JP2019143139A - 耐火樹脂組成物、耐火シート、及びバッテリー - Google Patents

耐火樹脂組成物、耐火シート、及びバッテリー Download PDF

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Abstract

【課題】急激な温度上昇等に伴う発火に対して、短時間で消火することができる耐火樹脂組成物を提供する。【解決手段】耐火樹脂組成物は、熱分解開始温度が800℃以下、吸熱量が300J/g以上である吸熱剤、及び樹脂を含有し、前記樹脂100質量部に対する前記吸熱剤の含有量が10〜1600質量部である。【選択図】なし

Description

本発明は、耐火樹脂組成物、耐火樹脂組成物よりなる耐火シート、耐火シートを備えるバッテリーに関する。
リチウム電池に代表される各種バッテリーは、内部短絡等が原因によりバッテリーが熱暴走し、発火や発煙等の不具合を生じることがある。このような不具合による被害を最小限に抑えるために、異常高温になったバッテリーの熱を周囲のバッテリー及びバッテリーを収容した筐体に伝え難くする方法が検討されており、例えば、バッテリーセルの周辺に耐火材や断熱層等の保護材を用いる方法が挙げられる。
例えば、特許文献1には、外側の少なくとも一部が耐火性コーティングで覆われている電池セルが開示されており、耐火性コーティングがアブレーティブコーティング、膨張性コーティング又は吸熱性コーティングであること、ポリウレタン系コーティングが使用可能であることが開示されている。
また、特許文献2には、熱伝導率0.2W/m・K以下であり、80℃以上の温度に吸熱ピークを有する吸熱性無機化合物粒子と、結着剤とを含有する断熱層を設けた二次電池を電源とする携帯電子機器が開示されている。
特表2013−528911号公報 特許第5643648号公報
ところで、近年、携帯電話のバッテリーなどでは、電池容量が高く、急激な温度上昇により発火しやすくなっており、発火した後に短時間で消火する性質が求められている。しかし、特許文献1の耐火性コーティングは、発火が生じた場合にバッテリーを保護する性質を有するものの、発火が生じた場合に短時間で消火する性質は有することは示されていない。また、特許文献2に開示される断熱層は、電池セルで生じた熱を吸収するものの、耐火性を有することは示されていない。
そこで、本発明は、例えばバッテリーの急激な温度上昇等に伴う発火に対して、短時間で消火することができる耐火樹脂組成物、耐火シート、及び耐火シートを備えるバッテリーを提供することを課題とする。
本発明は、下記[1]〜[14]を要旨とする。
[1]熱分解開始温度が800℃以下、吸熱量が300J/g以上である吸熱剤、及び樹脂を含有し、前記樹脂100質量部に対する前記吸熱剤の含有量が10〜1600質量部である耐火樹脂組成物。
[2]前記吸熱剤の平均粒子径が0.1〜90μmである上記[1]に記載の耐火樹脂組成物。
[3]前記樹脂のメルトフローレートが1.0g/10min以上である上記[1又は2に記載の上記[1]又は[2]に記載の耐火樹脂組成物。
[4]前記吸熱剤が金属水酸化物である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
[5]前記金属水酸化物が、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムからなる群から選ばれる1種以上である、上記[4]に記載の耐火樹脂組成物。
[6]前記樹脂が熱可塑性樹脂である、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
[7]前記吸熱剤は、熱分解開始温度が500℃以下、吸熱量が500J/g以上である上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
[8]前記吸熱剤は、熱分解開始温度が互いに異なる2種以上の吸熱剤を含む上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
[9]熱分解開始温度が800℃より高い吸熱剤をさらに含む上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
[10]バッテリーに使用される上記[1]〜[9]のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
[11]上記[1]〜[10]のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物からなる耐火シート。
[12]吸熱剤及び樹脂を含有する耐火樹脂組成物からなる耐火シートであって、23℃から1000℃まで加熱した際に発生する吸熱量が120J/g以上であり、耐火シートの吸熱開始温度が、800℃以下である耐火シート。
[13]厚さが5〜10000μmである、上記[11]又は[12]に記載の耐火シート。
[14]上記[11]〜[13]のいずれか1項に記載の耐火シートと、バッテリーセルとを備え、前記耐火シートが、バッテリーセルの表面に取り付けられるバッテリー。
本発明によれば、急激な温度上昇等に伴う発火に対して、短時間で消火することができる耐火樹脂組成物、耐火シート、及び耐火シートを備えるバッテリーを提供できる。
角型バッテリーセルを有するバッテリーの一実施形態を示す概略的な断面図である。 角型バッテリーセルを有するバッテリーの別の実施形態を示す概略的な断面図である。 ラミネート型のバッテリーセルを有するバッテリーの一実施形態を示す概略的な断面図である。 円筒形バッテリーセルを有するバッテリーの一実施形態を示す概略的な断面図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
[耐火樹脂組成物]
本発明の耐火樹脂組成物は、熱分解開始温度が800℃以下、吸熱量が300J/g以上である吸熱剤、及び樹脂を含有し、樹脂100質量部に対する吸熱剤の含有量が10〜1600質量部である。
