以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1−1.現金自動預払機の構成]
図1に外観を示すように、現金取扱装置としての現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関や各種商業施設等に設置され、使用者(すなわち金融機関や商業施設の顧客等)との間で、入金処理や出金処理等の現金に関する取引を行う。
筐体2は、その前側に使用者が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に応対部3が設けられている。応対部3は、通帳入出口4、カード入出口5、硬貨入出金口6、紙幣入出金口7及び操作表示部8等が設けられており、使用者との間で例えば現金やカード等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行う。
通帳入出口4は、通帳が挿入され、また排出する部分である。通帳入出口4の奥側には、通帳の裏表紙等に設けられた磁気記録部から磁気情報を読み取り、また該通帳に取引の内容を記録する通帳処理部(図示せず)が設けられている。カード入出口5は、キャッシュカード等の各種カードが挿入又は排出される部分である。カード入出口5の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。
硬貨入出金口6は、使用者によって入金される硬貨が投入されると共に、使用者へ出金する硬貨が排出される部分である。紙幣入出金口7は、使用者によって入金される紙幣が投入されると共に、使用者へ出金する紙幣が排出される部分である。この硬貨入出金口6及び紙幣入出金口7は、それぞれシャッタを駆動することにより開放又は閉塞する。操作部としての操作表示部8は、取引に際して操作画面や取引内容等を表示する液晶表示パネルと、使用者の入力操作を検知するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルである。
以下では、現金自動預払機1のうち使用者が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、該前側に対峙した使用者から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
筐体2の内部には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、取引対象である硬貨に関する種々の処理を行う硬貨処理装置10、及び紙幣に関する種々の処理を行う紙幣処理装置(図示せず)等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
硬貨処理装置10は、全体として直方体に類似した形状に構成されており、図示しないスライドレールを介して筐体2に取り付けられている。また筐体2の前面側又は後面側には、開閉可能な扉(図示せず)が設けられている。このため現金自動預払機1は、保守作業等が行われる場合、筐体2の前面側又は後面側の扉を開放した上で、硬貨処理装置10を前方又は後方へスライドさせることにより、該硬貨処理装置10を該筐体2の外部に位置させ、また該筐体2の内部に収納させる。
[1−2.硬貨処理装置の構成]
硬貨処理装置10は、図2に模式的な右側面図を示すように、硬貨処理装置筐体11の内部に、硬貨に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。この硬貨は、例えば銅及びニッケルの合金やアルミニウム等、十分な強度を有する非磁性体の材料でなり、薄い板状に形成されている。因みに硬貨処理装置10では、直径や厚さが異なる複数種類の硬貨を取り扱うことが想定されている。
硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的上側ないし中央付近に、入出金部13、シュート部14、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17、ピンベルト搬送部18、6個のスタッカ部21、出金搬送部22及び一時保留部23が設けられている。また硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的下側に、硬貨制御部12、補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25、第2補充リジェクト庫26、リジェクト庫27、取忘取込庫28及び下分離部29が設けられている。
硬貨制御部12は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等に関する種々の処理を行い、硬貨処理装置10を統括制御する。また硬貨制御部12は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
入出金部13は、使用者との間で硬貨を受け渡すことにより、該使用者に硬貨を入金させ、又は該使用者に硬貨を出金する。該入出金部13は、上側に開口部を有し硬貨を収容する収容器13A、該開口部を開閉するシャッタ13B等、及び収容器13A内における硬貨の有無等を検知するセンサ(図示せず)を有している。
入出金部13は、シャッタ13Bを開放した状態で使用者により硬貨が収容器13Aに投入されると、該シャッタ13Bを閉塞し、硬貨を収容器13A内からシュート部14に引き渡して該シュート部14内を下降させ、上分離部15内に到達させる。また入出金部13は、シャッタ13Bを閉塞した状態で、後述するピンベルト搬送部18から硬貨が搬送されてくると、該硬貨を収容器13A内に収容した後、シャッタ13Bを開放して使用者に受け取らせる。
上分離部15は、下側の比較的大きい容積を占める部分である集積分離部15Aと、該集積分離部15Aから上方に突出するように形成された分離搬送部15Bとにより構成されている。この上分離部15は、集積分離部15Aに硬貨を集積すると共に、この硬貨を1枚ずつに分離して分離搬送部15Bにより上方向へ搬送し、さらに搬送路に沿って後方向へ搬送して認識搬送部16に引き渡す。
認識搬送部16は、シュート部14の右側に位置しており、硬貨を搬送しながら撮像し、得られた画像信号を基に該硬貨の金種や真偽、或いは損傷の程度等を基に該硬貨が取扱可能であるか否かを判定する。そのうえで認識搬送部16は、得られた判定結果を該硬貨の認識結果として硬貨制御部12に通知すると共に、該硬貨を受渡部17に引き渡す。受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。
