JP2021080382A - 筐体用熱膨張性耐火材、筐体用耐火シート、及び携帯電子機器用筐体 - Google Patents

筐体用熱膨張性耐火材、筐体用耐火シート、及び携帯電子機器用筐体 Download PDF

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Akihito Doi
彰人 土肥
倫男 島本
Tomoo Shimamoto
倫男 島本
秀康 中嶋
Hideyasu Nakajima
秀康 中嶋
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Abstract

【課題】バッテリーの温度上昇等に伴う熱暴走及び発火に対して、高い難燃性及び断熱性を有する携帯電子機器の筐体用熱膨張性耐火材を提供する。【解決手段】携帯電子機器の筐体用熱膨張性耐火材であって、樹脂と、熱膨張性化合物を含み、600℃に加熱したときの膨張倍率が1.5倍以上である、筐体用熱膨張性耐火材である。【選択図】なし

Description

本発明は、携帯電子機器の筐体に用いられる筐体用熱膨張性耐火材、筐体用耐火シート、及びこれらを用いた携帯電子機器用筐体に関する。
リチウム電池に代表される各種バッテリーは、内部短絡等が原因によりバッテリーが熱暴走し、発火や発煙等の不具合を生じることがある。このような不具合による被害を最小限に抑えるために、異常高温になったバッテリーの熱を周囲のバッテリー又はバッテリーを収容した筐体に伝え難くする方法が検討されている。
例えば、特許文献1には、外側の少なくとも一部が耐火性コーティングで覆われている電池セルが開示されており、耐火性コーティングがアブレーティブコーティング、膨張性コーティング又は吸熱性コーティングであること、ポリウレタン系コーティングが使用可能であることが開示されている。
特表2013−528911号公報
ところで、近年、携帯電話等の携帯電子機器のバッテリーなどでは、電池容量が高く、急激な温度上昇により熱暴走して発火しやすくなっており、高い難燃性及び断熱性が求められている。しかし、特許文献1の耐火性コーティングは、バッテリーに用いるもので発火が生じるとその形状を保持できずに、十分な難燃性及び断熱性を発揮することができない。
そこで、本発明は、例えばバッテリーの温度上昇等に伴う熱暴走及び発火に対して、高い難燃性及び断熱性を有する携帯電子機器の筐体用熱膨張性耐火材、及び携帯電子機器の筐体用耐火シートを提供することを課題とする。また、上記筐体用熱膨張性耐火材又は筐体用耐火シートを携帯電子機器の筐体として用いた際に、高い難燃性及び断熱性を発揮し得る携帯電子機器用筐体を提供する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、携帯電子機器の筐体用熱膨張性耐火材に熱膨張性化合物を使用し、かつこの耐火材の膨張倍率を一定値以上とすることで、高い難燃性及び断熱性を発揮できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記[1]〜[15]を要旨とする。
[1] 携帯電子機器の筐体用熱膨張性耐火材であって、樹脂と、熱膨張性化合物を含み、600℃に加熱したときの膨張倍率が1.5倍以上である、筐体用熱膨張性耐火材。
[2] 前記熱膨張性化合物が、熱膨張性層状無機物及び熱膨張性固体リン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種である[1]に記載の筐体用熱膨張性耐火材。
[3] 前記熱膨張性層状無機物が熱膨張性黒鉛である[2]に記載の筐体用熱膨張性耐火材。
[4] 前記熱膨張性固体リン系化合物が、低級リン酸類の金属塩である[2]又は[3]に記載の筐体用熱膨張性耐火材。
[5] 前記熱膨張性化合物の含有量が、樹脂100質量部に対して、10〜1500質量部である[1]〜[4]のいずれかに記載の筐体用熱膨張性耐火材。
[6] 前記熱膨張性化合物以外の固体難燃剤を含む[1]〜[5]のいずれかに記載の筐体用熱膨張性耐火材。
[7] 前記固体難燃剤の含有量が、樹脂100質量部に対して、10〜1000質量部である[1]〜[6]のいずれかに記載の筐体用熱膨張性耐火材。
[8] 前記固体難燃剤が、低融点ガラス、ポリリン酸化合物、メラミン系化合物、及び環状尿素化合物から選択される少なくとも1種である[6]又は[7]に記載の筐体用熱膨張性耐火材。
[9] 前記樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である[1]〜[8]のいずれかに記載の筐体用熱膨張性耐火材。
[10] 熱分解開始温度が800℃以下、吸熱量が300J/g以上である吸熱剤をさらに含む[1]〜[9]のいずれかに記載の筐体用熱膨張性耐火材。
[11] [1]〜[10]のいずれかに記載の筐体用熱膨張性耐火材のシート状物を含む筐体用耐火シート。
[12] 少なくともバッテリー収納部に収納されたバッテリーの外側主面を覆う領域で、かつ前記バッテリーの外側主面側に、[1]〜[10]のいずれかに記載の筐体用熱膨張性耐火材、又は、[11]に記載の筐体用耐火シートからなる熱膨張性耐火材層を備える携帯電子機器用筐体。
[13] 前記熱膨張性耐火材層の厚みが0.5mm以下である[12]に記載の携帯電子機器用筐体。
[14] 樹脂製である[12]又は[13]に記載の携帯電子機器用筐体。
[15] ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂の少なくともいずれか1種を含む樹脂製である[14]に記載の携帯電子機器用筐体。
本発明によれば、バッテリーの温度上昇等に伴う熱暴走及び発火に対して、高い難燃性及び断熱性を有する携帯電子機器の筐体用熱膨張性耐火材、及び携帯電子機器の筐体用耐火シートを提供することができる。また、上記筐体用熱膨張性耐火材又は筐体用耐火シートを携帯電子機器の筐体として用いた際に、高い難燃性及び断熱性を発揮し得る携帯電子機器用筐体を提供することができる。
携帯電子機器用筐体の一実施形態であって、その分解平面図である。 図1における前面ケースと背面ケースとを組み合わせた後のA−A断面を示す概略断面図である。
以下、本発明を実施形態を用いて詳細に説明する。
[筐体用熱膨張性耐火材及び筐体用耐火シート]
本発明の筐体用熱膨張性耐火材(以下、単に「耐火材」ということがある)は、樹脂と、熱膨張性化合物を含む。本発明の耐火材は、熱膨張性化合物を含有することで、バッテリーが熱暴走などして加熱されると、膨張することで断熱して、発火を抑制したり、発火が生じた場合に良好な断熱性を発揮したりすることができる。また、膨張により燃焼経路が塞がれることで、高い難燃性が発揮される。一方で、耐火材は、加熱される前の通常時は薄いため、スペース的な制約が多い携帯機器用バッテリーの周囲に配置させやすい。
本発明の耐火材は、600℃に加熱したときの膨張倍率が1.5倍以上となる。耐火材は、膨張倍率が1.5倍未満となると、バッテリーの熱暴走などにより高温に加熱されても十分に膨張することができず、発火抑制効果や、断熱性能を発揮することが難しくなる。また、本発明の耐火材は、その厚さを薄くしても、発火抑制効果及び断熱性能を十分に発揮させやすくするために、膨張倍率が3倍以上であることが好ましく、5倍以上がより好ましく、10倍以上がさらに好ましい。
また、耐火材の膨張倍率は、100倍以下が好ましく、50倍以下がより好ましい。これら上限値以下とすることで、熱膨張性化合物の含有量を適切にして、耐火材に一定量の樹脂を含有させることが可能になり、耐火材の機械的強度を良好にしやすくなる。また、膨張後の膨張残渣の硬さを良好にしやすくなり、耐火性、断熱性などを優れたものとしやすい。
なお、膨張倍率は、後述する実施例に示すように、耐火材を600℃で3分間加熱したときに、膨張後の膨張残渣の厚さを、膨張前の耐火材の厚さで除して算出される。耐火材を加熱する際には、高さが耐火材の厚さよりも十分に大きいホルダー内に設置して加熱し、また、ホルダー内に耐火材を設置する際には、耐火材をホルダーの寸法に合わせてカットするとよい。
以下、耐火材に使用される各成分について詳細に説明する。
<樹脂>
耐火材に使用される樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びエラストマー樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。
エラストマー樹脂としては、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−プロピレンゴム、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
本発明においては、これら樹脂のうち1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、及びエポキシ樹脂から選択される少なくとも1種が好ましい。これらのなかでは、押出成形による成形性を確保する観点からは、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
また、熱膨張性化合物などの添加剤を比較的大量に配合しても、成形性、及び、引張強度などの機械的強度を確保しやすい観点からは、ポリビニルアセタール樹脂、及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種がより好ましく、ポリビニルアセタール樹脂がさらに好ましい。
ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂のメルトフローレートは、1.0g/10min以上であることが好ましい。熱可塑性樹脂のメルトフローレートを1.0g/10min以上とすると、熱膨張性化合物、さらには、後述する固体難燃剤、吸熱剤の分散性が良好となり、これらを多量に配合しても、押出成形などにおけるシート成形性が良好に維持できる。メルトフローレートは、2.4g/10min以上がより好ましく、10g/10min以上がさらに好ましく、20g/10min以上がよりさらに好ましい。メルトフローレートをこれら下限値以上とすることで、熱膨張性化合物、固体難燃剤、吸熱剤などの分散性を向上させてこれらをより多量に配合しやすくなる。
また、上記熱可塑性樹脂のメルトフローレートは、40g/10min以下が好ましく、35g/10min以下がより好ましい。
なお、メルトフローレートは、JIS K 7210−2:1999に従って190℃、2.16kg荷重の条件によって測定されたものである。
(ポリオレフィン樹脂)
ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、及びポリペンテン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂等が挙げられるが、これらのなかでは、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂が好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂としては、非架橋型のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂であってもよいし、また、高温架橋型のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂であってもよい。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物、エチレン−酢酸ビニルの加水分解物などのようなエチレン−酢酸ビニル変性体樹脂も用いることができる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂は、JIS K 6730「エチレン・酢酸ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定される酢酸ビニル含量が好ましく10〜50質量%、より好ましくは25〜45質量%である。酢酸ビニル含量をこれら下限値以上とすることで、熱膨張性化合物などの添加剤への接着性が高くなる。また、酢酸ビニル含量をこれら上限値以下とすることで、耐火樹脂層の破断強度などの機械強度が良好となる。
(ポリ塩化ビニル樹脂)
ポリ塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル単独重合体であってもよいし、塩化ビニル系共重合体でよい。塩化ビニル系共重合体は、塩化ビニル及び塩化ビニルと共重合可能な不飽和結合を有する単量体の共重合体であって、塩化ビニル由来の構成単位を50質量%以上含有する。
塩化ビニルと共重合可能な不飽和結合を有する単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリロニトリル、スチレン等の芳香族ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
また、ポリ塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニル系共重合体などを塩素化したポリ塩素化塩化ビニル樹脂でもよい。
ポリ塩化ビニル樹脂は、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以上
を併用してもよい。
(ポリビニルアセタール樹脂)
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂であれば特に限定されないが、ポリビニルブチラール樹脂が好適である。ポリビニルブチラールを用いることで、耐火材における樹脂の量が比較的少ない場合でも、機械的強度を高くすることが可能となる。そのため、耐火材の厚さを薄くしても、一定の機械的強度を確保することができる。
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量は、好ましくは20〜40モル%である。水酸基量を20モル%以上とすることで、ポリビニルアセタール樹脂の極性が高くなり、熱膨張性化合物、固体難燃剤、吸着剤などに対する接着力が強くなり、耐火材の機械的強度が向上しやすくなる。また、水酸基量を40モル%以下とすることで、耐火材が硬くなりすぎて引張強度などの機械的強度が低下することを防止する。上記水酸基量は、より好ましくは22モル%以上である。また、上記水酸基量は、より好ましくは37モル%以下、さらに好ましくは35モル%以下、よりさらに好ましくは33モル%以下である。
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、好ましくは40〜80モル%である。アセタール化度を上記範囲内とすることで、上記する水酸基量を所望の範囲内として、耐火材の機械的強度が向上しやすくなる。アセタール化度は、より好ましくは55モル%以上であり、さらに好ましくは65モル%以上、よりさらに好ましくは67モル%以上であり、また、より好ましくは76モル%以下である。
また、上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル基量は、好ましくは0.1〜30モル%である。アセチル基量がこの範囲内であると、耐湿性に優れ、また、上記する水酸基量を所望の範囲内として、耐火材の機械的強度が向上しやすくなる。これら観点から、アセチル基量は、0.2モル%以上がより好ましく、0.5モル%以上がさらに好ましく、また、15モル%以下がより好ましく、7モル%以下がさらに好ましい。
なお、アセタール化度、水酸基量、及びアセチル基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定し、また算出することができる。
ポリビニルアセタール樹脂の重合度は、好ましくは200〜3000である。重合度をこれら範囲内にすることで、熱膨張性化合物、固体難燃剤、吸着剤などを適切に耐火材中に分散させることがきる。重合度は、より好ましくは250以上、さらに好ましくは300以上である。
ポリビニルアセタール樹脂の重合度を低くすると粘度も下がり、耐火材中に熱膨張性化合物、固体難燃剤、吸着剤などを分散しやすくなり、耐火材の機械的強度が向上する。そのような観点から、ポリビニルアセタール樹脂の重合度は、より好ましくは1500以下、さらに好ましくは1000以下、よりさらに好ましくは900以下である。
なお、ポリビニルアセタール樹脂の重合度は、JIS K6728に記載の方法に基づいて測定した粘度平均重合度をいう。
ポリビニルアセタール樹脂の10質量%エタノール/トルエン粘度は、好ましくは5mPa・s以上、より好ましくは10mPa・s以上であり、さらに好ましくは15mPa・s以上である。また、10質量%エタノール/トルエン粘度は、好ましくは500mPa・s以下、より好ましくは300mPa・s以下であり、更に好ましくは200mPa・s以下である。ポリビニルアセタール樹脂の10質量%エタノール/トルエン粘度を上記のとおりにすることにより、耐火材中に熱膨張性化合物、固体難燃剤、吸着剤などを分散しやすくなり、耐火材の機械的強度が向上する。
なお、10質量%エタノール/トルエン粘度は、次のように測定した値である。エタノール/トルエン(重量比1:1)混合溶剤150mlを三角フラスコにとり、これに秤量した試料を加え、樹脂濃度を10wt%とし、20℃の恒温室にて振とう溶解する。その溶液を20℃に保持しBM型粘度計を用いて粘度を測定して、10質量%エタノール/トルエン粘度を求めることができる。
上記アルデヒドは特に限定されないが、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドは特に限定されず、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−バレルアルデヒドが好ましく、n−ブチルアルデヒドがより好ましい。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーを含むモノマー成分を重合したものである。なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」とは、「アクリル酸アルキルエステル、又はメタクリル酸アルキルエステル」を意味する。他の類似の用語も同様である。
本発明における(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーは、(メタ)アクリル酸と脂肪族アルコールとのエステルであって、前記脂肪族アルコールのアルキル基の炭素数は、例えば1〜18、好ましくは1〜14、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜8である。
具体的な(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、アクリル樹脂を得るためのモノマー成分としては、上記した(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの他に、極性基含有モノマーを含んでもよい。
