以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.レジ釣銭機の全体構成]
図1に外観を示すように、レジ釣銭機1は、それぞれ独立した装置である上側のPOSレジ2と下側の釣銭機3とにより構成されている。このレジ釣銭機1は、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストアのような小売店舗の精算所(いわゆるレジ)において、顧客が購入したい商品を精算する際に、レジ係員により操作される。因みにレジ釣銭機1は、セルフレジと呼ばれる仕組みを導入している店舗において、レジ係員ではなく顧客自身に操作されることにより、精算の手続を行う場合もある。
なお以下では、レジ係員等(以下、操作者と呼ぶ)が対峙する側面及びその反対面をそれぞれ前面及び後面とし、さらに当該操作者から見て左右及び上下を定義して説明する。
POSレジ2は、レジ制御部11、表示操作部12、レシート処理部13等を有している。またPOSレジ2には、図示しないバーコードリーダが接続されており、商品に付されたバーコードをこのバーコードリーダで読み取ることにより、当該商品を認識する。
レジ制御部11は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有しており、該CPUにより該ROM等から読み出した所定のプログラムを実行することにより種々の処理を行い、全体を統括制御する。
表示操作部12は、いわゆるタッチパネルであり、認識した商品の名称や金額等を表示し、また操作者による入力操作を受け付けてレジ制御部11へ送信する。これに応じてレジ制御部11は、商品の数量の増減や金額の修正等を行うことができる。レシート処理部13は、認識した商品の名称や金額等をレシートに印字し、これをレシート排出口から排出する。
一方、貨幣取扱装置としての釣銭機3は、大きく分けて、紙幣を取り扱う紙幣入出金装置4と、硬貨を取り扱う硬貨入出金装置5と、前側上部の表示操作部6とにより構成されている。因みに硬貨は、一般的な硬貨と同様、ニッケル、銅、アルミニウム等の金属又はこれらの合金やその組み合わせでなり、薄い板状に形成されている。
紙幣処理装置としての紙幣入出金装置4は、操作者により紙幣入出金部21から入金された紙幣を取り込んで内部の紙幣収納庫22に収納し、またレジ制御部11から指示された紙幣を紙幣収納庫22から繰り出し、これを紙幣入出金部21から釣銭として出金する。
硬貨処理装置としての硬貨入出金装置5は、内部に硬貨制御部30を有しており、その前側における上段左寄りに硬貨投入部31が設けられ、その下方に硬貨出金トレイ32が設けられている。この硬貨入出金装置5は、硬貨制御部30の制御に基づき、操作者により硬貨投入部31へ投入された硬貨を取り込んで内部の収納庫に収納すると共に、レジ制御部11から指示された金額に応じた金種及び枚数の硬貨を硬貨出金トレイ32から釣銭として出金する(詳しくは後述する)。
表示操作部6は、所定の表示パネル及び所定の操作ボタンの組み合わせにより構成されている。表示操作部6の表示パネルは、紙幣入出金装置4及び硬貨入出金装置5における稼働状況として、例えば硬貨入出金装置5において釣銭用の硬貨が不足していることや、所定のセンサにより異常を検出したこと、及びその箇所等を表示する。また表示操作部6の操作ボタンは、操作者等による押下操作を介して、例えば硬貨の搬送等に関する指示を受け付ける。
このレジ釣銭機1は、例えば顧客が商品の購入代金を支払う精算手続において、POSレジ2により各商品に付されたバーコードを読み取る等して商品の購入代金を算出し、顧客に通知する。これに応じて顧客は、購入代金以上の金銭、すなわち紙幣及び硬貨をレジ係員に預ける。レジ係員は、顧客から預かった紙幣を紙幣入出金装置4の紙幣入出金部21に投入すると共に硬貨を硬貨入出金装置5の硬貨投入部31に投入する。これに応じて硬貨入出金装置5では、入金処理(詳しくは後述する)が行われ、入金された硬貨の合計金額をレジ制御部11に通知する。紙幣入出金装置4も、同様に入金された紙幣の合計金額をレジ制御部11に通知する。
レジ制御部11は、入金された紙幣及び硬貨の合計金額から商品の購入代金を減算して釣銭の金額を算出すると共に、紙幣入出金装置4及び硬貨入出金装置5からそれぞれ出金すべき金額(以下これを出金額と呼ぶ)を算出して該紙幣入出金装置4及び該硬貨入出金装置5へそれぞれ通知する。硬貨入出金装置5は、通知された出金額に応じて出金処理(詳しくは後述する)を行うことにより、該出金額の硬貨を硬貨出金トレイ32に排出し、レジ係員に受け取らせる。紙幣入出金装置4も同様に出金額の紙幣を紙幣入出金部21に排出し、レジ係員に受け取らせる。レジ係員は、レシート等と共に釣銭の紙幣及び硬貨を顧客に返却して一連の精算手続を完了する。
[2.硬貨入出金装置の構成]
次に、硬貨入出金装置5の構成について説明する。硬貨入出金装置5は、図2及び図3に模式的な平面図を示すように、大きく分けて上側の上段部5U(図2)及び下側の下段部5L(図3)により構成されている。また硬貨入出金装置5の中央付近であって、下段部5L(図3)における硬貨出金トレイ32の後側には、硬貨を金種ごとに収納する6個の収納庫33(33A、33B、33C、33D、33E及び33F)が左右方向に沿って整列するように配置されている。以下では、収納庫33が整列した方向である左右方向を整列方向とも呼ぶ。
[2−1.上段部の構成]
上段部5U(図2)の硬貨投入部31は、上方が開口し、全体として中心軸を上下方向に沿わせた円柱状に形成され、その内部に円筒状に窪んだ投入空間31Sが形成され、また底部に回転可能な円盤31Cが組み込まれている。さらに硬貨投入部31には、投入空間31S内における硬貨の有無を検知するセンサ(図示せず)も組み込まれている。
これに加えて硬貨投入部31には、図2におけるA1−A2断面図を図4として示すように、開口を覆うことにより投入空間31Sを閉塞して新たな硬貨の投入を抑止するためのシャッタ31Tも設けられている。このシャッタ31Tは、操作者の手作業若しくは図示しないアクチュエータの動作によって開閉可能となっている。また硬貨投入部31は、シャッタ31Tが閉塞されているか否かを所定のシャッタ閉塞センサにより検知し、硬貨制御部30へ通知するようになっている。さらに硬貨投入部31は、硬貨制御部30の制御によりシャッタ31Tを閉塞状態に保持するロック機構(図示せず)も有している。
硬貨投入部31は、投入空間31S内へ硬貨が投入されたことをセンサにより検知すると、円盤31Cを所定の繰出方向へ回転させ、硬貨に遠心力を作用させて円盤31Cの外周側へ搬送し、後側に配置された投入受渡部35に引き渡す。
投入受渡部35の後側には、収納庫33の上側における前後左右を中空の長方形状に繋ぐようにして投入搬送部36が配置されている。因みに上段部5Uにおける投入搬送部36の内側には、収納庫33を構成する部品が一部に配置されているものの、それ以外の大部分が上下に貫通する空間となっている。このため図2では、上段部5Uの一部である投入搬送部36の内側に、下段部5Lを構成する収納庫33の一部が見える様子を表している。
投入搬送部36は、収納庫33の上側における前側、右側及び後側において上面が平面状に形成された投入搬送ガイド37と、該投入搬送ガイド37の上側において前左、前右、後右及び後左の4箇所にそれぞれ配置されたベルトローラ38と、該ベルトローラ38の周囲に張架されたピンベルト39とにより構成されている。ベルトローラ38は、中心軸を上下方向に沿わせた円柱状に形成されており、該中心軸を中心として回転し得るようになっている。ピンベルト39は、可撓性を有する材料により構成され、上下方向に所定の長さ(すなわち幅)を有する無端ベルトに対し、当該無端ベルトの周方向に沿って所定間隔毎にピン(図示せず)が設けられた構成となっている。
投入搬送部36は、図示しないモータからベルトローラ38に駆動力を供給して回転させることにより、ピンベルト39を図2における反時計回りに所定の走行速度で走行させる。一方、投入受渡部35は、硬貨投入部31から硬貨を受け取ると、走行するピンベルト39の各ピンに合わせたタイミングで当該硬貨を投入搬送部36に引き渡す。因みに投入受渡部35の近傍には、硬貨の通過を検出するセンサが配置されている。
これに応じて投入搬送部36は、投入受渡部35から受け取った硬貨をピンベルト39のピンに当接させて、該ピンベルト39の走行に伴い硬貨を搬送する。投入搬送部36は、ピンベルト39の走行に伴い、投入搬送ガイド37に沿って、収納庫33の上前側を右方向へ向けて、該収納庫33の上右側を後方向へ向けて、さらに該収納庫33の上後側を左方向へ向けて、それぞれ硬貨を搬送する。説明の都合上、以下ではピンベルト39の走行により投入搬送ガイド37に沿って硬貨を搬送する経路を投入搬送路Wとも呼ぶ。
