JPH085806B2 - 経皮吸収製剤 - Google Patents

経皮吸収製剤

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JPH085806B2
JPH085806B2 JP33503390A JP33503390A JPH085806B2 JP H085806 B2 JPH085806 B2 JP H085806B2 JP 33503390 A JP33503390 A JP 33503390A JP 33503390 A JP33503390 A JP 33503390A JP H085806 B2 JPH085806 B2 JP H085806B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、皮膚に適用して所要の薬物を生体膜を経て
体内循環器系へ投与するのに使用される、テープ剤、パ
ッチ剤、パップ剤、クリーム剤、軟膏剤などの経皮吸収
製剤に関するものである。
(従来の技術) 従来、薬物を体内へ投与する剤形として、経口剤、注
射剤、坐剤などが適宜採用されていたが、近年、経皮吸
収製剤の開発が以下の利点により積極的に進められてい
る。すなわち、経皮吸収製剤では、 体内に吸収された薬物が初回循環では肝臓を通過し
ないため、経口投与法の場合のように腸で吸収された薬
物が肝臓へ循環して代謝を受けその薬効が減退するとい
う欠点がない。
注射剤に比べると患者の精神的負担、肉体的苦痛が
少ない。
血中濃度を長時間必要レベルに維持しやすく、長時
間にわたって連続投与が可能である。
副作用発現濃度に達した時などに必要に応じて投与
を容易に中断し得る。
ところで、この種の経皮吸収製剤は、本来異物の体内
への侵入を防ぐバリヤー機能を有する皮膚の角質層を経
由して薬物を体内循環器系へ投与するものであるため、
所期の薬効を発現させるに充分な量の薬物を投与するの
は必ずしも容易でない。
従来、皮膚による薬物吸収障害の対策として、たとえ
ば、製剤投与部位の皮膚を透湿性のない材料で覆う密封
包帯療法が行なわれていた。これは、皮膚から蒸発する
水分を逃がさないように非透湿性材料で覆い、皮膚表面
の角質層を水和でルーズな構造にすることによって薬物
の経皮吸収性を促進させるというものである。
また薬物の経皮吸収性をより高度に促進させる方法と
して種々の吸収促進剤が開発され、これを含ませた経皮
吸収製剤が多々提案されている。たとえば吸収促進剤と
して(多価)アルコール類を用いたもの(特開昭62−23
0710号、特開平1−68323号、特開平1−268648号の各
公報参照)、天然保湿因子およびその誘導体類を用いた
もの(特開昭62−187415号の公報参照)、角質軟化剤
類、非プロトン溶媒類、油脂・精油類を用いたもの(特
開平1−186824号、特開平1−228920号の各公報参
照)、界面活性剤類を用いたもの(特開昭62−132828
号、特開昭63−208537号の各公報参照)、脂肪酸類を用
いたもの(特開昭63−313731号の公報参照)、脂肪酸エ
ステル類を用いたもの(特開平1ー25720号、特開平1
−174355号の各公報参照)、1−ドデシルアザシクロヘ
プタン−2−オンを用いたもの(特開昭62−61918号の
各公報参照)、その類似物質を用いたもの(特開昭62−
164662号、特開明63−66172号、特開明63−215665号の
各公報参照)などがある。
(発明の解決すべき課題) しかし、上記従来技術の経皮吸収製剤では、これに従
って薬物の経皮吸収量を増加させようとすると、経皮吸
収製剤の適用期間中に同製剤によって皮膚が刺激を受け
るという問題がある。すなわち密封包帯療法では発汗に
よって皮膚刺激が発現される。また、一般に吸収促進剤
は、確かに薬物の経皮吸収促進効果は認められるが、皮
膚に何らかの作用を及ぼすものであるため、いずれも皮
膚刺激が強いという難点を有している。特に、経皮吸収
促進効果が高い吸収促進剤ほど、皮膚刺激が強い傾向が
ある。さらに吸収促進剤は、薬物の吸収促進の結果皮膚
中で高濃度になった薬物自身が刺激を発現させるという
現象を持たらすこともある。このように、薬物を効率的
に吸収させかつ皮膚刺激の少ない経皮吸収製剤は未だ開
発されていないのが現状である。
本発明の目的は、上記の如き事情に鑑み、所期の薬効
を発現させるに充分な量の薬物を経皮吸収せしめること
ができると共に、吸収促進剤による皮膚の刺激を可及的
に低減した経皮吸収製剤を提供するにある。
(課題を解決するための手段) 本発明は、上記目的を達成すべく検討を重ねた結果、
特定の化合物を製剤に配合すると、薬物の経皮透過性が
向上すると共に皮膚刺激が殆どないし全くなくなるとい
う知見を得て完成せられたものである。
すなわち、本発明による経皮吸収製剤は、基剤と薬物
と 一般式 (式中、Rは炭素数7〜17の炭化水素基、Xは水素原子
またはアルカリ金属原子をそれぞれ意味する。) で表されるエステル化合物(以下、これを「エステル化
合物(I)」と呼ぶ)とよりなることを特徴とするもの
である。
本発明による経皮吸収製剤の基剤としては、テープ剤
やパップ剤の場合には粘着性基剤を用い、軟膏剤、クリ
ーム剤およびパッチ剤の場合には非粘着性基剤を用い
る。
また、本発明による経皮吸収製剤は、必要に応じて、
さらに吸収促進剤を含むこともある。
a) 本発明による経皮吸収製剤において、エステル化
合物(I)は、分子内に長鎖炭化水素基を有するという
特徴的な分子構造の故に、界面活性能力があり、それ自
体が皮膚への良好な吸収性を示す物質である。また、エ
ステル化合物(I)は、薬物、吸収促進剤あるいは密封
包帯療法による発汗に起因する皮膚刺激を低減せしめる
作用も有する。
エステル化合物(I)において、Rで表される炭化水
