JP2022167430A - 医療用コーティング剤及び医療機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】抗血栓性及び非水溶性を有し、基材に対する密着性に優れ、かつ抗血栓性の経時的な変動が少なく安定した生体適合性を示す医療用コーティング剤を提供すること。【解決手段】酸素原子を環内に2個以上含む環状エーテル構造、又は環状カーボネート構造を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位(A)を含む重合体を含有する医療用コーティング剤とする。【選択図】なし

Description

本発明は、医療用コーティング剤及び医療機器に関し、より詳しくは、生体成分や生体組織に接触されて使用される医療機器に生体適合性を付与する技術に関する。
医療機器の材料としては、合成高分子やセラミックス、ガラス、金属等といった種々の材料が用いられている。一方、生体成分や生体組織に医療機器が接触すると、生体がその医療機器を異物と認識することによって、医療機器の機能が阻害されたり生体に影響が及んだりすることが考えられる。例えば、医療機器が血液に接触されて使用される用途では、医療機器が異物と認識されることによって生体防御機能が活性化され、血栓が形成されることが考えられる。このような点に鑑み、従来、生体適合性の合成高分子を用いて、医療機器に生体適合性を付与することが注目されている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。
特許文献1には、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構造単位を有する重合体をコーティング剤の成分として用いることにより、医療用具の基材表面に生体適合性を付与することが開示されている。また、特許文献2には、2-メトキシエチルアクリレートに由来する構造単位を有する重合体を生体適合性医療材料として用いることが開示されている。
国際公開第2001/05855号 特開平04-152952号公報
しかしながら、特許文献1に記載の2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンに由来する構造単位を有する重合体は水溶性であるため、血液に接触されて使用される用途では、医療機器の使用中に、医療機器の基材表面を被覆する重合体が血液中に溶出してしまうことが懸念される。また、基材表面を被覆する重合体が血液中に溶出することを抑制しようとすると、重合体を基材表面に化学結合させる等の複雑な処理が必要になる。
また、特許文献2に記載の2-メトキシエチルアクリレートに由来する構造単位を有する重合体は、基材との密着性が十分でないことや、経時に伴い抗血栓性が変動する、すなわち生体適合性の安定性に劣ることが懸念される。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、抗血栓性及び非水溶性を有し、基材に対する密着性に優れ、かつ抗血栓性の経時的な変動が少なく安定した生体適合性を示す医療用コーティング剤を提供することにある。
本発明によれば以下の手段が提供される。
〔1〕 酸素原子を環内に2個以上含む環状エーテル構造、又は環状カーボネート構造を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位(A)を含む重合体を含有する、医療用コーティング剤。
〔2〕 前記重合体は、前記構造単位(A)を、前記重合体が有する全構造単位に対して50質量%以上含む、上記〔1〕の医療用コーティング剤。
〔3〕 前記重合体は(メタ)アクリル系重合体である、上記〔1〕又は〔2〕の医療用コーティング剤。
〔4〕 上記〔1〕~〔3〕のいずれかの医療用コーティング剤が基材にコーティングされた医療機器。
本発明の医療用コーティング剤は、抗血栓性及び非水溶性を有するとともに、基材に対する密着性に優れている。また、抗血栓性の経時的な変動が少なく、安定した生体適合性を発現することができる。
以下、本発明について詳しく説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
≪医療用コーティング剤≫
本発明の医療用コーティング剤は、酸素原子を環内に2個以上含む環状エーテル構造、又は環状カーボネート構造を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位(A)を含む重合体(以下、「重合体(P)」ともいう)を含有する。以下、本発明の医療用コーティング剤に含まれる各成分について説明する。
<重合体(P)>
重合体(P)は、酸素原子を環内に2個以上含む環状エーテル構造を有するエチレン性不飽和単量体(以下、「単量体(A-1)」ともいう)、及び環状カーボネート構造を有するエチレン性不飽和単量体(以下、「単量体(A-2)」ともいう)よりなる群から選択される少なくとも1種の単量体に由来する構造単位を有する重合体である。重合体(P)は、酸素原子を環内に2個以上含む環状エーテル構造又は環状カーボネート構造(以下、「特定環状構造」ともいう)を側鎖に有することが好ましく、具体的には、特定環状構造が2価の連結基を介して主鎖に結合した構造を有することが好ましい。重合体(P)は、特定環状構造を側鎖に有することによって、水和時に中間水を多く含んだ状態になり、これにより良好な抗血栓性及び経時安定性を示すことができると考えられる。