本発明の耐火樹脂組成物は、特定の熱分解開始温度及び吸熱量を有する吸熱剤と、樹脂とを特定の割合で有するため、例えばこの耐火樹脂組成物からなる耐火材を周囲に配置したバッテリーセルが発火した場合であっても、速やかに消火することが可能になる。
また、本発明の耐火樹脂組成物は、吸熱剤の平均粒子径が0.1〜90μmであることが好ましく、また、樹脂のメルトフローレートが1.0g/10min以上であることが好ましい。本発明では、吸熱剤の平均粒子径と、樹脂のメルトフローレートを一定の範囲にすることで、シートなどにするときの成形性が良好となる。成形性が良好となると、例えば、耐火シートとしたときにロール状に巻き取ることが可能になる。
<樹脂>
樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、及びエラストマー樹脂が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、及びポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
エラストマー樹脂としては、アクリロニトリルブタジエンゴム、液状アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、液状エチレン−プロピレン−ジエンゴム(液状EPDM)、エチレン−プロピレンゴム、液状エチレン−プロピレンゴム、天然ゴム、液状天然ゴム、ポリブタジエンゴム、液状ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、液状ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、液状スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体、液状水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、液状水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体、液状水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、及び液状水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
本発明においては、これら樹脂のうち1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
上記樹脂の中でも、成形性を向上させる観点から、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、及びポリ塩化ビニル樹脂(PVC)等の熱可塑性樹脂が好ましく、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が更に好ましい。
本発明において、上記したように樹脂のメルトフローレートは、1.0g/10min以上であることが好ましい。樹脂のメルトフローレートを1.0g/10min以上とすると、吸熱剤の分散性が良好となり、吸熱剤が均一に分散し、吸熱剤を多量に配合してもシート成形性が良好に維持される。メルトフローレートは、2.4g/10min以上がより好ましく、10g/10min以上がさらに好ましく、20g/10min以上がよりさらに好ましい。メルトフローレートをこれら下限値以上とすることで、吸熱剤の分散性を向上させて吸熱剤をより多量に配合しやすくなる。
また、樹脂のメルトフローレートは、40g/10min以下が好ましく、35g/10min以下がより好ましい。
なお、メルトフローレートは、JIS K 7210−2:1999に従って190℃、2.16kg荷重の条件によって測定されたものである。
耐火樹脂組成物中の樹脂の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは6質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上である。耐火樹脂組成物中の樹脂の含有量をこれら下限値以上とすると、耐火樹脂組成物を耐火シートに成形する際の成形性が向上する。また、上記含有量は、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、よりさらに好ましくは15質量%以下である。また、本発明では、これら上限値以下とすることで吸熱剤を多量に配合することが可能になる。また、15質量%以下などの少ない樹脂量においても、樹脂のメルトフローレートや吸熱剤の平均粒径を調整することで、成形性が良好となる。
<吸熱剤>
本発明において吸熱剤として、熱分解開始温度が800℃以下、吸熱量が300J/g以上であるものを用いる。熱分解開始温度、及び吸熱量のいずれかが上記範囲外となると、バッテリーなどが発火した場合に速やかに消火することが難しくなる。
また、吸熱剤は、平均粒子径が0.1〜90μmであるものが好ましい。平均粒子径が上記範囲内とすることで、樹脂中に吸熱剤が分散しやすくなり、樹脂中に吸熱剤を均一に分散でき、多量に配合させることも可能になる。
なお、以下の説明においては、熱分解開始温度が800℃以下、吸熱量が300J/g以上である吸熱剤は、単に吸熱剤というが、第1の吸熱剤ということもある。
吸熱剤の熱分解開始温度は、500℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましく、300℃以下がさらに好ましく、250℃以下がよりさらに好ましい。吸熱剤の熱分解開始温度がこれら上限値以下とすることで発火時に速やかに吸熱剤が分解し、迅速に消火することが可能になる。また、吸熱剤の熱分解開始温度は、例えば50℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。
