JP2020147734A - 耐火樹脂組成物、耐火シート、及びバッテリー - Google Patents

耐火樹脂組成物、耐火シート、及びバッテリー Download PDF

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健一 大月
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倫男 島本
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彰人 土肥
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Abstract

【課題】急激な温度上昇等に伴う発火に対して、短時間で消火することができる耐火樹脂組成物を提供する。【解決手段】耐火樹脂組成は、樹脂(A)と、吸熱剤(B)とを含有し、前記樹脂(A)が空気中雰囲気下で吸熱反応により熱分解する樹脂であり、前記樹脂(A)の吸熱ピーク温度(AT)と、前記吸熱剤(B)の吸熱ピーク温度(BT)の差(AT−BT)が−250℃以上250℃以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、耐火樹脂組成物、耐火樹脂組成物よりなる耐火シート、耐火シートを備えるバッテリーに関する。
リチウム電池に代表される各種バッテリーは、内部短絡等が原因によりバッテリーが熱暴走し、発火や発煙等の不具合を生じることがある。このような不具合による被害を最小限に抑えるために、異常高温になったバッテリーの熱を周囲のバッテリー及びバッテリーを収容した筐体に伝え難くする方法が検討されており、例えば、バッテリーセルの周辺に耐火材や断熱層等の保護材を用いる方法が挙げられる。
例えば、特許文献1には、外側の少なくとも一部が耐火性コーティングで覆われている電池セルが開示されており、耐火性コーティングがアブレーティブコーティング、膨張性コーティング又は吸熱性コーティングであること、ポリウレタン系コーティングが使用可能であることが開示されている。
また、特許文献2には、熱伝導率0.2W/m・K以下であり、80℃以上の温度に吸熱ピークを有する吸熱性無機化合物粒子と、結着剤とを含有する断熱層を設けた二次電池を電源とする携帯電子機器が開示されている。
特表2013−528911号公報 特許第5643648号公報
ところで、近年、携帯電話のバッテリーなどでは、電池容量が高く、急激な温度上昇により発火しやすくなっており、発火した後に短時間で消火する性質が求められている。しかし、特許文献1の耐火性コーティングは、発火が生じた場合にバッテリーを保護する性質を有するものの、発火が生じた場合に短時間で消火する性質は有することは示されていない。
また、特許文献2に開示される断熱層は、電池セルで生じた熱を吸収するものの、耐火性を有することは示されていない。さらに、特許文献2では、結着剤としては、樹脂材料を使用することが検討されているが、樹脂材料が消火や耐火に寄与し得ることが示されない。
そこで、本発明は、例えばバッテリーの急激な温度上昇等に伴う発火に対して、短時間で消火することができる耐火樹脂組成物、耐火シート、及び耐火シートを備えるバッテリーを提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、耐火樹脂組成物に使用する樹脂を吸熱反応により熱分解する樹脂とし、かつその樹脂と吸熱剤の吸熱ピーク温度差を所定の範囲内にすることで、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[15]を提供する。
[1]樹脂(A)と、吸熱剤(B)とを含有し、前記樹脂(A)が空気中雰囲気下で吸熱反応により熱分解する樹脂であり、前記樹脂(A)の吸熱ピーク温度(AT)と、前記吸熱剤(B)の吸熱ピーク温度(BT)の差(AT−BT)が−250℃以上250℃以下である耐火樹脂組成物。
[2]前記吸熱剤(B)は、吸熱ピーク温度(BT)が850℃以下、吸熱量が300J/g以上である上記[1]に記載の耐火樹脂組成物。
[3]前記吸熱剤(B)の含有量が、前記樹脂(A)100質量部に対して10〜1600質量部である上記[1]又は[2]に記載の耐火樹脂組成物。
[4]前記吸熱剤(B)が水和金属化合物である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
[5]前記水和金属化合物が、金属水酸化物、及び金属塩の水和物からなる群から選ばれる1種以上である、上記[4]に記載の耐火樹脂組成物。
[6]前記樹脂(A)の吸熱ピーク温度(AT)が180〜400℃であり、かつ吸熱量が400J/g以上である上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
[7]前記樹脂(A)がアクリル樹脂及びポリカーボネート樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
[8]前記アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)が5〜80℃である上記[7]に記載の耐火樹脂組成物。
[9]前記吸熱剤(B)は、吸熱ピーク温度(BT)が互いに異なる2種以上の吸熱剤を含む上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
[10]バッテリーに使用される上記[1]〜[9]のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
[11]上記[1]〜[10]のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物からなる耐火シート。
[12]厚さが5〜10000μmである、上記[11]に記載の耐火シート。
[13]上記[11]又は[12]に記載の耐火シートと、バッテリーセルとを備え、前記耐火シートが、バッテリーセルの表面に取り付けられるバッテリー。
[14]上記[11]又は[12]に記載の耐火シートを備える外装フィルム。
[15]基材層、金属層、及びシーラント層をこの順で備え、
前記耐火シートが、前記基材層と前記金属層の間、前記金属層と前記シーラント層の間、及び前記基材層の外側の少なくともいずれかに配置される上記[14]に記載の外装フィルム。
本発明によれば、急激な温度上昇等に伴う発火に対して、短時間で消火することができる耐火樹脂組成物、耐火シート、及び耐火シートを備えるバッテリーを提供できる。
角型バッテリーセルを有するバッテリーの一実施形態を示す概略的な断面図である。 角型バッテリーセルを有するバッテリーの別の実施形態を示す概略的な断面図である。 ラミネート型のバッテリーセルを有するバッテリーの一実施形態を示す概略的な断面図である。 円筒形バッテリーセルを有するバッテリーの一実施形態を示す概略的な断面図である。 バッテリーセルが2つ設けられたバッテリーの一実施形態を示す概略的な断面図である。 電池用外装フィルムの一実施形態を示す模式的な断面図である。 電池用外装フィルムの別の一実施形態を示す模式的な断面図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
[耐火樹脂組成物]
本発明の耐火樹脂組成物は、樹脂(A)と、吸熱剤(B)とを含有し、樹脂(A)が吸熱反応により熱分解する樹脂であり、樹脂(A)の吸熱ピーク温度(AT)と、吸熱剤(B)の吸熱ピーク温度(BT)の差(AT−BT)が−250℃以上250℃以下となるものである。
本発明では、樹脂(A)が、吸熱反応により熱分解し、かつ樹脂(A)と吸熱剤(B)の吸熱ピーク温度の差(AT−BT)の絶対値が小さいことで、耐火樹脂組成物が加熱され所定温度に達すると、吸熱剤(B)と樹脂(A)により周囲の熱を一気に奪い去ることができ、効果的に消火することができる。
一方で、耐火樹脂組成物において、差(AT−BT)が250℃より大きくなったり、−250℃より小さくなったりすると、吸熱剤(B)と樹脂(A)により、一気に熱を奪い去ることができず、バッテリーなどの発火を耐火樹脂組成物によって効果的に消火することができなくなる。消火性を向上させる観点から、差(AT−BT)は、−230℃以上230℃以下が好ましく、−150℃以上150℃以下がより好ましく、−100℃以上100℃以下がさらに好ましく、−55℃以上55℃以下がよりさらに好ましい。
以下、耐火樹脂組成物に使用する各成分についてより詳細に説明する。
〔樹脂(A)〕
耐火樹脂組成物に使用する樹脂(A)は、上記のとおり、吸熱反応により熱分解し、かつ吸熱剤(B)の吸熱ピーク温度(BT)との差(AT−BT)が所定の範囲となる樹脂である。ここで、吸熱反応により熱分解するとは、空気中雰囲気下で加熱すると、吸熱反応により熱分解する樹脂をいう。
樹脂(A)の吸熱ピーク温度(AT)は、好ましくは180〜400℃、より好ましくは200〜380℃、さらに好ましくは250〜350℃である。吸熱ピーク温度(AT)が上記範囲内となることで、加熱され発火が生じたときに吸熱剤(B)とともに周囲の熱を一気に吸熱して、バッテリーなどに発火が生じた場合でも消火しやすくなる。
また、樹脂(A)の吸熱量は、消火をより効率的に行うためには、400J/g以上が好ましく、550J/g以上がより好ましく、650J/g以上がさらに好ましい。
