JP2021171987A - 金属板ラミネート用ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 夏場の気温が高い時に温度管理がされていない倉庫で保管しても、金属板との接着力が低下しない食料缶・飲料缶用に好適な金属板ラミネート用ポリエステルフィルムを提供する。【解決手段】 少なくとも、ポリエステル樹脂からなる接着層(A層)および表面層(B層)を持つ2軸延伸ポリエステルフィルムであって、接着層が以下の(1)〜(5)を満たすことを特徴とする金属板ラミネート用ポリエステルフィルム。(1)接着層のポリエステル樹脂は、エチレンテレフタレート繰り返し単位を82〜90mol%、共重合成分の繰り返し単位を10〜18mol%含有する。(2)接着層同士をヒートシールしたシール強度が、1N/15mm以上、2.5N/15mm以下。(3)偏光ATR法で求めた接着層のトランス比率が、1以上、1.5以下。(4)50℃で336時間エージング後とエージング前の接着層同士をヒートシールしたシール強度の差が1.5N/15mm以下。(5)50℃で336時間エージングした後とエージング前の偏光ATR法で求めた接着層のトランス比率の差が0.7以下。【選択図】 なし

Description

本発明は、金属板ラミネート用ポリエステルフィルムに関する。特に、3ピース缶において、コーヒー飲料、清涼飲料、缶詰等の飲食料品用の金属容器の腐食防止等の目的で缶の内面に貼り合せるのに用いる金属板ラミネート用ポリエステルフィルムに関するものである。
食料品や液体内容物を缶に密封した食料缶や飲料缶は、強度、耐熱性、耐寒性に優れていることから、スチールやアルミニウム等の金属材料が用いられている。これらの金属缶を食品用途として用いる場合、金属臭が内容物である食料品や飲料に移行する、いわゆるフレーバー性不良や、内容物の変質及び金属自体の内容物による腐食を防ぐ必要がある。
このため、工程簡素化、衛生性向上、公害防止等の目的から、有機溶剤を使用せずに金属板にポリエステルフィルムを加熱、加圧接着し、そのラミネート鋼板を加工することで製缶する方法がとられている(例えば、特許文献1〜3)。
しかしながら、特許文献1〜3では、フィルムと鋼板をラミネートした後の製缶加工時の衝撃で、局所的なフィルム破れの問題があった。これを回避するために基材層・接着層からなる2層の複合ポリエステルフィルムを用いる方法が開示されている(例えば、特許文献4〜5)。
しかしながら、特許文献4では、製缶工程の種々の熱履歴によりラミネート後のフィルムが収縮し、収縮が著しい場合には鋼板から剥離してしまうという重大な問題があった。そこで特許文献5では、基材層・接着層からなる2層のポリエステルフィルムのうち、接着層用樹脂として、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレートコポリマーとポリブチレンテレフタレートをブレンドすることで、従来の製缶工程で充分な接着性を発揮できることが開示されている。
しかしながら、ポリブチレンテレフタレートを使用することで飲料のフレーバー性悪化に繋がる懸念があり、フィルムを夏場の気温が高い時に温度管理がされていない倉庫で保管した時(いわゆる、高温環境下での経時)、接着性が低下してしまう問題点があった。
昨今、飲料缶などの金属缶は、持ちやすさや開封性さらには顧客吸引力に優れた意匠性などを目的として、金属缶の胴部分の形状に工夫を凝らした金属缶(異型缶)が増加している。異型缶では加工時にフィルムへのストレスが大きいため、2層のポリエステルフィルムの接着層樹脂との接着性が低下すると、一般的なフィルムラミネート金属缶と比べ、フィルム層の剥離が生じやすくなる。そのため、高温環境下での経時(エージング)による影響で更にフィルム層の剥離が生じやすくなる問題がある。
特公昭57−23584号公報 特公昭59−34580号公報 特公昭62−61427号公報 特開平2−81630号公報 特開2006−150606号公報
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、夏場の気温が高い時に温度管理がされていない倉庫で保管しても、金属板との接着力の低下が少なくフィルムの剥離が生じない食料缶・飲料缶用に好適な金属板ラミネート用ポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明は、以下の構成よりなる。
〔1〕少なくとも、ポリエステル樹脂からなる接着層(A層)および表面層(B層)を持つ2軸延伸ポリエステルフィルムであって、接着層が以下の(1)〜(5)を満たすことを特徴とする金属板ラミネート用ポリエステルフィルム。
(1)接着層のポリエステル樹脂は、エチレンテレフタレート繰り返し単位を82〜90mol%、共重合成分の繰り返し単位を10〜18mol%含有する。
(2)接着層同士を90℃、0.2MPa、2秒間でヒートシールしたシール強度が、1N/15mm以上、2.5N/15mm以下。
(3)偏光ATR法で求めた接着層のトランス比率が、1以上、1.5以下。
(4)50℃で336時間エージング後とエージング前の接着層同士を90℃、0.2MPa、2秒間でヒートシールしたシール強度の差が1.5N/15mm以下。
(5)50℃で336時間エージングした後とエージング前の偏光ATR法で求めた接着層のトランス比率の差が0.7以下。
〔2〕150℃で15分間熱処理後のフィルム長手方向の熱収縮率が1%以上、3%以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属板ラミネート用ポリエステルフィルム。
〔3〕厚み12μmでのヘイズが35%以上、60%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属板ラミネート用ポリエステルフィルム。
〔4〕シール面と反対面の表面粗さの最大高さが4μm以上、8μm以下であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕に記載の金属板ラミネート用ポリエステルフィルム。
〔5〕〔1〕〜〔4〕いずれかに記載の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムを接着層面で金属板にラミネートしたフィルムラミネート金属板。
〔6〕〔5〕に記載のフィルムラミネート金属板を成形して得た金属容器。