なお、熱分解開始温度は、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
前記吸熱剤の吸熱量は、好ましくは500J/g以上、より好ましくは600J/g以上、さらに好ましくは900J/g以上である。吸熱剤の吸熱量が上記範囲内であると、熱の吸収性が向上するため、耐火性がより良好となる。前記吸熱剤の吸熱量は、通常、4000J/g以下、好ましくは3000J/g以下、さらに好ましくは2000J/g以下である。
なお、吸熱量は熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
吸熱剤の平均粒子径は、0.5〜60μmがより好ましく、0.8〜40μmがさらに好ましく、0.8〜10μmがよりさらに好ましい。吸熱剤の平均粒子径が上記範囲内であると、耐火樹脂組成物中における吸熱剤の分散性が向上し、吸熱剤を樹脂中に均一に分散させたり、樹脂に対する吸熱剤の配合量を多くしたりすることができる。
なお、吸熱剤の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定したメディアン径(D50)の値である。
吸熱剤としては、上記した熱分解開始温度、吸熱量、及び平均粒子径を満たせば特に制限はないが、例えば、金属水酸化物、ホウ素系化合物、金属塩の水和物などが挙げられ、中でも金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物を用いた場合、発火により生じた熱によって水が生成し、速やかに消火することができるため好ましい。また、金属水酸化合物と金属塩の水和物との組み合わせも好ましい。
金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ハイドロタルサイト等が挙げられ、中でも、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化カルシウムが好ましい。ホウ素系化合物としては、ホウ酸亜鉛等が挙げられる。ホウ酸亜鉛は例えば2ZnO・3B・3.5HOなどの水和物であるとよい。また、金属塩の水和物としては、硫酸カルシウムの水和物(例えば、2水和物)、硫酸マグネシウムの水和物(例えば、7水和物)、カオリンクレー、ドーソナイト、ベーマイトなどが挙げられる。また、吸熱剤としては、アルミン酸カルシウム、タルクなどであってもよい。
これらの中でも、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びホウ酸亜鉛が好ましく、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムがより好ましい。
耐火樹脂組成物中の吸熱剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、10〜1600質量部である。10質量部未満とすると、バッテリーなどが発火した場合に速やかに消火することができなくなる。また、1600質量部より多くなると、吸熱剤が樹脂中に均一に分散することが難しくなり、成形性などが悪化する。
上記吸熱剤の含有量は、好ましくは100質量部以上、さらに好ましくは500質量部以上、より更に好ましくは900質量部以上である。また、好ましくは1550質量部以下、更に好ましくは1300質量部以下、より更に好ましくは1150質量部以下である。吸熱剤の含有量をこれら下限値以上とすることで、急激な温度上昇を緩和でき、かつ発火した場合でも速やかに消火することができる。また、これら上限値以下とすることで、樹脂中に均一に分散しやすくなり、成形性などが優れたものとなる。
耐火樹脂組成物は、好ましい一実施形態として、上記吸熱剤として、熱分解開始温度が500℃以下、吸熱量が500J/g以上である吸熱剤を使用する。このような吸熱剤を使用すると、バッテリーセルが発火した場合であっても、より速やかに消火することが可能になる。
また、耐火樹脂組成物は、好ましい一実施形態として、上記吸熱剤として、熱分解開始温度が互いに異なる2種以上の吸熱剤を含有する。熱分解開始温度が互いに異なる2種以上の吸熱剤を使用すると、温度上昇する過程で吸熱反応を連続的に生じさせ、効果的に消火できるようになる。また、バッテリーは例えば電解液が燃焼することが多いが、2種以上の吸熱剤を含有させると、電解液の引火点及び発火点それぞれに対応した熱分解開始温度を有する吸熱剤を使用することで、より効果的に消火できるようになる。
上記観点から、吸熱剤は、熱分解開始温度が互いに異なる2種以上を含む場合には、熱分解開始温度が50℃以上互いに異なることが好ましく、より好ましくは70℃以上互いに異なる。
吸熱剤としては、例えば異なる金属水酸化物を2種以上併用してもよいし、金属水酸化物と金属塩の水和物とを併用してもよいし、その他の組み合わせてあってもよい。
熱分解開始温度が互いに異なる2種以上を含む場合、例えば一実施形態として、熱分解開始温度が250℃以上の吸熱剤(高温側吸熱剤)と、熱分解開始温度が250℃未満の吸熱剤(低温側吸熱剤)とを併用するとよい。この場合、高温側吸熱剤の熱分解開始温度は、275℃以上が好ましく、低温側吸熱剤の熱分解開始温度は225℃以下が好ましい。また、高温側吸熱剤の熱分解開始温度は800℃以下であるが、500℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましく、低温側吸熱剤の熱分解開始温度は110℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。このような実施形態における高温側吸熱剤としては、例えば水酸化マグネシウムが挙げられ、低温側吸熱剤としては、例えば、水酸化アルミニウムが挙げられる。