また、樹脂(A)の吸熱量は、高ければ高いほどよいが、実用的には例えば1500J/g以下であるが、1000J/g以下であってもよいし、850J/g以下であってもよい。
なお、樹脂(A)の吸熱ピーク温度(AT)及び吸熱量は、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
樹脂(A)は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。熱可塑性樹脂を使用することで、耐火樹脂組成物の成形性を良好にできる。また、樹脂(A)の具体例としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記した中では、樹脂(A)は、アクリル樹脂及びポリカーボネート樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましい。樹脂(A)として、アクリル樹脂又はポリカーボネート樹脂を使用することで、樹脂(A)の吸熱ピーク温度(AT)を吸熱剤(B)の吸熱ピーク温度(BT)に近接させやすくなる。また、樹脂(A)に一定量以上の吸熱量を持たせることができるので、樹脂(A)の吸熱効果によってより効果的に消火できる。さらに、耐火樹脂組成物から形成される耐火シートなどの成形体の機械強度も良好にしやすくなる。樹脂(A)としては、機械強度の観点から、アクリル樹脂がより好ましい。
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーを含むモノマー成分を重合したものである。なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」とは、「アクリル酸アルキルエステル、又はメタクリル酸アルキルエステル」を意味する。他の類似の用語も同様である。
本発明における(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーは、(メタ)アクリル酸と脂肪族アルコールとのエステルであって、前記脂肪族アルコールのアルキル基の炭素数は、例えば1〜18、好ましくは1〜14、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜8である。
具体的な(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、アクリル樹脂を得るためのモノマー成分としては、上記した(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの他に、極性基含有モノマーを含んでもよい。
極性基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、及びイタコン酸等のビニル基を含有するカルボン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、及びポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等の水酸基を有するビニルモノマー、(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルラウリロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、及びジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等の窒素含有ビニルモノマーが挙げられる。
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、5〜80℃であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)をこれら範囲内とすることで、成形性、柔軟性などを良好にしつつ、耐火樹脂組成物から得られる耐火シートなどに一定の機械強度を付与することができる。これら観点から、アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、15〜70℃であることが好ましく、25〜60℃であることがさらに好ましい。なお、アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、使用するモノマー成分の種類、量を適宜選択することで調整できる。
なお、アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は例えば示差熱走査熱量分析計(DSC)により測定できる。
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの重合体が好ましい。具体的には、アルキル基の炭素数が1〜14である(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの重合体が好ましく、アルキル基の炭素数が1〜10である(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの重合体がより好ましく、アルキル基の炭素数が1〜8である(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの重合体がさらに好ましい。アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの単独重合体であってもよいし、2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの共重合体であってもよい。具体的な好適なアクリル樹脂としては、イソブチルメタクリレートの単独重合体、イソブチルメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合体などが挙げられる。アクリル樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アクリル樹脂の重量平均分子量は、吸熱剤を適切に耐火シート中に分散させることができ、耐火樹脂組成物から得られる耐火シートなどの成形体の機械強度を向上させる観点から、10,000〜300,000が好ましく、30,000〜250,000がより好ましく、60,000〜200,000が更に好ましい。なお、アクリル樹脂及びポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。GPC法によって重量平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF−804(昭和電工社製)等が挙げられる。
(ポリカーボネート樹脂)
ポリカーボネート樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ビスフェノール類とカーボネート前駆体との反応により得られる芳香族ポリカーボネートを用いることができる。
ビスフェノール類としては様々なものが挙げられるが、例えば4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレンなどが例示される。これらビスフェノール類は単独で使用しても、複数種併用しても良い。
カーボネート前駆体は、ポリカーボネート樹脂の炭酸エステルを形成する化合物(炭酸エステル形成化合物)である。カーボネート前駆体としては、例えばホスゲン、トリホスゲン等のホスゲン類や、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネートなどのビスアリールカーボネート類が挙げられる。これらの化合物は2種類以上併用して使用することも可能である。
ポリカーボネート樹脂は、上記ビスフェノール類とカーボネート前駆体物質からポリカーボネートを製造する際に用いられている公知の方法、例えばホスゲン法、エステル交換法などの方法で製造できる。
ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノール類として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA:BPA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ:BPZ)、及び2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC:BPC)からなる群から選択されるものを使用することが好ましい。また、これらのビスフェノール類のうち2種以上を組み合わせて共重合体としたもの、例えばBPA/BPC共重合体等も好ましく用いられる。これらのなかでは、ビスフェノール類としてBPAを使用したビスフェノールA型ポリカーボネートがより好ましい。
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、例えば100〜180℃、好ましくは120〜160℃である。ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度がこれら範囲内とすることで、耐火樹脂組成物の成形性などが良好となりやすい。なお、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は例えば示差熱走査熱量分析計(DSC)により測定できる。