ピンベルト搬送部18は、スタッカ部21の前側下部、下側、後側及び上側をそれぞれ前ピンベルト搬送部18F、下ピンベルト搬送部18L、後ピンベルト搬送部18R及び上ピンベルト搬送部18Uにより取り囲み、硬貨を搬送する経路である搬送経路を形成している。ピンベルト搬送部18は、硬貨の盤面と当接し搬送経路に沿って進行するよう案内する搬送ガイドと、概ね該搬送経路に沿って走行するピンベルトとにより構成されている。このピンベルトには、硬貨の末尾側と当接し、搬送方向へ押動するためのピンが設けられている。ピンベルト搬送部18は、ピンベルトを走行させることにより、受渡部17から受け取った硬貨を搬送経路に沿って搬送し、入出金部13の収容器13A内へ放出する。
またピンベルト搬送部18には、スタッカ部21の前側下部及び下側に配置された部分における複数箇所に、硬貨の搬送経路を分岐させる分岐部19がそれぞれ設けられている。各分岐部19の左側には、硬貨を案内する案内部30がそれぞれ設けられている。
各分岐部19は、それぞれ回動可能な案内板及びアクチュエータ等(何れも図示せず)を有しており、硬貨制御部12の制御に基づいて案内板を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは各案内部30へ分岐させるかを切り替える。各案内部30は、それぞれ補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25又は第2補充リジェクト庫26、一時保留部23、リジェクト庫27及び取忘取込庫28等へ硬貨を進行させる。
さらにピンベルト搬送部18には、6個のスタッカ部21のそれぞれ上側となる6箇所に、スタッカ分岐部20が設けられている。各スタッカ分岐部20の左側には、硬貨をスタッカ部21へ案内する案内部31が設けられている。各スタッカ分岐部20は、各分岐部19と同様に構成されており、硬貨制御部12の制御に基づいて案内板を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは各スタッカ部21へ分岐させるかを切り替える。
スタッカ部21は、それぞれ所定の金種の硬貨と対応付けられており、上側に設けられた案内部31と、該案内部31の下側において硬貨を上下方向に沿って積み重ねるように集積する集積部32と、該集積部32の下側から硬貨を繰り出す繰出部33とを有している。このスタッカ部21は、ピンベルト搬送部18により搬送された硬貨をスタッカ分岐部20から受け取ると、該硬貨を案内部31により集積部32へ案内して集積させる。またスタッカ部21は、硬貨制御部12の制御に基づき、集積部32に集積している硬貨を繰出部33により1枚ずつ繰り出し、下方の出金搬送部22又は一時保留部23へ落下させる。
出金搬送部22は、ピンベルト搬送部18の右側、すなわち図2における紙面の手前側に位置しており、上側及び前側が開放された中空の直方体のように構成され、内部に硬貨を収容し得る空間を形成している。また出金搬送部22は、底部にベルトやプーリ等でなるベルト搬送機構が組み込まれており、スタッカ部21から繰り出された硬貨をベルト上に載置若しくは集積する。この出金搬送部22は、ベルトの上に硬貨が載置若しくは集積された状態で、該ベルトの上側部分を前方へ向けて走行させることにより、該硬貨を前側の一時保留部23へ落下させる。
一時保留部23は、出金搬送部22の後端を下げると共に前端を持ち上げ、さらに左右の側板を三角形状としたような構成となっており、その内部に硬貨を収容する空間を形成すると共に、底部にベルト搬送機構が組み込まれている。このため一時保留部23は、スタッカ部21から繰り出された硬貨や出金搬送部22から搬送されてきた硬貨を、内部空間のベルト上に載置若しくは集積させる。また一時保留部23は、ベルトの上に硬貨が載置若しくは集積された状態で、該ベルトの上側部分を前斜め上方へ向けて走行させることにより、該硬貨を前側の上分離部15へ繰り出し、その内部へ落下させる。
補充回収庫24は、内部に硬貨を集積する集積部や、該集積部に集積されている硬貨を搬送する搬送機構等を有している。この補充回収庫24は、案内部30により案内されてきた硬貨を集積し、また内部に集積している硬貨を前方へ繰り出して下分離部29に引き渡す。第1補充リジェクト庫25及び第2補充リジェクト庫26は、それぞれ内部に硬貨を集積する空間を有しており、案内部30により案内されてきた硬貨を集積する。リジェクト庫27及び取忘取込庫28は、それぞれ内部に硬貨を集積する空間を有しており、案内部30により案内されてきた硬貨をそれぞれ集積する。
下分離部29は、補充回収庫24の前側に隣接する位置に配置されている。この下分離部29は、上分離部15と類似した構成となっているものの、硬貨処理装置筐体11に対する取付方向が、該上分離部15とは相違している。この下分離部29は、補充回収庫24から硬貨を受け取って内部に集積し、また集積されている硬貨を1枚ずつに分離して1枚ずつ上方へ搬送し、一時保留部23内へ放出する。
[1−3.各種処理における硬貨の搬送]
次に、硬貨処理装置10において硬貨の搬送を伴う種々の処理、すなわち入金処理及び出金処理等における硬貨の搬送や集積等について説明する。ここでは、現金自動預払機1と使用者との間で入金取引及び出金取引を行う場合における硬貨処理装置10での各処理についてそれぞれ説明する。
現金自動預払機1(図1)において使用者との間で入金取引が行われる場合、硬貨処理装置10は、前段の入金計数処理により、使用者に入金された硬貨の金種等を認識しながら枚数を計数し、これに続く後段の入金収納処理により、各硬貨を適切な収納箇所へ搬送して収納する。具体的に硬貨処理装置10は、前段の入金計数処理において、使用者に入出金部13に硬貨を投入させると、シュート部14、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17及びピンベルト搬送部18を順次介して一時保留部23に収容する。
このとき硬貨処理装置10は、認識搬送部16による各硬貨の認識結果を基に入金額を集計して操作表示部8(図1)に表示し、使用者に入金取引を継続するか、又は中止するかを選択させる。硬貨処理装置10は、使用者により継続が選択されると、後段の入金収納処理を行う一方、中止が選択されると、入金取引を中止し、後述する出金処理の場合と同様に硬貨を入出金部13へ搬送して返却する。
硬貨処理装置10は、後段の入金収納処理において、硬貨を一時保留部23から上分離部15、認識搬送部16、受渡部17、ピンベルト搬送部18及びスタッカ分岐部20を順次介してスタッカ部21へ搬送して集積させる。このとき硬貨処理装置10は、認識搬送部16による各硬貨の認識結果を基に、該硬貨の金種に応じたスタッカ部21へ搬送する。
また、現金自動預払機1(図1)において使用者との間で出金取引が行われる場合、硬貨処理装置10は、出金処理により、使用者に指示された金額の硬貨を入出金部13へ搬送して出金する。具体的に硬貨処理装置10は、操作表示部8(図1)を介して使用者から出金取引を開始する旨や出金額の操作入力を受け付けると、出金処理を開始し、出金額に応じた硬貨の金種及び枚数を各スタッカ部21から出金させ、出金搬送部22を介して一時保留部23内に集積させる。続いて硬貨処理装置10は、一時保留部23、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17及びピンベルト搬送部18を順次経由して硬貨を入出金部13へ搬送して収容させ、使用者に受け取らせる。