また、別の一実施形態として、例えば、熱分解開始温度が150℃以上の吸熱剤(高温側吸熱剤)と、熱分解開始温度が150℃未満の吸熱剤(低温側吸熱剤)とを併用するとよい。この場合、高温側吸熱剤の熱分解開始温度は、175℃以上が好ましく、低温側吸熱剤の熱分解開始温度は130℃以下が好ましい。また、高温側吸熱剤の熱分解開始温度は800℃以下であるが、500℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、低温側吸熱剤の熱分解開始温度は50℃以上が好ましい。本実施形態における高温側吸熱剤としては、例えば水酸化アルミニウムが挙げられ、低温側吸熱剤としては、例えば、硫酸カルシウムの水和物、硫酸マグネシウムの水和物などが挙げられる。
上記のように各実施形態において、2種以上を併用する場合、高温側吸熱剤の含有量に対する低温側吸熱剤金属塩の水和物は、特に限定されないが、1/9以上9/1以下が好ましく、2/8以上8/2以下がより好ましく、3/7以上7/3以下がさらに好ましい。
<任意成分>
〔上記以外の吸熱剤〕
本発明の耐火性樹脂組成物は、上記吸熱剤(第1の吸熱剤)に加えて、熱分解開始温度が800℃より高い吸熱剤(以下、「第2の吸熱剤」ともいう)を含有していてもよい。この場合、第2の吸熱剤としては、熱分解開始温度が800℃より高く、かつ吸熱量が300J/g以上の吸熱剤が好ましい。熱分解開始温度が高く、かつ吸熱量も高い第2の吸熱剤を、上記した第1の吸熱剤と併用することで、例えば、一定量の燃焼が継続した後で、第2の吸熱剤により燃焼が抑制されるので、例えばバッテリーが燃え広がることなどが防止できる。
第2の吸熱剤の熱分解開始温度は、好ましくは1200℃以下、より好ましくは1000℃以下である。これら上限値以下とすることで、第2の吸熱剤により効果的に燃焼を抑制できる。
また、第2の吸熱剤の吸熱量は、燃焼の抑制効果を高める観点から、好ましくは500J/g以上、より好ましくは600J/g以上、さらに好ましくは900J/g以上、よりさらに好ましくは1500J/g以上である。また、第2の吸熱剤の吸熱量は、通常、4000J/g以下、好ましくは3000J/g以下、さらに好ましくは2000J/g以下である。
第2の吸熱剤としては、例えば、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、及び炭酸バリウムなどの炭酸金属塩が挙げられる。
第2の吸熱剤の含有量は、特に限定されないが、第1の吸熱剤の含有量に対する質量比(第2の吸熱剤/第1の吸熱剤)として、1/9以上7/3以下が好ましく、2/8以上6/4以下がより好ましく、2/8以上4/6以下がさらに好ましい。含有量の質量比を上記範囲内とすることで、第2の吸熱剤を使用する効果を発揮しやすくなる。
第2の吸熱剤の平均粒子径は、特に限定されないが、0.1〜90μmが好ましい。平均粒子径を上記範囲内とすることで、成形性が良好となる。第2の吸熱剤の平均粒子径は、0.5〜60μmがより好ましく、0.8〜40μmがさらに好ましく、0.8〜10μmがよりさらに好ましい。なお、第2の吸熱剤の平均粒子径の測定方法は、上記したとおりである。
〔難燃剤〕
本発明の耐火樹脂組成物は、更に難燃剤を含有することが好ましい。本発明の耐火樹脂組成物が難燃剤を含有する場合、これを用いた耐火シートに着火した場合であっても延焼を抑制することができる。
難燃剤としては、例えば、赤リン、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、及びキシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、及びリン酸マグネシウム等のリン酸金属塩、ポリリン酸アンモニウム、下記一般式(1)で表される化合物等が挙げられる。
前記一般式(1)中、R及びRは、同一又は異なって、水素、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又は炭素数6〜16のアリール基を示す。Rは、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は炭素数6〜16のアリールオキシ基を示す。
前記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、n−プロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。前記難燃剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記難燃剤の中でも、耐火シートの難燃性を向上させる観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、及び前記一般式(1)で表される化合物が好ましく、難燃性能、安全性、及びコスト等の観点からポリリン酸アンモニウムがより好ましい。
本発明の耐火樹脂組成物が難燃剤を含有する場合、その含有量は樹脂成分100質量部に対して、1〜200質量部が好ましく、5〜100質量部がより好ましく、5〜50質量部が更に好ましい。難燃剤の含有量が前記範囲内であると、耐火樹脂組成物を用いた耐火シートが着火した場合に延焼を抑制することができる。
〔熱膨張性黒鉛〕
本発明の耐火樹脂組成物は熱膨張性黒鉛を含有してもよい。耐火樹脂組成物が熱膨張性黒鉛を含有する場合、熱膨張性黒鉛は加熱されることで膨張して大容量の空隙を形成し、難燃剤として機能するため、耐火樹脂組成物を用いた耐火シートに着火した場合に延焼を抑制することができる。
熱膨張性黒鉛としては、加熱時に膨張する黒鉛であれば特に制限はなく、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、及びキッシュグラファイト等の粉末を無機酸と強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものが挙げられ、これらは炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物になっている。