極性基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、及びイタコン酸等のビニル基を含有するカルボン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、及びポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等の水酸基を有するビニルモノマー、(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルラウリロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、及びジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等の窒素含有ビニルモノマーが挙げられる。
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、5〜80℃であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)をこれら範囲内とすることで、成形性、柔軟性などを良好にしつつ、耐火材に一定の機械的強度を付与することができる。これら観点から、アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、15〜70℃であることが好ましく、25〜60℃であることがさらに好ましい。なお、アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、使用するモノマー成分の種類、量を適宜選択することで調整できる。
なお、アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は例えば示差熱走査熱量分析計(DSC)により測定できる。
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの重合体が好ましい。具体的には、アルキル基の炭素数が1〜14である(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの重合体が好ましく、アルキル基の炭素数が1〜10である(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの重合体がより好ましく、アルキル基の炭素数が1〜8である(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの重合体がさらに好ましい。アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの単独重合体であってもよいし、2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの共重合体であってもよい。具体的な好適なアクリル樹脂としては、イソブチルメタクリレートの単独重合体、イソブチルメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合体などが挙げられる。アクリル樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アクリル樹脂の重量平均分子量は、熱膨張性化合物、固体難燃剤、吸着剤などを適切に耐火材中に分散させることができ、耐火材の機械強度を向上させる観点から、10,000〜300,000が好ましい。また、これら観点から、アクリル樹脂の重量平均分子量は、30,000〜250,000がより好ましく、60,000〜200,000が更に好ましい。なお、アクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。GPC法によって重量平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF−804(昭和電工社製)等が挙げられる。
(エポキシ樹脂)
本発明で用いられるエポキシ樹脂は、特に限定されないが、例えば、エポキシ化合物単独、又は、主剤であるエポキシ化合物と、硬化剤とからなるものが挙げられる。エポキシ化合物は、エポキシ基を有する化合物であり、具体的には、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型が例示される。グリジシルエーテル型は、2官能でもよいし、3官能以上の多官能でもよい。また、グリシジルエステル型も同様である。エポキシ化合物は、架橋度を調整するためなどに1官能のものを含んでもよい。これらの中では、2官能のグリシジルエーテル型が好ましい。
上記2官能のグリシジルエーテル型のエポキシ化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール型、ポリプロピレングリコール型などのアルキレングリコール型、ネオペンチルグリコール型、1、6−ヘキサンジオール型、水添ビスフェノールA型等の脂肪族エポキシ化合物が例示される。さらには、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、エチレンオキサイド−ビスフェノールA型、プロピレンオキサイド−ビスフェノールA型などの芳香族環を含む芳香族エポキシ化合物が挙げられる。これらの中では、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型などの芳香族エポキシ化合物が好ましい。
上記グリシジルエステル型のエポキシ化合物としては、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸型、テトラヒドロ無水フタル酸型、ダイマー酸型、p−オキシ安息香酸型等のエポキシ化合物が例示される。
3官能以上のグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、DPPノボラック型、ジシクロペンタジエン・フェノール型等が例示される。
これらのエポキシ化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化剤としては、重付加型又は触媒型のものが用いられる。重付加型の硬化剤としては、例えば、ポリアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリフェノール系硬化剤、ポリメルカプタン等が挙げられる。また、上記触媒型の硬化剤としては、例えば、3級アミン、イミダゾール類、ルイス酸錯体等が例示される。これら硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
耐火材における樹脂の含有量は、耐火材全量基準で、例えば5〜90質量%であり、好ましくは10〜85質量%、より好ましくは30〜75質量%、さらに好ましくは40〜65質量%、最も好ましくは45〜60質量%である。これら下限値以上であると、熱膨張性化合物、固体難燃剤、吸熱剤などの耐火材における分散性が向上し、引張強度などの耐火材の機械的強度や成形性が高くなりやすい。また、上限値以下であると、耐火材の耐火性、断熱性能が向上しやすくなる。
<熱膨張性化合物>
本発明で使用する熱膨張性化合物は、耐火材の膨張倍率が上記した所定値以上となるように、加熱されることで一定倍以上に膨張する化合物である。
熱膨張性化合物の膨張度は、好ましくは5ml/g以上である。5ml/g以上とすることで、適切な量の熱膨張性化合物により、耐火材の膨張倍率を上記した所定値以上とすることが可能である。また、耐火性、断熱性能を向上させる観点から、熱膨張性化合物の膨張度は、20ml/g以上がより好ましく、100ml/g以上がさらに好ましく、150ml/g以上がよりさらに好ましい。また、熱膨張性化合物の膨張度は、好ましくは400ml/g以下、より好ましくは300ml/g以下、さらに好ましくは250ml/g以下である。熱膨張性化合物の膨張度をこれら上限値以下とすることで、残渣後の機械的強度を高めやすなる。
本発明で使用する熱膨張性化合物は、膨張開始温度が好ましくは95℃以上である。膨張開始温度が95℃以上であると、バッテリーが暴走したときや、バッテリーが発火したとき以外に誤って耐火材が膨張することを防止できる。これら観点から、熱膨張性化合物の膨張開始温度は、より好ましくは105℃以上、さらに好ましくは115℃以上である。また、熱膨張性化合物の膨張開始温度は、耐火材が600℃において膨張できるように600℃未満であるとよいが、好ましくは450℃以下である。450℃以下とすることで、バッテリーが発火した場合や、熱暴走した際に速やかに膨張して、耐火性、断熱性能を高めることができる。また、熱暴走した際に速やかに膨張して耐火性を高める観点から、上記膨張開始温度は200℃以下がより好ましく、さらに好ましくは140℃以下である。
なお、熱膨張性化合物の膨張開始温度は、熱膨張性化合物を25℃から5℃/分の昇温速度で昇温させたときに、昇温開始前の体積の1.1倍以上に膨張したときの温度のことである。熱膨張性黒鉛の体積を計測する温度の間隔は特に制限されず、例えば、5℃上昇するごとに体積を計測すればよい。また、膨張度は、熱膨張性化合物を1000℃で10秒間保持した後の、単位質量(g)あたりの体積(ml)のことである。
本発明で使用する熱膨張性化合物は、熱膨張性層状無機物、熱膨張性固体リン系化合物、及び熱膨張性マイクロカプセルから選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらのなかでは、熱膨張性層状無機物及び熱膨張性固体リン系化合物から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、少なくとも熱膨張性層状無機物を使用することがさらに好ましい。また、熱膨張性層状無機物及び熱膨張性固体リン系化合物から選択される少なくとも1種と熱膨張性マイクロカプセルと組み合わせてもよい。
