JP2022122784A - 酸化防止剤含有経皮吸収製剤 - Google Patents

酸化防止剤含有経皮吸収製剤 Download PDF

Info

Publication number
JP2022122784A
JP2022122784A JP2021020253A JP2021020253A JP2022122784A JP 2022122784 A JP2022122784 A JP 2022122784A JP 2021020253 A JP2021020253 A JP 2021020253A JP 2021020253 A JP2021020253 A JP 2021020253A JP 2022122784 A JP2022122784 A JP 2022122784A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
drug
stabilizer
preparation according
base
adhesive
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021020253A
Other languages
English (en)
Inventor
英淑 権
Eishuku Gon
諭 熊本
Satoshi Kumamoto
融融 蒋
Rongrong Jiang
文男 神山
Fumio Kamiyama
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
CosMED Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
CosMED Pharmaceutical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by CosMED Pharmaceutical Co Ltd filed Critical CosMED Pharmaceutical Co Ltd
Priority to JP2021020253A priority Critical patent/JP2022122784A/ja
Priority to CN202280003847.8A priority patent/CN115551489A/zh
Priority to PCT/JP2022/004911 priority patent/WO2022172915A1/ja
Priority to EP22752738.9A priority patent/EP4292613A1/en
Publication of JP2022122784A publication Critical patent/JP2022122784A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/33Heterocyclic compounds
    • A61K31/38Heterocyclic compounds having sulfur as a ring hetero atom
    • A61K31/381Heterocyclic compounds having sulfur as a ring hetero atom having five-membered rings
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/33Heterocyclic compounds
    • A61K31/395Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins
    • A61K31/435Heterocyclic compounds having nitrogen as a ring hetero atom, e.g. guanethidine or rifamycins having six-membered rings with one nitrogen as the only ring hetero atom
    • A61K31/44Non condensed pyridines; Hydrogenated derivatives thereof
    • A61K31/445Non condensed piperidines, e.g. piperocaine
    • A61K31/4468Non condensed piperidines, e.g. piperocaine having a nitrogen directly attached in position 4, e.g. clebopride, fentanyl
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K47/00Medicinal preparations characterised by the non-active ingredients used, e.g. carriers or inert additives; Targeting or modifying agents chemically bound to the active ingredient
    • A61K47/02Inorganic compounds
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K9/00Medicinal preparations characterised by special physical form
    • A61K9/70Web, sheet or filament bases ; Films; Fibres of the matrix type containing drug
    • A61K9/7023Transdermal patches and similar drug-containing composite devices, e.g. cataplasms
    • A61K9/703Transdermal patches and similar drug-containing composite devices, e.g. cataplasms characterised by shape or structure; Details concerning release liner or backing; Refillable patches; User-activated patches
    • A61K9/7038Transdermal patches of the drug-in-adhesive type, i.e. comprising drug in the skin-adhesive layer
    • A61K9/7046Transdermal patches of the drug-in-adhesive type, i.e. comprising drug in the skin-adhesive layer the adhesive comprising macromolecular compounds
    • A61K9/7053Transdermal patches of the drug-in-adhesive type, i.e. comprising drug in the skin-adhesive layer the adhesive comprising macromolecular compounds obtained by reactions only involving carbon to carbon unsaturated bonds, e.g. polyvinyl, polyisobutylene, polystyrene

