以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1-1.現金自動預払機の構成]
図1に外観を示すように、現金取扱装置としての現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関や各種商業施設等に設置され、使用者(すなわち金融機関や商業施設の顧客等)との間で、入金処理や出金処理等の現金に関する取引を行う。
筐体2は、その前側に使用者が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に応対部3が設けられている。応対部3は、使用者との間で例えば現金やカード等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになっており、通帳入出口4、カード入出口5、硬貨入出金口6、紙幣入出金口7及び操作表示部8等が設けられている。
通帳入出口4は、通帳が挿入され、また排出する部分である。通帳入出口4の奥側には、通帳の裏表紙等に設けられた磁気記録部から磁気情報を読み取り、また該通帳に取引の内容を記録する通帳処理部(図示せず)が設けられている。カード入出口5は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード入出口5の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。
硬貨入出金口6は、顧客によって入金される硬貨が投入されると共に、使用者へ出金する硬貨が排出される部分である。紙幣入出金口7は、顧客によって入金される紙幣が投入されると共に、使用者へ出金する紙幣が排出される部分である。この硬貨入出金口6及び紙幣入出金口7は、それぞれシャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになっている。操作部としての操作表示部8は、取引に際して操作画面や取引内容等を表示する液晶表示パネルと、使用者の入力操作を検知するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルである。
以下では、現金自動預払機1のうち使用者が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した使用者から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
筐体2の内部には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、取引対象である硬貨に関する種々の処理を行う硬貨処理装置10、及び紙幣に関する種々の処理を行う紙幣処理装置(図示せず)等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
硬貨処理装置10は、全体として直方体に類似した形状に構成されており、図示しないスライドレールを介して筐体2に取り付けられている。また筐体2の前面側又は後面側には、開閉可能な扉(図示せず)が設けられている。このため現金自動預払機1は、保守作業等が行われる場合、筐体2の前面側又は後面側の扉を開放した上で、硬貨処理装置10を前方又は後方へスライドさせることにより、該硬貨処理装置10を該筐体2の外部に位置させ、また該筐体2の内部に収納させることができる。
[1-2.硬貨処理装置の構成]
硬貨処理装置10は、図2に模式的な右側面図を示すように、硬貨処理装置筐体11の内部に、硬貨に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。この硬貨は、例えば銅及びニッケルの合金やアルミニウム等、十分な強度を有する非磁性体の材料でなり、薄い円板形状に形成されている。因みに硬貨処理装置10では、直径が異なる複数種類の硬貨を取り扱うことが想定されている。
硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的上側ないし中央付近に、入出金部13、シュート部14、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17、ピンベルト搬送部18、6個のスタッカ部21、出金搬送部22、及び一時保留部23が設けられている。また硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的下側に、硬貨制御部12、補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25、第2補充リジェクト庫26、リジェクト庫27、取忘取込庫28及び下分離部29が設けられている。
硬貨制御部12は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等に関する種々の処理を行い、硬貨処理装置10を統括制御する。また硬貨制御部12は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
入出金部13は、顧客との間で硬貨を受け渡すことにより、該顧客に硬貨を入金させ、又は該顧客に硬貨を出金する。該入出金部13は、上側に開口部を有し硬貨を収容する収容器13A、該開口部を開閉するシャッタ13B等、及び収容器13A内における硬貨の有無等を検知するセンサ(図示せず)を有している。
入出金部13は、シャッタ13Bを開放した状態で顧客により硬貨が収容器13Aに投入されると、該シャッタ13Bを閉塞し、硬貨を収容器13A内からシュート部14に引き渡して該シュート部14内を下降させ、上分離部15内に到達させる。また入出金部13は、シャッタ13Bを閉塞した状態で、後述するピンベルト搬送部18から硬貨が搬送されてくると、該硬貨を収容器13A内に収容した後、シャッタ13Bを開放して顧客に受け取らせる。
上分離部15は、下側の比較的大きい容積を占める部分である集積分離部15Aと、該集積分離部15Aから上方に突出するように形成された分離搬送部15Bとにより構成されている。この上分離部15は、集積分離部15Aに硬貨を集積すると共に、この硬貨を1枚ずつに分離して分離搬送部15Bにより上方向へ搬送し、さらに搬送路に沿って後方向へ搬送して認識搬送部16に引き渡す。
認識搬送部16は、シュート部14の右側に位置しており、硬貨を搬送しながら撮像し、得られた画像信号を基に当該硬貨の金種や真偽、或いは損傷の程度等を基に当該硬貨が取扱可能であるか否かを判定する。そのうえで認識搬送部16は、得られた判定結果を当該硬貨の認識結果として硬貨制御部12に通知すると共に、当該硬貨を受渡部17に引き渡す。受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。
ピンベルト搬送部18は、スタッカ部21の前側下部、下側、後側及び上側をそれぞれ前ピンベルト搬送部18F、下ピンベルト搬送部18L、後ピンベルト搬送部18R及び上ピンベルト搬送部18Uにより取り囲み、硬貨を搬送する経路である搬送経路を形成している。ピンベルト搬送部18は、硬貨の盤面と当接し搬送経路に沿って進行するよう案内する搬送ガイドと、概ね該搬送経路に沿って走行するピンベルトとにより構成されている。このピンベルトには、硬貨の末尾側から搬送方向へ付勢するピンが設けられている。ピンベルト搬送部18は、ピンベルトを走行させることにより、受渡部17から受け取った硬貨を搬送経路に沿って搬送し、入出金部13の収容器13A内へ放出することができる。