上段部5Uにおける硬貨投入部31の右後側であって、投入搬送路Wに沿って投入受渡部35よりも下流側には、認識部40が配置されている。認識部40は、光学センサや磁気センサ等、種々のセンサを有しており、各センサから得られた結果を基に、硬貨が正当であるか否か、及びその金種を判定して該硬貨制御部30に通知する。これに応じて硬貨制御部30は、当該硬貨の搬送先を決定する。
因みに認識部40は、硬貨を、1円、5円、10円、50円、100円及び500円の6種類のいずれであるか(すなわち真正な硬貨であるか)、若しくはいずれの金種とも判別できず真正でない可能性がある硬貨(以下これをリジェクト硬貨と呼ぶ)であるかを判別する。
上段部5Uにおける認識部40の右側、すなわち投入搬送路Wに沿って該認識部40の下流側には、リジェクト切替部41が設けられている。リジェクト切替部41は、板状のリジェクトブレード42と、該リジェクトブレード42を駆動するアクチュエータ(図示せず)と、投入搬送ガイド37を上下方向に貫通するリジェクト孔部43とにより構成されている。リジェクトブレード42は、上下に薄い板状に形成されており、右辺近傍に設けられ前後方向に沿った回動軸を中心として、投入搬送ガイド37に対し回動可能に構成されている。
リジェクト切替部41は、硬貨制御部30の制御に基づき、アクチュエータからリジェクトブレード42へ駆動力を伝達して回動させる。これによりリジェクト切替部41は、リジェクトブレード42の上面を投入搬送ガイド37の上面とほぼ揃えた状態(以下これを閉状態又は収納状態と呼ぶ)と、該リジェクトブレード42の左側を持ち上げて上面を投入搬送ガイド37に対し傾斜させた状態(以下これを開状態又はリジェクト状態と呼ぶ)に切り替えることができる。
リジェクト切替部41は、閉状態において、投入搬送部36により上流側から搬送されてきた硬貨をそのまま下流へ、すなわち右方向へ進行させる。またリジェクト切替部41は、開状態において、投入搬送部36により上流側から搬送されてきた硬貨をリジェクト孔部43から下方へ落下させる。
リジェクト孔部43の下側には、リジェクト搬送部44(図3及び図4)が設けられている。リジェクト搬送部44は、リジェクト孔部43の近傍から硬貨出金トレイ32の上側に至る範囲に配置されており、筒状に形成されると共に該硬貨出金トレイ32側が低く配置された、いわゆるシュート構造となっている。このリジェクト搬送部44は、リジェクト孔部43から落下してきた硬貨を、シュート構造内をその自重によって滑降させることにより搬送し、当該硬貨を硬貨出金トレイ32の上側まで進行させて落下させる。
一方、投入搬送部36は、リジェクト切替部41が閉状態であった場合、硬貨をそのまま右方向へ搬送した後、前右のベルトローラ38に沿って進行方向を後ろ向きに変更し、さらに後右のベルトローラ38に沿って進行方向を左向きに変更する。投入搬送部36における収納庫33の上後側部分には、選別部45が設けられている。選別部45は、リジェクト切替部41とそれぞれ同様に構成された6個の選別切替部46(46A、46B、46C、46D、46E及び46F)により構成されている。
各選別切替部46は、それぞれ各収納庫33の真上に位置しており、硬貨制御部30の制御に基づき、リジェクトブレード42と同様に構成された選別ブレード47をそれぞれ回動させることにより、投入搬送ガイド37を上下方向に貫通する選別孔部48を閉塞又は開放する。選別部45は、硬貨制御部30の制御に基づき、何れか1個の選別切替部46を開状態とし、他の選別切替部46を閉状態とすることにより、開状態とした選別切替部46と対応する収納庫33に硬貨を落下させて収納させることができる。
[2−2.下段部の構成]
下段部5L(図3)の各収納庫33は、上方から見て、何れも前後方向に長く、左右方向に短い長方形状に仕切られており、選別部45の各選別切替部46(図2)から落下されてくる硬貨を内部の収納空間50にそれぞれ収納する。
また収納庫33は、図3におけるB1−B2断面を図5に示すように、収納空間50の底部に収納搬送部51が組み込まれている。収納搬送部51は、前側の上寄り及び下寄り並びに後側の下寄りにそれぞれ配置された複数の収納搬送ローラ52の周囲を周回するように、無端ベルトでなる収納搬送ベルト54が張架された構成となっている。すなわち収納庫33では、収納搬送ベルト54における上側部分の上面が、収納空間50の底面を形成している。
収納搬送部51は、硬貨制御部30の制御に基づき、所定のモータ(図示せず)から駆動力を各収納搬送ローラ52へ伝達し、それぞれ図5における反時計回りに回転させる。これにより収納搬送部51は、収納搬送ベルト54の上側部分を前方向へ進行させ、これにより収納空間50内に収納されている硬貨CNを前方へ搬送する。
収納庫33(図5)における収納空間50内の前寄りには、リバースローラ55、出金ゲート56及び出金センサ57が設けられている。リバースローラ55は、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に構成されており、その下側面と対向する収納搬送ベルト54の上側部分との間に硬貨CNの厚さよりも僅かに広い隙間を空けるように配置されている。このリバースローラ55は、硬貨制御部30の制御に基づき所定のモータ(図示せず)から駆動力が伝達されることにより、図5の反時計回りに、すなわち下側面を後方へ進行させるよう回転する。これによりリバースローラ55は、収納搬送ベルト54上に2枚以上の硬貨CNが積み重なった状態で前方向へ搬送されていた場合、最下層の硬貨CNを除いた上層の硬貨CNを堰き止め、或いはその重なりを崩しながら、1枚ずつリバースローラ55及び収納搬送ベルト54の隙間を通過させる。
出金ゲート56は、その下側に細長い円柱状の出金ゲートピン56Pを有しており、硬貨制御部30の制御に基づき、出金ゲートピン56Pを所定の移動範囲内で上下方向に移動させる。この出金ゲートピン56Pは、最も上側に移動されると、その下端と収納搬送ベルト54の上側部分との間に硬貨CNの厚さよりも大きい隙間を形成し、当該ベルトにより搬送されている硬貨CNと干渉することなく通過させる。一方、出金ゲートピン56Pは、最も下側に移動されると、その下端を収納搬送ベルト54におけるベルトの上側部分に近接若しくは当接させ、硬貨CNの搬送を抑止すると共に、収納庫33内からの硬貨CNの流出や不正行為等による硬貨CNの取り出しを防止する。
出金センサ57は、収納搬送部51の前端から前方へ繰り出される硬貨CN、すなわち収納庫33から排出される硬貨CNを1枚ずつ検知し、得られた検知結果を硬貨制御部30へ通知する。これにより硬貨制御部30は、収納庫33から排出された硬貨CNの枚数を計数し、当該枚数に応じて各部を制御することができる。説明の都合上、以下では、収納庫33における収納搬送部51の前端部分であって前方へ硬貨CNを排出する部分を排出端58とも呼ぶ。
このように収納庫33は、硬貨制御部30の制御に基づき、収納搬送部51やリバースローラ55等を動作させることにより、収納している硬貨CNを排出端58から前方へ、すなわち硬貨出金トレイ32へ排出する(すなわち出金する)ことができる。
また硬貨制御部30は、認識部40による認識結果や各出金センサ57による検知結果等を集計することにより、各収納庫33における硬貨CNの収納枚数をそれぞれ把握し、逐次更新している。さらに各収納庫33は、図示しないセンサにより、最大収納量の硬貨CNを収納していることを検知し硬貨制御部30に通知し得るようになっている。
図3及び図5に示したように、下段部5Lにおける各収納庫33の前側には、硬貨出金トレイ32が配置されている。硬貨出金トレイ32は、図3に示したように、左右方向に関する長さが、後端部分において6個分の収納庫33と同等であり比較的長くなっているものの、前方へ進むに連れて、左端が右寄りに移動し、徐々に短くなっている。
硬貨出金トレイ32は、大きく分けて後側の傾斜案内部32Rと、前側の貯留部32Fとにより構成されている。傾斜案内部32Rは、図3に示したように、上方から見て後辺よりも前辺が短い台形状に形成されている。また傾斜案内部32Rは、図5に示したように、後側の約2/3の範囲を占めるトレイ切替部61と、その前側の固定傾斜部62とにより構成されている。
トレイ切替部61は、板状のトレイブレード63と、該トレイブレード63を駆動するアクチュエータ(図示せず)と、硬貨出金トレイ32を上下方向に貫通するトレイ孔部64とにより構成されている。