ここで、「中間水」とは、ポリマーとの相互作用の強弱により取り得る水の状態の一形態を表す。一般に、ポリマーが水和するとき、水和水は、ポリマーとの相互作用が弱く凝固点が0℃である「自由水」、及びポリマーとの相互作用が強く凝固点が検出されない「不凍水」のほか、ポリマーとの相互作用が自由水と不凍水との中間であって、凝固点が0℃未満である「中間水」の形態をとる。すなわち、「中間水」は、ポリマーと比較的緩やかに相互作用している水をいう。
単量体(A-1)が有する環状エーテル構造は、酸素原子を環内に2個以上含む複素環構造であれば特に限定されない。単量体(A-1)が有する環状エーテル構造は、環員数が5~8の含酸素複素環が好ましく、例えば、1,3-ジオキソラン構造、1,2-ジオキサン構造、1,3-ジオキサン構造、1,4-ジオキサン構造、1,3,5-トリオキサン構造等が挙げられる。これらの環状構造には、例えば炭素数1~5のアルキル基等の置換基が導入されていてもよい。
単量体(A-2)が有する環状カーボネート構造は、環員数が5~8の含酸素複素環が好ましく、例えば、2-オキソ-1,3-ジオキソラン構造、2-オキソ-1,3-ジオキサン構造等が挙げられる。これらの環状構造には、例えば炭素数1~5のアルキル基等の置換基が導入されていてもよい。
非水溶性及び生体適合性の安定化の両特性がより優れている点において、特定環状構造は、酸素原子を環内に2個以上含む環状エーテル構造がより好ましい。
特定環状構造を有する単量体は、(メタ)アクリル系単量体であることが好ましい。特定環状構造を有する単量体が(メタ)アクリル系単量体である場合、単量体の反応率を容易に上げることができ、重合反応において得られた重合体を精製せずにそのまま医療用コーティング剤として使用できる点で好適である。
特定環状構造を有する単量体の具体例としては、単量体(A-1)として、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、2-ビニル-1,3-ジオキソラン、4,4,6-トリメチル-2-ビニル-1,3-ジオキサン等が挙げられる。
単量体(A-2)としては、(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、2-((2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メトキシ)エチル(メタ)アクリレート、4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、5-メチル-5-アリルオキシカルボニル-1,3-ジオキサン-2-オン等が挙げられる。
なお、特定環状構造を有する単量体の合成方法は特段制約されるものではない。特定環状構造を有する単量体の合成方法としては、例えば、酸クロライドとアルコールとを反応させる方法(酸クロライド法);窒素を含む触媒X及び亜鉛を含む触媒Yの存在下、(メタ)アクリレートと1価アルコールとをエステル交換反応させる方法;触媒として硫酸やスルホン酸類を用い、(メタ)アクリル酸とアルコールとを反応させる方法;有機錫化合物を触媒としてエステル交換反応を行う方法;チタン化合物を触媒としてエステル交換反応を行う方法等が挙げられる。
重合体(P)は、特定環状構造を重合体の側鎖に導入しやすい点、及び工業的に製造しやすい点で、(メタ)アクリル系重合体であることが好ましい。具体的には、重合体(P)を構成する単量体に由来する全構造単位のうち、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位の割合は、50質量%を超えることが好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上がより更に好ましく、90質量%以上が一層好ましい。
重合体(P)は、特定環状構造を有する単量体に由来する構造単位のみから構成されていてもよいが、本発明の効果を損なわない範囲において、特定環状構造を有する単量体以外であって、かつ特定環状構造を有する単量体と共重合可能な単量体(以下、「その他の単量体」ともいう)に由来する構造単位を更に有していてもよい。その他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和酸無水物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル、(メタ)アクリル酸の芳香族エステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、特定環状構造とは異なる複素環構造を有するビニル化合物、アミノ基含有ビニル化合物、アミド基含有ビニル化合物、ニトリル基含有ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、マレイミド化合物等が挙げられる。
これらの具体例としては、不飽和カルボン酸として、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、桂皮酸、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、4-カルボキシスチレン等が挙げられる。不飽和酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル及び(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル及び(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸の芳香族エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシメチル、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル及び(メタ)アクリル酸3-フェノキシプロピル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシブチル及び(メタ)アクリル酸n-ブトキシブチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、及び(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
