以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1-1.レジ釣銭機の全体構成]
図1に外観を示すように、レジ釣銭機1は、それぞれ独立した装置である上側のPOSレジ2と下側の釣銭機3とにより構成されている。このレジ釣銭機1は、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストアのような小売店舗の精算所(いわゆるレジ)において、顧客が購入したい商品を精算する際に、レジ係員により操作される。
なお以下では、レジ係員が対峙する側面及びその反対面をそれぞれ前面及び後面とし、さらに当該レジ係員から見て左右及び上下を定義して説明する。
POSレジ2は、レジ制御部11、表示操作部12、レシート処理部13等を有している。またPOSレジ2には、図示しないバーコードリーダが接続されており、商品に付されたバーコードをこのバーコードリーダで読み取ることにより、当該商品を認識する。
レジ制御部11は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有しており、該CPUにより該ROM等から読み出した所定のプログラムを実行することにより種々の処理を行い、全体を統括制御する。
表示操作部12は、いわゆるタッチパネルであり、認識した商品の名称や金額等を表示し、またレジ係員による入力操作を受け付けてレジ制御部11へ送信する。これに応じてレジ制御部11は、商品の数量の増減や金額の修正等を行うことができる。レシート処理部13は、認識した商品の名称や金額等をレシートに印字し、これをレシート排出口から排出する。
一方、釣銭機3は、大きく分けて、右側に配置され紙幣を取り扱う紙幣入出金装置4と、左側に配置され硬貨を取り扱う硬貨入出金装置5と、前側上部の表示操作部6とにより構成されている。因みに硬貨は、一般的な硬貨と同様、ニッケル、銅、アルミニウム等の金属又はこれらの合金でなり、円形の底面を2面有する薄い円板状に形成されている。
紙幣入出金装置4は、レジ係員により紙幣入出金部21から入金された紙幣を取り込んで内部の紙幣収納庫22に収納し、またレジ制御部11から指示された紙幣を紙幣収納庫22から繰り出し、これを紙幣入出金部21から釣銭として出金する。
硬貨入出金装置5は、内部に硬貨制御部30を有しており、その前側における上段左寄りに硬貨投入部31が設けられ、その下方に硬貨出金トレイ32が設けられている。この硬貨入出金装置5は、硬貨制御部30の制御に基づき、レジ係員により硬貨投入部31へ投入された硬貨を取り込んで内部の収納庫に収納すると共に、レジ制御部11から指示された金額に応じた金種及び枚数の硬貨を硬貨出金トレイ32から釣銭として出金する(詳しくは後述する)。
表示操作部6は、所定の表示パネル及び所定の操作ボタンの組み合わせにより構成されている。表示操作部6の表示パネルは、紙幣入出金装置4及び硬貨入出金装置5における稼働状況として、例えば硬貨入出金装置5において釣銭用の硬貨が不足していることや、所定のセンサにより異常を検出したこと、及びその箇所等を表示する。また表示操作部6の操作ボタンは、レジ係員等による押下操作を介して、例えば硬貨の搬送等に関する指示を受け付ける。
このレジ釣銭機1は、例えば顧客が商品の購入代金を支払う精算手続において、POSレジ2により各商品に付されたバーコードを読み取る等して商品の購入代金を算出し、顧客に通知する。これに応じて顧客は、購入代金以上の金銭、すなわち紙幣及び硬貨をレジ係員に預ける。レジ係員は、顧客から預かった紙幣を紙幣入出金装置4の紙幣入出金部21に投入すると共に硬貨を硬貨入出金装置5の硬貨投入部31に投入する。これに応じて硬貨入出金装置5では、入金処理(詳しくは後述する)が行われ、入金された硬貨の合計金額をレジ制御部11に通知する。紙幣入出金装置4も、同様に入金された紙幣の合計金額をレジ制御部11に通知する。
レジ制御部11は、入金された紙幣及び硬貨の合計金額から商品の購入代金を減算して釣銭の金額を算出すると共に、紙幣入出金装置4及び硬貨入出金装置5からそれぞれ出金すべき金額(以下これを出金額と呼ぶ)を算出して該紙幣入出金装置4及び該硬貨入出金装置5へそれぞれ通知する。硬貨入出金装置5は、通知された出金額に応じて出金処理(詳しくは後述する)を行うことにより、該出金額の硬貨を硬貨出金トレイ32に排出し、レジ係員に受け取らせる。紙幣入出金装置4も同様に出金額の紙幣を紙幣入出金部21に排出し、レジ係員に受け取らせる。レジ係員は、レシート等と共に釣銭の紙幣及び硬貨を顧客に返却して一連の精算手続を完了する。
[1-2.硬貨入出金装置の構成]
次に、硬貨入出金装置5の構成について説明する。硬貨入出金装置5は、図2及び図3に模式的な平面図を示すように、大きく分けて上側の上段部5U(図2)及び下側の下段部5L(図3)により構成されている。また硬貨入出金装置5の中央付近であって、下段部5L(図3)における硬貨出金トレイ32の後側には、硬貨を金種ごとに収納する6個の収納庫33(33A、33B、33C、33D、33E及び33F)が左右方向に沿って並ぶように配置されている。
[1-2-1.上段部の構成]
上段部5U(図2)の硬貨投入部31は、全体として中心軸を上下方向に沿わせた円柱状に形成され、その内部にすり鉢状に窪んだ投入空間31Sが形成され、また底部に回転可能な円盤31Cが組み込まれている。さらに硬貨投入部31には、投入空間31S内における硬貨の有無を検知するセンサ(図示せず)も組み込まれている。
これに加えて硬貨投入部31には、投入空間31Sを閉塞して新たな硬貨の投入を抑止するためのシャッタ(図示せず)も設けられている。このシャッタは、レジ係員の手作業により開閉可能となっており、また閉塞されているか否かを所定のシャッタ閉塞センサにより検知して硬貨制御部30へ通知するようになっている。さらに硬貨投入部31は、硬貨制御部30の制御によりシャッタを閉塞状態に保持するロック機構(図示せず)も有している。
硬貨投入部31は、投入空間31S内へ硬貨が投入されたことをセンサにより検知すると、円盤31Cを回転させ、硬貨に遠心力を作用させて外周側へ搬送し、後側に配置された投入受渡部35に引き渡す。
投入受渡部35の後側には、収納庫33の上側における前後左右を中空の長方形状に繋ぐようにして投入搬送部36が配置されている。因みに上段部5Uにおける投入搬送部36の内側には、収納庫33を構成する部品が一部に配置されているものの、それ以外の大部分が上下に貫通する空間となっている。このため図2では、上段部5Uの一部である投入搬送部36の内側に、下段部5Lを構成する収納庫33の一部が見える様子を表している。