本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムは、夏場の気温が高い時に温度管理がされていない倉庫で保管しても、金属板との接着力が低下することを防止出来る。また、ラミネート後の製缶工程において、熱履歴による劣化、剥離の発生が抑制できる。さらに、食料品や飲料のフレーバー性に悪影響を与えるような成分を使用しないため、内容物の変性を防ぐことにおいても好適である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムは、少なくとも接着層(A層)および表面層(B層)を持つ2軸延伸ポリエステルフィルムである。
本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルを金属板にラミネートしてから金属容器を成形する場合、接着層(A層)は金属板にラミネートされる層であり、表面層(B層)容器の内側内容物である飲食料品に接する層又は容器の外側表面になる層である。
[接着層(A層)]
本発明において、接着層を形成するポリエステル樹脂は、主たるジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、主たるジオール成分がエチレングリコールであるポリエステル樹脂である。ジカルボン酸成分100mol%の内、テレフタル酸が70mol%以上含有することが好ましく、80mol%以上含有することがより好ましい。テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、任意のジカルボン酸が使用できる。グリコール成分100mol%の内、エチレングリコールが80mol%以上含有することが好ましく、90mol%以上含有することがより好ましい。エチレングリコール以外のジグリコール成分としては、任意のグリコールが使用できる。
テレフタル酸以外の多価ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環肪多価カルボン酸;等が挙げられる。
エチレングリコール以外の多価アルコールとしては、例えば、ジエチレンアルコール、トリエチルグリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ドデカメチレンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族多価アルコール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノール等の脂環族ジオール;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族多価アルコール;ビスフェノール誘導体のエチレンオキサイド付加体等の芳香族多価アルコール;が挙げられる。
ポリエステル樹脂中における多価アルコール成分100mol%中あるいは多価カルボン酸成分100mol%中の非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分の合計は、10mol%以上、18mol%以下であることが重要である。非晶質成分が10mol%より少なくなると、接着層樹脂のポリエステル樹脂の融点が高くなり、実際の製缶工程における鋼板へのポリエステルフィルムの通常のラミネート条件よりも多くの熱処理が必要となり、実用上好ましくない。さらに、エージングによる鋼板への接着性の低下が生じやすくなるため好ましくない。また、非晶質成分が18mol%より多くなると、接着層用ポリエステル樹脂の融点が低くなりすぎることで、製缶工程における熱処理中に、鋼板にラミネートしたポリエステルフィルムが、ラミネートした位置から鋼板上を移動する現象(膜ずれ)が発生し、缶の仕上がりに問題を生じてしまう。さらに、ポリエステル樹脂の耐熱性に悪影響を及ぼし、好ましくない。非晶質成分の上限は、16mol%以下が好ましく、14mol%以下がより好ましい。
ここで、非晶質成分となりうるモノマーとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、1.4−シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸、1.4−シクロヘキサンジカルボン酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸、2.2−ジエチル1.3−プロパンジオール、2−n−ブチル2−エチル1.3ープロパンジオール、2.2−イソプロピル1.3−プロパンジオール、2.2−ジn−ブチル1.3−プロパンジオール、1.4−ブタンジオール、ヘキサンジオールが挙げる事が出来るが、その中でも、オペンチルグリコール、1.4−シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸、を用いるのが好ましい。
本発明の接着層を構成するポリエステル樹脂の極限粘度(IV)は、0.50〜0.80dl/gである必要がある。IVが0.50dl/gよりも低いと、フィルムが製膜中に破断しやすくなり、製膜操業性が非常に悪く、製膜できても、低分子量物由来の熱劣化物が発生し、積層フィルムとして用いるのは困難となる。また、食料や飲料に接触する用途で積層フィルムを用いる場合、接着層中の低分子量物の影響で、保香性が劣るおそれがある。また、IVが0.80dl/gより高いと、接着性(初期シール温度)が不良となり、金属板とのラミネート加工性が悪くなる。さらに、製膜工程において、樹脂を溶融し、押出機で押し出す際、過剰な熱や圧力をかけることになる結果、押出機内で熱分解して生ずる低分子量物が増加したり、押し出しの負荷が大きすぎたりするため、押出機から均一量の樹脂を押し出すことが難しく、良好な品質の積層フィルムを得ることが困難となるおそれがある。本発明のポリエステル樹脂のIVの上限は、好ましくは0.75dl/g以下であり、さらに好ましくは0.70dl/g以下である。またIVの下限は、好ましくは0.55dl/g以上であり、さらに好ましくは0.58dl/g以上である。
本発明における接着層を構成するポリエステル樹脂の融点は、225〜235℃、より好ましくは225〜233℃である。接着層を構成する樹脂の融点が235℃超えると金属板ラミネート用ポリエステルフィルムの融点に近くなるため、熱融着による金属板への接着性を確保しようすると、通常のラミネート条件よりも多くの熱処理が必要となり、実用上好ましくない。また、接着層を構成する樹脂の融点が225℃未満であると、製缶工程における熱処理中に、鋼板にラミネートしたポリエステルフィルムの膜ずれが発生し、缶の仕上がりに問題を生じるおそれがある。