またピンベルト搬送部18には、スタッカ部21の前側下部及び下側に配置された部分における複数箇所に、硬貨の搬送経路を分岐させる分岐部19がそれぞれ設けられている。各分岐部19の左側には、硬貨を案内する案内部30がそれぞれ設けられている。
各分岐部19は、それぞれ回動可能な案内板及びアクチュエータ等(何れも図示せず)を有しており、硬貨制御部12の制御に基づいて案内板を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは各案内部30へ分岐させるかを切り替える。各案内部30は、それぞれ補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25、一時保留部23、リジェクト庫27及び取忘取込庫28等へ硬貨を進行させる。
さらにピンベルト搬送部18には、6個のスタッカ部21のそれぞれ上側となる6箇所に、スタッカ分岐部20が設けられている。各スタッカ分岐部20の左側には、硬貨をスタッカ部21へ案内する案内部31が設けられている。各スタッカ分岐部20は、各分岐部19と同様に構成されており、硬貨制御部12の制御に基づいて案内板を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは各スタッカ部21へ分岐させるかを切り替える。
スタッカ部21は、それぞれ所定の金種の硬貨と対応付けられており、上側に設けられた案内部31と、該案内部31の下側において硬貨を上下方向に沿って積み重ねるように集積する集積部32と、該集積部32の下側から硬貨を繰り出す繰出部33とを有している。このスタッカ部21は、ピンベルト搬送部18により搬送された硬貨をスタッカ分岐部20から受け取ると、該硬貨を案内部31により集積部32へ案内して集積させる。またスタッカ部21は、硬貨制御部12の制御に基づき、集積部32に集積している硬貨を繰出部33により1枚ずつ繰り出し、下方の出金搬送部22又は一時保留部23へ落下させる。
出金搬送部22は、ピンベルト搬送部18の右側、すなわち図2における紙面の手前側に位置しており、上側及び前側が開放された中空の直方体のように構成され、内部に硬貨を収容し得る空間を形成している。また出金搬送部22は、底部にベルトやプーリ等でなるベルト搬送機構が組み込まれており、スタッカ部21から繰り出された硬貨をベルト上に載置若しくは集積する。この出金搬送部22は、ベルトの上に硬貨が載置若しくは集積された状態で、該ベルトの上側部分を前方へ向けて走行させることにより、該硬貨を前側の一時保留部23へ落下させる。
一時保留部23は、出金搬送部22の後端を下げると共に前端を持ち上げ、さらに左右の側板を三角形状としたような構成となっており、その内部に硬貨を収容する空間を形成すると共に、底部にベルト搬送機構が組み込まれている。このため一時保留部23は、スタッカ部21から繰り出された硬貨や出金搬送部22から搬送されてきた硬貨を、内部空間のベルト上に載置若しくは集積させる。また一時保留部23は、ベルトの上に硬貨が載置若しくは集積された状態で、該ベルトの上側部分を前斜め上方へ向けて走行させることにより、該硬貨を前側の上分離部15へ繰り出し、その内部へ落下させる。
補充回収庫24は、内部に硬貨を集積する集積部や、該集積部に集積されている硬貨を搬送する搬送機構等を有している。この補充回収庫24は、案内部30により案内されてきた硬貨を集積し、また内部に集積している硬貨を後方へ繰り出して下分離部29に引き渡す。第1補充リジェクト庫25及び第2補充リジェクト庫26は、それぞれ内部に硬貨を集積する空間を有しており、案内部30により案内されてきた硬貨を集積する。リジェクト庫27及び取忘取込庫28は、それぞれ内部に硬貨を集積する空間を有しており、案内部30により案内されてきた硬貨をそれぞれ集積する。
下分離部29は、補充回収庫24の後側に隣接する位置に配置されている。この下分離部29は、上分離部15と類似した構成となっているものの、硬貨処理装置筐体11に対する取付方向が、該上分離部15とは相違している。具体的に下分離部29は、上分離部15を真上から見て時計回りに90度回転させ、該上分離部15における右側面を前方に向けた姿勢となっている。
この下分離部29は、集積分離部15A及び分離搬送部15Bとそれぞれ対応する集積分離部29A及び分離搬送部29Bにより構成されている。集積分離部29Aは、補充回収庫24から硬貨を受け取って内部に集積し、また集積されている硬貨を1枚ずつに分離して分離搬送部29Bに引き渡す。分離搬送部29Bは、集積分離部29Aから受け取った硬貨を1枚ずつ上方へ持ち上げるように搬送し、一時保留部23の放出口から内部の空間へ放出する。
[1-3.各種処理における硬貨の搬送]
次に、硬貨処理装置10において硬貨の搬送を伴う種々の処理、すなわち入金処理及び出金処理等における硬貨の搬送や集積等について説明する。ここでは、現金自動預払機1と顧客との間で入金取引及び出金取引を行う場合における硬貨処理装置10での各処理、並びに該硬貨処理装置10において硬貨をスタッカ部21に補充する補充処理についてそれぞれ説明する。
[1-3-1.入金取引における硬貨の搬送]
現金自動預払機1(図1)において顧客との間で入金取引が行われる場合、硬貨処理装置10は、前段の入金計数処理により、顧客に入金された硬貨の金種等を認識しながら枚数を計数し、これに続く後段の入金収納処理により、各硬貨を適切な収納箇所へ搬送して収納する。
具体的に硬貨処理装置10は、前段の入金計数処理において、顧客に入出金部13に硬貨を投入させると、シュート部14、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17及びピンベルト搬送部18を順次介して一時保留部23に収容する。
このとき硬貨処理装置10は、認識搬送部16による各硬貨の認識結果を基に入金額を集計して操作表示部8(図1)に表示し、顧客に入金取引を継続するか、又は中止するかを選択させる。硬貨処理装置10は、顧客により継続が選択されると、後段の入金収納処理を行い、中止が選択されると、入金取引を中止し、後述する出金処理の場合と同様に硬貨を入出金部13へ搬送して返却する。
硬貨処理装置10は、後段の入金収納処理において、硬貨を一時保留部23から上分離部15、認識搬送部16、受渡部17、ピンベルト搬送部18及びスタッカ分岐部20を順次介してスタッカ部21へ搬送して集積させる。このとき硬貨処理装置10は、認識搬送部16による各硬貨の認識結果を基に、当該硬貨の金種に応じたスタッカ部21へ搬送する。
[1-3-2.出金取引における硬貨の搬送]
現金自動預払機1(図1)において顧客との間で出金取引が行われる場合、硬貨処理装置10は、出金処理により、顧客に指示された金額の硬貨を入出金部13へ搬送して出金する。
具体的に硬貨処理装置10は、操作表示部8(図1)を介して顧客から出金取引を開始する旨や出金額の操作入力を受け付けると、出金処理を開始し、出金額に応じた硬貨の金種及び枚数を各スタッカ部21から出金させ、出金搬送部22を介して一時保留部23内に集積させる。続いて硬貨処理装置10は、一時保留部23、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17及びピンベルト搬送部18を順次経由して硬貨を入出金部13へ搬送して収容させ、顧客に受け取らせる。
[1-3-3.補充処理]
次に、補充処理について説明する。補充処理は、硬貨処理装置10のスタッカ部21に集積している硬貨の枚数が減少してきた場合等に、補充回収庫24を利用して外部から硬貨を補充する処理である。ここで硬貨処理装置10は、保守作業者により硬貨処理装置筐体11から補充回収庫24が取り外され、内部の集積部に硬貨が収納された後、該補充回収庫24が該硬貨処理装置筐体11に再び装着された状態であるとする。