また、ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、吸熱剤を適切に耐火シート中に分散させることができ、かつ耐火シートなどの成形体の機械強度を向上させる観点から、10,000〜250,000が好ましく、20,000〜200,000がより好ましく、50,000〜150,000が更に好ましい。
耐火樹脂組成物における樹脂(A)の含有量は、耐火樹脂組成物全量基準で、好ましくは5〜80質量%である。樹脂(A)の含有量を上記範囲内とすることで、耐火樹脂組成物から得られる耐火シートなどの成形体の機械強度を良好にしつつ、吸熱剤(B)を一定量以上配合できることで消火性能も向上させやすくなる。これら観点から樹脂(A)の含有量は、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、また、60質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下がよりさらに好ましい。
なお、耐火樹脂組成物全量基準とは、後述するように溶剤などにより希釈される場合には、固形分全量基準を意味する。
また、耐火樹脂組成物に含まれる樹脂は、吸熱ピーク温度の差(AT−BT)が上記したとおりに所定の範囲内となる樹脂(A)からなるものでもよいが、発明の効果を損なわない限り、発熱反応により熱分解する樹脂や、吸熱反応により熱分解するが吸熱ピーク温度の差が上記した所定の範囲外となる樹脂を含んでいてもよい。ただし、吸熱ピーク温度の差(AT−BT)が所定の範囲内となる樹脂(A)は、耐火樹脂組成物に含まれる樹脂全量に対して、好ましくは75質量%以上であるが、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
〔吸熱剤(B)〕
耐火樹脂組成物に使用する吸熱剤(B)は、上記のとおり、樹脂(A)の吸熱ピーク温度(AT)との差(AT−BT)が所定の範囲内となる吸熱剤であればよいが、例えば、吸熱ピーク温度(BT)が850℃以下、吸熱量が300J/g以上であるものを用いる。吸熱ピーク温度(BT)、及び吸熱量のいずれもが上記範囲内となると、バッテリーなどが発火した場合に速やかに消火できる。
吸熱剤の吸熱ピーク温度(BT)は、550℃以下が好ましく、470℃以下がより好ましく、370℃以下がさらに好ましく、300℃以下がよりさらに好ましい。吸熱剤の吸熱ピーク温度(BT)がこれら上限値以下とすることで発火時に速やかに吸熱剤が分解し、迅速に消火することが可能になる。また、吸熱剤の吸熱ピーク温度(BT)は、例えば60℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは180℃以上、さらに好ましくは220℃以上である。
前記吸熱剤の吸熱量は、好ましくは500J/g以上、より好ましくは600J/g以上、さらに好ましくは900J/g以上である。吸熱剤の吸熱量が上記範囲内であると、熱の吸収性が向上するため、耐火性、消火性がより良好となる。前記吸熱剤の吸熱量は、好ましくは3000J/g以下、より好ましくは2000J/g以下、さらに好ましくは1500J/g以下である。なお、吸熱剤(B)の吸熱量は、典型的には、樹脂(A)の吸熱量よりも高くなる。
なお、吸熱剤(B)の吸熱ピーク温度(BT)及び吸熱量は、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
吸熱剤(B)の平均粒子径は、0.1〜90μmが好ましく、0.5〜60μmがより好ましく、0.8〜10μmがさらに好ましい。吸熱剤の平均粒子径が上記範囲内であると、耐火樹脂組成物中における吸熱剤の分散性が向上し、吸熱剤を樹脂中に均一に分散させたり、樹脂に対する吸熱剤の配合量を多くしたりすることができる。
なお、本明細書において平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定したメディアン径(D50)の値である。
吸熱剤(B)としては、樹脂(A)の吸熱ピーク温度(AT)との差(AT−BT)が所定の範囲となる限り特に制限はないが、水和金属化合物が好ましくは使用できる。水和金属化合物は、加熱により分解して水蒸気を発生し、吸熱及び消火をする効果を有する化合物である。
水和金属化合物としては、金属水酸化物、又は金属塩の水和物などが挙げられ、中でも金属水酸化物が好ましい。また、金属水酸化合物と金属塩の水和物との組み合わせも好ましい。金属水酸化合物を使用することで、吸熱ピーク温度の差(AT−BT)の絶対値が小さくなり、消火性能を向上させやすくなる。
金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。金属塩の水和物としては、例えば2ZnO・3B・3.5HOで表されるホウ酸亜鉛の水和物、硫酸カルシウムの水和物(例えば、2水和物)、硫酸マグネシウムの水和物(例えば、7水和物)などの硫酸金属塩の水和物などが挙げられる。また、カオリンクレー、ドーソナイト、ベーマイトなどが挙げられる。また、吸熱剤としては、アルミン酸カルシウム、タルクなどであってもよい。
吸熱剤(B)としては、上記した中では、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ホウ酸亜鉛の水和物、硫酸カルシウムの水和物(例えば、2水和物)、硫酸マグネシウムの水和物(例えば、7水和物)が好ましく、これらの中でも、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムがより好ましく、水酸化アルミニウムがさらに好ましい。
耐火樹脂組成物中の吸熱剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは10〜1600質量部である。10質量部以上とすることで、バッテリーなどが発火した場合に速やかに消火することができなくなる。また、1600質量部以下とすることで、吸熱剤を樹脂中に均一に分散させやすくなり、成形性が良好となる。また、耐火樹脂組成物から得られる耐火シートなどの機械強度も良好にしやすくなる。
吸熱剤(B)の含有量は、より好ましくは50質量部以上、さらに好ましくは300質量部以上、より更に好ましくは400質量部以上である。また、上記吸熱剤(B)の含有量は、より好ましくは1200質量部以下、更に好ましくは800質量部以下、より更に好ましくは600質量部以下である。吸熱剤の含有量をこれら下限値以上とすることで、急激な温度上昇を緩和でき、かつ発火した場合でも速やかに消火することができる。また、上記上限値以下とすることで、吸熱剤(B)を樹脂中に均一に分散しやすくなり、成形性などが優れたものとなる。また、耐火樹脂組成物から形成される耐火シートなどの機械強度も良好となる。
また、耐火樹脂組成物における吸熱剤(B)の含有量は、耐火樹脂組成物基準では、10〜95質量%であることが好ましい。吸熱剤(B)の含有量を上記範囲内とすることで、消火性能も向上させつつ、樹脂(A)を一定量以上配合できるので耐火シートなどの成形体の機械強度、及び成形性を良好にできる。これら観点から、吸熱剤(B)の含有量は、25質量%以上がより好ましく、55質量%以上がさらに好ましく、72質量%以上がよりさらに好ましく、また、90質量%以下がより好ましく、83質量%以下がさらに好ましい。
また、耐火樹脂組成物は、吸熱剤(B)として、吸熱ピーク温度(BT)が互いに異なる2種以上の吸熱剤を含有してもよい。この場合も、吸熱剤(B)は、いずれの吸熱剤(B)も樹脂(A)との吸熱ピーク温度の差(AT−BT)が上記した所定の範囲内となればよい。
吸熱ピーク温度(BT)が互いに異なる2種以上の吸熱剤(B)を使用すると、温度上昇する過程で吸熱反応を連続的に生じさせ、効果的に消火できるようになる。また、バッテリーは例えば電解液が燃焼することが多いが、2種以上の吸熱剤(B)を含有させると、電解液の引火点及び発火点それぞれに対応した吸熱ピーク温度(BT)を有する吸熱剤(B)を使用することで、より効果的に消火できるようになる。
上記観点から、吸熱剤(B)は、吸熱ピーク温度(BT)が互いに異なる2種以上を含む場合には、吸熱ピーク温度(BT)が50℃以上互いに異なることが好ましく、より好ましくは70℃以上互いに異なる。
吸熱剤としては、例えば異なる金属水酸化物を2種以上併用してもよいし、金属水酸化物と金属塩の水和物とを併用してもよいし、その他の組み合わせてあってもよい。
吸熱ピーク温度(BT)が互いに異なる2種以上を含む場合、例えば一実施形態として、吸熱ピーク温度(BT)が300℃以上の吸熱剤(高温側吸熱剤)と、吸熱ピーク温度(BT)が300℃未満の吸熱剤(低温側吸熱剤)とを併用するとよい。この場合、高温側吸熱剤の吸熱ピーク温度(BT)は、325℃以上が好ましく、低温側吸熱剤の吸熱ピーク温度(BT)は275℃以下が好ましい。また、高温側吸熱剤の吸熱ピーク温度(BT)は850℃以下であるとよいが、550℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましく、低温側吸熱剤の吸熱ピーク温度(BT)は120℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましい。このような実施形態における高温側吸熱剤としては、例えば水酸化マグネシウムが挙げられ、低温側吸熱剤としては、例えば、水酸化アルミニウムが挙げられる。