また、熱膨張性層状無機物及び熱膨張性固体リン系化合物の少なくともいずれかと、熱膨張性マイクロカプセルとの組み合わせにより、難燃性と断熱性を段階的により向上させることができる。すなわち、低温側で熱膨張性マイクロカプセルによる膨張を行って難燃性と断熱性を付与し、さらに高温側で熱膨張性層状無機物又は熱膨張性固体リン系化合物によりさらなる膨張を行って難燃性と断熱性を段階的により向上させることができる。
(熱膨張性層状無機物)
熱膨張性層状無機物は、加熱時に膨張する従来公知の物質であり、例えば、バーミキュライト、熱膨張性黒鉛などが挙げられ、中でも熱膨張性黒鉛が好ましい。熱膨張性層状無機物としては、粒子状やりん片状のものを用いてもよい。熱膨張性層状無機物、特に熱膨張性黒鉛は、上記のとおり膨張度を高く(例えば、100ml/g以上、さらには150ml/g以上など)することが可能であり、加熱膨張時に大容量の空隙を形成できる。また、膨張開始温度を低く(例えば、200℃以下、さらには140℃以下など)することができる。そのため、耐火材の耐火性、断熱性能を優れたものにすることができる。
熱膨張性黒鉛は、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、無機酸と、強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。無機酸としては濃硫酸、硝酸、セレン酸等が挙げられる。強酸化剤としては濃硝酸、過硫酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等が挙げられる。上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和処理してもよい。
熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。熱膨張性黒鉛の粒度が前記範囲内であると、膨脹して大容量の空隙を作りやすくなるため耐火性が向上する。また、樹脂への分散性も向上する。
熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比は、2以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比の上限は特に限定されないが、熱膨張性黒鉛の割れ防止の観点から、1,000以下であることが好ましい。熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比が2以上であることにより、膨張して大容量の空隙を作りやすくなるため難燃性が向上する。
熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比は、10個の熱膨張性黒鉛について、それぞれ最大寸法(長径)及び最小寸法(短径)測定し、最大寸法(長径)を最小寸法(短径)で除した値の平均値を平均アスペクト比とする。熱膨張性黒鉛の長径及び短径は、例えば、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて測定することができる。
(熱膨張性固体リン系化合物)
熱膨張性固体リン系化合物は、室温(25℃)及び常圧(1気圧)下で固体でありリン原子を有し、かつ5ml/g以上の膨張度を有する化合物である。熱膨張性固体リン系化合物の膨張度は、好ましくは20ml/g以上である。
熱膨張性固体リン系化合物の膨張度は、上記の上限値以下であればよいが、通常は熱膨張性層状無機物よりも低くなり、典型的には100ml/g以下である。熱膨張性固体リン系化合物は、リン原子を有することで難燃性を有するものであり、断熱性能、耐火性を良好にしやすい。また、後述する通り、熱膨張性層状無機物と併用することで、膨張残渣をメッシュ状となった状態に保持しやすくなり、断熱性能及び耐火性を向上させやすい。
熱膨張性固体リン系化合物としては、低級リン酸類の金属塩であり、かつ膨張度が上記のとおり5ml/g以上となるものが挙げられる。「低級リン酸類」は、無機リン酸類のうち、縮合していない、つまり高分子化していない無機リン酸を指す。すなわち、無機リン酸類は、その分子中におけるリン原子が1つとなるものである。低級リン酸類としては第一リン酸、第二リン酸、第三リン酸、メタリン酸、亜リン酸、次亜リン酸等が挙げられる。金属塩に使用される金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表3B族金属、遷移金属などのいずれでもよい。これらのなかでは、代表的には、亜リン酸の金属塩であり、具体的な化合物は、亜リン酸アルミニウムである。亜リン酸アルミニウムは、膨張度が高くなり、耐火性、断熱性を向上させやすくなる。
熱膨張性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(熱膨張性マイクロカプセル)
熱膨張性マイクロカプセルは、外殻樹脂の内部に低沸点溶剤等の揮発性物質が内包されたものであり、加熱により外殻樹脂が軟化し、内包された揮発性物質が揮発ないし膨張するため、その圧力で外殻が膨張して粒子径が大きくなるものである。熱膨張性マイクロカプセルは膨張後に形成される気泡による断熱効果を発揮するため、さらなる断熱性の向上が期待できる。
熱膨張性マイクロカプセルの外殻は、熱可塑性樹脂から形成されることが好ましい。熱可塑性樹脂は、エチレン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ブタジエン、クロロプレン等のビニル重合体およびこれらの共重合体、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。中でも、内包された揮発性物質が透過しにくい点からアクリロニトリルの共重合体が好ましい。熱膨張性マイクロカプセルの内部に内包される揮発性物質としては、プロパン、プロピレン、ブテン、ノルマルブタン、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、ノルマルペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭素数3〜7の炭化水素、塩化メチル、メチレンクロリド等のメタンのハロゲン化物、CCl3F、CCl22等のクロロフロオロカーボン、テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン等のテトラアルキルシラン、石油エーテル等から選択される1種又は2種以上の低沸点液体が使用される。
熱膨張性マイクロカプセルの好適例としては、アクリロニトリルと塩化ビニリデンの共重合体を外殻樹脂とし、イソブタン等の炭素数3〜7の炭化水素を内包したマイクロカプセルが挙げられる。
熱膨張性マイクロカプセルを使用する場合には、上記した熱膨張性固体リン系化合物及び後述する固体難燃剤から選択される少なくとも1種と併用することが特に好ましい。熱膨張性マイクロカプセルは、これらと併用することで高温下でも膨張した状態に維持され、600℃に加熱した際に高い膨張倍率を達成できる。
また、本発明の一態様において、熱膨張性層状無機物及び熱膨張性固体リン系化合物の両方を使用することがより好ましい。熱膨張性化合物としてこれら両方の化合物を使用すると、膨張残渣がメッシュ状となった状態に保持しやすくなり、可燃性ガスや火炎を外部に放散しつつ断熱することができ、断熱性、耐火性に優れる。本発明では、これら観点から、特に、熱膨張性黒鉛と、亜リン酸アルミニウムとを組み合わせて使用することが好ましい。
熱膨張性化合物の含有量は、樹脂100質量部に対して、10〜1500質量部であることが好ましい。10質量部以上とすることで、耐火材の膨張倍率を所定値以上にすることができる。また、1500質量部以下とすることで、耐火材の機械的強度及び成形性、並びに膨張後の膨張残渣の機械的強度を良好にしやすい。
これら観点から、熱膨張性化合物の含有量は、20質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましく、50質量部以上がよりさらに好ましく、また、500質量部以下がより好ましく、250質量部以下がさらに好ましく、130質量部以下がよりさらに好ましい。
また、上記のとおり、本発明の一態様において、熱膨張性層状無機物と熱膨張性固体リン系化合物の両方を使用することが好ましいが、両方を使用する場合、これらの合計量は、上記含有量の範囲のなかでも、40質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましく、80質量部以上がよりさらに好ましい。また、500質量部以下がより好ましく、250質量部以下がさらに好ましく、130質量部以下がよりさらに好ましい。
また、これらの含有量の質量比(熱膨張性層状無機物/熱膨張性固体リン系化合物)は、2/8〜8/2が好ましく、3/7〜7/3がより好ましく、4/6〜6/4がさらに好ましい。これら範囲内とすることで、メッシュ状となった膨張残渣の硬度が高く保持され、耐火性、断熱性がより一層向上しやすくなる。
<固体難燃剤>
本発明の耐火材は、上記熱膨張性化合物以外の固体難燃剤を含有することが好ましい。固体難燃剤は、室温及び常圧で固体である難燃剤である。固体難燃剤としては、低融点ガラス、熱膨張性固体リン系化合物以外のリン系化合物、メラミン系化合物、及び環状尿素化合物などの窒素含有難燃剤などが挙げられる。