前記無機酸としては濃硫酸、硝酸、及びセレン酸等が挙げられ、強酸化剤としては濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、及び過酸化水素等が挙げられる。
熱膨張性黒鉛は更に中和処理を行ったものでもよい。具体的には、前記酸処理により得られた熱膨張性黒鉛を、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和することが好ましい。
熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。膨張性黒鉛の粒度が前記範囲内であると、膨脹して大容量の空隙を作りやすくなるため難燃性が向上する。また、樹脂への分散性も向上する。
熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比は、2以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比の上限は特に限定されないが、熱膨張性黒鉛の割れ防止の観点から、1,000以下であることが好ましい。熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比が2以上であることにより、膨張して大容量の空隙を作りやすくなるため難燃性が向上する。
熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比は、10個の熱膨張性黒鉛について、それぞれ最大寸法(長径)及び最小寸法(短径)測定し、最大寸法(長径)を最小寸法(短径)で除した値の平均値を平均アスペクト比とする。熱膨張性黒鉛の長径及び短径は、例えば、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて測定することができる。
耐火樹脂組成物が熱膨張性黒鉛を含有する場合、その含有量は樹脂100質量部に対して、10〜200質量部が好ましく、20〜150質量部がより好ましく、30〜100質量部が更に好ましい。熱膨張性黒鉛の含有量が前記範囲内であると、耐火樹脂組成物中に大容量の空隙を作りやすくなるため難燃性が向上する。
〔無機充填剤〕
本発明の耐火樹脂組成物は、吸熱剤、難燃剤及び膨張性黒鉛以外の無機充填剤を更に含有してもよい。
吸熱剤及び膨張性黒鉛以外の無機充填剤としては特に制限されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物、シリカ、珪藻土、硫酸バリウム、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルーン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルーン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、及び脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機充填剤の平均粒子径は、0.5〜100μmが好ましく、1〜50μmがより好ましい。無機充填剤は、含有量が少ないときは分散性を向上させる観点から粒子径が小さいものが好ましく、含有量が多いときは高充填が進むにつれて、耐火樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するため粒子径が大きいものが好ましい。
本発明の耐火樹脂組成物が、吸熱剤及び膨張性黒鉛以外の無機充填剤を含有する場合、その含有量は樹脂100質量部に対して、好ましくは10〜300質量部、より好ましくは10〜200質量部である。無機充填剤の含有量が前記範囲内であると、これを用いた耐火シートの機械的物性を向上させることができる。
〔可塑剤〕
本発明の耐火樹脂組成物は、更に可塑剤を含有してもよい。特に樹脂成分がポリ塩化ビニル樹脂である場合、成形性を向上させる観点から可塑剤を含むことが好ましい。
可塑剤は、一般にポリ塩化ビニル樹脂成形体を製造する際に使用されている可塑剤であれば特に限定されない。具体的には、例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル可塑剤、エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、アジピン酸エステル、アジピン酸ポリエステル等のアジピン酸エステル可塑剤、トリー2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤、鉱油等のプロセスオイル等が挙げられる。可塑剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の耐火樹脂組成物が可塑剤を含有する場合、その含有量は、樹脂100質量部に対して5〜40質量部が好ましく、5〜35質量部がより好ましい。可塑剤の含有量が前記範囲内であると、押出成形性が向上する傾向があり、また成形体が柔らかくなり過ぎることを抑制することができる。
<その他成分>
本発明の耐火樹脂組成物は、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて各種の添加成分を含有させることができる。
この添加成分の種類は特に限定されず、各種添加剤を用いることができる。このような添加剤として、例えば、滑剤、収縮防止剤、結晶核剤、着色剤(顔料、染料等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、補強剤、難燃助剤、帯電防止剤、界面活性剤、加硫剤、及び表面処理剤等が挙げられる。添加剤の添加量は成形性等を損なわない範囲で適宜選択でき。添加剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<製造方法>
