JP2021153181A - 素子およびその製造方法、無線通信装置および商品タグ - Google Patents

素子およびその製造方法、無線通信装置および商品タグ Download PDF

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Abstract

【課題】有機成分を含む電極を備えた素子であって、上部電極と下部電極の電気的接続に優れ、上部電極の配線抵抗が低い素子を提供すること。【解決手段】基材と、前記基材上に配された下部電極と、前記下部電極上に配された絶縁層と、前記絶縁層上に配された上部電極と、前記絶縁層内に設けられ、前記下部電極と前記上部電極とが接するコンタクトホールと、を備えた素子であって、前記上部電極が少なくとも金属成分と有機成分とを含み、前記絶縁層上における前記上部電極の膜厚Aと、前記コンタクトホールにおける前記上部電極の膜厚Bとの間に、A>Bの関係があることを特徴とする、素子。【選択図】 図1

Description

本発明は、素子およびその製造方法、無線通信装置および商品タグに関する。
近年、RFID(Radio Frequency IDentification)技術を用いた無線通信システムが注目されている。RFIDタグは、電界効果型トランジスタ(以下、FETという)などで構成された回路を有するICチップと、リーダ/ライタと無線通信するためのアンテナとを有する。タグ内に設置されたアンテナが、リーダ/ライタから送信される搬送波を受信し、ICチップ内の駆動回路が動作する。
RFIDタグは、物流管理、商品管理、万引き防止などの様々な用途での利用が期待されており、交通カードなどのICカード、商品タグなど一部で導入が始まっている。
今後、あらゆる商品でRFIDタグを使用するためには、製造コストの低減が必要である。そこで、RFIDタグの製造プロセスにおいて、真空や高温を使用するプロセスから脱却し、塗布・印刷技術を用いた、フレキシブルで安価なプロセスを利用することが検討されている。その一例として、導電体と感光性有機成分を含有する導電ペーストを用いて、FETやキャパシタの構成要素である電極を塗布・印刷技術を用いて形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
国際公開第2017/030070号
しかしながら、特許文献1に記載のような導電ペーストを用いて電極層を形成する場合、下部電極と上部電極との電気的接続が得られにくいとの課題が存在した。
そこで本発明は、有機成分を含む電極を備えた素子であって、上部電極と下部電極の電気的接続に優れ、上部電極の配線抵抗が低い素子を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
すなわち本発明は、
基材と、上記基材上に配された下部電極と、上記下部電極上に配された絶縁層と、上記絶縁層上に配された上部電極と、上記絶縁層内に設けられ、上記下部電極と上記上部電極とが接するコンタクトホールと、を備えた素子であって、上記上部電極が少なくとも金属成分と有機成分とを含み、上記絶縁層上における上記上部電極の膜厚Aと、上記コンタクトホールにおける上記上部電極の膜厚Bとの間に、A>Bの関係があることを特徴とする、素子である。
本発明によれば、上部電極と下部電極の電気的接続に優れ、上部電極の配線抵抗が低い素子を得ることができる。
本発明の実施の形態1に係る素子を示した模式断面図 本発明の実施の形態2に係る素子を示した模式断面図 本発明の実施の形態2に係る素子の製造方法を示した模式図 本発明の実施の形態に係る素子を用いた無線通信装置の一例を示すブロック図 実施例にて作製した素子を示す模式図 実施例における素子中のパターンを作製するためのフォトマスクの模式図 実施例における素子中のパターンを作製するためのフォトマスクの模式図
以下、本発明に係る素子、素子の製造方法、無線通信装置および商品タグの好適な実施の形態を詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
<素子>
本発明の実施の形態に係る素子は、基材と、上記基材上に配された下部電極と、上記下部電極上に配された絶縁層と、上記絶縁層上に配された上部電極と、上記絶縁層内に設けられ、上記下部電極と上記上部電極とが接するコンタクトホールと、を備えた素子であって、上記上部電極が少なくとも金属成分と有機成分とを含み、上記絶縁層上における上記上部電極の膜厚Aと、上記コンタクトホールにおける上記上部電極の膜厚Bとの間に、A>Bの関係がある。
本発明における電極とは、電界をつくったり、電流を流したり電気信号を取り出したりするのに用いられるものであり、トランジスタのソース・ドレイン・ゲート電極、コンデンサの上部・下部電極、整流素子の1対の電極、および、多層構成の回路において層間の電気的接続をとるために異なる導電体同士を接合させた領域などが挙げられる。
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る素子を示した模式断面図である。本実施の形態に係る素子は、基材1と、基材1の上に配された下部電極2と、下部電極2の上に配された絶縁層3と、絶縁層3の上に配された上部電極4と、絶縁層3内に設けられ、下部電極2と上部電極4とが接するコンタクトホール5とを備える。上部電極4は、少なくとも、図示しない金属成分と有機成分とを含む。
(膜厚Aと膜厚Bとの関係)
本実施の形態に係る素子は、絶縁層3の上における上部電極4の膜厚Aと、コンタクトホール5において下部電極2に接する上部電極4の膜厚Bとの間に、A>Bの関係があることで、下部電極2と上部電極4との電気的接続に優れ、かつ上部電極4の配線抵抗の低い素子とすることができる。
その詳細な機序は不明であるが、以下のように推定される。まず、下部電極2と上部電極4との電気的接続が得られにくい原因として、上部電極4中に含まれる有機成分がこれに接する下部電極2を酸化し、下部電極2上に酸化膜が形成されることが考えられる。酸化膜が存在すると、上部電極と下部電極との間の抵抗(コンタクト抵抗)が大きくなる。そこで、膜厚Bを薄くすることで、コンタクトホール5における上部電極4中の有機成分の全体量が少なくなる。そのため、当該有機成分による下部電極2の酸化が抑制または低減され、下部電極2と上部電極4との良好な電気的接続が得られると考えられる。
一方で、上部電極4の配線抵抗を低くするためには、上部電極4の膜厚が厚い方が好ましい。以下の式(1)に示すように、配線抵抗は膜厚に反比例するからである。そこで、膜厚A>膜厚Bとすることで、上部電極と下部電極の電気的接続に優れ、上部電極の配線抵抗が低い素子を得ることが可能となる。