トレイブレード63は、左右方向に長く前後方向に短く上下に薄い板状に形成されており、前端近傍に設けられた左右方向に沿った回動軸を中心に、固定傾斜部62に対して回動し得るように構成されている。因みにトレイブレード63は、硬貨出金トレイ32における左端から右端に至るほぼ全ての範囲に渡り、すなわち6個の収納庫33と対応する全幅に渡り、設けられている。
トレイ切替部61は、アクチュエータからトレイブレード63へ駆動力を伝達することにより、該トレイブレード63を回動させることができる。トレイ切替部61は、図5に破線で示したようにトレイブレード63を傾斜させた場合、トレイ孔部64の上方を覆うことにより閉塞し、またトレイブレード63及び固定傾斜部62により一様な傾斜面を形成する。この場合、トレイ切替部61は、収納庫33の排出端58から排出された硬貨CNをトレイブレード63の上面に当接させ、さらに該硬貨CNを傾斜面に沿って滑降させる。以下、これを閉状態と呼ぶ。一方、トレイ切替部61は、図5に実線で示したようにトレイブレード63の後端を前方へ引き起こした場合、トレイ孔部64の上方を開放する。この場合、トレイ切替部61は、収納庫33の排出端58から排出された硬貨CNをトレイ孔部64から下方へ落下させる。以下これを開状態と呼ぶ。
傾斜案内部32Rは、トレイ切替部61を閉状態としている場合、その後端、すなわちトレイブレード63の後端を比較的高い位置、具体的には収納庫33の収納搬送部51における前端部分の排出端58よりも僅かに低い位置に合わせており、この後端から前方へ進むに連れて下降するように傾斜している。このため傾斜案内部32Rは、トレイ切替部61を閉状態としたときに、収納庫33の排出端58から硬貨CNがトレイブレード63上に落下してきた場合、該硬貨CNを傾斜面に沿って、すなわちトレイブレード63及び固定傾斜部62の上面に沿って、前下方へ滑降させ、貯留部32Fに到達させる。
貯留部32Fは、上方から見て概ね半楕円状に形成されており、底部がほぼ平坦な平面状に形成されると共に、左側から前側を経て右側に至る外周部分に底面よりも十分に高い側壁部が形成されている。このため貯留部32Fは、傾斜案内部32Rに沿って滑降してきた硬貨CNを、硬貨入出金装置5の外部から取出可能な状態で貯留することができる。
一方、トレイ孔部64の下方には、横搬送部70が設けられている。横搬送部70は、図4に示したように、横搬送ローラ71及び72並びに横搬送ベルト73により構成されている。横搬送ローラ71は、最も左側の収納庫33Aよりもやや左側に位置している。また横搬送ローラ72は、最も右側の収納庫33Fよりもやや右側に位置している。この横搬送ローラ71及び72は、硬貨制御部30(図1)の制御に基づき、図示しないモータから駆動力が伝達されると、図の時計回り又は反時計回りに回転する。横搬送ベルト73は、可撓性を有する材料により構成された無端ベルトでなり、横搬送ローラ71及び72の周囲を周回するように張架されている。
横搬送ベルト73の後側では、各収納庫33の前側面を形成する部分が左右方向に並ぶことにより一様な平面を形成している。また横搬送ベルト73の前側には、下側に硬貨出金トレイ32のうち固定傾斜部62の後側面を形成する板状の部分が位置しており、その上側に、開放状態にあるトレイブレード63が位置している。さらに横搬送ベルト73の左側、すなわち横搬送ローラ71の左側には、左側面を形成する壁部材(図示せず)が位置しており、横搬送ローラ71よりも左側へ硬貨CNが落下することを防止している。また横搬送ベルト73の右側、すなわち横搬送ローラ72の右側には、受渡ガイド74を挟んでリフト搬送部75が設置されている。以下では、横搬送ベルト73の上側であり、各収納庫33、固定傾斜部62及びトレイブレード63、図示しない壁部材及びリフト搬送部75により囲まれた空間を、横搬送空間70Sと呼ぶ。
排出搬送部としての横搬送部70は、開放状態であるトレイ切替部61のトレイ孔部64から硬貨CNが落下してくると、この硬貨CNを横搬送ベルト73上に載置させ、横搬送空間70S内に収納する。因みに硬貨入出金装置5では、収納庫33毎に排出端58の位置が左右方向に相違するため(図3等)、各収納庫33から横搬送部70に対して硬貨CNが排出される位置が左右方向に相違している。
また横搬送部70は、横搬送ローラ71及び72を図4における時計回り又は反時計回りに回転させることにより、横搬送ベルト73の上側部分を右方向又は左方向へ進行させることができる。これにより横搬送部70は、横搬送空間70S内の硬貨、すなわち横搬送ベルト73上に載置されている硬貨CNを、右方向又は左方向へ搬送できる。以下では、横搬送ベルト73において硬貨CNが載置される上側部分に着目し、この上側部分の走行方向に関して、リフト搬送部75が設けられた右方向を順方向と呼び、その反対側である左方向を逆方向と呼ぶ。また以下では、横搬送ベルト73における右端及び左端を、それぞれ一端及び他端とも呼ぶ。
横搬送部70の右側には、受渡ガイド74を挟んでリフト搬送部75が設けられている。予備収納搬送部としてのリフト搬送部75は、複数のローラやベルト等の組み合わせにより構成されている(詳しくは後述する)。このリフト搬送部75は、各ローラを適宜回転させベルトを適宜走行させることにより、横搬送部70により搬送されてきた硬貨CNを上方へ持ち上げるように搬送し、トレイ切替部61の上側に配置されている予備収納ガイド78(図2)に引き渡す。
予備収納ガイド78は、その上面が傾斜面となっており、左前側が低くなると共に、その前側に配置された予備収納庫80に接続されている。このため予備収納ガイド78は、リフト搬送部75から引き渡された硬貨を傾斜面に沿って進行させ、予備収納庫80内に到達させる。
予備収納庫80は、上段部5U(図2)における硬貨投入部31の右側であって、下段部5L(図3)における硬貨出金トレイ32のトレイ切替部61よりも上側に位置している。この予備収納庫80(図4)は、全体として予備収納庫筐体81により周囲を囲まれた直方体状に形成されており、その内部に予備収納空間80Sを形成しており、その底部分に予備収納搬送部82が設けられている。
予備収納搬送部82は、収納庫33の収納搬送部51(図4等)と同様の構成となっている。具体的に予備収納搬送部82は、左右それぞれに配置された予備収納搬送ローラ83及び84の周囲を周回するように予備収納搬送ベルト85が張架されている。また予備収納搬送部82では、左側の予備収納搬送ローラ83が右側の予備収納搬送ローラ84よりも高い位置に配置されている。
また予備収納庫筐体81の後側面における中央付近であって、予備収納ガイド78の左端近傍となる箇所には、前後方向に貫通する予備収納庫受入孔81H1が穿設されている。この予備収納庫受入孔81H1の後側には、前後方向に薄い板状の予備収納庫シャッタ86が設けられている。この予備収納庫シャッタ86は、予備収納庫筐体81により上下方向に移動し得るように支持されると共に、硬貨制御部30(図1)の制御に基づき、図示しないアクチュエータから上方向又は下方向へ向かう駆動力が伝達される。
このため予備収納庫シャッタ86は、アクチュエータから駆動力が伝達され上方向へ移動すると、予備収納庫受入孔81H1を開放し、予備収納ガイド78側から予備収納空間80S内へ硬貨CNを進行させる。その一方で予備収納庫シャッタ86は、アクチュエータから駆動力が伝達され下方向へ移動すると、予備収納庫受入孔81H1を閉塞し、予備収納ガイド78側と予備収納空間80S内との間における硬貨CNの移動を規制する。
さらに予備収納庫筐体81の左側面であって、硬貨投入部31と隣接する箇所には、左右方向に貫通する予備収納庫繰出孔81H2が穿設されている。この予備収納庫繰出孔81H2の近傍には、仕切板87が設けられている。仕切板87は、全体として薄板状に構成されており、前後方向に沿った回動軸87Xを中心として回動可能となっている。また仕切板87は、硬貨制御部30(図1)の制御に基づき、図示しないアクチュエータから駆動力が伝達されると、図4における時計回り又は反時計回りに回動する
この仕切板87は、端部を下側に位置させて予備収納庫繰出孔81H2を閉塞した閉塞状態において、予備収納庫80内の予備収納空間80Sを硬貨投入部31内の投入空間31Sと仕切り、該予備収納空間80S及び該投入空間31Sの間における硬貨CNの移動を規制する。その一方で仕切板87は、端部を左側に位置させて予備収納庫繰出孔81H2を開放した開放状態において、予備収納庫80内の予備収納空間80Sを硬貨投入部31内の投入空間31Sと連通させ、該予備収納空間80S及び該投入空間31Sの間における硬貨CNの移動を許容する。
かかる構成により予備収納庫80は、予備収納庫シャッタ86を開放状態とすることにより、リフト搬送部75により持ち上げられ予備収納ガイド78により案内されてきた硬貨CNを、予備収納空間80S内に、すなわち予備収納搬送ベルト85上に載置して収納する。またこの場合、硬貨投入部31は、仕切板87を閉塞状態とすることにより、投入空間31Sに投入された硬貨CNを予備収納庫80側へ進行させることなく、投入受渡部35(図2)に引き渡すことができる。