投入搬送部36は、収納庫33の上側における前側、右側及び後側において上面が平面状に形成された投入搬送ガイド37と、該投入搬送ガイド37の上側において前左、前右、後右及び後左の4箇所にそれぞれ配置されたベルトローラ38と、該ベルトローラ38の周囲に張架されたピンベルト39により構成されている。ベルトローラ38は、中心軸を上下方向に沿わせた円柱状に形成されており、該中心軸を中心として回転し得るようになっている。ピンベルト39は、可撓性を有する材料により構成され、上下方向に所定の長さ(すなわち幅)を有するベルトに対し、周方向に沿って所定間隔毎にピン(図示せず)が設けられた構成となっている。
投入搬送部36は、図示しないモータからベルトローラ38に駆動力を供給して回転させることにより、ピンベルト39を図2における反時計回りに所定の走行速度で走行させる。一方、投入受渡部35は、硬貨投入部31から硬貨を受け取ると、走行するピンベルト39の各ピンに合わせたタイミングで当該硬貨を投入搬送部36に引き渡す。
これに応じて投入搬送部36は、供給された硬貨をピンベルト39のピンに引っ掛けるようにして、該ピンベルト39の走行に伴い硬貨を搬送する。投入搬送部36は、ピンベルト39の走行に伴い、投入搬送ガイド37に沿って、収納庫33の上前側を右方向へ向けて、該収納庫33の上右側を後方向へ向けて、さらに該収納庫33の上後側を左方向へ向けて、それぞれ硬貨を搬送する。説明の都合上、以下ではピンベルト39の走行により投入搬送ガイド37に沿って硬貨を搬送する経路を投入搬送路Wとも呼ぶ。
上段部5Uにおける硬貨投入部31の右後側であって、投入搬送路Wに沿って投入受渡部35よりも下流側には、認識部40が配置されている。認識部40は、光学センサや磁気センサ等、種々のセンサを有しており、各センサから得られた結果を基に、硬貨が正当であるか否か、及びその金種を判定して該硬貨制御部30に通知する。これに応じて硬貨制御部30は、当該硬貨の搬送先を決定する。
因みに認識部40は、硬貨を、1円、5円、10円、50円、100円及び500円の6種類のいずれであるか(すなわち真正な硬貨であるか)、若しくはいずれの金種とも判別できず真正でない可能性がある硬貨(以下これをリジェクト硬貨と呼ぶ)であるかを判別する。
上段部5Uにおける認識部40の右側、すなわち投入搬送路Wに沿って該認識部40の下流側には、リジェクト切替部41が設けられている。搬送切替部としてのリジェクト切替部41は、板状のリジェクトブレード42と、該リジェクトブレード42を駆動するアクチュエータ(図示せず)と、投入搬送ガイド37を上下方向に貫通するリジェクト孔部43とにより構成されている。リジェクトブレード42は、上下に薄い板状に形成されており、右辺近傍に設けられ前後方向に沿った回動軸を中心として、投入搬送ガイド37に対し回動可能に構成されている。
リジェクト切替部41は、硬貨制御部30の制御に基づき、アクチュエータからリジェクトブレード42へ駆動力を伝達して回動させる。これによりリジェクト切替部41は、リジェクトブレード42の上面を投入搬送ガイド37の上面とほぼ揃えた状態(以下これを閉状態又は収納状態と呼ぶ)と、該リジェクトブレード42の左側を持ち上げて上面を投入搬送ガイド37に対し傾斜させた状態(以下これを開状態又はリジェクト状態と呼ぶ)に切り替えることができる。
リジェクト切替部41は、閉状態において、投入搬送部36により上流側から搬送されてきた硬貨をそのまま下流へ、すなわち右方向へ進行させる。またリジェクト切替部41は、開状態において、投入搬送部36により上流側から搬送されてきた硬貨をリジェクト孔部43から下方へ落下させる。
リジェクト孔部43の下側には、リジェクト搬送部44が設けられている。リジェクト搬送部44は、いわゆるベルト搬送機構となっており、中心軸を前後方向に沿わせた円柱状のベルトローラを左右に1個ずつ配置すると共に、両ベルトローラの周囲に無端ベルトでなるリジェクト搬送ベルトを周回させるように構成されている。このうち左側のベルトローラは、最も右側の収納庫33Fにおける前端近傍の上側に配置されている。また右側のベルトローラは、リジェクトブレード42の右辺よりも右側に配置されている。
リジェクト搬送部44は、リジェクト搬送ベルトの上側部分を左方向へ走行させることにより、リジェクト孔部43から落下してきた硬貨を左方向へ搬送し、最も右側の収納庫33Fにおける前端近傍に落下させる。
一方、投入搬送部36は、リジェクト切替部41が閉状態であった場合、硬貨をそのまま右方向へ搬送した後、前右のベルトローラ38に沿って進行方向を後ろ向きに変更し、さらに後右のベルトローラ38に沿って進行方向を左向きに変更する。投入搬送部36における収納庫33の上後側部分には、選別部45が設けられている。選別部45は、リジェクト切替部41とそれぞれ同様に構成された6個の選別切替部46(46A、46B、46C、46D、46E及び46F)により構成されている。
各選別切替部46は、それぞれ各収納庫33の真上に位置しており、硬貨制御部30の制御に基づき、リジェクトブレード42と同様に構成された選別ブレード47をそれぞれ回動させることにより、投入搬送ガイド37を上下方向に貫通する選別孔部48を閉塞又は開放する。選別部45は、硬貨制御部30の制御に基づき、何れか1個の選別切替部46を開状態とし、他の選別切替部46を閉状態とすることにより、開状態とした選別切替部46と対応する収納庫33に硬貨を落下させて収納させることができる。
[1-2-2.下段部の構成]
下段部5L(図3)の各収納庫33は、上方から見て、何れも前後方向に長く、左右方向に短い長方形状に仕切られており、選別部45の各選別切替部46(図2)から落下されてくる硬貨を内部の収納空間50にそれぞれ収納する。
また収納庫33は、図3におけるA1-A2断面を図4に示すように、収納空間50の底部に収納搬送部51が組み込まれている。収納搬送部51は、前側の上寄り及び後側の下寄りにそれぞれ配置された収納搬送ローラ52及び53の周囲を周回するように、無端ベルトでなる収納搬送ベルト54が張架された構成となっている。すなわち収納庫33では、収納搬送ベルト54における上側部分の上面が、収納空間50の底面を形成している。
収納搬送部51は、硬貨制御部30の制御に基づき、所定のモータ(図示せず)から駆動力を収納搬送ローラ52及び53へ伝達し、それぞれ図4における反時計回りに回転させる。これにより収納搬送部51は、収納搬送ベルト54の上側部分を前方向へ進行させ、これにより収納空間50内に収納されている硬貨を前方へ搬送する。
説明の都合上、以下では収納搬送ベルト54により硬貨を搬送する前方向を搬送方向とも呼び、この搬送方向と交差する左右方向(図3)を交差方向とも呼ぶ。すなわち各収納庫33は、この交差方向に沿って配置されている。