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

【課題】所期の薬効を発現させるに充分な量の薬物を安定に膏体中に保持しかつ皮膚の刺激を可及的に低減した経皮吸収製剤を提供する。【解決手段】基剤中に薬物及び安定化剤を含んでなる経皮吸収製剤において、該安定化剤はチオ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、及び亜硝酸塩からなる群より選ばれるものである経皮吸収製剤。前記経皮吸収製剤は、さらにグリセリンを含むことが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、皮膚に適用して所要の薬物を生体膜を経て皮下組織又は体内循環系へ投与するのに使用される、テープ剤、パッチ剤(薬物を含むリザーバ層と貼付層が積層された剤型のものをいう)、などの経皮吸収製剤に関するものである。
一般に薬物の経口投与の場合には、胃または腸内のpH値、内容物の有無などの状態によって薬物の吸収性が左右されるため、薬物の吸収量を常に一定に保つことは困難であり、また一定量の薬物を長期間かけて徐々に投与することも難しい。経口投与においては、吸収量が一定しないために時として急激な血中濃度の上昇により副作用が生じることがあり、また半減期の短い薬物においては有効血中濃度の持続時間が短くなり、充分な薬効が長く保持できないことがある。更には、注射投与では投与時の苦痛や、投与方法の不便さといった問題がある。局所作用を目的とする製剤の場合、薬物を角質層を経て皮下組織に一定の濃度を維持する必要がある。
そこで、これらの問題を解決するために、一定した有効血中濃度を長時間にわたって維持でき、しかも簡便性、機能性などの向上が期待できるなどの理由により、経皮吸収製剤の開発が積極的に推進されている。この種の経皮吸収製剤は、本来異物の体内への侵入を防ぐバリア機能を有する皮膚の角質層を経由して薬物を体内循環系へ投与するものであるため、所期の薬効を発現させるに充分な量の薬物を投与するのは必ずしも容易でなく、通常、基剤に吸収促進剤を加えて薬物の透過性を高めたり、貼付面積を大きくするなどの方策がとられている。
経皮吸収製剤が貼付剤である場合、これが貼付中に皮膚を刺激するという副作用を有しているため、その貼付面積は可能な限り小さい方が好ましい。このような副作用を低減させるためには、吸収促進剤の添加により薬物の皮膚透過性を向上させることにより、貼付剤の貼付面積を縮小化することが望まれる。そのため特定の化合物を製剤に添加し薬物の経皮吸収を促進するための吸収促進剤に関して多くの提案がなされてきた(例えば、特許文献1、2)。また薬物自身が安定性に劣る物質の場合、保存時の分解を防ぐための安定化剤に関しても多くの検討がなされてきた(例えば、特許文献3)。
ロチゴチン含有経皮吸収製剤の場合、ロチゴチン及び抗酸化剤を1:0.0001~ 0.1の重量比で混合する工程を含む経皮吸収製剤の製造方法が知られている(特許文献4)。特許文献4における抗酸化剤は、トコフェロール及びそのエステル、アスコルビン酸、アスコルビルパルミテート、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール及びプロピルガレートからなる群から選択される一つ以上の物質である。また、支持体、薬物含有層および剥離ライナーからなるロチゴチン含有経皮吸収型貼付剤において、前記薬物含有層が、(1)ゴム系粘着剤、(2)ロチゴチン又はその塩、並びに(3)ロチゴチンの分解生成物の生成抑制剤、を含有する経皮吸収型貼付剤が知られている(特許文献5)。特許文献5におけるロチゴチンの分解生成物の生成抑制剤は、メルカプトベンズイミダゾール、亜硫酸塩が使用される。
フェンタニル含有経皮吸収製剤の場合、支持体と、該支持体の少なくとも一方の面に積層された粘着剤層とを備える貼付剤であって、前記粘着剤層が、フェンタニル及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種、粘着基剤、及び、硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤を含有している貼付剤が知られている(特許文献6)。特許文献6において、硫黄原子を分子内に有する抗酸化剤は、2-メルカプトベンズイミダゾール及びピロ亜硫酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも一種である。
特表平10-507199号公報(特許第3228341号) 国際公開第2011/049038号(特許第5913981号) 特開平3-261722号公報(特許第3002493号) 特表2017-515871号公報 特開2013-079220号公報(特許第5856424号) 国際公開第2017/073516号(特許第6453481号)
本発明は、安定化剤を含有する経皮吸収製剤に関する。安定化剤は、粘着剤層中の薬物の安定性を向上させる作用を果たす。ただし、粘着性基剤に安定化剤を添加した結果、粘着性が低下したり皮膚刺激性が高くなったりしてはならない。したがって、安定化剤としては、対象となる薬物、配合される粘着性基剤などを勘案して、最適のものを選定する必要がある。
また、安定化剤は、経皮吸収製剤を皮膚に貼付している期間中、皮膚に対して作用するものであるから、皮膚刺激を有するものであってはならない。現在までに多くの安定化剤が使用されてきた。代表的な安定化剤は、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、トコフェロール、ビタミンC及びその誘導体、ヒドロキノン、等の酸化防止剤である。チオ硫酸塩及び亜硫酸塩は、強い還元性を有し強力な酸化防止効果を有する。しかしながら、これらの化合物は無機塩であり経皮吸収製剤の基剤として一般的なゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤との相溶性が悪く、基剤中で粒子状に凝集し安定化効果を発揮できにくいとの難点を有している。本発明の目的は、上記の如き実情に鑑み、所期の薬効を発現させるに充分な量の薬物を安定に膏体中に保持した経皮吸収製剤を提供することにある。
本発明者らは、新規安定化剤の検討を鋭意進める中で、チオ硫酸塩、亜硫酸塩などの無機還元性物質が多くの薬物の安定に優れかつ皮膚刺激性も低いことを見出した。これらの化合物は有機溶媒の多くに溶けにくくかつ経皮製剤の基剤であるゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤との相溶性が極めて悪いので、チオ硫酸塩、亜硫酸塩を配合しても均一に分散せずに結晶析出により効果を発揮しにくい。本発明者らは、これら無機塩にさらにグリセリンを共存させることによりチオ硫酸塩、亜硫酸塩などが基剤中で均一微分散可能となり、還元性無機塩の酸化防止効果を発揮させることを見出し、本発明を完成するに至った。
チオ硫酸塩、亜硫酸塩は、還元剤としてよく知られており、化粧品、食品、そして医療用途に古くから使用されてきた安全性データも多い物質である。しかしながら、本物質を経皮吸収製剤に添加することにより薬物に対する安定性付与の性質を与えることは想定されても、無機塩であることで使い勝手が悪く、経皮吸収製剤用途には亜硫酸塩では1件の報告(特許第5856424号公報)があるが、チオ硫酸塩の添加は全く知られていなかった。