また予備収納庫80は、仕切板87を開放状態とすると共に、予備収納搬送部82の予備収納搬送ベルト85を走行させ上側部分を左方向へ進行させることにより、予備収納空間80S内の硬貨CNを左方向へ搬送し、予備収納庫繰出孔81H2を介して硬貨投入部31へ引き渡す。このとき硬貨投入部31は、硬貨が入金された場合と同様に動作することにより、この硬貨CNを投入受渡部35(図2)により投入搬送部36へ引き渡すことができる。
このように予備収納庫80は、トレイ切替部61が開状態(図5)となりトレイ孔部64から落下し横搬送部70及びリフト搬送部75により搬送された硬貨CNを予備収納空間80S内に収納し、また該硬貨を硬貨投入部31に引き渡すようになっている。以下では、横搬送部70及びリフト搬送部75をまとめて還流搬送部77とも呼ぶ。
[2−3.リフト搬送部の構成]
次に、リフト搬送部75の構成について、図6に示す模式的な正面図を参照しながら説明する。リフト搬送部75は、複数の駆動ローラ91、複数の屈曲ローラ92、リフトベルト93、2枚の側面ガイド94、保持フレーム95、付勢部材96、可動ガイド97、詰まりセンサ98及びリフト排出センサ99を有している。
3個の駆動ローラ91(91A、91B及び91C)は、何れも中心軸を前後方向に沿わせた円柱状に構成されており、何れも図示しない軸受により回転可能に支持されている。また一部の駆動ローラ91は、硬貨制御部30(図1)の制御に基づき、図示しないモータから駆動力が伝達されることにより、図6の時計回り又は反時計回りに回転する。因みに駆動ローラ91は、横搬送部70の横搬送ローラ71等とは異なるモータから駆動力が供給されている。
3組の屈曲ローラ92(92A、92B及び92C)は、何れも中心軸を前後方向に沿わせた円柱状に構成されており、図示しない軸受により回転可能に支持されている。ただし各屈曲ローラ92は、駆動ローラ91と比較して前後方向の長さが極めて短い2個のローラを1組としている。また1組の屈曲ローラ92を構成する各ローラは、前後方向に離隔され、その間隔が、取り扱う硬貨CNのうち最も直径が大きいもの(例えば500円硬貨)の直径よりも十分に長くなっている。
リフトベルト93は、可撓性を有する樹脂材料により構成された無端ベルトであり、各駆動ローラ91の周囲を周回すると共に各屈曲ローラ92の下側乃至後側の一部分に当接するように張架されている。
ここでリフトベルト93の上側面乃至左側面に着目すると、駆動ローラ91Aの上端近傍から右方向且つ僅かに上方向へ向けて進行し、屈曲ローラ92Aの右下部分により屈曲されて水平方向に対する傾斜角度が大幅に増加されている。続いてリフトベルト93は、屈曲ローラ92Bの右端近傍により屈曲されてほぼ鉛直に上方向へ進行し、さらに屈曲ローラ92Cの右端近傍により屈曲されて上斜め左方向へ進行する。
さらにリフトベルト93は、その外周面に、外方に向けて複数の突起93Pが立設されている。各突起93Pは、駆動ローラ91の周囲を周回する方向に関して所定の周回間隔毎に配置されている。突起93Pにおけるリフトベルト93の表面からの突出量は、取り扱う硬貨のうち最も薄いもの(例えば1円硬貨)の厚さよりも小さく(短く)なっている。
側面ガイド94は、リフトベルト93の左側及び右側に隣接するように配置されている。これによりリフト搬送部75では、側面ガイド94同士の間で、リフトベルト93によって搬送される硬貨CNの搬送路幅が規定されている。
保持フレーム95は、2枚の側面ガイド94の間であって、且つリフトベルト93からやや離れた箇所に配置されている。また保持フレーム95は、上端近傍に設けられた回動軸95Xを中心として回動し得るようになっている。
付勢部材96は、リフトベルト93のうちほぼ鉛直に進行する部分、すなわち屈曲ローラ92B及び92Cの間に相当する部分と対向する範囲に渡り、概ね上下方向に沿って配置されている。また付勢部材96は、全体として右側へ突出するような円弧状に湾曲されており、中央部分がリフトベルト93の近傍に位置する一方、上端近傍及び下端近傍がリフトベルト93からやや離れた箇所に位置している。
この付勢部材96は、所定の基材の表面に対し、樹脂等の可撓性を有する材料でなる微細な繊維が多数植え付けられた、モヘアと呼ばれる部材であり、当該基材を左側に向けると共に各繊維の先端を右側に向けた状態で保持フレーム95に取り付けられている。また付勢部材96における右側の表面、すなわち繊維の先端部分は、リフトベルト93の表面との間に比較的狭い隙間、具体的には取り扱う硬貨のうち厚さが最も小さい硬貨CN(例えば1円硬貨)の厚さよりも短い隙間を形成している。
可動ガイド97は、2枚の側面ガイド94の間であって、且つ保持フレーム95の下側であり、さらに駆動ローラ91Aの右上側に位置している。この可動ガイド97は、全体として比較的小さい直方体状に構成されており、左側面が下降するに連れて右側へ進むような傾斜面となっている。
また可動ガイド97は、左上近傍において、前後方向に沿った回動軸97Xを介して保持フレーム95に取り付けられている。このため可動ガイド97は、この回動軸97Xを回動中心として、図6における時計回り又は反時計回りに回動することができる。さらに可動ガイド97は、スプリング97Sにより下方向へ向かう力が加えられ、図6における時計回りに回動するように付勢されている。ただし可動ガイド97は、保持フレーム95の一部でなるストッパ95Tにより、リフトベルト93からやや離れた箇所において、図6における時計回りへの回動可能な範囲が制限されている。
詰まりセンサ98は、保持フレーム95に対し、可動ガイド97の上側となる位置に取り付けられている。この詰まりセンサ98は、所定の検知光を発光する発光素子とこの検知光を受光する受光素子とを前後方向に離隔させており、この検知光が可動ガイド97により遮られるか否かを検知して硬貨制御部30(図1)に通知する。すなわち詰まりセンサ98は、検知光が遮光された場合に「オン」となり、可動ガイド97がストッパ95Tに当接した状態(以下これを定常状態と呼ぶ)から反時計回りに所定角度以上回動されており、硬貨CNが詰まった状態(以下これを詰まり状態と呼ぶ)であることを検知できる。
リフト排出センサ99は、駆動ローラ91Cの前側に配置されており、詰まりセンサ98と同様に、所定の検知光を発光する発光素子とこの検知光を受光する受光素子との間を硬貨CNが通過したことにより遮られるか否かを検知して、硬貨制御部30に通知する。硬貨制御部30は、このリフト排出センサ99から得られる検知結果を基に、リフト搬送部75から予備収納ガイド78に硬貨CNを引き渡したことを認識し、またその枚数を計数することができる。
かかる構成によりリフト搬送部75は、硬貨制御部30の制御に基づき、各駆動ローラ91を図6における時計回りに回転させると、各駆動ローラ91の周囲を時計回りに周回するようにしてリフトベルト93を走行させる。またリフト搬送部75は、駆動ローラ91Aの近傍において横搬送部70から硬貨CNが引き渡されると、この硬貨CNをリフトベルト93上に載置させ、右方向ないし上方向へ搬送する。このときリフトベルト93は、仮に複数の硬貨CNが重なった状態であっても、突起93Pに最下段の硬貨のみを引っ掛けると共にその上側の硬貨CNを可動ガイド97に当接させて堰き止め、該硬貨CNを1枚ずつに分離しながら搬送する。また側面ガイド94は、前後方向に関して当該硬貨CNがリフトベルト93上からはみ出すことを規制する。
その後、リフト搬送部75は、リフトベルト93がほぼ鉛直である部分に硬貨CNが差し掛かると、付勢部材96により当該硬貨が突起93Pから左側へ落下することを抑止しながら、当該硬貨CNを上方向へ搬送する。やがてリフト搬送部75は、硬貨が駆動ローラ91Cの近傍に到達すると、当該硬貨CNを左側へ倒して予備収納ガイド78(図2)上を滑るように下降させる。
以下では、リフトベルト93の走行方向に関し、各駆動ローラ91を図6における時計回りに回転させ、各駆動ローラ91の周囲を時計回りに周回させる方向を順方向と呼び、その反対方向を逆方向と呼ぶ。
[3.硬貨入出金装置の処理]
次に、硬貨入出金装置5における入金処理、出金処理及び自己精査処理について、それぞれ説明する。
[3−1.入金処理]
入金処理は、硬貨投入部31に投入された硬貨を認識し、正当な硬貨を金種ごとに区別して各収納庫33に収納すると共に、偽造された硬貨や硬貨以外のものを硬貨出金トレイ32から排出する処理である。硬貨入出金装置5では、上述した精算手続において、顧客により商品の購入代金として硬貨を預かった場合に、この入金処理が行われる。
