以下、添付図面を参照して、本願の開示する給水機構および水洗大便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<1.第1実施形態>
<1-1.水洗大便器の構成>
図1は、第1実施形態に係る水洗大便器を斜め後方から眺めた模式斜視図である。図1に示すように、水洗大便器10は、便器本体100と、排水ソケット200と、操作部(手動操作部)20とを備える。
本願明細書においては、便器本体100の前に立った使用者から見て手前側を「前方」とし、奥側を「後方」とする。また、便器本体100の前に立った使用者から見て右側を「右側方」とし、左側を「左側方」とする。また、便器本体100の前に立った使用者から見て上方を「上方」とし、下方を「下方」とする。
便器本体100は、汚物を受けるボウル部110と、ボウル部110に接続され、ボウル部110内の汚物を排水管300へ導く排水トラップ管路120とを備える。
ボウル部110には、排水トラップ管路120に向けて洗浄水を吐出するジェット吐水口111と、ボウル部110上部のリムから洗浄水を吐出してボウル部110内に洗浄水の旋回流を形成するリム吐水口113とが形成される。
排水トラップ管路120は、その入口から上方へ延びる上昇路部分と、上昇路部分の末端から下方に延びて排水ソケット200に接続される下降路部分とを有する。なお、ボウル部110から排水トラップ管路120の上昇路部分にかけては、水封状態を形成するための洗浄水(溜水)が貯留される。
排水ソケット200は、接続流路211を備え、排水トラップ管路120と排水管300との間に設けられる。そして、排水ソケット200は、排水トラップ管路120と排水管300とを接続流路211を介して接続する。
このように、本実施形態に係る水洗大便器10においては、排水トラップ管路120および接続流路211によって、ボウル部110と排水管300とを接続する排水路305が形成される。水洗大便器10は、水道の直圧でリム吐水口113からリム吐水し、排水ソケット200の開閉によって排水する、いわゆるハイブリッド式である。
上記のように構成された便器本体100は、ジェット吐水口111から吐出される洗浄水によってサイホン作用を効率的に発生させつつ、ボウル部110内の汚物を上記サイホン作用を利用して排水路305へ引き込んで排水管300へ排出する。
<1-2.排水ソケットの構成>
次に、排水ソケット200の構成について図2Aおよび図2Bをさらに参照して具体的に説明する。図2Aおよび図2Bは、排水ソケット200の内部構成を示す模式断面図である。なお、図2Aには、開閉弁240が開いた状態を、図2Bには、開閉弁240が閉じた状態をそれぞれ示している。
図1に示すように、排水ソケット200は、床排水方式の排水ソケットであり、ソケット本体210と、パッキン220とを備える。パッキン220は、ソケット本体210の上端部に設けられ、たとえば、ゴムなどの弾力性を有する材料により形成される。パッキン220は、上下方向に貫通する貫通孔を有し、この貫通孔に、排水トラップ管路120の下流側の端部が接続される。
図2Aおよび図2Bに示すように、ソケット本体210は、上記した接続流路211を備え、排水トラップ管路120と排水管300とを接続する。
また、排水ソケット200は、開閉弁240と、回転軸243とを備える。開閉弁240は、排水路305の一部である接続流路211に設けられ、排水路305(正確には接続流路211)を開閉する。なお、開閉弁240としては、たとえば、フラッパー弁を用いることができるが、これに限定されるものではない。
回転軸243は、開閉弁240を回転可能に軸支する。このような回転軸243には、手動操作部20(図1参照)が後述する伝達部21を介して接続される。
図1に示すように、手動操作部(以下、第1操作部という)20は、使用者による手動操作を伝達する伝達部である第1ワイヤ21を介して、開閉弁240の回転軸243に接続される。第1操作部20は、たとえば、停電時に便器洗浄を行う際に、使用者の手動操作を受け付けるリング状の部材である。なお、このような部材は、手動操作を受け付ける部材の一例である。
第1ワイヤ21としては、たとえば、レリースワイヤを用いることができる。図示しないが、具体的には、第1ワイヤ21は、アウターチューブと、アウターチューブの内部に挿設されたインナーワイヤとを備える。
第1ワイヤ21のインナーワイヤは、上記したように、一端が開閉弁240の回転軸243に接続される一方、他端が第1操作部20に接続される。
たとえば、使用者が、第1操作部20を引っ張るなど、第1操作部20に対して手動で操作(牽引操作)を行うと、第1ワイヤ21のインナーワイヤが移動して、回転軸243を回転させて開閉弁240を回動させる。
この場合、使用者によって第1操作部20が操作されていない通常時において、開閉弁240は、図2Aに示す開状態に維持される。したがって、開閉弁240は、通常時においては接続流路211の流路断面積を変化させてはいない。
一方、使用者が第1操作部20を牽引操作すると、インナーワイヤの移動に伴って開閉弁240が回転軸243を中心に回動して、図2Bに示す閉状態、すなわち、接続流路211の流路断面積を狭くした状態となる。
なお、開閉弁240は、接続流路211を完全に閉鎖する必要はない。すなわち、リム吐水口113およびジェット吐水口111から供給される洗浄水によりボウル部110の内部の水位を初期水位よりも上昇させることができればよく、開閉弁240と接続流路211との間に多少の隙間が存在していてもよい。
ここでは、排水ソケット200が、接続流路211の流路断面積を変化させる構成として、開閉弁240を備える例について説明したが、排水ソケット200は、開閉弁240に代えて、たとえば、ターントラップを備えていてもよい。ターントラップは、電動で上下回動し、ボウル部110内に貯水された洗浄水を汚水と共に排出させることができる。また、ここでは、開閉弁240が接続流路211に設けられる例について説明したが、開閉弁240やターントラップなどの可動部は、排水トラップ管路120に設けられていてもよい。
なお、第1操作部20は、便器本体100の後方に設けられた図示しない化粧パネルの内部に配置され、外部から視認できない状態となっている。使用者は、化粧パネルを取り外すことで、第1操作部20の手動操作が可能となる。
<1-3.便器洗浄装置の構成>
次に、水洗大便器10において便器洗浄を行う便器洗浄装置の構成について図3を参照して説明する。図3は、便器洗浄装置の構成を示す図である。
図3に示すように、便器洗浄装置150は、便器本体100の後方付近に配置される。便器洗浄装置150は、図示しない外部電源に接続されており、非停電時には、外部電源から供給される外部電力を用いて電磁弁などの部品を駆動させることによって、ボウル部110に洗浄水を供給する。
便器洗浄装置150は、定流量弁155と、電磁弁156と、リム吐水用バキュームブレーカ164とを備える。給水路151には、貯水タンク177への給水とリム吐水とを切り替える切替弁157と、貯水タンク177と、加圧ポンプ173と、ジェット吐水用バキュームブレーカ166と、水抜栓171とが内蔵される。また、便器洗浄装置150には、電磁弁156の開閉動作、切替弁157の切替動作および加圧ポンプ173の加圧動作などを制御する制御部174が内蔵される。
定流量弁155は、止水栓152、ストレーナ153および分岐金具154を介して流入した洗浄水を、所定の流量以下に絞る。たとえば、定流量弁155は、洗浄水の流量を16リットル/分以下に制限する。定流量弁155を通過した洗浄水は、電磁弁156に流入し、電磁弁156を通過した洗浄水は、切替弁157により、リム吐水口113または貯水タンク177に供給される。
電磁弁156は、制御部174の制御に従って開閉するダイヤフラム式の電磁開閉弁である。給水路151には、ダイヤフラム310が設けられ、このようなダイヤフラム310と隣接して圧力室311が設けられる。そして、電磁弁156は、圧力室311の圧力を変化させることで、ダイヤフラム310を動作させ、給水路151における洗浄水の流れを制御する。
具体的には、電磁弁156は、制御部174から開信号が入力されると開弁状態となり、これによって圧力室311が低下してダイヤフラム310は給水路151を開放し、供給された洗浄水を切替弁157へ流入させる。一方、電磁弁156は、制御部174から閉信号が入力されると閉弁状態となり、これによって圧力室311が上昇してダイヤフラム310は給水路151を閉塞し、切替弁157への洗浄水の供給を停止させる。なお、電磁弁156やダイヤフラム310の詳細な構成は、図5を用いて後述する。
