以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1-1.レジ釣銭機の全体構成]
図1に外観を示すように、第1の実施の形態によるレジ釣銭機1は、それぞれ独立した装置である上側のPOSレジ2と下側の釣銭機3とにより構成されている。このレジ釣銭機1は、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストアのような小売店舗の精算所(いわゆるレジ)において、顧客が購入したい商品を精算する際に、レジ係員により操作される。因みにレジ釣銭機1は、セルフレジと呼ばれる仕組みを導入している店舗において、レジ係員ではなく顧客自身に操作されることにより、精算の手続を行う場合もある。
なお以下では、レジ係員等(以下、操作者と呼ぶ)が対峙する側面及びその反対面をそれぞれ前面及び後面とし、さらに当該操作者から見て左右及び上下を定義して説明する。
POSレジ2は、レジ制御部11、表示操作部12、レシート処理部13等を有している。またPOSレジ2には、図示しないバーコードリーダが接続されており、商品に付されたバーコードをこのバーコードリーダで読み取ることにより、当該商品を認識する。
レジ制御部11は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有しており、該CPUにより該ROM等から読み出した所定のプログラムを実行することにより種々の処理を行い、全体を統括制御する。
表示操作部12は、いわゆるタッチパネルであり、認識した商品の名称や金額等を表示し、また操作者による入力操作を受け付けてレジ制御部11へ送信する。これに応じてレジ制御部11は、商品の数量の増減や金額の修正等を行うことができる。レシート処理部13は、認識した商品の名称や金額等をレシートに印字し、これをレシート排出口から排出する。
一方、貨幣取扱装置としての釣銭機3は、大きく分けて、紙幣を取り扱う紙幣入出金装置4と、硬貨を取り扱う硬貨入出金装置5と、前側上部の表示操作部6とにより構成されている。因みに硬貨は、一般的な硬貨と同様、ニッケル、銅、アルミニウム等の金属又はこれらの合金やその組み合わせでなり、底面を2面有する薄い板状に形成されている。
紙幣処理装置としての紙幣入出金装置4は、操作者により紙幣入出金部21から入金された紙幣を取り込んで内部の紙幣収納庫22に収納し、またレジ制御部11から指示された紙幣を紙幣収納庫22から繰り出し、これを紙幣入出金部21から釣銭として出金する。
媒体取扱装置としての硬貨入出金装置5は、内部に硬貨制御部30を有しており、その前側における上段左寄りに硬貨投入部31が設けられ、その下方に硬貨出金トレイ32が設けられている。この硬貨入出金装置5は、硬貨制御部30の制御に基づき、操作者により硬貨投入部31へ投入された硬貨を取り込んで内部の収納庫に収納すると共に、レジ制御部11から指示された金額に応じた金種及び枚数の硬貨を硬貨出金トレイ32から釣銭として出金する(詳しくは後述する)。
表示操作部6は、所定の表示パネル及び所定の操作ボタンの組み合わせにより構成されている。表示操作部6の表示パネルは、紙幣入出金装置4及び硬貨入出金装置5における稼働状況として、例えば硬貨入出金装置5において釣銭用の硬貨が不足していることや、所定のセンサにより異常を検出したこと、及びその箇所等を表示する。また表示操作部6の操作ボタンは、操作者等による押下操作を介して、例えば硬貨の搬送等に関する指示を受け付ける。
このレジ釣銭機1は、例えば顧客が商品の購入代金を支払う精算手続において、POSレジ2により各商品に付されたバーコードを読み取る等して商品の購入代金を算出し、顧客に通知する。これに応じて顧客は、購入代金以上の金銭、すなわち紙幣及び硬貨をレジ係員に預ける。レジ係員は、顧客から預かった紙幣を紙幣入出金装置4の紙幣入出金部21に投入すると共に硬貨を硬貨入出金装置5の硬貨投入部31に投入する。これに応じて硬貨入出金装置5では、入金処理(詳しくは後述する)が行われ、入金された硬貨の合計金額をレジ制御部11に通知する。紙幣入出金装置4も、同様に入金された紙幣の合計金額をレジ制御部11に通知する。
レジ制御部11は、入金された紙幣及び硬貨の合計金額から商品の購入代金を減算して釣銭の金額を算出すると共に、紙幣入出金装置4及び硬貨入出金装置5からそれぞれ出金すべき金額(以下これを出金額と呼ぶ)を算出して該紙幣入出金装置4及び該硬貨入出金装置5へそれぞれ通知する。硬貨入出金装置5は、通知された出金額に応じて出金処理(詳しくは後述する)を行うことにより、該出金額の硬貨を硬貨出金トレイ32に排出し、レジ係員に受け取らせる。紙幣入出金装置4も同様に出金額の紙幣を紙幣入出金部21に排出し、レジ係員に受け取らせる。レジ係員は、レシート等と共に釣銭の紙幣及び硬貨を顧客に返却して一連の精算手続を完了する。
[1-2.硬貨入出金装置の構成]
次に、硬貨入出金装置5の構成について説明する。硬貨入出金装置5は、図2及び図3に模式的な平面図を示すように、大きく分けて上側の上段部5U(図2)及び下側の下段部5L(図3)により構成されている。また硬貨入出金装置5の中央付近であって、下段部5L(図3)における硬貨出金トレイ32の後側には、硬貨を金種ごとに収納する6個の収納庫33(33A、33B、33C、33D、33E及び33F)が左右方向に沿って整列するように配置されている。以下では、収納庫33が整列した方向である左右方向を整列方向とも呼ぶ。
[1-2-1.上段部の構成]
上段部5U(図2)の硬貨投入部31は、上方が開口し、全体として中心軸を上下方向に沿わせた円柱状に形成され、その内部に円筒状に窪んだ投入空間31Sが形成され、また底部に回転可能な円盤31Cが組み込まれている。さらに硬貨投入部31には、投入空間31S内における硬貨の有無を検知するセンサ(図示せず)も組み込まれている。
これに加えて硬貨投入部31には、図2におけるA1-A2断面図を図4として示すように、開口を覆うことにより投入空間31Sの上方を閉塞して新たな硬貨の投入を抑止するためのシャッタ31Tも設けられている。このシャッタ31Tは、操作者の手作業若しくは図示しないアクチュエータの動作によって開閉可能となっている。また硬貨投入部31は、シャッタ31Tが閉塞されているか否かを所定のシャッタ閉塞センサにより検知し、硬貨制御部30へ通知するようになっている。さらに硬貨投入部31は、硬貨制御部30の制御によりシャッタ31Tを閉塞状態に保持するロック機構(図示せず)も有している。
硬貨投入部31は、投入空間31S内へ硬貨が投入されたことをセンサにより検知すると、円盤31Cを所定の繰出方向へ回転させ、硬貨に遠心力を作用させて円盤31Cの外周側へ搬送し、後側に配置された投入受渡部35に引き渡す。
投入受渡部35の後側には、収納庫33の上側における前後左右を中空の長方形状に繋ぐようにして投入搬送部36が配置されている。因みに上段部5Uにおける投入搬送部36の内側には、収納庫33を構成する部品が一部に配置されているものの、それ以外の大部分が上下に貫通する空間となっている。このため図2では、上段部5Uの一部である投入搬送部36の内側に、下段部5Lを構成する収納庫33の一部が見える様子を表している。
投入搬送部36は、収納庫33の上側における前側、右側及び後側において上面が平面状に形成された投入搬送ガイド37と、該投入搬送ガイド37の上側において前左、前右、後右及び後左の4箇所にそれぞれ配置されたベルトローラ38と、該ベルトローラ38の周囲に張架されたピンベルト39とにより構成されている。ベルトローラ38は、中心軸を上下方向に沿わせた円柱状に形成されており、該中心軸を中心として回転し得るようになっている。ピンベルト39は、可撓性を有する材料により構成され、上下方向に所定の長さ(すなわち幅)を有する無端ベルトに対し、当該無端ベルトの周方向に沿って所定間隔毎にピン(図示せず)が設けられた構成となっている。