硬貨制御部30は、例えば硬貨投入部31のセンサにより投入空間31Sに硬貨CNが投入されたことを検知すると、この入金処理を開始する。このとき硬貨制御部30は、事前準備として、リジェクト切替部41を閉状態に切り替え、各選別切替部46を閉状態に切り替え、さらにトレイ切替部61を閉状態に切り替えさせる。
硬貨投入部31は、投入された硬貨CNを1枚ずつ投入受渡部35(図2)に引き渡し、該投入受渡部35から投入搬送部36に順次引き渡す。投入搬送部36は、投入搬送路Wに沿って硬貨CNを搬送し、認識部40により該硬貨CNを認識させ、認識結果(すなわち真偽及び金種)を硬貨制御部30へ通知させる。
これに応じて硬貨制御部30は、硬貨CNが正当でないと認識された場合、当該硬貨CNの搬送先を硬貨出金トレイ32に決定し、また硬貨CNが正当であると認識された場合、当該硬貨CNの搬送先を、その金種に応じた収納庫33に決定する。
硬貨制御部30は、硬貨CNの搬送先が収納庫33である場合、リジェクト切替部41を閉状態のままとし、当該硬貨を投入搬送部36により投入搬送路Wに沿って選別部45まで搬送させる。続いて硬貨制御部30は、選別部45において硬貨CNの金種に応じた選別切替部46を開状態に切り替え、収納庫33に落下させて収納させる。
また硬貨制御部30は、硬貨の搬送先が硬貨出金トレイ32である場合、リジェクト切替部41を開状態に切り替え、当該硬貨CNをリジェクト孔部43から落下させる。リジェクト孔部43から落下してきた硬貨CNは、その自重によりリジェクト搬送部44内を滑降し、出金トレイ32の貯留部32Fに到達して排出される。
[3−2.出金処理]
出金処理は、レジ制御部11(図1)から指示された金種及び枚数の硬貨CNを収納庫33から硬貨出金トレイ32にそれぞれ排出する処理である。硬貨入出金装置5では、上述した精算手続において、顧客に返却すべき釣銭に硬貨CNが含まれる場合に、この出金処理が行われる。
硬貨制御部30は、レジ制御部11から出金すべき硬貨CNの金種及び枚数の指示を受けると、この出金処理を開始する。このとき硬貨制御部30は、事前準備として、入金処理の場合と同様に、リジェクト切替部41を閉状態に切り替え、各選別切替部46を閉状態に切り替え、さらにトレイ切替部61を閉状態に切り替えさせる。
各収納庫33は、硬貨制御部30の制御に基づき、レジ制御部11からそれぞれに指示された枚数の硬貨CNを排出端58から排出して硬貨出金トレイ32のトレイ切替部61上に落下させる。これにより硬貨CNは、トレイ切替部61のトレイブレード63及び固定傾斜部62に沿って滑降し、貯留部32Fに到達して排出される。
[3−3.自己精査処理]
自己精査処理は、例えば小売店舗の営業が終了した後等のタイミングで、収納庫33に収納している硬貨CNの枚数を計数すると共に、該硬貨CNが全て正当であり該収納庫33に対応付けられた金種であることも確認する処理である。この自己精査処理は、自動精査処理とも呼ばれる。
因みに硬貨制御部30は、レジ係員からの指示に従い、1金種の硬貨CNのみについて自己精査処理を行うことも、2金種以上の硬貨CNについて自己精査処理を順次行うこともできる。ここでは、1金種の硬貨の自己精査処理を行う場合について説明する。
レジ制御部11(図1)は、例えば表示操作部12に所定のメニュー画面を表示した状態において、レジ係員の操作により精査処理が選択されると、所定の金種選択画面を表示することにより、該レジ係員に対して金種の指定を促す。続いてレジ制御部11は、レジ係員の操作により金種が指定されると、硬貨入出金装置5の硬貨制御部30に対し自己精査処理の開始を指示する。これに応じて硬貨制御部30は、図7に示す自己精査処理手順RT1を開始してステップSP1に移る。
ステップSP1において硬貨制御部30は、精査準備処理を行い、次のステップSP2に移る。具体的に硬貨制御部30は、まずレジ制御部11(図1)を介して表示操作部12に所定のメッセージを表示する等して、レジ係員に硬貨投入部31のシャッタ31Tを閉塞させる。また硬貨制御部30は、硬貨投入部31のシャッタ閉塞センサにより該シャッタが閉塞されたことを検知すると、ロック機構により該シャッタを閉塞状態にロックすると共に、該硬貨投入部31及び予備収納庫80の境界に設けられた仕切板87を開放させる。さらに硬貨制御部30は、トレイ切替部61を開状態(図5)に切り替える。
ステップSP2において硬貨制御部30は、指示された金種の硬貨が収納されている収納庫33に対し、収納搬送ベルト54(図5)を走行させ、収納されている硬貨CNの排出を開始させる。このとき排出された硬貨CNは、排出端58(図5)から下方に落下し、横搬送部70に到達する。また硬貨制御部30は、排出される硬貨CNを出金センサ57により1枚ずつ検知させ、得られた検知信号に基づいた当該硬貨CNの枚数(以下これを収納庫検知枚数と呼ぶ)の計数を開始して、次のステップSP3に移る。
ステップSP3において硬貨制御部30は、硬貨CNの搬送に必要な各部分の動作を開始させ、次のステップSP4に移る。具体的に硬貨制御部30は、横搬送部70において横搬送ベルト73を右方向へ走行させ、リフト搬送部75においてリフトベルト93を順方向へ走行させ、予備収納庫80の予備収納搬送ベルト85を左方向へ走行させると共に、硬貨投入部31の円盤31Cを回転させる。因みに硬貨投入部31は、このとき円盤31Cを繰出方向と反対の方向へ回転させることにより、硬貨CNを投入受渡部35へ引き渡すこと無く、該硬貨CNを投入空間31S内に留めたまま撹拌することができる。
これにより硬貨入出金装置5は、図4と対応する図8に示すように、収納庫33から排出された硬貨CNを横搬送部70及びリフト搬送部75により搬送し、硬貨投入部31及び予備収納庫80に順次収納させていく。このとき硬貨入出金装置5では、横搬送部70において、収納庫33から硬貨CNが排出される箇所とリフト搬送部75とを結ぶ範囲内でのみ、当該硬貨CNを搬送することになる。なお図8では、作図の都合上、予備収納庫80の予備収納庫受入孔81H1及び予備収納庫シャッタ86を予備収納庫筐体の左側に位置させている。
ステップSP4において硬貨制御部30は、出金センサ57により検知した収納庫検知枚数が所定の上段収納枚数以上であるか否かを判定する。この上段収納枚数は、硬貨投入部31及び予備収納庫80に収納可能な硬貨CNの最大枚数を基に決定された値となっている。ここで否定結果が得られると、このことは硬貨投入部31及び予備収納庫80にさらなる硬貨CNを収納可能であることを表している。このとき硬貨制御部30は、このステップSP4を繰り返すことにより、収納庫検知枚数が収納基準枚数に到達するのを待ち受ける。なお硬貨制御部30は、仮に収納庫検知枚数が上段収納枚数に到達する前に収納庫33内の硬貨CNを全て排出した場合、そのままステップSP7に移り、硬貨投入部31及び予備収納庫80に収納した硬貨CNを順次繰り出し、搬送及び認識等の処理を行い、認識結果に応じた搬送先へ搬送するようにしても良い。
一方、ステップSP4において肯定結果が得られると、このことは図9に示すように、硬貨投入部31及び予備収納庫80に収納可能な最大枚数の硬貨CNが既に収納されており、該硬貨投入部31及び該予備収納庫80にこれ以上の硬貨CNを搬送すべきで無いことを表している。このとき硬貨制御部30は、次のステップSP5に移る。
ステップSP5において硬貨制御部30は、硬貨投入部31における円盤31Cの回転を停止させると共に、予備収納庫80における予備収納搬送ベルト85の走行及びリフト搬送部75におけるリフトベルト93の走行を停止させ、次のステップSP6に移る。
ステップSP6において硬貨制御部30は、後述する横搬送部収納処理をサブルーチンとして実行することにより、収納庫33内に残っている硬貨CNを横搬送部70の横搬送空間70S(図4)内に全て収納させ、次のステップSP7に移る。このとき硬貨制御部30は、収納庫検知枚数の計数を完了してその値を確定させる。これにより硬貨入出金装置5では、図10に示すように、硬貨投入部31、予備収納庫80及び横搬送部70に硬貨CNを分散して収納した状態となる。因みに硬貨入出金装置5では、収納庫33に最も多くの枚数の硬貨CNを収納し得る金種において、当該収納庫33に収納可能な硬貨CNの最大枚数よりも、硬貨投入部31、予備収納庫80及び横搬送部70にそれぞれ収納可能な硬貨CNの最大枚数の合計値の方が、多くなっている。
ステップSP7において硬貨制御部30は、入金処理と同様の処理、具体的には硬貨投入部31から投入受渡部35を介して投入搬送部36へ硬貨CNを引き渡し、投入搬送部36(図2)による硬貨CNの搬送及び認識部40による硬貨CNの認識処理等を開始して、次のステップSP8に移る。このとき硬貨制御部30は、認識部40による認識結果を基に、各硬貨CNの搬送先を決定する。以下では、認識部40により計数した当該金種の硬貨CNの枚数を、認識枚数と呼ぶ。また硬貨制御部30は、予備収納庫80からの硬貨CNの繰出も開始する。