切替弁157は、制御部174の制御信号により切り替えられ、電磁弁156を介して流入した洗浄水を、リム吐水口113から吐出または貯水タンク177に流入させる。
リム吐水用バキュームブレーカ164は、切替弁157を通過した洗浄水をリム吐水口113へ導くリム側給水路159の途中に配置され、洗浄水のリム吐水口113からの逆流を防止している。また、リム吐水用バキュームブレーカ164は、ボウル部110の上端面よりも上方に配置され、これにより、逆流を確実に防止している。さらに、リム吐水用バキュームブレーカ164の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路165を通ってフロート式逆止弁169を介して貯水タンク177に流入する。
貯水タンク177は、ジェット吐水口111から吐水すべき洗浄水を貯水する。たとえば、貯水タンク177は、約2.5リットルの内容積を有する。
さらに、本実施形態においては、タンク側給水路161の先端(下端)はフロート式逆止弁167に接続されており、貯水タンク177からタンク側給水路161への逆流を防止している。また、貯水タンク177の内部には、上端フロートスイッチ175および下端フロートスイッチ176が配置されており、貯水タンク177内の水位を検出できるようになっている。上端フロートスイッチ175は、貯水タンク177内の水位が所定の貯水水位に達するとオンに切り替わり、制御部174はこれを検知して、電磁弁156を閉鎖させる。一方、下端フロートスイッチ176は、貯水タンク177内の水位が所定の水位まで低下するとオンに切り替わり、制御部174はこれを検知して、加圧ポンプ173を停止させる。
加圧ポンプ173は、貯水タンク177に貯水された洗浄水を加圧して、ジェット吐水口111から吐出させる。加圧ポンプ173は、貯水タンク177から延びるポンプ側給水路162により接続され、貯水タンク177内に貯水された洗浄水を加圧する。たとえば、加圧ポンプ173は、貯水タンク177内の洗浄水を加圧して、洗浄水を最大約120リットル/分の流量でジェット吐水口111から吐出させる。
水抜栓171は、貯水タンク177の下端部付近であって、加圧ポンプ173よりも下方の位置に配置されている。このため、水抜栓171を開放することにより、メンテナンス時などに貯水タンク177内および加圧ポンプ173内の洗浄水を排出することができる。また、加圧ポンプ173の下方には、水受けトレイ172が配置されている。水受けトレイ172は、結露した水滴や漏水を受ける。
一方、加圧ポンプ173の流出口は、ジェット側給水路163を介して、ボウル部110の底部のジェット吐水口111に接続されている。ジェット側給水路163の途中は、上方に向けて凸型に形成されており、凸型部分の最も高い部分であるジェット側給水路頂部163aは、貯水タンク177からジェット吐水口111に至る洗浄水管路の中で最も高い部分になっている。また、ジェット側給水路163のジェット側給水路頂部163aよりも下流側は、前述したジェット吐水口111と同じ高さに設定されている。
ジェット側給水路163には、一端にオーバーフロー口168aを有するオーバーフロー流路168が接続されている。オーバーフロー口168aは、上端フロートスイッチ175よりも上方に設けられている。貯水タンク177内の水位が上端フロートスイッチ175よりも高くなった場合には、貯水タンク177内の水は、オーバーフロー口168aからオーバーフロー流路168に流入し、加圧ポンプ173により加圧され、フラッパー弁178を介してジェット吐水口111から吐出される。
ジェット吐水用バキュームブレーカ166は、切替弁157を通過した洗浄水を貯水タンク177へ導くタンク側給水路161の途中に配置され、洗浄水の貯水タンク177からの逆流を防止している。ジェット吐水用バキュームブレーカ166の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路165を通ってフロート式逆止弁169を介して貯水タンク177に流入するようになっている。
制御部174は、使用者による便器洗浄スイッチ(図示せず)の操作により、電磁弁156、切替弁157、加圧ポンプ173を順次作動させ、リム吐水口113およびジェット吐水口111からの吐水を順次開始させて、ボウル部110を洗浄する。さらに、制御部174は、洗浄終了後、電磁弁156を開放し、切替弁157を貯水タンク177側に切り替えて洗浄水を貯水タンク177に補給する。貯水タンク177内の水位が上昇し、上端フロートスイッチ175が規定の貯水量を検出すると、制御部174は、電磁弁156を閉鎖して給水を停止する。
図3に示すように、後述する切替部180には、手動操作部(以下、第2操作部という)30が伝達部である第2ワイヤ31を介して接続される。第2操作部30は、上記した第1操作部20と同様、たとえば、停電時に便器洗浄を行う際に、使用者の手動操作を受け付けるリング状の部材である。なお、このような部材は、手動操作を受け付ける部材の一例である。
また、第2ワイヤ31としては、上記した第1ワイヤ21と同様、たとえば、レリースワイヤを用いることができる。この場合も、第2ワイヤ31は、第1ワイヤ21と同様、アウターチューブと、アウターチューブの内部に挿設されたインナーワイヤとを備える。第2ワイヤ31は、後述する手動操作弁181(図6参照)と第2操作部30とを連結し、第2操作部30の操作を手動操作弁181に伝達する。
<1-4.非停電時における便器洗浄動作>
ここで、非停電時、すなわち、外部電源により電磁弁156を動作させる場合における便器洗浄動作について説明する。
非停電時において、たとえば、図示しない便器洗浄スイッチが操作されると、1回目のリム吐水(前リム洗浄)が開始される。具体的には、制御部174は、電磁弁156に開信号を入力して電磁弁156を開放させるとともに、切替弁157をリム吐水口113の側に切り替える。これにより、水道の給水圧力によってリム吐水口113から洗浄水が吐出される。リム吐水口113から吐出された洗浄水は、ボウル部110内を旋回しながら下方へ流下し、ボウル部110の内壁面が洗浄される。
その後、ジェット吐水が開始されるが、この間もリム吐水口113からは洗浄水の吐水が続いている。まず、制御部174は、加圧ポンプ173に信号を送って加圧ポンプ173を起動させる。加圧ポンプ173が起動されると、貯水タンク177内に貯水されていた洗浄水は、加圧ポンプ173に流入して加圧される。加圧ポンプ173によって加圧された洗浄水は、ジェット側給水路163のジェット側給水路頂部163aを通って、ボウル部110の底部に開口したジェット吐水口111から吐出される。
ジェット吐水口111から吐出された洗浄水は排水トラップ管路120内に流入し、排水トラップ管路120を満水にしてサイホン作用を引き起こす。このサイホン作用により、ボウル部110内の溜水および汚物は、排水トラップ管路120に吸引され、排水管300から排出される。
加圧ポンプ173によってジェット吐水口111から洗浄水が吐出されると、貯水タンク177内の水位が降下し、下端フロートスイッチ176がONになる。下端フロートスイッチ176がONになると、制御部174は、貯水タンク177内に貯水されていた洗浄水が無くなったことを検知し、加圧ポンプ173に信号を送ってこれを停止させ、ジェット吐水を終了させる。継続的に行われているリム吐水口113からの吐水によりボウル部110内の溜水の水位は上昇し、所定のリム吐水時間経過後、ボウル部110内は所定の溜水水位に到達する(リフィール)。
リム吐水終了後、制御部174は、電磁弁156を開放状態に保持した状態で、切替弁157に信号を送って、切替弁157を貯水タンク177側に切り替える。これにより、洗浄水が貯水タンク177内に流入して、貯水タンク177に洗浄水が補給される。
貯水タンク177内に洗浄水が補給され、貯水タンク177内の水位が規定の貯水水位に達すると、上端フロートスイッチ175がONになる。上端フロートスイッチ175がONになると、制御部174は、電磁弁156に閉信号を送り、電磁弁156を閉鎖させる。また、制御部174は、切替弁157に信号を送って、これをリム吐水口113の側に切り替える。そして、水洗大便器10は、待機状態となる。
このように、本実施形態に係る水洗大便器10は、外部電源から供給される電力を用い、制御部174からの信号により電磁弁156、切替弁157および加圧ポンプ173などの動作を制御して便器洗浄を行う。
