JP2021163762A - 負極及び蓄電デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、蓄電デバイスにおける良好な容量維持率を可能とし、負極材料層と集電体との良好な結着性を有する負極を提供することを主な目的とする。【解決手段】集電体と、集電体の表面に形成された負極材料層とを備える負極であって、負極材料層は、グラファイトとバインダーとを含んでおり、負極材料層に存在するグラファイトがより均一に存在させる。【選択図】なし
Description
本発明は、一次電池、リチウムイオン二次電池及びニッケル水素二次電池などの二次電池、電気化学キャパシタなどといった蓄電デバイス、特に電解質に有機溶媒などの非水電解質を用いた非水電解質系蓄電デバイスに用いる負極、及び蓄電デバイスに関する。
リチウムイオン二次電池や電気化学キャパシタといった蓄電デバイスは、携帯電話やノートパソコン、カムコーダーなどの電子機器に用いられている。最近では環境保護への意識の高まりや関連法の整備により、電気自動車やハイブリッド電気自動車などの車載用途や家庭用電力貯蔵用の蓄電池としての応用も進んできている。
また、これらの応用が進むと同時に、蓄電デバイスに高性能化が求められており、電極等の部材の改良が進められている。このような蓄電デバイスに使用される電極は、通常、活物質と、導電助剤、バインダー、溶媒からなる電極材料を集電体上に塗布、乾燥して得られる。
そこで、近年では、電極に用いられるバインダーの改良が試みられている。バインダーを改良することにより、活物質同士の結着性、活物質と導電助剤との結着性、及び活物質と集電体との結着性を向上させ、電気的特性(例えば、サイクル特性、低温での出力特性、低抵抗化)を向上させたりすることが提案されている。
バインダーには、電極に用いられた際の結着性に優れ、蓄電デバイスに優れた電気的特性を付与できることが求められており、例えば特許文献1には新たなバインダーが提案されている。
しかしながら、近年、蓄電デバイスにおける良好な特性を維持しつつ、結着性に優れた電極が求められており、更なる検討が必要となっている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、蓄電デバイスにおける良好な容量維持率を可能とし、負極材料層と集電体との良好な結着性を有する負極を提供することを主な目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために検討を重ねた結果、集電体と、集電体の表面に形成された負極材料層とを備える負極であって、負極材料層は、グラファイトとバインダーとを含んでおり、負極材料層に存在するグラファイトがより均一に存在することにより、上記の課題を解決することがことを見出した。本発明は、これらの知見に基づき、さらに検討を重ねて完成された発明である。すなわち、本発明は、以下に関する。
項1 集電体と、前記集電体の表面に形成された負極材料層とを備える負極であって、
前記負極材料層は、グラファイトとバインダーとを含んでおり、
前記負極材料層の表面より負極材料層の厚さの30%以内に存在するグラファイトの平均粒子径(Z1)と前記負極材料層の集電体面より負極材料層の厚さの40%以内に存在するグラファイトの平均粒子径(Z2)が以下の式を満たす、負極。
−30≦{(Z2−Z1)/Z1} ×100≦30
項2 集電体と、前記集電体の表面に形成された負極材料層の剥離強度が40N/m以上であること項1記載の負極。
項3 バインダーとして、
炭素数4〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーに由来する構成単位(A−1)を有する、(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位(A)を80〜95質量%有する重合体を含有する請求項1又は2に記載の負極。
項4 グラファイトとバインダーを含有する負極材料用スラリーを塗布する項1〜3のいずれかに記載の負極の製造方法。
項5 項1〜3のいずれかに記載の負極を用いてなる蓄電デバイス。
前記負極材料層は、グラファイトとバインダーとを含んでおり、
前記負極材料層の表面より負極材料層の厚さの30%以内に存在するグラファイトの平均粒子径(Z1)と前記負極材料層の集電体面より負極材料層の厚さの40%以内に存在するグラファイトの平均粒子径(Z2)が以下の式を満たす、負極。
−30≦{(Z2−Z1)/Z1} ×100≦30
項2 集電体と、前記集電体の表面に形成された負極材料層の剥離強度が40N/m以上であること項1記載の負極。
項3 バインダーとして、
炭素数4〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーに由来する構成単位(A−1)を有する、(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位(A)を80〜95質量%有する重合体を含有する請求項1又は2に記載の負極。
項4 グラファイトとバインダーを含有する負極材料用スラリーを塗布する項1〜3のいずれかに記載の負極の製造方法。
項5 項1〜3のいずれかに記載の負極を用いてなる蓄電デバイス。
本発明によれば、蓄電デバイスにおける良好な容量維持率を可能とし、負極材料層と集電体との良好な結着性を有する負極を提供することができる。本発明の効果は、バインダーが優れた結着性を有することにより、負極材料として用いられた際にバインダーとグラファイト等の活物質との間で優れた結着力を有したまま、負極材料層を形成することにより、均一な分散状態となっていることが想定される。バインダーが十分な結着性を有しない場合には、負極材料層を形成する際に活物質同士が凝集する等により、不均一な分散状態となることが想定される。
本発明の負極は、小型電池と比較して低密度である大型電池(例えば、電気自動車やハイブリッド電気自動車などの車載用途の電池や、家庭用電力貯蔵用の蓄電池)に使用された場合にバインダーが優れた結着力を発揮することができる。このため、本発明の負極を備える蓄電デバイスは、電気自動車やハイブリッド電気自動車などの車載用途や、家庭用電力貯蔵用の蓄電池に、特に有用である。
本明細書において、蓄電デバイスとは、一次電池、二次電池(リチウムイオン二次電池及びニッケル水素二次電池等)、電気化学キャパシタを包含するものである。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレートまたはメタクリレート」を意味し、これに類する表現についても同様である。
<1.負極>
本発明の負極は、集電体と、グラファイトを少なくとも含む活物質、及びバインダーとを含む負極材料層とを備える。
本発明の負極は、集電体と、グラファイトを少なくとも含む活物質、及びバインダーとを含む負極材料層とを備える。
集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス、金、白金、チタン、アルミニウム等の金属が使用される。
集電体の厚みとしては、特に制限されないが、例えば5〜50μm程度、好ましくは10〜20μm程度が挙げられる。
負極材料層は、集電体の表面に形成されている。負極材料層は、活物質とバインダーとを含んでいる。負極材料層は、集電体の表面に、負極材料層を構成する活物質、バインダーなどを含む負極材料を塗布することにより形成することができる。
負極材料層の厚みとしては、特に制限されないが、例えば5〜300μm程度、好ましくは15〜200μm程度が挙げられる。
グラファイトの平均粒径(D50)は、下限は0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることが特に好ましく、上限は100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることが特に好ましい。
負極材料層における活物質として、更にシリコン系活物質を含有することが好ましい。
シリコン系活物質としては、Si元素、Siとの合金、Siを含む酸化物、Siを含む炭化物等であり、Si、SiB4、SiB6、Mg2Si、Ni2Si、TiSi2、MoSi2、CoSi2、NiSi2、CaSi2、CrSi2、Cu5Si、FeSi2、MnSi2、NbSi2、TaSi2、VSi2、WSi2、ZnSi2、SiC、Si3N4、Si2N2O、SiOx(0<x≦2)、SnSiOx、LiSiOを例示することができ、SiOx(0<x≦2)であることが好ましく、一酸化ケイ素(SiO)等である。
シリコン系活物質の平均粒径(D50)は、下限は0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることが更に好ましく、0.7μm以上であることが特に好ましく、上限は50μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが特に好ましく、5μm以下であってもよい。
負極材料層における活物質として、更にグラファイト以外の炭素材料を含有してもよい。
炭素材料としては、低結晶性カーボン(ソフトカーボン、ハードカーボン)、フラーレン、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンフィブリルなどの炭素材料を例示することができる。
負極材料層中の活物質の含有量としては、例えば99.9〜50質量%程度、より好ましくは99.5〜70質量%程度、さらに好ましくは99〜85質量%程度が挙げられる。
活物質全量(100質量%)に対するグラファイトの含有量は、下限は20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが特に好ましく、上限は99質量%以下であってもよく、98質量%以下あってもよく、95質量%以下であってもよく、92質量%以下であってもよく、85質量%以下であってもよい。
シリコン系活物質活物質を含有する場合に、全量(100質量%)に対するシリコン系活物質の含有量は、下限は1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが特に好ましく、8質量%以上であってよく、15質量%以上であってよく、上限は80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。
活物質全量(100質量%)に対するシリコン系活物質とグラファイトの合計含有量は80〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることがより好ましく、95〜100質量%であることが特に好ましく、活物質全量がシリコン系活物質とグラファイトのみで構成されていてもよい。
負極材料として用いる場合の平均粒径(D50)の測定はレーザー回折式粒度分布計で行う。
バインダーの含有量は特に制限されないが、活物質全量100質量部に対して、下限は0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることが特に好ましく、上限は20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。
負極材料層は、必要に応じて導電助剤を含有させても良く、公知の導電助剤を用いることができ、黒鉛、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブなどの炭素繊維、または金属粉末等が挙げられる。これら導電助剤は1種または2種以上用いてもよい。