素基は炭素数7〜17の範囲のものに限定される。その理
由は、炭素数が7未満であると分子の親水性が強すぎて
皮膚への吸収性が劣り上記のような作用が発現されず、
逆に炭素数が17を超えると皮膚脂質の流動性を阻害する
作用が現われて薬物の経皮吸収性に悪影響を及ぼすから
である。Rで表される炭化水素基としては炭素数11〜13
の範囲のものが特に好ましい。
エステル化合物(I)は公知の方法で合成することが
できる。たとえば米国特許第2,636,887号明細書には一
般式(1)中のRがCH3(CH2)16である化合物(2−ステ
アロイルオキシープロパン−1,2,3−トリカルボン
酸)、およびRがCH3(CH2)14である化合物(2−パルミ
トイルオキシープロパン−1,2,3−トリカルボン酸)の
合成法がそれぞれ示され、たとえば後者は塩化パルミト
イルと無水クエン酸とエーテル中で反応させることによ
り製造されるとある。
本発明の経皮吸収製剤中に含まれるエステル化合物
(I)の濃度は、粘着性または非粘着性基剤、薬剤、エ
ステル化合物(I)、および後述の必要に応じて添加さ
れる吸収促進剤、保湿剤、無機充填剤、粘度調製剤、架
橋剤、老化防止剤、溶解剤、pH調製剤などの添加剤の総
和中に、0.5〜30重量%の範囲が好ましい。エステル化
合物(I)の濃度を高くし過ぎると上記総和中の基剤の
割合が小さくなり過ぎ、またエステル化合物(I)の濃
度を低くし過ぎるとその効果が現れないので、いずれの
場合も好ましくない。
b) エステル化合物(I)には、薬物の吸収量に応じ
て、他の吸収促進剤を併用してもよい。エステル化合物
(I)は吸収促進剤によって引き起こされる皮膚刺激を
軽減する効果がある。エステル化合物(I)と併用する
吸収促進剤は従来公知のものでよく、特に限定されな
い。
吸収促進剤としては、たとえば、エタノール、イソス
テアリルアルコール、オレイルアルコール、プロピレン
グリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン、2−
ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、1−エチル
−2−ピロリドン、1−ドデシル−2−ピロリドン、1
−メチル−2−ピロリドン−5−カルボン酸、ピロリド
ンカルボン酸アルキルエステル、乳酸エチル、乳酸ミリ
スチル、尿素、サリチル酸、ジメチルスルホキシド、デ
シルメチルスルホキシド、オリーブ油、ヒマシ油、ポリ
オキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン
ラウリルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンラウリルエ
ーテルリン酸、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エ
ステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸
エステル、ショ糖脂肪酸エステル、N−ラウロイルサル
コシン、ラウリン酸、ジエタノールアミド、オレイン
酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸イソプロピ
ル、パルミチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、
アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピルなどが
例示される。これら吸収促進剤は2種以上組み合わせて
使用してもよい。
吸収促進剤併用の場合の吸収促進剤の濃度は、粘着性
または非粘着性基剤、薬剤、エステル化合物(I)、吸
収促進剤、および後述の必要に応じて添加される保湿
剤、無機充填剤、粘度調整剤、架橋剤、老化防止剤、溶
解剤、pH調整剤などの添加剤の総和中に、0.01〜30重量
%の範囲が好ましい。吸収促進剤の濃度を高くし過ぎる
と上記総和中の基剤の割合が小さくなり過ぎ、また吸収
促進剤の濃度を低くし過ぎるとその効果が現れないの
で、いずれの場合も好ましくない。
c) 本発明の経皮吸収製剤に使用される薬物(生理活
性物質)は、経皮的に生体膜を透過しうるものであれば
よく、特に限定されない。薬物の例としては、解熱消炎
鎮痛剤、ステロイド系抗炎症剤、血管拡張剤、高血圧・
不整脈用剤、血圧降下剤、鎮咳去痰剤、抗腫瘍剤、局所
麻酔剤、ホルモン剤、喘息・鼻アレルギー治療剤、抗ヒ
スタミン剤、抗凝血剤、鎮痙剤、脳循環・代謝改善剤、
抗うつ・抗不安剤、ビタミンD製剤、血糖降下剤、抗潰
瘍剤、睡眠剤、抗生物質などが挙げられる。
解熱消炎鎮痛剤の例としては、インドメタシン、サリ
チル酸、アスピリン、アセトアミノフェン、ジクロフェ
ナックナトリウム、イブプロフェン、スリンダック、ナ
プロキセン、ケトプロフェン、フルフェナム酸、イブフ
ェナック、フェンブフェン、アルクロフェナック、フェ
ニルブタゾン、メフェナム酸、ベンダザック、ピロキシ
カム、フルルビプロフェン、ペンタゾシン、塩酸ブプレ
ノルフィン、酒石酸ブトルファノールなどが挙げられ
る。
ステロイド系抗炎症剤の例としては、ヒドロコルチゾ
ン、プレドニゾロン、フルオシノロンアセトニド、フル
ドロキシコルチド、メチルプレドニゾロン、酢酸ヒドロ
コルチゾン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタ
ゾン、酢酸ベタメサゾン、吉草酸ジフルコルトロン、プ
ロピオン酸クロベタゾール、フルオシノニドなどが挙げ
られる。
血管拡張剤の例としては、ジルチアゼム、ベラパミ
ル、四硝酸ペンタエリスリトール、ジピリダモール、硝