ところで、上記したように、便器洗浄装置150は、非停電時には外部電源からの外部電力を用いて電磁弁156などを動作させて便器洗浄を行うことができるが、停電時には電磁弁156などを動作させることができない。なお、たとえば、非常用電源としてコンデンサを内蔵する場合にはコストアップすることになり、コンデンサを内蔵しないで電池などを用いるように構成した場合には、使用者が電池を追加する必要があり、使用者の負担が増大することになる。
また、電気的な給水を行わないような構成であり、たとえば、2つの操作部の操作によって給水および止水を行う場合も、たとえば、2つの操作部をそれぞれ異なる動作で別々に操作する必要があったり、2つの操作部(2つのワイヤ)を同時に引っ張り続ける必要があったりするなど、操作が煩雑となる。また、2つのワイヤを同時に牽引しているため、牽引を止めると排水ソケット200が開状態となって給水を終了するため、たとえば、補給水(リフィール水)が不足している場合は、2つのワイヤを再度牽引して調整する、あるいは、外部から給水を行うなどの必要がある。
また、たとえば、レバーの回転で給水および止水を行い、排水ソケットの開閉をワイヤの引っ張りで行うものもあるが、この場合も、操作が煩雑となる。なお、レバーの回転力を給水機構へ伝達するためには、レバーを給水機構の近傍に設置する必要があり、設計の自由度も低い。
このように、これまでは、停電時の洗浄操作に対して使用者の負担が大きかった。そこで、本実施形態では、使用者が簡単な操作で給水および止水することができ、停電時における使用者の便器洗浄の負担を軽減可能な構成としている。
<1-5.停電時に便器洗浄を行うための水洗大便器の構成>
以下、水洗大便器10において、停電時に便器洗浄を行うための構成についてさらに説明する。図3に示し、かつ、上記したように、切替部180は、上記した圧力室311に接続される流路312に設けられる。なお、この流路312は、圧力室311の水を流出させて圧力室311の圧力を開放する流路であり、「パイロット流路」と記載する場合がある。
また、上記したように、切替部180には、第2操作部30が接続される。切替部180には、第2操作部30の第2ワイヤ31が接続される。このように、第1操作部20に接続された第1ワイヤ21は開閉弁240に接続され、第2操作部30に接続された第2ワイヤ31は切替部180に接続される。すなわち、第1操作部20および第2操作部30は、使用者によって手動で牽引操作されることで、開閉弁240および切替部180を動作させることが可能な構成である。
なお、第1ワイヤ21および第2ワイヤ31は、少なくとも使用者の手元において並列に設けられることが好ましい。これにより、第1ワイヤ21および第2ワイヤ31の各操作性が向上するとともに、第1ワイヤ21および第2ワイヤ31のそれぞれに適したレイアウトで配設することが可能となり、施工性を向上させることができる。
図4は、第1実施形態に係る便器洗浄装置150を示す模式斜視図である。図4に示すように、便器洗浄装置150は、上記した電磁弁156や切替弁157、切替部180などが一体に構成され、ユニット化されるが、これに限定されるものではなく、構成要素の一部あるいは全部が別体に構成されていてもよい。
図5は、図4のV-V線断面図である。すなわち、図5は、便器洗浄装置150における給水機構199付近の模式断面図である。
電磁弁156および切替部180は共に、給水路151を開放または閉塞することで、ボウル部110に対する給水および止水の切り替えを行う。まず、電磁弁156について説明する。
電磁弁156はダイヤフラム式の電磁開閉弁であることから、便器洗浄装置150は、ダイヤフラム310と、圧力室311と、パイロット流路312(図3参照)とを備える。電磁弁156は、弁体156aと、ソレノイド156bとを備える。
ダイヤフラム310は、ボウル部110への給水路151に設けられる弁座313に着座可能に構成される。これにより、給水路151は、ダイヤフラム310が弁座313に着座している状態のとき、ダイヤフラム310によって閉塞され、上流側給水路と下流側給水路とに区画される。なお、この明細書において、「上流」、「下流」は、洗浄水の流れ方向における「上流」、「下流」の意味で用いられるものとする。
圧力室311は、ダイヤフラム310において給水路151とは反対側の位置に隣接して設けられる。また、ダイヤフラム310には、圧力室311と上流側給水路とを連通する孔が形成される。これにより、圧力室311には、上流側給水路の水が孔を介して流入する。すなわち、圧力室311は、上流側給水路から流入する水で満たされている。
パイロット流路312は、一端が圧力室311に接続される一方、他端が貯水タンク177(図3参照)へと通じるタンク側給水路161(図3参照)に接続される。
電磁弁156は、パイロット流路312を開閉する。電磁弁156は、弁体156aがパイロット流路312に設けられた弁座313に着座される状態のとき、パイロット流路312を閉塞する。
パイロット流路312が電磁弁156によって閉塞されると、圧力室311には、上流側給水路からの水圧が作用する、すなわち、圧力室311は、内部の圧力が上昇し、ダイヤフラム310を弁座313へ向かって移動させる。これにより、ダイヤフラム310は、弁座313に着座して給水路151を閉止する止水状態となる。
そして、電磁弁156は、たとえば、制御部174(図3参照)から開信号が入力されると、ソレノイド156bを通電し、弁体156aを引き上げて弁座313から離間させ、パイロット流路312を開放する。
これにより、圧力室311の水は、圧力室311からパイロット流路312へ流出する。なお、パイロット流路312に流出した水は、弁体156aを通過した後、パイロット流路312の出口部からタンク側給水路161を通って貯水タンク177へ流出する。
このように、パイロット流路312が電磁弁156によって開放されると、圧力室311の水が流出する、すなわち、圧力室311は、内部の圧力が低下し、ダイヤフラム310を弁座313から離間するように移動させる。これにより、ダイヤフラム310は、給水路151を開放する給水状態となる、この場合、上流側給水路と下流側給水路とが連通し、洗浄水が切替弁157へ流入する。
このように、ダイヤフラム310は、給水路151を閉止する止水状態と、給水路151を開放する給水状態とを切り替える。
次に、切替部180について説明する。切替部180は、手動操作弁181と、カム部とを備える。手動操作弁181は、第2操作部30(図3参照)を介して使用者による手動操作が可能である。手動操作弁181は、たとえば、ポペット弁である。第2操作部30の第2ワイヤ31が使用者によって手動操作されると、手動操作の操作力がシャフトへ伝達され、シャフトが所定の回転軸まわりに回転する。
カム部は、上記のような回転可能なシャフトの端部に設けられる。このため、カム部も、第2操作部30の手動操作によるシャフトの回転に伴い、所定の回転軸まわりに回転する。
手動操作弁181は、パイロット流路312に設けられる。手動操作弁181は、弁体182と、プランジャ183と、外筒部材184と、押圧部材185とを備える。このような手動操作弁181を含む切替部180、上記した電磁弁156、第2操作部30、第2ワイヤ31などは、便器洗浄装置150における洗浄水の給水機構199を構成する。
図5に示すように、パイロット流路312には、電磁弁156の弁体156aの上流側と下流側とをバイパスするバイパス路314が形成される。そして、手動操作弁181は、このようなバイパス路314を開閉する。
弁体182の中央付近において、プランジャ183が、挿通孔に挿通され、挿通された状態で固定される。プランジャ183は、長尺状の部材であり、先端がバイパス路314を貫通して、パイロット流路312において電磁弁156の下流側に位置されたカム部の近傍まで突出するように配置される。
外筒部材184は、筒状(好ましくは、円筒状)の部材であり、パイロット流路312の入口付近の適宜位置に固定される。なお、外筒部材184には、圧力室311から流出した水が流通可能な流通路が形成される。
押圧部材185は、たとえば、コイルばねであり、プランジャ183と外筒部材184との間に配置される。押圧部材185は、弁体182を閉弁するように付勢する。言い換えると、押圧部材185は、プランジャ183や弁体182を閉弁状態に押圧する。
上記のように構成された切替部180は、第2操作部30(図3参照)に対する使用者の手動操作に応じて動作する。具体的には、第2操作部30が操作されるとカム部が回転し、カム部の回転によってプランジャ183が押圧部材185の押圧力およびパイロット流路312の水圧に力を受けて弁体182が開弁され、パイロット流路312を開放する。