[表面層(B層)]
本発明において表面層を形成するポリエステル樹脂としては、特に制限はないが、ポリエステルフィルムの強度、耐熱性、耐薬品性、衛生性などの観点から、ポリエチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。
3ピース缶の缶胴に使用する場合は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を90質量%以上含有することがより好ましく、95質量%以上含有することがさらに好ましい。94質量%以上、99質量%以下含有することが最も好ましい。
表面層を形成するポリエステル樹脂の極限粘度(IV)は、上記で説明した接着層用のポリエステル樹脂と同程度であることが好ましい。さらに、缶に内容物を充填後に実施されるレトルト処理等でのポリエステル樹脂からのオリゴマー量を少なくし、内容物の風味を損なうのを防ぐ保香性の点より、また、製缶ラインの汚染防止の点より、減圧下または不活性ガス雰囲気下での固相重合法で製造されたオリゴマー含有量が低いポリエステル樹脂を使用することは好ましい。
上記ポリエステル樹脂は、エチレンテレフタレート環状三量体をはじめとするオリゴマー環状三量体の含有量が0.7質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下である。上記環状三量体の含有量が少ない本発明のフィルムは、例えば、滅圧加熱処理法、固相重合法等の上記環状三量体含有量の少ない樹脂を製造する方法、ポリエステル樹脂製造後に水や有機溶剤により上記環状三量体を抽出する方法、及びこれらを組み合わせた方法等により製造することができる。
なお、表面層に用いるポリエステル樹脂に無機粒子を添加することにより、ポリエステルフィルムの滑り性や隠蔽性、耐傷つき性(耐スクラッチ性)を付与することができる。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン等の金属酸化物;カオリン、ゼオライト、セリサイト、セピオライト等の複合酸化物;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム等のリン酸塩;炭酸カルシウム等の炭酸塩等を挙げることができ、中でも金属酸化物であることが好ましい。これらの微粒子は天然品であっても合成品であってもよい。
また、表面層に用いるポリエステル樹脂は架橋高分子粒子などの有機微粒子を含有していてもよい。架橋高分子粒子としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のアクリル系単量体、スチレンやアルキル置換スチレン等のスチレン系単量体等と、ジビニルベンゼン、ジビニルスルホン、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメチルアクリレート等の架橋性単量体との共重合体、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂等を挙げることができ、中でもアクリル系単量体の(共)重合体であることが好ましい。
上記微粒子は、粒子径や粒子径分布を調整するために、粉砕や分級等を行ってもよい。本発明では不定形(球状及び略球状以外の形)の無機微粒子が好ましい。球状や球状に近い微粒子のみが含まれている場合、フィルムへの傷やフィルムからの脱落が発生する場合がある。
上記不定形の無機微粒子の平均粒径は、好ましくは0.5〜5.0μmであり、より好ましくは0.8〜4.0μmである。平均粒径が0.5μm未満であると、フィルムと金属板との高温での滑り性の向上効果が小さくなり、フィルムに傷がつき易くなるおそれがある。
一方、平均粒径が5.0μmを超えると上記の効果が飽和したり、微粒子がフィルムから脱落し易くなったり、フィルムの製膜時にフィルムが破断し易くなったり、衝撃強度が低下する場合がある。
上記不定形の無機微粒子のフィルム中の含有量は、上記ポリエステル樹脂組成物100質量%中、0.5〜2.0質量%であり、好ましくは0.6〜1.5質量%である。上記不定形の無機微粒子のフィルム中の含有量が0.5質量%未満であるとフィルムと金属板との高温での滑り性の向上効果が小さくなり、フィルムに傷がつき易くなるおそれがある。上記不定形の無機微粒子のフィルム中の含有量が2.0質量%を超えると上記の効果が飽和したり、フィルムの製膜性が低下したり、衝撃強度が低下する場合がある。
本発明に用いるポリエステル樹脂は、製造の際には重合触媒としてはアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物等が用いられる。環境への負荷やポリエステル樹脂の黄変の軽減の観点から、アルミニウム触媒が好ましい。さらに、ポリエステル樹脂の熱劣化を抑制するためや接着層の接着性を向上させるために、リン化合物と併用することが好ましい。
本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムは、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤、潤滑剤、結晶核剤等各種添加剤を含有することができる。上記の各種添加剤は、ポリエステル樹脂組成物100質量%中に5質量%以下の割合で含まれてもよい。
なお、接着層、表面層に使用するポリエステル樹脂を用いて溶融押出しし未延伸フィルムを成形する際に静電密着性を付与するために、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のMg塩、酢酸カルシウム、塩化カルシウム等のCa塩、酢酸マンガン、塩化マンガン等のMn塩、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等のZn塩、塩化コバルト、酢酸コバルト等のCo塩を各々の金属イオンの総量として300ppm以下添加することができる。この際、熱安定剤としてリン酸またはリン酸トリメチルエステル、リン酸トリエチルエステル等のリン酸エステル誘導体をリン原子として200ppm以下の範囲で添加することができる。上記重合触媒以外の金属イオンの総量が300ppm、またリン量が200ppmを越えると、得られたポリエステル樹脂の着色が顕著になる。また、ポリエステル樹脂の耐熱性及び耐加水分解性も低下する場合があるので好ましくない。