本発明は、以下に示す通りである。
〔1〕 基剤中に薬物及び安定化剤を含んでなる経皮吸収製剤において、該安定化剤はチオ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、及び亜硝酸塩からなる群より選ばれるものである経皮吸収製剤。
〔2〕 前記基剤がアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤からなる群より選ばれる1種または2種以上である、〔1〕に記載の経皮吸収製剤。
〔3〕 薬物を含む膏体総重量中の前記安定化剤の含有量が0.01~2重量%である、〔1〕又は〔2〕に記載の経皮吸収製剤。
〔4〕 基剤中に薬物及び安定化剤を含んでなる経皮吸収製剤において、該安定化剤はチオ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、及び亜硝酸塩からなる群より選ばれるものであり、さらにグリセリンを含むことを特徴とする経皮吸収製剤。
〔5〕 グリセリンの含有量が、薬物を含む膏体総重量中に0.01~20重量%である、〔4〕に記載の経皮吸収製剤。
〔6〕 粘着剤の基剤中に薬物、安定化剤、及びグリセリンを共存し、該グリセリンの添加量が該安定化剤の1重量部に対して1.5~2000重量部である、〔4〕又は〔5〕に記載の経皮吸収製剤。
〔7〕 粘着剤の基剤中に薬物、安定化剤、及びグリセリンを共存し、該グリセリンの添加量が該安定化剤の1重量部に対して1.5~2000重量部であり、さらに吸収促進剤を含有する、〔4〕又は〔5〕に記載の経皮吸収製剤。
〔8〕 薬物がロチゴチン又はその塩である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
〔9〕 薬物がロチゴチン又はその塩であり、さらに吸収促進剤を含む〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
〔10〕 前記吸収促進剤がセチルアルコール、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、パルミチン酸イソプロピル(IPP)、及びステアリン酸からなる群より選ばれるものである、〔9〕に記載の経皮吸収製剤。
〔11〕 薬物がロチゴチン又はその塩であって、ポリイソブチレン(PIB)とアクリル系混合の粘着剤基剤にセチルアルコールを含む、〔9〕又は〔10〕に記載の経皮吸収製剤。
〔12〕 薬物がロチゴチン又はその塩であって、スチレン-イソプレン-スチレン・ブロック共重合体(SIS)とアクリル系混合の粘着剤基剤にIPMを含む、〔9〕又は〔10〕に記載の経皮吸収製剤。
〔13〕 薬物がフェンタニル又はその塩である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
〔14〕 薬物がフェンタニル又はその塩であり、さらに吸収促進剤を含む〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
〔15〕 前記吸収促進剤がセチルアルコール、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、パルミチン酸イソプロピル(IPP)、及びステアリン酸からなる群より選ばれるものである、〔14〕に記載の経皮吸収製剤。
〔16〕 薬物がフェンタニル又はその塩であって、基剤がスチレン-イソプレン-スチレン・ブロック共重合体(SIS)の粘着剤である、〔14〕又は〔15〕に記載の経皮吸収製剤。
〔17〕 ゴム系、アクリル系粘着剤溶液に薬物;チオ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、及び亜硝酸塩からなる群より選ばれる安定化剤;並びにグリセリンを混合する工程を含む、透明又は半透明の塗工溶液の製造方法。
〔18〕 ゴム系、アクリル系粘着剤溶液に薬物;チオ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、及び亜硝酸塩からなる群より選ばれる安定化剤;並びにグリセリンを共存し、さらにショ糖脂肪酸エステルを混合する工程を含む、塗工液の製造方法。
本発明の経皮吸収製剤に含まれる安定化剤であるチオ硫酸塩、亜硫酸塩等(以下チオ硫酸塩等という)は、還元性アニオンを持つ中性の化合物である。薬物が塩基性の化合物である場合、チオ硫酸塩等のアニオンと相互作用して安定化し、分解を抑制するものと考えられる。さらに、チオ硫酸塩等は既に知られている吸収促進剤との組合せを用いることにより、単位面積及び単位時間当たりの薬物の放出量及び皮膚内部への薬物の移行性が極めて向上せられる。これは、上記吸収促進剤が基剤の物性を変えると共に、皮膚内に浸透して角質層のバリア機能を減退させるためであると考えられる。その結果、基剤と皮膚の間の薬物の分配係数が変化し、あるいは、皮膚中における薬物の拡散速度が高められ、薬物の放出量が向上すると共に、所要量の薬物が容易に皮膚を透過して体内循環系に吸収される。
そのため、テープ剤の場合、従来の薬物含有経皮吸収製剤と比較して、同一面積の従来品よりも有効投与量の大きな経皮吸収製剤が得られる。換言すれば、従来品より小さい面積の経皮吸収製剤で従来品と同一の効果が得られる。
したがって、皮膚刺激に敏感な人においても紅斑を生じることが回避されるか、または紅斑の面積が縮小される。そして製剤の面積が小さくてすむため、貼付操作が容易である上に、貼付による違和感もない。
比較例2のロチゴチンパッチ抽出物のクロマトグラム 実施例1のロチゴチンパッチ抽出物のクロマトグラム 実施例3のフェンタニルパッチ抽出物のクロマトグラム(A)及び比較例4のフェンタニルパッチ抽出物のクロマトグラム(B)
本発明の経皮吸収製剤における安定化剤としては、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、及び亜硝酸塩が挙げられる。塩としては、アルカリ金属との塩、アルカリ土類金属との塩が挙げられ、ナトリウム塩が好ましい。チオ硫酸塩等は、単独で使用されてもよいし、すでに知られている吸収促進剤と併用されてもよい。チオ硫酸塩等の添加量は、好ましくは基剤(膏体総重量)中に0.01~5重量%であり、更に好ましくは0.02~2重量%である。基剤中の添加量が0.01重量%未満では薬物への安定化効果が弱く、また5重量%を超えると基剤中での結晶析出に問題を生じがちである。
本発明のもう一つの特徴は、チオ硫酸塩等の基剤への配合に当たって塩溶解助剤を添加することにある。チオ硫酸Na、亜硫酸Na、などの無機塩は極めて極性が高く、それゆえゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤との相溶性が悪い。またこれらの粘着剤の溶媒である、酢酸エチル、トルエン、シクロヘキサン、等に全く不溶であるので、薬物及び粘着剤を溶解させて溶液にチオ硫酸塩等を均一分散させることは極めて困難である。本発明者らは、チオ硫酸塩等を粘着剤溶液に均一に微分散させるにあたり、グリセリンを共存させると粘着剤溶液に均一に微分散し、乾燥させた経皮吸収製剤においても、基剤中に安定に微分散して薬物の安定化効果を発揮することを見出した。