因みに硬貨処理装置10は、入金処理及び出金処理の他、補充回収庫24からスタッカ部21へ硬貨を補充する補充処理や、該スタッカ部21から補充回収庫24へ硬貨を回収する回収処理等も行い得るようになっている。
[1−4.下分離部の構成]
次に、下分離部29の構成について説明する。図3及び図4に示すように、下分離部29は、全体の中央乃至後側に位置する分離部フレーム40を中心として、下側の集積分離部29A及び上側の分離搬送部29Bが一体に構成されている。分離部フレーム40は、金属製の板状部材が適宜切削されると共に屈曲された構成となっており、その内部に複数のギアや軸、或いはモータ等の部品が組み込まれている。因みに図3及び図4では、説明の都合上、一部の部品を簡略化し、若しくは省略している。
分離部フレーム40における後面側の中央部やや上側には、略長方形状の受入開口部40Aが形成されており、該受入開口部40Aは、補充回収庫24(図2)と接続される。また分離部フレーム40における受入開口部40Aの下辺には、左右方向に沿って等間隔に3つの落下防止ガイド36が固定されている。このガイドとしての落下防止ガイド36は、上端部から前方に向うに連れて下方へ傾斜する前下がりのガイド面36Sが形成されている。落下防止ガイド36は、後方から前方へ向かって搬送ベルト62(後述する)の上面が従動シャフト58f(後述する)から離れ始める箇所の上側に、ガイド面36Sの前端部を位置させている。このため落下防止ガイド36は、前方へ向かって上昇するよう傾斜する搬送ベルト62の上面に受け渡された硬貨CNが、重力で受入開口部40Aから後方へ落下することを防止するように、前方上側へ向かう硬貨CNの搬送方向の上流側へ移動しないよう、硬貨CNの搬送方向の上流側の下側を支持している。
[1−4−1.集積タンク及び傾斜円盤の構成]
分離部フレーム40のうち集積分離部29Aに相当する部分には、集積タンク41及び傾斜円盤42等の種々の部品が取り付けられている。傾斜円盤42は、全体として硬貨と比較して十分に大きい直径でなる円盤状に形成されており、前側の表面である円盤面42Sが前上側を向くように傾斜し、且つ図示しない中心軸を回転中心として回転可能に支持されている。傾斜円盤42の円盤面42Sには、前斜め上方向に突出する複数の分離突起43が設けられている。分離突起43は、円盤面42Sにおける外周からやや内側に離れた箇所において、傾斜円盤42の周方向に沿うように取り付けられている。
集積タンク41は、傾斜円盤42の前側に位置しており、全体として椀のような立体形状であり、円盤面42Sとの間に空間(以下これを硬貨集積空間44と呼ぶ)を形成しながら、該円盤面42Sを概ね全体的に覆っている。この集積タンク41は、硬貨集積空間44に複数の硬貨を集積させる。また傾斜円盤42は、モータやギア等の組み合わせでなる駆動部46から硬貨制御部12の制御に基づき駆動力が供給されると、中心軸を回転中心として回転する。
[1−4−2.ガイド部の構成]
ガイド部47は、硬貨集積空間44の上方において、集積タンク41と硬貨搬送部48との間に形成されており、硬貨搬送部48から前側上方へ向かって搬送された硬貨CNの下方向以外への移動を規制することより、硬貨搬送部48の前端から硬貨集積空間44へ落下する硬貨CNをガイドする。
[1−4−3.硬貨搬送部の構成]
硬貨搬送部48は、分離部フレーム40における受入開口部40Aの前側において、硬貨CNを搬送する硬貨搬送空間54を受入開口部40Aと一致させた状態で取り付けられている。図5乃至図9に示すように、硬貨搬送部48は、全体として、メインフレーム50L及び50Rとサイドガイド52L及び52Rとに各種部材が取り付けられることで構成されている。
メインフレーム50L及び50Rは、それぞれメインフレーム50Lが左側に、メインフレーム50Rが右側に配され、左右一対で構成されており、左右方向の厚さが薄く鉛直方向に沿って前後方向に延びる板状の板金である。このメインフレーム50L及び50Rは、それぞれ後端部の下側において従動シャフト58fを、前端部の下側において駆動シャフト58dを、前後方向の中央部の上側においてカムシャフト68を、ベアリング等の軸受けを介して保持している。
サイドガイド52L及び52Rは、メインフレーム50L及び50Rに対する左右方向の内側の近傍において、それぞれサイドガイド52Lが左側に、サイドガイド52Rが右側に配され、互いに左右方向に対向するように左右一対で構成されており、左右方向の厚さが薄く鉛直方向に沿って前後方向に延びる板状の板金である。サイドガイド52Lの右側面には、平面形状のサイドガイド内側面52SLが形成されている。サイドガイド52Rの左側面には、平面形状のサイドガイド内側面52SRが形成されている。
このサイドガイド52L及び52Rは、サイドガイド内側面52SLとサイドガイド内側面52SRとの間に、硬貨CNが搬送される硬貨搬送空間54を形成しており、それぞれ、サイドガイド52Lが硬貨搬送空間54の左側端部に、サイドガイド52Rが硬貨搬送空間54の右側端部に位置している。このためサイドガイド52L及び52Rは、搬送ベルト62の上面を搬送される硬貨CNの左右方向の移動を規制し、走行路幅を規定している。
またサイドガイド52L及び52Rの後端部における上下方向のほぼ中央部には、それぞれ前方向へ向かって一部分がえぐられるように切り欠かれた形状のピン移動退避部52eL及び52eRが形成されている。このピン移動退避部52eL及び52eRの内部には、それぞれ後述するピン78L及び78Rが移動可能に入り込んでいる。
これに加えて硬貨搬送部48には、駆動機構56が設けられている。駆動機構56は、伝達プーリ64、駆動ベルト66、カムシャフトプーリ70、カムシャフト68、カム72L及び72R、スプリング76L及び76R並びにプッシュレバー74L及び74Rにより構成されており、駆動部46から伝達された駆動力をピン78L及び78Rまで伝達させることにより、搬送ベルト62の駆動と連動してピン78L及び78Rの位置を変位させる。
図8に示すように、ベルトシャフトとしての駆動シャフト58dは、左右方向に沿って延びる円筒形状の部材であり、メインフレーム50L及び50Rによって回転可能に支持され、左端部にギア60が固定されている。ギア60は、伝達ギア(図示せず)と噛み合い該伝達ギアを介し駆動部46から回転駆動力が伝達されることにより、駆動シャフト58dを回転させる。従動シャフト58f(図6)は、駆動シャフト58dの後方下側において左右方向に沿って延びる円筒形状の部材であり、メインフレーム50L及び50Rによって回転可能に支持されている。