酸イソソルビド、ニフェジピン、ニトログリセリンなど
が挙げられる。
高血圧・不整脈用剤としては、プロパノロール、アテ
ノロール、ピンドロール、硫酸キニジン、アジマリン、
塩酸アルプレノロール、酒石酸メトプロロール、ナドロ
ール、マレイン酸チモロール、ジソピラミドなどが例示
される。
血圧降下剤の例としては、塩酸クロニジン、カプトプ
ウリル、塩酸プラゾシン、硫酸ペンブトロール、酢酸グ
アナベンズ、塩酸グアンファシン、塩酸ブナゾシン、マ
レイン酸エラナプリル、塩酸アロチノロール、塩酸ブニ
トロロールなどが挙げられる。
鎮咳去痰剤の例としては、塩酸プロカテロール、硫酸
テルブタリン、臭化水素酸フェノテロール、塩酸ツロブ
テロール、塩酸アンブロキソール、塩酸ピルブテロー
ル、塩酸マブテロール、塩酸クレンブテロール、塩酸ト
リメトキノール、フマル酸フォルモテロールなどが挙げ
られる。
抗腫瘍剤としては、5−フルオロウラシル、1−(2
−テトラヒドロフリル)−5−フルオロウラシル、マイ
トマイシンCなどが例示される。
局所麻酔剤としては、ベンゾカイン、プロカイン、リ
ドカイン、テトラカインなどが例示される。
ホルモン剤の例としては、エストロゲン、エストラジ
オール、テストステロン、プロゲステロン、プロスタグ
ランジンなどのステロイドホルモン類や、インスリンな
どのペプチドホルモン類などが挙げられる。
喘息・鼻アレルギー治療剤としては、フマル酸ケトチ
フェン、塩酸アゼラスチン、クロモグリク酸ナトリウム
などが例示される。
抗ヒスタミン剤としては、塩酸シクロヘプタジン、塩
酸ジフェンヒドラミン、フェンベンザミン、メキタジン
などが例示される。
抗凝血剤の例としては、ヘパリンなどが挙げられる。
鎮痙剤としては、スコポラミン、クロフルペロールな
どが例示される。
脳循環・代謝改善剤の例としては、ビンポセチン、塩
酸フルナリジン、塩酸ニカルジピン、フマル酸プロビン
カミン、メシル酸ジヒドロエルゴトキシン、酒石酸イフ
ェンプロジル、塩酸イソクスプリンなどが挙げられる。
抗うつ・抗不安剤の例としては、塩酸マプロチリン、
エチゾラム、ジアゼパム、ブロマゼパム、塩酸アミトリ
プチリン、塩酸ミアンセリンなどが挙げられる。
ビタミンD製剤の例としては、アルファカルシドー
ル、エルゴカルシフェロールなどが挙げられる。
血糖降下剤の例としては、グリベンクラミド、グリク
ラジドなどが挙げられる。
抗潰瘍剤の例としては、リンゴ酸クレボブリド、ファ
モチジン、臭化グリコピロニウムなどが挙げられる。
睡眠剤の例としては、フェノバルビタール、アモバル
ビタールなどが挙げられる。
抗生物質としては、テトラサイクリン、クロラムフェ
ニコールなどが例示される。
これらの薬物の配合量は、薬物の種類、経皮吸収製剤
の使用目的などにより異なるが、通常は、粘着性または
非粘着性基剤、薬剤、エステル化合物(I)、および必
要に応じて添加される吸収促進剤、後述の保湿剤、無機
充填剤、粘度調整剤、架橋剤、老化防止剤、溶解剤、pH
調整剤などの添加剤の総和中に、0.1〜30重量%の範囲
である。
d) 本発明の経皮吸収製剤の剤形としては、テープ
剤、パッチ剤、パップ剤、クリーム剤、軟膏剤などがあ
る。
これらの剤形のうち、テープ剤は、粘着性基剤として
の粘着剤に薬物、エステル化合物(I)、および必要に
応じて添加される吸収促進剤を含ませるものである。パ
ッチ剤は、リザーバー層(非粘着性基剤層)と粘着剤層
よりなるものであり、適当なリザーバー層に薬物、エス
テル化合物(I)、および必要に応じて添加される吸収
促進剤を含ませたものである。このリザーバー層が粘着
剤層を介して皮膚に貼付され、リザーバー層中の薬物が
粘着剤層を通って経皮吸収される。ただし、前記リザー
バー層中の薬物やエステル化合物(I)などは、粘着剤
層にも含ませてもよい。
d−1) パッチ剤のリザーバー層の非粘着性基剤とし
ては従来公知の外用基剤が使用でき、たとえば白色ワセ
リン、シリコンオイル、カルボキシビニルポリマー、ポ
リビニルアルコール、ポリエチレングリコール、流動パ
ラフィンなどが例示される。
d−2) テープ剤の粘着性基剤やパッチ剤の粘着剤層
の粘着剤は、吸収促進剤との相溶性に優れ、かつ該製剤
を常温で皮膚表面に長時間固定しうる粘着力を有するも
のであれば特に限定されない。好ましい粘着剤として
は、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘
着剤などが用いられる。
アクリル系粘着剤としては、特に、炭素数4〜18の脂
肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とから得られる
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体また
は共重合体および/または上記(メタ)アクリル酸アル
キルエステルとその他の官能性モノマーとの共重合体が
好適に用いられる。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル
酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシ
ル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシ
ル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸デシル、アク
リル酸イソデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ス
テアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、
メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタク
リル酸−2エチルヘキシル、メタクリル酸イソオクチ
ル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸イソデシル、メ
タクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリルなどが例
示される。
上記官能性モノマーの例としては、水酸基を有するモ
ノマー、カルボキシル基を有するモノマー、アミド基を
有するモノマー、アミノ基を有するモノマーなどが挙げ
られる。水酸基を有するモノマーとしては、2−ヒドロ
キシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル
(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メ
タ)アクリレートが例示される。カルボキシル基を有す
るモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸などの
α−β不飽和カルボン酸:マレイン酸ブチルなどのマレ
イン酸モノアルキルエステル:マレイン酸:フマル酸:
クロトン酸などが例示される。無水マレイン酸もマレイ
ン酸と同様の(共)重合成分を与える。アミド基を有す
るモノマーとしては、アクリルアミド、ジメチルアクリ
ルアミド、ジエチルアクリルアミドなどのアルキル(メ
タ)アクリルアミド:ブトキシメチルアクリルアミド、
エトキシメチルアクリルアミドなどのアルキルエーテル
メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトアクリル
アミドなどが例示される。アミノ基を有するモノマーと
しては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ビニルピ
ロリドンなどが例示される。
上記以外の共重合性モノマーとしては、酢酸ビニル、
ビニルアルコール、スチレン、α−メチルスチレン、塩
化ビニル、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、
ブタジエンなども使用できる。粘着剤中には(メタ)ア
クリル酸アルキルエステルが(共)重合成分として50重
量%以上含有されることが好ましい。
アクリル系粘着剤にはさらに必要に応じて多官能性モ
ノマーが加えられ、他のモノマー成分と共重合される。
この多官能性モノマーの添加により、生成する重合体間
にごくわずかに架橋が生じ、それにより粘着剤の内部凝
集力が増大する。そのため貼付された皮膚の性状や発汗
量にほとんど無関係に貼付剤剥離時のいわゆる糊残り現
象がほぼ解消せられる。しかも、この多官能性モノマー
の添加は薬物の放出性や低皮膚刺激性には何ら悪影響を
与えない。このような多官能性モノマーとしては、たと
えば、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレ
ート、テトラ(メタ)アクリレートなどがあるが、これ
に限定されない。より具体的には、ヘキサメチレングコ
ールやオクタメチレングリコールなどのポリメチレング
リコール類と(メタ)アクリル酸とを結合させて得られ
るジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールや
ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレグリコー
ル類と(メタ)アクリル酸とを結合させて得られるジ
(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ
(メタ)アクリレートやグリセリントリ(メタ)アクリ
レートなどのトリ(メタ)アクリレート;およびペンタ
エリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのテト
ラ(メタ)アクリレートがある。これら多官能性モノマ
ーは2種以上を組み合わせて用いてもよい。多官能性モ
ノマーは粘着剤の製造に供される全モノマー中に0.005
〜0.5重量%の割合で使用される。多官能性モノマーの
使用量が0.005重量%未満であると、架橋による内部凝
集力向上の効果が小さく、また0.5重量%を超えると重
合により得られる粘着剤がゲル化を起こし易く、薬物の
拡散・放出にも影響が現われる。
ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、スチレン−イソプ
レン−スチレン・ブロック共重合体、ポリイソプレン、
ポリブテン、ポリイソブチレン、エチレン−酢酸ビニル
共重合体などのゴム弾性体100重量部に、粘着付与剤20
〜200重量部、および適量の軟化剤、安定剤などを添加
してなるものが使用される。
シリコーン系粘着剤としては、ポリジメチルシロキサ
ンなどを主成分とするものが使用される。
上記粘着剤中には、たとえばロジン系樹脂、ポリテル
ペン樹脂、クマロンーインデン樹脂、石油系樹脂、テル
ペン−フェノール樹脂などの粘着性付与剤;液状ポリブ
テン、鉱油、ラノリン、液状ポリイソプレン、液状ポリ
アクリレートなどの可塑剤;充填剤;老化防止剤などの
配合剤が必要に応じて添加させる。
d−3) テープ剤やパッチ剤の支持体としては、柔軟
であるが経皮吸収製剤に自己支持性を付与し、かつ粘着
性基剤層(粘着性基剤、薬剤、エステル化合物(I)、
および必要に応じて添加される吸収促進剤、後述の保湿
剤、無機充填剤、粘度調整剤、架橋剤、老化防止剤、溶
解剤、pH調整剤などの添加剤のうちの非揮発性成分より
なる層状物)中やリザーバー層中の薬物の揮散や移行を
防止する役目を果たすものが使用される。支持体の素材
