JP2022079843A - シボ加工面により空力特性を改善する車両、およびフロントバンパ部材 - Google Patents

シボ加工面により空力特性を改善する車両、およびフロントバンパ部材 Download PDF

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Abstract

【課題】車両のドライバなどの乗員が車体のたとえば操安性能や操舵応答性などについて違和感を得なくなるように、シボ加工面により車体の周囲における気流を改善する。【解決方法】車体2の前面下部に設けられるフロントバンパ部材10を有する車両1は、フロントバンパ部材10についての側面部12の表面に、表面に沿った一方向において気流が流れ易くなる方向性パターンのシボ加工面20を形成する。シボ加工面20は、気流が流れ易い一方向が、車体2の前後方向に対して後ろ上がりとなるように、形成される。【選択図】 図5

Description

本発明は、シボ加工面により空力特性を改善する車両、およびフロントバンパ部材に関する。
自動車といった車両は、車体を有する(特許文献1)。走行する車体の周囲では、気流が発生する。車体の進行方向側にある空気は、車体の前面に当たった後、車体の側面や上面へ向かって分かれて車体の側面や上面に沿って流れ、車体の後方において合流する。この気流は、車両の走行を妨げる一因である。
このため、自動車といった車両では、たとえば、車体の外面に略沿って気流が流れ得るように、走行する車体のたとえば進行方向へ向く前面から進行方向に沿う側面にかけてのコーナ部を、進行方向に対して正対しないように傾斜面としたり、曲面形状にしたりする、といった形状の工夫をすることがある。
しかしながら、車体の形状を工夫しても、気流が、コーナ部を含めて車体の外面に良好に追従して流れるようになるとまでは言い切れない。コーナ部から車幅方向外側へ向けて気流が噴き出してしまうことを十分に抑えることができているとは言い切れない。気流が車体の外面に良好に追従して流れるようになるためには、更なる改善の余地がある。
なお、特許文献2は、フロントスポイラーの外面において全体的に、フロントスポイラーに付いた傷を目立たなくさせるためにシボ模様を形成することを開示する。
特許文献3は、車体の表面に、空気抵抗を低減するためのシート部材を貼着することを開示する。
特開2015-182496号公報 特開2015-166212号公報 特許第6435434号公報
このため、発明者らは、車体の前部に設けられるフロントバンパ部材のコーナ部の表面に、車体の前後方向に沿う方向性を有するシボ加工面を形成することを試みている。
これにより、車体の前後方向に沿うように流れる気流は、コーナ部のシボ加工面の上を流れる際に、コーナ部の外面に追従して流れ易くなる。コーナ部から車幅方向外側へ向けて噴き出る気流は、削減される。気流についての車体の外面についての追従性は、改善される。
しかしながら、フロントバンパ部材のコーナ部の表面に、車体の前後方向に沿う方向性を持たせたシボ加工面を形成することにより、それに起因して、車両のドライバなどの乗員は、車体のたとえば操安性能や操舵応答性などについて違和感を得ることがある、ことが新たに知見された。
この違和感は、シボ加工面を設けない場合と比べて車両の操安性能や操舵応答性を低下させるような顕著なものとして認識されるものではないが、たとえば直進走行中に操舵をした際などにおいて感じられるものである。
このように車両では、車両のドライバなどの乗員が車体のたとえば操安性能や操舵応答性などについて違和感を得なくなるように、シボ加工面により車体の周囲における気流を改善することが求められている。
本発明の一形態に係るシボ加工面により空力特性を改善する車両は、車体の前面下部に設けられるフロントバンパ部材を有する車両であって、前記フロントバンパ部材についての側面部の表面に、前記表面に沿った一方向において気流が流れ易くなる方向性パターンのシボ加工面を形成し、前記シボ加工面は、気流が流れ易い前記一方向が、前記車体の前後方向に対して後ろ上がりとなるように、形成される。