固体難燃剤は、これらから選択される1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明の耐火材は、上記した熱膨張性化合物に加えて固体難燃剤を含有することで、膨張残渣がメッシュ状となった状態で保持されやすく、可燃性ガスや火炎を外部に放散しつつ断熱することができ、断熱性、耐火性が良好になる。
(低融点ガラス)
固体難燃剤として使用する低融点ガラスは、加熱されると軟化して溶融状態となり、無機バインダーとして作用し、耐火材の機械的強度を向上させる効果を有する。低融点ガラスは、具体的には1000℃以下の温度で軟化又は溶融するガラスを意味し、低融点ガラスの軟化温度は200〜900℃が好ましく、より好ましくは300〜800℃、さらに好ましくは300〜600℃である。なお、軟化温度は、例えばDTAの変曲点から測定した値である。
上記低融点ガラスとしては、ケイ素、アルミニウム、ホウ素、リン、亜鉛、鉄、銅、チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデン、タリウム、アンチモン、錫、カドミウム、砒素、鉛、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン、カルコゲンよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上の元素と酸素からなるガラスが挙げられ、単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。低融点ガラスは、ガラスフリットなどの粒子状などであるとよい。
上記低融点ガラスとしては、日本琺瑯釉薬社製、商品名「4020」(リン酸アルミニウム塩系低融点ガラス、軟化温度:380℃)、日本琺瑯釉薬社製、商品名「4706」(ホウケイ酸塩系低融点ガラス、軟化温度:610℃)、旭テクノグラス社製、商品名「FF209」(ホウ酸リチウム塩系低融点ガラス、軟化温度:450℃)等が市販されている。
(リン系化合物)
固体難燃剤として使用されるリン系化合物は、リン原子を有する化合物であり、例えば、ポリリン酸化合物が挙げられる。ポリリン酸化合物としては、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミドなどが挙げられ、これらのなかではポリリン酸アンモニウムが好ましい。また、低級リン酸類の金属塩であって、膨張度が5ml/g未満となるものであってよい。
(窒素含有難燃剤)
窒素含有難燃剤は、窒素原子を有する難燃剤であり、メラミン系化合物、環状尿素化合物などが挙げられる。窒素含有難燃剤は、後述するようにメラミン骨格、環状尿素などの窒素原子を含有する基本骨格を有する難燃剤であればリン原子をさらに含有してもよい。
メラミン系化合物としては、メラミン骨格、メラム、メレムなどのメラミン誘導体の骨格を有する化合物が挙げられる。具体的には、ピロリン酸メラミン、オルトリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、ポリメタリン酸メラミン、硫酸メラミン、ピロ硫酸メラム、有機スルホン酸メラム、有機ホスホン酸メラミン、有機ホスフィン酸メラミン、メラミンシアヌレート及びホウ酸メラミンなどが挙げられる。
固体難燃剤としては、上記した中でも、低融点ガラス、ポリリン酸化合物、メラミン系化合物、環状尿素化合物から選択される少なくとも1種であることが好ましく、より好ましくは低融点ガラス、ポリリン酸化合物から選択される少なくとも1種である。これらを使用することで、膨張残渣をメッシュ状に保持し、かつ膨張残渣の硬度を高くして断熱性、耐火性を向上しやすくなる。
また、固体難燃剤の具体的な好適な化合物は、低融点ガラス、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミド、ピロリン酸メラミン、オルトリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、ポリメタリン酸メラミン、硫酸メラミン、ピロ硫酸メラム、有機スルホン酸メラム、有機ホスホン酸メラミン、有機ホスフィン酸メラミン、メラミンシアヌレート及びホウ酸メラミンから選択される少なくとも1種であり、より好ましくは低融点ガラス、ポリリン酸アンモニウムから選択される少なくとも1種であり、特に好ましくはポリリン酸アンモニウムである。
なお、環状尿素化合物としては、エチレン尿素(2−イミダゾリジノン)、プロピレン尿素(テトラヒドロ−2−ピリミジノン)、ヒダントイン(2,5−イミダゾリジンジオン)、シアヌル酸〔1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン〕、及びビオルル酸〔5−(ヒドロキシイミノ)ピリミジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン〕などが挙げられる。
耐火材における固体難燃剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、10〜1000質量部であることが好ましい。10質量部以上とすることで、耐火材の膨張残渣がメッシュ状に保持されやすく、可燃ガス、火炎などを外部に放散して耐火性、断熱性が向上する。また、1000質量部以下とすることで、耐火材の機械的強度及び成形性が良好になりやすい。さらに、含有量を上記範囲内とすることで、膨張残渣の硬さを高くでき、断熱性、耐火性を優れたものとしやすい。これら観点から、上記固体難燃剤の含有量は、20質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましく、また、500質量部以下がより好ましく、150質量部以下がさらに好ましく、100質量部以下がよりさらに好ましい。
また、熱膨張性化合物に対する、固体難燃剤の含有量の質量比(固体難燃剤/熱膨張性化合物)は、2/8〜8/2が好ましく、3/7〜7/3がより好ましく、4/6〜6/4がさらに好ましい。これら範囲内とすることで、メッシュ状となる膨張残渣の機械的強度が良好となり、耐火性、断熱性がより一層向上しやすくなる。
なお、耐火材が、上記固体難燃剤を含有する場合、熱膨張性化合物は、熱膨張性層状無機物と熱膨張性固体リン系化合物の両方を含有してもよいが、熱膨張性層状無機物と熱膨張性固体リン系化合物のいずれか一方のみを含有することで、十分な耐火性、断熱性能が得られる。
耐火材が固体難燃剤を含有する場合の特に好ましい組み合わせは、熱膨張性化合物として熱膨張性黒鉛を使用し、かつ固体難燃剤としてポリリン酸化合物及び低融点ガラスから選択される少なくとも1種を使用する。また、膨張性化合物として亜リン酸アルミニウムなどの低級リン酸類を使用し、かつ固体難燃剤としてポリリン酸化合物から選択される少なくとも1種を使用する。
耐火材が熱膨張性化合物と固体難燃剤を有する場合、耐火材における熱膨張性化合物と固体難燃剤の合計量は、樹脂100質量部に対して、20〜1500質量部が好ましく、50〜1000質量部がより好ましく、80〜300質量部がさらに好ましく、80〜130質量部がよりさらに好ましい。熱膨張性化合物と固体難燃剤の合計量を上記下限値以上とすると、耐火材の断熱性、耐火性を向上させやすい。また、上記上限値以下とすると、耐火材の機械的強度や成形性を向上させやすい。
<吸熱剤>
本発明の耐火材は、さらに吸熱剤を含有してもよい。吸熱剤としては、熱分解開始温度が800℃以下、吸熱量が300J/g以上である吸熱剤が挙げられる。吸熱剤は、熱分解開始温度、及び吸熱量のいずれかが上記範囲内となると、バッテリーなどが発火した場合に速やかに断熱でき、断熱性などをより一層良好にできる。
吸熱剤の熱分解開始温度は、500℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましく、300℃以下がさらに好ましい。吸熱剤の熱分解開始温度がこれら上限値以下とすることで発火時に速やかに吸熱剤が分解し、迅速に断熱することが可能になる。また、吸熱剤の熱分解開始温度は、例えば50℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。
なお、熱分解開始温度は、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
前記吸熱剤の吸熱量は、好ましくは500J/g以上、より好ましくは600J/g以上、さらに好ましくは900J/g以上である。吸熱剤の吸熱量が上記範囲内であると、熱の吸収性が向上するため、耐火性がより良好となる。前記吸熱剤の吸熱量は、通常、4000J/g以下、好ましくは3000J/g以下、さらに好ましくは2000J/g以下である。
なお、吸熱量は熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
吸熱剤は、平均粒子径が0.1〜90μmであるものが好ましい。平均粒子径が上記範囲内とすることで、樹脂中に吸熱剤を均一に分散でき、多量に配合させることも可能になる。これら観点から、吸熱剤の平均粒子径は、0.5〜60μmがより好ましく、0.8〜40μmがさらに好ましく、0.8〜10μmがよりさらに好ましい。吸熱剤の平均粒子径が上記範囲内であると、耐火材における吸熱剤の分散性が向上し、吸熱剤を樹脂中に均一に分散させたり、樹脂に対する吸熱剤の配合量を多くしたりすることができる。
吸熱剤としては、上記した熱分解開始温度、吸熱量を満たせば特に制限はないが、水和金属化合物が好ましくは使用できる。水和金属化合物は、加熱により分解して水蒸気を発生し、吸熱及び消火をする効果を有する化合物である。
水和金属化合物としては、金属水酸化物、又は金属塩の水和物などが挙げられ、中でも金属水酸化物が好ましい。また、金属水酸化合物と金属塩の水和物との組み合わせも好ましい。金属水酸化合物を使用することで、消火性能を向上させやすくなる。