グリセリンの添加量は、基剤(膏体総重量)中に0.01~20重量%であり、更に好ましくは0.02~10重量%である。基剤中の添加量が0.01重量%未満では、チオ硫酸塩等の基剤中また製造用塗工溶液中の均一分散に際する溶液安定化効果が弱く、また20重量%を超えると、粘着膏体表面にブリードし、粘着力の低下など不適事項が生じがちである。さらにチオ硫酸塩等1重量部に対して、グリセリンの添加量は1.5~2000重量部が好ましい。
本発明の経皮吸収製剤においては吸収促進剤を併用できる。併用可能な吸収促進剤としては、1-ドデシルシクロヘプタン-2-オン、オレイルアルコール、セチルアルコール、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリン酸メタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、1-メチル-2-ピロリドン、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、パルミチン酸イソプロピル(IPP)、トリアセチン、乳酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、などがあげられ、セチルアルコール、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、パルミチン酸イソプロピル(IPP)、及びステアリン酸が好ましい。塩基性薬物の吸収促進のためには、トリアセチン、ジイソプロパノールアミン、などが好ましい。これらの添加量は、基剤(膏体総重量)の1~20重量%が好ましい。基剤中の添加量が1重量%未満では促進効果が弱く、また20重量%を超えると皮膚への作用が強く刺激性を起こす問題が生じがちである。
上記基剤中に含まれる薬物、吸収促進剤の添加量は、軟膏剤、クリーム剤、リニメント剤では製剤自体に対する添加量に相当し、テープ剤やパップ剤では製剤から支持体や剥離紙を除いた部分、すなわち、粘着性基剤の部分に対する添加量に相当し、パッチ剤ではリザーバ層及び/または粘着剤層に含ませる基剤に対する添加量に相当する。
本発明で使用される経皮吸収製剤の基剤はテープ剤やパップ剤の場合には粘着性基剤であって、軟膏剤、クリーム剤、パッチ剤及びリニメント剤の場合には非粘着性基剤である。
上記粘着性基剤としては薬物を溶解することができ、かつ、常温で皮膚ないし粘膜に対し長時間固着し得る感圧接着性を有する一般的な粘着剤組成からなるものであれば、特に限定されない。好ましい粘着性基剤としては、アクリル系粘着剤からなる基剤、ゴム系粘着剤からなる基剤、シリコーン系粘着剤からなる基剤などが例示される。これらは、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
アクリル系粘着基剤に使用されるアクリル系粘着剤としては、炭素数1~18、特に好ましくは4~18の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とから得られるアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体、共重合体及びアルキル(メタ)アクリレートとその他の官能性モノマーとの共重合体が例示される。
官能性モノマーの例としては、水酸基を有するモノマー、カルボキシル基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、アミノ基を有するモノマー、等がありまた共重合性モノマーとしては、たとえば酢酸ビニル、スチレン、α-メチルスチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブタジエンなども使用できる。粘着剤中にはアルキル(メタ)アクリレートが(共)重合成分として50重量%以上含有されることが好ましい。
アクリル系粘着剤を調製するには、通常、重合開始剤の存在下に所要のモノマーの溶液重合を行う。ただし、重合形態はこれに限定されない。また重合反応条件は主としてモノマーの種類により適宜選定される。
ゴム系粘着基剤に使用されるゴム系粘着剤としては、天然ゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-オレフィン-スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリブテン、ポリイソブチレン(PIB)、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのゴム弾性体100重量部に、たとえばロジン系樹脂、ポリテルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、石油系樹脂、テルペン-フェノール樹脂などの粘着性付与剤を20~200重量部及び必要に応じて、液状ポリブテン、鉱油、ラノリン、液状ポリイソプレン、液状ポリアクリレートなどの軟化剤、酸化チタンなどの充填剤、ブチルヒドロキシトルエンなどの老化防止剤などを適量添加してなるものが例示される。
シリコーン系粘着基剤に使用されるシリコーン系粘着剤としては、ポリジメチルシロキサンなどを主成分とするものが例示される。
上記粘着剤中には、可塑剤、充填剤、老化防止剤などの配合剤が必要に応じて添加されてもよい。
前記非粘着性基剤としては蜜ろう、油脂、ラノリン、白色ワセリン、パラフィン、プラスチベース、高級脂肪酸、高級アルコール、乳化剤、マクロゴール、カルボキシビニルポリマーなどが例示される。
本発明で使用される薬物(生理活性物質)としては、経皮的に生体膜を透過しうるものであればよい。
薬物の例としては、たとえば解熱消炎鎮痛剤、ステロイド系抗炎症剤、非ステロイド抗炎症剤、麻薬系鎮痛剤、抗てんかん剤、抗精神病剤、抗うつ・抗不安剤、抗パーキンソン剤、抗認知症剤、催眠剤、鎮静剤、鎮痙剤、筋弛緩剤、自立神経作用剤、脳循環・代謝改善剤、強心剤、抗狭心症剤、高血圧・不整脈用剤、血管拡張剤、血圧降下剤、昇圧剤、利尿剤、呼吸促進剤、鎮咳去痰剤、気管支拡張剤、喘息・鼻アレルギー治療剤、呼吸器用剤、感冒用剤、制吐剤、制酸剤、抗潰瘍剤、緩下剤、止痢制腸剤、肝臓用剤、膵疾患治療剤、利胆剤、女性ホルモン剤、男性ホルモン剤、視床下部及び下垂体ホルモン剤、排卵誘発剤、尿崩症治療剤、甲状線ホルモン剤、蛋白同化ホルモン剤、抗甲状線剤、カルシウム代謝剤、消炎酵素剤、抗ヒスタミン剤、抗リウマチ剤、痛風治療剤、血糖降下剤、ビタミン剤、造血剤、止血剤、高脂血症治療剤、抗生物質、抗腫瘍剤、免疫抑制剤、解毒剤、催吐剤、駆虫剤、抗原虫剤、痔治療剤、泌尿生殖器用剤、局所麻酔剤、抗凝血剤などが例示される。
解熱消炎鎮痛剤としては、インドメタシン、サリチル酸、サリチル酸グリコール、アスピリン、アセトアミノフェン、ジクロフェナックナトリウム、イブプロフェン、スリンダック、ナプロキセン、ケトプロフェン、などが例示される。
ステロイド系抗炎症剤としては、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、フルオシノロンアセトニド、フルドロキシコルチド、メチルプレドニゾロン、などが例示される。
麻薬系鎮痛剤としては、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、などが例示される。フェンタニルはフリー体であっても塩であってもよく、医薬上許容されうる塩であれば、無機塩であっても有機塩であってもよい。例えば、フェンタニルクエン酸塩等が挙げられる。本発明では、フェンタニルクエン酸塩を用いるのが好ましい。