としては、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリエ
チレンテレフタレート、可塑化酢酸ビニル−塩化ビニル
共重合体、ナイロン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、
可塑化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、
ポリ塩化ビニリデン、アルミニウムなどがある。これら
素材はたとえば単層のシートないしフィルムや2枚以上
の積層体として用いられる。アルミニウム以外の素材は
織布や不織布として使用してもよい。支持体としては、
皮膚面に対して追従性を有する素材よりなるものが好適
に用いられ、特にポリエチレンテレフタレートとエチレ
ン−酢酸ビニル共重合体とのラミネートフィルムなどが
好ましい。支持体の厚みは500μm以下、好ましくは5
〜150μmである。
上記支持体表面に粘着性基剤層が形成されてテープ剤
が構成せられる。パッチ剤は、上記支持体表面にリザー
バー層および粘着剤層が順次積層されて構成せられる。
パッチ剤ではリザーバー層と粘着剤層との間に適当な制
御膜が存在してもよい。
d−4) 粘着性基剤層を形成するには通常の粘着テー
プの製造方法が適用できる。その代表例は溶剤塗工法で
あり、これ以外にもホットメルト塗工法、電子線硬化エ
マルジョン塗工法などが用いられる。粘着性基層を溶剤
塗工法で形成するには、たとえば、粘着剤、薬物、エス
テル化合物(I)、必要に応じて吸収促進剤、配合剤を
適当な溶媒に溶解ないし分散させ、得られた溶液ないし
分散液を支持体表面に直接塗布・乾燥し、所要厚みの粘
着性基剤層を形成する。また、この溶液ないし分散液を
保護用の剥離紙上に塗布し、乾燥後に得られた粘着性基
剤層を支持体に密着させてもよい。粘着性基剤層の厚み
は使用目的により異なるが、通常、30〜200μmの範囲
である。この厚みが30μmを下まわると必要量の薬物を
含有することができず、粘着性も不十分である。厚みが
200μmを上まわると支持体付近の粘着性基剤層に含有
される薬物が充分に拡散せず、薬物放出性が低下する。
d−5) テープ剤は、使用時までその粘着性基剤層表
面を保護するために通常はその貼付面に剥離紙を有して
いる。パッチ剤は粘着剤層に剥離紙を有している。剥離
紙としてはポリエチレンテレフタレートのフィルムをシ
リコン処理してなるものがよく用いられるが、剥離紙は
これに限定されない。剥離紙の厚みは100μm以下、好
ましくは5〜50μmである。
e) パップ剤は、粘着性基剤、薬物、エステル化合物
(I)、および必要に応じて添加される吸収促進剤を含
有する薬物含有ペーストを支持体の片面に層状に塗布し
たものである。支持体としてはテープ剤やパッチ剤につ
いて先に説明したものが使用される。パップ剤は、通
常、テープ剤やパッチ剤に比べて粘着性に乏しいため、
絆創膏などで皮膚表面へ固定される。パップ剤の基剤と
してたとえば、アルギン酸アルカリ金属、ゼラチン、コ
ーンスターチ、トラガントガムなどの天然ポリマー
類;、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロー
ス、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース系ポ
リマー類;デキストリン、カルボキシメチルデンプンな
どのデンプン系ポリマー類;ポリビニルアルコール、ポ
リアクリル酸ナトリウム、メトキシエチレン−無水マレ
イン酸共重合体、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロ
リドンなどの合成ポリマー類が用いられる。
パップ剤を製造するには、粘着性基剤、薬物、エステ
ル化合物(I)、および必要に応じて添加される吸収促
進剤を均一に混合し、得られた薬物含有ペーストを支持
体の片面に層状に塗布する。薬物含有ペーストにはさら
に、精製水、保湿剤、無機充填剤、粘度調整剤、架橋
剤、老化防止剤などが含有されてもよい。保湿剤として
は、グリセリン、プロピレングリコールなどが用いら
れ、無機充填剤としては、カオリン、ベントナイト、亜
鉛華、二酸化チタンなどが用いられる。
f) クリーム剤および軟膏剤は、非粘着性基剤、薬
物、エステル化合物(I)、および必要に応じて添加さ
れる吸収促進剤を均一に混合してなる薬物含有ペースト
である。その基剤としては、蜜ろう、油脂、ラノリン、
白色ワセリン、パラフィン、プラスチベース、高級脂肪
酸、高級アルコール、乳化剤、マクロゴール、カルボキ
シビニルポリマーなどが用いられる。
クリーム剤および軟膏剤には、脂溶性溶解剤、精製
水、水溶液溶解剤、pH調整剤などがが含有されていても
よい。脂溶性溶解剤としては、流動パラフィン、ミリス
チン酸イソプロピル、セバシン酸ジチエルなどが用いら
れ、水溶液溶解剤としては、エタノール、グリセリン、
プロピレングリコールなどが用いられる。
g) かくして得られた種々の剤形の経皮吸収製剤は、
通常は薬物を経皮的に体内循環器系へ投与する目的で、
皮膚表面に直接貼付または塗布される。さらにこの経皮
吸収製剤は薬物を皮膚の疾患部の治療を目的として皮膚
に貼付または塗布されることもある。
(作用) (a) 本発明による経皮吸収製剤は、エステル化合物
(I)を含有するものであるので、所期の薬効を発現さ
せるに充分な量の薬物を経皮的に吸収せしめることがで
きる。
エステル化合物(I)の皮膚に対する作用機序は、つ
ぎのように考えられる。エステル化合物(I)は分子内
に長鎖炭化水素基を有するという特徴的な分子構造の故
に、界面活性能力があり、それ自体が皮膚への良好な吸
収性を示す。そのため、この化合物は刺激性の低い吸収