ステップSP8において硬貨制御部30は、認識枚数が所定の上段排出枚数以上であるか否かを判定する。この上段排出枚数は、硬貨投入部31及び予備収納庫80に収納可能な硬貨CNの最大枚数(すなわち上段収納枚数)よりもやや少ない値となっている。ここで否定結果が得られると、このことは硬貨投入部31及び予備収納庫80に未だ十分な枚数の硬貨CNが残っており、リフト搬送部75により新たな硬貨CNが搬送されてきたとしても受け入れが難しいことを表している。このとき硬貨制御部30は、このステップSP8を繰り返すことにより、硬貨投入部31及び予備収納庫80に収納されている硬貨CNの枚数が減少するのを待機する。
一方、ステップSP8において肯定結果が得られると、このことは硬貨投入部31及び予備収納庫80に収納されている硬貨CNの枚数が十分に少なくなっており、リフト搬送部75により新たな硬貨CNが搬送された場合、この硬貨CNを予備収納庫80に受け入れ得ることを表している。このとき硬貨制御部30は、次のステップSP9に移る。
ステップSP9において硬貨制御部30は、後述する横搬送部繰出処理をサブルーチンとして実行することにより、図11に示すように、横搬送部70に収納していた硬貨CNを順次繰り出してリフト搬送部75により予備収納庫80へ搬送する。硬貨制御部30は、この横搬送部繰出処理により、横搬送空間70Sに収納していた全ての硬貨CNを繰り出し終えると、次のステップSP10に移る。
まもなく予備収納庫80は、横搬送部70からリフト搬送部75を介して受け取った硬貨CNを、全て繰り出して硬貨投入部31に引き渡し終える。また、まもなく硬貨投入部31は、予備収納庫80から受け取った硬貨CNを、全て繰り出して投入搬送部36に引き渡し終える。これに伴い認識部40は、投入搬送部36により搬送されてきた全ての硬貨CNに対する認識処理を終了する。
ステップSP10において硬貨制御部30は、各部の動作を停止させ、次のステップSP11に移る。具体的に硬貨制御部30は、横搬送部70の横搬送ベルト73、リフト搬送部75のリフトベルト93、予備収納庫80の予備収納搬送ベルト85をそれぞれ停止させると共に、硬貨投入部31における円盤31Cの回転を停止させる。また硬貨制御部30は、認識枚数の計数を完了してその値を確定させる。
ステップSP11において硬貨制御部30は、レジ制御部11(図1)を介して表示操作部12に精査結果を表す結果通知画面を表示し、次のステップSP12に移って自己精査処理手順RT1を終了する。この結果通知画面には、例えば金種、開始時刻、終了時刻、収納庫検知枚数及び認識枚数等がそれぞれ表示される。また結果通知画面には、仮に当該金種以外の金種の硬貨CNが認識されていた場合、その金種や枚数等も表示される。
このように自己精査処理では、収納庫33から排出された硬貨CNが、横搬送部70及びリフト搬送部75でなる還流搬送部77により搬送されながら、硬貨投入部31、予備収納庫80又は横搬送部70の何れかに一時的に収納された後、再び搬送されて認識部40において認識された後、再び収納庫33に戻される。このため還流搬送部77は、自己精査処理全体を通じて、収納庫33から排出された硬貨CNを搬送し、硬貨投入部31及び予備収納庫80等を経由させ、さらに認識部40を経由させた後、再び当該収納庫33に戻させることになる。
[3−4.横搬送部収納処理]
次に、自己精査処理手順RT1のステップSP6においてサブルーチンとして実行される横搬送部収納処理手順RT2について、図12のフローチャートを参照しながら説明する。ここでは、図4と対応する図13に示すように、右から2番目の収納庫33から硬貨CNを排出する場合を例に説明する。またこのとき硬貨入出金装置5では、収納庫33の排出端58から硬貨CNが順次排出されており、横搬送部70の横搬送ベルト73が順方向に走行した状態となっている。
硬貨制御部30は、横搬送部収納処理手順RT2を開始するとステップSP21に移り、横搬送ベルト73の右方向への走行を停止させ、次のステップSP22に移る。これにより硬貨入出金装置5では、図13に示したように、収納庫33の排出端58から排出された硬貨CNが、横搬送ベルト73における当該収納庫33の前側に位置する箇所(以下これを集積箇所APと呼ぶ)に順次落下し、集積されていくことになる。
ステップSP22において硬貨制御部30は、硬貨CNの枚数を計数するための変数である重畳枚数を初期化し、次のステップSP23に移る。この重畳枚数は、収納庫33の出金センサ57(図5)により硬貨CNの排出が検知される度に、収納庫検知枚数と同様に値「1」が加算されるようになっている。
ステップSP23において硬貨制御部30は、重畳枚数が所定の重畳上限数以上であるか否かを判定する。この重畳上限数は、横搬送ベルト73上において1箇所に重畳可能な硬貨CNの枚数の上限値であり、収納庫33の排出端58から該横搬送ベルト73の上面までの距離や硬貨CNの厚さ等を基に予め設定されている。
ここで否定結果が得られると、このことは横搬送ベルト73の集積箇所APに集積された硬貨CNの枚数が比較的少なく、該集積箇所に対してさらに硬貨CNを集積し得ることを表している。このとき硬貨制御部30は、現在の集積箇所APに重畳上限数の硬貨CNを集積させるべく、次のステップSP24に移る。
ステップSP24において硬貨制御部30は、収納庫33から全ての硬貨CNを排出し終えたか否かを判定する。具体的に硬貨制御部30は、出金センサ57(図5)により最後に硬貨CNの排出を検知してから所定の排出完了基準時間が経過したか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは収納庫33に硬貨CNがまだ残っている可能性が高いことを表している。このとき硬貨制御部30は、再びステップSP23に戻って一連の処理を繰り返す。
一方、ステップSP23において肯定結果が得られると、このことは現在の集積箇所に十分な枚数の硬貨CNを集積しており、これ以上の硬貨CNを現在の集積箇所APに集積させると、硬貨CNが横搬送空間70Sの外部へあふれる恐れや、集積された硬貨CNが崩れる恐れ等があることを表している。このとき硬貨制御部30は、次のステップSP25に移る。
ステップSP25において硬貨制御部30は、収納庫33における収納搬送ベルト54の走行を停止させ、または出金ゲート56(図5)の出金ゲートピン56Pを下降させることにより、排出端58からの硬貨CNの排出を一時的に停止させ、次のステップSP26に移る。
ステップSP26において硬貨制御部30は、横搬送ベルト73を逆方向である左方向へ、すなわちリフト搬送部75と反対側へ、所定の重畳間隔分の距離だけ走行させ、次のステップSP27に移る。この重畳間隔は、例えば硬貨CNの直径の約1.5倍に相当する距離に設定されている。これにより集積箇所APに集積されていた硬貨CNは、集積された状態のまま、左側へ重畳間隔だけ移動することになる。
ステップSP27において硬貨制御部30は、収納庫33における収納搬送ベルト54の走行を開始させ、または出金ゲート56の出金ゲートピン56Pを上昇させることにより、排出端58からの硬貨CNの排出を再開させると、再びステップSP22に戻って一連の処理を繰り返す。
一方、ステップSP24において肯定結果が得られると、このことは収納庫33から硬貨投入部31等へ硬貨CNを排出する処理を完了した後、該硬貨投入部31等から硬貨CNを繰り出し、認識部40による認識処理を経て収納庫33へ搬送して再び収納させる必要があることを表している。このとき硬貨制御部30は次のステップSP28に移る。
ステップSP28において硬貨制御部30は、収納庫33における収納搬送ベルト54の走行を停止させ、次のステップSP29に移る。ステップSP29において硬貨制御部30は、この時点における収納庫検知枚数を記憶した後、次のステップSP30に移って横搬送部収納処理手順RT2を終了する。
この結果、硬貨入出金装置5では、図14に示すように、横搬送部70内において横搬送ベルト73上における左右方向に異なる複数の箇所にそれぞれ硬貨CNを重畳させた状態で、横搬送空間70S内に複数の硬貨CNを収納することができる。
[3−5.横搬送部繰出処理]
次に、自己精査処理手順RT1のステップSP9においてサブルーチンとして実行される横搬送部繰出処理手順RT3について、図15のフローチャートを参照しながら説明する。
硬貨制御部30は、横搬送部繰出処理手順RT3を開始するとステップSP41に移り、横搬送部70における横搬送ベルト73の順方向への走行及びリフト搬送部75におけるリフトベルト93の順方向への走行を開始させ、次のステップSP42に移る。
