JP2022125931A - スラリー分散液及び耐火材 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属粉など分散性の悪い機能性フィラーを用いた場合でも、スラリー中に十分に分散させることができ、かつスラリーを長期間貯蔵してもゲル化しない、ポットライフを長寿命化したスラリー分散液を提供すること。【解決手段】樹脂、金属粉を含むフィラー、及び分散剤を含有するスラリー分散液であって、分散剤の第一酸価が90mgKOH/g以上であり、かつHLBが5.5以上であるスラリー分散液である。【選択図】なし

Description

本発明はスラリー分散液及び耐火材に関する。
リチウム電池に代表される各種バッテリーは、内部短絡等が原因によりバッテリーが熱暴走し、発火や発煙等の不具合を生じることがある。このような不具合による被害を最小限に抑えるために、異常高温になったバッテリーの熱を周囲のバッテリー及びバッテリーを収容した筐体に伝え難くする方法が検討されており、例えば、バッテリーセルの周辺に耐火シートや断熱層等の保護材を用いる方法が挙げられる。
例えば、特許文献1には、外側の少なくとも一部が耐火性コーティングで覆われている電池セルが開示されており、耐火性コーティングがアブレーティブコーティング、膨張性コーティング又は吸熱性コーティングであること、ポリウレタン系コーティングが使用可能であることが開示されている。
ところで、近年、携帯電話のバッテリーなどでは、電池容量が高く、急激な温度上昇により発火しやすくなっており、従来使用されてきた耐火性コーティングよりも、より発火を抑制しやすい材料が求められている。
特表2013-528911号公報
耐火シートは、耐火性コーティングに比較して、種々の材料を用いることができ、より効果的に発火を抑制することが期待されている。このような耐火シートは、樹脂、機能性フィラーを含むスラリーを基材シートにキャスティングしてシート化される。ここで、耐火シートの耐火性能は機能性フィラーによるところが大きく、機能性フィラーのスラリー中での分散性が重要な因子である。そして機能性フィラーの分散性を向上させる目的で、スラリーには分散剤が添加される。
機能性フィラーの一つとして金属粉がある。金属粉は焼結剤であり、バッテリーなどの発火を抑制する機能を有する。しかしながら、金属粉は分散性が悪く、汎用の分散剤では、スラリーを数日間保管している間にゲル化してしまうという問題があった。
そこで本発明は金属粉など分散性の悪い機能性フィラーを用いた場合でも、スラリー中にフィラーを十分に分散させることができ、かつスラリーを長期間貯蔵してもゲル化しない、ポットライフを長寿命化したスラリー分散液を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の分散剤を用いることで、金属粉を含むフィラーを用いても、スラリーをゲル化させることなく、貯蔵することができ、数週間後であってもキャスティング法等によって容易にシート化ができることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]~[16]を提供するものである。
[1]樹脂、フィラー、及び分散剤を含有するスラリー分散液であって、分散剤の第一酸価が90mgKOH/g以上であり、かつHLBが5.5以上であるスラリー分散液。
[2]さらに可塑剤を含有する上記[1]に記載のスラリー分散液。
[3]前記フィラーが金属粉、放熱剤及び固体難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する上記[1]又は[2]に記載のスラリー分散液。
[4]前記フィラーが金属粉を含む上記[1]~[3]のいずれかに記載のスラリー分散液。
[5]前記フィラーが金属粉及び放熱剤を含有する上記[1]~[4]のいずれかに記載のスラリー分散液。
[6]前記金属粉が銅粉である上記[3]~[5]のいずれかに記載のスラリー分散液。
[7]前記分散剤の含有量が0.1~10質量%である上記[1]~[6]のいずれかに記載のスラリー分散液。
[8]前記樹脂がポリビニルブチラール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記[1]~[7]のいずれかに記載のスラリー分散液。
[9]樹脂、フィラー、及び分散剤を含有する耐火材であって、分散剤の第一酸価が90mgKOH/g以上であり、かつHLBが5.5以上である耐火材。
[10]さらに可塑剤を含有する上記[9]に記載の耐火材。
[11]前記フィラーが金属粉、放熱剤及び固体難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する上記[9]又は[10]に記載の耐火材。
[12]前記フィラーが金属粉を含む上記[9]~[11]のいずれかに記載の耐火材。
[13]前記フィラーが金属粉及び放熱剤を含有する上記[9]~[12]のいずれかに記載の耐火材。
[14]前記金属粉が銅粉である上記[11]~[13]のいずれかに記載の耐火材。
[15]前記樹脂がポリビニルブチラール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記[9]~[14]のいずれかに記載の耐火材。
[16]上記[1]~[8]のいずれかに記載のスラリー分散液より耐火材を成形する耐火材の製造方法。
本発明によれば、金属粉など分散性の悪い機能性フィラーを用いた場合でも、スラリー中に十分に分散させることができ、かつスラリーを長期間貯蔵してもゲル化しない、ポットライフを長寿命化したスラリー分散液を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
[スラリー分散液]
本発明のスラリー分散液は、樹脂、フィラー、及び分散剤を含有する。ここで、分散剤の第一酸価が90mgKOH/g以上であり、かつHLBが5.5以上であることが特徴である。
<分散剤>
本発明で用いる分散剤は、第一酸価が90mgKOH/g以上である。第一酸価は、滴定曲線において、第一当量点から算出される酸価であり、当該第一酸価が90mgKOH/g未満であるとスラリー分散液のゲル化が進行しやすく、ポットライフを長寿命化することが難しい。以上の観点から第一酸価は95mgKOH/g以上であることが好ましく、100mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。第一酸価の上限値については、本発明の効果を奏する範囲であれば、特に限定されないが、第一酸価があまりに大きいと、遊離酸の含有量が過多となり好ましくない。第一酸価の上限としては、通常は200mgKOH/g以下であり、好適には190mgKOH/g以下である。なお、第一酸価の測定は実施例に記載の方法による。
本発明で用いる分散剤は、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)が5.5以上であることが必須である。HLBは親水性と親油性のバランスを表す指標であり、HLBが大きいほど親水性が高いことを意味する。本発明において、分散剤のHLBが5.5未満であるとスラリー分散液のゲル化が進行しやすく、ポットライフを長寿命化することが難しい。以上の観点からHLBは6.0以上であることが好ましい。一方、HLBの上限値については、14.0以下であることが好ましく、12.0以下であることがさらに好ましい。HLBが上記上限値以下であるとスラリー分散液の安定性が向上する。なお、HLBの値は、Water Numberによるものであり、測定は実施例に記載の方法による。
本発明に用いる分散剤としては、上記第一酸価及びHLBの要件の両方を満足することが必要であるが、例えば、HLBの要件が好適範囲から逸脱したとしても、第一酸価が極めて好ましい場合には、本発明の効果を奏する。例えば、分散剤のHLBが5.5以上6.0未満であっても、第一酸価が極めて高い場合には、本発明の分散剤として好適に使用することができる。
本発明に用いられる分散剤としては、上記第一酸価の要件及びHLBの要件を満足するものであれば、特に限定されないが、これらの要件を満足するものとして各種の界面活性剤が挙げられ、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステルなどのリン酸エステル型、ポリカルボン酸系重合体、ポリアルキレングリコール誘導体などが挙げられ、リン酸エステル型、特にポリオキシエチレンアルキルリン酸エステルが好ましい。
ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステルにおけるオキシエチレン基の繰り返し数としては、特に限定されないが、2~6の範囲であることが好ましく、2~4の範囲であることがより好ましい。オキシエチレン基の繰り返し数が上記範囲であると親水基の含有量として適当であり、親水性と親油性の好適なバランスが得られる。
また、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステルにおける疎水基としては、炭素数8~22の炭化水素基が挙げられ、好ましくは炭素数10~20の炭化水素基である。これらの炭化水素基としては分岐を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられる。
さらに、当該分散剤のpHとしては、酸性を示すことが好ましく、pH7未満であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。下限値については、特に限定されないが、取り扱い性の点で、pHは1以上であることが好ましい。pHの測定は、10質量%水溶液としてpHメーターにて測定した値である。
本発明に用いられる分散剤の市販品としては、東邦化学株式会社製「フォスファノール」、「アンステックス」の酸型シリーズ、日油株式会社製「マリアリム」、「エスリーム」、共栄社化学株式会社製「フローレン」などがある。
