JP2022035833A - 電子機器 - Google Patents

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JP2022035833A JP2020140408A JP2020140408A JP2022035833A JP 2022035833 A JP2022035833 A JP 2022035833A JP 2020140408 A JP2020140408 A JP 2020140408A JP 2020140408 A JP2020140408 A JP 2020140408A JP 2022035833 A JP2022035833 A JP 2022035833A
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秀康 中嶋
Hideyasu Nakajima
彰人 土肥
Akihito Doi
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Sekisui Chemical Co Ltd
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Sekisui Chemical Co Ltd
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Abstract

【課題】内蔵する蓄電池セルの熱暴走時等における消火性に優れた電子機器の提供。【解決手段】蓄電池セル12と、蓄電池セルの主面に対向して配置されたカバー11と、蓄電池セルの主面12S及びカバーの内面11Sの少なくともいずれかに接触する発火抑制シート14とを備え、発火抑制シートの発火抑制指数をB、蓄電池セルの発火指数をFとした場合に、式(1)で表されるSが1000以下である電子機器10。S=1/(B/F)2…(1)[B=0.6x+0.3y+0.1z、F=(0.5I)×(0.3m)×(0.2n2)。但し、xは発火抑制シートの熱伝導率(W/mK)、yは発火抑制シートの高温耐久後の引張破断強度(MPa)、zは蓄電池セルの主面の面積に対する発火抑制シートの面積の比率、Iは蓄電池セルの電池体積容量密度(mAh/cm3)、mは蓄電池セルの電池重量容量密度(mAh/g)、nは蓄電池セルの電池起電力(V)。]【選択図】図1

Description

本発明は、蓄電池セルを備える電子機器に関する。
リチウムイオン電池などの各種蓄電池は、内部短絡等が原因により熱暴走し、発火や発煙等の不具合を生じることがある。このような不具合による被害を最小限に抑えるために、異常高温になった蓄電池の熱を周囲の蓄電池及び蓄電池を収容した筐体に伝え難くする方法が検討されており、例えば、蓄電池セルの周辺に耐火材や断熱層等の保護材を用いる方法が挙げられる。
例えば、特許文献1には、外側の少なくとも一部が耐火性コーティングで覆われている電池セルが開示されており、耐火性コーティングがアブレーティブコーティング、膨張性コーティング又は吸熱性コーティングであること、ポリウレタン系コーティングが使用可能であることが開示されている。
特表2013-528911号公報
ところで、近年、携帯電話、スマートフォンなどの蓄電池セルを備える電子機器においては、蓄電池セルの電池容量が高く、急激な温度上昇により発火しやすくなっており、仮に発火した場合であっても速やかに消火することが可能な消火性に優れる構造が求められている。
そこで、本発明は、蓄電池セルを備える電子機器であって、蓄電池セルの熱暴走時などにおいて、消火性に優れる電子機器を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた。その結果、電子機器内部の蓄電池セルの主面及びカバーの内面の少なくともいずれかに接触して配置される発火抑制シートの発火抑制指数をB、蓄電池セルの発火指数をFとした場合に、S=1/(B/F)で表されるSの値を特定範囲内とすることにより、消火性が向上することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[10]を提供する。
[1]蓄電池セルと、前記蓄電池セルの主面に対向して配置されたカバーと、前記蓄電池セルの主面及び前記カバーの内面の少なくともいずれかに接触する発火抑制シートとを備えた電子機器であって、前記発火抑制シートの発火抑制指数をB、前記蓄電池セルの発火指数をFとした場合に、以下の式(1)で表されるSが1000以下である、電子機器。
S=1/(B/F) 式(1)
式(1)において発火抑制指数Bは以下の式(2)、発火指数Fは以下の式(3)で表され、
B=0.6x+0.3y+0.1z 式(2)
F=(0.5I)×(0.3m)×(0.2n) 式(3)
xは発火抑制シートの熱伝導率x(W/mK)であり、
yは発火抑制シートの高温耐久後の引張破断強度y(MPa)であり、
zは蓄電池セルの主面の面積に対する発火抑制シートの面積の比率zであり、
Iは蓄電池セルの電池体積容量密度I(mAh/cm)であり、
mは蓄電池セルの電池重量容量密度m(mAh/g)であり、
nは蓄電池セルの電池起電力n(V)である。
[2]前記発火抑制シートの厚みが100μm以下である、上記[1]に記載の電子機器。
[3]前記発火抑制シートが、樹脂を含有する耐火樹脂組成物から形成されたものである、上記[1]又は[2]に記載の電子機器。
[4]前記耐火樹脂組成物が熱伝導性物質を含む、上記[3]に記載の電子機器。
[5]前記熱伝導性物質が膨張化黒鉛を含有する、上記[4]に記載の電子機器。
[6]前記耐火樹脂組成物が金属粉末を含有する、上記[3]~[5]のいずれかに記載の電子機器。
[7]前記耐火樹脂組成物が、吸熱剤、難燃剤、及び熱膨張性層状無機物からなる群から選択される少なくとも1種の耐火性添加剤を含有する、上位[3]~[6]のいずれかに記載の電子機器。
[8]前記発火抑制シートの熱伝導率xが100~5000W/mKである、上記[1]~[7]のいずれかに記載の電子機器。
[9]前記発火抑制シートが粘着材を備えており、該粘着材により前記発火抑制シートが前記蓄電池セルの主面又は前記カバーに固定されている、上記[1]~[8]のいずれかに記載の電子機器。
[10]蓄電池セルと、前記蓄電池セルの主面に接触する発火抑制シートとを備えた蓄電池セル構造体であって、前記発火抑制シートの発火抑制指数をB、前記蓄電池セルの発火指数をFとした場合に、以下の式(1)で表されるSが1000以下である、蓄電池セル構造体。
S=1/(B/F) 式(1)
式(1)において発火抑制指数Bは以下の式(2)、発火指数Fは以下の式(3)で表され、
B=0.6x+0.3y+0.1z 式(2)
F=(0.5I)×(0.3m)×(0.2n) 式(3)
xは発火抑制シートの熱伝導率x(W/mK)であり、
yは発火抑制シートの高温耐久後の引張破断強度y(MPa)であり、
zは蓄電池セルの主面の面積に対する発火抑制シートの面積の比率zであり、
Iは蓄電池セルの電池体積容量密度I(mAh/cm)であり、
mは蓄電池セルの電池重量容量密度m(mAh/g)であり、
nは蓄電池セルの電池起電力n(V)である。
本発明によれば、消火性に優れる電子機器を提供することができる。
電子機器の一実施形態を示す模式的な斜視図である。
[電子機器]
本発明は、蓄電池セルと、前記蓄電池セルの主面に対向して配置されたカバーと、前記蓄電池セルの主面及び前記カバーの内面の少なくともいずれかに接触する発火抑制シートとを備えた電子機器であり、発火抑制シートの発火抑制指数をB、蓄電池セルの発火指数をFとした場合に、以下の式(1)のSが1000以下である電子機器である。