具体的に硬貨処理装置10の硬貨制御部12は、現金自動預払機1の主制御部9(図1)と連携することにより、操作表示部8を介して保守作業者から補充処理を開始する旨の操作入力を受け付けると、補充処理を開始する。
まず補充回収庫24は、内部に組み込まれた搬送機構を動作させることにより、後側の繰出口から硬貨を繰り出して下分離部29に引き渡す。下分離部29は、硬貨を1枚ずつに分離しながら上方へ搬送して一時保留部23へ引き渡し、集積させる。その後、硬貨制御部12は、入金収納処理の場合と同様に、一時保留部23、上分離部15及び認識搬送部16により硬貨を1枚ずつに分離して順次搬送させ、該硬貨を認識すると共に受渡部17へ引き渡す。受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。
これに応じて硬貨制御部12は、得られた認識結果を基に当該硬貨が再利用可能であるか否かを判定し、当該硬貨が再利用可能であれば、その金種に応じたスタッカ部21を搬送先に決定し、再利用不可能であれば、第1補充リジェクト庫25を搬送先に決定する。
ピンベルト搬送部18は、当該硬貨が再利用可能であれば、その金種に応じたスタッカ分岐部20まで搬送して分岐させ、スタッカ部21へ進行させて集積させる。一方、ピンベルト搬送部18は、当該硬貨が再利用不可能であれば、分岐部19により分岐させて第1補充リジェクト庫25へ進行させて収容させる。
やがて硬貨制御部12は、一時保留部23に集積していた全ての硬貨をそれぞれの搬送先に搬送し終えると、補充処理を終了する。また硬貨制御部12は、現金自動預払機1の主制御部9(図1)と連携することにより、操作表示部8に補充処理を終了したことや関連する情報(例えば補充した硬貨の金種及び枚数等)を表示し、保守作業者に通知する。
[1-4.下分離部の構成]
[1-4-1.下分離部の基本構成]
図3(A)及び(B)に斜視図を示すと共に図4に模式的な右側面図を示すように、下分離部29は、全体の中央乃至後側に位置する分離部フレーム40を中心に構成されている。分離部フレーム40は、金属製の板状部材が適宜切削されると共に屈曲された構成となっている。
この分離部フレーム40のうち集積分離部29Aに相当する部分には、集積タンク41、開閉カバー42及び傾斜円盤43等の種々の部品が取り付けられている。傾斜円盤43は、全体として円盤状に形成されており、前側の表面である円盤面43Sが前上側を向くように傾斜し、且つ傾斜円盤中心軸43Xを回転中心として回転可能に支持されている。この傾斜円盤43は、図示しないモータから駆動力が供給されると、傾斜円盤中心軸43Xを回転中心として回転する。
集積タンク41及び開閉カバー42は、傾斜円盤43の前側に位置している。図5に模式的な正面図を示すように、集積タンク41は、例えば所定の樹脂材料が成型された成型部品であり、傾斜円盤43の前側における右上側部分を除いた約3/4の範囲を覆っている。このため集積タンク41は、傾斜円盤中心軸43Xから見て右上側の部分に、内部空間と外部とを連通させる開口部41Hが形成されていると見なすこともできる。
開閉カバー42は、傾斜円盤43の前側における右上側部分の約1/4の範囲、すなわち開口部41Hを閉塞しており、回動部50を介して集積タンク41に取り付けられている。なお、開閉カバー42の詳細な形状については後述する。
この集積タンク41及び開閉カバー42は、全体として椀の中心軸を傾斜円盤中心軸43Xに一致させるように傾斜させたような立体形状となっており、外周部分において傾斜円盤43の外側に位置し、傾斜円盤中心軸43Xの近傍に近づくに連れて該傾斜円盤43から遠ざかるような曲面を形成している。これにより下分離部29は、集積タンク41及び開閉カバー42と傾斜円盤43との間に、十分な大きさの空間でなる硬貨集積空間48を形成している。この硬貨集積空間48には、多数の硬貨CNを集積し得るようになっている。因みに集積タンク41における上側には、補充回収庫24(図2)から供給される硬貨を受け入れるための孔部(図示せず)が形成されている。
また下分離部29では、集積タンク41及び開閉カバー42の接合部分を、直線状では無く、波線状に湾曲させている。これにより下分離部29では、硬貨集積空間48内に集積されている硬貨CNが集積タンク41及び開閉カバー42の接合部分に形成される隙間から外部に漏れ出ることを防止できると共に、該硬貨CNが集積タンク41及び開閉カバー42の段差に引っ掛かり難くすることができる。
回動部50は、集積タンク41の一部である軸受部51と、開閉カバー42の一部である軸受部52と、円柱状の回動軸53とにより構成されている。軸受部51は、集積タンク41の右側における端部近傍、すなわち開口部41Hにおける右下部分の端部近傍に位置しており、前後方向に貫通する丸孔が穿設されている。軸受部52は、開閉カバー42の右下における端部近傍であって、軸受部51の前側及び後側に位置しており、軸受部51と同様、前後方向に貫通する丸孔が穿設されている。回動軸53は、前後方向に沿った中心軸を有する円柱状に形成されており、軸受部51及び52に挿通されている。
このような構成により、回動部50は、回動軸53の仮想的な中心軸である回動中心軸53X(図4)を中心として、集積タンク41に対して開閉カバー42を回動させることができる。この回動中心軸53Xは、傾斜円盤43の傾斜円盤中心軸43Xと略平行となっている。すなわち開閉カバー42は、図3、図4及び図5に示したように、集積タンク41の開口部41Hを閉塞した閉塞状態と、図6、図7及び図8に示すように、閉塞状態から約半回転され、集積タンク41の開口部41Hを開放した開放状態とに遷移することができる。
図4におけるA1-A2断面を図9に示すように、回転体としての傾斜円盤43は、硬貨CNと比較して十分に大きい直径でなる円盤状に形成されている。この傾斜円盤43は、前側の盤面である円盤面43Sが概ね平坦に形成されており、該円盤面43Sに対し、法線方向である前斜め上方向に突出する複数の突起44が設けられている。
突起44は、傾斜円盤43の外周を7等分するそれぞれの箇所において、円盤面43Sにおける最外周のやや内側に取り付けられている。突起44は、全体として直方体に類似した形状、若しくは正面から見て平行四辺形に類似した板状に構成されている。因みに突起44における左右方向の長さ(すなわち厚さ)は、1枚の硬貨の厚さよりもやや短く(すなわち薄く)なっている。
さらに傾斜円盤43は、外周のうち7個の各突起44の近傍となる7箇所に、外周から中心方向へえぐられるように切り欠かれた切欠溝45が形成されている。切欠溝45は、右方向から見て、傾斜円盤43の外周を一辺とする三角形に類似した形状となっており、該傾斜円盤43の中心に近い頂点の近傍において、突起44と隣接している。
また分離部フレーム40における傾斜円盤43の外側には、該傾斜円盤43における下側の約半分に相当する範囲において、集積タンク41の後端部分が取り付けられている。因みに集積タンク41は、その内周面と傾斜円盤43の外周面との間に僅かな隙間を形成している。
一方、分離部フレーム40のうち分離搬送部29Bに相当する部分には、後搬送ガイド55、外搬送ガイド56及び内搬送ガイド57等が設けられている。後搬送ガイド55は、傾斜円盤43の円盤面43Sと連続する平面を形成しており、該傾斜円盤43の左上側部分から上方に向けて延設され、さらに右方向に屈曲されている。また後搬送ガイド55には、幅方向のほぼ中央を通るような位置に、後方向に深くえぐられた溝部58が形成されている。