好適には、前記シボ加工面は、基面から複数の突出部が突出して形成されているものであり、複数の前記突出部は、長尺形状のものを含み、長尺形状の前記突出部の短手方向に並べられ、長尺形状の前記突出部の短手方向において隣接している複数の前記突出部の間には、長尺形状の前記突出部の長手方向に沿って直線状に延在する第一凹部が形成され、前記第一凹部は、前記車体の前後方向に対して後ろ上がりとなる角度を持って直線状に延在する、とよい。
好適には、複数の前記突出部は、長尺形状の前記突出部の長手方向において並べられ、長尺形状の前記突出部の長手方向において隣接している複数の前記突出部の間には、第二凹部が形成され、前記第二凹部は、長尺形状の前記突出部の短手方向において隣接している他の複数の前記突出部の間に形成される他の第二凹部に対して、長尺形状の前記突出部の長手方向へずれて形成されている、とよい。
好適には、複数の前記第二凹部は、長尺形状の前記突出部の短手方向に対して折れ曲がるパターンで形成されている、とよい。
好適には、前記シボ加工面は、気流が流れ易い前記一方向が、前記車体の姿勢が走行中に変化しても、前記車体の前後方向に対して後ろ上がりの状態を維持するように、形成される、とよい。
本発明の一形態に係るフロントバンパ部材は、車体の前面下部に設けられることになるフロントバンパ部材であって、前記フロントバンパ部材についての側面部の表面に、前記表面に沿った一方向において気流が流れ易くなる方向性パターンのシボ加工面を形成し、前記シボ加工面は、気流が流れ易い前記一方向が、前記車体の前後方向に対して後ろ上がりとなるように、形成される。
本発明では、車体の前面下部に設けられるフロントバンパ部材についての側面部の表面には、表面に沿った一方向において気流が流れ易くなる方向性パターンのシボ加工面が形成される。そして、シボ加工面は、気流が流れ易い一方向が、車体の前後方向に対して後ろ上がりとなるように、形成される。これにより、気流は、フロントバンパ部材についての側面部の形状に追従して流れ易くなる。車体の進行方向側にある空気は、車体の前面に当たって車体の側面へ向かって流れた後に、車体のコーナ部から車幅方向の外側へ向かって噴き出るように流れ難くなる。車体の進行方向側にある空気は、車体のコーナ部を含めて、車体の形状に追従するように流れ易くなる。
しかも、本発明では、シボ加工面は、気流が流れ易い一方向が、車体の前後方向となるように形成されるのではなく、車体の前後方向に対して後ろ上がりとなるように形成される。これにより、たとえば車両の走行中に操舵などがあって車体の姿勢が変化したとしても、車両のドライバなどの乗員が車体のたとえば操安性能や操舵応答性などについて違和感を得ることが起き難くなる。
図1Aは、本発明の実施形態に係る自動車の平面図である。 図1Bは、図1Aの自動車の左側面図である。 図2は、図1Aの自動車のフロントバンパ部材に形成可能な方向性パターンのシボ加工面の模式的な説明図である。 図3Aは、図2の方向性パターンのシボ加工面が形成されているフロントバンパ部材の側面部での気流の説明図である。 図3Bは、図3Aの方向性パターンのシボ加工面が形成されるフロントバンパ部材の側面部についての模式的な水平断面図である。 図4は、図3Aのシボ加工面により空力特性を改善した自動車についての走行状態の説明図である。 図5は、本実施形態においてフロントバンパ部材に形成するシボ加工面の説明図である。 図6は、図3Aおよび図3Bのように方向性パターンのシボ加工面を形成する場合と、図5の本実施形態のように方向性パターンのシボ加工面を形成する場合との比較説明図である。
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1Aは、本発明の実施形態に係る自動車1の平面図である。