S=1/(B/F) 式(1)
式(1)において発火抑制指数Bは以下の式(2)、発火指数Fは以下の式(3)で表される。
B=0.6x+0.3y+0.1z 式(2)
F=(0.5I)×(0.3m)×(0.2n) 式(3)
xは発火抑制シートの熱伝導率x(W/mK)であり、
yは発火抑制シートの高温耐久後の引張破断強度y(MPa)であり、
zは蓄電池セルの主面の面積に対する発火抑制シートの面積の比率zであり、
Iは蓄電池セルの電池体積容量密度I(mAh/cm)であり、
mは蓄電池セルの電池重量容量密度m(mAh/g)であり、
nは蓄電池セルの電池起電力n(V)である。
本発明における電子機器の一実施形態を図1に示す。なお、本発明は図1の内容に何ら限定されるものではない。
図1では、電子機器としてスマートフォンを例に説明する。電子機器10は、筐体13に収容されたラミネート型の蓄電池セル12と、該蓄電池セル12の主面12Sに対向して配置されカバー11と、蓄電池セル12の主面12Sに接触するように設けられた発火抑制シート14とを備えている。カバー11は、蓄電池セル12などを保護する背面カバーに相当する。
なお、図1では説明のためカバー11は開いた状態となっているが、実際は、蓄電池セル12を収容した筐体13をカバー11で閉して使用される。カバー11を閉じた状態では、カバー11は蓄電池セルの主面に対向して位置で固定される。また、実際は、筐体13には、蓄電池セルの他にスマートフォンに一般に用いられる部品が収容されているが、図1では説明のため省略している。また、蓄電池セルの主面は、電子機器の筐体13内に配置された状態において、カバーに対向する面である。
図1では、蓄電池セル12の主面12S上に発火抑制シート14を接触させているが、発火抑制シート14はカバー11の内面11Sに接触させてもよい。発火抑制シート14をカバー11の内面11Sに接触させる場合は、カバー11を閉じた際に、蓄電池セルの主面12Sの鉛直方向に発火抑制シート14の少なくとも一部が存在するように、発火抑制シート14を配置することが好ましい。また、蓄電池セルの主面12Sの鉛直方向に発火抑制シート14のすべてが存在するように、発火抑制シート14を配置することがより好ましい。発火抑制シート14を蓄電池セル12の主面又はカバー11の内面11Sに接触させる場合は、発火抑制シート14をそのまま接触させてもよいし、面積が大きい場合には、発火抑制シート14を折り曲げて接触させてもよい。
本発明においては、発火抑制シート14の発火抑制指数をB、蓄電池セル12の発火指数をFとした場合に、以下の式(1)で表されるSが1000以下である。
Sが1000を超える場合は、電子機器に備えられている蓄電池セルが熱暴走した際に、速やかに消火することが難しくなる。
電子機器が発火した場合の消火性を向上させる観点から、Sは900以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましい。Sは小さければ小さいほど消火性に優れるため、Sは0に近いほどよく、そのような観点からSは0超であり、実用的な観点からSは例えば10以上である。
S=1/(B/F) 式(1)
式(1)において発火抑制指数Bは以下の式(2)、発火指数Fは以下の式(3)で表される。
B=0.6x+0.3y+0.1z 式(2)
F=(0.5I)×(0.3m)×(0.2n) 式(3)
xは発火抑制シートの熱伝導率x(W/mK)であり、
yは発火抑制シートの高温耐久後の引張破断強度y(MPa)であり、
zは蓄電池セルの主面の面積に対する発火抑制シートの面積の比率zであり、
Iは蓄電池セルの電池体積容量密度I(mAh/cm)であり、
mは蓄電池セルの電池重量容量密度m(mAh/g)であり、
nは蓄電池セルの電池起電力n(V)である。
式(2)における発火抑制指数Bは、その数値が大きいほど発火を抑制する度合いが大きく、消火性に優れることを意味する。発火抑制指数Bは、発火抑制シートの熱伝導率x(W/mK)、発火抑制シートの引張破断強度y(MPa)、蓄電池セルの主面の面積に対する発火抑制シートの面積の比率zにより決定される。これら熱伝導率x、引張破断強度y、面積の比率zが大きいほど発火を抑制しやすくなる。また、式(2)におけるx、y、zの係数は、実験により見出した発火抑制に関する寄与度を意味する。
式(3)における発火指数Fは、その数値が小さいほど発火を抑制する度合いが大きくなる。発火指数Fは、蓄電池セルの電池体積容量密度I(mAh/cm)、電池重量容量密度m(mAh/g)、電池起電力n(V)により決定される。これら電池体積容量密度I、電池重量容量密度m、電池起電力nが小さいほど発火を抑制しやすくなり(逆にこれらの値が大きいほど発火しやすくなり)、式(3)おけるI、m、nのそれぞれの係数は、種々の実験により見出した発火しやすさに関する寄与度である。
<熱伝導率x>
発火抑制シートの熱伝導率x(W/mK)は、式(1)のSが本発明で規定する所定の値となるのであれば特に制限されないが、熱伝導率xが高いほど蓄電池セルの熱を周囲に伝達しやすくなり、発火を抑制し消火性を高めやすくなる。発火抑制の観点及び実用的な材料選択の観点などから、熱伝導率xは好ましくは100~5000W/mKであり、より好ましくは200~300W/mKであり、さらに好ましくは300~1500W/mKである。
なお熱伝導率xは発火抑制シートの面方向の熱伝導率であり、発火抑制シートの両面の熱伝導率を測定し、高い方の値を熱伝導率xとする。
<高温耐久後の引張破断強度y>
発火抑制シートの高温耐久後の引張破断強度y(MPa)は、式(1)のSが本発明で規定する所定の値となるのであれば特に制限されないが、引張破断強度yが高いほど、高温時において破断し難く、そのため形状を保持することができ、発火抑制機能を維持し易くなる。発火抑制の観点及び実用的な材料選択の観点などから、高温耐久後の引張破断強度y(MPa)は好ましくは0.1~5MPaであり、より好ましくは0.5~4MPaであり、さらに好ましくは0.7~3MPaである。
高温耐久後の引張破断強度yは、発火抑制シートを85℃85%RHで1,000時間熱処理した後に測定した引張破断強度である。
<蓄電池セルの主面の面積に対する発火抑制シートの面積の比率z>
蓄電池セルの主面の面積に対する発火抑制シートの面積の比率zは、、式(1)のSが本発明で規定する所定の値となるのであれば特に制限されないが、発火抑制シートの面積の比率zが大ききほど、蓄電池セルの発火を抑制しやすくなる。
発火抑制シートの面積の比率zは、発火抑制の観点及び電子機器内のスペースなどの観点から、好ましくは0.2~5であり、より好ましくは0.5~3であり、さらに好ましくは1~2.5である。
発火抑制シートの面積の比率zは、発火抑制シートの面積を蓄電池セルの主面の面積で除することにより算出される。ここで、蓄電池セルの主面とは、蓄電池セルを保護するためなどに設けられるカバーの内面に対向する蓄電池セルの面を意味し、例えば図1においてはカバー11の内面11sに対向する蓄電池セル12の表面部分である12sが主面である。
<発火抑制指数B>
上記した、熱伝導率x、引張破断強度y、及び発火抑制シートの面積の比率zに基づき式(2)で定義される発火抑制指数Bは、式(1)のSが本発明で規定する所定の値となるのであれば特に制限されないが、好ましくは100~1000であり、より好ましくは200~800であり、さらに好ましくは250~500である。
<電池体積容量密度I>