このとき、添加する総リン量と総金属イオン量とのモル比が0.4〜1.0であるときに、耐熱性、耐加水分解性及び、静電密着性のバランスが最も優れたポリエステル樹脂が得られるので好ましい。ここで、添加量のモル比=(リン酸、リン酸アルキルエステル、またはその誘導体中のリンの総量(モル原子))/(Mgイオン、Caイオン、Mnイオン、Znイオン、Coイオンの総量(モル原子))である。上記モル比が0.4未満の場合には、本発明の組成物の着色が顕著となり,耐熱性、耐加水分解性が低下する。1.0を超える場合には、十分な静電密着性が得られない。
本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムの厚みは、8μm以上、50μm以下であるのが好ましく、10μm以上、30μm以下であることがより好ましい。フィルム厚みが8μm未満では被覆効果が得られず、50μmを超えた場合は過剰品質であり、経済的に好ましくない。
また、本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムの接着層(A層)と表面層(B層)の厚み比率は、A層:B層=25:75〜5:95であることが好ましく、より好ましくは15:85〜10:90である。各層の厚み比率が前記範囲にあれば、接着層を金属板に貼り合せ、成形加工したときに要求される密着性や耐熱性が良好である。表面層の厚み比率が95%を超える場合、すなわち、接着層の厚み比率が5%未満である場合、金属板と接着層との密着性が十分確保できないおそれがある。また、接着層の厚み比率が75%未満である場合、すなわち、表面層の厚み比率が25%を超える場合、保香性を十分に確保できないおそれがある。
[金属板ラミネート用ポリエステルフィルムの特徴]
次に、本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムの特徴について詳細に説明する。
(シール強度)
本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムは、90℃でのフィルム同士でのシール強度が1N/15mm以上、2.5N/15mm以下である事が好適である。2.5N/15mmより高い場合、非晶成分量が過剰になり摩擦が悪化することでシワや帯電による加工性の悪化につながり、1N/15mmより低い場合、フィルムが剥離を起こしやすくなるために好ましくない。
さらに、50℃で336時間エージング後とエージング前の90℃でのフィルム同士でのシール強度の差が1.5N/15mm以下である事が重要である。1.0N/15mm以下であることが好ましい。1.5N/15mmより高い場合、エージングによりフィルムの接着性が低下し、剥離が起きやすくなるために好ましくない。
(メチレン基部分のトランス比率)
一般的にポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルは、メチレン基部分の立体配座においてゴーシュ型構造、トランス型構造の2種類をとることが知られている。これら2種類の内、分子鎖が規則正しく配列する上では、ゴーシュ型構造に比べ、トランス型構造が有利である。そのため、ゴーシュ型構造はポリエステルの分子鎖が規則正しく配列していない部分を反映し、トランス型構造はポリエステルの分子鎖が配向して規則正しく配列し、結晶化した構造を反映している。
偏光ATR法において、848cm−1、973cm−1に観察されるスペクトル強度A、Bは、トランス型構造に由来する吸収であり、793cm−1に観察されるスペクトル強度Cは、内部厚みに起因する吸収である。したがって、スペクトル強度の比(A+B)/Cの値は結晶性の指標となり、スペクトル強度比が小さいほど結晶性が低く、高いほど結晶性が高いことを示す。
本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムは、偏光ATR法で求めたシール層のトランス比率((848cm−1+973cm−1)/793cm−1)が1以上、1.5以下である事が重要である。以下、トランス比率と略記する。トランス比率が1.5より高い場合は、接着性が低下しフィルムが剥離を起こしやすくなる。トランス比率が1より低い場合は、非晶成分量が過剰になり、滑り性が悪化してシワの発生や帯電によって加工性が悪化する場合があり好ましくない。
さらに、50℃で336時間エージング後の偏光ATR法で求めたシール層のトランス比率とエージング前との差(|エージング前のトランス比率―エージング後のトランス比率|)が0.7以下である事が重要である。
エージング前後のシール層のトランス比率の差が0.7より高い場合は、エージング後にフィルムの接着性が低下し、剥離を起こしやすくなるために好ましくない。
エージング前後のシール層のトランス比率の差を小さくするには、熱固定処理でフィルム温度を接着層の融点以上にして1秒以上加熱処理することが好ましい。
(フィルム長手方向の熱収縮率)
本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムは、150℃で15分間熱処理した後のフィルム長手方向の熱収縮率が1%以上、3%以下であることが好ましい。150℃における熱収縮率が1%未満の場合は、熱ラミネート時にシワや帯電による操業トラブルが発生し易く、3%を超えると熱ラミネート時の密着力が低く、融点近傍かそれ以上の高いラミネート温度が必要となり、実用上好ましくない。
(ヘイズ)
本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムは、厚み12μmでのヘイズが35%以上、60%以下であることが好ましい。60%より高い場合、金属ラミネート用の鋼板の傷や汚れ等の欠点が金属ラミネート後に検知し難くなり、35%より低い場合、隠蔽性が不十分で加工欠点を検知する欠点検知機の誤作動を招く可能性が高くなる。
(表面粗さの最大高さ)
本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムは、表面粗さの最大高さが4μm以上、8μm以下であることが好ましい。8μmより高い場合、製缶工程でフィルムからの粒子の脱落が発生しやすくなり、4μmより低い場合、滑り性が低下し製缶工程でフィルムに傷つきやすくなるおそれがある。