特定環状構造とは異なる複素環構造を有するビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等が挙げられる。
アミノ基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2-ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2-(ジ-n-プロピルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2-ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2-ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2-(ジ-n-プロピルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸3-ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3-ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3-(ジ-n-プロピルアミノ)プロピル等が挙げられる。
アミド基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ニトリル基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸1-シアノエチル、(メタ)アクリル酸2-シアノエチル、(メタ)アクリル酸1-シアノプロピル、(メタ)アクリル酸2-シアノプロピル、(メタ)アクリル酸3-シアノプロピル、(メタ)アクリル酸4-シアノブチル、(メタ)アクリル酸6-シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチル-6-シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸8-シアノオクチル、(メタ)アクリロニトリル、α-エチルアクリロニトリル、α-イソプロピルアクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-フルオロアクリロニトリル等が挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ビニルキシレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ブチルスチレン、メトキシスチレン、ヒドロキシスチレン、イソプロペニルフェノール、ビニル安息香酸、ビニルナフタレン等が挙げられる。
マレイミド化合物としては、マレイミド及びN-置換マレイミド化合物が挙げられる。N-置換マレイミド化合物としては、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-n-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-n-ブチルマレイミド、N-イソブチルマレイミド、N-tert-ブチルマレイミド等のN-アルキル置換マレイミド;N-シクロペンチルマレイミド及びN-シクロヘキシルマレイミド等のN-シクロアルキル置換マレイミド;N-ベンジルマレイミド等のN-アラルキル置換マレイミド;N-フェニルマレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド、N-(4-アセチルフェニル)マレイミド、N-(4-メトキシフェニル)マレイミド等のN-アリール置換マレイミドが挙げられる。なお、その他の単量体としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その他の単量体は、非水溶性かつ生体適合性が高い重合体を得る観点から、上記のうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル、(メタ)アクリル酸の芳香族エステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、アミノ基含有ビニル化合物、及びアミド基含有ビニル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、その他の単量体に由来する構造単位を導入した場合にも高い抗血栓性を維持する観点から、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルがより好ましい。
重合体(P)は、構造単位(A)を、重合体(P)が有する全構造単位に対して30質量%以上含むことが好ましい。重合体(P)における構造単位(A)の割合が上記範囲であると、本発明の医療用コーティング剤を塗布した基材に対し、高い抗血栓性及び基材に対する高い密着性と、抗血栓性の経時的な変動が少なく安定した生体適合性とを付与できる点で好適である。重合体(P)における構造単位(A)の割合は、重合体(P)が有する全構造単位に対して、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましく、70質量%以上がより更に好ましく、80質量%以上が一層好ましく、90質量%以上がより一層好ましい。