本発明の耐火樹脂組成物は、前記樹脂、吸熱剤、及び任意成分をバンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、及び遊星式撹拌機等の公知の装置を用いて混合することにより得ることができる。
[耐火シート]
本発明の耐火シートは、上記耐火樹脂組成物からなるものである。本発明では、耐火シートをバッテリーなどの周囲に使用することで、バッテリーなどが発火した場合でも、吸熱して迅速に消火することができる。
耐火シートの厚みは特に限定はないが、5〜10000μmが好ましく、20〜4000μmがより好ましく、50〜2000μmがさらに好ましく、100〜1800μmがさらに好ましく、500〜1500μmがより更に好ましい。耐火シートの厚みが上記範囲内であると、機械強度を維持しつつ小型のバッテリーセルにも使用することができる。なお、本明細書における耐火シートの「厚み」とは、耐火シートの幅方向3点の平均厚みを指す。
本発明の耐火シートは、耐火シート単体で用いられてもよいし、耐火シート以外の層が積層されて耐火多層シートを構成してもよい。耐火多層シートは、例えば、基材と、基材の少なくとも一方の面に設けられる耐火シートとを有する。
ここで、基材は、可燃層であっても準不燃層又は不燃層であってもよい。基材の厚みは特に限定されないが、例えば5μm〜1mmである。可燃層に使用される素材としては、例えば、布材、紙材、木材、樹脂フィルム等の一種もしくは二種以上を挙げることができる。基材が準不燃層又は不燃層である場合、準不燃層又は不燃層に使用される素材としては、例えば、金属、無機材等を挙げることができる。
また、耐火多層シートは、耐火シートと、耐火シートの少なくともいずれか一方の面に設けられる粘着剤層とを備えるものでもよい。粘着剤層は、上記基材の上に設けられてもよいし、耐火シートの表面に直接形成されてもよい。また、耐火シートの少なくともいずれか一方の面に、基材の両表面に粘着剤層が設けられた両面粘着テープが貼り付けられてもよい。すなわち、耐火シートの一方の面に、粘着剤層、基材、及び粘着剤層がこの順に設けられてもよい。
粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられるが、これらに限定されない。粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、例えば、3〜500μm、好ましくは10〜200μmである。
本発明の別の一側面において、耐火シートは、吸熱剤と樹脂を含有する耐火性樹脂組成物からなるものであって、耐火シートの吸熱量が120J/g以上となるものである。なお、本明細書において、「耐火シートの吸熱量」とは、23℃から1000℃まで加熱した際に発生する吸熱量のことを意味する。
耐火シートの吸熱量が、120J/g未満となると、バッテリーなどが発火した場合に速やかに消火することが難しくなる。バッテリーの発火を速やかに消火する観点からは、耐火シートの吸熱量は、120J/g以上であることが好ましく、400J/g以上であることがより好ましく、700J/g以上であることがさらに好ましい。
また、耐火シートに一定の樹脂を含有させて、成形性などを良好とする観点から、耐火シートの吸熱量は、2500J/g以下であることが好ましく、2000J/g以下であることがより好ましく、1500J/g以下であることがさらに好ましい。
また、上記別の側面において耐火シートの吸熱開始温度は、800℃以下である。吸熱開始温度が800℃を超えると、発火したときに短時間で適切に消火できなくなる。また、耐火シートの吸熱開始温度は、500℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましく、300℃以下がさらに好ましく、250℃以下がよりさらに好ましい。耐火シートの吸熱開始温度がこれら上限値以下とすることで発火時に速やかに耐火シートが分解して吸熱して、迅速に消火することが可能になる。
また、耐火シートの吸熱開始温度は、例えば50℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。
別の一側面における耐火シートは、上記で示したように、耐火シートに樹脂と、吸熱剤を含有させ、吸熱剤の量、種類などを上記したとおりに適宜調整することで、耐火シートの吸熱量や吸熱開始温度を上記範囲内に調整できる。本発明の別の一側面における耐火シートは、上記した耐火樹脂組成物からなるとよく、耐火シートのその他の構成も上記したとおりである。
<耐火シートの製造方法>
本発明の耐火シートは、本発明の耐火樹脂組成物を成形することにより製造することができる。具体的には、押出成形、プレス成形、及び射出成形が挙げられ、中でも押出成形が好ましく、単軸押出機、二軸押出機、射出成型機等を用いて成形することができる。
[バッテリー]
本発明の耐火シートは、バッテリーに用いられることが好ましい。バッテリーは、通常、少なくとも1つのバッテリーセルを有し、そのバッテリーセルに耐火シートが取り付けられるとよい。耐火シートは、通常、バッテリーセルの表面に取り付けられる。バッテリーは、バッテリーセルを1つ有してもよいし、2つ以上有してもよい。
バッテリーセルは、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、及び負極端子等が外装部材に収容されたバッテリーの構成単位を指す。また、バッテリーセルは、セルの形状により、円筒型、角型、ラミネート型に分類される。