図1Bは、図1Aの自動車1の左側面図である。
自動車1は、車両の一例である。
図1Aおよび図1Bの自動車1は、車体2を有する。自動車1は、乗員の手動操作または自動運転により、前方または後方へ進行するように走行可能である。また、操舵により、右前、左前、右後、または左後の方向へ進行するように走行可能である。
走行する車体2の周囲では、図中に破線矢印で示すように、車体2の形状に沿って流れる気流が発生する。車体2の進行方向側にある空気は、車体2の前面3にあるフロントバンパ部材10に当たった後、車体2の左右両側の側面4,5や上面へ向かって分かれて車体2の側面4,5や上面に沿って流れ、車体2の後方において合流する。車体2の後方には、気流の巻き込みによる多少の渦流が発生する。これらの気流は、自動車1の走行を妨げる一因である。
車体2の前面3の下部には、フロントバンパ部材10が設けられる。フロントバンパ部材10は、たとえば樹脂材料を成形した部品である。
フロントバンパ部材10は、車体2の前面3を構成する前面部11と、前面部11についての車体2の車幅方向における左右両側の側面部12と、を有する。側面部12は、前輪のためのホイールハウス6まで延在している。
フロントバンパ部材10の前面部11は、その左右の両端部分が中央部分より後側に下がっている。左右の両端部分は、進行方向に対して正対しない傾斜面となる。
フロントバンパ部材10の前面部11と左右の側面部12とが接続されるコーナ部は、湾曲した滑らかな曲面形状に形成される。
このようなフロントバンパ部材10の外形状とすることにより、車体2の進行方向側にある空気は、車体2の前面3にあるフロントバンパ部材10に当たった後、フロントバンパ部材10の外形状に沿って流れ易くなる。CD値などを改善できる。
しかしながら、フロントバンパ部材10などの車体2の形状を工夫しても、気流が、コーナ部を含めて車体2の外面に良好に追従して流れるようになるとまでは言い切れない。図中に×印で示すように、コーナ部から車幅方向外側へ向けて気流が噴き出してしまうことを十分に抑えることができているとは言い切れない。気流が車体2の外面に良好に追従して流れるようになるためには、更なる改善の余地がある。
そこで、本実施形態では、フロントバンパ部材10についての少なくとも側面部12の表面に、その表面に沿った一方向において他の方向と比べて気流が流れ易くなる方向性を有するシボ加工面20を全体的に形成する。
本実施形態では、方向性を有するシボ加工面20により、気流をコントロールして、自動車1の空力特性を改善する。
図2は、図1Aの自動車1のフロントバンパ部材10に形成可能な方向性パターンのシボ加工面20の模式的な説明図である。
図2のシボ加工面20は、基面21と、基面21から突出して形成される複数の微小な突出部22と、を有する。
基面21は、フロントバンパ部材10のそのものの外表面でよい。この場合、シボ加工面20は、フロントバンパ部材10の成形の際に同時に形成されてよい。基面21は、フロントバンパ部材10の外表面に貼着されるシートであってもよい。
複数の突出部22には、複数の長さの長尺形状のものが含まれる。長尺形状の突出部22は、長尺方向の両端が丸まっている長楕円形状を有する。長尺形状の突出部22は、たとえば四角形の断面となる立方体形状としてもよい。
複数の突出部22の一部には、長尺形状ではないもの、たとえば正立方体形状や、円柱形状のものが含まれてよい。
複数の突出部22は、基面21の全体において、長尺形状の突出部22の短手方向および長手方向において並べて形成される。
突出部22は、基面21からの突出高さは、たとえば数マイクロメートル以上とすればよい。
長尺形状の突出部22の短手方向において隣接している複数の突出部22の間には、微小な第一凹部23が形成される。第一凹部23は、基面21の全体において、長尺形状の突出部22の長手方向に沿って直線状に延在する。