投入搬送部36は、図示しないモータからベルトローラ38に駆動力を供給して回転させることにより、ピンベルト39を図2における反時計回りに所定の走行速度で走行させる。一方、投入受渡部35は、硬貨投入部31から硬貨を受け取ると、走行するピンベルト39の各ピンに合わせたタイミングで当該硬貨を投入搬送部36に引き渡す。因みに投入受渡部35の近傍には、硬貨の通過を検出するセンサが配置されている。
これに応じて投入搬送部36は、投入受渡部35から受け取った硬貨をピンベルト39のピンに当接させて、該ピンベルト39の走行に伴い硬貨を搬送する。投入搬送部36は、ピンベルト39の走行に伴い、投入搬送ガイド37に沿って、収納庫33の上前側を右方向へ向けて、該収納庫33の上右側を後方向へ向けて、さらに該収納庫33の上後側を左方向へ向けて、それぞれ硬貨を搬送する。説明の都合上、以下ではピンベルト39の走行により投入搬送ガイド37に沿って硬貨を搬送する経路を投入搬送路Wとも呼ぶ。
上段部5Uにおける硬貨投入部31の右後側であって、投入搬送路Wに沿って投入受渡部35よりも下流側には、認識部40が配置されている。認識部40は、光学センサや磁気センサ等、種々のセンサを有しており、各センサから得られた結果を基に、硬貨が正当であるか否か、及びその金種を判定して該硬貨制御部30に通知する。これに応じて硬貨制御部30は、当該硬貨の搬送先を決定する。
因みに認識部40は、硬貨を、1円、5円、10円、50円、100円及び500円の6種類のいずれであるか(すなわち真正な硬貨であるか)、若しくはいずれの金種とも判別できず真正でない可能性がある硬貨(以下これをリジェクト硬貨と呼ぶ)であるかを判別する。
上段部5Uにおける認識部40の右側、すなわち投入搬送路Wに沿って該認識部40の下流側には、リジェクト切替部41が設けられている。リジェクト切替部41は、板状のリジェクトブレード42と、該リジェクトブレード42を駆動するアクチュエータ(図示せず)と、投入搬送ガイド37を上下方向に貫通するリジェクト孔部43とにより構成されている。リジェクトブレード42は、上下に薄い板状に形成されており、右辺近傍に設けられ前後方向に沿った回動軸を中心として、投入搬送ガイド37に対し回動可能に構成されている。
リジェクト切替部41は、硬貨制御部30の制御に基づき、アクチュエータからリジェクトブレード42へ駆動力を伝達して回動させる。これによりリジェクト切替部41は、リジェクトブレード42の上面を投入搬送ガイド37の上面とほぼ揃えた状態(以下これを閉状態又は収納状態と呼ぶ)と、該リジェクトブレード42の左側を持ち上げて上面を投入搬送ガイド37に対し傾斜させた状態(以下これを開状態又はリジェクト状態と呼ぶ)に切り替えることができる。
リジェクト切替部41は、閉状態において、投入搬送部36により上流側から搬送されてきた硬貨をそのまま下流へ、すなわち右方向へ進行させる。またリジェクト切替部41は、開状態において、投入搬送部36により上流側から搬送されてきた硬貨をリジェクト孔部43から下方へ落下させる。
リジェクト孔部43の下側には、リジェクト搬送部44(図3及び図4)が設けられている。リジェクト搬送部44は、リジェクト孔部43の近傍から硬貨出金トレイ32の上側に至る範囲に配置されており、筒状に形成されると共に該硬貨出金トレイ32側が低く配置された、いわゆるシュート構造となっている。このリジェクト搬送部44は、リジェクト孔部43から落下してきた硬貨を、シュート構造内をその自重によって滑降させることにより搬送し、当該硬貨を硬貨出金トレイ32の上側まで進行させて落下させる。
一方、投入搬送部36は、リジェクト切替部41が閉状態であった場合、硬貨をそのまま右方向へ搬送した後、前右のベルトローラ38に沿って進行方向を後ろ向きに変更し、さらに後右のベルトローラ38に沿って進行方向を左向きに変更する。投入搬送部36における収納庫33の上後側部分には、選別部45が設けられている。選別部45は、リジェクト切替部41とそれぞれ同様に構成された6個の選別切替部46(46A、46B、46C、46D、46E及び46F)により構成されている。
各選別切替部46は、それぞれ各収納庫33の真上に位置しており、硬貨制御部30の制御に基づき、リジェクトブレード42と同様に構成された選別ブレード47をそれぞれ回動させることにより、投入搬送ガイド37を上下方向に貫通する選別孔部48を閉塞又は開放する。選別部45は、硬貨制御部30の制御に基づき、何れか1個の選別切替部46を開状態とし、他の選別切替部46を閉状態とすることにより、開状態とした選別切替部46と対応する収納庫33に硬貨を落下させて収納させることができる。
[1-2-2.下段部の構成]
下段部5L(図3)の各収納庫33は、上方から見て、何れも前後方向に長く、左右方向に短い長方形状に仕切られており、選別部45の各選別切替部46(図2)から落下されてくる硬貨を内部の収納空間50にそれぞれ収納する。
また収納庫33は、図3におけるB1-B2断面を図5に示すように、収納空間50の底部に収納搬送部51が組み込まれている。収納搬送部51は、前側の上寄り及び下寄り並びに後側の下寄りにそれぞれ配置された複数の収納搬送ローラ52の周囲を周回するように、無端ベルトでなる収納搬送ベルト54が張架された構成となっている。すなわち収納庫33では、収納搬送ベルト54における上側部分の上面が、収納空間50の底面を形成している。
収納搬送部51は、硬貨制御部30の制御に基づき、所定のモータ(図示せず)から駆動力を各収納搬送ローラ52へ伝達し、それぞれ図5における反時計回りに回転させる。これにより収納搬送部51は、収納搬送ベルト54の上側部分を前方向へ進行させ、これにより収納空間50内に収納されている硬貨CNを前方へ搬送する。
収納庫33(図5)における収納空間50内の前寄りには、リバースローラ55、出金ゲート56及び出金センサ57が設けられている。リバースローラ55は、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に構成されており、その下側面と対向する収納搬送ベルト54の上側部分との間に硬貨CNの厚さよりも僅かに広い隙間を空けるように配置されている。このリバースローラ55は、硬貨制御部30の制御に基づき所定のモータ(図示せず)から駆動力が伝達されることにより、図5の反時計回りに、すなわち下側面を後方へ進行させるよう回転する。これによりリバースローラ55は、収納搬送ベルト54上に2枚以上の硬貨CNが積み重なった状態で前方向へ搬送されていた場合、最下層の硬貨CNを除いた上層の硬貨CNをせき止め、或いはその重なりを崩しながら、1枚ずつリバースローラ55及び収納搬送ベルト54の隙間を通過させる。
出金ゲート56は、その下側に細長い円柱状の出金ゲートピン56Pを有しており、硬貨制御部30の制御に基づき、出金ゲートピン56Pを所定の移動範囲内で上下方向に移動させる。この出金ゲートピン56Pは、最も上側に移動されると、その下端と収納搬送ベルト54の上側部分との間に硬貨CNの厚さよりも大きい隙間を形成し、当該ベルトにより搬送されている硬貨CNと干渉することなく通過させる。一方、出金ゲートピン56Pは、最も下側に移動されると、その下端を収納搬送ベルト54におけるベルトの上側部分に近接若しくは当接させ、硬貨CNの搬送を抑止すると共に、収納庫33内からの硬貨CNの流出や不正行為等による硬貨CNの取り出しを防止する。
出金センサ57は、収納搬送部51の前端から前方へ繰り出される硬貨CN、すなわち収納庫33から排出される硬貨CNを1枚ずつ検知し、得られた検知結果を硬貨制御部30へ通知する。これにより硬貨制御部30は、収納庫33から排出された硬貨CNの枚数を計数し、当該枚数に応じて各部を制御することができる。説明の都合上、以下では、収納庫33における収納搬送部51の前端部分であって前方へ硬貨CNを排出する部分を排出端58とも呼ぶ。
このように収納庫33は、硬貨制御部30の制御に基づき、収納搬送部51やリバースローラ55等を動作させることにより、収納している硬貨CNを排出端58から前方へ、すなわち硬貨出金トレイ32へ排出する(すなわち出金する)ことができる。