導電助剤を用いる場合には、導電助剤の含有量は特に制限されないが、活物質全量100質量部に対して、上限値は20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが特に好ましく、導電助剤の含有量の下限値としては、通常、0.05質量部以上、0.1質量部以上、0.2質量部以上、0.5質量部以上、2質量部以上を例示することができる。
負極材料層は、必要に応じて増粘剤を含有させても良い。増粘剤の種類は、特に限定されないが、好ましくは、セルロース系化合物のナトリウム塩、アンモニウム塩、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸およびその塩等である。
セルロース系化合物のナトリウム塩もしくはアンモニウム塩としては、セルロース系高分子を各種誘導基により置換されたアルキルセルロースのナトリウム塩もしくはアンモニウム塩などが挙げられる。具体例としては、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)のナトリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩等が挙げられる。カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩もしくはアンモニウム塩が特に好ましい。これらの増粘剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
増粘剤を用いる場合には、増粘剤の含有量は特に制限されないが、活物質全量100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下が挙げられる。なお、増粘剤が含まれる場合、増粘剤の含有量の下限値としては、通常、0.05質量部以上、0.1質量部以上、0.2質量部以上、0.5質量部以上、1質量部以上を例示することができる。
負極材料層は、バインダーの製造において使用される乳化剤が含有されていてもよい。
負極の作製方法は、特に限定されず一般的な方法が用いられる。負極材料層に用いられるグラファイト等の活物質、バインダー、必要に応じて、導電助剤、増粘剤等の負極材料をドクターブレード法やアプリケーター法、シルクスクリーン法などにより集電体(金属電極基板)表面上に適切な厚さに均一に塗布することより行われる。
例えばドクターブレード法では、負極材料を金属電極基板に塗布した後、所定のスリット幅を有するブレードにより適切な厚さに均一化する。電極は活物質塗布後、余分な有機溶剤及び水を除去するため、例えば、100℃の熱風や80℃真空状態で乾燥する。乾燥後の電極はプレス装置によってプレス成型することで電極材が製造される。プレス後に再度熱処理を施して水、溶剤、乳化剤等を除去してもよい。
電極のプレスは、電極材料の密度が好ましくは3.7g/cc以下、より好ましくは3.5g/cc以下となるように行うことが好ましい。前述の通り、本発明の電極用バインダーは、小型電池と比較して低密度である大型電池(例えば、電気自動車やハイブリッド電気自動車などの車載用途の電池や、家庭用電力貯蔵用の蓄電池)に使用された場合に、優れた結着力を発揮することができる。したがって、本発明の電極において、電極材料の密度が、このような値を有している場合に、蓄電デバイスにおける低抵抗化を維持しつつ、特に優れた結着力を発揮することができる。なお、電極材料の密度の下限は、一般に、1.2g/cc以上、1.5g/cc以上が挙げられる。
本発明の負極材料は、スラリー状(負極用スラリー)とするために水を含有してもよい。水は特に限定されず、一般的に用いられる水を使用することができる。その具体例としては水道水、蒸留水、イオン交換水、及び超純水などが挙げられる。その中でも、好ましくは蒸留水、イオン交換水、及び超純水である。
本発明の負極材料をスラリー状として用いる場合には、スラリーの固形分濃度は、10〜90質量%であることが好ましく、20〜85質量%であることがより好ましく、20〜80質量%であることが特に好ましい。
負極材料の調製方法としては特に限定されず、負極活物質、バインダー、導電助剤、水等を通常の攪拌機、分散機、混練機、遊星型ボールミル、ホモジナイザーなど用いて分散させればよい。分散の効率を上げるために材料に影響を与えない範囲で加温してもよい。
本発明においては、前記負極材料層の表面より負極材料層の厚さの30%以内(表層とも記載する)に存在するグラファイトの平均粒子径(Z1)と前記負極材料層の集電体面より負極材料層の厚さの40%以内(下層とも記載する)に存在するグラファイトの平均粒子径(Z2)が以下の式を満たす。尚、負極材料層の表面とは、負極材料層が集電体と接触している面(集電体面)と反対方向の面を指す。
−30≦{(Z2−Z1)/Z1} ×100≦30
−30≦{(Z2−Z1)/Z1} ×100≦30
負極材料層に存在するグラファイトの平均粒子径は負極材料層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して得られる画像から、6個以上(好ましくは10個以上)のグラファイトを選択し、その粒子径の平均値から算出される。グラファイトの形状は均一な球形ではないために、画像のグラファイトの最長径と最短径の和を2で割った値をその粒子径とする。
本発明の負極においては、負極材料層の表面より負極材料層の厚さの30%以内に存在するグラファイトの平均粒子径(Z1)と前記負極材料層の表面より前記負極材料層の集電体面より負極材料層の厚さの40%以内に存在するグラファイトの平均粒子径(Z2)が上記式を満たす、即ち、負極材料層に存在するグラファイトがより均一に存在することになる。
本発明においては、前記負極材料層の表面より負極材料層の厚さの30%以内に存在するグラファイトの平均粒子径(Z1)と前記負極材料層の集電体面より負極材料層の厚さの40%以内に存在するグラファイトの平均粒子径(Z2)が以下の式を満たすことがより好ましい。
−25≦{(Z2−Z1)/Z1} ×100≦25
−25≦{(Z2−Z1)/Z1} ×100≦25
本発明においては、前記負極材料層の表面より負極材料層の厚さの30%以内に存在するグラファイトの平均粒子径(Z1)と前記負極材料層の集電体面より負極材料層の厚さの40%以内に存在するグラファイトの平均粒子径(Z2)が以下の式を満たすことがより好ましい。
−15≦{(Z2−Z1)/Z1} ×100≦15
−15≦{(Z2−Z1)/Z1} ×100≦15
本発明においては、前記負極材料層の表面より負極材料層の厚さの30%以内に存在するグラファイトの平均粒子径(Z1)と前記負極材料層の集電体面より負極材料層の厚さの40%以内に存在するグラファイトの平均粒子径(Z2)と前記負極材料層の表面より負極材料層の厚さの30%を超えて60%未満(中間層とも記載する)に存在するグラファイトの平均粒子径(Z3)、(Z1)と(Z2)と(Z3)の和を3で割った(Z4)が以下の式を満たすことがより好ましい。
−30≦{(Z4−Z1)/Z1} ×100≦30
−30≦{(Z4−Z1)/Z1} ×100≦30
本発明においては、前記負極材料層の表面より負極材料層の厚さの30%以内に存在するグラファイトの平均粒子径(Z1)と前記負極材料層の集電体面より負極材料層の厚さの40%以内に存在するグラファイトの平均粒子径(Z2)と前記負極材料層の表面より負極材料層の厚さの30%を超えて60%未満に存在するグラファイトの平均粒子径(Z3)、(Z1)と(Z2)と(Z3)の和を3で割った(Z4)が以下の式を満たすことが更に好ましい。
−25≦{(Z4−Z1)/Z1} ×100≦25
−25≦{(Z4−Z1)/Z1} ×100≦25
電極材料層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する具体的な条件は、以下の通りである。
<電極材料層の断面の観察方法>
電極断面サンプルの処理として、イオンミリング装置を用いてArイオンビーム処理を実施する。次に、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用し、倍率は集電体から負極材料層の表面までが確認できる程度であれば、特に限定されないが、600〜1,000倍の倍率を例示することができる。また、視野角に関しても、上記の倍率により変更されてもよい。尚、本願の実施例・比較例においては120μm×170μmで確認した。
電極断面サンプルの処理として、イオンミリング装置を用いてArイオンビーム処理を実施する。次に、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用し、倍率は集電体から負極材料層の表面までが確認できる程度であれば、特に限定されないが、600〜1,000倍の倍率を例示することができる。また、視野角に関しても、上記の倍率により変更されてもよい。尚、本願の実施例・比較例においては120μm×170μmで確認した。
集電体と、前記集電体の表面に形成された負極材料層の剥離強度が40N/m以上であることが好ましく、45N/m以上であることがより好ましく、50N/m以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、200N/m以下であってよい。
本発明の負極材料層に用いられるバインダーは、本発明で規定する負極材料層の状態を達成することができるのであれば、特に限定されないが、炭素数4〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーに由来する構成単位(A−1)を有する、(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位(A)を有する重合体を含むことが好ましい。
構成単位(A)は、炭素数4〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーに由来する構成単位(A−1)を有している。構成単位(A)は、構成単位(A−1)のみで構成されていてもよく、構成単位(A−1)と、炭素数4〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとは異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位(A−2)とを有していてもよい。
好ましい構成単位(A−1)の具体例としては、アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を例示することができ、アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル等の炭素数4〜5のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーに由来する構成単位であることがより好ましい。構成単位(A)が有する構成単位(A−1)は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