長尺形状の突出部22の長手方向において隣接している複数の突出部22の間には、微小な第二凹部24が形成される。第二凹部24は、長尺形状の突出部22の短手方向において隣接している他の複数の突出部22の間に形成される他の第二凹部24に対して、長尺形状の突出部22の長手方向へずれて形成されている。特に、本実施形態では、基面21の全体において一様な気流特性を得るために、複数の第二凹部24は、長尺形状の突出部22の短手方向に対して折れ曲がる一定のパターンにより、基面21の全体に形成されている。これにより、第二凹部24は、長尺形状の突出部22の短手方向に沿って、基面21の全体において直線状に延在するように形成されなくなる。
このような表面構造のシボ加工面20では、長尺形状の突出部22の長手方向に沿う方向の気流が、方向性パターンに沿う流れとなるため、シボ加工面20の上を流れ易くなる。
これに対して、長尺形状の突出部22の短手方向に沿う方向の気流は、シボ加工面20の上を流れ難くなる。
このように、図2の方向性パターンを有するシボ加工面20では、その表面に沿って流れる気流についての流れ易さについて、一方向において他の方向より流れ易くなる方向性を有する。
図3Aは、図2の方向性パターンのシボ加工面20が形成されているフロントバンパ部材10の側面部12での気流の説明図である。
図3Aは、フロントバンパ部材10の側面部12に形成されるシボ加工面20を、自動車1の前側から見た模式的なA-A断面図である。図3Aでは、紙面の上下方向が、長尺形状の突出部22の短手方向と一致する。
この場合、車体2の前部に設けられるフロントバンパ部材10の側面部12の表面には、車体2の前後方向に沿う方向へ気流が流れ易い方向性パターンのシボ加工面20が、全面的に形成されることになる。
図3Aに示すように、車体2の側面4,5を流れる気流が、シボ加工面20の上を流れる場合、車体2の側面4,5に沿って流れる主流31と、シボ加工面20の表面との間に、縦渦32が発生する。縦渦32は、突出部22ごとに、突出部22の表面の上に形成される。縦渦32から誘起される流れは、第一凹部23へ流れ込み難くなる。シボ加工面20と気流との接触面積は、第一凹部23の幅の分により減少する。気流についてのシボ加工面20との摩擦抵抗は、減少する。
図3Bは、図3Aの方向性パターンのシボ加工面20が形成されるフロントバンパ部材10の側面部12についての模式的な水平断面図である。図3Bのシボ加工面20の方向性パターンは、車体2の前後方向に沿う方向へ気流が流れ易いものである。図3Bでは、紙面の左右方向が、長尺形状の突出部22の長手方向と一致する。
図3Bとは異なり、フロントバンパ部材10の側面部12にシボ加工面20を形成しない場合、フロントバンパ部材10の側面部12に沿って流れる主流33は、図中に一点鎖線で示すように、側面部12の表面から少し離れるように流れる。
これに対して、図3Bのようにフロントバンパ部材10の側面部12にシボ加工面20を形成すると、気流についてのシボ加工面20との摩擦抵抗が減少する。その結果、フロントバンパ部材10の側面部12に沿って流れる主流31は、図中に実線で示すように、側面部12の表面に近づいて流れる。
このようにフロントバンパ部材10の側面部12にシボ加工面20を形成し、シボ加工面20の一方向による方向性が車体2の前後方向に沿う方向となるようにすることにより、気流は、フロントバンパ部材10の側面部12の表面形状に追従するように良好な流れとなる。フロントバンパ部材10のコーナ部から車幅方向外側へ向けて気流が噴き出してしまうことを良好に抑えることができる。気流は、車体2の外面に良好に追従して流れるようになる。
図4は、図3Aのシボ加工面20により空力特性を改善した自動車1についての走行状態の説明図である。
図4では、図2の方向性パターンのシボ加工面20が、図3Aのようにフロントバンパ部材10の側面部12の表面に形成されている自動車1が、直線状の道路を走行している。