搬送ベルト62は、前端近傍及び後端近傍にそれぞれ配置された駆動シャフト58d及び従動シャフト58fの周囲に掛け回されたゴム製の無端ベルトである。この搬送ベルト62は、一対のサイドガイド52L及び52Rの間において、硬貨搬送空間54の下方に設けられている。この搬送ベルト62は、上面部分であるベルト搬送面62Sが、左右方向に関し水平方向に沿っている。また搬送ベルト62は、前側の駆動シャフト58dが後側の従動シャフト58fよりも上側に配されているため、ベルト搬送面62Sが、前方へ向かうに連れて上昇するように、前上がりに傾斜している。搬送ベルト62は、駆動シャフト58dが回転すると、図6中反時計回りである搬送回転方向Rcに沿って回転し、ベルト搬送面62Sを前方向に沿って走行させる。このとき従動シャフト58fは、搬送ベルト62の回転に伴って連れ回る。説明の都合上、以下では、搬送ベルト62における上面部分であるベルト搬送面62Sの走行方向を、該搬送ベルト62の走行方向と見なす。搬送ベルト62は、搬送回転方向Rcに沿って回転することにより、補充回収庫24から受入開口部40Aを介して硬貨搬送空間54内に受け渡された硬貨CNをガイド部47(図4)に向けて徐々に上昇させつつ前方へ搬送する。このように搬送ベルト62は、ガイド部47に向けて硬貨CNを上昇させつつ搬送する。
駆動シャフト58dにおけるギア60と搬送ベルト62との間には、伝達プーリ64が嵌め込まれている。伝達プーリ64には、駆動ベルト66の前端部分が掛け回されている。駆動ベルト66は、ゴム製の無端ベルトであり、カムシャフト68に嵌め込まれたカムシャフトプーリ70に後端部分が掛け回されている。このため、搬送ベルト62を回転させるために駆動シャフト58dが回転すると、伝達プーリ64、駆動ベルト66及びカムシャフトプーリ70を介し回転駆動力が伝達され、カムシャフト68が回転する。
カムシャフト68は、メインフレーム50Lからメインフレーム50Rまで左右方向に沿って延びる略円筒形状の部材であり、硬貨搬送部48が組み立てられる際の都合上、所謂Dカット形状となっている。このカムシャフト68は、カムシャフト中心軸68X(図10)を回転中心としてメインフレーム50L及び50Rに回転可能に支持されている。
カムシャフト68におけるカムシャフトプーリ70とサイドガイド52Lとの間には、カムシャフト68よりも直径が大きい円盤形状のカム72Lが固定されている。図10(A)に示すように一方側カムとしてのカム72Lは、円盤形状の中心であるカム中心72XLが、カムシャフト中心軸68Xとは異なる位置に設けられている。このためカム72Lは、カムシャフト68に対し偏心した状態で、カムシャフト68の回転に伴い回転する。
また、カムシャフト中心軸68Xからカム72Lの外周面までの半径方向に沿った長さが最も長くなるカム72Lの外周面の箇所を、最長半径外周部RLOSとする。さらに、カムシャフト中心軸68Xからカム72Lの外周面までの半径方向に沿った長さが最も短くなるカム72Lの外周面の箇所を、最短半径外周部RSOSとする。
このため、カム72Lが一回転する間において、最長半径外周部RLOSが下端部に位置したときが、カムシャフト中心軸68Xからカム72Lの外周面の下端部までの距離が中心下端部最長半径RLと最も長くなる。このときの最長半径外周部RLOSにおける上下方向の位置を、カム上死点Tdcとする。一方、カム72Lが一回転する間において、最短半径外周部RSOSが下端部に位置したときが、カムシャフト中心軸68Xからカム72Lの外周面の下端部までの距離が中心下端部最短半径(図示せず)と最も短くなる。このときの最短半径外周部RSOSにおける上下方向の位置を、カム下死点(図示せず)とする。
一方、サイドガイド52L(図8)においてカムシャフト68よりも後方下側における左側面からは、円筒形状のプッシュレバー回動シャフト74sLが左方向へ突出している。このプッシュレバー回動シャフト74sLは、プッシュレバー74Lを回動可能に支持している。
一方側プッシュレバーとしてのプッシュレバー74Lは、全体として左右方向の厚さが薄く前後方向に延びる棒状の板金である。このプッシュレバー74Lは、プッシュレバー回動シャフト74sLを中心軸として、図8中時計回りであるピン持上回動方向RPuと、図8中反時計回りであるピン持下回動方向RPdとに回動可能となっている。以下ではピン持上回動方向RPu及びピン持下回動方向RPdをまとめてピン回動方向RPとも呼ぶ。
プッシュレバー74Lの後端近傍における上側には、スプリング76Lの上端部が係止している。スプリング76Lの下端部は、メインフレーム50Lに係止している。一方側付勢部材としてのスプリング76Lは、引張ばねであり、プッシュレバー74Lの後端部を下方向へ向かって引っ張るよう付勢している。このためプッシュレバー74Lは、スプリング76Lの付勢力により、ピン持下回動方向RPdへ回動するように付勢されている。プッシュレバー74Lは、前端部近傍の上側面がカム72Lの外周に押し付けられるように当接することにより、それ以上のピン持下回動方向RPdへの回動が規制されている。
プッシュレバー74Lの後端部近傍には、金属製のピン78L(図6及び図9)がカシメ等で締結されている。このピン78Lは、先端が円錐形状のように尖っており、ピン移動退避部52eLの内部に位置している。またピン78Lは、プッシュレバー74Lの右側面からサイドガイド52Lのサイドガイド内側面52SLよりも右側まで突出している。このためピン78Lの右端部の先端部であるピン先端部78eLは、硬貨搬送空間54の内部まで入り込んでいる。具体的に図9に示すようにピン先端部78eLは、サイドガイド内側面52SLよりも右側に向かって1.0〜1.5[mm]程度突出している。
一方、図6に示すように、カムシャフト68におけるサイドガイド52Rの右側には、カムシャフト68よりも直径が大きい円盤形状であり、カム72Lと同一形状のカム72Rが固定されている。図10(B)に示すように他方側カムとしてのカム72Rは、円盤形状の中心であるカム中心72XRが、カムシャフト中心軸68Xとは異なる位置に設けられている。このためカム72Rは、カムシャフト68に対しカム72Lと同じように偏心した状態で、カムシャフト68の回転に伴い回転する。
このため、カム72Lとカム72Rとは、互いに同じ周期において、最長半径外周部RLOSが下端部に位置することとなる。また同様に、カム72Lとカム72Rとは、互いに同じタイミングにおいて、最短半径外周部RSOSが下端部に位置することとなる。このように、カム72L及び72Rが一回転である360[°]回転する間において最長半径外周部RLOSがどのタイミングで下端部に位置するかを、カムの位相とも呼ぶ。すなわち、第1の実施の形態によるカム72Lとカム72Rとは、互いに同じ位相で、位相が揃った状態で回転し、位相のずれは0[°]である。このため、第1の実施の形態によるプッシュレバー74Lとプッシュレバー74Rとは、互いに同調して回動する。
一方、サイドガイド52R(図6)においてカムシャフト68よりも後方下側における右側面からは、円筒形状のプッシュレバー回動シャフト74sRが右方向へ突出している。このプッシュレバー回動シャフト74sRは、プッシュレバー74Rを回動可能に支持している。
