと考えられる。そして、かかるフィラーの存在によって、樹脂層の強度と砥粒を固定する力とが十分に増大され、ワイヤソーの切断性能や、生産性、ワイヤソーにおける樹脂層の強度および砥粒固着能を劇的に改善されることがわかった。
なお、No.13〜14に示されるように、樹脂組成物に単にカップリング剤や分散剤を単独で添加しても、粘度は低減することができるものの、フィラーの分散性や光硬化性樹脂との反応性および密着性を高めることはできず、切断性能の向上には何ら効果が見られなかった。すなわち、樹脂組成物中でのフィラーの分散性を向上させるだけでは、効果的に切断性能を高めることに繋がらないことがわかった。換言すると、カップリング剤によるフィラーの表面処理が、樹脂組成物中のフィラーの分散性を向上させることのみならず、光硬化性樹脂との結合を強化し、樹脂組成物の強度および砥粒の固着能を効果的に高めていることが確認できた。
以上のことから、ここに開示されるワイヤソーは、砥粒を光硬化性樹脂からなるバインダにより固定されているにもかかわらず、砥粒が強固に固定されており、高い切断性能を示すものとして提供される。また、かかるワイヤソーは、バインダが光硬化性樹脂からなるため、簡便に製造することが可能である。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1 ワイヤソー
10 ワイヤ
20 樹脂層
20’ 未硬化樹脂層
22 光硬化性樹脂
22’ 光硬化性樹脂組成物
24 フィラー
30 砥粒

Claims (6)

  1. ワイヤと、
    前記ワイヤの外周面に設けられた樹脂層と、
    前記樹脂層に配置された砥粒と、
    を備え、
    前記樹脂層は、光硬化性樹脂とフィラーとを含み、
    前記フィラーはカップリング剤を介して前記光硬化性樹脂と結合されている、ワイヤソー。
  2. 前記フィラーは、平均粒径が100nm以下の第1の粒子群と、平均粒径が100nmを超えて10μm以下の第2の粒子群とを含んでいる、請求項1に記載のワイヤソー。
  3. 前記フィラーは、アルミナ、シリカ、酸化クロム、セリア、グラファイト、チタニア、ジルコニア、マグネシア、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒炭化ホウ素およびダイヤモンドからなる群から選択される少なくとも1種の材料から構成されている、請求項1または2に記載のワイヤソー。
  4. 前記カップリング剤は、シランカップリング剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワイヤソー。
  5. 前記フィラーは、前記光硬化性樹脂と前記フィラーとの総体積に占める割合が50体積%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のワイヤソー。
  6. ワイヤの外周面に砥粒が固着されたワイヤソーの製造方法であって、
    フィラーの表面をカップリング剤によりカップリング処理することにより、該表面に有機官能基を導入すること、
    前記カップリング処理されたフィラーと、前記砥粒と、光硬化性樹脂組成物とを含む樹脂ペーストを用意すること、
    前記樹脂ペーストを前記ワイヤの外周面に供給して未硬化樹脂層を形成すること、
    前記未硬化樹脂層を形成している前記光硬化性樹脂組成物を硬化させること、
    を包含する、ワイヤソーの製造方法。
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