促進剤として作用し、充分な量の薬物を皮膚を経て吸収
せしめる。
(b) エステル化合物(I)は、その作用機序は明確
でないが、薬物、吸収促進剤あるいは密封包帯療法によ
る発汗に起因する皮膚刺激を低減せしめる。
(c) 薬物の吸収促進のための吸収促進剤によって引
き起こされる皮膚刺激は、上記の如くエステル化合物
(I)によって軽減されるので、薬物の必要吸収量に応
じて、他の吸収促進剤を支障なく併用することができ
る。
(実施例) つぎに、本発明を具体的に説明するために、本発明に
対応する実施例およびこれとの比較のための比較例をそ
れぞれ幾つか挙げ、さらに得られた経皮吸収製剤の性能
試験を示す。
(a)経皮吸収製剤の製造 実施例1 i) 2−ラウロイルオキシ−プロパン−1,2,3−トリ
カルボン酸(エステル化合物(a)と呼ぶ)の合成 米国特許第2,636,887号明細書に記載の合成法に従っ
て操作を行ない、一般式(1)の化合物としてエステル
化合物(a)を得た。
すなわち、12.5gのクエン酸を120mlのテトラヒドロフ
ランに加熱下に溶解し、液温が50℃に達したところで1
4.2gの塩化ラウロイルを添加し、温度67℃で2時間還流
を行なった。ついでベンゼン90gを添加し、反応液を室
温に冷却した。得られた白色結晶を濾過し、ベンゼンと
n−ヘキサンでそれぞれ1回ずつ洗浄して乾燥した。
かくして、エステル化合物(a)10gを調製した。
ii) アクリル系粘着剤の調製 アクリル酸−2−エチルヘキシル37g、メタクリル酸
−2−エチルヘキシル317gおよびメタクリル酸ドデシル
51gをセパラブルフラスコに仕込み、らに酢酸エチル174
gを加えて、モノマー濃度を70重量%に調整した。この
溶液を窒素雰囲気下に温度70℃に加熱し、2gの過酸化ラ
ウロイルをシクロヘキサン100gに溶解してなる重合開始
剤溶液および酢酸エチル220gを少しずつ添加し、12時間
にわたり重合反応を行なった。
かくして、固形分濃度45重量%を有するアクリル系粘
着剤の酢酸エチル溶液を得た。iii) 塗工液の調製 得られた粘着剤溶液に、薬物として硝酸イソソルビド
を含む酢酸エチル溶液、および工程i)で得たエステル
化合物(a)を含むテトラヒドロフラン溶液を、固形分
(粘着剤、薬物およびエステル化合物(a)の重量和)
濃度が35重量%となるように、かつ、硝酸イソソルビド
およびエステル化合物(a)の固形分中濃度がそれぞれ
6重量%および5重量%となるように加えて、液全体を
ディゾルバーにて均一に混合した。
かくして、貼付用配合物を含有する塗工液を調製し
た。
iv) tテープ剤の調製 暑さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の
フィルムをシリコン処理してなる剥離紙上に、工程ii
i)の塗工液を塗布した後、60℃で30分間乾燥し、暑さ8
0μmの粘着性基剤層を形成した。ついでPETとエチレン
−酢酸ビニルの共重合体(PET−EVA)をラミネートして
なる厚さ34μmの支持体を粘着剤層に密着させた。かく
して、経皮吸収製剤としてテープ剤を調製した。
比較例1 実施例1の工程iii)において、エステル化合物
(a)を使用せず、その他の操作を実施例1と同様に行
ってテープ剤を調製した。
比較例2 実施例1の工程iii)において、エステル化合物
(a)の代わりに、吸収促進剤としてラウリン酸を固形
分中濃度5重量%の配合割合で使用し、その他の操作を
実施例1と同様に行なってテープ剤を調製した。
実施例2 i) 2−オクタノイルオキシ−プロパン−1,2,3トリ
カルボン酸(エステル化合物(b)と呼ぶ)の合成 塩化ラウロイルの代わりに塩化オクタノイルを10.6g
用い、その他の操作を実施例1の工程i)と同様に行な
ってエステル化合物(b)8gを調製した。
ii) アクリル系粘着剤の調製 アクリル酸−2−エチルヘキシル470g、ビニルピロリ
ドン50gおよびヘキサンジオールジメタクリレートの10
重量%酢酸エチル溶液0.762gをセパラブルフラスコに仕
込み、さらに酢酸エチル520gを加えて、モノマー濃度を
50重量%に調整した。この溶液を窒素雰囲気下に温度60
℃に加熱し、2gの過酸化ラウロイルをシクロヘキサン10
0gに溶解してなる重合開始剤溶液および酢酸エチル349g
を少しずつ添加し、12時間にわたり重合反応を行なっ
た。
かくして、固形分濃度35重量%を有するアクリル系粘
着剤の酢酸エチル溶液を得た。
iii)塗工液の調製 得られた粘着剤溶液に、薬物としてエストラジオー
ル、吸収促進剤としてラウリン酸ジエタノールアミド、
および工程i)で得られたエステル化合物(b)を含む
テトラヒドロフラン溶液を、固形分(粘着剤、薬物、吸
収促進剤およびエステル化合物(b)の重量和)濃度が
25重量%となるように、かつ、エストラジオール、ラウ
リン酸ジエタノールアミドおよびエステル化合物(b)
の固形分中濃度がそれぞれ10重量%、5重量%および8
重量%となるように加えて、液全体をディゾルバーにて
均一に混合した。
かくして、貼付用配合物を含有する塗工液を調製し
た。
iv) tテープ剤の調製 実施例1の工程iv)と同じ操作によりシリコン処理PE
Tよりなる剥離紙上に粘着性基剤層を形成し、この層にP
ET−EVAよりなる支持体を密着させて、経皮吸収製剤と
してテープ剤を調製した。
比較例3 実施例2の工程iii)において、エステル化合物
(b)の代わりにアセチルクエン酸を固形分中濃度8重
量%の配合割合で使用し、その他の操作を実施例2と同
様に行なってテープ剤を調製した。
実施例3 i) 2−オレイルオキシ−プロパン−1,2,3トリカル
ボン酸(エステル化合物(c)と呼ぶ)の合成 12.5gのクエン酸と19.5gの塩化オレオイルを200mlの