[金属板ラミネート用ポリエステルフィルムの製造方法]
本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムの製造方法を説明する。
本発明の接着層(A層)および表面層(B層)を持つ2軸延伸ポリエステルフィルムである金属板ラミネート用ポリエステルフィルムは、例えば、A層とB層を共押出しした未延伸フィルムを長手方向及び幅方向に延伸した後熱固定処理して得られる。
未延伸フィルムを得るには、使用する各ポリエステル樹脂の原料チップを残留する水分率が150ppm以下になるようにホッパドライヤー、パドルドライヤ等の乾燥機、又は真空乾燥機を用いて乾燥する。乾燥したチップを押出機で250〜300℃の温度でフィルム状に押出す。残留する水分率が150ppmを超えた原料チップを使用すると得られたフィルムの粘度が低下し、製造時に破断トラブルが発生するおそれがある。また、フィルムの強度が低下し、金属板にラミネートする際にフィルムが破れるトラブルが発生するおそれもある。未乾燥のポリエステル樹脂原料チップをベント式押出機内で水分を除去しながら250〜300℃の温度でフィルム状に押出すこともできる。押出しに際してはTダイ法、チューブラ法等、公知のどの方法を採用しても構わない。押出し後は、急冷して未延伸フィルムを得る。
本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムは、上記未延伸フィルムを二軸延伸することによって得られる。二軸延伸することでポリエステルフィルムの具備する保香性をさらに優れたものにすることができる。
二軸延伸を行う場合は、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法のいずれでもよい。逐次二軸延伸法が、製造可能な厚みの範囲が広い点や生産性などの点で好ましい。
逐次二軸延伸法の場合、長手方向(縦方向とのいう)の延伸倍率としては、好ましくは3〜5倍、より好ましくは3〜4.5倍であり、延伸温度としては、好ましくは70〜110℃、より好ましくは80〜100℃である。長手方向の延伸は、例えば、ロール延伸機で加熱ロール又は赤外線輻射熱で未延伸フィルムを加熱し、ロール間の速度差で延伸することができる。
幅方向(横方向ともいう)の延伸倍率としては、好ましくは3〜5倍、より好ましくは3〜4.5倍であり、延伸温度としては、好ましくは90〜140℃、より好ましくは100〜130℃である。幅方向の延伸は、テンターを用いて行われる。
上記2軸延伸は、上記条件の範囲でフィルムの分子配向が抑えると、熱固定処理で配向方向の結晶化を抑制でき上記トランス比率が増加するので好ましい。
本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムは、2軸延伸後に熱固定処理することが好ましい。接着層は熱固定によって、非晶化および/又は無配向化されることが好ましい。そのため、接着層を構成するポリエステル樹脂の融点より高い温度で熱固定処理を行うことが好ましい。熱固定処理により、接着層の結晶化度が低下し、ヒートシール強度が上昇する。熱固定処理は、接着層を構成するポリエステル樹脂の融点より高い温度で熱固定することがより好ましい。
また、熱固定ゾーンの通過時間は、1秒以上10秒以下であることが好ましい。熱固定ゾーンの通過時間は、10秒で十分である。長すぎるとフィルムが脆くなる場合がある。
上記のとおり、本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムは、接着層を構成するポリエステル樹脂の融点より高い温度で2秒以上熱固定処理を行うことが好ましい。しかし、接着層を構成するポリエステル樹脂の融点より高い温度で熱固定処理を行う場合、テンターの熱固定ゾーンで接着層がフィルムを把持しているクリップに融着し、熱固定処理後に冷却されたフィルムを取り出す際にクリップから解放されないトラブルが発生する場合がある。この対策として、クリップの把持部に相当する部分には接着層が無く表面層だけになるように共押出して未延伸フィルムを得ることが有効である。また、クリップの表面を処理して接着層のポリエステル樹脂の融着を抑制することが有効である。
本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムは、上記のとおり接着層と表面層を共押出しにより積層を行った後、二軸延伸する方法で作製できる。また、本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムは、接着層と表面層を別々に作製した後に積層する方法で作製してもよい。接着層及び表面層は、上記と同様の製造方法によって作製することができる。
本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムは、接着層と金属板との密着性を良好にするため、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、などの表面処理をしてもよい。
[フィルムラミネート金属板]
本発明のフィルムラミネート金属板は、本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムを金属板の少なくとも片面にラミネートして得ることができる。製缶加工性に優れたものである。
また、本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムを金属板の少なくとも片面にラミネートする方法としては、公知の方法が適用でき、特に限定されないが、好ましくはサーマルラミネート法があげられ、特に好ましくは金属板を通電加熱させてサーマルラミネートする方法が挙げられる。また、積層フィルムは、金属板の両面にラミネートされていてもよい。積層フィルムを金属板の両面にラミネートする場合、同時にラミネートしても逐次にラミネートしてもよい。
また、本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムを金属板の少なくとも片面にラミネートする場合、上述のとおり、接着層を金属板側にラミネートさせる層として用いるが、接着層のバリア性や耐腐食性を向上させるためやラミネート密着性をさらに向上させるために、熱硬化性樹脂を主成分とした公知の接着剤を予め接着層に塗布しておくことができる。