外搬送ガイド56は、後搬送ガイド55の左側乃至上側に位置しており、該後搬送ガイド55よりも前方に突出している。外搬送ガイド56の下端は、集積タンク41と連接している。内搬送ガイド57は、後搬送ガイド55の右側乃至下側に位置しており、該後搬送ガイド55よりも前方に突出している。さらに、後搬送ガイド55、外搬送ガイド56及び内搬送ガイド57の上寄りにおける右側には、硬貨を前方に引き渡す引渡ガイド(図示せず)が設けられている。説明の都合上、以下では、後搬送ガイド55、外搬送ガイド56及び内搬送ガイド57により囲まれた空間を、搬送空間59とも呼ぶ。
一方、傾斜円盤43の後側には、ベルトプーリ61が取り付けられている。ベルトプーリ61は、全体として扁平な円盤状に形成されており、その直径が傾斜円盤43の直径よりも僅かに小さくなっている。このベルトプーリ61は、その中心を傾斜円盤43の中心軸である傾斜円盤中心軸43Xと一致させており、傾斜円盤43と一体に回転する。
また分離部フレーム40には、ベルトプーリ61の上側に左プーリ62、上プーリ63及び右プーリ64が設けられている。左プーリ62は、ベルトプーリ61の左上側に位置している。上プーリ63は、左プーリ62の右上側に位置している。右プーリ64は、上プーリ63の右下側であり、ベルトプーリ61の上側に位置している。左プーリ62、上プーリ63及び右プーリ64は、それぞれ分離部フレーム40により回転可能に支持されており、またそれぞれの前側の表面が、ベルトプーリ61における前側の表面と同一の平面上若しくはその近傍に位置している。
さらに下分離部29には、ベルト65が設けられている。ベルト65は、樹脂やゴム等の可撓性を有する材料で構成された無端ベルトであり、ベルトプーリ61及び上プーリ63の周囲を周回すると共に、左プーリ62及び右プーリ64の周側面にも当接するように張架されている。
またベルト65には、所定間隔ごとにピン66が取り付けられている。ピン66は、中心軸を傾斜円盤中心軸43Xとほぼ平行に向けた円柱状に形成されており、その前端(すなわち先端)が傾斜円盤43の円盤面43Sよりも前側に突出し、突起44の上面とほぼ同等の位置に到達している。以下では、ベルト65及び複数のピン66をまとめてピンベルトとも呼ぶ。
下分離部29では、ベルト65におけるピン66の取付間隔や取付位置が、傾斜円盤43における切欠溝45の位置に合わせて設定されている。このためピン66は、ベルト65がベルトプーリ61の外周面に当接している場合、該ピン66の突出部が傾斜円盤43の切欠溝45に入り込み、該切欠溝45内で傾斜円盤中心軸43Xに近い箇所、すなわち突起44に近接した箇所に位置する。
ピン66は、傾斜円盤43が傾斜円盤中心軸43Xを中心に回転すると、切欠溝45に入り込んだ状態を維持したまま、該傾斜円盤43及びベルトプーリ61と一体に回転する。すなわちピン66は、傾斜円盤43の外周部分と同期して円弧状に走行する。また分離部フレーム40では、ベルト65が左プーリ62の右端近傍から上プーリ63の左端近傍にかけて張架された部分において、溝部58に沿ってベルト65を進行させる。このときピン66は、前端近傍を後搬送ガイド55の前面よりも前方に突出させている。
かかる構成により、下分離部29は、補充回収庫24(図2)から硬貨が供給されると、この硬貨を硬貨集積空間48に収納する。また下分離部29は、傾斜円盤43を矢印R1方向(すなわち図6の時計回り)に回転させることにより、硬貨集積空間48内に集積された硬貨を適宜撹拌しながら、突起44に硬貨を1枚ずつ引っ掛ける。さらに下分離部29は、傾斜円盤43を引き続き回転させることにより、硬貨の後側面(すなわち円盤面)を該傾斜円盤43に対向及び当接させた姿勢で、該硬貨の周側面を突起44及び集積タンク41の内側面に当接させながら持ち上げていく。
やがて下分離部29は、図10(A)に示すように、硬貨が傾斜円盤43の左端付近に到達すると、該硬貨の左端部分を外搬送ガイド56の右側面に当接させ、突起44が該硬貨CNの右下側から左上方向へ力を加えるように、換言すれば駆動力を供給するようになる。これにより下分離部29は、この硬貨CNの左端を外搬送ガイド56の右側面に摺動させる。
下分離部29は、引き続き傾斜円盤43を回転させると、図10(B)に示すように、突起44に代わってピン66が硬貨CNの右下側に、すなわち該硬貨CNの重心よりも右側に当接するようになる。これに加えて下分離部29では、この硬貨CNを上流側の集積分離部29Aから下流側の分離搬送部29Bに引き渡し、該硬貨CNの後側面を傾斜円盤43の円盤面43Sに当接させた状態から、後搬送ガイド55の前側面に当接させた状態となる。
続いて下分離部29は、傾斜円盤43の回転に伴ってベルト65を走行させることにより、突起44に隣接していたピン66を該突起44から徐々に引き離し、溝部58に沿って上昇させる。これにより下分離部29は、図10(C)に示すように、硬貨CNの左端近傍を外搬送ガイド56の右側面に摺動させ、且つ後側面を後搬送ガイド55の前側面に摺動させながら、搬送空間59内でこの硬貨CNを上方向へ搬送することができる。その後、下分離部29は、ベルト65をさらに走行させることにより、硬貨CNを右方向へ搬送した後、図示しない引渡ガイドを介して一時保留部23(図2)に引き渡す。
なお下分離部29では、閉塞状態(図3~図5)において、集積タンク41の開口部41Hを開閉カバー42により閉塞している。このため下分離部29は、硬貨集積空間48に集積されている硬貨CNが外部に飛び出ることを、この開閉カバー42により未然に防止できる。また開閉カバー42は、透明な樹脂材料による成型部品として構成されている。このため下分離部29では、開閉カバー42が閉塞状態であっても、硬貨集積空間48内の様子を外部から目視させることができる。
[1-4-2.開閉カバーの構成]
次に、下分離部29における開閉カバー42の構成について説明する。開閉カバー42は、図11(A)、(B)及び(C)にそれぞれ異なる角度から見た斜視図を示すように、複数の板状部材を適宜連接させたような形状を有している。説明の都合上、図11(A)~(C)では、開閉カバー42を開放状態とした姿勢を表している。
開閉カバー42は、大きく分けて、案内面71、72、73、74及び75により構成されている。各案内面71~75は、1つの平坦な平面として、若しくは2以上の平面を相互に連接させた屈曲面として、それぞれ構成されている。案内面71は、開閉カバー42における上側且つ左側に位置している。案内面72は、開閉カバー42における上側且つ前側に位置しており、案内面71の前側に連接されている。
案内面73は、案内面71の下側に対し、該案内面71から右側に向けて屈曲されるようにして連接されている。案内面74は、案内面72の下側に対し、該案内面72から後側に向けて屈曲されるようにして連接されている。また案内面74は、案内面73の前側に連接されている。
案内面75は、案内面73の下側に対し、該案内面73よりも右側に向けて屈曲されるようにして連接され、且つ案内面74の下側に対し、該案内面74よりも後側に向けて屈曲されるようにして連接されている。さらに案内面75は、図11(B)及び(C)に示したように、開放状態において後方向に進むに連れて下方向へ進むような傾斜面となっている。
また開閉カバー42には、案内面73の反対側から下側に突出するようにして台座部77が設けられている。台座部77は、案内面71よりも右側に位置しており、左側の表面が平坦に形成されている。台座部77における左側の表面には、左側に向けて、把手78が立設されている。把手78は、図3に示したように、英大文字の「T」を上下反転させたような形状に形成されている。把手78における上下方向に沿った部分には、滑り止めとして、上下方向に沿って伸びる溝が左右方向に沿って周期的に並ぶように形成されている。