また硬貨制御部30は、認識部40による認識結果や各出金センサ57による検知結果等を集計することにより、各収納庫33における硬貨CNの収納枚数をそれぞれ把握し、逐次更新している。さらに各収納庫33は、図示しないセンサにより、最大収納量の硬貨CNを収納していることを検知し硬貨制御部30に通知し得るようになっている。
図3及び図5に示したように、下段部5Lにおける各収納庫33の前側には、硬貨出金トレイ32が配置されている。硬貨出金トレイ32は、図3に示したように、左右方向に関する長さが、後端部分において6個分の収納庫33と同等であり比較的長くなっているものの、前方へ進むに連れて、左端が右寄りに移動し、徐々に短くなっている。
硬貨出金トレイ32は、大きく分けて後側の傾斜案内部32Rと、前側の貯留部32Fとにより構成されている。傾斜案内部32Rは、図3に示したように、上方から見て後辺よりも前辺が短い台形状に形成されている。また傾斜案内部32Rは、図5に示したように、後側の約2/3の範囲を占めるトレイ切替部61と、その前側の固定傾斜部62とにより構成されている。
トレイ切替部61は、板状のトレイブレード63と、該トレイブレード63を駆動するアクチュエータ(図示せず)と、硬貨出金トレイ32を上下方向に貫通するトレイ孔部64とにより構成されている。
トレイブレード63は、左右方向に長く前後方向に短く上下に薄い板状に形成されており、前端近傍に設けられた左右方向に沿った回動軸を中心に、固定傾斜部62に対して回動し得るように構成されている。因みにトレイブレード63は、硬貨出金トレイ32における左端から右端に至るほぼ全ての範囲に渡り、すなわち6個の収納庫33と対応する全幅に渡り、設けられている。
トレイ切替部61は、アクチュエータからトレイブレード63へ駆動力を伝達することにより、該トレイブレード63を回動させることができる。トレイ切替部61は、図5に破線で示したようにトレイブレード63を傾斜させた場合、トレイ孔部64の上方を覆うことにより閉塞し、またトレイブレード63及び固定傾斜部62により一様な傾斜面を形成する。この場合、トレイ切替部61は、収納庫33の排出端58から排出された硬貨CNをトレイブレード63の上面に当接させ、さらに該硬貨CNを傾斜面に沿って滑降させる。以下、これを閉状態又は貯留状態と呼ぶ。一方、トレイ切替部61は、図5に実線で示したようにトレイブレード63の後端を前方へ引き起こした場合、トレイ孔部64の上方を開放する。この場合、トレイ切替部61は、収納庫33の排出端58から排出された硬貨CNをトレイ孔部64から下方へ落下させる。以下これを開状態又は落下状態と呼ぶ。
このようにトレイ切替部61は、硬貨制御部30の制御に基づいてトレイブレード63を回動させることにより、貯留状態又は落下状態に切り替えることができる。
傾斜案内部32Rは、トレイ切替部61を閉状態としている場合、その後端、すなわちトレイブレード63の後端を比較的高い位置、具体的には収納庫33の収納搬送部51における前端部分の排出端58よりも僅かに低い位置に合わせており、この後端から前方へ進むに連れて下降するように傾斜している。このため傾斜案内部32Rは、トレイ切替部61を閉状態としたときに、収納庫33の排出端58から硬貨CNがトレイブレード63上に落下してきた場合、該硬貨CNを傾斜面に沿って、すなわちトレイブレード63及び固定傾斜部62の上面に沿って、前下方へ滑降させ、貯留部32Fに到達させる。
貯留部32Fは、上方から見て概ね半楕円状に形成されており、底部がほぼ平坦な平面状に形成されると共に、左側から前側を経て右側に至る外周部分に底面よりも十分に高い側壁部が形成されている。このため貯留部32Fは、傾斜案内部32Rに沿って滑降してきた硬貨CNを、硬貨入出金装置5の外部から取出可能な状態で貯留することができる。
一方、トレイ孔部64の下方には、横搬送部70が設けられている。横搬送部70は、図4に示したように、横搬送ローラ71及び72並びに横搬送ベルト73により構成されている。横搬送ローラ71は、最も左側の収納庫33Aよりもやや左側に位置している。また横搬送ローラ72は、最も右側の収納庫33Fよりもやや右側に位置している。この横搬送ローラ71及び72は、硬貨制御部30(図1)の制御に基づき、図示しないモータから駆動力が伝達されると、図の時計回り又は反時計回りに回転する。横搬送ベルト73は、無端ベルトでなり、横搬送ローラ71及び72の周囲を周回するように張架されている。
排出搬送部としての横搬送部70は、開放状態であるトレイ切替部61のトレイ孔部64から硬貨CNが落下してくると、この硬貨CNを横搬送ベルト73上に載置させる。説明の都合上、以下では、横搬送ベルト73上の空間を横搬送空間70Sとも呼ぶ。また横搬送部70は、横搬送ローラ71及び72を図4における時計回りに回転させることにより、横搬送ベルト73の上側部分を右方向へ進行させる。
これにより横搬送部70は、横搬送空間70S内の硬貨、すなわち横搬送ベルト73上に載置されている硬貨CNを、交差方向の一方である右方向へ搬送する。以下では、横搬送ベルト73において硬貨CNが載置される上側部分に着目し、この上側部分の走行方向に関して、リフト搬送部75が設けられた右方向を順方向と呼び、その反対側である左方向を逆方向と呼ぶ。また以下では、横搬送ベルト73における右端及び左端を、それぞれ一端及び他端とも呼ぶ。
横搬送部70の右側には、受渡ガイド74を挟んでリフト搬送部75が設けられている。媒体搬送装置及び媒体搬送部としてのリフト搬送部75は、複数のローラやベルト等の組み合わせにより構成されている(詳しくは後述する)。このリフト搬送部75は、各ローラを適宜回転させベルトを適宜走行させることにより、横搬送部70により搬送されてきた硬貨CNを上方へ持ち上げるように搬送し、トレイ切替部61の上側に配置されている予備収納ガイド78(図2)に引き渡す。
予備収納ガイド78は、その上面が傾斜面となっており、左前側が低くなると共に予備収納庫80に接続されている。このため予備収納ガイド78は、リフト搬送部75から引き渡された硬貨を傾斜面に沿って進行させ、予備収納庫80内に到達させる。
予備収納庫80は、上段部5U(図2)における硬貨投入部31の右側であって、下段部5L(図3)における硬貨出金トレイ32のトレイ切替部61よりも上側に位置している。この予備収納庫80(図4)は、全体として予備収納庫筐体81により周囲を囲まれた直方体状に形成されており、その内部に予備収納空間80Sを形成しており、その底部分に予備収納搬送部82が設けられている。
予備収納搬送部82は、収納庫33の収納搬送部51(図4等)と同様の構成となっている。具体的に予備収納搬送部82は、左右それぞれに配置された予備収納搬送ローラ83及び84の周囲を周回するように予備収納搬送ベルト85が張架されている。また予備収納搬送部82では、左側の予備収納搬送ローラ83が右側の予備収納搬送ローラ84よりも高い位置に配置されている。
また予備収納庫筐体81の後側面における中央付近であって、予備収納ガイド78の左端近傍となる箇所には、前後方向に貫通する予備収納庫受入孔81H1が穿設されている。この予備収納庫受入孔81H1の後側には、前後方向に薄い板状の予備収納庫シャッタ86が設けられている。この予備収納庫シャッタ86は、予備収納庫筐体81により上下方向に移動し得るように支持されると共に、硬貨制御部30(図1)の制御に基づき、図示しないアクチュエータから上方向又は下方向へ向かう駆動力が伝達される。
このため予備収納庫シャッタ86は、アクチュエータから駆動力が伝達され上方向へ移動すると、予備収納庫受入孔81H1を開放し、予備収納ガイド78側から予備収納空間80S内へ硬貨CNを進行させる。その一方で予備収納庫シャッタ86は、アクチュエータから駆動力が伝達され下方向へ移動すると、予備収納庫受入孔81H1を閉塞し、予備収納ガイド78側と予備収納空間80S内との間における硬貨CNの移動を規制する。