また、別の一実施形態として、例えば、吸熱ピーク温度(BT)が200℃以上の吸熱剤(高温側吸熱剤)と、吸熱ピーク温度(BT)が200℃未満の吸熱剤(低温側吸熱剤)とを併用するとよい。この場合、高温側吸熱剤の吸熱ピーク温度(BT)は、225℃以上が好ましく、低温側吸熱剤の吸熱ピーク温度(BT)は120℃以下が好ましい。また、高温側吸熱剤の吸熱ピーク温度(BT)は850℃以下であるが、550℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましく、低温側吸熱剤の吸熱ピーク温度(BT)は60℃以上が好ましい。本実施形態における高温側吸熱剤としては、例えば水酸化アルミニウムが挙げられ、低温側吸熱剤としては、例えば、硫酸カルシウムの水和物、硫酸マグネシウムの水和物などが挙げられる。
上記のように各実施形態において、2種以上を併用する場合、高温側吸熱剤の含有量に対する低温側吸熱剤金属塩の水和物は、特に限定されないが、1/9以上9/1以下が好ましく、2/8以上8/2以下がより好ましく、3/7以上7/3以下がさらに好ましい。
なお、吸熱剤(B)及び樹脂(A)それぞれが、2種以上含む場合には、各吸熱剤(B)は、いずれかの樹脂(A)に対して、吸熱ピーク温度の差(AT−BT)が所定の範囲内となればよいが、全ての樹脂(A)に対して、吸熱ピーク温度の差(AT−BT)が所定の範囲内となるほうが好ましい。
同様に、吸熱剤(B)及び樹脂(A)それぞれが、2種以上含む場合には、各樹脂(A)は、いずれかの吸熱剤(B)に対して、吸熱ピーク温度の差(AT−BT)が所定の範囲内となればよいが、全ての吸熱剤(B)に対して、吸熱ピーク温度の差(AT−BT)が所定の範囲内となるほうが好ましい。
〔その他の吸熱剤〕
本発明の耐火樹脂組成物は、上記吸熱剤(B)に加えて、吸熱ピーク温度(BT)の樹脂(A)に対する吸熱ピーク温度(AT)の差(AT−BT)が上記所定の範囲外となる吸熱剤(以下、「その他の吸熱剤」ともいう)を含有してもよい。
この場合、その他の吸熱剤としては、吸熱ピーク温度(BT)が850℃以下の吸熱剤でもよいし、吸熱ピーク温度(BT)が850℃より高い吸熱剤であってもよい。また、その他の吸熱剤は、吸熱量が300J/g以上の吸熱剤であることが好ましい。吸熱ピーク温度(BT)が高く、かつ吸熱量も高いその他の吸熱剤を、上記した吸熱剤(B)と併用することで、例えば、一定量の燃焼が継続した後で、その他の吸熱剤により燃焼が抑制されるので、例えばバッテリーが燃え広がることなどが防止できる。
その他の吸熱剤の吸熱ピーク温度(BT)は、好ましくは1200℃以下、より好ましくは1000℃以下である。これら上限値以下とすることで、その他の吸熱剤により効果的に燃焼を抑制できる。
また、その他の吸熱剤の吸熱量は、燃焼の抑制効果を高める観点から、好ましくは500J/g以上、より好ましくは600J/g以上、さらに好ましくは900J/g以上、よりさらに好ましくは1500J/g以上である。また、その他の吸熱剤の吸熱量は、通常、4000J/g以下、好ましくは3000J/g以下、さらに好ましくは2000J/g以下である。
その他の吸熱剤としては、吸熱ピーク温度が850℃より高いものとして、例えば、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、及び炭酸バリウムなどの炭酸金属塩が挙げられる。また、上記した吸熱剤(B)として列挙した吸熱剤をその他の吸熱剤として使用してもよい。
その他の吸熱剤の含有量は、特に限定されないが、第1の吸熱剤の含有量に対する質量比(その他の吸熱剤/第1の吸熱剤)として、1/9以上7/3以下が好ましく、2/8以上6/4以下がより好ましく、2/8以上4/6以下がさらに好ましい。含有量の質量比を上記範囲内とすることで、その他の吸熱剤を使用する効果を発揮しやすくなる。
その他の吸熱剤の平均粒子径は、特に限定されないが、0.1〜90μmが好ましい。平均粒子径を上記範囲内とすることで、成形性が良好となる。その他の吸熱剤の平均粒子径は、0.5〜60μmがより好ましく、0.8〜40μmがさらに好ましく、0.8〜10μmがよりさらに好ましい。なお、その他の吸熱剤の平均粒子径の測定方法は、上記したとおりである。
〔難燃剤〕
本発明の耐火樹脂組成物は、更に難燃剤を含有することが好ましい。本発明の耐火樹脂組成物が難燃剤を含有する場合、これを用いた耐火シートに着火した場合であっても延焼を抑制することができ、消火性能を向上させやすくなる。
難燃剤としては、リン原子含有化合物が挙げられ、具体的には、赤リン、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、及びキシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、及びリン酸マグネシウム等のリン酸金属塩、ポリリン酸アンモニウム、下記一般式(1)で表される化合物等が挙げられる。
前記一般式(1)中、R及びRは、同一又は異なって、水素、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又は炭素数6〜16のアリール基を示す。Rは、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は炭素数6〜16のアリールオキシ基を示す。
前記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、n−プロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。前記難燃剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記難燃剤の中でも、耐火シートの難燃性を向上させる観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、及び前記一般式(1)で表される化合物が好ましく、難燃性能、安全性、及びコスト等の観点からポリリン酸アンモニウムがより好ましい。
本発明の耐火樹脂組成物が難燃剤を含有する場合、その含有量は樹脂(A)100質量部に対して、1〜200質量部が好ましく、5〜100質量部がより好ましく、10〜80質量部が更に好ましい。難燃剤の含有量が前記範囲内であると、耐火樹脂組成物から形成された耐火シートなどの成形体が着火した場合に延焼を抑制することができる。
〔熱膨張性層状無機物〕
本発明の耐火樹脂組成物は、熱膨張性層状無機物を含有してもよい。熱膨張性層状無機物を含有することで、耐火性、消火性能がより向上する。
熱膨張性層状無機物は、加熱時に膨張する従来公知の物質であり、例えば、バーミキュライト、熱膨張性黒鉛などが挙げられ、中でも熱膨張性黒鉛が好ましい。熱膨張性層状無機物としては、粒子状やりん片状のものを用いてもよい。熱膨張性層状無機物は、加熱されることで膨張して大容量の空隙を形成するため、耐火樹脂組成物から形成した耐火シートに着火した場合に延焼を抑制したり、消火したりする。
熱膨張性黒鉛は、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、無機酸と、強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。無機酸としては濃硫酸、硝酸、セレン酸等が挙げられる。強酸化剤としては濃硝酸、過硫酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等が挙げられる。上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和処理してもよい。
耐火樹脂組成物が熱膨張性層状無機物を含有する場合、その含有量は樹脂(A)100質量部に対して、1〜200質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましく、15〜50質量部が更に好ましい。熱膨張性層状無機物の含有量が前記範囲内であると、加熱されたとき耐火樹脂組成物中に大容量の空隙を作りやすくなるため消火性が向上する。
〔無機充填剤〕
本発明の耐火樹脂組成物は、吸熱剤、難燃剤及び熱膨張性層状無機物以外の無機充填剤を更に含有してもよい。
吸熱剤、難燃剤及び熱膨張性層状無機物以外の無機充填剤としては特に制限されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物、シリカ、珪藻土、硫酸バリウム、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルーン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルーン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、及び脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機充填剤の平均粒子径は、0.5〜100μmが好ましく、1〜50μmがより好ましい。無機充填剤は、含有量が少ないときは分散性を向上させる観点から粒子径が小さいものが好ましく、含有量が多いときは高充填が進むにつれて、耐火樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するため粒子径が大きいものが好ましい。
本発明の耐火樹脂組成物が、吸熱剤、難燃剤及び熱膨張性層状無機物以外の無機充填剤を含有する場合、その含有量は樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1〜300質量部、より好ましくは5〜200質量部、さらに好ましくは10〜100質量部である。無機充填剤の含有量が前記範囲内であると、これを用いた耐火シートの機械的物性を向上させることができる。