金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。金属塩の水和物としては、例えば2ZnO・3B・3.5HOで表されるホウ酸亜鉛の水和物、硫酸カルシウムの水和物(例えば、2水和物)、硫酸マグネシウムの水和物(例えば、7水和物)などの硫酸金属塩の水和物などが挙げられる。また、カオリンクレー、ドーソナイト、ベーマイトなどが挙げられる。また、吸熱剤としては、アルミン酸カルシウム、タルクなどであってもよい。
吸熱剤としては、上記した中では、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ホウ酸亜鉛の水和物、硫酸カルシウムの水和物(例えば、2水和物)、硫酸マグネシウムの水和物(例えば、7水和物)が好ましく、これらの中でも、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムがより好ましい。
本発明において、吸熱剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは10〜500質量部である。10質量部以上とすることで、吸熱剤を含有したことで消火性能を向上させやすくなる。また、500質量部以下とすることで、吸熱剤を樹脂中に均一に分散させやすくなり、耐火材の成形性、機械的強度を良好にしやすくなる。これら観点から、吸熱剤の含有量は、40質量部以上がより好ましく、80質量部以上がより好ましく、また、400質量部以下がより好ましく、200質量部以下がさらに好ましい。
また、吸熱剤の含有量は、上記熱膨張性化合物及び固体難燃剤の合計量に対する質量比(吸熱剤/熱膨張性化合物及び固体難燃剤の合計量)が、2/8〜8/2が好ましく、3/7〜7/3がより好ましく、4/6〜6/4がさらに好ましい。これら範囲内とすることで、耐火材の機械的強度の維持と、吸熱剤による消火性能の向上とをバランスよく達成できる。
<無機充填剤>
本発明の耐火材は、上記した熱膨張性化合物、固体難燃剤、及び吸熱剤以外の無機充填剤を更に含有してもよい。そのような無機充填剤としては特に制限されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物、炭酸カルシウムなどの水和金属化合物以外の金属化合物、ガラス繊維、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、木炭粉末、各種金属粉、炭化ケイ素、ステンレス繊維、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、及び脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機充填剤の平均粒子径は、0.5〜100μmが好ましく、1〜50μmがより好ましい。無機充填剤は、含有量が少ないときは分散性を向上させる観点から粒子径が小さいものが好ましく、含有量が多いときは高充填が進むにつれて、耐火樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するため粒子径が大きいものが好ましい。
本発明の耐火材が、上記無機充填剤を含有する場合、その含有量は樹脂100質量部に対して、好ましくは10〜300質量部、より好ましくは10〜200質量部である。無機充填剤の含有量が前記範囲内であると、耐火材の機械的物性、成形性などを向上させることができる。
<可塑剤>
本発明の耐火材は、更に可塑剤を含有してもよい。特に樹脂がポリ塩化ビニル樹脂やポリビニルアセタール樹脂などの熱可塑性樹脂である場合、成形性などを向上させる観点から可塑剤を含有してもよい。
可塑剤は、一般にポリ塩化ビニル樹脂やポリビニルアセタール樹脂と併用される可塑剤であれば特に限定されない。具体的には、例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル可塑剤、エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、アジピン酸エステル、アジピン酸ポリエステル等のアジピン酸エステル可塑剤、トリー2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤、鉱油等のプロセスオイル等が挙げられる。可塑剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の耐火材が可塑剤を含有する場合、可塑剤の含有量は、樹脂100質量部に対して1〜60質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましく、10〜40質量部がさらに好ましい。可塑剤の含有量が前記範囲内であると、成形性が向上する傾向にあり、また耐火樹脂層が柔らかくなり過ぎることを抑制できる。
<その他成分>
本発明の耐火材は、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて上記以外の添加成分を含有させることができる。この添加成分の種類は特に限定されず、各種添加剤を用いることができる。このような添加剤として、例えば、滑剤、収縮防止剤、結晶核剤、着色剤(顔料、染料等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、難燃助剤、帯電防止剤、界面活性剤、加硫剤、分散剤、及び表面処理剤等が挙げられる。添加剤の添加量は成形性等を損なわない範囲で適宜選択でき、添加剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(筐体用耐火シート)
本発明の耐火材は、筐体用熱膨張性耐火材のシート状物を含む筐体用耐火シートであることが好ましい。この場合、耐火材の厚さは、例えば、2〜5000μm、好ましくは10〜2000μm、より好ましくは20〜1000μm、さらに好ましくは35〜600μmであり、よりさらに好ましくは100〜500μmである。なお、本明細書における耐火材の「厚さ」とは、耐火材の幅方向3点の平均厚さを指す。
筐体用耐火シートの厚さを下限値以上とすることで、耐火材に適切な耐火性、断熱性能を容易に付与できる。また、上限値以下とすることで、耐火材の厚さが必要以上に厚くなることを防止し、携帯電話、スマートフォンなどの携帯機器に使用される小型のバッテリーにも適用しやすくなる。
(筐体用熱膨張性耐火材、筐体用耐火シートの製造方法)
本発明の耐火材は、耐火樹脂組成物を調製し、筐体に所望の領域に塗布し乾燥することで作製することができる。また、筐体用耐火シートの場合は、耐火樹脂組成物をシート状に成形することにより製造できる。
耐火樹脂組成物は、樹脂、熱膨張性化合物、及び必要に応じて配合される固体難燃剤、吸熱剤、無機充填剤、可塑剤等の任意成分をバンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等の公知の混合装置を用いて混合することにより得られる。
耐火樹脂組成物から筐体用耐火シートに成形する方法としては、具体的には、押出成形、プレス成形、及び射出成形が挙げられ、中でも押出成形が好ましく、単軸押出機、二軸押出機、射出成型機等を用いて成形することができる。
また、樹脂として熱硬化性樹脂を使用する場合には、耐火樹脂組成物をシート状などに成形した後に樹脂成分を硬化させるとよい。
耐火材は、耐火樹脂組成物の希釈液を離型シート上などに塗布し乾燥することで成形する方法によっても好適に製造できる。この製造方法に使用される樹脂は、上記した樹脂から適宜選択すればよいが、好ましくはポリビニルアセタール樹脂、及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種である。耐火樹脂組成物を希釈する際に使用する溶剤としては、特に限定されないが、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸n−ブチルなどのエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶媒、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒などが挙げられる。
耐火樹脂組成物の希釈液は、通常、樹脂が溶剤により溶解され、かつ熱膨張性化合物、必要に応じて配合される固体難燃剤、吸熱剤、無機充填剤が溶剤中に分散されスラリーとなる。スラリーとする場合、例えば、まず、溶媒に、熱膨張性化合物や、任意で配合される固体難燃剤、吸熱剤、無機充填剤などの粉末ないし粒子をビーズミルなどの分散混合機により攪拌して分散液を作製する。この際、溶媒には、予め分散剤を配合していてもよい。
その後、分散液に、予め溶剤に溶解した樹脂溶液、及び必要に応じて使用されるその他の成分を添加し、上記分散混合機によりさらに攪拌することで、耐火樹脂組成物の希釈液を作製するとよい。
耐火樹脂組成物の希釈液における固形分濃度は、例えば30〜70質量%、好ましくは35〜65質量%、より好ましく40〜60質量%である。固形分濃度が下限値以上であると、効率的に耐火材を成形することができる。また、上記上限値以下とすることで、樹脂を溶媒に溶解させ、かつ吸熱剤を溶媒に分散させやすくなる。
本発明の筐体用耐火シートは、耐火材からなるシート状物の単体で用いられてもよいし、さらなる層がシート状物に積層されて積層型筐体用耐火シートとしてもよい。積層型筐体用耐火シートは、例えば、上記シート状物以外の層として、粘着材を備えてもよい。その場合、積層型筐体用耐火シートは、例えば、上記耐火材からなるシート状物と、その少なくとも一方の面に設けられる粘着材とを備えるものであるとよい。粘着材を備える積層型筐体用耐火シートは、粘着材を介して筐体に貼り合わせることができる。