重合体(P)が、特定環状構造を有する単量体とその他の単量体との共重合体である場合、重合体(P)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体及びグラフト共重合体等のいずれであってもよい。特定環状構造を重合体全体に均一に導入して抗血栓性の改善効果を高める観点からすると、上記のうちランダム共重合体であることが好ましい。
重合体(P)の重量平均分子量(Mw)は、2,000~700,000の範囲にあることが好ましい。Mwが2,000以上であると、医療用コーティング剤を用いて形成されたコーティング層の力学的強度を確保することができる。また、Mwが700,000以下であると、医療用コーティング剤の粘度が高くなることを抑制でき、塗工性及び取扱い性を確保できる。重合体(P)のMwは、より好ましくは5,000以上であり、更に好ましくは8,000以上であり、より更に好ましくは10,000以上であり、より更に好ましくは15,000以上である。重合体(P)のMwの上限については、より好ましくは500,000以下であり、更に好ましくは300,000以下であり、より更に好ましくは200,000以下である。なお、本明細書において、重合体のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて得られた標準ポリスチレン換算値である。
重合体(P)を製造するための重合方法は特段制限されるものではない。重合体(P)は、例えば溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合等の公知のラジカル重合方法を採用して、単量体を重合することにより得ることができる。溶液重合法による場合、例えば、有機溶剤及び単量体を反応器に仕込み、重合開始剤(例えば、アゾ化合物)を添加して、40~250℃に加熱して重合することにより、目的とする重合体を得ることができる。
<その他の成分>
本発明の医療用コーティング剤には、使用する目的等に応じて、重合体(P)とは異なる成分(以下、「その他の成分」ともいう)が更に含有されていてもよい。本発明の医療用コーティング剤が液体である場合、当該医療用コーティング剤の一態様は、重合体(P)が、必要に応じて溶剤に溶解又は分散された重合体組成物である。
本発明の医療用コーティング剤に配合される溶剤としては、重合体(P)を溶解可能な有機溶媒が好ましく用いられる。本発明の医療用コーティング剤に含有される溶剤の具体例としては、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル等のエステル類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;n-ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン及びキシレン等の炭化水素類;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。なお、溶剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の医療用コーティング剤に配合されるその他の成分としては、溶剤のほか、例えば抗菌剤、抗炎症剤、酸化防止剤等の各種薬剤等が挙げられる。その他の成分は、1種又は複数種を使用することができる。その他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲において、各成分に応じて適宜選択することができる。
本発明の医療用コーティング剤において、重合体(P)の含有量は、医療用コーティング剤に含まれる固形分(すなわち、医療用コーティング剤中の溶剤以外の成分)の合計量100質量部に対して、50質量部以上が好ましく、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上が更に好ましく、90質量部以上がより更に好ましく、95質量部以上が一層好ましい。重合体(P)の含有量を上記範囲とすることにより、優れた抗血栓性を示し、かつ抗血栓性の経時的な変動が少なく、より安定した生体適合性を基材に付与できる点で好適である。
本発明の医療用コーティング剤が溶液状態である場合、医療用コーティング剤における固形分濃度(ここでは、医療用コーティング剤の調製に用いた溶剤の体積量に対する、医療用コーティング剤中の溶剤以外の成分の質量の割合)は、特に限定されないが、好ましくは0.001~30(w/v)%である。固形分濃度を0.001(w/v)%以上とすることにより、十分な厚み及び力学的強度を有するコーティング層を基材上に形成することができる。固形分濃度が30(w/v)%以下であると、良好な塗工性を確保でき、また均一な厚みのコーティング層を形成しやすい。重合体組成物における固形分濃度は、より好ましくは0.01~25(w/v)%、更に好ましくは0.05~20(w/v)%である。
≪医療機器≫
本発明の医療機器は、上述した本発明の医療用コーティング剤が基材にコーティングされてなるものである。本発明の医療機器は、その表面の一部又は全部が、本発明の医療用コーティング剤に含まれる重合体(P)によって被覆されているため、抗血栓性に優れ、かつ抗血栓性の経時的な変動が少なく、安定した生体適合性を発現することができる。また、重合体(P)は非水溶性であるため、基材の表面修飾を行わなくても基材に対する密着性が高く、医療機器の基材表面に対し生体適合性を長期に亘って付与できる点で好適である。