本発明のスラリー分散液中の分散剤の含有量としては、0.1~10質量%の範囲であることが好ましく、0.3~9質量%の範囲であることがより好ましく、0.5~8質量%の範囲であることがさらに好ましい。上記下限値以上であると、金属粉を含むフィラーの分散性を向上することができ、スラリーを長期間貯蔵してもゲル化することがない。また、上記上限値以下であると、当該スラリーから製造される耐火材の物性に影響することもない。
<樹脂>
本発明のスラリー分散液で用いられる樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びエラストマー樹脂が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。
エラストマー樹脂としては、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン-プロピレンゴム、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体、水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
本発明においては、上述の樹脂のうち1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明のスラリー分散液に用いられる樹脂としては、上記した中でも、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂を使用すると、スラリー分散液などの塗布により、耐火層を容易に成形できる。また、熱可塑性樹脂の中でも、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等が好ましい。これらの中でも、放熱剤、焼結剤、その他の難燃剤等を大量に含有させても成形性を良好にできる観点から、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂がより好ましく、ポリビニルアセタール樹脂がさらに好ましい。
(ポリビニルアセタール樹脂)
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂であれば特に限定されないが、ポリビニルブチラール樹脂が好適である。ポリビニルブチラール樹脂を用いることで、耐火樹脂組成物における、添加剤の量を多くして樹脂の量を比較的少なくしても、成形性を高くすることが可能になる。そのため、耐火層を薄くしても十分な耐火性能を付与できる。
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量は、好ましくは20~40モル%である。水酸基量を20モル%以上とすることで、ポリビニルアセタール樹脂の極性が高くなり、耐火性添加剤などに対する接着力が強くなり、本発明のスラリー分散液を用いて作製される耐火材(以下、単に「耐火材」と記載する。)の機械的強度が向上しやすくなる。また、水酸基量を40モル%以下とすることで、本発明の耐火材が硬くなりすぎて引張強度などの機械的強度が低下することを防止する。上記水酸基量は、より好ましくは22モル%以上である。また、上記水酸基量は、より好ましくは37モル%以下、さらに好ましくは35モル%以下、よりさらに好ましくは33モル%以下である。
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、好ましくは40~80モル%である。アセタール化度を上記範囲内とすることで、上記する水酸基量を所望の範囲内とし、耐火材の機械的強度を向上することができる。アセタール化度は、より好ましくは55モル%以上であり、さらに好ましくは65モル%以上、よりさらに好ましくは67モル%以上であり、また、より好ましくは76モル%以下である。
また、上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル基量は、好ましくは0.1~30モル%である。アセチル基量がこの範囲内であると、耐湿性に優れ、また、上記する水酸基量を所望の範囲内として、耐火材の機械的強度が向上しやすくなる。これら観点から、アセチル基量は、0.2モル%以上がより好ましく、0.5モル%以上がさらに好ましく、また、15モル%以下がより好ましく、7モル%以下がさらに好ましい。
なお、アセタール化度、水酸基量、及びアセチル基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定し、また算出することができる。
ポリビニルアセタール樹脂の重合度は、好ましくは200~3000である。重合度をこれら範囲内にすることで、耐火材の強度を良好にしつつ耐火性添加剤などをスラリー分散液中に分散させることがきる。重合度は、より好ましくは250以上、さらに好ましくは300以上である。
ポリビニルアセタール樹脂の重合度を低くすると粘度も下がり、スラリー分散液中にフィラーなどを分散しやすくなり、耐火材の成形性が向上する。そのような観点から、ポリビニルアセタール樹脂の重合度は、より好ましくは1500以下、さらに好ましくは1000以下、よりさらに好ましくは900以下である。
なお、ポリビニルアセタール樹脂の重合度は、JIS K6728に記載の方法に基づいて測定した粘度平均重合度をいう。
ポリビニルアセタール樹脂の10質量%エタノール/トルエン粘度は、好ましくは5mPa・s以上、より好ましくは10mPa・s以上であり、さらに好ましくは15mPa・s以上である。また、10質量%エタノール/トルエン粘度は、好ましくは500mPa・s以下、より好ましくは300mPa・s以下であり、更に好ましくは200mPa・s以下である。ポリビニルアセタール樹脂の10質量%エタノール/トルエン粘度を上記のとおりにすることにより、スラリー分散液中にフィラーなどを分散しやすくなり、耐火材の成形性が向上する。
なお、10質量%エタノール/トルエン粘度は、次のように測定した値である。エタノール/トルエン(質量比1:1)混合溶剤150mlを三角フラスコにとり、これに秤量した試料を加え、樹脂濃度を10質量%とし、20℃の恒温室にて振とう溶解する。その溶液を20℃に保持しBM型粘度計を用いて粘度を測定して、10質量%エタノール/トルエン粘度を求めることができる。
上記アルデヒドは特に限定されないが、一般には、炭素数が1~10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1~10のアルデヒドは特に限定されず、例えば、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n-ブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-バレルアルデヒドが好ましく、n-ブチルアルデヒドがより好ましい。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂)
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂としては、非架橋型のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂であってもよいし、また、高温架橋型のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂であってもよい。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物、エチレン-酢酸ビニルの加水分解物などのようなエチレン-酢酸ビニル変性体樹脂も用いることができる。
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は、JIS K 6730「エチレン・酢酸ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定される酢酸ビニル含量が好ましくは10~50質量%、より好ましくは15~45質量%である。酢酸ビニル含量をこれら下限値以上とすることで、粘着層への接着性が高くなる。また、酢酸ビニル含量をこれら上限値以下とすることで、耐火材の機械的強度が良好となる。
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のメルトフローレートは、1.0g/10min以上であることが好ましい。エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のメルトフローレートを1.0g/10min以上とすると、フィラーなどの分散性が良好となり、これらを多量に配合しても、スラリー分散液を用いたキャスト法などにおけるシート成形性が良好に維持できる。これらの観点から、メルトフローレートは、2.4g/10min以上がより好ましく、10g/10min以上がさらに好ましい。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂のメルトフローレートは、40g/10min以下が好ましく、35g/10min以下がより好ましい。なお、メルトフローレートは、JIS K 7210-2:1999に従って190℃、2.16kg荷重の条件によって測定されたものである。
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーを含むモノマー成分を重合したものである。なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」とは、「アクリル酸アルキルエステル、又はメタクリル酸アルキルエステル」を意味する。他の類似の用語も同様である。