粘着材は、積層型筐体用耐火シートを他の部材に感圧接着することができる部材であり、粘着剤層からなるものでもよいし、基材の両表面に粘着剤層が設けられた両面粘着テープでもよいが、粘着剤層からなることが好ましい。なお、両面粘着テープは、一方の粘着剤層が耐火材に貼り合わせられることで、積層されて粘着材を構成することになる。
粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられるが、これらに限定されない。粘着材の厚みは、特に限定されないが、例えば、3〜500μm、好ましくは10〜200μmである。
また、両面粘着テープに使用する基材は、樹脂フィルム、不織布など、両面粘着テープに使用される公知の基材を使用するとよい。
本発明の積層型筐体用耐火シートは、基材と、基材の少なくとも一方の面に設けられる耐火材からなるシート状物とを有する積層体であってもよい。基材を使用する場合、耐火材からなるシート状物は、基材の片面のみに設けられてもよいし、両面に設けられてもよい。また、耐火材からなるシート状物は、基材に直接積層されてもよいし、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、基材の表面上に形成されたプライマー層、接着層などを介して基材に積層されてもよいが、直接積層されることが好ましい。
ここで、基材は、可燃層であっても準不燃層又は不燃層であってもよい。基材の厚みは特に限定されないが、例えば5μm〜1mmである。基材としては、樹脂、金属、金属以外の無機材料、又はこれらの複合体などにより形成される。また、基材の形態としては、フィルム、箔などでもよいし、クロス、メッシュなどでもよい。したがって、例えば、樹脂フィルム、金属箔、金属クロス、金属メッシュ、有機繊維クロス、金属以外の無機材料のクロス(無機繊維クロス)などが挙げられる。
上記した基材と耐火材からなるシート状物とを有する積層型筐体用耐火シートは、耐火樹脂組成物を押出成形などすることで、基材の一方の面又は両面上に耐火材からなるシート状物を形成することで製造することができる。また、積層型筐体用耐火シートは、溶剤により希釈した耐火樹脂組成物の希釈液を、基材の一方の面又は両面に塗布し、乾燥することで、基材の一方の面又は両面上に耐火材を形成することで製造してもよい。希釈する際に使用する溶剤の種類、希釈液における固形分濃度などは上記したとおりである。
さらに、積層型筐体用耐火シートは、予め成形した耐火材からなるシート状物を、基材の一方の面又は両面に圧着などすることで積層させて製造してもよい。
なお、基材の両面に、耐火材からなるシート状物を形成する場合には、両面に同時に耐火材からなるシート状物を形成してもよいし、片面ずつ順次、耐火材を形成してもよい。
積層型筐体用耐火シートは、その少なくとも一方の面にさらに粘着材が設けられてもよい。粘着材は、耐火材からなるシート状物が基材の一方の面のみに設けられる場合、基材の他方の面に設けられてもよいし、耐火材からなるシート状物上に設けられてもよいが、耐火材からなるシート状物上に設けられることが好ましい。耐火材上に粘着材が設けられると、積層型筐体用耐火シートは、粘着材を介して筐体に貼り合わせた場合、筐体側から、耐火材からなるシート状物、基材の順で配置されることになる。このような配置により、断熱性能が高めやすくなる。なお、粘着材の具体的な構成は、上記したとおりである。
[携帯電子機器用筐体]
本発明の携帯電子機器用筐体は、少なくともバッテリー収納部に収納されたバッテリーの外側主面を覆う領域で、かつバッテリーの外側主面側に、本発明の筐体用熱膨張性耐火材、又は、本発明の筐体用耐火シートからなる熱膨張性耐火材層を備える。
例えば携帯電子機器がスマートフォンのような携帯電話である場合、携帯電子機器用筐体は、通常図1に示すとおり、バッテリー収納部12や液晶部(不図示)等を有する前面ケース10と、前面ケース10のバッテリー収納部12にバッテリー14が収納された後に前面ケース10の背面を覆う背面ケース20とで構成される。そして、本発明の携帯電子機器用筐体においては、前面ケース10に収納されたバッテリーの外側主面を覆うように、背面ケース20に、本発明の筐体用熱膨張性耐火材からなる、又は、本発明の筐体用耐火シートからなる、熱膨張性耐火材層22が形成されている。そして、図2に示すように、前面ケース10の背面を背面ケース20で覆って携帯電子機器用筐体30とした際に、前面ケース10に収納されたバッテリーの外側主面を覆う領域で、かつバッテリーの外側主面側に、熱膨張性耐火材層22を備える形態となる。
なお、携帯電子機器用筐体の筐体とは、携帯電子機器の部品や部材などを中に収めた外装を指す。
バッテリー14の外側主面を覆う領域に熱膨張性耐火材層22を備えることで、バッテリー14が熱暴走し、発火や発煙等の不具合を生じても、熱膨張性耐火材層22による膨張が生じて、既述の耐火性が発揮され、かつ異常高温になったバッテリーの熱を筐体の外表面に伝え難くする良好な断熱性が得られる。
熱膨張性耐火材層22が形成される面積S1は、バッテリー14の外側主面の面積S2に対して、S1/S2が1以上であることが好ましく、1.1以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましい。また、S1/S2は大きい方が断熱性の観点から好ましいが、携帯電子機器の狭スペースを考慮すると、2.0程度が上限となる。
また、耐火性と断熱性をより良好に発揮させる観点から、熱膨張性耐火材層の厚みは0.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることがより好ましい。また、実用性を考慮して、熱膨張性耐火材層の厚みは0.2mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることがより好ましい。
携帯電子機器用筐体は、各種金属製、樹脂製等特に限定されないが、軽量性、加工性等の観点から樹脂製が好ましく、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂の少なくともいずれか1種を含む樹脂製であることがより好ましい。特に、ポリカーボネート樹脂とアクリル樹脂を含む樹脂は携帯電話用途に好適であるが、燃えやすいという問題がある。しかし、本発明の携帯電子機器用筐体であれば、このような樹脂を使用した場合も良好な難燃性と耐熱性が発揮されるため、上記のような樹脂の特性を良好に生かすことができる。
ここで、バッテリーについて説明する。バッテリーは、通常、少なくとも1つのバッテリーセルを有する。本発明においては、このバッテリーセルの表面に既述の本発明の耐火材又は筐体用耐火シートを取り付けてもよい。耐火材又は筐体用耐火シートは、通常、バッテリーセルの表面に配置され、外装缶、外装フィルムといった外装材として利用される。バッテリーは、バッテリーセルを1つ有してもよいし、2つ以上有してもよい。
バッテリーセルは、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、及び負極端子等が外装部材に収容されたバッテリーの構成単位を指す。また、バッテリーセルは、セルの形状により、円筒型、角型、ラミネート型に分類される。
バッテリーセルが円筒型の場合、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、負極端子、絶縁材、安全弁、ガスケット、及び正極キャップ等が外装缶に収容されているバッテリーの構成単位を指す。一方、バッテリーセルが角型の場合、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、負極端子、絶縁材、及び安全弁等が外装缶に収容されているバッテリーの構成単位を指す。バッテリーセルがラミネート型の場合、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、及び負極端子等が外装フィルムに収容されているバッテリーの構成単位を指す。ラミネート型のバッテリーでは、2枚の外装フィルムの間、或いは、1枚の外装フィルムが例えば2つ折りで折り畳まれ、その折り畳まれた外装フィルムの間に、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、及び負極端子等が配置され、外装フィルムの外縁部がヒートシールによって圧着されている。
また、バッテリーセルは、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケル・水素電池、リチウム・硫黄電池、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル・鉄電池、ニッケル・亜鉛電池、ナトリウム・硫黄電池、鉛蓄電池、空気電池等の二次電池であり、これらの中でもリチウムイオン電池が好ましい。
耐火材又は耐火積層体は、バッテリーセルのいずれの表面上に設けられるとよいが、いずれの場合も、耐火材がバッテリーセルの大部分(例えば、表面積の50%以上、より好ましくは70%以上)の表面を覆うことが好ましい。耐火材がバッテリーセル表面の大部分を覆うことでバッテリーセルの発火に対して、迅速に断熱しやすくなる。
また、バッテリーセルは、安全弁を有することが多いが、安全弁を有するバッテリーセルにおいては、耐火材又は耐火積層体のいずれを使用する場合も、耐火材によって安全弁を覆うように設けられることが好ましい。このとき、耐火材は、安全弁の機能を担保するために、安全弁を密封させないように覆うとよい。さらに、ラミネート型のバッテリーセルの場合には、ヒートシールによって圧着されるヒートシール部を耐火材によって覆うように設けられることが好ましい。