血管拡張剤としては、ジルチアゼム、ベラパミル、四硝酸ペンタエリスリトール、ジピリダモール、硝酸イソソルビド、ニフェジピン、ニトログリセリンなどが例示される。
高血圧・不整脈用剤としては、プロパノロール、アテノロール、ピンドロール、硫酸キニジン、アジマリン、塩酸アルプレノロール、酒石酸メトプロロール、ナドロール、マレイン酸チモロール、ジソピラミドなどが例示される。
血圧降下剤としては、塩酸クロニジン、カプトプリル、塩酸ブニトロロールなどが例示される。
鎮咳去痰剤としては、塩酸プロカテロール、硫酸テルブタリン、などが例示される。
抗腫瘍剤としては、5-フルオロウラシル、1-(2-テトラヒドロフリル)-5-フルオロウラシル、マイトマイシンCなどが例示される。
局所麻酔剤としては、ベンゾカイン、プロカイン、リドカイン、テトラカインなどが例示される。
ホルモン剤としては、エストロゲン、エストラジオール、テストステロン、プロゲステロン、プロスタグランジンなどのステロイドホルモン類や、インスリンなどのペプチドホルモン類などが例示される。
喘息・鼻アレルギー治療剤としては、フマル酸ケトチフェン、塩酸アゼラスチン、クロモグリク酸ナトリウムなどが例示される。
抗ヒスタミン剤としては、塩酸シクロヘプタジン、塩酸ジフェンヒドラミン、フェンベンザミン、メキタジンなどが例示される。
抗凝血剤としては、ヘパリンなどが例示される。
鎮痙剤としては、スコポラミン、クロフルペロールなどが例示される。
脳循環・代謝改善剤としては、ビンポセチン、塩酸フルナリジン、塩酸ニカルジピン、フマル酸ブロビンカミン、メシル酸ジヒドロエルゴトキシン、酒石酸イフェンプロジル、塩酸イソクスプリンなどが例示される。
抗うつ・抗不安剤としては、塩酸マプロチリン、エチゾラム、ジアゼパム、ブロマゼパム、塩酸アミトリプチリン、塩酸ミアンセリンなどが例示される。
抗認知症剤としては、ドネペジル、リバスチグミンが例示される。
抗パーキンソン病剤としてはロピニロール(塩酸塩)、ロチゴチンが例示される。ロチゴチンはフリー体であっても塩であってもよく、医薬上許容されうる塩であれば、無機塩であっても有機塩であってもよい。例えば、ロチゴチン塩酸塩等が挙げられる。本発明では、ロチゴチンのフリー体を用いるのが好ましい。
ビタミンD製剤としては、アルファカルシドール、エルゴカルシフェロールなどが例示される。
血糖降下剤としては、グリベンクラミド、グリクラジドなどが例示される。
抗潰瘍剤としては、リンゴ酸クレボブリド、ファモチジン、臭化グリコピロニウムなどが例示される。
睡眠剤としては、フェノバルビタール、アモバルビタールなどが例示される。
抗生物質としては、テトラサイクリン、クロラムフェニコールなどが例示される。
本発明においては、各種薬物の経皮吸収性を促進することができる。従って、薬物が、塩基性薬物であっても、酸性薬物であっても、本発明の組成物と組み合わせることで、経皮吸収性の優れた製剤を製造することができるが、安定化剤としてチオ硫酸塩等を使用する観点から、塩基性薬物を選択することが望ましい。塩基性薬物とは、アミノ基(1級、2級又は3級)等の塩基性官能基を分子中に有し、化合物として塩基性を示す薬物のことであり、酸性薬物とは、カルボキシ基等の酸性官能基を分子中に有し、化合物として酸性を示す薬物のことである。抗パーキンソン病用のロチゴチン及びその塩、鎮痛剤であるフェンタニル及びその塩も塩基性化合物の例となる。
これらの薬物の添加量は、薬物の種類、経皮吸収製剤の使用目的などにより異なるが、好ましくは0.1~30重量%である。薬物の基剤に対する飽和溶解度は基剤の組成により変わる。薬物をその飽和溶解度に可能な限り近い濃度で基剤中に相溶させ、結晶析出が起こらないようにすることにより、薬物の高い放出性が得られる。ただし、基剤中に薬物の結晶が析出していても、特に支障はない。薬物または吸収促進剤をカプセル化したり、薬物または吸収促進剤の貯蔵層を設けることも可能である。
本発明で使用される経皮吸収製剤は、テープ剤、パップ剤、パッチ剤、クリーム剤、リニメント剤及び軟膏剤などである。
ただし、前記リザーバー層中の薬物や安定化剤などは、粘着剤層にも含ませてもよい。
上記クリーム剤、軟膏剤及びリニメント剤は、前記非粘着性基剤に、薬物、安定化剤及び必要に応じて加えられる吸収促進剤等の添加剤を均一に混合してなる薬物含有ペースト、スラリーまたは液状物である。
テープ剤は、薬物、安定化剤及び必要に応じて加えられる吸収促進剤等の添加剤を含む前記粘着性基剤が、支持体の片面に設けられたものであり、好ましい粘着性基剤としては皮膚に接着性のよいものである。
上記パップ剤は、薬物、安定化剤、水及び必要に応じて加えられる吸収促進剤等の添加剤を含む前記粘着基剤を支持体の片面に層状に塗布したものであり、好ましい粘着性基剤としては水と親和性のよいものである。粘着性基剤の粘着性が乏しい場合は絆創膏、粘着テープなどで皮膚表面に固定される。
上記パッチ剤は、支持体の片面に非粘着性のリザーバー層及び前記粘着剤からなる粘着剤層が順次積層されて構成されたものであり、リザーバー層に、薬物、安定化剤及び必要に応じて加えられる吸収促進剤等の添加剤を含む前記非粘着性基剤が保持させられたものである。このリザーバー層が粘着剤層を介して皮膚に貼付され、リザーバー層中の薬物が粘着層を通って経皮吸収される。
クリーム剤及び軟膏剤には、脂溶性溶解剤、精製水、水溶性溶解剤、pH調整剤などが添加されてもよい。脂溶性溶解剤としては、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチルなどが例示され、水溶性溶解剤としては、エタノール、グリセリン、プロピレングリコールなどが例示される。
テープ剤、パップ剤及びパッチ剤の支持体としては、柔軟であるが経皮吸収製剤に自己支持性を付与し、かつ粘着性基剤層中やリザーバー層中の薬物の揮散や移行を防止する役目を果たすものが使用される。支持体の素材としては、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、可塑化酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ナイロン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、アルミニウムなどが例示される。これら素材はたとえば単層のシートないしフィルムや2枚以上の積層体として用いられる。アルミニウム以外の素材は織布や不織布として使用してもよい。支持体としては、皮膚面に対して追従性を有する素材よりなるものが好適に用いられ、特にポリエチレンテレフタレートとエチレン-酢酸ビニル共重合体とのラミネートフィルムが好ましい。支持体の厚みは、好ましくは5~100μmである。
上記支持体の片面に粘着性基剤層が形成されてテープ剤が構成せられ、また上記支持体の片面にリザーバー層及び粘着剤層が順次積層されてパッチ剤が構成せられる。パッチ剤ではリザーバー層と粘着剤層との間に適当な制御膜が存在してもよい。