これにより硬貨入出金装置5では、図4と対応する図16に示すように、横搬送ベルト73上の複数箇所に集積された硬貨CNを、集積された状態のままリフト搬送部75側へ搬送する。これに応じてリフト搬送部75は、横搬送ベルト73上に集積された硬貨CNを可動ガイド97に当接させて右方向への進行を抑制し、且つ最下段の硬貨CNにリフトベルト93の突起93Pを引っ掛けて1枚ずつに分離しながら、右方向乃至上方向へ搬送して予備収納ガイド78に順次引き渡していく。すなわち硬貨入出金装置5は、横搬送部70に収納していた硬貨CNを順次搬送し、予備収納ガイド78を介して予備収納庫80へ引き渡すことができる。
ステップSP42において硬貨制御部30は、横搬送部70に収納されていた全ての硬貨CNをリフト搬送部75へ繰り出し終えたか否かを判定する。具体的に硬貨制御部30は、リフト排出センサ99(図6)から得られる検知結果を基に、リフト搬送部75から予備収納ガイド78へ硬貨CNが最後に引き渡されてから所定時間以上が経過したか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは横搬送部70に硬貨CNが残っている可能性が高く、この硬貨CNを繰り出すための処理を継続すべきであることを表している。このとき硬貨制御部30は、次のステップSP43に移る。
ステップSP43において硬貨制御部30は、詰まりセンサ98が「オン」であるか否か、すなわちリフト搬送部75において硬貨CNが可動ガイド97及びリフトベルト93の間に詰まっている「詰まり状態」であるか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことはリフト搬送部75において詰まりが発生していない正常状態であり、該リフト搬送部75による硬貨CNの搬送を継続し得ることを表している。このとき硬貨制御部30は、再びステップSP42に戻って一連の処理を繰り返す。
一方、ステップSP43において肯定結果が得られると、このことは図17に示すように硬貨CNにより可動ガイド97が押し上げられるように回動されており、該硬貨CNをリフトベルト93により正常に搬送することが難しい状態、すなわち詰まり状態であることを表している。このとき硬貨制御部30は、この詰まり状態を解消するべく、次のステップSP44に移る。
ステップSP44において硬貨制御部30は、横搬送ベルト73の右方向(すなわち順方向)への走行を停止させ、次のステップSP45に移る。これにより硬貨入出金装置5では、横搬送ベルト73が停止する一方でリフトベルト93が順方向に走行する状態となるため、該リフトベルト93の突起93Pに硬貨CNが1枚ずつ引っ掛けられて搬送されていくことにより、やがて詰まりが解消することが期待できる。
ステップSP45において硬貨制御部30は、詰まりセンサ98が「オフ」であるか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは詰まり状態が継続しているため、リフトベルト93の走行により硬貨CNを1枚ずつ搬送させ、詰まりの解消を図るべきであることを表している。このとき硬貨制御部30は、次のステップSP46に移る。
ステップSP46において硬貨制御部30は、ステップSP43において横搬送ベルト73を停止させてから経過した時間が所定時間以上であるか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは横搬送ベルト73を停止させてからの経過時間が未だ不十分であり、リフトベルト93の走行による詰まりの解消を待機すべきであることを表している。このとき硬貨制御部30は、再度ステップSP45に戻って一連の処理を繰り返す。
一方、ステップSP46において肯定結果が得られると、このことは横搬送ベルト73を停止させてから所定時間が経過する間、リフトベルト93の走行により詰まりの解消を図ったものの解消し得なかったことを表している。このとき硬貨制御部30は、次のステップSP47に移る。ステップSP47において硬貨制御部30は、横搬送ベルト73を所定距離だけ左方向(逆方向)へ走行させ、次のステップSP48に移る。
ステップSP48において硬貨制御部30は、詰まりセンサ98が「オフ」であるか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは詰まりが解消していないことを表している。このとき硬貨制御部30は、ステップSP47に戻って一連の処理を繰り返し、詰まりの解消を図る。
一方、ステップSP48において肯定結果が得られた場合、及びステップSP45において肯定結果が得られた場合、このことは詰まりが解消し、可動ガイド97が下方へ回動したことを表している。このとき硬貨制御部30は、次のステップSP49に移る。
ステップSP49において硬貨制御部30は、詰まりセンサ98が「オフ」であることを検知してから経過した時間が所定時間以上であるか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは可動ガイド97の近傍に多くの硬貨CNが残っている可能性が高いことを表している。このとき硬貨制御部30は、ステップSP49を繰り返すことにより、所定時間が経過するのを待ち受ける。
一方、ステップSP49において肯定結果が得られると、このことは詰まりセンサ98が「オフ」となり可動ガイド97が正常状態に戻ってから十分な時間が経過し、該可動ガイド97の近傍に残っていた硬貨CNの大部分がリフトベルト93又は横搬送ベルト73により搬送された可能性が高いことを表している。このとき硬貨制御部30は、次のステップSP50に移り、横搬送ベルト73の右方向(順方向)への走行を開始させた後、再度ステップSP42に戻って一連の処理を繰り返す。
一方、ステップSP42において肯定結果が得られると、このことは横搬送部70に収納していた全ての硬貨CNを繰り出し終えてしばらく時間が経過しており、予備収納庫80及び硬貨投入部31からも硬貨CNを繰り出し終えており、且つ認識部40による認識処理も完了していることを表している。このとき硬貨制御部30は、次のステップSP51に移る。
ステップSP51において硬貨制御部30は、横搬送部70、リフト搬送部75、予備収納庫80及び硬貨投入部31等の各部の動作を停止させ、次のステップSP52に移る。ステップSP52において硬貨制御部30は、この時点における認識枚数を記憶した後、次のステップSP53に移って横搬送部繰出処理手順RT3を完了する。
[4.効果等]
以上の構成において、本実施の形態によるレジ釣銭機1の硬貨入出金装置5は、自己精査処理を行う場合、収納庫33から排出した硬貨CNを硬貨投入部31及び予備収納庫80に収納させ、さらに横搬送部70の横搬送空間70S内に収納させる(図10)。
このため硬貨入出金装置5では、硬貨投入部31及び予備収納庫80の大きさを必要最小限に抑えながら、収納庫33に収納されている全ての硬貨CNを、当該硬貨入出金装置5内から外部へ取り出させること無く、一時的に該収納庫33から全て排出させることができる。これにより硬貨入出金装置5では、装置構成の大型化を招くこと無く、またユーザに硬貨CNの取出や投入等の作業を行わせること無く、各硬貨CNの計数及び認識を精度良く実行でき、自己精査処理を滞りなく完遂できる。
ところで硬貨入出金装置5では、各収納庫33内に収納されている硬貨CNを上側の硬貨投入部31まで搬送する場合、当該硬貨CNを収納庫33から排出して横搬送部70に引き渡し、該横搬送部70において当該硬貨CNを右方向へ搬送した後、リフト搬送部75及び予備収納庫80を経由して搬送することになる。
一方、硬貨入出金装置5では、金種ごとの収納庫33が左右方向に並ぶように配置されているため(図2及び図3)、全ての収納庫33から硬貨CNを受け取るべく、横搬送部70における左右方向の長さが比較的長くなっており、横搬送ベルト73の上側に形成される横搬送空間70Sも比較的大きくなっている。
そこで硬貨入出金装置5では、自己精査処理において、比較的大きい横搬送空間70Sに多くの硬貨CNを収納することができ、硬貨投入部31及び予備収納庫80のみでは収納しきれない硬貨CNを、十分に収納することができる。
他の観点から見ると、従来の硬貨入出金装置として、自己精査処理において、収納庫に収納されていた硬貨を硬貨投入部及び予備収納庫に搬送して収納させるものがあった。この硬貨入出金装置では、収納庫に収納可能な硬貨の枚数を増加させる場合、例えば予備収納庫の大きさを拡大する必要があり、装置全体の大型化を招く恐れがあった。