収納庫33(図4)における収納空間50内の前寄りには、リバースローラ55、出金ゲート56及び出金センサ57が設けられている。リバースローラ55は、中心軸を左右方向に向けた円柱状に構成されており、その下側面と収納搬送ベルト54の上側部分との間に硬貨の厚さよりも僅かに広い隙間を空けるように配置されている。このリバースローラ55は、硬貨制御部30の制御に基づき所定のモータ(図示せず)から駆動力が伝達されることにより、図4の時計回りに、すなわち下側面を後方へ進行させるよう回転する。これによりリバースローラ55は、収納搬送ベルト54上に2枚以上の硬貨が積み重なった状態で前方向へ搬送されていた場合、最下層の硬貨を除いた上層の硬貨をせき止め、或いはその重なりを崩しながら、硬貨を1枚ずつ通過させる。
出金ゲート56は、その下側に細長い円柱状の出金ゲートピン56Pを有しており、硬貨制御部30の制御に基づき、出金ゲートピン56Pを所定の移動範囲内で上下方向に移動させる。この出金ゲートピン56Pは、最も上側に移動されると、その下端と収納搬送ベルト54の上側部分との間に硬貨の厚さよりも大きい隙間を形成し、当該ベルトにより搬送されている硬貨と干渉することなく通過させる。一方、出金ゲートピン56Pは、最も下側に移動されると、その下端を収納搬送ベルト54におけるベルトの上側部分に近接若しくは当接させ、硬貨の搬送を抑止すると共に、収納庫33内からの硬貨の流出や不正行為等による硬貨の取り出しを防止する。
出金センサ57は、収納搬送部51の前端から前方へ繰り出される硬貨、すなわち収納庫33から排出される硬貨を1枚ずつ検知し、得られた検知結果を硬貨制御部30へ通知する。これにより硬貨制御部30は、収納庫33から排出された硬貨の枚数を計数し、当該枚数に応じて各部を制御することができる。説明の都合上、以下では、収納庫33における収納搬送部51の前端部分であって前方へ硬貨を排出する部分を排出端58とも呼ぶ。
このように収納庫33は、硬貨制御部30の制御に基づき、収納搬送部51やリバースローラ55等を動作させることにより、収納している硬貨を排出端58から前方へ、すなわち硬貨出金トレイ32へ排出する(すなわち出金する)ことができる。因みに、最も右側の収納庫33F(図3)は、上側に位置するリジェクト搬送部44から硬貨が落下されてきた場合、収納搬送部51の収納搬送ベルト54を走行させることにより、該硬貨を前方へ進行させ、硬貨出金トレイ32へ排出することができる。
因みに硬貨制御部30は、認識部40による認識結果や各出金センサ57による検知結果等を集計することにより、各収納庫33における収納枚数をそれぞれ把握し、逐次更新している。また各収納庫33は、図示しないセンサにより、最大収納量の硬貨を収納していることを検知し硬貨制御部30に通知し得るようになっている。
図3及び図4に示したように、下段部5Lにおける各収納庫33の前側には、硬貨出金トレイ32が配置されている。硬貨出金トレイ32は、図3に示したように、左右方向に関する長さが、後端部分において6個分の収納庫33と同等であり比較的長くなっているものの、前方へ進むに連れて、左端が右寄りに移動し、徐々に短くなっている。
硬貨出金トレイ32は、大きく分けて後側の傾斜案内部32Rと、前側の貯留部32Fとにより構成されている。傾斜案内部32Rは、図3に示したように、上方から見て後辺よりも前辺が短い台形状に形成されている。また傾斜案内部32Rは、図4に示したように、後側の約2/3の範囲を占めるトレイ切替部61と、その前側の固定傾斜部62とにより構成されている。
排出切替部としてのトレイ切替部61は、リジェクト切替部41(図2等)と類似した構成となっており、板状のトレイブレード63と、該トレイブレード63を駆動するアクチュエータ(図示せず)と、硬貨出金トレイ32を上下方向に貫通するトレイ孔部64とにより構成されている。
トレイブレード63は、左右方向に長く前後方向に短く上下に薄い板状に形成されており、前端近傍に設けられた左右方向に沿った回動軸を中心に、固定傾斜部62に対して回動し得るように構成されている。因みにトレイブレード63は、硬貨出金トレイ32における左端から右端に至るほぼ全ての範囲に渡り、すなわち6個の収納庫33と対応する全幅に渡り、設けられている。
トレイ切替部61は、アクチュエータからトレイブレード63へ駆動力を伝達することにより、該トレイブレード63を回動させることができる。トレイ切替部61は、図4に示したようにトレイブレード63を傾斜させた場合、トレイ孔部64を閉塞し、またトレイブレード63及び固定傾斜部62により一様な傾斜面を形成する。この場合、トレイ切替部61は、収納庫33の排出端58から排出された硬貨をトレイブレード63の上面に当接させ、さらに該硬貨を傾斜面に沿って滑降させる。以下、これを閉状態又は貯留状態と呼ぶ。一方、トレイ切替部61は、図5に示すように、トレイブレード63の後側を前方へ引き起こした場合、トレイ孔部64を開放する。この場合、トレイ切替部61は、収納庫33の排出端58から排出された硬貨をトレイ孔部64から下方へ落下させる。以下これを開状態又は落下状態と呼ぶ。
このようにトレイ切替部61は、硬貨制御部30の制御に基づいてトレイブレード63を回動させることにより、貯留状態(図4)又は落下状態(図5)に切り替えることができる。
傾斜案内部32Rは、トレイ切替部61を貯留状態(図4)としている場合、その後端、すなわちトレイブレード63の後端を比較的高い位置、具体的には収納庫33の収納搬送部51における前端部分の排出端58よりも僅かに低い位置に合わせており、この後端から前方へ進むに連れて下降するように傾斜している。このため傾斜案内部32Rは、トレイ切替部61を貯留状態としたときに、収納庫33の排出端58から硬貨がトレイブレード63上に落下してきた場合、該硬貨を傾斜面に沿って、すなわちトレイブレード63及び固定傾斜部62の上面に沿って、前下方へ滑降させ、貯留部32Fに到達させる。
貯留部32Fは、上方から見て概ね半楕円状に形成されており、底部がほぼ平坦な平面状に形成されると共に、左側から前側を経て右側に至る外周部分に底面よりも十分に高い側壁部が形成されている。このため貯留部32Fは、傾斜案内部32Rに沿って滑降してきた硬貨を、硬貨入出金装置5の外部から取出可能な状態で貯留することができる。
このように硬貨出金トレイ32は、その後半部分であり硬貨を傾斜面に沿って貯留部32Fへ滑降させるための傾斜案内部32Rに、トレイ切替部61が組み込まれた構成となっている。これを他の観点から見れば、硬貨入出金装置5では、収納庫33から硬貨が排出される排出端58と、レジ係員に硬貨を取り出させるための貯留部32Fとの間に、硬貨の行き先を切り替えるトレイ切替部61が配置された構成となっている。