本発明のフィルムラミネート金属板に用いられる金属板としては、特に限定されないが、例えば、ブリキ、ティンフリースチール、アルミニウム、アルミニウム合金などが挙げられる。また、その厚さは、特に限定されないが、強度の確保と経済性の点から、100〜500μmが好ましい。より好ましくは150〜400μmである。また、金属板は、フィルムとの接着力を充分にするためクロメート処理やアルマイト処理などの処理をすることが好ましい。
[金属容器]
本発明の金属容器は、前記のフィルムラミネート金属板を用いて成形することによって得ることができる。金属容器の形状は特に限定されないが、例えば、缶状、瓶状、樽状などが挙げられる。
本発明の金属容器が缶の場合、缶胴・缶蓋・缶底の3部分で構成されている3ピース缶と缶胴・缶蓋の2部分で構成されている2ピース缶などが挙げられる。
3ピース缶の場合、缶胴の接合部の接合方法により溶接缶、半田缶、接着缶などが挙げられる。3ピース缶の缶胴部分の形状に意匠性を付与した金属缶(異型缶)は、異型加工時にフィルムへのストレスが大きいためフィルム層の剥離が生じやすい。本発明のフィルムラミネート金属板であれば、異型加工をしてもフィルムの剥離を抑えることができる。
2ピース缶の場合、絞り加工、絞りしごき加工、TULC缶(引張り絞りしごき加工)などが挙げられる。絞り加工や絞りしごき加工時にフィルムへのストレスが大きいためフィルム層の剥離が生じやすい。本発明のフィルムラミネート金属板であれば、フィルムの剥離を抑えることができる。
本発明の金属容器の成形方法も特に限定されないが、例えば、絞り成形、しごき成形、絞りしごき成形、円筒成形、溶接接合、半田接合、巻締加工などの公知の方法を使用することができる。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、フィルムの評価は次の測定法によって行った。
(ポリエステル樹脂の組成分析)
試料約30mgをクロロホルムD(ユーリソップ社製)とトリフルオロ酢酸D1(ユーリソップ社製)を10:1(体積比)で混合した溶媒に溶解させて、試料溶液を調製した。そして、核磁気共鳴(NMR)装置(Varian社製GEMINI−200)を用いて、温度23℃、積算回数64回の測定条件で試料溶液のプロトンのNMRを測定した。NMR測定では、所定のプロトンのピーク強度を算出して、酸成分100モル%中のテレフタル酸成分およびイソフタル酸成分の含有率(モル%)を算出した。
(極限粘度の測定方法)
ポリエステル樹脂0.2gをフェノール/1,1,2,2−テトラクロルエタン(60/40(重量比))の混合溶媒50ml中に溶解し、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。単位はdl/gである。
(水分率測定方法)
乾燥過程を終了した直後の原料ポリエステル樹脂を容器にサンプリングし、水分率測定まで密封しておいた。この原料ポリエステル樹脂を約2g秤量し、三菱化学アナリテック社製の水分測定装置カールフィッシャー水分計を用いて、気化温度230℃で測定した。
(エチレンテレフタレート環状三量体の含有量の測定方法)
フィルムを100mg精秤し、試料をヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム混合液(容量比=2/3)3mlに溶解させ、更にクロロホルム20mlを加えて希釈した。これに、メタノール10mlを加えてポリマーを沈殿させた後濾過し、濾液を蒸発・乾固して、蒸発乾固物の量を測定した。また、上記蒸発乾固物をN,N−ジメチルホルムアミド10mlで溶解させた溶液を遠心ろ過した溶液をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)であるHewlett Packerd社製LC100を用いて分析を行った。主な分析条件を以下に示す。
カラム:Waters社製μBondasphere/Delta−Pak C18 5μm 100Å 3.9mm×15cm
カラム温度:50℃
移動相A:2%酢酸/水(容量比)
移動相B:アセトニトリル
溶出法:移動相A/移動相B(容量比)=10/90(0分)から100/0(55分)へのリニアグラジエント溶出法
流速:0.8ml/分
検出波長:UV 258nm
(融点(Tm)の測定方法)
島津製作所社製DSC−60型示差走査熱量計を用いて測定した。実施例1〜4、比較例1〜5で用いられる原材料としてのポリエステル樹脂(以下、原料ポリエステル樹脂という)を300℃で5分間加熱溶融した後、液体窒素で急冷した。急冷したポリエステル樹脂のうち、10mgを試料とし、20℃/分の速度で昇温していった際に現れる結晶融解に基づく吸熱ピーク温度(融点)を測定した。
フィルムの融点についても、原料ポリエステル樹脂の代わりに金属板ラミネート用ポリエステルフィルム(接着層)から削り取ったサンプルを用いた以外は原料ポリエステル樹脂の融点と同様に測定した。
(フィルムの厚み)
JIS K7130−1999 A法に準拠し、ダイアルゲージを用いて測定した。
(シール強度の測定方法)
JIS Z1707に準拠してシール強度測定実施した。具体的な手順を簡単に以下に記す。ヒートシーラーにて、接着層同士を接着させる。該接着サンプルを島津製作所社製のオートグラフAGS−Xを使用して、T時剥離強度の測定を行った。この時のシール圧力は2kg/cm、シール時間は2秒、シール温度は90℃で測定引張速度は200mm/分、試験片幅は15mm幅である。単位はN/15mmで示す。
(エージング後のシール強度測定方法)
長手方向に20cm、幅方向に30cmのフィルム試料を、温度50℃に設定されたギアオーブンで336時間エージングした。エージングしたサンプルを用い上記のシール強度の測定を行った。
(エージング前後のシール強度差の測定方法)
エージング前後のシール強度差は、式(1)の計算式により算出した。
エージング前後のシール強度差(N/15mm)=|エージング前のシール強度(N/15mm)―エージング後のシール強度(N/15mm)| ・・・ 式(1)
(偏光ATR法によるトランス比率)
FT−IR装置 FTS 60A/896(バリアン社製)を用いて、ATR法で測定波数領域650〜4000cm−1、積算回数128回で偏光をかけて赤外吸収スペクトルの吸収帯を利用して行った。スペクトル強度は各波数での吸光度とする。式(2)の計算式により算出した。