これに対して本実施の形態による硬貨入出金装置5では、自己精査処理において、横搬送部70の横搬送空間70Sに硬貨CNを収納させるため、予備収納庫80を拡大すること無く、収納庫33における硬貨CNの収納枚数を増加させることができる。
また硬貨入出金装置5では、横搬送部70に硬貨を収納させる際、横搬送ベルト73を停止させて1箇所の集積箇所APに重畳枚数の硬貨CNを排出して重畳させ、該横搬送ベルト73を左方向へ重畳間隔だけ移動させる、といった処理を繰り返すようにした(図12〜図14)。
これにより硬貨入出金装置5は、横搬送ベルト73上における、収納庫33から硬貨CNが排出される箇所とリフト搬送部75とを結ぶ範囲以外にも、硬貨CNを収納することができる。また硬貨入出金装置5は、集積箇所APに重畳枚数の硬貨CNを重畳させる処理を繰り返すため、横搬送空間70S内に隙間を極力形成しないように硬貨を集積でき、限られた空間内に多くの硬貨CNを効率的に収納できる。
さらに硬貨入出金装置5では、横搬送部70の横搬送ベルト73と、リフト搬送部75のリフトベルト93とを、互いに独立して走行させるようにした。そのうえで硬貨入出金装置5では、リフト搬送部75において硬貨CNの詰まりが発生した場合、リフトベルト93を順方向に走行させたまま、横搬送ベルト73を停止させ、さらには逆方向に走行させるようにした(図15〜図17)。
これにより硬貨入出金装置5は、仮にリフト搬送部75において硬貨CNの詰まりが発生したとしても、自動的にその解消を図ることができ、ユーザや保守作業者等に保守作業を行わせる必要が無い。
以上の構成によれば、レジ釣銭機1の硬貨入出金装置5は、自己精査処理を行う場合、収納庫33から排出した硬貨CNを硬貨投入部31及び予備収納庫80に収納させ、さらに横搬送部70の横搬送空間70S内に収納させる。このため硬貨入出金装置5では、硬貨投入部31及び予備収納庫80の大きさを必要最小限に抑えながら、収納庫33に収納されている全ての硬貨CNを一時的に全て排出させることができ、自己精査処理を滞りなく完遂できる。
[5.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、硬貨入出金装置5に予備収納庫80を設け、自己精査処理において収納庫33から排出した硬貨CNを硬貨投入部31、予備収納庫80及び横搬送部70に収納する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば硬貨入出金装置5から予備収納庫80を省略する一方で硬貨投入部31における硬貨CNの収納枚数を増加させた場合に、自己精査処理において収納庫33から排出した硬貨CNを硬貨投入部31及び横搬送部70に収納しても良い。
また上述した実施の形態においては、横搬送部収納処理(図12〜図14)において集積箇所APに重畳枚数の硬貨CNを排出して集積させ、横搬送ベルト73を重畳距離だけ逆方向である左方向に走行させる、といった処理を繰り返すことにより硬貨CNを収納させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば比較的右側の収納庫33から硬貨CNを排出する場合に、集積箇所APに重畳枚数の硬貨CNを排出して集積させた後、横搬送ベルト73を重畳距離だけ順方向である右方向へ、すなわちリフト搬送部75に向けて走行させても良い。或いは、例えば収納庫33の排出端58(図5)から硬貨CNを順次排出しながら、横搬送ベルト73を左方向及び右方向に適宜走行させることにより、硬貨CNを左右方向に振り分けながら集積させる等、他の種々の手法により横搬送部70に硬貨CNを収納させても良い。
さらに上述した実施の形態においては、横搬送部繰出処理(図15〜図17)において、硬貨CNの詰まりが発生した場合、横搬送部70の横搬送ベルト73を停止させ、しばらく待機しても詰まりが解消しない場合に該横搬送ベルト73を逆方向に走行させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば硬貨CNの詰まりが発生した場合に、直ちに横搬送ベルト73を逆方向に走行させても良く、又はリフトベルト93を逆方向に走行させても良く、さらにはこれらを適宜組み合わせても良い。
さらに上述した実施の形態においては、横搬送部繰出処理(図15〜図17)において、リフト搬送部75から予備収納ガイド78へ硬貨CNが最後に引き渡されたことをリフト排出センサ99により検知してから所定時間以上が経過したか否かを基に、横搬送部70に硬貨CNが残っているか否かを判定する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば横搬送ベルト73の左端近傍に硬貨CNを検知するセンサを設け、該横搬送ベルト73を左方向(すなわち逆方向)へ連続的に走行させ、所定時間以上に渡り硬貨CNを検知しなかった場合に、横搬送部70に硬貨CNが残っていないと判定しても良い。
さらに上述した実施の形態においては、横搬送部70における横搬送ベルト73の上面をほぼ水平とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば横搬送ベルト73の上面のうち、リフト搬送部75から遠い左側を高く、該リフト搬送部75に近い右側を低くするように傾斜させても良い。
さらに上述した実施の形態においては、リフト搬送部75のリフトベルト93に突起93Pを設け、この突起93Pに硬貨CNを引っかけるようにして搬送する場合について述べた(図16及び図17)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばリフトベルト93と対向して走行するベルト(図示せず)を設け、両者の間に硬貨CNを挟んで搬送する等、種々の構成により硬貨CNを搬送しても良い。要は、左右方向及び前後方向の長さをできるだけ抑えながら、硬貨CNを下側の横搬送部70から上側の予備収納庫80へ搬送できる構成であれば良い。
さらに上述した実施の形態においては、ユーザに指定された1つの金種の硬貨CNのみを対象として自己精査処理(図7)を行う場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばユーザにより複数の金種が指定された場合に、各金種の自己精査処理を順次行うようにしても良い。またこの場合、例えば最初の金種の硬貨CNを収納庫33から全て排出した状態で硬貨投入部31、予備収納庫80及び横搬送部70に余裕がある場合や、硬貨投入部31からの硬貨CNの繰出を開始した後に、当該金種の自己精査処理が完了する前の段階で、次の金種の硬貨CNを排出しても良い。これにより、指定された全ての金種について、1つの金種の自己精査処理が完了してから次の金種の自己精査処理を開始する場合と比較して、所要時間を大幅に短縮できる。
さらに上述した実施の形態においては、硬貨入出金装置5が6種類の金種の硬貨CNを取り扱い、6個の収納庫33(33A〜33F)からそれぞれ排出される硬貨CNを横搬送部70が受け取る場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば硬貨入出金装置5が5種類以下又は7種類以上の硬貨CNを取り扱う場合に、金種の数と同数の収納庫33からそれぞれ排出される硬貨CNを横搬送部70が受け取るようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、硬貨制御部30の制御に基づき硬貨入出金装置5において自己精査処理等の種々の処理を実行する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばレジ制御部11の制御に基づき、或いは互いに連携する硬貨制御部30及びレジ制御部11の制御に基づき、硬貨入出金装置5において自己精査処理等の種々の処理を実行しても良い。
さらに上述した実施の形態においては、紙幣入出金装置4と共に釣銭機3を構成する硬貨入出金装置5に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣入出金装置4を有さず硬貨CNのみを取り扱う釣銭機3に組み込まれる硬貨入出金装置5に本発明を適用しても良い。
さらに本発明は、上述した実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した実施の形態においては、投入部としての硬貨投入部31と、認識部としての認識部40と、制御部としての硬貨制御部30と、収納庫としての収納庫33と、還流搬送部としての還流搬送部77とによって硬貨処理装置としての硬貨入出金装置5を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる投入部と、認識部と、制御部と、収納庫と、還流搬送部とによって硬貨処理装置を構成しても良い。