さらに予備収納庫筐体81の左側面であって、硬貨投入部31と隣接する箇所には、左右方向に貫通する予備収納庫繰出孔81H2が穿設されている。この予備収納庫繰出孔81H2の近傍には、仕切板87が設けられている。仕切板87は、全体として薄板状に構成されており、前後方向に沿った回動軸87Xを中心として回動可能となっている。また仕切板87は、硬貨制御部30(図1)の制御に基づき、図示しないアクチュエータから駆動力が伝達されると、図4における時計回り又は反時計回りに回動する
この仕切板87は、端部を下側に位置させて予備収納庫繰出孔81H2を閉塞した閉塞状態において、予備収納庫80内の予備収納空間80Sを硬貨投入部31内の投入空間31Sと仕切り、該予備収納空間80S及び該投入空間31Sの間における硬貨CNの移動を規制する。その一方で仕切板87は、端部を左側に位置させて予備収納庫繰出孔81H2を開放した開放状態において、予備収納庫80内の予備収納空間80Sを硬貨投入部31内の投入空間31Sと連通させ、該予備収納空間80S及び該投入空間31Sの間における硬貨CNの移動を許容する。
かかる構成により予備収納庫80は、予備収納庫シャッタ86を開放状態とすることにより、リフト搬送部75により持ち上げられ予備収納ガイド78により案内されてきた硬貨CNを、予備収納空間80S内に、すなわち予備収納搬送ベルト85上に載置して収納する。またこの場合、硬貨投入部31は、仕切板87を閉塞状態とすることにより、投入空間31Sに投入された硬貨CNを予備収納庫80側へ進行させることなく、投入受渡部35(図2)に引き渡すことができる。
また予備収納庫80は、仕切板87を開放状態とすると共に、予備収納搬送部82の予備収納搬送ベルト85を走行させ上側部分を左方向へ進行させることにより、予備収納空間80S内の硬貨CNを左方向へ搬送し、予備収納庫繰出孔81H2を介して硬貨投入部31へ引き渡す。このとき硬貨投入部31は、硬貨が入金された場合と同様に動作することにより、この硬貨CNを投入受渡部35(図2)により投入搬送部36へ引き渡すことができる。
このように予備収納庫80は、トレイ切替部61が開状態(図5)となりトレイ孔部64から落下し横搬送部70及びリフト搬送部75により搬送された硬貨CNを予備収納空間80S内に収納し、また該硬貨を硬貨投入部31に引き渡すようになっている。このため以下では、トレイ切替部61においてトレイブレード63を開放した状態を予備収納状態とも呼ぶ。また以下では、横搬送部70及びリフト搬送部75をまとめて還流搬送部76とも呼ぶ。
[1-2-3.リフト搬送部の構成及び搬送動作]
次に、リフト搬送部75の構成について、図6(A)に示す模式的な正面図、図6(B)に示す模式的な左側面図、及び図7に示す模式的な斜視図を参照しながら説明する。リフト搬送部75は、3個の駆動ローラ91、3組の屈曲ローラ92、リフトベルト93、2枚の側面ガイド94、保持フレーム95、付勢部材96、規制ガイド97及びリフト排出センサ99を有している。ただし図6(B)及び図7では、作図の都合上、保持フレーム95、付勢部材96、規制ガイド97及びリフト排出センサ99を省略している。また図7では、前側の側面ガイド94も省略している。
また以下では、図8(A)に示すように、硬貨入出金装置5により取り扱う硬貨CNのうち直径が最大であるもの(例えば500円硬貨)を最大径硬貨CNRLと呼び、該最大径硬貨CNRLの直径を硬貨最大直径RLと呼ぶ。さらに図8(B)に示すように、硬貨入出金装置5により取り扱う硬貨CNのうち直径が最小であるもの(例えば1円硬貨)を最小径硬貨CNRSと呼び、該最小径硬貨CNRSの直径を硬貨最小直径RSと呼ぶ。
これに加えて、図8(C)に示すように、硬貨入出金装置5により取り扱う硬貨CNのうち厚さが最大であるもの(例えば500円硬貨)を最大厚硬貨CNTLと呼び、該最大厚硬貨CNTLの厚さを硬貨最大厚さTLと呼ぶ。また図8(D)に示すように、硬貨入出金装置5により取り扱う硬貨CNのうち厚さが最小であるもの(例えば1円硬貨)を最小厚硬貨CNTSと呼び、該最小厚硬貨CNTSの厚さを硬貨最小厚さTSと呼ぶ。
3個の駆動ローラ91(91A、91B及び91C、図6及び図7)は、何れも中心軸を前後方向に沿わせた円柱状に構成されており、何れも図示しない軸受により回転可能に支持されている。各駆動ローラ91における前後方向の長さは、硬貨最大直径RLよりも十分に長くなっている。
また各駆動ローラ91は、リフト搬送部75における右側乃至下側に分散して配置されており、前後方向の位置が互いに同等に揃えられている。さらに一部の駆動ローラ91は、硬貨制御部30(図1)の制御に基づき、図示しないモータから駆動力が伝達されることにより、図の時計回り又は反時計回りに回転する。因みに駆動ローラ91は、横搬送部70の横搬送ローラ71等とは異なるモータから駆動力が供給されている。
3組の屈曲ローラ92(92A、92B及び92C)は、何れも中心軸を前後方向に沿わせた円柱状に構成されており、図示しない軸受により回転可能に支持されている。ただし各屈曲ローラ92は、駆動ローラ91と比較して前後方向の長さが極めて短い2個のローラを1組としている。また1組の屈曲ローラ92を構成する各ローラは、前後方向に離隔され、駆動ローラ91の前端近傍及び後端近傍に配置されている。
ベルト部としてのリフトベルト93は、ベルト本体93Bと複数の突起93Pとにより構成されている。ベルト本体93Bは、可撓性を有する樹脂材料により構成された無端ベルトであり、前後方向の長さが、駆動ローラ91と同等であり、硬貨最大直径RLよりも十分に長くなっている。このベルト本体93Bは、各駆動ローラ91の周囲を周回すると共に各屈曲ローラ92の下側乃至後側の一部分に当接するように張架されている。このためリフトベルト93は、駆動ローラ91が回転すると、該駆動ローラ91から駆動力が伝達され、各駆動ローラ91の周囲を周回するように走行する。
ここでベルト本体93Bの上側面乃至左側面に着目すると、駆動ローラ91Aの上端近傍から右方向且つ僅かに上方向へ向けて進行し、屈曲ローラ92Aの右下部分により屈曲されて水平方向に対する傾斜角度が大幅に増加されている。続いてベルト本体93Bは、屈曲ローラ92Bの右端近傍により屈曲されてほぼ鉛直に上方向へ進行し、さらに屈曲ローラ92Cの右端近傍により屈曲されて上斜め左方向へ進行する。
説明の都合上、以下では、リフト搬送部75のうち、ベルト本体93Bが屈曲ローラ92Aに当接する箇所から屈曲ローラ92Bに当接する箇所までの部分及びその周辺であり、該ベルト本体93Bの表面が水平面に対して傾斜している部分を、リフト傾斜搬送部75Sと呼ぶ。また以下では、リフト搬送部75のうち、ベルト本体93Bが屈曲ローラ92Bに当接する箇所から屈曲ローラ92Cに当接する箇所までの部分及びその周辺であり、該ベルト本体93Bの表面がほぼ鉛直である部分を、リフト鉛直搬送部75Vと呼ぶ。
各突起93Pは、ベルト本体93Bにおける外側の表面から外方に向けて突出するように立設されている。各突起93Pは、駆動ローラ91の周囲を周回する方向に関して所定の周回間隔毎に配置されており、また前後方向に関して所定の前後間隔だけ離れた2箇所であり、前端及び後端並びに中央を避けた2箇所に配置されている。
以下では、図6(A)及び(B)の一部を拡大した図9(A)及び(B)に示すように、ベルト本体93Bの表面側であって、走行方向に関して突起93Pごとに区切られた空間を、突起間収容部93Sと呼ぶ。リフト搬送部75では、硬貨CNの板面をベルト本体93Bの表面に当接させ、且つ突起93Pに当該硬貨CNの後端近傍を当接させ(すなわち引っ掛け)、各突起間収容部93S内に1枚の硬貨CNのほぼ全部を収容した状態で、当該硬貨CNを搬送することが想定されている(詳しくは後述する)。以下では、この状態を正常搬送状態と呼ぶ。また突起93Pは、リフト鉛直搬送部75Vにおける下側の側面であり、上方向に向けて走行する際に末尾側となる側面が、ベルト本体93Bの表面及びこれと垂直な方向、すなわち鉛直方向及び水平方向の双方に対して、傾斜している。