配線抵抗=比抵抗×配線長/(配線幅×配線膜厚) ・・・(1)。
上部電極の膜厚Aおよび膜厚Bの測定方法としては、コンタクトホールとその周辺を含む電極膜面に垂直な断面を切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察像を計測する方法が挙げられる。SEMによる断面観察は、無作為に抽出した1つのコンタクトホールとその周辺について、コンタクトホール径の2倍の範囲を観察することとする。
このとき、図1(a)に示すように上部電極層の平滑性が高い場合においても、図1(b)に示すように上部電極層の平滑性が低い場合においても、膜厚Aとしては絶縁層3上の上部電極層4の平均膜厚を算出し、膜厚Bとしてはコンタクトホール5内で最も薄膜である箇所の膜厚を算出する。これは、上部電極の配線抵抗は水平方向(上部電極内)の電流が関係するため平均膜厚を考慮すべきなのに対し、コンタクト抵抗は図1の垂直方向(上部電極−下部電極間)の電流が関係するため、最も薄膜である箇所の影響が支配的であるためである。膜厚Aは、断面観察範囲内において絶縁層3上の上部電極層4の無作為に抽出した5点を計測した平均値として算出される値とする。膜厚Bは、断面観察範囲内において最も薄膜である箇所の膜厚とする。
上部電極の膜厚Bは、上部電極の膜厚Aの70%以下であることが好ましい。これにより、上部電極と下部電極の電気的接続の歩留まりを向上することができ、また、コンタクトホールの面積がより小さいサイズでも上部電極と下部電極の電気的接続を良好にしやすくなる。そのため、コンタクトホールサイズを低減することができ、回路面積をより小型化することができる。
また、上部電極の膜厚Bは、上部電極の膜厚Aの30%以上であることが好ましい。これにより、絶縁層上の上部電極とコンタクトホールにおける上部電極とが後述のような連続相として形成された際の、絶縁層上における上部電極とコンタクトホールにおける上部電極との接続箇所における欠けや断線発生を抑制することができる。
上部電極の膜厚Aは、1.5〜10.0μmが好ましい。膜厚Aの下限値としては、より好ましくは2.0μm以上である。また、膜厚Aの上限値としては、より好ましくは5.0μm以下であり、さらに好ましくは4.0μm以下である。この範囲にすることで、上部電極の配線抵抗を低くすることができる。上部電極の膜厚Bは、0.5〜4.0μmが好ましい。膜厚Bの下限値としては、より好ましくは1.0μm以上である。また、膜厚Bの上限値としては、より好ましくは2.2μm以下であり、さらに好ましくは2.0μm以下である。この範囲にすることで、上部電極と下部電極とのコンタクト抵抗を小さくすることができる。
膜厚A>膜厚Bとするための方法は、特に制限はないが、例えば以下の2つの例が挙げられる。一例目は、スクリーン印刷を用いて導電ペーストのパターン印刷を行う方法である。基板上に下部電極および絶縁層を形成し、コンタクトホールも形成した後、上部電極を形成すべき箇所全体にまず導電ペーストをパターン印刷する。さらに、コンタクトホール部を除いた上部電極パターン部に、再度、導電ペーストをパターン印刷する。このように、導電ペーストの印刷回数を変える方法である。
二例目は、上部電極を感光性導電性ペーストを用いて形成する方法である。基板上に下部電極および絶縁層を形成し、コンタクトホールも形成した後、その上に例えばネガ型感光性導電性ペーストを塗布する。フォトマスクとして、絶縁層上の上部電極形成部は開口とし、コンタクトホール部のみハーフトーンとしたマスクを用いることで、絶縁層上とコンタクトホール部とで、露光時の上部電極の硬化度に差異を付けることができる。これによって、現像時の膜厚減少量を調整することが可能となり、膜厚A>膜厚Bを実現できる。
また、下部電極が銅の場合は、銅表面と感光性導電性ペースト中のカルボキシル基を有する化合物との相互作用によって、未露光条件においても、下部電極上に上部電極を残膜させることができ、現像条件によって膜厚の調整が可能となる。さらに、下部電極材料によっては、下部電極と感光性導電性ペースト中の成分が反応することで、露光時の感度が変化し、露光時の硬化度に差異が付くことで、上記と同様に膜厚A>膜厚Bを実現できる場合がある。
なお、従来技術であるインクジェット法やスクリーン印刷法を用いた上部電極形成法では、導電ペーストが塗布後、膜厚を保持するか、レベリングにより表面の凹凸を低減させるように濡れ広がるため、一般的には、膜厚A≦膜厚Bとなる。
絶縁層上における上部電極と、コンタクトホールにおける上部電極とが、連続相であることがより好ましい。連続相とは、絶縁層上における上部電極を構成する材料とコンタクトホールにおける上部電極を構成する材料とが入り混じり、各材料の濃度が段階的に変化する形で一体化しているか、または絶縁層上における上部電極を構成する材料とコンタクトホールにおける上部電極を構成する材料とが同一であり、両者の接続部に接続面が存在しないことをいう。連続相であることは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などで接続部の断面を観察することで確認することができる。連続相とすることにより、接続部における抵抗上昇を抑制することができる。連続相を形成する方法としては、前述の感光性導電性ペーストを用いて上部電極を形成する方法が挙げられる。
(金属成分の含有比率C、Dの関係)
絶縁層3の上における上部電極4中の金属成分の含有比率C(体積%)と、コンタクトホール5における上部電極中の金属成分の含有比率D(体積%)との間に、C<Dの関係があることが好ましい。この関係とすることで、下部電極2と上部電極4が接する箇所においては、金属成分の含有比率が高くなる、つまり、有機成分が少なくなる。そのため、上部電極4と下部電極2とのコンタクト抵抗をより小さくすることができる。一方で、絶縁層3上の上部電極4においては、金属成分の含有比率が低くなり有機成分の含有比率が高くなるため、電極の折り曲げ耐性を向上させることができる。
上部電極中の金属成分の含有比率Cは、20〜40体積%が好ましい。この範囲にすることで、上部電極形成時の塗布性や微細配線加工性が良好となる。上部電極中の金属成分の含有比率Dは、25〜70体積%がより好ましく、30〜60体積%がさらに好ましい。
上部電極中の金属成分の含有比率Cおよび含有比率Dの測定方法としては、素子のコンタクトホールとその周辺部を含む電極層の膜面に垂直な断面をSEMにより観察し、画像解析を行えばよい。SEMによる断面観察は、断面を5箇所観察することとする。このとき、コンタクトホールを無作為に5個選び、それぞれの断面を1つずつ計5箇所の断面を観察してもよいし、コンタクトホールを無作為に1個選び、それについて5箇所の断面を観察してもよい。また、観察範囲は、コンタクトホール径の2倍の範囲とし、当該範囲内での画像解析を行うこととする。SEM画像における金属成分と有機成分は、X線による元素分析(SEM−EDX)により特定することができる。