これにより、圧力室311の水は、圧力室311からパイロット流路312へ流出し、パイロット流路312に流出した水はバイパス路314へ流入する。バイパス路314へ流入した水は、電磁弁156を開弁したときと同様のルートを通って貯水タンク177へ流出する。
このように、手動操作弁181は、圧力室311の水を、電磁弁156を開弁したときと同じく、パイロット流路312を介して流出させる。言い換えると、パイロット流路312にあっては、手動操作弁181によって開放されるときの水のルートの一部と、電磁弁156によって開放されるときの水のルートの一部とを同じにして、パイロット流路312の共用化を図るようにしている。
本実施形態にあっては、上記したパイロット流路312の共用化を図ることで、便器洗浄装置150を小型化でき、ひいては、水洗大便器10全体を小型化することができる。
上記のように、パイロット流路312が手動操作弁181によって開放されると、圧力室311の水が流出し、圧力室311は、内部の圧力が低下し、ダイヤフラム310を弁座313から離間するように移動させる。これにより、ダイヤフラム310は、給水路151を開放する給水状態となる。このように、本実施形態に係る水洗大便器10にあっては、使用者の手動操作によって、ボウル部110に対する給水および止水の切り替えを行うことができる。
<1-6.切替部の構成>
次に、図6を参照して切替部180の構成について説明する。図6は、第1実施形態に係る切替部180を示す模式分解斜視図である。上記したように、給水機構199は、電磁弁156と、切替部180(手動操作弁181)と、手動操作部(第2操作部)30および伝達部(第2ワイヤ)31とを備える。
電磁弁156および切替部180は、それぞれボウル部110(図1参照)に対する給水および止水の切り替えを行う。切替部180は、手動操作弁181を備える。手動操作弁181は、第1操作部30を介して手動操作が可能であり、上記したように、弁体182と、プランジャ183と、外筒部材184と、押圧部材185とを備える。給水機構199では、手動操作弁181が、第2ワイヤ31によって押圧部材185の押圧方向とは逆方向に牽引されることで、開弁状態となる。
また、手動操作弁181は、第1係合点191bと、第2係合点192bとを有する。また、手動操作弁181は、固定部191c,192cを有する。第1係合点191b、第2係合点192bおよび固定部191c,192cは、いずれも外筒部材184に内包される。なお、第1係合点191b、第2係合点192bおよび固定部191c,192cの詳細については後述する。
プランジャ183は、その下部に配置される弁体182と略一体に形成される。プランジャ183は、外筒部材184に内包される。プランジャ183は、その外周面に設けられたカム部186を有する。カム部186は、ブロック状に形成され、上部傾斜面186aと、下部傾斜面186bとを有する。カム部186は、プランジャ183の外周面上の周方向に沿って所定の間隔をあけて複数(たとえば、3つ)設けられる。
外筒部材184は、その内周面に設けられた誘導リブ190を有する。言い換えると、誘導リブ190は、外筒部材184に内包される。誘導リブ190は、2つの傾斜面である、第1傾斜面191aと、第2傾斜面192aとを有する。誘導リブ190は、手動操作弁181(プランジャ183)が牽引されると、プランジャ183のカム部186の下部傾斜面186bが第1傾斜面191aおよび第2傾斜面192aのいずれかに沿って摺動することで、図中の矢線D1で示すような所定の移動方向にプランジャ183を誘導する。
誘導リブ190は、第1突起部191と、第2突起部192とを有する。第1突起部191および第2突起部192は、それぞれ誘導リブ190の上部に形成される。第1突起部191は、カム部186の下部傾斜面186bに対応して所定方向に傾斜している上記した第1傾斜面191aを有する。なお、第1傾斜面191aの傾斜角度は、たとえば、水平を0°として18°程度が好ましい。第1突起部191の頂部、すなわち、第1傾斜面191aの上端部は、第1係合点191bを形成する。
第2突起部192は、上記した第2傾斜面192aを有する。第2傾斜面192aは、第1傾斜面191aと同一方向に傾斜している。なお、第2傾斜面192aの傾斜角度も、たとえば、水平を0°として18°程度が好ましい。第2突起部192の頂部、すなわち、第2傾斜面192aの上端部は、第2係合点192bを形成する。第1傾斜面191aおよび第2傾斜面192aの傾斜角度は、同程度に形成されており、後述するように開弁状態と閉弁状態の切り替えを同じ操作感で行うことができる。
第1係合点191bおよび第2係合点192bは、互いに並んで配置される。また、第1係合点191bおよび第2係合点192bは、略同一の高さに配置されており、後述するように開弁状態と閉弁状態の切り替えを同じ操作感で行うことができる。
第1突起部191および第2突起部192のそれぞれの側面は、上記した固定部191c,192cとなる。固定部191c,192cは、プランジャ183のカム部186の側面186cが当接するとともにプランジャ183が押圧部材185によって図中の矢線D2で示す方向に押圧されることで、プランジャ183を、手動操作弁181の閉弁状態または開弁状態に固定する。
第1突起部191および第2突起部192は、1つの組となっており、プランジャ183のカム部186と対応するように、外筒部材184の内周面上の周方向に沿って所定の間隔をあけて複数組(たとえば、3組)設けられる。
また、外筒部材184は、カバー部材187を有する。カバー部材187は、外筒部材184の上部開口184aを閉鎖するように、外筒部材184の上部に取り付けられる。カバー部材187は、その中央部に第2ワイヤ31が挿通される開口部187aを有する。なお、第2ワイヤ31は、開口部187aに挿通されてからプランジャ183の上部に接続される。
また、カバー部材187は、ガイド部195を有する。ガイド部195は、第1ガイド部196と、第2ガイド部197とを有する。第1ガイド部196および第2ガイド部197は、それぞれガイド部195の下部に形成される。第1ガイド部196は、カム部186の上部傾斜面186aに対応して所定方向に傾斜している第1傾斜面196aを有する。また、第2ガイド部197は、第1傾斜面196aと同一方向に傾斜している第2傾斜面197aを有する。ガイド部195は、プランジャ183のカム部186の上部傾斜面186aが第1傾斜面196aおよび第2傾斜面197aのいずれかに沿って摺動することで、牽引される手動操作弁181(プランジャ183)の移動をガイドする。第1傾斜面196aおよび第2傾斜面197aの傾斜角度、各傾斜面の頂点(第1係合点191b、第2係合点192b)は、略同一の傾斜および高さに配置されており、後述するように開弁状態と閉弁状態の切り替えを同じ操作感で行うことができる。
また、第1ガイド部196および第2ガイド部197も、1つの組となっており、プランジャ183のカム部186と対応するように、開口部187aを囲むように開口部187aのまわりに所定の間隔をあけて複数組(たとえば、3組)設けられる。
このように、給水機構199においては、プランジャ183のカム部186、外筒部材184の誘導リブ190、およびカバー部材187のガイド部195によってノック機構が構成される。
<1-7.給水機構の動作>
次に、図7~図9を参照して切替部180の動作について説明する。図7~図9は、第1実施形態に係る切替部180(180A~180C)の動作説明図である。図7、8の実施形態は、カバー部材187のガイド部195を省略したものでる。図7に示す例の切替部180(180A)においては、まず、図7(a)に示すように、手動操作弁181(図6参照)の閉弁状態では、プランジャ183は、押圧部材185によって閉弁する方向(下方)に押圧されるとともに、カム部186が誘導リブ190の固定部191cによって固定されることで、閉弁状態に保持される。
次いで、図7(b)に示すように、手動操作部30の操作によって手動操作弁181が牽引されると、押圧部材185の押圧力に抗してプランジャ183が引き上げられ、カム部186が第1係合点191bを乗り越えて移動可能な状態となり、図7(c)に示すように、手動操作弁181が牽引解除されると、プランジャ183が押圧部材185に押圧され、カム部186の下部傾斜面186bが第1傾斜面191aに沿って移動する。プランジャ183は、押圧部材185に押圧されて戻る途中でカム部186が固定部192cによって固定されることで、開弁状態に保持される。