各側面ガイド94は、それぞれ前後方向に薄い板状に構成されており、前後方向の位置がリフトベルト93の前端近傍及び後端近傍であって、該リフトベルト93の左側若しくは上側に隣接するように配置されている。因みに側面ガイド94は、各屈曲ローラ92との干渉を回避するよう、円弧状に切り欠かれた部分が適宜形成されている。
保持フレーム95は、2枚の側面ガイド94の間であって、且つリフトベルト93からやや離れた箇所に配置されている。また保持フレーム95は、上端近傍に設けられた回動軸95Xを中心として回動し得るようになっている。
付勢部材96は、リフトベルト93のうちほぼ鉛直に進行する部分、すなわち屈曲ローラ92B及び92Cの間に相当する部分と対向する範囲に渡り、概ね上下方向に沿って配置されている。また付勢部材96は、全体として右側へ突出するような円弧状に湾曲されており、中央部分がリフトベルト93の近傍に位置する一方、上端近傍及び下端近傍がリフトベルト93からやや離れた箇所に位置している。因みに付勢部材96は、前後方向の長さがリフトベルト93と比較して十分に短くなっており、該リフトベルト93における前後方向の中央付近と対向するように配置されている。
この付勢部材96は、図6(A)及び該図6(A)におけるC1-C2断面である図10に示すように、基材96Aの表面に対し、樹脂等の可撓性を有する材料でなる微細な繊維96Bが多数植え付けられた、モヘアと呼ばれる部材である。また付勢部材96は、基材96Aを左側に向けると共に各繊維96Bの先端を右側に向けた状態で、保持フレーム95における前後方向の中央付近に取り付けられている。さらに付勢部材96における右側の表面、すなわち繊維96Bの先端部分は、ベルト本体93Bの表面との間に比較的狭い隙間を形成している。
規制ガイド97は、保持フレーム95の一部であり、リフト鉛直搬送部75Vにおいてリフトベルト93と対向する部分となっている。この規制ガイド97は、図6(A)におけるC1-C2断面図を図10に示すように、付勢部材96の前側及び後側において、該付勢部材96の右端よりも左側に位置している。以下では、リフト搬送部75においてリフトベルト93のベルト本体93B、側面ガイド94、付勢部材96及び規制ガイド97により囲まれた空間を搬送空間75Cと呼ぶ。また以下では、付勢部材96及び規制ガイド97をまとめてガイド部100とも呼ぶ。
リフト排出センサ99は、一対の発光素子及び受光素子を有しており、発光素子から照射された光を受光素子により受光し、このとき受光した光量に応じた検知信号を生成して硬貨制御部30に通知するようになっている。このリフト排出センサ99は、駆動ローラ91Cの左側に配置されており、硬貨CNが発光素子及び受光素子の間を通過して光が遮られると、光量の変化に応じた検知信号を生成して硬貨制御部30に通知する。硬貨制御部30は、このリフト排出センサ99から得られる検知信号を基に、リフト搬送部75から予備収納ガイド78に硬貨CNを引き渡したことを認識し、またその枚数を計数することができる。
ここで、リフト鉛直搬送部75V(図9及び図10)における各部の長さや間隔について説明する。リフトベルト93における前後方向に関する突起93P同士の間隔である長さL1は、硬貨最小直径RSよりも小さく(短く)なっている。側面ガイド94同士の間隔である距離L2は、硬貨最大直径RLよりも大きく(長く)なっている。
リフトベルト93の走行方向である上下方向に関し、突起93P同士の間隔である距離L3(図9(B))は、硬貨最大直径RLよりも大きく(長く)、且つ硬貨最小直径RSの2倍よりも小さく(短く)なっている。ベルト本体93Bの表面から突起93Pの先端までの間隔であり、該突起93Pの突出量である距離L4(図9(A))は、硬貨最小厚さTSと同等、若しくは該硬貨最小厚さTSよりも小さく(短く)なっている。
突起93Pの先端(リフト鉛直搬送部75Vにおける左端)から付勢部材96の右端までの間隔である距離L5は、硬貨最小厚さTSよりも小さく(短く)なっている。これに伴い、ベルト本体93Bの表面から付勢部材96の右端までの間隔である距離L6(図10)は、硬貨最大厚さTLよりも大きく(長く)、且つ硬貨最小厚さTSの2倍よりも小さく(短く)なっている。
突起93Pの先端(リフト鉛直搬送部75Vにおける左端)から規制ガイド97までの間隔である距離L7は、硬貨最大厚さTLよりも大きく(長く)、且つ硬貨最小厚さTSの2倍よりも小さく(短く)なっている。これに伴い、ベルト本体93Bの表面から規制ガイド97までの間隔である距離L8は、硬貨最小厚さTS及び硬貨最大厚さTLの加算値よりも大きく(長く)、且つ硬貨最小厚さTSの3倍よりも小さく(短く)なっている。
かかる構成によりリフト搬送部75は、硬貨制御部30の制御に基づき、各駆動ローラ91を図6(A)における時計回りに回転させると、各駆動ローラ91の周囲を時計回りに周回するようにしてリフトベルト93を走行させる。またリフト搬送部75は、駆動ローラ91Aの近傍において横搬送部70から硬貨CNが引き渡されると、この硬貨CNをリフトベルト93上に載置させる。
このときリフトベルト93は、仮に複数の硬貨CNが重なった状態であったとしても、突起93Pに最下段の硬貨のみを引っ掛けることにより、該硬貨CNを1枚ずつに分離しながら搬送する。また側面ガイド94は、前後方向に関して当該硬貨CNがリフトベルト93上からはみ出すことを規制する。この結果、リフト搬送部75は、突起間収容部93Sに1枚の硬貨CNを収容した正常搬送状態で、当該硬貨CNをリフト傾斜搬送部75Sにおいて右斜め上方向へ搬送していく。
その後、リフト搬送部75は、硬貨CNをリフト鉛直搬送部75Vに到達させると、上方向を搬送方向として当該硬貨CNを搬送する。このときリフト搬送部75は、リフト鉛直搬送部75Vにおいて、突起93Pの先端と付勢部材96との間隔である距離L5(図10)が硬貨最小厚さTS(図8(D))よりも短いため、硬貨CNの下端近傍を突起93P及び付勢部材96の隙間から落下させること無く搬送する。やがてリフト搬送部75は、硬貨CNが駆動ローラ91Cの近傍に到達すると、当該硬貨CNを左側へ倒して予備収納ガイド78(図2)上を滑るように下降させる。
ところでリフト搬送部75では、横搬送部70から重なった状態の硬貨CNが引き渡された場合、正常搬送状態の硬貨CNに他の硬貨CNが引っ掛かる可能性がある。すなわちリフト搬送部75では、例えば図6(A)の一部と対応する図11に示すように、1枚の硬貨CN1が正常搬送状態であり、その末尾側近傍を突起93P1に当接させながら、もう一枚の硬貨CN2が該硬貨CN1の右側(すなわち進行方向側)に当接するように搬送される場合がある。
この硬貨CN2は、突起93P1の進行方向側に位置する突起93P2に乗り上げており、末尾側が硬貨CN1の先頭側近傍に当接すると共にベルト本体93Bに当接し若しくは極めて近接している一方、先頭側が該ベルト本体93Bの表面から離されている。
リフト搬送部75は、このような状態の硬貨CN1及びCN2がリフト鉛直搬送部75Vに到達すると、図12に示すように、付勢部材96において硬貨CN2と当接する部分を該硬貨CN2の形状に合わせて弾性変形させる。これによりリフト搬送部75は、該硬貨CN2をリフトベルト93のベルト本体93B及び突起93P2に押し付けながら、当該硬貨CN2及び硬貨CN1を上方向へ進行させる。
このとき付勢部材96は、硬貨CN2と当接する箇所を、当該硬貨CN2の形状に合わせて弾性変形させる一方、他の部分を弾性変形していない定常状態に維持する。このため付勢部材96は、硬貨CN1を正常に搬送しながら、硬貨CN2についても落下させること無く搬送することができる。さらにこのとき付勢部材96は、突起93P1と異なる他の突起93P2により硬貨CN1及びCN2と異なる他の硬貨CNを搬送していたとしても、当該硬貨CN1や他の硬貨CN等を正常に搬送しながら、当該硬貨CN2についても落下させること無く搬送することができる。