そして、図4に示すように、直進走行中に車幅方向の位置を変化させるための操舵を実行すると、自動車1は、直進上の地点P1において右へ向きを変えて、さらに地点P2において左へ向きを変える。この操舵期間において車体の姿勢は変化する。操舵が完了した後の地点P3では、直進方向へ戻り、車体の姿勢が安定する。
このような直進走行中の操舵により、自動車1のドライバなどの乗員は、車体2の挙動について、たとえば操安性能や操舵応答性などについての違和感を得ることがある。
具体的にはたとえば、自動車1のドライバなどの乗員は、直進走行中の操舵の際に、車体2のフロントの接地感の減少、操舵に対する手応えの減少、操舵に対する応答性の低下、自動車1姿勢変化の減衰性の長期化、といった違和感を得ることがある。
なお、これらの違和感は、シボ加工面20を設けない場合と比べて自動車1の操安性能や操舵応答性を低下させるような顕著なものとして認識されるものではなく、微妙なものである。
図5は、本実施形態においてフロントバンパ部材10の側面部12に形成するシボ加工面20の説明図である。
本実施形態では、図5に示すように、図2の方向性パターンのシボ加工面20は、シボ加工面20の一方向による方向性が、図3Aのように車体2の前後方向に沿う0度となるように形成されるのではなく、自動車1の前後方向に対して後ろ上がりの角度を持つように形成されている。
具体的には、シボ加工面20は、そこにおいて直線状に延在している第一凹部23が、車体2の前後方向に対してたとえば20度の後ろ上がりの角度をなすように、形成される。
シボ加工面20は、車体2の前部に設けられるフロントバンパ部材10の側面部12の表面に全面的に形成される。
これにより、直進走行中に操舵などを実行しても、自動車1のドライバなどの乗員は、車体2の挙動について、たとえば操安性能や操舵応答性などについての違和感を得ることがなくなる。
自動車1のドライバなどの乗員は、直進走行中の操舵の際に、たとえば、車体2のフロントの接地感の減少、操舵に対する手応えの減少、操舵に対する応答性の低下、自動車1の姿勢変化の減衰性の長期化、といった違和感を得ることがなくなる。
また、自動車1のピッチングは、操舵時のみだけでなく、路面外乱などによっても生じ得る。路面外乱は、直進時においても生じ得る。これらのピッチングの際の自動車1の挙動の変化を、自動車1のドライバなどの乗員は違和感として得ることがなくなる。
なお、このような違和感が発生する原因については、定量的に説明することが難しいものであるが、以下において定性的な一例の説明をする。
図6は、図2のように方向性パターンのシボ加工面20を形成する場合と、図5の本実施形態のように方向性パターンのシボ加工面20を形成する場合との比較説明図である。
図6の上段は、図2の車体2の前後方向に沿う方向性のシボ加工面20についての、車体2の姿勢変化による方向変化の説明である。
下段は、図5のように車体2の前後方向に対して後ろ上がりの角度を有する方向性のシボ加工面20についての、車体2の姿勢変化による方向変化の説明である。
図6には、シボ加工面20に形成される複数の長尺形状の突起部が、その短手方向に並べて例示されている。
そして、各段の左端は、操舵などがなされていないニュートラル状態である。ニュートラル状態において、車体2は路面と平行な水平となり得る。
各段の中央は、操舵などにより車体2が前下がり、すなわち後上がりでの状態である。車体2は、ニュートラル状態での水平姿勢から、前方向へピッチ回転した姿勢となる。
各段の右側は、操舵などにより車体2が前上がり、すなわち後下がりでの状態である。車体2は、ニュートラル状態での水平姿勢から、後方向へピッチ回転した姿勢となる。
図6の上段に示す車体2の前後方向に沿う方向性のシボ加工面20は、左端に示すニュートラル状態では、複数の長尺形状の突起部が、車体2の前後方向に沿う方向性となっている。この場合、車体2の側面4,5を前から後へ流れる気流は、突起部の長尺方向と略平行に流れる。シボ加工面20には、気流により、押下げる力も、押上げる力も生じない。