また他の観点から見ると、硬貨入出金装置5では、リジェクト切替部41を開放状態に切り替えると、リジェクト孔部43から落下した硬貨をリジェクト搬送部44により搬送して収納庫33F上に落下させ、該収納庫33Fの収納搬送部51により該硬貨を前方へ進行させて排出し、トレイ切替部61(すなわち排出切替部)へ導くことができる。このため以下では、リジェクト切替部41の開放状態を排出切替状態とも呼ぶ。
一方、トレイ孔部64の下方には、横搬送部70が設けられている。横搬送部70は、図2におけるB1-B2断面図、すなわち図4及び図5におけるC1-C2断面図を図6に示すように、横搬送ローラ71及び72並びに横搬送ベルト73により構成されている。横搬送ローラ71は、最も左側の収納庫33Aよりもやや左側に位置している。また横搬送ローラ72は、最も右側の収納庫33Fよりもやや右側に位置している。横搬送ベルト73は、無端ベルトでなり、横搬送ローラ71及び72の周囲を周回するように張架されている。
交差搬送部としての横搬送部70は、開放状態であるトレイ切替部61のトレイ孔部64から硬貨が落下してくると、この硬貨を横搬送ベルト73上に載置させる。説明の都合上、以下では、横搬送ベルト73上の空間を横搬送空間70Sとも呼ぶ。また横搬送部70は、横搬送ローラ71及び72を図6における時計回りに回転させることにより、横搬送ベルト73の上側部分を右方向へ進行させる。これにより横搬送部70は、横搬送空間70S内の硬貨、すなわち横搬送ベルト73上に載置されている硬貨を、交差方向の一方である右方向へ搬送する。
横搬送部70の右側には、リフト部75が設けられている。持上搬送部としてのリフト部75は、複数のローラやベルト等の組み合わせにより構成されており、また全体として前後方向及び左右方向よりも上下方向に拡がるように各ローラ等が配置されている。このリフト部75は、各ローラを適宜回転させ、また各ベルトを適宜走行させることにより、横搬送部70により搬送されてきた硬貨を上方へ持ち上げるように搬送し、トレイ切替部61の上側に配置されている予備収納ガイド78(図2、図4及び図5)に引き渡す。
予備収納ガイド78は、その上面が傾斜面となっており、左前側が低くなると共に予備収納庫80に接続されている。このため予備収納ガイド78は、リフト部75から引き渡された硬貨を傾斜面に沿って進行させ、予備収納庫80内に到達させる。
予備収納庫80は、上段部5U(図2)における硬貨投入部31の右側であって、下段部5L(図3)における硬貨出金トレイ32のトレイ切替部61よりも上側に位置している。この予備収納庫80(図6)は、全体として予備収納筐体81により周囲を囲まれた直方体状に形成されており、その内部に予備収納空間80Sを形成しており、その底部分に予備収納搬送部82が設けられている。
予備収納媒体引渡部としての予備収納搬送部82は、収納庫33の収納搬送部51(図4等)と同様の構成となっている。具体的に予備収納搬送部82は、左右それぞれに配置された予備収納搬送ローラ83及び84の周囲を周回するように予備収納搬送ベルト85が張架されている。また予備収納搬送部82では、左側の予備収納搬送ローラ83が右側の予備収納搬送ローラ84よりも高い位置に配置されている。
さらに予備収納庫80には、硬貨投入部31との境界部分に、開閉可能な仕切部87が設けられている。仕切部87は、閉塞状態において予備収納庫80内の予備収納空間80Sを硬貨投入部31内の投入空間31Sと仕切る一方、開放状態において予備収納空間80Sを投入空間31Sと連通させる。
かかる構成により予備収納庫80は、仕切部87を閉塞状態とすることにより、リフト部75により持ち上げられ予備収納ガイド78により案内されてきた硬貨を、予備収納空間80S内に、すなわち予備収納搬送ベルト85上に載置して収納する。またこの場合、硬貨投入部31は、投入空間31Sに投入された硬貨を予備収納庫80側へ進行させることなく、投入受渡部35(図2)に引き渡すことができる。
一方、予備収納庫80は、仕切部87を開放状態とすると共に、予備収納搬送部82の予備収納搬送ベルト85を、上側部分を左方向へ走行させることにより、予備収納空間80S内の硬貨を左方向へ搬送し、硬貨投入部31へ引き渡す。このとき硬貨投入部31は、硬貨が入金された場合と同様に動作することにより、この硬貨を投入受渡部35(図2)により投入搬送部36へ引き渡すことができる。
このように予備収納庫80は、トレイ切替部61が落下状態(図5)となりトレイ孔部64から落下し横搬送部70及びリフト部75により搬送された硬貨を予備収納空間80S内に収納し、また該硬貨を硬貨投入部31に引き渡すようになっている。このため以下では、トレイ切替部61においてトレイブレード63を開放した状態を予備収納状態とも呼ぶ。また以下では、横搬送部70及びリフト部75をまとめて予備搬送部とも呼ぶ。
[1-3.硬貨入出金装置の処理]
次に、硬貨入出金装置5における入金処理、出金処理、自己精査処理、オーバーフロー処理及び自動補充処理について、それぞれ説明する。ここでは、硬貨入出金装置5を模式的なブロック図により表した図7を参照しながら、以下説明する。
[1-3-1.入金処理]
入金処理は、硬貨投入部31に投入された硬貨を認識し、正当な硬貨を金種ごとに区別して各収納庫33に収納すると共に、偽造された硬貨や硬貨以外のものを硬貨出金トレイ32から排出する処理である。硬貨入出金装置5では、上述した精算手続において、顧客により商品の購入代金として硬貨を預かった場合に、この入金処理が行われる。
硬貨制御部30は、例えば硬貨投入部31のセンサにより投入空間31Sに硬貨が投入されたことを検知すると、この入金処理を開始する。このとき硬貨制御部30は、事前準備として、リジェクト切替部41を収納状態(閉状態)に切り替え、各選別切替部46を閉状態に切り替え、さらにトレイ切替部61を貯留状態(閉状態)に切り替えさせる。
硬貨投入部31は、投入された硬貨を1枚ずつ投入受渡部35(図2)に引き渡し、該投入受渡部35から投入搬送部36に順次引き渡す。投入搬送部36は、投入搬送路Wに沿って硬貨を搬送し、認識部40により該硬貨を認識させ、認識結果(すなわち真偽及び金種)を硬貨制御部30へ通知させる。
これに応じて硬貨制御部30は、硬貨が正当でないと認識された場合、当該硬貨の搬送先を硬貨出金トレイ32に決定し、また硬貨が正当であると認識された場合、当該硬貨の搬送先を、その金種に応じた収納庫33に決定する。
硬貨制御部30は、硬貨の搬送先が収納庫33である場合、リジェクト切替部41を収納状態(図4)のままとし、当該硬貨を投入搬送部36により投入搬送路Wに沿って選別部45まで搬送させる。続いて硬貨制御部30は、選別部45において硬貨の金種に応じた選別切替部46を開状態に切り替え、収納庫33に落下させて収納させる。