またリフト搬送部75は、図示しないセンサ等により保持フレーム95の下側において硬貨CNの詰まりが発生したことを検知した場合、リフトベルト93を逆方向に走行させることにより詰まりの解消を図る。このときリフト搬送部75は、突起93Pにおける進行方向側の側面が傾斜しており、硬貨CNの下側へ容易に潜り込むことができるので、リフトベルト93が走行できなくなる可能性が格段に低くなっている。またリフト搬送部75は、この傾斜により、逆方向に走行するリフトベルト93の突起93Pと受渡ガイド74(図6(A))との間に硬貨CNを挟み込む恐れも無い。
[1-3.硬貨入出金装置の処理]
次に、硬貨入出金装置5における入金処理、出金処理及び自己精査処理について、それぞれ説明する。
[1-3-1.入金処理]
入金処理は、硬貨投入部31に投入された硬貨を認識し、正当な硬貨を金種ごとに区別して各収納庫33に収納すると共に、偽造された硬貨や硬貨以外のものを硬貨出金トレイ32から排出する処理である。硬貨入出金装置5では、上述した精算手続において、顧客により商品の購入代金として硬貨を預かった場合に、この入金処理が行われる。
硬貨制御部30は、例えば硬貨投入部31のセンサにより投入空間31Sに硬貨CNが投入されたことを検知すると、この入金処理を開始する。このとき硬貨制御部30は、事前準備として、リジェクト切替部41を収納状態(閉状態)に切り替え、各選別切替部46を閉状態に切り替え、さらにトレイ切替部61を貯留状態(閉状態)に切り替えさせる。
硬貨投入部31は、投入された硬貨CNを1枚ずつ投入受渡部35(図2)に引き渡し、該投入受渡部35から投入搬送部36に順次引き渡す。投入搬送部36は、投入搬送路Wに沿って硬貨CNを搬送し、認識部40により該硬貨CNを認識させ、認識結果(すなわち真偽及び金種)を硬貨制御部30へ通知させる。
これに応じて硬貨制御部30は、硬貨CNが正当でないと認識された場合、当該硬貨CNの搬送先を硬貨出金トレイ32に決定し、また硬貨CNが正当であると認識された場合、当該硬貨CNの搬送先を、その金種に応じた収納庫33に決定する。
硬貨制御部30は、硬貨CNの搬送先が収納庫33である場合、リジェクト切替部41を閉状態のままとし、当該硬貨を投入搬送部36により投入搬送路Wに沿って選別部45まで搬送させる。続いて硬貨制御部30は、選別部45において硬貨CNの金種に応じた選別切替部46を開状態に切り替え、収納庫33に落下させて収納させる。
また硬貨制御部30は、硬貨の搬送先が硬貨出金トレイ32である場合、リジェクト切替部41を開状態に切り替え、当該硬貨CNをリジェクト孔部43から落下させる。続いて硬貨制御部30は、リジェクト搬送部44により硬貨CNを硬貨出金トレイ32のトレイ切替部61上に落下させる。これにより硬貨CNは、トレイ切替部61のトレイブレード63及び固定傾斜部62に沿って滑降し、貯留部32Fに到達して排出される。
[1-3-2.出金処理]
出金処理は、レジ制御部11(図1)から指示された金種及び枚数の硬貨CNを収納庫33から硬貨出金トレイ32にそれぞれ排出する処理である。硬貨入出金装置5では、上述した精算手続において、顧客に返却すべき釣銭に硬貨CNが含まれる場合に、この出金処理が行われる。
硬貨制御部30は、レジ制御部11から出金すべき硬貨CNの金種及び枚数の指示を受けると、この出金処理を開始する。このとき硬貨制御部30は、事前準備として、入金処理の場合と同様に、リジェクト切替部41を収納状態(閉状態)に切り替え、各選別切替部46を閉状態に切り替え、さらにトレイ切替部61を貯留状態(閉状態)に切り替えさせる。
各収納庫33は、硬貨制御部30の制御に基づき、レジ制御部11からそれぞれに指示された枚数の硬貨CNを排出端58から排出して硬貨出金トレイ32のトレイ切替部61上に落下させる。これにより硬貨CNは、トレイ切替部61のトレイブレード63及び固定傾斜部62に沿って滑降し、貯留部32Fに到達して排出される。
[1-3-3.自己精査処理]
自己精査処理は、例えば小売店舗の営業が終了した後等のタイミングで、収納庫33に収納している硬貨CNの枚数を計数すると共に、該硬貨CNが全て正当であり該収納庫33に対応付けられた金種であることも確認する処理である。
因みに硬貨制御部30は、レジ係員からの指示に従い、1金種の硬貨のみについて自己精査処理を行うことも、2金種以上の硬貨について自己精査処理を順次行うこともできる。ここでは、1金種の硬貨の自己精査処理を行う場合について説明する。
レジ制御部11(図1)は、例えば表示操作部12に所定のメニュー画面を表示した状態において、レジ係員の操作により精査処理が選択されると、所定の金種選択画面を表示することにより、該レジ係員に対して金種の指定を促す。続いてレジ制御部11は、レジ係員の操作により金種が指定されると、硬貨入出金装置5の硬貨制御部30に対し自己精査処理の開始を指示する。これに応じて硬貨制御部30は、自己精査処理を開始する。
まず硬貨制御部30は、レジ制御部11(図1)を介して表示操作部12に所定のメッセージを表示する等して、レジ係員に硬貨投入部31のシャッタを閉塞させる。また硬貨制御部30は、硬貨投入部31のシャッタ閉塞センサにより該シャッタが閉塞されたことを検知すると、ロック機構により該シャッタを閉塞状態にロックすると共に、該硬貨投入部31及び予備収納庫80の境界に設けられた仕切板87を開放させる。さらに硬貨制御部30は、トレイ切替部61を落下状態(図5の実線)に切り替える。
次に硬貨制御部30は、指示された金種の硬貨が収納されている収納庫33から、収納されている全ての硬貨を排出させる。このとき排出端58(図5)から排出された硬貨は、トレイ孔部64から下方に落下し、横搬送部70に到達する。またこのとき収納庫33は、出金センサ57(図5)により、収納庫33から排出される硬貨を1枚ずつ検知して硬貨制御部30に通知する。これにより硬貨制御部30は、収納庫33から排出された硬貨の枚数、すなわち該収納庫33に収納されていた硬貨の枚数を計数することができる。
さらに硬貨制御部30は、横搬送部70及びリフト搬送部75により硬貨を予備収納庫80へ順次搬送し、予備収納搬送部82により予備収納庫80内の硬貨を硬貨投入部31へ順次搬送して収納させ、また該予備収納庫80内にも硬貨CNを収納した状態とする。
やがて硬貨制御部30は、硬貨投入部31及び予備収納庫80内にそれぞれ十分な枚数の硬貨CNを収納した後、予備収納搬送部82やリフト搬送部75等の動作を停止させ、横搬送部70において所定の収納処理を行わせることにより、横搬送空間70S内にも硬貨CNを収納させる。
その後、硬貨制御部30は、各部に入金処理と同様の処理を行わせる。すなわち硬貨投入部31は、投入受渡部35により硬貨を投入搬送部36へ順次引き渡す。投入搬送部36は、各硬貨を順次搬送しながら認識部40により認識させ、得られた認識結果を硬貨制御部30に通知する。硬貨制御部30は、認識結果を基に各硬貨の搬送先を決定し、投入搬送部36により該搬送先へ搬送させる。
このとき硬貨制御部30は、硬貨投入部31内の硬貨CNをある程度繰り出した段階で、予備収納搬送部82の動作を開始し、予備収納庫80内に収納していた硬貨CNを該硬貨投入部31へ搬送する。さらに硬貨制御部30は、予備収納庫80内の硬貨をある程度繰り出した段階で、リフト搬送部75及び横搬送部70の動作を開始し、横搬送部70に収納していた硬貨CNを予備収納庫80へ搬送する。
やがて硬貨制御部30は、全ての硬貨CNを収納庫33へ搬送し終えたと判断すると、認識結果を集計し、得られた集計結果を最初に収納庫33から排出した硬貨CNの枚数と比較すると共に、集計結果や比較結果等を表示操作部12(図1)等に表示する。例えば硬貨制御部30は、最初に収納庫33から排出した枚数と、再び収納庫33へ搬送して収納させた枚数が一致すれば、正常終了となり、これ以外の場合は、異常終了となる。
