JP2022079843A - シボ加工面により空力特性を改善する車両、およびフロントバンパ部材 - Google Patents
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Abstract
Description
このため、自動車といった車両では、たとえば、車体の外面に略沿って気流が流れ得るように、走行する車体のたとえば進行方向へ向く前面から進行方向に沿う側面にかけてのコーナ部を、進行方向に対して正対しないように傾斜面としたり、曲面形状にしたりする、といった形状の工夫をすることがある。
しかしながら、車体の形状を工夫しても、気流が、コーナ部を含めて車体の外面に良好に追従して流れるようになるとまでは言い切れない。コーナ部から車幅方向外側へ向けて気流が噴き出してしまうことを十分に抑えることができているとは言い切れない。気流が車体の外面に良好に追従して流れるようになるためには、更なる改善の余地がある。
特許文献3は、車体の表面に、空気抵抗を低減するためのシート部材を貼着することを開示する。
これにより、車体の前後方向に沿うように流れる気流は、コーナ部のシボ加工面の上を流れる際に、コーナ部の外面に追従して流れ易くなる。コーナ部から車幅方向外側へ向けて噴き出る気流は、削減される。気流についての車体の外面についての追従性は、改善される。
この違和感は、シボ加工面を設けない場合と比べて車両の操安性能や操舵応答性を低下させるような顕著なものとして認識されるものではないが、たとえば直進走行中に操舵をした際などにおいて感じられるものである。
しかも、本発明では、シボ加工面は、気流が流れ易い一方向が、車体の前後方向となるように形成されるのではなく、車体の前後方向に対して後ろ上がりとなるように形成される。これにより、たとえば車両の走行中に操舵などがあって車体の姿勢が変化したとしても、車両のドライバなどの乗員が車体のたとえば操安性能や操舵応答性などについて違和感を得ることが起き難くなる。
図1Bは、図1Aの自動車1の左側面図である。
自動車1は、車両の一例である。
走行する車体2の周囲では、図中に破線矢印で示すように、車体2の形状に沿って流れる気流が発生する。車体2の進行方向側にある空気は、車体2の前面3にあるフロントバンパ部材10に当たった後、車体2の左右両側の側面4,5や上面へ向かって分かれて車体2の側面4,5や上面に沿って流れ、車体2の後方において合流する。車体2の後方には、気流の巻き込みによる多少の渦流が発生する。これらの気流は、自動車1の走行を妨げる一因である。
フロントバンパ部材10は、車体2の前面3を構成する前面部11と、前面部11についての車体2の車幅方向における左右両側の側面部12と、を有する。側面部12は、前輪のためのホイールハウス6まで延在している。
フロントバンパ部材10の前面部11は、その左右の両端部分が中央部分より後側に下がっている。左右の両端部分は、進行方向に対して正対しない傾斜面となる。
フロントバンパ部材10の前面部11と左右の側面部12とが接続されるコーナ部は、湾曲した滑らかな曲面形状に形成される。
しかしながら、フロントバンパ部材10などの車体2の形状を工夫しても、気流が、コーナ部を含めて車体2の外面に良好に追従して流れるようになるとまでは言い切れない。図中に×印で示すように、コーナ部から車幅方向外側へ向けて気流が噴き出してしまうことを十分に抑えることができているとは言い切れない。気流が車体2の外面に良好に追従して流れるようになるためには、更なる改善の余地がある。
そこで、本実施形態では、フロントバンパ部材10についての少なくとも側面部12の表面に、その表面に沿った一方向において他の方向と比べて気流が流れ易くなる方向性を有するシボ加工面20を全体的に形成する。
本実施形態では、方向性を有するシボ加工面20により、気流をコントロールして、自動車1の空力特性を改善する。
図2のシボ加工面20は、基面21と、基面21から突出して形成される複数の微小な突出部22と、を有する。
複数の突出部22の一部には、長尺形状ではないもの、たとえば正立方体形状や、円柱形状のものが含まれてよい。
複数の突出部22は、基面21の全体において、長尺形状の突出部22の短手方向および長手方向において並べて形成される。
突出部22は、基面21からの突出高さは、たとえば数マイクロメートル以上とすればよい。
これに対して、長尺形状の突出部22の短手方向に沿う方向の気流は、シボ加工面20の上を流れ難くなる。
このように、図2の方向性パターンを有するシボ加工面20では、その表面に沿って流れる気流についての流れ易さについて、一方向において他の方向より流れ易くなる方向性を有する。