次いで、図7(d)に示すように、手動操作部30の操作によって手動操作弁181が再度牽引されると、押圧部材185の押圧力に抗してプランジャ183が引き上げられ、固定部192cによる固定が解除され、カム部186が第2係合点192bを乗り越えて移動可能な状態となり、図7(e)に示すように、手動操作弁181が牽引解除されると、プランジャ183が押圧部材185に押圧され、カム部186の下部傾斜面186bが第2傾斜面192aに沿って移動する。
そして、図7(f)に示すように、プランジャ183は、カム部186が固定部191cによって固定されることで、閉弁状態に保持される。
また、図8に示すように、切替部180(180B)において、プランジャ183側に誘導リブ190が設けられ、外筒部材184の内周面にカム部186が設けられた構成としてもよい。
図8に示す例の切替部180Bにおいては、まず、図8(a)に示すように、手動操作弁181(図6参照)の閉弁状態では、プランジャ183は、押圧部材185によって閉弁する方向(下方)に押圧されるとともに、固定部191cがカム部186に固定されることで、閉弁状態に保持される。
次いで、図8(b)に示すように、手動操作部30の操作によって手動操作弁181が牽引されると、押圧部材185の押圧力に抗してプランジャ183が引き上げられ、第1係合点191bがカム部186を乗り越えて移動可能な状態となり、図8(c)に示すように、手動操作弁181が牽引解除されると、プランジャ183が押圧部材185に押圧され、第1傾斜面191aがカム部186の下部傾斜面186bに沿って移動する。プランジャ183は、押圧部材185に押圧されて戻る途中で固定部192cがカム部186に固定されることで、開弁状態に保持される。
次いで、図8(d)に示すように、手動操作部30の操作によって手動操作弁181が再度牽引されると、押圧部材185の押圧力に抗してプランジャ183が引き上げられ、固定部192cによる固定が解除され、第2係合点192bがカム部186を乗り越えて移動可能な状態となり、図8(e)に示すように、手動操作弁181が牽引解除されると、プランジャ183が押圧部材185に押圧され、第2傾斜面192aがカム部186の下部傾斜面186bに沿って移動する。
そして、図8(f)に示すように、プランジャ183は、固定部191cがカム部186に固定されることで、閉弁状態に保持される。
また、図9に示すように、切替部180(180C)において、カバー部材187(図6参照)のガイド部195によってプランジャ183の移動をガイドする構成としてもよい。なお、図9に示す例は、図6に例示した構成に相当し、図9においては、カバー部材187の周方向に並んだガイド部を展開して示している。
図9に示す例の切替部180Cにおいては、まず、図9(a)に示すように、手動操作弁181(図6参照)の閉弁状態では、プランジャ183は、押圧部材185によって閉弁する方向(下方)に押圧されるとともに、カム部186が誘導リブ190の固定部191cによって固定されることで、閉弁状態に保持される。
次いで、図9(b)に示すように、手動操作部30の操作によって手動操作弁181が牽引されると、押圧部材185の押圧力に抗してプランジャ183が引き上げられ、カム部186が第1係合点191bを乗り越えて移動可能な状態となる。プランジャ183が引き上げられると、カム部186の上部傾斜面186aが第1ガイド部196の第1傾斜面196aと当接し、上部傾斜面186aが第1傾斜面196aに沿って移動する。このように、第1ガイド部196は、プランジャ183の周方向の移動をガイドする。
次いで、図9(c)に示すように、手動操作弁181が牽引解除されると、ガイド部195にガイドされながら周方向に移動しているプランジャ183が押圧部材185に押圧され、カム部186の下部傾斜面186bが第1傾斜面191aに沿って移動する。プランジャ183は、押圧部材185に押圧されて戻る途中でカム部186が固定部192cによって固定されることで、開弁状態に保持される。
次いで、図9(d)に示すように、手動操作部30の操作によって手動操作弁181が再度牽引されると、押圧部材185の押圧力に抗してプランジャ183が引き上げられ、固定部192cによる固定が解除され、カム部186が第2係合点192bを乗り越えて移動可能な状態となる。プランジャ183が引き上げられると、カム部186の上部傾斜面186aが第2ガイド部197の第2傾斜面197aと当接し、上部傾斜面186aが第2傾斜面197aに沿って移動する。このように、第2ガイド部197は、プランジャ183の周方向の移動をガイドする。
次いで、図9(e)に示すように、手動操作弁181が牽引解除されると、ガイド部195にガイドされながら周方向に移動しているプランジャ183が押圧部材185に押圧され、カム部186の下部傾斜面186bが第2傾斜面192aに沿って移動する。
そして、図9(f)に示すように、プランジャ183は、カム部186が固定部191cによって固定されることで、閉弁状態に保持される。
<1-8.停電時における便器洗浄動作>
次に、停電時における便器洗浄動作について図10A~図11Bを参照して説明する。図10Aは、停電時における開閉弁240の開閉タイミング、および切替部180におけるボウル部110に対する給水および止水タイミングの一例を示すタイミングチャートである。図10Bは、停電時における開閉弁240の開閉タイミング、および切替部180におけるボウル部110に対する給水および止水タイミングの他の例を示すタイミングチャートである。図11Aは、停電時における便器洗浄動作の一例の説明図である。図11Bは、停電時における便器洗浄動作の他の例の説明図である。なお、図11Aには、図10Aに示すタイミングチャートに対応する動作例を示し、図11Bには、図10Bに示すタイミングチャートに対応する動作例を示している。
図10Aに示すように、停電時における開閉弁240の開閉タイミング、および切替部180におけるボウル部110に対する給水および止水タイミングの一例では、使用者が排泄行為を行う前において、開閉弁240は開状態、すなわち、接続流路211の流路断面積を変化させていない状態となっている(図10Aのタイミングt1)。また、切替部180においては、ボウル部110への給水を行っていない止水状態となっている。
使用者は、停電時において排泄行為を行った後、第1操作部20および第2操作部30をそれぞれ手動操作し、開閉弁240および切替部180を共に動作させる。具体的には、使用者は、たとえば、一方の手で第1操作部20を把持して第1ワイヤ21を引っ張り、他方の手で第2操作部30を把持して第2ワイヤ31を引っ張る。これにより、第1ワイヤ21に接続された回転軸243を中心として開閉弁240が回動して、開閉弁240が閉状態、すなわち、開閉弁240によりソケット本体210の流路断面積を狭くさせた状態となる(図10Aのタイミングt1および図11A(a))。
一方、第2ワイヤ31に接続された切替部180にあっては、手動操作弁181が移動してパイロット流路312を開放する。これにより、圧力室311は、内部の圧力が低下し、ダイヤフラム310を弁座313(図5参照)から離間するように移動させ、給水路151(図5参照)を開放する給水状態となる(図10Aのタイミングt1.5)。使用者は、第2操作部30による手動操作を中止する(たとえば、引っ張っていた第2操作部30を戻す)ことにより、切替部180の手動操作弁181(プランジャ183)が移動した状態が維持されるため、すなわち、給水状態が維持されるため、第2操作部30を把持して第2ワイヤ31を引っ張り続ける必要がない。
これにより、停電時において、リム吐水口113およびジェット吐水口111の少なくともいずれかからボウル部110に対して洗浄水を供給することができる。開閉弁240は、上記したように、閉状態であり、接続流路211(図2Aおよび図2B参照)を閉鎖しているため、図11A(b)に示すように、ボウル部110に洗浄水が貯留されてボウル部110内の水位が上昇する。第2操作部30を手動操作し、第2操作部30の手動操作を中止して給水状態を維持させた後に第1操作部20を操作するため、水洗大便器10(図1参照)が狭い空間に配置されたとしても、片手で操作を行うことができる。