本発明における(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーは、(メタ)アクリル酸と脂肪族アルコールとのエステルであって、脂肪族アルコールのアルキル基の炭素数は、例えば1~18、好ましくは1~14、より好ましくは1~10、さらに好ましくは1~8である。
具体的な(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、アクリル樹脂を得るためのモノマー成分としては、上記した(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの他に、極性基含有モノマーを含んでもよい。
極性基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、及びイタコン酸等のビニル基を含有するカルボン酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、及びポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等の水酸基を有するビニルモノマー、(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルラウリロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、及びジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等の窒素含有ビニルモノマーが挙げられる。
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、5~80℃であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)をこれらの範囲内とすることで、成形性、柔軟性などを良好にしつつ、耐火材に一定の機械的強度を付与することができる。これらの観点から、アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、15~70℃であることが好ましく、25~60℃であることがさらに好ましい。なお、アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、使用するモノマー成分の種類、量を適宜選択することで調整できる。
また、アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は例えば示差熱走査熱量分析計(DSC)により測定できる。
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの重合体が好ましい。具体的には、アルキル基の炭素数が1~14である(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの重合体が好ましく、アルキル基の炭素数が1~10である(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの重合体がより好ましく、アルキル基の炭素数が1~8である(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの重合体がさらに好ましい。アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの単独重合体であってもよいし、2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの共重合体であってもよい。好適なアクリル樹脂の具体例としては、イソブチルメタクリレートの単独重合体、イソブチルメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合体などが挙げられる。アクリル樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アクリル樹脂の重量平均分子量は、フィラーなどを適切に耐火材中に分散させることができ、耐火材の成形性、機械的強度を向上させる観点から、10,000~300,000が好ましい。また、これらの観点から、アクリル樹脂の重量平均分子量は、30,000~250,000がより好ましく、60,000~200,000が更に好ましい。なお、アクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。GPC法によって重量平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工株式会社製)等が挙げられる。
(ポリ塩化ビニル樹脂(PVC))
ポリ塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル単独重合体であってもよいし、塩化ビニル系共重合体でもよい。塩化ビニル系共重合体は、塩化ビニル及び塩化ビニルと共重合可能な不飽和結合を有する単量体の共重合体であって、塩化ビニル由来の構成単位を50質量%以上含有するものである。
塩化ビニルと共重合可能な不飽和結合を有する単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリロニトリル、スチレン等の芳香族ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
また、ポリ塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニル系共重合体などを塩素化したポリ塩素化塩化ビニル樹脂でもよい。
ポリ塩化ビニル樹脂は、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以上
を併用してもよい。
(ポリビニルアルコール樹脂)
ポリビニルアルコール樹脂は、従来公知の方法に従って、ビニルエステルを重合してポリマーを得た後、ポリマーをケン化、すなわち加水分解することにより得られる。
上記ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル及び安息香酸ビニル等が挙げられる。
ポリビニルアルコール樹脂のケン化度は、好ましくは80~99.9モル%であり、より好ましくは85~99モル%である。ケン化度をこのような範囲とすると、ポリビニルアルコール樹脂の極性が高まることで吸熱剤との分散性が良好になり、耐火樹脂組成物により形成される耐火シートの機械的強度が向上しやすくなる。
上記ケン化度は、JIS K6726に準拠して測定される。ケン化度は、ケン化によるビニルアルコール単位に変換される単位のうち、実際にビニルアルコール単位にケン化されている単位の割合を示す。
(樹脂の含有量)
本発明のスラリー分散液における樹脂の含有量は、固形分基準で、例えば1~50質量%である。樹脂の含有量を1質量%以上とすることで、フィラーなどを樹脂により保持して、シート状に適切に成形できるようになる。また、50質量%以下とすることで、フィラーなどを一定量以上含有させることができるため、十分な耐火性が付与できる。また、シート成形性を良好にして、耐火材の機械的強度なども向上させる観点から、樹脂の含有量は、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましい。また、フィラーの含有量を増やして、耐火性を向上させる観点から、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
本発明のスラリー分散液は、可塑剤を含有してもよい。可塑剤は、樹脂に柔軟性を付与する機能を有し、スラリー分散液の取り扱い性を容易なものとすることできる。本発明では、樹脂としてポリビニルアセタール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂を用いるときに、可塑剤は特に有効である。
可塑剤の具体的としては、例えば、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等のアジピン酸エステルや、アジピン酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジ(ブトキシエトキシエチル)、アジピン酸ジ(メトキシテトラエチレングリコール)、アジピン酸ジ(メトキシペンタエチレングリコール)、アジピン酸(メトキシテトラエチレングリコール)(メトキシペンタエチレングリコール)などのアジピン酸エーテルエステル系可塑剤、アジピン酸ポリエステルなどの脂肪酸エステル可塑剤、エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、トリー2-エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)等の燐酸エステル可塑剤、ビス(2-エチルヘキサン酸)トリエチレングリコール等のポリオール系可塑剤、鉱油等のプロセスオイルなどが挙げられる。
可塑剤は1種を単独で、もしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
スラリー分散液が可塑剤を含有する場合、可塑剤の含有量(固形分)は、樹脂成分100質量部に対して、例えば0.3質量部以上150質量部以下の範囲であり、好ましくは10質量部以上100質量部以下の範囲、さらに好ましくは20質量部以上50質量部以下の範囲である。可塑剤は、これら下限値以上とすると、成形性が良好になりやすく、上限値以下とすることで、成形体に適度な強度が付与される。
スラリー分散液における樹脂成分と可塑剤の合計含有量は、固形分基準で、10質量%以上50質量%以下が好ましく、15質量%以上45質量%以下がより好ましく、20質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。これら下限値以上とすることで、熱膨張性部材の成形性などを良好にできる。また、柔軟性を確保して、湾曲や変形が容易となる。また、上限値以下とすることで、熱膨張性黒鉛、無機充填材などの成分を十分な量配合することが可能になる。