そして、車体2が前下がり、すなわち後上がりの姿勢に変化すると、複数の長尺形状の突起部は、車体2の前後方向に沿う方向に対して、後上がりの姿勢になる。この場合、車体2の側面4,5を前から後へ流れる気流により、シボ加工面20には、押下げる力が生じ得る。
これに対し、車体2が前上がり、すなわち後下がりの姿勢に変化すると、複数の長尺形状の突起部は、車体2の前後方向に沿う方向に対して、後下がりの姿勢になる。この場合、車体2の側面4,5を前から後へ流れる気流により、シボ加工面20には、押上げる力が生じ得る。押上げる力は、車体2を浮き上がらせる力となる。
このように、車体2の前後方向に沿う方向性のシボ加工面20では、車体2の姿勢(ピッチ)の変化に応じて、車体2をおさえたり浮き上がらせたりするように変化する力が作用し得る。
そして、操舵中に姿勢変化する車体2では、たとえば図4に示すように、最初の操舵において車体2の外前が下がり、車体2の後内が上がる。二回目の逆の操舵において車体2の内前が上がり、車体2の後外が下がる。操舵期間中に車体2の姿勢についての上下の変化方向が切り替わる。
その結果、最初の操舵においては、車体2に対してその前部を押し下げる力が作用し、二回目の逆の操舵においては、車体2に対してその前部を押し上げる力(浮き上がらせる力)が作用する。操舵期間中に、車体2に作用する力の方向性が変化する変化点が生じる。
この変化点の前後において車体2の挙動の仕方が変化するため、自動車1のドライバなどの乗員は、直進走行中に操舵などの際に、車体2の挙動について、たとえば操安性能や操舵応答性などについての違和感を得ることになる、と考えられる。
図6の下段に示す車体2の前後方向に対して後上がりの角度を持つ方向性のシボ加工面20は、左端に示すニュートラル状態では、複数の長尺形状の突起部が、車体2の前後方向に対して後上がりの角度を持つ方向性となっている。この場合、車体2の側面4,5を前から後へ流れる気流により、シボ加工面20には、押下げる力が生じ得る。
そして、車体2が前下がり、すなわち後上がりの姿勢に変化すると、複数の長尺形状の突起部は、車体2の前後方向に沿う方向に対して、大きい角度での後上がりの姿勢になる。この場合、車体2の側面4,5を前から後へ流れる気流により、シボ加工面20には、押下げる力が生じ得る。
また、車体2が前上がり、すなわち後下がりの姿勢に変化すると、複数の長尺形状の突起部は、車体2の前後方向に沿う方向に対して、小さい角度での後上がりの姿勢になる。この場合、車体2の側面4,5を前から後へ流れる気流により、シボ加工面20には、押下げる力が生じ得る。
このように、車体2の前後方向に対して後ろ上がりの角度を持つ方向性のシボ加工面20では、車体2の姿勢(ピッチ)が変化しても、車体2の前後方向に対して常に後ろ上がりの角度状態を維持して、車体2をおさえる力が作用し続ける。
操舵を繰り返しても、その操舵期間中において車体2に作用する力の方向は、車体2をおさえる方向に維持されて、変化し難い。
変化点がないため、車体2の挙動の仕方は、連続的なものであり続け得る。自動車1のドライバなどの乗員は、直進走行中に操舵などの際に、車体2の挙動について、たとえば操安性能や操舵応答性などについての違和感を得ることがない。
以上のように、本実施形態では、車体2の前面3下部に設けられるフロントバンパ部材10についての側面部12の表面に、表面に沿った一方向において他の方向と比べて気流が流れ易くなる方向性パターンのシボ加工面20が全体的に形成される。そして、シボ加工面20は、気流が流れ易い一方向が、車体2の前後方向に対して後ろ上がりとなるように、形成される。これにより、気流は、一方向が車体2の前後方向となるシボ加工面20を形成した場合と同様に、フロントバンパ部材10についての側面部12の形状に追従して流れ易くなる。車体2の進行方向側にある空気が、車体2の前面3に当たって車体2の側面4,5へ向かって流れた後に、車体2のコーナ部から車幅方向の外側へ向かって噴き出るように流れ難くなる。車体2の進行方向側にある空気は、車体2のコーナ部を含めて、車体2の形状に追従するように流れ易くなる。