蓄電池セルの電池体積容量密度Iは、式(1)のSが本発明で規定する所定の値となるのであれば特に制限されないが、発火抑制の観点や実用上の観点などから、好ましくは50~800mAh/cmであり、より好ましくは80~500mAh/cmであり、さらに好ましくは100~400mAh/cmである。なお、蓄電池セルの電池体積容量密度Iは、蓄電池セルの容量(mAh)を体積(cm)で除した値である。
<電池重量容量密度m>
蓄電池セルの電池重量容量密度mは、式(1)のSが本発明で規定する所定の値となるのであれば特に制限されないが、発火抑制の観点や実用上の観点などから、好ましくは30~200mAh/gであり、より好ましくは40~150mAh/gであり、さらに好ましくは50~150mAh/gである。なお、蓄電池セルの電池重量容量密度mは、蓄電池セルの容量(mAh)を重量(g)で除した値である。
<電池起電力n>
蓄電池セルの電池起電力nは、式(1)のSが本発明で規定する所定の値となるのであれば特に制限されないが、発火抑制の観点や実用上の観点などから、好ましくは1.5~4.0Vである。
[蓄電池セル構造体]
本発明においては、以下に示す蓄電池セル構造体も提供することができる。
本発明の蓄電池セル構造体は、蓄電池セルと、前記蓄電池セルの主面に接触する発火抑制シートとを備えており、前記発火抑制シートの発火抑制指数をB、前記蓄電池セルの発火指数をFとした場合に、以下の式(1)で表されるSが1000以下である、蓄電池セル構造体である。
S=1/(B/F) 式(1)
式(1)において発火抑制指数Bは以下の式(2)、発火指数Fは以下の式(3)で表され、
B=0.6x+0.3y+0.1z 式(2)
F=(0.5I)×(0.3m)×(0.2n) 式(3)
xは発火抑制シートの熱伝導率x(W/mK)であり、
yは発火抑制シートの高温耐久後の引張破断強度y(MPa)であり、
zは蓄電池セルの主面の面積に対する発火抑制シートの面積の比率zであり、
Iは蓄電池セルの電池体積容量密度I(mAh/cm)であり、
mは蓄電池セルの電池重量容量密度m(mAh/g)であり、
nは蓄電池セルの電池起電力n(V)である。
本発明の蓄電池セル構造体は、図1に示すように蓄電池セル12と、該蓄電池セル12の主面12Sに接触する発火抑制シート14とを備えている。蓄電池セル構造体は、電子機器用として用いられるものであって、使用時は、電子機器の筐体13に収容され、該筐体13の開口部は、該電子機器に備えられたカバーであって、蓄電池セルを保護するカバー11により閉じられる。
上記したSの値を示す式(1)、発火抑制指数Bを示す式(2)、発火指数を示す式(3)は、上述した本発明の電子機器において説明したものと同様のものであり、熱伝導率x、引張破断強度y、面積の比率z、電池体積容量密度I、電池重量容量密度m、電池起電力nも同様である。なお、蓄電池セル構造体における蓄電池セルの主面とは、蓄電池セルを電子機器に収容した場合において、カバー11に対向する面を意味する。
本発明の蓄電池セル構造体は、上記した式(1)を満足することにより、電子機器に用いた際において、消火性に優れる電子機器を提供することができる。
[発火抑制シート]
本発明の発火抑制シートについて、以下詳細に説明する。
<樹脂>
本発明の発火抑制シートは、樹脂を含有する耐火樹脂組成物により形成されたものであることが好ましい。樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びエラストマー樹脂が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1-)ブテン樹脂、及びポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。
エラストマー樹脂としては、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン-プロピレンゴム、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体、水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
これら樹脂のうち1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
耐火樹脂組成物に含有される樹脂は、上記した中でも、熱可塑性樹脂が好ましい。耐火樹脂組成物に熱可塑性樹脂を使用すると、後述する押出成形やスラリーなどの塗布により、発火抑制シートを容易に形成できる。
また、熱可塑性樹脂の中でも、成形性、発火抑制などの観点からは、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが好ましい。これらの中では、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂がより好ましく、ポリビニルアセタール樹脂が特に好ましい。
(ポリビニルアセタール樹脂)
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂であれば特に限定されないが、ポリビニルブチラール樹脂が好適である。
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量は、好ましくは20~40モル%である。水酸基量を20モル%以上とすることで、極性が高くなり、発火抑制シートの被着体への接着性が良好になりやすい。また、水酸基量を40モル%以下とすることで、発火抑制シートが硬くなり過ぎたりすることを防止する。上記水酸基量は、被着体への接着性をより高くする観点から高いほうがよく、より好ましくは21モル%以上、さらに好ましくは22モル%以上である。また、上記水酸基量は、より好ましくは35モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下である。
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、好ましくは40~80モル%である。アセタール化度を上記範囲内とすることで、上記する水酸基量を所望の範囲内として、被着体への接着性を良好にしやすくなる。アセタール化度は、より好ましくは55モル%以上であり、さらに好ましくは60モル%以上であり、また、より好ましくは85モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下である。
また、上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル基量は、好ましくは0.1~30モル%である。アセチル基量がこの範囲内であると、耐湿性に優れ、可塑剤との相溶性に優れ、高い柔軟性を発揮して取扱い性が向上する。また、アセチル基量をこれら範囲内とすることで、上記する水酸基量を所望の範囲内として、被着体への接着性を良好にしやすくなる。これら観点から、アセチル基量は、0.2モル%以上がより好ましく、0.5モル%以上がさらに好ましく、また、15モル%以下がより好ましく、7モル%以下がさらに好ましい。
なお、アセタール化度、水酸基量、及びアセチル基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定し、また算出することができる。
ポリビニルアセタール樹脂の重合度は、好ましくは300~4000である。重合度をこれら範囲内にすることで、後述する耐火性添加剤を適切に発火抑制シート中に分散させ、かつ成形性なども良好になる。重合度は、より好ましくは400以上、さらに好ましくは600以上である。