バッテリーセルが円筒型の場合、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、負極端子、絶縁材、安全弁、ガスケット、及び正極キャップ等が外装缶に収容されているバッテリーの構成単位を指す。一方、バッテリーセルが角型の場合、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、負極端子、絶縁材、及び安全弁等が外装缶に収容されているバッテリーの構成単位を指す。バッテリーセルがラミネート型の場合、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、及び負極端子等が外装フィルムに収容されているバッテリーの構成単位を指す。ラミネート型のバッテリーでは、2枚の外装フィルムの間、或いは、1枚の外装フィルムが例えば2つ折りで折り畳まれ、その折り畳まれた外装フィルムの間に、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、及び負極端子等が配置され、外装フィルムの外縁部がヒートシールによって圧着されている。外装フィルムとしては例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されたアルミニウムフィルム等が挙げられる。
また、バッテリーセルは、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケル・水素電池、リチウム・硫黄電池、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル・鉄電池、ニッケル・亜鉛電池、ナトリウム・硫黄電池、鉛蓄電池、空気電池等の二次電池であり、これらの中でもリチウムイオン電池が好ましい。
バッテリーは、例えば、携帯電話及びスマートフォン等の小型電子機器、ノートパソコン、自動車等に使用されるが、これらに限定されない。
耐火シートは、バッテリーセルのいずれの表面上に設けられるとよいが、バッテリーセルの大部分(例えば、表面積の50%以上、より好ましくは70%以上)の表面を覆うことが好ましい。耐火シートが表面の大部分を覆うことでバッテリーセルの発火に対して、迅速に消火しやすくなる。
また、バッテリーセルは、安全弁を有することが多いが、安全弁を有する場合、耐火シートによって安全弁を覆うように設けられることが好ましい。このとき、耐火シートは、安全弁の機能を担保するために、安全弁を密封させないように覆うとよい。さらに、ラミネート型のバッテリーセルの場合には、ヒートシールによって圧着されるヒートシール部を覆うように設けられることが好ましい。
バッテリーセルは、安全弁又はヒートシール部から発火することが多いため、これらを耐火シートで覆うことでバッテリーセルの発火より有効に消火しやすくなる。
さらに、耐火シートは、バッテリーセルの大部分の表面を多い、かつ安全弁又はヒートシール部を有する場合、安全弁又はヒートシール部も覆うように配置されることがより好ましい。例えば、耐火シートはバッテリーセルに巻くように配置されるとよい。
例えば、図1に示すようにバッテリーセル11が角型の場合、耐火シート12は、バッテリーセル11の外周面を巻き付けられるように配置され、例えば、その主面11A,11Bと、端面11C,11Dの上に配置されることが好ましい。なお、主面11A,11Bとは、角型のバッテリーセル11において、最も面積が大きくなる両面であり、端面11C,11Dは、主面11A,11Bを接続する端面である。角型セルでは、一般的に、端面11C,11Dのいずれかに安全弁(図示しない)が設けられるため、図1の構成においても、耐火シート11がバッテリーセル11の安全弁を覆う。
また、例えば、図2に示すようにバッテリーセル11が角型の場合、耐火シート12は、主面11A,11Bの両方のみに設けられてもよい。さらに、主面11A,11Bのうち、一方のみに設けられてもよい。
バッテリーセル11がラミネート型の場合、図3に示すように、耐火シート12は、例えば、バッテリーセル11の両面11X,11Yそれぞれを覆うように設けられるとよい。このとき、耐火シート12は、ヒートシール部11Zも覆うように配置されるとよい。 なお、ラミネート型においても、耐火シート12は、一方の面11Xのみを覆うように設けられてもよい。さらに、ラミネート型においても、耐火シート12は、バッテリーセル11の外周面を巻くように配置されてもよい。
さらに、図4に示すように、バッテリーセル11が円筒型の場合、耐火シート12は、バッテリーセル11の外周面に巻き付けられるように配置されればよい。
なお、図1〜4において、耐火シート12は、耐火シート12の一方の面に設けられた粘着剤層を介してバッテリーセル11に接着されてもよい。
また、図1〜4に示した構成は、耐火シートの配置位置の一例に過ぎず、これら以外の位置に配置されてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
<実施例1〜14、比較例1〜2>
表1に示した樹脂、吸熱剤、及び難燃剤を含有する耐火樹脂組成物を、一軸押出機に供給し、150℃で押出成形し、厚さ1.0mmの耐火シートを得た。各成分としては以下のものを使用した。
<樹脂>
樹脂として、下記エチレン−酢酸ビニル(EVA)樹脂を用いた。
EVA(1):エバフレックスEV460、三井デュポンポリケミカル株式会社
EVA(2):エバフレックスEV150、三井デュポンポリケミカル株式会社
EVA(3):エバフレックスV5274、三井デュポンポリケミカル株式会社
<吸熱剤>
吸熱剤として、以下の化合物を用いた。
水酸化アルミニウム(1):BF013、日本軽金属株式会社製
水酸化アルミニウム(2):B53、日本軽金属株式会社製
水酸化アルミニウム(3):SB93、日本軽金属株式会社製
水酸化マグネシウム :キスマ、協和化学工業社製
水酸化カルシウム :CAOH−2、鈴木工業株式会社製
硫酸マグネシウム7水和物:試薬、ナカライテスク社製
ホウ酸亜鉛 :Firebreak ZB、ボラックス社製
炭酸カルシウム :ホワイトンBF−300 備北粉化株式会社
<難燃剤>
難燃剤として、以下の化合物を用いた。
ポリリン酸アンモニウム:AP422、クラリアント社
<メルトフローレート(MFR)の測定方法>
メルトフローレートは、JIS K 7210−2:1999に従って190℃、2.16kg荷重の条件によって測定した。