構成単位(A−2)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、及び(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位が挙げられ、炭素数7〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位であることが好ましい。構成単位(A)が有する構成単位(A−2)は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
重合体における構成単位(A)の比率の下限は、80質量%以上であることが好ましく、82質量%以上であることがより好ましく、84質量%以上であることが特に好ましい。また、重合体における構成単位(A)の比率の上限は、95質量%以下であることが好ましく、94質量%以下であることがより好ましく、92質量%以下であることが特に好ましい。
また、重合体における構成単位(A−1)の比率の下限は、50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。また、重合体における構成単位(A−1)の比率の上限は、95質量%以下であることが好ましく、94質量%以下であることがより好ましく、92質量%以下であることが特に好ましい。
重合体における構成単位(A−2)の比率の上限は、35質量%以下であることが好ましく、23質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。また、重合体における構成単位(A−2)の比率の下限は0質量%以上であり、3質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよい。
本発明の負極材料層に用いられるバインダーは、下記一般式(1)で表わされる水酸基を有するモノマーに由来する構成単位(B)、(メタ)アクリル酸モノマーに由来する構成単位(C)、5官能以下の多官能(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位(D)を有していてもよい。
一般式(1)において、R1は水素原子又は炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、xは2〜8の整数であり、nは2〜30の整数である。
一般式(1)において、R1としては、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、およびイソブチル基などが挙げられる。好ましくは水素原子またはメチル基である。すなわち、構成単位(B)において、水酸基を有するモノマーは、(R1が水素原子又はメチル基である)(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
一般式(1)において、(CxH2xO)としては、直鎖もしくは分岐のアルキルエーテル基であり、xは2〜8の整数であり、好ましくは2〜7の整数であり、より好ましくは2〜6の整数である。
一般式(1)において、nは2〜30の整数であり、好ましくは2〜25の整数であり、より好ましくは2〜20の整数である。
構成単位(B)は、以下、一般式(2)で表わされる水酸基を有するモノマーに由来することが好ましい。
一般式(2)において、R1は水素原子又は炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、oは0〜30の整数であり、pは0〜30の整数であり、o+pは2〜30である。ここで、o、およびpは、当該構成単位の構成比を表しているのみであって、(C2H4O)の繰り返し単位のブロックと(C3H6O)の繰り返し単位のブロックからなる化合物のみを意味するものではなく、(C2H4O)の繰り返し単位と、(C3H6O)の繰り返し単位が交互・ランダムに配置された、又はランダム部とブロック部が混在する化合物であってもよい。
一般式(2)において、R1としては、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、およびイソブチル基などが挙げられる。好ましくは水素原子またはメチル基である。すなわち、構成単位(B)において、水酸基を有するモノマーは、(R1が水素原子又はメチル基である)(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
一般式(2)において、oは0〜30の整数であり、pは0〜30の整数であり、o+pは2〜30であり、oは0〜25の整数であり、pは0〜25の整数であり、o+pは2〜25であることが好ましく、oは0〜20の整数であり、pは0〜20の整数であり、o+pは2〜20であることが特に好ましい。
一般式(1)で表わされる水酸基を有するモノマーの具体例としては、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、およびポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、およびポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−プロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−テトラメチレングリコール−モノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは1種又は2種以上併用できる。これらの中でも、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
構成単位(B)は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
重合体において、構成単位(B)の比率の下限は0.5質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、2.5質量%以上であることが特に好ましい。重合体における構成単位(B)の比率の上限は、15質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
重合体において、構成単位(A−1)と構成単位(B)との質量比は、7:1〜35:1であることが好ましく、7.5〜30:1であることがより好ましい。
構成単位(C)は、(メタ)アクリル酸モノマーに由来する構成単位である。重合体は、構成単位(C)を3.5〜15質量%有する。
構成単位(C)としては、アクリル酸、メタクリル酸から選択される化合物に由来する構成単位を例示することができる。重合体が有する構成単位(C)は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
重合体における構成単位(C)の比率の下限は3.5質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが特に好ましい。また、構成単位(C)の比率の上限は、15質量%以下であることが好ましく、13質量%以下であることがより好ましく、12質量%以下であることが特に好ましい。
構成単位(D)は、5官能以下の多官能(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位である。多官能(メタ)アクリレートモノマーとは(メタ)アクリロイル基を2以上有することを意味し、構成単位(D)は、下記一般式(3)に由来する構成単位であることが好ましい。
一般式(3)において、R2は、それぞれ同一または異なって、水素原子又はメチル基であり、R3は、5価以下の炭素数2〜100の有機基であり、mは5以下の整数である。
一般式(3)において、mは2〜5(すなわち、構成単位(D)が2官能から5官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位)であることが好ましく、2〜5(すなわち、構成単位(D)が2官能から5官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位)であることがより好ましく、2〜4(すなわち、構成単位(D)が2官能から4官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位)であることが特に好ましい。
構成単位(D)において、(メタ)アクリロイル基を2個有する2官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位の具体例としては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位が挙げられる。
構成単位(D)において、(メタ)アクリロイル基を3個有する3官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位の具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2,2,2−トリス(メタ)アクリロイロキシメチルエチルコハク酸、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンEO付加トリ(メタ)アクリレート、グリセリンPO付加トリ(メタ)アクリレート及びトリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等の3官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位が挙げられる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートから選択される3官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位が好ましい。
構成単位(D)において、(メタ)アクリロイル基を4個有する4官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位の具体例としては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールEO付加テトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位が挙げられる。
構成単位(D)において、(メタ)アクリロイル基を5個有する5官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位の具体例としては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートに由来する構成単位が挙げられる。
重合体における構成単位(D)の比率の下限は0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.12質量%以上であることが特に好ましい。構成単位(D)の比率の上限は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。
重合体における構成単位(D)と構成単位(B)と質量比は、0.03:1〜1.5:1であることが好ましく、0.04:1〜1:1であることがより好ましい。
重合体としては、上記以外にも、その他のモノマー由来の構成単位として、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、クロトンニトリル、α−エチルアクリロニトリル、α−シアノアクリレート、シアン化ビニリデン、フマロニトリルから選択されるモノマー由来の構成単位を有することできる。