(基材)
基材1は、少なくとも電極系が配置される面が絶縁性を備える基材であれば、いかなる材質のものでもよい。基材としては、例えば、シリコンウエハ、ガラス、サファイア、アルミナ焼結体等の無機材料からなる基材、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレン等の有機材料からなる基材が採用可能であるが、より安価な製造プロセスの採用のため、単位面積あたりのコストが低く、フレキシブル性に優れる材料が好ましい。
また、基材としては、例えば、シリコンウエハ上にPVP膜を形成したものや、ポリエチレンテレフタレート上にポリシロキサン膜を形成したものなど、複数の材料が積層されたものであってもよい。
(下部電極)
下部電極2に用いられる材料は、一般的に電極として使用されうる導電材料であれば、いかなるものでもよい。導電材料としては、例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)などの導電性金属酸化物;白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、パラジウム、モリブデン、アモルファスシリコン、ポリシリコンなどの金属やこれらの合金;ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質;ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン;ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸との錯体など;ヨウ素などのドーピングにより導電率を向上させた導電性ポリマーなど;炭素材料など;および有機成分と導電体とを含有する材料など、が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(絶縁層)
絶縁層3に用いられる材料は、下部電極2と上部電極4との間の絶縁が確保できれば特に限定されないが、酸化シリコン、アルミナ等の無機材料;ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリビニルフェノール(PVP)等の有機高分子材料;あるいは無機材料粉末と有機材料の混合物を挙げることができる。
中でもケイ素と炭素の結合を含む有機化合物を含むものが好ましく、ポリシロキサンが特に好ましい。
絶縁層は、フォトリソグラフィ法によるパターン加工性を付与するため、感光性有機成分を含有することが好ましい。感光性有機成分としては、ラジカル重合性化合物、光重合開始剤、光酸発生剤、増感剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、などが挙げられる。
ラジカル重合性化合物とは、分子中に複数の炭素−炭素二重結合を有する化合物をいう。UV光の照射により、光重合開始剤から発生するラジカルによって、ラジカル重合性化合物のラジカル重合が進行し、ゲート絶縁層の架橋密度が向上し、硬度を向上させることができる。ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合の進行しやすい、(メタ)アクリル基を有する化合物が好ましい。
光重合開始剤とは、UV光の照射によって結合開裂及び/又は反応してラジカルを発生する化合物であり、前述したラジカル重合性化合物のラジカル重合を開始することができる。
光酸発生剤とは、UV光の照射によって酸を発生する化合物であり、光照射部のアルカリ可溶性を上げることができる。光酸発生剤としては、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物などが挙げられる。
絶縁層の膜厚は0.05〜5μmが好ましく、0.1〜1μmがより好ましい。この範囲の膜厚にすることにより、均一な薄膜形成が容易になる。膜厚は、原子間力顕微鏡、エリプソメトリ法、分光反射率法などにより測定できる。
絶縁層は、単層でも複数層でもよい。また、1つの層を複数の絶縁性材料から形成してもよいし、複数の絶縁性材料を積層して複数の絶縁層を形成しても構わない。
絶縁層内には、下部電極と上部電極とを接続するためのコンタクトホール5が設けられる。コンタクトホールの形成方法としては、フォトリソグラフィ法、ドライエッチング法、ウェットエッチング法などの一般的な加工方法を用いることができる。
コンタクトホールの大きさは、上部電極がコンタクトホールを満たすことで上下電極間の電気的接続が取り得る限りにおいては特に限定しないが、アスペクト比(コンタクト径に対するコンタクト深さの比率)が少なくとも1より小さい、つまりコンタクトホールの深さより、コンタクトホールの直径が大きい方が、上部電極の埋め込みが容易との観点から、好ましい。
(上部電極)
上部電極4に用いられる材料は、少なくとも金属成分と有機成分とを含む。金属成分としては、金、銀、銅、ニッケル、錫、ビスマス、鉛、亜鉛、パラジウム、白金、アルミニウム、タングステン、モリブデンなどが挙げられる。より好ましい金属成分は、金、銀、銅、ニッケル、錫、ビスマス、鉛、亜鉛、パラジウム、白金、アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含有する金属成分である。これらの金属成分は、単独で用いられてもよいし、合金として用いられてもよい。また、金属成分は金属粒子であってもよく、その場合、混合粒子として用いられてもよい。
有機成分としては、特に制限はないが、モノマー、オリゴマー、ポリマー、光重合開始剤、カルボキシル基を有する化合物、重合禁止剤、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、消泡剤、顔料などが挙げられる。
オリゴマーもしくはポリマーとしては、特に限定されず、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド前駆体、ポリイミドなどを用いることができる。これらの中でも、電極を屈曲した時の耐クラック性の観点から、アクリル樹脂が好ましい。これは、アクリル樹脂のガラス転移温度が100℃以下であり、導電膜の熱硬化時に軟化し、間の結着が高まるためと推定される。