他方側プッシュレバーとしてのプッシュレバー74Rは、全体としてプッシュレバー74Lとほぼ同様の左右方向の厚さが薄く前後方向に延びる棒状の板金である。このプッシュレバー74Rは、プッシュレバー回動シャフト74sRを中心軸として、図6中時計回りであるピン持下回動方向RPdと、図6中反時計回りであるピン持上回動方向RPuとに回動可能となっている。
プッシュレバー74Rの後端近傍における上側には、スプリング76Rの上端部が係止している。スプリング76Rの下端部は、メインフレーム50Rに係止している。他方側スプリングとしてのスプリング76Rは、引張ばねであり、プッシュレバー74Rの後端部を下方向へ向かって引っ張るよう付勢している。このためプッシュレバー74Rは、スプリング76Rの付勢力により、ピン持下回動方向RPdへ回動するように付勢されている。プッシュレバー74Rは、前端部近傍の上側面がカム72Rの外周に押し付けられるように当接することにより、それ以上のピン持下回動方向RPdへの回動が規制されている。
プッシュレバー74Rの後端部近傍には、金属製のピン78R(図8及び図9)がカシメ等で締結されている。このピン78Rは、先端が円錐形状のように尖っており、ピン78Lと左右方向に対向するように、ピン移動退避部52eRの内部に位置している。またピン78Rは、プッシュレバー74Rの左側面からサイドガイド52Rのサイドガイド内側面52SRよりも左側まで突出している。このためピン78Rの左端部の先端部であるピン先端部78eRは、硬貨搬送空間54の内部まで入り込んでいる。具体的にピン先端部78eRは、サイドガイド内側面52SRよりも左側に向かって1〜1.5[mm]程度突出している。
かかる構成において、駆動部46におけるモータが駆動すると、伝達ギア(図示せず)を経由してギア60が回転し、ギア60の回転に伴い、駆動シャフト58dが回転する。駆動シャフト58dが回転すると、搬送ベルト62が搬送回転方向Rcに回転することにより硬貨CNを搬送する。また駆動シャフト58dが回転すると、伝達プーリ64、駆動ベルト66、カムシャフトプーリ70、カムシャフト68を介して、カム72L及び72Rが同調して回転する。カム72L及び72Rが回転すると、カム72L及び72Rに押し付けられたプッシュレバー74L及び74Rが、カム72L及び72Rの外周面形状に合わせて一定周期でピン持上回動方向RPu及びピン持下回動方向RPdへ回動する。
カム72L及び72Rはカムシャフト68に対し偏心形状であるため、プッシュレバー74L及び74Rは、最長半径外周部RLOSがカム72L及び72Rの下端部に位置した際に、前端部が最も下側まで押し回される一方、最短半径外周部RSOSがカム72L及び72Rの下端部に位置した際に、前端部が最も上側まで戻る。このようにプッシュレバー74L及び74Rは、カム72L及び72Rの外形形状に合わせて、ピン回動方向RPに沿って往復移動するように一定周期で回動する。これによりピン78L及び78Rは、互いの上下前後方向の位置が同様の位置を保った状態で、ピン回動方向RPに沿って往復移動するように一定周期でほぼ上下方向に沿って互いに同様の回動軌道に沿って回動する。
以下では、メインフレーム50L及び50Rをまとめてメインフレーム50とも呼び、サイドガイド52L及び52Rをまとめてサイドガイド52とも呼び、サイドガイド内側面52SL及び52SRをまとめてサイドガイド内側面52Sとも呼び、ピン移動退避部52eL及び52eRをまとめてピン移動退避部52eとも呼び、ピン78L及び78Rをまとめてピン78とも呼び、ピン先端部78eL及び78eRをまとめてピン先端部78eとも呼び、プッシュレバー74L及び74Rをまとめてプッシュレバー74とも呼び、プッシュレバー回動シャフト74sL及び74sRをまとめてプッシュレバー回動シャフト74sとも呼び、カム72L及び72Rをまとめてカム72とも呼び、カム中心72XL及び72XRをまとめてカム中心72Xとも呼び、スプリング76L及び76Rをまとめてスプリング76とも呼ぶ。
[1−4−4.ピンについて]
ここで、現金自動預払機1において扱われる硬貨CNのうち最も直径が小さい硬貨CNを、最小硬貨とも呼ぶ。最小硬貨は、例えば1円硬貨である。また、現金自動預払機1において扱われる硬貨CNのうち最も直径が大きい硬貨CNを、最大硬貨とも呼ぶ。最大硬貨は、例えば500円硬貨である。さらに、中央部に穴が空いた硬貨CNを、穴あき硬貨とも呼ぶ。穴あき硬貨は、例えば5円硬貨及び50円硬貨である。
ピン78L及び78Rは、最も上側に位置したとき、図11に示すように搬送ベルト62のベルト搬送面62Sに周側面を当接させた立位状態の最大硬貨である硬貨CNの上端部よりもやや下側に、ピン先端部78eL及び78eRを位置させている。これにより硬貨搬送部48は、往復移動するピン78L及び78Rがどの位置に位置していたとしても、最大硬貨にピン78L及び78Rを当接させることができる。以下では、ピン78L及び78Rが最も上側に位置したときのピン先端部78eL及び78eRの位置を、ピン変位最上部位置とも呼ぶ。
またピン78L及び78Rは、最も下側に位置したとき、立位状態の最小硬貨の上端部よりもやや下側に、ピン先端部78eL及び78eRを位置させている。これにより硬貨搬送部48は、現金自動預払機1において扱われる全ての硬貨CNの盤面にピン78L及び78Rを当接させることができる。以下では、ピン78L及び78Rが最も下側に位置したときのピン先端部78eL及び78eRの位置を、ピン変位最下部位置とも呼ぶ。
さらにこのピン変位最下部位置は、立位状態の穴あき硬貨の穴の上端部よりも上方に位置している。これにより硬貨搬送部48は、穴あき硬貨の穴にピン78L及び78Rが入り込んで引っ掛かってしまい、ピン78L及び78Rが正常に回動できなくなることを防止している。
また硬貨搬送部48は、ピン変位最上部位置とピン変位最下部位置との間を1秒間で1〜2往復する程度の速度でピン78L及び78Rを回動させる。
さらにピン78L及び78Rは、前後方向の位置に関し、ベルト搬送面62S及びガイド面36Sにより下側のそれぞれ前側及び後側が支持されている状態の最小硬貨における、前端部から後端部までの間に、ピン変位最下部位置にあるピン先端部78eL及び78eRが位置している。これにより硬貨搬送部48は、ベルト搬送面62S及びガイド面36Sにより支持された状態における、現金自動預払機1において扱われる全ての硬貨CNの盤面にピン78L及び78Rを当接させることができる。
さらに硬貨搬送部48は、サイドガイド内側面52Sに対する硬貨搬送空間54側へのピン先端部78eの突出量を一定にしたまま、サイドガイド52に対しピン78を可動させる、すなわち、サイドガイド内側面52Sから硬貨搬送空間54内に向かってピン先端部78eが突出した状態のままサイドガイド52に対しピン78を可動させる、このため硬貨搬送部48は、左右方向に関し、ピン先端部78eをサイドガイド内側面52Sに対し平行移動させる。
[1−4−5.下分離部の動作]