テープ剤の調製において、粘着性基剤層を形成するには通常の粘着テープの製造方法が適用できる。その代表例は溶剤塗工法であり、これ以外にもホットメルト塗工法、電子線硬化エマルジョン塗工法などが用いられる。粘着性基剤層を溶剤塗工法で形成するには、たとえば、薬物、安定化剤及び必要に応じて加えられる吸収促進剤等の添加剤を適当な溶媒に溶解ないし分散させ、得られた溶液ないし分散液を支持体の片面に直接塗布・乾燥し、所要厚みの粘着性基剤層を形成する。また、この溶液ないし分散液を保護用の剥離紙上に塗布し、乾燥後に得られた粘着性基剤層を支持体に密着させてもよい。粘着性基剤層の厚みは使用目的により異なるが、好ましくは10~200μmである。
テープ剤は、使用時までその粘着性基剤層表面を保護するために通常はその貼付面に剥離紙を備えている。パッチ剤は粘着剤層の貼付面に剥離紙を備えている。剥離紙としてはポリエチレンテレフタレートのフィルムをシリコーン処理してなるものがよく用いられるが、剥離紙はこれに限定されない。剥離紙の厚みは1000μm以下、好ましくは30~200μmである。
パップ剤を製造するには、粘着性基剤、薬物、安定化剤、水及び必要に応じて加えられる吸収促進剤等の添加剤を均一に混合し、得られた薬物含有ペーストを支持体の片面に層状に塗布する。薬物含有ペーストにはさらに、精製水、保湿剤、無機充填剤、粘度調整剤、架橋剤、老化防止剤などのその他の添加剤が添加されもよい。保湿剤としては、グリセリン、プロピレングリコールなどが例示され、無機充填剤としては、カオリン、ベントナイト、亜鉛華、二酸化チタンなどが例示される。
得られた種々の剤形の経皮吸収製剤は、通常は薬物を経皮的ないし経粘膜的に体内循環器系へ投与する目的で、皮膚ないし粘膜の表面に直接貼付または塗布される。さらにこれら経皮吸収製剤は薬物を皮膚ないし粘膜の疾患部の治療を目的として皮膚ないし粘膜に貼付または塗布されることもある。
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
以下「部」とあるのは「重量部」を意味する。また、結果に示した皮膚移行試験、皮膚刺激性試験及び皮膚透過性試験についての評価法及び測定法は次のとおりである。
経皮吸収製剤の作製
(ロチゴチン経皮製剤)
実施例1の経皮吸収製剤の製造方法は、以下の通りである。実施例0、実施例2、比較例は実施例1に準じて製造した。組成を表1に示す。
所定量の(1)、(2)のシクロヘキサン溶液、(3)の酢酸エチル溶液、(5)、(6)のトルエン溶液、(7)、(8)と(9)の混合物の水溶液を作製した。そこに所定量の(3)の酢酸エチル溶液、(11)のエタノール溶液、(12)のトルエン溶液を加えた。さらに(4)のTHF溶液を加えてよく攪拌し、混合して塗工溶液とした。塗工溶液を厚さ40μmのPETフィルムに塗布乾燥して、厚さ50μmの粘着剤層が積層されたテープ型経皮吸収製剤を得た。
Figure 2022122784000001
Figure 2022122784000002
(フェンタニル経皮製剤)
実施例3の経皮吸収製剤の製造方法は、以下の通りである。実施例4、比較例は実施例3に準じて製造した。組成を表3に示す。
所定量のSISポリマー、脂環式飽和炭化水素樹脂、流動パラフィンをシクロヘキサンに溶解させ基剤溶液とした。所定量のラウリン酸ジエタノールアミドをメタノールに溶解し、さらに所定量のフェンタニルクエン酸塩を加えて薬物溶液とした。薬物溶液を基剤溶液に添加し、そこに亜硫酸ナトリウム水溶液または亜硫酸水素ナトリウム水溶液を添加し、さらにグリセリンを添加してよく攪拌、混合して塗工溶液とした。塗工溶液を厚さ40μmのPETフィルムに塗布乾燥して、厚さ50μmの粘着剤層が積層されたテープ型経皮吸収製剤を得た。
Figure 2022122784000003
Figure 2022122784000004
(ロチゴチン経皮製剤)
スチレン-イソプレン-スチレン・ブロック共重合体(SIS)とアクリル系粘着剤との混合粘着剤基剤、あるいはアクリル系粘着剤基剤にロチゴチンを含有する経皮吸収製剤を、実施例1に準じて作製した。組成を表5に示す。
Figure 2022122784000005
薬物経皮吸収性試験及び薬物安定性試験は以下の通り行った。
薬物経皮吸収性試験
ヒト摘出皮膚を37℃の水を循環させたフランツ型拡散セルに挟み、レシーバー(真皮)側にPBS緩衝溶液(pH7.4)を供給し、マグネティックスターラーにより攪拌した。ドナー(角質)側には得られた経皮吸収製剤を適用し、透過試験を行った。12時間後及び24時間後にレシーバー中の混合液を採取して、その中の薬物濃度を高速液体クロマトグラフ(HPLC)により測定し、皮膚を透過した累積薬物量を求めた。累積薬物量はn=3の試験結果の平均とした。
薬物安定性試験
作製したテープ製剤を直径2cmの円形に打抜き、アルミラミネート袋に密封し60℃で実施例1、2、比較例1、2では1週間保存した。実施例3、4、比較例1、2では3日保存した。実施例5、6、比較例3、4では60℃4週間保存した。その後、テープ製剤をエタノール、等に4時間浸漬して薬物を抽出し、HPLCにより薬物含量を測定した。加熱保存により薬物の類縁物質と思われる物質由来の類縁物質ピークが出現した。安定性の尺度として、薬物含量測定と同時に類縁物質ピークの発現量を測定した。ロチゴチンの類縁物質の発現の状況を、比較例2のサンプルに関する試験結果からのクロマトグラムとして図1に示し、実施例1のクロマトグラムを図2に示す。同様に、フェンタニルの類縁物質の発現の状況を、比較例4のサンプルに関する試験結果からのクロマトグラムとして図3Bに示し、実施例3のクロマトグラムを図3Aに示す。
ロチゴチンHPLC条件
検出器 : 紫外吸光光度計 (測定波長:225 nm)
カラム : 内径 4.6 mm,長さ 25 cm のステンレス管に 5 μm の液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填する。(CAPCELL PAK C18 又はこれと同等の性能を有するカラム)
プレカラム : SecurityGuard C8,3.0 mm × 4.0 mm,5 μm (Phenomenex)
カラム温度 : 40 ℃ 付近の一定温度
移動相 A : 50mM NaH2PO4と2.5mM 1-オクタンスルホン酸Naの緩衝液(pH4.5) 100mLにアセトニトリル53.8mL配合
流量 : 毎分 1.0 mL
サンプル温度 : 4 ℃ 付近の一定温度
面積測定範囲 : 注入後 25 分まで
フェンタニルHPLC条件
検出器 : 紫外吸光光度計 (測定波長:210 nm)
カラム : 内径 3.0 mm,長さ 10 cm のステンレス管に 3 μm の液体クロマトグラフィー用オクチルシリル化シリカゲルを充填する。(InertSustain C8 HP 又はこれと同等の性能を有するカラム)
プレカラム : SecurityGuard C8,3.0 mm × 4.0 mm,5 μm (Phenomenex)
カラム温度 : 25 ℃ 付近の一定温度
移動相 A : pH2.5 の 0.02 mol/L リン酸塩緩衝液
移動相 B : アセトニトリル
移動相の送液:移動相 A 及び B の混合比を次のように変えて濃度勾配制御する。
Figure 2022122784000006
流量 : 毎分 0.6 mL
サンプル温度 : 4 ℃ 付近の一定温度
面積測定範囲 : 注入後 36 分まで
得られたテープ型経皮吸収製剤を用いて、薬物経皮吸収性試験を行い、結果を表7に示した。
Figure 2022122784000007
表6より、チオ硫酸塩及びグリセリンの添加によりロチゴチン経皮吸収製剤の薬物安定性を著しく向上させていることがわかる。