重合体を得る方法としては、一般的な乳化重合法、ソープフリー乳化重合法等を使用することができる。具体的には、攪拌機、及び加熱装置付きの密閉容器に室温でモノマー、乳化剤、重合開始剤、水、必要に応じて分散剤、連鎖移動剤、pH調整剤等を含んだ組成物を不活性ガス雰囲気下で攪拌することでモノマー等を水に乳化させる。乳化の方法は撹拌、剪断、超音波等による方法等が適用でき、撹拌翼、ホモジナイザー等を使用することができる。次いで、攪拌しながら温度を上昇させて重合を開始させることで、重合体が水に分散した球形の重合体のラテックスを得ることができる。重合時のモノマーの添加方法は、一括仕込みの他に、モノマー滴下やプレエマルジョン滴下等でもよく、これらの方法を2種以上併用してもよい。尚、プレエマルジョン滴下とは先にモノマー、乳化剤、水等を予め乳化させておき、その乳液を滴下していく添加方法を指す。
本発明で用いられる乳化剤は特に限定されない。乳化剤は界面活性剤であり、この界面活性剤には反応性基を有する反応性界面活性剤が含まれる。乳化重合法おいて一般的に用いられるノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤等を使用することができる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられ、反応性のノニオン性界面活性剤としては、ラテムルPD−420、430、450(花王社製)、アデカリアソープER(アデカ社製)、アクアロンRN(第一工業製薬社製)、アントックスLMA(日本乳化剤社製)、アントックスEMH(日本乳化剤社製)等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、硫酸エステル型、カルボン酸型、又はスルホン酸型の金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、リン酸エステル型の界面活性剤等を挙げることができる。硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型が好ましく、硫酸エステル型が特に好ましい。硫酸エステル型のアニオン性界面活性剤の代表例としてはドデシル硫酸等のアルキル硫酸金属塩、アンモニウム、又はアルキル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル硫酸、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸金属塩、アンモニウム塩、又はポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン等が挙げられ、硫酸エステル型の反応性アニオン性界面活性剤の具体例としては、ラテムルPD−104、105(花王社製)、アデカリアソープSR(アデカ社製)、アクアロンHS(第一工業製薬社製)、アクアロンKH(第一工業製薬社製)が挙げられる。好ましくは、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸アンモニウム、ドデシル硫酸トリエタノールアミン、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラテムルPD−104等が挙げられる。
これらノニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤は1種または2種以上用いてもよい。
反応性界面活性剤の反応性とは、反応性二重結合を含有し、重合時にモノマーと重合反応することを意味する。すなわち、反応性界面活性剤は、重合体を作製する重合の際にモノマーの乳化剤として働くと共に、重合後は重合体の一部に共有結合して取り込まれた状態となる。そのため、乳化重合及び作製した重合体の分散が良好であり、電極用バインダーとしての物性(屈曲性、結着性)が優れている。
乳化剤の構成単位の量は乳化重合法おいて一般的に用いられる量であればよい。具体的には、仕込みのモノマー量(100質量部)に対して、0.01〜25質量部の範囲であり、好ましくは0.05〜20質量部、更に好ましくは0.1〜10質量部である。
本発明で用いられる重合開始剤は特に限定されず、乳化重合法、懸濁重合法おいて一般的に用いられる重合開始剤を使用することができる。好ましくは乳化重合法である。乳化重合法では水溶性の重合開始剤、懸濁重合法では油溶性の重合開始剤が使われる。
その水溶性の重合開始剤の具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩に代表される水溶性の重合開始剤、2−2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、またはその塩酸塩または硫酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンアミジン)、又はその塩酸塩又は硫酸塩、3,3’−[アゾビス[(2,2−ジメチル−1−イミノエタン−2,1−ジイル)イミノ]]ビス(プロパン酸)、2,2’‐[アゾビス(ジメチルメチレン)]ビス(2‐イミダゾリン)などの水溶性のアゾ化合物の重合開始剤が好ましい。
油溶性の重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、アセチルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)などの油溶性のアゾ化合物の重合開始剤、レドックス系開始剤が好ましい。これら重合開始剤は1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
重合開始剤の使用量は乳化重合法または懸濁重合法おいて一般的に用いられる量であればよい。具体的には、仕込みのモノマー量(100質量部)に対して、0.01〜10質量%の範囲であり、好ましくは0.01〜5質量部、更に好ましくは0.02〜3質量部である。
連鎖移動剤は、必要に応じて用いることができる。連鎖移動剤の具体例としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジフェニル−4−メチル−2−ペンテン、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物、ターピノレン、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物、α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上用いてもよい。これらの連鎖移動剤の量は特に限定されないが、通常、仕込モノマー量100質量部に対して0〜5質量部にて使用される。
重合体の重合時間及び重合温度は特に限定されない。使用する重合開始剤の種類等から適宜選択できるが、一般的に、重合温度は20〜100℃であり、重合時間は0.5〜100時間である。
さらに上記の方法によって得られた重合体は、必要に応じてpH調整剤として塩基を用いることでpHを調整することができる。塩基の具体例としては、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)水酸化物、アンモニア、無機アンモニウム化合物、有機アミン化合物等が挙げられる。pHの範囲はpH2〜11、好ましくはpH3〜10、更に好ましくはpH4〜9の範囲である。
本発明のバインダーは、重合体を有するが、水分、又は乳化剤等の他の物質が重合体の内部に含有され、又は外部に付着されていてもよい。内部に含有される、又は外部に付着される物質の量は、重合体100質量部に対して、7質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることが特に好ましい。
<2.蓄電デバイス>
本発明の蓄電デバイスは、前述の「1.負極」の欄で説明した負極と、正極と、電解液とを備えることを特徴としている。
本発明の蓄電デバイスは、前述の「1.負極」の欄で説明した負極と、正極と、電解液とを備えることを特徴としている。
正極は、公知の正極を用いることができ、集電体と正極材料層とを備える正極を例示することができる。
集電体としては、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、金、白金、チタン等の金属が使用される。
正極材料層は、集電体の表面に形成されている。正極材料層は、活物質とバインダーとを含んでいる。正極材料層は、集電体の表面に、正極材料層を構成する活物質粒子、バインダーなどを含む正極材料を塗布することにより形成することができる。
正極活物質は、AMO2、AM2O4、A2MO3、AMBO4のいずれかの組成からなるアルカリ金属含有複合酸化物である。Aはアルカリ金属、Mは単一または2種以上の遷移金属からなり、その一部に非遷移金属を含んでもよい。BはP、Siまたはその混合物からなる。なお正極活物質は粉末が好ましく、その粒子径には、好ましくは50ミクロン以下、より好ましくは20ミクロン以下のものを用いる。これらの活物質は、3V(vs. Li/Li+)以上の起電力を有するものである。
正極活物質の好ましい具体例としては、LixCoO2, LixNiO2, LixMnO2, LixCrO2, LixFeO2, LixCoaMn1-aO2, LixCoaNi1-aO2, LixCoaCr1-aO2, LixCoaFe1-aO2, LixCoaTi1-aO2, LixMnaNi1-aO2, LixMnaCr1-aO2, LixMnaFe1-aO2, LixMnaTi1-aO2, LixNiaCr1-aO2, LixNiaFe1-aO2, LixNiaTi1-aO2, LixCraFe1-aO2, LixCraTi1-aO2, LixFeaTi1-aO2, LixCobMncNi1-b-cO2, LixNiaCobAlcO2, LixCrbMncNi1-b-cO2, LixFebMncNi1-b-cO2, LixTibMncNi1-b-cO2, LixMn2O4, LixMndCo2-dO4, LixMndNi2-dO4, LixMndCr2-dO4, LixMndFe2-dO4, LixMndTi2-dO4, LiyMnO3, LiyMneCo1-eO3, LiyMneNi1-eO3, LiyMneFe1-eO3, LiyMneTi1-eO3, LixCoPO4, LixMnPO4, LixNiPO4, LixFePO4, LixCofMn1-fPO4, LixCofNi1-fPO4, LixCofFe1-fPO4, LixMnfNi1-fPO4, LixMnfFe1-fPO4, LixNifFe1-fPO4,LiyCoSiO4, LiyMnSiO4, LiyNiSiO4, LiyFeSiO4, LiyCogMn1-gSiO4, LiyCogNi1-gSiO4, LiyCogFe1-gSiO4, LiyMngNi1-gSiO4, LiyMngFe1-gSiO4, LiyNigFe1-gSiO4, LiyCoPhSi1-hO4, LiyMnPhSi1-hO4, LiyNiPhSi1-hO4, LiyFePhSi1-hO4, LiyCogMn1-gPhSi1-hO4, LiyCogNi1-gPhSi1-hO4, LiyCogFe1-gPhSi1-hO4, LiyMngNi1-gPhSi1-hO4, LiyMngFe1-gPhSi1-hO4, LiyNigFe1-gPhSi1-hO4などのリチウム含有複合酸化物をあげることができる。(ここで、x=0.01〜1.2, y=0.01〜2.2, a=0.01〜0.99, b=0.01〜0.98, c=0.01〜0.98但し、b+c=0.02〜0.99, d=1.49〜1.99, e=0.01〜0.99, f=0.01〜0.99, g=0.01〜0.99, h=0.01〜0.99である。)