ポリビニルアセタール樹脂の重合度を低くすると粘度も下がり、発火抑制シート中に耐火性添加剤を分散しやすくなる。そのような観点から、ポリビニルアセタール樹脂の重合度は、好ましくは2000以下である。
なお、ポリビニルアセタール樹脂の重合度は、JIS K6728に記載の方法に基づいて測定した粘度平均重合度をいう。
上記アルデヒドは特に限定されないが、一般には、炭素数が1~10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1~10のアルデヒドは特に限定されず、例えば、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n-ブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-バレルアルデヒドが好ましく、n-ブチルアルデヒドがより好ましい。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(ポリ塩化ビニル樹脂)
ポリ塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル単独重合体であってもよいし、塩化ビニル系共重合体でよい。塩化ビニル系共重合体は、塩化ビニル及び塩化ビニルと共重合可能な不飽和結合を有する単量体の共重合体であって、塩化ビニル由来の構成単位を50質量%以上含有する。
塩化ビニルと共重合可能な不飽和結合を有する単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリロニトリル、スチレン等の芳香族ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
また、ポリ塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニル系共重合体などを塩素化したポリ塩素化塩化ビニル樹脂でもよい。
ポリ塩化ビニル樹脂は、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂)
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂としては、非架橋型のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂であってもよいし、また、高温架橋型のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂であってもよい。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物、エチレン-酢酸ビニルの加水分解物などのようなエチレン-酢酸ビニル変性体樹脂も用いることができる。
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は、JIS K 6730「エチレン・酢酸ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定される酢酸ビニル含量が好ましく10~50質量%、より好ましくは25~45質量%である。酢酸ビニル含量をこれら下限値以上とすることで、基材への接着性が高くなる。また、酢酸ビニル含量をこれら上限値以下とすることで、耐火樹脂層の破断強度などの機械強度が良好となる。
耐火樹脂組成物における樹脂の含有量は、耐火樹脂組成物全量基準で、例えば4質量%以上である。樹脂の含有量を4質量%以上とすると、耐火樹脂組成物の成形性や、樹脂による耐火性添加剤の保持性能、樹脂における耐火性添加剤の分散性などが良好となる。耐火樹脂層の成形性や、耐火性添加剤の保持性能や分散性などをより良好とする観点から、樹脂の含有量は、より好ましくは6質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上である。また、上記樹脂の含有量は、好ましくは85質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、よりさらに好ましくは20質量%以下である。
<熱伝導性物質>
本発明における耐火樹脂組成物は、熱伝導性物質を含むことが好ましい。熱伝導性物質を含むことにより、上記した熱伝導率xを所望の範囲に調整しやすくなる。
熱伝導性物質としては、窒化物粒子、酸化物粒子、膨張化黒鉛などが挙げられる。
上記窒化物粒子としては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などが挙げられる。上記酸化物粒子としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
これらの中でも、熱伝導率xを所望の範囲に調整し、蓄電池セルの発火を抑制する観点から、熱伝導性物質としては、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、膨張化黒鉛などが好ましく、膨張化黒鉛がより好ましい。
なお、膨張化黒鉛とは、熱膨張性黒鉛を加熱膨張し、プレスしシート化させ、そのシートを粉砕したものをいう。膨張化黒鉛の平均アスペクト比は、熱伝導率xを高める観点から、好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは10以上であり、そして好ましくは1000以下であり、より好ましくは100以下であり、さらに好ましくは50以下である。膨張化黒鉛のアスペクト比は、10個の膨張化黒鉛について、それぞれ最大寸法(長径)及び最小寸法(短径)測定し、最大寸法(長径)を最小寸法(短径)で除した値を10個の膨張化黒鉛について平均して算出する。膨張化黒鉛の長径及び短径は、例えば、走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて測定することができる。
熱伝導性物質の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは50~1200質量部であり、より好ましくは200~1000質量部であり、さらに好ましくは300~800質量部であり、さらに好ましくは500~800質量部である。
<金属粉末>
本発明における耐火樹脂組成物は、金属粉末を含むことが好ましい。金属粉末を含むことで、発火抑制シートの機械的強度が向上し、上記した高温耐久後の引張破断強度yを所望の範囲に調整しやすくなる。この理由は定かではないが、金属粉末同士が熱により焼結し、その結果、発火抑制シートの機械的強度が向上するものと推定される。
金属粉末としては、例えば、銅粉末、ステンレス鋼粉末、チタン粉末、タングステン粉末、鉄粉末、アルミニウム粉末などが挙げられ、中でも銅粉末を好適に用いることができる。
金属粉末の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは20~1000質量部であり、より好ましくは50~500質量部であり、さらに好ましくは100~300質量部である。
<耐火性添加剤>
本発明における耐火樹脂組成物は、吸熱剤、難燃剤、及び熱膨張性層状無機物からなる群から選択される少なくとも1種の耐火性添加剤を含有することが好ましい。耐火性添加剤は、発火抑制シートにおいて樹脂中に分散され、かつ樹脂によって保持される。耐火性添加剤を含有することで、耐火樹脂組成物から形成される発火抑制シートの耐火性が向上する。また、耐火性添加剤を加えることで、発火抑制シートの高温耐久後の引張破断強度yを高くしやすくなる。
(吸熱剤)