Claims (18)

  1. 基剤中に薬物及び安定化剤を含んでなる経皮吸収製剤において、該安定化剤はチオ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、及び亜硝酸塩からなる群より選ばれるものである経皮吸収製剤。
  2. 前記基剤がアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤からなる群より選ばれる1種または2種以上である、請求項1に記載の経皮吸収製剤。
  3. 薬物を含む膏体総重量中の前記安定化剤の含有量が0.01~2重量%である、請求項1又は2に記載の経皮吸収製剤。
  4. 基剤中に薬物及び安定化剤を含んでなる経皮吸収製剤において、該安定化剤はチオ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、及び亜硝酸塩からなる群より選ばれるものであり、さらにグリセリンを含むことを特徴とする経皮吸収製剤。
  5. グリセリンの含有量が、薬物を含む膏体総重量中に0.01~20重量%である、請求項4に記載の経皮吸収製剤。
  6. 粘着剤の基剤中に薬物、安定化剤、及びグリセリンを共存し、該グリセリンの添加量が該安定化剤の1重量部に対して1.5~2000重量部である、請求項4又は5に記載の経皮吸収製剤。
  7. 粘着剤の基剤中に薬物、安定化剤、及びグリセリンを共存し、該グリセリンの添加量が該安定化剤の1重量部に対して1.5~2000重量部であり、さらに吸収促進剤を含有する、請求項4又は5に記載の経皮吸収製剤。
  8. 薬物がロチゴチン又はその塩である、請求項1~7のいずれか1項に記載の経皮吸収製剤。
  9. 薬物がロチゴチン又はその塩であり、さらに吸収促進剤を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の経皮吸収製剤。
  10. 前記吸収促進剤がセチルアルコール、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、パルミチン酸イソプロピル(IPP)、及びステアリン酸からなる群より選ばれるものである、請求項9に記載の経皮吸収製剤。
  11. 薬物がロチゴチン又はその塩であって、ポリイソブチレン(PIB)とアクリル系混合の粘着剤基剤にセチルアルコールを含む、請求項9又は10に記載の経皮吸収製剤。
  12. 薬物がロチゴチン又はその塩であって、スチレン-イソプレン-スチレン・ブロック共重合体(SIS)とアクリル系混合の粘着剤基剤にIPMを含む、請求項9又は10に記載の経皮吸収製剤。
  13. 薬物がフェンタニル又はその塩である、請求項1~7のいずれか1項に記載の経皮吸収製剤。
  14. 薬物がフェンタニル又はその塩であり、さらに吸収促進剤を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の経皮吸収製剤。
  15. 前記吸収促進剤がセチルアルコール、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、パルミチン酸イソプロピル(IPP)、及びステアリン酸からなる群より選ばれるものである、請求項14に記載の経皮吸収製剤。
  16. 薬物がフェンタニル又はその塩であって、基剤がスチレン-イソプレン-スチレン・ブロック共重合体(SIS)の粘着剤である、請求項14又は15に記載の経皮吸収製剤。
  17. ゴム系、アクリル系粘着剤溶液に薬物;チオ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、及び亜硝酸塩からなる群より選ばれる安定化剤;並びにグリセリンを混合する工程を含む、透明又は半透明の塗工溶液の製造方法。
  18. ゴム系、アクリル系粘着剤溶液に薬物;チオ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、及び亜硝酸塩からなる群より選ばれる安定化剤;並びにグリセリンを共存し、さらにショ糖脂肪酸エステルを混合する工程を含む、塗工液の製造方法。