また硬貨制御部30は、硬貨の搬送先が硬貨出金トレイ32である場合、リジェクト切替部41を落下状態(図5)に切り替え、当該硬貨をリジェクト孔部43から落下させる。続いて硬貨制御部30は、リジェクト搬送部44により硬貨を左方向へ搬送して収納庫33F上に落下させ、該収納庫33Fの収納搬送部51により該硬貨を硬貨出金トレイ32のトレイ切替部61上に落下させる。これにより硬貨は、トレイ切替部61のトレイブレード63及び固定傾斜部62に沿って滑降し、貯留部32Fに到達して排出される。
[1-3-2.出金処理]
出金処理は、レジ制御部11(図1)から指示された金種及び枚数の硬貨を収納庫33から硬貨出金トレイ32にそれぞれ排出する処理である。硬貨入出金装置5では、上述した精算手続において、顧客に返却すべき釣銭に硬貨が含まれる場合に、この出金処理が行われる。
硬貨制御部30は、レジ制御部11から出金すべき硬貨の金種及び枚数の指示を受けると、この出金処理を開始する。このとき硬貨制御部30は、事前準備として、入金処理の場合と同様に、リジェクト切替部41を収納状態(閉状態)に切り替え、各選別切替部46を閉状態に切り替え、さらにトレイ切替部61を貯留状態(閉状態)に切り替えさせる。
各収納庫33は、硬貨制御部30の制御に基づき、レジ制御部11からそれぞれに指示された枚数の硬貨を排出端58から排出して硬貨出金トレイ32のトレイ切替部61上に落下させる。これにより硬貨は、トレイ切替部61のトレイブレード63及び固定傾斜部62に沿って滑降し、貯留部32Fに到達して排出される。
[1-3-3.自己精査処理]
自己精査処理は、例えば小売店舗の営業が終了した後等のタイミングで、収納庫33に収納している硬貨の枚数を計数すると共に、該硬貨が全て正当であり該収納庫33に対応付けられた金種であることも確認する処理である。
因みに硬貨制御部30は、レジ係員からの指示に従い、1金種の硬貨のみについて自己精査処理を行うことも、2金種以上の硬貨について自己精査処理を順次行うこともできる。ここでは、1金種の硬貨の自己精査処理を行う場合について説明する。
レジ制御部11(図1)は、レジ係員により表示操作部12や表示操作部6を介して自己精査処理の開始操作がなされると、硬貨入出金装置5の硬貨制御部30に対し自己精査処理の開始を指示する。これに応じて硬貨制御部30は、自己精査処理を開始する。
まず硬貨制御部30は、レジ制御部11(図1)を介して表示操作部12に所定のメッセージを表示する等して、レジ係員に硬貨投入部31のシャッタを閉塞させる。また硬貨制御部30は、硬貨投入部31のシャッタ閉塞センサにより該シャッタが閉塞されたことを検知すると、ロック機構により該シャッタを閉塞状態にロックすると共に、該硬貨投入部31及び予備収納庫80の境界に設けられた仕切部87を開放させる。さらに硬貨制御部30は、トレイ切替部61を落下状態(図5)に切り替える。
次に硬貨制御部30は、指示された金種の硬貨が収納されている収納庫33から、収納されている全ての硬貨を排出させる。このとき排出された硬貨は、排出端58(図5)からトレイ切替部61に落下し、トレイ孔部64を介して横搬送部70に到達する。またこのとき収納庫33は、出金センサ57(図5)により、収納庫33から排出される硬貨を1枚ずつ検知して硬貨制御部30に通知する。これにより硬貨制御部30は、収納庫33から排出された硬貨の枚数、すなわち該収納庫33に収納されていた硬貨の枚数を計数することができる。
さらに硬貨制御部30は、横搬送部70及びリフト部75により硬貨を予備収納庫80へ順次搬送し、予備収納空間80S内に収納させる。予備収納庫80は、予備収納搬送部82により予備収納空間80S内の硬貨を硬貨投入部31へ順次搬送する。
その後、硬貨制御部30は、各部に入金処理と同様の処理を行わせる。すなわち硬貨投入部31は、投入受渡部35により硬貨を投入搬送部36へ順次引き渡す。投入搬送部36は、各硬貨を順次搬送しながら認識部40により認識させ、得られた認識結果を硬貨制御部30に通知する。硬貨制御部30は、認識結果を基に各硬貨の搬送先を決定し、投入搬送部36により該搬送先へ搬送させる。
最後に硬貨制御部30は、認識結果を集計し、得られた集計結果を最初に収納庫33から排出した硬貨の枚数と比較すると共に、集計結果や比較結果等を表示操作部12(図1)等に表示する。例えば硬貨制御部30は、最初に収納庫33から排出した枚数と、再び収納庫33へ搬送して収納させた枚数が一致すれば、正常終了となり、これ以外の場合は、異常終了となる。
[1-3-4.オーバーフロー処理]
オーバーフロー処理は、所定の金種に対応した収納庫33において最大収納量の硬貨が既に収納されている状態で、新たに投入された当該金種の硬貨を予備収納庫80に収納させる処理である。
硬貨制御部30は、所定の金種に対応した収納庫33において所定のセンサ(図示せず)により最大収納量の硬貨が収納された状態(以下これを最大収納状態と呼ぶ)であることを検知すると、当該金種の硬貨についてオーバーフロー処理を行うよう設定する。以下、この金種をオーバーフロー金種と呼ぶ。
その後、硬貨制御部30は、入金処理において認識部40により得られた認識結果を基に、オーバーフロー金種の硬貨が投入搬送部36により搬送されていることを認識すると、当該硬貨の搬送先を収納庫33では無く予備収納庫80に設定する。
具体的に硬貨制御部30は、まずリジェクト切替部41をリジェクト状態(開状態)に切り替えると共にトレイ切替部61を落下状態(開状態)に切り替える。続いて硬貨制御部30は、リジェクト切替部41において当該硬貨を落下させ、リジェクト搬送部44により当該硬貨を収納庫33Fの上側における前端近傍へ搬送して落下させる。
さらに硬貨制御部30は、収納庫33Fの出金ゲート56により該収納庫33Fに収納されている硬貨の出金を抑止した状態で、リジェクト搬送部44から落下してきた当該硬貨を前方向へ送り出し、排出端58から排出させる。これにより当該硬貨は、硬貨出金トレイ32のトレイ切替部61を落下して横搬送部70に到達する。硬貨制御部30は、当該硬貨を横搬送部70及びリフト部75により順次搬送し、予備収納庫80に収納させる。
[1-3-5.自動補充処理]
自動補充処理は、所定の金種の硬貨を事前に予備収納庫80内に収納しておき(以下これを予備収納処理と呼ぶ)、当該金種に対応した収納庫33において収納されている硬貨が少なくなった場合に、予備収納庫80内の硬貨を収納庫33へ搬送して補充する処理(以下これを補充処理と呼ぶ)である。
レジ制御部11(図1)は、レジ係員により表示操作部12や表示操作部6を介して自動補充処理を行う操作指示及び金種の指定がなされると、硬貨入出金装置5の硬貨制御部30に対し自動補充処理を指示する。説明の都合上、以下ではここで指定された金種を自動補充金種と呼ぶ。