しかも、本実施形態では、シボ加工面20は、気流が流れ易い一方向が、車体2の前後方向となるように形成されるのではなく、車体2の前後方向に対して後ろ上がりとなるように形成される。これにより、たとえば自動車1の直進走行中に操舵をしたとしても、自動車1のドライバなどの乗員が車体2のたとえば操安性能や操舵応答性などについて違和感を得ることが起き難くなる。
このことは、シボ加工面20についての一方向が、車体2の前後方向に対して後ろ上がりとなるように形成されていることにより、直進走行中の操舵により車体2の姿勢が傾くように変化したとしても、シボ加工面20の一方向についての、車体2の前後方向に対して後ろ上がりの状態を維持でき、または少なくとも車体2の前後方向となる程度の状態を維持できる、ためであると考えられる。直進走行中においてシボ加工面20の方向性にしたがって車体2の外面に追従するように流れていた気流は、操舵により車体2の姿勢が変化しても、それまでと同様の流れを維持し続けることができる、ためであると考えられる。操舵による車体2の姿勢変化後に直進走行へ戻る際においても、姿勢変化中においてシボ加工面20の方向性にしたがって車体2の外面に追従するように流れていた気流は、それまでと同様の流れを維持し続けることができる、ためであると考えられる。
その結果、本実施形態では、直進走行中の操舵の際にも、車体2のフロントの接地感が安定し、操舵に対する手応えが安定して改善され、操舵に対する応答性が向上し、自動車1姿勢変化の減衰性が向上できる、ようになる。自動車1のドライバなどの乗員は、車体2の操安性能や操舵応答性などについて、違和感を得にくくなる。
これに対して、仮にたとえば、シボ加工面20の一方向が、車体2の前後方向に沿うように形成されていたり、車体2の前後方向に対して後ろ下がりとなるように形成されていたりする場合、直進走行中の操舵により車体2の姿勢が変化すると、その姿勢変化に応じて、シボ加工面20の方向性が、車体2の前後方向に対して後ろ下がりになったり、後ろ上がりになったりするように変化することがある。シボ加工面20の方向性がこのように変化してしまうと、シボ加工面20の上を流れる気流の向きは、上下に変化する。気流の向きは乱れて変化する。直進走行中の操舵によりこのような気流の変化が生じると、操舵中に姿勢変化する車体2に対しては、車体2をおさえたり浮き上がらせたりするように変化する力が作用する。その結果、自動車1のドライバなどの乗員は、たとえば直進走行中の操舵の際に、車体2のたとえば操安性能や操舵応答性などについて違和感を受けるようになる。自動車1のドライバなどの乗員は、直進走行中の操舵の際に、車体2のフロントの接地感の減少、操舵に対する手応えの減少、操舵に対する応答性の低下、自動車1姿勢変化の減衰性の長期化などの違和感を受けるようになる。また、自動車1のドライバなどの乗員は、操舵時の自動車1のピッチングの際だけでなく、路面外乱などによるピッチングの際においても、自動車1の挙動の変化による違和感を得ることがなくなる。
しかも、本実施形態では、上述した効果を、車体2の外装意匠(形状)を大きく変更したり、車体2に対して大型の空力パーツを追加したりすることなく、得ることができる。
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
たとえば上述した実施形態では、方向性パターンのシボ加工面20は、車体2の前面3下部に設けられるフロントバンパ部材10についての側面部12の表面に形成されている。