本発明の医療用コーティング剤を塗工する医療機器の基材は特に限定されない。当該基材を構成する材料としては、例えば樹脂やゴム、金属、ガラス、セラミック等の各種材料が挙げられる。これらのうち、樹脂としては、例えばポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、フッ素系樹脂(ポリフッ化ビニリデン、四フッ化ポリエチレン等)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル系樹脂等の各種樹脂材料が挙げられる。ゴムとしては、シリコーンゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。金属としては、ステンレス、チタン、アルミニウム等の各種金属材料が挙げられる。医療機器の基材を構成する材料は、2種以上の材料の混合物であってもよい。
本発明の医療用コーティング剤により基材表面をコーティングする方法は特に限定されない。例えば、医療用コーティング剤が溶液状態である場合、医療用コーティング剤を基材表面に塗工し、加熱等の手段により溶剤を除去することにより、基材表面の少なくとも一部が重合体(P)により被覆された医療機器を得ることができる。
塗工方法は、基材の形状や使用目的等に応じて適宜設定することができる。塗工方法としては、例えば、バーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ディップコーター、ロールコーター、スピンコーター、フローコーター、ナイフコーター、コンマコーター、リバースコーター、ダイコーター、リップコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、インジェット等の各種塗工方法が挙げられる。医療用コーティング剤の塗工量としては、医療用コーティング剤により形成されるコーティング層の厚みが所望の範囲内になるように、医療機器の用途や材料等に応じて適宜選択することができる。
本発明の医療用コーティング剤により基材表面がコーティングされる医療機器(すなわち、本発明の医療機器)は特に限定されず、種々の用途の医療機器に適用できる。本発明の医療用コーティング剤によれば、優れた抗血栓性及び生体適合性を基材表面に付与できる点において、中でも、血液と直接接触するように使用される医療機器の基材をコーティングする材料として本発明の医療用コーティング剤を好ましく適用できる。具体的には、ステント、カテーテル、血液バッグ、輸血用器具、手術用器具、歯科用器具、血液循環装置、血液浄化装置、血漿分離装置、人工血管、人工臓器(例えば、人工心肺、人工腎臓等)といった各種医療機器を例示することができる。
ここで、医療用コーティング剤の生体適合性は、当該コーティング剤に含まれるポリマー材料が含水あるいは水和するときに、そのポリマーが中間水を有することと関連していると考えられている(例えば、特開2016-35000号公報の段落0003及び0004参照)。生体内では、細胞が異物を認識することによって生体防御機能が活性化され、拒絶反応が起きる。そのため、治療や手術等によって医療機器が生体成分あるいた生体組織と接触した場合に、生体がその医療機器を異物と認識してしまうと、生体防御機能が作用し、治療等の妨げになるおそれがある。例えば、医療機器が血液に接触した場合、血栓が形成されてしまい、医療機器の機能が阻害されたり生体に影響を及ぼしたりすることが考えられる。一方、表面に中間水を有するポリマーは、生体から異物と認識されにくく、優れた生体適合性を発揮することができる。
本発明の医療用コーティング剤に含まれる重合体(P)は、特定環状構造を有することにより水和時に中間水を保持しやすく、これにより、重合体(P)を含むコーティング剤は、優れた抗血栓性と、抗血栓性の経時的な変動が少なく安定した生体適合性とを発現できたものと考えられる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
1.エチレン性不飽和単量体(a)の合成
[合成例1:(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレートの合成]
まず、原料の4-(ヒドロキシメチル)-1,3-ジオキソラン-2-オン(Sigma-Aldrich製)を140℃、60Paの条件で蒸留精製を実施した。
2Lの4口フラスコに、蒸留精製後の4-(ヒドロキシメチル)-1,3-ジオキソラン-2-オン47.2gを加えた。また、トリエチルアミン40.5g、及び溶剤として酢酸エチル1Lを加えた。
主管にメカニカルスターラー、側管に温度計、滴下漏斗、三方コックを接続し、窒素を100mL/minでフローした。側管の滴下漏斗にアクリロイルクロライド40.7gを加えた。その後、フラスコを氷浴に浸して、内温を5℃以下まで冷却した。滴下漏斗からアクリロイルクロライドを滴下し、内温が10℃以下になるように滴下速度を調整した。滴下が終了した後、室温に戻して1晩撹拌を継続した。
一晩撹拌した後、フラスコに炭酸水素ナトリウム飽和水溶液300mLを加えて、反応を停止させた。さらに純水300mLを加えて撹拌した後、分液漏斗に移した。水層を抜き出したのち、飽和食塩水100mLを加えて洗浄した。洗浄は3回実施した。洗浄後の有機層に無水硫酸ナトリウムを100mL加えて、1時間撹拌して脱水した。脱水後、濾過した有機層に、理論収量の250ppmになるパラメトキシフェノール17.2mgを加えた。その後、ロータリーエバポレーターを用いて脱溶媒した。