〔その他成分〕
本発明の耐火樹脂組成物は、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて各種の添加成分を含有させることができる。
この添加成分の種類は特に限定されず、各種添加剤を用いることができる。このような添加剤として、例えば、可塑剤、滑剤、収縮防止剤、結晶核剤、着色剤(顔料、染料等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、補強剤、難燃助剤、帯電防止剤、界面活性剤、加硫剤、及び表面処理剤等が挙げられる。添加剤の添加量は成形性、機械強度、消火性能等を損なわない範囲で適宜選択できる。添加剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[耐火シート]
本発明は、上記耐火樹脂組成物からなる種々の成形体を提供し、例えば、耐火樹脂組成物からなる耐火シートを提供する。本発明の耐火シートは、バッテリーなどの周囲に使用することで、バッテリーなどが発火した場合でも、吸熱して迅速に消火することができる。
耐火シートの厚みは特に限定はないが、5〜10000μmが好ましく、20〜4000μmがより好ましく、50〜2000μmがさらに好ましく、50〜1000μmがより更に好ましい。耐火シートの厚みが上記範囲内であると、機械強度を維持しつつ小型のバッテリーセルにも使用することができる。なお、本明細書における耐火シートの「厚み」とは、耐火シートの幅方向3点の平均厚みを指す。
耐火シートの引張弾性率は、600MPa以上が好ましい。耐火シートは、引張弾性率が600MPa以上であることで、良好な機械強度が得られ、破損等しにくくなる。耐火シートの引張弾性率は、800MPa以上がより好ましく、1000MPa以上がさらに好ましい。耐火シートの引張弾性率の上限は、特に限定されないが、一定の柔軟性を確保するために、例えば5000MPaである。なお、耐火シートの引張弾性率は、後述する実施例に記載の方法により測定可能である。
(耐火シートの製造方法)
本発明の耐火シートは、耐火樹脂組成物を調製し、該耐火樹脂組成物を成形することにより製造できる。耐火樹脂組成物は、樹脂、吸熱剤、及び必要に応じて配合される難燃剤、熱膨張性層状無機物、可塑剤等の任意成分をバンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等の公知の混合装置を用いて混合することにより得られる。
耐火樹脂組成物を耐火シートに成形する方法としては、具体的には、押出成形、プレス成形、及び射出成形が挙げられ、中でも押出成形が好ましく、単軸押出機、二軸押出機、射出成型機等を用いて成形することができる。
耐火シートは、耐火樹脂組成物の希釈液を離型シート上に塗布し乾燥することで成形してもよい。耐火樹脂組成物を希釈する際に使用する溶剤としては、特に限定されないが、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸n−ブチルなどのエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶媒、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒などが挙げられる。
耐火樹脂組成物の希釈液は、通常、樹脂が溶剤により溶解され、かつ吸熱剤、必要に応じて配合される難燃剤、熱膨張性層状無機物、無機充填材が溶剤中に分散されスラリーとなる。スラリーとする場合、例えば、まず、溶媒、分散剤、吸熱材などを含む無機粉末をビーズミルなどの分散混合機により攪拌して無機分散液を作製する。その後、無機分散液に、予め溶剤に溶解した樹脂溶液を添加し、上記分散混合機によりさらに攪拌することで、耐火樹脂組成物の希釈液を作製するとよい。
耐火樹脂組成物の希釈液における固形分濃度は、例えば30〜70質量%、好ましくは35〜65質量%、より好ましく40〜60質量%である。固形分濃度が下限値以上であると、効率的に耐火シートを成形することができる。また、上記上限値以下とすることで、樹脂を溶媒に溶解させ、かつ吸熱剤を溶媒に分散させやすくなる。
(耐火多層シート)
本発明の耐火シートは、耐火シート単体で用いられてもよいし、耐火シート以外の層が積層されて耐火多層シートを構成してもよい。耐火多層シートは、例えば、上記耐火シートと、耐火シートの少なくとも一方の面に設けられる粘着材とを備えるものであるとよい。粘着材が備える耐火多層シート(耐火テープともいう)は、粘着材を介してバッテリーに貼り合わせることができる。粘着材は、耐火シートの一方の面上に設けられてもよいし、耐火シートの両面に設けられてもよい。粘着材が耐火シートの両面に設けられることで、例えば、2つのバッテリーセルの間に耐火シートが配置される場合、耐火シートは両方のバッテリーセルに貼り合わせることができる。
粘着材は、耐火シートを他の部材に感圧接着することができる部材であり、粘着剤層からなるものでもよいし、基材の両表面に粘着剤層が設けられた両面粘着テープでもよいが、粘着剤層からなることが好ましい。なお、両面粘着テープは、一方の粘着剤層が耐火シートに貼り合わせられることで、積層されて粘着材を構成することになる。
粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられるが、これらに限定されない。粘着材の厚みは、特に限定されないが、例えば、3〜500μm、好ましくは10〜200μmである。
また、両面粘着テープに使用する基材は、樹脂フィルム、不織布など、両面粘着テープに使用される公知の基材を使用するとよい。
(耐火積層体)
本発明の多層耐火シートは、基材と、基材の少なくとも一方の面に設けられる耐火シートとを有する積層体(以下、「耐火積層体」ともいう)であってもよい。基材は、耐火シートの支持体として機能するものである。耐火シートは、基材の片面のみに設けられてもよいが、基材の両面に設けられてもよい。
ここで、基材は、可燃層であっても準不燃層又は不燃層であってもよい。基材の厚みは特に限定されないが、例えば5μm〜1mmである。基材としては、樹脂、金属、金属以外の無機材料、又はこれらの複合体などにより形成される。また、基材の形態としては、フィルム、箔などでもよいし、クロス、メッシュなどでもよい。したがって、例えば、樹脂フィルム、金属箔、金属クロス、金属メッシュ、有機繊維クロス、金属以外の無機材料のクロス(無機繊維クロス)などが挙げられる。
(耐火積層体の製造方法)
上記した基材と耐火シートとを有する耐火積層体は、耐火樹脂組成物を押出成形などすることで、基材の一方の面又は両面上に耐火シートを形成することで製造することができる。また、耐火積層体は、溶剤により希釈した耐火樹脂組成物の希釈液を、基材の一方の面又は両面に塗布し、乾燥することで、基材の一方の面又は両面上に耐火シートを形成することで製造してもよい。希釈する際に使用する溶剤の種類、希釈液における固形分濃度などは上記したとおりである。
さらに、耐火積層体は、予め成形した耐火シートを、基材の一方の面又は両面に圧着などすることで積層させて製造してもよい。
なお、基材の両面に、耐火シートを形成する場合には、両面に同時に耐火シートを形成してもよいし、片面ずつ順次、耐火シートを形成してもよい。
本発明の耐火積層体は、耐火積層体の少なくとも一方の面にさらに粘着材が設けられてもよい。粘着材は、耐火シートが基材の一方の面のみに設けられる場合、基材の他方の面に設けられてもよいし、耐火シート上に設けられてもよいが、耐火シート上に設けられることが好ましい。耐火シート上に粘着材が設けられると、耐火積層体は、粘着材を介してバッテリーに貼り合わせた場合、バッテリー側から、耐火シート、基材の順で配置されることになる。このような配置により、消火性能が高めやすくなる。
また、耐火シートが基材の両面に設けられる場合、粘着材は、一方の耐火シート上に設けられてもよいし、両方の耐火シート上に設けられてもよいが、両方の耐火シート上に設けられることが好ましい。粘着材が両方の耐火シート上に設けられることで、例えば、2つのバッテリーセルの間に耐火積層体が配置される場合、耐火積層体は両方のバッテリーセルに貼り合わせることができる。
なお、粘着材の具体的な構成は、上記したとおりである。
[バッテリー]
本発明の耐火樹脂組成物は、バッテリーに使用されることが好ましい。耐火樹脂組成物は、上記のとおり、耐火シートなどに成形されるものであり、耐火シート又は耐火多層シートとして、バッテリーに用いられることが好ましい。バッテリーは、通常、少なくとも1つのバッテリーセルを有し、そのバッテリーセルに耐火シート又は耐火多層シートが取り付けられるとよい。耐火シート又は耐火多層シートは、通常、バッテリーセルの表面に配置される。バッテリーは、バッテリーセルを1つ有してもよいし、2つ以上有してもよい。
バッテリーセルは、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、及び負極端子等が外装部材に収容されたバッテリーの構成単位を指す。また、バッテリーセルは、セルの形状により、円筒型、角型、ラミネート型に分類される。