アクリル樹脂とは、繰返し単位に少なくともアクリル系モノマーに由来する構造を含む樹脂である。アクリル系モノマーの具体例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート等が挙げられ、これらのアクリル系モノマーは、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
モノマーとしては、炭素−炭素二重結合を有する化合物を用いることができる。モノマーの具体例としては、前述のアクリル系モノマーに加え、スチレン、α−メチルスチレン、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
カルボキシル基を有する化合物としては、構成モノマーの一部として不飽和カルボン酸等の不飽和酸を用いたアクリル樹脂、カルボキシル基を有する界面活性剤、カルボキシル基を有するその他の添加剤が挙げられる。
有機成分として、少なくとも、炭素−炭素二重結合を有する化合物と、カルボキシル基を有する化合物とを含有することが好ましい。少なくともこれらの化合物を含有することにより、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などの重合反応による硬化反応性と、アルカリ現像液に対する溶解性を付与することができるため、感光性導電性ペーストを作製でき、フォトリソグラフィ法による微細なパターン加工が可能となる。
[実施の形態2]
図2は、本発明の実施の形態2に係る素子を示した模式断面図である。この実施の形態2は、実施の形態1に係る素子と電界効果型トランジスタ(FET)とを有する場合の例であることを除いては、実施の形態1における特徴と同様の点があてはまる。
図2(a)点線内に示すFETは、絶縁性の基材1と、基材1の上に形成された下部電極であるゲート電極12と、ゲート電極12の上に配された絶縁層であるゲート絶縁層13と、その上に設けられた上部電極であるソース電極14aおよびドレイン電極14bと、ソース電極14aおよびドレイン電極14bの間に設けられた半導体層16と、を有する。ソース電極14aおよびドレイン電極14bは、少なくとも、図示しない金属成分と有機成分とを含む。
この構造は、ゲート電極が半導体層の下側に配置され、半導体層の上面にソース電極およびドレイン電極が配置される、いわゆるボトムゲート・トップコンタクト構造である。
なお、図2(a)の点線外の部分(右側の部分)は、実施の形態1に係る素子と同様の構造である。図2(a)の素子において、ドレイン電極14bと上部電極4とは連続相である。
図2(b)点線内に示すFETは、絶縁性の基材1と、基材1の上に形成された下部電極であるソース電極22aおよびドレイン電極22bと、ソース電極22aおよびドレイン電極22bの間に設けられた半導体層26と、ソース電極22a、ドレイン電極22bおよび半導体層26の上に配された絶縁層であるゲート絶縁層23と、その上に設けられる上部電極であるゲート電極24と、を有する。
この構造は、ゲート電極が半導体層の上側に配置され、半導体層の下面にソース電極およびドレイン電極が配置される、いわゆるトップゲート・ボトムコンタクト構造である。
なお、図2(b)の点線外の部分(右側の部分)は、実施の形態1に係る素子と同様の構造である。図2(b)の素子において、ドレイン電極22bと下部電極2とは連続相である。
FETを構成する半導体層としては、一般的な半導体材料を用いることができるが、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、グラフェン、カーボンナノホーン、グラフェンナノリボン、内包CNTなどのナノカーボンや、有機半導体や金属酸化物半導体など塗布・印刷技術により形成できる材料がより好ましい。
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、絶縁層のコンタクトホールを介して下部配線と上部配線とを電気的に接続させる際や、絶縁層のコンタクトホールを介して上部電極と下部配線を電気的に接続される際にも、同様の膜厚構成とすることで電気的接続に優れ、配線抵抗を低くすることができる。
(素子の製造方法)
以下、図2(a)に示す構造の素子を製造する場合を例に挙げて、本発明の実施の形態に係る素子の製造方法を具体的に説明する。
まず、図3(a)に示すように、絶縁性基材1の上に下部電極群(下部電極2、ゲート電極12)を形成する。下部電極群の形成方法としては、特に制限はなく、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、メッキ、化学気相成長法(CVD)、イオンプレーティングコーティング、インクジェット、印刷などの、公知技術を用いた方法が挙げられる。また、電極の形成方法の別の例として、有機成分および導電体を含むペーストを、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法などの、公知の技術で、絶縁基板上に塗布し、オーブン、ホットプレート、赤外線などを用いて乾燥を行い、形成する方法などが挙げられる。
また、電極パターンの形成方法としては、上記方法で作製した電極薄膜を、公知のフォトリソグラフィ法などで所望の形状にパターン形成してもよいし、あるいは、電極物質の蒸着やスパッタリング時に、所望の形状のマスクを介することで、パターンを形成してもよい。
次に、図3(b)に示すように、下部電極群の上に絶縁層3、13を形成する。絶縁層3、13の作製方法は、特に制限はないが、例えば、絶縁層を形成する材料を含む組成物を基板に塗布し、乾燥することで得られたコーティング膜を、フォトリソグラフィ法でコンタクトホール5を形成した後、必要に応じ熱処理する方法が挙げられる。塗布方法としては、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などの公知の塗布方法が挙げられる。コーティング膜の熱処理の温度としては、100〜300℃の範囲にあることが好ましい。
次に、図3(c)に示すように、絶縁層13の上部に半導体層16を形成する。半導体層16の形成方法としては、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、CVDなど、乾式の方法を用いることも可能であるが、製造コストや大面積への適合の観点から、塗布法を用いることが好ましい。具体的には、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などを好ましく用いることができる。これらの中から、塗膜厚み制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて塗布方法を選択することが好ましい。また、形成した塗膜に対して、大気下、減圧下または窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、アニーリング処理を行ってもよい。