つづいて、ボウル部110の内部の水位がボウル部110を洗浄可能な水位となると、使用者は、第1操作部20による手動操作を中止する(たとえば、引っ張っていた第1操作部20を戻す)。ここで、「ボウル部110を洗浄可能な水位」とは、たとえば、ボウル部110の内部の水を排出可能あるいは置換可能な水位である。または、「ボウル部110を洗浄可能な水位」とは、たとえば、サイホン作用を発生させることが可能な水位である。
第2操作部30の手動操作を行った後に手動操作を中止すると、切替部180の手動操作弁181(プランジャ183)が移動した状態の維持が解除されるため、切替部180にあっては、押圧部材185の押圧力によってプランジャ183が移動してパイロット流路312を閉塞する。これにより、圧力室311は、内部の圧力が増加し、ダイヤフラム310を弁座313に向けて移動させ、給水路151を閉止する止水状態となる(図10Aのタイミングt3.5)。これにより、ボウル部110への洗浄水の供給が停止する。
また、開閉弁240が開状態とされると(図10Aのタイミングt3)、図11A(c)および(d)に示すように、ボウル部110に貯留された洗浄水が排水トラップ管路120に流れ込むことで、排水トラップ管路120が満水となり、サイホン作用が発生してボウル部110に滞留した大量の洗浄水が排出される。それと共に、使用者は、給水状態を維持することで、ボウル部110に対して洗浄水を供給して(図10Aのタイミングt3~t3.5)、排水管300(図2Aおよび図2B参照)からの臭気などが室内へ逆流するのを防止するためのリフィールを行う。このように、第1操作部20および第2操作部30による手動操作の中止を同時に行う必要はなく、たとえば、ボウル部110の内部の水位がボウル部110を洗浄可能な水位となると、使用者は、第1操作部20による手動操作を中止し、一定の間、給水状態を維持し、便器内を洗浄した後に第2操作部30を手動操作し、手動操作を中止することで給水状態を終了させる。
図11A(d)に示すように、使用者は、第1操作部20による手動操作を中止し、第2操作部30を手動操作してからこの手動操作を中止する。これにより、ボウル部110への洗浄水の供給が停止する(図10Aのタイミングt3.5)。このように、ボウル部110内の水位を初水位付近まで戻す(リフィールを行う)ことにより、初水位を安定化させ、ボウル部110の内部の水がボウル面から溢れたり、排水管300から室内へ臭気などが進入したりするのを抑制することができる。
また、図10Bに示すように、停電時における開閉弁240の開閉タイミング、および切替部180におけるボウル部110に対する給水および止水タイミングの他の例では、使用者が排泄行為を行う前において、開閉弁240は開状態、すなわち、接続流路211の流路断面積を変化させていない状態となっている(図10Bのタイミングt1)。また、切替部180においては、ボウル部110への給水を行っていない止水状態となっている。
使用者は、停電時において排泄行為を行った後、第1操作部20および第2操作部30をそれぞれ手動操作し、開閉弁240および切替部180を共に動作させる。具体的には、使用者は、たとえば、一方の手で第1操作部20を把持して第1ワイヤ21を引っ張り、他方の手で第2操作部30を把持して第2ワイヤ31を引っ張る。これにより、第1ワイヤ21に接続された回転軸243を中心として開閉弁240が回動して、開閉弁240が閉状態、すなわち、開閉弁240によりソケット本体210の流路断面積を狭くさせた状態となる(図10Bのタイミングt2および図11B(a))。
一方、第2ワイヤ31に接続された切替部180にあっては、手動操作弁181が移動してパイロット流路312を開放する。これにより、圧力室311は、内部の圧力が低下し、ダイヤフラム310を弁座313(図5参照)から離間するように移動させ、給水路151(図5参照)を開放する給水状態となる(図10Bのタイミングt2)。使用者は、第2操作部30による手動操作を中止する(たとえば、引っ張っていた第2操作部30を戻す)ことにより、切替部180の手動操作弁181(プランジャ183)が移動した状態が維持されるため、すなわち、給水状態が維持されるため、第2操作部30を把持して第2ワイヤ31を引っ張り続ける必要がない。
これにより、停電時において、リム吐水口113およびジェット吐水口111の少なくともいずれかからボウル部110に対して洗浄水を供給することができる。開閉弁240は、上記したように、閉状態であり、接続流路211(図2Aおよび図2B参照)を閉鎖しているため、図11B(b)に示すように、ボウル部110に洗浄水が貯留されてボウル部110内の水位が上昇する。なお、第2操作部30を手動操作し、給水状態とした後に第1操作部20を手動操作してもよい。第2操作部30を手動操作し、第2操作部30の手動操作を中止して給水状態を維持させた後に第1操作部20を操作するため、水洗大便器10(図1参照)が狭い空間に配置されたとしても、片手で操作を行うことができる。
つづいて、ボウル部110の内部の水位がボウル部110を洗浄可能な水位となると、使用者は、第1操作部20による手動操作を中止する(たとえば、引っ張っていた第1操作部20を戻す)。ここで、「ボウル部110を洗浄可能な水位」とは、たとえば、ボウル部110の内部の水を排出可能あるいは置換可能な水位である。または、「ボウル部110を洗浄可能な水位」とは、たとえば、サイホン作用を発生させることが可能な水位である。
第2操作部30の手動操作を行った後に手動操作を中止すると、切替部180の手動操作弁181(プランジャ183)が移動した状態の維持が解除されるため、切替部180にあっては、押圧部材185の押圧力によってプランジャ183が移動してパイロット流路312を閉塞する。これにより、圧力室311は、内部の圧力が増加し、ダイヤフラム310を弁座313に向けて移動させ、給水路151を閉止する止水状態となる(図10Bのタイミングt3)。これにより、ボウル部110への洗浄水の供給が停止する。
また、第1操作部20および第2操作部30による手動操作が中止されると、開閉弁240は開状態とされる(図10Bのタイミングt3)。そうすると、図11B(c)に示すように、ボウル部110に貯留された洗浄水が排水トラップ管路120に流れ込むことで、排水トラップ管路120が満水となり、サイホン作用が発生してボウル部110に滞留した大量の洗浄水が排出される。第1操作部20および第2操作部30による手動操作の中止を同時に行う必要はなく、たとえば、ボウル部110の内部の水位がボウル部110を洗浄可能な水位となると、使用者は、第1操作部20による手動操作を中止し、一定の間、給水状態を維持し、便器内を洗浄した後に第2操作部30を手動操作し、手動操作を中止することで給水状態を終了させてもよい。
ここで、たとえば、図11B(d)に示すように、上記した排水動作によってボウル部110内の水位が低下すると、排水管300(図2Aおよび図2B参照)からの臭気などが室内へ逆流するおそれがあるため、使用者は、ボウル部110へ洗浄水を再度供給する(リフィール)。
具体的には、第1操作部20および第2操作部30を再度手動操作する。第2操作部30は、手動操作を中止することにより給水状態を維持することができる。これにより、切替部180にあっては、上記したように、給水路151を開放する給水状態が維持された状態となり、ボウル部110に対して洗浄水を供給する(図10Bのタイミングt4)。
つづいて、図11B(e)に示すように、低下したボウル部110内の水位が初水位付近まで戻ると、使用者は、第1操作部20による手動操作を中止し、第2操作部30を手動操作してからこの手動操作を中止する。これにより、ボウル部110への洗浄水の供給が停止する(図10Bのタイミングt5)。このように、ボウル部110内の水位を初水位付近まで戻す(リフィールを行う)ことにより、初水位を安定化させ、ボウル部110の内部の水がボウル面から溢れたり、排水管300から室内へ臭気などが進入したりするのを抑制することができる。
このように、本実施形態では、第1操作部20および第2操作部30に対する使用者の手動操作によって開閉弁240および切替部180を共に動作させることから、停電時であっても洗浄回数が制限されることなく、便器洗浄を行うことができる。また、リフィールを行う場合に第1操作部20を手動操作せずに第2操作部30のみを手動操作してもよい。
なお、上記例では、リフィールを行うようにしたが、これに限定されるものではなく、たとえば、排水動作によってボウル部110内の水位が低下せず、初水位付近であった場合は、リフィールを省略してもよい。図10Aに示すように、リフィールを別途行わず、たとえば、図中のタイミングt3で、第1操作部20の手動操作を中止した後、一定時間(図中のタイミングt3~t3.5)給水を行った後に第2操作部30を手動操作、中止を行い給水を終了させ、リフィールをしてもよい。