なお、樹脂成分と可塑剤の合計含有量とは、樹脂成分と可塑剤の両方が含有される場合には、これらの合計含有量を意味し、可塑剤を含有しない場合には樹脂成分単独の含有量を意味する。
<フィラー>
本発明のスラリー分散液は、フィラーを含有する。フィラーを使用することで、耐火材の耐火性などの各種性能を向上させることができる。
フィラーとしては、放熱剤、金属粉、固体難燃剤、熱膨張性層状無機物、吸熱剤、これら以外の無機充填剤が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、フィラーは、放熱剤、金属粉、及び固体難燃剤からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、中でも金属粉を含むことがより好ましい。
(金属粉)
金属粉は、焼結剤としての機能を持ち、バッテリーなどの発火を抑制する機能を有する。バッテリーは、発火する前に急激に膨張するため、その周囲に配置される耐火シートは裂けなどによる破損が生じ、十分な耐火性能を発揮できずに、バッテリーを発火させることがある。それに対して、焼結剤はシートの裂けなどによる破損を防止し、シート形状を維持し、高温下でも十分な耐火性能を発揮する。また、金属粉は、ゲル化しやすいが、上記分散剤と併用することでゲル化を効果的に抑制できる。
金属粉としては、高温加熱時に焼結剤としての機能を発揮できる限り特に限定されず、例えば、アルミニウム粉、ステンレス粉、タングステン粉、亜鉛粉、錫粉、ジュラルミン粉、マグネシウム粉、モリブデン粉、ベリリウム粉、カルシウム粉、金粉、銀粉、銅粉から選ばれる1種以上であることが好ましい。これらの中では、銅粉、亜鉛粉、及び錫粉が好ましく、特に銅粉が好ましい。銅粉は、バッテリーの異常発熱時の加熱により耐火材を焼結させやすく、それにより、バッテリーの発火を特に効果的に抑制できる。
金属粉は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。したがって、例えば、金属粉として銅粉を使用する場合、銅粉単独で使用してもよいし、銅粉と他の金属粉を併用してもよい。
金属粉の形状は、球状であってもよいし、鱗片状、薄片状などの板状、針状、繊維状、樹枝状、不定形状などの非球状であってもよいが、非球状が好ましく、中でも板状であることがより好ましい。したがって、金属粉としては板状の銅粉であることが特に好ましい。金属粉が、非球状、特に板状であると、高温加熱時に焼結しやすくなり、バッテリーなどの異常発熱時による発火を効果的に防止しやすくなる。
金属粉のアスペクト比は、1以上であればよく、発火を効果的に防止する観点から、例えば1.2以上であることが好ましい。また、金属粉は、板状などの非球状であることが好ましく、アスペクト比が2以上であることが好ましく、より好ましくは2.5以上であり、さらに好ましくは3以上である。なお、アスペクト比は、その上限に関して特に限定されないが、例えば30以下であってもよいし、10以下であってもよい。
なお、アスペクト比とは、金属粉の最大長さの最小長さに対する比(最大長さ/最小長さ)であり、例えば、形状が板状である場合は、金属粉の最大長さの厚みに対する比(最大長さ/厚み)である。アスペクト比は走査型電子顕微鏡で、十分な数(例えば250個)の金属粉を観察して平均値として求めるとよい。
金属粉の平均粒子径は、好ましくは0.5~150μm、より好ましくは1~100μm、更に好ましくは5~50μmである。金属粉の平均粒子径が上記範囲内であると、成形性などを大きく損なうことなく、バッテリーなどの発火を効果的に抑制できる。特に、金属粉の平均粒子径が5μm以上であると、高温加熱時に金属粉が焼結しやすくなり、バッテリーの発火を効果的に抑制することができる。一方、50μm以下とすることで、金属粉を大量に含有させても、成形性が低下することを防止できる。なお、本明細書において平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定したメディアン径(D50)の値である。
また、金属粉の平均粒子径が大きい場合にはアスペクト比が小さくても高い発火抑止効果が得られる。具体的には、金属粉の平均粒子径が例えば10μm以上、好ましくは20μm以上である場合には、アスペクト比は1以上2未満であってもよい。
一方で、金属粉の平均粒子径が小さい場合にはアスペクト比が大きくなることで、上記の通り焼結しやすくなり、高い発火抑止効果が得られやすくなる。具体的には、金属粉の平均粒子径が例えば20μm未満、好ましくは10μm未満である場合には、アスペクト比は2以上が好ましく、より好ましくは2.5以上であり、さらに好ましくは3以上である。
金属粉の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは20質量部以上800質量部以下である。20質量部以上であることで金属粉が焼結剤の機能を発揮しやすくなり、バッテリーなどの発火を抑制しやすくなる。また、800質量部以下とすることで、樹脂により金属粉を適切に保持でき、耐火材の成形性、機械的強度なども良好となる。金属粉の含有量は、金属粉による焼結剤の機能を十分に発揮させ、バッテリーなどの発火をより抑制させる観点から、50質量部以上がより好ましく、100質量部以上がさらに好ましく、200質量部以上がよりさらに好ましい。また、耐火シートの成形性、機械的強度を良好にする観点から、金属粉の含有量は、700質量部以下がより好ましく、600質量部以下がさらに好ましく、550質量部以下がよりさらに好ましい。
(放熱剤)
本発明のスラリー分散液は、フィラーとして放熱剤を含有していてもよい。放熱剤を含有することで、本発明のスラリー分散液から得られる耐火材は、異常高温になった際の熱を外部に放出させることができ、耐火性が良好となる。特に、バッテリーは、急激な温度上昇が局所的に生じ、局所的に発熱した部分から発火が生じやすいが、放熱剤により耐火材の面方向に沿って放熱させることで、局所的な発熱を抑制し、それにより、バッテリーの発火を効果的に抑制することができる。
放熱剤としては、金属粉以外の熱伝導性フィラーを使用できる。具体的な放熱剤としては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、黒鉛などが挙げられる。中でも、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、及び黒鉛が好ましく、窒化ホウ素、及び黒鉛がより好ましく、黒鉛がさらに好ましく、黒鉛の中でも膨張化黒鉛が特に好ましい。放熱剤として、膨張化黒鉛、窒化ホウ素を使用することで、耐火シートは、加熱後でも一定の強度を有してシート形状を維持し、十分な耐火性能を発揮できる。
なお、膨張化黒鉛とは、熱膨張性黒鉛を加熱膨張し、プレスし、シート化させ、そのシートを粉砕したものをいう。また、黒鉛としては、天然黒鉛でもよく、鱗片状黒鉛も好ましい。なお、本明細書において「鱗片状黒鉛」とは、天然黒鉛で鱗片状の形状を有するものをいう。
放熱剤は、球状フィラーであってもよいし、鱗片状、薄片状などの板状、針状、繊維状、樹枝状、不定形状などの非球状フィラーであってもよいが、非球状フィラーが好ましく、中でも板状フィラーであることがより好ましい。非球状フィラー、中でも板状フィラーを使用することで、耐火材の放熱性を向上させ、それにより、バッテリーの発火を効果的に抑制することができる。
したがって、放熱剤としては、鱗片状の窒化ホウ素、鱗片状の膨張化黒鉛、鱗片状黒鉛などの板状の窒化ホウ素、板状の黒鉛が好ましく、特に、鱗片状の膨張化黒鉛が好ましい。
放熱剤としては、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。したがって、例えば、放熱剤として膨張化黒鉛を使用する場合、膨張化黒鉛単独で使用してもよいし、膨張化黒鉛と他の放熱剤を併用してもよい。
放熱剤は、上記の通り板状などの非球状フィラーであるとよく、アスペクト比が例えば2以上であることが好ましく、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3以上である。なお、アスペクト比は、その上限に関して特に限定されないが、例えば30以下であってもよいし、10以下であってもよい。
放熱剤は、板状フィラーなどの非球状フィラーであり、耐火シートにおいて配向していることが好ましい。具体的には、放熱剤は、その長軸(最大長さの方向)が耐火材の面方向に配向するように、耐火材中に含まれることが好ましい。
なお、放熱剤を耐火材の面方向に配向させる方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂と放熱剤を含む耐火樹脂組成物を、押出機からシート状に押出すことによって、配向させることができる。あるいは、耐火樹脂組成物を熱プレスすることや、耐火樹脂組成物を面方向に沿って塗工することなどによっても面方向に沿って配向させることができる。
放熱剤の平均粒子径は、好ましくは0.5~150μm、より好ましくは1~100μm、更に好ましくは5~50μmである。放熱剤の平均粒子径が上記下限値以上であると、放熱剤により耐火材の放熱性を向上させて、バッテリーの発火を効果的に抑制することができる。一方で、上記上限値以下であることで、放熱剤を大量に含有させても、耐火シートの成形性が低下することを防止できる。
なお、放熱剤の熱伝導率は特に限定されないが、好ましくは10W/m・K以上であり、より好ましくは15W/m・K以上、さらに好ましくは20W/m・K以上であり、よりさらに好ましくは50W/m・K以上であり、特に好ましくは90W/m・K以上である。熱伝導率がこのような範囲であると、バッテリーの発火を抑制しやすい耐火材を得やすくなる。