また、正極活物質のうち、より好ましい正極活物質としては、具体的には、LixCoO2, LixNiO2, LixMnO2, LixCrO2, LixCoaNi1-aO2, LixMnaNi1-aO2, LixCobMncNi1-b-cO2, LixNiaCobAlcO2, LixMn2O4, LiyMnO3, LiyMneFe1-eO3, LiyMneTi1-eO3, LixCoPO4, LixMnPO4, LixNiPO4, LixFePO4, LixMnfFe1-fPO4を挙げることができる。(ここで、x=0.01〜1.2, y=0.01〜2.2, a=0.01〜0.99, b=0.01〜0.98, c=0.01〜0.98但し、b+c=0.02〜0.99, d=1.49〜1.99, e=0.01〜0.99, f=0.01〜0.99である。なお、上記のx, yの値は充放電によって増減する。)
正極材料層中の活物質の含有量としては、特に制限されず、例えば99.9〜50質量%程度、より好ましくは99.5〜70質量%程度、さらに好ましくは99〜85質量%程度が挙げられる。活物質は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
正極材料層におけるバインダーとしては、特に限定されることがなく、公知のバインダー用いることができる。また、前述の「1.負極」の欄で説明したバインダーを用いてもよい。
バインダーの含有量は特に制限されないが、活物質全量100質量部に対して、下限は0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることが特に好ましく、上限は20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。
本発明の正極材料層は、必要に応じて導電助剤を含有させても良く、公知の導電助剤を用いることができ、黒鉛、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブなどの炭素繊維、または金属粉末等が挙げられる。これら導電助剤は1種または2種以上用いてもよい。
導電助剤を用いる場合には、導電助剤の含有量は特に制限されないが、活物質100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下が挙げられる。なお、正極材料中に導電助剤が含まれる場合、導電助剤の含有量の下限値としては、通常、0.05質量部以上、0.1質量部以上、0.2質量部以上、0.5質量部以上、2質量部以上を例示することができる。
本発明の正極材料層は、必要に応じて増粘剤を含有させても良い。増粘剤の種類は、特に限定されないが、好ましくは、セルロース系化合物のナトリウム塩、アンモニウム塩、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸およびその塩等である。
セルロース系化合物のナトリウム塩もしくはアンモニウム塩としては、セルロース系高分子を各種誘導基により置換されたアルキルセルロースのナトリウム塩もしくはアンモニウム塩などが挙げられる。具体例としては、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)のナトリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩等が挙げられる。カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩もしくはアンモニウム塩が特に好ましい。これらの増粘剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
増粘剤を用いる場合には、増粘剤の含有量は特に制限されないが、活物質100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下が挙げられる。なお、増粘剤が含まれる場合、増粘剤の含有量の下限値としては、通常、0.05質量部以上、0.1質量部以上、0.2質量部以上、0.5質量部以上、1質量部以上を例示することができる。
正極の作製方法は、特に限定されず一般的な方法が用いられる。正極材料層に用いられる活物質、バインダー、必要に応じて、導電助剤、増粘剤等の正極材料をドクターブレード法やアプリケーター法、シルクスクリーン法などにより集電体(金属電極基板)表面上に適切な厚さに均一に塗布することより行われる。
例えばドクターブレード法では、正極材料を金属電極基板に塗布した後、所定のスリット幅を有するブレードにより適切な厚さに均一化する。電極は活物質塗布後、余分な有機溶剤及び水を除去するため、例えば、100℃の熱風や80℃真空状態で乾燥する。乾燥後の電極はプレス装置によってプレス成型することで電極材が製造される。プレス後に再度熱処理を施して水、溶剤、乳化剤等を除去してもよい。
本発明の正極材料は、スラリー状(正極用スラリー)とするために水を含有してもよい。水は特に限定されず、一般的に用いられる水を使用することができる。その具体例としては水道水、蒸留水、イオン交換水、及び超純水などが挙げられる。その中でも、好ましくは蒸留水、イオン交換水、及び超純水である。
本発明の正極材料をスラリー状として用いる場合には、スラリーの固形分濃度は、10〜90質量%であることが好ましく、20〜85質量%であることがより好ましく、20〜80質量%であることが特に好ましい。
本発明の正極材料をスラリー状として用いる場合には、スラリーの固形分中の重合体量の割合は、0.1〜15質量%であることが好ましく、0.2〜10質量%であることがより好ましく、0.3〜7質量%であることが特に好ましい。
正極材料の調製方法としては特に限定されず、正極活物質、バインダー、導電助剤、水等を通常の攪拌機、分散機、混練機、遊星型ボールミル、ホモジナイザーなど用いて分散させればよい。分散の効率を上げるために材料に影響を与えない範囲で加温してもよい。
電解液としては、特に制限されず、公知の電解液を用いることができる。電解液の具体例としては、電解質と溶媒とを含む溶液、常温溶融塩が挙げられる。電解質及び溶媒は、それぞれ、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
電解質としては、リチウム塩化合物を例示することができ、具体的には、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2,LiN(C2F5SO2)2,LiN[CF3SC(C2F5SO2)3]2などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
リチウム塩化合物以外の電解質としては、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリエチルモノメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート等が挙げられる
電解液に用いる溶媒としては、有機溶剤、又は常温溶融塩を例示することができる。
有機溶剤としては、非プロトン性有機溶剤を挙げることができ、具体的にはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ジプロピルカーボネート、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、アニソール、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、ジエチルエーテルなどの直鎖エーテルを使用することができ、2種類以上混合して使用してもよい。
常温溶融塩はイオン液体とも呼ばれており、イオンのみ(アニオン、カチオン)から構成される「塩」であり、特に液体化合物をイオン液体という。
本発明での常温溶融塩とは、常温において少なくとも一部が液状を呈する塩をいい、常温とは電池が一般的に作動すると想定される温度範囲をいう。電池が通常作動すると想定される温度範囲とは、上限が120℃程度、場合によっては80℃程度であり、下限は−40℃程度、場合によっては−20℃程度である。
常温溶融塩のカチオン種としては、ピリジン系、脂肪族アミン系、脂環族アミン系の4級アンモニウム有機物カチオンが知られている。4級アンモニウム有機物カチオンとしては、ジアルキルイミダゾリウム、トリアルキルイミダゾリウム、などのイミダゾリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、アルキルピリジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオンなどが挙げられる。特に、イミダゾリウムイオンが好ましい。
なお、テトラアルキルアンモニウムイオンとしては、トリメチルエチルアンモニウムイオン、トリメチルエチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオン、トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、トリエチルメチルアンモニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、アルキルピリジニウムイオンとしては、N−メチルピリジウムイオン、N−エチルピリジニウムイオン、N−プロピルピリジニウムイオン、N−ブチルピリジニウムイオン、1−エチル−2メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−2,4ジメチルピリジニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
イミダゾリウムイオンとしては、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
常温溶融塩のアニオン種としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF6 -、PF6 -などの無機酸イオン、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、ドデシルナフタレンスルホン酸イオン、7,7,8,8−テトラシアノ−p−キノジメタンイオンなどの有機酸イオンなどが例示される。
なお、常温溶融塩は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