以上説明した第1実施形態に係る切替部180によれば、牽引されることで開弁状態となった手動操作弁181が、牽引が解除されても開弁状態を維持することができる。このため、使用者が手動操作部(第2操作部)30を操作し続ける(手動操作弁181を牽引し続ける)必要がなく、使用者は簡単な操作で給水が可能となる。これにより、停電時における使用者の便器洗浄の負担を軽減することができる。
また、手動操作弁181の牽引を解除することで開弁状態が維持できる構造であるため、第2操作部30や第2ワイヤ31などの破損を抑えることができる。さらに、第2操作部30の牽引操作によって手動操作弁181が開弁状態となるため、使用者は、給水が開始されたことを確認した後に牽引操作を終了して開弁状態を維持することができる。このため、牽引不足などで手動操作弁181が開弁状態となる前に給水を終了してしまうような操作ミスを防ぐことができる。
また、手動操作弁181を、開弁状態とする操作方法と同じ操作方法で閉弁状態とすることができる。このため、操作の煩雑化が抑えられ、使用者は簡単な操作で止水が可能となる。これにより、停電時における使用者の便器洗浄の負担をさらに軽減することができる。また、手動操作弁181の牽引を解除することで使用者の操作力や操作の方法に依存することなく開弁状態の維持を終了する構造(閉弁状態とする構造)であるため、たとえば、使用者が過剰に牽引することによる第2操作部30や第2ワイヤ31などの破損を抑えることができる。
また、プランジャ183が第1突起部191または第2突起部192を乗り越える際に生じるクリック感を使用者が感じることができる。これにより、第2操作部30の牽引操作によってプランジャ183が第1係合点191bまたは第2係合点192bを乗り越えたことを使用者が容易に認識することができる。
また、第1係合点191bおよび第2係合点192bが略同一の高さに配置されるため、手動操作弁181の開弁状態を維持する操作(開弁操作)および手動操作弁181の開弁状態を解除する操作(閉弁操作)を使用者が同じ操作感で行うことができる。
また、第1実施形態に係る水洗大便器10によれば、給水機構199において使用者が第2操作部30を操作し続ける(手動操作弁181を牽引し続ける)必要がなく、使用者は簡単な操作で給水が可能となる。これにより、停電時における使用者の便器洗浄の負担を軽減することができる。
<2.第2実施形態>
次に、図12~14を参照して第2実施形態に係る給水機構400(および水洗大便器10)について説明する。図12は、第2実施形態に係る便器洗浄装置150の模式断面図である。なお、図12は、便器洗浄装置150における給水機構400付近の模式断面図である。図13は、第2実施形態に係る切替部410を示す模式分解斜視図である。図14は、第2実施形態に係る切替部410の動作説明図である。
なお、第2実施形態は、主に給水機構400の切替部410の構成において上記した第1実施形態と異なる。このため、以下の説明では、第1実施形態と同一または同等の箇所には同一の符号を付している場合があり、さらに、同一の符号を付している箇所は、その説明を省略する場合がある。
図12に示すように、切替部410は、手動操作弁411と、カム部とを備える。手動操作弁411は、第2操作部30(図3参照)を介して使用者による手動操作が可能である。手動操作弁411は、たとえば、ポペット弁である。第2操作部30の第2ワイヤ31が使用者によって手動操作されると、手動操作の操作力がシャフトへ伝達され、シャフトが所定の回転軸まわりに回転する。
カム部は、上記のような回転可能なシャフトの端部に設けられる。このため、カム部も、第2操作部30の手動操作によるシャフトの回転に伴い、所定の回転軸まわりに回転する。
手動操作弁41は、パイロット流路312に設けられる。手動操作弁411は、弁体1412と、プランジャ413と、外筒部材414と、押圧部材415とを備える。このような手動操作弁411を含む切替部410、電磁弁156、第1操作部30、第2ワイヤ31などは、便器洗浄装置150における洗浄水の給水機構400を構成する。
手動操作弁411は、バイパス路314を開閉する。弁体412の中央付近において、プランジャ413が、挿通孔に挿通され、挿通された状態で固定される。弁体412は、周方向に配置されたOリング430によって水密に保持されつつ軸方向に摺動可能である。プランジャ413は、長尺状の部材であり、先端がバイパス路314を貫通して、パイロット流路312において電磁弁156の下流側に位置されたカム部の近傍まで突出するように配置される。
外筒部材414は、筒状(好ましくは、円筒状)の部材であり、パイロット流路312の入口付近の適宜位置に固定される。なお、外筒部材414には、圧力室311から流出した水が流通可能な流通路が形成される。
押圧部材415は、たとえば、コイルばねであり、プランジャ413と外筒部材414との間に配置される。押圧部材415は、弁体412を閉弁するように付勢する。言い換えると、押圧部材415は、プランジャ413や弁体412を閉弁状態に押圧する。
上記のように構成された切替部410は、第2操作部30(図3参照)に対する使用者の手動操作に応じて動作する。具体的には、第2操作部30が操作されるとカム部が回転し、カム部の回転によってプランジャ413が押圧部材415の押圧力およびパイロット流路312の水圧に力を受けて弁体412が開弁され、パイロット流路312を開放する。
図13に示すように、切替部410は、電磁弁156と、手動操作部(第2操作部)30および伝達部(第2ワイヤ)31とを備える。
電磁弁156および切替部410は、それぞれボウル部110(図1参照)に対する給水および止水の切り替えを行う。切替部410は、手動操作弁411(図12参照)を備えて第1操作部30を介して手動操作が可能であり、弁体412と、プランジャ413と、外筒部材414と、押圧部材415と、ロータ418とを備える。給水機構400では、手動操作弁411が、第2ワイヤ31によって押圧部材415の押圧方向とは逆方向に牽引されることで、開弁状態となる。
また、切替部410は、第1係合点421bと、第2係合点422bとを有する。また、切替部410は、固定部421c,421cを有する。第1係合点421b、第2係合点422bおよび固定部421c,422cは、いずれも外筒部材414に内包される。なお、第1係合点421b、第2係合点422bおよび固定部421c,421cの詳細については後述する。
プランジャ413は、その下部に配置される弁体412と略一体に形成される。プランジャ413は、外筒部材414に内包される。プランジャ413は、その外周面に設けられた山形リブ424を有する。山形リブ424は、その上部には互いに反対方向に下り傾斜している傾斜面424aを有する。また、山形リブ424は、後述する複数の誘導リブ420の間の凹部423と略同一の高さに形成される。
外筒部材414は、その内周面に設けられた誘導リブ420を有する。言い換えると、誘導リブ420は、外筒部材414に内包される。誘導リブ420は、2つの傾斜面である、第1傾斜面421aと、第2傾斜面422aとを有する。誘導リブ420は、手動操作弁411(プランジャ413)が牽引されると、後述するロータ418のカム部416の下部傾斜面416bが第1傾斜面421aおよび第2傾斜面422aのいずれかに沿って摺動することで、図中の矢線D1で示すような所定の移動方向にプランジャ413を誘導する。
誘導リブ420は、第1突起部421と、第2突起部422とを有する。第1突起部421および第2突起部422は、それぞれ誘導リブ420の上部に形成される。第1突起部421は、ロータ418のカム部416の下部傾斜面416bに対応して所定方向に傾斜している上記した第1傾斜面421aを有する。第1突起部421の頂部、すなわち、第1傾斜面421aの上端部は、第1係合点421bを形成する。
第2突起部422は、上記した第2傾斜面422aを有する。第2傾斜面422aは、第1傾斜面421aと同一方向に傾斜している。第2突起部422の頂部、すなわち、第2傾斜面422aの上端部は、第2係合点422bを形成する。第1傾斜面421aおよび第2傾斜面422aの傾斜角度は、同程度に形成されており、開弁状態と閉弁状態の切り替えを同じ操作感で行うことができる。
第1係合点421bおよび第2係合点422bは、互いに並んで配置される。また、第1係合点421bおよび第2係合点422bは、略同一の高さに配置されており、開弁状態と閉弁状態の切り替えを同じ操作感で行うことができる。