この場合、車体2の前部に設けられるフロントバンパ部材10の側面部12の表面には、車体2の前後方向に沿う方向へ気流が流れ易い方向性パターンのシボ加工面20が、全面的に形成されることになる。
図3Bとは異なり、フロントバンパ部材10の側面部12にシボ加工面20を形成しない場合、フロントバンパ部材10の側面部12に沿って流れる主流33は、図中に一点鎖線で示すように、側面部12の表面から少し離れるように流れる。
これに対して、図3Bのようにフロントバンパ部材10の側面部12にシボ加工面20を形成すると、気流についてのシボ加工面20との摩擦抵抗が減少する。その結果、フロントバンパ部材10の側面部12に沿って流れる主流31は、図中に実線で示すように、側面部12の表面に近づいて流れる。
図4では、図2の方向性パターンのシボ加工面20が、図3Aのようにフロントバンパ部材10の側面部12の表面に形成されている自動車1が、直線状の道路を走行している。
このような直進走行中の操舵により、自動車1のドライバなどの乗員は、車体2の挙動について、たとえば操安性能や操舵応答性などについての違和感を得ることがある。
具体的にはたとえば、自動車1のドライバなどの乗員は、直進走行中の操舵の際に、車体2のフロントの接地感の減少、操舵に対する手応えの減少、操舵に対する応答性の低下、自動車1姿勢変化の減衰性の長期化、といった違和感を得ることがある。
なお、これらの違和感は、シボ加工面20を設けない場合と比べて自動車1の操安性能や操舵応答性を低下させるような顕著なものとして認識されるものではなく、微妙なものである。
本実施形態では、図5に示すように、図2の方向性パターンのシボ加工面20は、シボ加工面20の一方向による方向性が、図3Aのように車体2の前後方向に沿う0度となるように形成されるのではなく、自動車1の前後方向に対して後ろ上がりの角度を持つように形成されている。
具体的には、シボ加工面20は、そこにおいて直線状に延在している第一凹部23が、車体2の前後方向に対してたとえば20度の後ろ上がりの角度をなすように、形成される。
シボ加工面20は、車体2の前部に設けられるフロントバンパ部材10の側面部12の表面に全面的に形成される。
自動車1のドライバなどの乗員は、直進走行中の操舵の際に、たとえば、車体2のフロントの接地感の減少、操舵に対する手応えの減少、操舵に対する応答性の低下、自動車1の姿勢変化の減衰性の長期化、といった違和感を得ることがなくなる。
また、自動車1のピッチングは、操舵時のみだけでなく、路面外乱などによっても生じ得る。路面外乱は、直進時においても生じ得る。これらのピッチングの際の自動車1の挙動の変化を、自動車1のドライバなどの乗員は違和感として得ることがなくなる。
なお、このような違和感が発生する原因については、定量的に説明することが難しいものであるが、以下において定性的な一例の説明をする。
図6の上段は、図2の車体2の前後方向に沿う方向性のシボ加工面20についての、車体2の姿勢変化による方向変化の説明である。
下段は、図5のように車体2の前後方向に対して後ろ上がりの角度を有する方向性のシボ加工面20についての、車体2の姿勢変化による方向変化の説明である。
図6には、シボ加工面20に形成される複数の長尺形状の突起部が、その短手方向に並べて例示されている。
そして、各段の左端は、操舵などがなされていないニュートラル状態である。ニュートラル状態において、車体2は路面と平行な水平となり得る。
各段の中央は、操舵などにより車体2が前下がり、すなわち後上がりでの状態である。車体2は、ニュートラル状態での水平姿勢から、前方向へピッチ回転した姿勢となる。
各段の右側は、操舵などにより車体2が前上がり、すなわち後下がりでの状態である。車体2は、ニュートラル状態での水平姿勢から、後方向へピッチ回転した姿勢となる。
そして、車体2が前下がり、すなわち後上がりの姿勢に変化すると、複数の長尺形状の突起部は、車体2の前後方向に沿う方向に対して、後上がりの姿勢になる。この場合、車体2の側面4,5を前から後へ流れる気流により、シボ加工面20には、押下げる力が生じ得る。
これに対し、車体2が前上がり、すなわち後下がりの姿勢に変化すると、複数の長尺形状の突起部は、車体2の前後方向に沿う方向に対して、後下がりの姿勢になる。この場合、車体2の側面4,5を前から後へ流れる気流により、シボ加工面20には、押上げる力が生じ得る。押上げる力は、車体2を浮き上がらせる力となる。
そして、操舵中に姿勢変化する車体2では、たとえば図4に示すように、最初の操舵において車体2の外前が下がり、車体2の後内が上がる。二回目の逆の操舵において車体2の内前が上がり、車体2の後外が下がる。操舵期間中に車体2の姿勢についての上下の変化方向が切り替わる。
その結果、最初の操舵においては、車体2に対してその前部を押し下げる力が作用し、二回目の逆の操舵においては、車体2に対してその前部を押し上げる力(浮き上がらせる力)が作用する。操舵期間中に、車体2に作用する力の方向性が変化する変化点が生じる。