耐火性添加剤に使用する吸熱剤の具体例としては、水和金属化合物が挙げられる。水和金属化合物としては、火炎の接触により分解して水蒸気を発生し、吸熱する効果を有する化合物である。水和金属化合物としては、金属水酸化物、金属塩の水和物が挙げられる。具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、カルシウム-マグネシウム系水酸化物、ハイドロタルサイト、ベーマイト、タルク、ドーソナイト、硫酸カルシウムの水和物、硫酸マグネシウムの水和物、ホウ酸亜鉛[2ZnO・3B・3.5HO]などが挙げられる。
これらの中では、耐火性、消火性能などの観点から、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム2水和物、及び硫酸マグネシウム7水和物から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に水酸化アルミニウムが好ましい。
吸熱剤として、例えば、熱分解開始温度が800℃以下、吸熱量が300J/g以上であるものを用いることが好ましい。これにより、蓄電池セルなどが発火した場合に速やかに消火しやすくなる。
吸熱剤としては、熱分解開始温度が500℃以下、吸熱量が500J/g以上であるものが好ましい。熱分解開始温度、及び吸熱量のいずれかが上記範囲内となると、バッテリーなどが発火した場合に速やかに消火することができる。
吸熱剤の熱分解開始温度は、500℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましく、300℃以下がさらに好ましく、250℃以下がよりさらに好ましい。吸熱剤の熱分解開始温度をこれら上限値以下とすることで発火時に速やかに吸熱剤が分解し、迅速に消火することが可能になる。また、吸熱剤の熱分解開始温度は、例えば50℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。
なお、熱分解開始温度は、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
熱分解開始温度が800℃以下、吸熱量が300J/g以上である化合物としては、上記した水和金属化合物が挙げられるが、より具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム2水和物、硫酸マグネシウム7水和物、ハイドロタルサイト、ホウ酸亜鉛等が挙げられる。これら化合物は、熱分解開始温度が500℃以下、吸熱量が500J/g以上である吸熱剤でもある。
また、吸熱剤は、平均粒子径が0.1~90μmであるものが好ましい。平均粒子径が上記範囲内とすることで、樹脂中に吸熱剤が分散しやすくなり、吸熱剤を多量に配合させやすくなる。
吸熱剤の平均粒子径は、0.5~60μmがより好ましく、0.8~40μmがさらに好ましく、0.8~30μmがよりさらに好ましく、0.8~10μmが特に好ましい。
吸熱剤の平均粒子径が上記範囲内であると、耐火樹脂組成物中における吸熱剤の分散性が向上し、吸熱剤を樹脂中に均一に分散させたり、樹脂に対する吸熱剤の配合量を多くしたりすることができる。さらに、耐火性、消火性能も向上させやすくなる。
なお、吸熱剤及び後述する難燃剤の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定したメディアン径(D50)の値である。
(難燃剤)
難燃剤としてはリン原子含有化合物が挙げられる。リン原子含有化合物としては、例えば、赤リン、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、及びキシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、及びリン酸マグネシウム等のリン酸金属塩、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸アルミニウム等の亜リン酸金属塩、ポリリン酸アンモニウム、下記一般式(1)で表されるリン系化合物等が挙げられる。これらリン含有化合物を使用することで、耐火樹脂層に適切な耐火性、消火性能を付与できる。難燃剤は、これら1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
Figure 2022035833000002
前記一般式(1)中、R及びRは、同一又は異なって、水素、炭素数1~16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又は炭素数6~16のアリール基を示す。Rは、水酸基、炭素数1~16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1~16の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6~16のアリール基、又は炭素数6~16のアリールオキシ基を示す。
前記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、n-プロピルホスホン酸、n-ブチルホスホン酸、2-メチルプロピルホスホン酸、t-ブチルホスホン酸、2,3-ジメチル-ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4-メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。
上記した難燃剤の中では、発火抑制シートの耐火性、消火性能を向上させる観点から、リン酸エステル、及び亜リン酸金属塩から選択される少なくとも1種が好ましい。
難燃剤は、好ましくは、常温(23℃)及び常圧(1気圧)で固体状となるものである。難燃剤の平均粒子径は、1~200μmが好ましく、1~60μmがより好ましく、3~40μmがさらに好ましく、5~20μmがよりさらに好ましい。難燃剤の平均粒子径が上記範囲内であると、耐火樹脂組成物中における難燃剤の分散性が向上し、難燃剤を樹脂中に均一に分散させたり、樹脂に対する難燃剤の配合量を多くしたりすることができる。
(熱膨張性層状無機物)
熱膨張性層状無機物は、加熱時に膨張する従来公知の物質であり、例えば、バーミキュライト、熱膨張性黒鉛などが挙げられ、中でも熱膨張性黒鉛が好ましい。熱膨張性層状無機物としては、粒子状やりん片状のものを用いてもよい。熱膨張性層状無機物は、加熱されることで膨張して大容量の空隙を形成するため、発火抑制シートに着火した場合に延焼を抑制したり、消火したりする。
熱膨張性黒鉛は、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、無機酸と、強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。無機酸としては濃硫酸、硝酸、セレン酸等が挙げられる。強酸化剤としては濃硝酸、過硫酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等が挙げられる。上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和処理してもよい。
熱膨張性黒鉛の粒度は、20~200メッシュが好ましい。膨張性黒鉛の粒度が前記範囲内であると、膨脹して大容量の空隙を作りやすくなるため耐火性が向上する。また、樹脂への分散性も向上する。
熱膨張性黒鉛のアスペクト比は、2以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。熱膨張性黒鉛のアスペクト比の上限は特に限定されないが、熱膨張性黒鉛の割れ防止の観点から、1,000以下であることが好ましい。熱膨張性黒鉛のアスペクト比が2以上であることにより、膨張して大容量の空隙を作りやすくなり、また熱伝導性も高くなるため難燃性が向上する。