次に、図3(d)に示すように、絶縁層3、13、下部電極2および半導体層16の上部に上部電極群(上部電極4、ソース電極14a、ドレイン電極14b)を形成する。上部電極群の形成方法としては、少なくとも金属成分および有機成分を含有するペーストを塗布し、乾燥、露光、現像を含む工程を通して上部電極群を形成することがより好ましい。
塗布法としては、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法などの、公知の技術が挙げられる。乾燥法としては、オーブン、ホットプレート、赤外線などを用いた乾燥法が挙げられる。
露光法としては、通常のフォトリソグラフィ法で行われるように、フォトマスクを介して露光する方法が一般的である。また、レーザー光等で直接描画する方法を用いても構わない。露光装置としては、例えば、ステッパー露光機又はプロキシミティ露光機が挙げられる。この際使用される活性光源としては、例えば、近紫外線、紫外線、電子線、X線又はレーザー光等が挙げられるが、紫外線が好ましい。紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ又は殺菌灯が挙げられるが、超高圧水銀灯が好ましい。
現像法としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ現像液を用いて、基板を静置又は回転させながら現像液をスプレーする方法、基板を現像液中に浸漬する方法などが挙げられる。現像により得られたパターンは、水やアルコール水溶液によるリンス処理を施しても構わない。
さらに、必要に応じて、得られたパターンをキュアすることも好ましい。キュアする方法としては、例えば、オーブン、イナートオーブン、ホットプレート若しくは赤外線等による加熱乾燥又は真空乾燥が挙げられる。この形成方法により、微細な配線パターンを簡便に形成することができる。
これらの方法の中でも、感光性導電性ペーストを塗布し、フォトリソグラフィ法によってパターン形成することが好ましい。感光性導電性ペーストを用いて絶縁層3、13、下部電極2および半導体層16の上部に上部電極群(上部電極4、ソース電極14a、ドレイン電極14b)を形成する方法としては、基板上に感光性導電性ペーストを塗布し塗布膜を形成する工程と、塗布膜を露光する工程と、露光した塗布膜を現像する工程とを含み、さらに塗布膜をキュアすることで対応するパターンの導電性を発現させる工程とを含むことが好ましい。この際、下部電極材料が銅を含み、また上部電極材料が金属成分として銀と、有機成分として炭素−炭素二重結合と、カルボキシル基を有する化合物を含むことで、上部電極の露光工程で上記上部電極群に対応する塗布膜に同等の露光量を照射しつつ、現像工程の現像時間の調整により膜厚A>膜厚Bを実現することができる。これにより、上部電極群の中で露光量を変えるためにハーフトーンマスクを使用するといったコストがかかることや、塗布時に厚みの違いを作るために重ね塗りするといった工程数が増えることを避けることができる。
感光性導電性ペーストは、少なくとも導電性粒子として上述の金属成分と感光性有機成分として炭素−炭素二重結合を有する化合物と、カルボキシル基を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーを含むものであることが好ましい。重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基等のエチレン性不飽和基又はアクリルアミド基が挙げられる。
本発明に用いられる金属成分においては、金属成分が、銀粒子であることがより好ましい。金属成分が銀粒子であることにより、導電性および安定性に優れる導電膜、導電パターンが得られやすくなる。
感光性導電性ペーストは、必要な材料を混合した後、例えば、三本ローラー、ボールミル若しくは遊星式ボールミル等の分散機又は混練機を用いて製造される。
(光重合開始剤・増感剤)
上記のような感光性有機成分を光反応によって光硬化させるために、導電性ペーストには、光重合開始剤が含まれることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤又は光カチオン重合開始剤が挙げられるが、露光工程で用いる光によって適宜選択すればよい。
また、導電性ペーストには、光重合開始剤と共に増感剤を使用することで感度を向上させ、反応に有効な波長範囲を拡大することができる。
(溶剤)
感光性導電性ペーストは、粘度調整及び塗布膜の表面平滑性向上の観点から、有機溶剤を含むことが好ましい。導電性ペースト粘度(ブルックフィールド型粘度計で3rpm測定した値)は、導電性粒子の沈降による塗布不良や液垂れ防止又は被覆性向上の観点から、10〜100Pa・sが好ましく、10〜50Pa・sがより好ましい。
有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸等、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、テルピネオール、3−メチル−3−メトキシブタノール、テキサノール、ベンジルアルコール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。
(その他の成分)
導電性ペーストには、例えば、有機系若しくは無機系の顔料、ガラス粉末、フィラー、可塑剤、特殊ビニル系重合物若しくは特殊アクリル系重合物等のレベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、消泡剤又は酸化防止剤等の添加剤が配合されていても構わない
<無線通信装置>
次に、上記素子を有する、本発明の実施の形態に係る無線通信装置について説明する。本発明の実施の形態に係る無線通信装置は、上述の素子と、アンテナと、を少なくとも有するものである。
この無線通信装置は、アンテナが受信する無線電波を用いて動作する装置である。無線通信装置の例としては、特に制限はないが、(1)アダプタによる有線接続を用いず非接触でエネルギーの給電を行う給電装置、(2)センシングに用いられるような搬送波を一部変調して電気通信を行う装置、(3)リーダ/ライタに搭載されたアンテナから送信される搬送波を受信することで情報のやりとりを行う装置、などが挙げられる。(3)のより具体的な例としては、商品タグ、万引防止タグ、各種チケットやスマートカードなどの、非接触型タグであるRFID(Radio Frequency IDentification)タグが挙げられる。