この他にもたとえば、方向性パターンのシボ加工面20は、フロントバンパ部材10についての側面部12の表面とともに前面部11の表面に形成されてよい。フロントバンパ部材10についての前面部11の表面には、方向性パターンではないシボ加工面20が形成されてよい。
フロントバンパ部材10についての少なくとも側面部12の表面に、方向性パターンのシボ加工面20が形成されることにより、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
上述した実施形態では、シボ加工面20についての一方向による方向性は、車体2の前後方向に対して、20度の後ろ上がりに形成されている。
この他にたとえば、シボ加工面20についての一方向による方向性は、自動車1の通常の走行中に生じ得る車体2の姿勢変化において後ろ上がりを維持できる角度に形成されてよい。
シボ加工面20についての一方向による方向性は、たとえば20度より大きい角度で後ろ上がりに形成されてよい。
また、シボ加工面20についての一方向による方向性は、たとえば10度以上、且つ40度以下の角度の範囲で後ろ上がりとなるように、形成されてよい。
1…自動車(車両)、2…車体、3…前面、4,5…側面、6…ホイールハウス、10…フロントバンパ部材、11…前面部、12…側面部、20…シボ加工面、21…基面、22…突出部、23…第一凹部、24…第二凹部、31…主流、32…縦渦、33…主流


Claims (6)

  1. 車体の前面下部に設けられるフロントバンパ部材を有する車両であって、
    前記フロントバンパ部材についての側面部の表面に、前記表面に沿った一方向において気流が流れ易くなる方向性パターンのシボ加工面を形成し、
    前記シボ加工面は、気流が流れ易い前記一方向が、前記車体の前後方向に対して後ろ上がりとなるように、形成される、
    シボ加工面により空力特性を改善する車両。
  2. 前記シボ加工面は、基面から複数の突出部が突出して形成されているものであり、
    複数の前記突出部は、長尺形状のものを含み、長尺形状の前記突出部の短手方向に並べられ、
    長尺形状の前記突出部の短手方向において隣接している複数の前記突出部の間には、長尺形状の前記突出部の長手方向に沿って直線状に延在する第一凹部が形成され、
    前記第一凹部は、前記車体の前後方向に対して後ろ上がりとなる角度を持って直線状に延在する、
    請求項1記載の、シボ加工面により空力特性を改善する車両。
  3. 複数の前記突出部は、長尺形状の前記突出部の長手方向において並べられ、
    長尺形状の前記突出部の長手方向において隣接している複数の前記突出部の間には、第二凹部が形成され、
    前記第二凹部は、長尺形状の前記突出部の短手方向において隣接している他の複数の前記突出部の間に形成される他の第二凹部に対して、長尺形状の前記突出部の長手方向へずれて形成されている、
    請求項2記載の、シボ加工面により空力特性を改善する車両。
  4. 複数の前記第二凹部は、長尺形状の前記突出部の短手方向に対して折れ曲がるパターンで形成されている、
    請求項2または3記載の、シボ加工面により空力特性を改善する車両。
  5. 前記シボ加工面は、気流が流れ易い前記一方向が、前記車体の姿勢が走行中に変化しても、前記車体の前後方向に対して後ろ上がりの状態を維持するように、形成される、
    請求項1から4のいずれか一項記載の、シボ加工面により空力特性を改善する車両。
  6. 車体の前面下部に設けられることになるフロントバンパ部材であって、
    前記フロントバンパ部材についての側面部の表面に、前記表面に沿った一方向において気流が流れ易くなる方向性パターンのシボ加工面を形成し、
    前記シボ加工面は、気流が流れ易い前記一方向が、前記車体の前後方向に対して後ろ上がりとなるように、形成される、
    フロントバンパ部材。



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