これに応じて硬貨制御部30は、まず硬貨を予備収納庫80に収納する予備収納処理を行う。具体的に硬貨制御部30は、レジ係員により硬貨投入部31に投入される自動補充金種の硬貨を予備収納庫80に収納する。具体的に硬貨制御部30は、リジェクト切替部41をリジェクト状態(開状態)に切り替えると共にトレイ切替部61を落下状態(開状態)に切り替える。
そのうえで硬貨制御部30は、硬貨投入部31に硬貨が投入されると、入金処理の場合と同様に、入金された硬貨を投入受渡部35により投入搬送部36に順次引き渡し、投入搬送路Wに沿って搬送させる。続いて硬貨制御部30は、認識部40において、当該硬貨が自動補充金種の正当な硬貨であることを確認すると、当該硬貨をオーバーフロー処理の場合と同様にリジェクト切替部41及びトレイ切替部61等を介して予備収納庫80へ搬送して収納させる。これにより硬貨入出金装置5では、予備収納処理を完了する。
因みに硬貨制御部30は、投入された硬貨が自動補充金種と異なる金種であった場合や正当でないと判定された場合、トレイ切替部61を排出状態(閉状態)に切り替えることにより、当該硬貨を硬貨出金トレイ32の貯留部32Fへ搬送してレジ係員に返却する。
その後、硬貨制御部30は、出金処理を行う度に自動補充金種の収納庫33における収納枚数を確認し、所定の補充条件が満たされた場合、例えば所定の補充基準枚数(例えば20枚)を下回った場合に、補充処理を開始する。具体的に硬貨制御部30は、まずレジ制御部11と連携して表示操作部12や表示操作部6に収納庫33の収納枚数が補充基準枚数を下回った旨を表示すると共に、レジ係員に硬貨投入部31のシャッタを閉塞するよう促し、さらに補充処理の開始指示を待ち受ける状態となる。
硬貨制御部30は、レジ係員により硬貨投入部31のシャッタが閉塞されたことを検知し、且つ補充処理の開始指示を受け付けると、自己精査処理における後半部分と同様の処理を行う。すなわち硬貨投入部31は、投入受渡部35により硬貨を投入搬送部36へ順次引き渡す。
投入搬送部36は、各硬貨を順次搬送しながら認識部40により認識させ、得られた認識結果を硬貨制御部30に通知する。硬貨制御部30は、認識結果を基に各硬貨の搬送先を決定し、投入搬送部36により該搬送先へ搬送させる。通常であれば、予備収納庫80に収納されていた全ての硬貨が自動補充金種の収納庫33へ搬送されて収納される。これにより硬貨入出金装置5では、補充処理を完了する。
[1-4.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態によるレジ釣銭機1の硬貨入出金装置5は、各収納庫33を左右方向に沿って配置し、それぞれ前端に排出端58を設けて前方へ硬貨を排出するようにし、且つ該収納庫33の前側に硬貨出金トレイ32を隣接配置した(図3、図4及び図5)。これにより硬貨入出金装置5は、収納庫33から排出された硬貨を直ちに硬貨出金トレイ32のトレイブレード63及び固定傾斜部62に沿って滑降させ、貯留部32Fに貯留させることができる。
すなわち硬貨入出金装置5は、収納庫から排出された硬貨を排出搬送部等により硬貨出金トレイへ搬送する構成と比較して、極めて短時間で硬貨を出金することができ、これにより精算手続を行っている顧客やレジ係員の待ち時間を最小限に抑えることができる。
また硬貨入出金装置5は、硬貨出金トレイ32における後側、すなわち貯留部32Fと各収納庫33の排出端58との間に、トレイ切替部61を設け、該トレイ切替部61の下方に横搬送部70を配置し、該横搬送部70及びリフト部75を介して予備収納庫80へ硬貨を搬送するようにした(図5及び図6)。これにより硬貨入出金装置5は、トレイ切替部61を貯留状態(図4)又は落下状態(図5)に切り替えるだけで、収納庫33から排出された硬貨の行き先を貯留部32F又は予備収納庫80に容易に変更できる。
これを換言すれば、硬貨入出金装置5は、トレイ切替部61を硬貨出金トレイ32に組み込むことにより、収納庫33から排出された硬貨を直ちに硬貨出金トレイ32の貯留部32Fに到達させることと、自動精査処理等のために収納庫33から排出された硬貨を予備収納庫80へ搬送することとを、高い次元で両立させることができる。
さらに硬貨入出金装置5は、リジェクト切替部41をリジェクト状態に切り替えてリジェクト孔部43から落下した硬貨を、リジェクト搬送部44により収納庫33Fにおける排出端58の近傍に、すなわち硬貨出金トレイ32の上流側に搬送するようにした(図2、図4及び図5)。
これにより硬貨入出金装置5は、リジェクト切替部41を利用して、入金処理等において認識部40での認識結果を基に正当でないと判定された硬貨等を硬貨出金トレイ32の貯留部32Fへ到達させることとに加えて、オーバーフロー処理等において収納庫33を経由することなく硬貨を予備収納庫80へ搬送することも実現できる。
硬貨入出金装置5では、仮にオーバーフロー処理等において収納庫33を経由して硬貨を予備収納庫80へ搬送する場合、該収納庫33に少数の硬貨を追加収納して再び排出するための余裕を持たせる必要があり、該収納庫33に収納する硬貨の数量を意図的に削減しなければならない。これに対し本実施の形態による硬貨入出金装置5では、収納庫33に少数の硬貨を追加収納する必要が無いため、該収納庫33に最大収納量の硬貨を収納させることができる。
他の観点から見れば、硬貨入出金装置5では、予備収納庫80を設け、収納庫33から排出した硬貨又は硬貨投入部31に投入された硬貨を選択的に該予備収納庫80へ搬送し、また該予備収納庫80から繰り出した硬貨を投入搬送部36における認識部40よりも上流側へ引き渡すようにした。これにより硬貨入出金装置5では、一般的な入金処理及び出金処理に加えて、自動精査処理、オーバーフロー処理及び自動補充処理といった高度な処理を実現できる。
また硬貨入出金装置5は、予備収納庫80を硬貨投入部31に隣接配置すると共に、両者の間に開閉可能な仕切部87を設け、該仕切部87を開放したときに収納空間80Sを投入空間31Sと連通させるようにした(図6)。これにより硬貨入出金装置5では、硬貨投入部31の右隣且つ硬貨出金トレイ32の上側であり十分な容積を確保するのが難しい位置に予備収納庫80を配置しながら、仕切部87を開放状態とした場合に、投入空間31Sをあたかも収納空間80Sの拡張された部分として利用することができる。
以上の構成によれば、第1の実施の形態によるレジ釣銭機1の硬貨入出金装置5は、各収納庫33の前側に硬貨出金トレイ32を隣接配置し、該硬貨出金トレイ32の後側にトレイ切替部61を設け、該トレイ切替部61から落下した硬貨を横搬送部70及びリフト部75により予備収納庫80へ搬送するようにした。これにより硬貨入出金装置5は、収納庫33から排出された硬貨を直ちに貯留部32Fに到達させて出金を完了することと、収納庫33から排出された硬貨を予備収納庫80へ搬送して収納させ、自動精査処理等を行うこととを高度に両立できる。