かかる構成において、硬貨制御部12の制御に基づき、駆動部46が動作すると共に、補充回収庫24を駆動するモータ(図示せず)が動作すると、補充回収庫24から受入開口部40Aを介して硬貨CNが硬貨搬送部48の搬送ベルト62に引き渡される。下分離部29は、搬送ベルト62を搬送回転方向Rcへ回転させることにより、硬貨CNをガイド部47へ向けて前方上側へ搬送する。またこのときピン78は、駆動機構56により駆動力を伝達され、ピン回動方向RPに沿って往復移動する。
このとき搬送される硬貨CNの姿勢は様々であり、硬貨CNが盤面を搬送ベルト62のベルト搬送面62Sに当接させたり、倒れている他の硬貨CNの盤面に当接させたりした状態、すなわち硬貨CNが横になった倒れ状態や、硬貨CNがその周側面を搬送ベルト62のベルト搬送面62Sに当接させながら、例えばサイドガイド52に寄りかかった状態、すなわち硬貨CNが縦になった立位状態等となる。倒れ状態の硬貨CNは、ほとんどがピン78のピン先端部78eよりも下側に位置しているため、ピン78に接触されることなく、盤面を搬送ベルト62のベルト搬送面62Sに当接させた状態でガイド部47まで搬送される。
一方、立位状態の硬貨CNがサイドガイド52の近傍で搬送されると、仮にピン78が設けられていない場合、ベルト搬送面62Sが上り傾斜であると共に、硬貨CNの搬送方向上流側がガイド面36Sにより、搬送方向上流側へ移動しないように支持されているため、硬貨CNが例えばサイドガイド52に寄りかかった状態で、その場で自転し続けてしまい、ガイド部47へ搬送されなくなってしまう可能性がある。そのような立位状態の硬貨CNが硬貨搬送空間54に複数枚集まると、図12に示すように、立位状態で隣接する複数の硬貨CNが互いの盤面を当接させた状態で重なる俵状態となってその場で自転してしまい、硬貨CNが搬送されなくなる可能性がある。このように、立位状態の硬貨CNが受入開口部40A付近に1枚滞留したままになっていると、その後硬貨CNが受入開口部40A付近で俵状態になりやすくなってしまう。そのような場合、硬貨CNが硬貨搬送空間54に残留したり、搬送不具合が発生したりしまう。
これに対し硬貨搬送部48は、プッシュレバー74を回動させることにより、受入開口部40Aよりも搬送方向下流側の近傍において、ピン78をほぼ上下方向に沿うようピン移動退避部52eの内部で回動させるようにした。このため硬貨搬送部48は、立位状態で受入開口部40A付近に滞留した硬貨CNにピン78を当接させることにより、硬貨CNの姿勢を崩して倒し、倒れ状態にすることができる。このため硬貨搬送部48は、俵状態の起因となる、1枚の硬貨CNの立位状態を速やかに防ぎ、俵状態が発生しないようにできる。これにより硬貨搬送部48は、硬貨CNが硬貨搬送空間54に残留したり搬送不具合が発生したりすることを防ぎ、正常に硬貨CNを搬送できる。
続いて下分離部29は、正常に搬送された硬貨CNを搬送ベルト62の前端部からガイド部47を介し落下させ、硬貨集積空間44内に集積させる。さらに下分離部29は、硬貨集積空間44に溜め込まれた複数の硬貨CNから硬貨CNを1枚ずつ傾斜円盤42の分離突起43により拾い上げ、一時保留部23へ向けて1枚ずつ分離して搬送する。
[1−5.効果等]
以上の構成において硬貨搬送部48は、サイドガイド内側面52Sから硬貨搬送空間54内に向かって突出し、サイドガイド内側面52Sに対してその位置を変位させながら硬貨CNと当接するピン78を設けるようにした。これにより硬貨搬送部48は、ベルト搬送面62Sが上り傾斜であると共に、硬貨CNの搬送方向上流側がガイド面36Sにより支持されているため、受入開口部40A付近において立位状態となり滞留しやすい硬貨にピン78を当接させ、該硬貨CNの姿勢を崩して倒すことができる。
ここで、搬送ベルト62は搬送回転方向Rcに回転しており硬貨CNに対し前方へ移動させる力を常に加えている。このため硬貨搬送部48は、ピン78を例えば左右方向に動かして硬貨CNの盤面を強く押し倒すことまで行わずに、硬貨CNの周側面に当接させたり、硬貨CNの盤面と当接させながら上下方向に動かしたりするだけで、前方へ移動する力が加えられている硬貨CNの重心を崩して姿勢を不安定にさせ、結果として硬貨CNを倒すことができる。
また硬貨搬送部48は、駆動部46の駆動力を、駆動機構56における伝達プーリ64、駆動ベルト66及びカムシャフトプーリ70を介して伝達させ、カムシャフト68を回転させることにより、ピン78を回動させるようにした。このため硬貨搬送部48は、搬送ベルト62及び傾斜円盤42を回転させるために硬貨処理装置10に元々設けられている駆動部46の他に、ピン78を可動させるための駆動源を別途設けることなく、駆動部46の駆動力を流用してピン78を移動させることができる。これにより硬貨搬送部48は、構成を簡易にできると共に、駆動部46以外に別途駆動源を設けるスペースを設ける必要をなくし省スペース化できる。
さらに硬貨搬送部48は、ピン移動退避部52eの内部において、搬送ベルト62の搬送方向にほぼ直交する上下方向に沿ってピン78を回動させるようにした。このため硬貨搬送部48は、限られた実装スペースを利用して、回転する駆動シャフト58dから簡易な構成で駆動ベルト66を介し駆動部46の回転駆動力を伝達させ、ピン78を可動させることができる。
以上の構成によれば、第1の実施の形態による現金自動預払機1の硬貨処理装置10は、互いに対向して配置され、搬送空間としての硬貨搬送空間54を形成する一対のサイドガイド52と、一対のサイドガイド52の間で、且つ硬貨搬送空間54の下方に設けられ、該硬貨搬送空間54内の硬貨CNを搬送する搬送ベルト62と、搬送ベルト62を駆動する駆動部46と、サイドガイド52の内側面であるサイドガイド内側面52Sから硬貨搬送空間54内に向かって突出し、硬貨CNと当接するピン78と、サイドガイド内側面52Sに対してピン78の位置を変位させる駆動機構56とを設けるようにした。これにより硬貨処理装置10は、搬送ベルト62のベルト搬送面62Sにおいて立位状態となり硬貨搬送空間54に滞留した硬貨CNにピン78を当接させ、該硬貨CNの姿勢を崩して倒すことができる。
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態による現金自動預払機101(図1)は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、硬貨処理装置10に代わる硬貨処理装置110を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。硬貨処理装置110(図2)は、第1の実施の形態による硬貨処理装置10と比較して、下分離部29に代わる下分離部129を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
[2−1.下分離部の構成]
図3及び図4に示すように、下分離部129は、第1の実施の形態による下分離部29と比較して、硬貨搬送部48に代わる硬貨搬送部148を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
[2−2.硬貨搬送部の構成]