無線通信装置の具体的な動作を、RFIDタグを例に挙げて説明する。例えば、図4に示すようなものが挙げられる。これは、アンテナ50で受信した外部からの変調波信号の整流を行い各部に電源を供給する電源生成部と、上記変調波信号を復調して制御回路へ送る復調回路と、制御回路から送られたデータを変調してアンテナに送り出す変調回路と、復調回路で復調されたデータの記憶回路への書込み、および記憶回路からデータを読み出して変調回路への送信を行う制御回路と、で構成され、各回路部が電気的に接続されている。
上記復調回路、制御回路、変調回路、記憶回路は上述のFETを含んでもよく、さらにコンデンサ、抵抗素子、ダイオードを含んでいても良い。上記電源生成部は、コンデンサと、ダイオードとから構成される。
アンテナ、コンデンサ、抵抗素子、ダイオードは、一般的に使用されるものであればよく、用いられる材料、形状は特に限定はされない。また、上記の各構成要素を電気的に接続する材料も、一般的に使用されうる導電材料であればいかなるものでもよい。各構成要素の接続方法も、電気的に導通を取ることができれば、いかなる方法でもよい。各構成要素の接続部の幅や厚みは、任意である。
<商品タグ>
次に、本発明の実施の形態に係る無線通信装置を含有する商品タグについて説明する。この商品タグは、例えば基体と、この基体によって被覆された上記無線通信装置とを有している。
基体は、例えば、平板状に形成された、紙などの非金属材料によって形成されている。例えば、基体は、2枚の平板状の紙を貼り合わせた構造をしており、この2枚の紙の間に、上記無線通信装置が配置されている。上記無線記憶装置の記憶回路に、例えば、商品を個体識別する個体識別情報が予め格納されている。
この商品タグと、リーダ/ライタとの間で、無線通信を行う。リーダ/ライタとは、無線により、商品タグに対するデータの読み取りおよび書き込みを行う装置である。リーダ/ライタは、商品の流通過程や決済時に、商品タグとの間でデータのやり取りを行う。リーダ/ライタには、例えば、携帯型のものや、レジに設置される固定型のものがある。本発明の実施の形態に係る商品タグに対しては、リーダ/ライタは公知のものが利用できる。
本発明の実施の形態に係る商品タグは、識別情報返信機能を備えている。これは、商品タグが、所定のリーダ/ライタから、個体識別情報の送信を要求するコマンドを受けたときに、自身が記憶している個体識別情報を無線により返信する機能である。リーダ/ライタからの1度のコマンドで、多数の商品タグから、各タグの個体識別情報が送信される。この機能により、例えば、商品の精算レジにおいて、非接触で多数の商品を同時に識別することが可能となる。それゆえ、バーコードでの識別と比較して、決済処理の容易化や迅速化を図ることができる。
また、例えば、商品の会計の際に、リーダ/ライタが、商品タグから読み取った商品情報をPOS(Point of sale system、販売時点情報管理)端末に送信することが可能である。この機能により、POS端末において、その商品情報によって特定される商品の販売登録をすることもできるため、在庫管理の容易化や迅速化を図ることができる。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定して解釈されるものではない。実施例における各評価法を以下の[1]〜[4]で説明する。
[1]上部電極と下部電極のコンタクト抵抗
図5に示す素子100を5つ用意し、各素子中のケルビンパターン110を用いて、コンタクト抵抗を測定した。図5(b)および(c)はそれぞれ図5(a)におけるI−I’線およびII−II’線における断面である。図中の白色部分が上部電極4、黒色部分が下部電極2である。図中の破線は、破線内にコンタクトホール5が存在することを意味している。測定には、半導体特性評価システム4200−SCS型(ケースレーインスツルメンツ株式会社製)を用い、大気中で測定した。図5のパッド1−パッド4間の電流を0〜10μAに変化させた時のパッド2−パッド3間の電圧を4端子法で測定し、電流10μAでの電圧値からコンタクト抵抗を算出した。合計5つのケルビンパターンを測定し、その平均値を実施例におけるコンタクト抵抗として算出し、以下の基準で評価を行った。
A(良好):コンタクトホールの大きさが100μm×100μmの素子のコンタクト抵抗が100Ω以下であり、かつコンタクトホールの大きさが20μm×20μmの素子のコンタクト抵抗が100Ω以下である。
B(可):コンタクトホールの大きさが100μm×100μmの素子のコンタクト抵抗が100Ω以下であり、かつコンタクトホールの大きさが20μm×20μmの素子のコンタクト抵抗が100Ωより大きい。
C(不可):コンタクトホールの大きさが100μm×100μmの素子のコンタクト抵抗が100Ωより大きく、かつコンタクトホールの大きさが20μm×20μmの素子のコンタクト抵抗が100Ωより大きい。
[2]上部電極膜厚A,Bの測定
図5に示す素子100中のII−II’断面を切り出した。走査型電子顕微鏡(SEM)により、該断面中のコンタクトホール5とその周辺を含む幅200μmの範囲を観察した。観察範囲内において、絶縁層上の上部電極の無作為に抽出した5箇所の厚みを計測し、それらの平均値を膜厚Aとして算出した。また、コンタクトホールにおいて下部電極に接する上部電極の厚みは、観察範囲内における最も薄い場所の膜厚を膜厚Bとして算出した。
[3]上部電極中の金属成分含有比率C,Dの測定
図5に示す素子100を5つ用意し、各素子のII−II’断面を切り出した。走査型電子顕微鏡(SEM)により、各断面中のコンタクトホール5とその周辺を含む幅200μmの範囲、を観察した。X線による元素分析(SEM−EDX)から金属粒子と有機成分を区別し、画像解析を行うことで、絶縁層上における上部電極中の金属成分の含有比率と、コンタクトホールにおける上部電極中の金属成分の含有比率とをそれぞれ求めた。5箇所の観察箇所でそれぞれ求められた値の平均値を算出し、それぞれ含有比率C、D(体積%)とした。
[4]上部電極の配線抵抗
図5に示す素子100を5つ用意し、各素子中の配線抵抗測定用パターン120を用いて、配線抵抗を測定した。抵抗測定用パターン120の細線部は長さ500μm、線幅100μmとした。測定には、半導体特性評価システム4200−SCS型(ケースレーインスツルメンツ株式会社製)を用い、大気中で測定した。パッド5−パッド6間の電流を0〜10μAに変化させた時のパッド5−パッド6間の電圧を4端子法で測定し、電流10μAでの電圧値から配線抵抗を算出した。5つの配線抵抗測定用パターンでそれぞれ求められた値の平均値を実施例における配線抵抗とした。