バッテリーセルが円筒型の場合、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、負極端子、絶縁材、安全弁、ガスケット、及び正極キャップ等が外装缶に収容されているバッテリーの構成単位を指す。一方、バッテリーセルが角型の場合、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、負極端子、絶縁材、及び安全弁等が外装缶に収容されているバッテリーの構成単位を指す。バッテリーセルがラミネート型の場合、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、及び負極端子等が外装フィルムに収容されているバッテリーの構成単位を指す。ラミネート型のバッテリーでは、2枚の外装フィルムの間、或いは、1枚の外装フィルムが例えば2つ折りで折り畳まれ、その折り畳まれた外装フィルムの間に、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、及び負極端子等が配置され、外装フィルムの外縁部がヒートシールによって圧着されている。外装フィルムとしては例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されたアルミニウムフィルム等が挙げられる。
また、バッテリーセルは、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケル・水素電池、リチウム・硫黄電池、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル・鉄電池、ニッケル・亜鉛電池、ナトリウム・硫黄電池、鉛蓄電池、空気電池等の二次電池であり、これらの中でもリチウムイオン電池が好ましい。
バッテリーは、例えば、携帯電話及びスマートフォン等の小型電子機器、ノートパソコン、自動車等に使用されるが、これらに限定されない。
耐火シート又は耐火多層シートは、バッテリーセルのいずれの表面上に設けられるとよいが、いずれの場合も、耐火シートがバッテリーセルの大部分(例えば、表面積の50%以上、より好ましくは70%以上)の表面を覆うことが好ましい。耐火シートがバッテリーセル表面の大部分を覆うことでバッテリーセルの発火に対して、迅速に消火しやすくなる。
また、バッテリーセルは、安全弁を有することが多いが、安全弁を有するバッテリーセルにおいては、耐火シート又は耐火多層シートのいずれを使用する場合も、耐火シートによって安全弁を覆うように設けられることが好ましい。このとき、耐火シートは、安全弁の機能を担保するために、安全弁を密封させないように覆うとよい。さらに、ラミネート型のバッテリーセルの場合には、ヒートシールによって圧着されるヒートシール部を耐火シートによって覆うように設けられることが好ましい。
バッテリーセルは、安全弁又はヒートシール部から発火することが多いため、これらを耐火シートで覆うことでバッテリーセルの発火をより有効に消火しやすくなる。
さらに、耐火シートが、バッテリーセルの大部分の表面を覆い、かつバッテリーセルが安全弁又はヒートシール部を有する場合、耐火シートは安全弁又はヒートシール部も覆うように配置されることがより好ましい。例えば、耐火シートや耐火多層シートは、バッテリーセルに巻くように配置されるとよい。
例えば、図1に示すようにバッテリーセル11が角型の場合、耐火シート12は、バッテリー10において、バッテリーセル11の外周面を巻き付けられるように配置され、例えば、その主面11A,11Bと、端面11C,11Dの上に配置されることが好ましい。なお、主面11A,11Bとは、角型のバッテリーセル11において、最も面積が大きくなる両面であり、端面11C,11Dは、主面11A,11Bを接続する端面である。角型セルでは、一般的に、端面11C,11Dのいずれかに安全弁(図示しない)が設けられるため、図1の構成においても、耐火シート11がバッテリーセル11の安全弁を覆う。
また、例えば、図2に示すようにバッテリーセル11が角型の場合、耐火シート12は、主面11A,11Bの両方のみに設けられてもよい。さらに、主面11A,11Bのうち、一方のみに設けられてもよい。
バッテリーセル11がラミネート型の場合、図3に示すように、耐火シート12は、例えば、バッテリーセル11の両面11X,11Yそれぞれを覆うように設けられるとよい。このとき、耐火シート12は、ヒートシール部11Zも覆うように配置されるとよい。 なお、ラミネート型においても、耐火シート12は、一方の面11Xのみを覆うように設けられてもよい。さらに、ラミネート型においても、耐火シート12は、バッテリーセル11の外周面を巻くように配置されてもよい。
さらに、図4に示すように、バッテリーセル11が円筒型の場合、耐火シート12は、バッテリーセル11の外周面に巻き付けられるように配置されればよい。
また、図5に示すように、複数のバッテリーセル11が設けられている場合は、耐火シート12をバッテリーセル11、11の間に配置することができる。このような構成によれば、1つのバッテリーセル11が熱暴走により発火しても、耐火シート12によって有効に消火されることになるので、隣接するバッテリーセル11が連続的に発火したりすることを防止できる。
図5に示すバッテリーは、模式的にバッテリーセル11を2つのみ示すが、3つ以上のバッテリーセルが設けられてもよい。その場合、バッテリーセル11、11の間それぞれには、耐火シート12が配置されるとよい。
なお、図1〜5の構成において、耐火シートの代わりに耐火多層シートを使用してもよい。例えば、図1〜4の構成では、耐火シートと耐火シートの一方の面に設けた粘着材を備える耐火多層シートを使用するとよく、その場合、耐火多層シートは粘着材を介してバッテリーセル11に接着されるとよい。同様に、図5の構成においては、耐火シートと耐火シートの両面に設けた粘着材とを備える耐火多層シートを使用するとよく、その場合、耐火多層シートは、各粘着材により、耐火多層シートの両面をバッテリーに貼り合わせるとよい。
また、耐火多層シートは、耐火シートと基材とを備える耐火積層体であってもよく、その場合、図1〜5の構成において、耐火シートの代わりに耐火積層体を配置すればよい。また、耐火積層体は、適宜粘着材を介してバッテリーセルに貼り合わされるとよい。
ただし、図1〜5に示した構成は、耐火シート又は耐火多層シートの配置位置の一例を示したに過ぎず、これら以外の位置に配置されてもよい。
[外装フィルム]
本発明の耐火シートは、バッテリーセルの外装フィルムとして用いることができる。一般に、外装フィルムは、基材層、金属層、及びシーラント層をこの順に備える積層体であり、各層の接着力を高める目的で、さらに接着層を備える場合もある。
図6に、本発明の耐火シートを備える外装フィルムの一実施形態の断面図を示す。外装フィルム20は、耐火シート24を備える外装フィルムである。外装フィルム20は、耐火シート24以外にも、基材層21、金属層22、及びシーラント層23を備え、詳細には、基材層21、耐火シート24、金属層22、及びシーラント層23がこの順に積層されている。外装フィルム20は、シーラント層23同士をヒートシールすることで容器に加工することができ、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、及び負極端子等のバッテリーセルの構成要素を収容して、密封することができる。すなわち、外装フィルム20を外装材とするバッテリーセルとすることができる。
外装フィルム20は、本発明の耐火シートを備えているため、バッテリーセルの短絡等の異常により発火が生じた場合でも、短時間で消火することが可能である。さらに、図6の構成において、耐火シート24は、金属層22と基材層21との接着力を高める接着層としての機能も有する。
なお、図6では、耐火シート24は、基材層21と金属層22の間に設けられているが、金属層22とシーラント層23との間に設けられていてもよく、基材層21の外側に設けられていてもよい。ただし、消火性を良好とする観点から、図6に示すように、耐火シートは、基材層21と金属層22の間の設けられることが好ましい。
また、図7に示すように、耐火シート24と金属層22の間に接着層25を設けてもよい。これにより、耐火シート24と金属層22との接着力を高めることができる。なお、接着層25の位置は、この態様に限定されず、外装フィルムを構成する任意の層間に配置してもよく、例えば、耐火シート24と基材21の間などに設けてもよい。
また、上記したように、外装フィルムは、一般に基材層、金属層、及びシーラント層がこの順に積層された積層体であるが、基材層の代わりに、本発明の耐火シートを用いて、耐火シート、金属層、シーラント層がこの順に積層された外装フィルムとすることも可能である。この場合も、任意の2つの層の間に接着層を設けてもよく、例えば接着層を耐火シートと金属層の間などに設けるとよい。
(基材層)
基材層21を形成する材料としては、特に制限されないが、絶縁性を備えるものが好ましい。基材層21を形成する材料としては、樹脂が好ましく、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、これらの混合物などから形成される樹脂フィルムを挙げることができる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが好ましい。
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。
ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612などのナイロンが挙げられる。