ジエチルエーテルに混合し、混合液を30℃で還流しなが
ら3日間撹拌した。ついでジエチルエーテルを減圧除去
し、得られた粘稠な液体をエタノールで2回洗浄した。
かくして、エステル化合物(c)11gを調製した。
ii) ゴム系粘着剤の調製 ゴム弾性体として天然ゴム(日本合成ゴム社製)100
重量部に対し、粘着付与剤としてテルペン樹脂(安原油
脂工業社製、YSレジンPx115−300)60重量部、軟化剤と
して液状ポリブテン(日石化学社製、HV−300)140重量
部をそれぞれテトラヒドロフラン1200重量部に溶解させ
て、固形分濃度20重量部%を有するゴム系粘着剤のテト
ラヒドロフラン溶液を得た。
iii) 塗工液の調製 得られた粘着剤溶液に、薬物としてインドメタシン、
吸収促進剤としてポリオキシエチレン(2)ラウリルエ
ーテル、および工程i)で得られたエステル化合物
(c)を含むテトラヒドロフラン溶液を、固形分(粘着
剤、薬物,吸収促進剤およびエステル化合物(c)の重
量和)濃度が15重量%となるように、かつインドメタシ
ン、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテルおよび
エステル化合物(c)の固形分中濃度がそれぞれ3重量
%、2重量%および10重量%となるように加えて、液全
体をディゾルバーにて均一に混合した。
かくして、貼付用配合物を含有する塗工液を調製し
た。
iv) tテープ剤の調製 実施例1の工程iv)と同じ操作により、シリコン処理PE
Tよりなる剥離紙上に粘着性基剤層を形成し、この層にP
ET−EVAよりなる支持体を密着させて、テープ剤を調製
した。
比較例4 実施例3の工程iii)において、エステル化合物
(c)を使用せず、その他の操作を実施例3と同様に行
なってテープ剤を調製した。
比較例5 実施例3の工程iii)において、エステル化合物
(c)およびポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテ
ルを使用せず、その他の操作を実施例3と同様に行なっ
てテープ剤を調製した。
実施例4 i) 2−ラウロイルオキシ−プロパン−1,2,3トリカ
ルボン酸ナトリウム(エステル化合物(d)と呼ぶ)の
合成 実施例1の工程i)で得たエステル化合物(a)2gを
200mlの蒸留水中で撹拌しながら0.1規定NaOH水溶液159m
lを少しずつ添加した。ついで反応液を加熱減圧乾固し
た。
かくして、エステル化合物(d)2.3gを調製した。
ii)軟膏剤の調製 非粘着性基剤としてプラスチベース(日本スクイブ社
製、局外規ゲル化炭化水素Plastibase50W)を用い、こ
れに、薬物としてピロキシカム、吸収促進剤としてラウ
ロイルサルコシン、および工程i)で得られたエステル
化合物(d)の粉末を、非粘着性基剤、薬物、吸収促進
剤およびエステル化合物(d)の総和中の各濃度が2.5
重量%、1重量%および5重量%となるように加えて、
配合物を乳鉢にて均一に混合した。
かくして、軟膏剤を調製した。
比較例6 実施例4の工程ii)において、エステル化合物(d)
を使用せず、その他の操作を実施例4と同様に行なって
軟膏剤を調製した。
比較例7 実施例4の工程ii)において、エステル化合物(d)
およびラウロイルサルコシンを使用せず、その他の操作
を実施例4と同様に行なって軟膏剤を調製した。
(b) 経皮吸収製剤の性能評価 i) ラット皮膚移行性試験 実施例1〜3および比較例1〜5で得られた各テープ
剤について、試験1に示す手法によりラットの皮膚に対
する薬物の移行性試験を行なった。
試験1 ラット(ウィスター系、雄性、7週齢)の脱毛した背
部にテープ剤の円形試験片(面積3.14cm2)を貼付し、2
4時間後これを剥離して回収した。繰り返し回数は各テ
ープ剤毎に5回とした。
これらの回収試験片をメタノールで抽出処理し、テー
プ剤中の薬物の残存量を高速液体クロマトグラフ法によ
り測定した。テープ剤中の当初の薬物量と試験後の残存
量の差を24時間のラットの皮膚に対する薬物の移行量と
し、当初の薬物量に対する移行量の比を経皮吸収率とし
た。
各テープ剤についての経皮吸収率を表1にまとめて示
す。
ii) ラット皮膚透過性試験 実施例4および比較例6、7で得られた各軟膏剤につ
いて、試験2に示す手法によりラットの摘出皮膚に対す
る薬物の透過性試験を行なった。
試験2 まず、添付図面に示す拡散セル(1)準備した。拡散
セル(1)は、下側の有底円筒状のレセプター槽(2)
と、これの上に配置された有底円筒状のドナー槽(3)
とよりなる。ドナー槽(3)の底壁中央には開口部
(4)が設けられ、またドナー槽(3)の下端およびレ
セプター槽(2)の上端にはそれぞれ上側フランジ
(5)および下側フランジ(6)が設けられている。そ
して、上側フランジ(5)と下側フランジ(6)を対向
状に重ね合わせることによって、ドナー槽(3)とレセ
プター槽(2)が気密状にかつ同心状に積み重ねられて
いる。レセプター槽(2)にはその側部に側方突出状の
サンプリング口(7)が取付けられ、レセプター槽
(2)の内部にはマグネット撹拌子(9)が入れてあ
る。
背部を脱毛したラット(ウィスター系、雄性、7週
齢)をエーテル麻酔下で頸椎脱臼により屠殺した後、た
だちに脱毛皮膚を剥離して皮下脂肪と筋層を除去し、約
4cm×4cmの皮膚片を得た。この皮膚片(8)を拡散セル
(1)の上側フランジ(5)と下側フランジ(6)の間
に挟着して、ドナー槽(3)の開口部(4)を皮膚片
(8)で完全に閉じるようにした。
面積3.14cm2の円形に打ち抜いたPET−EVAフィルムのP
ET面に軟膏剤(10)を100mg塗布し、それを皮膚片
(8)の上面に貼付した。レセプター槽(2)には、下
記の方法により調製したレセプター液を満たした。