回収した生成物を、ヘキサン/酢酸エチルを1対1の体積比で混合した溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート(以下、「単量体(a1)」ともいう)を得た。単量体(a1)の回収量は15gであった。
[合成例2:2-((2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メトキシ)エチルアクリレートの合成]
(1)3-(2-ヒドロキシエトキシ)プロパン-1,2-ジオールの蒸留精製
300mLのフラスコにエマルゲンGE-1(花王社製)100gを加えた。フラスコにアダプターを用いて温度計及びリービッヒ冷却器を取り付け、留出液受器として100mLのフラスコを2個接続した。
冷却器に-15℃の冷却液を流し、高真空ポンプにて減圧蒸留を行った。温度は125~140℃で、内圧は7~25Paで調整した。48時間後、蒸留を停止した。停止後の本留液3-(2-ヒドロキシエトキシ)プロパン-1,2-ジオールは30gであり、釜残液は40gであった。
(2)4-((2-ヒドロキシエトキシ)メチル)-1,3-ジオキソラン-2-オンの合成
100mLの2口フラスコに、蒸留により回収した本留液3-(2-ヒドロキシエトキシ)プロパン-1,2-ジオール20g、炭酸エチレン19.4gを加えた。また、本留液の0.1質量%になるように活性アルミナ0.02g加えた。
フラスコに温度計及びジムロート冷却管を接続し、頂部に三方コックを経由して高真空ポンプを接続した。冷却器に-15℃の冷却液を流した状態で、フラスコの内温を145℃に加熱し、30Paで減圧還流を行った。14時間後、還流を停止した。
冷却後、内液4-((2-ヒドロキシエトキシ)メチル)-1,3-ジオキソラン-2-オンを回収した。
(3)2―((2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メトキシ)エチルアクリレートの合成
1Lの4口フラスコに、上記(2)で得られた4-((2-ヒドロキシエトキシ)メチル)-1,3-ジオキソラン-2-オン20gを加えた。また、トリエチルアミン16.5g、及び溶剤として酢酸エチル300mLを加えた。
主管にメカニカルスターラー、側管に温度計、滴下漏斗及び三方コックを接続し、窒素を100mL/minでフローした。側管の滴下漏斗にアクリロイルクロライド14.7gを加えた。その後、フラスコを氷浴に浸して、内温を5℃以下まで冷却した。
滴下漏斗からアクリロイルクロライドを滴下し、内温が10℃以下になるように滴下速度を調整した。滴下が終了した後、室温に戻して1晩撹拌を継続した。
一晩撹拌した後、フラスコに炭酸水素ナトリウム飽和水溶液150mLを加えて、反応を停止させた。さらに純水150mLを加えて撹拌した後、分液漏斗に移した。水層を抜き出したのち、飽和食塩水50mLを加えて洗浄した。洗浄は3回実施した。洗浄後の有機層に無水硫酸ナトリウム50mL加えて、1時間撹拌して脱水した。脱水後、濾過した有機層に、理論収量の250ppmになるパラメトキシフェノール 6.7mgを加えた。その後、ロータリーエバポレーターを用いて脱溶媒した。
回収した生成物を、ヘキサン/酢酸エチルを1対1の体積比で混合した溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2-((2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メトキシ)エチルアクリレート(以下、「単量体(a2)」ともいう)を得た。単量体(a2)の回収量は8.8gであった。
2.重合体の製造
重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析にて以下の測定条件により測定した。
<GPC分析の測定条件>
・装置:東ソー社製、型番HLC-8320GPC
・検出器:RI検出器
・カラム:以下のカラム1又はカラム2を使用
カラム1:東ソー製TSKgel SuperMultiporeHZ-M×3本
カラム2:東ソー製TSKgel SuperHM-M×3本
・カラムの温度:40℃
・溶離液:以下の溶離液〔1〕又は溶離液〔2〕を使用
溶離液〔1〕:テトラヒドロフラン(内部標準として硫黄を0.03%含むもの)、流量:350μL/min)
溶離液〔2〕:ジメチルホルムアミド(臭化リチウムを10mM含み、内部標準としてアセトンを0.3g/L含むもの)、流量:300μL/min
・検量線:標準ポリスチレンを使って較正曲線を作成した。
[製造例1:重合体Aの製造]
2口試験管に、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート(大阪有機化学工業社製、以下、「MEDOL-10」ともいう)3.0g、2、2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(富士フイルム和光純薬社製、以下、「V-59開始剤」ともいう)0.360g、酢酸エチル27gを加えた。その後、試験管に撹拌子を入れ、側管に温度計、主管に三方コックを取り付けた。三方コックからシリンジ針を差し込み、アルゴンを100mL/minで30分間溶液に吹き込み、脱酸素した。その後、三方コックを閉止した。
60℃に設定したヒートブロックに試験管を挿入して、重合を開始した。その後、内温が60℃になるように適宜、ヒートブロックの温度を調整した。3時間経過後、試験管を氷浴で冷却して、重合を停止させた。
反応液をヘキサン/アセトンを9対1の質量比で混合した溶媒で再沈殿精製を2回実施した。その後、回収した重合体を、純水を溶媒として用いて同様に再沈殿精製を実施し、重合体Aを得た。重合体AのGPC測定(カラム1、溶離液〔1〕を使用)を行った結果、重量平均分子量は153,000であった。