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態によるレジ釣銭機101(図1)は、第1の実施の形態によるレジ釣銭機1と比較して、硬貨入出金装置5に代わる硬貨入出金装置105を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
硬貨入出金装置105は、硬貨制御部30に代わる硬貨制御部130により全体を統括制御するようになっている。また硬貨入出金装置105は、図2及び図3と対応する図8及び図9に示すように、大きく分けて上段部105U及び下段部105Lにより構成されている。
この硬貨入出金装置105は、第1の実施の形態による硬貨入出金装置5と比較して、硬貨投入部31、投入搬送部36、リフト部75及び予備収納庫80に代わる硬貨投入部131、投入搬送部136、リフト部175及び予備収納庫180を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
硬貨投入部131は、第1の実施の形態による硬貨投入部31と比較して、予備収納庫80との境界部分に設けられていた仕切部87が省略されている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。投入搬送部136は、第1の実施の形態による投入搬送部36と比較して、投入搬送ガイド37に代わる投入搬送ガイド137を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。投入搬送ガイド137は、第1の実施の形態による投入搬送ガイド37と比較して、収納庫33の上側における前側、右側及び後側に加えて、左側にも設けられている点において相違する。
予備収納庫180は、第1の実施の形態における予備収納庫80(図2)と異なり、下段部105L(図9)における最も右側の収納庫33Aの右隣に配置されている。予備収納庫180は、全体として前後方向に長い直方体状に形成されており、その周囲を囲む予備収納筐体181の内部に予備収納空間180Sを形成している。
予備収納庫180の前端部分は、横搬送部70の左端の左側に隣接している。このため予備収納庫180は、横搬送部70により左方向へ搬送された硬貨を受け取り、予備収納空間180S内に収納することができる。
この予備収納庫180は、図8におけるD1-D2断面図を図10に示すように、予備収納空間180Sの底部分に予備収納搬送部182が設けられている。予備収納搬送部182は、第1の実施の形態による予備収納搬送部82と類似した構成となっており、前後それぞれに配置された予備収納搬送ローラ183及び184の周囲を周回するように予備収納搬送ベルト185が張架されている。予備収納搬送部182は、予備収納搬送ベルト185の上側部分を後方へ向けて走行させることにより、予備収納空間180S内に収納された硬貨を後方へ搬送する。
また予備収納庫180の後端近傍には、予備収納庫リバースローラ186が設けられている。予備収納庫リバースローラ186は、収納庫33のリバースローラ55(図4等)と同様、回転することにより、予備収納搬送ベルト185上に重なった硬貨を崩すことができる。
予備収納庫180の後側には、第1の実施の形態によるリフト部75と同様に構成されたリフト部175が設けられている。リフト部175は、予備収納庫180の後端近傍に位置する硬貨を上方へ持ち上げるように搬送し、上段部105Uの投入搬送ガイド137上に到達させ、この硬貨をピンベルト39に引き渡して搬送させることができる。
この第2の実施の形態による硬貨入出金装置105を模式的なブロック図として表すと、図7と対応する図11のように表すことができる。この図11から分かるように、硬貨入出金装置105では、第1の実施の形態と比較して、主に予備収納庫180の配置やリフト部175との関係、並びに投入搬送部36との関係が相違しているものの、それ以外の部分は同等に構成されている。
このため硬貨入出金装置105は、第1の実施の形態と同様に入金処理及び出金処理を実現でき、さらに予備収納庫80に代わる予備収納庫180を用いて自動精査処理、オーバーフロー処理及び自動補充処理も実現することができる。
以上の構成により、第2の実施の形態によるレジ釣銭機101の硬貨入出金装置105は、第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
これに加えて硬貨入出金装置105は、予備収納庫180を収納庫33の左隣に配置し、その後端から繰り出した硬貨をリフト部175により投入搬送部36に対し硬貨投入部131よりも上流側で引き渡すようにした(図9)。これにより硬貨入出金装置105は、第1の実施の形態にように予備収納庫80から繰り出す硬貨を硬貨投入部31経由で投入搬送部36に引き渡す必要が無く、該硬貨投入部31のシャッタを閉塞する必要も無い。すなわち硬貨入出金装置105は、例えば自動精査処理や自動補充処理において、レジ係員に硬貨投入部31のシャッタを閉塞させることなく、直ちに自動補充処理を開始することができる。
また硬貨入出金装置105では、予備収納庫180を収納庫33の左隣に配置したことにより、該予備収納庫180の予備収納空間180S(図10)を、該収納庫33の収納空間50(図4及び図5)と同様に十分な大きさとし、第1の実施の形態による予備収納庫80よりもその容量を拡大することができる。
以上の構成によれば、第2の実施の形態によるレジ釣銭機101の硬貨入出金装置105は、各収納庫33の前側に硬貨出金トレイ32を隣接配置し、該硬貨出金トレイ32の後側にトレイ切替部61を設け、該トレイ切替部61から落下した硬貨を横搬送部70及びリフト部75により予備収納庫180へ搬送するようにした。これにより硬貨入出金装置105は、収納庫33から排出された硬貨を直ちに貯留部32Fに到達させて出金を完了することと、収納庫33から排出された硬貨を予備収納庫180へ搬送して収納させ、自動精査処理等を行うこととを高度に両立できる。
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、トレイ切替部61のトレイブレード63を回動させることにより貯留状態(図4)又は落下状態(図5)に切り替える場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばトレイブレード63を傾斜面に沿ってスライドさせる等、該トレイブレード63を種々の手法や機構によって変位させることにより、トレイ孔部64を閉塞又は開放して貯留状態又は落下状態に切り替えるようにしても良い。リジェクト切替部41等についても同様であり、また第2の実施の形態についても同様である。