[1-4.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態による硬貨入出金装置5のリフト搬送部75は、リフトベルト93に突起93Pを設けると共に、該リフトベルト93と対向する位置に弾性変形する付勢部材96を設け(図6及び図9等)、且つリフト鉛直搬送部75Vにおける両者の間隔を硬貨最小厚さTS(図10(D))よりも短くした。
このためリフト搬送部75は、1つの突起間収容部93S(図9)に1枚の硬貨CNを収容した正常搬送状態であれば、リフト鉛直搬送部75Vにおいて、当該硬貨CNが突起93Pと付勢部材96との隙間から落下することを防止しながら上方へ搬送し、予備収納ガイド78に引き渡すことができる。
これに加えてリフト搬送部75は、図12に示したように硬貨CN2が突起93Pに乗り上げた状態であっても、付勢部材96が弾性変形することにより、詰まりを発生させること無く、当該硬貨CN1と共に当該硬貨CN2を上方へ搬送でき、何れも予備収納ガイド78に引き渡すことができる。
またリフト搬送部75は、リフトベルト93と対向する位置に、固定された付勢部材96及び規制ガイド97等を設けるため、特許文献1のように当該位置に走行可能なベルトを設ける場合と比較して、必要な空間を削減でき、装置構成を小型化できる。
かくしてリフト搬送部75は、各突起間収容部93Sに硬貨CNを1枚ずつ収容した正常搬送状態で搬送することを基本としながら、該突起間収容部93Sに2枚目の硬貨CNの一部も収容された状態であってもそのまま搬送できるので、多数の硬貨CNを円滑に短時間で搬送でき、且つ構成を比較的小型に抑えることができる。
またリフト搬送部75は、ベルト本体93Bの表面から付勢部材96の右端までの間隔である距離L6(図10)を硬貨最大厚さTL(図8(C))よりも大きく(長く)した。このためリフト搬送部75は、正常搬送状態にある硬貨CNに対し、付勢部材96を押し付けること無く、該硬貨CNが左側へ倒れかかってきた場合にこれを支える程度に止める。このためリフト搬送部75では、正常搬送状態にある硬貨CNに対し、不必要に付勢力を作用させ抵抗を増加させることにより搬送速度の低下や駆動ローラ91等に作用する負荷の増加を招くこと無く、硬貨CNを円滑に且つ高速に、すなわち短時間で搬送することができる。
さらに付勢部材96は、弾性変形可能な多数の繊維96Bを基材96Aに植え付けた構成とした。このためリフト搬送部75は、硬貨CNがベルト本体93Bの表面から大きく離れている箇所においてのみ、付勢部材96を局所的に弾性変形させる一方、他の箇所を定常状態に維持できる。換言すれば、付勢部材96は、リフト鉛直搬送部75Vにおいて、搬送方向である上下方向に関して、硬貨最小直径RSよりも短い長さ毎に、ベルト本体93Bとの間隔を変化させることができる。これによりリフト搬送部75は、付勢部材96の一部分において突起93Pに乗り上げた硬貨CNに合わせて弾性変形することによりその落下を抑止しながら、他の部分において定常状態を維持することにより定常搬送状態にある硬貨CNの落下をも抑止できる。
そのうえリフト搬送部75は、前後の側面ガイド94同士の間隔よりも格段に短い範囲にのみ付勢部材96を設けた(図10)。このためリフト搬送部75では、側面ガイド94同士の間における全範囲に渡って付勢部材96を設ける場合と比較して、硬貨CNに付勢力を作用させる場合に当該硬貨CNに作用する抵抗力を極めて小さく抑え、円滑に搬送することができる。
これに加えてリフト搬送部75は、定常状態における付勢部材96の右端よりも左側に規制ガイド97を設けた(図10等)。このためリフト搬送部75では、突起93Pに乗り上がった硬貨CNにより付勢部材96が大きく弾性変形された場合に、当該硬貨CNが左方向へ変位する範囲を規制でき、当該硬貨CNが落下することや詰まりを発生させることを効果的に抑制できる。
またリフト搬送部75は、ベルト本体93Bの表面から突起93Pの先端までの距離である長さL4(図9及び図10)を、硬貨最小厚さTS(図8(D))と同等若しくは該硬貨最小厚さTSよりも小さく(短く)した。これによりリフト搬送部75は、横搬送部70から複数の硬貨CNが重なった状態で受け取ったとしても、突起93Pにより最下段の硬貨CNのみを引っ掛け、1枚ずつに分離して搬送することができる。
以上の構成によれば、第1の実施の形態による硬貨入出金装置5のリフト搬送部75は、リフトベルト93に突起93Pを設け、該リフトベルト93と対向する位置に弾性変形する付勢部材96を設け、且つリフト鉛直搬送部75Vにおける両者の間隔を硬貨最小厚さTSよりも短くした。リフト搬送部75は、硬貨CNが正常搬送状態であれば、リフト鉛直搬送部75Vにおいて、定常状態の付勢部材96により当該硬貨CNの落下を防止できる。またリフト搬送部75は、硬貨CNが突起93Pに乗り上げていれば、その形状に合わせて付勢部材96を弾性変形させ、硬貨CNの詰まりや落下を防止できる。この結果、リフト搬送部75は、比較的小型に構成しながら、硬貨CNを円滑に搬送できる。
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態によるレジ釣銭機201(図1)は、第1の実施の形態によるレジ釣銭機1と比較して、釣銭機3に代わる釣銭機203を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。釣銭機203は、第1の実施の形態による釣銭機3と比較して、硬貨入出金装置5に代わる硬貨入出金装置205を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
硬貨入出金装置205(図2)は、第1の実施の形態による硬貨入出金装置5と比較して、リフト搬送部75に代わるリフト搬送部275を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
リフト搬送部275は、図6(A)と対応する図13に模式図を示すように、リフト搬送部75と比較して、保持フレーム95及び付勢部材96に代えて、保持フレーム295及び複数の付勢部材296を有しており、さらに複数の当接部材298を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。この第2の実施の形態では、リフト搬送部275においてリフトベルト93がほぼ鉛直に進行する部分を、リフト鉛直搬送部275Vと呼ぶ。
保持フレーム295は、第1の実施の形態における保持フレーム95と類似した形状でなる保持フレーム本体部295Aと、付勢部材支持部295Bとにより構成されている。付勢部材支持部295Bは、上下方向に長い棒状でなり、保持フレーム本体部295Aに対し図示しない部材を介して固定されている。
各付勢部材296は、コイルバネであり、中心軸を左右方向に沿わせた姿勢で、その左端が保持フレーム295の付勢部材支持部295Bに取り付けられている。また各付勢部材296は、上下方向に沿って整列配置されている。さらに、各付勢部材296における上下方向の配置周期は、硬貨最小直径RS(図8(B))よりも十分に小さく(短く)なっている。
各付勢部材296は、左方向へ向かう力が加えられると、弾性変形して収縮し、この力が解放されると元の形状に復元する。この第2の実施の形態では、付勢部材296が収縮していない(すなわち短縮されていない)自然状態であることを定常状態と呼ぶ。
規制ローラとしての各当接部材298は、中心軸を前後方向に沿わせた円柱状であり、付勢部材296の右端近傍により回転可能に支持されている。当接部材298の直径は、各付勢部材296における上下方向の配置周期よりも僅かに短くなっており、硬貨最小直径RS(図8(B))よりも十分に小さく(短く)なっている。
また、この当接部材298の右端からベルト本体93Bの表面までの距離は、第1の実施の形態における付勢部材96の右端から該ベルト本体93Bの表面までの間隔である長さL6(図10)と同様の長さとなっている。この第2の実施の形態では、付勢部材296、当接部材298及び規制ガイド97をまとめてガイド部300と呼ぶ。