図6~図8に示したように、開閉カバー42が開放状態である場合、案内面71における右側の側面は、概ね上下方向に沿った、すなわちほぼ鉛直な平面となる。また案内面73は、下側へ進むに連れて右側へ進むような傾斜面となっている。ここで、開口部41H(図8)から開放状態の開閉カバー42へ向かう方向を開放方向と定義すると、案内面73は、この開放方向と近い方向に向けて下降するような傾斜面となっている。以下では、案内面73を中間案内面とも呼ぶ。
また開閉カバー42が開放状態である場合、案内面75は、後側へ進むに連れて下側へ進むような傾斜面となっている。すなわち案内面75は、上側乃至右側から見て、案内面73に対し180度よりも小さい角度をなすようにして連接されている。また案内面75は、その一部、例えば前側且つ右側の部分が、案内面73の右側端部よりも高い位置にある。以下では、案内面75を放出案内面とも呼ぶ。また、案内面75の傾斜方向に沿った後下方向を放出方向とも呼ぶ。
さらに開閉カバー42が開放状態である場合、案内面72及び74は、案内面71、73及び75の前側、すなわち案内方向と反対側に位置しており、硬貨CNが該前側へ進行するのを阻止すると共に該硬貨CNを後側へ案内することができる。以下では、案内面72及び74を反対案内面とも呼ぶ。
因みに開閉カバー42が開放状態である場合、案内面73は、水平面に対して約45度の角度で傾斜している。またこの場合、案内面75は、水平面に対して約30度の角度で傾斜している。
ここで、例えば硬貨処理装置10(図2)において硬貨の補充処理が行われている途中で障害が発生し、保守作業者が保守作業を行うために、該硬貨処理装置10が筐体2(図1)の前側又は後側に引き出され、下分離部29に集積されていた硬貨が該保守作業者により外部へ取り出される場合を想定する。
保守作業者は、予め、下分離部29の開閉カバー42を閉塞状態(図3~図5)から開放状態(図6~図8)に遷移させると共に、該開閉カバー42の後下側に、硬貨CNを収容するための所定のトレイ(図示せず)を配置する。このとき開閉カバー42は、軸受部52の近傍を除いた大部分が硬貨処理装置筐体11の右外側に位置することになる。その上で保守作業者は、ピンセット等を用い、集積タンク41の開口部41Hから該ピンセットの先端部分を硬貨集積空間48内に挿入し、1枚の硬貨CNを挟持して持ち上げ、右方向へ、詳細には開口部41Hや回動部50よりも右側であり、開閉カバー42の上方付近へ移動させていく。
ここで保守作業者が開閉カバー42の真上から硬貨CNを落下させた場合を想定する。この場合、硬貨CNは、例えば矢印E1として示すように、開閉カバー42における案内面71よりも右側を下降して案内面73上に落下し、矢印E2として示すように、そのまま案内面73上を右下方向へ滑降し、若しくは周側面を当接させながら回転して、案内面75に当接する。このとき硬貨CNは、該案内面75に当接したことにより右下方向への移動が阻止され、若しくは大幅に減速されると共に、その姿勢を変化させる。
続いて硬貨CNは、矢印E3として示すように、該案内面75上を後下方向に、すなわち該案内面75の傾斜方向である放射方向若しくはこれに近い方向に沿って滑降し、或いは該案内面75に周側面を当接させながら回転する。やがて硬貨CNは、開閉カバー42における案内面75の後端から後下方向若しくはこれに近い方向へ向けて落下する。これにより硬貨CNは、開閉カバー42の後下側に配置されたトレイ(図示せず)の内部に収容される。
また硬貨CNは、仮に案内面73の前寄り、すなわち案内面72や74の上側に落下した場合、該案内面72や74により、前側への進行が阻止されながら、下側且つ後側へ案内され、やがて案内面73又は75に到達する。その後硬貨CNは、上述した場合と同様に進行し、最終的に案内面75から後下方向へ放出される。
因みに下分離部29には、集積タンク41における軸受部51の近傍及び開閉カバー42における軸受部52の近傍に、各側面と軸受部51又は52との間に、それぞれ所定形状の突起若しくはリブが立設されている。これにより下分離部29では、硬貨CNが回動部50に落下した場合に、当該硬貨CNが隙間等にはまり込むことを未然に防止している。
[1-5.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態による現金自動預払機1の硬貨処理装置10は、下分離部29に集積タンク41を設けて硬貨集積空間48を形成し、該集積タンク41に対して回動部50を介して開閉カバー42を回動可能に取り付け、該集積タンク41の開口部41Hを開放又は閉塞させるようにした。
ここで、下分離部29との比較用に、図4及び図7とそれぞれ対応する図12(A)及び(B)に示すような、仮想的な下分離部129を想定する。この仮想的な下分離部129は、本実施の形態による下分離部29と比較して、開閉カバー42に代わる開閉カバー142を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
開閉カバー142は、開閉カバー42と比較して、案内面71、73及び75に代わる案内面171を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。この案内面171は、閉塞状態(図12(A))において集積タンク41の内側面と連通するような曲面を形成している。このため開閉カバー142は、開放状態(図12(B))において、案内面171が、右方向へ進むに連れて下方向へ進む傾斜面となる。
この仮想的な下分離部129において、保守作業者が開閉カバー142の真上から硬貨CNを落下させた場合、該硬貨CNは、例えば矢印E11として示すように、案内面171上に落下し、矢印E12として示すように、該案内面171の傾斜面に沿って右下方向へ進行する。さらに硬貨CNは、引き続き右下方向へ進行した後、矢印E13として示すように、案内面171の右端から右下方へ勢い良く落下する。
この場合、開閉カバー142の案内面171が一様に右下方向に下降する傾斜面であるため、硬貨CNは、案内面171の右端から十分に大きい速度で右下方向へ放出される。このため硬貨CNは、仮に開閉カバー142の右下側に図示しないトレイが用意してあったとしても、該トレイの底面や内側面において反射し、外部へ飛び出す恐れがある。さらにこの場合、硬貨CNは、当該硬貨CNが開閉カバー142上で落下された際の高さや位置に応じて、該開閉カバー142の右下方向へ放出される際の速度や方向が様々に変化する可能性がある。
このため、このような硬貨CNを確実に収容するには、該硬貨CNが落下する位置に合わせて該トレイの位置を合わせることや、十分に大きく十分に深いトレイを用意する必要が生じてしまう。またこの場合、下分離部129の右側に突出して開閉カバー142が位置しており、さらに該開閉カバー142の右側に、場合によっては該開閉カバー142との間に間隔を空けて、トレイを設置することになる。このため、この仮想的な下分離部129の右側に、十分に広い空間が必要となってしまう。
また下分離部129では、下分離部29と同様、傾斜円盤43の円盤面43S(図4、図9)等が前斜め上方向を向いている。このため、硬貨集積空間48に集積されている硬貨CNの多くは、それぞれの盤面を傾斜円盤43の円盤面43Sと対向させるような姿勢、すなわち盤面を概ね前後方向に向けた姿勢となっている。これに伴い、保守作業者は、ピンセット等を用いて硬貨CNを取り出す場合、当該硬貨CNを前後方向から挟んで持ち上げ、そのまま右方向へ移動させて取り出そうとする。このとき保守作業者は、作業のしやすさ等の観点から、硬貨CNの姿勢を敢えて変化させること無く、盤面を概ね前後方向に向けた姿勢のまま、右方向へ移動させる可能性が高い。