基材層21は、上記樹脂により形成される樹脂フィルムであることが好ましく、1軸又は2軸延伸された延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。中でも、耐熱性、耐ピンホール性を高くする観点などから、延伸フィルムが好ましく、2軸延伸されたフィルムがより好ましい。基材層は、耐ピンホール性を高める観点から、異なる素材を積層させて多層としてもよい。
基材層の厚さは特に限定されないが、好ましくは5〜200μmであり、より好ましくは10〜100μmであり、さらに好ましくは20〜70μmである。基材の厚さが上記下限値以上であると、耐ピンホール性などの機械的強度が向上し、上記上限値以下であると、外装フィルム全体の厚さが薄くなり、バッテリーセルが軽量化又は小型化しやすくなる。
(金属層)
本発明の外装フィルムは、上記のとおり金属層22を備える。金属層を備えることで、電池用外装フィルムの耐ピンホール性が向上すると共に、電池内部に水蒸気、酸素、光等が侵入するのを防止することができる。金属層を形成する材料としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、チタン等の金属箔が挙げられ、中でもアルミニウムが好ましい。金属層の厚さ特に限定されないが、例えば、10〜200μm、好ましくは20〜100μmである。
(接着層)
接着層25は外装フィルムを構成する各層を接着することが可能であれば、特に限定されず、公知のものが特に制限なく使用できる。
接着層25の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着層の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
接着層25は、樹脂成分aにより形成され、該樹脂成分aとしては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、尿素樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコーン系樹脂、フッ化エチレンプロピレン共重合体などが挙げられる。これらの樹脂成分aは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層25の厚さは、特に限定されないが、例えば2〜50μmであり、好ましくは3〜25μmである。
(シーラント層)
シーラント層23は、最内層に該当し、バッテリーセルの組み立てのときにシーラント層同士が熱溶着してバッテリーセルの構成要素を密封する層である。
シーラント層23は、上記の通り、熱溶着して電池素子を密封できればよく、その材料は、特に限定されない。シーラント層は、例えば、樹脂成分bより形成され、樹脂成分bとしては、例えば、ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィンなどが挙げられる。
ポリオレフィンとしては、鎖状ポリオレフィン、環状ポリオレフィンが挙げられる。
前記鎖状ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン、エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン、具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらの環状モノマーの中でも、好ましくは環状アルケン、更に好ましくはノルボルネンが挙げられる。
カルボン酸変性ポリオレフィンとしては、例えば、カルボン酸変性鎖状ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。
カルボン酸変性鎖状ポリオレフィンとしては、前記鎖状ポリオレフィンをカルボン酸でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用されるカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
前記カルボン酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β−不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、前記鎖状ポリオレフィンの変性に使用されるものと同様である。
これらの中でも、樹脂成分bとしては、好ましくはカルボン酸変性鎖状ポリオレフィン、より好ましくはカルボン酸変性ポリプロピレンである。
シーラント層は、1種の樹脂成分bで形成してもよい、2種以上の樹脂成分bを組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。さらにシーラント層は、1層のみで成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。
シーラント層の厚さは、適宜選定することができ、例えば10〜100μm、好ましくは15〜50μmである。
(外装フィルムの作製)
本発明の外装フィルムは、熱ラミネート法、押出成形法などを利用して作製することができる。例えば、外装フィルムを構成する各層を準備して、熱ラミネートなどの公知の方法により積層体とすることができる。また、外装フィルムを構成する層のうち、少なくとも2層を積層した第1の積層体と、電池用外装フィルムを構成する層のうち、第1の積層体を構成する層以外の層の第2の積層体を準備して、両者を熱ラミネートや、接着層を介在させて接着するなどして、外装フィルムを作製してもよい。
第1又は第2の積層体を形成する場合において、例えば、基材層上など外装フィルムを構成する任意の層上に耐火シートを形成させる場合は、例えば、基材層上などに耐火樹脂組成物の希釈液を塗布し、乾燥させて、耐火シートを形成させることができる。また、別の方法として、基材層上などに耐火樹脂組成物を押出成形するなどして、耐火シートを形成することができる。さらに別の方法として、予め作製した耐火シートを基材層上などと重ねて熱ラミネートしてもよい。
また、例えば、金属層上にシーラント層を積層する場合は、押出成形法、熱ラミネート法、グラビアコート法、ロールコート法などを適用することができる。
(バッテリーセル)
上記した外装フィルムを用いて、外装フィルムを外装材とするバッテリーセルを作製することが好ましい。より詳細には、外装フィルムを外装材として、該外装材内に、少なくとも正極材、負極材、セパレータ、正極端子、及び負極端子等を封入したバッテリーセルとすることが好ましい。該外装材は、通常は、外装フィルムのシーラント層同士がヒートシールされることで形成されており、周縁にフランジ部(シーラント層同士がヒートシールにより密着している領域)を有する。また、通常は、該フランジ部から、正極及び負極の各々に接続された正極端子及び負極端子が外部に突出している。
バッテリーセルは、一次電池、二次電池のいずれでもよいが、好ましくは二次電池である。二次電池の種類については、特に制限されず、上記で述べた各種の二次電池に適用でき、好適な適用対象として、リチウムイオン電池が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
<実施例1〜11、比較例1〜3>
表1に示した配合にしたがって各成分を酢酸エチルに希釈して、固形分濃度50質量%の耐火樹脂組成物の希釈物を得た。得られた耐火樹脂組成物の希釈液を離型シート(リンテック社製PETフィルム)の片面に塗布して、80℃、30分間で乾燥させて、離型シート上に形成された耐火シートを得た。次いで、耐火シートを離型シートから剥離し、単体の耐火シートを得た。耐火シートの厚さは、60μmであった。
表1に示す各成分は以下の通りであった。
<樹脂>
アクリル樹脂1 :イソブチルメタクリレートの単独重合体、重量平均分子量10万、ガラス転移温度(Tg)50℃
アクリル樹脂2:イソブチルメタクリレート(50モル%)とメチルメタクリレート(50モル%)の共重合体、重量平均分子量12万、ガラス転移温度(Tg)35℃
アクリル樹脂3:エチルメタクリレートの単独重合体、重量平均分子量10万、ガラス転移温度(Tg)60℃
ポリカーボネート樹脂1:ビスフェノールA型ポリカーボネート、重量平均分子量9万、ガラス転移温度(Tg)140℃
ポリカーボネート樹脂2:芳香族ポリカーボネート、商品名「ユピゼータFPC−2136」、三菱瓦斯化学株式会社製、重量平均分子量8万、ガラス転移温度(Tg)140℃
ポリカーボネート樹脂3:芳香族ポリカーボネート、商品名「SDPOLYCA 301−10」、住化ポリカーボネート株式会社製、重量平均分子量10万、ガラス転移温度(Tg)160℃
ポリビニルアセタール樹脂:商品名「エスレックB」、積水化学工業株式会社製、重量平均分子量10万、ガラス転移温度(Tg)70℃
<吸熱剤>
水酸化アルミニウム:製品名、社製「BF013」、日本軽金属株式会社製、平均粒子径1μm
水酸化マグネシウム:製品名、「キスマ」、協和化学工業社製、平均粒子径1μm
硫酸マグネシウム7水和物:試薬、ナカライテスク社製、平均粒子径5μm
水酸化カルシウム:製品名「CAOH−2」、鈴木工業株式会社製、平均粒子径5μm
<難燃剤>
ポリリン酸アンモニウム:AP422、クラリアント社
<吸熱ピーク温度の測定方法>