放熱剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、例えば20質量部以上800質量部以下である。20質量部以上であることで放熱剤によりバッテリーなどにおける発熱を適切に放熱でき、バッテリーなどの発火を抑制しやすくなる。また、800質量部以下とすることで、樹脂により放熱剤を適切に保持でき、耐火シートの成形性、機械的強度なども良好となる。バッテリーなどの発火をより抑制しやすくする観点から、50質量部以上がより好ましく、80質量部以上がさらに好ましく、90質量部以上がよりさらに好ましい。また、耐火シートの成形性、機械的強度を良好にする観点から、放熱剤の含有量は、700質量部以下が好ましく、600質量部以下がより好ましく、550質量部以下がさらに好ましい。
なお、放熱剤として膨張化黒鉛を使用する場合、膨張化黒鉛の含有量の好適な範囲は上記の放熱剤と同様であり、具体的には、樹脂100質量部に対して、好ましくは20~800質量部、より好ましくは50~700質量部、さらに好ましくは80~600質量部、よりさらに好ましくは90~550質量部である。
本発明においては、フィラーとして、焼結剤としての機能を有する前記金属粉と放熱剤を併用することが好ましい。併用することにより、高温加熱時に、金属粉が焼結してシートが裂けることを防止しつつ放熱剤により面方向に沿って放熱させることで、バッテリーなどの発火をより効果的に抑制できる。
本発明のスラリー分散液が、放熱剤と金属粉の両方を含有する場合、放熱剤の含有量に対する金属粉の含有量の質量比(金属粉/放熱剤)は、例えば1/9~9/1であり、2/8~8/2が好ましく、3/7~7/3がより好ましく、4/6~6/4がさらに好ましい。以上の質量比で放熱剤と金属粉を併用することで、バッテリーなどの発火を効果的に抑制できる。
<<固体難燃剤>>
本発明のスラリー分散液は、フィラーとして固体難燃剤を含有していてもよい。本発明に係る耐火材は、室温及び常圧で固体である難燃剤である。固体難燃剤としては、低融点ガラス、熱膨張性固体リン系化合物以外のリン系化合物、メラミン系化合物、及び環状尿素化合物などの窒素含有難燃剤などが挙げられる。
本発明に係る耐火層は、固体難燃剤を含有することで、膨張残渣がメッシュ状となった状態で保持されやすく、可燃性ガスや火炎を外部に放散しつつ断熱することができ、消火性、耐火性が良好になる。
<<<低融点ガラス>>>
固体難燃剤として使用する低融点ガラスは、加熱されると軟化して溶融状態となり、無機バインダーとして作用し、耐火シートの機械的強度を向上させる効果を有する。低融点ガラスは、具体的には1000℃以下の温度で軟化又は溶融するガラスを意味し、低融点ガラスの軟化温度は200~900℃が好ましく、より好ましくは300~800℃、さらに好ましくは300~600℃である。なお、軟化温度は、例えばDTAの変曲点から測定した値である。
上記低融点ガラスとしては、ケイ素、アルミニウム、ホウ素、リン、亜鉛、鉄、銅、チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデン、タリウム、アンチモン、錫、カドミウム、砒素、鉛、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン、カルコゲンよりなる群から選ばれた少なくとも1種以上の元素と酸素からなるガラスが挙げられ、単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。低融点ガラスは、ガラスフリットなどの粒子状などであるとよい。
上記低融点ガラスとしては、日本琺瑯釉薬株式会社製、商品名「4020」(リン酸アルミニウム塩系低融点ガラス、軟化温度:380℃)、日本琺瑯釉薬株式会社製、商品名「4706」(ホウケイ酸塩系低融点ガラス、軟化温度:610℃)、AGCテクノグラス株式会社製、商品名「FF209」(ホウ酸リチウム塩系低融点ガラス、軟化温度:450℃)等が市販されている。
<<<リン系化合物>>>
固体難燃剤として使用されるリン系化合物は、リン原子を有する化合物であり、例えば、ポリリン酸化合物が挙げられる。ポリリン酸化合物としては、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミドなどが挙げられ、これらのなかではポリリン酸アンモニウムが好ましい。また、低級リン酸類の金属塩であってもてよい。
「低級リン酸類」は、無機リン酸類のうち、縮合していない、つまり高分子化していない無機リン酸を指す。すなわち、無機リン酸類は、その分子中におけるリン原子が1つとなるものである。低級リン酸類としては第一リン酸、第二リン酸、第三リン酸、メタリン酸、亜リン酸、次亜リン酸等が挙げられる。金属塩に使用される金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表3B族金属、遷移金属などのいずれでもよい。これらのなかでは、代表的には、亜リン酸の金属塩であり、好ましい具体的な化合物としては、亜リン酸アルミニウムが挙げられる。亜リン酸アルミニウムは、加熱により膨張し、かつ膨張度が高くなるため、耐火性、消火性を向上させやすくなる。
<<<窒素含有難燃剤>>>
窒素含有難燃剤は、窒素原子を有する難燃剤であり、メラミン系化合物、環状尿素化合物などが挙げられる。窒素含有難燃剤は、後述するようにメラミン骨格、環状尿素などの窒素原子を含有する基本骨格を有する難燃剤であればリン原子をさらに含有してもよい。
メラミン系化合物としては、メラミン骨格、メラム、メレムなどのメラミン誘導体の骨格を有する化合物が挙げられる。具体的には、ピロリン酸メラミン、オルトリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、ポリメタリン酸メラミン、硫酸メラミン、ピロ硫酸メラム、有機スルホン酸メラム、有機ホスホン酸メラミン、有機ホスフィン酸メラミン、メラミンシアヌレート及びホウ酸メラミンなどが挙げられる。
固体難燃剤としては、上記した中でも、低融点ガラス、ポリリン酸化合物、メラミン系化合物、環状尿素化合物から選択される少なくとも1種であることが好ましく、より好ましくは低融点ガラス、ポリリン酸化合物から選択される少なくとも1種である。これらを使用することで、膨張残渣をメッシュ状に保持し、かつ膨張残渣の硬度を高くして消火性、耐火性を向上しやすくする。
また、固体難燃剤の具体的な好適な化合物は、低融点ガラス、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミド、ピロリン酸メラミン、オルトリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、ポリメタリン酸メラミン、硫酸メラミン、ピロ硫酸メラム、有機スルホン酸メラム、有機ホスホン酸メラミン、有機ホスフィン酸メラミン、メラミンシアヌレート及びホウ酸メラミンから選択される少なくとも1種であり、より好ましくは低融点ガラス、ポリリン酸アンモニウムから選択される少なくとも1種であり、特に好ましくはポリリン酸アンモニウムである。
なお、環状尿素化合物としては、エチレン尿素(2-イミダゾリジノン)、プロピレン尿素(テトラヒドロ-2-ピリミジノン)、ヒダントイン(2,5-イミダゾリジンジオン)、シアヌル酸〔1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン〕、及びビオルル酸〔5-(ヒドロキシイミノ)ピリミジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン〕などが挙げられる。
スラリー分散剤における固体難燃剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、10~1000質量部であることが好ましい。10質量部以上とすることで、耐火材の膨張残渣がメッシュ状に保持されやすく、可燃ガス、火炎などを外部に放散して耐火性、消火性が向上する。また、1000質量部以下とすることで、耐火材の機械的強度及び成形性が良好になりやすい。さらに、含有量を上記範囲内とすることで、膨張残渣の硬さを高くでき、消火性、耐火性を優れたものとしやすい。これら観点から、上記固体難燃剤の含有量は、40質量部以上がより好ましく、100質量部以上がさらに好ましく、また、800質量部以下がより好ましく、500質量部以下がさらに好ましく、400質量部以下がよりさらに好ましい。
<その他のフィラー>
本発明のフィラーには、上記化合物以外に、熱膨張性層状無機物、吸熱剤、これら以外の無機充填剤等を含めることもできる。
<<熱膨張性層状無機物>>
熱膨張性層状無機物は、加熱時に膨張する従来公知の物質であり、例えば、バーミキュライト、熱膨張性黒鉛などが挙げられ、中でも熱膨張性黒鉛が好ましい。熱膨張性層状無機物としては、粒子状やりん片状のものを用いてもよい。熱膨張性層状無機物、特に熱膨張性黒鉛は、膨張度を高く(例えば、100ml/g以上、さらには150ml/g以上など)することが可能であり、加熱膨張時に大容量の空隙を形成できる。また、膨張開始温度を低く(例えば、200℃以下、さらには140℃以下など)することができる。そのため、耐火材の耐火性、消火性能を優れたものにすることができる。
熱膨張性黒鉛は、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、無機酸と、強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。無機酸としては濃硫酸、硝酸、セレン酸等が挙げられる。強酸化剤としては濃硝酸、過硫酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等が挙げられる。上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和処理してもよい。
熱膨張性黒鉛の粒度は、20~200メッシュが好ましい。熱膨張性黒鉛の粒度が前記範囲内であると、膨脹して大容量の空隙を作りやすくなるため耐火性が向上する。また、樹脂への分散性も向上する。
熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比は、2以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比の上限は特に限定されないが、熱膨張性黒鉛の割れ防止の観点から、1,000以下であることが好ましい。熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比が2以上であることにより、膨張して大容量の空隙を作りやすくなるため難燃性が向上する。
熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比は、10個の熱膨張性黒鉛について、それぞれ最大寸法(長径)及び最小寸法(短径)を測定し、最大寸法(長径)を最小寸法(短径)で除した値の平均値を平均アスペクト比とする。熱膨張性黒鉛の長径及び短径は、例えば、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて測定することができる。
(吸熱剤)
本発明のスラー分散液は、吸熱剤を含有してもよい。吸熱剤としては、熱分解開始温度が800℃以下、吸熱量が300J/g以上である吸熱剤が挙げられる。吸熱剤は、熱分解開始温度、及び吸熱量のいずれかが上記範囲内となると、バッテリーなどが発火した場合に速やかに消火でき、消火性などをより一層良好にできる。
吸熱剤の熱分解開始温度は、500℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましく、300℃以下がさらに好ましい。吸熱剤の熱分解開始温度がこれら上限値以下とすることで発火時に速やかに吸熱剤が分解し、迅速に消火することが可能になる。また、吸熱剤の熱分解開始温度は、例えば50℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。
なお、熱分解開始温度は、熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)により測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
前記吸熱剤の吸熱量は、好ましくは500J/g以上、より好ましくは600J/g以上、さらに好ましくは900J/g以上である。吸熱剤の吸熱量が上記範囲内であると、熱の吸収性が向上するため、耐火性がより良好となる。前記吸熱剤の吸熱量は、通常、4000J/g以下、好ましくは3000J/g以下、さらに好ましくは2000J/g以下である。
なお、吸熱量は熱重量示差熱分析装置(TG-DTA)を用いて測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
吸熱剤は、平均粒子径が0.1~90μmであるものが好ましい。平均粒子径を上記範囲内とすることで、樹脂中に吸熱剤を均一に分散でき、多量に配合させることも可能になる。これら観点から、吸熱剤の平均粒子径は、0.5~60μmがより好ましく、0.8~40μmがさらに好ましく、0.8~10μmがよりさらに好ましい。吸熱剤の平均粒子径が上記範囲内であると、耐火層における吸熱剤の分散性が向上し、吸熱剤を樹脂中に均一に分散させたり、樹脂に対する吸熱剤の配合量を多くすることができる。
吸熱剤としては、上記した熱分解開始温度、吸熱量を満たせば特に制限はないが、水和金属化合物が好ましくは使用できる。水和金属化合物は、加熱により分解して水蒸気を発生し、吸熱及び消火の効果を有する化合物である。
水和金属化合物としては、金属水酸化物、又は金属塩の水和物などが挙げられ、中でも金属水酸化物が好ましい。また、金属水酸化物と金属塩の水和物との組み合わせも好ましい。金属水酸化物を使用することで、消火性能を向上させやすくなる。
金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。金属塩の水和物としては、例えば2ZnO・3B・3.5HOで表されるホウ酸亜鉛の水和物、硫酸カルシウムの水和物(例えば、2水和物)、硫酸マグネシウムの水和物(例えば、7水和物)などの硫酸金属塩の水和物などが挙げられる。また、カオリンクレー、ドーソナイト、ベーマイトなどが挙げられる。また、吸熱剤としては、アルミン酸カルシウム、タルクなどであってもよい。
吸熱剤としては、上記した中では、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ホウ酸亜鉛の水和物、硫酸カルシウムの水和物(例えば、2水和物)、硫酸マグネシウムの水和物(例えば、7水和物)が好ましく、これらの中でも、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムがより好ましい。
<無機充填剤>
本発明のスラリー分散液は、無機充填剤を含有してもよい。そのような無機充填剤としては特に制限されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物、炭酸カルシウムなどの水和金属化合物以外の金属化合物、ガラス繊維、カーボンブラック、炭素繊維、木炭粉末、各種金属粉、炭化ケイ素、ステンレス繊維、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、及び脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機充填剤の平均粒子径は、0.5~100μmが好ましく、1~50μmがより好ましい。無機充填剤は、含有量が少ないときは分散性を向上させる観点から粒子径が小さいものが好ましく、含有量が多いときは高充填が進むにつれて、スラリー分散液の粘度が高くなるため粒子径が大きいものが好ましい。
スラリー分散液中のフィラーの含有量としては、固形分基準で40~95質量%であることが好ましく、50~94質量%であることがより好ましく、55~92質量%の範囲であることがさらに好ましい。上記下限値以上であると、フィラーとしての各機能を十分に発揮することができ、上記上限値以下であると、相対的に樹脂量が十分となりフィラーの保持が十分行える。
<<液状難燃剤>>
本発明のスラリー分散液は、液状難燃剤が含まれていてもよい。液状難燃剤は、常温(23℃)、常圧(1気圧)で液体である難燃剤であり、具体的にはリン酸エステルが挙げられる。
リン酸エステルとしては、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用できる。
モノリン酸エステルとは、分子中にリン原子を1つ有するリン酸エステルである。モノリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート等のトリアルキルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステル、トリブトキシエチルホスフェート等のトリアルコキシホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート等の芳香環含有リン酸エステル、モノイソデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェート等の酸性リン酸エステル等が挙げられる。
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェート等の芳香族縮合リン酸エステルが挙げられる。
縮合リン酸エステルの市販品としては、例えば、大八化学工業株式会社製の「CR-733S」、「CR-741」、「CR747」、ADEKA社製の「アデカスタブPFR」、「FP-600」等が挙げられる。
リン酸エステルは、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、難燃性を向上させる観点から、モノリン酸エステルが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステルがより好ましい。
リン酸エステルの含有量は、樹脂100質量部に対して、5~100質量部が好ましく、20~75質量部がより好ましく、30~70質量部がさらに好ましい。
<有機溶剤>
本発明のスラリー分散液には、有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては、一般的にスラリー組成物に用いられる有機溶剤を使用することができるが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸ブチル、ペンタン酸メチル、ペンタン酸エチル、ペンタン酸ブチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸ブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酪酸2-エチルヘキシル等のエステル類、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオールアセテート等のテルピネオール及びその誘導体等が挙げられる。これらの有機溶剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
本発明のスラリー分散液においては、特にエタノール及びトルエンからなる混合溶媒を用いることが好ましい。上記混合溶媒を用いることによって、スラリー組成物の分散性が向上する。
上記混合溶媒を用いる場合のエタノールとトルエンとの混合比(質量比)については、8:2~2:8とすることが好ましく、3:7~7:3がより好ましく、4:6~6:4の範囲がさらに好ましい。上記範囲内とすることで、スラリー分散液の分散性が向上する。