熱膨張性黒鉛のアスペクト比は、10個の熱膨張性黒鉛について、それぞれ最大寸法(長径)及び最小寸法(短径)測定し、最大寸法(長径)を最小寸法(短径)で除した値を10個の熱膨張性黒鉛について平均して算出する。熱膨張性黒鉛の長径及び短径は、例えば、走査電子顕微鏡を用いて測定することができる。
本発明の耐火樹脂組成物が、熱膨張性黒鉛及び膨張化黒鉛の両方を含む場合は、平均アスペクト比は、熱伝導率xを高める観点から、好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは10以上であり、そして好ましくは1000以下であり、より好ましくは100以下であり、さらに好ましくは50以下である。
なお、平均アスペクト比は、発火抑制シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察して算出した、個々の熱膨張性黒鉛及び膨張化黒鉛のアスペクト比の平均値である。
耐火樹脂組成物における耐火性添加剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、例えば10~2500質量部である。10質量部以上とすることで、発火抑制シートに適切な耐火性、消火性能を付与できる。また、2500質量部以下とすると、発火抑制シートに一定割合以上の樹脂を含有させることができるので、発火抑制シートの樹脂中に耐火性添加剤を適切に分散させることが可能になる。そのため、成形性が良好となる。
耐火性添加剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、耐火性、消火性能を向上させる観点から、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上である。また、上記耐火性添加剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、成形性、分散性の観点から、好ましくは1000質量部以下、より好ましくは750質量部以下であり、さらに好ましくは500質量部以下である。
本発明の耐火樹脂組成物は、上記した耐火性添加剤、熱伝導性物質、及び金属粉体のいずれにも該当しない無機充填材を含有していもよい。
該無機充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、ガラス繊維、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、木炭粉末、炭化ケイ素、ステンレス繊維、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、及び脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機充填剤を含有する場合、その含有量は樹脂100質量部に対して、好ましくは10~300質量部、より好ましくは10~200質量部である。無機充填剤の含有量が前記範囲内であると、発火抑制シートの機械的物性を向上させることができる。
(可塑剤)
耐火樹脂組成物は、更に可塑剤を含有してもよい。特に樹脂成分がポリ塩化ビニル樹脂やポリビニルアセタール樹脂である場合、成形性などを向上させる観点から可塑剤を含むことが好ましい。
可塑剤は、一般にポリ塩化ビニル樹脂やポリビニルアセタール樹脂と併用される可塑剤であれば特に限定されない。具体的には、例えば、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル可塑剤、エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、アジピン酸エステル、アジピン酸ポリエステル等のアジピン酸エステル可塑剤、トリー2-エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤、鉱油等のプロセスオイル等が挙げられる。可塑剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
耐火樹脂組成物が可塑剤を含有する場合、可塑剤の含有量は、樹脂100質量部に対して1~60質量部が好ましく、5~50質量部がより好ましく、10~40質量部がさらに好ましい。可塑剤の含有量が前記範囲内であると、成形性が向上する傾向にあり、また耐火樹脂層が柔らかくなり過ぎることを抑制できる。
(その他成分)
本発明における耐火樹脂組成物は、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて上記以外の添加成分を含有させることができる。この添加成分の種類は特に限定されず、各種添加剤を用いることができる。このような添加剤として、例えば、滑剤、収縮防止剤、結晶核剤、着色剤(顔料、染料等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、難燃助剤、帯電防止剤、界面活性剤、加硫剤、分散剤、及び表面処理剤等が挙げられる。添加剤の添加量は成形性等を損なわない範囲で適宜選択でき、添加剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(耐火樹脂組成物の製造)
耐火樹脂組成物は、樹脂、熱伝導性物質、金属粉末、耐火性添加剤、及びその他の成分をビーズミル、ボールミル、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等の公知の混合装置を用いて混合することにより得られる。また、耐火樹脂組成物は、溶剤により希釈する場合、耐火樹脂組成物の希釈液は、これらにさらに溶剤を加えて上記混合装置を用いて混合して得ればよい。
耐火樹脂組成物を希釈する際に使用する溶剤としては、特に限定されないが、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸n-ブチルなどのエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶媒、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒などが挙げられる。
耐火樹脂組成物の希釈液における固形分濃度は、例えば30~70質量%、好ましくは35~65質量%、より好ましく40~60質量%である。固形分濃度が下限値以上であると、効率的に発火抑制シートを形成することができる。また、上記上限値以下とすることで、樹脂を溶媒に溶解させ、かつ寝t伝導性物質、金属粉末、耐火性添加剤など溶媒に分散させやすくなる。
発火抑制シートは、耐火樹脂組成物を押出成形したり、耐火樹脂組成物の希釈液を剥離シートなどの基材に塗布にすることにより得ることができる。
(発火抑制シートの層構成)
本発明の発火抑制シートは、耐火樹脂組成物より形成される単層でもよいし、複数の耐火樹脂組成物により形成した層を積層した積層体であってもよい。複数の耐火樹脂組成物を用いて積層体を作製する場合、該複数の耐火樹脂組成物は同一であっても異なってもよいが、該複数の耐火樹脂組成物のうち少なくとも1つ以上の耐火樹脂組成物が、上記した樹脂、熱伝導性物質、金属粉末、及び耐火性添加剤を含むことが好ましい。さらに、該複数の耐火樹脂組成物のすべての組成物が、上記した樹脂、熱伝導性物質、金属粉末、及び耐火性添加剤を含むことがより好ましい。耐火樹脂組成物に含まれる成分の好適な種類及び含有量は上記した通りである。