この変化点の前後において車体2の挙動の仕方が変化するため、自動車1のドライバなどの乗員は、直進走行中に操舵などの際に、車体2の挙動について、たとえば操安性能や操舵応答性などについての違和感を得ることになる、と考えられる。
そして、車体2が前下がり、すなわち後上がりの姿勢に変化すると、複数の長尺形状の突起部は、車体2の前後方向に沿う方向に対して、大きい角度での後上がりの姿勢になる。この場合、車体2の側面4,5を前から後へ流れる気流により、シボ加工面20には、押下げる力が生じ得る。
また、車体2が前上がり、すなわち後下がりの姿勢に変化すると、複数の長尺形状の突起部は、車体2の前後方向に沿う方向に対して、小さい角度での後上がりの姿勢になる。この場合、車体2の側面4,5を前から後へ流れる気流により、シボ加工面20には、押下げる力が生じ得る。
操舵を繰り返しても、その操舵期間中において車体2に作用する力の方向は、車体2をおさえる方向に維持されて、変化し難い。
変化点がないため、車体2の挙動の仕方は、連続的なものであり続け得る。自動車1のドライバなどの乗員は、直進走行中に操舵などの際に、車体2の挙動について、たとえば操安性能や操舵応答性などについての違和感を得ることがない。
この他にもたとえば、方向性パターンのシボ加工面20は、フロントバンパ部材10についての側面部12の表面とともに前面部11の表面に形成されてよい。フロントバンパ部材10についての前面部11の表面には、方向性パターンではないシボ加工面20が形成されてよい。
フロントバンパ部材10についての少なくとも側面部12の表面に、方向性パターンのシボ加工面20が形成されることにより、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
この他にたとえば、シボ加工面20についての一方向による方向性は、自動車1の通常の走行中に生じ得る車体2の姿勢変化において後ろ上がりを維持できる角度に形成されてよい。
シボ加工面20についての一方向による方向性は、たとえば20度より大きい角度で後ろ上がりに形成されてよい。
また、シボ加工面20についての一方向による方向性は、たとえば10度以上、且つ40度以下の角度の範囲で後ろ上がりとなるように、形成されてよい。
Claims (6)
- 車体の前面下部に設けられるフロントバンパ部材を有する車両であって、
前記フロントバンパ部材についての側面部の表面に、前記表面に沿った一方向において気流が流れ易くなる方向性パターンのシボ加工面を形成し、
前記シボ加工面は、気流が流れ易い前記一方向が、前記車体の前後方向に対して後ろ上がりとなるように、形成される、
シボ加工面により空力特性を改善する車両。
- 前記シボ加工面は、基面から複数の突出部が突出して形成されているものであり、
複数の前記突出部は、長尺形状のものを含み、長尺形状の前記突出部の短手方向に並べられ、
長尺形状の前記突出部の短手方向において隣接している複数の前記突出部の間には、長尺形状の前記突出部の長手方向に沿って直線状に延在する第一凹部が形成され、
前記第一凹部は、前記車体の前後方向に対して後ろ上がりとなる角度を持って直線状に延在する、
請求項1記載の、シボ加工面により空力特性を改善する車両。
- 複数の前記突出部は、長尺形状の前記突出部の長手方向において並べられ、
長尺形状の前記突出部の長手方向において隣接している複数の前記突出部の間には、第二凹部が形成され、
前記第二凹部は、長尺形状の前記突出部の短手方向において隣接している他の複数の前記突出部の間に形成される他の第二凹部に対して、長尺形状の前記突出部の長手方向へずれて形成されている、
請求項2記載の、シボ加工面により空力特性を改善する車両。
- 複数の前記第二凹部は、長尺形状の前記突出部の短手方向に対して折れ曲がるパターンで形成されている、
請求項2または3記載の、シボ加工面により空力特性を改善する車両。
- 前記シボ加工面は、気流が流れ易い前記一方向が、前記車体の姿勢が走行中に変化しても、前記車体の前後方向に対して後ろ上がりの状態を維持するように、形成される、
請求項1から4のいずれか一項記載の、シボ加工面により空力特性を改善する車両。
- 車体の前面下部に設けられることになるフロントバンパ部材であって、
前記フロントバンパ部材についての側面部の表面に、前記表面に沿った一方向において気流が流れ易くなる方向性パターンのシボ加工面を形成し、
前記シボ加工面は、気流が流れ易い前記一方向が、前記車体の前後方向に対して後ろ上がりとなるように、形成される、
フロントバンパ部材。
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