本発明のスラリー分散における溶剤の含有量としては、フィラー等の分散性を維持できる範囲であれば特に限定されないが、固形分が5~50質量%程度となるように溶剤が添加されることが好ましい。したがって、溶剤の含有量としては50~95質量%であることが好ましく、55~93質量%の範囲であることがより好ましい。
溶媒の含有量が上記下限値以上であると、スラリー分散液中におけるフィラー等の十分な分散が得られ、一方、上記上限値以下であれば必要以上に溶剤を要することがないため生産性が向上する。
(その他成分)
上述のフィラー等の添加成分以外にも、その他成分として、滑剤、収縮防止剤、結晶核剤、着色剤(顔料、染料等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、加硫剤、分散剤、及び表面処理剤などを添加することができる。
[耐火材]
本発明の耐火材は、樹脂、フィラー、及び分散剤を含有する耐火材であって、分散剤の第一酸価が90mgKOH/g以上であり、かつHLBが5.5以上である耐火材である。また、本発明の耐火材は、可塑剤、液状難燃剤、その他の成分なども適宜含有することができる。上記フィラーとしては、放熱剤、金属粉、固体難燃剤、熱膨張性層状無機物、吸熱剤、これら以外の無機充填剤が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、フィラーは、放熱剤、金属粉、及び固体難燃剤からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、特に金属粉を含むことがより好ましい。また、金属粉に加えて、さらに放熱剤及び/又は難燃剤を含有する態様も好ましい。特に、上記フィラーとしては金属粉と放熱剤を併用することが好ましい。
本発明の耐火材の構成要素は、上記スラリー分散液で説明したものと同様であり、好適範囲も同様であるため、説明を省略する。
ただし、上記で記載した各成分(分散剤の含有量、フィラー全体の含有量、金属粉などの各フィラー成分の含有量、樹脂、液状難燃剤、可塑剤の含有量など)のスラリー分散液の含有量(質量部、固形分基準の質量%)については、耐火材における含有量(質量部、質量%)として置き換えるものとする。
[スラリー分散液及び耐火材の製造方法]
本発明のスラリー分散液は、樹脂、フィラー、分散剤、その他必要に応じて加えられる添加剤を有機溶剤に投入し、撹拌することで得ることができる。撹拌は通常のスターラー等を用いればよく、撹拌に際しての温度としても特に制限はなく、室温でも構わない。本発明のスラリー分散液は、経時でゲル化することがないため、数日~数十日間貯蔵した後でも、シート化が容易にできる。
耐火材は、上記スラリー分散液より成形される。耐火材は、好ましくはスラリー分散液をシート化することで製造できる。シート化の方法としては、支持体にスラリー分散液を塗布してもよいし、キャスト法で製造してもよい。塗布による方法としては、例えば、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、スピンコート法、オフセット法、スプレーコート法などを挙げることができる。本発明のスラリー分散液から耐火材を製造する方法としては、キャスト法が、シートの厚みの制御などが容易であり好ましい。キャスト法としては、通常行われる方法でよく、例えば、本発明のスラリー分散液をダイより押し出して支持体上に流延し、乾燥後支持体から剥離してフィルム状の耐火材を得る方法がある。
乾燥方法としては、特に制限はないが、支持体上にキャストされたシートベルトコンベアなどで搬送しながら、連続的に乾燥するのが効率的に製造することができ好ましい。
[耐火積層体]
本発明の耐火材は、耐火材単体で用いられてもよいし、耐火材以外の層が積層されて耐火積層体を構成してもよい。耐火積層体は、例えば、耐火材以外の層として、粘着材を備えてもよい。その場合、耐火積層体は、例えば、上記耐火材と、耐火材の少なくとも一方の面に設けられる粘着材とを備えるものであるとよい。粘着材が備える耐火積層体は、粘着材を介してバッテリーに貼り合わせることができる。粘着材は、耐火材の一方の面上に設けられてもよいし、耐火材の両面に設けられてもよい。粘着材が耐火材の両面に設けられることで、例えば、2つのバッテリーセルの間に耐火材が配置される場合、耐火材は両方のバッテリーセルに貼り合わせることができる。
粘着材は、耐火材を他の部材に感圧接着することができる部材であり、粘着剤層からなるものでもよいし、基材の両表面に粘着剤層が設けられた両面粘着テープでもよいが、粘着剤層からなることが好ましい。なお、両面粘着テープは、一方の粘着剤層が耐火材に貼り合わせられることで、積層されて粘着材を構成することになる。
粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられるが、これらに限定されない。粘着材の厚みは、特に限定されないが、例えば、3~500μm、好ましくは10~200μmである。
また、両面粘着テープに使用する基材は、樹脂フィルム、不織布など、両面粘着テープに使用される公知の基材を使用するとよい。
耐火積層体は、基材と、基材の少なくとも一方の面に設けられる耐火材とを有する積層体であってもよい。基材を使用する場合、耐火材は、基材の片面のみに設けられてもよいし、両面に設けられてもよい。また、耐火材は、基材に直接積層されてもよいし、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、基材の表面上に形成されたプライマー層、接着層などを介して基材に積層されてもよいが、直接積層されることが好ましい。
ここで、基材は、可燃層であっても準不燃層又は不燃層であってもよい。基材の厚みは特に限定されないが、例えば5μm~1mmである。基材としては、樹脂、金属、金属以外の無機材料、又はこれらの複合体などにより形成される。また、基材の形態としては、フィルム、箔などでもよいし、クロス、メッシュなどでもよい。したがって、例えば、樹脂フィルム、金属箔、金属クロス、金属メッシュ、有機繊維クロス、金属以外の無機材料のクロス(無機繊維クロス)などが挙げられる。
上記した基材と耐火材とを有する耐火積層体は、本発明のスラリー分散液をキャスティングし、乾燥することで、基材の一方の面又は両面上に耐火材を形成することで製造することができる。
さらに、耐火積層体は、予め成形した耐火材を、基材の一方の面又は両面に圧着などすることで積層させて製造してもよい。
なお、基材の両面に、耐火材を形成する場合には、両面に同時に耐火材を形成してもよいし、片面ずつ順次、耐火材を形成してもよい。
本発明の基材を有する耐火積層体は、耐火積層体の少なくとも一方の面にさらに粘着材が設けられてもよい。粘着材は、耐火材が基材の一方の面のみに設けられる場合、基材の他方の面に設けられてもよいし、耐火材上に設けられてもよいが、耐火材上に設けられることが好ましい。耐火材上に粘着材が設けられると、耐火積層体は、粘着材を介してバッテリーに貼り合わせた場合、バッテリー側から、耐火材、基材の順で配置されることになる。このような配置により、消火性能が高めやすくなる。
また、耐火材が基材の両面に設けられる場合、粘着材は、一方の耐火材上に設けられてもよいし、両方の耐火材上に設けられてもよいが、両方の耐火材上に設けられることが好ましい。粘着材が両方の耐火材上に設けられることで、例えば、2つのバッテリーセルの間に耐火積層体が配置される場合、耐火積層体は両方のバッテリーセルに貼り合わせることができる。なお、粘着材の具体的な構成は、上記したとおりである。
[バッテリー]
本発明の耐火材は、好ましくは、バッテリーの周囲に配置されて使用されるバッテリー用耐火シートとして使用することができる。バッテリーは、通常、少なくとも1つのバッテリーセルを有し、そのバッテリーセルの表面に耐火シートが取り付けられるとよい。耐火シートは、通常、バッテリーセルの表面に配置される。バッテリーは、バッテリーセルを1つ有してもよいし、2つ以上有してもよい。
バッテリーセルは、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、及び負極端子等が外装部材に収容されたバッテリーの構成単位を指す。また、バッテリーセルは、セルの形状により、円筒型、角型、ラミネート型に分類される。
バッテリーセルが円筒型の場合、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、負極端子、絶縁材、安全弁、ガスケット、及び正極キャップ等が外装缶に収容されているバッテリーの構成単位を指す。一方、バッテリーセルが角型の場合、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、負極端子、絶縁材、及び安全弁等が外装缶に収容されているバッテリーの構成単位を指す。バッテリーセルがラミネート型の場合、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、及び負極端子等が外装フィルムに収容されているバッテリーの構成単位を指す。ラミネート型のバッテリーでは、2枚の外装フィルムの間、或いは、1枚の外装フィルムが例えば2つ折りで折り畳まれ、その折り畳まれた外装フィルムの間に、正極材、負極材、セパレータ、正極端子、及び負極端子等が配置され、外装フィルムの外縁部がヒートシールによって圧着されている。
また、バッテリーセルは、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケル・水素電池、リチウム・硫黄電池、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル・鉄電池、ニッケル・亜鉛電池、ナトリウム・硫黄電池、鉛蓄電池、空気電池等の二次電池であり、これらの中でもリチウムイオン電池が好ましい。
バッテリーは、例えば、携帯電話及びスマートフォン等の小型電子機器、ノートパソコン、自動車等に使用されるが、これらに限定されない。