<吸熱剤の熱分解開始温度の測定方法>
熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて測定した。測定条件は、室温から1000℃まで、昇温速度4℃/min、吸熱剤重量10mgであった。得られたTG曲線から重量が減少し始める温度を熱分解開始温度とした。
<吸熱剤の吸熱量の測定方法>
熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて、測定条件は、室温から1000℃まで、昇温速度4℃/min、吸熱剤重量10mgであった。得られたDTA曲線から吸熱量(凹部の面積)を算出した。
<吸熱剤の平均粒子径の測定方法>
吸熱剤の平均粒子径はレーザー回折法で測定した。具体的には、レーザー回折散乱方式粒度分布計等の粒度分布計によって求めた粒度分布における積算値50%での粒子径を平均粒子径とした。
<耐火シートの吸熱量の測定方法>
熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて測定し、測定条件は、室温(23℃)から1000℃まで、昇温速度4℃/min、耐火シート重量10mgであった。得られたDTA曲線から吸熱量(凹部の面積)を算出した。
<吸熱シートの吸熱開始温度の測定方法>
熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて測定し、測定条件は、室温(23℃)から1000℃まで、昇温速度4℃/min、耐火シート重量10mgであった。得られたDTA曲線から耐火シートの吸熱量の20%に達する温度を算出し、その値を吸熱シートの吸熱開始温度とした。
<バッテリー消火テスト>
スマートフォンに使用されるラミネート型のリチウムイオン電池の周囲に、実施例及び比較例で作成した耐火シートを巻くように配置し、300℃に設定したホット、プレート上に試験体を載せて火の放出から火が消されるまでの時間を評価した。消火時間が2秒以内であった場合を「AA」、5秒以内であった場合を「A」、消火時間が5秒超10秒以内であった場合を「B」、消火時間が10秒超であった場合を「C」として評価し、消火時間が短い方が消火性能に優れていることを表す。結果を表1に示す。
<シート成形性>
一軸押出機を用いて上記実施例の条件でシートに成形したとき、巻取りロールで巻取りができ、シートのロール体ができた場合を「A」、巻取りロールで巻取りができず、シートのロール体ができなかった場合を「B」として評価した。結果を表1に示す。

※表1において、吸熱剤が2種ある場合には、上段の吸熱剤の特性の欄が上側の吸熱剤の特性を示し、下段の吸熱剤の特性の欄が下側の吸熱剤の特性を示す。
以上の実施例の結果から明らかなように、本発明によればバッテリーセルの熱暴走時における急激な温度上昇等に伴う発火に対して、短時間で消火することができる耐火性樹脂組成物を提供できた。また、実施例1〜8、11〜14では、吸熱剤の平均粒子径及び樹脂のメルトフローレートを所定の範囲内とすることで、耐火シートへのシート成形性も良好であった。
10 バッテリー
11 バッテリーセル
12 耐火シート

Claims (14)

  1. 熱分解開始温度が800℃以下、吸熱量が300J/g以上である吸熱剤、及び樹脂を含有し、前記樹脂100質量部に対する前記吸熱剤の含有量が10〜1600質量部である耐火樹脂組成物。
  2. 前記吸熱剤の平均粒子径が0.1〜90μmである請求項1に記載の耐火樹脂組成物。
  3. 前記樹脂のメルトフローレートが1.0g/10min以上である請求項1又は2に記載の耐火樹脂組成物。
  4. 前記吸熱剤が金属水酸化物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
  5. 前記金属水酸化物が、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムからなる群から選ばれる1種以上である、請求項4に記載の耐火樹脂組成物。
  6. 前記樹脂が熱可塑性樹脂である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
  7. 前記吸熱剤は、熱分解開始温度が500℃以下、吸熱量が500J/g以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
  8. 前記吸熱剤は、熱分解開始温度が互いに異なる2種以上の吸熱剤を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
  9. 熱分解開始温度が800℃より高い吸熱剤をさらに含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
  10. バッテリーに使用される請求項1〜9のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の耐火樹脂組成物からなる耐火シート。
  12. 吸熱剤及び樹脂を含有する耐火樹脂組成物からなる耐火シートであって、23℃から1000℃まで加熱した際に発生する吸熱量が120J/g以上であり、かつ耐火シートの吸熱開始温度が、800℃以下である耐火シート。
  13. 厚さが5〜10000μmである、請求項11又は12に記載の耐火シート。
  14. 請求項11〜13のいずれか1項に記載の耐火シートと、バッテリーセルとを備え、前記耐火シートが、バッテリーセルの表面に取り付けられるバッテリー。
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WO2021246451A1 (ja) * 2020-06-03 2021-12-09 積水化学工業株式会社 耐火シート及びバッテリー

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