各樹脂、及び吸熱剤について、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて、吸熱ピーク温度(AT),吸熱ピーク温度(BT)を測定した。測定条件は、室温から1000℃まで、昇温速度4℃/min、サンプル重量10mgであった。測定は、空気中雰囲気下で測定を行った。得られたDTA曲線から吸熱ピーク温度を読み取り、吸熱ピーク温度(AT)又は吸熱ピーク温度(BT)とした。
<樹脂及び吸熱剤の吸熱量の測定方法>
各樹脂、及び吸熱剤について、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて、吸熱量を測定した。測定条件は、室温から1000℃まで、昇温速度4℃/min、サンプル重量10mgであった。測定は、空気中雰囲気下で測定を行った。得られたDTA曲線から吸熱量(凹部の面積)を算出した。
<平均粒子径の測定方法>
各粒子の平均粒子径はレーザー回折法で測定した。具体的には、レーザー回折散乱方式粒度分布計等の粒度分布計によって求めた粒度分布における積算値50%での粒子径を平均粒子径とした。
<重量平均分子量>
各樹脂の重量平均分子量は、明細書記載の方法で、GPC法(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算により求めた。
<ガラス転移温度(Tg)>
示差走査熱量計(セイコー社製、DSC−6200R)を用い、昇温速度10℃/分でガラス転移温度を測定した。
<バッテリー消火テスト(1)>
スマートフォンに使用されるラミネート型のリチウムイオン電池の周囲に、上記実施例及び比較例で作成した耐火シートを巻くように配置して試験体を得た。300℃に設定したホットプレート上に試験体を載せて火の放出から火が消されるまでの時間を評価した。
消火時間が2秒以内であった場合を「AA」、2秒超5秒以内であった場合を「A」、消火時間が5秒超10秒以内であった場合を「B」、消火時間が10秒超であった場合を「C」として評価し、消火時間が短い方が消火性能に優れていることを表す。
<引張強度>
耐火シートの常温(23℃)における引張弾性率をJIS7113に準拠してAUTOGRAPH(島津製作所製、AGS−J)により測定して、下記で判定した。
AA:引張弾性率が1000MPa以上
A:引張弾性率が800MPa以上1000MPa未満
B:引張弾性率が600MPa以上800MPa未満
C:引張弾性率600MPa未満

※表1において、吸熱剤が2種ある場合には、上段の吸熱剤の特性の欄が上側の吸熱剤の特性を示し、下段の吸熱剤の特性の欄が下側の吸熱剤の特性を示す。
以上のように、各実施例では、樹脂(A)が吸熱反応により熱分解し、前記樹脂(A)の吸熱ピーク温度(AT)と、前記吸熱剤(B)の吸熱ピーク温度(BT)の差(AT−BT)が所定範囲内となることで、発火したリチウムイオン電池を直ちに消火でき、耐火性を良好にできた。それに対して、比較例では樹脂(A)が発熱反応により熱分解し、又は、吸熱ピーク温度の差(AT−BT)が所定範囲外であったため、発火したリチウムイオン電池を直ちに消火できず、耐火性が不十分であった。
<実施例12>
(1)耐火シートの作製
実施例1で使用したものと同様の配合を有する耐火樹脂組成物によって、厚さを50μmに変更した点を除いて、実施例1と同様に耐火シートを得た。
(2)外装フィルムの作製(基材層/耐火シート/接着層/金属層/シーラント層)
二軸延伸ナイロンフィルム(基材層、厚さ25μm)と上記(1)で作製した耐火シートとを熱ラミネートにより積層し、二軸延伸ナイロンフィルムと耐火シートとの積層体Aを得た。次いで、アルミニウム箔(金属層、厚さ40μm)の一方の表面に、カルボン酸変性ポリプロピレン層(第1シーラント層、厚さ15μm)とホモポリプロピレン層(第2シーラント層、厚さ15μm)を共押出することにより、金属層とカルボン酸変性ポリプロピレン層とホモポリプロピレン層とがこの順に積層された積層体Bを得た。積層体Bの金属層の表面に、エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)100質量部と酸無水物(メチルヘキサヒドロ無水フタル酸)100質量部とを含む接着層組成物を塗布した。該塗布した接着層組成物上に、耐火シートが接触するように積層体Aを積層した後、加熱し、接着層組成物を硬化させ接着層(厚さ10μm)とし、外装フィルムを得た。該外装フィルムは、二軸延伸ナイロンフィルム(基材層)/耐火シート/接着層/金属層/カルボン酸変性ポリプロピレン層/ホモポリプロピレン層がこの順に積層された外装フィルムであった。
<実施例13>
(1)耐火シートの作製
実施例12と同様にして耐火シートを得た。
(2)外装フィルム(基材層/耐火シート/金属層/シーラント層)
実施例12と同様にして、二軸延伸ナイロンフィルムと耐火シートとの積層体A、及び金属層とカルボン酸変性ポリプロピレン層とホモポリプロピレン層とがこの順に積層された積層体Bを得た。積層体Aと積層体Bとを熱ラミネート法により積層して、外装フィルムを得た。該外装フィルムは、二軸延伸ナイロンフィルム(基材層)/耐火シート/金属層/カルボン酸変性ポリプロピレン層/ホモポリプロピレン層がこの順に積層された外装フィルムであった。
<比較例4>
耐火樹脂組成物を比較例2で使用したものに変更した以外は、実施例12と同様にして外装フィルムを得た。
<バッテリー消火テスト(2)>
スマートフォンに使用されるバッテリーセルの構成要素(正極材、負極材、セパレータ、正極端子、及び負極端子を含有)を、実施例12、13及び比較例4それぞれで製造した外装フィルムで密封してバッテリーセルを作製した。具体的には、正極材及び負極材の各々に接続された正極端子及び負極端子を外側に突出させた状態で、周縁のシーラント層同士をヒートシールして密封し、バッテリーセル(試験体)を作製した。該試験体を、300℃に設定したホット、プレート上に試験体を載せて評価した。消火時間が1秒以内であった場合を「AA」、消火時間が1秒超3秒以内であった場合を「A」、消火時間が3秒超5秒以内であった場合を「B」、消火時間が5秒超であった場合を「C」として評価し、消火時間が短い方が消火性能に優れていることを表す。結果を表2に示す。
実施例12、13の結果から明らかなように、樹脂(A)の吸熱ピーク温度(AT)と、前記吸熱剤(B)の吸熱ピーク温度(BT)の差(AT−BT)を所定範囲内とすることで、耐火シートをバッテリーセルの外装材に用いた場合でも消火特性が優れたものとなった。
10 バッテリー
11 バッテリーセル
12 耐火シート
20 外装フィルム
21 基材層
22 金属層
23 シーラント層
24 耐火シート
25 接着層

Claims (15)

  1. 樹脂(A)と、吸熱剤(B)とを含有し、前記樹脂(A)が空気中雰囲気下で吸熱反応により熱分解する樹脂であり、前記樹脂(A)の吸熱ピーク温度(AT)と、前記吸熱剤(B)の吸熱ピーク温度(BT)の差(AT−BT)が−250℃以上250℃以下である耐火樹脂組成物。
  2. 前記吸熱剤(B)は、吸熱ピーク温度(BT)が850℃以下、吸熱量が300J/g以上である請求項1に記載の耐火樹脂組成物。
  3. 前記吸熱剤(B)の含有量が、前記樹脂(A)100質量部に対して10〜1600質量部である請求項1又は2に記載の耐火樹脂組成物。
  4. 前記吸熱剤(B)が水和金属化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
  5. 前記水和金属化合物が、金属水酸化物、及び金属塩の水和物からなる群から選ばれる1種以上である、請求項4に記載の耐火樹脂組成物。
  6. 前記樹脂(A)の吸熱ピーク温度(AT)が180〜400℃であり、かつ吸熱量が400J/g以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
  7. 前記樹脂(A)がアクリル樹脂及びポリカーボネート樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
  8. 前記アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)が5〜80℃である請求項7に記載の耐火樹脂組成物。
  9. 前記吸熱剤(B)は、吸熱ピーク温度(BT)が互いに異なる2種以上の吸熱剤を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
  10. バッテリーに使用される請求項1〜9のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物からなる耐火シート。
  12. 厚さが5〜10000μmである、請求項11に記載の耐火シート。
  13. 請求項11又は12に記載の耐火シートと、バッテリーセルとを備え、前記耐火シートが、バッテリーセルの表面に取り付けられるバッテリー。
  14. 請求項11又は12に記載の耐火シートを備える外装フィルム。
  15. 基材層、金属層、及びシーラント層をこの順で備え、
    前記耐火シートが、前記基材層と前記金属層の間、前記金属層と前記シーラント層の間、及び前記基材層の外側の少なくともいずれかに配置される請求項14に記載の外装フィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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