電解液には必要に応じて種々の添加剤を使用することができる。添加剤としては、難燃剤、不燃剤、正極表面処理剤、負極表面処理剤、過充電防止剤などが挙げられる。難燃剤、不燃剤としては、臭素化エポキシ化合物、ホスファゼン化合物、テトラブロムビスフェノールA、塩素化パラフィン等のハロゲン化物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン酸エステル、ポリリン酸塩、及びホウ酸亜鉛等が例示できる。正極表面処理剤としては、炭素や金属酸化物(MgОやZrO2等)の無機化合物やオルト−ターフェニル等の有機化合物等が例示できる。負極表面処理剤としては、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ポリエチレングリコールジメチルエーテル等が例示できる。過充電防止剤としては、ビフェニルや1−(p−トリル)アダマンタン等が例示できる。
本発明の蓄電デバイスの製造方法は、特に限定されず、正極、負極、電解液、必要に応じて、セパレータなどを用いて、公知の方法にて製造される。例えば、コイン型の場合、正極、必要に応じてセパレータ、負極を外装缶に挿入する。これに電解液を入れ含浸する。その後、封口体とタブ溶接などで接合して、封口体を封入し、カシメることで蓄電デバイスが得られる。蓄電デバイスの形状は限定されないが、例としてはコイン型、円筒型、シート型などが挙げられる。
セパレータは、正極と負極が直接接触して蓄電池内でショートすることを防止するものであり、公知の材料を用いることができる。セパレータとしては、具体的には、ポリオレフィンなどの多孔質高分子フィルム、紙等が挙げられる。多孔質高分子フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのフィルムが、電解液による影響が少ないため、好ましい。
本発明を実施するための具体的な形態を以下に実施例を挙げて説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。尚、本願では、コイン電池の評価においては正極にリチウム箔を用いて、評価を行った。
本実施例では、電極及びコイン電池を作製し、電極の評価として成膜性の評価、電極断面の分散性評価、電極の結着性試験、コイン電池の評価としてサイクル試験の測定を以下の実験にて行った。
[作製した電極の物性評価]
作製した電極の物性評価としては、成膜性の評価、負極の観察、電極の結着性試験を行った。評価結果を表1、表3にまとめて示した。
作製した電極の物性評価としては、成膜性の評価、負極の観察、電極の結着性試験を行った。評価結果を表1、表3にまとめて示した。
<成膜性の評価>
得られた負極用スラリーを銅集電体上にアプリケーターを用いて塗布した直後、または乾燥後の電極表面を目視で観察し評価した。電極表面に凝集や泡の発生が見られない場合は良好、凝集や泡の発生が見られた場合は不良と判断した。
得られた負極用スラリーを銅集電体上にアプリケーターを用いて塗布した直後、または乾燥後の電極表面を目視で観察し評価した。電極表面に凝集や泡の発生が見られない場合は良好、凝集や泡の発生が見られた場合は不良と判断した。
<負極の観察>
負極材料の断面サンプルの処理として、日立ハイテクノロジーズ製のイオンミリング装置IM−4000を用いてArイオンビーム処理を実施した。次に、走査型電子顕微鏡(SEM)として日本電子のJSM−7100Fを使用し、負極の実施作製例1、比較作製例3においては、700倍の倍率で観察を行った。本願の負極の観察の視野角は120μm×170μmであった。
図1、図3、図5、図7に、負極の実施作製例1、実施作製例2、比較作製例3、比較作製例4の負極材料層の断面を上記の方法で、SEMにて観察して得られた画像を示す。表面より負極材料層の厚さの30%以内(表層)に存在するグラファイト、負極材料層の集電体面より負極材料層の厚さの40%以内(下層)に存在するグラファイト、負極材料層の表面より負極材料層の厚さの30%を超えて60%未満(中間層)に存在するグラファイトをそれぞれの領域において、6個以上のグラファイトを選択し、その粒子径の平均値から、それぞれの部分の平均粒子径を算出する。グラファイトの粒子径はグラファイトの最長径と最短径の和を2で割った値とする。それぞれの領域に存在するグラファイトの平均粒子径による分散性を評価する。図2、図4、図6、図8に、負極の実施作製例1、実施作製例2、比較作製例3、比較作製例4の負極材料層の表層、中間層、下層に存在するグラファイトの粒子径の粒径分布を示す。
負極材料層の表面より負極材料層の厚さの30%以内に存在するグラファイトの平均粒子径(Z1)と前記負極材料層の集電体面より負極材料層の厚さの40%以内に存在するグラファイトの平均粒子径(Z2)と前記負極材料層の表面より負極材料層の厚さの30%を超えて60%未満に存在するグラファイトの平均粒子径(Z3)とする。
負極材料の断面サンプルの処理として、日立ハイテクノロジーズ製のイオンミリング装置IM−4000を用いてArイオンビーム処理を実施した。次に、走査型電子顕微鏡(SEM)として日本電子のJSM−7100Fを使用し、負極の実施作製例1、比較作製例3においては、700倍の倍率で観察を行った。本願の負極の観察の視野角は120μm×170μmであった。
図1、図3、図5、図7に、負極の実施作製例1、実施作製例2、比較作製例3、比較作製例4の負極材料層の断面を上記の方法で、SEMにて観察して得られた画像を示す。表面より負極材料層の厚さの30%以内(表層)に存在するグラファイト、負極材料層の集電体面より負極材料層の厚さの40%以内(下層)に存在するグラファイト、負極材料層の表面より負極材料層の厚さの30%を超えて60%未満(中間層)に存在するグラファイトをそれぞれの領域において、6個以上のグラファイトを選択し、その粒子径の平均値から、それぞれの部分の平均粒子径を算出する。グラファイトの粒子径はグラファイトの最長径と最短径の和を2で割った値とする。それぞれの領域に存在するグラファイトの平均粒子径による分散性を評価する。図2、図4、図6、図8に、負極の実施作製例1、実施作製例2、比較作製例3、比較作製例4の負極材料層の表層、中間層、下層に存在するグラファイトの粒子径の粒径分布を示す。
負極材料層の表面より負極材料層の厚さの30%以内に存在するグラファイトの平均粒子径(Z1)と前記負極材料層の集電体面より負極材料層の厚さの40%以内に存在するグラファイトの平均粒子径(Z2)と前記負極材料層の表面より負極材料層の厚さの30%を超えて60%未満に存在するグラファイトの平均粒子径(Z3)とする。
<結着性試験>
(測定装置)
剥離強度試験機:ストログラフE3−L(東洋精機株式会社)
(評価方法)
結着性試験は180°剥離試験にて行った。具体的には電極を幅2cm×長さ5cmに切り、テープ(粘着テープ:ニチバン製、幅1.8cm、長さ5cm)を貼り付け、電極の長さ方向の片端をストログラフE3−Lに固定した状態でテープを180°方向に試験速度50mm/min、荷重レンジ5Nで引き剥がした。試験は3回実施し、その加重平均値を求めた。
(測定装置)
剥離強度試験機:ストログラフE3−L(東洋精機株式会社)
(評価方法)
結着性試験は180°剥離試験にて行った。具体的には電極を幅2cm×長さ5cmに切り、テープ(粘着テープ:ニチバン製、幅1.8cm、長さ5cm)を貼り付け、電極の長さ方向の片端をストログラフE3−Lに固定した状態でテープを180°方向に試験速度50mm/min、荷重レンジ5Nで引き剥がした。試験は3回実施し、その加重平均値を求めた。
<平均粒子径の測定>
重合体の平均粒子径は以下の条件で測定した。
(測定装置)
動的光散乱を用いた粒度分布測定装置:ゼータサイザーナノ(スペクトリス株式会社)
(測定条件)
1.合成したエマルジョン溶液50μLをサンプリングする。
2.サンプリングしたエマルジョン溶液にイオン交換水700μLを3回添加して希釈する。
3.希釈液から液を2100μL抜き取る。
4.残った50μLのサンプルに700μLイオン交換水を添加・希釈して測定する。
重合体の平均粒子径は以下の条件で測定した。
(測定装置)
動的光散乱を用いた粒度分布測定装置:ゼータサイザーナノ(スペクトリス株式会社)
(測定条件)
1.合成したエマルジョン溶液50μLをサンプリングする。
2.サンプリングしたエマルジョン溶液にイオン交換水700μLを3回添加して希釈する。
3.希釈液から液を2100μL抜き取る。
4.残った50μLのサンプルに700μLイオン交換水を添加・希釈して測定する。
[作製した電池の特性評価]
作製したコイン電池の特性評価としては、充放電効率の測定を行った。評価結果を表2、表4にまとめて示した。
<充放電効率の測定>
(測定装置)
充放電評価装置:TOSCAT−3100(東洋システム株式会社)
(測定方法)
作製したコイン電池を、定電流−定電圧放電により、0.2Cで放電した。終止電流は0.025C相当であった。放電後、電池を10分間休止させた。次いで、0.2Cでの定電流充電により1.5Vまで充電した。上記の操作を1サイクルとし、充放電操作を50サイクル実施した。50サイクル目の放電容量を1回目の放電容量で割り百分率を行い、サイクル容量維持率(%)とした。評価結果を表2、表4にまとめて示した。
作製したコイン電池の特性評価としては、充放電効率の測定を行った。評価結果を表2、表4にまとめて示した。
<充放電効率の測定>
(測定装置)
充放電評価装置:TOSCAT−3100(東洋システム株式会社)
(測定方法)
作製したコイン電池を、定電流−定電圧放電により、0.2Cで放電した。終止電流は0.025C相当であった。放電後、電池を10分間休止させた。次いで、0.2Cでの定電流充電により1.5Vまで充電した。上記の操作を1サイクルとし、充放電操作を50サイクル実施した。50サイクル目の放電容量を1回目の放電容量で割り百分率を行い、サイクル容量維持率(%)とした。評価結果を表2、表4にまとめて示した。
<実施例1>
[実施合成例1]
ビーカーに、アクリル酸n−ブチル87.72質量部、アクリル酸2.70質量部、メタクリル酸6.43質量部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油製:ブレンマーPE−90)3.00質量部、ネオペンチルグリコールジアクリレート(共栄社化学製:ライトアクリレートNP−A)0.15質量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム2質量部、イオン交換水50.00質量部及び重合開始剤としてt−ブチルハイドロパーオキサイド(日油製:パーブチルH−69)0.07質量部を入れ、超音波ホモジナイザーを用いて、十分攪拌し乳液とした。攪拌機付き反応容器を窒素雰囲気下、54℃に加温し2時間かけて乳液を添加した。乳液の添加後、更に1時間重合し、その後冷却した。冷却後、28%アンモニア水溶液を用いて、重合液のpHを3.1から7.9に調整し、エマルジョン溶液であるバインダー組成物A(重合転化率99%以上、固形分濃度39.8wt%)を得た。得られた重合体の平均粒子径は0.218μmであった。
[実施合成例1]
ビーカーに、アクリル酸n−ブチル87.72質量部、アクリル酸2.70質量部、メタクリル酸6.43質量部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油製:ブレンマーPE−90)3.00質量部、ネオペンチルグリコールジアクリレート(共栄社化学製:ライトアクリレートNP−A)0.15質量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム2質量部、イオン交換水50.00質量部及び重合開始剤としてt−ブチルハイドロパーオキサイド(日油製:パーブチルH−69)0.07質量部を入れ、超音波ホモジナイザーを用いて、十分攪拌し乳液とした。攪拌機付き反応容器を窒素雰囲気下、54℃に加温し2時間かけて乳液を添加した。乳液の添加後、更に1時間重合し、その後冷却した。冷却後、28%アンモニア水溶液を用いて、重合液のpHを3.1から7.9に調整し、エマルジョン溶液であるバインダー組成物A(重合転化率99%以上、固形分濃度39.8wt%)を得た。得られた重合体の平均粒子径は0.218μmであった。