このため下分離部129では、開放状態である開閉カバー142の上方から落下される硬貨CNが、盤面を概ね前後方向に向けた姿勢である可能性が高い。そうすると硬貨CNは、周側面を開閉カバー142の案内面171に当接させ、該案内面171にそって転がり、速度を高めながら右下方向へ進行し、やがて勢い良く放出されると、トレイ等の外部に飛び出し、引き続き床上等を右方向へ転がり続ける可能性が高い。このとき保守作業者は、下分離部129から遠方まで転がっていった硬貨CNを追って移動し、該硬貨CNを回収するという繁雑な作業が必要となってしまう。
これに対し、本実施の形態による硬貨処理装置10の下分離部29は、図11に示したように、開放状態にある開閉カバー42の案内面75を、後方向に進むに連れて下方向へ進むような傾斜面とした。換言すれば、案内面75は、傾斜方向(該案内面75における上側から下側に向かう方向)を案内面73から大きく相違させた。これにより下分離部29は、開放状態となっている開閉カバー42(図6~図8)の上から硬貨CNが落下された場合、当該硬貨CNを案内面73に沿って右下方向へ進行させた後、案内面75に当接させ、該硬貨CNの進行方向を後下方向に切り替えさせることができる。
すなわち下分離部29は、仮想的な下分離部129(図12)と比較して、開閉カバー42から硬貨CNが放出される方向を右方向から後方向に変更し得ると共に、該硬貨CNが放出される際の速度を大幅に低減させることができる。このため硬貨処理装置10では、保守作業等において下分離部29から硬貨CNを取り出す場合、開放した開閉カバー42の後側にトレイ(図示せず)を配置すれば良く、右側に必要な空間を比較的小さく抑えることができる。また硬貨処理装置10では、硬貨CNが放出される際の速度が比較的小さいため、トレイ(図示せず)を開閉カバー42の後側に隣接する位置に配置すれば良く、反射する可能性も極めて低いため、比較的小型のトレイを利用することができる。
また下分離部29では、下分離部129(図12)について説明した場合と同様に、硬貨CNの盤面が概ね前後方向を向いた姿勢で、開閉カバー42上に落下される可能性が高い。すなわち硬貨CNは、案内面73上に周側面を当接させ、該案内面73上を転がるように右下方向へ勢い良く進行する可能性が高い。
しかしながら下分離部29では、案内面75が案内面73に対して180度よりも小さい角度で連接し、且つ後側を下降させるように傾斜している(図11)。このため下分離部29では、案内面73上を転がるように進行してきた硬貨CNが案内面75に当接すると、倒れるように姿勢を変化させ、盤面を該案内面75に対向させた姿勢で該案内面75上を滑降する可能性が高い。すなわち硬貨処理装置10では、硬貨CNが傾斜面に沿って転がる場合よりも格段に速度を低下させた状態で、開閉カバー42から後下方向へ当該硬貨CNを落下させることができる。
このように硬貨処理装置10では、開閉カバー42に案内面75を設けたことにより、該開閉カバー42の上方から硬貨CNが落下した場合に、該開閉カバー42から放出される硬貨CNの方向を変更すると共に速度を低下させ、おおよその落下位置を集約させることができる。これにより硬貨処理装置10では、保守作業等において下分離部29から硬貨CNを取り出す場合、開放状態とした開閉カバー42の後側に隣接する位置に、比較的小型のトレイを用意するだけで、当該硬貨CNを安定的に収容させることができる。
他の観点から見れば、開閉カバー42(図11)は、案内面71、73及び75を設けたことにより、閉塞状態(図3~図5)において硬貨集積空間48の周囲を閉塞し得る形状を確保しながらも、開放状態(図6~図8)において硬貨CNの進行方向を右下方向から後下方向に切り替え、且つその速度を低下させることができる。
さらに別の観点から見れば、硬貨処理装置10では、保守作業者に対し、下分離部29の開口部41Hを介して硬貨集積空間48内から取り出させた硬貨CNを、比較的離れたトレイまで運ばせること無く、該開口部41Hの直近に位置する開閉カバー42上に落下させるだけで、該硬貨CNをトレイ内へ確実に案内できる。
また下分離部29では、開閉カバー42(図11)に案内面71、73及び75に加えて、該案内面71、73及び75の前側に、硬貨CNを下降させながら後側へ案内する案内面72及び74を設けた。これにより硬貨処理装置10では、仮に硬貨CNが案内面73の前寄りに落下したとしても、該案内面72及び74により案内面73や75へ案内でき、最終的に該案内面75から後下方向へ放出することができる。
これを換言すれば、硬貨処理装置10は、開閉カバー42に案内面72及び74を設けたことにより、保守作業者に対し、硬貨CNを該開閉カバー42上に落下させる際の位置を、案内面73又は75の真上に厳密に一致させる必要が無く、当該作業を格段に容易化することができる。
さらに下分離部29では、回動部50により開閉する開閉カバー42に案内面73や案内面75等を設けたため、他の治具を取り付ける場合と比較して、当該治具を別途用意する必要や取付作業及び取外作業等を行う必要が無く、該開閉カバー42を回動させるといった極めて簡易な作業を行わせるだけで良い。
以上の構成によれば、第1の実施の形態による現金自動預払機1の硬貨処理装置10は、下分離部29の集積タンク41に対し開閉カバー42を回動可能とし、且つ該開閉カバー42に案内面71、73及び75を設けた。このため下分離部29は、開放状態となっている開閉カバー42の上から硬貨CNが落下された場合、当該硬貨CNを案内面73に沿って右下方向へ進行させた後、案内面75に当接させ、該硬貨CNの進行方向を後下方向に切り替えさせると共に、その速度を低下させることができる。これにより硬貨処理装置10では、開閉カバー42の後方に比較的小型のトレイを用意するだけで、下分離部29から取り出される硬貨CNを容易に且つ確実に収容させることができる。
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態による現金自動預払機201(図1)は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、硬貨処理装置10に代わる硬貨処理装置210を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。硬貨処理装置210(図2)は、第1の実施の形態による硬貨処理装置10と比較して、下分離部29に代わる下分離部229を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
下分離部229は、図4及び図5と対応する図13及び図14に示すように、第1の実施の形態による下分離部29(図3~図5)と比較して、分離部フレーム40、開閉カバー42及び回動部50に代えて、分離部フレーム240、開閉カバー242及び回動部250を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。開閉カバー242は、開閉カバー42と比較して、閉塞状態における上端且つ左端の後寄りに、すなわち案内面75と反対側の面における上端且つ左側の後寄りに、上方に突出した係止部279が設けられている点が相違するものの、他の点については同様に構成されている。