第1突起部421および第2突起部422のそれぞれの側面は、上記した固定部421c,422cとなる。固定部422c,422cは、ロータ418のカム部416の側面416cが当接するとともにプランジャ413が押圧部材415によって図中の矢線D2で示す方向に押圧されることで、プランジャ413を、手動操作弁181の閉弁状態または開弁状態に固定する。
第1突起部421および第2突起部422は、1つの組となっており、ロータ418のカム部416と対応するように、外筒部材414の内周面上の周方向に沿って所定の間隔をあけて複数組(たとえば、3組)設けられる。
また、外筒部材414は、カバー部材417を有する。カバー部材417は、外筒部材414の上部開口414aを閉鎖するように、外筒部材414の上部に取り付けられる。カバー部材417は、その中央部に第2ワイヤ31が挿通される開口部417aを有する。なお、第2ワイヤ31は、開口部417aに挿通されてからプランジャ413の上部に接続される。
ロータ418は、環状の部材であり、プランジャ413の上部に同軸で配置される。ロータ418は、その外周面に設けられたカム部416を有する。カム部416は、ブロック状に形成され、上部傾斜面416aと、下部傾斜面416bとを有する。カム部416は、ロータ418の外周面上の周方向に沿って所定の間隔をあけて複数(たとえば、3つ)設けられる。また、カム部416は、山形リブ424の上方に配置される。また、上部傾斜面416aおよび下部傾斜面416bは、山形リブ424の傾斜面424aと略同一の傾斜角度に傾斜している。
このように、切替部410においても、プランジャ413の山形リブ424、ロータ418のカム部4116、および外筒部材414の誘導リブ420によってノック機構が構成される。
また、このような切替部410では、まず、図14(a)に示すように、手動操作弁411(図13参照)の閉弁状態では、プランジャ413は、押圧部材415によって閉弁する方向(下方)に押圧されるとともに、ロータ418のカム部416が誘導リブ420の固定部421cによって固定されることで、閉弁状態に保持される。
次いで、図14(b)に示すように、手動操作部30の操作によって手動操作弁411が牽引されると、押圧部材415の押圧力に抗してプランジャ413が引き上げられ、ロータ418のカム部416が第1係合点421bを乗り越えて移動可能な状態となり、図14(c)に示すように、手動操作弁411が牽引解除されると、プランジャ413が押圧部材415に押圧され、カム部416の下部傾斜面416bが第1傾斜面421aに沿って移動する。プランジャ413は、押圧部材415に押圧されて戻る途中でカム部416が固定部422cによって固定されることで、開弁状態に保持される。
次いで、図14(d)に示すように、手動操作部30の操作によって手動操作弁411が再度牽引されると、押圧部材415の押圧力に抗してプランジャ413が引き上げられ、固定部422cによる固定が解除され、カム部416が第2係合点422bを乗り越えて移動可能な状態となり、図14(e)および図14(f)に示すように、手動操作弁411が牽引解除されると、プランジャ413が押圧部材415に押圧され、カム部416の下部傾斜面416bが第2傾斜面422aに沿って移動する。
そして、図14(g)に示すように、プランジャ413は、カム部416が固定部421cによって固定されることで、閉弁状態に保持される。
第2実施形態に係る給水機構400によれば、上記した第1実施形態と同様、牽引されることで開弁状態となった手動操作弁411が、牽引が解除されても開弁状態を維持することができる。このため、使用者が手動操作部(第2操作部)30を操作し続ける(手動操作弁411を牽引し続ける)必要がなく、使用者は簡単な操作で給水が可能となる。これにより、停電時における使用者の便器洗浄の負担を軽減することができる。
また、手動操作弁411の牽引を解除することで開弁状態が維持できる構造であるため、第2操作部30や第2ワイヤ31などの破損を抑えることができる。さらに、第2操作部30の牽引操作によって手動操作弁411が開弁状態となるため、使用者は、給水が開始されたことを確認した後に牽引操作を終了して開弁状態を維持することができる。このため、牽引不足などで手動操作弁411が開弁状態となる前に給水を終了してしまうような操作ミスを防ぐことができる。
また、手動操作弁411を、開弁状態とする操作方法と同じ操作方法で閉弁状態とすることができる。このため、操作の煩雑化が抑えられ、使用者は簡単な操作で止水が可能となる。これにより、停電時における使用者の便器洗浄の負担をさらに軽減することができる。また、手動操作弁411の牽引を解除することで使用者の操作力や操作の方法に依存することなく開弁状態の維持を終了する構造(閉弁状態とする構造)であるため、たとえば、使用者が過剰に牽引することによる第2操作部30や第2ワイヤ31などの破損を抑えることができる。
また、プランジャ413が第1突起部421または第2突起部422を乗り越える際に生じるクリック感を使用者が感じることができる。これにより、第2操作部30の牽引操作によってプランジャ413が第1係合点421bまたは第2係合点422bを乗り越えたことを使用者が容易に認識することができる。
また、第1係合点421bおよび第2係合点422bが略同一の高さに配置されるため、手動操作弁411の開弁状態を維持する操作(開弁操作)および手動操作弁411の開弁状態を解除する操作(閉弁操作)を使用者が同じ操作感で行うことができる。
また、プランジャ413が回転しないでロータ418が回転することで手動操作弁の開弁状態および閉弁状態を切り替えることができるため、第2ワイヤ31や押圧部材415に捻れが発生するのを抑えることができ、第2ワイヤ31や押圧部材415の破損や使用感の変化を抑えることができる。
また、第2実施形態に係る水洗大便器10によれば、給水機構400において使用者が第2操作部30を操作し続ける(手動操作弁411を牽引し続ける)必要がなく、使用者は簡単な操作で給水が可能となる。これにより、停電時における使用者の便器洗浄の負担を軽減することができる。
なお、上記した第1実施形態および第2実施形態において、図15に示すように、伝達部(第2ワイヤ)31は、牽引規制手段250を有してもよい。牽引規制手段250は、手動操作部30の牽引ストロークを規制する。牽引規制手段250は、手動操作弁181,411よりも手動操作部30(図3参照)側に設けられる。牽引規制手段250は、追従部251と、規制部252とを備える。
第2ワイヤ31は、上記したように、アウターチューブと、アウターチューブの内部に挿設されたインナーワイヤとを備える。追従部251は、ブロック状の部材であり、インナーワイヤに設けられる。規制部252は、アウターチューブの手動操作弁181,411側の端部(端面部)である。追従部251は、第2操作部30が牽引操作され第2ワイヤ31が引っ張られると規制部252に衝突して第2操作部30の牽引ストロークを規制する。この場合、第2ワイヤ31に接続されたプランジャ183,413がカバー部材187,417などに衝突するよりも先に追従部251が規制部252に衝突するように、追従部251の取り付け位置が調整されている。
このような構成によれば、牽引規制手段250によって第2操作部30の過剰な牽引操作を抑制することができ、安全性を向上させることができる。また、給水機構199,400は、一般的に便器洗浄装置150の内部に格納されているため、第2操作部30の過剰な牽引操作によって破損してしまうと修理が煩雑となるが、牽引規制手段250が手動操作弁181,411の外側にあるため、修理などが行いやすい。すなわち、メンテナンス性を向上させることができる。また、牽引規制手段250が手動操作弁181,411の外側に設けられているため、使用者が過剰な牽引操作を行ったとしても、手動操作弁181,411が破損する前に手動操作部30が破損するため、手動操作弁181,411の破損による止水不良の発生を抑制することができる。
また、図13に戻り、上記した第1実施形態および第2実施形態において、図13に示すように、カバー部材417は、その上部に、牽引規制手段250における第2操作部30の牽引ストロークの範囲よりも大きな空間となる凸空間417bを有してもよい。
このような構成によれば、第2操作部30の過剰な牽引操作によって給水機構199,400が破損するリスクをさらに低減することができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。