バッテリーセルは、安全弁又はヒートシール部から発火することが多いため、これらを耐火材で覆うことでバッテリーセルの発火をより有効に断熱しやすくなる。
さらに、耐火材が、バッテリーセルの大部分の表面を覆い、かつバッテリーセルが安全弁又はヒートシール部を有する場合、耐火材は安全弁又はヒートシール部も覆うように配置されることがより好ましい。例えば、耐火材や耐火積層体は、バッテリーセルに巻くように配置されるとよい。
本発明に係る携帯電子機器としては、携帯電話(スマートフォンを含む)他に、タブレット、電子ブック、ノート型パソコン等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
各物性の測定方法及び評価方法は以下のとおりである。
<耐火シートの膨張倍率>
カッターを用いて、長さ100mm、幅100mmに耐火材をカットし、ステンレス製のホルダー(101mm角、高さ80mm)の底面に設置し、電気炉に耐火材を供給し、600℃で3分間加熱した。加熱後の膨張残渣の厚みを、加熱前の耐火材の厚みで除して算出した。膨張残渣の厚み及び加熱前の耐火材の厚みは、ノギスを用いて3点測定して、平均値を算出した。
<耐火性試験>
耐火材に積水化学工業株式会社製「3801X」の両面粘着テープを貼り付け、100mm角にカットした。その後、アクリル板1mm、100mm角にその粘着テープ付耐火材を貼り付けた。株式会社東海のガスライター(商品名CRチャッカマン(登録商標))を用いて、耐火材面に炎を1分間当てた後のアクリル板の状態を観測した。
アクリル板がほとんど変化していない場合を「AA」と評価した。アクリル板の内部に気泡が発生したがアクリル板が貫通してない場合を「A」と評価した。アクリル板が貫通した場合を「B」と評価した。アクリル板が燃えた場合を「C」と評価した。結果を表1に示す。
<シート成形性>
各実施例、比較例で得られた耐火材を巻取りロールで巻取りができ、ロール体ができた場合を「A」、巻取りロールで巻取りができず、ロール体ができなかった場合を「B」として評価した。結果を表1に示す。
<引張強度>
耐火材の常温(23℃)における引張弾性率をJIS7113に準拠してAUTOGRAPH(島津製作所製、AGS−J)により測定して、下記で判定した。
AA:引張弾性率が100MPa以上
A:引張弾性率が50MPa以上100MPa未満
B:引張弾性率が1MPa以上50MPa未満
C:引張弾性率1MPa未満
<吸熱剤の熱分解開始温度の測定方法>
熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて測定した。測定条件は、室温から1000℃まで、昇温速度4℃/min、吸熱剤重量10mgであった。得られたTG曲線から重量が減少し始める温度を吸熱剤の熱分解開始温度とした。
<吸熱剤の吸熱量の測定方法>
熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて測定した。測定条件は、室温から1000℃まで、昇温速度4℃/min、吸熱剤重量10mgであった。得られたDTA曲線から吸熱量(凹部の面積)を算出した。
<平均粒子径の測定方法>
各成分の平均粒子径はレーザー回折法で測定した。具体的には、レーザー回折散乱方式粒度分布計等の粒度分布計によって求めた粒度分布における積算値50%での粒子径を平均粒子径とした。
表1における各成分は、以下の通りであった。
<樹脂>
PVB1:ポリビニルブチラール樹脂、重合度800、アセタール化度69mol%、アセチル基量1mol%、水酸基量30mol%、10質量%エタノール/トルエン粘度142mPa・s
PVB2:ポリビニルブチラール樹脂、重合度320、アセタール化度75mol%、アセチル基量3mol%、水酸基量22mol%、10質量%エタノール/トルエン粘度21mPa・s
PVB3:ポリビニルブチラール樹脂、重合度1,100、アセタール化度64mol%、アセチル基量1mol%、水酸基量35mol%、10質量%エタノール/トルエン粘度280mPa・s
EVA:エバフレックスEV450、三井デュポンポリケミカル株式会社、メルトフローレート:15g/10min
アクリル樹脂:イソブチルメタクリレートの単独重合体、重量平均分子量10万、ガラス転移温度(Tg)50℃
<熱膨張性化合物>
熱膨張性黒鉛(1):膨張開始温度200℃、膨張度45ml/g、製品名「9510045」、伊藤黒鉛工業株式会社製
熱膨張性黒鉛(2):膨張開始温度160℃、膨張度200ml/g、製品名「EXP−50S160」、富士黒鉛工業株式会社製
亜リン酸アルミニウム:膨張開始温度400℃、膨張度40ml/g、製品名「APA100」、太平化学産業株式会社製
熱膨張性マイクロカプセル:アドバンセルEMH204、積水化学工業株式会社製
<その他の固体難燃剤>
ポリリン酸アンモニウム:製品名「AP422」、クラリアント社製、平均粒子径15μm
低融点ガラス:製品名「4020」、日本琺瑯釉薬社製、軟化温度380℃
<吸熱剤>
水酸化アルミニウム:製品名「BF013」、日本軽金属株式会社製、平均粒子径1μm、熱分解開始温度200℃、吸熱量1000J/g
水酸化マグネシウム:製品名、「キスマ5A」、協和化学工業株式会社製、平均粒子径0.9μm、熱分解開始温度280℃、吸熱量1350J/g
<無機充填剤>
炭酸カルシウム:製品名「ホワイトンBF−300」、備北粉化株式会社社製、平均粒子径8μm
<実施例1〜16、18〜22、23〜26、比較例1〜3>
表1に示す配合にしたがって樹脂以外の成分をエタノールとトルエン(質量比1:1)の混合溶剤に加え、溶剤中に各成分を分散させて分散液を得た。また、表1に示す配合にしたがって、エタノールとトルエン(質量比1:1)の混合溶剤に溶解した樹脂を上記分散液に加えて、固形分濃度10質量%の耐火樹脂組成物の希釈物を得た。得られた耐火樹脂組成物の希釈液を離型シート(リンテック社製PETフィルム)の片面に塗布して、120℃、10分間で乾燥させて、離型シート上に形成されたシート状の耐火材を得た。次いで、耐火材を離型シートから剥離し、単体の耐火材(耐火シート)を得た。耐火シートの厚さは、100μmであった。
<実施例17>
表1に示した各成分を一軸押出機に供給して混練して得た耐火樹脂組成物を、120℃で押出成形し、厚さ200μmのシート状の耐火材を得た。
Figure 2021080382
Figure 2021080382
以上の実施例に示すように、耐火材は、熱膨張性化合物を含有し、かつ膨張倍率を所定値以上とすることで、耐火性、断熱性能が良好となった。
10 前面ケース
12 バッテリー収納部
14 バッテリー
20 背面ケース
22 熱膨張性耐火材層
30 携帯電子機器用筐体

Claims (15)

  1. 携帯電子機器の筐体用熱膨張性耐火材であって、樹脂と、熱膨張性化合物を含み、600℃に加熱したときの膨張倍率が1.5倍以上である、筐体用熱膨張性耐火材。
  2. 前記熱膨張性化合物が、熱膨張性層状無機物及び熱膨張性固体リン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の筐体用熱膨張性耐火材。
  3. 前記熱膨張性層状無機物が熱膨張性黒鉛である請求項2に記載の筐体用熱膨張性耐火材。
  4. 前記熱膨張性固体リン系化合物が、低級リン酸類の金属塩である請求項2又は3に記載の筐体用熱膨張性耐火材。
  5. 前記熱膨張性化合物の含有量が、樹脂100質量部に対して、10〜1500質量部である請求項1〜4のいずれか1項に記載の筐体用熱膨張性耐火材。
  6. 前記熱膨張性化合物以外の固体難燃剤を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の筐体用熱膨張性耐火材。
  7. 前記固体難燃剤の含有量が、樹脂100質量部に対して、10〜1000質量部である請求項1〜6のいずれか1項に記載の筐体用熱膨張性耐火材。
  8. 前記固体難燃剤が、低融点ガラス、ポリリン酸化合物、メラミン系化合物、及び環状尿素化合物から選択される少なくとも1種である請求項6又は7に記載の筐体用熱膨張性耐火材。
  9. 前記樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜8のいずれか1項に記載の筐体用熱膨張性耐火材。
  10. 熱分解開始温度が800℃以下、吸熱量が300J/g以上である吸熱剤をさらに含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の筐体用熱膨張性耐火材。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の筐体用熱膨張性耐火材のシート状物を含む筐体用耐火シート。
  12. 少なくともバッテリー収納部に収納されたバッテリーの外側主面を覆う領域で、かつ前記バッテリーの外側主面側に、請求項1〜10のいずれか1項に記載の筐体用熱膨張性耐火材、又は、請求項11に記載の筐体用耐火シートからなる熱膨張性耐火材層を備える携帯電子機器用筐体。
  13. 前記熱膨張性耐火材層の厚みが0.5mm以下である請求項12に記載の携帯電子機器用筐体。
  14. 樹脂製である請求項12又は13に記載の携帯電子機器用筐体。
  15. ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂の少なくともいずれか1種を含む樹脂製である請求項14に記載の携帯電子機器用筐体。
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