[5]ケルビンパターンの形状観察
評価[1]で使用したケルビンパターン110を用いて、光学顕微鏡観察を行い接続箇所6の欠けの有無を確認した。
各実施例および比較例で用いた材料は、以下の通りである。
(ポリシロキサン溶液Aの作製)
3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(SucSi)13.12g(0.05モル)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(AcrSi)93.73g(0.40モル)およびフェニルトリメトキシシラン(PheSi)109.06g(0.55モル)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、沸点146℃)215.91gに溶解し、これに、水54.90g、リン酸0.864gを撹拌しながら加えた。得られた溶液をバス温105℃で2時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分を留出せしめた。次いでバス温130℃で2時間加熱し、内温を118℃まで上げて、主として水とメタノールからなる成分を留出せしめた後、室温まで冷却し、固形分濃度26.0質量%のポリシロキサン溶液Aを得た。得られたポリシロキサン溶液Aを10gはかり取り、PGMEA0.83gを混合して、室温にて2時間撹拌し、ポリシロキサン溶液A(固形分濃度24質量%)を得た。
(絶縁層材料溶液Bの作製)
ポリシロキサン溶液Aを10gはかり取り、DPHA(商品名「KAYARAD」、日本化薬(株)製;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)を1.04g、OXE−01(商品名「イルガキュア」、BASF(株)製)を0.15gとPGMEA4.60gを混合して、室温にて2時間撹拌し、ネガ型感光性を有する絶縁層材料溶液B(固形分濃度23質量%)を得た。
(カルボキシル基を有する化合物Cの合成)
共重合比率(質量基準):エチルアクリレート(以下、「EA」)/メタクリル酸2−エチルヘキシル(以下、「2−EHMA」)/スチレン(以下、「St」)/グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」)/アクリル酸(以下、「AA」)=20/40/20/5/15。
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、「DMEA」)を仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのEA、40gの2−EHMA、20gのSt、15gのAA、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルおよび10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。引き続き、5gのGMA、1gのトリエチルベンジルアンモニウムクロライドおよび10gのDMEAからなる混合物を、0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間付加反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、カルボキシル基を有する化合物Cを得た。
(カルボキシル基を有する化合物Dの合成)
反応容器中に、200gのエポキシエステル3000A(共栄社化学(株)製;ビスフェノールA骨格を有するエポキシアクリレート化合物)、260gのCA、0.5gの2−メチルハイドロキノン(熱重合禁止剤)及び125gの2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を仕込み、オイルバスを用いて45℃まで昇温させた。これに、150gのヘキサメチレンジイソシアネートを、反応温度が50℃を超えないように徐々に滴下した。滴下終了後、反応温度を80℃に昇温させ、6時間後に反応液を赤外吸収スペクトル測定法により分析して、2250cm−1付近の吸収がないことを確認した。この反応液に、22gのグリシジルメタクリレート、10gのCA、0.4gの2−メチルハイドロキノン、1.5gのトリフェニルホスフィン(反応触媒)を添加後、さらに95℃に昇温させ、6時間反応を行って固形分率が64.9重量%のカルボキシル基を有する化合物Dを得た。
(感光性導電性ペーストEの調製)
調製例1;感光性導電性ペーストE
100mlクリーンボトルに、上記により得られた化合物Cを16g、化合物Dを4g、炭素−炭素二重結合を有する化合物であるライトアクリレートBP−4EA(共栄社化学(株)製)を2g、光重合開始剤OXE−01(BASFジャパン株式会社製)4g、γ−ブチロラクトン(三菱ガス化学株式会社製)を10g入れ、自転−公転真空ミキサー“あわとり練太郎”(登録商標)(ARE−310;(株)シンキー製)で混合し、感光性樹脂溶液36.0gを得た。得られた感光性樹脂溶液13.0gと平均粒子径0.5μmのAg粒子37.0gを混ぜ合わせ、3本ローラー“EXAKT M−50”(商品名、EXAKT社製)を用いて混練し、50gの感光性導電ペーストEを得た。
調整例2;感光性導電性ペーストF
γ−ブチロラクトン(三菱ガス化学株式会社製)の添加量を6gに変更したこと以外は、調整例1と同様の方法で、感光性導電性ペーストFを得た。
調整例3;感光性導電性ペーストG
平均粒子径0.30μmのAg粒子を用いたことと、Ag粒子の添加量42.0gに変更したこと以外は、調整例1と同様の方法で、感光性導電性ペーストGを得た。
実施例1
図5に示す素子100を2個作製した。PETフィルム(厚み0.15mm)上に、抵抗加熱法により銅を厚さ100nmで真空蒸着した。次に、ポジ型フォトレジストLC140−10cP(ローム・アンド・ハース電子材料(株)製)を銅蒸着膜上にスピンコート塗布し、100℃5分で乾燥した。次に図6(a)のフォトマスクを介して、乾燥膜を露光・現像した。次に、銅用混酸系エッチング液(Cu−01;関東化学(株)製)を用いてエッチング後、洗浄・乾燥して、下部電極パターンを得た。なお、露光は露光装置“PEM−8M” (商品名、ユニオン光学(株)製)を用いて、露光量50mJ/cm(波長365nm換算)で全線露光を行い、現像は2.38重量%のTMAH水溶液で40秒間浸漬現像し、超純水でリンス処理を施して行った。