発火抑制シートが、複数の耐火樹脂組成物により形成した層を積層した積層体の場合は、該積層体は、個々の耐火樹脂組成物により形成した層を熱プレスなどにより積層して得てもよいし、複数の耐火樹脂組成物を共押出することにより得てもよい。
発火抑制シートの厚みは、電子機器内部に使用し易くする観点から、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることがさらに好ましく、そして、発火抑制の観点から10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。
(粘着材)
発火抑制シートは粘着材を備えてもよく、該粘着材により発火抑制シートが蓄電池セルの主面又はカバーに固定されてもよい。粘着材は、発火抑制シートの片面のみに設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。
粘着材は、粘着剤層からなるものでもよいし、基材の両表面に粘着剤層が設けられた両面粘着テープでもよいが、粘着剤層からなることが好ましい。なお、両面粘着テープは、一方の粘着剤層が発火抑制シートに貼り合わせられることで、発火抑制シート上に積層されて粘着材を構成することになる。
粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられるが、これらに限定されない。粘着材の厚さは、特に限定されないが、例えば、3~500μm、好ましくは10~200μmである。
また、両面粘着テープに使用する基材は、樹脂フィルム、不織布など、両面粘着テープに使用される公知の基材を使用するとよい。
[蓄電池セル]
本発明における蓄電池セルは、式(1)のSが1000以下となる電池体積容量密度I、電池重量容量密度m、及び電池起電力nを有している。
蓄電池セルは、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、及び負極端子等が外装部材に収容された蓄電池の構成単位を指す。蓄電池セルの形状は特に限定されないが、角型、ラミネート型などが挙げられ、ラミネート型が好ましい。
蓄電池セルがが角型の場合、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、負極端子、絶縁材、及び安全弁等が外装缶に収容されている蓄電池の構成単位を指す。蓄電池セルがラミネート型の場合、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、及び負極端子等が外装フィルムに収容されている蓄電池の構成単位を指す。ラミネート型の蓄電池セルでは、2枚の外装フィルムの間、或いは、1枚の外装フィルムが例えば2つ折りで折り畳まれ、その折り畳まれた外装フィルムの間に、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、及び負極端子等が配置され、外装フィルムの外縁部がヒートシールによって圧着されている。外装フィルムとしては例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されたアルミニウムフィルム等が挙げられる。
また、蓄電池セルは、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケル・水素電池、リチウム・硫黄電池、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル・鉄電池、ニッケル・亜鉛電池、ナトリウム・硫黄電池、鉛蓄電池、空気電池等の二次電池であり、これらの中でもリチウムイオン電池が好ましい。
[電子機器]
本発明における電子機器としては、特に限定されないが、例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコン、タブレット型パソコンなどが挙げられる。
本発明における電子機器は、上記した通り、蓄電池セルと、前記蓄電池セルの主面に対向して配置されたカバーと、発火抑制シートをとを備え、発火抑制シートの発火抑制指数をB、前記蓄電池セルの発火指数をFとにより定義されるSの値が一定範囲内となっており、これにより電子機器の蓄電池セルの熱暴走時の発火を抑制することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
各物性の測定方法及び評価方法は以下のとおりである。
<熱伝導率>
ASTM E1461規格に準拠して、レーザーフラッシュ法熱伝導率測定装置(NETZSCH社製 LFA447)により、室温大気中において、面方向の熱伝導率を測定した。測定は、発火抑制シートの両面に対して行い、熱伝導率の値が高い方を、熱伝導率xとした。
<引張破断強度>
発火抑制シートを85℃85%RHで1,000時間熱処理した後、幅25mm×長さ100mmにカットして、試験片を作製した。得られた試験片について、引張試験機(オリエンテック社製テンシロン「RTC-1310A」)を用いて、23℃において、サンプルのチャック間距離80mm、ロードセル条件500N、速度10mm/minの条件で引張試験を行うことにより高温耐久後の引張破断強度yを測定した。
<アスペクト比>
発火抑制シートの断面を走査型電子顕微鏡により観察しアスペクト比を測定した。発火抑制シートに熱膨張性黒鉛が含まれている場合は該熱膨張性黒鉛のアスペクト比を、膨張化黒鉛が含まれている場合は該熱膨張化黒鉛のアスペクト比を、熱膨張性黒鉛及び膨張化黒鉛の両方が含まれている場合は平均アスペクト比を測定した。
<吸熱剤の熱分解開始温度の測定方法>
熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて測定した。測定条件は、室温から1000℃まで、昇温速度4℃/minで行った。吸熱剤重量10mgで測定した。得られたTG曲線から重量が減少し始める温度を吸熱剤の熱分解開始温度とした。
<吸熱剤の吸熱量の測定方法>
熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて測定した。測定条件は、室温から1000℃まで、昇温速度4℃/minで行った。吸熱剤重量10mgで測定した。得られたDTA曲線から吸熱量(凹部の面積)を算出した。
<バッテリー消火テスト>
各実施例及び比較例における発火抑制シートを蓄電池セルの主面に配置して、試験体を作製した。発火抑制シートは、両面テープで蓄電池セルの主面に固定した。なお、蓄電池セルとしては、スマートフォンに使用されるラミネート型のリチウムイオン電池を用いた。
各実施例及び比較例のバッテリー消火テストに使用したリチウムイオン電池の種類は表3,4に示すとおりである。
バッテリー消火テストにおいては、300℃に設定したホットプレート上に試験体を載せて火の放出から火が消されるまでの時間を評価した。消火時間が10秒以内であった場合を「PASS」、消火時間が10秒超又は消火しなかった場合を「FAIL」として評価た。消火時間が短い方が消火性能に優れていることを表す。
<背面カバー耐火テスト>
各実施例及び比較例における発火抑制シートを、スマートフォンに使用される背面カバー(6.4インチ、PC/PMMA)の内面側全面に配置した試験体としてのスマートフォンを組み立てた。発火抑制シートは、両面テープで背面カバーの内面側平坦部全面に貼り付けて固定した。なお上記スマートフォンは、各実施例及び比較例に応じて表3及び4に記載の種類のリチウムイオン電池を備えたものである。