[電極の実施作製例1]
負極活物質としてグラファイト85質量部、SiO(大阪チタニウム社製)10質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック2質量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩2質量部、バインダー組成物の実施合成例1で得られたバインダー組成物Aの固形分として1質量部を加え、さらにスラリーの固形分濃度が49質量%となるように水を加えて遊星型ミルを用いて十分に混合して負極用スラリーを得た。
負極活物質としてグラファイト85質量部、SiO(大阪チタニウム社製)10質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック2質量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩2質量部、バインダー組成物の実施合成例1で得られたバインダー組成物Aの固形分として1質量部を加え、さらにスラリーの固形分濃度が49質量%となるように水を加えて遊星型ミルを用いて十分に混合して負極用スラリーを得た。
得られた負極用スラリーを厚さ10μmの銅集電体上に100μmギャップのベーカー式アプリケーターを用いて塗布し、110℃真空状態で10時間以上乾繰後、ロールプレス機にてプレスを行い、厚さ40μm、電極の密度1.5g/ccの負極を作製した。成膜性評価、負極の観察結果、結着性試験の評価結果を表1の実施例1に示す。
[コイン電池の実施製造例1]
アルゴンガスで置換されたグローブボックス内において、電極の実施作製例1で得た負極、セパレータとして厚み18μmのポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン多孔質膜を1枚、更に対極として厚さ500μmの金属リチウム箔を貼り合わせた積層物に、電解液として1mol/Lの6フッ化リン酸リチウムのエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネート(体積比3:5:2)を十分に含浸させてかしめ、試験用2032型コイン電池を製造した。サイクル試験の測定の評価結果を表2の実施例1に示す。
アルゴンガスで置換されたグローブボックス内において、電極の実施作製例1で得た負極、セパレータとして厚み18μmのポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン多孔質膜を1枚、更に対極として厚さ500μmの金属リチウム箔を貼り合わせた積層物に、電解液として1mol/Lの6フッ化リン酸リチウムのエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネート(体積比3:5:2)を十分に含浸させてかしめ、試験用2032型コイン電池を製造した。サイクル試験の測定の評価結果を表2の実施例1に示す。
<比較例1>
[比較合成例1]
ビーカーに、アクリル酸n−ブチル57.72質量部、アクリル酸2.73質量部、メタクリル酸6.40質量部、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート(日油製:ブレンマーPE−90)3.00質量部、(共栄社化学:ライトアクリレートPOB−A)30.00質量部、ネオペンチルグリコールジアクリレート(共栄社化学製:ライトアクリレートNP−A)0.15質量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム2質量部、イオン交換水50.00質量部及び重合開始剤としてt−ブチルハイドロパーオキサイド(日油製:パーブチルH−69)0.07質量部を入れ、超音波ホモジナイザーを用いて、十分攪拌し乳液とした。攪拌機付き反応容器を窒素雰囲気下、54℃に加温し2時間かけて乳液を添加した。乳液の添加後、更に1時間重合し、その後冷却した。冷却後、28%アンモニア水溶液を用いて、重合液のpHを2.7から8.0に調整し、エマルジョン溶液であるバインダー組成物B(重合転化率99%以上、固形分濃度39.3wt%)を得た。得られた重合体の平均粒子径は0.153μmであった。
[比較合成例1]
ビーカーに、アクリル酸n−ブチル57.72質量部、アクリル酸2.73質量部、メタクリル酸6.40質量部、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート(日油製:ブレンマーPE−90)3.00質量部、(共栄社化学:ライトアクリレートPOB−A)30.00質量部、ネオペンチルグリコールジアクリレート(共栄社化学製:ライトアクリレートNP−A)0.15質量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム2質量部、イオン交換水50.00質量部及び重合開始剤としてt−ブチルハイドロパーオキサイド(日油製:パーブチルH−69)0.07質量部を入れ、超音波ホモジナイザーを用いて、十分攪拌し乳液とした。攪拌機付き反応容器を窒素雰囲気下、54℃に加温し2時間かけて乳液を添加した。乳液の添加後、更に1時間重合し、その後冷却した。冷却後、28%アンモニア水溶液を用いて、重合液のpHを2.7から8.0に調整し、エマルジョン溶液であるバインダー組成物B(重合転化率99%以上、固形分濃度39.3wt%)を得た。得られた重合体の平均粒子径は0.153μmであった。
[電極の比較作製例1]
負極活物質としてグラファイト85質量部、SiO(大阪チタニウム社製)10質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック2質量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩2質量部、バインダー組成物の比較合成例1で得られたバインダー組成物Bの固形分として1質量部を加え、さらにスラリーの固形分濃度が49質量%となるように水を加えて遊星型ミルを用いて十分に混合して負極用スラリーを得た以外は電極の実施作製例1と同様にして負極を作製した。得られた負極の厚みは43μm、電極の密度1.5g/ccであった。結果は、電極表面に凝集物が発生し成膜性が不良であることを目視で確認した。そのため、その後の負極断面のSEM観察は不実施とした。結着性試験の評価は表1の比較例1に示す。
負極活物質としてグラファイト85質量部、SiO(大阪チタニウム社製)10質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック2質量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩2質量部、バインダー組成物の比較合成例1で得られたバインダー組成物Bの固形分として1質量部を加え、さらにスラリーの固形分濃度が49質量%となるように水を加えて遊星型ミルを用いて十分に混合して負極用スラリーを得た以外は電極の実施作製例1と同様にして負極を作製した。得られた負極の厚みは43μm、電極の密度1.5g/ccであった。結果は、電極表面に凝集物が発生し成膜性が不良であることを目視で確認した。そのため、その後の負極断面のSEM観察は不実施とした。結着性試験の評価は表1の比較例1に示す。
[コイン電池の比較製造例1]
電極の比較作製例1で得た負極を用いた以外は、コイン電池の実施製造例1と同様にしてコイン電池を作製した。サイクル試験の測定の評価結果を表2の比較例1に示す。
電極の比較作製例1で得た負極を用いた以外は、コイン電池の実施製造例1と同様にしてコイン電池を作製した。サイクル試験の測定の評価結果を表2の比較例1に示す。
<比較例2>
[比較合成例2]
ビーカーに、アクリル酸n−ブチル100質量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム2質量部、イオン交換水50.00質量部及び重合開始剤としてt−ブチルハイドロパーオキサイド(日油製:パーブチルH−69)0.07質量部を入れ、超音波ホモジナイザーを用いて、十分攪拌し乳液とした。攪拌機付き反応容器を窒素雰囲気下、54℃に加温し2時間かけて乳液を添加した。乳液の添加後、更に1時間重合し、その後冷却した。冷却後、28%アンモニア水溶液を用いて、重合液のpHを3.0から8.0に調整し、エマルジョン溶液であるバインダー組成物C(重合転化率99%以上、固形分濃度39.4wt%)を得た。得られた重合体の平均粒子径は0.300μmであった。
[比較合成例2]
ビーカーに、アクリル酸n−ブチル100質量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム2質量部、イオン交換水50.00質量部及び重合開始剤としてt−ブチルハイドロパーオキサイド(日油製:パーブチルH−69)0.07質量部を入れ、超音波ホモジナイザーを用いて、十分攪拌し乳液とした。攪拌機付き反応容器を窒素雰囲気下、54℃に加温し2時間かけて乳液を添加した。乳液の添加後、更に1時間重合し、その後冷却した。冷却後、28%アンモニア水溶液を用いて、重合液のpHを3.0から8.0に調整し、エマルジョン溶液であるバインダー組成物C(重合転化率99%以上、固形分濃度39.4wt%)を得た。得られた重合体の平均粒子径は0.300μmであった。
[電極の比較作製例2]
負極活物質としてグラファイト85質量部、SiO(大阪チタニウム社製)10質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック2質量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩2質量部、バインダー組成物の比較合成例2で得られたバインダー組成物Cの固形分として1質量部を加え、さらにスラリーの固形分濃度が49質量%となるように水を加えて遊星型ミルを用いて十分に混合して負極用スラリーを得た以外は電極の実施作製例1と同様にして負極を作製した。得られた負極の厚みは39μm、電極の密度1.6g/ccであった。結果は、成膜性が不良で、電極として使用できないほど非常に脆くなった。そのため、その後の電極の結着性評価および負極の観察、サイクル試験は不実施とした。
負極活物質としてグラファイト85質量部、SiO(大阪チタニウム社製)10質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック2質量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩2質量部、バインダー組成物の比較合成例2で得られたバインダー組成物Cの固形分として1質量部を加え、さらにスラリーの固形分濃度が49質量%となるように水を加えて遊星型ミルを用いて十分に混合して負極用スラリーを得た以外は電極の実施作製例1と同様にして負極を作製した。得られた負極の厚みは39μm、電極の密度1.6g/ccであった。結果は、成膜性が不良で、電極として使用できないほど非常に脆くなった。そのため、その後の電極の結着性評価および負極の観察、サイクル試験は不実施とした。