トランス比率=吸光度比A(848cm−1のスペクトル強度)+B(973cm−1のスペクトル強度)/吸光度C(793cm−1のスペクトル強度) ・・・ (2)
(エージング後の偏光ATR法によるトランス比率)
長手方向に20cm、幅方向に30cmのフィルム試料を、温度50℃に設定されたギアオーブンで336時間エージングした。エージングしたサンプルを用い上記の偏光ATR法によるトランス比率の測定を行った。
(エージング前後のトランス比率差)
エージング前後の偏光ATR法で求めたトランス比率から、式(3)の計算式により算出した。
エージング前後のトランス比率差=|エージング前のトランス比率―エージング後のトランス比率| ・・・ 式(3)
(熱収縮率の測定方法)
幅10mm×長さ150mmの寸法のフィルム各5個を縦方向及び横方向から切り出し試験片とした。各試験片には,試験片の中央部を中心にして間隔100mm±2mmの標線を付けた。加熱前の試験片の標線の間隔を0.1mmの精度で測定した。試験片を熱風乾燥機(エスペック社製、PHH−202)内に無荷重の状態で吊り下げ、150℃、15分の加熱条件で熱処理を施した。試験片を恒温槽から取り出して室温まで冷却した後,初めに測定したときと同じ部分について長さ及び幅を測定した。各試験片の寸法変化率は,縦方向及び横方向について寸法変化の初期値に対する百分率として計算した。各方向の寸法変化率は,その方向での測定値の平均とした。
(ヘイズの測定方法)
JIS−K−7136に準拠し、ヘイズメーター(日本電色工業社製300A)を用いて測定した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。
(最大高さSzの測定方法)
得られたフィルムから縦方向10cm×横方向10cmの面積に切り出し、Zygo社製の白色レーザー干渉計(NEW VIEW8300)を使用した。
干渉計に20倍レンズを取り付けて、走査を行い、算術平均高さ(μm)と最大高さ(μm)を測定した。測定は、一方の表面のMD方向に0.82μm、幅方向に0.82μmの範囲で行い、未溶融物や埃等の異物を除く表面を対象とした。
測定箇所は10cm×10cmのサンプルの任意の箇所10点で測定し、その平均値を最大高さSzとした。
(積層フィルム各層の厚みの測定方法)
日立製作所社製透過型電子顕微鏡(HU−12型)を用いて、積層フィルムの超薄断面切片を観察し、積層フィルム各層の厚み(μm)を測定した。
(エージング前後の金属板ラミネート性の評価方法)
長手方向に30mm、幅方向に110mmのフィルム試料を、温度50℃に設定されたギアオーブンで336時間エージングした。
エージング前後のサンプルについて、板厚が0.19mmであるニッケルメッキ鋼板及び薄錫メッキ鋼板(LTS材)の片面に、フィルムの接着層が金属板側になるように配置して、ラミネートは温度100℃、圧力1kg/cmの圧力でラミネート処理を行った。金属板に接着されたフィルムに対して、その接着部分の接着力を以下のように判定した。
判定 〇 : ラミネート可能(フィルムを金属板から指で簡単に剥離できない)。
判定 × : ラミネート不可(フィルムを金属板から指で簡単に剥離できる)。
(エージング前後の膜ずれ性の評価方法)
本発明のポリエステルフィルムの膜ずれ評価方法について説明する。ラミネート方法は、サーマルラミネート法を用いた。金属板を180℃に加熱し、その金属板の表面にフィルムを接触させ、かかる状態でニップロール缶を通過させ、次いで10〜40℃で急冷硬化させることにより、ラミネートした。ラミネートしたフィルムの真ん中に1辺20mmの+(プラス)印の切込みを入れた。
このラミネートした金属板を、250℃に加熱したギアオーブンにて3分熱処理し、+印の切込み部分が開いた距離を測定した。この+印の切込み部分が開いた距離から、以下のように判定した。
判定 〇 : 4.0mm未満
判定 × : 4.0mm以上
長手方向に60mm、幅方向に50mmのフィルム試料を、温度50℃に設定されたギアオーブンで336時間エージングした。
エージング前後のサンプルについて、上記ポリエステルフィルムの膜ずれを評価した。
[表面層用ポリエステル樹脂の重合方法]
(アルミニウム化合物の水溶液の調製)
冷却管を備えたフラスコに、常温常圧下、純水5.0リットルを加えた後、200rpmで攪拌しながら、塩基性酢酸アルミニウム200gを純水とのスラリーとして加えた。さらに全体として10.0リットルとなるよう純水を追加して常温常圧で12時間攪拌した。その後、ジャケット温度の設定を100.5℃に変更して昇温し、内温が95℃以上になった時点から3時間還流下で攪拌した。攪拌を止め、室温まで放冷し水溶液を得た。
(アルミニウム化合物のエチレングリコール混合溶液の調製)
上記方法で得たアルミニウム化合物水溶液に同じ容量のエチレングリコールを加え、室温で30分間攪拌した後、内温80〜90℃にコントロールし、徐々に減圧して、到達2.7kPaとして、数時間攪拌しながら系から水を留去し、20g/lのアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液を得た。
(リン化合物のエチレングリコール溶液の調製)
窒素導入管、冷却管を備えたフラスコに、常温常圧下、エチレングリコール2.0リットルを加えた後、窒素雰囲気下200rpmで攪拌しながら、リン化合物としてIrganox1222(ビーエーエスエフ社製)を200g加えた。さらに2.0リットルのエチレングリコールを追加した後、ジャケット温度の設定を196℃に変更して昇温し、内温が185℃以上になった時点から60分間還流下で攪拌した。その後加熱を止め、直ちに溶液を熱源から取り去り、窒素雰囲気下を保ったまま、30分以内に120℃以下まで冷却した。
[ポリエステル樹脂の製造方法]
撹拌機、蒸留塔、圧力調整器を備えたステンレス製オートクレーブにテレフタル酸、エチレングリコールを加えて240℃、ゲージ圧3.5MPaで、エステル化で生成する水を逐次除去しながら2時間エステル化反応を行った。続いて、上記方法で調製したアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液およびリン化合物のエチレングリコール溶液を、それぞれポリエステル樹脂中に、アルミニウム原子およびリン原子として28ppmおよび50ppm残存するように添加し、1時間で系の温度を280℃まで昇温して、この間に系の圧力を徐々に減じて150Paとし、この条件下で1時間重縮合反応を行い、IV=0.61dl/gのポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂を、バッチ式の固相重合装置を使用し、230℃にて、減圧下、7時間固相重合し、IV=0.68dl/gの表面層用ポリエステル樹脂を得た。