背面カバー耐火テストでは、500℃に設定したホットプレート上に試験体を載せて火の放出から火が消されるまでの時間を評価した。消火時間が10秒以内であった場合を「PASS」、消火時間が10秒超又は消火しなかった場合を「FAIL」として評価た。消火時間が短い方が消火性能に優れていることを表す。
実施例、比較例で使用した各成分は以下のとおりである。
<樹脂>
・PVB:ポリビニルブチラール樹脂、重合度1,700、アセタール化度75mol%、アセチル基量3mol%、水酸基量22mol%
<難燃剤>
・亜リン酸アルミニウム:APA100、太平化学産業社製
・トリフェニルホスフェート:TPhP、東京化学工業株式会社製
<吸熱剤>
・水酸化アルミニウム:BF013、日本軽金属株式会社製、平均粒子径1μm、熱分解開始温度200℃、吸熱量1000J/g
・水酸化マグネシウム:キスマ10、協和化学工業社製、平均粒子径0.9μm、熱分解開始温度280℃、吸熱量1350J/g
<熱膨張性層状無機物>
・熱膨張性黒鉛:ADT-351、ADT社製
<熱伝導性物質>
・窒化ホウ素:UHP-S2、昭和電工株式会社製
・酸化アルミニウム:CB-P02、昭和電工株式会社製
・膨張化黒鉛:EC1500、伊藤黒鉛社製
<金属粉末>
・銅粉末:FMC-SB、古河ケミカルズ社製
<分散剤>
・ポリエーテル系分散剤:ED-400、楠本化成社製
<可塑剤>
・ジイソデシルフタレート(DIDP):試薬特級、東京化成社製
<溶媒>
・エタノール(EtOH):試薬特級、東京化成社製
・トルエン(PhMe):試薬特級、東京化成社製
・酢酸エチル(AcOEt):試薬特級、東京化成社製
(発火抑制シートA1、B1、C1、C2、X1、X2の製造)
表1に示した配合の樹脂、難燃剤、吸熱剤、熱膨張性層状無機物、熱伝導性物質、金属粉末、分散剤、可塑剤、及び溶媒をビーズミル(アイメックス社製「レディーミル」)にて60分間攪拌することにより、耐火樹脂組成物の希釈液(スラリー液)を用意した。該スラリー液を剥離シートの離型処理面に塗布し、60℃、24時間乾燥させて塗工成膜によりシート化した。得られたシートは、剥離シートから剥離した後に発火抑制シートとしてに用いた。
(発火抑制シートA2、X3の製造)
表1に示した配合の樹脂、難燃剤、吸熱剤、熱膨張性層状無機物、熱伝導性物質、金属粉末、分散剤、可塑剤、及び溶媒をビーズミル(アイメックス社製「レディーミル」)にて60分間攪拌した後、溶媒を気化させて耐火樹脂組成物を得た。得られた耐火樹脂組成物を一軸押出機に供給し、110℃で押出成形し、押出成形体を得た。そして、得られた押出成形体を圧延機で目的の厚みのシートに調整し、該シートを発火抑制シートとして用いた。
Figure 2022035833000003
各実施例及び比較例で使用した使用したリチウムイオン電池は、以下の表2に示すBattery1~5である。
Figure 2022035833000004
[実施例1~5、比較例1~3]
表3に記載の第1層(単層)を発火抑制シートとして用いて、上記した各種評価を行った。結果を表3、4に示した。
[実施例6~7、比較例4]
表3に記載の第1層、第2層、第3層をこの順に積層し、積層体である発火抑制シートを作製した。積層は熱プレス(110℃)により行った。なお、表3に示す第1層、第2層、及び第3層のそれぞれの厚みは熱プレス後の厚みを示した。該発火抑制シートを用いて、上記した各種評価を行った。なお、上記「バッテリー消火テスト」の際には、第1層の側をリチウムイオン電池の表面に配置して評価した。上記「背面カバー耐火テスト」の際には、第3層の側を背面カバーの内面に配置して評価した。結果を表3、4に示した。
Figure 2022035833000005
Figure 2022035833000006
発火抑制シートの発火抑制指数Bと、蓄電池セルの発火指数Fとで定められる式(1)のS[S=1/(B/F)]が所定の範囲内である実施例1~7は、バッテリー消火テスト、背面カバー消火テストの結果が良好であった。一方、式(1)のS[S=1/(B/F)]が所定の範囲から外れる比較例1~3は、バッテリー消火テスト及び背面カバー消火テストが悪い結果となった。
10 電子機器
11 カバー
11S カバーの内面
12 蓄電池セル
12S 蓄電池セルの主面
13 筐体
14 発火抑制シート

Claims (10)

  1. 蓄電池セルと、前記蓄電池セルの主面に対向して配置されたカバーと、前記蓄電池セルの主面及び前記カバーの内面の少なくともいずれかに接触する発火抑制シートとを備えた電子機器であって、前記発火抑制シートの発火抑制指数をB、前記蓄電池セルの発火指数をFとした場合に、以下の式(1)で表されるSが1000以下である、電子機器。
    S=1/(B/F) 式(1)
    式(1)において発火抑制指数Bは以下の式(2)、発火指数Fは以下の式(3)で表され、
    B=0.6x+0.3y+0.1z 式(2)
    F=(0.5I)×(0.3m)×(0.2n) 式(3)
    xは発火抑制シートの熱伝導率x(W/mK)であり、
    yは発火抑制シートの高温耐久後の引張破断強度y(MPa)であり、
    zは蓄電池セルの主面の面積に対する発火抑制シートの面積の比率zであり、
    Iは蓄電池セルの電池体積容量密度I(mAh/cm)であり、
    mは蓄電池セルの電池重量容量密度m(mAh/g)であり、
    nは蓄電池セルの電池起電力n(V)である。
  2. 前記発火抑制シートの厚みが100μm以下である、請求項1に記載の電子機器。
  3. 前記発火抑制シートが、樹脂を含有する耐火樹脂組成物から形成されたものである、請求項1又は2に記載の電子機器。
  4. 前記耐火樹脂組成物が熱伝導性物質を含む、請求項3に記載の電子機器。
  5. 前記熱伝導性物質が膨張化黒鉛を含有する、請求項4に記載の電子機器。
  6. 前記耐火樹脂組成物が金属粉末を含有する、請求項3~5のいずれかに記載の電子機器。
  7. 前記耐火樹脂組成物が、吸熱剤、難燃剤、及び熱膨張性層状無機物からなる群から選択される少なくとも1種の耐火性添加剤を含有する、請求項3~6のいずれかに記載の電子機器。
  8. 前記発火抑制シートの熱伝導率xが100~5000W/mKである、請求項1~7のいずれかに記載の電子機器。
  9. 前記発火抑制シートが粘着材を備えており、該粘着材により前記発火抑制シートが前記蓄電池セルの主面又は前記カバーに固定されている、請求項1~8のいずれかに記載の電子機器。
  10. 蓄電池セルと、前記蓄電池セルの主面に接触する発火抑制シートとを備えた蓄電池セル構造体であって、前記発火抑制シートの発火抑制指数をB、前記蓄電池セルの発火指数をFとした場合に、以下の式(1)で表されるSが1000以下である、蓄電池セル構造体。
    S=1/(B/F) 式(1)
    式(1)において発火抑制指数Bは以下の式(2)、発火指数Fは以下の式(3)で表され、
    B=0.6x+0.3y+0.1z 式(2)
    F=(0.5I)×(0.3m)×(0.2n) 式(3)
    xは発火抑制シートの熱伝導率x(W/mK)であり、
    yは発火抑制シートの高温耐久後の引張破断強度y(MPa)であり、
    zは蓄電池セルの主面の面積に対する発火抑制シートの面積の比率zであり、
    Iは蓄電池セルの電池体積容量密度I(mAh/cm)であり、
    mは蓄電池セルの電池重量容量密度m(mAh/g)であり、
    nは蓄電池セルの電池起電力n(V)である。

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