回動部250は、回動部50と比較して、トーションばね254が組み込まれている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。付勢部としてのトーションばね254は、一端が集積タンク41における右端近傍の外側に係合され、他端が閉塞状態にある開閉カバー242における案内面71の右側に係合されている。このため開閉カバー242は、このトーションばね254により、前側から見た状態(図14等)において反時計回りに回転する方向に、すなわち集積タンク41の開口部41Hを閉塞する方向に付勢されている。
分離部フレーム240は、分離部フレーム40と比較して、右側後方に取付板285が後方に向けて延設されている点が相違する。この取付板285は、左右方向に薄い板状に形成されており、前寄り、すなわち集積タンク41に近い側における上寄り及び下寄りの2箇所に、取付孔286がそれぞれ穿設されている。取付孔286は、取付板285を左右方向に貫通する貫通孔であり、右側から見て英大文字の「T」に類似した形状、すなわち前後方向の長さに関して上側よりも下側が十分に短くなっている。
一方、この第2の実施の形態では、図15(A)及び(B)に示すように、硬貨CNを収容するためのトレイ290が用意されている。トレイ290は、全体として中空の直方体に類似した形状となっており、上側面の全部分と前側面における上寄りの約半分とが開放される一方、これら以外の各部分が側板部291により閉塞されている。これに伴いトレイ290には、側板部291により囲まれた内部の空間が、硬貨CN等を収容し得る収容空間292となっている。側板部291のうち前側部分の上端には、前斜め上方に向けて傾斜された前傾斜板293が延設されている。前傾斜板293の下面における右寄りには、係止突起294が設けられている。係止突起294は、その前端が前傾斜板293の前端293Fよりも前方に突出している。
また側板部291のうち左側部分である左側板部291Lにおける前寄りの上側及び下側には、取付突起295がそれぞれ設けられている。取付突起295は、上側から見て(図15(A))、英大文字の「T」に類似した形状となっており、前後方向に関する長さに関して、左側板部291Lに近い右側の部分よりも、該左側板部291Lから遠い左側の部分の方が十分に長くなっている。
因みに、取付突起295の左側部分における前後方向の長さは、取付孔286(図13)の上側部分における前後方向の長さよりも僅かに短くなっている。また、取付突起295の右側部分における前後方向の長さは、取付孔286(図13)の下側部分における前後方向の長さよりも僅かに短くなっている。
この第2の実施の形態では、保守作業者により下分離部229内の硬貨CNが取り出される場合、図16に示すように、該下分離部229の右側における後ろ寄りに、トレイ290が取り付けられる。具体的にトレイ290の各取付突起295は、取付板285の各取付孔286における上側部分に挿通された後、該トレイ290と一体に下方向へ移動することにより係合する。
この結果、トレイ290は、左側板部291Lを分離部フレーム240の取付板285に当接させた状態で、下分離部229に取り付けられる。因みにトレイ290は、下分離部229に取り付けられた状態において、上方へ僅かに持ち上げられてから右方向へ移動されることにより、該下分離部229から容易に取り外させることができる。説明の都合上、以下では取付孔286をトレイ取付部とも呼ぶ。
さらに第2の実施の形態では、開放された開閉カバー242の係止部279が、取り付けられたトレイ290における係止突起294のうち、前傾斜板293よりも前方に突出した部分の左側面と当接することにより係止され、回動部250のトーションばね254により開閉カバー242を閉塞状態に戻そうとする力を受け止めている。これにより開閉カバー242は、保守作業者が指先等で抑える必要無く、開放状態に保持される。また開放状態にある開閉カバー242は、案内面75の一部分である後端が、トレイ290における前傾斜板293の前端293Fよりも僅かに高い位置に保持されている。説明の都合上、以下ではトレイ290の係止突起294を保持部とも呼ぶ。
かかる構成により、第2の実施の形態による現金自動預払機201の硬貨処理装置210では、保守作業者により下分離部229から硬貨CNが取り出される際、開閉カバー242が閉塞状態から開放状態に遷移されると共にトレイ290が取り付けられる(図16)。これにより硬貨処理装置210では、第1の実施の形態と同様に、硬貨CNが開閉カバー242の上方から落下された場合、該硬貨CNを案内面73により右下方向へ案内した後、案内面75により速度を低下させると共に後ろ下方へ進行させ、比較的低い速度で放出することができる。
さらに硬貨処理装置210では、開閉カバー242の後端と直結する位置にトレイ290が取り付けられているため、該開閉カバー242の後方に放出された硬貨CNを該トレイ290内に確実に収容することができる。
また下分離部229では、取付板285に取り付けられたトレイ290の係止突起294を、開放状態とした開閉カバー242の係止部279と係止させるようにした。このため硬貨処理装置210では、他の部品等を用いること無く、下分離部229にトレイ290を取り付けるだけで、開閉カバー242を開放状態に維持させることができる。また硬貨処理装置210では、下分離部229からトレイ290を取り外させると、回動部250のトーションばね254が作用することにより、開閉カバー242を自動的に閉塞状態に戻すことができる。
すなわち硬貨処理装置210では、開閉カバー242を開放状態に遷移して下分離部229から硬貨CNを取り出す作業が終了した後、保守作業者に該開閉カバー242に関する操作を行わせること無く、該開閉カバー242を閉塞状態に遷移させること(すなわち戻すこと)ができる。これにより現金自動預払機201では、保守作業者が開閉カバー242を開放状態としたまま硬貨処理装置210をスライドさせて筐体2内へ収納させようとした場合に生じ得る、該開閉カバー242や回動部250、或いは集積タンク41等の破損を未然に防止できる。
その他の点においても、第2の実施の形態による硬貨処理装置210の下分離部229は、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第2の実施の形態による現金自動預払機201の硬貨処理装置210は、下分離部229の集積タンク41に対し開閉カバー242を回動可能とし、且つ該開閉カバー242に案内面71、73及び75を設けた。また下分離部229は、回動部250にトーションばね254を組み込んで開閉カバー242を閉塞させる方向に付勢させた。さらに下分離部229は、取付板285にトレイ290を取り付けるようにした。このため下分離部229は、開放状態となっている開閉カバー242の上から硬貨CNが落下された場合、当該硬貨CNを案内面73に沿って右下方向へ進行させた後、案内面75に当接させて該硬貨CNの速度を低下させると共に後下方向に進行させ、トレイ290内に確実に収容させることができる。
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態においては、開閉カバー42の案内面75を、開放状態(図6~図8)において後方向へ進むに連れて下方向へ進むような傾斜面とする場合について述べた(図11)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば開閉カバー42の案内面75を、開放状態(図6~図8)において前方向へ進むに連れて下方向へ進むような傾斜面としても良い。この場合、開閉カバー42の前方にトレイを用意すれば良い。要は、開閉カバー42の上方から落下してきた硬貨CNを案内面73に沿って右下方向へ案内した後、該硬貨CNを案内面75に当接させて右方向への速度を大幅に低下させた上で、他の方向へ案内できれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