[接着層用ポリエステル樹脂の重合方法]
撹拌機、蒸留塔、圧力調整器を備えたステンレス製オートクレーブにテレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコールを加えて240℃、ゲージ圧3.5MPaで、エステル化で生成する水を逐次除去しながら2時間エステル化反応を行った。続いて、上記方法で調製したアルミニウム化合物のエチレングリコール溶液およびリン化合物のエチレングリコール溶液を、それぞれポリエステル樹脂中に、アルミニウム原子およびリン原子として28ppmおよび50ppm残存するように添加し、1時間で系の温度を280℃まで昇温して、この間に系の圧力を徐々に減じて150Paとし、この条件下で1時間重縮合反応を行い、酸成分のうちイソフタル酸共重合量が10.8mol%、IV=0.63dl/gの接着層用ポリエステル樹脂組成物を得た。このポリエステル樹脂のTmは225.0℃であった。
(接着層および表面層からなる2層のポリエステルフィルムの製膜)
接着層用ポリエステル樹脂C及び表面層用のポリエステル樹脂Dをそれぞれ別々のホッパーに供給し、それぞれ樹脂温度を280℃、270℃となるよう加熱した押出し機で溶融し、ダイ内で2層に合流させた後、冷却ドラムに押出し、無定形シートとした。その後、上記無定形シートを110℃で縦方向に3.75倍、130℃で横方向に4.1倍延伸し、235℃で熱固定して、接着層厚さ1.5μm、表面層厚さ10.5μm、総厚さ12μmの2層ポリエステルフィルムを作製した。
接着層用ポリエステル樹脂及びポリエステルフィルムの物性を評価した結果を表1に示した。
(実施例2)
熱固定温度230℃としたこと以外は実施例1と同様の方法で2層のポリエステルフィルムを得た。
(実施例3)
熱固定温度240℃としたこと以外は実施例1と同様の方法で2層のポリエステルフィルムを得た。
(実施例4)
接着層用のポリエステル樹脂において、酸成分のうちのイソフタル酸成分を15.1mol%としたこと以外は実施例1と同様に重合して接着層用ポリエステル樹脂を得て、熱固定温度225℃としたこと以外は実施例1と同様の製膜方法で2層のポリエステルフィルムを得た。
(比較例1〜5)
接着層用のポリエステル樹脂において、酸成分のうちのイソフタル酸成分を表1に示した量にしたこと以外は実施例1と同様に重合して接着層用ポリエステル樹脂を得て、表1に示した熱固定温度にした以外は実施例1と同様の製膜方法で2層のポリエステルフィルムを得た。
実施例及び比較例の接着層用ポリエステル樹脂及びポリエステルフィルムの物性を評価した結果を表1に示した。
Figure 2021171987

表1に示したとおり、実施例に示したフィルムは、エージング前後のシール強度、およびトランス比率が規定の範囲内であり、エージング後における金属板との接着力の低下が少なく、高温環境下に放置しても安定した接着性を有し、膜ずれも発生しなかった。
一方、比較例1及び2は、共重合成分が10mol%より少ないため、エージング前後の金属板のラミネート性が不良であった。
比較例3は、共重合成分が18mol%より高いため、エージング前後ともに膜ずれ性評価が不良であった。
比較例4は、共重合成分の繰り返し単位は10〜18mol%の範囲で膜ずれ性評価は良好であり、エージング前の金属板へのラミネート性評価も良好であったが、エージング前後のシール強度やトランス比率の差が大きく、エージング後の金属板へのラミネート性評価が不良であった。
比較例5は、共重合成分の繰り返し単位は10〜18mol%の範囲で膜ずれ性評価は良好であったが、エージング前後の金属板へのラミネート性評価が不良であった。
本発明の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムは、エージング後における金属板との接着力の低下を抑制出来る。夏場の気温が高い倉庫で保管した時でも金属板とフィルムの剥がれが抑制できるので、コーヒー飲料、清涼飲料、缶詰等の金属容器等に広く使用することができる。

Claims (6)

  1. 少なくとも、ポリエステル樹脂からなる接着層(A層)および表面層(B層)を持つ2軸延伸ポリエステルフィルムであって、接着層が以下の(1)〜(5)を満たすことを特徴とする金属板ラミネート用ポリエステルフィルム。
    (1)接着層のポリエステル樹脂は、エチレンテレフタレート繰り返し単位を82〜90mol%、共重合成分の繰り返し単位を10〜18mol%含有する。
    (2)接着層同士を90℃、0.2MPa、2秒間でヒートシールしたシール強度が、1.0N/15mm以上、2.5N/15mm以下。
    (3)偏光ATR法で求めた接着層のトランス比率が、1以上、1.5以下。
    (4)50℃で336時間エージング後とエージング前の接着層同士を90℃、0.2MPa、2秒間でヒートシールしたシール強度の差が1.5N/15mm以下。
    (5)50℃で336時間エージングした後とエージング前の偏光ATR法で求めた接着層のトランス比率の差が0.7以下。
  2. 150℃で15分間熱処理後のフィルム長手方向の熱収縮率が1%以上、3%以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属板ラミネート用ポリエステルフィルム。
  3. 厚み12μmでのヘイズが35%以上、60%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属板ラミネート用ポリエステルフィルム。
  4. シール面と反対面の表面粗さの最大高さが4μm以上、8μm以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の金属板ラミネート用ポリエステルフィルム。
  5. 請求項1〜4いずれかに記載の金属板ラミネート用ポリエステルフィルムを接着層面で金属板にラミネートしたフィルムラミネート金属板。
  6. 請求項5に記載のフィルムラミネート金属板を成形して得た金属容器。
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