[製造例2:重合体Bの製造]
2口試験管に、合成例1で得られた(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート3.0g、V-59開始剤0.209g、ジメチルスルホキシド27gを加えた。その後、試験管に撹拌子を入れ、側管に温度計、主管に三方コックを取り付けた。三方コックからシリンジ針を差し込み、アルゴンを100mL/minで30分間溶液に吹き込み、脱酸素した。その後、三方コックを閉止した。
60℃に設定したヒートブロックに試験管を挿入して、重合を開始した。その後、内温が60℃になるように、ヒートブロックの温度を適宜調整した。3時間経過後、試験管を氷浴で冷却して、重合を停止させた。
反応液をメタノール/ジメチルホルムアミドを4対6の質量比で混合した溶媒で再沈殿精製を実施した。その後、溶媒を純水として再沈殿精製を行い、重合体Bを得た。重合体BのGPC測定(カラム2、溶離液〔2〕を使用)を行った結果、重量平均分子量は86,000であった。
[製造例3:重合体Cの製造]
2口試験管に、合成例2で得られた2-((2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メトキシ)エチルアクリレート3.0g、V-59開始剤0.167g、ジメチルスルホキシド27gを加えた。その後、試験管に撹拌子を入れ、側管に温度計、主管に三方コックを取り付けた。三方コックからシリンジ針を差し込み、アルゴンを100mL/minで30分間溶液に吹き込み、脱酸素した。その後、三方コックを閉止した。
60℃に設定したヒートブロックに試験管を挿入して、重合を開始した。その後、内温が60℃になるように、ヒートブロックの温度を適宜調整した。3時間経過後、試験管を氷浴で冷却して、重合を停止させた。
反応液をメタノール/ジメチルホルムアミドを4対6の質量比で混合した溶媒で再沈殿精製を実施した。その後、溶媒を純水として再沈殿精製を行い、重合体Cを得た。重合体CのGPC測定(カラム2、溶離液〔2〕を使用)を行った結果、重量平均分子量は75,000であった。
[製造例4:重合体Dの製造]
2口試験管に、MEDOL-10 2.7g、2-メトキシエチルアクリレート(以下、「MEA」ともいう)0.3g、V-59開始剤0.360g、酢酸エチル27gを加えた。その後、試験管に撹拌子を入れ、側管に温度計、主管に三方コックを取り付けた。三方コックからシリンジ針を差し込み、アルゴンを100mL/minで30分間溶液に吹き込み、脱酸素した。その後、三方コックを閉止した。
60℃に設定したヒートブロックに試験管を挿入して、重合を開始した。その後、内温が60℃になるように、ヒートブロックの温度を適宜調整した。3時間経過後、試験管を氷浴で冷却して、重合を停止させた。
反応液をヘキサン/アセトンを9対1の質量比で混合した溶媒で再沈殿精製を2回実施した。その後、回収した重合体を、溶媒として純水を用いて同様に再沈殿精製を実施し、重合体Dを得た。重合体DのGPC測定(カラム1、溶離液〔1〕を使用)を行った結果、重量平均分子量は99,000であった。
[製造例5:重合体Eの製造]
2口試験管に、MEDOL-10 1.8g、MEA 1.2g、V-59開始剤0.360g、酢酸エチル27gを加えた。その後、試験管に撹拌子を入れ、側管に温度計、主管に三方コックを取り付けた。三方コックからシリンジ針を差し込み、アルゴンを100mL/minで30分間溶液に吹き込み、脱酸素した。その後、三方コックを閉止した。
60℃に設定したヒートブロックに試験管を挿入して、重合を開始した。その後、内温が60℃になるように適宜、ヒートブロックの温度を調整した。3時間経過後、試験管を氷浴で冷却して、重合を停止させた。
反応液をヘキサン/アセトンを9対1の質量比で混合した溶媒で再沈殿精製を2回実施した。その後、回収した重合体を、溶媒として純水を用いて同様に再沈殿精製を実施し、重合体Eを得た。重合体EのGPC測定(カラム1、溶離液〔1〕を使用)を行った結果、重量平均分子量は112,000であった。
[製造例6:重合体Fの製造]
2口試験管に、MEDOL-10 1.5g、MEA 1.5g、V-59開始剤0.360g、酢酸エチル27gを加えた。その後、試験管に撹拌子を入れ、側管に温度計、主管に三方コックを取り付けた。三方コックからシリンジ針を差し込み、アルゴンを100mL/minで30分間溶液に吹き込み、脱酸素した。その後、三方コックを閉止した。
60℃に設定したヒートブロックに試験管を挿入して、重合を開始した。その後、内温が60℃になるように、ヒートブロックの温度を適宜調整した。3時間経過後、試験管を氷浴で冷却して、重合を停止させた。
反応液をヘキサン/アセトンを9対1の質量比で混合した溶媒で再沈殿精製を2回実施した。その後、回収した重合体を、溶媒として純水を用いて同様に再沈殿精製を実施し、重合体Fを得た。重合体FのGPC測定(カラム1、溶離液〔1〕を使用)を行った結果、重量平均分子量は102,000であった。
[比較製造例1:重合体Gの製造]
2口試験管にMEA 3.0g、V-59開始剤0.555g、酢酸エチル27gを加えた。その後、試験管に撹拌子を入れ、側管に温度計、主管に三方コックを取り付けた。三方コックからシリンジ針を差し込み、アルゴンを100mL/minで30分間溶液に吹き込み、脱酸素した。その後、三方コックを閉止した。
60℃に設定したヒートブロックに試験管を挿入して、重合を開始した。その後、内温が60℃になるように、ヒートブロックの温度を適宜調整した。3時間経過後、試験管を氷浴で冷却して、重合を停止させた。