図10と対応する部材に同一符号を付した図13に示すように、硬貨搬送部148は、第1の実施の形態による硬貨搬送部48と比較して、カム72Rに代わるカム172Rを有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
[2−3.カムの構成]
カム172Rは、第1の実施の形態によるカム72Rと比較して、形状が異なっている。具体的にカム172Rは、カムシャフト中心軸68Xを中心として、カム72Lを180[°]回転させた形状で、カムシャフト68に固定されている。
このため、カム72Lにおける最長半径外周部RLOSが下端部に位置しているとき(図13(A))は、カム172Rは最短半径外周部RSOSが下端部に位置することとなる(図13(B))。また逆に、カム72Lにおける最短半径外周部RSOSが下端部に位置しているときは、カム172Rは最長半径外周部RLOSが下端部に位置することとなる。このためカム72Lとカム172Rとは、逆の周期において、最長半径外周部RLOSが下端部に位置することとなる。このように、第1の実施の形態による硬貨搬送部48は、カム72Lとカム72Rとのカムの位相のずれは0[°]であったのに対し、第2の実施の形態による硬貨搬送部148は、カム72Lとカム172Rとのカムの位相のずれは180[°]となっている。このため、第2の実施の形態によるプッシュレバー74は、一方がピン持上回動方向RPuへ回動しているときは、他方がピン持下回動方向RPdへ回動するように、互いに同調せず回動する。具体的にプッシュレバー74は、ピン78Lがピン変位最下部位置にあるときはピン78Rがピン変位最上部位置にあり、ピン78Lがピン変位最上部位置にあるときはピン78Rがピン変位最下部位置にあるように、互いに逆の周期で上下方向へ回動する。
また図13(B)に示すように、カム172Rが一回転する間において、最短半径外周部RSOSが下端部に位置したときが、カムシャフト中心軸68Xからカム172Rの外周面の下端部までの距離が中心下端部最短半径RSと最も短くなる。このときの最短半径外周部RSOSにおける上下方向の位置を、カム下死点Bdcとする。図13(B)にカム上死点Tdcを仮想的に示すように、カム下死点Bdcは、カム上死点Tdcよりも上方に位置している。
ここで、プッシュレバー74L及び74Rは、それぞれスプリング76L及び76Rの付勢力により、カム72L及び72Rに押し付けられている。このためプッシュレバー74L及び74Rの回動姿勢に応じて、スプリング76L及び76Rは伸び縮みする。硬貨搬送部148は、プッシュレバー74Lとプッシュレバー74Rとの動きが同調しないことにより、スプリング76Lとスプリング76Rとの伸長タイミングがずれることとなる。
[2−4.効果等]
以上の構成において硬貨搬送部148は、カム72Lとカム172Rとのカムの位相を180[°]ずらすようにした。このため硬貨搬送部148は、プッシュレバー74Lとプッシュレバー74Rとを、互いに同調せずに回動させる。よって硬貨搬送部148は、ピン78Lとピン78Rとを、互いに同調せずに回動させる。これにより硬貨搬送部148は、サイドガイド52Lとサイドガイド52Rとの両方の近傍に立位状態の硬貨CNが発生したときに、異なるタイミングでピン78Lとピン78Rとが硬貨CNに当接することにより、硬貨CNの姿勢が崩れるタイミングをずらずことができる。かくして硬貨搬送部148は、サイドガイド52Lとサイドガイド52Rとの間で2枚の硬貨CNが架橋状態となるように倒れる硬貨ブリッジ現象が発生してサイドガイド52間で硬貨CNがつっぱり、硬貨CNが残留してしまうことを防止できる。
ここで、スプリング76が最も伸びたとき(すなわちピン78がピン変位最上部位置にきたとき)、駆動ベルト66に最も大きい負荷がかかり、一方、スプリング76が最も縮んだとき(すなわちピン78がピン変位最下部位置にきたとき)、駆動ベルト66に最も小さい負荷がかかることとなる。これに対し硬貨搬送部148は、スプリング76Lとスプリング76Rとの伸長タイミングをずらずことにより、スプリング76L及び76Rから駆動ベルト66に掛かる負荷における最大負荷と最小負荷の差である負荷変動を小さくすることができ、駆動部46におけるモータにおいて必要なモータ負荷を小さくすることができる。
その他の点においても、第2の実施の形態による下分離部129は、第1の実施の形態による下分離部29と同様の作用効果を奏し得る。
[3.第3の実施の形態]
第3の実施の形態による現金自動預払機201(図1)は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、硬貨処理装置10に代わる硬貨処理装置210を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。硬貨処理装置210(図2)は、第1の実施の形態による硬貨処理装置10と比較して、下分離部29に代わる下分離部229を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
[3−1.下分離部の構成]
図5と対応する部材に同一符号を付した図14に示すように、下分離部229は、第1の実施の形態による下分離部29と比較して、硬貨搬送部48に代わる硬貨搬送部248を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
[3−2.硬貨搬送部の構成]
硬貨搬送部248は、第1の実施の形態による硬貨搬送部48と比較して、駆動機構56が省略されていると共に、サイドガイド52(サイドガイド52L及び52R)に代わるサイドガイド252(サイドガイド252L及び252R)と、螺旋シャフト80とを有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
サイドガイド252は、円盤形状であり、駆動部46におけるモータから駆動力を伝達され、中央部の回転軸を回転中心として、図14中反時計回りであるサイドガイド回転方向Rgへ回転する。またサイドガイド252は、回転中心における、サイドガイド252Lとサイドガイド252Rとの間に、螺旋シャフト80が固定されている。螺旋シャフト80は、左右方向に沿って外周面80Sに螺旋状の溝部82が刻設されており、カムシャフト68(図5)と比較して、太いと共に後方の下側に位置している。具体的に螺旋シャフト80は、上下方向に関し、下端部を立位状態の最小硬貨の上端部よりもやや下側に位置させている。これにより硬貨搬送部248は、現金自動預払機201において扱われる立位状態の全ての硬貨CNに螺旋シャフト80を当接させることができる。
かかる構成において、補充回収庫24から硬貨CNが硬貨搬送部248の搬送ベルト62に引き渡されると、下分離部229は、搬送ベルト62を搬送回転方向Rcへ回転させることにより、硬貨CNをガイド部47へ向けて前方上側へ搬送する。またこのときサイドガイド252及び螺旋シャフト80は、駆動力を伝達され、サイドガイド回転方向Rgへ回転する。