ついで拡散セル(1)を温度37℃に保たれた恒温槽内
に設置し、マグネット撹拌装置によりレセプター液の撹
拌を行なった。試験開始24時間後サンプリング口(7)
からレセプター液1mlを採取し、このレセプター液への
薬物の透過量を高速液体クロマトグラフ法により測定し
た。各軟膏剤中の当初の薬物量に対する透過量の比を経
皮吸収率とした。
各軟膏剤についての経皮吸収率を表1にまとめて示
す。
レセプター液の調製法 NaH2PO4(5×10-4モル)、Na2HPO4(2×10-4
ル)、NaCl(1.5×10-1モル)およびゲンタマイシン10m
gを蒸留水500mlに溶かし、得られた溶液のpHを0.1規定N
aOH水溶液で7.2に調製した後、その容量を蒸留水で1000
mlとした。
iii) ラット皮膚刺激性試験 実施例1〜4および比較例1〜7で得られたテープ剤
および軟膏剤について、試験3に示す手法によりラット
の皮膚に対する刺激性試験を行なった。
試験3 実施例1〜3および比較例1〜5のテープ剤について
は、試験1と同じ手法で処理したラットの皮膚につい
て、テープ剤剥離から1時間後の皮膚の紅斑状態を目視
で観察した。実施例4および比較例6、7の軟膏剤につ
いては、面積3.14cm2の円形に打ち抜いたPET−EVAフィ
ルムの軟膏剤を100mg塗布し、これをラットの脱毛した
背部に適用して24時間後これを除去し、除去後の皮膚の
紅斑状態を目視で観察した。繰り返し回数は各製剤毎に
5回とした。
紅斑の程度は下記の0〜4の5段階の判定基準で評価
した。
0……紅斑なし 1……かろうじて識別できる軽度の紅斑 2……明らかな紅斑 3……中程度の紅斑 4……深紅色の強い紅斑 各経皮吸収製剤の皮膚刺激判定点は、各回における評
点の総和を繰り返し回数5で割って算出した平均値で表
示した。得られた評価結果を表1にまとめて示す。
表1において、実施例1と比較例1の比較から、実施
例1のテープ剤は薬物のみを含む比較例1のテープ剤に
比べて約1.4倍の経皮吸収率を示し、皮膚刺激判定点は
かえって小さいことがわかる。したがって、実施例1の
テープ剤に含まれるエステル化合物(a)は、薬物の吸
収促進作用を持つと共に、製剤の皮膚刺激性を軽減する
効果をも持っていることが認められる。
また、実施例1と比較例2の比較からは、実施例1の
テープ剤に含まれるエステル化合物(a)は、比較例2
のテープ剤に含まれる吸収促進剤(ウラウリン酸)に比
べて優れた吸収促進作用を発揮し、実施例1のテープ剤
は皮膚刺激性の低いものであることが認められる。
実施例2と比較例3の比較から、エステル化合物
(I)中のRは炭素数が所要値より小さ過ぎては、上記
のような効果を示さないことが認められる。
実施例3と比較例4、5の比較、および実施例4と比
較例6、7の比較から、エステル化合物(I)が吸収促
進剤の皮膚刺激性を軽減し、さらに吸収促進作用を持つ
ことが認められる。
以上、表1から明らかなように、エステル化合物
(I)は、吸収促進剤あるいは薬物によって引き起こさ
れる皮膚刺激を効果的に軽減し、しかもそれ自体吸収促
進作用を発揮するものであることが認められる。
(発明の効果) (a) 本発明による経皮吸収製剤は、エステル化合物
(I)を含有するものであるので、所期の薬物を発現さ
せるに充分な量の薬物が皮膚を経て吸収せられる。
エステル化合物(I)の皮膚に対する詳細な作用機序
は、つぎのように考えられる。エステル化合物(I)
は、分子内に長鎖炭化水素基を有するという特徴的な分
子構造の故に界面活性能力を有するので、それ自身の皮
膚への吸収性が良好である。そのため、この化合物は刺
激性の低い吸収促進剤として作用し、充分な量の薬物を
皮膚を経て吸収せしめることができる。したがって、従
来のように大量の薬物を含有させる必要がない。また、
皮膚局所の薬物濃度が高くなっても、エステル化合物
(I)による良好な吸収促進性により薬物に起因する刺
激が軽減される。
(b) エステル化合物(I)は、その作用機序は明確
でないが、薬物、吸収促進剤あるいは密封包帯療法によ
る発汗に起因する皮膚刺激を低減せしめる。したがっ
て、テープ剤やパッチ剤のような経皮吸収製剤を皮膚に
長時間貼付することができる。
(c) 吸収促進剤によって引き起こされる皮膚刺激は
上記の如くエステル化合物(I)によって軽減されるの
で、エステル化合物(I)と共に他の吸収促進剤を支障
なく併用することができる。したがって、薬物の必要吸
収量に応じて、薬物吸収性を高めるに十分な量の吸収促
進剤を含有せしめることができる。その結果、吸収促進
剤の使用により、薬物の有効血中濃度を長時間にわたっ
て維持することができ、薬物のバイオアベイラビリティ
を高めることができる。
(d) かくして、本発明の経皮吸収製剤によれば、所
期の薬効を発現させるに充分な量の薬物を経皮吸収せし
めるとができると共に、吸収促進剤による皮膚の刺激を
可及的に低減した種々の剤形の経皮吸収製剤を提供する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
図面は経皮吸収製剤に含まれる薬物の皮膚透過性を試験
するのに使用される拡散セルを示す斜視図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基剤と薬物と 一般式 (式中、Rは炭素数7〜17の炭化水素基、Xは水素原子
    またはアルカリ金属原子をそれぞれ意味する。) で表されるエステル化合物とよりなることを特徴とする
    経皮吸収製剤。
  2. 【請求項2】さらに吸収促進剤を含む請求項第1項記載
    の経皮吸収製剤。
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