耐火シートは、バッテリーセルのいずれの表面上に設けられるとよいが、いずれの場合も、耐火シートのバッテリーセルにおける占有比率(バッテリーセルの表面を覆う面積比率)が、バッテリーセルの表面積の30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。耐火シートがバッテリーセル表面の大部分(30%以上)を覆うことでバッテリーセルの発火に対して、迅速に消火しやすくなる。
該占有比率は高いほど、消火性については好ましく、100%であってよいが、作業性等の観点からは、95%以下であってよく、90%以下であることが好ましい。
また、バッテリーセルは、安全弁を有することが多いが、安全弁を有するバッテリーセルにおいては、耐火シートを使用する場合も、耐火シートによって安全弁を覆うように設けられることが好ましい。このとき、耐火シートは、安全弁の機能を担保するために、安全弁を密封させないように覆うとよい。さらに、ラミネート型のバッテリーセルの場合には、ヒートシールによって圧着されるヒートシール部を耐火シートによって覆うように設けられることが好ましい。
バッテリーセルは、安全弁又はヒートシール部から発火することが多いため、これらを耐火シートで覆うことでバッテリーセルの発火をより有効に消火しやすくなる。
さらに、耐火シートが、バッテリーセルの大部分の表面を覆い、かつバッテリーセルが安全弁又はヒートシール部を有する場合、耐火シートは安全弁又はヒートシール部も覆うように配置されることがより好ましい。例えば、耐火シートや耐火積層体は、バッテリーセルに巻くように配置されるとよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
評価方法は以下のとおりである。
<第一酸価の測定方法>
300mLのビーカーに各分散剤0.5gを精秤し、蒸留水150mLを加えて溶解させた。ビーカーにpHメーターを設置し、マグネティックスターラーで撹拌しながら、0.5N水酸化カリウムエタノール溶液で電位差滴定を行った。得られた滴定曲線において、第一当量点から算出される酸価(mgKOH/g)を第一酸価とした。
<HLBの測定方法(Water Number法)>
測定用の混合溶媒として、ベンゼン10質量%を含むジオキサン(DB-10)を準備した。各分散剤1gを30mLのDB-10に溶解し、蒸留水をビュレットから滴下して行った。系が明らかに白濁した点を滴定の終点とし、要した蒸留水の量(mL)をWater Numberとした。なお、滴定は25℃で行った。
<ゲル化(ポットライフ)>
スラリー分散液作製後、30日間、23℃の環境下に保管した。その後、スラリー分散液をコンマコーターを用いて、シート化できるものをA、シート化できないものをBとした。
各実施例、比較例の衝撃吸収シートの製造に用いた材料は以下のとおりである。
<樹脂>
(a)PVB1:ポリビニルブチラール樹脂、重合度800、アセタール化度69mol%、アセチル基量1mol%、水酸基量30mol%、10質量%エタノール/トルエン粘度142mPa・s
(b)PVB2:ポリビニルブチラール樹脂、重合度320、アセタール化度75mol%、アセチル基量3mol%、水酸基量22mol%、10質量%エタノール/トルエン粘度21mPa・s
(c)PVB3:ポリビニルブチラール樹脂、重合度1,100、アセタール化度64mol%、アセチル基量1mol%、水酸基量35mol%、10質量%エタノール/トルエン粘度280mPa・s
(d)EVA:製品名「エバフレックスEV450」、三井デュポンポリケミカル株式会社製、メルトフローレート:15g/10min、酢酸ビニル含量19質量%
(e)アクリル樹脂:イソブチルメタクリレートの単独重合体(重量平均分子量(Mw):10万、ガラス転移温度(Tg):50℃)
<可塑剤>
(f)可塑剤:ビス(2-エチルヘキサン酸)トリエチレングリコール(製品名:G-260、住友化学株式会社製)
<放熱剤>
(g)膨張化黒鉛(1):富士黒鉛工業株式会社製「FS-5」、熱伝導率=500W/m・K、アスペクト比=3、平均粒子径=5μm
(h)膨張化黒鉛(2):富士黒鉛工業株式会社製「BSP-7A」、熱伝導率=500W/m・K、アスペクト比=4、平均粒子径=7μm
(i)膨張化黒鉛(3):富士黒鉛工業株式会社製「BSP-20A」、熱伝導率=500W/m・K、アスペクト比=5、平均粒子径=20μm
(j)鱗片状黒鉛:富士黒鉛工業株式会社製「UF-2」、熱伝導率=450W/m・K、アスペクト比=2、平均粒子径=5μm
(k)窒化ホウ素:昭和電工株式会社製「UHP-2」、熱伝導率=100W/m・K、アスペクト比=30、平均粒子径=11μm
<焼結剤>
(l)銅粉(1):福田金属箔粉工業株式会社製「3L3」熱伝導率=400W/m・K、アスペクト比=2、平均粒子径=6μm
(m)銅粉(2):福田金属箔粉工業株式会社製「MS-800」熱伝導率=400W/m・K、アスペクト比=1.5、平均粒子径=40μm
(n)銅粉(3):福田金属箔粉工業株式会社製「FCC-TB」熱伝導率=400W/m・K、アスペクト比=3、平均粒子径=7μm
(o)亜鉛フレーク:福田金属箔粉工業株式会社製「Zn-S-D8」熱伝導率=110W/m・K、アスペクト比=3、平均粒子径=7μm
(p)錫フレーク:福田金属箔粉工業株式会社製「Sn-S-200」熱伝導率=60W/m・K、アスペクト比=2、平均粒子径=7μm
<その他の固体難燃剤>
(q)ポリリン酸アンモニウム:AP422、クラリアント社
(r)低融点ガラス:製品名「4020」、日本琺瑯釉薬社製、軟化温度380℃
(s)メラミンシアヌレート:製品名「MC-4000」、日産化学工業株式会社製
<無機充填剤>
(t)炭酸カルシウム:白石カルシウム社製、商品名「BF300」
<分散剤>
(u)分散剤A:製品名「フォスファノールRS-410」、東邦化学株式会社製、HLB=9.0、第1酸価=100~115mgKOH/g(カタログ値)、pH=2.5以下
(v)分散剤B:製品名「アンステックスGF-199」、東邦化学株式会社製、HLB=5.5、第1酸価=160~170mgKOH/g(カタログ値)、pH=3.0以下
(w)分散剤C:製品名「フォスファノールRP-710」、東邦化学株式会社製、HLB=11.9、第1酸価=90~110mgKOH/g(カタログ値)、pH=2.5以下
(x)分散剤D:製品名「フォスファノールRL-210」、東邦化学株式会社製、HLB=5.4、第1酸価=90~100mgKOH/g(カタログ値)、pH=3.0以下
(y)分散剤E:製品名「フォスファノールRB-410」、東邦化学株式会社製、HLB=8.6、第1酸価=80~90mg未満KOH/g、pH=2.5以下
実施例1~27及び比較例1~8
表1に示す材料を表1に示す含有量で混合して、アイメックス株式会社のイージーナノRMBを用いてビーズ径φ2mm、回転数1900rpm、45分の条件で攪拌してスラリー分散液を調製し、上記方法で評価した。評価結果を表1に示す。
Figure 2022125931000001

本発明のスラリー分散液を用いた実施例では、ゲル化が生じず、30日経過後でもシート成形が可能であった。一方、比較例では、30日経過後スラリー分散液がゲル化しており、溶剤を足しても再溶解しない現象になるためシート成形が不可能であった。シート成形が可能であったものをA、不可だったものをBとした。

Claims (16)

  1. 樹脂、フィラー、及び分散剤を含有するスラリー分散液であって、分散剤の第一酸価が90mgKOH/g以上であり、かつHLBが5.5以上であるスラリー分散液。
  2. さらに可塑剤を含有する請求項1に記載のスラリー分散液。
  3. 前記フィラーが金属粉、放熱剤及び固体難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1又は2に記載のスラリー分散液。
  4. 前記フィラーが金属粉を含む請求項1~3のいずれか1項に記載のスラリー分散液。
  5. 前記フィラーが金属粉及び放熱剤を含有する請求項1~4のいずれか1項に記載のスラリー分散液。
  6. 前記金属粉が銅粉である請求項3~5のいずれか1項に記載のスラリー分散液。
  7. 前記分散剤の含有量が0.1~10質量%である請求項1~6のいずれか1項に記載のスラリー分散液。
  8. 前記樹脂がポリビニルブチラール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1~7のいずれか1項に記載のスラリー分散液。
  9. 樹脂、フィラー、及び分散剤を含有する耐火材であって、分散剤の第一酸価が90mgKOH/g以上であり、かつHLBが5.5以上である耐火材。
  10. さらに可塑剤を含有する請求項9に記載の耐火材。
  11. 前記フィラーが金属粉、放熱剤及び固体難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項9又は10に記載の耐火材。
  12. 前記フィラーが金属粉を含む請求項9~11のいずれか1項に記載の耐火材。
  13. 前記フィラーが金属粉及び放熱剤を含有する請求項9~12のいずれか1項に記載の耐火材。
  14. 前記金属粉が銅粉である請求項11~13のいずれか1項に記載の耐火材。
  15. 前記樹脂がポリビニルブチラール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項9~14のいずれか1項に記載の耐火材。
  16. 請求項1~8のいずれか1項に記載のスラリー分散液より耐火材を成形する耐火材の製造方法。

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WO2024202354A1 (ja) * 2023-03-31 2024-10-03 住友理工株式会社 ウレタン発泡成形体

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