JP2021020253A 2021-02-10 2021-02-10 酸化防止剤含有経皮吸収製剤 Pending JP2022122784A (ja)

Priority Applications (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021020253A JP2022122784A (ja) 2021-02-10 2021-02-10 酸化防止剤含有経皮吸収製剤
CN202280003847.8A CN115551489A (zh) 2021-02-10 2022-02-08 含有抗氧化剂的经皮吸收制剂
PCT/JP2022/004911 WO2022172915A1 (ja) 2021-02-10 2022-02-08 酸化防止剤含有経皮吸収製剤
EP22752738.9A EP4292613A1 (en) 2021-02-10 2022-02-08 Antioxidant-containing transdermal preparation

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021020253A JP2022122784A (ja) 2021-02-10 2021-02-10 酸化防止剤含有経皮吸収製剤

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2022122784A true JP2022122784A (ja) 2022-08-23

Family

ID=82837866

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021020253A Pending JP2022122784A (ja) 2021-02-10 2021-02-10 酸化防止剤含有経皮吸収製剤

Country Status (4)

Country Link
EP (1) EP4292613A1 (ja)
JP (1) JP2022122784A (ja)
CN (1) CN115551489A (ja)
WO (1) WO2022172915A1 (ja)

Family Cites Families (17)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS59181001A (ja) 1983-03-30 1984-10-15 株式会社村田製作所 カ−ボン抵抗ペ−スト
JPS60105613A (ja) * 1983-11-15 1985-06-11 Mitsubishi Chem Ind Ltd インドメタシン外用剤
JP3002493B2 (ja) 1990-03-12 2000-01-24 積水化学工業株式会社 経皮吸収製剤
JP3034077B2 (ja) * 1991-04-19 2000-04-17 久光製薬株式会社 メラニン抑制貼付剤
US5601839A (en) 1995-04-26 1997-02-11 Theratech, Inc. Triacetin as a penetration enhancer for transdermal delivery of a basic drug
JPH1112123A (ja) * 1997-06-25 1999-01-19 Nitto Denko Corp 水賦活脱毛シート
JP2001206852A (ja) * 2000-01-26 2001-07-31 Shiseido Co Ltd 皮膚外用製剤
JP4880813B2 (ja) * 2000-10-26 2012-02-22 第一三共株式会社 外用消炎鎮痛剤組成物
JP2003321396A (ja) * 2002-04-25 2003-11-11 Sekisui Chem Co Ltd 外用剤
RU2545696C2 (ru) 2009-10-21 2015-04-10 Тейкоку Сейяку Ко., Лтд. Трансдермально абсорбируемый состав, содержащий донепезил
JP5856424B2 (ja) 2011-10-05 2016-02-09 祐徳薬品工業株式会社 ロチゴチン含有経皮吸収型貼付剤
WO2013191293A1 (ja) * 2012-06-22 2013-12-27 興和株式会社 ロキソプロフェンを含有する医薬組成物
JP6030130B2 (ja) * 2012-06-25 2016-11-24 興和株式会社 生薬等含有医薬組成物
KR102364378B1 (ko) 2014-05-21 2022-02-16 에스케이케미칼 주식회사 안정성을 향상시킨 로티고틴 함유 경피흡수제제
JP6453481B2 (ja) 2015-10-26 2019-01-16 久光製薬株式会社 貼付剤
WO2020095975A1 (ja) * 2018-11-09 2020-05-14 株式会社メドレックス フェンタニルを有効成分とする貼付剤
KR102115102B1 (ko) * 2018-12-21 2020-05-26 동아에스티 주식회사 안정화된 도네페질 함유 경피 흡수제제

Also Published As

Publication number Publication date
CN115551489A (zh) 2022-12-30
EP4292613A1 (en) 2023-12-20
WO2022172915A1 (ja) 2022-08-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4346696B2 (ja) 経皮治療用装置
JP3184534B2 (ja) N−置換−o−トルイジン誘導体からなる薬用配合剤および経皮吸収型製剤
TW201521796A (zh) 用於經皮傳遞三級胺藥物之組合物及方法
TW200418487A (en) Pharmaceutical composition for topical delivery of meloxicam comprising an amine or amine as penetration enhancer.
JP2000119195A (ja) 吸収促進剤及び該吸収促進剤を有してなる経皮吸収製剤
JP2009013171A (ja) メマンチン含有経皮吸収製剤
JP3466305B2 (ja) 溶解剤および該溶解剤を含有する外用製剤
RU2504363C2 (ru) Усилитель чрескожного всасывания и трансдермальный препарат с его использованием
WO2000064434A1 (fr) Preparations percutanees contenant de l'oxybutynine
JP2507158B2 (ja) 経皮吸収製剤
JP5175041B2 (ja) 親水性粘着剤、それを用いた親水性皮膚外用粘着剤組成物および親水性貼付剤
WO2022172915A1 (ja) 酸化防止剤含有経皮吸収製剤
JPWO2006093066A1 (ja) 粘着基材及び該粘着基材を含む医療用貼付製剤
JPH0753671B2 (ja) 経皮・経粘膜製剤
WO1998046267A1 (fr) Composition de base pour absorption percutanee, preparation destinee a cette absorption et renfermant ladite composition
JPH06256173A (ja) 医療用貼付剤
JPH111441A (ja) 経皮吸収用基剤及び該基剤を含有する経皮吸収製剤
JPWO2005041967A1 (ja) ペルゴリド療法における副作用低減のための経皮吸収型製剤および方法
JPH085806B2 (ja) 経皮吸収製剤
JP6512905B2 (ja) フェンタニル含有貼付剤
JP2019034905A (ja) デヒドロ酢酸含有経皮吸収製剤
JPH05186371A (ja) 経皮吸収製剤
JP3027018B2 (ja) 医療用貼付剤
JP3192765B2 (ja) テープ製剤
JPH09278651A (ja) 経皮吸収貼付剤

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20240209