このとき倒れ状態の硬貨CNは、螺旋シャフト80の下端部よりも下側に位置しているため、螺旋シャフト80に接触することなく、螺旋シャフト80の下側を通過し、搬送ベルト62に載った状態でガイド部47まで搬送される。一方、立位状態の硬貨CNが搬送されると、硬貨CNは、その周側面が螺旋シャフト80における外周面80S及び溝部82と当接し、外周面80Sと溝部82との境目における形状の変化により、姿勢が崩れて倒れ、倒れ状態になる。
このように硬貨搬送部248は、立位状態の硬貨CNに当接する螺旋シャフト80を回転させるようにした。これにより硬貨搬送部248は、螺旋シャフト80の下側しか硬貨CNを通過させられないため、硬貨搬送部48と比較して、単位時間当たりに搬送できる硬貨CNの枚数は減少する可能性はあるものの、螺旋シャフト80を硬貨CNに当接させて姿勢を崩して倒し、倒れ状態にし、螺旋シャフト80の下側を通過させて、搬送ベルト62に載った状態でガイド部47まで搬送できる。このため硬貨搬送部248は、俵状態の起因となる、1枚の硬貨CNの立位状態を速やかに防ぎ、俵状態が発生しないようにできる。これにより硬貨搬送部248は、硬貨CNが硬貨搬送空間54に残留したり搬送不具合が発生したりすることを防ぎ、正常に硬貨CNを搬送できる。
[4.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、サイドガイド内側面52Sに対する硬貨搬送空間54側へのピン先端部78eの突出量を一定にしたまま、サイドガイド52に対しピン78を可動させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、サイドガイド内側面52Sから硬貨搬送空間54側へピン先端部78eを突出させ続けるものの、サイドガイド内側面52Sに対する硬貨搬送空間54側へのピン先端部78eの突出量を変位させつつ、サイドガイド52に対しピン78を可動させても良い。第2の実施の形態についても同様である。
また上述した第1の実施の形態においては、ピン移動退避部52e内部でほぼ上下方向に沿ってピン78を可動させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、左右方向、前後方向や、上下左右前後方向の組み合わせ等、他の種々の移動方向へピン78を移動させても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、硬貨搬送空間54に対し左右外側に1つずつピン78を設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、硬貨搬送空間54に対し左右外側の何れか一方にのみピン78を設けたり、左右に複数個ずつピン78を設けたり、左側と右側とで異なる個数のピン78を設けたりしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、ピン変位最上部位置を立位状態の最大硬貨の上端部よりもやや下側に位置させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、ピン変位最上部位置を立位状態の最大硬貨の上端部よりも上側に位置させても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、ピン変位最下部位置を立位状態の穴あき硬貨の穴の上端部よりも上方に位置させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、現金自動預払機1において穴あき硬貨を扱わない場合、穴あき硬貨の穴の位置は考慮せずに、例えば第1の実施の形態よりもさらに下方に位置させても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、ピン78の先端を円錐形状にする場合について述べた。本発明はこれに限らず、ピン78の先端を、円柱形状や四角錐形状等、他の種々の形状としても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第2の実施の形態においては、カム72Lとカム172Rとのカムの位相を180[°]ずらす場合について述べた。本発明はこれに限らず、カム72Lとカム172Rとのカムの位相を180[°]以外の任意の角度だけずらしても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、搬送ベルト62を駆動する駆動部46の駆動力を、駆動シャフト58dから伝達プーリ64及び駆動ベルト66を介しカムシャフトプーリ70へ伝達させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、搬送ベルト62を駆動する駆動部46の駆動力を、従動シャフト58fから種々のプーリ及び駆動ベルトを介しカムシャフトプーリ70へ伝達させても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、搬送ベルト62を駆動する駆動部46の駆動力を伝達させて、すなわち流用することにより、ピン78を駆動する場合について述べた。本発明はこれに限らず、駆動部46とは別に、ピン78を駆動する駆動源を設けても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、下分離部29に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、本発明を一時保留部23における下側後端部に適用しても良い。要は、搬送方向の下流側が上昇する搬送ベルトの上面に載った状態で搬送される硬貨における搬送方向の上流側が、それ以上上流側へ硬貨が移動しないよう規制されている箇所において本発明を適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、使用者との間で種々の取引を行う現金自動預払機1(図1)の硬貨処理装置10に組み込まれる下分離部29に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば硬貨処理装置10(図2)の上分離部15に本発明を適用しても良い。或いは、例えば金融機関やスーパーマーケットの店舗内等に設置され、該店舗の職員や係員等の操作に従って硬貨の計数や分類等の処理を行う現金管理装置等、硬貨を取り扱う種々の装置に本発明を適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した第1の実施の形態においては、サイドガイドとしてのサイドガイド52と、搬送ベルトとしての搬送ベルト62と、駆動部としての駆動部46と、突出部としてのピン78と、駆動機構56としての駆動機構によって、硬貨処理装置としての硬貨処理装置10を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなるサイドガイドと、搬送ベルトと、駆動部と、突出部と、駆動機構とによって、硬貨処理装置を構成しても良い。