かかる構成によりリフト搬送部275は、1つの突起間収容部93S(図9)に1枚の硬貨CNを収容した正常搬送状態であれば、リフト鉛直搬送部275Vにおいて、当該硬貨CNが突起93Pと当接部材298との隙間から落下することを防止しながら上方へ搬送し、予備収納ガイド78に引き渡すことができる。
これに加えてリフト搬送部275は、図12に示した場合と同様に硬貨CNが突起93Pに乗り上げた状態であっても、付勢部材296が弾性変形することにより、詰まりを発生させること無く、当該硬貨CNを上方へ搬送でき、予備収納ガイド78に引き渡すことができる。
このときリフト搬送部275では、円柱状の当接部材298が硬貨CNとの当接に応じて適宜回転するため、該硬貨CNとの間に作用する摩擦力を、第1の実施の形態において付勢部材96との間に作用する摩擦力よりも格段に低下させることができる。これによりリフト搬送部275では、第1の実施の形態よりもさらに円滑に、すなわち摩擦による搬送速度の低下を招くこと無く、極めて短い時間で、硬貨CNを搬送することができる。
その他の点においても、第2の実施の形態による硬貨入出金装置205は、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第2の実施の形態による硬貨入出金装置205のリフト搬送部275は、リフトベルト93に突起93Pを設け、該リフトベルト93と対向する位置に弾性変形する付勢部材296及び回転可能な当接部材298を設け、且つリフト鉛直搬送部275Vにおける両者の間隔を硬貨最小厚さTSよりも短くした。リフト搬送部275は、硬貨CNが正常搬送状態であれば、リフト鉛直搬送部275Vにおいて、定常状態の付勢部材296及び当接部材298により当該硬貨CNの落下を防止できる。またリフト搬送部275は、硬貨CNが突起93Pに乗り上げていれば、その形状に合わせて付勢部材296を弾性変形により短縮させ、硬貨CNの詰まりや落下を防止できる。この結果、リフト搬送部275は、比較的小型に構成しながら、硬貨CNを極めて円滑に搬送できる。
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、基材96Aに対し弾性変形し得る繊維96Bを多数植え付けた構成の付勢部材96を設ける場合について述べた。また第2の実施の形態においては、弾性変形し得るコイルバネでなる付勢部材296の先端近傍に回転可能な当接部材298を設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図13と対応する図14に示すリフト搬送部375のように、保持フレーム395Bの右側に複数の付勢部材296を取り付け、その右端に当接部材398を取り付けても良い。この当接部材398は、図15に模式的な斜視図を示すように、左半分が直方体状でなり、右半分が当接部材298の右側部分と同様の半円柱状となっている。すなわち付勢部材としては、上下方向に関して硬貨最小直径RSよりも短い間隔毎に、硬貨CNに応じて弾性変形し得る構成であれば良い。さらに本発明は、弾性変形に伴う弾性力に限らず、例えば磁力等の他の種々の力を利用して、当接部材298等をリフトベルト93側へ付勢しても良い。
また上述した第1の実施の形態においては、リフト搬送部75の保持フレーム95に、上下方向に沿った付勢部材96を1列のみ設ける場合について述べた(図10)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば付勢部材を2列以上設けても良い。或いは、側面ガイド94同士の間の全範囲に渡り付勢部材96を設けても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、リフト鉛直搬送部75Vにおけるベルト本体93Bの表面からの間隔が距離L8(図10)となる位置に規制ガイド97を設け、硬貨CNの左方向(すなわちリフトベルト93から離隔する方向)への移動を規制する場合について述べた(図6等)。しかしながら本発明はこれに限らず、ベルト本体93Bの表面からの間隔が種々の距離となる位置に規制ガイド97を設けても良い。或いは、例えば付勢部材96のみにより硬貨CNの左方向への移動範囲を規制できる場合等に、規制ガイド97を省略しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、リフト鉛直搬送部75Vにおいて、リフトベルト93の走行方向である上下方向に関し、突起93P同士の間隔である距離L3(図8(B))を硬貨最小直径RSの2倍よりも小さく(短く)する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、距離L3を硬貨最小直径RSの2倍以上とし、1つの突起間収容部93Sに2枚以上の硬貨CNを突起93Pに乗り上げること無く収容し得るようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、リフト鉛直搬送部75Vにおいて、ベルト本体93Bの表面から突起93Pの先端までの間隔であり、該突起93Pの突出量である距離L4(図9(A)及び図10)を、硬貨最小厚さTSと同等若しくはこれよりも小さく(短く)する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば距離L4を硬貨最小厚さTSよりも大きく、且つ該硬貨最小厚さTSの2倍未満としても良い。この場合、1枚のみの硬貨CNを、又は重なった2枚の硬貨CNを、突起93Pに引っ掛けて搬送することができる。この場合、突起93Pとの干渉を回避するように、ベルト本体93Bの表面から付勢部材96までの距離L6や規制ガイド97までの距離L8等を適宜設定すれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、ベルト本体93Bの表面において、前後方向に離れた2箇所に突起93Pを設ける場合について述べた(図6(B)等)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば突起93Pを前後方向に並べる数を1個又は3個以上としても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、突起93Pのうちリフト鉛直搬送部75Vにおける下側の側面を、ベルト本体93Bの表面及びこれと垂直な方向に対して傾斜させる場合について述べた(図9(A)等)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば突起93Pの当該側面を、種々の曲面や複数の平面を組み合わせた形状としても良く、或いはリフトベルト93の表面に対して垂直な平面としても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、紙幣入出金装置4と共に釣銭機3を構成する硬貨入出金装置5に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣入出金装置4を有さず硬貨CNのみを取り扱う釣銭機3に組み込まれる硬貨入出金装置5に本発明を適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した第1の実施の形態においては、レジ係員に操作されるレジ釣銭機1に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば顧客が操作するセルフ型端末の精算機(いわゆるセルフレジ)に適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、ローラとしての駆動ローラ91と、ベルト部としてのリフトベルト93と、ガイド部としてのガイド部100とによって媒体搬送装置としてのリフト搬送部75を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなるローラと、ベルト部と、ガイド部とによって媒体搬送装置を構成しても良い。