また上述した第1の実施の形態においては、開閉カバー42の案内面75の上面をほぼ平坦な平面状とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば案内面75の表面を曲面状や、傾きが異なる複数の平面を互いに連接させた屈曲面状等、種々の形状としても良い。要は、開閉カバー42が開放状態(図6~図8)であるときに、案内面73に沿って下降してきた硬貨CNと当接して右方向への速度を大幅に低下させ、且つ当該硬貨CNを後下方へ案内できれば良い。案内面71や案内面73等についても同様であり、また第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、開閉カバー42が開放状態であるときに、案内面73が水平面に対して約45度の角度で傾斜し、案内面75が水平面に対して約30度の角度で傾斜する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、開閉カバー42が開放状態であるときに、案内面73及び案内面75がそれぞれ水平面に対して任意の角度で傾斜していても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、開閉カバー42(図11)に、案内面71、73及び75に加えて、案内面72及び74も設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば開閉カバー42から案内面72及び74を省略し、案内面71、73及び75のみを設けるようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、回動部50にトーションばね254を設けず、開閉カバー42を保守作業者に手動で回動させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば第2の実施の形態における回動部250と同様にトーションばね254を組み込んでも良い。この場合、例えばトレイ(図示せず)の一部を開閉カバー42と係合させる等して開放状態に維持させれば良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、回動部50の回動中心軸53X(図4)を、傾斜円盤43の傾斜円盤中心軸43Xとほぼ平行とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、回動中心軸53Xを様々な角度としても良い。要は、開閉カバー42が閉塞状態において集積タンク41の開口部41Hを閉塞でき、且つ開放状態において該開閉カバー42の上方から落下してくる硬貨CNを案内面73及び75等によって後方へ案内できれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、集積タンク41及び開閉カバー42の接合部分を波線状に湾曲させる場合について述べた(図4及び図5)。しかしながら本発明はこれに限らず、集積タンク41及び開閉カバー42の接合部分を種々の形状としても良い。要は、硬貨集積空間48内に集積されている硬貨CNが集積タンク41及び開閉カバー42の接合部分に形成される隙間から外部に漏れ出ることを防止でき、且つ該硬貨CNが集積タンク41及び開閉カバー42の段差に引っ掛かり難くすることができれば良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、集積タンク41の右上側部分に開口部41Hを設ける場合について述べた(図5)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば集積タンク41の左上側部分に開口部を設けても良い。要は、硬貨集積空間48内に多数の硬貨CNが集積されている状態において、当該硬貨CNをこぼれ落ちさせないような種々の位置に、開口部を設けることができる。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、開閉カバー42を、透明な樹脂材料による成型部品とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば開閉カバー42を不透明な材料により構成しても良い。この場合、例えば開閉カバー42にスリットや網目状の複数の小さい孔等を設ける等して、該開閉カバー42を閉塞状態としたまま硬貨集積空間48内の様子を外部から目視し得ることが望ましい。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、下分離部29の集積分離部29Aにおいて、突起44が設けられた傾斜円盤43を回転させると共にピン66が設けられたベルト65(すなわちピンベルト)を走行させることにより、硬貨集積空間48内の硬貨CNを1枚ずつに分離し分離搬送部29Bに引き渡す場合について述べた(図9及び図10)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば円筒状の部品を回転させることにより硬貨CNを1枚ずつに分離させる等、種々の構成でなる集積分離部から分離搬送部29Bに硬貨を1枚ずつ引き渡すようにしても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第2の実施の形態においては、分離部フレーム240の取付板285に設けた取付孔286にトレイ290の取付突起295を係合させることにより、該トレイ290を下分離部229に取り付ける場合について述べた(図16)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばトレイの左側板部に磁石を埋め込むと共に分離部フレームの取付板を磁性材料(例えば鉄板)とし、磁力により吸着させる等、種々の機構や手法により、トレイを下分離部に取り付けても良い。また開閉カバー242を開放状態に保持させるための機構についても、該開閉カバー242の係止部279をトレイ290の係止突起294に係止させる構成に限らず、例えば開閉カバー242及び前端293Fの何れか一方に磁石を埋め込み、他方に磁性体又は逆極性の磁石を埋め込み、磁力により両者を吸着させる等、種々の構成としても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、顧客との間で種々の取引を行う現金自動預払機1(図1)の硬貨処理装置10に組み込まれる下分離部29に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば硬貨処理装置10(図2)の上分離部15に本発明を適用しても良い。或いは、例えば金融機関の店舗内等に設置され、当該金融機関の職員等の操作に従って硬貨の計数や分類等の処理を行う現金管理装置等、硬貨を取り扱う種々の装置に本発明を適用しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した第1の実施の形態においては、集積部としての集積タンク41と、開口部としての開口部41Hと、分離部としての集積分離部29Aと、カバーとしての開閉カバー42とによって硬貨処理装置としての硬貨処理装置10を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる集積部と、開口部と、分離部と、カバーとによって硬貨処理装置を構成しても良い。