<比較例3>
[電極の比較作製例3]
負極活物質としてグラファイト85質量部、SiO(大阪チタニウム社製)10質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック2質量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩2質量部、SBR系バインダー(粒子径170nm)の固形分として1質量部を加え、さらにスラリーの固形分濃度が49質量%となるように水を加えて遊星型ミルを用いて十分に混合して負極用スラリーを得た以外は電極の実施作製例1と同様にして負極を作製した。得られた負極の厚みは39μm、電極の密度1.7g/ccであった。成膜性評価、負極の観察結果、結着性試験の評価を表1の比較例3に示す。
[電極の比較作製例3]
負極活物質としてグラファイト85質量部、SiO(大阪チタニウム社製)10質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック2質量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩2質量部、SBR系バインダー(粒子径170nm)の固形分として1質量部を加え、さらにスラリーの固形分濃度が49質量%となるように水を加えて遊星型ミルを用いて十分に混合して負極用スラリーを得た以外は電極の実施作製例1と同様にして負極を作製した。得られた負極の厚みは39μm、電極の密度1.7g/ccであった。成膜性評価、負極の観察結果、結着性試験の評価を表1の比較例3に示す。
[コイン電池の比較製造例3]
電極の比較作製例3で得た負極を用いた以外は、コイン電池の実施製造例1と同様にしてコイン電池を作製した。サイクル試験の測定の評価結果を表2の比較例3に示す。
電極の比較作製例3で得た負極を用いた以外は、コイン電池の実施製造例1と同様にしてコイン電池を作製した。サイクル試験の測定の評価結果を表2の比較例3に示す。
<実施例2>
[電極の実施作製例2]
負極活物質としてグラファイト75質量部、SiO(大阪チタニウム社製)20質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック2質量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩2質量部、バインダー組成物の比較合成例1で得られたバインダー組成物Aの固形分として1質量部を加え、さらにスラリーの固形分濃度が49質量%となるように水を加えて遊星型ミルを用いて十分に混合して負極用スラリーを得た以外は電極の実施作製例1と同様にして負極を作製した。得られた負極の厚みは39μm、電極の密度1.7g/ccであった。成膜性評価、負極の観察結果、結着性試験の評価を表3の実施例2に示す。
[電極の実施作製例2]
負極活物質としてグラファイト75質量部、SiO(大阪チタニウム社製)20質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック2質量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩2質量部、バインダー組成物の比較合成例1で得られたバインダー組成物Aの固形分として1質量部を加え、さらにスラリーの固形分濃度が49質量%となるように水を加えて遊星型ミルを用いて十分に混合して負極用スラリーを得た以外は電極の実施作製例1と同様にして負極を作製した。得られた負極の厚みは39μm、電極の密度1.7g/ccであった。成膜性評価、負極の観察結果、結着性試験の評価を表3の実施例2に示す。
[コイン電池の実施作製例2]
電極の実施作製例2で得た負極を用いた以外は、コイン電池の実施製造例1と同様にしてコイン電池を作製した。サイクル試験の測定の評価結果を表4の実施例2に示す。
<比較例4>
[電極の比較作製例4]
負極活物質としてグラファイト75質量部、SiO(大阪チタニウム社製)20質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック2質量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩2質量部、SBR系バインダ(粒子径170nm)の固形分として1質量部を加え、さらにスラリーの固形分濃度が49質量%となるように水を加えて遊星型ミルを用いて十分に混合して負極用スラリーを得た以外は電極の実施作製例1と同様にして負極を作製した。得られた負極の厚みは40μm、電極の密度1.6g/ccであった。成膜性評価、負極の観察結果、結着性試験の評価を表3の比較例4に示す。
[コイン電池の比較製造例4]
電極の比較作製例4で得た負極を用いた以外は、コイン電池の実施製造例1と同様にしてコイン電池を作製した。サイクル試験の測定の評価結果を表4の比較例4に示す。
電極の実施作製例2で得た負極を用いた以外は、コイン電池の実施製造例1と同様にしてコイン電池を作製した。サイクル試験の測定の評価結果を表4の実施例2に示す。
<比較例4>
[電極の比較作製例4]
負極活物質としてグラファイト75質量部、SiO(大阪チタニウム社製)20質量部に、導電助剤としてアセチレンブラック2質量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩2質量部、SBR系バインダ(粒子径170nm)の固形分として1質量部を加え、さらにスラリーの固形分濃度が49質量%となるように水を加えて遊星型ミルを用いて十分に混合して負極用スラリーを得た以外は電極の実施作製例1と同様にして負極を作製した。得られた負極の厚みは40μm、電極の密度1.6g/ccであった。成膜性評価、負極の観察結果、結着性試験の評価を表3の比較例4に示す。
[コイン電池の比較製造例4]
電極の比較作製例4で得た負極を用いた以外は、コイン電池の実施製造例1と同様にしてコイン電池を作製した。サイクル試験の測定の評価結果を表4の比較例4に示す。
図1に実施作製例1で作製した負極の断面図を示す。図2に実施作製例1で作製した負極の表層、中間層、下層に存在するグラファイトの粒子径の粒径分布を示す。図1、図2より、グラファイトの粒子が比較的均一に分布していることが示唆されており、各領域の平均粒子径(Z1、Z2、Z3)も大きく異ならなかった。
図3に比較作製例3で作製した負極の断面図を示す。図4に比較作製例3で作製した負極の表層、中間層、下層に存在するグラファイトの粒子径の粒径分布を示す。図3、図4より、グラファイトの粒子が、粒子径の小さいものが表層に粒子径の大きいものが表層以外に偏在していることが示唆されており、各領域の平均粒子径(Z1、Z2、Z3)も実施例1と比較して大きく異なる結果となった。
図3に比較作製例3で作製した負極の断面図を示す。図4に比較作製例3で作製した負極の表層、中間層、下層に存在するグラファイトの粒子径の粒径分布を示す。図3、図4より、グラファイトの粒子が、粒子径の小さいものが表層に粒子径の大きいものが表層以外に偏在していることが示唆されており、各領域の平均粒子径(Z1、Z2、Z3)も実施例1と比較して大きく異なる結果となった。
図5に実施作製例2で作製した負極の断面図を示す。図6に実施作製例2で作製した負極の表層、中間層、下層に存在するグラファイトの粒子径の粒径分布を示す。図5、図6より、グラファイトの粒子が比較的均一に分布していることが示唆されており、各領域の平均粒子径(Z1、Z2、Z3)も大きく異ならなかった。
図7に比較作製例4で作製した負極の断面図を示す。図8に比較作製例4で作製した負極の表層、中間層、下層に存在するグラファイトの粒子径の粒径分布を示す。図7、図8より、グラファイトの粒子が、粒子径の大きいものが表層に粒子径の小さいものが表層以外に偏在していることが示唆されており、各領域の平均粒子径(Z1、Z2、Z3)も実施例2と比較して大きく異なる結果となった。
図7に比較作製例4で作製した負極の断面図を示す。図8に比較作製例4で作製した負極の表層、中間層、下層に存在するグラファイトの粒子径の粒径分布を示す。図7、図8より、グラファイトの粒子が、粒子径の大きいものが表層に粒子径の小さいものが表層以外に偏在していることが示唆されており、各領域の平均粒子径(Z1、Z2、Z3)も実施例2と比較して大きく異なる結果となった。
本発明の実施例1、実施例2の負極は、比較例1、比較例3、比較例4と比較して、負極材料におけるグラファイトの分散性が良好であり、実施例1、実施例2の負極を用いたコイン電池のサイクル特性は、比較例1、比較例3、比較例4と比較して、良好であることが示された。
本願の負極は、電気自動車やハイブリッド電気自動車などの車載用途や家庭用電力貯蔵用の蓄電池等の蓄電デバイスにおいて、有用に用いられる。
Claims (5)
- 集電体と、前記集電体の表面に形成された負極材料層とを備える負極であって、
前記負極材料層は、グラファイトとバインダーとを含んでおり、
前記負極材料層の表面より負極材料層の厚さの30%以内に存在するグラファイトの平均粒子径(Z1)と前記負極材料層の集電体面より負極材料層の厚さの40%以内に存在するグラファイトのグラファイト平均粒子径(Z2)が以下の式を満たす、負極。
−30≦{(Z2−Z1)/Z1} ×100≦30 - 集電体と、前記集電体の表面に形成された負極材料層の剥離強度が40N/m以上であること請求項1記載の負極。
- バインダーとして、
炭素数4〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーに由来する構成単位(A−1)を有する、(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する構成単位(A)を80〜95質量%有する重合体を含有する請求項1又は2に記載の負極。 - グラファイトとバインダーを含有する負極材料用スラリーを塗布する請求項1〜3のいずれかに記載の負極の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の負極を用いてなる蓄電デバイス。
Applications Claiming Priority (2)
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---|---|---|---|
JP2020064884 | 2020-03-31 | ||
JP2020064884 | 2020-03-31 |
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JP2021058291A Pending JP2021163762A (ja) | 2020-03-31 | 2021-03-30 | 負極及び蓄電デバイス |
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2021
- 2021-03-30 JP JP2021058291A patent/JP2021163762A/ja active Pending
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