反応液をヘキサン/アセトンを6対4の質量比で混合した溶媒で再沈殿精製を2回実施した。その後、回収した重合体を、溶媒として純水を用いて同様に再沈殿精製を実施し、重合体Gを得た。重合体GのGPC測定(カラム1、溶離液〔1〕を使用)を行った結果、重量平均分子量は85,000であった。
3.医療用コーティング剤の製造及び評価
[実施例1~6及び比較例1]
<評価方法>
(1)抗血栓性
得られた各重合体を水中に3日間浸漬することにより含水させた。含水後の各重合体を所定量取り、薬包紙を用いて表面の水分を除いて、アルミパンの底に薄く広げた。示差走査熱量計(測定機器:NETZSCH社製DSC214Polyma、測定雰囲気:空気雰囲気下)を用いて、室温から-100℃まで冷却して、10分間保持した後、昇温速度5℃/分の速度で昇温して、「中間水」に由来するピークの有無を確認し、以下の基準で抗血栓性を評価した。結果を表1に示す。
○:中間水に由来するピークが確認された(抗血栓性良好)
×:中間水に由来するピークが確認されなかった(抗血栓性不良)
(2)密着性
0.2(w/v)%の重合体溶液(実施例1及び比較例1:メタノール溶液、実施例2及び実施例3:N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液、実施例4~6:酢酸エチル溶液)を調製し、これを医療用コーティング剤とした。続いて、ガラス板(旭硝子社製、ファブリテックFL11A、1mm厚)及びSUS304(エンジニアリングテストサービス社製、1mm厚)をアセトンで十分に洗浄した後、それぞれの上に、各医療用コーティング剤を650μL用いてスピンコートを行った。スピンコート条件は、500rpm,5s→1,500rpm,10s→1,500 to 4,000rpm(slope),5s→4,000rpm,10s→4,000 to 0rpm(slope),5sとした。その後、送風乾燥機を用いて100℃で30分乾燥することで、密着性評価用コーティング基材を得た。得られたコーティング基材を目視、光学顕微鏡及び原子間力顕微鏡にて観察し、以下の基準で密着性を評価した。結果を表1に示す。
○:ガラス及びSUSのいずれの場合でも、コーティング層の浮きがなく、表面が均一にコーティングされている。
△:ガラス及びSUSでコーティング層の一部に浮きが見られた。
×:ガラス及びSUSのいずれの場合も、コーティング層の全体に浮きが見られた。
(3)水接触角
0.2(w/v)%の重合体溶液(実施例1及び比較例1:メタノール溶液、実施例2及び実施例3:DMF溶液、実施例4~6:酢酸エチル溶液)を調製し、これを医療用コーティング剤とした。続いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート(厚さ:125μm,三菱ケミカル社製DIAFOILT-100E)をアセトンで十分に洗浄した後、PETシートの上に、各医療用コーティング剤を650μL用いて、上記(2)と同様の条件でスピンコートを行った。その後、送風乾燥機を用いて100℃で30分乾燥することにより、接触角測定用コーティング基材を得た。この接触角測定用コーティング基材につき、接触角を測定した。
接触角は、接触角測定装置(英弘精機社製、型番:SCA20)を用い、水液滴法により測定した。なお、水液滴法では、室温下(相対湿度:約40%)で、2μLの水滴を接触角測定用コーティング基材上に接触させ、滴下直後(0秒)及び経時(滴下から30秒、滴下から60秒)での角度を測定した。測定は、同一の接触角測定用コーティング基材上の3点で実施し、3点の測定値の平均値を採用した。結果を表1に示す。
Figure 2022167430000001
4.評価結果
実施例1~6の結果から明らかなように、重合体(P)を含む実施例1~6の医療用コーティング剤は、示差走査熱量計による評価において中間水に由来するピークが観察され、抗血栓性を有していることが確認された。また、接触角測定用コーティング基材上に水を滴下した直後の水接触角は、実施例1~6のいずれも75°以上と高く、非水溶性を有していることが確認された。さらに、実施例1~6の医療用コーティング剤は、水接触角の経時変化が小さく、抗血栓性の経時に伴う変動が少ない(すなわち、安定した生体適合性を示す)こと、及び基材に対する密着性が高いことが確認された。特に、酸素原子を環内に2個以上含む環状エーテル構造を有する重合体Aを用いた場合には、環状カーボネート構造を有する重合体B、Cを用いた場合との対比で、非水溶性及び生体適合性の安定化においてより優れていることが確認された(実施例1~3)。
これに対し、重合体(P)に代えて、特定環状構造を有しない重合体を用いた比較例1の医療用コーティング剤は、水接触角の経時変化が大きく、生体適合性が不安定であった。また、比較例1のコーティング剤を用いて形成されたコーティング層は、基材への密着性が実施例1~6よりも劣っていた。

Claims (4)

  1. 酸素原子を環内に2個以上含む環状エーテル構造、又は環状カーボネート構造を有するエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位(A)を含む重合体を含有する、医療用コーティング剤。
  2. 前記重合体は、前記構造単位(A)を、前記重合体が有する全構造単位に対して50質量%以上含む、請求項1に記載の医療用コーティング剤。
  3. 前記重合体は(メタ)アクリル系重合体である、請求項1又は2に記載の医療用コーティング剤。
  4. 請求項1~3のいずれか一項に記載の医療用コーティング剤が基材にコーティングされた医療機器。
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