また上述した第1の実施の形態においては、予備収納庫80の底部に予備収納搬送部82(図6)を設け、該予備収納搬送部82の予備収納搬送ベルト85を走行させることにより、予備収納庫80に収納されている硬貨を硬貨投入部31へ繰り出す場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、他の種々の手法や機構を用いることにより、予備収納庫80に収納されている硬貨を硬貨投入部31へ繰り出しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、予備収納庫80及び硬貨投入部31の間に開閉可能な仕切部87を設け、該仕切部87を開放して予備収納庫80から繰り出された硬貨を硬貨投入部31経由で投入搬送部36に引き渡す場合について述べた(図6及び図7)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば予備収納庫80から繰り出した硬貨を投入搬送部36に直接引き渡すようにしても良い。この場合、投入搬送部36における認識部40よりも上流側において、予備収納庫80から投入搬送部36に硬貨を引き渡すことが望ましい。
さらに上述した第1の実施の形態においては、予備収納庫80をトレイ切替部61の上側に設ける場合について述べた(図2及び図6等)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばトレイ切替部61の下側、すなわち横搬送部70が設けられている位置に予備収納庫80を設けても良い。この場合、例えばリフト部75を該予備収納庫80の左端近傍に配置し、該予備収納庫80から持ち上げた硬貨を投入搬送部36に引き渡すようにすれば良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、1個の予備収納庫80をトレイ切替部61の上側に設ける場合について述べた(図2及び図6等)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば予備収納庫80やリフト部75等に加えて、第2の実施の形態と同様の予備収納庫180及びリフト部175等を追加し、2個以上の予備収納庫を設けても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、投入搬送部36においてリジェクト切替部41の下側にリジェクト搬送部44を設け、リジェクト切替部41をリジェクト状態に切り替えた場合にリジェクト孔部43から落下した硬貨を該リジェクト搬送部44により収納庫33Fの上側まで搬送する場合について述べた(図2、図4等)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば投入搬送部36においてリジェクト切替部41をより左側に、具体的には収納庫33Fのほぼ真上に配置し、リジェクト搬送部44を省略しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、円盤31C(図2)の回転を利用して投入受渡部35に引き渡す、いわゆる円盤方式の硬貨投入部31を設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば投入された硬貨を搬送ベルトにより搬送して投入受渡部35に引き渡すベルト方式等、種々の方式の硬貨投入部を設けても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、硬貨入出金装置5に6個の収納庫33を設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、5個以下又は7個以上の収納庫33を設けても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、オーバーフロー処理において、リジェクト切替部41をリジェクト状態に切り替えてオーバーフロー金種の硬貨を落下させてトレイ切替部61へ導き、該トレイ切替部61を落下状態に切り替えることにより予備収納庫80へ搬送して収納させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばオーバーフロー処理において、リジェクト切替部41を収納状態に切り替えてオーバーフロー金種の硬貨を収納庫33に一度収納させ、該収納庫33から排出させた硬貨をトレイ切替部61において落下させて予備収納庫80へ搬送して収納させるようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、自動補充処理において、補充基準枚数(例えば20枚)が予め決められている場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば補充基準枚数をレジ係員に指定させても良い。また、1回の自動補充処理において補充する硬貨の枚数や、予備収納処理において予備収納庫80に収納しておく硬貨の枚数についても、同様にレジ係員に指定させても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、硬貨制御部30の制御に基づき硬貨入出金装置5において自動精査処理等の種々の処理を実行する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばレジ制御部11の制御に基づき、或いは互いに連携する硬貨制御部30及びレジ制御部11の制御に基づき、硬貨入出金装置5において自動精査処理等の種々の処理を実行しても良い。また硬貨入出金装置5は、必ずしも自動精査処理、オーバーフロー処理及び自動補充処理の全てを行う必要は無く、これらのうち少なくとも1つの処理を行えば良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、媒体としての硬貨を取り扱う硬貨入出金装置5に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば円板状や直方体状等の種々の形状でなる種々の媒体を取り扱う媒体取扱装置に本発明を適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した実施の形態においては、収納庫としての収納庫33と、収納搬送部としての収納搬送部51と、貯留部としての貯留部32Fと、予備収納庫としての予備収納庫80と、排出切替部としてのトレイ切替部61とによって媒体収納排出装置としての硬貨入出金装置5を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる収納庫と、収納搬送部と、貯留部と、予備収納庫と、排出切替部とによって媒体収納排出装置を構成しても良い。