次に、絶縁層材料溶液Bを上記基板上にスピンコート塗布し、100℃2分で乾燥した。次に図6(b)のフォトマスクを介して、乾燥膜を露光・現像して、コンタクトホールを形成した後に、窒素気流下、150℃で30分の熱処理を行い、絶縁層を形成した。なお、露光は露光装置“PEM−8M” (商品名、ユニオン光学(株)製)を用いて、露光量200mJ/cm(波長365nm換算)で全線露光を行い、現像は2.38重量%のTMAH水溶液で20秒間浸漬現像し、超純水でリンス処理を施して行った。作製した2個の素子において、コンタクトホールの大きさは、平面視で、1個は100μm×100μm、もう1個は20μm×20μmとなるようにした。
次に感光性導電性ペーストEを上記基板上にスクリーン印刷で塗布し、乾燥オーブンで100℃、10分間乾燥した。図6(c)のフォトマスクを介して乾燥膜を露光、現像して、パターンを得た。その後、得られたパターンを窒素気流下、140℃で30分の熱処理を行い、上部電極を形成した。なお、露光は露光装置“PEM−8M” (商品名、ユニオン光学(株)製)を用いて、露光量200mJ/cm(波長365nm換算)で全線露光を行い、現像は0.2重量%のNa2CO3溶液で45秒間浸漬現像し、超純水でリンス処理を施して行った。
こうして、得られたコンタクト抵抗および配線抵抗測定パターンについて、[1]〜[5]に記載の方法で評価を行った。[1]〜[4]の結果を表1に示す。また、光学顕微鏡観察の結果、全ての素子で接続箇所6の欠けはなかった。
実施例2
上部電極形成時の現像時間を35秒とした以外は実施例1と同様にして、パターン作製し、評価した。[1]〜[4]の結果を表1に示す。また、光学顕微鏡観察の結果、全ての素子で接続箇所6の欠けはなかった。
実施例3
上部電極形成時のフォトマスク(図6(c))の代わりにフォトマスク(図6(d))を用いた以外は実施例1と同様にして、パターン作製した。コンタクトホール部を遮光したが、銅電極上に上部電極層が残存し、パターンを作製できたため、実施例1と同様の評価をした。[1]〜[4]の結果を表1に示す。また、光学顕微鏡観察の結果、全ての素子で接続箇所6の欠けはなかった。
実施例4
上部電極を形成時の露光量を600mJ/cm(波長365nm換算)に変更した以外は実施例1と同様にしてパターンを作製し、評価した。[1]〜[4]の結果を表1に示す。また、光学顕微鏡観察の結果、全ての素子で接続箇所6の欠けはなかった。
実施例5、6
上部電極を形成する際に、感光性導電性ペーストEのかわりに感光性導電性ペーストF、Gをそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にしてパターンを作製し、評価した。[1]〜[4]の結果を表1に示す。また、光学顕微鏡観察の結果、全ての素子で接続箇所6の欠けはなかった。
実施例7
上部電極を形成時の露光量を600mJ/cm(波長365nm換算)に変更した以外は実施例5と同様にしてパターンを作製し、評価した。[1]〜[4]の結果を表1に示す。また、光学顕微鏡観察の結果、全ての素子で接続箇所6の欠けはなかった。
実施例8
上部電極形成時の現像時間を90秒とした以外は実施例7と同様にして、パターン作製し、評価した。[1]〜[4]の結果を表1に示す。また、光学顕微鏡観察の結果、全ての素子で接続箇所6に欠けが発生しており、特にコンタクトホールの大きさが20μm×20μmの一部の素子では接続箇所6が消失していた。
実施例9
上部電極形成時の現像時間を60秒とした以外は実施例6と同様にして、パターン作製し、評価した。[1]〜[4]の結果を表1に示す。また、光学顕微鏡観察の結果、全ての素子で接続箇所6に欠けが発生しており、特にコンタクトホールの大きさが20μm×20μmの素子では接続箇所6の一部が消失していた。
比較例1
上部電極形成時の現像時間を25秒とした以外は実施例1と同様にして、パターン作製し、評価した。[1]〜[4]の結果を表1に示す。また、光学顕微鏡観察の結果、全ての素子で接続箇所6の欠けはなかった。
比較例2
上部電極形成時のスクリーン印刷条件をパターン形成後の厚みが1.0μmになるように条件を変更した以外は比較例1と同様にしてパターン作製し、評価した。[1]〜[4]の結果を表1に示す。また、光学顕微鏡観察の結果、全ての素子で接続箇所6の欠けはなかった。
Figure 2021153181
1 基材
2 下部電極
3 ゲート絶縁層
4 上部電極
5 コンタクトホール
6 接続箇所
12 ゲート電極
13 ゲート絶縁層
14a ソース電極
14b ドレイン電極
16 半導体層
22a ソース電極
22b ドレイン電極
23 ゲート絶縁層
24 ゲート電極
26 半導体層
50 アンテナ
100 素子
110 ケルビンパターン
120 配線抵抗測定用パターン

Claims (9)

  1. 基材と、前記基材上に配された下部電極と、前記下部電極上に配された絶縁層と、前記絶縁層上に配された上部電極と、前記絶縁層内に設けられ、前記下部電極と前記上部電極とが接するコンタクトホールと、を備えた素子であって、前記上部電極が少なくとも金属成分と有機成分とを含み、前記絶縁層上における前記上部電極の膜厚Aと、前記コンタクトホールにおける前記上部電極の膜厚Bとの間に、A>Bの関係があることを特徴とする、素子。
  2. 前記絶縁層上における前記上部電極と、前記コンタクトホールにおける前記上部電極とが、連続相である、請求項1記載の素子。
  3. 前記絶縁層上における前記上部電極中の前記金属成分の含有比率Cと、前記コンタクトホールにおける前記上部電極中の前記金属成分の含有比率Dとの間に、C<Dの関係がある、請求項1または2記載の素子。
  4. 前記コンタクトホールにおける前記上部電極の膜厚Bが前記絶縁層上における前記上部電極の膜厚Aの70%以下である、請求項1〜3のいずれか一項記載の素子。
  5. 前記有機成分として、少なくとも、炭素−炭素二重結合を有する化合物と、カルボキシル基を有する化合物と、を含有する、請求項1〜4のいずれか一項記載の素子。
  6. 前記素子が電界効果型トランジスタを有する、請求項1〜5のいずれか一項記載の素子。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項記載の素子の製造方法であって、
    少なくとも金属成分および有機成分を含有するペーストを塗布し、乾燥、露光、現像を含む工程を通して前記上部電極を形成することを特徴とする、素子の製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれか一項記載の素子と、アンテナと、を少なくとも有する無線通信装置。
  9. 請求項8記載の無線通信装置を用いた商品タグ。
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